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  • 特許-発電制御システム及び発電制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】発電制御システム及び発電制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20240805BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240805BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240805BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240805BHJP
   G05F 1/67 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02J3/32
H02J7/35 K
H02J13/00 301A
H02J13/00 311T
G05F1/67 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021060070
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156403
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】513009668
【氏名又は名称】ソーラーフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187218
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 宏光
(72)【発明者】
【氏名】相良 周作
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特許第6792272(JP,B1)
【文献】特開2020-137402(JP,A)
【文献】特開2021-027775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 3/32
H02J 7/35
H02J 13/00
G05F 1/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置から負荷へ供給される電力を制御する電力調整器と、
前記電力調整器から出力される電力量に関する閾値を設定する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、外部電源から前記負荷へ供給される受電電力量、前記電力調整器から出力される発電電力量、及び前記負荷による消費電力量のうちの少なくとも1つに関連する値の時間的な変動値に基づいて、前記閾値を設定するよう構成されており、
前記閾値は、前記変動値の絶対値が大きいほど小さい、発電制御システム。
【請求項2】
発電装置から負荷へ供給される電力を制御する電力調整器と、
前記電力調整器から出力される電力量に関する閾値を設定する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、外部電源から前記負荷へ供給される受電電力量、前記電力調整器から出力される発電電力量、及び前記負荷による消費電力量のうちの少なくとも1つに関連する値の時間的な変動値に基づいて、前記閾値を設定するよう構成されており、
前記制御装置は、前記受電電力量の時間的な変動値、又は前記消費電力量と前記発電電力量の差の時間的な変動値に基づいて、前記閾値を設定するよう構成されている、発電制御システム。
【請求項3】
前記外部電源へ向かう電力の流れを検知する逆潮流検出器を有し、
前記逆潮流検出器は、前記外部電源へ向かう電力の流れを検知すると、前記電力調整器から出力される電力を停止させる信号を前記電力調整器に送信するよう構成されている、請求項1又は2に記載の発電制御システム。
【請求項4】
発電装置から負荷へ供給される電力を制御する電力調整器から出力される発電電力量を制御することを含む発電制御方法であって、
外部電源から前記負荷へ供給される受電電力量、前記電力調整器から出力される前記発電電力量、及び前記負荷による消費電力量のうちの少なくとも1つに関連する値の時間的な変動値に基づいて、電力調整器から出力される発電電力量に関する閾値を設定することを含
制御装置が、前記変動値の絶対値が大きいほど前記閾値が小さくなるように前記閾値を設定する、発電制御方法。
【請求項5】
発電装置から負荷へ供給される電力を制御する電力調整器から出力される発電電力量を制御することを含む発電制御方法であって、
外部電源から前記負荷へ供給される受電電力量、前記電力調整器から出力される前記発電電力量、及び前記負荷による消費電力量のうちの少なくとも1つに関連する値の時間的な変動値に基づいて、電力調整器から出力される発電電力量に関する閾値を設定することを含み、
