(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
B60C 1/00 20060101AFI20240805BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20240805BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20240805BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B60C1/00 B
C08L7/00
C08L23/08
C08K3/04
(21)【出願番号】P 2021518737
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 FR2019052341
(87)【国際公開番号】W WO2020074807
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-10-03
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100179305
【氏名又は名称】和田 幸大
(72)【発明者】
【氏名】アロホ ダ シルヴァ, ホセ・カルロス
(72)【発明者】
【氏名】クロシェ, オロール
(72)【発明者】
【氏名】ルメルル, フレデリック
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-082822(JP,A)
【文献】特表2016-505697(JP,A)
【文献】特開2012-180457(JP,A)
【文献】国際公開第2012/117715(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00
C08L 7/00
C08L 23/08
C08K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも天然ゴム、エチレンと1,3-ジエンとのコポリマー、カーボンブラック及び架橋系をベースとするゴム組成物を含有するタイヤサイドウォールであって、
- 前記コポリマー中のエチレン単位は、前記コポリマーのモノマー単位の50mol%超を表し、
- 前記ゴム組成物中のカーボンブラック含有量は、20phr~40phrの範囲であり、
- 前記ゴム組成物中のカーボンブラックの体積分率は、8%~15%の範囲であり、
- 前記ゴム組成物中のコポリマー含有量は、20phr~50phr未満の範囲であり、
- 前記ゴム組成物中の天然ゴム含有量は、50phrを超える、前記タイヤサイドウォール。
【請求項2】
前記コポリマー含有量は、20~40phrの範囲である、請求項1に記載のタイヤサイドウォール。
【請求項3】
前記1,3-ジエンは、1,3-ブタジエンである、請求項1又は2に記載のタイヤサイドウォール。
【請求項4】
前記コポリマーは、式(I)若しくは式(II)の単位又は式(I)及び式(II)の単位
【化1】
を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤサイドウォール。
【請求項5】
前記コポリマーは、統計コポリマーである、請求項1~4のいずれか一項に記載のタイヤサイドウォール。
【請求項6】
前記カーボンブラックは、70m
2/g~100m
2/gの範囲のBET比表面積を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のタイヤサイドウォール。
【請求項7】
前記カーボンブラックは、前記ゴム組成物中に存在する補強用充填剤の85重量%超を表す、請求項1~6のいずれか一項に記載のタイヤサイドウォール。
【請求項8】
前記架橋系は、加硫系である、請求項1~7のいずれか一項に記載のタイヤサイドウォール。
【請求項9】
可塑剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のタイヤサイドウォール。
【請求項10】
少なくとも天然ゴム、エチレンと1,3-ジエンとのコポリマー、カーボンブラック及び架橋系をベースとするゴム組成物であって、
- 前記コポリマー中のエチレン単位は、前記コポリマーのモノマー単位の50mol%超を表し、
- 前記ゴム組成物中のカーボンブラック含有量は、20phr~40phrの範囲であり、
- 前記ゴム組成物中のカーボンブラックの体積分率は、8%~15%の範囲であり、
