(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
G11C 16/08 20060101AFI20240805BHJP
G11C 11/56 20060101ALI20240805BHJP
G11C 16/04 20060101ALI20240805BHJP
G11C 16/10 20060101ALI20240805BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240805BHJP
H01L 29/788 20060101ALI20240805BHJP
H01L 29/792 20060101ALI20240805BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240805BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20240805BHJP
H10B 41/27 20230101ALI20240805BHJP
H10B 41/40 20230101ALI20240805BHJP
H10B 43/27 20230101ALI20240805BHJP
H10B 43/40 20230101ALI20240805BHJP
【FI】
G11C16/08 130
G11C11/56 210
G11C16/04 170
G11C16/10 140
H01L29/78 371
H01L27/088 E
H10B41/27
H10B41/40
H10B43/27
H10B43/40
(21)【出願番号】P 2021045259
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 威
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 謙
(72)【発明者】
【氏名】片岡 秀之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳一
(72)【発明者】
【氏名】伊達 浩己
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-084777(JP,A)
【文献】特開2013-157070(JP,A)
【文献】特開2010-003349(JP,A)
【文献】特開2006-331476(JP,A)
【文献】特開2009-205728(JP,A)
【文献】米国特許第10388381(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2011/0007572(US,A1)
【文献】特開2020-004465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 16/08
G11C 11/56
G11C 16/04
G11C 16/10
H01L 21/336
H01L 21/8234
H10B 41/40
H10B 41/27
H10B 43/40
H10B 43/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメモリセルと、前記複数のメモリセルのゲートに接続されたワード線と、前記複数のメモリセルの一端にそれぞれ接続された選択ゲートトランジスタを介して前記複数のメモリセルの一端に電気的に接続されたビット線と、により構成されたメモリセルアレイを含む複数のプレーンと、
前記複数のプレーンにそれぞれ含まれる前記メモリセルアレイのうち1つ以上の前記メモリセルアレイに供給する電圧を発生可能であって、プログラム期間において書き込み対象の選択ワード線にプログラム電圧を供給すると共に、前記選択ワード線に隣接する隣接ワード線に対して前記プログラム期間の前半には第1中間電圧を与え後半には前記第1中間電圧よりも高い第2中間電圧を与える電圧発生回路と、
前記電圧発生回路と前記選択ワード線との間の経路上に設けられ、前記隣接ワード線に前記第2中間電圧を与える期間に対応する期間において前記選択ワード線から放電電流を流す放電回路と、
前記放電回路の放電特性を前記電圧発生回路から前記プログラム電圧が同時に供給される前記プレーンの数に応じて設定する制御回路と、
を具備する半導体記憶装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記放電回路の放電特性を前記プログラム電圧のレベルに応じて設定する、
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
複数のメモリセルと、前記複数のメモリセルのゲートに接続されたワード線と、前記複数のメモリセルの一端にそれぞれ接続された選択ゲートトランジスタを介して前記複数のメモリセルの一端に電気的に接続されたビット線と、により構成されたメモリセルアレイを含む複数のプレーンと、
前記複数のプレーンにそれぞれ設けられ、前記メモリセルアレイに供給する電圧を発生可能であって、書き込み対象の選択ワード線に供給するプログラム電圧を規定値に制限するリミット回路を有しプログラム期間において前記選択ワード線にプログラム電圧を供給すると共に、前記選択ワード線に隣接する隣接ワード線に対して前記プログラム期間の前半には第1中間電圧を与え後半には前記第1中間電圧よりも高い第2中間電圧を与える電圧発生回路と、
前記リミット回路に流れる電流量を前記プログラム電圧のレベルに応じて設定する制御回路と、
を具備する半導体記憶装置。
【請求項4】
複数のメモリセルと、前記複数のメモリセルのゲートに接続されたワード線と、前記複数のメモリセルの一端にそれぞれ接続された選択ゲートトランジスタを介して前記複数のメモリセルの一端に電気的に接続されたビット線と、により構成されたメモリセルアレイを含む複数のプレーンと、
前記複数のプレーンにそれぞれ含まれる前記メモリセルアレイのうち1つ以上の前記メモリセルアレイに供給する電圧を発生可能であって、プログラム期間において書き込み対象の選択ワード線にプログラム電圧を供給すると共に、前記選択ワード線に隣接する隣接ワード線に対して前記プログラム期間の前半には第1中間電圧を与え後半には前記第1中間電圧よりも高い第2中間電圧を与える電圧発生回路と、
前記第2中間電圧のレベルを前記電圧発生回路から前記プログラム電圧が同時に供給される前記プレーンの数に応じて設定する制御回路と、
を具備する半導体記憶装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記第2中間電圧のレベルを前記プログラム電圧のレベルに応じて設定する、
請求項4に記載の半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、NAND型メモリ等の半導体記憶装置においては、微細化、大容量化の要求から、3次元構造化が図られるようになってきた。メモリセルトランジスタを、1ビット(2値)のデータを保持可能なSLC(Single Level Cell)とする場合だけでなく、2ビット(4値)のデータを保持可能なMLC(Multi Level Cell)、3ビット(8値)のデータを保持可能なTLC(Triple Level Cell)または4ビット(16値)のデータを保持可能なQLC(Quad Level Cell)として構成する場合がある。
【0003】
このような半導体記憶装置においては、メモリチップ内に互いに物理的に独立した複数のプレーンを配置する構成が採用されることがある。
【0004】
複数のプレーンに対して同時に書き込み動作を行うと、同時動作プレーン数に依存して書き込み速度に差が生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態は、同時動作プレーン数に拘わらずプログラム電圧の均一化を可能にすることにより、書き込み時間を短縮することができる半導体記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の半導体記憶装置は、複数のメモリセルと、前記複数のメモリセルのゲートに接続されたワード線と、前記複数のメモリセルの一端にそれぞれ接続された選択ゲートトランジスタを介して前記複数のメモリセルの一端に電気的に接続されたビット線と、により構成されたメモリセルアレイを含む複数のプレーンと、前記複数のプレーンにそれぞれ含まれる前記メモリセルアレイのうち1つ以上の前記メモリセルアレイに供給する電圧を発生可能であって、プログラム期間において書き込み対象の選択ワード線にプログラム電圧を供給すると共に、前記選択ワード線に隣接する隣接ワード線に対して前記プログラム期間の前半には第1中間電圧を与え後半には前記第1中間電圧よりも高い第2中間電圧を与える電圧発生回路と、前記電圧発生回路と前記選択ワード線との間の経路上に設けられ、前記隣接ワード線に前記第2中間電圧を与える期間に対応する期間において前記選択ワード線から放電電流を流す放電回路と、前記放電回路の放電特性を前記電圧発生回路から前記プログラム電圧が同時に供給される前記プレーンの数に応じて設定する制御回路と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に関わるメモリシステムの構成例を示すブロック図。
