(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】列車情報管理装置
(51)【国際特許分類】
B61L 25/04 20060101AFI20240805BHJP
B61L 27/40 20220101ALI20240805BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20240805BHJP
【FI】
B61L25/04
B61L27/40
G06Q50/40
(21)【出願番号】P 2021038222
(22)【出願日】2021-03-10
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】小澤 優太
(72)【発明者】
【氏名】阿邊 優一
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/225181(WO,A1)
【文献】特開2013-23104(JP,A)
【文献】特開2001-287645(JP,A)
【文献】特開2008-104312(JP,A)
【文献】特開2020-175788(JP,A)
【文献】国際公開第2004/024531(WO,A1)
【文献】特開昭56-166702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00-99/00
G06Q 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運行中の車両に関する第1所定データの第1累積情報を少なくとも含む車両データを収集するデータ収集装置の収集日時を取得する収集日時取得部と、
前記第1累積情報を取得する累積情報取得部と、
前記収集日時が隣接する2つの前記車両データ間における前記第1累積情報の変化量に基づいて、2つの前記車両データ間における前記データ収集装置の異常に基づくデータ欠落の有無を判定する欠落判定部と、を備える、列車情報管理装置。
【請求項2】
前記欠落判定部は、前記収集日時が隣接する2つの前記車両データ間における前記収集日時の収集間隔、および、前記第1累積情報の変化量に基づいて、前記データ欠落の有無を判定する、請求項1に記載の列車情報管理装置。
【請求項3】
前記収集間隔が所定時間間隔よりも大きいか否かを判定する収集間隔判定部と、
前記所定時間間隔よりも大きい前記収集間隔に対応する2つの前記車両データ間における前記第1累積情報の変化量を計算する変化量計算部と、をさらに備え、
前記欠落判定部は、前記変化量計算部が計算した前記第1累積情報の変化量と所定値との比較に基づいて、前記データ欠落の有無を判定する、請求項2に記載の列車情報管理装置。
【請求項4】
前記欠落判定部は、前記収集間隔が所定時間間隔以下である場合、前記データ欠落が無いと判定する、請求項2または請求項3に記載の列車情報管理装置。
【請求項5】
前記欠落判定部は、前記収集間隔が所定時間間隔よりも大きく、かつ、前記第1累積情報の変化量が所定値以下である場合、前記データ欠落が無いと判定する、請求項2または請求項3に記載の列車情報管理装置。
【請求項6】
前記欠落判定部は、前記収集間隔が所定時間間隔よりも大きく、かつ、前記第1累積情報の変化量が所定値よりも大きい場合、前記データ欠落が有ると判定する、請求項2または請求項3に記載の列車情報管理装置。
【請求項7】
前記欠落判定部の判定結果、並びに、前記データ欠落が有ると判定された2つの前記車両データ間における前記第1累積情報の変化量、および、前記収集日時の収集間隔の少なくとも1つを含む欠落情報を、前記車両データに追加する情報追加部をさらに備える、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の列車情報管理装置。
【請求項8】
前記欠落判定部の判定結果、並びに、前記データ欠落が有ると判定された2つの前記車両データ間における前記第1累積情報の変化量、および、前記収集日時の収集間隔の少なくとも1つを含む欠落情報を、前記車両データとともに表示部に表示させるように、出力する出力部をさらに備える、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の列車情報管理装置。
【請求項9】
前記データ収集装置は、前記第1所定データとは異なる第2所定データの第2累積情報を含む前記車両データを収集し、
前記出力部は、前記データ欠落が有ると判定された2つの前記車両データ間における前記第2累積情報の変化量を含む前記欠落情報を、前記車両データとともに表示部に表示させるように出力する、請求項8に記載の列車情報管理装置。
【請求項10】
前記第1累積情報は、前記車両に搭載される空調装置の空調電源状態累積情報であり、
前記第2累積情報は、前記空調装置のコンプレッサの動作回数の累積値である、請求項9に記載の列車情報管理装置。
【請求項11】
前記第1累積情報は、前記車両の速度の累積値、または、前記車両の走行距離である、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の列車情報管理装置。
【請求項12】
前記第1累積情報は、前記車両に搭載される空調装置の空調電源状態累積情報、または、前記空調装置のコンプレッサの動作回数の累積値である、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の列車情報管理装置。
【請求項13】
前記データ収集装置は、前記車両に配置され、
前記列車情報管理装置は、地上側に配置される、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の列車情報管理装置。
【請求項14】
前記データ収集装置および前記列車情報管理装置は、前記車両に配置される、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の列車情報管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、列車情報管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
