(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/50 20060101AFI20240805BHJP
B22D 17/20 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B29C45/50
B22D17/20 L
B22D17/20 J
(21)【出願番号】P 2021030861
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】谷藤 弘康
(72)【発明者】
【氏名】堀田 大吾
(72)【発明者】
【氏名】大野 大
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-216453(JP,A)
【文献】特開2017-047576(JP,A)
【文献】特開平11-198199(JP,A)
【文献】特開2011-225369(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101360599(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第01004421(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B22D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料を加熱するシリンダと、
前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に設けられるスクリュと、
前記スクリュを回転させる計量モータと、
前記計量モータの回転力を前記スクリュに伝達し、且つ前記計量モータに対する前記スクリュの進退を許容する回転伝達機構と、
前記シリンダが固定される射出フレームと、
前記射出フレームに対して進退自在な直動部と、
を備え、
前記スクリュは、前記直動部と共に進退させられ、
前記計量モータは、
前記直動部を基準として前記シリンダとは反対側で、前記射出フレームに対して固定され、
前記回転伝達機構は、スプラインを含み、
前記スクリュの回転中心線と、前記スプラインの回転中心線とは、平行にずれている、射出成形機。
【請求項2】
充填時の前記スクリュの移動方向を前方とし、計量時の前記スクリュの移動方向を後方とすると、
前記射出フレームは、前記シリンダが取付けられる前サポートと、前記前サポートの後方に設けられる後サポートと、を有し、
前記直動部は、前記前サポートと前記後サポートの間に設けられ、
前記計量モータは、前記後サポートに取付けられる、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記スプラインは、スプライン軸と、前記スプライン軸との間で回転力を伝達し、且つ前記スプライン軸の軸方向に相対的に移動するスプラインナットと、を含み、
前記スプライン軸は、前記計量モータの回転子に対して固定され、
前記スプラインナットは、前記スクリュと共に進退させられる、請求項1
又は2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記スプラインは、スプライン軸と、前記スプライン軸との間で回転力を伝達し、且つ前記スプライン軸の軸方向に相対的に移動するスプラインナットと、を含み、
前記スプラインナットは、前記計量モータの回転子に対して固定され、
前記スプライン軸は、前記スクリュと共に進退させられる、請求項1
又は2に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記回転伝達機構は、前記スプラインから前記スクリュの延長軸に回転速度を変速して伝達する変速機を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記変速機は、前記スプラインに対して固定される駆動プーリと、前記スクリュの前記延長軸に対して固定される受動プーリと、前記駆動プーリと前記受動プーリに架け渡されるベルトと、を含む、請求項
5に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記直動部を介して前記スクリュを進退させる射出モータと、
前記射出モータの回転運動を前記直動部の直線運動に変換する運動変換機構と、
を備え、
前記直動部は、前記スプラインを回転自在に支持する第1軸受を保持する第1軸受ホルダと、前記スクリュを回転自在に支持する第2軸受を保持する第2軸受ホルダと、を有する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記射出モータと前記スクリュとの間で伝達される荷重を検出する荷重検出器を備え、
前記運動変換機構は、ボールねじを含み、
前記ボールねじは、ボールねじ軸と、前記ボールねじ軸に対して螺合されるボールねじナットと、を含み、
前記ボールねじナットは、前記荷重検出器を介して前記直動部に対して固定される、請求項
7に記載の射出成形機。
【請求項9】
前記射出モータと前記スクリュとの間で伝達される荷重を検出する荷重検出器を備え、
前記運動変換機構は、ボールねじを含み、
前記ボールねじは、ボールねじ軸と、前記ボールねじ軸に対して螺合されるボールねじナットと、を含み、
前記ボールねじナットは、前記荷重検出器を介して前記射出フレームに対して固定される、請求項
7に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の射出成形機の射出装置は、成形材料を加熱するシリンダと、シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、スクリュを回転させる計量モータと、スクリュを進退させる射出モータと、シリンダが固定される射出フレームと、を備える。計量モータ及び射出モータは、射出フレームに対して固定される。それゆえ、射出モータがスクリュを進退させる際に、射出モータによって進退させる駆動対象に計量モータが含まれていない。従って、射出モータの駆動対象のイナーシャが小さく、スクリュの加減速が速い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の計量モータの回転子は、中空軸を含む。その中空軸の内部には、計量モータの回転力をスクリュに伝達すると共に、計量モータの回転子に対するスクリュの進退を許容する機構が設けられる。
【0005】
従来、計量モータの中空軸の内部に多数の部品が詰め込まれており、各部品へのアクセスが困難であった。また、従来、中空軸の内径が大きく、計量モータが大型化してしまい、計量モータのコストが高かった。
【0006】