【
図2】第1実施形態の不揮発性メモリの構成例を示すブロック図。
【
図3】
図2中の複数のプレーンの具体的な構成の一例を示すブロック図。
【
図4A】3次元構造のNANDメモリセルアレイ23のブロックの等価回路を示す図。
【
図4B】3次元構造のNANDメモリセルアレイ23のブロックの構成例を示す図。
【
図5】書き込み動作(プログラム動作)における各配線の電位変化を示す図。
【
図7】書き込み動作における標準書き込みシーケンスを示す説明図。
【
図8】
図2又は
図3中の電圧生成回路28を構成するVPGM生成回路40の具体的な構成の一例を示すブロック図。
【
図9】
図8中のチャージポンプ回路41の具体的な構成の一例を示す回路図。
【
図10】横軸に時間をとり縦軸に電圧をとって、プログラム電圧VPGMの浮き電位を説明するためのグラフ。
【
図11】放電回路50を設けた電圧生成回路28及びMUXスイッチ29の具体的な構成の一例を示す回路図。
【
図12】TS30及びロウデコーダ25の具体的な構成の一例を示すブロック図。
【
図13】VPASS_SHIFT期間における放電動作を説明するための説明図。
【
図14】第2の実施形態の不揮発性メモリの構成例を示すブロック図。
【
図15】
図14中の複数のプレーンの具体的な構成の一例を示すブロック図。
【
図16】本発明の第3の実施形態を示すブロック図。
【
図17】第1の実施形態の効果を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
本実施形態は、後述するVPASS_SHIFTの制御に対応して各プレーンに供給するプログラム電圧を制御することにより、同時動作プレーン数に拘わらず供給するプログラム電圧の均一化を図ることにより、書き込み時間を短縮するものである。
【0011】
(メモリシステムの構成)
図1は、実施形態に関わるメモリシステムの構成例を示すブロック図である。本実施形態のメモリシステムは、メモリコントローラ1と不揮発性メモリ2とを備える。メモリシステムは、ホストと接続可能である。ホストは、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯端末などの電子機器である。
【0012】
不揮発性メモリ2は、データを不揮発に記憶する半導体記憶装置であり、例えば、NAND型メモリにより構成される。本実施形態では、不揮発性メモリ2は、メモリセルトランジスタあたり4bitを記憶可能なメモリセルトランジスタを有するNANDメモリ、すなわち4bit/Cell(QLC:Quad Level Cell)のNANDメモリであるとして説明するが、これに限定されるものではない。不揮発性メモリ2は、3次元化されている。
【0013】
メモリコントローラ1は、ホストからの書き込みリクエストに従って不揮発性メモリ2へのデータの書き込みを制御する。また、メモリコントローラ1は、ホストからの読み出しリクエストに従って不揮発性メモリ2からのデータの読み出しを制御する。メモリコントローラ1は、RAM(Random Access Memory)11、プロセッサ12、ホストインターフェイス13、ECC(Error Check and Correct)回路14およびメモリインターフェイス15を備える。RAM11、プロセッサ12、ホストインターフェイス13、ECC回路14およびメモリインターフェイス15は、互いに内部バス16により接続される。
【0014】
ホストインターフェイス13は、ホストから受信したリクエスト、ユーザデータである書き込みデータなどを内部バス16に出力する。また、ホストインターフェイス13は、不揮発性メモリ2から読み出されたユーザデータ、プロセッサ12からの応答などをホストへ送信する。
【0015】
メモリインターフェイス15は、プロセッサ12の指示に基づいてユーザデータ等を不揮発性メモリ2へ書き込む処理および不揮発性メモリ2から読み出す処理を制御する。
【0016】
プロセッサ12は、メモリコントローラ1を統括的に制御する。プロセッサ12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等である。プロセッサ12は、ホストからホストインターフェイス13経由でリクエストを受けた場合に、そのリクエストに従った制御を行う。例えば、プロセッサ12は、ホストからのリクエストに従って、不揮発性メモリ2へのユーザデータおよびパリティの書き込みをメモリインターフェイス15へ指示する。また、プロセッサ12は、ホストからのリクエストに従って、不揮発性メモリ2からのユーザデータおよびパリティの読み出しを、メモリインターフェイス15へ指示する。
【0017】
プロセッサ12は、RAM11に蓄積されるユーザデータに対して、不揮発性メモリ2上の格納領域(以下、メモリ領域という)を決定する。ユーザデータは、内部バス16経由でRAM11に格納される。プロセッサ12は、メモリ領域の決定を、書き込み単位であるページ単位のデータ、すなわちページデータ、に対して実施する。本明細書では、不揮発性メモリ2の1ページに格納されるユーザデータをユニットデータと定義する。ユニットデータは、例えば、符号化されて符号語として不揮発性メモリ2に格納される。
【0018】
なお、符号化は必須ではない。メモリコントローラ1は、符号化せずにユニットデータを不揮発性メモリ2に格納してもよいが、
図1では、一構成例として符号化を行う構成を示している。メモリコントローラ1が符号化を行わない場合には、ページデータはユニットデータと一致する。また、1つのユニットデータに基づいて1つの符号語が生成されてもよいし、ユニットデータが分割された分割データに基づいて1つの符号語が生成されてもよい。また、複数のユニットデータを用いて1つの符号語が生成されてもよい。
【0019】
プロセッサ12は、ユニットデータごとに書き込み先の不揮発性メモリ2のメモリ領域を決定する。不揮発性メモリ2のメモリ領域には物理アドレスが割当てられている。プロセッサ12は、ユニットデータの書き込み先のメモリ領域を、物理アドレスを用いて管理する。プロセッサ12は、決定したメモリ領域の物理アドレスを指定してユーザデータを不揮発性メモリ2へ書き込むようメモリインターフェイス15へ指示する。プロセッサ12は、ユーザデータの論理アドレス(ホストが管理する論理アドレス)と物理アドレスとの対応を管理する。プロセッサ12は、ホストからの論理アドレスを含む読み出しリクエストを受信した場合は、論理アドレスに対応する物理アドレスを特定し、物理アドレスを指定してユーザデータの読み出しをメモリインターフェイス15へ指示する。
【0020】
ECC回路14は、RAM11に格納されたユーザデータを符号化して符号語を生成する。また、ECC回路14は、不揮発性メモリ2から読み出された符号語を復号する。
RAM11は、ホストから受信したユーザデータを不揮発性メモリ2へ記憶するまでに一時格納したり、不揮発性メモリ2から読み出したデータをホストへ送信するまでに一時格納する。RAM11は、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの汎用メモリである。
【0021】
図1では、メモリコントローラ1が、ECC回路14とメモリインターフェイス15をそれぞれ備える構成例を示した。しかしながら、ECC回路14がメモリインターフェイス15に内蔵されていてもよい。また、ECC回路14が、不揮発性メモリ2に内蔵されていてもよい。
【0022】
ホストから書き込みリクエストを受信した場合、メモリコントローラ1は次のように動作する。プロセッサ12は、書き込みデータをRAM11に一時記憶させる。プロセッサ12は、RAM11にストアされたデータを読み出し、ECC回路14に入力する。ECC回路14は、入力されたデータを符号化し、符号語をメモリインターフェイス15に与える。メモリインターフェイス15は、入力された符号語を不揮発性メモリ2に書き込む。
【0023】
ホストから読み出しリクエストを受信した場合、メモリコントローラ1は次のように動作する。メモリインターフェイス15は、不揮発性メモリ2から読み出した符号語をECC回路14に与える。ECC回路14は、入力された符号語を復号し、復号されたデータをRAM11にストアする。プロセッサ12は、RAM11にストアされたデータを、ホストインターフェイス13を介してホストに送信する。
【0024】
(不揮発性メモリの概略構成)
図2は、本実施形態の不揮発性メモリの構成例を示すブロック図である。また、
図3は
図2中の複数のプレーンの具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【0025】
不揮発性メモリ2は、ロジック制御回路21、入出力回路22、レジスタ26、シーケンサ27、電圧生成回路28、MUXスイッチ29、入出力用パッド群32、ロジック制御用パッド群34、電源入力用端子群35及び、複数のプレーンPB0,PB1,…(以下、これらのプレーンPB0,PB1,…を区別する必要がない場合にはプレーンPBという)を備えている。なお、
図2ではプレーンPBのプレーン数が4の例を示しているが、不揮発性メモリ2が備えるプレーンの数はこれに限られるものではない。例えば、不揮発性メモリ2が備えるプレーンの数は2、3、8、16等であってもよい。