列車から収集したデータ及びその処理データ(以下、車両データ)は、列車運転状態の監視および機器故障の要因分析等で活用されている。列車の制御装置および車両機器に搭載された様々なセンサーから、制御装置および車両機器の動作情報、並びに、センサー計測値など様々な種類の車両データを入手することができるようになっている。近年では一般にIoT(Internet of Things)技術が活用され、車両データは列車の車上からサーバ等の地上へ送信される。サーバに蓄積された膨大なデータを用いることで、長期間のデータ変動の可視化、および、他の編成との比較による分析が可能となる。
【0003】
しかしながら、列車の車両データが正常に収集できているかどうかは、収集システムの稼働状態に依存している。例えば、収集システムの稼働が停止した場合、データが部分的に不連続になってしてしまう可能性がある。すなわち、データの収集時間間隔が大きくなる可能性がある。これは、収集システムの停止時から、再稼働時まで収集時刻が飛んでしまうためである。このような収集時刻の飛びが発生した場合、収集システムの正常な稼働状態の下でデータ収集が停止したか、非正常な稼働状態の下でデータ収集が停止したことによるデータの欠落が発生したかどうかを、収集した車両データから判断することが困難であった。したがって、データの欠落への対処が不十分になってしまう可能性がある。例えば、可視化や分析で収集データを集計するような場合にデータが欠落していると、計算値を正しく算出することができなくなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/225181号
【文献】特開2016-46692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
データの欠落に対してより的確に対処することができる列車情報管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による列車情報管理装置は、収集日時取得部と、累積情報取得部と、欠落判定部と、を備える。収集日時取得部は、運行中の車両に関する第1所定データの第1累積情報を少なくとも含む車両データを収集するデータ収集装置の収集日時を取得する。累積情報取得部は、第1累積情報を取得する。欠落判定部は、収集日時が隣接する2つの車両データ間における第1累積情報の変化量に基づいて、2つの車両データ間におけるデータ収集装置の異常に基づくデータ欠落の有無を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る列車情報管理装置を含む列車情報システムの全体構成の一例を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態に係る車両データの一例を示す図。
【
図3】第1の実施形態に係る走行欠落情報計算部の構成の一例を示すブロック図。
【
図4】第1の実施形態に係る列車情報管理装置の動作の一例を示すフロー図。
【
図5】第1の実施形態に係る走行欠落情報計算部の動作の一例を示すフロー図。
【
図6】第1の実施形態に係る車両データおよび走行欠落情報に含まれるデータの一例を示す図。
【
図7】第1の実施形態に係る車両の稼働状態と、データ収集装置の稼働状態と、速度累積値と、の関係を示す図。
【
図8】
図7に対応するデータ収集間隔と収集データとの関係の一例を示す図。
【
図9】第1の実施形態に係る列車情報表示装置の動作の一例を示すフロー図。
【
図10】第1の実施形態に係る列車表示装置の表示の一例を示す図。
【
図11】第2の実施形態に係る列車情報管理装置を含む列車情報システムの全体構成の一例を示すブロック図。
【
図12】第2の実施形態に係る空調欠落情報計算部の構成の一例を示すブロック図。
【
図13】第2の実施形態に係る空調欠落情報計算部の動作の一例を示すフロー図。
【
図14】第2の実施形態に係る車両データおよび空調欠落情報に含まれるデータの一例を示す図。
【
図15】第2の実施形態に係る車両の稼働状態と、データ収集装置の稼働状態と、空調CP動作回数累積値と、の関係を示す図。
【
図16】第2の実施形態に係る列車表示装置の表示の一例を示す図。
【
図17】第3の実施形態に係る列車情報管理装置を含む列車情報システムの全体構成の一例を示すブロック図。
【
図18】第4の実施形態に係る列車情報管理装置を含む列車情報システムの全体構成の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る列車情報管理装置300を含む列車情報システム1の全体構成の一例を示すブロック図である。
図1に示す列車情報システム1は、運用されている車両100の機器情報と速度累積情報とを含む車両データから、事前の処理を適用した情報と、走行時の欠落情報を追加した分析データと、を地上のサーバ等に蓄積し、走行距離の集計結果を列車情報表示装置400に出力するものである。
【0010】
列車情報システム1は、車両100と、列車情報蓄積装置200と、列車情報管理装置300と、列車情報表示装置400と、を備える。
【0011】
列車情報蓄積装置200は、車両100から送信された車両データの蓄積、車両データに基づく分析データの作成、および、その他装置への分析データの送信を行う。
【0012】
列車情報管理装置300は、車両データの欠落情報を分析する。第1の実施形態では、列車情報管理装置300は、地上側に配置される。なお、
図1に示す列車情報管理装置300は、列車情報蓄積装置200内に配置されているが、列車情報蓄積装置200の外部に配置されていてもよい。
【0013】
列車情報表示装置400は、列車情報管理装置300で計算された分析データをもとに、目的に応じて計算した可視化データを表示する。
【0014】
次に、車両100の内部構成について説明する。
【0015】
車両100は、車両データ取得部101と、車両データ送信部102と、を備える。
【0016】
