(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患及び皮膚老化を処置するための組成物ならびに酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の診断。
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9728 20170101AFI20240805BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240805BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240805BHJP
A61P 17/08 20060101ALI20240805BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240805BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240805BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240805BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240805BHJP
【FI】
A61K8/9728
A61P17/02
A61P17/06
A61P17/08
A61P29/00
A61P35/00
A61Q19/00
A61K35/74 A
(21)【出願番号】P 2021526737
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2019081546
(87)【国際公開番号】W WO2020099663
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-08
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521208778
【氏名又は名称】エス-バイオメディック・エン.ヴェー.
【氏名又は名称原語表記】S-BIOMEDIC N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ロード,ロルフ
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/073651(WO,A1)
【文献】GIZEM ERTURK; ET AL,HIGHLY SENSITIVE DETECTION AND QUANTIFICATION OF THE SECRETED BACTERIAL BENEVOLENCE 以下備考,PLOS ONE,2018年03月,VOL:13,NR:3,PAGE(S):E0193754(1-13),https://doi.org/10.1371/journal.pone.0193754,FACTOR ROXP USING A CAPACITIVE BIOSENSOR: A POSSIBLE EARLY DETECTION SYSTEM FOR OXIDATIVE 以下省略
【文献】MARIA ALLHORN; ET AL,A NOVEL ENZYME WITH ANTIOXIDANT CAPACITY PRODUCED BY THE UBIQUITOUS SKIN COLONIZER 以下備考,SCIENTIFIC REPORTS,2016年11月02日,VOL:6, NR:1,PAGE(S):36412(1-12),https://dx.doi.org/10.1038/srep36412,PROPIONIBACTERIUM ACNES
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
KOSMET(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における皮膚老化を防止する又は低下させるための、RoxP(プロピオニバクテリウム・アクネスのラジカルオキシゲナーゼ)を分泌する生きたキューティバクテリウム・アクネス株を含む組成物の美容的な使用。
【請求項2】
・ C.アクネス株がRoxPを内因性に分泌し;
・ C.アクネス株が遺伝的に操作されておらず;
・ 前記組成物が、RoxPを分泌する2つ又はそれ以上のC.アクネス株を含み;
・ C.アクネス株が、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株が個別に又は集合的に、定常期において測定された場合に少なくとも1μg/mL培地のRoxPを分泌し;
・ C.アクネス株の、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つの内因性RoxPプロモーターが、TGCTATACTもしくはTGCTACAC
Tより選択される配列を有する-10ボックス、及び/又はACTTCGATもしくはACTTCAATより選択される配列を有する-35ボックスを含み;
・ C.アクネス株が、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つが、各々が独立して、I型、II型、又はIII型
であるか、
又はC.アクネス株が、又は2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つが、各々が独立して、IA型、IB型、又はIII型であり;並びに/あるいは
・ C.アクネス株が、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つが、各々が独立して、SLST A型、C型、G型、H型、L型、又はK型である、
請求項1に記載の美容的な使用。
【請求項3】
・ C.アクネス株が、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株が、個別に又は集合的に、少なくとも100コロニー形成単位(CFU)/グラムの組成物の量で前記組成物中に存在しており;及び/あるいは
・ 前記組成物が皮膚への局所投与のために形成されて
いる、
請求項1又は2に記載の美容的な使用。
【請求項4】
前記
皮膚への局所投与のために形成されている組成物が、ゲル、クリーム、軟膏、ローション、液滴、エアゾールスプレーを含むスプレー、泡、又は粉末であ
る、
請求項3に記載の美容的な使用。
【請求項5】
前記組成物が、マスク、パッド、パッチ、2チャンバーデバイス、又はメイクアップにより含まれる、
請求項
4に記載の
美容的な使用。
【請求項6】
対象における酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の防止又は処置における使用のための、RoxP(プロピオニバクテリウム・アクネスのラジカルオキシゲナーゼ)を分泌する生きたC.アクネス株を含む医薬組成物。
【請求項7】
酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患が、光線角化症(AK)、基底細胞癌(BCC)、扁平上皮癌(SCC)、頭部粃糠疹、脂漏性皮膚炎、ざ瘡、炎症、皮膚炎、乾癬、湿疹、酒さ、蕁麻疹、及び白斑を含む群より選択される、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
・ C.アクネス株がRoxPを内因性に分泌し;
・ C.アクネス株が遺伝的に操作されておらず;
・ 前記組成物が、RoxPを分泌する2つ又はそれ以上のC.アクネス株を含み;
・ C.アクネス株が、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株が個別に又は集合的に、定常期において測定された場合に少なくとも1μg/mL培地のRoxPを分泌し;
・ C.アクネス株の、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つの内因性RoxPプロモーターが、TGCTATACTもしくはTGCTACAC
Tより選択される配列を有する-10ボックス、及び/又はACTTCGATもしくはACTTCAATより選択される配列を有する-35ボックスを含み;
・ C.アクネス株が、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つが、各々が独立して、I型、II型、又はIII型
であるか、又はC.アクネス株が、又は2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つが、各々が独立して、IA型、IB型、又はIII型であり;並びに/あるいは
・ C.アクネス株が、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つが、各々が独立して、SLST A型、C型、G型、H型、L型、又はK型である、
請求項
6又は
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
・ C.アクネス株が、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株が、個別に又は集合的に、少なくとも100コロニー形成単位(CFU)/グラムの組成物の量で前記組成物中に存在しており;及び/あるいは
・ 前記組成物が皮膚への局所投与のために形成されて
いる、
請求項6~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
局所投与のために形成されている組成物が、ゲル、クリーム、軟膏、ローション、液滴、エアゾールスプレーを含むスプレー、泡、又は粉末であ
る、
請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物が、マスク、パッド、パッチ、2チャンバーデバイス、又はメイクアップにより含まれる、
請求項
10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
対象において皮膚老化を防止する又は低下させるための、RoxP(プロピオニバクテリウム・アクネスのラジカルオキシゲナーゼ)又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物の美容的な使用。
【請求項13】
・ 前記組成物が、RoxPを分泌す
る培養された生きたC.アクネス株の上清又はその上清のRoxP濃縮画分を含み;
・ 前記組成物が、少なくとも1×10
-9MのRoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含み;及び/あるいは
・ 前記組成物が皮膚への局所投与のために形成されて
いる、
請求項12記載の美容的な使用。
【請求項14】
皮膚への局所投与のために形成されている組成物が、ゲル、クリーム、軟膏、ローション、液滴、エアゾールスプレーを含むスプレー、泡、又は粉末であ
る、請求項13に記載の美容的な使用。
【請求項15】
前記組成物が、マスク、パッド、パッチ、2チャンバーデバイス、又はメイクアップにより含まれる、
請求項
14に記載の美容学的な使用。
【請求項16】
酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の防止又は処置における使用のための、RoxP(プロピオニバクテリウム・アクネスのラジカルオキシゲナーゼ)又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む医薬組成物。
【請求項17】
酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患が、AK、BCC、SCC、頭部粃糠疹、脂漏性皮膚炎、ざ瘡、炎症、皮膚炎、乾癬、湿疹、酒さ、蕁麻疹、及び白斑を含む群より選択される、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
・ 前記組成物が、RoxPを分泌す
る培養された生きたC.アクネス株の上清又はその上清のRoxP濃縮画分を含み;
・ 前記組成物が、少なくとも1×10
-9MのRoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含み;及び/あるいは
・ 前記組成物が皮膚への局所投与のために形成されて
いる、
請求項16又は17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
皮膚への局所投与のために形成されている組成物が、ゲル、クリーム、軟膏、ローション、液滴、エアゾールスプレーを含むスプレー、泡、又は粉末であ
る、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記組成物が、マスク、パッド、パッチ、2チャンバーデバイス、又はメイクアップにより含まれる、
請求項
19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
対象がRoxP(プロピオニバクテリウム・アクネスのラジカルオキシゲナーゼ)もしくはRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得うるか否かを決定するための方法であって、対象からの皮膚サンプル中のRoxPの量又はC.アクネスの量を決定することを含む、方法。
【請求項22】
以下を含む、請求項
21に記載の方法:
(a)対象からの皮膚サンプル中のRoxPの量又はC.アクネスの量を決定すること;
(b)決定されたRoxPの量又は決定されたC.アクネスの量を参照値と比較すること(前記参照値は、RoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与の利益の公知の指標を表す);
(c)前記基準値からの、決定されたRoxPの量又は決定されたC.アクネスの量の偏差又は無偏差を見出すこと;
(d)前記の偏差又は無偏差の知見を、対象がRoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得うるか否かの特定の指標に帰すること。
【請求項23】
対象からの皮膚サンプル中の2つ又はそれ以上のC.アクネス型、MLST型、SLST型、又は株の相対量を決定することをさらに含む、請求項
21又は
22に記載の方法。
【請求項24】
対象が、対象からの皮膚サンプル中のRoxP(プロピオニバクテリウム・アクネスのラジカルオキシゲナーゼ)の量又はC.アクネスの量を決定することを含む対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を診断するための方法により、酸化ストレスに関連付けられる疾患を有する、又は有するリスクがあるとして選択されている、対象における酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の防止又は処置における使用のための、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む医薬組成物。
【請求項25】
対象が、対象からの皮膚サンプル中のRoxP(プロピオニバクテリウム・アクネスのラジカルオキシゲナーゼ)の量又はC.アクネスの量を決定することを含む対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を診断するための方法により、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、又は有するリスクがあるとして選択されている、対象における酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の防止又は処置における使用のための、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む医薬組成物。
【請求項26】
前記方法が、
(a)対象からの皮膚サンプル中のRoxPの量又はC.アクネスの量を決定すること;
(b)決定されたRoxPの量又は決定されたC.アクネスの量を基準値と比較すること(前記基準値が、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の公知の診断を表す);
(c)前記基準値からの、決定されたRoxPの量又は決定されたC.アクネスの量の偏差又は無偏差を見出すこと;
(d)前記の偏差又は無偏差の知見を、対象における酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の特定の診断に帰すること
を含む、請求項
24又は
25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記方法が、対象からの皮膚サンプル中の2つ又はそれ以上のC.アクネス型、MLST型、SLST型、又は株の相対量を決定することをさらに含む、請求項
24~
26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患が、AK、BCC、SCC、頭部粃糠疹、脂漏性皮膚炎、ざ瘡、炎症、皮膚炎、乾癬、湿疹、酒さ、蕁麻疹、及び白斑を含む群より選択される、請求項
24~
27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
請求項
21~
23のいずれか一項に記載の方法により、RoxP(プロピオニバクテリウム・アクネスのラジカルオキシゲナーゼ)を分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得うる対象として選択されている対象に投与するための、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む医薬組成物。
【請求項30】
請求項
21~
23のいずれか一項に記載の方法により、RoxP(プロピオニバクテリウム・アクネスのラジカルオキシゲナーゼ)の投与から利益を得うる対象として選択されている対象に投与するための、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
【0002】
本発明の態様は広範に医療的及び美容的な分野中にあり、より具体的には、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の予防的又は治療的処置のための、あるいは皮膚老化の防止又は低下のための方法、使用、及び組成物に関する。本発明はさらに、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を診断するための、又は本発明により開示される抗酸化組成物の投与から利益を得る可能性が高い対象を特定するための方法、ならびに関連する個別化医療及びコンパニオン診断アプローチに関する。
【0003】
背景
【0004】
ヒトの皮膚は、酸化ストレス及びフリーラジカル、例えば、とりわけ、通常の代謝反応及び空気、太陽、又は人工UV照射、環境汚染物質、ならびに物理的及び/又は化学的薬剤(例、化粧品)への持続的な曝露から由来する大量の活性酸素種(ROS)などに常に曝露されている。
【0005】
生理学的条件下では、還元薬剤(グルタチオンS-トランスフェラーゼ及びグルタチオンレダクターゼなど)の内因性産生によって、過剰な酸化ストレスからヒトの皮膚は保護される。病的条件下では、しかし、ROSの産生が大きくなり過ぎて、結果的に、例えば、乾癬(Kadam et al. 2010 Indian J Clin Biochem 25:388-392)又は皮膚癌(Sander et al. 2003 Br J Dermatol 148:913-922)の病態形成に寄与しうる。非黒色腫皮膚癌(扁平上皮癌及び基底細胞癌を含む)は、酸化ストレスだけでなく、しかし、また、損なわれた内因性の抗酸化機能のエビデンスの増加を呈する(Sander et al. 2003)。
【0006】
フリーラジカル(例えばROSなど)により起こされる酸化的損傷も、一般的に、特に皮膚の物理的老化の主な原因である。皮膚には酸化的損傷から皮膚を保護する精巧な抗酸化システムが備わっているが、天然抗酸化物質のプールは加齢とともに損なわれる、又は酸化ストレス(例、過剰なUV曝露による)により圧倒されうる。フリーラジカルはコラーゲン及びエラスチンを攻撃し、構造破壊を起こしうる。加齢に伴い、蓄積されたフリーラジカル効果は細胞機能を遅くし始め、従って、身体の自己修復能力を低下させる。フリーラジカル攻撃は、最終的に皺、皮膚のたるみ、及び「シミ」に導く。
【0007】
酸化ストレス及び皮膚に対するその有害な効果を、治療的な状況及び美容的な状況の両方において防止する又は低下させるために、追加又は改善された手段を提供する進行中の必要性が存在する。
【0008】
本発明者らは以前に、C.アクネス単離菌により豊富に発現されるタンパク質RoxP(プロピオニバクテリウム・アクネスのラジカルオキシゲナーゼ)を特徴付け、RoxPが特定のインビトロ条件において抗酸化活性を示し、インビトロの好気的設定におけるCアクネ成長及びエクスビボのヒト皮膚外植片のコロニー形成を支持することができることを示した(Allhorn et al. 2016 Sci Rep 6:36412)。
【0009】
発明の概要
【0010】
本発明は、少なくとも部分的には、RoxPが治療的及び美容的に関連するモデルシステムにおいて酸化的損傷からヒトの皮膚を保護する、ならびにRoxPの皮膚量の低下がヒトにおける酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患と相関するという予想外の発見に基づく。これらの観察によって、RoxP又はRoxPを分泌するC.アクネス細菌が、皮膚における病理学的又は生理学的酸化ストレスプロセスに対処することを目的とした治療的又は美容的介入のための信頼できる手段として初めて特定された。
【0011】
したがって、一態様は、対象において皮膚老化を防止する又は低下させるために、RoxP(プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)のラジカルオキシゲナーゼ)を分泌する生きたキューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes)株を含む組成物の美容的な使用を提供する。
【0012】
関連する態様は、対象において皮膚老化を防止する又は低下させるための美容的方法を提供し、この方法は、対象の皮膚に、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む組成物の美容的に効果的な量を投与することを含む。
【0013】
別の態様は、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置する方法における使用のための、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む組成物を提供する。
【0014】
関連する態様は、それを必要とする対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置するための方法を提供し、この方法は、予防的又は治療的に効果的な量の、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む組成物を対象の皮膚に投与することを含む。別の関連する態様は、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置する方法における使用のための薬物の製造のための、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む組成物の使用を提供する。さらに関連する態様は、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置するための、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む組成物の使用を提供する。
【0015】
さらなる態様は、対象において皮膚老化を防止する又は低下させるための、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物の美容的な使用を提供する。