制御装置が、前記受電電力量の時間的な変動値、又は前記消費電力量と前記発電電力量の差の時間的な変動値に基づいて、前記閾値を設定する、発電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電制御システム及び発電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電装置や風力発電装置のような自家発電装置が注目されている。自家発電装置によって発電された電力のうちの余剰電力は、電力会社との売買契約に従って、商用の電力線への逆潮流によって電力会社に売られることがある。一方、売電させないという観点や、逆潮流による電圧変動を防止するという観点から、自家発電装置から電力会社への逆潮流を回避する技術も知られている(以下の特許文献1~2参照)。
【0003】
特許文献1では、逆潮回避のため、リミット電力以下となるよう発電電力が制御されることが記載されている。特許文献1では、制御部は、系統(商用電力線)からの受電電力が下方閾値を下回ると、リミット電力を減少させるよう設定し直す。
【0004】
特許文献2では、発電制御システムは、太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンデショナと、負荷に接続された受変電部と、パワーコンデショナの出力を制御する発電制御装置と、を備える。受変電部は、電力会社等からの商用電力線に接続されており、商用電力線から電力供給を受け負荷に電力を供給することができる。発電制御システムは、太陽電池の発電電力の上限値が消費電力の一次関数となるように出力指令値を算出する。パワーコンディショナは、上記の出力指令値に基づいて、発電電力が設定された上限値以下となるよう制御し、これにより太陽電池から商用電力線への逆潮流を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-175858号公報
【文献】特許第6364567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2では、逆潮流を防止するため、発電電力の上限値(リミット電力)が設定されている。このリミット電力は、通常、逆潮流を回避するため、逆潮流が生じる条件から十分な余裕を設けるよう設定される。
【0007】
この余裕が大きすぎると、パワーコンデショナにより発電電力が抑えられ、発電装置の発電能力を最大限発揮できない状況が多くなってしまうことがある。一方、この余裕が小さすぎると、発電電力量や負荷による消費電力量が急激に変化したときに、リミット電力による発電電力の制御が間に合わず、商用電力線へ向かう逆潮流が生じてしまう可能性が高くなる。
【0008】
したがって、発電電力量、消費電力量及び/又は受電電力量に応じて制御する改良された発電制御システム及び発電制御方法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様に係る発電制御システムは、発電装置から負荷へ供給される電力を制御する電力調整器と、前記電力調整器から出力される電力量に関する閾値を設定する制御装置と、を有する。前記制御装置は、外部電源から前記負荷へ供給される受電電力量、前記電力調整器から出力される発電電力量、及び前記負荷による消費電力量のうちの少なくとも1つに関連する値の時間的な変動値に基づいて、前記閾値を設定するよう構成されている。
【0010】
一態様に係る発電制御方法は、発電装置から負荷へ供給される電力を制御する電力調整器から出力される発電電力量を制御することを含む発電制御方法に関する。当該発電制御方法は、外部電源から前記負荷へ供給される受電電力量、前記電力調整器から出力される前記発電電力量、及び前記負荷による消費電力量のうちの少なくとも1つに関連する値の時間的な変動値に基づいて、電力調整器から出力される発電電力量に関する閾値を設定することを含む。
【発明の効果】
【0011】
上記態様によれば、発電電力量、消費電力量及び/又は受電電力量に応じて制御する改良された発電制御システム及び発電制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る電力供給システムのブロック図である。
図2】参考例における逆潮流が生じる条件からのマージンを示すグラフである。
図3】一実施形態に係る逆潮流が生じる条件からのマージンを示すグラフである。
図4】一実施形態に係る電力調整器の閾値の設定の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。以下の図面において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがあることに留意すべきである。
【0014】
図1は、一実施形態に係る電力供給システムのブロック図である。一実施形態に係る電力供給システム100は、発電装置200と、発電制御システム300と、負荷400と、受変電部600と、逆潮流検出器700と、を有していてよい。
【0015】
発電装置200は、例えば自家発電装置であってよい。自家発電装置は、発電装置200によって発電された電力を、発電装置200が設置されている施設と同じ施設内にある負荷400で消費するための装置である。発電装置200は、例えば太陽光発電装置、風力発電装置、水力発電装置、燃料電池等であってよい。
【0016】
太陽光発電装置や風力発電装置によって発電される電力の量は、自然環境によって大きく変動し得る。以下で説明するような電力調整器310から出力される電力量に関する閾値の設定は、このような発電電力量が大きく変動し得る発電装置200に対して、特に好適に利用できる。