車両データ取得部101は、車上側に配置され、車両データを逐次収集するデータ収集装置として機能する。また、車両データ取得部101は、例えば、列車速度および走行駅間などの走行情報、制御情報、機器の動作情報、並びに、機器のセンサー計測値を取得する。
【0017】
車両データ送信部102は、地上のサーバに車両データを送信する。
【0018】
図2は、第1の実施形態に係る車両データの一例を示す図である。
【0019】
1列目の収集日時は車両データを収集した日時情報(タイムスタンプ)であり、2020年6月1日14時30分から約1秒間隔で収集している様子を示している。
図2に示す例では、収集日時は年月日および時刻を含み、収集日時の時刻はミリ秒単位まで示す。2列目以降は各収集日時に対応した車両の情報である。5列目の速度累積値は列車速度をもとに計算された速度累積情報であり、車上で計算および保持されている走行距離に相当する情報である。ここでは、列車速度の小数点以下を切り上げた値を速度累積値に加算した情報としている。
【0020】
すなわち、車両データは、運行中の車両100に関する第1所定データの第1累積情報を少なくとも含む。第1所定データは、例えば、車両100の速度である。第1累積情報は、車両100の列車速度の累積値、または、車両100の走行距離である。
【0021】
次に、
図1に示す列車情報蓄積装置200の内部構成について説明する。
【0022】
列車情報蓄積装置200は、車両データ蓄積部201と、追加データ計算部202と、分析データ作成部203と、分析データ蓄積部204と、列車情報管理装置300と、を備える。
【0023】
車両データ蓄積部201は、車上から送信された車両データを蓄積する。
【0024】
追加データ計算部202は、蓄積された車両データをもとに算出または変換された追加データを計算する。追加データの例としては、鉄道のアクセルに相当する加速段数(ノッチ)情報のなどの、特定のルールまたは仕様に基づいた変換を適用したデータ等があげられる。このノッチ情報は、列車の制御仕様で定義された条件に基づいて、車両データのノッチに関する信号の組み合わせから変換することで任意のノッチ情報を計算することができる。追加データは、蓄積された車両データを可視化、分析する際に頻繁に行われる処理を事前に計算しておくことでデータ活用の効率化を図り、データを扱いやすくすることが目的である。
【0025】
分析データ作成部203は、追加データ計算部202と列車情報管理装置300の出力である車両データを結合し分析データを作成する。
【0026】
なお、追加データ計算部202および分析データ作成部203は、車両データ蓄積部に蓄積される生データの前処理、および、外れ値等の不要な情報の削除を行ってもよい。
【0027】
分析データ蓄積部204は、分析データ作成部203で作成した分析データを蓄積する。なお、分析データ蓄積部204は、蓄積された分析データを列車情報管理装置300へ送信する分析データ送信部としても機能する。車両データ蓄積部201および分析データ蓄積部204は、送信された車両データおよび分析データのそれぞれを任意の形式で保持するものである。本実施形態では、データ形式はCSV(Comma Separated Values)データなどのファイルとしているが、バイナリデータまたはデータベース等で管理されたものでも良い。
【0028】
次に、列車情報管理装置300の内部構成について説明する。
【0029】
列車情報管理装置300は、収集日時取得部301と、速度累積情報取得部302と、走行欠落情報計算部303と、を備える。
【0030】
収集日時取得部301は、車両データの収集日時に関する情報を取得する。すなわち、収集日時取得部301は、データ収集装置(車両データ取得部101)が車両データを収集した収集日時を取得する。
【0031】
速度累積情報取得部302は、第1累積情報を取得する。すなわち、速度累積情報取得部302は、車両の車軸の回転から計測された列車速度の情報を累積した情報を取得する。この速度累積情報は、速度から計算された走行距離と同等の情報であり、初期化されることなく累積していく値であれば絶対的な走行距離のデータでも良い。
【0032】
走行欠落情報計算部303は、収集日時および速度累積情報から車両データの欠落情報を分析する。
【0033】
図3は、第1の実施形態に係る走行欠落情報計算部303の構成の一例を示すブロック図である。
【0034】
走行欠落情報計算部303は、収集間隔計算部304と、収集間隔判定部305と、欠落変化量計算部306と、欠落変化量判定部315と、走行欠落情報追加部307と、車両データ出力部308と、を備える。
【0035】
収集間隔計算部304は、入力された収集日時を用いて、現在時刻と1時刻前との差分によりデータの収集間隔を計算する。すなわち、収集間隔計算部304は、収集日時が隣接する2つの車両データ間におけるタイムスタンプの差を計算することにより、収集間隔を計算する。
【0036】
収集間隔判定部305は、時系列データにおける不連続な収集日時の飛びの有無を判定する。「収集日時の飛び」は、データ収集装置の状態(正常または異常)によらず、データ収集装置が稼働していない期間により生じる。収集間隔判定部305は、収集間隔計算部304で計算した収集間隔が閾値(所定時間間隔)を超えるかどうかを判定する。この閾値は任意に設定可能な時間幅であり、収集間隔が正常かどうかを判定するための値である。最も単純な例としては、システムで定義されたデータの収集間隔を閾値とする方法があげられる。たとえば車両データを1秒毎に収集するシステムであった場合は、収集間隔が1秒以内であれば収集日時の飛びがないため欠落のような異常が発生していないと判断することができる。反対に1秒を超える場合は、何等かの影響で収集間隔が大きくなったと判断することができる。実際のデータ収集間隔はデータ収集装置の動作状態や同期の影響でばらつきを持つことが多く、必ず一定値になるとは限らない。したがって、閾値は規定の収集間隔に一定の余裕を持たせた値とすることで、収集間隔が何らかの影響で大きくなったと誤って判定することを低減することができる。
【0037】
