(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】レーダ装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/89 20060101AFI20240805BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G01S13/89
G01S7/03 230
(21)【出願番号】P 2021141121
(22)【出願日】2021-08-31
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朱 旭
(72)【発明者】
【氏名】森 浩樹
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-204513(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0287235(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0324162(US,A1)
【文献】国際公開第2021/014536(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0242990(US,A1)
【文献】特開2015-204576(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0089460(US,A1)
【文献】特開2020-085461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
G01N22/00-22/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナパネルを含むレーダ装置であって、
前記複数のアンテナパネルは、第1送信パネルと第1受信パネルと第2受信パネル、又は第1送信パネルと第2送信パネルと第1受信パネル、を含み、
前記第1送信パネルは
距離dのm倍の間隔の複数のアンテナを含み、
前記第1受信パネルは
前記距離dのn倍の間隔の複数のアンテナを含み、
前記距離dは、前記第1送信パネルから送信される電波の略半波長であり、
mは2以上の正の整数であり、
nは2以上の正の整数であり、
mとnは互いに素であり、
前記複数のアンテナパネルが前記第1送信パネルと前記第1受信パネルと前記第2受信パネルを含む場合、
前記第1送信パネルは第1面に配置され、
前記第1受信パネルは第2面に配置され、
前記第2受信パネルは第3面に配置され、
前記第1面と前記第2面の間に前記第1送信パネルの第1送信面と前記第1受信パネルの第1受信面とがあり、
前記第2面と前記第3面の間に前記第1受信パネルの第1受信面と前記第2受信パネルの第2受信面とがあり、
前記第1面と前記第2面のなす角は0度より大きく180度より小さく、
前記第2面と前記第3面のなす角は0度より大きく180度より小さく、
前記複数のアンテナパネルが前記第1送信パネルと前記第2送信パネルと前記第1受信パネルを含む場合、
前記第1送信パネルは第4面に配置され、
前記第2送信パネルは第5面に配置され、
前記第1受信パネルは第6面に配置され、
前記第4面と前記第5面の間に前記第1送信パネルの第1送信面と前記第2送信パネルの第2送信面があり、
前記第5面と前記第6面の間に前記第2送信パネルの第2送信面と前記第1受信パネルの第1受信面とがあり、
前記第4面と前記第5面のなす角は0度より大きく180度より小さく、
前記第5面と前記第6面のなす角は0度より大きく180度より小さい、レーダ装置。
【請求項2】
前記第2送信パネルは
前記距離dのm倍の間隔の複数のアンテナを含む、請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記第2送信パネルは
前記距離dのo倍の間隔の複数のアンテナを含み、
oは2以上の正の整数であり、
nとoは互いに素である、請求項1記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記第2受信パネルは
前記距離dのn倍の間隔の複数のアンテナを含む、請求項1記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記第2受信パネルは
前記距離dのp倍の間隔の複数のアンテナを含み、
pは2以上の正の整数であり、
mとpは互いに素である、請求項1記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記複数のアンテナパネルが前記第1送信パネルと前記第1受信パネルと前記第2受信パネルを含む場合、前記第1送信パネルと前記第1受信パネルと前記第2受信パネルの夫々に含まれる複数のアンテナは、一次元配列され、
前記複数のアンテナパネルが前記第1送信パネルと前記第2送信パネルと前記第1受信パネルを含む場合、前記第1送信パネルと前記第2送信パネルと前記第1受信パネルの夫々に含まれる複数のアンテナは、一次元配列される、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記複数のアンテナパネルが前記第1送信パネルと前記第1受信パネルと前記第2受信パネルを含む場合、前記第1送信パネルと前記第1受信パネルと前記第2受信パネルの各々に含まれる複数のアンテナは、二次元配列され、
前記複数のアンテナパネルが前記第1送信パネルと前記第2送信パネルと前記第1受信パネルを含む場合、前記第1送信パネルと前記第2送信パネルと前記第1受信パネルの夫々に含まれる複数のアンテナは、二次元配列される、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記複数のアンテナパネルが前記第1送信パネルと前記第2送信パネルと前記第1受信パネルを含む場合、
前記第1送信パネルに含まれる複数のアンテナは一次元配列され、
前記第2送信パネルに含まれる複数のアンテナは一次元配列され、
前記第1受信パネルに含まれる複数のアンテナは二次元配列され、
前記複数のアンテナパネルが前記第1送信パネルと前記第1受信パネルと前記第2受信パネルを含む場合、
前記第1送信パネルに含まれる複数のアンテナは一次元配列され、
前記第1受信パネルに含まれる複数のアンテナは二次元配列され、
前記第2受信パネルに含まれる複数のアンテナは二次元配列される、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記複数のアンテナパネルが前記第1送信パネルと前記第2送信パネルと前記第1受信パネルを含む場合、
前記第1送信パネルに含まれる複数のアンテナは二次元配列され、
前記第2送信パネルに含まれる複数のアンテナは二次元配列され、
前記第1受信パネルに含まれる複数のアンテナは一次元配列され、
前記複数のアンテナパネルが前記第1送信パネルと前記第1受信パネルと前記第2受信パネルを含む場合、
前記第1送信パネルに含まれる複数のアンテナは二次元配列され、
前記第1受信パネルに含まれる複数のアンテナは一次元配列され、
前記第2受信パネルに含まれる複数のアンテナは一次元配列される、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項10】
前記第1受信パネル、又は前記第1受信パネルと前記第2受信パネルに接続され、電波の反射物体の画像を生成する処理部をさらに備える、請求項1記載のレーダ装置。
【請求項11】
前記処理部は、前記第1受信パネルの受信信号により生成した第1画像と、前記第2受信パネルの受信信号により生成した第2画像とが重複する領域を含む場合、重複する領域の前記第1画像の画素値の平均値と前記第2画像の画素値の平均値に基づいて前記第1画像又は前記第2画像の重複する領域の画素値を補正する、請求項10記載のレーダ装置。
【請求項12】
前記距離dは、前記第1送信パネルから送信される電波の半波長である、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載のレーダ装置の方法であって、
少なくとも前記第1送信パネルから対象物に電波を放射し、
前記対象物から反射した電波を少なくとも前記第1受信パネルで受信する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レーダに関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象者(以下、対象者と称される)が危険物を保持しているか否かの検査を行うレーダ装置が提案されている。レーダ装置は、対象者に電波を放射し、対象者からの反射波を受信し、反射波に基づいて対象者が危険物を保持しているか否かを判定する。
【0003】
電波は対象者の表面で多くの方向に反射されるので、死角が生じることなく、対象者全体を検査するためには、多くのアンテナが必要であり、レーダ装置の構成が複雑である。さらに、多くのアンテナで送受信を行うので、検査時間が長い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Bingyuan Liang, Xiaozhou Shang, Xiaodong Zhuge , and Jungang Miao, “Accurate Near-Field Millimeter-Wave Imaging of Concave Objects - A Case Study of Dihedral Structures Under Monostatic Array Configurations”, IEEE transactions on geoscience and remote sensing, vol. 58, No 5, May 2020