本発明の一態様は、射出装置の部品へのアクセスを改善し、計量モータのコストを低減する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る射出成形機は、成形材料を加熱するシリンダと、前記シリンダの内部に回転自在に且つ進退自在に設けられるスクリュと、前記スクリュを回転させる計量モータと、前記計量モータの回転力を前記スクリュに伝達し、且つ前記計量モータに対する前記スクリュの進退を許容する回転伝達機構と、前記シリンダが固定される射出フレームと、前記射出フレームに対して進退自在な直動部と、を備える。前記スクリュは、前記直動部と共に進退させられる。前記計量モータは、前記直動部を基準として前記シリンダとは反対側で、前記射出フレームに対して固定される。前記回転伝達機構は、スプラインを含む。前記スクリュの回転中心線と、前記スプラインの回転中心線とは、平行にずれている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、スクリュの回転中心線とスプラインの回転中心線とを平行にずらすことで、スクリュの回転中心線と同一直線上に配置される部品の数を低減でき、各部品へのアクセスを改善できる。また、スクリュの回転中心線とスプラインの回転中心線とを平行にずらすことで、計量モータの回転子の内部に多数の部品を詰め込まずに済み、計量モータを小型化でき、計量モータのコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る射出装置の充填開始時の状態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る射出装置の充填完了時の状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1変形例に係る射出装置の充填開始時の状態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第1変形例に係る射出装置の充填完了時の状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第2変形例に係る射出装置の充填開始時の状態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第2変形例に係る射出装置の充填完了時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0011】
(射出成形機)
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸方向負側を操作側と呼び、Y軸方向正側を反操作側と呼ぶ。
【0012】
図1~
図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0013】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0014】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。
【0015】
型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる移動機構102と、を有する。
【0016】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0017】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0018】
移動機構102は、固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開を行う。移動機構102は、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0019】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0020】
尚、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0021】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0022】
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0023】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0024】
尚、トグル機構150の構成は、
図1および
図2に示す構成に限定されない。例えば
図1および
図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0025】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0026】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0027】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0028】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0029】
尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0030】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0031】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(
図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0032】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0033】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0034】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0035】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0036】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0037】
