(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】樹脂製容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/16 20060101AFI20240805BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20240805BHJP
B29C 49/12 20060101ALI20240805BHJP
B29C 49/64 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B29C49/16
B29C49/06
B29C49/12
B29C49/64
(21)【出願番号】P 2021075955
(22)【出願日】2021-04-28
(62)【分割の表示】P 2021505790の分割
【原出願日】2020-04-08
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2019074339
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019188812
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 清典
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-520334(JP,A)
【文献】特表2012-506329(JP,A)
【文献】特表2012-503564(JP,A)
【文献】特表2009-541084(JP,A)
【文献】特開平6-278195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/16
B29C 49/06
B29C 49/12
B29C 49/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出延伸ブロー成形法を用いたポリエチレンからなる樹脂製容器の製造方法であって、
射出成形により有底のプリフォームを形成する射出成形工程と、
前記プリフォームの温度を調整する温調工程と、
前記プリフォーム内にブローエアを導入すると共に、前記プリフォームの底部を延伸ロッドで押圧することで当該プリフォームを延伸させる延伸ブロー成形工程と、
前記射出成形工程から前記温調工程に前記プリフォームを搬送する第1の搬送工程と、
前記温調工程から前記延伸ブロー成形工程に前記プリフォームを搬送する第2の搬送工程と、を備え、
前記温調工程は、前記プリフォーム
を前記プリフォームの
内側および外側から加熱する処理を含んでおり、
前記第1の搬送工程、前記温調工程及び第2の搬送工程において、前記延伸ブロー成形工程へ搬入される時点の前記プリフォームの縦軸方向の長さが、前記射出成形工程で射出成形された時点の前記プリフォームの縦軸方向の長さに対して、少なくとも8%以上、収縮するように温調を行う、樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂製容器の製造方法であって、
前記延伸ブロー成形工程へ搬入される時点の前記プリフォームの縦軸方向の長さが、前記射出成形工程で射出成形された時点の縦軸方向の長さに対して、10%~20%収縮するように温調を行う、樹脂製容器の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程では、前記プリフォームの底部の厚さが、胴部の厚さの1/4以下となるように当該プリフォームを射出成形する、樹脂製容器の製造方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程は、
前記プリフォームの外形を規定する空間を有する射出成形用金型に溶融した樹脂材料
を充填する充填工程と、前記充填工程の後に実施され、前記射出成形用金型内で樹脂材料を冷却する冷却工程と、を備え、
前記冷却工程の時間が、前記充填工程の時間の2/5以下である、樹脂製容器の製造方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の樹脂製容器の製造方法であって、
