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特許7532359歯科用ハンドピース及び歯科用ハンドピース用の押しボタン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】歯科用ハンドピース及び歯科用ハンドピース用の押しボタン
(51)【国際特許分類】
   A61C 1/14 20060101AFI20240805BHJP
   A61C 1/12 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61C1/14 A
A61C1/12
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021526310
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2019083873
(87)【国際公開番号】W WO2020115233
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】18210550.2
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】エルツグルール、メティン
(72)【発明者】
【氏名】ライン、マティアス
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-013434(JP,A)
【文献】特開2010-227572(JP,A)
【文献】特開2008-256152(JP,A)
【文献】米国特許第05779474(US,A)
【文献】特開2007-151866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/14
A61C 1/12
A61C 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な歯科用器具を受容するためのヘッド(12)を有する歯科用ハンドピース(10)であって、
前記ヘッド(12)の構成部品を収容するためのハウジング(14)と、
クランプされた歯科用器具が前記ヘッド(12)内で回転可能に駆動可能となるように前記歯科用器具をクランプするための、前記ハウジング(14)によって収容された器具クランプ装置(16)と、
前記歯科用器具を前記器具クランプ装置(16)に挿入し、前記歯科用器具を前記器具クランプ装置(16)から取り外すために、前記回転可能な歯科用器具の前記クランプを解放するためのトリガ機構と、
前記トリガ機構を作動させるための手動操作可能な押しボタン(36)と
を備え、
前記押しボタン(36)は、外側カバープレート(42)と内側接触要素(54)を有する二重壁であり、前記押しボタン(36)を作動させるために、前記外側カバープレート(42)の上側(42b)は、使用者によって付勢に抗して押圧可能であり、それによって、前記内側接触要素(54)の下側(54a)によってアクチュエータ(18)を作動させて前記トリガ機構を作動させ、断熱層(80)が、前記外側カバープレート(42)と前記内側接触要素(54)との間に延在し、前記内側接触要素(54)から前記外側カバープレート(42)の熱分離をもたらし、
円周壁(48)が前記外側カバープレート(42)から延在するように、前記押しボタン(36)はハット型であって、ハット型押しボタン(36)を定義し、前記押しボタン(36)は、前記外側カバープレート(42)又は前記円周壁(48)に環状停止部(76、112)を有し、前記内側接触要素は、前記環状停止部(76、112)上に載っている、歯科用ハンドピース(10)。
【請求項2】
前記断熱層(80)は、前記外側カバープレート(42)の下側(42a)と前記内側接触要素(54)の上側(54b)との間の前記回転可能な歯科用器具の回転軸(38)を横断する平面に延在する断熱間隙(78)の形態で設けられる、
請求項1に記載の歯科用ハンドピース(10)。
【請求項3】
前記回転可能な歯科用器具の回転軸(38)を横断する平面の少なくとも一方向における前記断熱層(80)の空間的広がりは、前記押しボタンの直径の少なくとも40%に相当する、
請求項1又は2に記載の歯科用ハンドピース(10)。
【請求項4】
前記内側接触要素(54)が接触点(64)において回転アクチュエータ(18)に接触したときに前記内側接触要素(54)で発生する摩擦熱が、前記内側接触要素(54)内で前記接触点(64)から主に半径方向外側に放散される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
【請求項5】
前記内側接触要素(54)及び/又は前記回転アクチュエータ(18)の材料及び加工は、前記内側接触要素(54)及び/又は前記回転アクチュエータ(18)が、前記回転アクチュエータ(18)と前記内側接触要素(54)の前記下側(54a)の前記接触点(64)において、平均表面粗さがRz<3.5μm、及び/又はプロファイル深さがPt<6μmとなるように選択される、
請求項4に記載の歯科用ハンドピース(10)。
【請求項6】
前記内側接触要素(54)は、30W/(mK)以下の熱伝導率を有する材料で作られている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
【請求項7】
前記内側接触要素(54)は、金属で作られている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
【請求項8】
前記内側接触要素(54)は、前記内側接触要素(54)と前記回転アクチュエータ(18)との前記接触点(64)の領域において、1mm以下の厚さ(h)を有する、
請求項4又は4を引用する5~7のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
【請求項9】
前記断熱層(80)は、0.5mm以下の厚さ(H)を有する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
【請求項10】
前記内側接触要素(54)は、前記外側カバープレート(42)とは別個の部品として作られ、接着接合によって、押し込み式係止によって、又はプレス嵌め接続によって、前記外側カバープレート(42)又は前記押しボタン(36)の他の部品に接合される、
請求項1~9のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
【請求項11】
前記内側接触要素(54)は、前記外側カバープレート(42)とは別個の部品として作られ、前記内側接触要素(54)は、前記ハット型押しボタン(36)内に緩く位置し、ばね(56)によって前記環状停止部(76)に対して押圧されるか、又は前記内側接触要素(54)は、プレス嵌めによって前記ハット型押しボタン(36)内に押圧されるか、又は前記内側接触要素(54)は、接着接合によって前記ハット型押しボタン(36)に接合される、
請求項1~10のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
【請求項12】
前記内側接触要素(54)は、周囲支持リング(126)、中央作動部分(124)、及び複数のスポーク(128)を有し、前記中央作動部分(124)は、スポーク(128)間に凹部(122)が形成されるように、前記スポーク(128)によって前記周囲支持リング(126)に懸架される、
請求項1~11のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
【請求項13】
歯科用器具を受容するための歯科用ハンドピース(10)のヘッドに据えられ、歯科用器具をクランプ及び解放するように前記ヘッド(12)内のトリガ機構を作動させるために適合された押しボタン(36)であって、