【0016】
関連する態様は、対象において皮膚老化を防止する又は低下させるための美容的方法を提供し、この方法は、対象の皮膚に、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはそのフラグメントを含む、化粧的に効果的な量の組成物を投与することを含む。
【0017】
別の態様は、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置する方法における使用のための、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物を提供する。
【0018】
関連する態様は、それを必要とする対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置するための方法を提供し、この方法は、対象の皮膚に、予防的又は治療的に効果的な量のRoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物を投与することを含む。別の関連する態様は、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置する方法における使用のための薬物の製造のための、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物の使用を提供する。さらに関連する態様は、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置するための、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物の使用を提供する。
【0019】
さらなる態様は、対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を診断するための、あるいは対象がRoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネスの投与から利益を得るか否かを決定するための方法を提供し、この方法は、対象からの皮膚サンプル中のRoxPの量又はC.アクネスの量を決定することを含む。関連する態様は、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有すること又は有するリスクがあることが疑われる、あるいはRoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得ることが疑われる対象からの皮膚サンプル中のRoxPの量又はC.アクネスの量を決定することを含む方法を提供する。
【0020】
そのような診断方法はまた、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する又は有するリスクがあるとして、あるいはRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から又はRoxPの投与から利益を得るとして対象を選択するために用いることができる。そのように選択された対象は、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与あるいはRoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントの投与を含む、本明細書中に開示する予防的又は治療的介入を受けることができる。そのように選択された対象はまた、それぞれの酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を処置するために有用な他の予防的又は治療的介入を受けることができる。
【0021】
本発明のこれらの及びさらなる態様ならびに好ましい実施形態を、以下のセクションにおいて及び添付の特許請求の範囲において記載する。添付の特許請求の範囲の対象を、本明細書中に具体的に組み入れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本願の教示を以下の図面により例証するが、それらは例証的としてだけ見なすべきであり、特許請求の範囲を任意の方法で限定しない。
【
図1】
図1:異なるC.アクネス系統型におけるroxP発現。RNAを、I型株(n=6)、II型株(n=5)、及びIII型株(n=2)を代表する、対数期及び/又は定常期のC.アクネス培養物から抽出した。roxP mRNAのqPCR定量化を、生物学的及び技術的な複製物において実行し、gapdh転写物に対して標準化し、及びダブルデルタCq分析を使用して評価した。それらのそれぞれの系統型を用いてグループ化し、統計的有意性を、その後、スチューデントのt検定を通じて決定した。***p<0.001、****p<0.0001。
【
図2】
図2:C.アクネスの15の異なる株を、嫌気性(実線)又は好気性(破線)条件下で5~7日間にわたりTSB中で培養した。特定の株は、(A)有酸素成長と無酸素成長の間に有意差を示さなかった、(B)主に後期対数期において好気性成長を好んだ、又は(C)好気性条件において増加した遅延時間を有した。黒色で着色された線は、最も一般的なRoxPホモログを発現する株を表し、及び灰色の線は、それほど一般的でないタンパク質変異体を発現する株を表す。Y軸はOD
600を記載し、及びX軸は時間(日)を表す。
【
図4】
図4:有害条件下でのRoxP抗酸化活性。ABTSラジカルカチオンを低下させるRoxPの能力(734nmでの吸光度における減少により表示する)を、複数の設定においてテストした。リン酸ナトリウム緩衝液(20mM、pH 7.4)中の異なる濃度の組換えRoxP(rRoxP)(0.2~3.2μM)(A)、塩溶液とインキュベートしたrRoxP(2.7μM)(B)、事前に加熱したrRoxP(2.7μM)(RTから98℃までの範囲の温度で20分間にわたりインキュベートし、活性測定の前に周囲温度まで冷却した)(C)、又は室温で2週間まで保存したrRoxP(2μM)(D)を、事前に形成されたABTS
+ラジカルの溶液に加えて、吸光度を30秒後に記録した。
【
図5】
図5:ヒト単球(A)又はケラチノサイト(B)細胞株を、パラコートの添加を通じて酸化ストレスに曝露し、後に直ちにRoxPを加えた。細胞は、細胞生存率を、MTTアッセイを通じて分析する前に、24時間(ケラチノサイト)又は48時間(単球)にわたりインキュベートした。パラコート(C)又はパラコート+RoxP(D)後の単球の代表的な顕微鏡での可視化を実証する。統計値を、スチューデントのt検定を使用して算出した。
【
図6】
図6:健常な皮膚(コントロール、n=18)、光線角化症(AK、n=18)、又は基底細胞癌(BCC、n=18)のいずれかを伴う個人を、病的(罹患)及び健常(非罹患)領域で拭き取った。RoxPの絶対量を、RoxP-MIP静電容量式バイオセンサー測定により決定した。全ての個々のデータポイントが分析中に含まれた。
【
図7】
図7:4つの群(A)において最も豊富な5つの属及び最も豊富な4つの種の相対的な存在量の箱ひげ図。ひげは5~95%パーセンタイルを示し、中央値を垂直線として示す。LefSe分析に基づく差次的に豊富な分類群を*で標識する。(B)AK及びBCCにおけるC.アクネス系統型の相対的な存在量の決定。C.アクネスII型の存在量は、コントロールと比較し、AK罹患皮膚部位において増加する(15%から39%に増加)のに対し、IA型株は減少する(70%から45%まで)。
【
図8】
図8:8つのC.アクネス株のroxP上流領域のアラインメント。これらの株は、C.アクネス株集団全体をカバーする、8つの優位なroxP上流配列を表す(
図9を参照のこと)。上流配列は、下線が引かれた推定roxPプロモーターを含む。このプロモーターは、ツールBPROM(Solovyev and Salamov 2011, Automatic Annotation of Microbial Genomes and Metagenomic Sequences. In Metagenomics and its Applications in Agriculture, Biomedicine and Environmental Studies (Ed. R.W. Li), Nova Science Publishers, p. 61-78)を使用して見出された(信頼値(LDF(線形判別関数)スコアを株名の後に括弧中に与える)。また、Lin et al.(2013 BMC Genomics 14:620)により同定されたC.アクネス株コンセンサスプロモーター配列(-10領域:T.A.n.n.n.T及び-35領域:G/A.n.T/G.T/G.n.G)を比較した:全てのミスマッチ塩基は太字のイタリック体である。SLST A型及びC型を伴うIA型株は、コンセンサスプロモーターに対する完全マッチを伴うroxP上流配列を保有する。09-9株及びATCC 11828株により表されるII型株は、-35領域中にミスマッチを保有する。
【
図9】
図9:推定プロモーターを含むroxP上流領域の分析。155の配列決定されたC.アクネスゲノムを、roxP上流領域(200nt)についてスクリーニングした。全てのC.アクネスゲノムがこの領域を保有していた。8つの優位な配列が見出された:各々の個々のroxP上流配列を保有する代表的な株を示す。それぞれの上流領域を系統的に比較した。大半の配列決定されたゲノムが、PA_12.1.L1株:81ゲノムにより表されるバージョンを保有していた;他の株は:PA_15.1.R1、24ゲノム;09-109、8ゲノム;KPA171202、11ゲノム;PMH5、4ゲノム;523、3ゲノム;09-9、2ゲノム;ATCC_11828、20ゲノムを表した。株のそれぞれの型名IA、IB、II、IIIならびにSLST A型、C型、G型、H型、K型、L型を図中に与える。II型株は異なるクラスターにおいて見出すことができる。
【
図10】
図10.C.アクネスのRoxP配列の系統樹。研究されたC.アクネス株からのRoxPのアミノ酸配列を、RoxPを3つの主な型に分離するClustalWアルゴリズムを使用して整列させた。第1の型はPMH-7株及びPMH-5株(両方が系統型IIIに属する)からのRoxPを含み、第2の型はPA_12_1_R1株、PA_21_1_L1株、PA_12_1_L1株、PA_15_1_R1株、KPA171202株、09-23株、PA_30_2_L1株(1つを除く全てが系統型Iに属する;09-23株は系統型IIに属する)からのRoxPを含み、第3の型はAD24株、10-43株、09-09株、09-323株、及び11-79株(全てが系統型IIに属する)からのRoxPを含んだ。
【
図11】
図11.RoxPベースの分子インプリントクリオゲルマトリックスを使用した、細菌上清からの、高純度へのRoxPの親和性精製。(A)C.アクネス株II型株AD24からの硫酸アンモニウム沈殿(80%)及び再緩衝(100mMリン酸ナトリウムpH7.0)上清を、RoxPベースの分子インプリントクリオゲルマトリックス上で泳動した。フロースルーを収集し、結合したタンパク質を、500mMイミダゾールを用いて溶出した。PageRuler(商標)Prestained Protein Ladder(Thermo Scientific)を分子量決定因子として使用した。(B)元のゲル。
【
図12】
図12:静電容量式バイオセンサーを使用した皮膚スワブサンプル中のRoxP濃度の決定のための較正曲線。皮膚又は他の固体表面に適用されない、通気された皮膚スワブの内容物を、広範な濃度のRoxPを補充した10mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.0中で希釈した。サンプルをシステム中に注入し、結果として生じる静電容量における変化を対数タンパク質濃度に対してプロットした。
【
図13】
図13:BCCを伴う患者におけるRoxPの保有率。基底細胞癌(灰色)又は光線角化症(黒色)のいずれかを伴う個体を、皮膚の病的(罹患)及び健常(非罹患)領域で拭き取った。RoxPの絶対量を、RoxP-MIP静電容量式バイオセンサー測定により決定した。分析は、2つの一致するデータポイントを成功裏に計算することができた個体だけを含む。
【
図14】
図14:4つの群:AKC(光線角化症:健常な皮膚部位)、AKS(光線角化症:罹患した皮膚部位)、BCCC(基底細胞癌:健常な皮膚部位)、及びBCCS(基底細胞癌:罹患した皮膚部位)において最も豊富な属(「他の」群においてクラスター化された全ての他の属)の相対的な存在量。
【
図15】
図15:UVストレスに曝露された、再構成されたヒト表皮(RHE)の形態評価。(A)陰性コントロール1‐RoxP濃縮C.アクネスの上清を伴わないストレスのないRHE、(B)陰性コントロール2‐10% v/vのC.アクネスの上清を伴うストレスのないRHE、(C)陽性コントロール1‐UVを用いたストレスのあるRHE、(D)テスト1‐10% v/vのRoxP濃縮C.アクネスの上清の存在におけるUVを用いたストレスのあるRHE。
【
図16】
図16:UVストレスに曝露されたRHEのDNA損傷/CPD評価。(A)陰性コントロール1‐RoxP濃縮C.アクネスの上清を伴わないストレスのないRHE、(B)陰性コントロール2‐10% v/vのRoxP濃縮C.アクネスの上清を伴うストレスのないRHE、(C)陽性コントロール1‐UVを用いたストレスのあるRHE、(D)テスト1‐10% v/vのRoxP濃縮C.アクネスの上清の存在におけるUVを用いたストレスのあるRHE、(E)(A)~(D)において示す結果の定量化。
【
図17】
図17:UVストレスに曝露されたRHEのDNA損傷/8-OHdG評価。(A)陰性コントロール1‐RoxP濃縮C.アクネスの上清を伴わないストレスのないRHE、(B)陰性コントロール2‐10% v/vのRoxP濃縮C.アクネスの上清を伴うストレスのないRHE、(C)陽性コントロール1‐UVを用いたストレスのあるRHE、(D)テスト1‐10% v/vのRoxP濃縮C.アクネスの上清の存在におけるUVを用いたストレスのあるRHE、(E)(A)~(D)において示す結果の定量化。
【
図18】
図18:UV又はオゾンストレスに曝露されたRHEのシステム解毒評価(GPx分析)。陰性コントロール1‐RoxP濃縮C.アクネスの上清を伴わないストレスのないRHE、陰性コントロール2‐10% v/vのRoxP濃縮C.アクネスの上清を伴うストレスのないRHE、陽性コントロール1‐UVを用いたストレスのあるRHE、テスト1‐10% v/vのRoxP濃縮C.アクネスの上清の存在においてUVを用いたストレスのあるRHE、陽性コントロール2‐オゾンを用いたストレスのあるRHE、テスト2‐10% v/vのRoxP濃縮C.アクネスの上清の存在においてオゾンを用いたストレスのあるRHE。
【
図19】
図19:UVストレスに曝露されたRHEのアポトーシス評価(活性カスパーゼ3)評価。(A)陰性コントロール1‐RoxP濃縮C.アクネスの上清を伴わないストレスのないRHE、(B)陰性コントロール2‐10% v/vのRoxP濃縮C.アクネスの上清を伴うストレスのないRHE、(C)陽性コントロール1‐UVを用いたストレスのあるRHE、(D)テスト1‐10% v/vのRoxP濃縮C.アクネスの上清の存在におけるUVを用いたストレスのあるRHE、(E)(A)~(D)において示す結果の定量化、バー#1陰性コントロール1、バー#2陰性コントロール2、バー#3陽性コントロール1、バー#4テスト1。
【
図20】
図20:RoxP-ペプチド1(点線の曲線)又はRoxP-ペプチド2(破線の曲線)、及びコントロールとしての水(破線及び点線の曲線)を使用したABTSラジカルカチオンアッセイ。(A)動態分析、(B)濃度依存性のアッセイ。
【
図21】
図21:RoxP-ペプチド1(A)又はRoxP-ペプチド2(B)を使用したORAC(酸素ラジカル吸収能)アッセイ。
【
図22】
図22:RoxPの存在におけるデオキシリボース(TBA-MDA)アッセイにおける532nmでの低下した吸光度により明らかなように、RoxPは・OHラジカルの生成を減少させた(右のバー)。
【
図23】
図23:RoxPは、UV照射及び非照射血漿中の脂質ヒドロペルオキシドレベルを低下させた。
【
図24】
図24:RoxPはFe
3+をFe
2+に還元し、フェナントロリンアッセイにおいてFe
2+の酸化還元状態に影響を及ぼさなかった。
【
図25】
図25:RoxPは、フェロジンアッセイにおいてFe
3+をFe
2+に還元した。
【
図26】
図26:コプロポルフィリンIIIとのRoxP相互作用。
【
図27】
図27:ABTS還元アッセイにおけるフラビン及びRoxP活性。
【
図28】
図28:実施例19に従った試験における処置部位1から6及び照射領域。
【
図29】
図29:RoxPのインビボ試験におけるクロマメーターによる皮膚色a
*(紅斑)(生データ)。
【
図30】
図30:RoxPのインビボ試験におけるクロマメーターによる皮膚色a
*(紅斑)(ベースラインとの差)。
【
図31】
図31:RoxPのインビボ試験におけるSQOOH含量(ng/mg)(生データ)。
【
図32】
図32:RoxPは、ポルフィリンを通じて形成されたラジカルの生成を低下させた。
【0023】
発明の詳細な説明。
【0024】
本明細書中で使用するように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他を指示しない場合、単数及び複数の両方の参照対象を含む。
【0025】
本明細書中で使用する用語「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「で構成される(comprised of)」は、「含んでいる(including)」、「含む(includes)」又は「含んでいる(containing)」、「含む(contains)」と同義であり、包括的又は自由形式であり、追加の非列挙のメンバー、要素、又は方法工程を除外しない。これらの用語はまた、「からなる(consisting of)」及び「本質的にからなる(consisting essentially of)」を包含し、それらは特許用語法において十分に確立された意味を持っている。
【0026】
エンドポイントによる数値範囲の列挙は、それぞれの範囲内に包含される全ての数値及び分数、ならびに列挙されたエンドポイントを含む。これは、それらが、表現「・・・から・・・まで(from…to…)」又は表現「・・・と・・・の間(between…and…)」又は別の表現により導入されているか否かに無関係に、数値範囲に適用される。
【0027】
測定可能な値(例えばパラメーター、量、経時的な持続時間など)を指す場合に本明細書中で使用する用語「約(about)」又は「約(approximately)」は、特定の値の及びそれからの変動、例えば、特定の値の及びそれからの+/-10%又はそれ以下、好ましくは+/-5%又はそれ以下、より好ましくは+/-1%又はそれ以下、さらにより好ましくは+/-0.1%又はそれ以下などを、そのような変動が、開示する本発明において実施するために適切である限り包含することを意味する。修飾語「約(about)」又は「約(approximately)」が参照する値はまた、それ自体がまた、具体的に、及び好ましく開示されることを理解すべきである。
【0028】
用語「1つ又は複数」又は「少なくとも1つ」、例えば1つ又は複数のメンバーあるいはメンバーの群の少なくとも1つのメンバーなどは、さらなる例示を用いて、それ自体が明らかであるのに対し、この用語は、とりわけ、前記メンバーの任意の1つ、あるいは前記メンバーの任意の2つ又はそれ以上(例えば、前記メンバーの任意の≧3、≧4、≧5、≧6、又は≧7など、及び全ての前記メンバーまで)の参照を包含する。別の例では、「1つ又は複数」又は「少なくとも1つ」は、1、2、3、4、5、6、7又はそれ以上を指しうる。
【0029】
本明細書における本発明への背景の考察が、本発明の状況を説明するために含まれている。これは、参照する資料のいずれかが、請求のいずれかの優先日時点で公開されている、公知である、又は任意の国における通常の一般的な知識の一部であったことの承認として取るべきではない。
【0030】
本開示を通して、種々の刊行物、特許、及び公開された特許明細書は、識別引用により参照されている。本明細書中で引用する全ての文書が、参照によりそれらの全体において、本明細書により組み入れられる。特に、本明細書中で具体的に参照されるそのような文書の教示又はセクションは、参照により組み入れられる。
【0031】
他に定義しない限り、本発明を開示する際に使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当技術分野の当業者により一般に理解される意味を有する。さらなるガイダンスを用いると、用語の定義が、本発明の教示をより良く認識するために含まれている。特定の用語が、本発明の特定の態様又は本発明の特定の実施形態に関連して定義される場合、そのような含意又は意味は、他に定義しない限り、本明細書を通して、即ち、本発明の他の態様又は実施形態の文脈においても適用されることを意味する。
【0032】
以下の節では、本発明の異なる態様又は実施形態をより詳細に定義する。そのように定義された各々の態様又は実施形態は、それとは反対に明確に示さない限り、任意の他の態様又は実施形態と組み合わせてもよい。特に、好ましい又は有利であるとして示す任意の特色は、好ましい又は有利であるとして示す任意の他の特色又は特色(複数)と組み合わせてもよい。
【0033】
本明細書を通した「一実施形態」、「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載する特定の特色、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態において含まれることを意味する。このように、本明細書を通した種々の場所における語句「一実施形態では」又は「実施形態では」の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではないが、しかし、それもありうる。さらに、特定の特色、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態では、本開示から当業者に明らかでありうるように、任意の適した様式において組み合わせてもよい。さらに、本明細書中に記載する一部の実施形態は、他の実施形態において含まれる一部の(しかし、他ではない)特色を含むが、異なる実施形態の特色の組み合わせは、本発明の範囲内にあり、当業者により理解されうるように、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲において、請求項に係る実施形態のいずれかを任意の組み合わせにおいて使用することができる。
【0034】
本発明の特定の代表的な実施形態を例証する実験セクションにより裏付けられるように、処置の転帰に情報を与える関連モデルシステムを用いることにより、本発明者らは、対象において皮膚老化を防止する又は低下させるため、あるいは酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置するための美容的、予防的、又は治療的な介入のための有用な活性物質としてRoxP又はRoxPを分泌するC.アクネス菌を初めて特定及び検証した。実験のセクションは、本明細書中に記載する組成物が抗酸化特性を有することを実証する。それ故に、理論に拘泥することを望まないが、本明細書中に開示する美容的、予防的、又は治療的アプローチは、皮膚細胞及び/又は皮膚の細胞もしくは細胞外成分(例えばタンパク質、脂質、又は核酸など)を酸化ストレスから保護することにより、特に皮膚に投与された、又はRoxPを分泌するC.アクネス菌により皮膚に送達されたRoxPにより、皮膚中のフリーラジカル(反応性酸素種(ROS)を含む)をクエンチ又は中和することにより作動しうる。
【0035】
したがって、本発明の一態様は、対象において皮膚老化を防止する又は低下させるための、RoxP(プロピオニバクテリウム・アクネスのラジカルオキシゲナーゼ)を分泌する生きたクチバクテリウム・アクネス株を含む組成物の美容的な使用を提供する。関連する態様は、対象において皮膚老化を防止する又は低下させるための美容的方法を提供し、この方法は、対象の皮膚に、RoxPを分泌する生きたアクネス株を含む、美容的に効果的な量の組成物を投与することを含む。