欠落変化量計算部(変化量計算部)306は、収集間隔判定部305で収集間隔が大きくなっていると判定した際に、速度累積情報(走行距離に相当)の差を計算し、その値の変化量を計算する。すなわち、欠落変化量計算部306は、所定時間間隔よりも大きい収集間隔に対応する2つの車両データ間における第1累積情報の変化量を計算する。この変化量は、データ収集装置が正常であればほぼゼロになる。しかし、走行中に何らかの影響でデータ収集装置に問題が生じてデータが欠落した場合、データ欠落後の速度累積情報はデータ欠落前の速度累積情報を大きく超える値となる。従って、変化量は大きな値になる。
【0038】
欠落変化量判定部(欠落判定部)315は、収集日時が隣接する2つの車両データ間における第1累積情報の変化量に基づいて、2つの車両データ間におけるデータ収集装置の異常に基づくデータ欠落の有無を判定する。「欠落(データ欠落)」は、データ収集装置の異常により、本来収集すべき車両データが収集できていないことである。より詳細には、欠落変化量判定部315は、収集日時が隣接する2つの車両データ間における収集日時の収集間隔、および、第1累積情報の変化量に基づいて、データ欠落の有無を判定する。また、欠落変化量判定部315は、欠落変化量計算部306が計算した第1累積情報の変化量と所定値との比較に基づいて、データ欠落の有無を判定する。なお、欠落変化量判定部315による判定の詳細については、
図5を参照して、後で説明する。
【0039】
走行欠落情報追加部(情報追加部)307は、入力された車両データに、収集間隔判定部305と欠落変化量計算部306で計算した情報(欠落情報)を加えて、新たな車両データを作成する。
【0040】
車両データ出力部308は、欠落変化量判定部315の判定結果、並びに、データ欠落が有ると判定された2つの車両データ間における第1累積情報の変化量、および、収集日時の収集間隔の少なくとも1つを含む欠落情報を、車両データとともに列車情報表示装置400に表示させるように、出力する。より詳細には、車両データ出力部308は、欠落情報が追加された車両データを出力する。
【0041】
次に、
図1に示す列車情報表示装置400の内部構成について説明する。
【0042】
列車情報表示装置400は、分析データ取得部401と、可視化データ計算部402と、可視化データ表示部403と、を備える。
【0043】
分析データ取得部401は、可視化を行うパラメータ(期間、編成、車両、機器および可視化方法など)をもとに必要な分析データを取得する。
【0044】
可視化データ計算部402は、取得した分析データから可視化方法に応じて統計量等を計算する。
【0045】
可視化データ表示部403は、計算された可視化データをグラフ等で画面に出力する。
【0046】
次に、列車情報管理装置300の処理の流れについて説明する。
【0047】
図4は、第1の実施形態に係る列車情報管理装置300の動作の一例を示すフロー図である。
【0048】
まず、列車情報管理装置300の収集日時取得部301および速度累積情報取得部302は、車両データ蓄積部201に保持された車両データから、それぞれ収集日時および速度累積情報を取得する(S10,S11)。次に、走行欠落情報計算部303は、取得した収集日時と速度累積情報をもとに、走行欠落情報を計算する(S12)。次に、走行欠落情報計算部303は、走行欠落情報を車両データに追加した分析データを出力する(S13)。
【0049】
図5は、第1の実施形態に係る走行欠落情報計算部303の動作の一例を示すフロー図である。
【0050】
まず、収集間隔計算部304および欠落変化量計算部306は、それぞれ収集日時および速度累積情報を取得する(S20、S21)。次に、収集間隔計算部304は、収集日時情報を用いて、データの収集間隔を計算する(S22)。次に、欠落変化量判定部315は、欠落判定値および欠落変化量をゼロに初期化する(S23,S24)。
【0051】
次に、収集間隔判定部305は、収集間隔が閾値より大きいかどうかを判定する(S25)。ここでは閾値を10秒とするが、この値に限らず任意の値に設定されても良い。もし収集間隔が閾値を超えた場合(ステップS25のYes)、欠落変化量計算部306は欠落変化量を計算する(S26)。この欠落変化量は閾値を超えた時の速度累積値と1時刻前の速度累積値との差から計算することができる。この差の値は走行距離に相当する情報である。
【0052】
次に、欠落変化量判定部315は、ステップS26で計算した欠落変化量が所定値より大きいかを判定する(S27)。所定値は、例えば、ゼロである。欠落変化量がゼロより大きい場合(ステップS27のYes)、欠落変化量判定部315は、データ欠落があると判定して、欠落判定値を1とする(S28)。
【0053】
収集間隔が閾値以下である場合(ステップS25のNo)、または、欠落変化量がゼロ以下である場合(ステップS27のNo)、欠落変化量判定部315は、走行中にデータ欠落発生はないと判定する。その後、ステップS29が実行される。次に、走行欠落情報追加部307は、走行欠落情報を車両データに追加する(S29)。走行欠落情報は、例えば、ステップS22で計算した収集間隔、並びに、ステップS23からステップS28で計算した欠落判定値および欠落変化量を含む。
【0054】
図6は、第1の実施形態に係る車両データおよび走行欠落情報に含まれるデータの一例を示す図である。
【0055】
1列目の収集日時から6列目の架線電圧までがもとの車両データ、7列目の収集間隔(s)から9列目の欠落判定値までが走行欠落情報を表している。収集間隔(s)は、データの先頭から1秒前後で計測できているが、途中で約47,355秒(13時間)の間隔が発生しており、同時刻の欠落変化量は12,488、欠落判定値は1となっていることが分かる。6月2日と6月3日の収集時刻に着目すると、6月2日の収集終端時刻は19時27分、6月3日の収集開始時刻は8時36分で、いずれも列車速度が0(m/s)であることから、間隔が空いた前後で列車は停止していることが分かる。一見するとデータ収集は正常な稼働状態のもとで停止したように見えるが、速度累積値の変化量を見ると、この収集間隔の間に12km以上走行していることが分かる。このことから、本来収集されるべき走行中のデータが正常に収集できていなく、データ収集装置が非正常な稼働状態のもとで停止したことを判定することができる。これにより、走行中のデータ欠落の有無を判定するとともに、欠落した期間における走行距離を計算することが可能となる。