前記押しボタン(36)は、外側カバープレート(42)と内側接触要素(54)を有する二重壁であり、前記押しボタン(36)を作動させるために、前記外側カバープレート(42)の上側(42b)は、使用者によって付勢に抗して押圧可能であり、それによって、前記押しボタンが前記歯科用ハンドピース(10)の前記ヘッド(12)に据えられているとき、前記内側接触要素(54)の下側(54a)によってアクチュエータ(18)を作動させて前記トリガ機構を作動させ、
断熱層(80)が、前記外側カバープレート(42)と前記内側接触要素(54)との間に延在し、前記内側接触要素(54)から前記外側カバープレート(42)の熱分離をもたらし、
円周壁(48)が前記外側カバープレート(42)から延在するように、前記押しボタン(36)はハット型であり、前記押しボタン(36)は、前記外側カバープレート(42)又は前記円周壁(48)に環状停止部(76、112)を有し、前記内側接触要素は、前記環状停止部(76、112)上に載っている、押しボタン(36)。
【請求項14】
歯科治療ユニット(140)であって、
1つ又は複数の歯科用ハンドピース(10、10’)に圧縮空気、電気エネルギー、光、又は水の少なくとも1つを供給するベースユニット(6)と、
連結部品(2)を有する少なくとも1つの供給ホース(4)と、
前記連結部品(2)に連結することができる、少なくとも1つの請求項1~12のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10、10’)と
を備える、歯科治療ユニット(140)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転可能な歯科用器具、例えば歯科用ドリルを交互に受容するための歯科用ハンドピース、及び回転可能な歯科用器具をクランプ並びにクランプ解除するように器具クランプシステムを動作させるための該歯科用ハンドピース用の押しボタンに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用機器は、典型的には、電力、水、圧縮空気、及び/又は光を供給し、それらを供給ホースを介して歯科用ハンドピースに供給するベースステーションを含む。歯科用ハンドピースは、典型的には、供給ホースの自由端に位置付けられた標準的なインターフェース、例えばISOインターフェースによって連結部品に連結される。典型的なタイプの歯科用ハンドピースは、一方では、流れ駆動式歯科用ハンドピース、いわゆるタービンであり、他方では、モータ駆動式歯科用ハンドピースであり、これは、電気モータによって動作される場合、電気ハンドピース又は電動コントラアングルとも呼ばれる。
【0003】
歯科用ハンドピースは、典型的には、ロッド状ハンドルを備え、器具ホルダを有する歯科用ハンドピースのヘッドが、ロッド状ハンドルの前端に配置されている。ヘッドと反対側のロッド状ハンドルの他端には、供給ホースの連結部品に連結するための連結要素が配置されている。
【0004】
電気モータ駆動式歯科用ハンドピースにおいて、電気モータは、典型的にはホース側連結部品内に位置付けられ、モータの回転は、ロッド状ハンドル内のシャフトを介してヘッドに伝達される。例えば、歯科用器具、例えば歯科用ドリルが中にクランプされている器具クランプ装置を駆動するために、平歯車がヘッド内に位置付けられている。
【0005】
流れ駆動式歯科用ハンドピースでは、典型的には、タービンホイールがヘッド内に位置付けられており、このタービンホイール上に、圧縮空気が、供給ホース、連結器、及びロッド型ハンドルを介する圧縮空気供給ラインを通して導かれる。次いで、タービンホイールは、典型的には直接同軸に、器具クランプ装置を歯科用器具と共に駆動する。設計及び動作圧力に依存して、流れ駆動式歯科用ハンドピースは、典型的には、約150,000~約450,000min-1の回転速度に達する。電動式ハンドピースの典型的なモータ速度は、40,000min-1までの範囲であり、ドリルの回転速度が200,000min-1までになることができるように、歯車比が異なる、例えば1:5のハンドピースが利用可能である。
【0006】
歯科用ハンドピースのヘッドは、器具クランプ装置、タービンホイール又はギア、軸受、及び器具クランプ装置のためのトリガ機構等が中に配置されたハウジングを備える。ヘッドのハウジングは、典型的には、実質的に円筒形であり、歯科用器具がクランプされる側にかけて先細りになっている。押しボタンとして設計されたカバーが、典型的には、器具ホルダとは反対側の、本明細書では一般性を失うことなく上端部と呼ぶ、ヘッドの軸方向端部に配置されている。歯科用器具を交換するための作動機構は、押しボタンによって作動される。したがって、押しボタンはカバーシステムの一部であり、このカバーシステムは、典型的には、ねじ山によってヘッドのハウジングに締結される。
【0007】
作動要素としての働きをする押しボタンは、典型的には、ハット型の金属キャップとして設計され、軸方向に可動に取り付けられる。押しボタンの付勢を生成するためのばねが、典型的には、押しボタンの下に位置付けられる。押しボタンを押すことによって、押しボタンは軸方向に移動し、既定のアイドルストロークを経た後、器具クランプ装置のトリガ機構、より厳密には回転可能なプランジャと接触する。使用者が付勢に抗して押しボタンを更に軸方向に変位させると、プランジャはシャフトに対して移動し、ドリルを好都合に挿入及び取り外すことができる解放状態に器具クランプ装置を移行させる。
【0008】
既に上述したように、押しボタンは、通常、ばねによって付勢されており、それにより、歯科プレパレーション中に作動せずプランジャと接触することはできない。他方では、この付勢ばねは、典型的には、使用者の操作力が不必要に高くならないように、比較的柔らかく設計されている。
【0009】
通常、押しボタン又は作動機構は、器具ホルダが静止しているときにのみ操作されるべきである。それにもかかわらず、プレパレーション中に、歯科医が、モータが動いている間に押しボタンで例えば患者の頬又は歯に接触することが依然として起こり得る。これは一般に望ましくないが、押しボタンが、ばねの付勢に抗して少なくとも部分的に作動され、望ましくない場合には、押しボタンがプランジャに接触する程度にも作動されることが起こり得る。押しボタンとプランジャとの接触は摩擦熱を発生させ、これは一般に望ましくなく、接触面、接触圧力、接触面の表面状態、速度、及び接触の持続時間に依存する。この摩擦熱は、特定の状況下では、早くも比較的短時間後に、典型的には数秒後に、押しボタンの外面の望ましくない温度上昇をもたらす可能性がある。
【0010】
したがって、押しボタンを意図せずに作動させてしまった場合でも、押しボタンの外面の過度の温度上昇を防止する構造を提供することが望ましい。
【0011】
考えられる可能性は、付勢ばねをより剛性にすることであろう。しかしながら、これは、使用者が器具を交換するための作動力も増大するという欠点を有する。
【0012】
更に、管状リンクを有する阻止装置を使用することが既知であり、この管状リンクは、その端部近傍に、押しボタンの反対側に配置されたボールを有し、この目的のためにボールに軸方向に接触するための支持プレートを有する。しかしながら、この目的のために使用される接触プレートは、押しボタンと比較して比較的小さい外径を有する。更に、このような構造では、押しボタンと中心に近い接触プレートとの接触を防止できるかどうか、そして場合によりどのように防止できるかが明らかでない。接触プレート及び押しボタン間の熱伝達が接触プレートの最外縁部で生じる場合でも、接触プレートが押しボタンと比較して小さいので、想定される接触で発生する摩擦熱は、押しボタンの比較的中央に伝えられる。
【0013】
別の解決法は、球状要素、好ましくはボールが押しボタンに固定して取り付けられ、クランプ装置がボールで作動されることを提供する。ボールのためのカウンターベアリングとしてディスクを使用することができる。この目的のために、ボール及びディスクは、ビッカーススケールで2,000を超える高い硬度を有する材料、特にセラミック材料で作られる。第一に、球状要素又はボールにより垂直空間の大幅な増大が必要となることが不利である。一方、非常に小さいボールが選択された場合、接触力は非常に高くなる。
【0014】