【文献】Xiaodong Zhuge and Alexander G. Yarovoy, “Study on Two-Dimensional Sparse MIMO UWB Arrays for High Resolution Near-Field Imaging”, IEEE transactions on antennas and propagation, vol. 60, No. 9, September 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、簡単な構成で短時間に対象者を検査することができるレーダ装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るレーダ装置は、電波を送信又は受信する複数のアンテナパネルを含む。複数のアンテナパネルは、第1送信パネルと第1受信パネルと第2受信パネル、又は第1送信パネルと第2送信パネルと第1受信パネル、を含む。第1送信パネルは距離dのm倍の間隔の複数のアンテナを含む。第1受信パネルは距離dのn倍の間隔の複数のアンテナを含む。距離dは、第1送信パネルから送信される電波の略半波長である。mは2以上の正の整数である。nは2以上の正の整数である。mとnは互いに素である。
複数のアンテナパネルが第1送信パネルと第1受信パネルと第2受信パネルを含む場合、第1送信パネルは第1面に配置され、第1受信パネルは第2面に配置され、第2受信パネルは第3面に配置され、第1面と第2面の間に第1送信パネルの第1送信面と第1受信パネルの第1受信面とがあり、第2面と第3面の間に第1受信パネルの第1受信面と第2受信パネルの第2受信面とがあり、第1面と第2面のなす角は0度より大きく180度より小さく、第2面と第3面のなす角は0度より大きく180度より小さい。
複数のアンテナパネルが第1送信パネルと第2送信パネルと第1受信パネルを含む場合、第1送信パネルは第4面に配置され、第2送信パネルは第5面に配置され、第1受信パネルは第6面に配置され、第4面と第5面の間に第1送信パネルの第1送信面と第2送信パネルの第2送信面があり、第5面と第6面の間に第2送信パネルの第2送信面と第1受信パネルの第1受信面とがあり、第4面と第5面のなす角は0度より大きく180度より小さく、第5面と第6面のなす角は0度より大きく180度より小さい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るレーダ装置の構成の一例を説明する図。
【
図2】実施形態に係るレーダ装置の送信回路と受信回路の電気的構成の一例を説明するブロック図。
【
図3】実施形態に係るレーダ装置の送信回路と受信回路の電気的構成の他の例を説明するブロック図。
【
図4】実施形態に係る送信回路から出力されるチャープ信号の一例を説明する図。
【
図5】実施形態に係る受信回路の動作の一例を説明する図。
【
図6】実施形態に係るレーダ装置の検査原理を説明する図。
【
図7】実施形態に係る送信パネルと受信パネルに備えられるアレイアンテナの原理を説明する図。
【
図8】実施形態に係る送信パネルと受信パネルに備えられるアレイアンテナの第1例を説明する図。
【
図9】実施形態に係る送信パネルと受信パネルに備えられるアレイアンテナの第2例を説明する図。
【
図10】実施形態に係る送信パネルと受信パネルに備えられるアレイアンテナの第3例を説明する図。
【
図11】実施形態に係る送信パネルと受信パネルに備えられるアレイアンテナの第4例を説明する図。
【
図12】実施形態に係る送信パネルと受信パネルに備えられるアレイアンテナの第5例を説明する図。
【
図13】実施形態に係る送信パネルと受信パネルの配置の第1例を説明する図。
【
図14】実施形態に係る送信パネルと受信パネルの配置の第2例を説明する図。
【
図15】実施形態に係る送信パネルと受信パネルの配置の第3例を説明する図。
【
図16】実施形態に係る送信パネルと受信パネルの配置の第4例を説明する図。
【
図17】実施形態に係る送信パネルと受信パネルの配置の第5例を説明する図。
【
図18】実施形態に係る送信パネルと受信パネルの配置の第6例を説明する図。
【
図19】実施形態に係る送信パネルと受信パネルの配置の第7例を説明する図。
【
図20】実施形態に係る送信パネルと受信パネルの配置の第8例を説明する図。
【
図21】実施形態に係る送信パネルと受信パネルの配置の第9例を説明する図。
【
図22】実施形態に係るレーダ装置の動作の一例を説明するフローチャート。
【
図23】実施形態に係るレーダ装置の画像生成の第1例を説明する図。
【
図24】実施形態に係るレーダ装置の画像生成の第2例を説明する図。
【
図25】実施形態に係るレーダ装置の画像生成の第3例を説明する図。
【
図26】実施形態に係るレーダ装置の画像生成の第4例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。以下の説明は、実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、以下に説明する構成要素の構造、形状、配置、材質等に限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各要素のサイズ、厚み、平面寸法又は形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、互いの寸法の関係や比率が異なる要素が含まれることもある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して重複する説明を省略する場合もある。いくつかの要素に複数の呼称を付す場合があるが、これら呼称の例はあくまで例示であり、これらの要素に他の呼称を付すことを否定するものではない。また、複数の呼称が付されていない要素についても、他の呼称を付すことを否定するものではない。なお、以下の説明において、「接続」は直接接続のみならず、他の要素を介して接続されることも意味する。
【0009】
実施形態に係るレーダ装置は、例えば空港、駅、空港、ショッピングモール、コンサートホール、展示会場等の施設に設置され、対象者(施設の利用者)が危険物を保持しているか否かの保安検査をする際に利用される。例えば、対象者の各点に対し電波を順次放射し、対象者の各点によって反射された電波を順次受信することによって対象者が走査される。この走査により得られた受信信号に基づき対象者を含む画像が生成される。施設の管理者は、この画像を確認することにより、対象者が危険物を保持しているか否か、又は対象者の持ち物に危険物が隠されているか否か等を判断することができる。
【0010】
図1は、実施形態に係るレーダ装置1の構成の一例を示す図である。レーダ装置1は、複数枚の送信パネル2a、2b、2c、…、複数枚の受信パネル4a、4b、4c、…、送信回路6、受信回路8、画像生成回路10、画像処理回路12、コントローラ14、通信回路18及び表示装置16を含む。個別に区別する必要が無い場合、送信パネル2a、2b、2c、…は送信パネル2と称される。個別に区別する必要が無い場合、受信パネル4a、4b、4c、…は受信パネル4と称される。送信パネル2の枚数と受信パネル4の枚数はともに複数である必要はなく、いずれか一方の枚数は単数であってもよい。送信パネル2及び受信パネル4の夫々は基板上に一次元配列された複数のアンテナからなるリニアアレイアンテナ、又は基板上に二次元配列された複数のアンテナからなる平面アレイアンテナ又はプレーナアレイアンテナ(以降、プレーナアレイアンテナと称される)を備える。基板は平面基板でも曲面基板でもよい。アンテナの例は、マイクロストリップアンテナである。
【0011】
送信パネル2a、2b、2c、…の各々が含む複数のアンテナは互いに直交するように送信、例えば、時分割送信する。時分割送信は、送信パネル2aに含まれる第1アンテナ、第2アンテナ、…、送信パネル2bに含まれる第1アンテナ、第2アンテナ、…、送信パネル2cに含まれる第1アンテナ、第2アンテナ、…、の順に送信するような単純な巡回方式でもよい。あるいは、或るタイミングでレーダ送信を行う送信パネルのアンテナをコントローラ14が調整するようにして時分割送信を実行してもよい。
【0012】
送信パネル2が送信回路6に接続される。
図1では示されないが、送信回路6は各送信パネル2a、2b、2c、…に接続される複数の送信回路を含んでもよい。送信パネル2a、2b、2c、…は様々な位置に配置され、対象者に対して様々な方向から電波を放射する。受信パネル4が受信回路8に接続される。受信回路8も各受信パネル4a、4b、4c、…に接続される複数の受信回路を含んでもよい。受信パネル4a、4b、4c、…も様々な位置に配置され、対象者からの様々な方向の反射波を受信する。少なくとも1枚の送信パネルと複数枚の受信パネル、又は複数枚の送信パネルと少なくとも1枚の受信パネルを対象者の周囲の様々な位置に配置することにより、対象者全体を検査することができる。
【0013】
レーダ装置1は、所定の検査エリア全体に電波を常時放射して検査を実施してもよい。あるいは、レーダ装置1は、検査エリアに位置する対象者を撮影するカメラを含み、カメラで撮影された検査エリアの画像から対象者を認識し、対象者を認識した場合、認識した対象者に対してのみ電波を放射してもよい。
【0014】
実施形態で用いられる電波としては、波長が1ミリメートルから30ミリメートルの電波を利用してもよい。波長が1ミリメートルから10ミリメートルの電波はミリ波とも称され、波長が10ミリメートルから100ミリメートルの電波はマイクロ波とも称される。さらに、テラヘルツ波と称される波長が100マイクロメートルから1ミリメートルの電波を用いてもよい。
【0015】
レーダ装置1は、放射方向を変化しつつ電波の放射を繰り返し、対象者の複数の点に対して電波を放射することにより、対象者を電波で走査する。電波を放射すると、電波の伝搬路上に存在する物体で電波は反射される。レーダ装置1は、ある距離で反射された電波の反射強度を測定することにより、その距離に存在する物体が人体であるか、又は拳銃、爆薬等の危険物であるかを判定できる。レーダ装置1は、この判定結果をアラーム音等で出力する。