【0036】
別の態様は、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置する方法における使用のための、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む組成物を提供する。関連する態様は、それを必要とする対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置するための方法を提供し、この方法は、対象の皮膚に、予防的又は治療的に効果的な量のRoxPを分泌する生きたアクネス株を含む組成物を投与すること;酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置する方法における使用のための薬物の製造のための、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む組成物の使用;あるいは酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置するための、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む組成物の使用を含む。
【0037】
さらなる態様は、対象において皮膚老化を防止する又は低下させるための、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物の美容的な使用を提供する。関連する態様は、対象において皮膚老化を防止する又は低下させるための美容的方法を提供し、この方法は、対象の皮膚に、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物を投与することを含む。
【0038】
別の態様は、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置する方法における使用のための、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物を提供する。関連する態様は、それを必要とする対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置するための方法を提供し、この方法は、対象の皮膚に、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む、予防的又は治療的に効果的な量の組成物を投与すること;対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置する方法における使用のための薬物の製造のための、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物の使用;あるいは対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置するための、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物の使用を含む。
【0039】
本明細書中に開示する使用及び方法に関連する形容詞「美容的」は、そのような使用及び方法が、対象の外観、特に対象の皮膚の外観(対象の皮膚の色調、色、艶、触感、滑らかさ、又は柔らかさを含むが、これらに限定しない)を維持、回復、改善、又は増強するように設計されていることを表示する。本明細書中で想定される美容的な使用又は方法は、治療(治癒的及び予防的処置を含む)から区別することができ、治療の目的は、対象を病的状態からその元の健常な状態に回復させること、又はその病理により起こされる疼痛及び苦痛の症状を少なくとも軽減すること、又は第一に病態を防止することである。本明細書において意図する美容的な使用又は方法は、このように、「非治療的」として表示することができる。本明細書において意図する美容的な使用又は方法は、一般的に、皮膚への局所適用のために形成された美容的な組成物を用いる。
【0040】
本明細書中で使用する用語「皮膚」は、一般的に、動物、特に脊椎動物の身体の天然の外部被覆を形成する組織の層を指す。哺乳動物の皮膚は、2つの主要な層で構成されている:皮膚の最外層を構成する表皮は、基礎となる基底層を伴う重層扁平上皮を含み、メルケル細胞、ケラチノサイト、メラノサイト、及びランゲルハンス細胞を含み;ならびに真皮は、表皮の下の皮膚の層を構成し、結合組織、機械受容体、毛包、汗腺、皮脂腺、アポクリン腺、リンパ管、及び血管を含む。用語「皮膚」は、顔、首、胸、腹、背中、腕、手、脚、及び頭皮の上又は中の皮膚を含むが、これらに限定しない。
【0041】
競合する考え方が、老化が天然の生理学的プロセスを構成するのか、又は「それら全ての中で最大の疾患」を構成するのか否かについて存在しうるのに対し、本明細書中で使用するように、用語「老化(ageing)」又は「老化(aging)」は、一般的に、任意の老化に関連する病理とは別の、歳を取るプロセスを指し、それにより対象は、増加する年齢の正常な、天然の、又は生理学的な効果もしくは特性を呈する。
【0042】
特定の実施形態では、本発明の美容的な使用又は方法は、皮膚の老化の1つ又は複数の外部徴候の出現を防止しうる又は低下させうる。特定の実施形態では、皮膚の老化の1つ又は複数の外部徴候は、視覚的又は触覚的検査により認知可能でありうる。特定の実施形態では、皮膚の老化の1つ又は複数の外部徴候を肉眼により見ることができうる。特定の実施形態では、皮膚の老化の1つ又は複数の外部徴候は、皺、小皺、弛んだ皮膚、皮膚繊維の弾性の喪失、萎びた皮膚、薄化した皮膚、皮膚色素沈着における変化、くすんだ皮膚、輝きを伴わない皮膚、及びそれらの組み合わせを含む、それらから本質的になる、又はそれらからなる群より選択されうる。特に酸化ストレスに関連付けられうる、又は酸化ストレスにより起こされうる皮膚老化の徴候として、小皺、皺、皮膚色素沈着における変化、及び薄化した皮膚が含まれる。それ故に、特定の実施形態では、皮膚の老化の1つ又は複数の外部徴候は、小皺、皺、皮膚色素沈着における変化、薄化した皮膚、及びそれらの組み合わせを含む、それらから本質的になる、又はそれらからなる群より選択されうる。
【0043】
用語「防止する」、又はその代替形態、例えば「防止する」もしくは「防止」などは、一般に、何かが発生する、起こる、又は存在するのを防ぐこと、あるいは特に1つ又は複数の予防(防止)措置により何かの発生又は発症を遅延させることを意味する。例えば、本発明の美容的な使用又は方法は、皮膚老化の1つ又は複数の外部徴候をまだ呈していない対象に適用してもよく、前記の皮膚老化の1つ又は複数の外部徴候の発症又は出現を防止しうる、例えば所与の持続時間にわたり防止しうる(遅延させうる)など。
【0044】
用語「低下させる(to reduce)」、又はその代替形態、例えば「低下させる(reducing)」もしくは「低下(reduction)」は、一般に、特に1つ又は複数の措置により、通常、前記措置を適用する前の状態もしくは状況と、又は措置が適用されなかった場合に続いて起こる状態もしくは状況と比較し、サイズ、量、範囲、又は数において何かを減らすことを意味する。例えば、本発明の美容的な使用又は方法は、皮膚老化の1つ又は複数の外部徴候を既に呈している対象に適用してもよく、前記の1つ又は複数の外部徴候を和らげる(回復、改善)、あるいは前記の1つ又は複数の外部徴候のさらなる発生又は悪化を阻止する又は遅らせうる(維持、管理)。用語「低下する」は、用語、例えば「減少する」、「阻害する」、「減る」、「に干渉する」、又は「遅くなる」などと互換的であることができる。
【0045】
用語「組成物」は、一般的に、2つ又はそれ以上の成分から構成されるものを指し、より具体的には、2つ又はそれ以上の材料(例えば元素、分子、又は物質など)、ならびに組成物の材料から形成される反応産物及び分解産物の組み合わせ又は混合物を表示する。それらの使用法を考慮し、本組成物は、化粧品組成物として又は医薬的組成物として形成されうる。美容的な組成物は、典型的には、1つ又は複数の美容的に活性な成分(1つ又は複数の美容的効果を有する化学的及び/又は生物学的に活性な物質)及び1つ又は複数の美容的に許容可能な担体を含む。医薬的組成物は、典型的には、1つ又は複数の薬理学的に活性な成分(1つ又は複数の薬理学的効果を有する化学的及び/又は生物学的に活性な物質)及び1つ又は複数の医薬的に許容可能な担体を含む。本明細書中で典型的に使用される組成物は、液体又は固体でありうるが、溶液又は分散液を含みうる。特定の実施形態では、組成物は、混合物として消費者又は施術者に提供される成分で構成されうる、即ち、組成物成分は既に混合されている。特定の実施形態では、組成物は、組成物の1つ又は複数の他の構成成分から物理的に(例、別の容器又はバイアル中で)分離されているが、典型的には、同じ産物パッケージ又は分注デバイスの部分として消費者又は施術者に提供される1つ又は複数の構成成分で構成されうる。例を用いると、限定しないが、組成物は、1つの容器(例えばマルチチャンバーデバイス(例、2チャンバー分注システム)の1つのチャンバーなど)中で提供される1つ又は複数の構成成分、及び別の容器(例えばマルチチャンバーデバイスの別のチャンバーなど)中で提供される1つ又は複数の構成成分を含みうる。そのような配置によって、消費者又は施術者が、使用の直前に組成物の成分を混合することが可能になる。例えば、組成物は、1つの容器(例えばマルチチャンバーデバイス(例、2チャンバー分注システム)の1つのチャンバーなど)中で提供される、本明細書中で教示するRoxPを分泌する生きたキューティバクテリウム・アクネス株又は株(複数)、及び使用前に消費者又は施術者により混合される、別の容器(例えばマルチチャンバーデバイスの別のチャンバーなど)中で提供される1つ又は複数の美容的に又は医薬的に許容可能な担体を含みうる。マルチチャンバー(例えば2チャンバー又はデュアルチャンバーなど)ディスペンサー(例えばボトル、チューブ、ジャー、ポンプなど)は一般的に公知であり、商業的に入手可能である。例を用いると、限定しないが、Bormioli Rocco SPA(イタリア、フィデンツァ)によるWO 2012/153206、WO 2017/168263、及びWO 2018/060799には、とりわけ、容器及び容器を閉鎖するための閉鎖カプセルを含む、New Shaker(登録商標)単一用量ディスペンサーとして市販されているシステムが記載されており、閉鎖カプセルは、少なくとも部分的に壊れやすい底又は口により定義される筐体を含む。壊れやすい底又は口の構成をインタクトからオープンに変化させることによって、容器及び筐体の以前に分離された内容物を使用直前に混合することが可能になる。特定の実施形態では、RoxPを分泌する生きたキューティバクテリウム・アクネス株又は株(複数)は凍結乾燥形態でありうる。典型的には、そのような形態は、それ自体が、生きたキューティバクテリウム・アクネス株又は株(複数)及び適した細菌凍結乾燥培地の構成成分を含む組成物である。特定の実施形態では、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントは凍結乾燥形態でありうる。典型的には、そのような形態は、それ自体が、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメント及び、場合により、適したタンパク質凍結乾燥賦形剤を含む組成物である。
【0046】
特定の実施形態では、組成物は混合物でありうるが、組成物の1つ又は複数の構成成分は、それにもかかわらず、組成物の他の1つ又は複数の構成成分から実質的に分離されうる(実質的に接触していない)。そのようなことは、例えば、連続相中に分散された別々の粒子を含む分散液(例えばコロイド又は懸濁液など)についての場合でありうる。それ故に、個別粒子により構成される分散液の構成成分は、連続相により構成される分散液の構成成分から実質的に分離されるであろう。例を用いると、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントは、1つ又は複数の他の賦形剤で構成される連続相中で別々の粒子を形成するために1つ又は複数の賦形剤と製剤化してもよく、又はその逆でもよい。別の例を用いると、RoxPを分泌する生きたキューティバクテリウム・アクネス株又は株(複数)は、1つ又は複数の他の賦形剤で構成される連続相中で個別粒子を形成するために1つ又は複数の賦形剤と製剤化してもよく、又はその逆でもよい。特定の実施形態では、本明細書中で意図される分散液は、エマルジョン(液体分散相、液体連続相)、ゾルもしくは懸濁液(固体分散相、液体連続相)、ゲル(液体分散相、固体連続相)、又は固体ゾル(固体分散相、固体連続相)でありうる。別の例は、組成物の1つ又は複数の構成成分が、組成物の1つ又は複数のさらなる構成成分と混合される前に混合され、マイクロカプセル化される組成物を含む。例を用いると、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントは、1つ又は複数の賦形剤と製剤化され、マイクロカプセル化されうるが、結果として得られるマイクロカプセルは、その後、1つ又は複数の賦形剤と製剤化されうる(その中に分散されうる)。別の例を用いると、RoxPを分泌する生きたキューティバクテリウム・アクネス株又は株(複数)は、1つ又は複数の賦形剤と製剤化され、マイクロカプセル化されうるが、結果として得られるマイクロカプセルは、その後、1つ又は複数の賦形剤と製剤化されうる(その中に分散されうる)。特定の実施形態では、マイクロカプセル化された製剤は、液体又は固体(例えば液体又は固溶体又は分散液など)でありうる。特定の実施形態では、マイクロカプセルは、液体又は固体(例えば液体又は固溶体又は分散液など)である製剤と混合されうる。マイクロカプセル化のための方法は一般的に公知であり、マイクロカプセルのシェル、コーティング、又は膜は、一般的に、材料、例えばエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ゼラチン、又はアルギン酸ナトリウムなどで作製されうる。
【0047】
有利には、そのような実施形態では、生きたC.アクネス株又は株(複数)あるいはRoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントは、美容的又は医薬的組成物の状況において一般的に有用でありながら、活性物質の生存率、安定性、又は他の望ましい特性を減じうる組成物の構成成分から実質的に分離されて維持されうる。
【0048】
以前に言及したように、特定の実施形態では、RoxPを分泌する生きたキューティバクテリウム・アクネス株又は株(複数)、あるいはRoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントは、凍結乾燥形態でありうるが;場合により、2チャンバー分注システムの1つのチャンバー中に含まれ、他のチャンバーは適した再懸濁組成物を含む。細菌(例えばC.アクネスなど)の凍結乾燥のための方法は一般的に公知である(例えば、C Morgan & G Vesey: “Freeze-Drying of Microorganisms”, In: Encyclopedia of Microbiology, 3rd ed., 2009, Academic Press, 162-173を参照のこと)。例を用いると、C.アクネス株又は株(複数)は、本明細書中の他で記載されているように、適した成長培地中で成長させ、指数期又は定常期において回収してもよい。細菌を遠心分離又は限外ろ過により培地から分離し、適した緩衝液中で洗浄する。洗浄後、細菌は、細菌を安定化させる賦形剤の混合物中に再懸濁させる。一般に使用される賦形剤は、スクロース、デンプン、マンニトール、スキムミルク、ウシ血清アルブミン(BSA)、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定しない。賦形剤の混合物は通常、外部凍結防止剤(氷晶形成を防止する)、内部凍結防止剤(水素結合供与体として水を置き換える)及び保存安定剤を含む。賦形剤の各々の混合物について、臨界温度は、適切な方法(例えばLyostat測定又は示差走査熱量測定など)により決定する。細菌及び賦形剤を含む産物は、臨界温度を下回る凍結乾燥機において凍結させる。凍結乾燥機のプログラムパラメータは、産物が、混合物の臨界温度を下回る温度で全凍結乾燥サイクルの間に留まるように選ぶ。産物からの全ての水の蒸発後、それを凍結乾燥機から除去し、最終的なパッケージングのために加工することができる。
【0049】
凍結乾燥細菌は、凍結乾燥粉末として提供してもよく、場合により、固体担体と混合して容積を増加させる、又は適した油又は油の組み合わせ中に分散させてもよい。適した油の非限定的な例は、シモンシア・チネンシス(Simmondsia Chinensis)(ホホバ)種子油、セサマム・イン ディカム(Sesamum Indicum)(ゴマ)種子油、ブチロスパーマム・パーキー(Butyrospermum Parkii)(シアー)バター、硬化植物油、イソアミルラウレート、スクレロカリヤ・ビレア(Sclerocarya Birrea)(マルーラ)種子油、ヘリアンサス・アヌス(Helianthus Annuus)(ヒマワリ)種子油、及びそれらの組み合わせを含む。そのような及び他の油、特に親水性油は、水分が細菌に達するのを防止し、それにより細菌の再水和を防止し、産物の有効期間を延ばす。
【0050】
タンパク質の凍結乾燥も当技術分野において十分に確立された手順であり、典型的には、凍結乾燥されるタンパク質の水溶液を用い、場合により、1つ又は複数の適した凍結乾燥賦形剤(例えばトレハロース、スクロース、ラフィノース、マルトデキストリン、マンニトール、及び/又はデキストランなど)と混合する。本発明者らは、水中に溶解されたRoxPの凍結乾燥によって、さらなる賦形剤の非存在においてでさえ、RoxPの活性が十分に保存される一方で、賦形剤(各々の個別に上に列挙したものを含む)の添加は、十分に許容され、その安定性及び再構成の容易さの点でケーキの改善に導きうる。本発明者らは加えて、マンニトール、及び特に2~6% w/v、好ましくは2~5% w/v、より好ましくは2~4% w/v、又はさらにより好ましくは2~3% w/vのマンニトール(凍結乾燥される溶液の容積に比べて)が、安定したケーキの産生及びRoxP活性の保存のために特に有利であることを観察している。
【0051】
特定の他の実施形態では、細菌は、中間の凍結乾燥工程を伴わずに適用されうる。例えば、しかし、限定しないが、細菌を対数期まで成長させ、対数期で回収し、ペレット化し、及び希釈ペプトン溶液(滅菌蒸留水中の0.25% w/vトリプシンペプトン)中に再懸濁してもよく、それを次に、細菌の適した最終濃度(例えば約106コロニー形成単位/グラムなど)で、ヒドロキシエチルセルロース(HEC又はNatrosolとしても公知)を用いて濃縮する。結果として得られたゲルは、それを対象に適用する前に、-80℃もしくは20℃で、又は室温で短期間にわたり保存することができる。
【0052】
特定の実施形態では、組成物は、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株及び美容的に許容可能な担体を含む美容的組成物である。特定の実施形態では、組成物は、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメント及び美容的に許容可能な担体を含む美容的組成物である。特定の実施形態では、組成物は、i)RoxPを分泌する生きたC.アクネス株及びii)RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントの両方、ならびに美容的に許容可能な担体を含む美容的組成物である。美容的組成物は、1つ又は複数の追加の美容的に活性な成分をさらに含みうる。そのような追加の美容的に活性な成分は、皮膚老化を防止する又は低下させることが可能でありうる、あるいは皮膚老化とは無関係の美容的な効果を持ちうる。
【0053】
特定の実施形態では、組成物は、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬的組成物である。特定の実施形態では、組成物は、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメント及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬的組成物である。特定の実施形態では、組成物は、i)RoxPを分泌する生きたC.アクネス株及びii)RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントの両方、ならびに医薬的に許容可能な担体を含む医薬的組成物である。医薬的組成物はさらに、1つ又は複数の追加の医薬的に活性な成分をさらに含みうる。そのような追加の医薬的に活性な成分は、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置することが可能でありうる、あるいは前記疾患とは無関係の医薬的な効果を持ちうる。
【0054】
例を用いると、限定しないが、そのような美容的又は医薬的な活性物質は、皮膚に適用可能な抗酸化剤、例えばビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、レスベラトロール、コエンザイムQ10、ナイアシンアミド、ポリフェノール、フラボノイド、又はそれらの組み合わせなどを含みうる。
【0055】
例を用いると、限定しないが、そのような美容的又は医薬的な活性物質は、アルファリポ酸、葉酸、フィトエン、ビオチン、アルファグルコシルルチン、カルニチン、カルノシン、天然及び/又は合成イソフラボン、フラボノイド、クレアチン、クレアチニン、タウリン、Bアラニン、ジヒドロキシアセトン、8-ヘキサデセン-1、16-ジカルボン酸、グリセリルグルコシド、リポ酸抽出物、アロエベラ、ヒアルロン酸、アロエバルバデンシス葉汁、(2-ヒドロキシエチル)尿素、ナイアシンアミド、ビタミンA、又はそれらの組み合わせなどを含みうる。
【0056】
本明細書中で使用するような用語「美容的に許容可能な」又は「医薬的に許容可能な」は、当技術分野と一致しており、美容的又は医薬的組成物の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害ではないことを意味する。
【0057】
本発明の組成物のいくつかは、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む。特定の実施形態では、組成物は、RoxPを分泌する正確に1つの生きたC.アクネス株を含みうる。特定の実施形態では、組成物は、RoxPを分泌する2つ又はそれ以上の生きたC.アクネス株を含みうる。例えば、組成物は、RoxPを分泌する正確に2つの生きたC.アクネス株を含みうる。特定の実施形態では、組成物は、正確に3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20を含みうる、あるいはRoxPを分泌する20を上回る生きたC.アクネス株を含みうる。特定の実施形態では、組成物は、RoxPを分泌する正確に3、4、又は5の生きたC.アクネス株を含みうる。
【0058】
キューティバクテリウム・アクネス(以前にはプロピオニバクテリウム・アクネス)は、通性嫌気性グラム陽性桿菌の一種である。C.アクネスは大部分が片利共生であり、皮脂が豊富な皮膚の栄養価のある環境中で育つヒト皮膚の豊富な生着菌である。この細菌は大半の保菌者において症状を起こさないが、しかし、特定の株では、尋常性ざ瘡において炎症促進的な役割を有することが示唆されている。さらに、そのバイオフィルム形成能力のため、細菌は、種々の整形外科インプラントに関連付けられる感染症から頻繁に単離される。
【0059】
