(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】レーダ装置、送受信方法及びレーダシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/02 20060101AFI20240805BHJP
G01S 13/89 20060101ALI20240805BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G01S7/02 218
G01S13/89
H01Q21/06
(21)【出願番号】P 2021150499
(22)【出願日】2021-09-15
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻村 和寛
(72)【発明者】
【氏名】森 浩樹
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-139762(JP,A)
【文献】特開2017-058359(JP,A)
【文献】特開平10-010238(JP,A)
【文献】特開2019-120514(JP,A)
【文献】特開2018-136219(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0162475(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、前記第1基板上に設けられた第1送信アレーアンテナと、前記第1基板上に設けられた第1受信アレーアンテナと、前記第1基板上に設けられ、前記第1送信アレーアンテナと前記第1受信アレーアンテナの送受信を制御する第1集積回路と、を備える第1レーダユニットと、
第2基板と、前記第2基板上に設けられた第2送信アレーアンテナと、前記第2基板上に設けられた第2受信アレーアンテナと、前記第2基板上に設けられ、前記第2送信アレーアンテナと前記第2受信アレーアンテナの送受信を制御する第2集積回路と、を備える第2レーダユニットと、を有し、
前記第1基板の形状と前記第2基板の形状は同じであり、
前記第1送信アレーアンテナの前記第1基板における相対位置は前記第2送信アレーアンテナの前記第2基板における相対位置と同じであるか、
または、
前記第1基板の中心を通り前記第1基板の一辺に平行な直線に関して前記第1送信アレーアンテナと線対称となるアレーアンテナの前記第1基板における相対位置は前記第2送信アレーアンテナの前記第2基板における相対位置と同じであり、
前記第1受信アレーアンテナの前記第1基板における相対位置は前記第2受信アレーアンテナの前記第2基板における相対位置と同じであるか、または、前記第1基板の中心を通り前記第1基板の一辺に平行な直線に関して前記第1受信アレーアンテナと線対称となるアレーアンテナの前記第1基板における相対位置は前記第2受信アレーアンテナの前記第2基板における相対位置と同じであり、
前記第1受信アレーアンテナと前記第2受信アレーアンテナは前記第1送信アレーアンテナから放射される電波の反射波を受信し、
前記第1受信アレーアンテナと前記第2受信アレーアンテナは前記第2送信アレーアンテナから放射される電波の反射波を受信する、レーダ装置。
【請求項2】
前記第1送信アレーアンテナは等間隔に配置された少なくとも3つのアンテナを含み、
前記第2送信アレーアンテナは等間隔に配置された少なくとも3つのアンテナを含む、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記第1送信アレーアンテナは最小冗長度アレーアンテナを含み、
前記第2送信アレーアンテナは最小冗長度アレーアンテナを含む、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
最も近い前記第1送信アレーアンテナのアンテナと前記第2送信アレーアンテナのアンテナとの距離は、前記第1送信アレーアンテナのアンテナ間隔の和より大きく、前記第2送信アレーアンテナのアンテナ間隔の和より大きい、請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記第1受信アレーアンテナは等間隔に配置された少なくとも3つのアンテナを含み、
前記第2受信アレーアンテナは等間隔に配置された少なくとも3つのアンテナを含む、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記第1受信アレーアンテナは最小冗長度アレーアンテナを含み、
前記第2受信アレーアンテナは最小冗長度アレーアンテナを含む、請求項5に記載のレーダ装置。
【請求項7】
最も近い前記第1受信アレーアンテナのアンテナと前記第2受信アレーアンテナのアンテナとの距離は、前記第1受信アレーアンテナのアンテナ間隔の和より大きく、前記第2受信アレーアンテナのアンテナ間隔の和より大きい、請求項6に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記第1集積回路と前記第1送信アレーアンテナとを接続する第1配線パターン
は、前記第2集積回路と前記第2送信アレーアンテナとを接続する第2配線パターン
を回転移動と平行移動の少なくとも一方を行ったものである、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記第1集積回路と前記第1受信アレーアンテナとを接続する第1配線パターン
は、前記第2集積回路と前記第2受信アレーアンテナとを接続する第2配線パターン
を回転移動と平行移動の少なくとも一方を行ったものである、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項10】
第1基板と、前記第1基板上に設けられた第1送信アレーアンテナと、前記第1基板上に設けられた第1受信アレーアンテナと、前記第1基板上に設けられ、前記第1送信アレーアンテナと前記第1受信アレーアンテナの送受信を制御する第1集積回路と、を備える第1レーダユニットと、
第2基板と、前記第2基板上に設けられた第2送信アレーアンテナと、前記第2基板上に設けられた第2受信アレーアンテナと、前記第2基板上に設けられ、前記第2送信アレーアンテナと前記第2受信アレーアンテナの送受信を制御する第2集積回路と、を備える第2レーダユニットと、を有し、
前記第1基板の形状と前記第2基板の形状は同じであり、
前記第1送信アレーアンテナの前記第1基板における相対位置は前記第2送信アレーアンテナの前記第2基板における相対位置と同じであるか、または、前記第1基板の中心を通り前記第1基板の一辺に平行な直線に関して前記第1送信アレーアンテナと線対称となるアレーアンテナの前記第1基板における相対位置は前記第2送信アレーアンテナの前記第2基板における相対位置と同じであり、
前記第1受信アレーアンテナの前記第1基板における相対位置は前記第2受信アレーアンテナの前記第2基板における相対位置と同じであるか、または、前記第1基板の中心を通り前記第1基板の一辺に平行な直線に関して前記第1受信アレーアンテナと線対称となるアレーアンテナの前記第1基板における相対位置は前記第2受信アレーアンテナの前記第2基板における相対位置と同じである、レーダ装置の送受信方法であって、
前記第1送信アレーアンテナから放射される電波の反射波を前記第1受信アレーアンテナと前記第2受信アレーアンテナで受信し、
前記第2送信アレーアンテナから放射される電波の反射波を前記第1受信アレーアンテナと前記第2受信アレーアンテナで受信する、送受信方法。
【請求項11】
第1基板と、前記第1基板上に設けられた第1送信アレーアンテナと、前記第1基板上に設けられた第1受信アレーアンテナと、前記第1基板上に設けられ、前記第1送信アレーアンテナと前記第1受信アレーアンテナの送受信を制御する第1集積回路と、を備える第1レーダユニットと、
第2基板と、前記第2基板上に設けられた第2送信アレーアンテナと、前記第2基板上に設けられた第2受信アレーアンテナと、前記第2基板上に設けられ、前記第2送信アレーアンテナと前記第2受信アレーアンテナの送受信を制御する第2集積回路と、を備える第2レーダユニットと、
前記第1集積回路と前記第2集積回路に接続される信号処理ユニットと、を有し、
前記第1基板の形状と前記第2基板の形状は同じであり、
前記第1送信アレーアンテナの前記第1基板における相対位置は前記第2送信アレーアンテナの前記第2基板における相対位置と同じであるか、または、前記第1基板の中心を通り前記第1基板の一辺に平行な直線に関して前記第1送信アレーアンテナと線対称となるアレーアンテナの前記第1基板における相対位置は前記第2送信アレーアンテナの前記第2基板における相対位置と同じであり、
前記第1受信アレーアンテナの前記第1基板における相対位置は前記第2受信アレーアンテナの前記第2基板における相対位置と同じであるか、または、前記第1基板の中心を通り前記第1基板の一辺に平行な直線に関して前記第1受信アレーアンテナと線対称となるアレーアンテナの前記第1基板における相対位置は前記第2受信アレーアンテナの前記第2基板における相対位置と同じであり、
前記第1送信アレーアンテナから送信される電波であって対象物で反射された電波を前記第1受信アレーアンテナと前記第2受信アレーアンテナで受信し、
前記第2送信アレーアンテナから送信される電波であって前記対象物で反射された電波を前記第1受信アレーアンテナと前記第2受信アレーアンテナで受信し、
前記信号処理ユニットは前記第1受信アレーアンテナの受信信号と前記第2受信アレーアンテナの受信信号を処理して前記対象物に関する情報を計算する、レーダシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レーダ装置、送受信方法及びレーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象者(以下、対象者と称される)が危険物を保持しているか否かの検査を行うレーダ装置が提案されている。レーダ装置は、対象者に電波を放射し、対象者からの反射波を受信する。レーザ装置の画像に基づいて、対象者が危険物を保持しているか否かを判定することができる。精度良く検査するために、レーダ装置には高い角度分解能が求められている。角度分解能を高くするためには、アンテナの開口長を大きくする必要である。多数のアンテナからなるアレーアンテナを用いると、開口長の大きいアンテナが実現できる。しかし、開口長の大きい複雑なアレーアンテナを設計することは容易ではなく、実装コストが高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】W. Ma, T. Hsieh and C. Chi, “DOA Estimation of Quasi-Stationary Signals With Less Sensors Than Sources and Unknown Spatial Noise Covariance: A Khatri-Rao Subspace Approach,” in IEEE Transactions on Signal Processing, vol. 58, no. 4, pp. 2168-2180, April 2010, doi: 10.1109/TSP.2009.2034935