前記プリフォームの材料として、メルトフローレートが0.3~1.0g/10minであるポリエチレンを用いる、樹脂製容器の製造方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる射出延伸ブロー成形法(ISBM)を用いた、ポリエチレンからなる樹脂製容器(ボトル)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種液体が収容される樹脂製容器の一つとして、ポリエチレン製容器が知られている。ポリエチレン(PE)、特に、高密度ポリエチレン(HDPE)は、耐薬品性・防水性・耐衝撃性・絶縁性に優れている。このため、ポリエチレン製容器は、例えば、薬品・漂白剤・牛乳・灯油等を収容するのに適している。
【0003】
ここで、樹脂製容器の製造方法としては、例えば、円筒状のパリソンにブローエアを吹き込んで成形するダイレクトブロー成形法と呼ばれる方法や、射出成形により形成された有底筒状のプリフォームを延伸ロッドにて延伸すると共に、ブローエアを吹き込んで成形する射出延伸ブロー成形法(ISBM)と呼ばれる方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2004-1314号公報
【文献】日本国特開2004-188866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
射出延伸ブロー成形法は、ダイレクトブロー成形法に比べて寸法精度が高く、延伸ロッドとブローエアとによる二軸延伸効果により物性を向上した容器を製造できるといった利点がある。
【0006】
しかしながら、ポリエチレン(PE)からなる樹脂製容器は、比較的小型のものしか射出延伸ブロー成形法によって成形することができなかった。すなわちポリエチレンからなる樹脂製容器は、下記のような材料の特性上の理由から、主としてダイレクトブロー成形法によって成形されている。
【0007】
ポリエチレン(PE)は、比較的軟らかいという特性(物性)を有し、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)等に比べて軟らかい材料である。このため、PEは、PET等とは異なりヒズミ固定特性が無く、ロッドによる延伸での肉厚調整が難しいという問題がある。
【0008】
ここで、ヒズミ固定特性とは、延伸プロセスの間、まずプリフォームの最も弱い部分(通常、最も高温の部分)が降伏点に達し、次に弱い部分が延び始める強度レベルに達するまで、配向によりその強度を増すという特性をいう。この過程は、プリフォームの各部分がほぼ同じ量延伸されるまで繰り返される。そのため、PET製のプリフォームでは、その形状や温度を適切に調整すれば、略均等な肉厚の容器を成形しやすく、延伸配向効果により強度を増した容器が得られやすい。
【0009】
これに対し、PE製のプリフォームでは、上述のようにヒズミ固定特性が無いためロッドによる延伸での容器の肉厚調整が難しく、十分かつ適切な強度や剛性、外観を備えたPE製の容器も得られ難い。さらに、PEは、PETやPP等に比べて結晶化温度が速いという特性を有し、射出成形により形成したプリフォームは容易に固化する。このため、PE製のプリフォームを延伸ブロー成形によって適切に膨らますのが難しいという問題がある。
【0010】
例えば、PE製のプリフォームを適切に膨らますためには、延伸ブロー成形時にプリフォームを融点に近い温度まで上昇させる必要があり、温度管理が難しい。また高温状態のPE製のプリフォームは非常に軟らかいため、延伸ロッドの接触やブローエアの圧力によって穿孔や破裂が生じ易いという問題もある。特に、PEの細口容器をブロー成形する場合は、細口容器に合わせた小径の延伸ロッドを用いる必要があるため、上記の穿孔や破裂といった不良はより生じ易くなる。
【0011】
またPEは、熱収縮率もPETやPP等に比べて大きいという特性を有する。このため、射出成形により形成されたPEからなるプリフォームは、延伸ブロー成形前に大きく収縮変形してしまい、プリフォームの変形量を考慮して延伸ロッドの下降量やブローエアの導入量を適切に調整することは難しい。
【0012】
さらにPEは、ブロー成形に適する温度幅が非常に狭く、縦横延伸倍率の許容範囲も狭い。
【0013】