【0017】
負荷400は、発電装置200及び外部電源10から供給された電力を消費する機器である。負荷400は、特に制限されないが、例えば、空調機器、照明機器、工作機器などであってよい。
【0018】
発電制御システム300は、電力調整器(パワーコンディショナ)310と、制御装置320と、を有していてよい。電力調整器310は、発電装置200から負荷400へ供給される電力を制御する。
【0019】
発電装置200は、直流電力を出力するよう構成されていてよい。この場合、電力調整器310は、発電装置200により出力された直流電力を交流電力に変換する変換部を有していることが好ましい。これにより、電力調整器310は、負荷400に向けて交流電力を出力できる。
【0020】
電力調整器310は、発電装置200に電気的に接続されており、出力電力の大きさを調整可能に構成されていてよい。これにより、電力調整器310は、例えば太陽光発電のような発電装置の特性に従って発電電力量を制御することができる。この制御は、例えばいわゆるMPPT法により発電電力が最大となるような制御であってよい。
【0021】
電力調整器310による電力の調整方法は、特に限定されない。電力の調整方法は、例えば、電圧の位相シフトすることによって生じる電圧差を使って制御する方法や、力率によって制御する方法等であってよい。
【0022】
電力調整器310は、電力線によって受変電部600と電気的に接続されている。受変電部600は、負荷400と電気的に接続されている。発電装置200によって発電された電力は、電力調整器310及び受変電部600を経由して、負荷400に分配され、負荷400により消費される。
【0023】
負荷400が複数存在する場合、受変電部600は、指定の負荷400に電力を分配する分電盤としての機能を有していてよい。
【0024】
受変電部600は、外部電源10と電気的に接続されている。外部電源10は、商用電力線に接続された電力会社のような発電施設であってよい。外部電源10から供給された電力は、受変電部600を経由して、負荷400に分配される。したがって、受変電部600は、複数の電源から受電した電力を、負荷400へ分配する。また、受変電部600は、電源からの供給電圧と負荷400の規格電圧に差がある場合、電気設備の規格電圧に応じて変電を行う変圧器の機能を備えていてもよい。
【0025】
電力供給システム100は、必要に応じて蓄電池250を有していても良い。この場合、発電装置200によって発電された電力のうちの少なくとも一部が蓄電池250に蓄えられてもよい。負荷400による消費電力が発電装置200の発電電力を超える場合、蓄電池250から負荷400へ向けて放電されてもよい。商用電力線を経由した外部電源10からの電力と蓄電池250の放電による電力の供給の優先順位は、適宜設定することができる。図1では、蓄電池250は、電力供給システム100に電気的に接続されている。この代わりに、蓄電池250は、不図示の充放電量計測器を介して受変電部600に電気的に接続されていてもよい。
【0026】
電力供給システム100は、各種の電力量を計測する計測器810,820,830を有していてよい。例えば、発電量計測器810は、電力調整器310から出力される電力量(以下、発電電力量と称することがある。)を計測する。受電量計測器820は、外部電源10から供給される電力量(以下、受電電力量と称することがある。)を計測する。消費量計測器830は、負荷400により消費される電力量、又は負荷400へ供給する電力量(以下、消費電力量と称することがある。)を計測する。
【0027】
制御装置320は、必要に応じて、所定の頻度で各種の計測器810,820,830から前述した各種の電力量を取得する。制御装置320は、取得した各種の電力量の値に基づいて、電力調整器310から出力される電力量に関する閾値を設定する。この閾値の設定の具体的な方法については後述する。
【0028】
発電量計測器810は、電力調整器310とは別個の装置であってもよい。この代わりに、発電量計測器810は、電力調整器310に内蔵されていてもよい。消費量計測器830は、受変電部600とは別個の装置であってもよい。この代わりに、消費量計測器830は、受変電部600に内蔵されていてもよい。
【0029】
制御装置320は、例えばCPUのような演算装置やRAMやROMのような記憶装置を含むコンピュータによって構成されていてよい。制御装置320は、電力調整器310とは別個に設けられた装置であってもよく、電力調整器310に内蔵された装置であってもよい。また、制御装置320は、電力調整器310とは別個に設けられた装置と電力調整器310に内蔵された装置の組合せ、すなわち分散処理装置であってもよい。
【0030】
逆潮流検出器700は、外部電源10へ向かう逆潮流を検出するよう構成されている。逆潮流は、電力調整器310から出力された発電電力量が、負荷400による消費電力量以上になったときに発生し得る。言い換えると、逆潮流は、外部電源10から供給される受電電力量が実質的にゼロになったときに発生し得る。
【0031】
逆潮流検出器700は、逆潮流を検出すると、電力調整器310から出力される電力を停止させる信号を出力する。これにより、逆潮流検出器700は、電力調整器310から出力される電力を強制的に停止する。電力調整器310が強制的に停止されると、所定の期間又は復旧作業が終えるまでの間、発電装置200から負荷400への電力の供給は停止される。