【文献】A. T. Moffet, “Minimum-Redundancy Linear Arrays,” IEEE Trans. on Antennas and Propagation, vol. 16, Issue 2, pp. 172-175, Mar. 1968
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高い精度で対象者を検査することができる簡単な構成のレーダ装置、送受信方法及びレーダシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るレーダ装置は、第1レーダユニットと、第2レーダユニットとを有する。第1レーダユニットは、第1基板と、前記第1基板上に設けられた第1送信アレーアンテナと、前記第1基板上に設けられた第1受信アレーアンテナと、前記第1基板上に設けられレーダ信号の送信及び受信を行う第1集積回路とを備える。第2レーダユニットは、第2基板と、前記第2基板上に設けられた第2送信アレーアンテナと、前記第2基板上に設けられた第2受信アレーアンテナと、前記第2基板上に設けられレーダ信号の送信及び受信を行う第2集積回路とを備える。
前記第1基板の形状と前記第2基板の形状は同じである。
前記第1送信アレーアンテナの前記第1基板における相対位置は前記第2送信アレーアンテナの前記第2基板における相対位置と同じであるか、または、前記第1基板の中心を通り前記第1基板の一辺に平行な直線に関して前記第1送信アレーアンテナと線対称となるアレーアンテナの前記第1基板における相対位置は前記第2送信アレーアンテナの前記第2基板における相対位置と同じである。
前記第1受信アレーアンテナの前記第1基板における相対位置は前記第2受信アレーアンテナの前記第2基板における相対位置と同じであるか、または、前記第1基板の中心を通り前記第1基板の一辺に平行な直線に関して前記第1受信アレーアンテナと線対称となるアレーアンテナの前記第1基板における相対位置は前記第2受信アレーアンテナの前記第2基板における相対位置と同じである。
前記第1受信アレーアンテナと前記第2受信アレーアンテナは前記第1送信アレーアンテナから送信されるレーダ信号の反射信号を受信する。前記第1受信アレーアンテナと前記第2受信アレーアンテナは前記第2送信アレーアンテナから送信されるレーダ信号の反射信号を受信する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るレーダ装置の機能構成の一例を説明するブロック図。
【
図3】レーダユニット相互の関係の一例を説明する図。
【
図4】集積回路の機能構成の一例を説明するブロック図。
【
図6】MIMO仮想アレーアンテナの概念について説明する図。
【
図7】MIMO-KR変換仮想アレーアンテナの概念について説明する図。
【
図8】MIMO-KR変換仮想アレーアンテナの概念について説明する他の図。
【
図9】MIMO-KR変換仮想アレーアンテナの概念について説明する他の図。
【
図10】レーダパネルが形成する仮想アレーアンテナの一例について説明する図。
【
図11】レーダパネルが形成する仮想アレーアンテナの一例について説明する図。
【
図12】レーダパネルが形成する仮想アレーアンテナの他の一例について説明する図。
【
図13】レーダパネルが形成する仮想アレーアンテナの他の一例について説明する図。
【
図14】レーダ装置の動作の一例を説明するフローチャート。
【
図15】レーダ装置の動作の一例を説明するフローチャート。
【
図16】各レーダユニットに割り当てられる走査領域について説明する図。
【
図17】複数のレーダユニットで電波を送受信する様子を説明するための図。
【
図18】
図17に示すレーダユニットの送受信により形成される仮想アレーアンテナの一例を示す図。
【
図23】レーダパネルの他の構成の一例を説明する図。
【
図24】レーダパネルの構成の他の例を説明する図。
【
図25】レーダパネルの構成のさらに他の例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係るレーダ装置の詳細について説明する。以下の説明は、実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、以下に説明する構成要素の構造、形状、配置、材質等に限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各要素のサイズ、厚み、平面寸法又は形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、互いの寸法の関係や比率が異なる要素が含まれることもある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して重複する説明を省略する場合もある。いくつかの要素に複数の呼称を付す場合があるが、これら呼称の例はあくまで例示であり、これらの要素に他の呼称を付すことを否定するものではない。また、複数の呼称が付されていない要素についても、他の呼称を付すことを否定するものではない。なお、以下の説明において、「接続」は直接接続のみならず、他の要素を介して接続されることも意味する。
【0009】
レーダ装置は、例えば空港、駅、ショッピングモール、コンサートホール、展示会場等の施設に設置され、対象者(施設の利用者)が危険物を保持しているか否かの保安検査をする際に利用される。例えば、対象者の各点に対し電波を順次放射し、対象者の各点によって反射された電波を順次受信することによって対象者が走査される。この走査により得られた受信信号に基づき対象者を含む画像が生成される。施設の管理者は、この画像を確認することにより、対象者が危険物を保持しているか否か、又は対象者の持ち物に危険物が隠されているか否か等を判断することができる。あるいは、レーダ装置又は外部装置が受信信号の振幅を分析して、対象者が危険物を所持する可能性のレベルを警告してもよい。
【0010】
保安検査の時、衣服ポケット内の隣接する複数の危険物を検知するためには、高い角度分解能が要求される。角度分解能はアレーアンテナの開口長によって決定される。MIMO(Multi-input and Mulit-output)レーダを用いると、開口長が拡大され角度分解能が向上する。しかし、MIMOレーダは多数のアンテナを用いるので、複雑な設計となるため実装コストが高い。実施形態では、少数のアンテナからアレーアンテナを構成する。さらに、実施形態では、配線が容易となる設計が採用される。
【0011】
図1は、本実施形態に係るレーダ装置の機能構成の一例を説明するブロック図である。レーダ装置100は、送受信ユニット200、基準信号発生ユニット300、信号処理ユニット400及びコントローラ500を備える。
【0012】
基準信号発生ユニット300は、基準信号生成部310とDAC(Digital to Analog Converter;デジタル‐アナログ変換器)320と基準クロック生成部330とを含む。
【0013】
レーダ方式としては種々の方式が採用可能であるが、ここでは、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式を採用するとする。FMCW方式のレーダによれば、電波を対象者に放射し、対象者からの反射電波を受信し、送信信号と受信信号の周波数差から、対象物までの距離を計測することができる。基準信号生成部310は、時間の経過に伴い周波数が直線的に増加するFMCW信号(以下、チャープ信号と称される)を表すデジタル信号を生成する。DAC320は、基準信号生成部301で生成されたデジタル信号をアナログ信号に変換し、アナログ信号のチャープ信号を生成する。
【0014】
基準クロック生成部330は、基準クロックを生成する。
【0015】
基準信号発生ユニット300によって生成されたチャープ信号及び基準クロックは、送受信ユニット200へ出力される。基準信号発生ユニット300と送受信ユニット200との接続は、信号線を介する有線による接続でもよいし、無線による接続でもよい。
【0016】
送受信ユニット200は、少なくとも1つ(ここでは、4つ)のレーダパネル210a、210b、210c、210dを含む。送受信ユニット200が含むレーダパネルの数は複数に限らず、単数のレーダパネルを含んでもよい。各レーダパネル210a-210dには、チャープ信号及び基準クロックが供給される。各レーダパネル210a-210dは、チャープ信号に応じた電波を対象者に放射し、対象者からの反射電波を受信する。実施形態で用いられる電波としては、波長が1ミリメートルから30ミリメートルの電波を利用してもよい。波長が1ミリメートルから10ミリメートルの電波はミリ波とも称され、波長が10ミリメートルから100ミリメートルの電波はマイクロ波とも称される。さらに、テラヘルツ波と称される波長が100マイクロメートルから1ミリメートルの電波を用いてもよい。レーダパネル210a-210dの詳細は
図2乃至
図4を参照して後述する。
【0017】
各レーダパネル210a-210dは、反射電波の受信信号を中間周波数信号(IF信号)に変換する。各レーダパネル210a-210dにより得られたIF信号は、信号処理ユニット400へ出力される。レーダパネル210a-210dと信号処理ユニット400との接続は、信号線を介する有線による接続でもよいし、無線による接続でもよい。
【0018】
信号処理ユニット400は、キャリブレーション部410、距離推定部420、仮想アレー拡張部430、及び到来方向推定部440を含む。信号処理ユニット400は、全レーダパネル210a-210dのIF信号に対して信号処理を行う。
【0019】