Johnson及びCummins(1972 J Bacteriol 109:1047-66)による試験によって、血清学的凝集テスト及び細胞壁糖分析に基づいて区別することができうる、プロピオニバクテリウム・アクネスの2つの異なる表現型(I型及びII型として公知)が初めて明らかになった。とりわけrecA遺伝子の配列分析を含むその後の試験によって、Pアクネスが、炎症特性、病原性決定因子の産生、及び種々の条件との関連性における差を呈する、4つの高度に異なる進化系統(IA型、IB型、II型、及びIII型として公知)を含むことが実証された(McDowell et al. 2005 J Clin Microbiol 43:326-334;McDowell et al. 2008 J Med Microbiol 57:218-224;Valanne et al. 2005 Microbiology 151:1369-1379;Lodes et al. 2006 Microbiology 152: 3667-3681)。IA型はさらに亜型IA1及びIA2に細分されており、IC型は6つのハウスキーピング遺伝子及び2つの推定病原性遺伝子に基づく多遺伝子座配列タイピングスキーム(eMLST)を使用して同定されている(McDowell et al., 2012 PLoS One 7:e41480)。Scholzら(2014 PLoS ONE 9:e104199)は後に、標的遺伝子座PPA2385のPCR増幅及びDNA配列決定を含む、Pアクネス株についての単一遺伝子座配列タイピング(SLST)スキームを開発した。Scholzらにより記載されたSLSTスキームに関連付けられる公的に入手可能なPアクネスデータベース及びSLST割り当てツールが、medbac.dk/slst/pacnesでオンライン入手可能である。C.アクネス株についての例示的なSLST型は、SLST A1型からA24型、B1型、C1型からC4型、D1型からD3型、E1型からE9型、F1型からF10型、G1型、H1型からH5型、K1型からK14型、及びL1型からL6型を含む。他のC.アクネス株タイピングスキームは、MLST9、MLST8、及びリボタイプスキームとして公知であり、Scholz et al.(特に
図1)において概説されている。SLST型が本明細書において参照されている場合、ScholzらのSLSTタイピングスキームに従った型を意味する。さらなるガイダンスとして、しかし、限定しないが、本明細書中で参照により組み入れられるWO 2018/073651のp.20-31の表によって、C.アクネス株のSLST型を同定するためにScholzらのSLSTにおいて使用されている標的遺伝子座PPA2385のいくつかの対立遺伝子配列が列挙されている。
【0060】
本明細書中で有用な、例示的な、しかし、非限定的なC.アクネス株は、例えばLeibniz Institute DSMZ-German Collection of Microorganisms and Cell Cultures(Inhoffenstr. 7B, ドイツD-38124ブラウンシュヴァイク, https://www.dsmz.de/catalogues.html)により、あるいはAmerican Type Culture Collection(ATCC)(10801 University Blvd. 米国20110-2209バージニア州マナサス)により、又はEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)(Health Protection Agency - Porton Down Salisbury、英国SP4 0JGウィルトシャー)により維持されている公共の微生物コレクションから得ることができ、C.アクネス株KPA171202(DSMZ受入番号DSM-16379)、C.アクネス亜種デフェンデンス株(受入番号ATCC 11828)、C.アクネス株(受入番号ATCC 6919)、アクネス亜種エロンガツム株(ECACC受入番号NCTC 13655)、及び他を含む。
【0061】
さらに、本明細書中で有用な、実質的に任意の型又は亜型のC.アクネス株は、成人、好ましくは健常な成人の皮膚から、又は感染した整形外科用装具上のC.アクネスバイオフィルムから容易にサンプリング及び単離することができる。C.アクネスの単離、培養、及び増殖のための任意の入手可能なプロトコールを採用することができる。それ故に、特定の実施形態では、組成物は、1つ又は複数のC.アクネスをドナー対象、特に酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有さないドナー対象、及び好ましくは全体的に健常な皮膚を有するドナー対象から単離及び培養し、それを他の1つ又は複数の担体と組み合わせて組成物を形成することにより形成することができる。
【0062】
例を用いると、限定しないが、皮膚からC.アクネス単離菌を得るための1つの適したプロトコールが、Holmberg et al. 2009 Clin Microbiol Infect 15:787-95において記載された。その中では、ヒト対象の前頭部の3×3cmの領域を綿棒で拭き取り、滅菌生理食塩水で湿らせ、ウマ血液(4%)を含む血液寒天(LabM Ltd、英国ベリー、ヘイウッド)上に播種した。プレートを嫌気性条件(10% H2、10% CO2、80% N2)下で、37℃で72時間にわたりインキュベートした。単離菌は、ルーチン的な微生物学的基準(特徴的な肉眼的外観(典型的な小さなコロニー)、グラム染色特性、ならびにカタラーゼ及びインドールの産生を含む)を使用してC.アクネスとして特徴付けられた。単離菌をグリセロール(50% v/v)中で、-80℃で凍結した。細菌は、グルコース(0.5%)を添加したBacto Brain Heart Infusion broth(BHI;Becton and Dickinson、米国メリーランド州スパークス)中でさらに培養し、37°Cで72時間にわたり嫌気性チャンバー中に保持することができた。健常な個人48名で実施された場合、これによって、IA型、IB型、II型に属する48のC.アクネス単離菌がもたらされた(参照により本明細書中に組み入れられるHolmberg et al.の表2を参照のこと)。
【0063】
C.アクネス細胞は、多様な培地(富栄養培地又は最小培地を含む)、好ましくは富栄養培地(例えば上で言及するものなど)中でさらに培養及び増殖させることができる。当業者により理解されうるように、ルーチン的な最適化によって、多様な型の培地の使用が可能になるであろう。培地には、種々の追加成分(糖供給源を含む)を添加することができる。補足成分の一部の非限定的な例は、グルコース、アミノ酸、ビタミン、脂質、グリセロール、及びATCC微量ミネラルサプリメントを含む。同様に、培地の他の態様、及び本発明の細胞の成長条件を、ルーチン的な実験を通じて最適化することができる。例えば、組成物内の成分のpH、温度、及び濃度は、最適化することができる因子の非限定的な例である。C.アクネス細胞を成長させるために使用される液体及び/又は固体培養物は、当技術分野において公知である、及び使用されている培養容器のいずれかに収容することができる。一部の実施形態では、C.アクネス株はバッチ中で成長させる。一部の実施形態では、細菌株は発酵槽中で成長させる。一部の実施形態では、細菌株を含む組成物が包装される。特定の実施形態では、細菌株を含む組成物は、経腸シリンジ又は小袋中に包装される。特定の実施形態では、細菌株は凍結乾燥されうる。
【0064】
C.アクネスの一部の株は、ざ瘡に関連付けられる、それに寄与する、又はその原因であると以前に報告されたが、他の株はざ瘡とのそのような関連を示していない(Fitz-Gibbon et al. 2013 J Invest Dermatol 133:2152-2160;Lomholt et al. 2010 PLoS ONE 5: e12277)。これらの著者はまた、ざ瘡に寄与するC.アクネス株の能力の特定の遺伝的及び代謝的決定因子を特徴付けた。同様に、WO 2018/073651には、C.アクネス株の病原性株及び非病原性株を、シス-9、シス-12リノール酸をトランス-10、シス-12リノール酸に特異的に変換する活性リノール酸イソメラーゼのそれらの発現に基づいて同定及び選択することができうる代謝アッセイが記載されている。したがって、特定の実施形態では、本明細書中で意図されるC.アクネス株は、ざ瘡に関連付けられず、それに寄与せず、及びその原因にはならない。そのようなC.アクネス株は、(ざ瘡により影響を及ぼされたヒト皮膚とは対照的に)健常なヒト皮膚から容易に単離することができる。
【0065】
用語「株」は、種内で使用される低レベルの分類学的ランクとして十分に理解されている。微生物学では、株は典型的には操作的に定義される-株は、純粋培養中での単一の単離物の子孫で構成され、通常は、最初の単一コロニーから究極的に由来する一連の培養物で;又は、あるいは、表現型の特性もしくは遺伝子型の特性、又はその両方により同じ属及び種の他の単離菌から区別することができる単離菌又は単離菌の群として構成される。本発明の実践において使用するように、用語「株」は、操作的用語「単離する」又は「クローン化する」と同義でありうる。
【0066】
本明細書中で使用する用語「生きた」は、「生存可能な」と同義であり、微生物の生きたインタクトな状態(活動的な成長又は休止状態など)を指し、その状態からそれは、微生物の成長を支持することが可能な培地中でそれ自体を増殖及び/又は再生することができる。典型的には、本明細書中で意図する組成物により含まれる実質的に全てのC.アクネス細菌は、生きている又は生存可能でありうる。例えば、組成物中の細菌の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは少なくとも90%、例えば少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%が生存可能である(例えば適した固体培地中に播種した場合にコロニーを形成することが可能であるなど)。
【0067】
C.アクネス株はRoxPを分泌することが可能である。用語「分泌する」、又はその代替形態、例えば「分泌する」もしくは「分泌」などは、一般に、細胞内部から細胞膜周辺腔又は細胞外環境への物質の移動を指す。この用語は、特に、細胞内部から原形質膜を横切るポリペプチド又はタンパク質の転位を表示しうるが、タンパク質は、可溶性タンパク質として細胞外環境(細胞上清)中に放出されうる。
【0068】
Holland et al. 2010(BMC Microbiol 10:230)は、C.アクネス遺伝子ID PPA1939に対応するタンパク質(単に「Pアクネスに特異的な仮定上のタンパク質」として注釈が付けられている)がPアクネスのセクレトーム中で見出されたことを報告した。Hollandらによれば、タンパク質はPアクネスの系統型IA、IB、II、及びIIIにより分泌され、クーマシー染色ゲルの半定量的評価により高度に発現されているように見え、ならびにシグナル配列を含んだ。このタンパク質には、Genbank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)受入番号AAT83657.1の下で注釈が付けられている。その後の試験では、Allhorn et al.(2016 Sci Rep 6:36412)は、PPA1939タンパク質が特定のインビトロ条件において抗酸化活性を呈する分泌酵素であることを示し、RoxP(プロピオニバクテリウム・アクネスのラジカルオキシゲナーゼを表す)と改名した。Allhornらは、その時点で入手可能な全てのPアクネスゲノムからRoxPタンパク質配列を検索し、RoxPが大多数のPアクネス株間で高度に保存されており、58株が同一のホモログを有し、33株が高度に類似したホモログ(99%の同一性)を有し、ならびにPアクネスのII型及びIII型株からの11のRoxPホモログのサブグループがより遠い(83%の同一性)ことを示した。著者らはまた、他の単離菌からのroxP遺伝子をPCR増幅及び配列決定するためのプライマーを教示し(Allhornらの表1を参照のこと)、ならびに単離菌AD9、AD20、AD24、AD26、AS4、AS8、AS23、AS26、及びAS39のRoxPタンパク質配列をそれぞれGenbank受入番号AFJ11206.1、AFJ11207.1、AFJ11208.1、AFJ11209.1、AFJ11210.1、AFJ11211.1、AFJ11212.1、AFJ11213.1、及びAFJ11214.1の下で寄託した。さらに多数のC.アクネス単離菌を分析することにより、本発明者らは、単離菌の大部分(約93%)が99~100%の配列同一性を伴うRoxPホモログを発現するのに対し、C.アクネスの系統型II及びIIIとして分類された株のサブセット(約7%)は、より遠くに関連したタンパク質を発現し、約83%のアミノ酸同一性を伴うことを明らかにした。便利なことに、種々のC.アクネス株からのRoxPホモログは、C.アクネス株KPA171202(DSMZ受入番号DSM-16379)からのRoxPタンパク質との全体的な配列同一性の点で特徴付けることができる。
【0069】
例を用いると、限定しないが、C.アクネス株KPA171202からの天然RoxPポリペプチドのアミノ酸配列は以下である:
【化1】
【0070】
例を用いると、限定しないが、C.アクネス株266からの天然RoxPポリペプチドのアミノ酸配列(KPA171202からのRoxPと99.4%の配列同一性を示す)は以下である:
【化2】
【0071】
例を用いると、限定しないが、C.アクネス株PMH-7からの天然RoxPポリペプチドのアミノ酸配列(KPA171202からのRoxPと97.5%の配列同一性を示す)は以下である:
【化3】
【0072】
例を用いると、限定しないが、C.アクネス株09-09からの天然RoxPポリペプチドのアミノ酸配列(KPA171202からのRoxPと83.2%の配列同一性を示す)は以下である:
【化4】
【0073】
例を用いると、限定しないが、C.アクネス株AD24からの天然RoxPポリペプチドのアミノ酸配列(KPA171202からのRoxPと83%の配列同一性を示す)は以下である:
【化5】
【0074】
例を用いると、限定しないが、C.アクネス株09-109からの天然RoxPポリペプチドのアミノ酸配列は、KPA171202からのRoxP(配列番号1)と同一である(即ち、100%の配列同一性)。
【0075】
RoxPへの言及は、このように、任意のC.アクネス株又は単離菌の、当技術分野におけるこの命名の下で一般に公知であるRoxPポリペプチド又はタンパク質を表示する。当業者は、上のRoxP配列又は配列データベース中に保管されたRoxP配列、あるいは追加のC.アクネス株を配列決定することにより得られたRoxP配列決定が、RoxP前駆体のもの(分泌されたRoxPタンパク質中でタンパク質分解的に除去されうる又はされないであろうシグナルペプチドを含む)でありうることを認識することができる。例えば、タンパク質配列分析ツールによって、上の配列番号1から4に示すRoxPのアミノ酸1から22がそれぞれのシグナルペプチドを構成することが予測される。当業者はさらに、RoxPのN末端Met残基が翻訳後に除去され、このように、分泌されたRoxPタンパク質中に存在しないであろうことを認識することができる。当業者はまた、特定の翻訳後修飾(例えばリン酸化、S-チオール化、ヒドロキシル化、シトルリン化、又はN-グリコシル化など)が細菌細胞中で起こりうること、及び本開示が、それらが翻訳後修飾を含む又は含まないとは無関係に、全てのRoxPタンパク質を包含することを認識するであろう。
【0076】
RoxPを分泌する生きたC.アクネス株が投与される特定の実施形態では、C.アクネス株は、RoxPを内因性に分泌しうる。用語「内因性」又は「内因性に」は、一般に、材料、例えばポリペプチド、タンパク質、又は核酸などを指し、それは細胞に対して天然又は固有であり、細胞の外部から由来せず、例えば、特に、ヒトの作用により細胞中に又は細胞の前駆体中に導入されない。例えば、内因性の核酸又は遺伝子は、細胞の天然ゲノム内に存在しうるが、内因性のポリペプチド又はタンパク質は、細胞の天然ゲノムによりコードされうる。それ故に、そのような実施形態では、C.アクネス株はRoxPを天然に分泌し、RoxPを分泌させるために遺伝的に操作される必要はなく、及びされていない。
【0077】
RoxPを分泌する生きたC.アクネス株が投与されるさらなる実施形態では、C.アクネス株は遺伝的に操作されていない。用語「遺伝的に操作された」は、組換えDNA操作に供された細胞を広く指し、例えば、そのゲノムのランダムな又は方向性のある変化、あるいは外因性核酸分子の一時的な又は安定した導入をもたらす。遺伝的に操作された細胞は、元々は天然において見いだされない遺伝子構造を呈する。それ故に、好ましくは、そのような実施形態では、細胞は、RoxPを分泌するように遺伝的に操作されていないだけでなく、しかし、また、他の人工の遺伝子変化を含まない。
【0078】
特定の実施形態では、本発明の美容的又は医薬的組成物により含まれる、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株は、個々に又は合わせて、定常期において測定された場合、1mL培地当たり少なくとも1μg RoxP、例えば、少なくとも2μg/mL、好ましくは少なくとも5μg/mL、より好ましくは少なくとも8μg/mL、及び最も好ましくは少なくとも10μg/mL、例えば少なくとも15μg/mL、少なくとも20μg/mL、少なくとも25μg/mL、又は少なくとも30μg/mL(定常期において測定された場合での1mL培地当たりのμg RoxP)などを分泌しうる。
【0079】
培地中に分泌されるRoxPの量を測定するために、C.アクネス株を、豊栄養複合培地、例えばトリプチカーゼ大豆ブロス(TSB、例えば、Beckton Dickinson(ニュージャージー州フランクリンレイクス)から入手可能)又はブレインハートインフュージョンブロス(BHI、例えば、Sigma-Aldrichから入手可能)などの中で、37℃で、無酸素状態(例えば10% H2、10% CO2、80% N2など)において、定常期に達するまで、典型的には3~7日間にわたり培養しうる。上清(培地)を、遠心分離(例えば3600gで10分間など)により細胞から分離することができる。
【0080】
任意の分離、検出、及び定量化の方法を、上清/培地中のRoxPの量を測定するために使用してもよい。そのような方法は、濃度測定法(SDS-PAGE+シルバー又はクーマシー染色を含む)、生化学的アッセイ方法(とりわけ酵素活性のアッセイを含む)、免疫学的アッセイ方法(例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及びELISPOTベースの技術、放射性免疫アッセイ(RIA)、ウエスタンブロットなど)、質量分析(MS)分析方法(例えばマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)MSなど)、クロマトグラフィー方法(例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、陽イオン又は陰イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)など)などを含みうる。
【0081】
本発明者らはまた、天然に生じるC.アクネスRoxP上流配列(RoxPプロモーターを含む)を広範囲に特徴付け、
図8中の配列番号5から12において示すような、RoxP上流領域の少なくとも8つの優位配列の存在を特定した。本発明者らはさらに、C.アクネスによるRoxPの高い内因性分泌を達成するのに有利でありうる、及び、このように、潜在的に高発現のC.アクネス株を選択するためにも用いられうる天然の-10及び-35ボックス配列を同定した。
【0082】
それ故に、特定の実施形態では、C.アクネス株の、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つの内因性RoxPプロモーターは、配列番号5から12のいずれか1つに記載する核酸配列を含みうる。特定のさらなる実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つの内因性RoxPプロモーターは、配列番号5から12のいずれか1つに記載する核酸配列と少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%(例えば少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、又は少なくとも約94%など)、さらにより好ましくは少なくとも約95%(例えば少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%など)同一(好ましくは全体的な配列同一性)である核酸配列を含みうる。
【0083】
特定の実施形態では、I型C.アクネス株は、内因性RoxPの比較的高い発現体として好まれうる。それ故に、特定の実施形態では、C.アクネス株の、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株(特に、それにおいてC.アクネス株又は株(複数)がI型株である又はある)の少なくとも1つの内因性RoxPプロモーターは、配列番号8に記載する核酸配列、あるいは配列番号8に記載する核酸配列と少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%(例えば少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、又は少なくとも約94%など)、及びさらにより好ましくは少なくとも約95%(例えば少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%など)同一(好ましくは全体的な配列同一性)である核酸配列を含みうる。特定のさらなる実施形態では、C.アクネス株の、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株(特に、それにおいてC.アクネス株又は株(複数)がI型株である又はある)の少なくとも1つの内因性RoxPプロモーターは、配列番号9に記載する核酸配列、あるいは配列番号9に記載する核酸配列と少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%(例えば少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、又は少なくとも約94%など)、及びさらにより好ましくは少なくとも約95%(例えば少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%など)同一(好ましくは全体的な配列同一性)である核酸配列を含みうる。特定のさらなる実施形態では、C.アクネス株の、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株(特に、それにおいてC.アクネス株又は株(複数)がI型株である又はある)の少なくとも1つの内因性RoxPプロモーターは、配列番号10に記載する核酸配列、あるいは配列番号10に記載する核酸配列と少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%(例えば少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、又は少なくとも約94%など)、及びさらにより好ましくは少なくとも約95%(例えば少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%など)同一(好ましくは全体的な配列同一性)である核酸配列を含みうる。特定のさらなる実施形態では、C.アクネス株の、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株(特に、それにおいてC.アクネス株又は株(複数)がI型株である又はある)の少なくとも1つの内因性RoxPプロモーターは、配列番号12に記載する核酸配列、あるいは配列番号12に記載する核酸配列と少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%(例えば少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、又は少なくとも約94%など)、及びさらにより好ましくは少なくとも約95%(例えば少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%など)同一(好ましくは全体的な配列同一性)である核酸配列を含みうる。