- 前記ゴム組成物中のコポリマー含有量は、20phr~50phr未満の範囲であり、
- 前記ゴム組成物中の天然ゴム含有量は、50phrを超える、前記ゴム組成物を含むか、又は
請求項1~9のいずれか1項記載のサイドウォール、
を含むタイヤ。
【請求項11】
ゴム組成物は、前記タイヤの前記サイドウォールを構成
し、前記ゴム組成物は、少なくとも天然ゴム、エチレンと1,3-ジエンとのコポリマー、カーボンブラック及び架橋系をベースとし、
- 前記コポリマー中のエチレン単位は、前記コポリマーのモノマー単位の50mol%超を表し、
- 前記ゴム組成物中のカーボンブラック含有量は、20phr~40phrの範囲であり、
- 前記ゴム組成物中のカーボンブラックの体積分率は、8%~15%の範囲であり、
- 前記ゴム組成物中のコポリマー含有量は、20phr~50phr未満の範囲であり、
- 前記ゴム組成物中の天然ゴム含有量は、50phrを超える、請求項10に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、高飽和ジエンエラストマーを含むゴム組成物であって、タイヤ、好ましくはタイヤサイドウォール中での使用を特に意図されるゴム組成物の分野である。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、通常、リムとの接触が意図された2つのビード、少なくとも1つのクラウン補強材及びトレッドで構成されるクラウン並びに2つのサイドウォールを含み、タイヤは、2つのビード内に固定されたカーカス補強材によって補強される。サイドウォールは、クラウンからビードまで延在するカーカス補強材の領域を完全又は部分的に覆うように、クラウンとビードとの間のタイヤの内部空洞に対してカーカス補強材の外側に配置されるエラストマー層である。
【0003】
従来のタイヤの製造では、クラウン、カーカス補強材、ビード及びサイドウォールの種々の構成要素が組み立てられて、空気タイヤが形成される。組立ステップに続いて、組立体を円環形状にするためのタイヤ形成ステップがプレス機内の硬化ステップ前に行われる。タイヤのサイドウォールは、タイヤの回転中の曲げなどの変形サイクルに曝露されるため、タイヤのサイドウォールを構成するゴム組成物は、十分に可撓性であること及びヒステリシスが大きすぎないことの両方が必要である。
【0004】
サイドウォールは、オゾンの作用にも曝露されるため、サイドウォールを構成するゴム組成物は、良好な耐オゾン特性を示す必要がある。タイヤサイドウォールのオゾンに対する感受性を低下させるために、文献欧州特許出願公開第2 682 423A1号明細書において、エチレンと1,3-ジエンとのコポリマーであるエラストマーの使用が提案されている。それにもかかわらず、ゴム組成物の凝集特性の低下は、コポリマー中のエチレンのモル含有量が50%を超えると直ちに生じる。
【0005】
したがって、凝集力、剛性、ヒステリシス及びオゾンに対する耐性の性質間の良好で改善された妥協点を示すゴム組成物を見出すことに関心が持たれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願人は、凝集力、剛性、ヒステリシス及びオゾンに対する耐性の性質間の改善された妥協点を示す、50%を超えるエチレンのモル含有量を有するエチレンと1,3-ジエンとのコポリマーを含むゴム組成物を見出した。
【0007】
したがって、本発明の第1の主題は、少なくとも天然ゴム、エチレンと1,3-ジエンとのコポリマー、カーボンブラック及び架橋系をベースとするゴム組成物であって、コポリマー中のエチレン単位は、コポリマーのモノマー単位の50mol%超を表し、ゴム組成物中のカーボンブラック含有量は、20phr~40phrの範囲であり、ゴム組成物中のカーボンブラックの体積分率は、8%~15%の範囲であり、ゴム組成物中のコポリマー含有量は、20phr~50phr未満の範囲であり、ゴム組成物中の天然ゴム含有量は、50phrを超える、ゴム組成物である。
【0008】
本発明の第2の主題は、本発明によるゴム組成物を含むタイヤサイドウォールである。
【0009】
別の主題は、タイヤのサイドウォールを好ましくは構成する、本発明によるゴム組成物を含むタイヤである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
I.発明の詳細な説明