【0056】
なお、車両100が或る営業日の運行を終了し、次の営業日に運行再開する等により、データ収集装置が正常な稼働状態の下でデータ収集を停止および再開する場合も、収集間隔は大きくなる。しかし、データ収集の停止から再開までの間における走行距離は小さいため、欠落変化量は小さい。したがって、データの欠落は無いと判定され、欠落判定値はゼロである。
【0057】
次に、車両データ出力部308は、走行欠落情報が追加された車両データを出力する(S30)。以上が、欠落情報計算の処理フローである。
図5のステップS30で出力された車両データが、分析データとして出力される(
図4のステップS13)。
【0058】
次に、
図7および
図8を参照して、累積情報とデータの欠落との関係について説明する。
【0059】
図7は、第1の実施形態に係る車両100の稼働状態と、データ収集装置の稼働状態と、速度累積値と、の関係を示す図である。
図7の複数のグラフの横軸は時間であり、6月1日から6月4日の範囲を示している。
【0060】
上段のグラフG1は車両の電源ONと電源OFFの状態を時系列で表した図である。期間T1~T3は、車両100の運行中の期間であり、正常時における収集対象の連続データを示している。中段のグラフG2はデータ収集装置ONとOFFの状態を時系列で表した図である。期間T11~T13が収集できた期間を示している。ここで6月2日の途中にデータ収集装置が非正常停止し、その後復帰した影響で、中間のデータが一部欠落していることを表している。この時、非常停止の時刻はta、復帰の時刻はtbである。下段のグラフG3は速度累積値の時系列変化を示した図である。データ収集装置の非正常停止から復帰時までの間である欠落中の累積値の時系列変化が計測できていない。しかし、復帰直後の累積値は、車両側で計測されていることから、欠落期間の走行を含む速度累積値となっている。
【0061】
図8は、
図7に対応するデータ収集間隔と収集データとの関係の一例を示す図である。グラフの横軸は収集データを時系列に並べた時間情報である。上段のグラフG4は、データ収集間隔を示しており、正常時は一定の値(ここでは1秒)に集中して収集できていることを表す。一方で、車両電源のOFFとONのタイミング、及びデータ収集装置の非常停止及び復帰のタイミングでは収集データの時間間隔が大きくなることから、データ欠落を含む期間T11~T13のデータの切り替わるタイミングで、データ収集間隔が閾値を超える大きな値となっていることを表している。この場合、非正常停止の時刻t
aの速度累積値と復帰時の時刻t
bの速度累積の差を取ることで、欠落が発生している間の走行距離を計算し、また、走行中の欠落が発生したかどうかを判定することが可能となる。
【0062】
次に、列車情報表示装置400の処理の流れについて説明する。
【0063】
図9は、第1の実施形態に係る列車情報表示装置400の動作の一例を示すフロー図である。
【0064】
まず、分析データ取得部401は、分析データ蓄積部204から分析データを取得する(S40)。次に、可視化データ計算部402は、取得した分析データを用いて可視化データを計算する(S41)。この可視化データは、たとえば日毎の走行距離の集計値などが相当する。次に、可視化データ表示部403は、可視化データ計算部402で計算した情報をもとに、可視化結果を表やグラフ等で表示する(S42)。
【0065】
図10は、第1の実施形態に係る列車情報表示装置400の表示の一例を示す図である。
図10は、日毎の走行距離を計算した可視化結果の表示例を示す。また、
図10は、
図6における欠落変化量(欠落走行距離)および欠落判定値の日毎の集計結果も示す。
【0066】
可視化結果は、2020年6月1日から6月3日のA編成の走行距離を集計した表と、その集計値の日毎の棒グラフを可視化したものである。集計結果(表)の可視化結果では、2020年6月2日の走行距離143kmに対して欠落判定が1、欠落走行距離が47.36kmと表示されており、車両データに基づいて集計した走行距離は、6月2日にデータの欠落が発生したことを確認することができる。このため、車両データの可視化において列車情報管理装置300で計算した走行欠落情報を連携することで、表示結果の信頼度を測る指標の1つとして扱うことができる。例えば、欠落判定および欠落走行距離の値が大きいほど、信頼度は低くなる。これにより、たとえば走行距離集計をシステムで自動的に計算する際に、欠落の有無を集計値と照らし合わせて確認することができる。
【0067】
以上のように、第1の実施形態の列車情報管理装置300によれば、データ収集日時情報から計算したデータ収集間隔と、車上で計算および保持されている走行距離に相当する速度累積情報の変化量と、を用いることで、地上側で車両データから走行欠落情報を計算し、データ収集装置が非正常な稼働状態のもとで停止したか、正常な稼働状態ものとで停止したかを判定することができる。判定に加えて、非正常な稼働状態のもとでの走行距離を計算することができる。また、車両データの可視化において、走行欠落情報を連携させることで走行距離集計値を、欠落有無の信頼度に相当する指標と合わせて確認することができる。この結果、データの欠落に対してより的確に対処することができる。
【0068】
列車の車両データが正常に収集できているかどうかは、データ収集装置の稼働状態に依存しており、データ収集装置の稼働が停止した場合、データが部分的に不連続になってしまう可能性がある。すなわち、データの収集時間間隔が例外に大きくなる可能性がある。この連続性が失われた要因について、システムの正常な稼働状態の下でデータ収集が停止したか、非正常な稼働状態の下でデータ収集が停止したことによるデータの欠落が発生したかどうかを、収集した車両データから判断することが困難であった。もし、列車情報管理装置300が設けられない場合、例えば、メンテナンス員は、列車情報表示装置400で表示された走行距離の値を信じて、データの記録および保守点検の計画等を行う必要があった。また、可視化や分析で収集データを集計するような場合にデータが欠落していると、計算値を正しく算出することができなくなる問題があった。
