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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ステント装填装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021512383
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 US2019049410
(87)【国際公開番号】W WO2020051163
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-05-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】62/726,602
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/559,055
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517290947
【氏名又は名称】4シー メディカル テクノロジーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディダリング,ジェイソン エス.
(72)【発明者】
【氏名】クマール,サラヴァナ ビー.
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】村上 哲
【審判官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5928258(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0262157(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0185184(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0288042(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0228251(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内への送達および移植に備えて、折り畳み可能なステントを折り畳むための装填装置であって、前記装填装置が、
円錐形の外径を有し、更に管腔を画定する近位縮径セクションであって、前記管腔は、前記円錐形の外径より小さく、前記近位縮径セクションの近位端における最大値から遠位端における最小値に滑らかに移行して及ぶ円錐形の内径を有する、近位縮径セクションと、
前記近位縮径セクションの前記遠位端において前記近位縮径セクションに接続されるか、または前記近位縮径セクションと一体化された一定径セクションであって、前記一定径セクションは、外径を有し、更に実質的に一定で、かつ前記近位縮径セクションの前記最小径に実質的に等しい内径を有する管腔を画定する、一定径セクションと、
シースと、
前記近位縮径セクションの前記管腔内、前記一定形セクションの前記管腔内、および/または前記シースの前記管腔内に配置された液体と
を備え、
前記シースは、
内部を通って長さ方向に延び、前記一定径セクションに作動可能に接続され、前記一定径セクションの前記管腔内に延在する管腔と、
前記近位縮径セクションの最小内径と同じかそれよりも小さい外径と、
を備え、
前記シース、折り畳まれた構成にある前記ステント解剖学的部位へ移させることを可能にするため、送達シースと接続するように適合されており、
前記シースの近位端部分は、前記一定径セクションと係合したときに、前記一定径セクションの全長を通って延び、
前記シースの外壁に画定された開口と、前記一定径セクションに沿って配置された雄部材とをさらに備え、前記シースは、前記雄部材が前記開口と整合され、前記開口と取り外し可能に接続されるように、前記一定径セクション内で摺動するように適合されており
前記液体は、前記近位縮径セクションの前記近位端がキャップされると共に前記シースの遠位端がキャップされることにより、前記装填装置内に保持されている、
装填装置。
【請求項2】
前記シースが、前記一定径セクション内で移動されるように適合されている、請求項1に記載の装填装置。
【請求項3】
前記雄部材が前記開口に取り外し可能に接続されると、前記シースおよび一定径セクションは、互いに対して回転または長手方向に移動するのを防止される、請求項1に記載の装填装置。
【請求項4】
前記開口が半径方向スロットを含む、請求項1に記載の装填装置。
【請求項5】
前記半径方向スロットは、前記雄部材が前記半径方向スロットに沿って摺動できるような寸法に形成されており、それにより、前記シースおよび前記一定径セクションが互いに対して長手方向に移動するのを防止する、請求項4に記載の装填装置。
【請求項6】
前記シースは、前記一定径セクションの前記管腔内での移動および/または回転を可能にする外径を有する管状形態を画定するように適合可能な平面シートを備える、請求項1に記載の装填装置。
【請求項7】
前記シースは、前記管状形態にあるときに長手方向スロットを更に備え、
前記雄部材は、前記シースが一定径セクションの前記管腔内で移動されるときに前記長手方向スロットと係合して、前記長手方向スロット内で摺動するように適合されている、
請求項6に記載の装填装置。
【請求項8】
前記シースと前記一定径セクションとの間の相対的な回転は、前記雄部材が前記長手方向スロットと係合することによって防止される、請求項7に記載の装填装置。