これらの理由から、ポリエチレンからなる樹脂製容器は、主としてダイレクトブロー成形法によって成形されているのが現状である。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ポリエチレンからなる樹脂製容器を射出延伸ブロー成形法によって良好に形成することができる樹脂製容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する本発明の一つの態様は、射出延伸ブロー成形法を用いたポリエチレンからなる樹脂製容器の製造方法であって、射出成形により有底のプリフォームを形成する射出成形工程と、前記プリフォーム内にブローエアを導入すると共に、前記プリフォームの底部を延伸ロッドで押圧することで当該プリフォームを延伸させる延伸ブロー成形工程と、を備え、前記延伸ブロー成形工程は、最終ブローエアの圧力よりも低い圧力である予備ブローエアを前記プリフォーム内に導入し、前記プリフォームの底部に延伸ロッドを接触させない状態で当該プリフォームを延伸させる第1の工程と、前記第1の工程の後に実施され、前記予備ブローエアを前記プリフォーム内に導入すると共に、予め設定された設定速度で延伸ロッドを移動させて当該延伸ロッドによって前記プリフォームの底部を押圧することで、当該プリフォームを延伸させる第2の工程と、前記第2の工程の後に実施され、前記プリフォーム内に前記最終ブローエアを導入して当該プリフォームを延伸させる第3の工程と、を有する、樹脂製容器の製造方法にある。
【0016】
また、上記課題を解決する本発明の一つの態様は、射出延伸ブロー成形法を用いたポリエチレンからなる樹脂製容器の製造方法であって、射出成形により有底のプリフォームを形成する射出成形工程と、前記プリフォームの温度を調整する温調工程と、前記プリフォーム内にブローエアを導入すると共に、前記プリフォームの底部を延伸ロッドで押圧することで当該プリフォームを延伸させる延伸ブロー成形工程と、を備え、前記温調工程において、前記プリフォームを縦軸方向に収縮させることで均温化処理を行い、前記均温化処理において、前記縦軸方向と交わる方向への前記プリフォームの変形を発現させる、樹脂製容器の製造方法にある。
【発明の効果】
【0017】
かかる本発明では、ポリエチレン(PE)からなる樹脂製容器を射出延伸ブロー成形法によって良好に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る製造方法で製造される樹脂製容器の一例を示す図である。
【
図2】樹脂製容器を成形するためのプリフォームの一例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る樹脂製容器の製造装置の概略構成を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る樹脂製容器の製造方法を説明する概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る樹脂製容器の製造方法を説明する概略図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る樹脂製容器の製造方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
まずは、本実施形態に係る樹脂製容器の製造方法によって製造される中空容器(樹脂製容器)の形状の一例について説明する。
【0021】
図1に示すように、中空容器1は、一端側(上端側)に開口2を有する筒状のネック部3と、ネック部3に繋がる筒状の胴部4と、胴部4から連続する底部5と、を備えている。この中空容器(樹脂製容器)1は、比較的軟らかい樹脂材料、具体的には、ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)で形成されたものであり、耐薬品性、防水性、耐衝撃性、絶縁性に優れている。このような中空容器1は、例えば、薬品・漂白剤・牛乳・灯油等を内容物として充填するのに適している。
【0022】
この中空容器1は、中間成形品である有底のプリフォームを射出成形により形成した後、このプリフォームを延伸ブロー成形することによって形成される。つまり中空容器1は、射出延伸ブロー成形法(ISBM)によって形成される。なお中空容器1の材料(プリフォームの材料)は、ポリエチレンであればよいが、メルトフローレート(MFR)が0.3~4.0g/10min、より好ましくは0.3~2.0g/10min、更に好ましくは0.3~1.0g/10minであるポリエチレンを使用することが好ましい。
【0023】
図2に示すように、中空容器1を形成するためのプリフォーム10は、一端側(上端側)に開口12を有するネック部13と、ネック部13から連続する胴部14と、胴部14から連続する底部15とで構成されている。
【0024】