【0084】
特定の実施形態では、III型C.アクネス株は、内因性RoxPの比較的高い発現体として好まれうる。それ故に、特定の実施形態では、C.アクネス株の、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株(特に、それにおいてC.アクネス株又は株(複数)がIII型株である又はある)の少なくとも1つの内因性RoxPプロモーターは、配列番号7に記載する核酸配列、あるいは配列番号7に記載する核酸配列と少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%(例えば少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、又は少なくとも約94%など)、及びさらにより好ましくは少なくとも約95%(例えば少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%など)同一(好ましくは全体的な配列同一性)である核酸配列を含みうる。
【0085】
特定の実施形態では、II型C.アクネス株は、内因性RoxPの比較的高い発現体として好まれうる。それ故に、特定の実施形態では、C.アクネス株の、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株(特に、それにおいてC.アクネス株又は株(複数)がII型株である又はある)の少なくとも1つの内因性RoxPプロモーターは、配列番号11に記載する核酸配列、あるいは配列番号11に記載する核酸配列と少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%(例えば少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、又は少なくとも約94%など)、及びさらにより好ましくは少なくとも約95%(例えば少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%など)同一(好ましくは全体的な配列同一性)である核酸配列を含みうる。
【0086】
さらにさらなる実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つの内因性RoxPプロモーターは、TGCTATACT又はTGCTACACT、好ましくはTGCTATACTより選択される配列を有する-10ボックスを含みうる。そのような-10ボックスは、比較的高いRoxP発現I型(IA型又はIB型を含む)C.アクネス株、例えば
図8中に例示する株において頻繁に見出されうる。そのような-10ボックスはまた、一部のII型C.アクネス株において見出されうるが、それは、このように、他のII型C.アクネス株よりも比較的より高いレベルで内因性RoxPを発現すると予想されうる(例えば、配列番号11のRoxPプロモーターを有する表2中のII型株09-23を参照のこと)。そのような-10ボックスはさらに、比較的高いRoxP発現SLST A型、C型、H型、又はK型(K5型及びK1型を含む)C.アクネス株、例えば、
図8及び表2中に示す株(II/K1型株09~23を参照のこと)などにおいて頻繁に見出されうる。
【0087】
それ故に、特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、I型C.アクネス株(例えばI型又はIB型C.アクネス株など)であり、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックスを含み、前記-10ボックスは、TGCTATACT又はTGCTACACT、好ましくはTGCTATACTより選択される配列を有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックスを含むIA型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTATACTを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックスを含むIB型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTACACTを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックスを含むII型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTACACTを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックスを含むSLST A型、C型、H型、又はK型(例えばK5型又はK1型など)C.アクネス株であり、前記-10ボックスは、TGCTATACT又はTGCTACACTより選択される配列を有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックスを含むSLST A型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTATACTを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックスを含むSLST C型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTATACTを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックスを含むSLST H型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTACACTを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックスを含むSLST K5型又はK1型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTACACTを有する。
【0088】
さらに別の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つの内因性RoxPプロモーターは、配列TGCTACGCTを有する-10ボックスを含みうる。そのような-10ボックスは、比較的高いRoxP発現I型(好ましくはI型A)C.アクネス株(例えば、
図8中に例示する株523など)において頻繁に見出されうる。そのような-10ボックスはまた、一部のIII型C.アクネス株において見出されうるが。それらは、このように、他のIII C型アクネス株よりも比較的より高いレベルで内因性RoxPを発現すると予想されうる。そのような-10ボックスはさらに、比較的高いRoxP発現SLST G型又はL型C.アクネス株(例えば、
図8中に示す株など)において頻繁に見出されうる。
【0089】
それ故に、特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、I型C.アクネス株、好ましくはIA型C.アクネス株であり、 内因性RoxPプロモーター中に-10ボックスを含み、前記-10ボックスは配列TGCTACGCTを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックスを含むIII型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTACGCTを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックスを含むSLST L型又はG型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTACGCTを有する。
【0090】
さらにさらなる実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つの内因性RoxPプロモーターは、ACTTCGAT又はACTTCAATより選択される配列を有する-35ボックスを含みうる。
【0091】
そのような-35ボックスは、比較的高いRoxP発現I型(IA型又はIB型を含む)C.アクネス株(例えば、
図8中に例示する株など)において頻繁に見出される。そのような-35ボックスはまた、一部のII型C.アクネス株において見出されうるが、それらは、このように、他のII型C.アクネス株よりも比較的より高いレベルで内因性RoxPを発現すると予想されうる。そのような-35ボックスはさらに、比較的高いRoxP発現SLST A型、C型、G型、H型、又はK型(K5型及びK1型を含む)C.アクネス株(例えば、
図8及び表2中に示す株(株9-23を参照のこと)など)において頻繁に見出されうる。
【0092】
それ故に、特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、I型C.アクネス株(例えばI型又はIB型C.アクネス株など)であり、内因性RoxPプロモーター中に-35ボックスを含み、前記-35ボックスは、ACTTCGAT又はACTTCAATより選択される配列を有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-35ボックスを含むIA型C.アクネス株であり、前記-35ボックスは、ACTTCGAT又はACTTCAATより選択される配列を有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-35ボックスを含むIB型C.アクネス株であり、前記-35ボックスは配列ACTTCGATを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-35ボックスを含むII型C.アクネス株であり、前記-35ボックスは配列ACTTCGATを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-35ボックスを含むSLST A型、C型、G型、H型、又はK型(例えばK5型及びK1型など)であり、前記-35ボックスは、ACTTCGAT又はACTTCAATより選択される配列を有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-35ボックスを含むSLST A型、C型、H型、K5型、又はK1型C.アクネス株であり、前記-35ボックスは配列ACTTCGATを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-35ボックスを含むSLST G型C.アクネス株であり、前記-35ボックスは配列ACTTCAATを有する。
【0093】
さらに別の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つの内因性RoxPプロモーターは、TGCTATACT又はTGCTACACT、好ましくはTGCTATACTより選択される配列を有する-10ボックス、及びACTTCGAT又はACTTCAATより選択される配列を有する-35 ボックスを含みうる。そのような構成は、それらが高い内因性RoxP発現及び分泌を提供することができるため、特に有利でありうる。
【0094】
それ故に、特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、I型C.アクネス株(例えばIA型又はIB型C.アクネス株など)であり、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックス及び-35ボックスを含み、前記-10ボックスは、TGCTATACT又はTGCTACACT、好ましくはTGCTATACTより選択される配列を有し、及び前記-35ボックスは、ACTTCGAT又はACTTCAATより選択される配列を有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックス及び-35ボックスを含むIA型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTATACTを有し、及び前記-35ボックスは、ACTTCGAT又はACTTCAATより選択される配列を有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックス及び-35ボックスを含むIB型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTACACTを有し、及び前記-35ボックスは配列ACTTCGATを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックス及び-35ボックスを含むII型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTACACTを有し、及び前記-35ボックスは配列ACTTCGATを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックス及び-35ボックスを含むSLST A型、C型、H型、又はK型(例えばK5型又はK1型など)C.アクネス株であり、前記-10ボックスは、TGCTATACT又はTGCTACACTより選択される配列を有し、及び前記-35ボックスは、ACTTCGAT又はACTTCAATより選択される配列を有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックス及び-35ボックスを含むSLST G型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTACGCTを有し、及び前記-35ボックスは配列ACTTCAATを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックス及び-35ボックスを含むSLST A型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTATACTを有し、及び前記-35ボックスは配列ACTTCGATを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックス及び-35ボックスを含むSLST C型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTATACTを有し、及び前記-35ボックスは配列ACTTCGATを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックス及び-35ボックスを含むSLST H型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTACACTを有し、及び前記-35ボックスは配列ACTTCGATを有する。特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、内因性RoxPプロモーター中に-10ボックス及び-35ボックスを含むSLST K5型又はK1型C.アクネス株であり、前記-10ボックスは配列TGCTACACTを有し、及び前記-35ボックスは配列ACTTCGATを有する。
【0095】
本発明の美容的又は医薬的組成物により含まれるC.アクネス株又は株(複数)は、任意の型でありうる。特定の実施形態では、本発明の美容的又は医薬的組成物により含まれる、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは各々が非依存的に、I型、II型、又はIII型C.アクネスでありうる。本発明者らは、I型(IA及びIB亜型を含む)C.アクネス株が、RoxPの有利に高い内因性分泌を呈することを明らかにした。それ故に、特定の好ましい実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは各々が非依存的に、I型(例えばI型又はIB型など)でありうる。IA型株が特に好まれうる。III型株によるRoxP分泌も比較的高かった。それ故に、特定の好ましい実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは各々が非依存的に、III型でありうる。特定の好ましい実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは各々が非依存的に、I型又はIII型でありうる。特定の好ましい実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは各々が非依存的に、IA型、IB型、又はIII型でありうる。一部のII型株はまた、十分に高いRoxPの分泌を示しているが、II型株の大部分は、I型及びIII型のものよりも低いRoxP分泌を呈する。例を用いると、実施例1中の表2は、II型株09-23が多くのI型及びIII株と同等の又はさらにより高いレベルでRoxPを発現することを示す。それ故に、特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは各々が非依存的に、II型でありうる。高RoxP発現C.アクネス株II型は、本明細書において特に有利でありうる。なぜなら、II型株は、典型的には、ざ瘡に関連付けられない、即ち、正常又は健常な皮膚に関連付けられるとして報告されているからである。それ故に、特定の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは各々が非依存的に、SLST K1型、特に配列番号11において示すような内因性RoxPプロモーターを含むK1型でありうる。特定のさらなる実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは各々が非依存的に、IA型、IB型、II型、又はIII型でありうる。
【0096】
本発明の美容的又は医薬的組成物により含まれるC.アクネス株又は株(複数)は、任意のSLST型でありうる。本発明者らはさらに、一部のSLST型が、例えば、RoxPのそれらの高い分泌及び/又は他の特性(例、ざ瘡に関連付けられない)のために、好まれうることに気付いた。それ故に、特定の実施形態では、本発明の美容的又は医薬的組成物により含まれる、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは各々が非依存的に、SLST A型、C型、G型、H型、L型、又はK型(例えばK5型又はK1型など)でありうる。SLST A型又はC型(IA型株を含む)が特に好まれうる。
【0097】
特定の実施形態では、C.アクネス株又は株(複数)は、図中に示す株(例えばPM H5、09-09、ATCC11828、523、PM H7、12.1.R1、12.1.L1、KPA171202、15.1.R1、09-23、266、21.1.L1、09-323、09-109、11-79、30.2.L1、10-43、AD24、及びそれらの組み合わせなど)のいずれか1つを含む、それから本質的になる、又はそれからなる群より選択されうる。
【0098】
特定の実施形態では、本発明の美容的又は医薬的組成物により含まれるC.アクネス株又は株(複数)は、好気性及び嫌気性条件下で等しく十分に成長しうる。
【0099】
本発明の美容的又は医薬的組成物により含まれるC.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株は、個々に、又は合わせて、組成物の所望の美容的、予防的、又は治療的効果に適合する任意の量で組成物中に存在しうる。特定の実施形態では、C.アクネス株は、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株が、個々に、又は合わせて、組成物1グラム当たり少なくとも100コロニー形成単位(CFU)の量で組成物中に存在する。他の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株は、個々に、又は合わせて、組成物1グラム当たり少なくとも200CFU、少なくとも500CFU、少なくとも1000CFU、少なくとも5000CFU、少なくとも1×104CFU、少なくとも5×104CFU、少なくとも1×105CFU、少なくとも5×105CFU、又は少なくとも1×106CFUの量で組成物中に存在する。他の実施形態では、C.アクネス株、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株は、個々に、又は合わせて、組成物1グラム当たり1×104CFU未満、又は1×103CFU未満、又は500CFU未満、又は200CFU未満の量で組成物中に存在する。
【0100】
RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントが投与される特定の実施形態では、タンパク質又はポリペプチドは、RoxPの天然に生じる供給源から(例えばRoxPを発現するC.アクネス株から、など)単離又は精製されうる、あるいは適した宿主細胞もしくは宿主生物発現系により組換え的に産生され、及びそれより単離されうる、又は無細胞転写もしくは翻訳により、又は非生物学的ペプチド合成により組換え的に産生されうる。それ故に、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントへの言及は、天然に、組換え的に、半合成的に、又は合成的に産生されたタンパク質を包含する。
【0101】
この状況における用語「精製された」は、絶対的な純度を要求しない。代わりに、それは、タンパク質又はポリペプチドが、他の成分と比べたその存在量(質量、重量、又は濃度で便利に表現される)が元の材料中よりも多い、別々の環境中にあることを表示する。別々の環境は単一の培地(例えば、単一の溶液、ゲル、沈殿物、凍結乾燥物など)を表示する。精製されたタンパク質又はポリペプチドは、好ましくは、別々の環境のタンパク質含量の≧10重量%、より好ましくは≧50重量%(例えば≧60重量%など)、さらにより好ましくは≧70重量%(例えば≧80重量%など)、及びさらにより好ましくは≧90重量%(例えば≧95重量%、≧96重量%、≧97重量%、≧98重量%、≧99重量%、さらには≧100重量%など)を構成しうる。タンパク質含量は、例えば、ローリー方法(Lowry et al. 1951 J Biol Chem 193:265)により、場合により、Hartree 1972 Anal Biochem 48:422-427により記載されるように決定されうる。ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の純度は、クマシーブルー又は好ましくは銀染色を使用した還元又は非還元条件下でのSDS-PAGEにより決定されうる。
【0102】
C.アクネスにより分泌された天然のRoxPを単離又は精製するための例証的な、しかし、非限定的な方法を、実施例のセクションにおいて記載する。例えば、Allhorn et al. 2016(上記)の方法論を採用してもよい。それにおいて、硫酸アンモニウム沈殿、2工程イオン交換クロマトグラフィー(陰イオン及び陽イオン)、及びサイズ排除の組み合わせを用いて、C.アクネス株の上清からRoxPを約95%の均一性まで精製した。より具体的には、そのような精製方法の実施形態では、定常期まで成長させたC.アクネスを、3600gで10分間にわたる遠心分離により収集する;培養上清を滅菌ろ過(0.22μm)し、50%硫酸アンモニウムを用いて沈殿させる;ペレットを10mM Tris-HCl pH 8.8中で分離し、一晩透析する(MWCO 3,500);サンプルを平衡化したHiTrap Q FFカラム(GE Healthcare、スウェーデン、ウプサラ)上にロードし、50mM NaCl(10mM Tris-HCl pH 8.8)を用いて溶出する;2回目の透析を実施する(50mM NaOAc-HOAc pH5.0);サンプルをHiTrap SP FFカラム(GE Healthcare)上に流し、100mM NaCl(50mM NaOAc-HOAc pH 5.0)を用いて溶出する。最後に、画分を50kDa MWCOフィルター(Amicon Ultra、Ultracel-50K)を通して流す。別の実施例では、C.アクネス株上清の硫酸アンモニウム沈殿及びクリオゲルカラムでの精製の組み合わせを用いることができる。別の実施例では、C.アクネス株の上清を、第1工程における30kDaのカットオフ及び第2工程における3kDaのカットオフを使用し、タンジェンシャルフローろ過により濃縮することができる。