【請求項9】
前記シースは、前記長手方向スロットと連通した半径方向スロットを更に備え、
前記雄部材は、前記半径方向スロット内で摺動して、前記一定径セクションと移行シースとの間の長手方向の移動を防止するようにさらに適合されている、
請求項7に記載の装填装置。
【請求項10】
前記ステントは、人工心臓弁フレームを含む、請求項1に記載の装填装置。
【請求項11】
前記ステントは、人工僧帽弁フレームを含む、請求項10に記載の装填装置。
【請求項12】
前記人工心臓弁フレームを含む前記ステントが、患者の心臓内の位置に経心尖的に送達される、請求項10に記載の装填装置。
【請求項13】
前記ステントが、以下の送達方法、すなわち、大腿骨アクセス送達技術、静脈アクセス送達技術、経心尖送達技術、経大動脈送達技術、経中隔送達技術、経心房送達技術、大動脈から逆行性の送達技術のうちの1つによって送達される、請求項1に記載の装填装置。
【請求項14】
前記ステントは、前記装填装置内に折り畳まれたときに、予測可能かつ再現可能な形状にともに適合する湾曲した支柱またはらせん状の支柱を含む、請求項1に記載の装填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月3日に出願され「STENT LOADING DEVICE」と題された米国特許本出願(Non-Provisional Patent Application)第16/559055号に対する優先権を主張し、2018年9月4日に出願され「FUNNELING LOADING DEVICE FOR STENT」と題された米国特許仮出願第62/726,602号の便益をさらに主張する。これらの出願の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
該当せず
【0003】
発明の分野
【0004】
本発明は、心腔内に装置を移植するための装置および方法に関する。より具体的には、本発明は、ステント、例えば、人工心臓弁フレームを、送達シースまたはカテーテルの管腔を介して送達シースまたはカテーテルの遠位端に並進移動(translation)させるために、送達シースまたはカテーテルの管腔内に装填するように構成された装置に関する。
【背景技術】
【0005】
関連技術の説明
一般的なステント、ならびに特に人工心臓弁および左心耳閉鎖装置は、当技術分野でよく知られている。生来の心臓弁、例えば大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁、および僧帽弁は、心臓血管系を通る適切な血液供給の順方向のみの流れを確保する上で重要である。これらの心臓弁は、とりわけ、先天性、炎症性、感染性の疾患または症状の結果として機能性を失うことがある。初期の介入では、開心術中に機能不全の弁を修復または置換していた。より最近では、上記の開心外科的アプローチに加えて、目的の弁へのアクセスを得ることは、少なくとも以下の既知のアクセス経路、すなわち、経心尖送達技術、経大腿送達技術、経心房送達技術、および経中隔送達技術、総称して経カテーテル技術のうちの1つによって、経皮的に行われ得る。
【0006】
一般に、経カテーテル技術では、人工弁は、折り畳まれた状態および拡張した状態を達成することができるステント付きフレーム内に取り付けられる。装置は、折り畳まれ、患者の血管に配置されたシースまたは送達カテーテルを通って、移植部位に到達するまで進められる。ステント付きフレームは、一般に、カテーテルまたはシースから解放され、様々な手段によって、弁とともに、心臓内で拡張した機能的なサイズおよび向きに拡張される。重要な課題の1つは、ステントフレームおよび弁を含む人工弁の送達が容易であることである。より具体的には、カテーテル内における折り畳まれた装置の外径が非常に重要である。本発明はこの課題に対処する。
【0007】
関連技術の説明
【0008】
ヒトの心臓は、心臓を通る血液の順方向(順行性)の流れを助ける4つの心腔と4つの心臓弁とを備えている。心腔には、左心房、左心室、右心房、および右心室が含まれる。4つの心臓弁には、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁、肺動脈弁が含まれる。概して図1を参照されたい。
【0009】
僧帽弁は左心房と左心室との間に位置し、左心房への逆流を防ぐための一方向弁として機能することにより、左心房から左心室への血流の制御を助ける。同様に、三尖弁は右心房と右心室との間に位置し、一方、大動脈弁および肺動脈弁は、心臓から血液を流す動脈内に位置する半月弁である。弁はすべて一方向弁であり、順方向(順行性)の血流を可能にするように開放する弁尖を有する。正常に機能している弁尖は、逆流した血液によって加えられる圧力を受けて閉鎖し、血液が流出したばかりの心腔内への血液の逆流(逆行)を防止する。例えば、僧帽弁は、適切に機能している場合、左心房と左心室との間に一方向の弁を提供し、この弁は、左心房から左心室への順行性の流れを可能にするように開放し、左心室から左心房への逆行した流れを防ぐように閉鎖する。この逆行した流れは、存在する場合には、僧帽弁逆流症(mitral regurgitation、またはmitral valve regurgitation)として知られている。
【0010】
生来の心臓弁は、疾患、外傷、先天性奇形、および加齢を含むがこれらに限定されない様々な理由および/または状態のために機能不全であるか、または機能不全になる可能性がある。この種の状態により、弁構造が適切に閉鎖することができなくなり、僧帽弁不全の場合には、左心室から左心房への逆流性の逆行した血流を生じる可能性がある。