【0026】
入出力用パッド群32は、メモリコントローラ1との間でデータを含む各信号の送受信を行うため、信号DQ<7:0>、及び、データストローブ信号DQS、/DQSに対応する複数の端子(パッド)を備えている。
【0027】
ロジック制御用パッド群34は、メモリコントローラ1との間で各信号の送受信を行うため、チップイネーブル信号/CE、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号RE、/RE、ライトプロテクト信号/WP、及び信号R/Bに対応する複数の端子(パッド)を備えている。
【0028】
信号/CEは、不揮発性メモリ2の選択を可能にする。信号CLEは、信号DQとして送信されるコマンドをコマンドレジスタにラッチすることを可能にする。信号ALEは、信号DQとして送信されるアドレスをアドレスレジスタにラッチすることを可能にする。信号/WEは、書き込みを可能にする。信号RE,/REは、読み出しを可能にする。信号/WPは、書き込み及び消去を禁止する。信号R/Bは、不揮発性メモリ2がレディー状態(外部からの命令を受け付けることが可能である状態)であるか、ビジー状態(外部からの命令を受け付けることができない状態)であるかを示す。メモリコントローラ1は、信号R/Bを受けることで、不揮発性メモリ2の状態を知ることができる。
【0029】
電源入力用端子群35は、外部から不揮発性メモリ2に、種々の動作電源を供給するため、電源電圧Vcc、VccQ、Vppと、接地電圧Vssを入力する複数の端子を備えている。電源電圧Vccは、動作電源として一般的に外部から与えられる回路電源電圧であり、例えば3.3V程度の電圧である。電源電圧VccQは、例えば1.2Vの電圧である。電源電圧VccQは、メモリコントローラ1と不揮発性メモリ2との間で信号を送受信する際に用いられる。電源電圧Vppは、電源電圧Vccよりも高圧の電源電圧であり、例えば12Vの電圧である。
【0030】
ロジック制御回路21及び入出力回路22は、NANDバスを介して、メモリコントローラ1に接続される。入出力回路22は、メモリコントローラ1との間でNANDバスを介して、信号DQ(例えばDQ0~DQ7)を送受信する。
【0031】
ロジック制御回路21は、メモリコントローラ1からNANDバスを介して、外部制御信号(例えば、チップイネーブル信号/CE、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、書き込みイネーブル信号/WE、読み出しイネーブル信号RE,/RE、及びライトプロテクト信号/WP)を受信する。信号名に付記された"/"は、アクティブ・ローを示す。また、ロジック制御回路21は、NANDバスを介して、メモリコントローラ1にレディー/ビジー信号R/Bを送信する。
【0032】
レジスタ26は、コマンドレジスタ、アドレスレジスタ、及びステータスレジスタなどを備える。コマンドレジスタは、コマンドを一時的に保持する。アドレスレジスタは、アドレスを一時的に保持する。ステータスレジスタは、不揮発性メモリ2の動作に必要なデータを一時的に保持する。レジスタ26は、例えばSRAMから構成される。
【0033】
制御回路としてのシーケンサ27は、レジスタ26からコマンドを受け、このコマンドに基づくシーケンスに従って不揮発性メモリ2を制御する。
【0034】
電圧生成回路28は、不揮発性メモリ2の外部から電源電圧を受け、この電源電圧を用いて、書き込み動作、読み出し動作、及び消去動作に必要な複数の電圧を生成する。電圧生成回路28は、生成した電圧を、MUXスイッチ29を介してプレーンPB内のメモリセルアレイ23、センスアンプ24、及びロウデコーダ25などに供給する。
【0035】
各プレーンPBには、それぞれメモリセルアレイ23が設けられている。メモリセルアレイ23は、複数のブロックを備える。複数のブロックBLKの各々は、複数のメモリセルトランジスタ(メモリセル)を備える。メモリセルアレイ23には、メモリセルトランジスタに印加する電圧を制御するために、複数のビット線、複数のワード線、及びソース線などが配設される。
【0036】
(メモリセルアレイのブロック構成)
図4Aは本実施形態の不揮発性メモリ2における3次元構造のNANDメモリセルアレイ23のブロックBLKの等価回路を示す図である。
図4Aはメモリセルアレイ23を構成する複数のブロックのうちの1つのブロックBLKを示している。メモリセルアレイの他のブロックも
図4Aと同様の構成を有する。なお、本実施形態は、2次元構造のメモリセルアレイにも適用可能である。
【0037】
図示するように、ブロックBLKは、例えば4つのストリングユニット(SU0~SU3)を含む。また各々のストリングユニットSUは、複数のNANDストリングNSを含む。NANDストリングNSの各々は、ここでは8個のメモリセルトランジスタMT(MT0~MT7)と、選択ゲートトランジスタST1,ST2とを含む。なお、NANDストリングNSに含まれるメモリセルトランジスタMTの個数は、ここでは8個であるが、8個に限られず、例えば、32個、48個、64個、96個等でもよい。選択ゲートトランジスタST1,ST2は、電気回路上は1つのトランジスタとして示しているが、構造上はメモリセルトランジスタと同じでもよい。また、例えばカットオフ特性を高めるために、選択ゲートトランジスタST1,ST2として、それぞれ複数の選択ゲートトランジスタを用いてもよい。さらに、メモリセルトランジスタMTと選択ゲートトランジスタST1,ST2との間には、ダミーセルトランジスタが設けられていてもよい。
【0038】
メモリセルトランジスタMTは、選択ゲートトランジスタST1,ST2間において、直列接続されるようにして配置されている。一端側のメモリセルトランジスタMT7が、選択ゲートトランジスタST1に接続され、他端側のメモリセルトランジスタMT0が、選択ゲートトランジスタST2に接続されている。
【0039】
ストリングユニットSU0~SU3の各々の選択ゲートトランジスタST1のゲートは、それぞれ選択ゲート線SGD0~SGD3(以下、これらを区別する必要がない場合には選択ゲート線SGDという)に接続される。他方で、選択ゲートトランジスタST2のゲートは、同一のブロックBLK内にある複数のストリングユニットSU間で同一の選択ゲート線SGSに共通接続される。また、同一のブロックBLK内にあるメモリセルトランジスタMT0~MT7のゲートは、それぞれワード線WL0~WL7に共通接続される。すなわち、ワード線WL0~WL7及び選択ゲート線SGSは、同一ブロックBLK内の複数のストリングユニットSU0~SU3間で共通に接続されているのに対し、選択ゲート線SGDは、同一ブロックBLK内であってもストリングユニットSU0~SU3毎に独立している。
【0040】
NANDストリングNSを構成するメモリセルトランジスタMT0~MT7のゲートには、それぞれワード線WL0~WL7が接続されている。ブロックBLK内において同一行にあるメモリセルトランジスタMTiのゲートは、同一のワード線WLiに接続される。なお、以下の説明では、NANDストリングNSを単に「ストリング」という場合がある。
【0041】
各NANDストリングNSは、対応するビット線に接続されている。従って、各メモリセルトランジスタMTは、NANDストリングNSに含まれる選択ゲートトランジスタSTや他のメモリセルトランジスタMTを介して、ビット線に接続されている。上述した通り、同一のブロックBLK内にあるメモリセルトランジスタMTのデータは、一括して消去される。一方、データの読み出し及び書き込みは、メモリセルグループMG単位(またはページ単位)で行われる。本明細書では、1つのワード線WLiに接続され、かつ1つのストリングユニットSUに属する複数のメモリセルトランジスタMTをメモリセルグループMGと定義する。本実施形態では、不揮発性メモリ2は4ビット(16値)のデータを保持可能なQLCのNANDメモリである。従って、1つのメモリセルグループMGが、4ページ分のデータを保持することができる。各メモリセルトランジスタMTが保持することができる4ビットは、それぞれこの4ページに対応する。
【0042】
図4Bは本実施形態の不揮発性メモリ2における3次元構造のNANDメモリセルアレイ23のブロックBLKの構成例を示す図である。
図4Bはメモリセルアレイ23を構成する複数のブロックのうちの1つのブロックBLKを示している。メモリセルアレイの他のブロックも
図4Bと同様の構成を有する。
【0043】
より具体的には、
図4Bは、本実施形態の不揮発性メモリ2におけるNANDメモリセルアレイ23のブロックBLKの一部断面図である。
図4Bに示すように、半導体基板601上に、例えばセンスアンプ24やロウデコーダ25等の周辺回路に含まれるトランジスタが形成され、その上層に、メモリセルアレイ23に含まれるメモリセルトランジスタが形成される。以下の説明において、半導体基板601の表面に水平な直交する2方向をx方向及びy方向とし、半導体基板601表面に垂直な方向をz方向とする。
【0044】