「a~bの間」という表現によって示されるあらゆる値の区間は、「a」を超え且つ「b」未満の値の範囲(すなわち端の値a及びbは除外される)を表す一方、「a~b」という表現によって示されるあらゆる値の区間は、「a」から「b」までに及ぶ値の範囲を意味する(すなわち厳密な端の値のa及びbを含む)。「phr」という略語は、100部のエラストマー(数種類のエラストマーが存在する場合、それらのエラストマーの合計)当たりの重量部を意味する。
【0011】
本明細書の説明において、「~をベースとする組成物」という表現は、使用される種々の成分の、混合物及び/又はその場反応の生成物を含む組成物を意味するものと理解すべきであり、これらのベース成分の一部(例えば、エラストマー、充填剤若しくは加硫系の成分又はタイヤの製造が意図されるゴム組成物中に従来使用される別の添加剤)は、タイヤの製造が意図される組成物の製造の種々の段階中に少なくとも部分的に互いに反応しやすいか又は互いに反応することが意図される。
【0012】
本特許出願において、「エラストマーのすべてのモノマー単位」又は「エラストマーのモノマー単位の総量」という表現は、重合によってエラストマー鎖中にモノマーが挿入されることで得られるエラストマーのすべての構成繰り返し単位を意味する。特に示されるのでなければ、高飽和ジエンエラストマー中のモノマー単位又は繰り返し単位の含有量は、エラストマーのすべてのモノマー単位を基準として計算されるモルパーセント値として表される。
【0013】
説明において言及される化合物は、化石又はバイオベースに由来するものであり得る。後者の場合、それらは、バイオマスから部分的に若しくは完全に誘導され得るか又はバイオマスから誘導される再生可能な出発物質から得ることができる。エラストマー、可塑剤、充填剤などが特に関係する。
【0014】
本発明の目的に有用なエチレンと1,3-ジエンとのコポリマーは、好ましくは、エチレンの重合によって得られるエチレン単位を含む統計(statistique)エラストマーである。周知の方法の1つでは、「エチレン単位」という表現は、エラストマー鎖中へのエチレンの挿入によって得られる-(CH2-CH2)-単位を意味する。エチレンと1,3-ジエンとのコポリマーにおいて、エチレン単位は、コポリマーのモノマー単位の50mol%超を表す。好ましくは、コポリマー中のエチレン単位は、コポリマーのモノマー単位の60mol%超、有利には70mol%超を表す。優先的な変形形態を含めた本発明のいずれか1つの実施形態によると、高飽和ジエンエラストマーは、優先的には最大で90mol%のエチレン単位を含む。
【0015】
以下で高飽和ジエンエラストマーの名称でも呼ばれる、本発明の目的に有用なコポリマーは、1,3-ジエンの重合によって得られる1,3-ジエン単位をも含む。周知の方法の1つでは、「1,3-ジエン単位」という用語は、1,4付加、1,2付加又はイソプレンの場合の3,4付加による1,3-ジエンの挿入によって得られる単位を意味する。1,3-ジエン単位は、例えば、1,3-ジエン又は1,3-ジエンの混合物によるものであり、1,3-ジエンは、4~12個の炭素原子を有し、特に1,3-ブタジエン及びイソプレンなどである。好ましくは、1,3-ジエンは、1,3-ブタジエンである。
【0016】
本発明の第1の実施形態によると、エチレンと1,3-ジエンとのコポリマーは、式(I)の単位を含有する。コポリマー中の式(I)の飽和6員環単位の1,2-シクロヘキサンジイルの存在は、成長中のポリマー鎖中へのエチレン及び1,3-ブタジエンの一連の非常に特殊な挿入によって得ることができる。
【化1】
【0017】
本発明の第2の優先的な実施形態によると、エチレンと1,3-ジエンとのコポリマーは、式(II)
-CH2-CH(CH=CH2)- (II)
の単位を含有する。
【0018】
本発明の第3の優先的な実施形態によると、エチレンと1,3-ジエンとのコポリマーは、式(I)及び式(II)の単位を含有する。
【0019】
本発明の第4の実施形態によると、高飽和ジエンエラストマーは、式(I)の単位を含まない。この第4の実施形態によると、エチレンと1,3-ジエンとのコポリマーは、好ましくは、式(II)の単位を含有する。
【0020】
高飽和ジエンエラストマーが式(I)若しくは式(II)の単位又は式(I)及び式(II)の単位を含む場合、高飽和ジエンエラストマー中の式(I)及び式(II)の単位のモルパーセント値、それぞれo及びpは、好ましくは、式(式1)を満たし、より優先的には式(式2)
0<o+p≦25 (式1)
0<o+p<20 (式2)