【0016】
画像生成回路10は、受信回路8から出力される受信パネル4a、4b、4c、…の受信信号に基づいて少なくとも対象物の一部の部分画像を生成する。画像処理回路12は、部分画像を合成し、合成画像を生成する。表示装置16は、合成画像を表示する。合成画像は、対象物が所持している危険物の画像も含むので、レーザ装置1のオペレータは、この画像を観察することにより、対象物が危険物を所持しているか否かは判断することができる。
【0017】
コントローラ14は、送信回路6、受信回路8、画像生成回路10、画像処理回路12及び通信回路18の動作を制御する。
【0018】
いくつかの回路、例えば、画像生成回路10と画像処理回路12は、レーダ装置1の外部装置、例えばサーバ装置に含まれるように構成されてもよい。通信回路18は、外部装置と通信し、受信回路8の出力を外部装置内の画像生成・処理回路に送信し、画像生成・処理回路の処理結果である合成画像を受信してもよい。また、通信回路18は合成画像をレーダ装置内またはレーダ装置外部のサーバ装置に送信し、合成画像をサーバ装置のデータベースに保存してもよい。さらに、表示装置16もレーダ装置1の外部に設けられてもよい。
【0019】
いくつかの回路、例えば画像生成回路10、画像処理回路12、コントローラ14は結合されて1つの回路として実現されてもよい。いくつかの回路、例えば画像生成回路10、画像処理回路12、コントローラ14は、ソフトウェアにより実現されてもよい。
【0020】
図2は送信回路6と受信回路8の電気的構成の一例を示すブロック図である。送信回路6は送信パネル2毎に設けられる。受信回路8は受信パネル4毎に設けられる。
図2は、送信パネル2aに接続される送信回路6aと、受信パネル4aに接続される受信回路8aを示す。送信パネル2aは、アンテナ2a-1、2a-2、2a-3、…を含む。受信パネル4aは、アンテナ4a-1、4a-2、4a-3、…を含む。
【0021】
送信回路6aはシンセサイザ22aとパワーアンプ24aとセレクタ25aを含む。シンセサイザ22で生成された信号がパワーアンプ24で増幅された後、セレクタ25aに入力される。セレクタ25aは、1つの入力端子と複数の出力端子を備え、1つの入力端子を複数の出力端子のいずれかに選択的に接続する。パワーアンプ24aの出力がセレクタ25aを介してアンテナ2a-1、2a-2、2a-3、…のいずれかに順次供給される。これにより、電波が送信パネル2aのアンテナ2a-1、2a-2、2a-3、…から検査エリアに時分割的に放射される。放射された電波は検査エリアに存在する全ての物体で反射され、反射波が受信パネル4で受信される。
【0022】
送信回路6aは送信回路6aの動作タイミングを制御するクロック信号を発生するクロック発生器も備え、クロック信号を受信回路8aにも送信する。これにより、送信回路6aと受信回路8aが同期して送受信を行うことができる。
【0023】
受信回路8aは、セレクタ27a、低雑音増幅器26a、ミキサ28a、ローパスフィルタ(LPF)30a、A/D変換器(ADC)32a、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation:FFT)回路34aを備える。受信パネル4aに含まれるアンテナ4a-1、4a-2、4a-3、…のいずれかから出力される受信信号はセレクタ27aに入力される。セレクタ27aは、1つの入力端子と複数の出力端子を備え、1つの入力端子を複数の出力端子のいずれかに選択的に接続する。これにより、アンテナ4a-1、4a-2、4a-3、…から出力される受信信号が低雑音増幅器26を介してミキサ28aの第1入力端子に入力される。ミキサ28aの第2入力端子にはシンセサイザ22aの出力信号が入力される。シンセサイザ22aとミキサ28aとの接続は、信号線を介する有線による接続でもよいし、無線による接続でもよい。ミキサ28aはシンセサイザ22aの送信信号と、アンテナ4a-1、4a-2、4a-3の受信信号を混合し、中間周波数(Intermediate Frequency:IF)信号を生成する。
【0024】
中間周波数信号はローパスフィルタ30aを介してA/D変換器32aに入力される。A/D変換器32aから出力されたディジタル信号は高速フーリエ変換回路34で解析され、後述するように物体の電波の反射強度が求められる。
【0025】
他の送信パネル2b、2c、…についても、送信回路6aと同様な送信回路がそれぞれ接続される。他の受信パネル4b、4c、…についても、受信回路8aと同様な受信回路がそれぞれ接続される。
【0026】
図3は送信回路6と受信回路8の電気的構成の他の例を示すブロック図である。
図3では、送信パネル2aに含まれる複数のアンテナ2a-1、2a-2、2a-3、…に複数のパワーアンプ24a-1、24a-2、24a-3、…がそれぞれ接続され、受信パネル4aに含まれる複数のアンテナ4a-1、4a-2、4a-3、…に複数の受信回路8a-1、8a-2、8a-3、…がそれぞれ接続される。受信回路8a-1、8a-2、8a-3、…のそれぞれは受信回路8aと同様な構成である。
【0027】
送信側では、1つのシンセサイザ22の出力が1つのセレクタ25を介して複数のパワーアンプ24a-1、24a-2、24a-3、…のいずれかに順次供給される。
図2では、シンセサイザ22aとパワーアンプ24aとセレクタ25aが送信回路6を構成するが、
図3では、パワーアンプ24a-1、24a-2、24a-3、…のそれぞれが送信回路に対応する。
【0028】
他の送信パネル2b、2c、…についても、パワーアンプ24a-1、24a-2、24a-3、…と同様なパワーアンプとセレクタ25aと同様なセレクタが接続される。他の受信パネル4b、4c、…についても、受信回路8aと同様な受信回路が接続される。
【0029】
図3では、1つの送信パネル2aに対して1つのシンセサイザ22が設けられ、1つのシンセサイザ22の出力が1つの送信パネル2aと1つの受信パネル4aの受信回路8に送信されているが、全ての送信パネル2に対して1つのシンセサイザ22が設けられ、1つのシンセサイザ22の出力が全ての送信パネル2と全ての受信パネルの受信回路に送信されてもよい。
【0030】
パワーアンプ24と受信回路8の動作タイミングを制御するクロック信号を発生するクロック発生器についてもシンセサイザ22と同様に、1つの送信パネル2aに対して1つのクロック発生器が設けられ、1つのクロック発生器の出力が1つの送信パネル2aと1つの受信パネル4aの受信回路に送信されてもよいし、全ての送信パネル2に対して1つのクロック発生器が設けられ、1つのクロック発生器の出力が全ての送信パネル2と全ての受信パネルの受信回路に送信されてもよい。
【0031】
レーダ方式としては種々の方式が採用可能であるが、ここでは、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式を採用するとする。シンセサイザ22a、22は時間の経過に応じて周波数が直線的に増加するFMCW信号を生成する。FMCW信号はチャープ信号とも称される。チャープ信号は、振幅Aを時間tの関数として表すと、
図4(a)に示すように表される。チャープ信号は、周波数fを時間tの関数として表すと、
図4(b)に示すように表される。チャープ信号は、
図4(b)に示すように、中心周波数fc、変調帯域幅fb、信号時間幅Tbにより表される。チャープ信号の傾きは周波数の変化レート(チャープレート)γと称される。
【0032】
送信パネル2から放射されるFMCW信号の送信波St(t)は、式1で表される。
【0033】
St(t)=cos[2π(fc×t+γt2/2)] 式1
チャープレートγは式2で表される。
【0034】
γ=fb/Tb 式2
このとき、送信パネル2(又は受信パネル4)から距離Rだけ離れた物体からの反射波は、送信タイミングからΔt=2R/cだけ遅れて観測される。cは光速である。受信信号Sr(t)はターゲットの反射強度をaとすると式3で表される。
【0035】
Sr(t)=a×cos[2πfc(t-Δt)+πγ(t-Δt)
2] 式3
図5は複数、例えば3つの物体が存在する場合の検出原理を示す。
図5(a)は送信信号と時間との関係及び受信信号と時間との関係を示す。
図5(a)に示すように、送信信号は時間とともに周波数が線形的に変化する。受信信号は、送信信号に対してΔtだけ遅延している。物体が複数ある場合、破線で示すように、最も近い物体からの反射波が最も早く受信され、一点鎖線で示すように、最も遠い物体からの反射波が最も遅く受信される。
【0036】
図2に示すように、ミキサ28で受信信号は送信信号と乗算され、LPF30に入力される。LPF30の出力信号はIF信号z(t)と称され、式4で表される。
【0037】
z(t)=a×cos(2πΔtγt) 式4
図5(b)はIF信号の周波数と時間との関係を示す。ノイズ等がない理想的な環境下では、反射波毎に周波数が一定となる。破線で示すように、最も近い物体からの反射波の周波数が最も低く、一点鎖線で示すように、最も遠い物体からの反射波の周波数が最も高い。
【0038】
式4に示す時間領域のIF信号z(t)をFFT回路34においてFFTすることにより周波数領域の反射強度が計算できる。したがって、IF信号のFFTの結果である周波数領域の各点での振幅がレーダからの距離毎の反射強度に対応する。周波数とレーダからの距離は式5の関係がある。
【0039】
f
if=Δtγ=2Rγ/c 式5
時間領域のIF信号をFFTすることで得られる反射強度と周波数の関係を
図5(c)に示す。このように、IF信号の周波数領域信号の振幅を求めることにより、送信パネル2(又は受信パネル4)からの距離毎の反射強度を求めることができる。
【0040】
上述の処理は、走査方向に沿った放射点毎に行われる。
【0041】