図4Bにおいて、半導体基板601の上面部分に形成されたp型又はn型のウェル領域と、各ウェル領域内に形成された不純物拡散領域と、ウェル領域間を絶縁する素子分離領域のそれぞれの図示は省略されている。半導体基板601上には、ゲート絶縁膜(図示せず)を介して、導電体GCが設けられている。また、半導体基板601に導電体GCを挟むように設けられた複数の不純物拡散領域(図示せず)には、複数のコンタクト661が設けられている。複数のコンタクト661には、配線パターンとしての複数の導電体641が、それぞれ接続されている。例えば、導電体GCはトランジスタのゲート電極として機能し、導電体641はトランジスタのソース電極またはドレイン電極として機能する。
【0045】
例えば、導電体641上にはコンタクト662が設けられ、コンタクト662には配線パターンとしての導電体642が接続されており、導電体642上にはコンタクト663が設けられ、コンタクト663には配線パターンとしての導電体643が接続されている。導電体641、642、643が設けられる配線層を、それぞれ配線層D0、D1、D2と呼ぶ。配線層D0、D1、D2は、不揮発性メモリ2の下層部分に設けられている。なお、不揮発性メモリ2の下層部分に設けられる配線層は3層に限られない。2つ以下の配線層で構成されていてもよいし、あるいは4つ以上の配線層が設けられていてもよい。
【0046】
導電体643の上方には、例えば層間絶縁膜(図示せず)を介して導電体644が設けられている。導電体644は、例えば、xy平面に平行な板状に形成されており、ソース線SLとして機能する。導電体644の上方には、例えば、導電体645~654が層間絶縁膜(図示せず)を介してz方向に順に積層されている。
【0047】
導電体645~654のそれぞれは、例えばxy平面に平行な板状に形成されている。例えば、導電体645は、選択ゲート線SGSとして機能し、導電体646~653は、それぞれワード線WL0~WL7として機能し、導電体654は、選択ゲート線SGDとして機能する。
【0048】
導電体645~654のそれぞれを貫通し、導電体644に接触するように、柱状のメモリピラー634が設けられている。メモリピラー634は、例えば、中心側の導電体柱638と、導電体柱638の外側に形成されるトンネル絶縁膜637と、トンネル絶縁膜637の外側に形成される電荷蓄積膜636と、電荷蓄積膜636の外側に形成されるブロック絶縁膜635を含む。メモリピラー634と導電体646~654のそれぞれとが交差する部分が、メモリセルトランジスタ(メモリセル)MTとして機能する。また、メモリピラー634と導電体645、654のそれぞれとが交差する部分が、選択トランジスタSTとして機能する。
【0049】
メモリピラー634の上面よりも上層には、層間絶縁膜(図示せず)を介して、導電体655が設けられている。導電体655は、x方向に延伸したライン状に形成されており、ビット線BLとして機能する。複数の導電体655は、y方向において間隔をおいて配列されている。導電体655は、ストリングユニットSU毎に対応する1つのメモリピラー634内の導電体柱638と、コンタクトプラグCPを介して、電気的に接続されている。
【0050】
具体的には、各ストリングユニットSUにおいて、例えば各メモリホール634内の導電体柱638上にコンタクトプラグCPが設けられ、コンタクトプラグCP上に1つの導電体645が設けられる。なお、このような構成に限定されず、例えば、導電体柱638と導電体655とは、さらに複数のコンタクトや配線などを介して接続されていてもよい。
【0051】
導電体655が設けられた層よりも上層には、層間絶縁膜(図示せず)を介して導電体656が設けられている。導電体656が設けられた層よりも上層には、層間絶縁膜(図示せず)を介して導電体657が設けられている。
【0052】
導電体656及び657は、例えばメモリセルアレイ23に設けられた配線と、メモリセルアレイ23の下層に設けられた周辺回路とを接続するための配線として機能する。導電体655、656、657が設けられた層を、それぞれ、配線層M0、M1、M2と呼ぶ。
【0053】
図3に示されるプレーンPB0~PB3は、相互に同一構成であり、各プレーンPBは、メモリセルアレイ23、センスアンプ24、ロウデコーダ25及びプレーンデコーダ(以下、TSという)30を備えている。
【0054】
ロウデコーダ25は、レジスタ26からロウアドレスを受け、このロウアドレスをデコードする。ロウデコーダ25は、デコードされたロウアドレスに基づいて、ワード線の選択動作を行う。そして、ロウデコーダ25は、選択されたブロックに、書き込み動作、読み出し動作、及び消去動作に必要な複数の電圧を転送する。
【0055】
センスアンプ24は、レジスタ26からカラムアドレスを受け、このカラムアドレスをデコードする。センスアンプ24は、各ビット線に接続されたセンスアンプユニット群24Aを有しており、センスアンプユニット群24Aは、デコードされたカラムアドレスに基づいて、いずれかのビット線を選択する。また、センスアンプユニット群24Aは、データの読み出し時には、メモリセルトランジスタからビット線に読み出されたデータを検知及び増幅する。また、センスアンプユニット群24Aは、データの書き込み時には、書き込みデータをビット線に転送する。
【0056】
センスアンプ24は、データレジスタ24Bを有しており、データレジスタ24Bは、データの読み出し時には、センスアンプユニット群24Aにより検出したデータを一時的に保持し、これをシリアルに入出力回路22へ転送する。また、データレジスタ24Bは、データの書き込み時には、入出力回路22からシリアルに転送されたデータを一時的に保持し、これをセンスアンプユニット群24Aへ転送する。データレジスタ24Bは、SRAMなどで構成される。
【0057】
メモリセルアレイ23、センスアンプ24、ロウデコーダ25が書き込み及び読み出しにおいて用いる電圧は、電圧生成回路28において生成される。即ち、電圧生成回路28は、書き込み時に必要な各種電圧、読み出しに必要な各種電圧及び消去に必要な各種電圧を発生してMUXスイッチ29に出力する。MUXスイッチ29は、電圧生成回路28が発生した各種電圧を、書き込み及び読み出しのシーケンスに従っていずれの配線に供給するかを切換える。
【0058】
(書き込み動作)
メモリセルMTへのデータの書き込み動作は、大まかにはプログラム動作とベリファイ動作とを含む。プログラム動作は、電子を電荷蓄積膜に注入することによりメモリセルMTの閾値電圧を上昇させる(または注入を禁止することで閾値電圧を維持させる)動作のことである。
【0059】
図5は書き込み動作(プログラム動作)における各配線の電位変化を示す図である。電圧生成回路28は、
図5に示す各種電圧を発生し、MUXスイッチ29は、シーケンサ27に制御されて、
図5に示す各種電圧を各配線に割り当てる。
【0060】
プログラム動作は、ワード線及びビット線に印加するプログラム電圧及びビット線電圧に従って行われる。
図5に示すように、ワード線(
図5の選択WL,非選択WL)にプログラム電圧VPGMが印加されないブロックBLKは、書き込み対象でない非選択BLK(
図5下段)である。また、ビット線電圧は、ビット線BLに接続された選択ゲートトランジスタST1が導通することによりメモリセルトランジスタMTに印加されるので、書き込み対象のブロックBLK(選択BLK)のうち、選択ゲート線SGDが印加されないストリングユニットSUは書き込み対象でない非選択SU(
図5中段)である。なお、選択BLKの非選択SU(
図5中段)についても、プログラム電圧VPGMの印加の前に、選択ゲート線SGDを例えば5Vにして選択ゲートトランジスタST1を導通させておくようにしてもよい。
【0061】
書き込み対象のブロックBLK(選択BLK)の書き込み対象のストリングユニットSU(選択SU)(
図5上段)については、プログラム電圧VPGMの印加の前に、
図5上段の左側に示すように、選択ゲート線SGDを例えば5Vにして、選択ゲートトランジスタST1を導通させておく。また、プログラム動作時には、選択ゲート線SGSは例えば0Vである。従って、選択ゲートトランジスタST2はオフ状態となる。一方、
図5上段の右側に示すプログラム電圧VPGM印加時には、選択ゲート線SGDを例えば2.5Vとする。これにより、選択ゲートトランジスタST1の導通、非導通の状態は、選択ゲートトランジスタST1に接続されるビット線BLのビット線電圧によって決まる。
【0062】
上述したように、センスアンプ24は、各ビット線BLにデータを転送する。“0”データが与えられたビット線BLにはビット線電圧Vbl_Lとして例えば0Vの接地電圧Vssが印加される。“1”データが与えられたビット線BLにはビット線電圧Vbl_Hとして書き込み禁止電圧Vinhibit(例えば2.5V)が印加される。従って、プログラム電圧VPGM印加時には、“0”データが与えられたビット線BLに接続された選択ゲートトランジスタST1は導通し、“0”データが与えられたビット線BLに接続された選択ゲートトランジスタST1はカットオフする。カットオフした選択ゲートトランジスタST1に接続されているメモリセルトランジスタMTは書き込み禁止となる。
【0063】