を満たし、o及びpは、高飽和ジエンエラストマーのすべてのモノマー単位を基準として計算される。
【0021】
優先的な変形形態を含めた第1の実施形態、本発明の第2の実施形態、第3の実施形態及び第4の実施形態によると、高飽和ジエンエラストマーは、優先的には、統計コポリマーである。
【0022】
特に第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態及び第4の実施形態による高飽和ジエンエラストマーは、特に高飽和ジエンエラストマーの目標ミクロ構造に応じた当業者に周知の種々の合成方法により得ることができる。一般に、これは、周知の合成方法による、特にメタロセン錯体を含む触媒系の存在下での少なくとも1,3-ジエン、好ましくは1,3-ブタジエンとエチレンとの共重合によって調製することができる。この点において、メタロセン錯体をベースとする触媒系を挙げることができ、これらの触媒系は、本出願人の名義における欧州特許第1092731号明細書、国際公開第2004/035639号パンフレット、国際公開第2007/054223号パンフレット及び国際公開第2007/054224号パンフレットに記載されている。統計的である場合も含めた高飽和ジエンエラストマーは、国際公開第2017/093654A1号パンフレット、国際公開第2018/020122A1号パンフレット及び国際公開第2018/020123A1号パンフレットに記載されるものなどの予備形成型の触媒系を用いる方法によって調製することもできる。
【0023】
高飽和ジエンエラストマーは、それらのミクロ構造又はマクロ構造が互いに異なるエチレンと1,3-ジエンとのコポリマーの混合物からなり得る。
【0024】
本発明の第1の実施形態、本発明の第2の実施形態、第3の実施形態及び第4の実施形態によると、高飽和ジエンエラストマーは、好ましくは、エチレンと1,3-ブタジエンとのコポリマーであり、より優先的にはエチレンと1,3-ブタジエンとの統計コポリマーである。
【0025】
本発明によるゴム組成物の本質的な特徴は、50phrを超える含有量の天然ゴムと、20phr~50phr未満の範囲の含有量の高飽和ジエンエラストマーとを含むことである。好ましくは、ゴム組成物中の天然ゴム含有量は、55phrを超え且つ80phr以下である。より優先的には、これは、60~80phrに及ぶ範囲で変動する。ゴム組成物中の高飽和ジエンエラストマー、特にエチレンと1,3-ブタジエンとのコポリマーの含有量に関して、それは、好ましくは、20~40phrの範囲である。
【0026】
ゴム組成物の別の本質的な特徴は、補強用充填剤としてカーボンブラックを含むことである。補強用充填剤は、典型的には、平均(重量平均)サイズが1マイクロメートル未満、一般に500nm未満、通常、20~200nmの間、特により優先的には20~150nmの間であるナノ粒子からなる。カーボンブラックは、20~40phrの範囲の含有量でゴム組成物中に存在し、ゴム組成物中のその体積分率は、8%~15%の範囲である。20phr未満のカーボンブラックでは、カーボンブラック量が少なすぎるため、ゴム組成物を十分に補強することができない。40phrを超えるカーボンブラックでは、ゴム組成物は、タイヤサイドウォールとしての用途にはヒステリシスが大きくなりすぎるため、剛性が高くなりすぎる。8.0%未満のカーボンブラックの体積分率は、カーボンブラックの希釈が大きすぎることに対応し、これは、凝集特性の低下の原因となる。カーボンブラックの体積分率が15%を超える場合、ゴム組成物は、剛性が高くなりすぎ、タイヤサイドウォール中に使用できなくなる。周知の方法の1つでは、ゴム組成物中の構成要素の体積分率は、組成物中の全構成要素の体積に対するこの構成要素の体積の比として定義され、全構成要素の体積は、組成物の各構成要素の体積を互いに加算することによって計算されることを理解されたい。したがって、組成物中のカーボンブラックの体積分率は、組成物の各構成要素の体積の合計に対するカーボンブラックの体積の比として定義される。構成要素の体積は、ゴム組成物中に導入される構成要素の重量と、構成要素の密度との間の比から求めることができる。周知の方法の1つでは、カーボンブラックのphrの単位での所与の含有量に対するカーボンブラックの体積分率は、組成物中に可塑剤を導入することによって調整することができる。
【0027】