なお、レーダ方式としては、FMCWレーダ以外に、非線形チャープレーダ、周波数掃引型(SFCW(Stepped-Frequency Continuous Wave)レーダ、パルスレーダを用いてもよい。
【0042】
図6は、垂直方向の或る線に沿って対象者を電波で走査した時の反射強度の分布を示す。反射強度は電波を反射した物質によって異なる。
図6(a)は対象者が何も所持していない場合の反射強度分布を示す。電波は対象者の皮膚で反射されるので、放射点の位置に関わらず、電波の反射強度は変わらず、反射強度の分布はフラットな分布である。
図6(b)は対象者が、ほぼ中央に拳銃(金属)を所持している場合の反射強度分布を示す。金属は皮膚に比べて反射強度が高いので、拳銃の位置に対応する放射点の電波の反射強度は他の点の電波の反射強度に比べて高くなる。横軸は反射強度(右が反射強度が高い)であるので、電波の反射強度は右に凸な分布になる。
図6(c)は対象者が、ほぼ中央に爆薬を所持している場合の電波の反射強度分布を示す。爆薬は皮膚に比べて電波を良く吸収するので、爆薬の位置に対応する放射点の反射強度は他の点の反射強度に比べて低くなり、電波の反射強度は左に凸な分布になる。分布は少なくとも2点の反射強度の値の相違により特定できる。表示装置16が
図6に示す反射強度分布を表示し、オペレータがその形状を目視し、危険度を判定してもよい。
【0043】
コントローラ14は、走査線上の少なくとも2点の反射強度を取得すると、電波の反射強度の分布形状の違いに基づいて対象者が危険物を所持している可能性に関する危険度を判定できる。コントローラ14は、危険度を二値(危険か安全)で求めてもよいし、危険度の程度を示す多値の危険度(例えばかなり危険、やや危険、やや安全、かなり安全等)を求めてもよい。通信回路18を介してレーダ装置1に接続される外部装置が、人工知能を用いて危険度を判定してもよい。人工知能の一例として、機械学習がある。機械学習では、各点の電波の反射強度から危険度を求めるモデル(ニューラルネットワーク等)を表す演算回路が定義される。モデルは複数の段からなるノードからなる。各ノード間で情報を伝達する結合強度を示すパラメータが定義される。入力段には各点の電波の反射強度が入力され、出力段のノードから危険度が出力される。教師付き学習の場合、各点の電波の反射強度が演算回路に入力され、演算回路から出力された危険度が、施設の管理者又は学習専門者により与えられる教師データとしての危険度に近づくように上記パラメータが学習される。
【0044】
図7は送信パネル2と受信パネル4に備えられるアレイアンテナの原理を説明する。
図7は、アレイアンテナとしてプレーナアレイアンテナを用いる例を示す。リニアアレイアンテナは、プレーナアレイアンテナの一部であるので、
図7の説明はリニアアレイアンテナにも適用される。
【0045】
送信パネル2には一定間隔d(例えば略半波長(≒λ/2))の仮想的な格子が定義され、仮想的な格子の交点に複数のアンテナ42が配置され、アレイアンテナが構成される。このアレイアンテナでは、半波長アレイアンテナのように格子の全ての交点にアンテナ42が配置されるのではなく、格子の大半の交点(
図7の破線で示す円)には実際のアンテナ42が配置されない。複数のアンテナ42は、X方向に沿って間隔Dx1で、Y方向に沿って間隔Dy1で二次元配列される。Dx1はdのn1倍であり、Dy1はdのm1倍である。n1とm1は2以上の正整数であり、n1とm1は等しくてもよいし、異なってもよい。
図7は、一例としてm1=n1=3の場合のDx1=3d、Dy1=3dの例を示す。送信パネル2のアレイアンテナは、半波長アレイアンテナにおける配置より疎らに配置されたアンテナから構成され、半波長アレイアンテナよりも疎なアレイアンテナであり、隣り合うアンテナ間の干渉が生じることがない。
【0046】
略半波長は、アンテナ42が送信する電波の半波長(=λ/2)の最大で25パーセントのずれを含む値である。ずれは10%以下であることが要求される場合もある。
【0047】
受信パネル4にも一定間隔dの仮想的な格子が定義され、仮想的な格子の交点に複数のアンテナ44が配置され、アレイアンテナが構成される。このアレイアンテナでも、半波長アレイアンテナのように格子の全ての交点にアンテナ44が配置されるのではなく、格子の大半の交点(
図7の破線で示す円)には実際のアンテナ44が配置されない。複数のアンテナ44は、X方向に沿って間隔Dx2で、Y方向に沿って間隔Dy2で二次元配列される。Dx2はdのm2倍であり、Dy2はdのn2倍である。n2とm2は2以上の正整数であり、n2とm2は等しくてもよいし、異なってもよい。
図7は、一例としてm2=n2=4の場合のDx2=4d、Dy2=4dの例を示す。受信パネル4のアレイアンテナは、半波長アレイアンテナにおける配置より疎らに配置されたアンテナから構成され、半波長アレイアンテナよりも疎なアレイアンテナであり、隣り合うアンテナ間の干渉が生じることがない。
【0048】
m1とm2は互いに素である。例えばm1=3、m2=4である。n1とn2は互いに素である。例えばn1=3、n2=4である。
【0049】
2つのアレイアンテナのアンテナどうしの間隔が半波長のm倍とn倍であり、mとnが互いに素である2つのアレイアンテナを用いて生成される画像の分解能は、アンテナの間隔には無関係であり、アレイの開口サイズとアンテナのビームパターンにより決まる。アレイの開口サイズは自由に設定できるので、開口サイズを対象物の断面積と同じとすれば、アレイアンテナが対象物を完全にカバーすることができる。アンテナのビームパターンは、任意の位置の送信アンテナが対象物に電波を送信し、任意の位置の受信アンテナが対象物から反射された電波を受信することができるように設定される。そのため、送信パネル2と受信パネル4による電波の送受信により得られる画像の分解能は半波長アレイアンテナによる電波の送受信により得られる画像の分解能と一致させることができる。送信パネル2と受信パネル4のアンテナ数は夫々25個である。送信パネル2と受信パネル4をともに半波長アレイアンテナとした場合、送信パネル2と受信パネル4の全ての格子交点に配置されるアンテナの数は夫々169個である。第1実施形態によれば、アンテナ数を削減できる。アンテナ数が少ないと、送信/受信時間が短いとともに、受信信号のデータ量も少なく、演算時間も短い。
【0050】
アンテナが略半波長よりも広い間隔で配置されてなるアレイアンテナの特性を説明する。アンテナ数をNとし、アンテナ間隔をDとし、アンテナ間の励振位相差をβとし、対象物内の測定点の方角はアレイアンテナ面に対してθの角度であるとすると、2つのアンテナから送信された電波の伝搬位相差はkDcosθである。kは波数である。
【0051】
トータルの位相シフトψは式6で表される。
【0052】
ψ=kDcosθ+β 式6
送信と受信の往復を考慮すると、波数kは4π/λで表される。したがって、正規化された放射パターンは式7で表される。
【0053】
AF=(1/N)(sin(Nψ/2)/sin(ψ/2)) 式7
式7は、アレイアンテナの放射パターンの一般的な表現である。式7の最大値は式8の条件が満たされると得られる。
【0054】
ψ=kDcosθ+β=±2mπ 式8
ここで、m=[0,1,2,…]である。多くの場合、放射はアレイの軸に垂直な方向で最大になることが望ましい。第1の最大値がθ=π/2の方向で得られるためには、式9の条件が必要である。
【0055】
ψ=kDcosθ+β|θ=π/2=β=0 式9
このため、アレイファクタの最大値がアレイアンテナの軸に垂直な方向で最大になるためには、全てのアンテナが同じ励振位相である必要がある。しかしながら、D=λ/2であり、β=0であるので、トータルの位相シフトψは式10で表される。
【0056】
ψ=kDcosθ+β=2πcosθ|θ=π/2=±2π 式10
式10のψを式7に代入すると、アレイファクタの最大値はθ=0,πの場合に得られることが分かる。これは、アレイファクタは、3つの点(θ=0,π/2,π)で最大値となることを意味する。2つの追加の最大値はグレーティングローブと称される。さらに、D=2.5λ、β=0であるならば、θ=0の最大値は0<θ<π/2の角度範囲にシフトしθ=πの最大値はπ/2<θ<πの角度範囲にシフトし、2つの追加的なグレーティングローブが生じることが分かる。もしも、アンテナ間隔D=5λに広げられると、メインローブの両側にそれぞれ10本のグレーティングローブが生じる。
【0057】
したがって、アンテナ間隔D=nλ/2,n=1,2,3,…の場合、トータルの位相シフトψは式11、式12で表される。
【0058】
ψ=kDcosθ+β=2πncosθ 式11
2πncosθm=2mπ 式12
もし、式12を満たすθm(m=[0,1,2,…])があれば、θmはアレイファクタが最大値となる角度の集合である。すなわち、θm(m=[0,1,2,…])は式13で表される。
【0059】
θ
m=cos
-1(m/n) 式13
図7の送信パネル2のX方向のアンテナ間隔Dx1=m1×d(m1=3)と受信パネル4のX方向のアンテナ間隔Dx2=m2×d(m2=4)のm1とm2は互いに素であるので、同じ角度、すなわちアレイの垂直方向(Z方向)でアレイアンテナのアレイファクタが同時に最大値となることを式13は示す。
【0060】
図7の受信パネル4のY方向のアンテナ間隔Dy1=n1×d(n1=3)と受信パネル4のY方向のアンテナ間隔Dy2=n2×d(n2=4)のn1とn2は互いに素であるので、同じ角度、すなわちアレイの垂直方向(Z方向)でアレイアンテナのアレイファクタが同時に最大値となることを式13は示す。
【0061】
したがって、2つのアレイアンテナのグレーティングローブの位置は異なる。アンテナが略半波長よりも広い間隔で配置されてなるアレイアンテナによる電波の送受信により得られる画像では、グレーティングローブの位置に偽像(phantom)が生じる。したがって、アンテナ間隔が互いに素である2つのアレイアンテナによる送受信によって生じる偽像の位置は異なるので、2つのアレイアンテナによる送受信によって生じる2つの画像を画像処理することにより、偽像の影響を取り除くことができる。