導通状態となった選択ゲートトランジスタST1に接続されているメモリセルトランジスタMTは、ワード線WLに印加される電圧に従って電荷蓄積膜への電子の注入が行われる。ワード線電圧として、電圧VPASSが与えられたワード線WL(非選択WL)に接続されたメモリセルトランジスタMTは、閾値電圧に拘わらず導通状態となるが、電荷蓄積膜への電子の注入は行われない。一方、ワード線電圧として、プログラム電圧VPGMが与えられたワード線WL(選択WL)に接続されたメモリセルトランジスタMTは、プログラム電圧VPGMに応じて電荷蓄積膜への電子の注入が行われる。
【0064】
即ち、ロウデコーダ25は、選択ブロックBLKにおいていずれかのワード線WLを選択し、選択ワード線(選択WL)にプログラム電圧VPGMを印加し、その他のワード線(非選択ワード線)WL(非選択WL)に第1中間電圧である電圧VPASSを印加する。プログラム電圧VPGMは、トンネル現象により電子を電荷蓄積膜に注入するための高電圧であり、VPGM>VPASSである。ロウデコーダ25によってワード線WLの電圧を制御しながら、センスアンプ24によって各ビット線BLにデータを供給することで、メモリセルアレイ23の各メモリセルトランジスタMTへの書き込み動作(プログラム動作)が行われる。
【0065】
(VPASS_SHIFT)
ところで、チャネルに印加したプログラム電圧VPGMの低下を抑制するために、プログラム電圧印加期間の後半において、選択ワード線に隣接する非選択のワード線(以下、隣接ワード線という)に印加する電圧VPASSを第2中間電圧である電圧VPASS_SHIFTまで上昇させるVPASS_SHIFTが採用されることがある。隣接ワード線の電圧をVPASSから電圧VPASS_SHIFTまでシフトさせることで、例えば、選択ワード線のプログラム電圧VPGMをブーストしてプログラム効率を向上させるとともに、非書き込み対象のメモリセルトランジスタMTが属するNANDストリングNSのチャネル電位を上昇させることでディスターブを抑制する。
【0066】
また、非選択SUのチャネルはフローティングである。従って、選択ワード線に高い電圧VPGMが印加された場合でも非選択SUのチャネル電位も上昇するので、本来、非選択SUのメモリセルトランジスタMTに書き込みが行われることはない。しかし、電荷のリークによって非選択SUのチャネル電圧が低下すると、非選択SUのメモリセルトランジスタMTについても、プログラム電圧VPGMの印加により、誤書き込みが行われるおそれがある。そこで、隣接ワード線の電圧をVPASSから電圧VPASS_SHIFTに上げることで、非選択SUのチャネル電圧を高くして、非選択SUのメモリセルトランジスタMTに書き込みが行われることを防止する。つまり、VPASS_SHIFTは、ディスターブ(意図しない閾値電圧の上昇による誤書き込み)を防止する機能も有している。
【0067】
(閾値電圧分布)
多値のデータをメモリセルトランジスタMTに書き込む場合には、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧をデータの値に応じた値にする。メモリセルトランジスタMTにプログラム電圧VPGM及びビット線電圧Vblを印加すると、電子がメモリセルトランジスタMTの電荷蓄積膜に注入されて閾値電圧が上昇する。プログラム電圧VPGMを大きくすることで電子の注入量を増加させて、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧を高くすることができる。しかし、メモリセルトランジスタMTのばらつきにより同一のプログラム電圧VPGMを印加したとしても電子の注入量はメモリセルトランジスタMT毎に異なる。一旦注入された電子は、消去動作が行われるまで保持される。そこで、各メモリセルトランジスタMTに設定すべき閾値電圧として許容できる閾値電圧の範囲に収まるように、プログラム動作とベリファイ動作(ループ)を、プログラム電圧VPGMを徐々に上昇させつつ、複数回行う。ベリファイ動作は、書き込み動作の一環として行われる読み出し動作である。
【0068】
図6はメモリセルアレイの閾値電圧分布を示す図である。
図6では、4bit/Cellの不揮発性メモリ2の閾値電圧分布例を示している。不揮発性メモリ2において、メモリセルMTに記憶する多値データの各データ値に応じて、メモリセルMTの閾値電圧が設定される。電荷蓄積膜(電荷保持領域)への電荷量の注入は、確率的であるため、
図6に示すように、各メモリセルMTの閾値電圧も統計的に分布する。
【0069】
図6は、横軸に閾値電圧をとり縦軸にメモリセル数(セル数)をとって、4ビット16値に対応した16個のステート(ステートEr,S1~S15)に対応する16個の山型の閾値電圧分布を示している。
図6の例では、16個のステートに対応する16個の閾値電圧分布のいずれかにメモリセルMTの閾値電圧を設定することで、メモリセルMTに16値のデータ(4ビットデータ)を記憶させることが可能である。
【0070】
閾値電圧Vthが
図6の電圧Vr1以下となる閾値電圧分布がステートErに対応し、閾値電圧Vthが電圧Vr1より大きく電圧Vr2以下となる閾値電圧分布がステートS1に対応し、閾値電圧Vthが電圧Vr2より大きく電圧Vr3以下となる閾値電圧分布がステートS2に対応し、閾値電圧Vthが電圧Vr3より大きく電圧Vr4以下となる閾値電圧分布がステートS3に対応する。以下同様に、
図6に示すように、それぞれの閾値電圧分布がステートS4からS15に対応する。
【0071】
すなわち、ステートは、各メモリセルMTの閾値電圧Vthを示すものであり、4ビット16値の場合には、各メモリセルMTの閾値電圧Vthは、ステートEr,S1~S15の16個のステートに対応した16個の閾値電圧分布いずれかに設定される。電圧Vr1~Vr15は、16個の閾値電圧分布それぞれの境界となる基準電圧である。なお、ベリファイ動作においては、ワード線WLに電圧Vr1~Vr15をベリファイ電圧として印加して読み出し行い、対象のメモリセルMTがオフになることによりステートに対応した閾値電圧に到達したことを判定する。
【0072】
図7は書き込み動作における標準書き込みシーケンスを示す説明図である。
図7は横軸に時間をとり縦軸に電圧をとって、標準書き込みシーケンスに基づく書き込み動作時における、プログラム電圧VPGMの変化とプログラム動作とベリファイ動作のタイミングを示している。
【0073】
図7はプレーンPB1~PB3における書き込みシーケンスを示している。
図7の斜線は書き込み時におけるプログラム電圧VPGMの変化を示している。即ち、
図7はプログラム電圧VPGMを19回変化させて書き込みを行う19ループの書き込みシーケンスの例を示している。各プレーンPBの書き込みシーケンスは、相互に同期して実施される。
【0074】
図7に示すように、標準書き込みシーケンスでは、選択ワード線WLに印加するプログラム電圧VPGMをループ毎に順次増加させる。また、各ループにおいて、書き込みの結果の各メモリセルMTの閾値電圧Vthがベリファイ電圧よりも高い値まで到達したか否かを判定するために1つ以上のステートを対象としてベリファイ動作が行われる。
図7の例では、最終的には、最大で19回のループで、19回のプログラム動作と42回のベリファイ動作とが行われる。
【0075】
(電圧生成回路)
図8は
図2又は
図3中の電圧生成回路28を構成するVPGM生成回路40の具体的な構成の一例を示すブロック図であり、
図9は
図8中のチャージポンプ回路41の具体的な構成の一例を示す回路図である。
【0076】
クロック制御回路42は、クロック信号CLK及びクロック信号CLKの反転信号であるクロック信号/CLKを発生する。クロック制御回路42は、相補的なクロックCLK,/CLKをチャージポンプ回路41に供給する。チャージポンプ回路41は、クロック制御回路42から供給されるクロックCLK,/CLKを用いて、所定の電圧VOUTを発生する。
【0077】
図9に示すように、チャージポンプ回路41は、n+1個のNMOSトランジスタNM1,NM2,…,NMn,NMn+1及びn個のキャパシタC1~Cnを含む。なお、チャージポンプ回路41におけるNMOSトランジスタおよびキャパシタの数nは、適宜設定可能である。
【0078】
NMOSトランジスタNM1~NMn+1はそれぞれ、ダイオード接続され、ダイオードとして機能する。NMOSトランジスタNM1~NMn+1は、その電流経路が順に直列接続される。キャパシタC1~Cnの一端はそれぞれ、NMOSトランジスタNM1~NMnの電流経路出力側の一端に電気的に接続される。キャパシタC1,C3,C5,…の他端にはクロック信号CLKが供給され、キャパシタC2,C4,C6,…の他端にはクロック信号/CLKが供給される。
【0079】
NMOSトランジスタNM1の電流経路入力側の一端には、電圧VSUP(例えば電源電圧VDD)が供給される。そして、例えば電源電圧VDDの振幅を有するクロック信号CLK,/CLKによって、キャパシタC1~Cnは充放電を繰り返し、入力電圧VSUPは昇圧されて順次後段に転送される。この結果、トランジスタNMn+1の電流経路出力側には、電圧VSUPよりも大きい出力電圧VOUTが発生する。
【0080】
チャージポンプ回路41は、ダイオード接続されたNMOSトランジスタの各段において、異なるレベルの電圧を発生することができる。電圧生成回路28は、チャージポンプ回路41の出力から上述した書き込み及び読み出し等に必要な複数種類の電圧を発生する。
【0081】