適切なカーボンブラックは、すべてのカーボンブラックであり、特にタイヤ中に従来使用されるブラック(タイヤグレードブラックとして知られる)である。好ましくは、カーボンブラックは、70m2/g~100m2/gの範囲のBET比表面積を有する。BET比表面積は、規格ASTM D6556-09[多点法(5点)、ガス:窒素、相対圧力範囲P/P0:0.05~0.30]に準拠して測定できることに留意されたい。カーボンブラックの混合物が70m2/g~100m2/gのBET比表面積を有することを特徴とするカーボンブラックの混合物もカーボンブラックとして適している。特に、このような混合物を構成するカーボンブラックは、異なるASTMグレードのカーボンブラックである。
【0028】
ゴム組成物がカーボンブラックに加えて別の補強用充填剤を含む場合、カーボンブラックは、優先的には、ゴム組成物中に存在する補強用充填剤の85重量%超を表す。
【0029】
架橋系は、硫黄若しくは硫黄供与体、及び/又は過酸化物、及び/又はビスマレイミドのいずれかをベースとすることができる。好ましくは、架橋系は、優先的には、加硫系、すなわち硫黄(又は硫黄供与剤)と加硫促進剤とをベースとする系である。加硫促進剤として、硫黄の存在下でジエンエラストマーの加硫の促進剤として機能することができるあらゆる化合物、特にチアゾール型及びその誘導体の促進剤又はスルフェンアミド、チウラム、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、チオ尿素及びキサンテート型の促進剤を使用することができる。このような促進剤の例として、特に以下のスルフェンアミド化合物:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「CBS」)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「DCBS」)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「TBBS」)及びこれらの化合物の混合物を挙げることができる。
【0030】
硫黄は、0.3phr~10phrの間、より優先的には0.3~5phrの間の優先的な含有量で使用される。一次加硫促進剤は、0.5~10phrの間、より優先的には0.5~5phrの間の優先的な含有量で使用される。
【0031】
架橋(又は硬化)、適切な場合には加硫は、特に硬化温度、採用される架橋系及び対象の組成物の架橋反応速度に依存して、周知の方法で一般に130℃~200℃の間の温度において、例えば5~90分の間で変動し得る十分な時間で行われる。
【0032】
本発明の目的に有用なゴム組成物は、タイヤ中への使用が意図されるエラストマー組成物中に一般に使用される通常の添加剤のすべて又は一部、例えば、加工剤、可塑剤、顔料、保護剤、例えば抗オゾンワックス、化学的オゾン劣化防止剤、酸化防止剤などを含むこともできる。好ましくは、ゴム組成物は、可塑剤を含む。適切な可塑剤は、タイヤ中に従来使用されるあらゆる可塑剤である。この点において、ナフテン系油、パラフィン系油、MES油、TDAE油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤からなる群から選択される、優先的には非芳香族又は非常に弱い芳香族である油を挙げることができる。
【0033】
ゴム組成物は、110℃~190℃の間、好ましくは130℃~180℃の間の最高温度までの高温での熱機械的作業又は混練の第1の段階(場合により「非生産」段階と呼ばれる)と、引き続き典型的には110℃未満、例えば40℃~100℃の間のより低い温度での機械的作業の第2の段階(場合により「生産」段階と呼ばれる)との当業者に周知の一般手順による調製の2つの連続する段階を用いて、適切なミキサー中で製造することができ、その最終段階中に硫黄又は硫黄供与体及び加硫促進剤が混入される。
【0034】
例として、第1の段階(非生産)は、1つの熱機械的ステップとして行われ、その間、硫黄及び加硫促進剤を除いて、すべての必要成分、任意選択の追加の加工剤及び他の種々の添加剤が従来の内部ミキサーなどの適切なミキサー中に導入される。この非生産段階中の全混練時間は、好ましくは、1~15分の間である。第1の非生産段階中にこうして得られた混合物を冷却した後、次に硫黄及び加硫促進剤が低温において一般にオープンミルなどの外部ミキサー中に加えられ;全体が数分、例えば2~15分の間にわたって混合される(生産段階)。
【0035】