ネック部13は、中空容器1のネック部3と略同一形状に形成されている。またプリフォーム10の底部15は、胴部14よりも薄く形成されていることが好ましい。例えば、プリフォーム10の底部15の厚さt1は、胴部14の厚さt2の1/4以下となっていることが好ましい。また、プリフォーム10の胴部14の長さは、中空容器1の胴部4の長さの4/5以下、特に、中空容器1の胴部4の1/2~3/4となっていることが好ましい。
【0025】
以下、中空容器(樹脂製容器)1の製造方法について説明する。まずは中空容器1を製造する製造装置である射出延伸ブロー成形装置の概略構成について説明する。
【0026】
図3に示すように、射出延伸ブロー成形装置20は、いわゆるホットパリソン方式(1ステップ方式)の装置であり、機台21上に、射出成形部(射出成形装置)30と、温調部(温調装置)40と、延伸ブロー成形部(延伸ブロー成形装置)50と、取出し部(取出し装置)60と、を備えている。
【0027】
また、これら射出成形部30、温調部40、延伸ブロー成形部50及び取出し部60の上方には、回転盤22が設けられている。回転盤22は、機台21に対して上面視で、例えば、反時計回り方向に間欠的に回転可能となっている。なお回転盤22の周方向の4箇所にはネック型(リップ型)23が備えられ、プリフォーム10及び中空容器1は、このネック型23に保持されて回転盤22の間欠回転により所定の装置に順次搬送されるようになっている。
【0028】
図4に示すように、射出成形部30は、射出部(射出装置)35から射出される溶融した樹脂材料(ポリエチレン等)が射出成形用金型31のプリフォームの外形を規定する空間に導入され、上述した形状のプリフォーム10を成形する(射出成形工程)。射出成形されたプリフォーム10は射出成形用金型31から離型されて温調部40へと搬送される(第1の搬送工程)。温調部40は、射出成形されたプリフォーム10を温調用金型41により温調処理を実施し、プリフォーム10の温度を適正な温度に調整する(温調工程)。温度調整されたプリフォーム10は延伸ブロー成形部50へと搬送される(第2の搬送工程)。
【0029】
プリフォーム10は、このように射出成形部30から延伸ブロー成形部50まで搬送される間に温調(冷却)されて所定の大きさまで収縮する。言い換えれば、延伸ブロー成形部50へ搬入される際にプリフォーム10が所定の大きさまで収縮するように、射出成形部30から延伸ブロー成形部50までの間でプリフォーム10の温調(冷却)を行う。
【0030】
具体的には、第1の搬送工程、温調工程及び第2の搬送工程を介して延伸ブロー成形部50へ搬入される時点のプリフォーム10の縦軸方向の長さが、射出成形部30で射出成形された時点の縦軸方向の長さに対して、少なくとも8%以上、より好ましくは、10%~20%ほど大きく収縮するように温調を行う。この収縮現象により、プリフォーム10の均温化が進み、偏温が除去されるといった効果が得られ、成形性の向上を図ることができる。
【0031】
また射出成形工程は、射出成形用金型(射出コア型および射出キャビティ型を含む)41に形成されたプリフォーム10の外形を規定する空間に溶融した樹脂材料を導入する充填工程(射出工程、保圧工程を含む)と、導入された樹脂材料を射出成形用金型31内で冷却する冷却工程とからなる。射出成形用金型31には冷却媒体(温調媒体)が流され、10~100℃、好ましくは50~65℃に設定される。なお、射出コア型の温度を10~65℃(好ましくは10~30℃)、射出キャビティ型を50~100℃(好ましくは60~90℃)とし、射出コア型を射出キャビティ型より高い温度に設定するのが望ましい。
【0032】
樹脂材料がポリエチレンである場合は、プリフォーム10を延伸ブロー成形時まで融点(例えば150℃)に近い高温状態(例えば130℃)に維持させないと、結晶化による固化が促進し、プリフォーム10を適切に膨らますことができない。よって、射出成形工程では、プリフォーム10の内側の層(コア層)を厚く形成する一方、プリフォーム10の外表面側の層(スキン層)を薄く形成し、プリフォーム10に高い保有熱を持たせるのが望ましい。これを実現するために、冷却時間を短くさせるのが望ましく、例えば、冷却工程の時間を充填工程の時間の2/5以下に設定することが好ましい。
【0033】