【0069】
これに対して、第1の実施形態では、データ収集装置の異常に基づくデータの欠落を検出し、データの信頼度の指標を提示することができる。メンテナンス員は、例えば、データ欠落が判定されて信頼度が低い場合に人手で車両データを調べることで、走行距離等のより正確な計算値を取得することができる。また、列車情報管理装置300は、データ収集装置で収集された車両データから走行欠落情報の計算を行う。したがって、新たに別のデータの取得および分析を行う必要が無く、比較的容易にデータ欠落の有無の判定を行うことができる。
【0070】
なお、第1の実施形態では、データの欠落判定に用いられる累積情報として、列車速度の累積値(走行距離)が用いられる。しかし、これに限られず、データ収集装置が収集するデータのうち、累積的に変化する他のデータが車両データの欠落判定に用いられてもよい。
【0071】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態に係る列車情報管理装置300を含む列車情報システム1の全体構成の一例を示すブロック図である。第2の実施形態は、速度の累積情報に代えて空調動作に関する累積情報が車両データの欠落判定に用いられる点で、第1の実施形態とは異なっている。
【0072】
第2の実施形態に係る車両データ取得部101は、第1累積情報を含む車両データを取得する。また、車両データ取得部101は、第1所定データとは異なる第2所定データの第2累積情報をさらに含む車両データを収集する。第1累積情報はデータ欠落の判定に用いられるのに対して、第2累積情報は、データ欠落の判定には用いられないが、可視化されてメンテナンス等の判断に用いられる。第1累積情報は、例えば、車両100に搭載される空調装置の空調電源状態累積情報である。空調電源状態累積情報は、例えば、空調装置の稼働時間の累積値である。第2累積情報は、例えば、空調装置のコンプレッサの動作回数の累積値である。
【0073】
第2の実施形態に係る列車情報管理装置300は、空調電源状態累積情報取得部309と、空調CP(コンプレッサ)動作回数累積情報取得部310と、空調欠落情報計算部311と、を備える。
【0074】
空調電源状態累積情報取得部309は、列車に搭載されている空調機の電源状態を示す情報(空調電源状態累積情報)を取得する。ここでは、対象の空調機は1台として説明するが、2台以上の空調欠落情報を計算することも可能である。空調電源状態は電源OFFを0、電源ONを1としてデータが取得されているものとする。
【0075】
空調CP動作回数累積情報取得部310は、空調コンプレッサの動作回数の累積値を取得する。
【0076】
空調欠落情報計算部311は、空調電源状態累積情報を用いて、空調機が電源ON時に欠落が発生したかどうかを判定する。
【0077】
図12は、第2の実施形態に係る空調欠落情報計算部311の構成の一例を示すブロック図である。
【0078】
空調欠落情報計算部311は、
図3に示す第1の実施形態に係る走行欠落情報計算部303と比較して、走行欠落情報追加部307に代えて空調欠落情報追加部312を備える。
【0079】
空調欠落情報計算部311は、車両データ蓄積部201から空調の電源状態を累積した空調電源状態累積情報と、空調CPの動作回数の累積値に関する情報と、を取得する。空調電源状態累積情報とCP累積動作回数とは、速度累積値と同様に車両または車両機器側で計算および保持されている情報である。空調欠落情報計算部311は、欠落変化量計算部306で計算した空調データの欠落に関する情報を車両データに追加し、出力する。
【0080】
車両データ出力部308は、欠落変化量計算部306が計算した、空調電源状態累積情報の変化量およびCP累積動作回数の変化量を、欠落情報として出力する。すなわち、車両データ出力部308は、データ欠落が有ると判定された2つの車両データ間における第2累積情報の変化量を含む欠落情報を、車両データとともに列車情報表示装置400に表示させるように出力する。
【0081】
次に、空調欠落情報計算部311の処理フローについて説明する。
【0082】
図13は、第2の実施形態に係る空調欠落情報計算部311の動作の一例を示すフロー図である。
【0083】
まず、収集間隔計算部304は、収集時刻を取得し、欠落変化量計算部306は、空調電源状態累積情報および空調CP動作回数累積情報を取得する(S50,S51,S52)。次に、収集間隔計算部304は、収集日時情報を用いて、データの収集間隔を計算する(S53)。次に、欠落変化量判定部315は、欠落判定値および欠落変化量をゼロに初期化する(S54,S55)。
【0084】
次に、収集間隔判定部305は、収集間隔が閾値より大きいかどうかを判定する(S56)。収集間隔が閾値より大きい場合(ステップS56のYes)、欠落変化量計算部306は、空調電源状態の累積変化量を計算する(S57)。次に、欠落変化量判定部315は、空調電源状態の変化量が所定値(例えば、1)以上であるか否かを判定する(S58)。空調電源状態は電源OFF時に0、電源ON時に1となることから、空調機の電源がONであるにも関わらずデータ欠落が生じてしまった場合は、この空調電源状態の累積変化量変化量が1以上の値をとることとなる。このため、空調電源状態累積変化量が1以上の場合(ステップS58のYes)、欠落変化量計算部306は空調電源状態の累積変化量およびデータ収集間隔から計算した空調装置の動作時間と、欠落期間における空調CPの動作回数と、を計算する(S59)。次に、欠落変化量判定部315は欠落判定値を1とする(S60)。これにより、欠落期間における空調装置の動作時間と、空調CPの動作回数を計算することができる。
【0085】