【0011】
僧帽弁逆流症は、右心房から左心房へ戻る少なくともいくらかの逆行した血流を許容する、僧帽弁の機能不全に起因する特定の問題である。場合により、機能不全は、僧帽弁尖が、逆行した流れを阻止するために接続または接合するのではなく、左心房腔、すなわち、弁輪の上面の上方に逸脱することに起因する。この血液の逆流は、僧帽弁逆流症の長期の臨床経過中にかなり変化する、心室腔の大きさおよび形状のリモデリングを含む、一連の左心室の代償的適応および調整につながり得る体積負荷で左心室に負担をかける。
【0012】
逆流は、一般に、三尖弁、大動脈弁、および肺動脈弁、ならびに僧帽弁を含む生来の心臓弁で問題になる可能性がある。
【0013】
したがって、一般に、僧帽弁などの生来の心臓弁は、部分的または完全な置換を含む、機能的修復および/または補助を必要とすることがある。そのような介入は、開心術および置換心臓弁の開心移植を含むいくつかの形態をとり得る。侵襲性が高く、患者のリスクを伴い、長期の入院だけでなく、非常に痛みを伴う回復期間も必要とする処置については、例えば、米国特許第4,106,129号(Carpentier)を参照されたい。
【0014】
機能不全の心臓弁を置換するための低侵襲性の方法および装置も知られており、経皮的アクセスおよび置換弁のカテーテル促進送達(catheter-facilitated delivery)が含まれる。これらの解決策のほとんどは、当技術分野で一般に知られているステントなどの構造的支持体、または送達カテーテルからの解放時に拡張するように設計された他の形態のワイヤネットワークに取り付けられた置換心臓弁を含む。例えば、米国特許第3,657,744号(Ersek)、米国特許第5,411,552号(Andersen)を参照されたい。支持ステントの自己拡張型の変形例は、対象となる心腔または血管内において、弁を配置し、拡張した装置を適所に保持するのを助ける。この自己拡張形態はまた、よくあることだが、最初の配置の試みで装置が適切に配置されず、したがって装置を再捕捉して位置を調整する必要がある場合に問題を呈する。完全にまたは部分的にでも拡張した装置の場合のこの再捕捉プロセスは、操作者が折り畳まれた装置を送達シースまたはカテーテルに引き戻し、装置の到着位置を調整し、次いで位置調整された装置を送達シースまたはカテーテルから遠位に再展開することにより、適切な位置に再拡張できるようになる程度に、装置を再び折り畳むことを必要とする。拡張したステントまたはワイヤネットワークは、一般に、収縮力または折り畳み力にも耐える拡張状態を達成するように設計されているため、すでに拡張した装置を折り畳むことは困難である。
【0015】
上記の開心外科的アプローチに加えて、目的の弁へのアクセスを得ることは、少なくとも以下の既知のアクセス経路、すなわち、経心尖送達技術、経大腿送達技術、経心房送達技術、および経中隔送達技術のうちの1つによって、経皮的に行われる。
【0016】
一般に、当技術分野は、上述の公知のアクセス経路のうちの1つを使用して、折り畳まれた弁装置の部分的な送達を可能にするシステムおよび方法に焦点を合わせており、この場合、装置の一端は送達シースまたはカテーテルから解放され、初期の配置のために拡張され、その後、適切な配置が行われると完全に解放され拡張される。例えば、米国特許第8,852,271号(Murray、III)、米国特許第8,747,459号(Nguyen)、米国特許8,814,931号(Wang)、米国特許9,402,720号(Richter)、米国特許8,986,372号(Murray、III)および米国特許9,277,991号(Salahieh)、ならびに米国特許出願公開第2015/0272731号(Racchini)および米国特許出願公開第2016/0235531号(Ciobanu)を参照されたい。
【0017】
加えて、既知の「置換」人工心臓弁は、生来の心臓弁の完全な置換を目的としている。したがって、これらの置換心臓弁は、環状スロート(annular throat)内、すなわち、環状平面(annular plane)および上部環状面(upper annular surface)の下方の組織、および/または弁尖に物理的に係合し、それによって生来の弁の残りのすべての機能性を排除し、患者を置換弁に完全に依存させる。一般的に言えば、心臓弁の生来の機能を維持および/または保持することが好ましい解決策であり、よって完全な置換よりも弁の補完が好ましい。明らかに、生来の弁が介入的移植処置前に実質的に完全に機能性を失ったか、または生来の弁が移植処置後に機能性を失ったままである場合があるであろう。好ましい解決策は、補助的および/または補完的な機能弁として機能するだけでなく、その機能のほとんどもしくはすべてを失ったか、または失うであろう弁の生来の機能を完全に置き換えることができる弁装置の送達および移植である。しかしながら、以下に記載する本発明の解決策は、特に明記しない限り、一般にすべての種類および形態の心臓弁装置に適用される。本開示はまた、当業者が認識するように、一般にステントにも適用される。
【0018】