また、温調工程では温調用金型41(プリフォーム10と非接触の加熱ポット型と非接触の加熱ロッド型(または接触する温調ロッド型))でプリフォーム10の収縮現象をほぼ終了させ、第2の搬送工程では、ほぼ収縮現象が起きないプリフォーム10をブロー成形型51に搬送するのが望ましい。これにより、延伸ブロー成形時に延伸ロッドの位置を適切に調整できるため、延伸ブロー成形時における延伸ロッドの不用意な接触によるプリフォーム10の底部15の穿孔や破裂を回避できる。このため、温調工程では、加熱ポットからの輻射熱によりプリフォーム10の温度低下を抑止するのと共に、第1の搬送工程と温調工程におけるプリフォーム10の収縮量を想定した長さの温調ロッドをプリフォーム10の内部に挿入して温調させるのが好ましい。加熱ポット型や加熱ロッド型は例えば200~250℃の温度に設定され、輻射熱でプリフォーム10を内外から加熱する。温調ロッド型は例えば60~100℃の範囲で適宜設定される。
【0034】
また延伸ブロー成形部(延伸ブロー成形装置)50は、延伸適正温度にて搬入されるプリフォーム10をブロー成形用金型(一対のブロー割型と一つの底型)に収容し、ロッドにより縦軸方向に延伸させると共に高圧流体(ブローエア)により横軸方向に延伸させる(膨らませる)。つまりプリフォーム10を延伸ブロー成形することにより、最終成形品である中空容器1を形成する(延伸ブロー成形工程)。ブロー成形用金型は内部に冷却媒体が流され、5~30℃に設定される。このように形成された中空容器1は、取出し部60まで搬送された後、この取出し部60から外部に取り出される(取出し工程)。
【0035】
そして本実施形態は、このような射出延伸ブロー成形装置20による中空容器(樹脂製容器)1の製造方法に特徴があり、特に、延伸ブロー成形部(延伸ブロー成形装置)50で実施される延伸ブロー成形工程に特徴がある。
【0036】
以下では、
図5を参照し、中空容器(樹脂製容器)1の製造方法における延伸ブロー成形工程ついて詳しく説明する。
【0037】
延伸ブロー成形部50では、プリフォーム10を延伸ブロー成形することによって中空容器(樹脂製容器)1を形成する。延伸ブロー成形部50は、
図5に示すように、ブロー成形型51と、延伸ロッド52とを備えている。ブロー成形型51は、開閉可能なブロー成形割型53と、ブローコア型54と、ブロー底型55と、を備えている。ブローコア型54には、延伸ロッド52が上下方向に移動可能に挿通される挿通孔56が形成されている。また図示は省略するが、延伸ブロー成形部50は、ブローコア型54の挿通孔56を介して加圧気体を供給する供給部を備えている。
【0038】
そして延伸ブロー成形部50では、ブロー成形型51内に配置されたプリフォーム10を延伸ロッド52により縦軸方向に延伸させると共に、供給部から供給される加圧気体(ブローエア)により、ブロー成形型51の内壁面に接触するまで径方向に延伸させる。これにより、最終成形品である中空容器(樹脂製容器)1が形成される。
【0039】
具体的には、延伸ブロー成形部50にて実施される延伸ブロー成形工程は、第1~第3の工程を含んで構成されている。
【0040】
まず第1の工程では、ブロー成形型51内に配置されたプリフォーム10内に、予め設定された最終ブローエア(プリフォーム10をブロー成形型51に強く押し付け中空容器1の形状に賦形させるためのブローエア)の設定圧力Pa(例えば2.5~3.5MPa)よりも低い圧力(例えば1.5MPa以下)のブローエア(予備ブローエア)を導入し、プリフォーム10の底部15に延伸ロッド52を接触させない状態でプリフォーム10を若干縦軸方向および横軸方向に延伸させる。すなわち第1の工程では、プリフォーム10内に低圧のブローエアを導入することで、プリフォーム10を若干膨らませる(
図5(a))。これにより、細口容器のブロー成形のように細い(小径の)延伸ロッドを用いる場合であっても、プリフォーム10の底部15の穿孔や破裂を抑止できる。
【0041】
ここで、第1の工程における設定圧力Paは、少なくとも後述する第3の工程で導入されるブローエアの圧力よりも低く設定されていればよいが、極力低い圧力に設定されていることが好ましい(例えば、0.5MPa以下)。つまり第1の工程で導入されるプリフォームの圧力は、プリフォーム10を膨らませることができる程度にできるだけ低い圧力であることが好ましい。さらに、第1の工程のブローエア(予備ブローエア)の流速は、後述する第3の工程のブローエア(最終ブローエア)の流速よりも遅く設定されるのが望ましい。
【0042】
また第1の工程では、プリフォーム10を若干膨らませればよく、膨張後のプリフォーム10の大きさは特に限定されないが、例えば、プリフォーム10の胴部14がブロー成形型51の内面に接触しない程度であればよい。