これは、両方の部品が例えば工業用セラミックなどの好適な硬質材料で作られているわけではない場合、カウンターベアリングの変形をもたらし得る。しかしながら、これには高い摩擦係数を伴い、これが今度は不利なことに、接触点において著しく高い温度上昇を引き起こす。更に、望ましくない高い摩耗が生じ得る。
【0015】
結局、以前から知られているシステムには、更なる改善が必要である。
【0016】
したがって、本発明の目的は、例えば、押しボタンがドリルの動作中に望ましくなく作動されたために歯科用器具が回転しているときに、押しボタンが器具クランプシステムの回転部品と接触する可能性がある場合でも、患者組織と接触する場合がある押しボタンの表面の温度上昇を許容限度内に保つことができる歯科用ハンドピースを提供することである。
【0017】
本目的の別の態様は、歯科用器具の回転中に押しボタンが器具クランプシステムの回転部品と接触する可能性がある場合、押しボタンと器具クランプシステムの回転部品、例えばプランジャとの接触点で発生する摩擦熱を、押しボタンのカバープレートの上側から遠ざけることである。
【0018】
本目的の別の態様は、摩耗が少なく、生産が安価であり、高い安全性及び品質基準を満たす歯科用ハンドピースを提供することである。
【0019】
本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明の好ましい実施形態が従属請求項に規定される。
【発明の概要】
【0020】
本発明によれば、回転可能な歯科用器具を交互に受容するためのヘッドを有する歯科用ハンドピースが提供される。歯科用ハンドピースは、多くの場合タービンと呼ばれる流れ駆動式ハンドピースとして、又は電動式若しくは電気式ハンドピースとして設計され得る。
【0021】
例えば、歯科用ハンドピースは、回転可能な歯科用器具、例えば歯科用ドリルが中にクランプされるヘッドと、ヘッドの反対側のインターフェース(例えばISOインターフェース)とを有するロッド状ハンドルを備え得、該インターフェースによってハンドピースがベースユニットの供給ホースに連結されて、ベースユニットによってエネルギー、圧縮空気、回転駆動、光、及び/又は水が供給され得る。
【0022】
歯科用ハンドピースは更に、例えば、所望の器具、例えば所望のドリルをヘッド内に選択的にクランプするように歯科用器具をクランプするための器具クランプ装置などの、ヘッドの構成部品を収容するためのハウジングを備える。
【0023】
このために、ヘッドは、ハウジング内にトリガ機構を備え、このトリガ機構によって、回転可能な歯科用器具のクランプが解放可能となり、歯科用器具を器具クランプ装置内に挿入し、それを器具クランプ装置から取り外すことが可能となる。したがって、トリガ機構を用いて、器具クランプ装置を、歯科用器具が器具クランプ装置内にクランプされて回転駆動される動作状態から、回転可能な歯科用器具を挿入したり取り外したりすることができる解放状態に移行させることができる。
【0024】
このために、所望の歯科用器具は、器具クランプ装置が解放状態にあるときに、例えばハウジングの底部の開口部を通して、ヘッドのハウジング内に、したがって器具クランプ装置内に挿入され、再び取り外される。
【0025】
トリガ機構は、手動操作可能な押しボタンによって動作される。特に、トリガ機構を作動させるために、すなわちそれを解放状態にするために、使用者の指で押しボタンを押し下げることができ、それにより、使用者は、例えばドリルを挿入するか、又は挿入したドリルを取り外すことができる。
【0026】
押しボタンは、外側カバープレートと内側接触要素を有する二重壁である。押しボタンの外側カバープレートの上側は、使用者によって押しボタンを作動させる役割をし、押しボタンは、例えばアクチュエータ又はプランジャの周りに周方向に延在する押しボタンばねによって生成される付勢又は予荷重に抗して押圧される。したがって、外側カバープレートの上側又は上面は、主に、治療中に患者の組織と接触する可能性がある。使用者が付勢又は予荷重に抗して押しボタンを押圧すると、内側接触要素の下側又は下面がアクチュエータ又はプランジャと接触し、器具クランプ装置の解放状態に達するまで押しボタンを押し下げ進めると、アクチュエータ又はプランジャでトリガ機構を作動させる。したがって、アクチュエータ又はプランジャは、リニアアクチュエータ、リリースピン、又はタペットとしても指定され得る。
【0027】
断熱層が、外側カバープレートと内側接触要素との間に挟み込むように延在し、内側接触要素から外側カバープレートの熱分離をもたらす。
【0028】
有利なことに、これは、内側接触要素とリニアアクチュエータ又はプランジャとの接触点から押しボタンの外側カバープレートへと軸方向に熱流を減少させることができ、その結果、器具の回転中に回転するリニアアクチュエータ又はプランジャと摩擦接触する程度まで押しボタンが望ましくなく作動される可能性がある場合でも、外側カバープレートの温度を許容限界内に保つことができる。
【0029】
好ましくは、断熱層は、外側カバープレートの下側又は下面と内側接触要素の上側又は上面との間の回転可能な歯科用器具の回転軸を横断する平面の両方の次元に延在する断熱間隙又は空洞として形成される。断熱空洞には、簡単な実施形態によれば、ガス充填されていてもよく、例えば、空気充填されていてもよく、又は排気されていてもよく、又は断熱材が充填されていてもよい。例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:polyetheretherketone)又は熱伝導率の低いセラミック材料が、充填用の断熱材とみなすことができる。
【0030】
好ましくは、回転可能な歯科用器具及びアクチュエータ又はプランジャの回転軸を横断する平面の少なくとも一方向、好ましくは両方向における断熱層又は断熱空洞の空間的広がりは、押しボタンの直径(内径)の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%に相当する。これにより、内側接触要素とアクチュエータ又はプランジャとの接触点で発生した熱を、好ましくははるか半径方向外側に放散できることを保証することができる。これにより、押しボタンの周囲エリアの熱放散がもたらされる。
【0031】
したがって、内側接触要素及び断熱層は、好ましくは、押しボタンの半径方向周囲部内まで延在する。その結果、内側接触要素と押しボタンとの間の熱橋は、好ましくは、押しボタンの半径方向周囲部に位置付けられる。
【0032】
それと共に、熱流が接触点から外側カバープレートの中心まで通らなければならない経路に対して、迂回が生じ、これは、そこでの温度上昇を遅くすることができる。
【0033】
更に、押しボタンの表面にわたる熱エネルギーのより良好な分散をもたらし、局所的な最高温度の減少をもたらす。
【0034】
アクチュエータ又はプランジャが回転し、内側接触要素の下側が回転するアクチュエータ又はプランジャに接触点において接触すると、摩擦熱が内側接触要素内の接触点において不随意に発生する。この摩擦熱は、好ましくは、内側接触要素において接触点から主に半径方向外側に、すなわち回転軸を横断する平面に放散される。
【0035】
好ましくは、押しボタンはハット型であり、その結果、回転軸を取り囲む周囲円周壁が外側カバープレートから器具ホルダの方向に下方に延在する。内側接触要素は、好ましくは、外側カバープレートの周囲領域内まで、適切な場合には最大で円周壁まで延在する。
【0036】
内側接触要素が半径方向にはるか外側に、適切な場合には最大で円周又は環状壁まで延在し、環状壁に当接するか、又は環状壁において若しくはその近傍で押しボタンに接合される場合、熱は、この半径方向外側領域まで放散され得る。
【0037】
断熱層又は断熱間隙若しくは空洞も、有利なことに、ハット型押しボタンの半径方向周囲部又は周縁部領域内まで、適切な場合には最大で円周壁又は円周リング壁まで延在する。
【0038】
したがって、内側接触要素の押しボタンへの熱結合は、患者接触が比較的起こりにくい押しボタンの領域に位置付けられる。発生した熱の外側カバープレートまでの経路は長くなり、したがって、押しボタンの上側の温度上昇が遅くなる。
【0039】