さらに、例えば、僧帽弁置換システム、僧帽弁置換装置、および僧帽弁置換法のための既知の解決策は、二腔解決策(2-chamber solutions)、すなわち、左心房および左心室において移植された置換弁装置の関与および係合があることを必要とする。一般に、これらの解決策は、左心房内において半径方向に拡張するステントを含み、固定または係留は(生来の弁輪または環状スロートを通って下向きに配置され)、ステント装置から環状スロートを下向きに通って、左心室内の弁輪下面(sub-annular surface)、左心室腱索、および左心室壁面内にさえ接続される。例えば、Abbott Groupによって販売されており、現在米国で承認されている唯一の修復装置であるMitraClip(登録商標)を参照されたい。MitraClip(登録商標)では、MitraClip(登録商標)を含むカテーテルが大腿静脈に挿入される。装置は、下大静脈を通って心臓に入り、右心房に進入し、経中隔的に送達される。MitraClip(登録商標)は、弁輪を通過して左心室に入り、弁尖の下に着座して、弁尖を挟み込んで逆流を低減する。
【0019】
このような二腔および生来の弁輪の解決策は、不必要に嵩高いので、厳密な構造の観点から、送達および配置/再捕捉/再配置がより困難になる。さらに、二腔解決策は、位置を保持するために必要とされる心室の固定接続および/または係留接続を行うという点で困難を呈する。さらに、これらの解決策は、左心室内に配置される装置部分が、生来の弁輪および/または環状スロート、ならびに生来の僧帽弁を通過しなければならず、それにより生来の弁尖の残っている接合能力を損なうため、上述のような生来の弁の機能性を妨げてしまう。加えて、二腔解決策は、一般に、生来の組織の一部の侵襲的な固定を必要とし、不必要な外傷および潜在的な合併症を生じる。
【0020】
さらに、二腔僧帽弁解決策は、装置の心房部分が、それ自体を心房腔および/または弁輪の上部に適切に固定することができないため、アンカー、テザーなどとの正確な弁輪下係合および/または心室係合を必要とすることが認識されるであろう。この場合にも、本明細書に記載の実施形態のいくつかまたはその一部が、特に明記しない限り、単腔解決策または二腔解決策に容易に適用可能である。
【0021】
最後に、既知の人工心臓弁は、一方向弁として機能するように配された2つまたは3つの弁尖からなり、流体が弁尖を通って順行方向に流れるのを許容する一方で、逆行した流れを防止する。生来の僧帽弁は、第4肋軟骨の胸骨後方に位置し、前尖および後尖、腱索、乳頭筋、心室壁、ならびに心房に接続された弁輪からなる。各生来の弁尖は、乳頭筋に付着している腱索によって支持されており、乳頭筋が心室収縮のたびに緊張して、弁の機能を維持する。生来の弁の前尖および後尖の双方が、一次腱索、二次腱索、三次腱索を介して、前外側乳頭筋および後内側乳頭筋の双方に付着している。心筋損傷の状況でいずれかの乳頭筋が破壊されることにより、僧帽弁の前尖または後尖のいずれかの機能不全が生じる可能性がある。他の機構によって、生来の僧帽弁尖の一方または双方の障害が生じることもある。単一の僧帽弁尖の障害の場合、逆流は、左心房に戻る非中心の偏心した血液の噴流の形をとることがある。他の弁尖の障害は、より中心に集中した逆流噴流を含み得る。既知の人工弁置換は、一般に、生来の弁構造を模倣するように配された弁尖を含み、このような弁尖は、時間とともに、同様の逆流の結果を生じ易くなる可能性がある。
【0022】
折り畳み可能かつ拡張可能なステントの用途は、人工心臓弁インプラントに限定されない。血管ステントは、一般的に使用されており、送達カテーテルの管腔を介した作用部位への送達を容易にするために一般に折り畳み可能であり、作用部位において、ステントはカテーテルの管腔から外に並進移動され、ステントは、自己拡張手段によって、または特に拡張可能なバルーンなどの拡張機構によって拡張される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】米国特許第4,106,129号明細書
【文献】米国特許第3,657,744号明細書
【文献】米国特許第5,411,552号明細書
【文献】米国特許第8,852,271号明細書
【文献】米国特許第8,747,459号明細書
【文献】米国特許8,814,931号明細書
【文献】米国特許9,402,720号明細書
【文献】米国特許8,986,372号明細書
【文献】米国特許9,277,991号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0272731号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0235531号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
上記で論じたように、既知の送達方法および装置は、送達カテーテルを介した送達中に折り畳まれる、拡張可能な人工弁ステントおよび血管ステントを含む。そのような折り畳み構造および拡張構造に関する問題は、折り畳み状態および拡張状態に対応するために曲がらなければならない、構造、例えばステント、の領域に負担をかけることを含む。さらに、既知の装置の折り畳まれた幾何形状は、制御または予測できない可能性があり、折り畳まり、かつ拡張する構造要素上に負担を加える。よって、送達カテーテルまたはシースの管腔内で折り畳み状態を達成するための構造および方法は、折り畳み構造の完全性を維持および保持するために、予測可能かつ繰り返し可能な折り畳みを可能にしなければならない。さらに、ステント、例えば、人工心臓弁または血管ステントは、乾燥させることができない生物学的材料および/または生体適合性材料を含み得る。したがって、対象のステントが存在し得る流体リザーバを保持することが重要である。
【0025】
本発明の様々な実施形態は、特に、これらの課題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