【0043】
次に、第2の工程を実施する。第2の工程では、第1の工程と同様に設定圧力Paよりも低い圧力のブローエアをプリフォーム10内に導入すると共に、予め設定された設定速度Vaで延伸ロッド52を移動(下降)させる。これにより、ブロー成形型51内に配置されたプリフォーム10を、低圧のブローエアにより径方向に延伸させると共に、延伸ロッド52により縦軸方向に延伸させ、プリフォーム10をブロー成形型51の内面に接触する大きさまで膨張させる(
図5(b))。
【0044】
第2の工程における設定速度Vaは、延伸ロッド52がブローエアによるプリフォーム10の膨張に追従可能な程度に、できるだけ遅い速度に設定されていることが好ましい。すなわち、第2の工程において、延伸ロッド52によってプリフォーム10の底部15を押圧できる程度に、設定速度Vaは極力遅い速度に設定されていることが好ましい。
【0045】
また第2の工程におけるブローエアの圧力は、設定圧力Paよりも低く設定されていれていることが好ましいが、必ずしも設定圧力Paよりも低く設定されていなくてもよい。第2の工程におけるブローエアの圧力は、プリフォーム10が破裂等しない程度に適宜決定されればよく、具体的には、次工程である第3の工程でのブローエア(最終ブローエア)の圧力よりも低い圧力であればよい。
【0046】
次いで、第3の工程を実施する。第3の工程では、第2の工程で膨張したプリフォーム10内に、設定圧力Paよりも高い圧力のブローエア(最終ブローエア)を導入してプリフォーム10をさらに延伸させる。すなわち第3の工程では、プリフォーム10内に高圧のブローエアを導入し、プリフォーム10をブロー成形型51の内面に密着させる。これにより、所定の外観形状の中空容器1が形成される(
図5(c))。
【0047】
その後、中空容器1は、ブロー成形型51から離型され、延伸ブロー成形部50から取出し部60に搬送され、取出し部60から装置外に取り出される。
【0048】
以上のように本実施形態では、プリフォーム10を延伸ブロー成形して中空容器1を形成する延伸ブロー成形工程が、低圧のブローエア(予備ブローエア)でプリフォーム10を延伸させる第1の工程と、第1の工程と同じ圧力又は第1の工程よりも高く第3の工程(後述)よりも低い圧力の低圧のブローエア及び延伸ロッド52による押圧によってプリフォーム10を延伸させる第2の工程と、高圧のブローエア(最終ブローエア)によってプリフォームを延伸させる第3の工程とを備えるようにした。これにより、ポリエチレン(PE)からなる中空容器(樹脂成形品)1を良好に形成することができる。例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)からなる中空容器1であっても良好に形成することができる。
【0049】
また、上記第1~第3の工程を含む延伸ブロー成形工程によりプリフォーム10を延伸させることで、比較的軟らかい樹脂材料であるポリエチレン(高密度ポリエチレンを含む)を用いても、穿孔や破裂を生じさせることなく、中空容器1を良好に形成することができる。さらに中空容器1の肉厚の均一化や、中空容器1の表面の良化を図ることもできる。
【0050】
また本実施形態では、射出成形により形成されたプリフォーム10の底部15の厚さt1が胴部14の厚さt2の1/4以下となるようにしているため、プリフォーム10の底部15は、胴部14よりも硬化が進み易い(温度が低下し易い)。すなわち延伸ブロー成形部50において、プリフォーム10の底部15は、スキン層の比率が胴部14に比べて高くなる。したがって、延伸ブロー成形工程を実施する際、延伸ロッド52の接触によりプリフォーム10の底部15に穿孔や破裂が生じるのをより確実に抑制することができる。
【0051】
また本実施形態では、短時間で離型後の胴部14の表面温度が高くなる高温状態、例えば、離型後10秒以内に胴部14のスキン層の温度が樹脂材料の融点-10℃になる程度の高い保有熱を備えた高温状態で射出成形部30で離型し、射出成形により形成したプリフォーム10を温調・搬送するようにしたので、延伸ブロー成形部50に搬入されるプリフォーム10の均温化を図ることができ偏温を除去することができる。これにより、プリフォーム10を延伸ブロー成形することにより形成される中空容器1の肉厚分布の均一化を図ることができる。
【0052】
ここで、上述の実施形態で説明した第1の搬送工程、温調工程および第2の搬送工程は、以下に示す別の態様(以下、変形態様とする。)としてもよい。