信号処理ユニット400は、レーダパネル210a-210dから放射される電波の放射方向に位置する3次元空間である検査空間800内の平面であってレーダパネル210a-210dと平行な平面700内の対象者600の画像を得ることができる。表示装置でこの画像を表示し、検査者がこの画像を観察することにより、検査者は対象者600が危険物610(例えば、銃)を所持していることを検知することができる。
【0020】
レーダ装置100は、検査空間800に電波を常時放射して検査を常時実施してもよい。あるいは、レーダ装置100は、検査空間800を撮影するカメラを含み、カメラで撮影された検査空間800の画像から対象者600を認識し、対象者600を認識した場合、対象者600に対してのみ電波を放射して検査を実施してもよい。コントローラ500は、レーダ装置100全体の動作を制御する。
【0021】
信号処理ユニット400の詳細は
図5乃至
図13を参照して後述する。
【0022】
次に、
図2乃至
図4を用いて、送受信ユニット200に含まれるレーダパネル210a-210dの詳細を説明する。各レーダパネル210a-210dは同じ構造を有するので、以下では、レーダパネル210aのみについて説明する。他のレーダパネル210b、210c、210dについての説明は同様であるので、省略する。
【0023】
図2は、レーダパネル210aの構成の一例を示す図である。平板状のレーダパネル210aの上に、複数(ここでは、4つ)のレーダユニット10a、10b、10c、10dが配置される。各レーダユニット10a-10dは、基板12a、12b、12c、12dと、対象者へ電波を送信する送信アレーアンテナと、対象者からの反射波を受信する受信アレーアンテナと、送信アレーアンテナから電波を放射させるとともに受信アレーアンテナの受信信号を処理する集積回路(IC)を含む。送信アレーアンテナ、受信アレーアンテナ及び集積回路(IC)は各基板12a-12d上に配置される。
【0024】
基板12a-12dは、同じ形状、例えば矩形形状である。基板12a、12cは、その長辺がレーダパネル210aの中心を原点とするX-Y座標系のX軸方向に沿って配置される。基板12b、12dは、その長辺がレーダパネル210aのX-Y座標系のY軸に沿って配置される。言い換えると、レーダユニット10a-10dは風車状に配置される。
【0025】
送信アンテナと受信アンテナは互換性があるので、以下の説明の送信アレーアンテナを受信アレーアンテナと読み換え、受信アレーアンテナを送信アレーアンテナと読み替えてもよい。同様に、送信アンテナを受信アンテナと、受信アンテナを送信アンテナと読み替えてもよい。
【0026】
具体的には、レーダユニット10aは、基板12aの2つの短辺の中の第1の短辺側に配置される送信アレーアンテナ、基板12aの2つの短辺の中の第2の短辺側に配置される受信アレーアンテナ、及び基板12aの中央部に配置される集積回路14aを含む。
【0027】
送信アレーアンテナは、複数(ここでは、4つ)の送信アンテナt1a、t2a、t3a、t4aを含む。送信アンテナt1a-t4aは、Y軸に沿った直線上に配列される。各送信アンテナt1a-t4aのY座標はプラスの値である。送信アンテナt1aのY座標の絶対値が最も大きく、送信アンテナt4aのY座標の絶対値が最も小さい。
【0028】
送信アンテナt1a-t4aは
図2に示すように不等間隔に配列されてもよいし、等間隔に配列されてもよい。
図2の例では、送信アンテナt1a、t2aの間隔はλである。送信アンテナt2a、t3aの間隔は3λである。送信アンテナt3a、t4aの間隔は2λである。λはレーダパネル210aが放射する電波に含まれる波長の中の最も強度が高い波長を中心とする所定の許容範囲の波長である。許容範囲は、最も強度が高い波長の±25パーセントを含む。許容範囲は、最も強度が高い波長の±10%であることが要求される場合もある。λ/2は基準アンテナ間隔とも称する。
【0029】
図2に示すアンテナ間隔の不等間隔アレーアンテナは、最小冗長度アレー(Minimum Redundancy Array:MRA)アンテナと称される。MRAは、不等間隔アレーの一種であり、同一の素子間隔となる素子の組み合わせを最小化し、素子間隔の冗長性を最小化したアレーであり、生成される仮想アレーが等間隔に配置されたアンテナからなる MRAは、素子の配列密度により等価的に振幅分布を実現することができるので、各素子の振幅分布が一定の場合でも、低サイドローブ化が可能である。また、MRAはグレーティングローブが発生しにくいため、アンテナ間隔を広くすることができ、アンテナ数を削減できる。
【0030】
受信アレーアンテナは、複数(ここでは、4つ)の受信アンテナr1a、r2a、r3a、r4aを含む。送信アンテナの数と受信アンテナの数は
図2に示すように一致していてもよいし、異なっていてもよい。受信アンテナr1a-r4aは、Y軸に沿った直線上に配列される。説明の便宜上、受信アンテナr1a-r4aはY軸上に配列されるとする。基板12aは、大部分がレーダパネル210aのX-Y座標系の第2象限に位置するように配置される。各受信アンテナr1a-r4aのY座標はプラスの値である。受信アンテナr1aのY座標の絶対値が最も大きく、受信アンテナr4aのY座標の絶対値が最も小さい。
【0031】
受信アンテナr1a-r4aは
図2に示すように不等間隔に配列されてもよいし、等間隔に配列されてもよい。
図2の例では、受信アンテナr1a、r2aの間隔はλである。受信アンテナr2a、r3aの間隔は3λである。受信アンテナr3a、r4aの間隔は2λである。
【0032】
受信アンテナr1a-r4aが不等間隔に配列されている場合、各アンテナ間隔は
図2に示すように送信アンテナt1a-t4aのアンテナ間隔と同じでもよいし、異なっていてもよい。受信アンテナr1a-r4aが等間隔に配列されている場合、各アンテナ間隔は送信アンテナt1a-t4aのアンテナ間隔と同じでもよいし、異なっていてもよい。各受信アンテナr1a-r4aのY座標は
図2に示すように各送信アンテナt1a-t4aのY座標と同じでもよいし、ずれていてもよい。
【0033】
集積回路14aと送信アンテナt1a-t4aは配線(例えばストリップ配線)により接続される。集積回路14aと受信アンテナr1a-r4aは配線により接続される。
【0034】
レーダユニット10bは、基板12bの2つの短辺の中の第1の短辺側に配置される送信アレーアンテナ、基板12bの2つの短辺の中の第2の短辺側に配置される受信アレーアンテナ、及び基板12bの中央部に配置される集積回路14bを含む。
【0035】
送信アレーアンテナは、複数(ここでは、4つ)の送信アンテナt1b、t2b、t3b、t4bを含む。送信アンテナt1b-t4bは、X軸に沿った直線上に配列される。各送信アンテナt1b-t4bのX座標はプラスの値である。送信アンテナt1bのX座標の絶対値が最も大きく、送信アンテナt4bのX座標の絶対値が最も小さい。
【0036】
送信アンテナt1b-t4bは
図2に示すように不等間隔に配列されてもよいし、等間隔に配列されてもよい。
図2の例では、送信アンテナt1b、t2bの間隔はλである。送信アンテナt2b、t3bの間隔は3λである。送信アンテナt3b、t4bの間隔は2λである。
【0037】
受信アレーアンテナは、複数(ここでは、4つ)の受信アンテナr1b、r2b、r3b、r4bを含む。送信アンテナの数と受信アンテナの数は
図2に示すように一致していてもよいし、異なっていてもよい。受信アンテナr1b-r4bは、X軸に沿った直線上に配列される。説明の便宜上、受信アンテナr1b-r4bはX軸上に配列されるとする。基板12bは、大部分がレーダパネル210aのX-Y座標系の第1象限に位置するように配置される。各受信アンテナr1b-r4bのX座標はプラスの値である。受信アンテナr1bのX座標の絶対値が最も大きく、受信アンテナr4bのX座標の絶対値が最も小さい。
【0038】
受信アンテナr1b-r4bは
図2に示すように不等間隔に配列されてもよいし、等間隔に配列されてもよい。
図2の例では、受信アンテナr1b、r2bの間隔はλである。受信アンテナr2b、r3bの間隔は3λである。受信アンテナr3b、r4bの間隔は2λである。
【0039】
受信アンテナr1b-r4bが不等間隔に配列されている場合、各アンテナ間隔は
図2に示すように送信アンテナt1b-t4bのアンテナ間隔と同じでもよいし、異なっていてもよい。受信アンテナr1b-r4bが等間隔に配列されている場合、各アンテナ間隔は送信アンテナt1b-t4bのアンテナ間隔と同じでもよいし、異なっていてもよい。各受信アンテナr1b-r4bのX座標は
図2に示すように各送信アンテナt1b-t4bのX座標と同じでもよいし、ずれていてもよい。
【0040】
集積回路14bと送信アンテナt1b-t4bは配線により接続される。集積回路14bと受信アンテナr1b-r4bは配線により接続される。
【0041】
レーダユニット10cは、基板12cの2つの短辺の中の第1の短辺側に配置される送信アレーアンテナ、基板12cの2つの短辺の中の第2の短辺側に配置される受信アレーアンテナ、及び基板12cの中央部に配置される集積回路14cを含む。
【0042】
送信アレーアンテナは、複数(ここでは、4つ)の送信アンテナt1c、t2c、t3c、t4cを含む。送信アンテナt1c-t4cは、Y軸に沿った直線上に配列される。各送信アンテナt1c-t4cのY座標はマイナスの値である。送信アンテナt1cのY座標の絶対値が最も小さく、送信アンテナt4cのX座標の絶対値が最も大きい。
【0043】
送信アンテナt1c-t4cは
図2に示すように不等間隔に配列されてもよいし、等間隔に配列されてもよい。
図2の例では、送信アンテナt1c、t2cの間隔はλである。送信アンテナt2c、t3cの間隔は3λである。送信アンテナt3c、t4cの間隔は2λである。
【0044】
受信アレーアンテナは、複数(ここでは、4つ)の受信アンテナr1c、r2c、r3c、r4cを含む。送信アンテナの数と受信アンテナの数は
図2に示すように一致していてもよいし、異なっていてもよい。受信アンテナr1c-r4cは、Y軸に沿った直線上に配列される。説明の便宜上、受信アンテナr1c-r4cはY軸上に配列されるとする。基板12cは、大部分がレーダパネル210aのX-Y座標系の第4象限に位置するように配置される。各受信アンテナr1c-r4cのY座標はマイナスの値である。受信アンテナr1cのY座標の絶対値が最も小さく、受信アンテナr4cのY座標の絶対値が最も大きい。
【0045】
受信アンテナr1c-r4cは
図2に示すように不等間隔に配列されてもよいし、等間隔に配列されてもよい。
図2の例では、受信アンテナr1c、r2cの間隔はλである。受信アンテナr2c、r3cの間隔は3λである。受信アンテナr3c、r4cの間隔は2λである。