拡張および移植のための心臓弁または血管内位置などの解剖学的標的への送達シース管腔を通る後続の並進移動のために、折り畳み可能かつ拡張可能なステントの折り畳みを予測可能に制御するための装置および方法。装填装置は、近位から遠位方向に、一定の内径の領域まで連続的に減少する内径を備える内側管腔を画定し、ステントは折り畳まれた構成にある。装置および方法は、移植手順の一部としてさらに折り畳まれ得るステントの少なくとも部分的に折り畳まれた構成を提供することができ、また将来の使用のために事前に装填されたステントを備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】心臓の特定の特徴を示す断面図である。
図2】例示的なステントの斜視図である。
図3A図2の例示的なステントの移行セクションの一実施形態の底面図である。
図3B図2の例示的なステントの移行セクションの一実施形態の底面図である。
図3C図2の例示的なステントの移行セクションの一実施形態の底面図である。
図4A図2の例示的なステントの折り畳まれた移行セクションの一実施形態の底面図である。
図4B図2の例示的なステントの折り畳まれた移行セクションの一実施形態の底面図である。
図5】本発明の一実施形態の側面破断図である。
図6】本発明の一実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
一般に、本発明の様々な実施形態は、折り畳み可能かつ拡張可能な支持構造またはステントの予測可能な折り畳まれた構成または状態を達成するため、ならびに折り畳みステップ中に折り畳み可能かつ拡張可能な支持構造に取り付けられるか、または他の場合には一体化され得る生物学的材料内における水分保持を保証する機構を提供するための装置および方法に関する。
【0029】
支持構造またはステントは、心臓弁逆流症(僧帽弁または三尖弁)の治療を援助するための複数の機能を有する。これらの機能には、機能する4C弁の足場としてのその機能、心房の解剖学的構造への並置、心房拡張に追従するための最適化された半径方向の力、低侵襲の送達システムへ装填する能力および同システムから展開する能力、ならびに弁周囲漏出(paravalvular leak:PVL)の軽減を支援する幾何形状が含まれる。ステントの設計上の特徴は、上記で特定された機能のうちの1つまたは複数を満たすように適合されている。例示的なステントの特定の設計上の特徴および属性について、漏斗状の装填装置および関連する方法の有用性の理解を助けるために、以下で詳細に議論する。上記で論じたように、本発明は、ステント支持構造を含む人工心臓弁に限定されるものではなく、血管内処置に一般的に使用されるような折り畳み可能かつ拡張可能なステントにも適用され得る。
【0030】
特定の例示的な実施形態のステント設計概念は、僧帽弁、三尖弁、および/またはその他の弁逆流症の治療のための低侵襲的処置を支援することを意図している。ステントは、自己拡張可能(例えば、ニチノールまたは同様の材料)であってもよいし、またはバルーン拡張可能(例えば、コバルトクロムまたは同様の材料)であってもよい。ステントは、典型的には、開放したセルのダイヤモンド様構造または作用セル要素を有する連続構造であり得るセルで形成されている。ステントはまた、チューブ、ワイヤ、ブレードまたは同様の構造を用いて構築されてもよい。ステントの機能を援助する特定の設計上の特徴について、以下で詳細に説明する。
【0031】
ステント「アイリス(Iris)」移行セル
【0032】
ここで図2図3Bを参照すると、本発明のステント100の一実施形態は、完全におよび/または部分的に拡張されたときに完全に丸い円形構造である必要はないが、概して円形であり得る外側セクション102と、円筒形であり得るが、一定径の円筒である必要はない内側弁支持セクション104とを備える。内側弁支持セクション104は、最も好ましくは生来の弁輪、例えば僧帽弁弁輪の上方に位置する地点で、内側弁支持セクション104内において人工弁尖(図2には図示せず)を支持および保持するように適合されているが、人工弁尖の他の取り付け点は本発明の範囲内にある。さらに、上記で論じたように、ステント100は、三尖弁の機能を補完および/または置換するように構成され得る。好ましい構造は、生来の弁尖の上に配置された人工弁尖を含み、人工弁尖は、生来の弁尖と物理的に干渉または相互作用しないように、生来の弁尖から(上方に)十分に離れて、取り付けられ、間隔を置かれる。しかしながら、特定の実施形態は、生来の弁尖との何らかの相互作用を企図している。
【0033】
ステント100の外側セクション102を形成する個々のセルCは、図2では、拡張可能なステント100を形成するために使用される材料によって画定されるオープンセル領域として見ることができる。
【0034】
内側弁支持セクション104を形成する個々のセルCもまた、外側セクション102によって画定される内側領域R内に形成されたオープンセル領域として示されており、内側弁支持セクションは、内側領域R内に半径方向上方に延びている。示したように、個々のセルCは、個々のセルCのそれとは、異なるサイズのものであり、異なる形状を備え得る。
【0035】
ステント100の外側セクション102から内側セクション104へのステント100の半径方向内側への移行を容易にするステント100の領域は、移行セル領域106である。移行セル領域106は、外側セクションセルCおよび/または内側セクションセルCのいずれかと、異なるサイズおよび/または形状を備え得るセルCを含み得る。ステント100の外側領域および/もしくは内側領域102、104、ならびに/または移行セル領域106は、1つの連続した構造から構築されてもよいし、または2つ以上の構造を組み合わせて、意図した設計目標を達成してもよい。移行セル領域106は、図2に示すように、内側弁支持セクション104が内側領域102内に存在することができるように、概して半径方向上向きの転回を含む。いくつかの実施形態では、内側弁支持セクション104の下部、すなわち、移行セル領域106のセルCと接続している内側弁支持セクション104の部分はまた、内側領域102への半径方向上向きの転回を容易にするため、および/または完了するための湾曲形状を備えてもよい。