収集間隔が閾値以下である場合(ステップS56のNo)、または、空調電源状態の累積変化量が1未満である場合(ステップS58のNo)、欠落変化量判定部315は、走行中にデータ欠落発生はないと判定する。その後、ステップS61が実行される。次に、走行欠落情報追加部307は、上記処理で計算された空調判定値と変化量とを空調欠落情報として車両データに追加する(S61)。次に、車両データ出力部308は、車両データを出力する(S62)。
【0086】
図14に、第2の実施形態に係る車両データおよび空調欠落情報に含まれるデータの一例を示す図である。
【0087】
1列目の収集日時から6列目の空調CP累積動作回数までがもとの車両データ、7列目の収集間隔(s)から9列目の欠落判定値までが空調欠落情報を表している。収集間隔(s)は、データの先頭から1秒前後で計測できているが、途中で約47,355秒(13時間)の間隔が発生しており、同時刻の欠落変化量は6、欠落判定値は1となっていることが分かる。6月2日と6月3日の収集時刻に着目すると、第1の実施形態における走行欠落情報の例と同様に、いずれも列車速度が0(m/s)で停止しており、一見するとデータ収集は正常な稼働状態のもとで停止したように見えるが、空調電源状態累積情報を見ると、この収集間隔の間に16200(6663425―6647225)の差が発生しており、空調CPは6回動作していることが分かる。このことから、本来収集されるべき空調電源ON時のデータが正常に収集できていなく、データ収集装置が非正常な稼働状態のもとで停止したことを判定することができる。これにより、空調電源ON時のデータ欠落が判定したかどうかを判定するとともに、欠落した期間における空調CP動作回数を計算することが可能となる。
【0088】
図15は、第2の実施形態に係る車両100の稼働状態と、データ収集装置の稼働状態と、空調CP動作回数累積値と、の関係を示す図である。図の横軸は時間であり、6月1日から6月4日の範囲を示している。
【0089】
上段のグラフG6と中段のグラフG7とは、
図7で示した例と同様である。下段のグラフG8は空調CP動作回数累積値の時系列変化を示した図である。
図7で示した走行距離累積値とは異なり、空調CP動作回数累積値は、空調制御に応じてコンプレッサが動作するタイミングでカウントされていることに注意されたい。グラフG7で示されるデータ収集装置の非正常停止と復帰時の累積値は欠落しているため欠落中の累積値の時系列変化が計測できていないが、復帰直後の累積値は車両側で計測されていることから、空調電源ON時の欠落期間の空調CP動作回数は、累積値の変化量から計算することが可能となる。
【0090】
図16は、第2の実施形態に係る列車情報表示装置400の表示の一例を示す図である。
図16は、日毎の空調CP動作回数を集計した可視化結果の表示例を示す。また、
図16は、
図14における電源状態累積変化量、欠落変化量(空調電源状態累積情報および空調CP動作回数)および欠落判定値の日毎の集計結果も示す。
【0091】
可視化結果は、2020年6月1日から6月3日のA編成の空調CP動作回数を集計した表と、その集計値の日毎の棒グラフを可視化したものである。集計結果(表)の可視化結果では、2020年6月2日の空調CP動作回数26回に対して欠落判定が1、欠落空調CP動作回数が5回と表示されており、車両データに基づいて集計した空調CP動作回数は、6月2日にデータの欠落が発生したことを確認することができる。このため、車両データの可視化において列車情報管理装置300で計算した空調欠落情報を連携することで、表示結果の信頼度を測る指標の1つとして扱うことができる。これにより、たとえば空調CP動作回数集計をシステムで自動的に計算する際に、欠落の有無を集計値と照らし合わせて確認することができる。
【0092】
以上のように、第2の実施形態に係る列車情報管理装置300によれば、データ収集日時情報から計算したデータ収集間隔と、車上で計算および保持されている空調電源状態累積情報と、空調CP累積動作回数と、を用いることで空調欠落情報を計算し、データ収集装置が非正常な稼働状態のもとで停止したか、正常な稼働状態ものとで停止したかを判定することができる。判定に加えて、非正常な稼働状態のもとで欠落した期間の空調CP動作回数を計算することができる。また、車両データの可視化において空調欠落情報を連携させることで、欠落した期間における空調装置の動作時間と、コンプレッサ(CP)の動作回数集計値と、を欠落有無の信頼度に相当する指標と合わせて確認することができる。
【0093】
コンプレッサの累積動作回数は、例えば、空調装置の点検計画作成のために用いられる。しかし、コンプレッサの累積動作回数は、データ欠落の判定に用いられてもよい。すなわち、第1累積情報は、例えば、車両100に搭載される空調装置の空調電源状態累積情報、または、空調装置のコンプレッサの動作回数の累積値である。コンプレッサの累積動作回数を用いることで、データ欠落が発生した場合であっても、データ欠落期間中の動作情報の損失を防ぐことが可能となる。なお、コンプレッサは、空調制御および車内条件(車内温度、車内湿度および乗車率など)に応じて動作することから、一定期間動作しないこともある。このため、例えばデータ収集間隔が大きいかつコンプレッサ累積動作回数がゼロであった場合に、データ欠落が発生したかどうかを判断することが困難である。したがって、コンプレッサ動作回数の欠落を防ぎ、かつ、データ欠落の発生を判定するためには、空調電源状態累積情報の変化量が用いられることがより好ましい。
【0094】
第2の実施形態に係る列車情報管理装置300のその他の構成は、第1の実施形態による列車情報管理装置300の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。第2の実施形態に係る列車情報管理装置300は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
(第3の実施形態)
図17は、第3の実施形態に係る列車情報管理装置300を含む列車情報システム1の全体構成の一例を示すブロック図である。第3の実施形態は、第1の実施形態と比較して、列車情報管理装置300の配置が異なっている。
【0096】