【0046】
受信アンテナr1c-r4cが不等間隔に配列されている場合、各アンテナ間隔は
図2に示すように送信アンテナt1c-t4cのアンテナ間隔と同じでもよいし、異なっていてもよい。受信アンテナr1c-r4cが等間隔に配列されている場合、各アンテナ間隔は送信アンテナt1c-t4cのアンテナ間隔と同じでもよいし、異なっていてもよい。各受信アンテナr1c-r4cのY座標は
図2に示すように各送信アンテナt1c-t4cのY座標と同じでもよいし、ずれていてもよい。
【0047】
集積回路14cと送信アンテナt1c-t4cは配線により接続される。集積回路14cと受信アンテナr1c-r4cは配線により接続される。
【0048】
レーダユニット10dは、基板12dの2つの短辺の中の第1の短辺側に配置される送信アレーアンテナ、基板12dの2つの短辺の中の第2の短辺側に配置される受信アレーアンテナ、及び基板12dの中央部に配置される集積回路14dを含む。
【0049】
送信アレーアンテナは、複数(ここでは、4つ)の送信アンテナt1d、t2d、t3d、t4dを含む。送信アンテナt1d-t4dは、X軸に沿った直線上に配列される。各送信アンテナt1d-t4dのX座標はマイナスの値である。送信アンテナt1dのX座標の絶対値が最も小さく、送信アンテナt4dのX座標の絶対値が最も大きい。
【0050】
送信アンテナt1d-t4dは
図2に示すように不等間隔に配列されてもよいし、等間隔に配列されてもよい。
図2の例では、送信アンテナt1d、t2dの間隔はλである。送信アンテナt2d、t3dの間隔は3λである。送信アンテナt3d、t4dの間隔は2λである。
【0051】
受信アレーアンテナは、複数(ここでは、4つ)の受信アンテナr1d、r2d、r3d、r4d)を含む。送信アンテナの数と受信アンテナの数は
図2に示すように一致していてもよいし、異なっていてもよい。受信アンテナr1d-r4dは、X軸に沿った直線上に配列される。説明の便宜上、受信アンテナr1d-r4dはX軸上に配列されるとする。基板12dは、大部分がレーダパネル210aのX-Y座標系の第3象限に位置するように配置される。各受信アンテナr1d-r4dのX座標はマイナスの値である。受信アンテナr1dのX座標の絶対値が最も小さく、受信アンテナr4dのX座標の絶対値が最も大きい。
【0052】
受信アンテナr1d-r4dは
図2に示すように不等間隔に配列されてもよいし、等間隔に配列されてもよい。
図2の例では、受信アンテナr1d、r2dの間隔はλである。受信アンテナr2d、r3dの間隔は3λである。受信アンテナr3d、r4dの間隔は2λである。
【0053】
受信アンテナr1d-r4dが不等間隔に配列されている場合、各アンテナ間隔は
図2に示すように送信アンテナt1d-t4dのアンテナ間隔と同じでもよいし、異なっていてもよい。受信アンテナr1d-r4dが等間隔に配列されている場合、各アンテナ間隔は送信アンテナt1d-t4dのアンテナ間隔と同じでもよいし、異なっていてもよい。各受信アンテナr1d-r4dのX座標は
図2に示すように各送信アンテナt1d-t4dのX座標と同じでもよいし、ずれていてもよい。
【0054】
集積回路14dと送信アンテナt1d-t4dは配線により接続される。集積回路14dと受信アンテナr1d-r4dは配線により接続される。
【0055】
アレーアンテナを用いるレーダ装置においては、各アンテナ間の受信電波の位相差から到来方向が推定される。アレイアンテナとして等間隔アレーアンテナを用いると、同一の位相差が複数出現し、受信信号が冗長となる。
図2に示すように、MRAアンテナを用いるレーダ装置では、この冗長性が存在しなくなるので、効率良く開口長を拡大することができる。
【0056】
レーダユニット10a、10cは、Y軸上に配列されるレーダユニット10aの受信アンテナr1a-r4aの中でレーダユニット10cに最も近い受信アンテナr4aと、Y軸上に配列されるレーダユニット10cの受信アンテナr1c-r4cの中でレーダユニット10aに最も近い受信アンテナr1cと、の間隔が7λとなるように配置される。
【0057】
各レーダユニット10a、10cの受信アレーアンテナのアンテナ間隔がλ、2λ、3λである場合、λ-6λのアンテナ間隔の仮想アレーアンテナが実現できる。レーダユニット10a、10c間の最も近接する2つのアンテナの間隔が受信アレーアンテナのアンテナ間隔λ、2λ、3λの和(6λ)以上の7λとされていると、レーダユニット10a、10cの受信アンテナr1a-r4aと受信アンテナr1c-r4cを1つのアレーアンテナとして機能させた場合、アンテナ間隔λの等間隔で開口長が19λの仮想アレーアンテナが実現でき、開口長をさらに大きくすることができる。
【0058】
各レーダユニット10a、10cの受信アレーアンテナのアンテナが等間隔、例えばλで配列される場合、4個のアンテナで開口長が3λの仮想アレーアンテナが得られるので、レーダユニット10a、10c間の最も近接する2つのアンテナの間隔は4λとすると、開口長が10λの仮想アレーアンテナが実現できる。
【0059】
レーダユニット10b、10dは、X軸上に配列されるレーダユニット10bの受信アンテナr1b-r4bの中でレーダユニット10dに最も近い受信アンテナr4bと、X軸上に配列されるレーダユニット10dの受信アンテナr1d-r4dの中でレーダユニット10bに最も近い受信アンテナr1dと、の間隔が7λとなるように配置される。これによっても、レーダユニット10b、10dの受信アンテナr1b-r4bと受信アンテナr1d-r4dを1つのアレーアンテナとして機能させた場合、アンテナ間隔λの等間隔で開口長が19λの仮想アレーアンテナが実現でき、開口長をさらに大きくすることができる。
【0060】
各レーダユニット10b、10dの受信アレーアンテナのアンテナが等間隔、例えばλで配列される場合、4個のアンテナで開口長が3λの仮想アレーアンテナが得られるので、レーダユニット10b、10d間の最も近接する2つのアンテナの間隔は4λとすると、開口長が10λの仮想アレーアンテナが実現できる。
【0061】
なお、レーダユニット10a、10cの最も近い受信アンテナどうしの間隔とレーダユニット10b、10dの最も近い受信アンテナどうしの間隔の両方が7λになる必要はなく、一方の間隔は7λ以外でもよい。
【0062】
図2では、受信アンテナr1a-r4aと受信アンテナr1c-r4cがY軸上に線形に配列されているが、受信アンテナr1a-r4aと受信アンテナr1c-r4cが同じ直線上に配列される必要はなく、2本の直線上にそれぞれ配列されてもよい。
【0063】
同様に、受信アンテナr1b-r4bと受信アンテナr1d-r4dも同じ直線上に配列される必要はなく、2本の直線上にそれぞれ配列されてもよい。
【0064】
レーダユニット10a-10dの構成要素がそれぞれ基板12a-12d上に配置され、基板12a-12dがレーダパネル210a上に配置されると説明したが、レーダユニット10a-10d毎の基板12a-12d省略可能である。レーダユニット10a-10dの構成要素がレーダパネル210a上に直接配置されてもよい。その場合、上記の説明の基板12a-12dはレーダユニット10a-10dの配置予定領域と読み替えられる。
【0065】
基板の長辺と短辺の説明は便宜上であり、基板の向きを90度変え、長辺を短辺と、短辺を長辺と読み替えられる。
【0066】
さらに、基板の形状は矩形に限らず、正方形、台形、平行四辺形、5角形以上の多角形でもよい。その場合、上記の説明の長辺を対応する2辺と、短辺を別の対応する2辺と読み替えられる
4つのレーダユニット10a-10d相互の関係について説明する。
【0067】
先ず、レーダユニット10a、10b相互の関係について説明する。レーダユニット10aでは、集積回路14aの左側(X軸の負の側)に送信アンテナt1a-t4aが配置され、集積回路14aの右側(X軸の正の側)に受信アンテナr1a-r4aが配置される。レーダユニット10bでは、集積回路14bの上側(Y軸の正の側)に送信アンテナt1b-t4bが配置され、集積回路14bの下側(Y軸の負の側)に受信アンテナr1b-r4bが配置される。
【0068】
集積回路の左と右は、集積回路を時計方向に90度回転すると、集積回路の下と上となる。そのため、レーダユニット10aをレーダパネル210aのX-Y座標系の原点を中心として時計方向に90度回転すると、レーダユニット10aはレーダユニット10bと一致する。すなわち、レーダユニット10aの送信アレーアンテナの基板12aにおける相対位置はレーダユニット10bの送信アレーアンテナの基板12bにおける相対位置と同じである。同様に、レーダユニット10aの受信アレーアンテナの基板12aにおける相対位置はレーダユニット10bの受信アレーアンテナの基板12bにおける相対位置と同じである。相対位置の基準となる座標は集積回路14a、14bの中心としてもよい。
【0069】
このため、レーダユニット10bのアンテナの配置、配線パターン等の設計は、レーダユニット10aの設計をコピー(回転移動及び/又は平行移動)するだけで簡単に行うことができる。
【0070】
レーダユニット10c、10d相互の関係も、レーダユニット10a、10b相互の関係と同じである。
【0071】
次に、レーダユニット10a、10c相互の関係について説明する。レーダユニット10aでは、集積回路14aの左側(X軸の負の側)に送信アンテナt1a-t4aが配置され、集積回路14aの右側(X軸の正の側)に受信アンテナr1a-r4aが配置される。レーダユニット10cでは、集積回路14cの右側(X軸の正の側)に送信アンテナt1b-t4bが配置され、集積回路14cの左側(X軸の負の側)に受信アンテナr1b-r4bが配置される。
【0072】
レーダユニット10aの中心(すなわち基板12aの中心)を通りレーダユニット10aの短辺(すなわち基板12aの短辺)に平行な直線(すなわちY軸に平行な直線)を中心としてレーダユニット10aを表裏反転させると、集積回路の左と右はそれぞれ集積回路の右と左となる。すなわち、基板12aの中心を通り基板12aの短辺に平行な直線に関してレーダユニット10aの送信アレーアンテナと線対称の関係となる仮想の送信アレーアンテナの基板における相対位置は、レーダユニット10cの送信アレーアンテナの基板12cにおける相対位置と同じである。同様に、基板12aの中心を通り基板12aの短辺に平行な直線に関してレーダユニット10aの受信アレーアンテナと線対称の関係となる仮想の受信アレーアンテナの基板における相対位置は、レーダユニット10cの受信アレーアンテナの基板12cにおける相対位置と同じである。