好ましくは、断熱層は、回転軸を横断する平面において、少なくとも2mm、好ましくは少なくとも3mm、好ましくは少なくとも4mmの直径を有する。例えば、断熱層は、回転軸を横断する平面において、4.7mm+/-1mmの直径を有する。更に好ましくは、内側接触要素は、回転軸を横断する平面において、少なくとも2mm、好ましくは少なくとも3mm、好ましくは少なくとも4mmの直径を有する。例えば、内側接触要素は、回転軸を横断する平面において、5.8mm+/-1mmの直径を有する。
【0040】
好ましくは、内側接触要素が、半径方向に少なくとも非常にはるか外側に延在するか、又は少なくとも非常に大きい直径を有するので、ばねは、内側接触要素に下から係合する。
【0041】
更に好ましくは、内側接触要素の材料及び厚さは、内側接触要素が作動時に曲がらないように、又は少なくとも内側接触要素が外側カバープレートに接触しないように選択又は寸法決めされる。例えば、断熱層、例えば空隙は、0.12mmの厚さを有し、内側接触要素は、0.4mmの厚さを有する。
【0042】
好ましい実施形態によれば、内側接触要素及び/又はアクチュエータ若しくはプランジャの材料及び機械加工は、内側接触要素及び/又はアクチュエータ若しくはプランジャが、接触点において平均表面粗さ(Rz)がRz<3.5μm、好ましくはRz<2.5μm、好ましくはRz=1.5μm+/-1μmの範囲である表面粗さを有するように選択される。
【0043】
更に好ましくは、内側接触要素及び/又はアクチュエータ若しくはプランジャのプロファイル深さ(Pt)が、接触点において、Pt<6μm、好ましくはPt<4.5μm、好ましくはPt=3μm+/-1.5μmの範囲である。
【0044】
更に好ましくは、内側接触要素の下側とアクチュエータ又はプランジャの接触点において、摺動(動)摩擦係数μ(乾燥)は、0.3以下、好ましくは0.25以下、好ましくは0.18+/-0.05の範囲である。しかしながら、動作時には、押しボタンのエリアは、典型的には潤滑にされ、その結果、潤滑による動作時の摩擦レベルは低くなる。
【0045】
低い表面粗さ及び低いプロファイル深さを達成する、又は低い摺動(動)摩擦係数μ(乾燥)を有する材料及び加工技術を使用することは、回転モータ又は駆動装置による反復作動でも摩耗を依然として低く保つことができるという利点を有する。したがって、ここで提示される解決法は、外側カバープレートの低発熱及び耐摩耗性などの相反する要件を相乗的に調和させることができる。
【0046】
内側接触要素が、30W/(mK)以下、好ましくは10W/(mK)~25W/(mK)の範囲、好ましくは15W/(mK)+/-5W/(mK)の範囲の熱伝導率を有する材料で作られる場合、外側カバープレートの発熱を更に低く保つことができる。
【0047】
本発明のコンテキストでは、内側接触要素を金属から、例えば耐酸性かつ耐錆性の鋼から生産することが可能である。好ましい実施形態によれば、内側接触要素は、マルテンサイト構造を有する鋼からなる。また、アクチュエータ又はプランジャの上端部を形成し、内側接触要素と接触するアクチュエータ又はプランジャのヘッドは、金属、例えば耐酸性かつ耐錆性の鋼からも作られ得る。したがって、内側カバープレートとアクチュエータ又はプランジャとの接触点に金属と金属の接触がもたらされ得る。例えば、金属から作られた内側接触要素は、追加の球状要素を必要とすることなく、アクチュエータ又はプランジャのヘッドに直接接触してこれを作動させる。マルテンサイト構造及び約760+/-50HV3の硬度を有する鋼が、内側接触要素に特に好ましい。
【0048】
内側接触要素の下側及び/又はアクチュエータ若しくはプランジャの上端部は、好ましくは、旋削旋盤によって、少なくとも通常の旋削によって、より好ましくは精密旋削によって、機械加工される。
【0049】
これには、摺動摩擦又は動摩擦が比較的低く、構成が低摩耗であり、したがって耐久性があるという利点がある。更に、生産が簡単かつ安価である。
【0050】
したがって、内側接触要素の材料は、他の金属と比較して高いが、いくつかの他の材料と比較して比較的低い硬度を有し得る。
【0051】
内側接触要素及び/又はアクチュエータ若しくはプランジャの上端部の材料のビッカース硬度は、≦1500HV3、好ましくは≦1200HV3、好ましくは≦900HV3、好ましくは≧550HV3、好ましくは≧700HV3、例えば550HV3~850HV3の範囲であり得、特に好ましい材料は、700HV3~800HV3の範囲である。
【0052】
有利なことに、接触エリアの許容できない塑性変形又は接触点におけるアクチュエータ若しくはプランジャ圧痕の形成を回避することができる。それと共に、過度に拡大された接触面の形成を回避することができ、これにより、接触点における熱発生の増加を許容限界内に保つことができる。
【0053】
内側接触要素は、製造が容易である、シート金属箔から、好ましくはステンレス鋼箔から、好ましくはマルテンサイト系ステンレス鋼のシート金属箔から、例えば接触プレートとしてエッチングされ得る。更に、このようなシート金属部品又はステンレス鋼シート部品の使用は安価である。
【0054】
更に、金属又はステンレス鋼の使用により、例えば、押しボタンに内側接触要素を押圧又は溶接することによって、経済的な組み立てが可能となる。
【0055】
内側接触要素と回転アクチュエータ又はプランジャとの接触点における内側接触要素の厚さ(回転軸に沿った寸法)は、好ましくは1mm以下、好ましくは0.6mm以下、好ましくは0.5mm以下、好ましくは0.1mm~0.6mm、好ましくは0.4mm+/-0.2mm又は+/-0.1mmの範囲である。
【0056】
更に、断熱層又は断熱間隙若しくは空洞の厚さ(回転軸に沿った寸法)は、特に回転軸の領域において、好ましくは0.5mm以下、好ましくは0.3mm以下、好ましくは0、2mm以下、好ましくはmm~0.2mm、好ましくは0.12mm+/-0.05mm又は+/-0.03mmの範囲である。
【0057】
有利なことに、内側接触要素の形態の追加的に導入された要素及び断熱層又は空洞は、ヘッドの高さのわずかな増加しか生じさせず、その結果、全高を低く保つことができる。
【0058】
好ましくは、内側接触要素と断熱層の厚さの合計は、好ましくは1.5mm以下、好ましくは1mm以下、好ましくは0.75mm以下、好ましくは0.6mm以下、好ましくは0.5mm+/-0.15mmの範囲である。
【0059】
上述の厚さの値はすべて、特に、押しボタンの中央又は軸付近領域、特にアクチュエータ又はプランジャのヘッドとの接触点に関連している。
【0060】
内側接触要素が外側カバープレートとは別個の金属部品として作られる場合、内側接触要素は、好ましくは、外側カバープレート又は押しボタンの他の部品に、材料結合によって、例えば溶接又はプレス嵌めによって接合されてもよいし、又は内側接触要素は、外側カバープレート又は押しボタンの他の部品と押し込み式で接続されてもよい。
【0061】
内側接触要素が外側カバープレートとは別個の部品として設計される場合、押しボタンは、好ましくは、外側カバープレート上に、特に外側カバープレートの周囲領域に、又は円周(環状)壁上に環状停止部を有する。この場合、内側接触要素は環状停止部に接しており、その結果、断熱空洞若しくは間隙が、環状停止部の内側領域に形成される。
【0062】
内側接触要素は、ハット型押しボタン内に緩く位置し得、ばねによって、特に、トリガ機構の動作のために押しボタンの付勢を生成するばねによって環状停止部に押し付けられ得る。他方では、内側接触要素は、プレス嵌めによってハット型押しボタン内に押圧されてもよく、又は材料結合によって、例えば溶接によってハット型押しボタンに接合されてもよい。いずれのケースでも、内側接触要素の周囲領域と環状停止部との間に熱橋がつくられ、その結果、内側接触要素内で半径方向外側に伝導された熱は、熱橋を介して環状停止部に、そしてそこから押しボタンの周囲外側領域へと放散される。
【0063】