【0036】
移行セルCの幾何形状および/または形状は、以下の図3Aのように、拡張時に実質的に直線状のセグメントになってもよく、または図3Bに示すように、拡張時にステントセルパターンに偏倚またはねじれを組み込んで、制御されたステントの圧縮を可能にしてもよい。図3Aおよび図3Bには、ステント100の底部から見た移行セル領域106の例示的な断面幾何形状が概略的に表されている。
【0037】
ステント100のこの移行セル領域106は、支柱、完全なセルセクション、または部分的なセルセクションであり得る。移行セル領域106は、設計上の必要性を満たすために一般的に必要とされるような、任意の数の支柱(最低3つ)またはセルセクションを有し得る。移行セルCまたは支柱は、図3Aに示すように、等間隔に配置され、実質的に直線状の等間隔に離れて配置された支柱108によって形成され得る。支柱108は、支柱108の両側において等しい角度αで内側弁支持セクション104から離れ、外側支持セクション102とのその交差または融合に関して支柱108の両側において等しい角度βとなるように延びている。
【0038】
好ましい実施形態では、移行セクション106の支柱108は、図3Aのように直線状であるが、図3Cに示すように、内側弁支持セクション104および外側支持セクション102に対する角度が等しくなくてもよい。そこでは、直線状の支柱108は、内側弁支持セクション104に対してより小さな角度αとより大きな角度α’とが与えられるように傾斜している。同様に、外側支持セクション102に対して、より小さな角度β’とより大きな角度βとが与えられる。これにより、移行セクション106の傾斜した支柱108を入れ子状に圧縮することができる。
【0039】
別の好ましい実施形態では、移行セル領域106は、偏倚を有する、すなわち直線状ではなく、ねじれている、かつ/または曲線である支柱108’によって形成された移行セルCTを含む移行セル支柱108’を備えてもよい。支柱108’の偏倚および/またはねじれおよび/または湾曲の程度と、したがって、結果として生じる拡張したセルCTのサイズおよび/または形状とは、移行セル領域106内のセル/支柱の数、ステントが折り畳まれたときの充填密度(packing density)、および移行セル領域106の応力/ひずみ分布の制限に応じて変化し得る。
【0040】
図3Bおよび図3Cの構造は、いくつかの理由で、図3Aの直線状移行セル領域106の構造よりも好ましい。図4Aは、選択された支柱108の間に望ましくない隙間Gを有する、図3Aの実質的に直線状の支柱108を用いた折り畳まれた形態にある移行セル領域106を示している。この結果として生じた隙間のある折り畳まれた移行セル領域106は機能するが、それは最適ではない。
【0041】
よって、例えば、図3Bの偏倚した複数の支柱108’、および/もしくはねじれた複数の支柱108’、および/もしくは湾曲した複数の支柱108’、または図3Cの傾斜した直線状の支柱108を用いた、図4Bの移行セクション106は、支柱108’の間に隙間がない、ステントの制御された予測可能な折り畳み形態を可能にする。ひいては、これにより、対象の心臓領域への拡張可能なステント100の送達に必要とされるような折り畳み中のステント100の下部領域における応力/ひずみ集中の量が最小限にされる。加えて、セルの折り畳みも対称的かつ均一となり、ステントセルに取り付けられたときの弁組織またはファブリックへの損傷を軽減するのを援助することができる。移行支柱セクションの全体的な応力/ひずみの減少は、ステントおよび弁組織の耐久性に恩恵をもたらし得る。
【0042】
図3Bおよび図3Cならびに図4Bに示すような、すなわち、偏倚した支柱108’、ねじれた支柱108’、および/もしくは湾曲した支柱108’、または傾斜した直線状の支柱108を有する移行セル領域106の特定の実施形態の特徴は、図3Bに最もよく示されるように、支柱108’が、それぞれ、同一の偏倚、ねじれ、および/または湾曲を含むことである。ひいては、これにより、ステント100が送達および後続の拡張のために折り畳まれるときに、隣接した支柱108’を密接して入れ子状にすることが可能となる。
よって、ステントが送達システムに装填するために折り畳まれる際に、移行セクションの設計により、ステントの制御された圧縮が可能となり、移行支柱セクションのステントセルにおける応力集中を低減して、ステントおよび弁組織の耐久性に恩恵をもたらし得る。
【0043】
当業者が上記から認識するように、例示的なステントの支柱の幾何形状は、拡張した状態から折り畳まれた状態への移行を可能にする。以下の本発明の実施形態を使用して折り畳むことができるステントは、もちろん上述した例示的な場合に限定されない。送達シースの管腔内に適合する構成を達成するために拡張構成からの折り畳みを必要とする任意のステントを、本発明によって折り畳むことができる。
【0044】
よって、図5は、例示的なステントの、拡張した状態から折り畳まれた状態への移行を開始し得る例示的な装填装置200を示しており、折り畳まれた状態または構成は、送達カテーテルまたはシースへの並進移動、および送達カテーテルまたはシースに沿った標的の解剖学的位置までの並進移動のために準備され、またそのような並進移動に十分である。