【0073】
図3(a)はレーダユニット10aを示し、
図3(b)はレーダユニット10aを基板12aの中心を通り基板12aの短辺に平行な直線を中心としてレーダユニット10aを180度回転させて得られる仮想的なレーダユニット10a´を示す。レーダユニット10a´では、集積回路14a´の右側に送信アンテナt1a´-t4a´が配置され、集積回路14a´の左側に受信アンテナr1a´-r4a´が配置される。すなわち、レーダユニット10a´の送信アレーアンテナの基板12a´における相対位置はレーダユニット10cの送信アレーアンテナの基板12cにおける相対位置と同じである。同様に、レーダユニット10a´の受信アレーアンテナの基板12a´における相対位置はレーダユニット10cの受信アレーアンテナの基板12cにおける相対位置と同じである。相対位置の基準となる座標は集積回路14a、14cの中心としてもよい。このため、レーダユニット10cのアンテナの配置、配線パターン等の設計は、レーダユニット10aの設計を表裏反転してからコピー(回転移動及び/又は平行移動)することで簡単に行うことができる。
【0074】
レーダユニット10b、10d相互の関係も、レーダユニット10a、10c相互の関係と同じである。
【0075】
次に、各レーダユニット10a-10dに含まれる集積回路14a-14dの構成について説明する。
図4は、集積回路14aの機能構成について説明するブロック図である。集積回路14b-14dの機能構成についても同様である。
【0076】
集積回路14aは、送信回路50と受信回路60とを含む。送信回路50は、移相器51と増幅器52とから構成される。受信回路60は、増幅器61、周波数変換器62及びADC(Analog to Digital Converter;アナログ-デジタル変換器)63から構成される。送信アンテナt1a-t4aが送信回路50に接続される。受信アンテナr1a-r4aが受信回路60に接続される。
【0077】
基準信号発生ユニット300から出力されるチャープ信号は、まず、移相器51へ入力される。移相器51は、4つの送信アンテナt1a-t4aに供給されるチャープ信号の位相を調整する。位相が調整されたチャープ信号は増幅器52で所定数倍に増幅される。増幅器52は、送信アンテナt1a-t4aと同じ数のアンプを含む。あるいは、増幅器52は、送信アンテナt1a-t4aの数より少ない数のアンプを含み、移相器51の出力を複数のアンテナに順次供給してもよい。
【0078】
増幅器52の出力が送信アンテナt1a-t4aの中の1つの送信アンテナから順次送信される。あるいは、増幅器52の出力が送信アンテナt1a-t4aの中の複数又は全ての送信アンテナから同時に送信される。
【0079】
受信アンテナr1a-r4aで受信された受信信号は、増幅器61によって所定の電力に調整される。増幅器61の出力信号は、周波数変換器62へ入力される。増幅器61は、受信アンテナr1a-r4aと同じ数のアンプを含む。あるいは、増幅器61は、受信アンテナr1a-r4aの数より少ない数のアンプを含み、複数の受信アンテナr1a-r4aの受信信号をアンプに順次供給してもよい。
【0080】
周波数変換器62には、基準信号発生ユニット300から出力されるチャープ信号も入力される。周波数変換器62は、受信信号とチャープ信号とを混合し、中間周波数信号(IF信号)を生成する。IF信号は、ADC63へ出力される。ADC63は、IF信号をデジタル信号に変換する。ADC63は、デジタル信号に変換されたIF信号を、信号処理ユニット400へ出力する。信号処理ユニット400は、全てのレーダパネルの全てのレーダユニットが出力するIF信号に対して、信号処理を行う。
【0081】
1つの基準信号発生ユニット300から出力されるチャープ信号は、送受信ユニット200内の全てのレーダパネルの全てのレーダユニットの送信回路50と受信回路60に供給されている。これにより、送受信ユニット200の全ての送信アレーアンテナからの送信動作が協調され、送受信ユニット200の全ての受信アレーアンテナの受信が協調され、送信と受信が干渉することが防止される。
【0082】
1つの基準信号発生ユニット300から出力される基準クロックも、送受信ユニット200内の全てのレーダパネルの全てのレーダユニットの送信回路50と受信回路60に供給されている。これにより、全ての送信回路50が同期し、全ての受信回路60が同期して制御される。
【0083】
次に、
図5乃至
図13を参照して、信号処理ユニット400の詳細を説明する。以下の説明では、レーダパネル210aを用いて説明するが、レーダパネル210b-210dについても同様である。
【0084】
レーダパネル210aにおいては、レーダユニット10aの送信アレーアンテナからチャープ信号に応じた電波が放射されると、レーダユニット10a-10dの受信アレーアンテナは、反射波を受信する。同様に、レーダユニット10bの送信アレーアンテナからチャープ信号に応じた電波が放射されると、レーダユニット10a-10dの受信アレーアンテナは、反射波を受信する。レーダユニット10cの送信アレーアンテナからチャープ信号に応じた電波が放射されると、レーダユニット10a-10dの受信アレーアンテナは、反射波を受信する。レーダユニット10dの送信アレーアンテナからチャープ信号に応じた電波が放射されると、レーダユニット10a-10dの受信アレーアンテナは、反射波を受信する。
【0085】
レーダパネル210aのレーダユニット10a-10dから出力されたIF信号はキャリブレーション部410に入力される。
【0086】
対象者600の走査において、対象者600とレーダパネル210aとの距離が近い場合、対象者600との各レーダユニット10a-10dの受信アレーアンテナとの距離差が大きく異なる。これにより、各レーダユニット10a-10dから出力されるIF信号の位相差が顕著となり、高精度な検査を行うことが難しい。そこで、対象者600とレーダパネル210aとの距離が近い場合、キャリブレーション部410は、IF信号に対してキャリブレーションを行う。
【0087】
図5は、キャリブレーションの概念を示す図である。
図5には、アンテナr1、r2、r3、r4、r5からなる受信アレーアンテナが示されている。
【0088】
レーダパネル210aと対象者600との距離が近い場合、対象者600によって反射し、受信アンテナに到達する電波は、球面波900となる。球面波900では、各受信アンテナr1-r5が受信する電波の位相が大きく異なる。具体的には、受信アンテナr3が受信する反射波と、受信アンテナr2又はr4が受信する反射波とでは位相が異なり、受信アンテナr3が受信する反射波と、受信アンテナr1又はr5が受信する反射波とでは位相は更に大きく異なる。このように、球面波900による各受信アンテナの位相差を補償するため、キャリブレーション部410は、各受信アンテナに到来する反射波を、到来波1000とみなすよう位相を補正する。なお、レーダパネル210aと対象者600との距離が十分離れている場合、キャリブレーション部410による補正処理は省略してもよい。
【0089】
キャリブレーション部410から出力されたIF信号は、距離推定部420へ入力される。FMCW変調を用いたレーダ装置100によれば、IF信号は、各レーダパネルと対象者600との距離に応じた周波数で振動する。そのため、距離推定部420は、IF信号に対しフーリエ変換を行い、その結果からレンジスペクトルを算出する。距離推定部420は、算出されたレンジスペクトルの結果から、電力の高い周波数を用いてレンジ距離を推定することができる。
【0090】
仮想アレー拡張部430は、仮想アレーアンテナを形成する。以下、
図6乃至
図9を参照して、仮想アレーアンテナについて説明する。ここでは、MIMOアレーアンテナ、及びMIMO-KR変換仮想アレーアンテナの概要を説明する。
【0091】
まず、
図6を用いてMIMOアレーアンテナについて説明する。
【0092】
図6は、2個の送信アンテナから成る送信アレーアンテナと、2個の受信アンテナから成る受信アレーアンテナとから、4個のアンテナからなるMIMOアレーアンテナが形成される一例を示す。なお、
図6に示す送信アンテナの数、受信アンテナの数、MIMOアレーアンテナを構成するアンテナの数は一例である。Ntx個の送信アンテナから成る送信アレーアンテナと、Nrx個の受信アンテナから成る受信アレーアンテナを用いると、Ntx×Nrx個のアンテナから成るMIMOアレーアンテナが形成される。
【0093】
図6に示す例によれば、2個の送信アンテナが距離2dの間隔でX軸方向に配列される。この送信アレーアンテナは、ULA(Uniform Linear Array)の構成を示す。2個の受信アンテナが距離dの間隔でX軸方向に配列される。受信アレーアンテナの構成もULAである。距離dの一例は半波長λ/2である。方向を推定するターゲット数はKであり、各ターゲットからそれぞれ電磁波が到来し、合計でK波が到来するとする。
【0094】
受信アレーアンテナが、ある時刻tにおいて受信した反射波に基づく受信信号x(t)を式1で表す。
【0095】
【0096】
ここで、
Aはモード行列、
Kは、到来波のインデックスを示す。ターゲットより反射した電波がそれぞれ到来し、合計でK波、到来することを意味する。
【0097】
s(t)は時刻tにおける受信信号の複素振幅ベクトル、
n(t)は時刻tにおける雑音ベクトル、θkはk番のターゲットからの電波の到来方向、
at(θk)は、到来するk番目の電波についての送信アレーアンテナのモードベクトル、
ar(θk)は、到来するk番目の電波についての受信アレーアンテナのモードベクトルである。
【0098】
式1中の、at(θk)とar(θk)とのクロネッカ積は、以下に示す式2で表現される。
【0099】
【0100】
ここで、φk=j(2π/λ)d・sinθkとすると、任意のkについてのMIMOアレーアンテナのモードベクトルa(θk)は式3のように表される。
【0101】
【0102】
式3は、MIMOアレーアンテナのモードベクトルa(θk)が4つの位相状態0、φk、2φk、3φkを含むことを示す。これは、2個の送信アンテナと2個の受信アンテナから、X軸方向に、距離dの間隔で配列される4個のアンテナからなるMIMOアレーアンテナが形成されることを意味する。
【0103】
次に、
図7を参照して、MIMO-KR変換仮想アレーアンテナについて説明する。
【0104】