好ましい実施形態によれば、内側接触要素は、周囲支持リング、中央作動フィールド、及び複数のスポークを有し得、中央作動フィールドは、スポーク間に凹部が存在するように、スポークによって周囲支持リングに懸架される。更に好ましくは、スポークは、アクチュエータ又はプランジャと内側接触要素との接触点から周囲支持リングまでの熱流の経路の長さを増加させるように、半径方向に直線に延びていなくてもよく、例えばS字形状であってもよい。
【0064】
本発明の更なる主題は、歯科用器具を交互に受容するための歯科用ハンドピースのヘッドに据えられ、歯科用器具をクランプ及び解放するようにヘッド内のトリガ機構を作動させるように適合された押しボタンであり、
ここにおいて、押しボタンは外側カバープレートと内側接触プレートを有する二重壁であり、
外側カバープレートの上側が押しボタンを作動させるために使用者による付勢に抗して押圧可能であり、それによって、押しボタンが歯科用ハンドピースのヘッドに据えられているとき、内側接触要素の下側がアクチュエータ又はプランジャを作動させてトリガ機構を作動させ、
断熱層が、外側カバープレートと内側接触要素との間に挟み込まれて延在し、内側接触要素から外側カバープレートの熱分離をもたらす。
【0065】
適切な場合には、そのような押しボタンを、既存のハンドピースにレトロフィット構成部品として据えることができる。これは、特に、本構造の全高が低いことに起因して可能であると思われる。
【0066】
以下において、本発明は、図面を参照して、例示的な実施形態によってより詳細に説明され、同一及び同様の要素には同じ参照番号が部分的に提供され、異なる実施形態の特徴を組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】供給ホースに連結されたハンドピースの概略図。
図2】本発明の例示的な実施形態によるハンドピースの断面図。
図3図2のハンドピースのヘッドの拡大断面図。
図4図2及び図3の押しボタンの断面図。
図5】本発明の更なる実施形態によるヘッドの上部領域の概略断面図。
図6】押しボタンが部分的に押された状態の図5のヘッドの概略断面図。
図7】本発明の更なる実施形態による押しボタンの概略断面図。
図8】本発明の更なる実施形態による押しボタンの概略断面図。
図9】本発明の更なる実施形態による押しボタンの概略断面図。
図10】本発明の更なる実施形態による押しボタンの概略断面図。
図11】本発明の更なる実施形態による押しボタンの概略断面図。
図12】本発明の更なる実施形態による押しボタンの概略断面図。
図13】本発明の更なる実施形態による押しボタンの概略断面図。
図14】本発明の更なる実施形態による内側接触要素の概略平面図。
図15】歯科治療ユニットの概略図。
【詳細な説明】
【0068】
図1を参照すると、歯科用ハンドピース10は、標準インターフェース、例えばISOインターフェースによって連結部品2に連結されている。連結部品2は、ベースユニット6(図15参照)の供給ホース4の自由端に位置付けられている。歯科用器具8、この実施例では歯科用ドリルが、歯科用ハンドピース10に挿入されている。
【0069】
図1及び図2を参照すると、歯科用ハンドピース10は、ロッド状ハンドル11と、歯科用ハンドピース10又はロッド状ハンドル11の末端部に取り付けられたヘッド12とを備える。ヘッド12はほぼ円筒形のハウジング14を備え、このハウジング14は、その下端部で先細りになっており、器具クランプ装置16及び器具駆動装置の別の構成部分が中に据えられている。
【0070】
図3を参照すると、器具クランプ装置16の一部としてのリニアアクチュエータ又はプランジャ18が、玉軸受20によってホルダ24の玉軸受受容スリーブ22内に取り付けられている。対応する器具クランプ装置を有する歯科用ハンドピースのヘッドの通常の構造は、当業者には一般に既知である。
【0071】
ヘッド12の上端部には、ヘッドハウジング14の雌ねじ34に上からねじ込まれるねじ付きスリーブ32を有するカバーシステム又は蓋システム30がある。ねじ付きスリーブ32では、カバー又は蓋が押しボタン36として使用され、これは軸方向に(器具の回転軸38に対して)変位可能又は可動である。この実施例では、カバー又は押しボタン36は、この実施例では上側で外にわずかに湾曲している上側又は外側カバー壁又はプレート42と、外側カバープレート42の周縁部分44に隣接し、周縁部分44から下方に回転軸38に対して軸方向に延在する環状壁48又はジャケットとを有するハット型である。外側カバープレート42とは反対側の環状壁48の自由端である環状壁48の下端部において、環状又は円周壁48は、外側カラー又は止めリング50を有し、これは、この実施例では、ねじ付きスリーブ32の内側止めリング52に対する上側停止部を提供し、蓋又は押しボタン36をヘッドハウジング又はねじ付きスリーブ32内に保持する。
【0072】
押しボタン36は、回転軸38を横断する平面において二重壁であり、外側カバープレート42は、二重壁の2つの層のうちの第1の層を形成する。二重壁の2つの層のうちの第2の層は、内側接触部材又は内側接触要素54によって形成され、この実施例では内側接触プレートの形態であり、ハット型カバー又は押しボタン36に下から挿入される。押しボタン36は、コイルばね56によって付勢されており、このコイルばね56は、その下端部でエンドプレート58上に支持され、その上端部で内側接触プレート54の下側54aに支持されている。より一般には、ばね56は、内側接触要素又はプレート54と係合する。ばね56の付勢は、プランジャヘッド62に接触するまでのアイドルストローク範囲で約1N~5Nの範囲の押しボタン36の作動力をもたらす。しかしながら、トリガ機構を作動させるための作動力は約50Nである。
【0073】
歯科用器具8をクランプするために、使用者は、典型的には、外側カバープレート42の上側42bを指で押して、押しボタンばね56の付勢に抗して軸方向に押しボタン36を押し下げる。その際、使用者はまず、内側接触プレート54の下側54aとプランジャ18の自由上端を形成するプランジャヘッド62との間のアイドルストロークを、下側又は下面54aがプランジャ18の自由上端に接触するまで克服する。プランジャヘッド62又はプランジャ18の自由上端が凸状に形成されているので、内側接触プレート54とプランジャヘッド62との間に比較的小さい接触点64が生じる。使用者が押しボタン36を更に押し下げると、押しボタン36はプランジャ18を作動させ、すなわち、プランジャヘッド62に対する内側接触プレート54の圧力によってプランジャ18を下方に押し、それによって器具クランプ装置16のトリガ機構が作動される。器具クランプ装置16のトリガ機構が作動されると、器具クランプ装置16は、解放状態(図示せず)になり、この解放状態では、歯科用器具8、例えば歯科用ドリルを器具クランプ装置16(図示せず)に挿入又は取り外すことができる。
【0074】
玉軸受スリーブ22上の外側カラー66は、押しボタン36のための下側停止部を形成し、この押しボタン36は、玉軸受スリーブ22の上にハットのように被さり、更なる作動時には玉軸受20の上に被さる。
【0075】
例示的な本実施形態では、外側カバープレート42は、その下側42aに、直径d=4.7mmの凹部70を有する。この実施例における内側接触プレート54の直径は、D=5.8mmである。
【0076】
中央凹部70は、周囲円周ショルダ又はレッジ72によって外側に境界付けられ、その結果、環状段部74が凹部70の外周に形成される。したがって、外側カバープレート42の下側又は下面42aは、内側接触プレート54のための周囲支持又は軸受面76を有する。したがって、内側接触プレート54は、下から外側カバープレート42と周囲に環状に係合し、それによって、押しボタン36の中央の二重壁領域に二重壁の第2の内側層を形成する。
【0077】