列車情報管理装置300は、車両100内に配置されている。第1の実施形態に係る列車情報管理装置300は、走行欠落情報を列車情報蓄積装置200の地上側で計算していたのに対して、第3の実施形態に係る列車情報管理装置300は、車上側で走行欠落情報を計算する。
【0097】
列車情報管理装置300は、第1の実施形態と同様な走行欠落情報を、車上で計算する。本実施形態における列車情報管理装置300は、第1の実施形態と同様な処理で走行欠落情報を車上で計算する。列車情報管理装置300およびデータ収集装置(車両データ取得部101)は車両100に配置されており、列車情報管理装置300は車両データを直接取得することが可能となる。このため、列車情報管理装置300は、収集日時取得部301と速度累積情報取得部302とにより走行欠落情報計算部303の必要なデータ(収集日時および速度累積値)を取得し、走行欠落情報を計算する。走行欠落情報は、もとの車両データに追加され、車両データ送信部102を介して地上サーバ等の列車情報蓄積装置200の車両データ蓄積部201に送られる。したがって、本実施形態における車両データ蓄積部201の車両データは、車上で計算された走行欠落情報を含むデータとなる。
【0098】
第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に、走行中の欠落が発生したかどうかを判定するとほぼ同時に、欠落が発生した期間の走行距離を車上側で計算することができる。これにより、地上側のサーバ等に蓄積された車両データを参照することなく、車両100から列車情報蓄積装置200へ送信されるデータサイズの単位で、車上側で独立して走行欠落情報を計算することができる。このため、本実施形態では、第1の実施形態で要していた分析データ作成までの処理時間を削減し、実際にデータ欠落が生じたタイミングからより少ない時間で欠落が生じたことを検知することができる。また、データ収集装置の安定動作に関する状態把握をよりリアルタイムに行うことができる。
【0099】
第3の実施形態に係る列車情報管理装置300のその他の構成は、第1の実施形態による列車情報管理装置300の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。第3の実施形態に係る列車情報管理装置300は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0100】
(第4の実施形態)
図18は、第4の実施形態に係る列車情報管理装置300を含む列車情報システム1の全体構成の一例を示すブロック図である。第4の実施形態は、第2の実施形態と比較して、列車情報管理装置300の配置が異なっている。
【0101】
列車情報管理装置300は、車両100内に配置されている。第2の実施形態に係る列車情報管理装置300は、空調欠落情報を列車情報蓄積装置200の地上側で計算していたのに対して、第3の実施形態に係る列車情報管理装置300は、車上側で空調欠落情報を計算する。
【0102】
列車情報管理装置300は、第2の実施形態と同様な空調欠落情報を車上で計算する。本実施形態における列車情報管理装置300は、第2の実施形態と同様な処理で空調欠落情報を車上で計算する。列車情報管理装置300およびデータ収集装置(車両データ取得部101)は車両100に配置されており、列車情報管理装置300は車両データを直接取得することが可能となる。このため、列車情報管理装置300は、収集日時取得部301と空調電源状態累積情報取得部309と空調CP動作回数累積情報取得部310とにより、空調欠落情報計算部311の必要なデータ(収集日時、空調電源状態累積情報および空調CP動作回数累積情報)を取得し、空調欠落情報を計算する。空調欠落情報は、もとの車両データに追加され、車両データ送信部102を介して地上サーバ等の列車情報蓄積装置200の車両データ蓄積部201に送られる。したがって、本実施形態における車両データ蓄積部201の車両データは、車上で計算された空調欠落情報を含むデータとなる。
【0103】
第4の実施形態では、第2の実施形態と同様に、空調電源ON状態の欠落が発生したかどうかを判定するとほぼ同時に、欠落が発生した期間の空調CP動作回数を車上側で計算することができる。これにより、地上側のサーバ等に蓄積された車両データを参照することなく、車両100から列車情報蓄積装置200へ送信されるデータサイズの単位で、車上側で独立して空調欠落情報を計算することができる。このため、本実施形態では、第2の実施形態で要していた分析データ作成までの処理時間を削減し、実際にデータ欠落が生じたタイミングからより少ない時間で欠落が生じたことを検知することができる。また、データ収集の安定動作に関する状態把握をよりリアルタイムに行うことができる。
【0104】
第4の実施形態に係る列車情報管理装置300のその他の構成は、第2の実施形態による列車情報管理装置300の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。第4の実施形態に係る列車情報管理装置300は、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
本実施形態による列車情報管理装置300の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、列車情報管理装置300の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。また、列車情報管理装置300の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0107】
100 車両、101 車両データ取得部、200 列車情報蓄積装置、300 列車情報管理装置、301 収集日時取得部、302 速度累積情報取得部、303 走行欠落情報計算部、305 収集間隔判定部、306 欠落変化量計算部、307 走行欠落情報追加部、308 車両データ出力部、309 空調電源状態累積情報取得部、310 空調CP動作回数累積情報取得部、311 空調欠落情報計算部、315 欠落変化量判定部、400 列車情報表示装置