図8では電圧生成回路28に構成される各回路のうち、チャージポンプ回路41の出力を用いてプログラム電圧VPGMを発生するVPGM生成回路40を示している。チャージポンプ回路41の出力VOUTは、電圧VPGMHとして出力回路43に供給される。出力回路43は、電圧VPGMHが供給される電源ラインと出力ノードNとの間に、電流経路が直列接続された2つのPMOSトランジスタPM1,PM2が接続される。トランジスタPM1のソース及びゲートは電源ラインに接続される。IタイプのトランジスタPM2のソース及びゲートはトランジスタPM1のドレインに接続され、ドレインは出力ノードNに接続される。
【0082】
出力ノードNと基準電位点との間には、NMOSトランジスタNM11の電流経路、抵抗R1,可変抵抗R2及びNMOSトランジスタNM12の電流経路が直列接続される。抵抗R1,R2の接続点は比較器44の一方入力端に接続される。比較器44の他方入力端には基準電圧VREFが印加される。比較器44は、抵抗R1,R2の接続点の電圧が基準電圧VREFよりも高い期間において、クロック制御回路42に停止信号を出力する。クロック制御回路42は、比較器44から停止信号が出力されている期間には、クロック信号CLK,/CLKの発生を停止するようになっている。トランジスタNM11,NM12、抵抗R1,R2及び比較器44によって、リミット回路が構成される。
【0083】
トランジスタPM1,PM2はいずれもダイオード接続されており、出力回路43に供給された電圧VPGMHは、トランジスタPM1,PM2の閾値電圧分だけ低下して出力ノードNに現れる。電圧VPGMHとして、プログラム電圧VPGMよりもトランジスタPM1,PM2の閾値電圧分だけ高い電圧を設定することで、出力ノードNからプログラム電圧VPGMを発生させることができる。
【0084】
トランジスタNM11,NM12は、シーケンサ27から制御信号が供給されて(図示省略)、リミット回路を機能させる期間においてオンになる。トランジスタNM11,NM12のオンの期間には、出力ノードNに現れる電圧は抵抗R1,R2により分圧される。抵抗R1,R2の接続点の電圧は、比較器44において基準電圧VREFと比較される。基準電圧VREFは、出力ノードNに現れる電圧が規定のプログラム電圧VPGMである場合の抵抗R1,R2の接続点の電圧に設定される。従って、出力ノードNに現れる電圧が規定のプログラム電圧VPGMを超えると、抵抗R1,R2の接続点の電圧が基準電圧VREFよりも高くなり、比較器44から停止信号が発生する。この停止信号によって、クロック制御回路42はクロック信号CLK,/CLKの発生を停止する。この結果、チャージポンプ回路41の出力電圧が低下して、出力ノードNの電圧上昇が抑制され、出力ノードNの電圧は、規定のプログラム電圧VPGMに維持される。
【0085】
(浮き電位)
ところで、抵抗R1,R2の抵抗値は、消費電力の増加を抑制するために、出力ノードNから基準電位点に流れる電流を小さくするように、十分に大きな抵抗値に設定される。このため、複数のプレーンを対象とするマルチプレーン動作をする場合においては、プログラム電圧VPGMに浮き電位が生じ、結果的に書き込み時間が長くなるという不具合がある。
【0086】
図10は横軸に時間をとり縦軸に電圧をとって、プログラム電圧VPGMの浮き電位を説明するためのグラフである。
図10は、
図2に示す構成において、単一のプレーンを対象としたプログラム動作をする場合の選択ワード線(WLn)に印加される電圧の波形(細い実線)と、4つのプレーンを対象としたプログラム動作をする場合の選択ワード線(WLn)に印加される電圧の波形(太い実線)を示している。なお、細い実線は破線枠で囲った部分を除いて太い実線と略重なっている。また、隣接ワード線(WLn±1)に印加される電圧の波形(破線)は、単一のプレーンを対象としたプログラム動作をする場合も、4つのプレーンを対象としたプログラム動作をする場合も、略同一である。
【0087】
図10の破線に示すように、隣接ワード線(WLn±1)においてVPASSは、VPASS_SHIFTにシフトする。このPVASS_SHIFTへの電圧上昇によって、太い実線に示すように、選択ワード線におけるプログラム電圧VPGMはブーストされる。
【0088】
VPASS_SHIFTによってプログラム電圧VPGMが所望の電圧を超えた後、単一のプレーンを対象としたプログラム動作である場合には、VPGM生成回路40のリミット回路が動作し、1つのプレーンの選択ワード線からTS30、MUXスイッチ29、電圧生成回路28中のVPGM生成回路40の出力ノードNを経由して、リミット回路から基準電位点に僅かずつ放電が行われることで、選択ワード線(WLn)の電圧はプログラム電圧VPGMで安定する。
【0089】
これに対し、マルチプレーン動作の場合においては、選択ワード線(WLn)におけるプログラム電圧VPGMは、隣接ワード線(WLn±1)においてVPASSがPVASS_SHIFTまで上昇することで、ブーストされた後、プログラム電圧VPGMが本来設定すべき電圧値を超えた状態であっても、上述したように、VPGM生成回路40中のリミット回路による放電量が小さい。従って、4つのプレーンPB0~PB3の各選択ワード線からそれぞれのTS30を経由し、MUXスイッチ29、電圧生成回路28中のVPGM生成回路40の出力ノードNを介して、リミット回路により放電を行ったとしても、
図10の細い実線に示すように、選択ワード線(WLn)の電圧をプログラム電圧VPGMまでを十分に低下させることができない。この結果、
図10における破線枠で囲まれた領域に示すような浮き電位が生じる。また、この浮き電位の状態は、同時動作プレーン数によって異なる。
【0090】
つまり、同時動作プレーン数によってプログラム電圧VPGMの変化にばらつきが生じ、プログラムのループ数に影響を与える。こうして、マルチプレーン動作の場合には、結果的に書き込み時間が長くなってしまう。
【0091】
(構成)
そこで、本実施形態においては、プログラム電圧VPGMを減少させるための放電回路を設け、VPASS_SHIFTに応じて放電回路を制御することにより、同時動作プレーン数に拘わらずプログラム電圧VPGMの均一化を図る。
【0092】
図11は放電回路50を設けた電圧生成回路28及びMUXスイッチ29の具体的な構成の一例を示す回路図である。
図11は、電圧生成回路28を構成する各回路のうち、VPGM生成回路40,VPASS生成回路45及びVPASS2生成回路46と、MUXスイッチ29を構成する各回路のうち
図11に示した電圧生成回路28に対応する回路部分のみを示している。
【0093】
電圧生成回路28には、VPGM生成回路40の外、VPASS生成回路45及びVPASS2生成回路46が構成されている。VPASS生成回路45及びVPASS2生成回路46は、VPGM生成回路40と同様の構成であり、それぞれ電圧VPASS、電圧VPASS_SHIFTを発生する。
【0094】
MUXスイッチ29は、トランジスタにより構成された複数のスイッチT01~T03,スイッチT11~T13,…,スイッチT71~T73を有する。VPGM生成回路40からのプログラム電圧VPGMは、スイッチT01,T11,…,T71に供給され、VPASS生成回路45からの電圧VPASSは、スイッチT02,T12,…,T72に供給され、VPASS2生成回路46からの電圧VPSS_SHIFTは、スイッチT03,T13,…,T73に供給される。スイッチT01~T03,スイッチT11~T13,…及びスイッチT71~T73は、それぞれ信号線CG0,CG1,…,CG7に接続される。
【0095】
スイッチT01~T03,スイッチT11~T13,…及びスイッチT71~T73は、シーケンサ27により制御されて、信号線CG0~CG7にプログラム電圧VPGM,VPASS,VPASS_SHIFTを供給する。
【0096】
本実施形態においては、VPGM生成回路40とスイッチT01,T11,…,T71とを接続する配線、即ち、出力ノードNに接続される配線には、放電回路50が接続される。放電回路50は、出力ノードNと基準電位点との間に直列接続された可変抵抗R3及びNMOSトランジスタNM13により構成される。トランジスタNM13は、ドレインが可変抵抗R3に接続され、ソースが基準電位点に接続されて、ゲートにシーケンサ27からの制御信号(図示省略)が入力される。トランジスタNM13は、シーケンサ27によってオン,オフが制御される。例えば、トランジスタNM13は、隣接ワード線にVPASS_SHIFTが印加される期間(以下、VPASS_SHIFT期間という)にオンとなるように設定されていてもよい。
【0097】
本実施形態においては、可変抵抗R3の抵抗値についても、シーケンサ27によって制御されるようになっている。シーケンサ27は、可変抵抗R3の抵抗値を例えば同時動作プレーン数に応じて変更する。例えば、シーケンサ27は、同時動作プレーン数が多い程、可変抵抗R3の抵抗値を小さくし、同時動作プレーン数が少ない程、可変抵抗R3の抵抗値を大きくする。これにより、同時動作プレーン数が多い場合には、放電回路50による放電電流量を増加させて、プログラム電圧VPGMの浮き電位を抑制し、同時動作プレーン数が少ない場合には、放電回路50による放電電流量を減少させて、消費電力を抑制する。
【0098】