【0062】
次に、
図8乃至
図12を参照して、レーダ装置1が備える少なくとも1枚の送信パネルと複数枚の受信パネルの組合せの例、又は複数枚の送信パネルと少なくとも1枚の受信パネルの組合せの例を説明する。
【0063】
図8は、レーダ装置1が少なくとも1(例えば1)枚の送信パネル2a-1と複数(例えば2)枚の受信パネル4a-1、4b-1を含む第1例を示す。第1例では、送信パネル2と受信パネル4はともにリニアアレイアンテナを備える。
【0064】
送信パネル2a-1は、X方向に沿って間隔D1で一次元配列された複数(n1)個のアンテナ501-50n1を含む。n1は2以上の正整数である。間隔D1は略半波長のd1倍である。d1は2以上の正整数である。
【0065】
受信パネル4a-1は、X方向に沿って間隔D2で一次元配列された複数(n2)個のアンテナ701-70n2を含む。n2は2以上の正整数であり、n1と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D2は略半波長のd2倍である。d2は2以上の正整数である。d2とd1は互いに素である。
【0066】
受信パネル4b-1は、X方向に沿って間隔D3で一次元配列された複数(n3)個のアンテナ721-72n3を含む。n3は2以上の正整数であり、n1又はn2と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D3は略半波長のd3倍である。d3は2以上の正整数であり、d2と等しくてもよいし、異なってもよい。d3とd1は互いに素である。d3とd2は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。
【0067】
レーダ装置1は3枚以上の受信パネル4を含んでもよい。3枚目以上の受信パネル4の構成は受信パネル4a-1、4b-1と同様である。送信パネル2と受信パネル4のリニアアレイアンテナの配列方向はX方向に限らず、任意の方向でよい。送信アンテナと受信アンテナは互換性があるので、
図8の例とは逆に、レーダ装置1は複数枚の送信パネル2と少なくとも1枚の受信パネル4を含んでもよい。
【0068】
図9は、レーダ装置1が少なくとも1(例えば1)枚の送信パネル2a-2と複数(例えば2)枚の受信パネル4a-2、4b-2を含む第2例を示す。第2例では、送信パネル2はリニアアレイアンテナを備え、受信パネル4はプレーナアレイアンテナを備える。
【0069】
送信パネル2a-2は、X方向に沿って間隔D4で一次元配列された複数(n4)個のアンテナ521-52n4を含む。n4は2以上の正整数である。間隔D4は略半波長のd4倍である。d4は2以上の正整数である。
【0070】
受信パネル4a-2は、X方向に沿って間隔D5で、Y方向に沿って間隔D6で二次元配列された複数(m1×n5)個のアンテナ741,1-74m1,n5を含む。n5は2以上の正整数であり、n4と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D5は略半波長のd5倍である。d5は2以上の正整数である。d5とd4は互いに素である。m1は2以上の正整数であり、n5と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D6は略半波長のd6倍である。d6は2以上の正整数であり、d5と等しくてもよいし、異なってもよい。d50とd6は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。
【0071】
受信パネル4b-2は、X方向に沿って間隔D7で、Y方向に沿って間隔D8で二次元配列された複数(m2×n6)個のアンテナ761,1-76m2,n6を含む。n6は2以上の正整数であり、n5と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D7は略半波長のd7倍である。d7は2以上の正整数であり、d5と等しくてもよいし、異なってもよい。d7とd4は互いに素である。d7とd5は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。m2は2以上の正整数であり、m1と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D8は略半波長のd8倍である。d8は2以上の正整数であり、d6と等しくてもよいし、異なってもよい。d17とd8は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。d8とd6は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。
【0072】
レーダ装置1は3枚以上の受信パネル4を含んでもよい。3枚目以上の受信パネル4の構成は受信パネル4a-2、4b-2と同様である。送信パネル2のリニアアレイアンテナの配列方向はX方向に限らず、任意の方向でよい。その場合、受信パネル4のプレーナアレイアンテナの配列方向はリニアアレイアンテナの配列方向とそれに交差する方向を含む。受信パネル2が備えるプレーナアレイアンテナの2つの配列方向の交差角度は90度に限らない。送信アンテナと受信アンテナは互換性があるので、
図9の例とは逆に、レーダ装置1はプレーナアレイアンテナを備える複数枚の送信パネル2とリニアアレイアンテナを備える少なくとも1枚の受信パネル4を含んでもよい。
【0073】
図8と
図9の組合せも可能である。すなわち、レーダ装置1はリニアアレイアンテナを備える少なくとも1枚の送信パネル2とリニアアレイアンテナ又はプレーナアレイアンテナを備える複数枚の受信パネル4を含んでもよい。あるいは、レーダ装置1はリニアアレイアンテナ又はプレーナアレイアンテナを備える複数枚の送信パネル2とリニアアレイアンテナを備える少なくとも1枚の受信パネル4を含んでもよい。
【0074】
図10は、レーダ装置1が少なくとも1(例えば1)枚の送信パネル2a-3と複数(例えば2)枚の受信パネル4a-3、4b-3を含む第3例を示す。第3例では、送信パネル2a-3はプレーナアレイアンテナを備え、受信パネル4a-3、4b-3はリニアアレイアンテナを備える。
【0075】
送信パネル2a-3は、X方向に沿って間隔D9で、Y方向に沿って間隔D10で二次元配列された複数(m3×n7)個のアンテナ541,1-54m3,n7を含む。n7は2以上の正整数である。間隔D9は略半波長のd9倍である。d9は2以上の正整数である。m3は2以上の正整数であり、n7と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D10は略半波長のd10倍である。d10は2以上の正整数であり、d9と等しくてもよいし、異なってもよい。d10とd9は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。
【0076】
受信パネル4a-3は、X方向に沿って間隔D11で一次元配列された複数(n8)個のアンテナ781-78n8を含む。n8は2以上の正整数であり、n7と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D11は略半波長のd11倍である。d11は2以上の正整数である。d11とd9は互いに素である。d11とd10は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。
【0077】
受信パネル4b-3は、X方向に沿って間隔D12で一次元配列された複数(n9)個のアンテナ801-80n9を含む。n9は2以上の正整数であり、n8と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D12は略半波長のd12倍である。d12は2以上の正整数であり、d11と等しくてもよいし、異なってもよい。d12とd9は互いに素である。d12とd11は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。d12とd9又はd10は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。
【0078】
レーダ装置1は3枚以上の受信パネル4を含んでもよい。3枚目以上の受信パネル4の構成は受信パネル4a-3、4b-3と同様である。受信パネル4のリニアアレイアンテナの配列方向はX方向に限らず、任意の方向でよい。その場合、送信パネル2のプレーナアレイアンテナの配列方向はリニアアレイアンテナの配列方向とそれに交差する方向を含む。プレーナアレイアンテナの2つの配列方向の交差角度は90度に限らない。送信アンテナと受信アンテナは互換性があるので、
図10の例とは逆に、レーダ装置1はリニアアレイアンテナを備える複数枚の送信パネル2とプレーナアレイアンテナを備える少なくとも1枚の受信パネル4を含んでもよい。
【0079】
図10の複数の受信パネル4の少なくとも1枚はプレーナアレイアンテナを備えてもよい。
【0080】
図11は、レーダ装置1が少なくとも1(例えば1)枚の送信パネル2a-4と複数(例えば2)枚の受信パネル4a-4、4b-4を含む第4例を示す。第4例では、送信パネル2a-4と受信パネル4a-4、4b-4はともにプレーナアレイアンテナを備える。
【0081】
送信パネル2a-4は、X方向に沿って間隔D13で、Y方向に沿って間隔D14で二次元配列された複数(m4×n10)個のアンテナ561,1-56m4,n10を含む。n10は2以上の正整数である。間隔D13は略半波長のd13倍である。d13は2以上の正整数である。m4は2以上の正整数であり、n10と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D14は略半波長のd14倍である。d14は2以上の正整数であり、d13と等しくてもよいし、異なってもよい。d14とd13は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。