図6における受信アレーアンテナが受信する反射波に基づく受信信号x(t)に対してKR(Kahtri-Rao)変換を適用することで、
図6に示すMIMOアレーアンテナより多くのアンテナからなる仮想アレーアンテナを形成することができる。
【0105】
以下、KR変換、及びMIMO-KR変換仮想アレーアンテナ形成の詳細について説明する。KR変換は、相関行列の非重複要素を利用してMIMOアレーアンテナのモードベクトルの次元を拡張する信号処理である。
【0106】
図6に示す受信アレーアンテナからの受信信号(MIMOアレーアンテナによる信号処理による受信信号)x(t)に関する相関行列R
xxは以下のように計算される。
【0107】
R
xx=E[x(t)x(t)
H]
=ASA
H+R
N 式4
E[・]はアンサンブル平均、・Hはエルミート転置を表す。また、Sは波源相関行列、R
Nは雑音相関行列を表す。以下では、信号源の電力を1と仮定する。これによりSは単位行列とみなせる。また、雑音は無視できるほど小さいと仮定する。これにより、R
Nは零行列とみなせる。以上のことを用いて、
図6に示すMIMOアレーアンテナに対し、KR変換を施す。
【0108】
図6に示すMIMOアレーアンテナによる受信信号に対する相関行列を式5に示す。
【0109】
【0110】
式5に示す相関行列Rxxの非重複要素を成分にもつベクトルをzeとすると、zeは式6で表される。
【0111】
ze=[e-3φk,e-2φk,e-φk,1,eφk,e2φk,e3φk]T 式6
式6は、MIMOアレーアンテナのモードベクトルa(θk)が7つの位相状態0、±φk、±2φk、±3φkを含むことを示す。これは、距離dの間隔でX軸方向に配列される7個の仮想アンテナから構成されるMIMO-KR変換仮想アレーアンテナが形成されたことを意味する。
【0112】
このように、Ntx個の送信アンテナとNrx個の受信アンテナに基づくMIMOアレーアンテナにKR変換を適用することで、距離dの間隔でX軸方向に配列される2×Ntx×Nrx-1個の仮想アンテナから構成される、MIMO-KR変換仮想アレーアンテナが形成される。式4乃至式6を用いて示す、受信信号の相関行列を求め、非重複要素からなるベクトルzeを求めること操作をKR変換と称する。
【0113】
ここで、式5に示す相関行列には未だ重複要素が残っている。具体的には、式5に示す行列成分16個のうち、9個が重複成分である。これより、MIMO-KR変換仮想アレーアンテナの形成効率を改善する余地があることが分かる。
【0114】
送信アレーアンテナと受信アレーアンテナにULAに係るアレーアンテナではなく、重複要素を低減するMRAに係る送信アレーアンテナ、又はMRAに係る受信アレーアンテナ、又はMRAに係る送信アレーアンテナと受信アレーアンテナを利用することで、MIMOアレーアンテナにKR変換を適用した際に算出される相関行列の重複要素を減らすことができる。
【0115】
以下では、MRAに係る受信アレーアンテナ、又はMRAに係る受信アレーアンテナ、あるいはその両方を利用し、形成されるMIMOアレーアンテナに対し、KR変換を適用して生成されるMIMO-KR変換仮想アレーアンテナについて説明する。
【0116】
図8は、1個の送信アンテナと、4個の受信アンテナからなるMRAに係る受信アレーアンテナとを利用する場合に生成されるMIMO-KR変換仮想アレーアンテナの一例を示す。
【0117】
図8の例における、任意のk∈KについてのMIMOアレーアンテナのモードベクトルa(θ
k)を式7に示す。また、
図8に示す例において処理される受信信号に基づき、MIMOアレーアンテナを形成後、KR変換を適用して生成される相関行列R
xxを式8に示す。
【0118】
【0119】
式8によると、行列成分16個のうち、非重複要素は13個であることが分かる。つまり、
図8に示す例においては、MIMO-KR変換仮想アレーアンテナが13個の仮想アンテナから形成されることが分かる。
【0120】
図9は、2個の送信アンテナからなる送信アレーアンテナと、4個の受信アンテナからなる、MRAに係る受信アレーアンテナを利用して生成されるMIMO-KR変換仮想アレーアンテナの一例を示す。この場合、任意のk∈Kに対するMIMOアレーアンテナのモードベクトルa(θ
k)を式9に示す。
【0121】
【0122】
図9に示す例において処理される受信信号に基づき、MIMOアレーアンテナを形成後、KR変換を適用して生成される相関行列は省略するが、当該相関行列の非重複要素は39個となる。これにより、
図9に示す例において、MIMO-KR変換仮想アレーアンテナが39個の仮想アンテナから形成されることが分かる。
【0123】
つまり、
図8と
図9を比較すると、
図9は、
図8の例に対して送信アンテナを1個増やし、受信アンテナを1個増やしただけで仮想アンテナの数が26個増加することとなり、MIMO-KR変換仮想アレーアンテナを効率良く形成できることが分かる。
【0124】
以上から、ULAに係るアレーアンテナを用いるよりもMRAに係るアレーアンテナを用いる方が、MIMO-KR変換により仮想アレーアンテナを効率良く形成し、アンテナの開口長を拡大することができる。
【0125】
仮想アレー拡張部430が形成する仮想アレーの例を説明する。
【0126】
図10は、レーダユニット10aの送信アンテナt1a-t4aが電波を放射し、レーダユニット10bの受信アンテナr1b-r4bとレーダユニット10dの受信アンテナr1d-r4dが反射波を受信する場合を示す。
図11は、この場合に仮想アレー拡張部430が形成する仮想アレーアンテナの一例を示す。
【0127】
図11に示す仮想アレーアンテナは、仮想アンテナが矩形状の範囲に等間隔に配列される平面アレーアンテナである。この平面アレーアンテナの開口長はX軸方向には大きく、Y軸方向には小さい。
【0128】
図12は、レーダユニット10aの送信アンテナt4aが電波を放射し、レーダユニット10aの受信アンテナr1a-r4a、レーダユニット10bの受信アンテナr1b-r4b、レーダユニット10cの受信アンテナr1c-r4c及びレーダユニット10dの受信アンテナr1d-r4dが反射波を受信する場合を示す。
図13は、この場合、仮想アレー拡張部430が形成する仮想アレーアンテナの一例を示す。
【0129】
図13に示す仮想アレーアンテナは、仮想アンテナが十字状に等間隔に配列される十字状アレーアンテナである。この十字状アレーアンテナの開口長はX軸方向とY軸方向で等しい。
【0130】
平面アレーアンテナと十字状アレーアンテナを併用することにより、鋭いビームのアレーアンテナを実現することができる。
【0131】
到来方向推定部440は、仮想アレー拡張部430から出力される仮想アレーアンテナによる受信信号(例えば、受信アンテナの配列間隔に基づく位相差の情報)に基づいて、反射波の到来角度を推定する。反射波の到来角度の推定には、ビームフォーミング法、MUSIC法、ESPRIT法等が用いられる。実施形態は、ビームフォーミング法を用いる。ビームフォーミング法では、受信信号と重みωとの相関値が計算される。
【0132】
重みωは、式10で表記される。
【0133】
ω=[w1,1,w1,2,…,wP,Q] 式10
なお、P、Qは、形成される仮想受信アレーアンテナのアンテナ数に対応する。また、任意のp∈P、任意のq∈Qに対し、wp,qは、式11で表記される。
【0134】
【0135】
相関値は、掃引角度(θi,φk)対して逐次的に計算される。
【0136】
到来方向推定部440によって算出されるビームフォーミングの結果BFは、式12で表される。
【0137】
BF(θ,φ)=ωRyyωH 式12
なお、Ryy=E[yyH]である。
【0138】
BFは、掃引角度(方向)に関する評価関数として取得される。到来方向推定部440は、BFに基づいて算出された値を、大きい値から順に反射波の到来方向として出力する。
【0139】
次に、
図14、
図15を参照して、レーダ装置100の動作について説明する。
図14、
図15は、コントローラ500の制御によるレーダパネル210a及び信号処理ユニット400の動作を示すフローチャートである。
【0140】
レーダユニット10aの送信アンテナt1a-t4aが電波を放射し、レーダユニット10bの受信アンテナr1b-r4b及びレーダユニット10dの受信アンテナr1d-r4dが反射波を受信する(
図10参照)ことにより、検査空間800の一部の領域を走査する(ステップS12)。走査領域の例は、
図16(a)に示すように、X座標の値がマイナスである領域810a(第2象限、第3象限)である。なお、走査領域は電波の主な放射領域であり、実際には電波は走査領域の周囲にも放射される。
【0141】
図16は、送信レーダユニット毎に検査空間800内の一部領域を割り当てる一例を説明する図である。
図16では、検査空間800が、レーダパネル210aから見て正面として描かれている。
図16(a)は、レーダユニット10aの送信アンテナt1a-t4aに割り当てられる走査領域810aを示す。
図16(b)は、レーダユニット10bの送信アンテナt1b-t4bに割り当てられる走査領域810bを示す。走査領域810bは、X座標の値がプラスである第1象限、第4象限である。
図16(c)は、レーダユニット10cの送信アンテナt1c-t4cに割り当てられる走査領域810cを示す。走査領域810cは、Y座標の値がプラスである第1象限、第2象限である。
図16(d)は、レーダユニット10dの送信アンテナt1d-t4dに割り当てられる走査領域810dを示す。走査領域810dは、Y座標の値がマイナスである第3象限、第4象限である。
【0142】
図14、
図15の説明に戻り、仮想アレー拡張部430は、ステップS12の走査により生成されたIF信号に基づいて仮想アレーアンテナを形成する(ステップS14)。ステップS14によって形成される仮想アレーアンテナは、
図11に示すような平面アレーアンテナである。
【0143】
到来方向推定部440は、仮想アレー拡張部430の出力する受信信号に基づいて、ビームフォーミング結果BF1aを算出する(ステップS16)。
【0144】
レーダユニット10aの送信アンテナt4aが電波を放射し、レーダユニット10aの受信アンテナr1a-r4a、レーダユニット10bの受信アンテナr1b-r4b、レーダユニット10cの受信アンテナr1c-r4c及びレーダユニット10dの受信アンテナr1d-r4dが反射波を受信する(
図12参照)ことにより、検査空間800の一部の領域を走査する(ステップS18)。走査領域の例は、ステップS12の走査領域と同じである。
【0145】