【0032】
電力調整器310は、制御装置320によって設定された閾値に基づいて、発電装置200から負荷400へ供給される電力を制御する。より具体的には、電力調整器310は、制御装置320によって設定された閾値(上限値)を超えないように、発電装置200から負荷400へ供給される電力量を制御する。この閾値は、外部電源10へ向かう逆潮流が生じる条件から十分な余裕(マージンM)を設けるよう設定される。これにより、逆潮流検出器700の作用によって電力調整器310が強制的に停止されることが防止される。
【0033】
以下、電力調整器310から出力される発電電力量に関する閾値(上限値)の設定について説明する。図2は、参考例における逆潮流が生じる条件からのマージンを示すグラフである。参考例は、特許文献1に記載されているように受電電力量が下方閾値を下回ったときに、リミット電力(閾値)を減少させるような制御を示している。
【0034】
図3は、一実施形態に係る逆潮流が生じる条件からのマージンを示すグラフである。図4は、一実施形態に係る電力調整器の閾値の設定の一例を示すグラフである。図2及び図3において、縦軸は、受電電力量、すなわち消費電力量と発電電力量との差(「消費電力量-発電電力量」)に相当する。縦軸において、正の値は、消費電力量が発電電力量より大きく、受電電力量が0より大きいことを示している。縦軸において、負の値は、消費電力量が発電電力量より小さいことを示している。このような負の受電電力量は、逆潮流が生じていることを意味する。
【0035】
参考例(図2)では、受電電力量、すなわち消費電力量と発電電力量の差が、時間とともに変動している。この受電電力量が0とマージンMとの間の範囲に入った場合、電力調整器310から出力される電力量の上限値(閾値)を低下させ、これにより、電力調整器310によって発電電力量が下げられる。しかしながら、図2に示すように、受電電力量の時間的な変動値が大きい場合、上記の閾値の低下処理が行われる前に、消費電力量が発電電力量より小さくなり、これにより逆潮流が生じてしまうことがある。例えば、図2に示す例では、時刻T1から時刻T2に至る際に、受電電力量が急激に変動し、逆潮流が生じている。
【0036】
このような逆潮流の発生は、外部電源10から負荷400へ供給される受電電力量、電力調整器310から出力される発電電力量、及び負荷400による消費電力量のうちの少なくとも1つが大きく時間的に変動する際に生じ得る。
【0037】
本実施形態では、制御装置320は、外部電源10から負荷400へ供給される受電電力量、電力調整器310から出力される発電電力量、及び負荷400による消費電力量のうちの少なくとも1つに関連する値の時間的な変動値に基づいて、電力調整器310から出力される電力量に関する閾値を設定するよう構成される。
【0038】
ここで、受電電力量、発電電力量及び消費電力量のうちの少なくとも1つに関連する前記値は、受電電力量、発電電力量及び消費電力量そのものであってもよく、受電電力量、発電電力量及び消費電力量へ換算できる値、又は受電電力量、発電電力量及び消費電力量から導出可能な値であってもよい。
【0039】
好ましくは、受電電力量、発電電力量及び消費電力量のうちの少なくとも1つに関連する前記値は、受電電力量そのもの、又は消費電力量と発電電力量の差であってよい。受電電力量、又はそれに相当する消費電力量と発電電力量の差が、正の有限値である場合、外部電源10に向かう逆潮流は生じていない。したがって、受電電力量そのもの、又は消費電力量と発電電力量の差は、逆潮流を防止するための閾値として好適に利用できる。
【0040】
電力調整器310から出力される電力量に関する閾値は、消費電力量と発電電力量の差、又は受電電力量の時間的な変動値の絶対値が大きいほど小さく設定されることが好ましい(図3及び図4参照)。電力調整器310から出力される電力量に関する閾値が小さくなると、電力調整器310から出力される発電電力量の最大値はより小さくなる。そのため、消費電力量と発電電力量の差、すなわち受電電力量は、大きくなる傾向になるので、図3に示すマージンMが大きくなる。すなわち、閾値が小さくなるほど、図3に示すマージンMは大きく設定され、これにより逆潮流が防止され易くなる。
【0041】
これにより、電力調整器310から出力される電力量に関する閾値は、図3に示すように、各種電力量、典型的には受電電力量が急減に変動する時間区域において小さく設定される。言い換えると、各種電力量、典型的には受電電力量が急減に変動する時間区域において、当該閾値は、逆潮流が生じる条件からより十分なマージンMを設けるよう設定される。
【0042】
したがって、受電電力量、発電電力量及び消費電力量のうちの少なくとも1つが急激に変動したとしても、消費電力量が発電電力量より小さくなることによる逆潮流の発生を抑制することができる。
【0043】
以下、電力調整器310から出力される電力に関する閾値(最大発電許容値)の設定の一例について、より詳細に説明する。まず、この閾値(最大発電許容値)をS(t)と定義する。また、受電電力量、発電電力量及び消費電力量のうちの少なくとも1つに関連する値をX(t)と定義する。ここで、「t」は時間を表す。
【0044】
この場合、閾値S(t)は、以下の式1によって表わされる。
S(t)=B-A×|X(t-Δt)-X(t)|/Δt (式1)