図6は、第1の搬送工程、温調工程および第2の搬送工程の変形態様を示す模式図である。本変形態様において、
図6の(a)が第1の搬送工程、
図6の(b)および
図6の(c)が温調工程、
図6(d)が第2の搬送工程を示す。なお、本変形態様における温調部および温調用金型については、上述の実施形態と区別するためにそれぞれ温調部140および温調用金型141とし、その他の部材については同一の符号を用いて説明する。
【0053】
変形態様の第1の搬送工程では、射出成形されたプリフォーム10を射出成形用金型31から離型し、温調部140へと搬送する。変形態様の第2の搬送工程では、温調工程で温度を調製されたプリフォーム10をブロー成形型51に搬送する。この時、温調工程でプリフォーム10の収縮現象をほぼ終了させ、ほぼ収縮現象が起きないプリフォーム10をブロー成形型51に搬送すると、上述の実施形態で説明した理由と同様の理由で好ましい。
【0054】
変形態様の温調工程は、プリフォーム10を射出成型用金型31から温調部140へと移動させてすぐに、温調用金型141でプリフォーム10を加熱する加熱工程を含む。具体的には、温調用金型141の温調ロッドをプリフォーム10の内側部分に差し込み、温調用金型141の加熱ポットにプリフォーム10を収容して、プリフォーム10の内側および外側のスキン層の再加熱を行う(
図6の(b))。
【0055】
加熱工程の後、プリフォーム10を温調用金型141から解放し、温調部140にてプリフォーム10の縦軸方向に収縮させることで均温化処理を行う。当該均温化処理において、プリフォーム10の縦軸方向と交わる方向へのプリフォーム10の変形を発現させる(
図6(c))。プリフォーム10は、プリフォームが曲がり変形した後に(
図6(b)から
図6(c)にかけての変形)、曲がり変形が緩和(減少または終了)してほぼ曲がりのない状態に戻る(
図6(c)から
図6(d)にかけての変形)という過程をたどる。すなわち、変形態様の温調工程は、プリフォーム10を曲がり変形させつつ(水平方向の揺動を伴った変形をさせつつ)縦軸方向に収縮させる第1段階と、プリフォーム10の曲がり変形を緩和(減少または終了)しつつ、プリフォーム10を縦軸方向に収縮させる第2段階と、を含む。
【0056】
ここで、3ステーション型の1ステップ成形機では温調工程が実施されないため、ブロー成形前に時間をおいてプリフォーム10を均温化することができないか、またはブロー成形をする前にブロー成形部で時間を置く必要があり、ブロー時間が削られてしまう。上述の温調工程を備える樹脂製容器の製造方法では、射出成形に由来するプリフォーム10の偏温(保有熱が円周方向で非対称に存在すること)により、プリフォーム10の曲がり変形が発現する。曲がり変形の過程でプリフォーム10のコア層の熱がスキン層に移動することで均温化が図られ、曲がり変形も緩和されて曲がりがほとんどなくなる。延伸ブロー成形工程の前に、プリフォーム10の変形を発現させて均温化するための時間を温調工程で確保することで、延伸ブロー成形工程に適した状態でプリフォーム10を延伸することができる。また、HDPEを用いてプリフォームを成形する際に上記の変形を伴う均温化が好適に進行する。
【0057】
なお、上記の温調工程における加熱工程は必須の工程ではない。ただし、加熱工程によりプリフォーム10の内側および外側のスキン層の再加熱を行うことで、プリフォーム10の曲がり変形を伴う収縮を促進することができ均温化を好適に実施できるため、加熱工程を含むと好ましい。また、変形態様におけるプリフォーム10の収縮の程度としては、上述の実施形態で説明したものと同じとしても良い。
【0058】
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0059】
例えば、上述の実施形態では、第1の工程にて、プリフォーム内に延伸ロッドが挿入された状態で、プリフォーム内に低圧のブローエアを供給しているが、延伸ロッドは抜き取られた状態であってもよい。
【0060】
以下、上述した実施形態およびその変形から抽出される態様を列記する。
[1]
射出延伸ブロー成形法を用いたポリエチレンからなる樹脂製容器の製造方法であって、
射出成形により有底のプリフォームを形成する射出成形工程と、
前記プリフォーム内にブローエアを導入すると共に、前記プリフォームの底部を延伸ロッドで押圧することで当該プリフォームを延伸させる延伸ブロー成形工程と、を備え、
前記延伸ブロー成形工程は、