【0045】
したがって、図5は、シース300とともに、画像の近位側にある装填ファンネル200を示しており、これは、本明細書に記載するような既知の送達カテーテルの変更を含み得る。装填ファンネル200およびシース300は、既知の技術を用いて取り外し可能に接続され得る2つの別個の要素として示されている。しかしながら、当業者が認識するように、装填ファンネル200およびシース300は、特定の実施形態では、事前に組み立てられてもよいし、かつ/または一体ユニットとして製造されてもよい。装填ファンネル200は、円錐形として示されている近位(近位から遠位への)縮径セクション202を含むが、他の実施形態では、曲線および、または凹状の輪郭を含んでいてもよい。いずれの場合も、寸法要件は、近位縮径セクション202の内径D1’が、近位内径D1’から遠位内径D2に移る滑らかに縮小する内径を備えた管腔を構成することである。よって、近位縮径セクション202は、その近位端で最大内径(D1’として図示)を備え、その遠位端で最小内径(D2として図示)を備える。また、示したように、近位セクション202の近位外径D1は、近位内径D1’よりも大きい。
【0046】
装填ファンネル200の縮径近位セクション202は、一定径セクション204へと遠位に移行し、一定径セクション204は、その遠位端において縮径近位セクション202の最小内径D2と実質的に同じ内径D3を備え、縮径近位セクション202と一定径セクション204との間の移行は、それらのセクションに沿って、折り畳まる例示的なステントのストレスのない並進移動を容易にするために、好ましくは滑らかである。
【0047】
移行シース300は、近位端部分Pおよび遠位D端と、外径D4とを備え、また内径D5を備えた管腔を画定し、D4およびD5の双方は実質的に一定である。図5では、装置200および装置300のそれぞれの管腔を破線で示している。
【0048】
シース300の外径D4は、装填ファンネル200の一定径セクション204の内径D3と同じか、またはそれより小さくてもよい。よって、示したように、シース300の近位端部分Pは、装填ファンネル200の一定径セクション204の管腔の少なくとも遠位部分内に嵌合して、装填シース200の近位端からシース300の遠位端Dまで流体が流れるように連通している(fluidly communicating)管腔を生成するように適合または構成されている。一般的であり、これに限定されるものではないが、上記および図5に示されている命名法を用いると、関連する様々な直径の関係は次のようになる:
【0049】
D1>D1’>D2=D3≧D4
【0050】
シース300は、様々な方法で、一定径セクション204と取り外し可能に接続されることができ、そのような方法には、摩擦嵌合および/またはシース300の近位端部分Pによって係合され、半径方向外向きに押されるまで、装填ファンネル200の一定径セクション204上に配置される図示の戻り止め雄部材206が含まれるが、もちろんこれらに限定されるものではない。最終的に、雄部材206がスロットまたは開口302と整合すると、雄部材206は、当業者が認識するように、シース300の一定径セクション204の外壁に例示的に画定されているような受容開口302および/またはスロット内に入る(drop)か、または嵌る(snap)ことができる。場合により、スロット302は、スロット302内におけるシース300と装填ファンネル200との相対回転を許容し、よって、装填ファンネル200と移行シース300との間においてスロット302の長さの制限内での相対回転を可能にし得る。当業者が認識するように、上記の雄部材/スロットまたは開口の配置は、効果的に逆にすることができ、雄部材206はシース300上に配置されてもよく、スロットまたは開口は装填ファンネル200の一定径セクション204上に配置されてもよい。装填ファンネル200とシース300との間の、制限内における、他の可能な接続の代替案は、ねじ接続および摩擦嵌合を含み得る。さらに、これに代わって、構成要素200、300は、単一ユニットとして実現されてもよく、縮径セクションの遠位の単一ユニットの内径は一定である。すべての場合に必要なことは、装填ファンネル200およびシース300が機能的に接続されて、上述した寸法的特徴を実現することである。
【0051】
いくつかの実施形態では、シース300の近位端部分Pは、装填ファンネルの一定径セクション204内に係合されている場合、装填ファンネル202の遠位端まで近位に延在し、一定径セクション204の管腔の全長を通って効果的に摺動することができる。他の実施形態では、近位端部分Pは、一定径セクション204の管腔の長さの一部のみと係合する。
【0052】
例示的な折り畳み可能ステントの拡張構成からの折り畳みは、拡張したステントを、縮径セクション202に沿って、縮径セクション202を通って、装填ファンネル200の管腔内に、徐々に遠位に並進移動させることによって行われることが可能であり、縮径セクション202では、装填ファンネルの管腔の壁が、ステントに一定かつ等しい圧力を加え、漸進的で予測可能であり、比較的ストレスのない折り畳みと、内径D5の管腔を備えるシース300への遠位の移動とをもたらす。この段階で、例示的なステントは折り畳まれ、解剖学的標的へ遠位に並進移動する準備ができる。自己拡張型の場合には、例示的なステントをシース300の遠位端から解放させることにより、ステントをその作用拡張構成に拡張することができる。他の場合には、ステントは、例えば、当技術分野で知られているようなプッシュワイヤ/プルワイヤおよび/または拡張バルーンによる、拡張するための付加的な支援を必要とし得る。