こうして得られた最終組成物は、続いて、特に実験室での特性決定のために、例えばシート若しくはスラブの形態でカレンダー加工されるか、又は例えばタイヤサイドウォールの製造に使用されるゴム形材を形成するために押出成形される。
【0036】
本発明の別の主題であるタイヤは、本発明によるゴム組成物を含むか、又は本発明によるゴム組成物を含むサイドウォールを含む。好ましくは、ゴム組成物は、本発明によるタイヤのサイドウォールを構成する。
【0037】
本発明によるゴム組成物、サイドウォール及びタイヤは、未硬化状態(すなわち架橋前)又は硬化状態(すなわち架橋後)であり得る。
【0038】
上記の本発明の特徴及び他のものは、非限定的な例証として提供される本発明の幾つかの実施例の以下の説明を読むことでより明確に理解されるであろう。
【実施例】
【0039】
II.本発明の実施例
II.1 試験及び測定:
II.1-1 エラストマーのミクロ構造の決定:
エラストマーのミクロ構造は、1H NMR分析によって行われ、1H NMR分析の分解能では、すべての要素の帰属及び定量を行うことができない場合には13C NMR分析で補われる。測定は、Brueker 500MHz NMR分光計を用いて、プロトン測定の場合に500.43MHz及び炭素測定の場合に125.83MHzの周波数において行われる。
【0040】
溶媒中に膨潤する性質を有する不溶性エラストマーの場合、4mm z-grad HRMASプローブがプロトンデカップルモードでのプロトン及び炭素の測定に使用される。スペクトルは、4000Hz~5000Hzの回転速度で取得される。
【0041】
可溶性エラストマーに対する測定の場合、液体NMRプローブがプロトンでのカップルモードでのプロトン及び炭素の測定に使用される。
【0042】
不溶性試料の調製は、分析される材料と、膨潤可能な重水素化溶媒、一般に重水素化クロロホルム(CDCl3)とを満たしたローター中で行われる。使用される溶媒は、常に重水素化される必要があり、その化学的性質は、当業者によって適合させることができる。使用される材料の量は、十分な感度及び分解能のスペクトルが得られるように調節される。
【0043】
可溶性試料は、重水素化溶媒中(1mL中約25mgのエラストマー)、一般に重水素化クロロホルム(CDCl3)中に溶解される。使用される溶媒又は溶媒ブレンドは、常に重水素化される必要があり、その化学的性質は、当業者によって適合させることができる。
【0044】
両方の場合(可溶性試料又は膨潤試料)において:
30°シングルパルスシーケンスがプロトンNMRに使用される。スペクトルウィンドウは、分析される分子に帰属するすべての共鳴線が測定されるように設定される。積算回数は、各単位の定量に十分な信号対雑音比が得られるように設定される。各パルス間のリサイクル遅延は、定量的測定が行われるように適合される。
【0045】
30°シングルパルスシーケンスが炭素NMRに使用され、プロトンデカップリングは、核オーバーハウザー効果(NOE)を回避し、定量性を維持するために取得中にのみ行われる。スペクトルウィンドウは、分析される分子に帰属するすべての共鳴線が測定されるように設定される。積算回数は、各単位の定量に十分な信号対雑音比が得られるように設定される。各パルス間のリサイクル遅延は、定量的測定が行われるように適合される。
【0046】
NMR測定は、25℃で行われる。
【0047】
II.1-2 動的性質:
動的性質は、規格ASTM D 5992-96に準拠して粘度分析装置(Metravib VA4000)上で測定される。規格ASTM D 1349-99に準拠して60℃で10Hzの周波数の単純な交番正弦波の剪断応力にさらされた加硫組成物の試料(厚さ4mm及び断面積400mm2の円筒形試験片)の応答が記録される。0.1%から50%(外側サイクル)、次に50%から0.1%(回復サイクル)のひずみ振幅掃引が行われる。使用される結果は、10%ひずみにおける複素剪断弾性率G*及び粘性係数G’’である。
【0048】
II.1-3 引張試験:
1988年9月のフランス規格NF T 46-002に準拠した引張試験により、破断時伸び及び破断応力が測定される。これらすべての引張試験測定は、60℃で行われる。
【0049】
II.1-4 オゾンに対する耐性:
静的条件下での試料の伸びの後の亀裂を測定する台形試験を用いて耐オゾン性を評価した。応力にさらされる試料は、より亀裂が生じやすい。試料は、犬の骨の形状を有し、ダイを用いて切り取り、V字型ホルダー中に搭載した。V字型ホルダーにより、10%~150%の試料のひずみを得ることができる。試料を取り付けたV字型ホルダーは、オゾン室中に入れられる。オゾン室の条件は、1億部当たり50部のオゾン(pphm)及び38℃の温度において144時間に設定した。台形試験の結果は、最初の亀裂が現れるときの伸びを示している。亀裂が現れるときの伸びが大きいほど、材料のオゾン亀裂に対する耐性が高い。