仮想アレー拡張部430は、ステップS18の走査により生成されたIF信号に基づいて仮想アレーアンテナを形成する(ステップS20)。ステップS20によって形成される仮想アレーアンテナは、
図13に示すような十字状アレーアンテナである。
【0146】
到来方向推定部440は、仮想アレー拡張部430の出力する受信信号に基づいて、ビームフォーミング結果BF1bを算出する(ステップS22)。
【0147】
到来方向推定部440は、ビームフォーミング結果BF1aとビームフォーミング結果BF1bを合成し、ビームフォーミング結果BF1を算出する(ステップS24)。平面仮想アレーアンテナによるビームフォーミング結果BF1aと十字状仮想アレーアンテナによるビームフォーミング結果BF1bを合成することにより、鋭いビームの仮想アレーアンテナを実現することができ、角度分解能が向上する。ビームフォーミング結果の合成は、
図19乃至
図22を参照して後述する。
【0148】
レーダユニット10bの送信アンテナt1b-t4bが電波を放射し、レーダユニット10aの受信アンテナr1a-r4a及びレーダユニット10cの受信アンテナr1c-r4cが反射波を受信することにより、検査空間800の一部の領域を走査する(ステップS26)。走査領域の例は、
図16(b)に示すように、X座標の値がプラスである領域810b(第1象限、第4象限)である。
【0149】
仮想アレー拡張部430は、ステップS26の走査により生成されたIF信号に基づいて仮想アレーアンテナを形成する(ステップS28)。ステップS28によって形成される仮想アレーアンテナは、
図11に示すような平面アレーアンテナである。
【0150】
到来方向推定部440は、仮想アレー拡張部430の出力する受信信号に基づいて、ビームフォーミング結果BF2aを算出する(ステップS30)。
【0151】
レーダユニット10bは、送信アンテナt4bから電波を放射し、レーダユニット10aの受信アンテナr1a-r4a、レーダユニット10bの受信アンテナr1b-r4b、レーダユニット10cの受信アンテナr1c-r4c及びレーダユニット10dの受信アンテナr1d-r4dにより反射波を受信することにより、検査空間800の一部の領域を走査する(ステップS32)。走査領域の例は、ステップS26の走査領域と同じである。
【0152】
仮想アレー拡張部430は、ステップS32の走査により生成されたIF信号に基づいて仮想アレーアンテナを形成する(ステップS34)。ステップS34によって形成される仮想アレーアンテナは、
図13に示すような十字状アレーアンテナである。
【0153】
到来方向推定部440は、仮想アレー拡張部430の出力する受信信号に基づいて、ビームフォーミング結果BF2bを算出する(ステップS36)。
【0154】
到来方向推定部440は、ビームフォーミング結果BF2aとビームフォーミング結果BF2bを合成し、ビームフォーミング結果BF2を算出する(ステップS38)。
【0155】
レーダユニット10cの送信アンテナt1c-t4cが電波を放射し、レーダユニット10bの受信アンテナr1b-r4b及びレーダユニット10dの受信アンテナr1d-r4dが反射波を受信することにより、検査空間800の一部の領域を走査する(ステップS40)。走査領域の例は、
図16(c)に示すように、Y座標の値がプラスである領域810c(第1象限、第2象限)である。
【0156】
仮想アレー拡張部430は、ステップS40の走査により生成されたIF信号に基づいて仮想アレーアンテナを形成する(ステップS42)。ステップS42によって形成される仮想アレーアンテナは、
図11に示すような平面アレーアンテナである。
【0157】
到来方向推定部440は、仮想アレー拡張部430の出力する受信信号に基づいて、ビームフォーミング結果BF3aを算出する(ステップS44)。
【0158】
レーダユニット10cの送信アンテナt4cが電波を放射し、レーダユニット10aの受信アンテナr1a-r4a、レーダユニット10bの受信アンテナr1b-r4b、レーダユニット10cの受信アンテナr1c-r4c及びレーダユニット10dの受信アンテナr1d-r4dが反射波を受信することにより、検査空間800の一部の領域を走査する(ステップS46)。走査領域の例は、ステップS40の走査領域と同じである。
【0159】
仮想アレー拡張部430は、ステップS46の走査により生成されたIF信号に基づいて仮想アレーアンテナを形成する(ステップS48)。ステップS48によって形成される仮想アレーアンテナは、
図13に示すような十字状アレーアンテナである。
【0160】
到来方向推定部440は、仮想アレー拡張部430の出力する受信信号に基づいて、ビームフォーミング結果BF3bを算出する(ステップS50)。
【0161】
到来方向推定部440は、ビームフォーミング結果BF3aとビームフォーミング結果BF3bを合成し、ビームフォーミング結果BF3を算出する(ステップS52)。
【0162】
レーダユニット10dの送信アンテナt1d-t4dが電波を放射し、レーダユニット10aの受信アンテナr1a-r4a及びレーダユニット10cの受信アンテナr1c-r4cが反射波を受信することにより、検査空間800の一部の領域を走査する(ステップS454)。走査領域の例は、
図16(d)に示すように、Y座標の値がマイナスである領域810d(第3象限、第4象限)である。
【0163】
仮想アレー拡張部430は、ステップS54の走査により生成されたIF信号に基づいて仮想アレーアンテナを形成する(ステップS56)。ステップS56によって形成される仮想アレーアンテナは、
図11に示すような平面アレーアンテナである。
【0164】
到来方向推定部440は、仮想アレー拡張部430の出力する受信信号に基づいて、ビームフォーミング結果BF4aを算出する(ステップS58)。
【0165】
レーダユニット10dの送信アンテナt4dが電波を放射し、レーダユニット10aの受信アンテナr1a-r4a、レーダユニット10bの受信アンテナr1b-r4b、レーダユニット10cの受信アンテナr1c-r4c及びレーダユニット10bの受信アンテナr1b-r4bが反射波を受信することにより、検査空間800の一部の領域を走査する(ステップS60)。走査領域の例は、ステップS54の走査領域と同じである。
【0166】
仮想アレー拡張部430は、ステップS60の走査により生成されたIF信号に基づいて仮想アレーアンテナを形成する(ステップS62)。ステップS62によって形成される仮想アレーアンテナは、
図13に示すような十字状アレーアンテナである。
【0167】
到来方向推定部440は、仮想アレー拡張部430の出力する受信信号に基づいて、ビームフォーミング結果BF4bを算出する(ステップS64)。
【0168】
到来方向推定部440は、ビームフォーミング結果BF4aとビームフォーミング結果BF4bを合成し、ビームフォーミング結果BF4を算出する(ステップS66)。
【0169】
到来方向推定部440は、ビームフォーミング結果BF1、BF2、SBF3、BF4を合成し、ビームフォーミング結果BFを算出する(ステップS68)。
ステップS12、S18、S26、S32、S40、S46、S54、S60において、各レーダユニット10a-10dに走査範囲を割り当て、一部分を走査することにより、送信信号における位相ずれを低減することができる。しかし、各レーダユニット10a-10dが全走査範囲を走査してもよい。その場合、レーダユニット10a-10dのいずれかのみが電波を放射し、2つのレーダユニットが反射波を受信するだけでよい。すなわち、
図14のステップS12-S24の処理、
図14のステップS16-S38の処理、
図15のステップS40-S52の処理、及び
図15のステップS54-S68の処理の中のいずれか1つの処理だけ実行すればよい。
【0170】
図14及び
図15に示すレーダ装置100の動作では、電波を放射するレーダユニットの数は単数であった。しかし、複数のレーダユニットから同時に電波を放射してもよい。
【0171】
図17は、レーダユニット10a、10cから同時に電波を放射し、レーダユニット10b、10dで反射波を受信する様子を説明するための図である。レーザユニット10aの送信アンテナt1a-t4a及びレーザユニット10cの送信アンテナt1c-t4cが電波を放射する。X軸上に配列されたレーザユニット10bの受信アンテナr1b-r4b及びレーザユニット10dの受信アンテナr1d-r4dが反射波を放射する。
【0172】
図18は、
図17に示す送受信により形成される仮想アレーアンテナの一例を示す。
図18に示す仮想アレーアンテナは、
図11に示す仮想アレーアンテナよりもY軸方向の幅が広い。
【0173】
図19及び
図22を参照して、到来方向推定部440によって算出されるBF結果を説明する。
【0174】
本実施形態に係るレーダ装置100によれば、対象者600が複数の危険物610を保持する場合においても、高い角度分解能で、高精度に検出することができる。
図19は、対象者600が、例えば衣服のポケット内に隣接する2つの危険物610a、610bを隠している場合を想定している。レーダパネル210aは、例えばZ軸について仰角θe、俯角θhの範囲を走査しているとする。
【0175】
【0176】
図20は、十字状仮想アレーアンテナに基づいて算出されたBF結果を示す。ハッチングの密度はBF値に応じる。すなわち、ハッチングの密度が高い領域はBF値が高く、ハッチングの密度が低い領域はBF値が低い。十字状仮想アレーアンテナに基づくBF結果では、サイドローブの影響により、2つのターゲットと同程度のBF値の2つの偽ターゲットが生じてしまう。
【0177】
図21は、平面仮想アレーアンテナに基づいて算出されたBF結果を示す。平面仮想アレーアンテナに基づくBF結果では、サイドローブの影響により、2つのターゲット以外にBF値が小さい多くの偽ターゲットが生じてしまう。
【0178】
図22は、
図20、
図21に示す2つのBF結果を合成することで得られるBF結果を示す。
合成BF結果では、
図20で存在した2つの偽ターゲットのBF値が小さくなり、BF値の高い2つのターゲットが
図19に示した危険物610a、610bの位置に生じる。
【0179】
本実施形態に係るレーダ装置100によれば、レーダパネル210aにおいて4つのレーダユニット10a-10dを風車状に配置することで、レーダユニット10a-10dの設計が容易となる。平面状及び十字状の仮想アレーアンテナを形成することができ、両仮想アレーアンテナによりBF結果を合成することにより、鋭いビームを形成することができ、角度分解能を向上することができる。さらに、MRAに係る送信アレーアンテナ、及びMRAに係る受信アレーアンテナを用いることで、仮想アレーアンテナを効率よく増加させることができ、レーダパネルの開口長を拡大させることができる。