尚、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0038】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0039】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0040】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0041】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0042】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に従動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の従動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0043】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。尚、複数の型厚調整機構が組合わせて用いられてもよい。
【0044】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0045】
型締装置100は、金型装置800の温度を調節する金型温調器を有してもよい。金型装置800は、その内部に、温調媒体の流路を有する。金型温調器は、金型装置800の流路に供給する温調媒体の温度を調節することで、金型装置800の温度を調節する。
【0046】
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0047】
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動部として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0048】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0049】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0050】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120の貫通穴に進退自在に配置される。エジェクタロッド210の前端部は、可動金型820のエジェクタプレート826と接触する。エジェクタロッド210の前端部は、エジェクタプレート826と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0051】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0052】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、エジェクタプレート826を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、エジェクタプレート826を元の待機位置まで後退させる。
【0053】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0054】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0055】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0056】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0057】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0058】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0059】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0060】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0061】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0062】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0063】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0064】
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0065】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0066】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0067】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0068】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0069】
尚、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800の内部に設置される。
【0070】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0071】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0072】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0073】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0074】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0075】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0076】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。スクリュ330の圧力が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、スクリュ330の圧力が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、スクリュ330の圧力が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0077】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0078】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0079】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0080】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0081】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0082】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0083】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0084】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0085】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0086】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0087】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0088】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0089】
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0090】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、
図1~
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0091】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0092】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の完了は型開工程の開始と一致する。
【0093】
尚、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0094】
尚、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0095】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0096】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0097】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。また、タッチパネル770の画面には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0098】
尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750および表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。
【0099】
(射出装置の詳細)
図3は、一実施形態に係る射出装置の充填開始時の状態を示す断面図である。
図4は、一実施形態に係る射出装置の充填完了時の状態を示す断面図である。上記の通り、射出装置300の説明では、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0100】
射出装置300は、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の内部に回転自在に且つ進退自在に設けられるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350(
図1及び
図2参照)と、スクリュ330と射出モータ350の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、計量モータ340の回転力(トルク)をスクリュ330に伝達し、且つ計量モータ340に対するスクリュ330の進退を許容する回転伝達機構370と、を備える。
【0101】
射出装置300は、シリンダ310が固定される射出フレーム303を備える。射出フレーム303は、例えば、シリンダ310が取付けられる前サポート304と、前サポート304の後方に設けられる後サポート305と、前サポート304と後サポート305を支持する基台306と、を含む。前サポート304と後サポート305は、基台306の上に固定される。基台306は、スライドベース301(
図1及び
図2参照)に対して固定される。基台306は、スライドベース301の一部であってもよい。
【0102】
計量モータ340は、射出フレーム303に対して固定される。計量モータ340は、
図3及び
図4では後サポート305に取付けられるが、前サポート304又は基台306に取付けられてもよい。また、図示しないが、射出モータ350も、射出フレーム303に対して固定される。射出モータ350は、例えば基台306に取付けられる。
【0103】
計量モータ340は、上記の通り、射出フレーム303に対して固定される。それゆえ、射出モータ350がスクリュ330を進退させる際に、射出モータ350によって進退させる駆動対象に計量モータ340が含まれていない。従って、射出モータ350の駆動対象のイナーシャが小さく、スクリュ330の加減速が速い。
【0104】
回転伝達機構370は、計量モータ340の回転力をスクリュ330に伝達し、且つ計量モータ340に対するスクリュ330の進退を許容する。具体的には、回転伝達機構370は、スプライン371を含む。スプライン371は、スプライン軸372と、スプライン軸372との間で回転力を伝達し、且つスプライン軸372の軸方向に相対的に移動するスプラインナット373と、を含む。スプライン軸372の外周に形成される外歯と、スプラインナット373の内周に形成される内歯とが噛み合わされる。スプライン軸372と、スプラインナット373との間には、ボール又はローラが介在してもよい。
【0105】
例えば、
図3及び
図4に示すように、スプライン軸372は計量モータ340の回転子に対して固定され、スプラインナット373はスクリュ330と共に進退させられる。スプライン371によって、計量モータ340の回転力をスクリュ330に伝達でき、且つ計量モータ340を固定した状態でスクリュ330を進退できる。
【0106】
スクリュ330の回転中心線R1と、スプライン371の回転中心線R2とは、平行にずれている。つまり、回転中心線R1、R2は、平行であって、各々の軸方向に直交する方向にずれている。例えば、回転中心線R1、R2は水平であって、回転中心線R2は回転中心線R1の上方にシフトしている。
【0107】