【0082】
受信パネル4a-4は、X方向に沿って間隔D15で、Y方向に沿って間隔D16で二次元配列された複数(m5×n11)個のアンテナ82a-82m5,n11を含む。n11は2以上の正整数であり、n10と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D15は略半波長のd15倍である。d15は2以上の正整数である。d15とd13は互いに素である。m5は2以上の正整数であり、n11と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D16は略半波長のd16倍である。d16は2以上の正整数であり、d15と等しくてもよいし、異なってもよい。d16とd14は互いに素である。d16とd15は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。d15とd14は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。d16とd13は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。
【0083】
受信パネル4b-4は、X方向に沿って間隔D17で、Y方向に沿って間隔D18で二次元配列された複数(m6×n12)個のアンテナ841,1-84m6,n12を含む。n12は2以上の正整数であり、n11と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D17は略半波長のd17倍である。d17は2以上の正整数であり、d15と等しくてもよいし、異なってもよい。d17とd13は互いに素である。m6は2以上の正整数であり、n12と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D18は略半波長のd18倍である。d18は2以上の正整数であり、d16と等しくてもよいし、異なってもよい。d18とd14は互いに素である。d18とd16は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。d17とd14は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。d18とd13は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。
【0084】
レーダ装置1は3枚以上の受信パネル4を含んでもよい。3枚目以上の受信パネル4の構成は受信パネル4a-4、4b-4と同様である。送信パネル2と受信パネル4のプレーナアレイアンテナの配列方向はX方向とY方向に限らず、任意の2方向でよい。プレーナアレイアンテナの2つの配列方向の交差角度は90度に限らない。送信アンテナと受信アンテナは互換性があるので、
図11の例とは逆に、レーダ装置1はプレーナアレイアンテナを備える複数枚の送信パネル2とプレーナアレイアンテナを備える少なくとも1枚の受信パネル4を含んでもよい。
【0085】
図11の複数の複数の受信パネル4の少なくとも1枚はリニアアレイアンテナを備えてもよい。
【0086】
図12は、レーダ装置1が複数(例えば2)枚の送信パネル2a-5、2b-5と複数(例えば2)枚の受信パネル4a-5、4b-5を含む第5例を示す。第5例では、送信パネル2a-4、2b-5と受信パネル4a-5、4b-5はともにプレーナアレイアンテナを備える。
【0087】
送信パネル2a-5は、X方向に沿って間隔D19で、Y方向に沿って間隔D20で二次元配列された複数(m7×n13)個のアンテナ581,1-58m7,n13を含む。n13は2以上の正整数である。間隔D19は略半波長のd19倍である。d19は2以上の正整数である。m7は2以上の正整数であり、n13と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D20は略半波長のd20倍である。d20は2以上の正整数であり、d19と等しくてもよいし、異なってもよい。d19とd20は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。
【0088】
送信パネル2b-5は、X方向に沿って間隔D21で、Y方向に沿って間隔D22で二次元配列された複数(m8×n14)個のアンテナ601,1-60m8,n14を含む。n14は2以上の正整数であり、n13と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D21は略半波長のd21倍である。d21は2以上の正整数であり、d19と等しくてもよいし、異なってもよい。d21とd19は互いに素である。m8は2以上の正整数であり、n14と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D22は略半波長のd22倍である。d22は2以上の正整数であり、d21と等しくてもよいし、異なってもよい。d22とd20は互いに素である。d19とd20は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。d21とd22は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。
【0089】
受信パネル4a-5は、X方向に沿って間隔D23で、Y方向に沿って間隔D24で二次元配列された複数(m9×n15)個のアンテナ861,1-86m9,n15を含む。n15は2以上の正整数であり、n13、n14と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D23は略半波長のd23倍である。d13は2以上の正整数である。d23とd19は互いに素である。d23とd21は互いに素である。m9は2以上の正整数であり、n15と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D24は略半波長のd24倍である。d24は2以上の正整数であり、d23と等しくてもよいし、異なってもよい。d24とd20は互いに素である。d24とd22は互いに素である。d23とd20又はd22は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。d24とd19又はd21は互いに素であっても良いし、互いに素でなくてもよい。
【0090】
受信パネル4b-5は、X方向に沿って間隔D25で、Y方向に沿って間隔D26で二次元配列された複数(m10×n16)個のアンテナ881,1-88m10,n16を含む。n16は2以上の正整数であり、n16と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D25は略半波長のd25倍である。d25は2以上の正整数であり、d23と等しくてもよいし、異なってもよい。d25とd19は互いに素であってもよいし、互いに素でなくてもよい。d25とd21は互いに素である。d25とd23は互いに素であってもよいし、互いに素でなくてもよい。m10は2以上の正整数であり、n16と等しくてもよいし、異なってもよい。間隔D26は略半波長のd26倍である。d26は2以上の正整数であり、d24と等しくてもよいし、異なってもよい。d26とd20は互いに素であってもよいし、互いに素でなくてもよい。d26とd22は互いに素である。d26とd24は互いに素であってもよいし、互いに素でなくてもよい。
【0091】
レーダ装置1は3枚以上の送信パネル2を含んでもよい。3枚目以上の送信パネル2の構成は送信パネル2a-5、2b-5と同様である。レーダ装置1は3枚以上の受信パネル4を含んでもよい。3枚目以上の受信パネル4の構成は受信パネル4a-5、4b-5と同様である。送信パネル2と受信パネル4のプレーナアレイアンテナの配列方向はX方向とY方向に限らず、任意の2方向でよい。プレーナアレイアンテナの2つの配列方向の交差角度は90度に限らない。
【0092】
図12の複数の送信パネル2の少なくとも1枚はリニアアレイアンテナを備えてもよい。
図12の複数の受信パネル4の少なくとも1枚はリニアアレイアンテナを備えてもよい。
【0093】
次に、
図13、
図14、
図15及び
図16を参照して、対象者100に対する送信パネル2及び受信パネル4の配置の例を説明する。
図13乃至
図16は平面図である。
図13乃至
図16では、レーダ装置1は少なくとも1(例えば1)枚の送信パネル2aと複数(例えば3)枚の受信パネル4a、4b、4cを含むとする。送信パネル2と受信パネル4は、
図8乃至
図12の何れのアレイアンテナを備えてもよい。
【0094】
図13は、1枚の送信パネル2aと3枚の受信パネル4a、4b、4cの配置の第1例を示す。第1例では、受信パネル4a、受信パネル4b、送信パネル2a及び受信パネル4cがX方向に沿ってこの順に略直線上に配置されている。送信パネル2aは対象者100の全体に電波を放射する。対象者100の表面あるいは対象者100が所持している危険物で電波が様々な方向に反射される。1枚の受信パネル4で受信できる反射波の方向は限られている。対象者100は、2本の分割線により3つの領域100a、100b、100cに分割される。分割線は直線に限られず、曲線の場合もある。受信パネル4aは、第1領域100aの表面又は内部の物体で反射した電波を受信する位置に配置される。受信パネル4bは、第2領域100bの表面又は内部の物体で反射した電波を受信する位置に配置される。受信パネル4cは、第3領域100cの表面又は内部の物体で反射した電波を受信する位置に配置される。
【0095】