最終ブローエアの圧力よりも低い圧力である予備ブローエアを前記プリフォーム内に導入し、前記プリフォームの底部に延伸ロッドを接触させない状態で当該プリフォームを延伸させる第1の工程と、
前記第1の工程の後に実施され、前記予備ブローエアを前記プリフォーム内に導入すると共に、予め設定された設定速度で延伸ロッドを移動させて当該延伸ロッドによって前記プリフォームの底部を押圧することで、当該プリフォームを延伸させる第2の工程と、
前記第2の工程の後に実施され、前記プリフォーム内に前記最終ブローエアを導入して当該プリフォームを延伸させる第3の工程と、を有することを特徴とする樹脂製容器の製造方法。
[2]
[1]に記載の樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程では、前記プリフォームの底部の厚さが、胴部の厚さの1/4以下となるように当該プリフォームを射出成形することを特徴とする樹脂製容器の製造方法。
[3]
[1]又は[2]に記載の樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程は、前記プリフォームの外形を規定する空間を有する射出成形用金型に溶融した樹脂材料の充填する充填工程と、
前記充填工程の後に実施され、前記射出成形用金型内で樹脂材料を冷却する冷却工程と、を備え、
前記冷却工程の時間が、前記充填工程の時間の2/5以下である
ことを特徴とする樹脂製容器の製造方法。
[4]
[1]~[3]の何れか一つに記載の樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程と前記延伸ブロー成形工程との間に、前記プリフォームの温度を調整する温調工程をさらに備えることを特徴とする樹脂製容器の製造方法。
[5]
[4]に記載の樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程から前記温調工程に前記プリフォームを搬送する第1の搬送工程と、
前記温調工程から前記延伸ブロー成形工程に前記プリフォームを搬送する第2の搬送工程と、を備え、
前記第1の搬送工程、前記温調工程及び前記第2の搬送工程において前記プリフォームを縦軸方向に大きく収縮させることで均温化処理を行うことを特徴とする樹脂製容器の製造方法。
[6]
[1]~[5]の何れか一つに記載の樹脂製容器の製造方法であって、
前記プリフォームの材料として、メルトフローレートが0.3~1.0g/10minであるポリエチレンを用いることを特徴とする樹脂製容器の製造方法。
[7]
射出延伸ブロー成形法を用いたポリエチレンからなる樹脂製容器の製造方法であって、
射出成形により有底のプリフォームを形成する射出成形工程と、
前記プリフォームの温度を調整する温調工程と、
前記プリフォーム内にブローエアを導入すると共に、前記プリフォームの底部を延伸ロッドで押圧することで当該プリフォームを延伸させる延伸ブロー成形工程と、を備え、
前記温調工程において、前記プリフォームを縦軸方向に収縮させることで均温化処理を行い、
前記均温化処理において、前記縦軸方向と交わる方向への前記プリフォームの変形を発現させることを特徴とする樹脂製容器の製造方法。
[8]
[7]に記載の樹脂製容器の製造方法であって、
前記温調工程が、
プリフォームを曲がり変形させつつ縦軸方向に収縮させる第1段階と、
プリフォームの曲がり変形を緩和しつつ、プリフォームを縦軸方向に収縮させる第2段階と、を含むことを特徴とする樹脂製容器の製造方法。
[9]
[7]又は[8]に記載の樹脂製容器の製造方法であって、
前記温調工程が、前記プリフォームの変形を発現させる前に、前記プリフォームを加熱する加熱工程を含むことを特徴とする樹脂製容器の製造方法。
【0061】
なお、本願は、2019年4月9日付で出願された日本国特許出願(特願2019-074339)及び2019年10月15日付で出願された日本国特許出願(特願2019-188812)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 中空容器、2 開口、3 ネック部、4 胴部、5 底部、10 プリフォーム、12 開口、13 ネック部、14 胴部、15 底部、20 射出延伸ブロー成形装置、21 機台、22 回転盤、23 ネック型、30 射出成形部、35 射出部、40 温調部、50 延伸ブロー成形部、51 ブロー成形型、52 延伸ロッド、53 ブロー成形割型、54 ブローコア型、55 ブロー底型、56 挿通孔、60 取出し部