【0103】
したがって、特定の実施形態では、組成物は、RoxPを分泌する、好ましくは内因性にRoxPを分泌する培養された生きたC.アクネス株の上清を含みうる、それから本質的になりうる、又はそれからなりうる。特定の他の実施形態では、組成物は、RoxPを分泌する、好ましくは内因性にRoxPを分泌する培養された生きたC.アクネス株の上清のRoxP濃縮画分を含みうる、それから本質的になりうる、又はそれからなりうる。上清の用語「Rox-P濃縮画分」は、上清を処理することにより得られる画分又は別々の環境を表示し、それにおいてRoxPの存在量が上清中のRoxPの存在量と比較して増加している。例えば、RoxPは、濃縮画分のタンパク質含量の≧50%、例えば≧60%など、さらにより好ましくは≧70%、例えば≧80%など、さらにより好ましくは≧90%、例えば≧95%、≧96%、≧97%、≧98%、≧99%、又は100%などを表しうる。
【0104】
特定の実施形態では、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントは、適した宿主細胞又は宿主生物発現系により組換え的に産生させて、及びそこから単離してもよい。この目的のために、発現カセット又は発現ベクターは、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメント(場合により特定の宿主における発現のためにコドン最適化されている)をコードする核酸配列を含む核酸分子及び作動可能に連結されたプロモーターを含んで構築される。核酸分子に。この発現カセット又は発現ベクターを次に、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントの発現及び好ましくは分泌を可能にする、適した宿主細胞又は宿主生物中に導入する。RoxPをコードする核酸配列は容易に入手可能である。例えば、C.アクネス単離菌AD26からのRoxPをコードする核酸(C.アクネス株KPA171202からの天然RoxPポリペプチドとアミノ酸レベルで1つだけのミスマッチを示す)(配列番号1において示すとおり)が、Genbank受入番号JN051668.1の下で注釈が付けられている。さらに、Allhorn et al.(2016 Sci Rep 6:36412)が、広く種々のアクネ菌単離菌からのRoxP遺伝子の核酸配列をPCR 増幅及び単離するためのプライマーを教示した。
【0105】
本明細書中で使用するように、用語「プロモーター」は、遺伝子が転写されることを可能にするDNA配列を指す。プロモーターはRNAポリメラーゼにより認識され、それは次に転写を開始する。このように、プロモーターは、RNAポリメラーゼに直接的に結合する、又はその動員において含まれるDNA配列を含む。プロモーター配列はまた、「エンハンサー領域」を含むことができ、それは、タンパク質(すなわち、トランス作用因子)と結合し、遺伝子クラスター中の遺伝子の転写レベルを増強することができるDNAの1つ又は複数の領域である。エンハンサーは、典型的にはコード領域の5’末端にあるが、プロモーター配列から分離されることもでき、例えば、遺伝子のイントロン領域内又は遺伝子のコード領域の3’にあることができる。
【0106】
「作動可能な連結」は、調節配列及び発現されることが求められる配列が、前記発現を許すような方法において接続される連結である。例えば、配列(例えば、プロモーター及びORFなど)は、前記配列間の連結の性質が以下ではない場合、作動可能に連結されていると言ってもよい:(1)フレームシフト変異の導入をもたらす;(2)ORFの転写を指示するプロモーターの能力に干渉する;(3)プロモーター配列から転写されるORFの能力に干渉する。それ故に、「作動可能に連結された」は、発現制御配列(例えばプロモーターなど)が目的のコード配列の発現を効果的に制御するように、遺伝子構築物中に組み入れられることを意味しうる。
【0107】
プロモーターは、構成的又は誘導性(条件付き)プロモーターでありうる。構成的プロモーターは、その発現が標準的な培養条件下で一定であるプロモーターであると理解される。誘導性プロモーターは、1つ又は複数の誘導キューに応答性であるプロモーターである。例えば、誘導性プロモーターは、化学的に調節されることができる(例、その転写活性が、化学的誘導剤、例えばアルコール、テトラサイクリン、ステロイド、金属、又は他の小分子などの存在又は非存在により調節されるプロモーター)又は物理的に調節されることができる(例、その転写活性が、物理的誘導物質、例えば光又は高もしくは低温度など)の存在又は非存在により調節されるプロモーター)。誘導性プロモーターはまた、それ自体が化学的又は物理的キューにより直接的に調節される1つ又は複数の転写因子により間接的に調節されることができる。
【0108】
宿主細胞は、細菌細胞、真菌細胞(酵母細胞を含む)、動物細胞、又は哺乳動物細胞(ヒト細胞及び非ヒト哺乳動物細胞を含む)でありうる。宿主生物は、例えば、植物生物でありうるが、それにより、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントの分泌が、植物全体又は植物の特定の部分(例えば葉など)に向けられる;あるいは授乳中の非ヒト哺乳動物でありうるが、それにより、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントの分泌が、哺乳動物の乳腺の産物に向けられる。
【0109】
ポリペプチドの小規模又は大規模産生のために使用することができる発現系(宿主細胞)は、限定しないが、微生物、例えば細菌(例、エシェリキア・コリ、エルシニア・エンテロコリチカ、ブルセラ菌種、サルモネラ・チフィリウム、セラチア・マルセセンス、又はバチルス・スブチリス)など(例えば、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、又はコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換されている);又は真菌細胞(例、ヤロウイア・リポリティカ、アークスラ・アデニニボランス(Arxula adeninivorans))、メチロトローフ酵母(例、カンジダ属、ハンゼヌラ属、オガタエア属、ピキア属、又はトルロプシス属のメチロトローフ酵母(例、ピキア・パストリス、ハンゼヌラ ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、オガタエア・ミニュータ(Ogataea minuta)、又はピキア・メタノリカ(Pichia methanolica))、又はアスペルギルス属、トリコデルマ属、ニューロスポラ属、フサリウム属、もしくはクリソスポリウム属の糸状菌(例、アスペルギルス・ニガー、トリコデルマ・リーセイ)、又はサッカロミセス属又はシゾサッカロミセス属の酵母(例、サッカロミセス・セレビシエ、又はシゾサッカロマイセス・ポンベ)(例えば、組換え真菌発現ベクターを用いて形質転換されている)を含む。有用な発現系はまた、核酸分子を含む組換えウイルス発現ベクター(例、バキュロウイルス)を用いて感染させた昆虫細胞系(例、ドロソフィラ・メラノガスターから由来する細胞、例えばシュナイダー2細胞など、アーミーワームのスポドプテラ・フルギペルダから由来する細胞株、例えばSf9細胞及びSf21細胞など、又はキャベツルーパーのイラクサギンウワバから由来する細胞、例えばHigh Five細胞など)、及び組換えウイルス発現ベクター(例、タバコモザイクウイルス)を用いて感染させた、又は組換えプラスミド発現ベクター(例、 Tiプラスミド)を用いて形質転換させた植物細胞系を含む。哺乳動物の発現系は、ヒト及び非ヒト哺乳動物細胞(例えばげっ歯類細胞、霊長類細胞、又はヒト細胞など)を含む。哺乳動物細胞(例えばヒト又は非ヒト哺乳動物細胞など)は、一次細胞、二次細胞、三次細胞などを含みうる、又は不死化細胞株(クローン細胞株を含む)を含みうる。好ましい動物細胞は、組織培養中で容易に維持及び形質転換することができる。ヒト細胞の非限定的な例は、ヒトHeLa(子宮頸癌)細胞株を含む。組織培養の実践において一般的な他のヒト細胞株は、とりわけ、ヒト胚性腎臓293細胞(HEK細胞)、DU145(前立腺癌)、Lncap(前立腺癌)、MCF-7(乳癌)、MDA-MB-438(乳癌)、PC3(前立腺癌)、T47D(乳癌)、THP-1(急性骨髄性白血病)、U87(神経芽細胞腫)、SHSY5Y(神経芽細胞腫)、又はSaos-2細胞(骨癌)を含む。霊長類細胞の非限定的な例は、Vero(アフリカミドリザルサバンナモンキー腎臓上皮細胞株)細胞、及びCOS細胞である。げっ歯類細胞の非限定的な例は、ラットGH3(下垂体腫瘍)、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)、PC12(褐色細胞腫)細胞株、又はマウスMC3T3(胚性頭蓋冠)細胞株である。そのような細胞は、本明細書中で特定する遺伝子操作の前に、種々の商業的供給源及び研究資源施設、例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション(メリーランド州ロックビル)などから得ることができる。種々のプロモーターが、哺乳動物細胞における発現に適しうる(例、メタロチオネインプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、又はサイトメガロウイルスプロモーター)。異種タンパク質発現のためのそのようなツール及び方法は、一般的に当技術分野において周知である。細菌宿主発現系(例えば大腸菌など)、又は酵母発現系(例えばピキア・パストリスなど)が好まれうる。発現系に、又は化学的もしくは酵素的発現後操作に依存して、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントは、ポリペプチド鎖の1つ又は複数の同時発現型又は発現後型修飾(例えば、限定しないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、スルホン化、メチル化、ユビキチン化、シグナルペプチド除去、N末端Met除去など)を保有しうる。天然に生じない翻訳後修飾も予測される。
【0110】
RoxPの用語「変異体」は、そのアミノ酸配列が、RoxPのアミノ酸配列と、例えば天然又は野生型C.アクネスRoxPのアミノ酸配列などと実質的に同一である(即ち、大部分が同一であるが、しかし、全く同一ではない)、例えば、少なくとも約80%同一又は少なくとも約83%同一又は少なくとも約85%同一である、例えば、好ましくは少なくとも約90%同一である、例えば、少なくとも91%同一である、少なくとも92%同一である、より好ましくは少なくとも約93%同一である、例えば、少なくとも94%同一である、さらにより好ましくは少なくとも約95%同一である、例えば、少なくとも96%同一である、さらにより好ましくは少なくとも約97%同一である、例えば、少なくとも98%同一である、及び最も好ましくは少なくとも99%同一であるタンパク質又はポリペプチドを包含する。好ましくは、変異体は、変異体及びRoxPの全配列が配列アラインメントにおいて検索される場合、RoxPへのそのような程度の同一性を呈しうる(即ち、全体的な配列同一性)。さらに好ましくは、変異体は、上の配列番号1において示すC.アクネス株KPA171202のRoxP、又はN末端シグナルペプチドを欠く配列番号1の前記RoxPの部分と少なくとも約80%、又は少なくとも約83%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約91%、又は少なくとも約92%、又は少なくとも約93%、又は少なくとも約94%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約96%、又は少なくとも約97%、又は少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を呈しうる。
【0111】
本明細書中で想定するタンパク質又はポリペプチド又は核酸の間の配列同一性は、それ自体が公知であるように、配列アラインメント及び配列同一性の決定を実施するための適したアルゴリズムを使用して決定してもよい。例示的であるが、しかし、非限定的なアルゴリズムは、Altschul et al. 1990(J Mol Biol 215: 403-10)により最初に記載されたBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)に基づくアルゴリズム、例えばTatusova and Madden 1999(FEMS Microbiol Lett 174: 247-250)により記載された「Blast 2配列」アルゴリズムなどを含み、例えば、公開されたデフォルト設定又は他の適した設定(例えば、例、BLASTNアルゴリズムについて:ギャップを開くためのコスト=5、ギャップを拡張するためのコスト=2、不一致についてのペナルティ=-2、一致についての報酬=1、ギャップx_dropoff=50、期待値=10.0 、ワードサイズ=28;又はBLASTPアルゴリズムについて:マトリクス=Blosum62(Henikoff et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci., 89:10915-10919)、ギャップを開くためのコスト=11、ギャップを拡張するためのコスト=1、期待値=10.0、ワードサイズ=3)。本明細書中で想定する配列同一性は、好ましくは、全体的な配列同一性、即ち、比較されるタンパク質、ポリペプチド、又は核酸の全配列を整列させることから算出される配列同一性を表示しうる。特定のアミノ酸配列とクエリーポリペプチドのアミノ酸配列の間のパーセント同一性を決定するための例示的な手順は、適したアルゴリズムパラメーターを使用し、ウェブアプリケーションとして又はNCBIウェブサイト(www.ncbi.nlm.nih.gov)のスタンドアロン実行可能プログラム(BLASTバージョン2.2.31+)として利用可能なBlast 2配列(Bl2seq)アルゴリズムを使用して2つのアミノ酸配列を整列させることを伴う。適したアルゴリズムパラメーターの例は、マトリクス=Blosum62、ギャップを開くためのコスト=11、ギャップを拡張するためのコスト=1、期待値=10.0、ワードサイズ=3)を含む。2つの比較される配列が相同性を共有している場合、次に、出力はそれらの相同性領域を整列配列として提示する。2つの比較される配列が相同性を共有しない場合、次に、出力は整列配列を提示しない。一度整列されると、一致の数を、同一のアミノ酸残基が両方の配列中に存在している位置の数を数えることにより決定する。同一性パーセントは、一致の数をクエリーポリペプチドの長さにより割って、結果として得られた値に100を掛けることにより決定する。同一性パーセント値は、最も近い10分の1に四捨五入してもよいが、しかし、その必要はない。例えば、78.11、78.12、78.13、及び78.14は78.1に切り捨て、78.15、78.16、78.17、78.18、及び78.19は78.2に切り上げる。Bl2seqにより出力されるアラインメントの各々のセグメントについての詳細な見解が、同一性のパーセンテージを既に便利に含んでいることがさらに認められている。
【0112】
RoxPの変異体は、RoxPのホモログ(例、オルソログ又はパラログ)でありうるが、しかし、そうである必要はない。本明細書中で使用するように、用語「相同性」は、一般的に、同じ又は異なる分類群からの2つの高分子間での構造的な類似性を表示し、それにおいて、前記類似性は、共有される祖先に起因する。
【0113】
RoxPの変異体は、対応するRoxPタンパク質又はポリペプチドに比べて(即ち、比較して)、1つ又は複数のアミノ酸の付加、欠失、又は置換を含みうる。
【0114】
例えば、RoxPの変異体(置換変異体)は、対応するRoxPタンパク質又はポリペプチドに比べて(即ち、比較して)、30まで(例、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、又は30以下)の保存的アミノ酸置換を含みうる;あるいは、RoxPの変異体(置換変異体)は、対応するRoxPタンパク質又はポリペプチドに比べて、30まで(例、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、又は30以下)の非保存的アミノ酸置換を含みうる;あるいは、RoxPの変異体(置換変異体)は、対応するRoxPタンパク質又はポリペプチドに比べて、30まで(例、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、又は30以下)の組み合わされた保存的及び非保存的アミノ酸置換を含みうる。保存的アミノ酸置換は、1つのアミノ酸の、同様の特性を伴う別のアミノ酸についての置換である。保存的アミノ酸置換は、以下の群内の置換を含む:バリン、アラニン、及びグリシン;ロイシン、バリン、及びイソロイシン;アスパラギン酸及びグルタミン酸;アスパラギン及びグルタミン;セリン、システイン、及びスレオニン;リシン及びアルギニン;ならびにフェニルアラニン及びチロシン。非極性疎水性アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンを含む。極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンを含む。正電荷の(即ち、塩基性の)アミノ酸は、アルギニン、リジン、及びヒスチジンを含む。負電荷の(即ち、酸性の)アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。上記の極性、塩基性、又は酸性基の1つのメンバーの、同じ群の別のメンバーによる任意の置換は、保守的置換と見なすことができる。対照的に、非保存的置換は、1つのアミノ酸の、似ていない特性を伴う別のアミノ酸についての置換である。
【0115】
あるいは、又は、また、RoxPの変異体(欠失変異体)は、対応するRoxPタンパク質又はポリペプチドに比べて、30まで(例、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、又は30以下)アミノ酸を欠きうる。2つ又はそれ以上のアミノ酸が欠失される場合、これらは非隣接でありうる、あるいは2つ又はそれ以上あるいは全ての欠失されたアミノ酸が、対応するRoxPタンパク質又はポリペプチドにおいて隣接しうる。
【0116】
RoxPの用語「フラグメント」は、典型的には、RoxPタンパク質又はポリペプチドのN末端及び/又はC末端が欠失又は切断された形態を指す。この用語は、任意の機構により、例えば、限定しないが、完全長のRoxPタンパク質又はポリペプチドの切断形態の異種発現により、あるいはインビボ又はインビトロでの完全長のRoxPタンパク質又はポリペプチドの物理的、化学的、又は酵素的タンパク質分解などにより生じるフラグメントを包含する。限定しないが、RoxPのフラグメントは、前記RoxPタンパク質又はポリペプチドの隣接アミノ酸配列の少なくとも約50%(アミノ酸数による)、例えば、少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約91%、又は少なくとも約92%、又は少なくとも約93%、又は少なくとも約94%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約96%、又は少なくとも約97%、又は少なくとも約98%、又は少なくとも約99%を表しうる。例えば、RoxPのフラグメントは、対応する完全長のRoxPタンパク質又はポリペプチドの少なくとも約80、又は少なくとも約90、又は少なくとも約100、又は少なくとも約110、又は少なくとも約120、又は少なくとも約130、又は少なくとも約140、又は少なくとも約150、又は少なくとも約155の連続アミノ酸の配列を含みうる。特定の実施形態では、RoxPのフラグメントは、対応する完全長のRoxPタンパク質又はポリペプチドと比較し、1から約20アミノ酸の間だけ、例えば1から約15アミノ酸の間だけ、又は1から約10アミノ酸の間だけ、又は1から約5アミノ酸の間だけN末端及び/又はC末端が切断されうる。
【0117】
特定の実施形態では、RoxPのフラグメントは、配列番号1において示す天然RoxPタンパク質の位置66~83に対応するアミノ酸の連続ストレッチを含みうる、それから本質的になりうる、又はそれからなりうる。例えば、RoxPのフラグメントは、配列番号1において示す天然RoxPタンパク質の位置66~83に対応するアミノ酸の連続ストレッチを含みうる、及び以下をさらに含みうる:a)RoxPタンパク質中の前記ストレッチにN末端に直ぐに隣接する1~5もしくは6~10もしくは11~15もしくは16~20もしくは21~30もしくは31~50の連続アミノ酸及び/又はb)RoxPタンパク質中の前記ストレッチにC末端に直ぐに隣接する1~5又は6~10又は11~15又は16~20又は21~30又は31~50の連続アミノ酸。例えば、RoxPのフラグメントは、アミノ酸VRADGYQESMVTRVLDDK(配列番号20)の連続ストレッチを含みうる、それから本質的になりうる、又はそれからなりうる。例えば、RoxPのフラグメントは、本明細書中で「RoxP-ペプチド1」として表示するペプチドでありうるが、そのアミノ酸配列は、配列番号20において示す通りである。注目すべきことに、RoxP-ペプチド1は、抗酸化活性を呈することが示された。
【0118】
特定の実施形態では、RoxPのフラグメントは、配列番号1において示す天然RoxPタンパク質の位置128~140に対応するアミノ酸の連続ストレッチを含みうる、それから本質的になりうる、又はそれからなりうる。例えば、RoxPのフラグメントは、配列番号1において示す天然RoxPタンパク質の位置128~140に対応するアミノ酸の連続ストレッチを含みうる、及び以下をさらに含みうる:a)RoxPタンパク質中の前記ストレッチにN末端に直ぐに隣接する1~5又は6~10又は11~15又は16~20又は21~30又は31~50の連続アミノ酸及び/又はb)RoxPタンパク質中の前記ストレッチにC末端に直ぐに隣接する1~5又は6~10又は11~15又は16~20又は21の連続アミノ酸。例えば、RoxPのフラグメントは、アミノ酸RTLSYCAYPHYVN(配列番号21)の連続ストレッチを含みうる、それから本質的になりうる、又はそれからなりうる。例えば、RoxPのフラグメントは、本明細書中で「RoxP-ペプチド2」として表示するペプチドでありうるが、そのアミノ酸配列は、配列番号21において示す通りである。注目すべきことに、RoxP-ペプチド2は、抗酸化活性を呈することが示された。
【0119】
任意のタンパク質又はポリペプチドの「フラグメント又は変異体」又は「変異体又はフラグメント」への言及は、そのようなタンパク質又はポリペプチドの変異体のフラグメント、及びそのようなタンパク質又はポリペプチドのフラグメントの変異体を包含する。
【0120】
用語「生物学的に活性な」は、用語、例えば「機能的に活性な」又は「機能的な」などと互換的であり、フラグメント及び/又は変異体が、対応するRoxPタンパク質又はポリペプチドの生物学的活性又は意図された機能性を少なくとも部分的に保持することを表示する。タンパク質もしくはポリペプチド、又はペプチドの「活性」への言及は、一般的に、タンパク質又はポリペプチドの生物学的活性の任意の1つ又は複数の側面、例えば、限定しないが、例えば、細胞、組織、器官、又は生物内でのその生化学的活性、酵素活性、シグナル伝達活性、相互作用活性、リガンド活性、及び/又は構造的活性の任意の1つ又は複数の側面などを包含しうる。好ましい例を用いると、RoxPの生物学的に活性なフラグメント又は変異体は、対応するRoxPタンパク質又はポリペプチドの抗酸化活性を少なくとも部分的に保持しなければならない。
【0121】