画像生成回路10は、受信パネル4aの受信信号に基づいて第1領域100aの内部の物体を表す第1画像を生成する。画像生成回路10は、受信パネル4bの受信信号に基づいて第2領域100bの内部の物体を表す第2画像を生成する。画像生成回路10は、受信パネル4cの受信信号に基づいて第3領域100cの内部の物体を表す第3画像を生成する。画像処理回路12が第1画像と第2画像と第3画像を合成すると、対象者100全体の内部の物体を表す画像を生成することができる。
【0096】
送信アンテナと受信アンテナは互換性があるので、
図13の例とは逆に、レーダ装置1は複数枚の送信パネル2と少なくとも1枚の受信パネル4を含んでもよい。
【0097】
図14は、1枚の送信パネル2aと3枚の受信パネル4a、4b、4cの配置の第2例を示す。第2例でも、受信パネル4a、受信パネル4b、送信パネル2a及び受信パネル4cがX方向に沿ってこの順に略直線上に配置されている。送信パネル2aは対象者100の全体に電波を放射する。対象者100は一部が重複する3つの領域102a、102b、102cに分割される。分割線は直線に限られず、曲線の場合もある。第1領域102aと第2領域102bは一部重複した領域104を含む。第2領域102bと第3領域102cは一部重複した領域106を含む。受信パネル4aは、第1領域102aの表面又は内部の物体で反射した電波を受信する位置に配置される。受信パネル4bは、第2領域102bの表面又は内部の物体で反射した電波を受信する位置に配置される。受信パネル4cは、第3領域102cの表面又は内部の物体で反射した電波を受信する位置に配置される。
【0098】
画像処理回路12は重複領域を考慮して第1画像と第2画像と第3画像を合成すると、対象者100全体の内部の物体を表す画像を生成することができる。
【0099】
送信アンテナと受信アンテナは互換性があるので、
図14の例とは逆に、レーダ装置1は複数枚の送信パネル2と少なくとも1枚の受信パネル4を含んでもよい。
【0100】
図15は、1枚の送信パネル2aと3枚の受信パネル4a、4b、4cの配置の第3例を示す。第3例では、受信パネル4a、受信パネル4b、送信パネル2a及び受信パネル4cが、対象者100の周囲を囲むように筒の表面のような面に円弧を描くように配置されている。対象者100は、第1例と同様に、重複することなく3つの領域100a、100b、100cに分割されている。受信パネル4aは、第1領域100aの表面又は内部の物体で反射した電波を受信する位置に配置される。受信パネル4bは、第2領域100bの表面又は内部の物体で反射した電波を受信する位置に配置される。受信パネル4cは、第3領域100cの表面又は内部の物体で反した電波を受信する位置に配置される。
図15の例では、
図13、
図14の例に比べて対象者100のより近くに受信パネル4を配置することができる。
【0101】
送信アンテナと受信アンテナは互換性があるので、
図15の例とは逆に、レーダ装置1は複数枚の送信パネル2と少なくとも1枚の受信パネル4を含んでもよい。
【0102】
図16は、1枚の送信パネル2aと3枚の受信パネル4a、4b、4cの配置の第4例を示す。第4例では、受信パネル4a、受信パネル4b、送信パネル2a及び受信パネル4cが、対象者100の周囲を囲むように筒の表面のような面に円弧を描くように配置されている。対象者100は、第2例と同様に、一部が重複する3つの領域102a、102b、102cに分割されている。受信パネル4aは、第1領域102aの表面又は内部の物体で反射した電波を受信する位置に配置される。受信パネル4bは、第2領域102bの表面又は内部の物体で反射した電波を受信する位置に配置される。受信パネル4cは、第3領域102cの表面又は内部の物体で反射した電波を受信する位置に配置される。
図16の例では、
図13、
図14の例に比べて対象者100のより近くに受信パネル4を配置することができる。
【0103】
送信アンテナと受信アンテナは互換性があるので、
図16の例とは逆に、レーダ装置1は複数枚の送信パネル2と少なくとも1枚の受信パネル4を含んでもよい。
【0104】
図17は実施形態に係る送信パネルと受信パネルの配置の第5例を示す。
図17(a)は1枚の送信パネル2aと、2枚の受信パネル4a、4bを用いる例を示す。
図17(b)は2枚の送信パネル2a、2bと、1枚の受信パネル4を用いる例を示す。
【0105】
図17(a)では、送信パネル2aが第1平面に配置され、受信パネル4a、4bが第2平面に配置される。第1平面と第2平面のなす角αが0度より大きく180度より小さければ、送信パネル2aの送信面から放射され、対象物100のどの部分で反射された電波も受信パネル4a又は受信パネル4bの受信面に入射される。これにより、対象物100のどの部分の検査も可能となる。送信パネル2aの送信面と、受信パネル4a、4bの受信面は、第1平面と第2平面の間に位置する。対象物100は移動する対象物でもよい。
【0106】
図17(b)では、受信パネル4が第1平面に配置され、送信パネル2a、2bが第2平面に配置される。第1平面と第2平面のなす角αが0度より大きく180度より小さければ、送信パネル2a又は送信パネル2bの送信面から放射され、対象物100のどの部分で反射された電波も受信パネル4の受信面に入射される。これにより、対象物100のどの部分の検査も可能となる。送信パネル2a、2bの送信面と受信パネル4の受信面は、第1平面と第2平面の間に位置する。
【0107】
図18は実施形態に係る送信パネルと受信パネルの配置の第6例を示す。
図18(a)は1枚の送信パネル2aと、2枚の受信パネル4a、4bを用いる例を示す。
図18(b)は2枚の送信パネル2a、2bと、1枚の受信パネル4を用いる例を示す。
【0108】
図18(a)では、送信パネル2が第1平面に配置され、受信パネル4aが第2平面に配置され、受信パネル4bが第3平面に配置される。第1平面と第2平面のなす角β1が0度より大きく180度より小さく、第2平面と第3平面のなす角β2が0度より大きく180度より小さければ、送信パネル2の送信面から放射され、対象物100のどの部分で反射された電波も受信パネル4a又は受信パネル4bの受信面に入射される。これにより、対象物100のどの部分の検査も可能となる。送信パネル2の送信面と、受信パネル4aの受信面は、第1平面と第2平面の間に位置し、受信パネル4aの受信面と、受信パネル4bの受信面は、第2平面と第3平面の間に位置する。
【0109】
図18(b)では、送信パネル2aが第1平面に配置され、送信パネル2bが第2平面に配置され、受信パネル4が第3平面に配置される。第1平面と第2平面のなす角β1が0度より大きく180度より小さく、第2平面と第3平面のなす角β2が0度より大きく180度より小さければ、送信パネル2a又は送信パネル2bの送信面から放射され、対象物100のどの部分で反射された電波も受信パネル4の受信面に入射される。これにより、対象物100のどの部分の検査も可能となる。受信パネル2aの送信面と、送信パネル2bの送信面は、第1平面と第2平面の間に位置し、送信パネル2bの送信面と、受信パネル4の受信面は、第2平面と第3平面の間に位置する。
【0110】
図17、
図18に示す例は送信パネル、受信パネルの枚数が最小の場合であり、送信パネル、受信パネルの枚数が増えても同等に構成可能である。さらに、送信パネル、受信パネルの枚数が増えた場合、パネルの枚数に応じて平面の数が増えてもよい。
【0111】
図19、
図20及び
図21を参照して、検査エリアにおける送信パネル2と受信パネル4の配置の具体例を説明する。検査エリアは施設内の対象者100の通路であるとする。
図19乃至
図21は斜視図である。送信パネル2と受信パネル4は、
図8乃至
図12の何れのアレイアンテナを備えてもよい。
【0112】
図19は、送信パネル2と受信パネル4の配置の第7例を示す斜視図である。通路の壁110の表面に少なくとも1枚の送信パネル2と複数枚の受信パネル4、又は複数枚の送信パネル2と少なくとも1枚の受信パネル4が二次元配列される。
図19は、壁110の表面に少なくとも1(例えば1)枚の送信パネル2aと、複数(例えば5)枚の受信パネル4a、4b、4c、4d、4eが二次元配列される例を示す。
【0113】
図19の例によれば、通路の歩行中に対象者100に放射された電波の様々な方向への反射波が多数の受信パネル4a-4eにより受信される。このため、対象者100の全体が検査される。
【0114】
送信アンテナと受信アンテナは互換性があるので、
図19の例とは逆に、レーダ装置1は複数枚の送信パネル2と少なくとも1枚の受信パネル4を含んでもよい。
【0115】
通路の壁110の表面ではなく、通路の床下又は天井に送信パネル2と受信パネル4が設置されてもよい。
【0116】
図20は、送信パネル2と受信パネル4の配置の第8例を示す斜視図である。通路の側面に複数(例えば3)枚の支持板112a、112b、112cが対象者100を囲むように設置される。中央の支持板112bが通路の側面に略平行に設置され、両脇の支持板112a、112cが内側を向くように中央の支持板112bから多少傾いて設置されている。支持板112aには少なくとも1(例えば2)枚の送信パネル2a、2bと、複数(例えば6)枚の受信パネル4a、4b、4c、4d、4e、4fが貼り付けられている。他の支持板112b、112cにも、同様に、2枚の送信パネル2と、6枚の受信パネル4が貼り付けられている。
【0117】
図20の例によっても、通路の歩行中に対象者100に放射された電波の様々な方向への反射波が多数の受信パネル4a-4fにより受信される。このため、対象者100の全体が検査される。
図20の例では、3枚の支持板112a、112b、112cが対象者100を囲むので、対象者100のより近くに送信パネル2と受信パネル4を配置することができる。
【0118】
支持板112の枚数は4枚以上でもよい。支持板112は、通路の床下又は天井に設置されてもよい。