なお、
図11では、放電回路50を可変抵抗R3及びトランジスタNM13により構成する例を示したが、出力ノードNと基準電位点との間に、抵抗とスイッチの直列回路を複数並列に設ける構成にしてもよい。並列に配置されたこれらの抵抗の抵抗値を同時動作プレーン数に応じた異なる抵抗値に設定する。この場合には、シーケンサ27がスイッチを選択的にオンにすることによって、異なる抵抗値の抵抗を選択的に出力ノードNと基準電位点との間に接続することが可能である。あるいは、シーケンサ27は、同時動作プレーン数に応じてオンにするスイッチの数を変化させ、出力ノードNと基準電位点との間に接続する同一又は異なる抵抗値の抵抗の数を変化させる構成であってもよい。
【0099】
なお、
図11では、放電回路50を電圧生成回路28内に設ける例を示したが、VPGM生成回路40の出力ノードNからTS30の入力端までのいずれの経路上に放電回路50を配置してもよい。
【0100】
図12はTS30及びロウデコーダ25の具体的な構成の一例を示すブロック図であり、電圧生成回路28からワード線までの配線経路を説明するものである。
【0101】
上述したように、電圧生成回路28は、メモリセルトランジスタMTに対するプログラム動作及び読み出し動作等に必要な電圧を含む各種電圧を発生する。即ち、電圧生成回路28は、信号線SG0~SG4に電圧を供給する回路(図示省略)と、信号線CG0~CG7にそれぞれ電圧を供給する上述したVPGM生成回路40、VPASS生成回路45及びVPASS2生成回路46を含む。電圧生成回路28からの各種電圧はMUXスイッチ29に供給される。
【0102】
図12において、MUXスイッチ29は、
図11のスイッチT01~T03,スイッチT11~T13,…,スイッチT71~T73により構成される複数のスイッチ回路29Bを有する。スイッチ回路29Bは、ワード線WL0~WL7に供給する電圧が電圧生成回路28から与えられて、これらの電圧をシーケンサ27の制御に従って信号線CG0~CG7に出力する。
【0103】
また、MUXスイッチ29は、スイッチ回路29Bと同様の構成のスイッチ回路29A,29Cを有する。スイッチ回路29Aは、選択ゲート線SGSに供給する電圧が電圧生成回路28から与えられて、この電圧をシーケンサ27の制御に従ってSG4信号線に出力する。スイッチ回路29Cは、選択ゲート線SGD0~SGD3に供給する電圧が電圧生成回路28から与えられて、これらの電圧をシーケンサ27の制御に従って信号線SG0~SG3に出力する。
【0104】
これらの信号線SG0~SG4,CG0~CG7は、プレーンデコーダ群31を構成する各プレーンデコーダ(TS)30により、各プレーンPBの信号線SG0~SG4,CG0~CG7に接続される。各TS30は、転送制御回路30A及びスイッチ回路群30Bにより構成される。スイッチ回路群30Bは、信号線SG0~SG4,CG0~CG7にそれぞれ対応するスイッチTR_PSG0~TR_PSG4,TR_PCG0~TR_PCG7を有している。各スイッチTR_PSG0~TR_PSG4,TR_PCG0~TR_PCG7は、MUXスイッチ29に接続された信号線SG0~SG4,CG0~CG7をそれぞれ各プレーンPBの信号線SG0~SG4,CG0~CG7に接続する。
【0105】
プレーンデコーダ群31の各TS30の転送制御回路30Aは、シーケンサ27に制御されて、プレーンPB0~PB3に接続された各スイッチ回路群30Bのうち1つのスイッチ回路群30Bの各スイッチTR_PSG0~TR_PSG4,TR_PCG0~TR_PCG7をオンにするための選択信号PLNSELを発生する。これより、MUXスイッチ29に接続された信号線SG0~SG4,CG0~CG7は、プレーンPB0~PB3のうちの1つのプレーンPB内の信号線SG0~SG4,CG0~CG7に電気的に接続される。
【0106】
更に、各プレーンPB内の信号線SG0~SG4,CG0~CG7は、ロウデコーダ25によって分岐されて、各ブロックBLKの配線に接続される。すなわち、信号線SG0~SG4は、グローバルドレイン側選択ゲート線として機能し、ロウデコーダ25を介して、各ブロックBLKにおけるローカル選択ゲート線としての選択ゲート線SGD0~SGD3に接続される。信号線CG0~CG7は、グローバルワード線として機能し、ロウデコーダ25を介して、各ブロックBLKにおけるローカルワード線としてのワード線WL0~WL7に接続される。信号線SG4は、グローバルソース側選択ゲート線として機能し、ロウデコーダ25を介して、各ブロックBLKにおけるローカル選択ゲート線としての選択ゲート線SGSに接続される。
【0107】
ロウデコーダ25は、各ブロックにそれぞれ対応した複数のスイッチ回路群25Aと、複数のスイッチ回路群25Aにそれぞれ対応して設けられる複数のブロックデコーダ25Bとを有している。各スイッチ回路群25Aは、信号線SG0~SG3と選択ゲート線SGD0~SGD3とをそれぞれ接続する複数のトランジスタTR_SG0~TR_SG3、信号線CG0~CG7とワード線WL0~WL7とをそれぞれ接続する複数のトランジスタTR_CG0~TR_CG7、信号線SG4と選択ゲート線SGSとを接続するトトランジスタTR_SG4を含む。トランジスタTR_SG0~TR_SG4およびトランジスタTR_CG0~TR_CG7の各々は、高耐圧トランジスタである。
【0108】
各ブロックデコーダ25Bは、ロウアドレスによって自身が指定された場合、トランジスタTR_SG0~TR_SG4およびトランジスタTR_CG0~TR_CG7のゲートに、ブロック選択信号BLKSELを供給する。これにより、ロウアドレスによって指定されるブロックデコーダ25Bからブロック選択信号BLKSELが供給されるスイッチ回路群25Aでは、トランジスタTR_SG0~TR_SG4およびトランジスタTR_CG0~TR_CG7がオン状態となって導通するため、電源生成回路28から信号線SG0~SG4及び信号線CG0~CG7に供給される電圧が、動作対象となるブロックBLKに含まれる選択ゲート線SGD0~SGD3、SGSおよびワード線WL0~WL7に供給される。
【0109】
即ち、電圧生成回路28、MUXスイッチ29、TS30及びロウデコーダ25により、選択ワード線WLにはプログラム電圧VPGMが供給され、非選択ワード線WLには電圧VPASSが供給され、隣接ワード線WLには電圧VPASS及び電圧VPASS_SHIFTが供給される。
【0110】
また、例えば、動作対象となるストリングユニットSUに属する選択ゲートトランジスタST1に接続される選択ゲート線SGD(SGD_sel)には電圧VSG_selが供給され、動作対象となるストリングユニットSUに属さない選択ゲートトランジスタST1に接続される選択ゲート線SGD(SGD_usel)には0V等の電圧VSG_uselが供給される。
【0111】
(作用)
次に、このように構成された実施形態の動作について
図13を参照して説明する。
図13はVPASS_SHIFT期間における放電動作を説明するための説明図である。
【0112】
プログラム期間においては、シーケンサ27は、選択ワード線(WLn)にプログラム電圧VPGMを印加し、非選択ワード線に電圧VPASSを印加するように制御を行う。また、シーケンサ27は、所定のプログラム電圧VPGMの印加期間の後半のVPASS_SHIFT期間において、隣接ワード線(WLn±1)の電圧VPASSを電圧VPASS_SHIFTに上げるVPASS_SHIFTを実行する。
【0113】
図13では、プレーンPB0に対するプログラムが行われ、他のプレーンPB1~PB3のプラグラムは行われていないことを示している。プレーンPB0の選択ワード線(WLn)には、プログラム電圧VPGMが印加され、隣接ワード線(WLn±1)には、所定のプログラム電圧VPGMの印加期間の前半に電圧VPASSが印加され、後半のVPASS_SHIFT期間に電圧VPASS_SHIFTが印加されている。隣接ワード線(WLn±1)の影響により、電圧VPASS_SHIFTの印加期間においては、プログラム電圧VPGMに浮き電位が生じやすい(
図13の破線波形)。
【0114】
しかし、本実施形態においては、シーケンサ27は、VPASS_SHIFT期間において、放電回路50のトランジスタNM13をオンにするための制御信号を出力する。これにより、VPASS_SHIFT期間においては、放電回路50の可変抵抗R3が基準電位点に接続される。そうすると、
図13の破線矢印に示すように、選択ワード線(WLn)からロウデコーダ25、TS30、MUXスイッチ29を経由し、放電回路50の可変抵抗R3を介して基準電位点に電流が流れる。この結果、
図13の波形に示すように、浮き電位が抑制されて、プログラム電圧VPGMは、略平坦なレベルを維持する。即ち、4プレーン動作の場合においてもプログラム電圧VPGMに浮き電位は生じない。
【0115】
更に、本実施形態においては、シーケンサ27は、同時動作プレーン数に応じて可変抵抗R3の抵抗値を変化させる。これにより、同時動作プレーン数に応じて放電回路50の放電電流量が変化することになり、浮き電位を適切に抑制することが可能である。こうして、同時動作プレーン数に拘わらず、マルチプレーン動作の場合と単一プレーン動作の場合とでプログラム電圧VPGMを均一にすることができ、結果的に書き込み時間を短縮することができる。