【0050】
II.2 ゴム組成物の調製:
配合の詳細が表1に示される4つのゴム組成物T、A、C1及びC2を以下のように調製した:エラストマーと、カーボンブラックと、硫黄及び加硫促進剤を除いた種々の他の成分とを連続して内部ミキサー中に導入し(最終充填度:約70容積%)、その最初のタンク温度は、約80℃である。次に、熱機械的作業(非生産段階)を1段階で行い、165℃の最高「降下」温度に到達するまで合計約3~4分間続ける。こうして得られた混合物を回収し、冷却して、次に硫黄及び加硫促進剤をミキサー(ホモフィニッシャー)上において30℃で混入し、全体を適切な時間(例えば、約10分)混練する(生産段階)。
【0051】
こうして得られた組成物は、それらの物理的若しくは機械的性質を測定するためにゴムのスラブ(厚さ2~3mm)若しくは薄いシートのいずれかの形態でカレンダー加工されるか、又はタイヤサイドウォールを構成するために押出成形される。
【0052】
ゴム組成物Tは、対照組成物であり、これは、多数の文献に示されるようなサイドウォールに従来使用されるゴム組成物であり、そのような文献としては、文献欧州特許第1 462 479 B1号明細書、欧州特許出願公開第1 975 200 A1号明細書、欧州特許第1 033 265 B1号明細書、欧州特許出願公開第1 357 149 A2号明細書、欧州特許出願公開第1 231 080 A1号明細書及び米国特許第4,824,900号明細書を挙げることができる。これは、天然ゴム及びポリブタジエン並びにカーボンブラックをベースとしている。
【0053】
ゴム組成物A、C1及びC2の3つすべては、天然ゴム及び高飽和ジエンエラストマーをそれぞれ60phr及び40phrの含有量で含有する。
【0054】
2つのゴム組成物C1及びC2は、本発明によるものであり、カーボンブラック含有量は、20~40phrに及ぶ範囲であり、その体積分率は、8~15%に及ぶ範囲である。
【0055】
ゴム組成物Aは、カーボンブラック含有量が40phrを超えるため、本発明によらない組成物である。
【0056】
高飽和ジエンエラストマー(EBR)は、以下の手順により調製される:30mgのメタロセン[{Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)2Li(THF)}2、記号Fluは、式C13H8のフルオレニル基を表す]が第1のグローブボックス中のSteinie中に導入される。第2のSteinieボトル中の300mlのメチルシクロヘキサン中にあらかじめ溶解させた共触媒のブチルオクチルマグネシウムを、メタロセンが入った第1のSteinieボトル中に0.00007mol/Lのメタロセン、0.0004mol/Lの共触媒の比率で導入する。周囲温度で10分間接触させた後、触媒溶液が得られる。この触媒溶液を次に重合反応器中に導入させる。次に、反応器中の温度を80℃まで上昇させる。この温度に到達してから、エチレンと1,3-ブタジエンとの気体混合物(80/20mol%)を反応器中に注入することによって反応を開始する。重合反応は、8barの圧力で進行させる。メタロセン及び共触媒の比率は、それぞれ0.00007mol/L及び0.0004mol/Lである。冷却させることによって重合反応を停止し、反応器を脱気し、エタノールを加える。ポリマー溶液に酸化防止剤を加える。真空オーブン中で乾燥させることによってコポリマーを回収する。
【0057】
II.3 結果:
結果を表1中に示す。オゾン攻撃の激しさを定量するために割り当てられたスコアを除くと、結果は、対照に対する性能指数として示されている。対照の値は、任意に100に設定されるため、100を超える値は、改善された性能を示す。
【0058】
結果は、ゴム組成物C1及びC2が、剛性、ヒステリシス、凝集力及びオゾンに対する抵抗性の性質間の性能に関して最良の妥協点を示すゴム組成物であることを示している。サイドウォールが組成物C1又はC2からなるタイヤは、完全に改善された性能を有し、乗用車への装着に特に適している。
【0059】
要約すると、本発明によるものでありタイヤのサイドウォールを構成するゴム組成物は、改善された性能をタイヤに付与する。
【0060】