【0119】
送信アンテナと受信アンテナは互換性があるので、
図20の例とは逆に、各支持板112a、11b、11cに複数枚の送信パネル2と、少なくとも1枚の受信パネル4が貼り付けられてもよい。
【0120】
図21は、送信パネル2と受信パネル4の配置の第9例を示す斜視図である。検査エリアは対象者100の通路であるとする。通路の上下左右の4面に4枚の支持板114a、114b、114c、114dが対象者100を囲むように設置される。例えば、支持板114aが通路の床下に設置され、支持板114bが通路の天井に設置され、支持板114cが通路の右側面に設置され、支持板114dが通路の左側面に設置される。
【0121】
支持板114aには少なくとも1(例えば2)枚の送信パネル2a、2bと、複数(例えば10)枚の受信パネル4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4iが貼り付けられている。他の支持板114b、114c、114dにも、同様に、2枚の送信パネル2と、10枚の受信パネル4が貼り付けられている。
【0122】
図21の例によれば、通路の歩行中に対象者100に放射された電波の様々な方向への反射波が多数の受信パネル4により受信される。このため、対象者100の全体が検査される。
【0123】
送信アンテナと受信アンテナは互換性があるので、
図21の例とは逆に、各支持板114a-114dに複数枚の送信パネル2と、少なくとも1枚の受信パネル4が貼り付けられてもよい。
【0124】
図22は、実施形態に係るレーダ装置1の動作を説明するフローチャートである。
図22では、レーダ装置1は、
図13乃至
図16に示すように、1枚の送信パネル2aと3枚の受信パネル4a、4b、4cを含むとする。
【0125】
S102で、送信回路6aは送信パネル2aへ送信信号を送信し、電波を放射させる。送信回路6aは、コントローラ14からの制御により、電波で対象者を走査するように、ビームフォーミングする。
【0126】
S104で、受信回路8a、8b、8cは受信パネル4a、4b、4cからの信号を夫々受信処理し、受信パネル4a、4b、4cの受信信号を画像生成回路10へ送信する。受信回路8a、8b、8cは、コントローラ14からの制御により、受信パネル4a、4b、4cが
図13、
図15の第1領域100a、第2領域100b、第3領域100c又は
図14、
図16の第1領域102a、第2領域102b、第3領域102の反射波を受信するようにビームフォーミングする。
【0127】
S106で、画像生成回路10は受信パネル4a、4b、4cの受信信号に夫々基づいて第1領域に関する第1画像(部分画像)、第2領域に関する第2画像(部分画像)、第3領域に関する第3画像(部分画像)を生成する。
【0128】
S108で、画像処理回路12は第1画像、第2画像、第3画像が重複領域を含むか否かを判定する。画像処理回路12は、コントローラ14が受信回路8a、8b、8cに対してどのようにビームフォーミングを制御したかに基づき、第1画像、第2画像、第3画像が重複領域を含むか否かを判定することができる。
【0129】
第1画像、第2画像、第3画像が重複領域を含まない場合(S108のNO)、S110で、画像処理回路12は第1画像、第2画像、第3画像を加算して合成画像を生成する。
【0130】
第1画像、第2画像、第3画像が重複領域を含む場合(S108のYES)、S112で、画像処理回路12は2つの重複領域の画素値を正規化する。S114で、画像処理回路12は重複領域については正規化後の2つの重複領域の画素値の最大値を使い、他の領域については第1画像、第2画像、第3画像の画素値を使い、合成画像を生成する。
【0131】
S116で、表示装置16は画像処理回路12が生成した合成画像を表示する。
【0132】
コントローラ14は、通信回路18を介して合成画像を外部機器へ送信してよい。外部機器が合成画像に危険物が含まれるか否かを判定し、判定結果を外部機器から判定結果をされてもよい。
【0133】
図23乃至
図26は、画像処理回路12の画像の合成例を説明する図である。
【0134】
図23は、
図13又は
図15に示すように、対象者100が重複領域を含まない第1領域100a、第2領域100b、第3領域100cに分割されるように送信パネル2と受信パネル4が配置された場合の合成例を示す。画像生成回路10は、受信パネル4aの受信信号に基づいて、対象者に向かって左側の第1領域100cの第1画像152aを生成する。画像生成回路10は、受信パネル4bの受信信号に基づいて、対象者の中央の第2領域100bの第2画像152bを生成する。画像生成回路10は、受信パネル4cの受信信号に基づいて、対象者に向かって右側の第3領域100aの第3画像152cを生成する。第1画像152a、第2画像152b、第3画像152cは重複する画像を含まないので、画像処理回路12が第1画像152a、第2画像152b、第3画像152cを単純に加算すると、対象物全体の画像154が得られる。
【0135】
図24は、
図13又は
図15に示すように、対象者100が重複領域を含まない第1領域、第2領域に分割されるように送信パネル2と受信パネル4が配置された場合の合成例を示す。画像生成回路10は、受信パネル4aの受信信号に基づいて、対象者に向かって左側の第1領域の第1画像156aを生成する。受信パネル4bは対象者100からの反射を受信せず、画像生成回路10は、受信パネル4bの受信信号に基づいて、画素値が0である第2画像を生成する。画像生成回路10は、受信パネル4cの受信信号に基づいて、対象者に向かって右側の第2領域の第3画像156bを生成する。第1画像156a、第3画像156bは重複する画像を含まないので、画像処理回路12が第1画像156a、第2画像、第3画像156bを単純に加算すると、対象物全体の画像158が得られる。
【0136】
図25及び
図26は、
図14又は
図16に示すように、対象者100が重複領域を含む第1領域102a、第2領域102b、第3領域102cに分割されるように送信パネル2と受信パネル4が配置された場合の合成例を示す。
図25に示すように、画像生成回路10は、受信パネル4aの受信信号に基づいて、対象者に向かって左側の第1領域の第1画像162aを生成する。画像生成回路10は、受信パネル4bの受信信号に基づいて、対象者の中央の第2領域の第2画像162bを生成する。画像生成回路10は、受信パネル4cの受信信号に基づいて、対象者に向かって右側の第3領域の第3画像162cを生成する。
【0137】
第1領域102aと第2領域102bは重複する領域を含む。そのため、
図26に示すように、第1領域の第1画像162aは第2領域と重複する領域の重複画像164aを含む。第2領域の第2画像162bは第1領域と重複する領域の重複画像164bを含む。
【0138】
重複画像164aの画素値と重複画像164bの画素値は本来同じ値であるが、実際には受信パネル4a、4bで受信した反射波の強度のレベルが異なるので、異なる値であることがある。この場合、合成の際、どちらの重複画像を選ぶかにより、重複領域で画素値が不連続になってしまう。
【0139】
画像処理回路12は、受信パネル4aの第1画像162aと受信パネル4bの第2画像162bのいずれか一方を他方に応じて補正(正規化とも称される)する。画像処理回路12は、重複画像164aの画素値の平均値Aaと重複画像164bの画素値の平均値Abを求める。受信パネル4bの第2画像162bを補正する場合、画像処理回路12は、第2画像162b(重複領域と非重複領域とも)の画素値に(Aa/Ab)を乗算する。これにより、第2画像162bの重複画像164bの画素値の平均値はAa(第1画像162aの重複画像164aの画素値の平均値)となる。このため、合成の際、どちらの重複画像164a、164bを選んでも、重複領域で画素値が不連続になってしまうことが防止される。受信パネル4aの第1画像162aを補正する場合、画像処理回路12は、第1画像162a(重複領域と非重複領域とも)の画素値に(Ab/Aa)を乗算する。これにより、第1画像162aの重複画像164aの画素値の平均値はAb(第2画像162bの重複画像164bの画素値の平均値)となる。このため、合成の際、どちらの重複画像164a、164bを選んでも、重複領域で画素値が不連続になってしまうことが防止される。
【0140】
画像処理回路12は、第1画像162aの重複画像164aと第2画像162bの重複画像164bのいずれか一方を上記のように補正し、補正後の重複画像164a、164bの画素値の大きい方を選択する回路165を備える。画像処理回路12は、重複領域以外の第1領域、第2領域及び第3領域については、第1画像162a、第2画像162b、第3画像162cを使い、重複領域については補正後の2つの重複画像164a、164bの画素値の中の大きい方166を使い、合成画像168を生成する。なお、重複領域について補正後の重複画像の画素値の大きい方を選択する代わりに、補正後の2つの重複画像の画素値の平均値を用いてもよい。
【0141】
以上のように、実施形態に係るレーダ装置1によれば、少なくとも1つの送信パネルと複数の受信パネル、又は複数の送信パネルと少なくとも1つの送信パネルとを、互いに離間した位置に配置することにより、対象者100の多数の方向への反射波を受信することができる。送信パネルにおける複数のアンテナどうしの間隔と受信パネルにおける複数のアンテナどうしの間隔を、一定間隔のm倍、n倍(mとnは互いに素)とすることで、アレイアンテナを構成するアンテナ数を減少しつつ、レーダ装置1の分解能を向上させることができる。
【0142】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0143】
1…レーダ装置、2…送信パネル、4…受信パネル、6…送信回路、8…受信回路、10…画像生成回路、12…画像処理回路、14…コントローラ、16…表示装置、18…通信回路、100…対象者