【0116】
また、実施形態における放電回路50は、電圧VPGMHを出力するVPGM生成回路40の出力回路43とは並列に設けられているため、浮き電位を抑制するためにVPGM生成回路40の出力回路43の放電能力を直接的に高める必要がない。従って、VPGM生成回路40の出力回路43に含まれる抵抗R1,R2の抵抗値を十分に大きく設定することができ、消費電力の増加を抑制することができる。
【0117】
図17は第1の実施形態の効果を説明するための説明図である。
図17は横軸に時間をとり縦軸に電圧をとって信号線CG0~CG7におけるプログラム電圧VPGMの変化を示すグラフを図表化したものである。
図17において、Beforeの欄は放電回路50を採用しない場合のプログラム電圧VPGM波形を示し、Afterの欄は本実施形態におけるプログラム電圧VPGM波形を示している。
【0118】
図17において、1P,2P,3P,4Pは、それぞれ同時動作プレーン数が1,2,3,4である例を示している。
図17のBeforの欄とAfterの欄との比較から明らかなように、放電回路50を採用した第1の実施形態によれば、配線上のいずれの位置においても、浮き電位が均一的に抑制され、VPASS_SHIFT期間におけるプログラム電圧VPGMは、同時動作プレーン数の相違に拘わらず均一に変化することが分かる。
【0119】
このように本実施形態においては、プログラム電圧VPGMの印加期間中のVPASS_SHIFT期間において、プログラム電圧VPGMを供給する配線に設けた放電回路を介して放電電流を流すことにより、マルチプレーン動作であってもプログラム電圧VPGMに生じる浮き電位を抑制することが可能である。この場合において、放電回路の放電電流量を同時動作プレーン数に応じて変化させることで、同時動作プレーン数に拘わらずプログラム電圧VPGMの均一化を図る。これにより、結果的に書き込み時間の短縮化が可能である。
【0120】
(変形例)
上記説明では、シーケンサ27は、放電回路50中の可変抵抗R3の抵抗値を同時動作プレーン数に応じて変化させる例を説明した。更に、シーケンサ27は、放電回路50中の可変抵抗R3の抵抗値を、プログラム電圧VPGMのレベルに応じて変化させるようにしてもよい。
【0121】
プログラム電圧VPGMのレベルが高い程、VPGM生成回路40中のリミット回路に流れる電流が大きいことから浮き電位のレベルは小さい。従って、シーケンサ27は、プログラム電圧VPGMのレベルが高い程、可変抵抗R3の抵抗値を高くして放電電流量を小さくし、プログラム電圧VPGMのレベルが低い程、可変抵抗R3の抵抗値を小さく放電電流量を大きくするように制御する。
【0122】
なお、この場合においても、第1実施形態と同様に、出力ノードNと基準電位点との間に複数の抵抗を配置し、スイッチによって出力ノードNと基準電位点との間に接続する抵抗を選択するようになっていてもよい。
【0123】
(第2の実施形態)
図14及び
図15は本発明の第2の実施形態に係り、
図14は第2の実施形態の不揮発性メモリの構成例を示すブロック図である。また、
図15は
図14中の複数のプレーンの具体的な構成の一例を示すブロック図である。
図14及び
図15において
図2及び
図3と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0124】
本実施形態はVPGM生成回路40に構成されるリミット回路による放電経路を、プレーンPB10~PB13(以下、これらを区別する必要がない場合には、プレーンPB1という)毎に設けることにより、単一プレーン構成の場合と同様に、浮き電位の抑制を可能にするものである。即ち、本実施形態においては、
図14及び
図15に示すように、電圧生成回路60及びMUXスイッチ29を各プレーンPB1内に構成すると共に、各プレーンPB1からTS30を省略するものである。
【0125】
電圧生成回路60は、
図11の電圧生成回路28から放電回路50を省略したものであり、他の構成は電圧生成回路28と同様である。即ち、電圧生成回路60内には
図8に例示したVPGM生成回路40が構成されており、VPGM生成回路40にはリミット回路による放電経路が構成されている。
【0126】
なお、電圧生成回路60及びMUXスイッチ29を各プレーンPB1内に設けたことから、プレーンPB1を選択して電圧を供給するためのTS30は省略される。
【0127】
このように構成された実施形態においては、VPGM生成回路40の出力ノードNには、単一のプレーンPB1の選択ワード線WLnが接続されることになる。この結果、VPGM生成回路40内のリミット回路により、単一プレーン構成時と同様の放電が行われて、浮き電位が抑制される。各プレーンPB1において、VPGM生成回路40内のリミット回路により同様の放電が行われることになり、各プレーンPB1間においてプログラム電圧VPGMの均一化を図ることができる。
【0128】
このように本実施形態においても、同時動作プレーン数に拘わらずプログラム電圧VPGMの均一化を図ることができ、結果的に書き込み時間の短縮化が可能である。
【0129】
なお、本実施形態においては、VPGM生成回路40中のリミット回路に流れる電流をプログラム電圧VPGMのレベルに応じて変化させるように構成してもよい。即ち、シーケンサ27は、プログラム電圧VPGMのレベルが高い程、リミット回路を構成する可変抵抗R2の抵抗値を高くして放電電流量を小さくし、プログラム電圧VPGMのレベルが低い程、可変抵抗R2の抵抗値を小さく放電電流量を大きくするように制御する。
【0130】
これにより、本実施形態においても、プログラム電圧VPGMのレベルに拘わらず、浮き電位を均一的に抑制することが可能である。
【0131】
(第3の実施形態)
図16は本発明の第3の実施形態を示すブロック図である。
図16において
図2と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。本実施形態のハードウェア構成は、電圧生成回路28に代えて電圧生成回路61を採用した点が
図2と異なる。本実施形態は同時動作プレーン数に応じて電圧VPASS_SHIFTのレベルを変化させることにより、プログラム電圧VPGMの均一化を図るものである。
【0132】
電圧生成回路61は、
図11の電圧生成回路28から放電回路50を省略したものであり、他の構成は電圧生成回路28と同様である。また、電圧生成回路61は、
図8に例示したチャージポンプ回路41及びクロック制御回路42、
図11に例示したVPASS生成回路45及びVPASS2生成回路46を備えている。電圧生成回路61は、シーケンサ27からの制御信号に基づいて、クロック制御回路42からのクロック信号CLK,/CLKのクロック数、チャージポンプ回路41の段数等を切換えることで、VPASS2生成回路46からの電圧VPASS_SHIFTのレベルを変更することができるようになっている。
【0133】
本実施形態においては、シーケンサ27は、電圧生成回路61を制御して、同時動作プレーン数に応じて、電圧VPASS_SHIFTのレベルを変更するようになっている。例えば、シーケンサ27は、同時動作プレーン数が多い程、電圧VPASS_SHIFTのレベルを小さくし、同時動作プレーン数が少ない程、電圧VPASS_SHIFTのレベルを大きくする。これにより、同時動作プレーン数が多い場合には、プログラム電圧VPGMのブースト量を抑制して浮き電位の発生を抑制し、同時動作プレーン数が少ない場合には、プログラム電圧VPGMのブースト量を大きくして、プログラム電圧VPGMの低下を抑制する。
【0134】
また、本実施形態においては、シーケンサ27は、プログラム電圧VPGMのレベルに応じて電圧VPASS_SHIFTのレベルを変化させるようにしてもよい。例えば、シーケンサ27は、プログラム電圧VPGMのレベルが高い程、電圧VPASS_SHIFTのレベルを大きくしてプログラム電圧VPGMの低下を抑制し、プログラム電圧VPGMのレベルが低い程、電圧VPASS_SHIFTのレベルを小さくプログラム電圧VPGMの浮き電位の発生を抑制するようにしてもよい。
【0135】
このように本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、同時動作プレーン数に拘わらずプログラム電圧VPGMに生じる浮き電位を抑制して、プログラム電圧VPGMを均一化することが可能である。これにより、結果的に書き込み時間の短縮化が可能である。
【0136】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0137】
1…メモリコントローラ、2…不揮発性メモリ、11…RAM、12…プロセッサ、13…ホストインターフェイス、14…ECC回路、15…メモリインターフェイス、16…内部バス、21…ロジック制御回路、22…入出力回路、23…メモリセルアレイ、24…センスアンプ、25…ロウデコーダ、26…レジスタ、27…シーケンサ、28…電圧生成回路、29…MUXスイッチ、30…TS、41…チャージポンプ回路、42…クロック制御回路、40…VPGM生成回路、45…VPASS生成回路、46…VPASS2生成回路、50…放電回路、R3…可変抵抗、NM13…トランジスタ。