ここで、Δtは、例えば、制御装置320が各種電力量の値を取得する時間間隔であってよい。「A」及び「B」は、適宜設定されるパラメータである。なお、パラメータAはゼロではない値である。
【0045】
X(t)は、消費電力量C(t)、発電電力量G(t)及び受電電力量R(t)から算出可能な量であってよい。例えば、X(t)が受電電力量C(t)そのものである場合、閾値S(t)は、以下の式2によって表わされる。
S(t)=B-A×|R(t-Δt)-R(t)|/Δt (式2)
【0046】
この場合、制御装置320は、受電電力量R(t)の取得によって閾値S(t)を算出できる。
【0047】
また、別の例として、X(t)が、消費電力量C(t)と発電電力量R(t)の差である場合、閾値S(t)は、以下の式によって表わされる。
S(t)=B-A×|C(t-Δt)-R(t-Δt)-C(t)+R(t)|/Δt
【0048】
発電電力量G(t)、受電電力量R(t)及び消費電力量C(t)は、それぞれ前述した発電量計測器810、受電量計測器820及び消費量計測器830によって計測できる。
【0049】
ここで、パラメータA及びBは、少なくとも逆潮流が生じないよう十分なマージンMを設けるという観点から設定されればよい。パラメータA及びBは、過去の実績又は予め行われた実験により決められていてよい。
【0050】
パラメータBは、電力が安定しているとき、すなわち消費電力量C(t)、発電電力量G(t)及び受電電力量R(t)がほとんど時間変動しないときにおける閾値に相当する。パラメータBは、例えば消費電力量C(t)から所定の値(マージン)を減じた値によって定義されていてもよい。
【0051】
2つのパラメータA及びBは、発電装置200の性能や設置箇所、季節、時刻等に応じて設定してもよい。これにより、様々な条件に対応した閾値を設定することができる。
【0052】
また、制御装置320内の記憶装置に過去のデータを記憶して、最適なA、Bの値を算出できるように学習機能を備えさせることも可能である。例えば、発電装置200の使用条件に合わせて、発電電力量G(t)、受電電力量R(t)、消費電力量C(t)及びパラメータA,Bとの相関関係についてデータを蓄積し、制御装置320は、蓄積されたデータから、パラメータA,Bの最適な条件を設定することができる。
【0053】
図4は、一実施形態に係る電力調整器の閾値の設定の一例を示すグラフである。具体的には、図4は、上記の式2によって規定される閾値を示している。図4に示すように、閾値は、消費電力量C(t)、又はそれに相当する量の一次式によって定義されていてよい。ただし、Aは、負の値であることが好ましい。
【0054】
上記例の代わりに、パラメータA,Bは、電力量に関する値によって定義されていてもよい。例えば、パラメータBは、受電電力量R(t)、発電電力量G(t)及び消費電力量C(t)のうちの少なくとも1つに基づき設定されていてよい。この場合、制御装置320は、受電電力量、発電電力量及び消費電力量のうちの少なくとも1つと、前述の変動値X(t)とに基づいて閾値を設定する。この場合、制御装置320は、様々な複雑な条件に応じて、適宜閾値を設定できる。
【0055】
例えばパラメータBが、例えば消費電力量C(t)から所定の値を減じた値によって定義されている場合、電力調整器310は、発電電力量を消費電力量に追従させるように制御することができる。
【0056】
上述したように、実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0057】
例えば、前述した実施形態では、受電電力量、発電電力量及び消費電力量のうちの少なくとも1つに関連する値の時間的な変動値は、制御装置320による各種電力量の値を取得する時間間隔における差分によって算出されている(上記の式1も参照)。この代わりに、当該変動値は、対象とする値の時間的な変動を表すものであれば、この式1によって算出されることに制限されない。
【0058】
例えば、制御装置320は、消費電力量の時間的な変動値に基づいて、電力調整器310から出力される電力に関する前述の閾値を設定するよう構成されていてよい。この場合、前述の式1は、以下の式のように表記できる。
S(t)=B-A×|C(t-Δt)-C(t)|/Δt
例えば、受電電力量及び発電電力量が安定しており、かつ消費電力量が変動するような時間帯又は環境においては、逆潮流の防止のため、消費電力量の時間的な変動値に基づいて前述の閾値(又はマージン)を設定することが好ましいことがある。
【0059】
この代わりに、制御装置320は、発電電力量の時間的な変動値に基づいて、電力調整器310から出力される電力に関する前述の閾値を設定するよう構成されていてよい。この場合、前述の式1は、以下の式のように表記できる。
S(t)=B-A×|G(t-Δt)-G(t)|/Δt
例えば、受電電力量及び消費電力量が安定しており、かつ発電電力量が変動するような時間帯又は環境においては、逆潮流の防止のため、発電電力量の時間的な変動値に基づいて前述の閾値(又はマージン)を設定することが好ましいことがある。
【符号の説明】
【0060】
10 外部電源
100 電力供給システム
200 発電装置
300 発電制御システム
310 電力調整器
320 制御装置
400 負荷
600 受変電部
700 逆潮流検出器

図1
図2
図3
図4