スクリュ330の回転中心線R1と、スプライン371の回転中心線R2とを平行にずらすことで、スクリュ330の回転中心線R1と同一直線上に配置される部品の数を低減でき、各部品へのアクセスを改善できる。また、スクリュ330の回転中心線R1と、スプライン371の回転中心線R2とを平行にずらすことで、計量モータ340の回転子の内部に多数の部品を詰め込まずに済み、計量モータ340を小型化でき、計量モータ340のコストを低減できる。更に、スクリュ330の回転中心線R1と、スプライン371の回転中心線R2とを平行にずらすことで、後述する変速機374を設置できる。
【0108】
回転伝達機構370は、スプライン371からスクリュ330の延長軸333に回転速度を変速して伝達する変速機374を含む。変速機374は、例えば減速機であって、スプライン371からスクリュ330の延長軸333に回転速度を減速して伝達する。減速機の減速比に比例した回転力(トルク)を得ることができ、計量モータ340を小型化できる。
【0109】
変速機374は、例えば、スプライン371に対して固定される駆動プーリ375と、スクリュ330の延長軸333に対して固定される受動プーリ376と、駆動プーリ375と受動プーリ376に架け渡されるベルト377と、を含む。駆動プーリ375は、例えばスプライン軸372に対して固定される。ベルト377は、例えば無端ベルトである。変速機374が減速機である場合、受動プーリ376の半径は駆動プーリ375の半径よりも大きい。受動プーリ376の半径を駆動プーリ375の半径で除した値が減速比である。
【0110】
変速機374は、図示しないが、スプライン371に対して固定される駆動ギヤと、スクリュ330の延長軸333に対して固定される受動ギヤと、を含んでもよい。駆動ギヤと受動ギヤとは、噛み合わされ、回転力を伝達する。変速機374が減速機である場合、受動ギヤの半径は駆動ギヤの半径よりも大きい。受動ギヤの半径を駆動ギヤの半径で除した値が減速比である。駆動ギヤと受動ギヤの間に、中間ギヤが設けられてもよい。
【0111】
射出装置300は、例えば、射出フレーム303に対して進退自在な直動部380と、直動部380を介してスクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350の回転運動を直動部380の直線運動に変換する運動変換機構390と、を備えてもよい。
【0112】
直動部380は、例えば、前サポート304と後サポート305の間に設けられる。直動部380は、基台306の上に固定されるガイドレール308に沿ってX軸方向に進退させられる。計量モータ340の回転力によって直動部380が回転しないように、直動部380の回転をガイドレール308が規制する。直動部380は、例えば、ガイドレール308に沿ってX軸方向に進退させられるスライダ381を有する。
【0113】
なお、図示しないが、直動部380は、前サポート304と後サポート305の間に架け渡されるガイドバーに沿ってX軸方向に進退させられてもよい。この場合も、計量モータ340の回転力によって直動部380が回転しないように、直動部380の回転をガイドバーが規制する。
【0114】
直動部380は、スプライン371を回転自在に支持する第1軸受383を保持する第1軸受ホルダ384と、スクリュ330を回転自在に支持する第2軸受385を保持する第2軸受ホルダ386と、を有する。第1軸受383によって、スプライン371から直動部380への回転力の伝達を防止できる。また、第2軸受385によって、スクリュ330から直動部380への回転力の伝達を防止できる。更に、第1軸受383と第2軸受385を別々に設けることで、スプライン371とスクリュ330で回転速度に差を付けることができる。
【0115】
第1軸受383は、例えば、スプラインナット373を回転自在に支持する。第1軸受383は、例えば、ベルト377を挟んでスプラインナット373の軸方向両側(前後両側)に設けられる。第1軸受383がベルト377の片側のみに設けられる場合に比べて、ベルト377の張力によるスプラインナット373の傾きを抑制できる。
【0116】
第1軸受ホルダ384は、ベルト377の前方で第1軸受383を保持する前ホルダ384aと、ベルト377の後方で第1軸受383を保持する後ホルダ384bと、前ホルダ384aと後ホルダ384bを連結する連結部384cと、を含む。なお、第1軸受383がベルト377の片側のみに設けられる場合、第1軸受ホルダ384は前ホルダ384aと後ホルダ384bのいずれか一方のみを含んでもよい。
【0117】
第2軸受385は、例えば、スクリュ330の延長軸333を回転自在に支持することで、スクリュ330を回転自在に支持する。第2軸受385は、延長軸333に沿って間隔をおいて複数設けられてもよい。隣り合う第2軸受385の間には、第2軸受385の内輪を押さえる内輪用スペーサ336が設けられる。内輪用スペーサ336は、延長軸333の外周に固定される。
【0118】
スクリュ330の延長軸333は、例えば、スクリュ330の後端が取付けられる取付部334と、第2軸受385によって回転自在に支持される回転部335と、を含む。取付部334には、スクリュ330だけではなく、受動プーリ376又は受動ギヤが取付けられてもよい。回転部335は、例えば中空軸である。回転部335が中空軸であれば、回転部335の内部に、
図3に示すように、運動変換機構390のボールねじ軸392の前端部を収容できる。例えば、回転部335の後退時に、回転部335の内部に、ボールねじ軸392の前端部が挿入されてもよい。回転部335が中実軸である場合に比べて、ボールねじナット393と回転部335との間隔を短縮でき、射出装置300のX軸方向寸法を短縮できる。
【0119】
第2軸受ホルダ386は、スライダ381に対して固定される。第2軸受ホルダ386は、スクリュ330の延長軸333が挿入される挿入穴386aを含む。挿入穴386aには、延長軸333の回転部335が配置される。回転部335は、荷重検出器360と干渉しないように、挿入穴386aの内部に配置される。
【0120】
運動変換機構390は、例えばボールねじ391を含む。ボールねじ391は、ボールねじ軸392と、ボールねじ軸392に対して螺合されるボールねじナット393と、を含む。ボールねじナット393は、荷重検出器360を介して直動部380に対して固定される。
【0121】
一方、ボールねじ軸392は、ボールねじ軸392を回転自在に支持する軸受394を介して射出フレーム303に取付けられる。例えば、軸受394の外輪は射出フレーム303の後サポート305に固定され、軸受394の内輪はボールねじ軸392の溝395に嵌め込まれる。
【0122】
ボールねじ軸392は、射出フレーム303の後サポート305よりも後方に突出している。ボールねじ軸392の後端部には、例えば、射出モータ350の回転力をボールねじ391に伝達する回転伝達機構396が設けられる。
【0123】