したがって、凹部70は、外側カバープレート42と内側接触プレート54との間の回転軸38を横断する平面の両方の次元に延在する中央間隙又は空洞78を形成する。本実施例では、空洞78は充填されておらず、すなわち、大気圧の空気が空洞78に存在する。したがって、空洞78は、外側カバープレート42と内側接触プレート54との間の回転軸38を横断する平面の二次元において平坦に延在する断熱層80を形成し、押しボタン36の中央領域82において内側接触プレート54から外側カバープレート42への熱流に対する断熱をもたらす。内側接触プレート54と周囲環状支持又は軸受面76との接触は、内側接触プレート54から押しボタン36への、又はこの実施例では外側カバープレート42への熱橋84をつくる。したがって、熱橋84は、押しボタン36又は外側カバープレート42の中央又は軸付近領域82にはなく、外側カバープレート42の周縁部分又は領域44、すなわち押しボタン36の半径方向周囲部37にある。
【0078】
押しボタン36がプランジャ18の回転中に望ましくなく作動された場合、例えば内側接触プレート54が中央接触点64においてプランジャヘッド62と接触する可能性がある程度まで偶発的に作動された場合、摩擦熱が最初に中央接触点64において発生する。内側接触プレート54の材料の熱伝導率は、この実施例では空気層である断熱層80の熱伝導率よりも高い。したがって、接触点64で発生した摩擦熱は、内側接触プレート54内で主に又は本質的に半径方向外側にガイドされる。内側接触プレート54と押しボタン36との間に熱橋84を形成する、内側接触プレート54の上側又は上面54bと外側カバープレート42との間の環状接触領域85は、回転軸38から比較的遠く離れて周囲に位置付けられ、その結果、発生した摩擦熱は、比較的大きい周辺部の周囲に、外側カバープレート42の周縁部領域44内へと分散される。これにより、とりわけ、外側カバープレート42の上側又は上面42bの最高温度が、接触される危険のあるエリアにおいて許容可能な限界内に留まることが提供される。図2図4に示す実施例では、熱橋84は、軸受20の内径の半径方向外側に、又はプランジャ18の直径の半径方向外側に位置付けられる。
【0079】
換言すれば、内側接触要素54及び断熱層80は、半径方向に押しボタン36の半径方向周囲部37内まで延在しており、その結果、熱橋84は、押しボタン36の半径方向周囲部37内に位置付けられる。
【0080】
本実施例では、断熱層80の直径dは、押しボタン36の内径Diの約75%である。好ましくは、この比d/Diは、少なくとも40%、少なくとも50%、又は少なくとも70%であり得る。
【0081】
図2図4に示す実施例では、内側接触プレート54は、ステンレス鋼で作られ、本実施例では、耐酸性かつ耐錆性の硬化マルテンサイト系鋼で作られており、これにより容易な製造が可能となる。この実施例では、内側接触プレート54の厚さは、中央領域、特に接触点64の領域で約h=0.4mmである。環状周囲部分又は領域53において、内側接触プレート54の厚さは、この実施例ではいくらか減少する。この実施例では、断熱層80の厚さH又は凹部70の高さは、中央領域82において約0.12mmである。したがって、内側接触プレート54及び断熱層80によってもたらされる全高は、この実施例では約0.52mm増加するだけである。本実施例では、上側54bは、中央領域82において断熱層80の厚さHに寄与するわずかな中央薄肉部(thinning)57を有する。内側接触プレート54の中央領域の薄肉部57と、外側カバープレート42の薄肉部を形成する外側カバープレート42の第2の中央凹部94(図10参照)とは、内側接触プレート54又は外側カバープレート42の変形に対する更なる安全マージンを提供する。それと共に、押しボタン36の中央領域82における内側接触プレート54と外側カバープレート42との望ましくない接触を更に良好に防止することができる。
【0082】
内側接触プレート54に耐酸性かつ耐錆性のマルテンサイト系ステンレス鋼を使用すると、有利なことに、比較的小さい厚さhで、変形に対する高い強度又は安定性を提供する。更に、このようなマルテンサイト系鋼は、有利なことに平滑又は平坦な表面を有しており、その結果、プランジャヘッド62との接触点64において比較的より低い摩擦係数が提供される。プランジャヘッド62も耐酸性かつ耐錆性の鋼で作られており、その結果、この実施例では、中央接触点64において鋼と鋼の接触がある。特に、内側接触プレート54は、追加の球状要素を必要とすることなく、プランジャヘッド62に直接接触し、これを作動させる。その結果、摩擦係数がより高い材料に対して、接触点64において熱発生を早くも低減することができる。さらに、このようなマルテンサイト系鋼で作られた内側接触プレート54は、加工が容易であり、エッチングによって精密かつ安価に生産することができる。同時に、この実施例に使用される耐酸性かつ耐錆性の、好ましくはマルテンサイト系の鋼は、他の鋼と比較して比較的低い熱伝導係数λ=15W/(mK)を有する。
【0083】
特に、比較的低い熱伝導率、低い摩擦係数、及び周縁部領域44又は押しボタン36の半径方向周囲部37内への主に半径方向の熱放散が相乗的に相互作用し、その結果、最大可能接触圧力下で内側接触プレート54とプランジャヘッド62が長期接触しても、接触される危険がある押しボタン36の箇所における最大温度を許容限度内に保つことができる。
【0084】
押しボタン36では、内側接触プレート54は周囲軸受面76に係合し、この周囲軸受面76は、空洞78を取り囲み、周囲環状停止部を形成する。この実施例では、押しボタン36の環状壁48又はジャケットは、内側接触プレート54を中心に置くとともに環状プレス嵌め又は締まり嵌め86を形成する周囲ショルダ又はレッジ77を有する。この実施例では、内側接触プレート54は、その下側54aに環状延長部55を有し、この環状延長部55は、ばね56を中心に置くが、内側接触プレート54の曲げ剛性を増大させるのにも寄与し得る。
【0085】
図5は、環状延長部55のない平坦又は平面的な内側接触プレート54を備え、周囲ショルダ又はレッジ77のない押しボタン36を備える、簡略化した実施形態を概略的に示す。この実施例では、内側接触プレート54は、空洞78を取り囲むとともに周囲環状停止部を形成する、周囲軸受面76において押しボタン36内に緩く位置するだけである。例示された組立て状態では、内側接触プレート54は、ばね56によって、外側カバープレート42の下側42aの周囲環状停止部76又は周囲軸受面に対して付勢又は押圧されている。
【0086】
図6を参照すると、例示的に、図5の押しボタン36は、内側接触プレート54がプランジャヘッド62に接触するように、軸方向アイドルストローク60あたりで作動されているが、プランジャ18は、まだトリガ機構を作動させていない。
【0087】
図7を参照すると、押しボタン36はまた、環状プレス嵌め86を有し、それにより、内側接触プレート54は、押しボタン36内の内側プレス嵌め又は締まり嵌め86内に下から圧入される。また、締まり嵌め86を有する実施例では、熱接触、すなわち内側接触プレート54と押しボタン36との間の熱橋84は、実質的に周縁部領域44に、すなわち実質的にプレス嵌め86及び環状周囲軸受面76を介して位置付けられる。その他の点では、この実施形態は図5の実施形態に対応する。
【0088】
図8を参照すると、内側接触プレート54は、材料結合によって、例えば溶接によって、押しボタン36に接合され得る。内側接触プレート54は、例えば、溶接継目として参照番号88で表されるように、周囲軸受面76又は環状停止部と環状に溶接されてもよく、又は溶接継目として参照番号90で表されるように、円周環状壁48に半径方向に溶接されてもよい。レーザ溶接が、好ましい溶接方法と考えられる。
【0089】
図9を参照すると、内側接触プレート54は、半径方向環状溝92内に押し込み式係止(positively locked)又は形状係止され得る。また、この実施形態では、熱橋84は、外側カバープレート42の周縁部領域44のみにつくられる。
【0090】
図10を参照すると、間隙若しくは空洞78又は断熱層80は、2つ以上の段部によって形成され得る。この目的のために、外側カバープレート42は、その下側42aに、比較的大きい直径dを有する第1の凹部70と、より小さい直径dlを有する第2の中央凹部94とを有し得る。したがって、断熱層80は、環状部分96において厚さH’を有し、中央部分98において厚さHを有し、厚さHは、厚さH’よりも大きい。内側接触プレート54内の熱伝導による摩擦熱の主に半径方向の放散に加えて、これは、内側接触プレート54から外側カバープレート42の中央又は軸付近領域82への熱伝達の低減を提供する。