図23は、
図2に示すレーダパネル210aの変形例の構成を示す図である。
図23に示すレーダパネル210a´は、レーダユニット20a、20bを含む。
【0180】
レーダユニット20aは、基板22aと、送信アレーアンテナ、受信アレーアンテナ及び集積回路24aを含む。送信アレーアンテナは基板22aの第1辺側に配置される。受信アレーアンテナは第1辺に直交する基板22aの第2辺側に配置される。集積回路24aは基板22aの中央部に配置される。
【0181】
送信アレーアンテナは、複数の送信アンテナt1a、t2a、t3a、t4aを含む。送信アンテナt1a-t4aは、レーダパネル210a´の中心を原点とするX-Y座標系のY軸方向に沿った直線上に配列される。説明の便宜上、送信アンテナt1a-t4aはY軸上に配列されるとする。各送信アンテナt1a-t4aのY座標はプラスの値である。送信アンテナt1aのY座標の絶対値が最も大きく、送信アンテナt4aのY座標の絶対値が最も小さい。
【0182】
送信アンテナt1a-t4aは
図23に示すように不等間隔に配列されてもよいし、等間隔に配列されてもよい。
図23の例では、送信アンテナt1a、t2aの間隔はλである。送信アンテナt2a、t3aの間隔は3λである。送信アンテナt3a、t4aの間隔は2λである。
【0183】
受信アレーアンテナは、複数の受信アンテナr1a、r2a、r3a、r4aを含む。受信アンテナr1a-r4aは、X軸方向に沿った直線上に配列される。基板22aは、大部分がレーダパネル210a´のX-Y座標系の第2象限に位置するように配置される。各受信アンテナr1a-r4aのX座標はマイナスの値である。受信アンテナr1aのX座標の絶対値が最も大きく、受信アンテナr4aのX座標の絶対値が最も小さい。
【0184】
受信アンテナr1a-r4aは
図23に示すように不等間隔に配列されてもよいし、等間隔に配列されてもよい。
図23の例では、受信アンテナr1a、r2aの間隔はλである。受信アンテナr2a、r3aの間隔は3λである。受信アンテナr3a、r4aの間隔は2λである。
【0185】
レーダユニット20bは、基板22bと、送信アレーアンテナ、受信アレーアンテナ及び集積回路24bを含む。送信アレーアンテナは基板22bの第1辺側に配置される。受信アレーアンテナは第1辺に直交する基板22bの第2辺側に配置される。集積回路24bは基板22bの中央部に配置される。
【0186】
送信アレーアンテナは、複数の送信アンテナt1a、t2a、t3a、t4aを含む。送信アンテナt1a-t4aは、Y軸方向に沿った直線上に配列される。説明の便宜上、送信アンテナt1a-t4aはY軸上に配列されるとする。各送信アンテナt1a-t4aのY座標はマイナスの値である。送信アンテナt1aのY座標の絶対値が最も大きく、送信アンテナt4aのY座標の絶対値が最も小さい。
【0187】
送信アンテナt1a-t4aは
図23に示すように不等間隔に配列されてもよいし、等間隔に配列されてもよい。
図23の例では、送信アンテナt1a、t2aの間隔はλである。送信アンテナt2a、t3aの間隔は3λである。送信アンテナt3a、t4aの間隔は2λである。
【0188】
受信アレーアンテナは、複数の受信アンテナr1a、r2a、r3a、r4aを含む。受信アンテナr1a-r4aは、X軸方向に沿った直線上に配列される。基板22bは、大部分がX-Y座標系の第4象限に位置するように配置される。各受信アンテナr1a-r4aのX座標はプラスの値である。受信アンテナr1aのX座標の絶対値が最も大きく、受信アンテナr4aのX座標の絶対値が最も小さい。
【0189】
受信アンテナr1a-r4aは
図23に示すように不等間隔に配列されてもよいし、等間隔に配列されてもよい。
図23の例では、受信アンテナr1a、r2aの間隔はλである。受信アンテナr2a、r3aの間隔は3λである。受信アンテナr3a、r4aの間隔は2λである。
【0190】
レーダユニット20aをレーダパネル120a´のX-Y座標系の原点を中心として180度回転すると、レーダユニット20aはレーダユニット20bと一致する。すなわち、レーダユニット20aの送信アレーアンテナの基板22aにおける相対位置はレーダユニット20bの送信アレーアンテナの基板22bにおける相対位置と同じである。同様に、レーダユニット20aの受信アレーアンテナの基板22aにおける相対位置はレーダユニット20bの受信アレーアンテナの基板22bにおける相対位置と同じである。相対位置の基準となる座標は集積回路24a、24bの中心としてもよい。このため、レーダユニット20bのアンテナの配置、配線パターン等の設計は、レーダユニット20aの設計をコピー(回転移動及び/又は平行移動)するだけで簡単に行うことができる。
【0191】
図2では、送信アンテナと受信アンテナが最小冗長度アレーを形成するように設けられたレーダパネル10a-10dについて説明した。以下では、複数のレーダパネルが最小冗長度配置で設けられる送受信ユニット200について説明する。
【0192】
図24は、送受信ユニット200を構成するレーダパネルの構成の一例を説明する図である。
図24はレーダパネルを直線上に配置した構成の一例であり、
図25はレーダパネルを二次元に配置した構成の一例である。
図24ではレーダパネル110a-110d同士の形状は同じである。
図25ではレーダパネル120a-120p同士の形状は同じである。レーダパネル110a-110d、120a-120p同士の形状は同じであり、
図2のレーダパネル10aに対応する。また、各レーダユニット110a-110d、120a-120pの送信アレーアンテナの基板上の相対位置は同じである。各レーダユニット110a-110d、120a-120pの受信アレーアンテナの基板上の相対位置は同じである。
【0193】
なお、各レーダユニット110a-110d、120a-120pの送信アレーアンテナの基板上の相対位置は、線対称の関係にあっても良い。また、各レーダユニット110a-110d、120a-120pの受信アレーアンテナの基板上の相対位置は、線対称の関係にあっても良い。
【0194】
図24に例示するように、レーダパネル110a-110dを直線上に配置する場合、レーダパネル110bとレーダパネル110cとの間隔3Lはレーダパネル110aとレーダパネル110bとの間隔Lの3倍である。またレーダパネル110cとレーダパネル110dとの間隔2Lはレーダパネル110aとレーダパネル110bとの間隔Lの2倍である。ここで、レーダパネルの基準間隔Lは、任意の長さとすることができる。レーダパネルの基準間隔Lは、例えばλ/2としても良い。
【0195】
図25に例示するように、レーダパネルを二次元に配置する場合、第1方向に並べられたレーダパネル同士の間隔は次のようになる。すなわち、レーダパネル120bとレーダパネル120cとの間隔3Lはレーダパネル120aとレーダパネル120bとの間隔Lの3倍である。またレーダパネル120cとレーダパネル120dとの間隔2Lはレーダパネル120aとレーダパネル120bとの間隔Lの2倍である。第1方向と直行する第2方向に並べられたレーダパネル同士の間隔は次のようになる。すなわち、レーダパネル120eとレーダパネル120iとの間隔3Lはレーダパネル120aとレーダパネル120eとの間隔Lの3倍である。またレーダパネル120iとレーダパネル120mとの間隔2Lはレーダパネル120aとレーダパネル120eとの間隔Lの2倍である。さらに、第1方向および第2方向と45度をなす第3方向に並べられたレーダパネル同士の間隔は次のようになる。すなわち、レーダパネル120fとレーダパネル120kとの間隔3L´はレーダパネル120aとレーダパネル120fとの間隔L´の3倍である。またレーダパネル120kとレーダパネル120pとの間隔2Lはレーダパネル120aとレーダパネル120fとの間隔L´の2倍である。
【0196】
同一の間隔となるレーダパネルの組み合わせを最小化し、レーダパネル間隔の冗長性を最小化することによって、効率よく等間隔に配置されたアンテナからなる仮想アレーを形成することができる。従って、レーダユニット数に対するレーダ装置の開口長を大きくし、イメージング精度を向上することができる。
【0197】
なお、各レーダパネル110a-110d、120a-120pにおいて送信アンテナと受信アンテナは等間隔で設けられていても良いし、送信アンテナと受信アンテナは、それぞれ最小冗長度アレーを形成しても良い。送信アンテナと受信アンテナが最小冗長度アレーを形成する場合には、さらに効率よく仮想アレーを形成することができる。送信アンテナと受信アンテナがそれぞれ最小冗長度アレーを形成する場合には、送信アンテナおよび受信アンテナの基準アンテナ間隔をdとし、形成される仮想アレーの開口長をDとすると、レーダパネルの基準間隔L=D+dとすることができる。ここで、基準アンテナ間隔dは、送信アンテナ同士の間隔の共通因数または、受信アンテナ同士の間隔の共通因数を表す。例えば、水平方向の送信アンテナおよび受信アンテナの基準アンテナ間隔をdhとし、形成される水平方向の仮想アレーの開口長をDhとすると、水平方向のレーダパネルの基準間隔Lh=Dh+dhとすることができる。同様に、例えば、垂直方向の送信アンテナおよび受信アンテナの基準アンテナ間隔をdvとし、形成される垂直方向の仮想アレーの開口長をDvとすると、垂直方向のレーダパネルの基準間隔Lv=Dv+dvとすることができる。
【0198】
複数のレーダパネルが最小冗長度配置で設けられる場合には、コントローラ500は、複数のレーダパネルのうちの一部から仮想アレーアンテナを形成しても良い。あるいは、コントローラ500は、複数のレーダパネルを2以上のグループに分けて、それぞれのグループから複数の仮想アレーアンテナを形成しても良い。このようなコントローラ500により、効率よく危険物を検知することができる場合がある。
【0199】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0200】
100…レーダ装置、200…送受信ユニット、300…基準信号発生ユニット、400…信号処理ユニット、210a、210b、210c、210d…レーダパネル、10a、10b、10c、10d…レーダユニット、14a、14b、14c、14d…集積回路、t1a、t1b、t1c、t1d…送信アンテナ、r1a、r1b、r1c、r1d…受信アンテナ