好ましくは、RoxPの機能的に活性なフラグメント又は変異体は、対応するRoxPタンパク質又はポリペプチドと比較し、少なくとも約20%、例えば、少なくとも約25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、例えば、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも約70%、例えば、少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも約85%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、及び最も好ましくは少なくとも約95%又はさらに約100%の抗酸化活性又は機能性を保持しうる。特定の実施形態では、RoxPの機能的に活性なフラグメント又は変異体は、対応するRoxPタンパク質又はポリペプチドと比較し、より高い抗酸化活性又は機能性を呈しうる、例えば、対応するRoxPタンパク質又はポリペプチドと比較し、少なくとも約100%、又は少なくとも約150%、又は少なくとも約200%、又は少なくとも約300%、又は少なくとも約400%、又は少なくとも約500%の抗酸化活性又は機能性を呈しうる。例を用いると、そこでは抗酸化活性を定量的出力又はシグナルを用いたアッセイにおいて容易に測定することができ、RoxPの機能的に活性なフラグメント又は変異体は、対応するRoxPタンパク質又はポリペプチドにより産生されるシグナルの少なくとも約20%、又は少なくとも約25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも60%、より好ましくは少なくとも約70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約100%、又は少なくとも約150%、又は少なくとも約200%、又は少なくとも約300%、又は少なくとも約400%、又は少なくとも約500%であるシグナルを産生しうる。抗酸化活性の代表的であるが、しかし、非限定的な定量的テストは、実施例、例えば実施例2及び3(ABTSラジカルカチオンアッセイ)、実施例4(パラコートにより起こされる酸化的損傷からのインビトロでのヒト細胞の保護)、及び実施例7-11(UV又はオゾンにより起こされる酸化的損傷からの再構成されたヒト表皮の保護)などにおいて記載されており、この状況において使用されうる。ABTSラジカルカチオンアッセイは特に簡単であり、好まれうる。
【0122】
RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントは、組成物の所望の美容的、予防的、又は治療的な効果と互換性のある任意の量又は量で、本発明の美容的又は医薬的組成物により含まれうる。一部の実施形態では、特に医薬的組成物は、少なくとも1×10-9MのRoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメント、例えば少なくとも少なくとも1×10-8M、少なくとも5×10-8M、少なくとも1×10-7M、又は少なくとも5×10-7M、好ましくは少なくとも1×10-6M、少なくとも5×10-6M、少なくとも1×10-5M、又は少なくとも5×10-5M、及びより好ましくは少なくとも1×10-4M、例えば、少なくとも2×10-4M、少なくとも3×10-4M、少なくとも4×10-4M、少なくとも5×10-4M、少なくとも6×10-4M、少なくとも7×10-4M、少なくとも8×10-4M、少なくとも9×10-4M、又は少なくとも1×10-3MのRoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントなどを含みうる。例えば、医薬的組成物は、1×10-9Mと1×10-3Mの間、又は1×10-7Mと1×10-3Mの間、又は1×10-6Mと1×10-3Mの間、又は1×10-5Mと1×10-3Mの間、又は1×10-4Mと1×10-3Mの間のRoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含みうる。美容的な組成物が同等の量のRoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含みうるのに対し、実質的により低い量が組成物の美容的な期待を満たしうる。それ故に、一部の実施形態では、特に美容的な組成物は、1×10-9M又はそれ以下のRoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメント、例えば5×10-10M又はそれ以下、1×10-11M又はそれ以下、5×10-12M又はそれ以下、又は1×10-13M又はそれ以下のRoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントなどを含みうる。
【0123】
特定の実施形態では、本明細書中で教示する、RoxPを分泌する1つ又は複数の生きたC.アクネス株を含む美容的又は医薬的組成物は、本明細書中で教示するように、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントをさらに含みうる。そのような組成物によって、本明細書中で開示するように、両方の活性物質の同時投与が可能になるであろう。特定の実施形態では、本明細書中で教示する、RoxPを分泌する1つ又は複数の生きたC.アクネス株を含む美容的又は医薬的組成物、及びRoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む美容的又は医薬的組成物は、それぞれの活性物質の同時の、別の、又は連続(任意の順序における)の投与のための部分の組み合わせた産物又はキットとして提供されうる。
【0124】
本明細書を通じて使用するように、用語「治療」又は「処置」は、1つ又は複数の症状の軽減又は測定可能な緩和、あるいは病的状態(例えば疾患又は障害など)の測定可能なマーカーを指す。測定可能な緩和は、測定可能な症状又はマーカーにおける任意の統計的に有意な減少を含む。一般的に、これらの用語は、治癒的処置ならびに症状を低下させること及び/又は疾患の進行を遅らせることを目的とした処置の両方を包含する。これらの用語は、既に発生した病的状態の治療的処置、ならびに予防的又は防止的措置の両方を包含し、その目的は、病的状態の発生の可能性を防止する又は和らげることである。有益な又は所望の臨床結果は、疾患の防止、疾患の発生率の低下、疾患に関連付けられる症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の安定化、疾患の進行の遅延又は緩徐化、疾患の寛解又は緩和、あるいはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定しない。特定の実施形態では、これらの用語は治療的処置に関連しうる。特定の他の実施形態では、これらの用語は防止的処置に関連しうる。緩解期間の間での慢性的な病的状態の処置はまた、治療的処置を構成すると見なされうる。この用語は、本発明の状況において適切なように、エクスビボ又はインビボ処置を包含しうる。
【0125】
用語「対象」は、典型的には、及び好ましくは、ヒトを表示するが、しかし、非ヒト動物、好ましくは温血動物、さらにより好ましくは哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、げっ歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタなどへの言及も包含しうる。用語「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物、例えば、酸化哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、特に高等霊長類、ヒツジ、イヌ、げっ歯類(例、マウス又はラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシ、及び非哺乳動物、例えばニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。特定の実施形態では、対象は非ヒト動物である。特定の実施形態では、対象は非ヒト哺乳動物である。特定の実施形態では、対象はトランスジェニック非ヒト動物又は非ヒト哺乳動物である。好ましい実施形態では、対象はヒトである。他の実施形態では、対象は実験動物又は動物疾患モデルである。この用語は特定の年齢又は性別を表示せず、とりわけ、新生児、小児、青年、及び高齢者を含む成人(男性又は女性を問わない)を含む。
【0126】
治療的又は予防的介入に関連する態様及び実施形態では、用語「対象」及び「患者」は互換的に使用されうる。本明細書中で教示するように疾患を防止又は処置する必要のある、適した対象又は患者は、疾患を処置することから利益を得うる対象又は患者又は前記疾患が防止されるべき対象又は患者を含む。そのような対象又は患者は、疾患についてスクリーニングのために医師に提示する患者、疾患を示している症状及び徴候を伴い、医師に提示する患者、その疾患と診断された患者、疾患に罹患する又はそれを発生する傾向のある患者、疾患の処置を受けてきた又は受けている患者、及び緩解にある本明細書中で教示する疾患を有する患者を含むが、これらに限定しない。美容的処置に関連する態様及び実施形態では、対象において病的状態の存在を意味しない用語「対象」は、用語「患者」を上回り好まれうる。特定の介入(例えば所与の状態の処置など)を「必要としている対象」などの語句は、その状態の処置から利益を得うる対象を含む。対象が所与の介入(例えば処置など)を受ける必要性の存在又は非存在は、種々の診断方法又は利益評価方法(本明細書中の他で記載されている方法及び使用を含む)により推測されうる。
【0127】
本明細書中で使用するように、「酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患」は、皮膚中の組織又は細胞の損傷に導く、皮膚組織又は細胞中のフリーラジカル(特に酸化促進を促す活性酸素種(ROS)又は活性窒素種(RNS)など)の産生及び解毒の間の不均衡に関連付けられる、それに寄与する、それにより起こされる、又はそれに起因する疾患又は疾患の症状を広く指す。ROSの非限定的な例は、スーパーオキシドアニオン、ヒドロペルオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素、次亜塩素酸アニオン、tert-ブチルヒドロペルオキシドなどを含む。RNSの非限定的な例は、一酸化窒素(NO)、ペルオキシナイトライト(ONOO-)などを含む。酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患は、皮膚だけに影響を及ぼしうる、あるいは、皮膚に加えて1つ又は複数の他の組織又は臓器に影響を及ぼしうる。酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患は慢性又は急性でありうる。任意の理論に拘泥することを望まないが、皮膚中の酸化ストレスは慢性炎症に導きうるが、それは次にコラーゲンのフラグメント化とコラーゲン繊維及び皮膚細胞機能の混乱を起こしうる;さらに、酸化ストレスは、発癌の全てではないにしても大半の段階にも関与していると報告されている。
【0128】
特定の実施形態では、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患は、光線角化症(AK)、基底細胞癌(BCC)、扁平上皮癌(SCC)、頭部粃糠疹、脂漏性皮膚炎、ざ瘡、炎症、皮膚炎、乾癬、湿疹、酒さ、蕁麻疹、及び白斑を含む、それらから本質的になる、又はそれらからなる群より選択される。特定の好ましい実施形態では、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患はAKである。さらに好ましい実施形態では、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患はBCCである。さらに好ましい実施形態では、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患はSCCである。さらに好ましい実施形態では、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患は頭部粃糠疹である。さらに好ましい実施形態では、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患は脂漏性皮膚炎である。
【0129】
任意のそのような疾患は、酸化ストレスに関連するもの以外の構成成分、側面、又はプロセスを含みうる。特定の実施形態では、本発明の予防的使用又は方法は、任意のそのような疾患の酸化ストレス構成成分、側面、又はプロセスを処置する、それに対処する、又はそれに作用し、例えば、それらによって、皮膚組織又は細胞中の酸化還元バランスが改善又は回復する。
【0130】
本明細書中で教示する美容的な使用又は方法は、一般的に、本明細書中で教示する、美容的組成物の美容的に効果的な量、すなわち、対象において皮膚老化の防止又は低下に関連する美容的効果を誘発するために十分な量を対象の皮膚に投与することを含み、それは、単一用量又は複数用量のいずれかにおいて、美容専門家又は美容師により求められている。本明細書中で教示する予防的又は治療的な使用又は方法は、一般的に、本明細書中で教示する予防的又は治療的に効果的な量の医薬的組成物を対象の皮膚に投与することを含む。用語「治療的に効果的な量」は、一般的に、医学的な施術者(医師、臨床医、外科医、獣医、又は研究者など)により求められている、対象において薬理学的効果又は医薬品応答を誘発するのに十分な量を表示し、それは、とりわけ、単一用量又は複数用量のいずれかにおける、処置されている疾患の症状の軽減を含みうる。用語「予防的に効果的な量」は、一般的に、単一用量又は複数用量のいずれかにおいて、医学的な施術者により求められている、対象において予防効果、例えば疾患の発症の阻害又は遅延などを誘発するために十分な量を表示する。本発明の組成物の適切な美容的に効果的な用量は、患者の年齢及び皮膚状態への十分な注意を伴う美容専門家により決定されうる。本発明の組成物の適切な予防的又は治療的に効果的な用量は、疾患の性質及び重症度、ならびに患者の年齢及び状態への十分な注意を伴う資格のある医師により決定されうる。投与される本明細書中に記載する組成物の効果的な量は、多くの異なる因子に依存しうる、及びルーチン的な実験を通じて当業者により決定されうる。考慮されうるいくつかの非限定的な因子は、活性成分の生物学的活性、活性成分の性質、処置される対象の特性などを含む。
【0131】
用語「投与する」は、一般的に、分注又は適用することを意味し、典型的には、組織へのインビボ投与及びエクスビボ投与の両方、好ましくはインビボ投与を含む。一般的に、組成物は全身的又は局所的に投与してもよい。本発明の美容的、予防的、又は治療的な処置の性質、及び活性成分の性質を考慮すると、本発明の組成物は、好ましくは、対象の皮膚への局所投与用に形成されうる。
【0132】
美容的及び医学的分野において一般的に使用される用語「局所投与」は、身体の一部への直接的な組成物の適用を表示する。特に本発明の場合では、この用語は、美容的又は薬理学的効果が求められている、対象の皮膚上、特に対象の皮膚の表面上、さらに特に対象の皮膚の表面の一部、領域、又は部位上への局所投与を指す。局所投与は、典型的には、任意の全身的な効果を意図しておらず、誘発しない。
【0133】
本明細書中に開示する美容的又は医薬的組成物は、典型的には、1つ又は複数の活性物質に加えて、1つ又は複数の美容的又は医薬的に許容可能な担体を含む。
【0134】
本明細書中で使用するように、用語「担体」又は「賦形剤」は互換的に使用され、任意の及び全ての溶剤、希釈剤、緩衝液(例えば、例、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、又は場合によりTris-HCl、酢酸緩衝液又はリン酸緩衝液など)、可溶化剤(例えば、例、Tween(登録商標)80、ポリソルベート80など)、コロイド、分散培地、溶媒、充填剤、キレート剤(例えば、例、EDTA又はグルタチオンなど)、アミノ酸(例えば、例、グリシンなど)、タンパク質、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、香料、芳香剤、増粘剤、デポー効果を達成するための薬剤、コーティング、抗真菌剤、保存剤(例えば、例、Thimerosal(商標)、ベンジルアルコールなど)、抗酸化剤(例えば、例、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウムなど)、張性制御剤、吸収遅延剤、アジュバント、増量剤(例えば、例、ラクトース、マンニトールなど)などを広く含む。医薬的及び美容的な組成物の製剤化のためのそのような培地及び薬剤の使用は、当技術分野において周知である。
【0135】
水性、粉末、もしくは油性の基剤、又は増粘剤がまた、皮膚への局所投与用の調製物中で使用されうる。そのような成分の例は、種々のヒドロキシル化化合物、例えばモノマーグリコール(例、プロピレングリコール)、エチルアルコール、グリセリン及びブチレングリコールなど、高分子保湿剤、例えばポリグリセリルメタクリレート、パルミテート及びステアレートの誘導体、脂肪酸のトリグリセリド、ラノリン、植物油又は鉱油、及びワックスなどを含む。
【0136】
特定の実施形態では、生きたC.アクネス株を含む組成物は、細菌を安定化するための培地をさらに含みうる。これらの培地は、例えば、純水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ペプトン(例、カゼイン又は肉からのトリプシン消化又は酸消化ペプトン)、適した成長培地の希釈もしくは非希釈バージョン、又はそれらの任意の組み合わせを含みうる。一部の実施形態では、細菌組成物中のペプトンのパーセンテージは、約0.05% w/v又は約0.1% w/vであり、0.005% w/vから1% w/vまで、又は0.05% w/vから1% w/vまでの範囲でありうる。一部の実施形態では、ペプトンのパーセンテージは、0.005% w/v未満である、又は1% w/vを上回る、又は約0.25% w/vである。他の実施形態では、適した成長培地が、ペプトンに加えて、又はその代わりに使用される。
【0137】
特定の実施形態では、組成物は緩衝液を含みうる。緩衝液は、組成物のpHを安定化するのを助けることができる。実施形態では、pHは4.5から8の間である。例えば、pHは約4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、又は8.0(その間の任意の値を含む)でありうる。一部の実施形態では、pHは約7.0である。緩衝液の非限定的な例は、ACES、酢酸、ADA、水酸化アンモニウム、AMP(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール)、AMPD(2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール)、AMPSO、BES、BICINE、ビス-トリス、BIS-TRISプロパン、ホウ酸、CABS、カコジル酸、CAPS、CAPSO、炭酸(pK1)、炭酸(pK2)、CHES、クエン酸(pK1)、クエン酸(pK2)、クエン酸(pK3)、DIPSO、EPPS、HEPPS、エタノールアミン、ギ酸、グリシン(pK1)、グリシン(pK2)、グリシルグリシン(pK1)、グリシルグリシン(pK2)、HEPBS、HEPES、HEPPSO、ヒスチジン、ヒドラジン、イミダゾール、リンゴ酸(pK1)、リンゴ酸(pK2)、マレイン酸(pK1)、マレイン酸(pK2)、MES、メチルアミン、MOBS、MOPS、MOPSO、リン酸(pK1)、リン酸(pK2)、リン酸(pK3)、ピペラジン(pK1)、ピペラジン(pK2)、ピペリジン、PIPES、POPSO、プロピオン酸、ピリジン、ピロリン酸、コハク酸(pK1)、コハク酸(pK2)、TABS、TAPS、TAPSO、タウリン(AES)、TES、トリシン、トリエタノールアミン(TEA)、及びTrizma(トリス)を含む。
【0138】
一部の実施形態では、組成物は増粘剤を含みうる。増粘剤の非限定的な例は、ヒドロキシエチルセルロース(例、NATROSOL(登録商標))、デンプン、ガム(例えばアラビアガム、カオリン、又は他の粘土など)、水和ケイ酸アルミニウム、ヒュームドシリカ、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム又は他のセルロース誘導体、エチレングリコールモノステアレート及びアルギン酸ナトリウムを含む。一部の実施形態では、ヒドロキシエチルセルロースの粘性型は、HHR-P、HH、H4、H、MH、M、K、G、E、又はLである。一部の実施形態では、増粘剤(例えばヒドロキシエチルセルロースなど)の濃度は約l%~5% w/vである。例えば、濃度は約1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、又は5.0% w/vである。他の実施形態では、増粘剤(例えばヒドロキシエチルセルロースなど)の濃度は1% w/v未満又は5% w/vを上回る。一部の実施形態では、増粘剤(例えばヒドロキシエチルセルロースなど)の濃度は約1.5% w/vである。一部の実施形態では、増粘剤(例えばヒドロキシエチルセルロースなど)の濃度は約2.5% w/vである。
【0139】
一部の実施形態では、組成物は溶剤又は界面活性剤を含みうる。溶剤の非限定的な例は、水、エチルアルコール、トルエン、塩化メチレン、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、ヒマシ油、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、及びテトラヒドロフランを含む。i)陰イオン性界面活性剤、例えば脂肪酸の金属塩又はアルカノールアミン塩など(例えば、ナトリウムラウレート及びトリエタノールアミンオリエート);アルキルベンゼンスルホン(例えば、トリエタノールアミンドデシルベンゼンスルホン酸);アルキル硫酸(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム);アルキルエーテル硫酸(例えば、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(2から8EO));スルホコハク酸(例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム);モノグリセリド硫酸(例えば、グリセリルモノステアレート一硫酸ナトリウム);イソチオネート(例えば、イソチオネートナトリウム);メチルタウリド(例えば、Igepon T);アシルサルコシネート(例えば、ナトリウムミリスチルザルコシネート);アシルペプチド(例えば、メイポン及びラメポン);アシルラクチレート、ポリアルコキシル化エーテルグリコレート(例えば、トリデセス-7カルボン酸);リン酸(例えばジラウリルリン酸ナトリウム);カチオン性界面活性剤、例えばアミン塩など(例えば、塩酸サパミン);四級アンモニウム塩(例えば、クオタニウム5、クオタニウム31、及びクオタニウム18);両性界面活性剤、例えばイミダゾール化合物など(例えば、ミラノール);Nアルキルアミノ酸、例えばコカミノプロピオン酸ナトリウム及びアスパラギン誘導体など;ベタイン(例えば、コカミドプロピルベタイン);非イオン性界面活性剤、例えば脂肪酸アルカノールアミドなど(例えば、オレイン酸エタノールアミドなど);エステル又は多価アルコール(例えば、スパン);ポリグリセリンエステル(例えば、脂肪酸及び1つ又はいくつかのOH基を用いてエステル化されたもの);ポリアルコキシル化誘導体(例えば、ポリオキシ);ポリオキシエチレンステアレート;エーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル);エステルエーテル(例えば、Tween(登録商標)、例えばTween 80(ポリソルベート80)など);アミンオキシド(例えば、ココナッツ及びドデシルジメチルアミンオキシド)を含む。