回転伝達機構396は、例えば、射出モータ350の出力軸に固定される駆動プーリと、ボールねじ軸392の後端部に固定される受動プーリ397と、駆動プーリと受動プーリ397とに架け渡されるベルトと、を含む。回転伝達機構396は、駆動プーリ、受動プーリ397及びベルトの代わりに、駆動ギヤ及び受動ギヤを含んでもよい。
【0124】
なお、回転伝達機構396はなくてもよく、射出モータ350の出力軸とボールねじ軸392とは同一の直線R1上に配置され、直結されてもよい。
【0125】
制御装置700が射出モータ350を作動させると、ボールねじ軸392が回転させられ、ボールねじナット393がX軸方向に進退させられる。その結果、直動部380及びスクリュ330がX軸方向に進退させられる。
【0126】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。荷重検出器360は、例えば、ボールねじナット393と直動部380の間に設けられる。荷重検出器360を設けることで、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などを検出できる。
【0127】
荷重検出器360は、例えばリング型であり、外周リング361と、外周リング361の径方向内側に配置される内周リング362と、外周リング361と内周リング362をつなぐ起歪体363と、を含む。荷重検出器360は、起歪体363のせん断歪みを検出し、せん断歪みの大きさに応じた電気信号を制御装置700に送信する。
【0128】
荷重検出器360の外周リング361は、例えば直動部380の第2軸受ホルダ386の後端面に固定される。一方、荷重検出器360の内周リング362は、ボールねじナット393の前端面に固定される。なお、荷重検出器360は、リング型には限定されず、例えば圧縮型などであってもよい。
【0129】
次に、
図5及び
図6を参照して、第1変形例に係る射出装置300について説明する。
図5は、第1変形例に係る射出装置の充填開始時の状態を示す断面図である。
図6は、第1変形例に係る射出装置の充填完了時の状態を示す断面図である。以下、第1変形例と上記実施形態の相違点について主に説明する。
【0130】
図5及び
図6に示すように、スプラインナット373は計量モータ340の回転子に対して固定され、スプライン軸372はスクリュ330と共に進退させられてもよい。この場合も、スプライン371によって、計量モータ340の回転力をスクリュ330に伝達でき、且つ計量モータ340を固定した状態でスクリュ330を進退できる。
【0131】
本変形例においても、上記実施形態と同様に、スクリュ330の回転中心線R1と、スプライン371の回転中心線R2とは、平行にずれている。従って、スクリュ330の回転中心線R1と同一直線上に配置される部品の数を低減でき、各部品へのアクセスを改善できる。また、計量モータ340の回転子の内部に多数の部品を詰め込まずに済み、計量モータ340を小型化でき、計量モータ340のコストを低減できる。更に、変速機374を設置できる。
【0132】
回転伝達機構370は、スプライン371からスクリュ330の延長軸333に回転速度を変速して伝達する変速機374を含む。変速機374の駆動プーリ375は、上記実施形態ではスプラインナット373に対して固定されるが、本変形例ではスプライン軸372に対して固定される。この場合も、スプライン371からスクリュ330の延長軸333に回転速度を変速して伝達できる。
【0133】
第1軸受383は、上記実施形態ではスプラインナット373を回転自在に支持するが、本変形例ではスプライン軸372を回転自在に支持する。第1軸受383は、例えば、ベルト377を挟んでスプライン軸372の軸方向両側(前後両側)に設けられる。第1軸受383がベルト377の片側のみに設けられる場合に比べて、ベルト377の張力によるスプラインナット373の傾きを抑制できる。
【0134】
次に、
図7及び
図8を参照して、第2変形例に係る射出装置300について説明する。
図7は、第2変形例に係る射出装置の充填開始時の状態を示す断面図である。
図8は、第2変形例に係る射出装置の充填完了時の状態を示す断面図である。以下、第2変形例と上記実施形態の相違点について主に説明する。
【0135】
運動変換機構390は、例えばボールねじ391を含む。ボールねじ391は、ボールねじ軸392と、ボールねじ軸392に対して螺合されるボールねじナット393と、を含む。ボールねじナット393は、例えば、荷重検出器360を介して射出フレーム303の後サポート305に対して固定される。
【0136】
ボールねじ軸392の後端部は、例えば射出モータ350の回転子に対してスプライン結合される。ボールねじ軸392の回転中心線と、射出モータ350の回転中心線とは、同一の直線R1上に配置される。射出モータ350は、例えば射出フレーム303の後サポート305に固定される。
【0137】
なお、ボールねじ軸392の回転中心線と、射出モータ350の回転中心線とは、本変形例では同一の直線R1上に配置されるが、平行にずらして配置されてもよい。後者の場合、射出モータ350の出力軸とスプラインナットとがプーリ及びベルトなどで連結され、スプラインナットと、ボールねじ軸392の後端に設けられるスプライン軸とが嵌合される。
【0138】
一方、ボールねじ軸392の前端部は、その前端部を回転自在に支持する軸受394を介して回転部335に取付けられる。回転部335は、例えば中空軸である。軸受394の外輪は回転部335に固定され、軸受394の内輪はボールねじ軸392の溝395に嵌め込まれる。
【0139】
制御装置700が射出モータ350を作動させると、ボールねじ軸392が回転させられながら進退させられる。その結果、直動部380及びスクリュ330が進退させられる。
【0140】
荷重検出器360は、例えば、射出フレーム303の後サポート305の前方に設けられる。この場合、荷重検出器360の外周リング361は射出フレーム303の後サポート305の前端面に固定され、荷重検出器360の内周リング362はボールねじナット393の後端面に固定される。
【0141】
なお、荷重検出器360は、射出フレーム303の後サポート305の後方に設けられてもよい。この場合、荷重検出器360の外周リング361は射出フレーム303の後サポート305の後端面に固定され、荷重検出器360の内周リング362はボールねじナット393の後端面に固定される。また、この場合、射出モータ350は、荷重検出器360の外周リング361を介して後サポート305に固定される。
【0142】
以上、本発明に係る射出成形機の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0143】
10 射出成形機
303 射出フレーム
310 シリンダ
330 スクリュ
340 計量モータ
370 回転伝達機構
371 スプライン