【0091】
図11を参照すると、内側接触要素54は湾曲しており、外側カバープレート42から離れて延在する中央凸部分又はドーム102を有し、ドームの下に中央空洞78又は断熱層80を形成する。またこの実施例でも、熱橋84は、外側カバープレート42の周縁部領域44に位置付けられる。この実施例では、空洞78又は断熱層80の直径dは、押しボタン36の内径Diの約80%に相当する。
【0092】
図12を参照すると、内側接触要素54は、押しボタン36と同様にハット型であり得る。この実施例では、内側接触要素54は、回転軸38を横断する平面に延在するカバープレート104と、カバープレート104の周縁部106に隣接し軸方向下方に延在する周囲環状壁108とを有する。周囲環状壁108の下端部には、周方向かつ半径方向外側に延在するカラー110が配置されている。円周カラー110は、押しボタン36の周囲環状壁48の環状停止部112に下から軸方向に当接する。したがって、円周環状停止部112は、水平方向外側カバープレート42の下側42aに対して軸方向に下方にオフセットされている。これもまた、内側接触要素54は、押しボタン36内に緩く挿入されてもよいし、環状停止部112に溶接されてもよいし、圧入されてもよいし、又は押し込み式係止でラッチされてもよい。カラー110と環状停止部112との間につくられた熱橋84の軸方向オフセット、及びそれと共に内側接触要素54と押しボタン36との間の熱橋84に起因して、押しボタン36への熱放散は、更により半径方向外側に、加えて軸方向下方に変位される。これは熱輸送を遅らせ、熱橋84を介して押しボタン36に伝達される熱エネルギーが、押しボタン36の中央領域82又は外側カバープレート42の上側42bから更に離れるように広がる。
【0093】
この実施例では、断熱層80を形成する内側接触要素54と押しボタン36との間の間隙又は空洞78はまた、2つのエリア、すなわち、回転軸38を横断する平面に延在するベース部分114と、周囲環状壁48と108との間に位置付けられるジャケットエリア又はシェル部分116とを有する。換言すれば、この実施例では、断熱層80もハット型である。
【0094】
任意選択的に、外側カバープレート42は、薄肉部71を有し得、この薄肉部71は、断熱層80の厚さHを増大させ、変形に対する安全マージンを形成する。
【0095】
図12の実施形態では、押しボタン36の外側ハット型部分は一体的に形成され、環状停止部112は、環状壁48の環状凹部として設けられる。
【0096】
図13を参照すると、環状停止部112は、従来の押しボタン36に挿入されたスペーサリング118によって提供され得る。この実施形態は、押しボタン36の設計を従来のハンドピースに対して変更する必要がないという利点を有し、これは生産において利点を提供し得る。
【0097】
図12及び図13を参照すると、これらの実施例では、内側接触要素54は金属旋削部品として作られている。図12及び図13の実施形態では、内側接触要素54と押しボタン36との間の熱橋84は、押しボタン36の半径方向周囲部37にも位置付けられるが、外側カバープレート42には位置付けられず、円周環状壁48のエリア、すなわち押しボタン36のジャケットエリアに位置付けられる。
【0098】
図14を参照すると、内側接触要素又は内側接触プレート54における熱放散は、内側接触要素54の凹部122によって更に低減され得る。この例示的な実施形態では、内側接触プレート54は、プランジャヘッド62を作動させる中央作動部分124と、周囲支持リング126とを有する。中央作動部分124は、複数のスポーク128、この実施例では4つのスポーク128によって周囲支持リング126に接続される。凹部122は、スポーク128間に位置付けられる。この実施例では、スポーク128は、半径方向に真っ直ぐではなく湾曲しており、中央作動部分124から周囲支持リング126への熱流I130の経路が長くなる。硬化マルテンサイト系ステンレス鋼を内側接触プレート54に使用すると、プランジャヘッド62との摩擦係数が低いことに起因する利点を有するが、内側接触要素又は内側接触プレート54が、オーステナイト系(耐酸性かつ耐錆性)鋼から又はセラミック材料から作られてもよいことを除外するものではない。セラミック材料は、典型的にはより高い摩擦係数を提供するが、内側接触プレート54と押しボタン36との間の熱橋84が押しボタン36の半径方向周囲部37に位置付けられる場合には、これは許容可能であり得る。
【0099】
図15を参照すると、供給ホース4は、歯科治療ユニット140のベースユニット6に接続されており、歯科治療ユニット140はまた、治療チェア142及び患者照明144も含む。ベースユニット6は、いくつかの、この実施例では2つの歯科用ハンドピース10、10’に、圧縮空気、電気エネルギー、光、及び/又は水を供給する。例えば、第1のハンドピース10は、モータ駆動式又は電気式ハンドピースであり、第2のハンドピース10’は、流れ駆動式又は空気駆動式ハンドピースである。ベースユニット6はまた、スプレービット(sprayvit)146及び超音波スケーラ148も供給する。
【0100】
上又は下、左又は右などの方向情報が絶対的なものではなく、押しボタン36が上に位置付けられ、クランプされた歯科用器具8が下に位置付けられる、歯科用ハンドピース10及び押しボタン36の図に示される向きを指すことに留意されたい。
【0101】
上述の実施形態は例示的なものとして理解されるべきであり、本発明はこれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲から逸脱することなく多くの方法で変更され得ることが当業者には明らかである。更に、特徴は、明細書、特許請求の範囲、図面に開示されていてもいなくても、他の特徴と共に記載されている場合でも、本発明の本質的な構成要素を個々に定義するものであることが理解されよう。したがって、すべてのそのような特徴は、別個にかつ互いに独立して開示されると理解されたい。各実施形態の特徴の説明は、他の実施形態の各々にも適用される。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 回転可能な歯科用器具を受容するためのヘッド(12)を有する歯科用ハンドピース(10)であって、
前記ヘッド(12)の構成部品を収容するためのハウジング(14)と、
クランプされた歯科用器具が前記ヘッド(12)内で回転可能に駆動可能となるように前記歯科用器具をクランプするための、前記ハウジング(14)によって収容された器具クランプ装置(16)と、
前記歯科用器具を前記器具クランプ装置(16)に挿入し、前記歯科用器具を前記器具クランプ装置(16)から取り外すために、前記回転可能な歯科用器具の前記クランプを解放するためのトリガ機構と、
前記トリガ機構を作動させるための手動操作可能な押しボタン(36)と
を備え、
前記押しボタン(36)は、外側カバープレート(42)と内側接触要素(54)を有する二重壁であり、前記押しボタン(36)を作動させるために、前記外側カバープレート(42)の上側(42b)は、使用者によって付勢に抗して押圧可能であり、それによって、前記内側接触要素(54)の下側(54a)によってアクチュエータ(18)を作動させて前記トリガ機構を作動させ、断熱層(80)が、前記外側カバープレート(42)と前記内側接触要素(54)との間に延在し、前記内側接触要素(54)から前記外側カバープレート(42)の熱分離をもたらす、歯科用ハンドピース(10)。
[2] 前記断熱層(80)は、前記外側カバープレート(42)の下側(42a)と前記内側接触要素(54)の上側(54b)との間の前記回転可能な歯科用器具の回転軸(38)を横断する平面に延在する断熱間隙(78)の形態で設けられる、
[1]に記載の歯科用ハンドピース(10)。
[3] 前記回転可能な歯科用器具の回転軸(38)を横断する平面の少なくとも一方向における前記断熱層(80)の空間的広がりは、前記押しボタンの直径の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%に相当する、