【0053】
図6は、移行シース300’の代替のクラムシェルタイプの構造を提供している。移行シース300’は、図示のように事前に湾曲した形状を有し得る平面シート304から形成されている。装填ファンネル200は、図5に関連して上述した通りである。
【0054】
平面シート304が、装填ファンネル200の一定径セクション204内に摺動して嵌合するように直径が縮小されて、シース300’を形成しているとき、装填ファンネル200上に位置する上述した雄部材206は、移行シース300’の開口またはスロット302’と整合し、開口またはスロット302’内に嵌合して、上述したように、移行シース300’と装填ファンネル200との間に取り外し可能なロック嵌合(locking fit)を提供し得る。図5の実施形態において上記で述べたように、雄部材206および開口またはスロット302’は、図6の実施形態において位置を逆にしてもよい。302’の場合、雄部材206がスロット302’内で回転するにつれて、装填ファンネル200はシース300’に対して回転することができる。場合により、図6のクラムシェルタイプのシース300’は、移行シース300’の一定径セクション204内に嵌合するように直径が縮小されたときに、その長さに沿って完全な閉鎖に至らず、よって移行シース300’に沿って長手方向スロットを残し得る。一定径セクション204の雄部材206は、この長手方向スロットに沿って、図6に示す半径方向スロット302’に案内され、そこで回転されて、2つの要素をともに取り外し可能にロックしてもよく、または雄部材206およびスロット302’は、上述したように位置を逆にされてもよい。
【0055】
ここで説明した装填装置の構造により、当業者は、ステントを拡張したサイズから所定の直径を有する所定の折り畳まれたサイズに移行させる際の有用性を認識するであろう。よって、上記に示した例示的なステントは、縮径セクションに沿ってゆっくりと並進移動され得る。ステントが進められるにつれて、装填ファンネル200の縮径セクション202の内壁は、ステントの周りに周方向に等しい力を及ぼし、よって、ステントが最小の抵抗および最小の応力の地点に沿って折り畳まることができるようにする。上記で論じたように、円形および/またはらせん状の支柱は、所定の、予測可能かつ繰り返し可能な折り畳み動作を可能にし、所定の、予測可能かつ繰り返し可能な折り畳み形状をもたらす。ステントが装填ファンネル200の一定径セクション204内および/またはシース300、300’の一定径管腔内で折り畳まれた場合、折り畳まれたステントは、一定径セクション204および/またはシース300、300’の一定径管腔に沿って、目的の解剖学的位置まで並進移動され得る。折り畳まれたステントが300、300’の内側管腔の遠位端から解放されると、ステントは付勢拡張する(biasingly expand)ことが可能になり、折り畳み動作を効果的に逆転させて、拡張した状態または構成に到達する。
【0056】
場合によっては、議論したように、シース300、300’は、同じまたは同様の内径を備えた送達シースまたはカテーテルと接続するための移行を実現する移行シースを含んでいてもよい。他の場合には、シース300、300’が、送達シースまたはカテーテルを形成してもよい。
【0057】
上記で論じた装填装置、例えば、装填ファンネル200および移行シース300、300’は、使用のためにステントを事前に装填することをさらに可能にする。よって、ステントは、並進移動、送達、および移植に備えて生物学的材料および/または生体適合性材料を適切に湿らせておくために、流体とともに、折り畳まれて装填ファンネル202の管腔に装填され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、一定直径セクション204の遠位端(またはシース300、300’の遠位端)は、縮径セクション202および/または一定径セクション204(および/またはシース300、300’)の管腔に流体を保持するために、キャップおよび/または栓をされてもよく、
他の実施形態では、内部に流体を保持するのをさらに助けるために、縮径セクション202の近位端上にキャップが配置されてもよい。この配置により、水分に敏感な生物学的材料を含む、折り畳まれたステントまたは部分的に折り畳まれたステントに、より長い貯蔵機構を提供することができる。
【0059】
これに代わって、ステントは、折り畳まれて、上述したようにシース300、300’の管腔内に並進移動され、流体で満たされ、流体を保持するように両端がキャップまたは栓をされて、ステントに関連付けられた水分に敏感な生物学的材料を保護するのを助けることができる。
【0060】
ステントは、装填され、流体に浸漬されると、折り畳まれた構成で一定期間保持され、かつ/または必要な場所に輸送され得る。
【0061】
本明細書に記載の本発明およびその用途の説明は例示的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。様々な実施形態の特徴は、本発明の企図の範囲内において他の実施形態と組み合わせることができる。本明細書に開示される実施形態の変形および修正が可能であり、実施形態の様々な要素の実際的な代替物および均等物は、この特許文献を検討することにより当業者には理解されよう。本明細書に開示される実施形態のこれらおよび他の変形および修正は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく行うことができる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6