[1]又は[2]に記載の歯科用ハンドピース(10)。
[4] 前記内側接触要素(54)が接触点(64)において前記回転アクチュエータ(18)に接触したときに前記内側接触要素(54)で発生する摩擦熱が、前記内側接触要素(54)内で前記接触点(64)から主に半径方向外側に放散される、
[1]~[3]のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
[5] 前記内側接触要素(54)及び/又は前記アクチュエータ(18)の材料及び加工は、前記接触要素及び/又は前記アクチュエータが、前記アクチュエータ(18)と前記内側接触要素(54)の前記下側(54a)の前記接触点(64)において、平均表面粗さがRz<3.5μm、好ましくはRz<2.5μm、好ましくはRz=1.5μm+/-1μmの範囲となり、及び/又はプロファイル深さがPt<6μm、好ましくはPt<4.5μm、好ましくはPt=3μm+/-1.5μmの範囲となるように選択される、
[1]~[4]のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
[6] 前記内側接触要素(54)は、30W/(mK)以下、好ましくは10W/(mK)~25W/(mK)の範囲、好ましくは15W/(mK)+/-5W/(mK)の範囲の熱伝導率を有する材料で作られている、
[1]~[5]のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
[7] 前記内側接触要素(54)は、金属、例えば、ステンレスマルテンサイト系合金で作られている、
[1]~[6]のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
[8] 前記内側接触要素(54)は、前記内側接触要素(54)と前記回転アクチュエータ(18)との前記接触点(64)の領域において、1mm以下、好ましくは0.6mm以下、好ましくは0.5mm以下、好ましくは0.1mm~0.6mm、好ましくは0.4mm+/-0.2mmの範囲の厚さ(h)を有する、
[1]~[7]のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
[9] 前記断熱層(80)は、0.5mm以下、好ましくは0.3mm以下、好ましくは0.2mm以下、好ましくは0.01mm~0、2mm、好ましくは0.12mm+/-0.05mmの範囲の厚さ(H)を有する、
[1]~[8]のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
[10] 前記内側接触要素(54)は、前記外側カバープレート(42)とは別個の部品として作られ、接着接合によって、例えば溶接によって、押し込み式係止によって、又はプレス嵌め接続によって、前記外側カバープレート(42)又は前記押しボタン(36)の他の部品に接合される、
[1]~[9]のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
[11] 円周壁(48)が前記外側カバープレート(42)から延在するように、前記押しボタン(36)はハット型であり、前記押しボタン(36)は、前記外側カバープレート(42)又は前記円周壁(48)に環状停止部(76、112)を有し、前記内側接触要素は、前記環状停止部(76、112)上に載っている、
[1]~[10]のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
[12] 前記内側接触要素(54)は、前記外側カバープレート(42)とは別個の部品として作られ、前記内側接触要素(54)は、前記ハット型押しボタン(36)内に緩く位置し、ばね(56)によって前記環状停止部(76)に対して押圧されるか、又は前記内側接触要素(54)は、プレス嵌めによって前記ハット型押しボタン(36)内に押圧されるか、又は前記内側接触要素(54)は、接着接合、例えば溶接によって前記ハット型押しボタン(36)に接合される、
[11]に記載の歯科用ハンドピース(10)。
[13] 前記内側接触要素(54)は、周囲支持リング(126)、中央作動部分(124)、及びスポーク(128)を有し、前記中央作動部分(124)は、スポーク(128)間に凹部(122)が形成されるように、前記スポーク(128)によって前記周囲支持リング(126)に懸架され、例えば、前記スポーク(128)は、半径方向に直線的に延在しない、
[1]~[12]のいずれか一項に記載の歯科用ハンドピース(10)。
[14] 特に[1]~[13]のいずれか一項に記載の、歯科用器具を受容するための歯科用ハンドピース(10)のヘッドに据えられ、歯科用器具をクランプ及び解放するように前記ヘッド(12)内のトリガ機構を作動させるために適合された押しボタン(36)であって、
前記押しボタン(36)は、外側カバープレート(42)と内側接触要素(54)を有する二重壁であり、前記押しボタン(36)を作動させるために、前記外側カバープレート(42)の上側(42b)は、使用者によって付勢に抗して押圧可能であり、それによって、前記押しボタンが前記歯科用ハンドピース(10)の前記ヘッド(12)に据えられているとき、前記内側接触要素(54)の下側(54a)によってアクチュエータ(18)を作動させて前記トリガ機構を作動させ、
断熱層(80)が、前記外側カバープレート(42)と前記内側接触要素(54)との間に延在し、前記内側接触要素(54)から前記外側カバープレート(42)の熱分離をもたらす、押しボタン(36)。
[15] 歯科治療ユニット(140)であって、1つ又は複数の歯科用ハンドピース(10、10’)に圧縮空気、電気エネルギー、光、又は水の少なくとも1つを供給するベースユニット(6)と、連結部品(2)を有する少なくとも1つの供給ホース(4)と、前記連結部品(2)に連結することができる[1]~[14]のいずれか一項に記載の少なくとも1つの歯科用ハンドピース(10、10’)とを備える、歯科治療ユニット(140)。
【符号の説明】
【0102】
2…連結部品
4…供給ホース
6…ベースユニット
8…歯科用器具
10…歯科用ハンドピース
11…ロッド状ハンドル
12…ヘッド
14…ハウジング
16…器具クランプ装置
18…アクチュエータ、プランジャ、リリースピン、又はタペット
20…玉軸受
22…玉軸受受容スリーブ
24…ホルダ
30…カバーシステム
32…ねじ付きスリーブ
34…雌ねじ
36…押しボタン
37…半径方向周囲部
38…回転軸
42…外側カバープレート
42a…外側カバープレートの下側
42b…外側カバープレートの上側
44…周縁部領域
48…円周又は環状壁
50…環状壁の止めリング
52…ねじ付きスリーブの止めリング
53…環状周囲領域
54…内側接触要素、内側接触プレート
54a…下側
54b…上側
55…環状延長部
56…ばね
57…中央薄肉部
58…エンドプレート
60…アイドルストローク
62…アクチュエータ/プランジャヘッド
64…接触点
66…外側カラー
70…凹部
71…薄肉部
72 円周ショルダ又はレッジ
74…環状段部
76…周囲軸受面、環状停止部
77…周囲ショルダ又はレッジ
78…間隙、空洞
80…断熱層
82…押しボタンの中央領域
84…熱橋
85…環状接触領域
86…環状締まり嵌め
88…溶接継目
90…溶接継目
92…環状溝
94…第2の中央凹部
96…環状部分
98…断熱層の中央部分
102…ドーム
104…カバープレート
106…カバープレートの周縁部
108…周囲環状壁
110…カラー
112…環状停止部
114…断熱層のベース部分
116…シェル部分
118…スペーサリング
122…凹部
124…中央作動部分
126…周囲支持リング
128…スポーク
130…熱流
140…歯科治療ユニット
142…治療チェア
144…患者照明
146…スプレービット
148…超音波スケーラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15