【0140】
特定の実施形態では、組成物は皮膚軟化剤を含みうる。皮膚軟化剤の非限定的な例は、ステアリルアルコール、グリセリルモノリシノラート、グリセリルモノステアレート、プロパン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ミンク油、セチルアルコール、イソプロピルイソステアレート、ステアリン酸、イソブチルパルミテート、イソセチルステアレート、オレイルアルコール、イソプロピルラウレート、ヘキシルラウレート、デシルオリエート、オクタデカン-2-オール、イソセチルアルコール、セチルパルミテート、ジメチルポリシロキサン、セバシン酸ジ-n-ブチル、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、イソプロピルステアレート、ブチルステアレート、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ラノリン、ゴマ油、ココナッツ油、アラキス油、ヒマシ油、アセチル化ラノリンアルコール、石油、ミネラル油、ブチルミリステート、イソステアリン酸、パルミチン酸、イソプロピルリノレート、ラウリルラクテート、ミリスチルラクテート、デシルオリエート、ミリスチルミリステートを含む。
【0141】
特定の実施形態では、組成物は保湿剤を含みうる。保湿剤の非限定的な例は、グリセリン、ソルビトール、2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウム、可溶性コラーゲン、フタル酸ジブチル、又はゼラチンを含む。
【0142】
一部の実施形態では、組成物は収斂剤を含みうる。収斂剤の非限定的な例は、アルニカの花又はその抽出物、低級アルキルアルコール、マンサク、ホウ酸、乳酸、メトール、カンファー、フェノールスルホン酸亜鉛、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、及び塩化亜鉛又は硫酸亜鉛を含む。
【0143】
一部の実施形態では、組成物は色素を含みうる。色素の非限定的な例は、二酸化チタン、雲母、酸化鉄、バリウムレーキ、カルシウムレーキ、アルミニウムレーキ、オキシ塩化ビスマス、ジルコニウムレーキ、及び酸化カルシウムを含む。
【0144】
一部の実施形態では、組成物は着色剤を含む。着色剤の非限定的な例は、シコニン、βカロテン、パプリカ、モナスカス、ベニバナ赤、ベニバナ黄、赤キャベツ色、紫イモ色、リコピン、カカオ色、ブドウ色、コチニール、ラック色、ビートレッド、ヘマテイン、赤No.215、赤No.218、赤No.223、赤No.225、オレンジNo.201、オレンジNo.206、黄No.201、緑No.202、及び紫No.201、赤No.2、赤No.3、赤No.102、赤No.104(1)、赤No.105(1)、赤No.106、黄No.4、黄No.5、緑No.3、青No.1、青No.2、赤No.201、赤No.213、赤No.214、赤No.227、赤No.230(1)、赤No.230(2)、赤No.231、赤No.232、オレンジNo.205、オレンジNo.207、黄No.202(1)、黄No.202(2)、黄No.203、緑No.201、緑No.204、緑No.205、青No.202、青No.203、青No.205、及び茶No.201を含む。
【0145】
一部の実施形態では、組成物は、UV-A及びUV-B放射線フィルター、日焼け止め剤、フリーラジカル遮断剤、ビタミン抽出物、又は抗酸化剤の任意の1つ又は複数を含みうる。
【0146】
一部の実施形態では、組成物は香料を含みうる。
【0147】
本明細書中に開示する組成物中に含まれうる賦形剤を、本明細書中にさらに記載する。
【0148】
特定の好ましい実施形態では、1つ又は複数の増粘剤は、カルボマー、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、アンモニウムアクリロイルジメチルタウレート/VPコポリマー、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、セルロースガム、酢酸プロピオン酸セルロースカルボキシレート、セチルヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、加水分解セルロースガム、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、微結晶セルロース、硫酸ナトリウムセルロース、アクリレートコポリマー、アクリレートクロスポリマー4、ポリアクリレート1クロスポリマー、アクリレート/ステアレス20メタクリレートコポリマー、アクリレート/ベヘネス25メタクリレートコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されうる。
【0149】
特定の好ましい実施形態では、1つ又は複数のUVフィルターは、2-フェニル-3H-ベンズイミダゾール-5-スルホン酸及び/又はその塩;フェニレン-1,4-ビス-(2-ベンズイミダジル)-3,3’-5,5’-テトラスルホン酸及びその塩(例えば、(CTFA):フェニルジベンズイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム);1,4-ジ(2-オキソ-10-スルホ-3-ボルニリデン-メチル)ベンゼン及びその塩;4-ヒドロキシ-2-メトキシ-5-(オキソ-フェニルメチル)ベンゼンスルホン酸及びその塩(例えば(CTFA):ベンゾフェノン4、ベンゾフェノン5);4-(2-オキソ-3-ボルニリデンメチル)ベンゼンスルホン酸及びその塩;2-メチル-5-(2-オキソ-3-ボルニリデンメチル)スルホン酸及びその塩;テレフタリリデンジカンファースルホン酸;ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択されうる。
【0150】
また、UV照射からの保護のために適しているのは、UVAフィルター物質及び/又は少なくとも1つのUVBフィルター物質、無機色素、ビスレゾルシニルトリアジン誘導体、2,4-ビス-{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジンジオクチルブタミドトリアゾン、オクチルトリアゾン、ビスレゾルシニルトリアジン誘導体、2,4-ビス-{[4-(3-スルホナト)-2-ヒドロキシ-プロピルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジンナトリウム塩、2,4-ビス-{[4-(3-(2-プロピルオキシ)-2-ヒドロキシ-プロピルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス-{[4-(2-エチル-ヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-[4-(2-メトキシエチル-カルボキシル)-フェニルアミノ]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス-{[4-(3-(2-プロピルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-[4-(2-エチル-カルボキシル)-フェニルアミノ]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス-({[4-(2-エチル-ヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-1-メチル-ピロール-2-イル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス-{[4-トリス(トリメチルシロキシ-シリルプロピルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス-{[(-メチルプロペニルオキシ2’’)-2-ヒドロキシ4-]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン及び2,4-ビス-{[4-(1’,1’,1’,3’,5’,5’,5’-ヘプタメチルシロキシ-2’’-メチルプロピルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、ビスイミダジレート(Bisimidazylate)、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、テレフタリデンジカンファースルホン酸、4-(2-オキソ-3-ボルニリデンメチル)ベンゼンスルホン酸、2-メチル-5-(2-オキソ-3-ボルニリデンメチル)スルホン酸、1,4-ジ(2-オキソ-10-スルホ-3-ボルニリデンメチル)ベンゼン、3-ベンジリデンカンファー誘導体、4-アミノ安息香酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ホモメンチルサリチル酸、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-エチルヘキシル-2-ヒドロキシ安息香酸、4-メトキシケイ皮酸(2-エチルヘキシル)エステル、ホモサレート、オクトクリレン、サリチル酸オクチル、メトキシケイ皮酸オクチル、pメトキシケイ皮酸イソアミル、(3-(4-(2,2-ビス-エトキシカルボニルビニル)フェノキシ)プロペニル)-メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ジベンゾイルメタン誘導体、4-(tert-ブチル)-4’-メトキシジベンゾイルメタン、4-イソプロピル-ジベンゾイルメタン、Tinosorb M(登録商標)、ベンゾトリアゾール、ドロメトリゾールトリシロキサン[2,4’-ジヒドロキシ-3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-2’-n-オクトキシ5’-ベンゾイル]ジフェニルメタン、2,2’メチレン-ビス-[6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(メチル)フェノール]、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-(2’-ヒドロキシ-5’-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’ベンゾトリアゾール、5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)、フェニレン-1,4-ビス-(2-ベンズイミダジル)-3,3’-5,5’-テトラスルホン酸及びその塩、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸の塩、1,4-ジ(2-オキソ-10-スルホ-3-ボルニリデンメチル)ベンゼン、3-ベンジリデンカンファーのスルホン酸誘導体、アニソトリアジン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、エチルヘキシルトリアゾン、2,2’-メチレン-ビス-(6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノール)、ドロメトリゾールトリシロキサン、3-ベンジリデンカンファー誘導体、4-アミノ安息香酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、3-(4-(2,2-ビスエトキシカルボニルビニル)フェノキシ)プロペニル)-メトキシシロキサン/ジメチルシロキサンジベンゾイルメタン誘導体[例えば、4-(tert-ブチル)-4’-メトキシジベンゾイルメタン、フェニレン-1,4-ビス-(2-ベンズイミダジル)-3,3’-5,5’-テトラスルホン酸及び/又はその塩、1,4-ジ(2-オキソ-10-スルホ-3-ボルニリデンメチル)ベンゼン及び/又はその塩及び/又は2,4-ビス-{[4-(2エチル-ヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、金属酸化物、TiO2、ZnO、Fe2O3、ZrO2、SiO2、MnO、Al2O3、Ce2O3、Aerosil(登録商標)、表面処理無機色素、ジブロモジシアノブタン(2-ブロモ-2-ブロムメチルグルタロジニトリル)、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート、2-ブロモ-2-ニトロ-プロパン-1,3-ジオール、イミダゾリジニル尿素、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-クロロアセトアミド、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、ホルムアルデヒド供与体、ならびにそれらの組み合わせである。
【0151】
特定の好ましい実施形態では、組成物は、極性油、例えば、レシチン及び脂肪酸トリグリセリドの群からの極性油、すなわち、8から24の鎖長、特に12から18のC原子を有する飽和及び/又は不飽和、分岐及び/又は非分岐アルカンカルボン酸のトリグリセロールエステルを含みうる。脂肪酸トリグリセリドは、例えば、合成油、半合成油、及び天然油の群(例えばオリーブ油、ヒマワリ油、大豆油、ピーナッツ油、菜種油、アーモンド油、パーム油、ココナッツ油、ヒマシ油、小麦胚芽油、ブドウ種子油、ベニバナ油、イブニングプリムローズ油、マカデミアナッツなど)から有利に選ぶことができる。極性油の特に好ましい例は、トリイソステアリン、カプリル/カプリックトリグリセリド又は炭酸塩(例えば炭酸ジ-n-オクチルなど)、及びそれらの組み合わせである。
【0152】
より極性の高い油成分を、3から30の炭素原子の鎖長を有する飽和及び/又は不飽和、分岐及び/又は非分岐アルカンカルボン酸、ならびに3から30の炭素原子の鎖長を有する飽和及び/又は不飽和、分岐及び/又は非分岐アルコールのエステルの群より、及び芳香族カルボン酸ならびに3から30の炭素原子の鎖長を伴う飽和及び/又は不飽和、分岐及び/又は非分岐アルコールのエステルの群、ならびにそれらの組み合わせより選択することができる。そのようなエステルは次に、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、イソプロピルステアレート、イソプロピルオリエート、n-ブチルステアレート、n-ヘキシルラウレート、n-デシルオリエート、イソオクチルステアレート、イソオクチルノナノエート、イソノニルステアラト、イソノニルイソノナノエート、イソデシルネオペンタノエート、セテアリルイソノナノエート、オクチルココエート、トリデシル、ヘキサカプラト、トリデシル、セテアリルイソノナノエート、ヘキサカプリラト、ジカプレート、ジカプリラト、2-エチルヘキシルパルミテート、2-エチルヘキシルラウレート、2-ヘキシルデシルステアレート、2-オクチルドデシルパルミテート、オレイルオレエート、オレイルエルケート、エルシルオレエート、エルシルエルケート、ならびにそのようなエステルの合成、半合成、及び天然の合成物(例えばホホバ油など)からなる群より有利に選択することができる。
【0153】
水/油エマルジョンについては、油相は、ジアルキルエーテルの群、飽和又は不飽和、分岐又は非分岐アルコール(例えばオクチルドデカノールなど)の群より有利に選ぶことができる。例えば、W/Oエマルジョンの油相は、C12-15-アルキルベンゾエートの含量を有しうる。
【0154】
化粧品におけるゲルベアルコールの使用は、それ自体が公知である。そのような種は次に、大半の場合において、以下の構造により特徴付けられる:
【化6】
【0155】
原則として、R1及びR2は非分岐アルキルラジカルである。
【0156】
例えば、ゲルベアルコールは、R1がプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又はオクチルであり、及びR2がヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、又はテトラデシルである群より選択されうる。
【0157】
好ましいゲルベアルコールは2-ブチルオクタノール:
【化7】
又は2-ヘキシルデカノール:
【化8】
又はそれらの混合物(商業的に入手可能)でありうる。
【0158】
完成した美容的又は皮膚科用調製物中のゲルベットアルコールの総量は、調製物の総重量に基づいて、25.0重量%、好ましくは0.5~15.0重量%までの範囲より有利に選んでもよい。
【0159】
さらに適したエステルはセチルパルミテートである。
【0160】
非極性油は、例えば、分岐及び非分岐炭化水素及びワックス、特に石油ゼリー(ワセリン)、パラフィン油、スクアラン及びスクアレン、ポリオレフィン、及び水素化ポリイソブテンの群より選んでもよい。ポリオレフィンの間で、ポリデセンが好ましい物質である。
【0161】
他の賦形剤は、環状及び/又は線状シリコーン、ならびにシリコーン油の群より選択してもよい。
【0162】
フェニルトリメチコンをシリコーンオイルとして有利に選んでもよい。他のシリコーン油、例えばジメチコン、フェニルジメチコン、シクロメチコン(オクタメチルシクロテトラシロキサン)、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、セチルジメチコン、ベヘノキシジメチコンなどを有利に使用してもよい。
【0163】
シクロメチコン及びイソトリデシルイソノナノエートの混合物、ならびにシクロメチコン及び2-エチルヘキシルイソステアレートの混合物がさらに有利である。また、有機側鎖が誘導体化されている、例えば、ポリエトキシル化及び/又はポリプロポキシル化されている上に記載する化合物と同様の構成のシリコーン油を選ぶことが有利である。この目的のために、ポリシロキサン-ポリアルキル-ポリエーテルコポリマー(例えばセチルジメチコンコポリオールなど)は、例えば、(セチルジメチコンコポリオール(及び)ポリグリセリル-4イソステアレート(及び)ヘキシルラウレート)を含む。他の賦形剤は、植物ワックス、動物ワックス、鉱物ワックス、石油化学ワックス、及びそれらの組み合わせの群より選択してもよい。例えばカンデリラワックス、カルナウバワックス、ジャパンワックス、エスパルトグラス、コルクワックス、グアルマワッチ、米胚芽油ワックス、サトウキビワックス、ベリーワックス、オリキュリーワックス、モンタンワックス、ホホバワックス、シアバター、ミツロウ、シェラックワックス、スペルマセチ、ラノリン(ウールワックス)、尾脂腺グリース、セレシン、オゾケライト(アースワックス)、パラフィンワックス及びマイクロワックス、シンクロワックスHRC(グリセリルトリベヘネート)、シンクロワックスHGLC(C16-36-脂肪酸トリグリセリド)及びシンクロワックスAW 1C(C18-36脂肪酸)(Croda GmbH及びDynasantypen、Montanesterwachseより入手可能)、サソルワックス、水素化ホホバワックス、合成又は変性ミツロウ(例えば、ジメチコンコポリオールミツロウ及び/又はC30-50アルキルミツロウ)、ポリアルキレンワックス、ポリエチレングリコールワックスなど、しかし、また、化学修飾脂肪、例えば硬化植物油(例えば、硬化ヒマシ油及び/又は硬化ココナッツ脂肪グリセリド)など、トリグリセリド、例えばトリヒドロキシステアリンなど、脂肪酸、脂肪酸エステル、及びグリコレスター、例えばC20-40アルキルステアレート、C20-40アルキルヒドロキシステアロイルステアレート及び/又はグリコールモンタネート、ならびにそれらの組み合わせ。また、有利でありうるのは、特定の脂肪及び/又はワックス成分(例えばステアロキシトリメチルシランなど)と同様の物理的特性を有する特定の有機ケイ素化合物である。
【0164】
油相は、2-エチルヘキシルイソステアレート、オクチルドデカノール、イソトリデシル、ブチレングリコールジカプリレート/ジカプレート、C12-15-アルキルベンゾエート、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ジカプリリルエーテル、及びそれらの組み合わせの群より有利に選択してもよい。
【0165】
有利でありうるのは、オクチルドデカノール、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ジカプリリルエーテル、炭酸オクチル、ココグリセリド、又はC12-15-アルキルベンゾエート及び2-エチルヘキシルイソステアレートの混合物、C12-15-アルキルベンゾエート及びブチレングリコールジカプリレート/ジカプレートの混合物、ならびにC12-15-アルキルベンゾエート、2-エチルヘキシルイソステアレート、イソトリデシル、及びそれらの組み合わせの混合物である。
【0166】
炭化水素のうち、パラフィン油、シクロパラフィン、スクアラン、スクアレン、水素化ポリイソブテン、ポリデセン、及びそれらの組み合わせを有利に使用してもよい。
【0167】
さらなる賦形剤は、レシチン、ラノリン、パラフィン油(鉱物油)と混合した微結晶ワックス(Cera microcristallina)、オゾケライト、硬化ヒマシ油、ポリグリセリル-3オリエート、ウールワックス酸混合物、ウールワックスアルコール混合物、ペンタエリスリチルイソステアレート、ポリグリセリル-3-ジイソステアレート、ミツロウ(セラアルバ)及びステアリン酸、イソプロピルヒドロキシセチルエーテルとの混合物中のジヒドロキシセチルリン酸ナトリウム、メチルグルコースジオレエート、ヒドロキシステアレートワックス及びミツロウと混合したメチルグルコース、ワセリン及びオゾケライトならびにグリセリルオリエート及びラノリンと混合した鉱油、オゾケライト及び硬化ヒマシ油ならびにグリセリル及びポリグリセリル-3オリエートとのワセリン混合物、PEG-7硬化ヒマシ油、オゾケライト及び硬化ヒマシ油、ポリグリセリル-4イソステアレート、ヘキシルラウレート及びセチルジメチコンコポリオールとの混合物中のポリグリセリル-4イソステアレート、ラウリルメチコンコポリオール、セチルジメチコンコポリオール、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、ポロキサマー101、ポリグリセリル-3-メチルグルコースジステアレート、ポリグリセリル-2ジポリヒドロキシステアレート、ポリグリセリル-3ジイソステアレート、ポリグリセリル-4ジポリヒドロキシステアレート、PEG-30ジポリヒドロキシステアレート、ジイソステアロイルポリグリセリル-3-ジイソステアレート、ポリグリセリル-2-ジポリヒドロキシステアレート、 ポリグリセリル-3ジポリヒドロキシステアレート、ポリグリセリル-4ジポリヒドロキシステアレート、ポリグリセリル-3ジオレエート、及びそれらの組み合わせを含みうる。
【0168】
水/油エマルジョンは、所望の場合、特に、一般的にO/W乳化剤として作用する以下の物質の群より有利に選択される1つ又は複数の共乳化剤を含みうる:セテアレス-20との混合物中のグリセリルステアレート、セテアレス-25、ステアリルアルコールとの混合物中のセテアレス-6、トリセテアレス-4リン酸、セチルステアリル硫酸ナトリウム、レシチントリラウレス-4リン酸、ラウレス-4リン酸、ステアリン酸、プロピレングリコールステアレートSE、PEG-25水素化ヒマシ油、PEG-54水素化ヒマシ油、PEG-6カプリル酸/カプリン酸グリセリド 、プロピレングリコールセテス-2との混合物中のグリセリルオリエート、セテス-20、ポリソルベート60、PEG-100ステアレートとの混合物中のグリセリルステアレート、ラウレス-4、セテアレス-3、イソステアリルグリセリルエーテル、セチルステアリル硫酸ナトリウムとの混合物中のセチルステアリルアルコール、ラウレス-23、ステアレス-2、PEG-30ステアレートとの混合物中のグリセリルステアレート、PEG-40ステアレート、グリコールジステアレート、PEG-22ドデシルグリコールコポリマー、ポリグリセリル-2 PEG-4ステアレート、セテアレス-20、メチルグルコース、ステアレス-10、PEG-20ステアレート、PEG-8ジステアレートとの混合物中のステアレス-2、ステアレス-21、ステアレス-20、イソステアレス20、PEG-45/ドデシルグリコールコポリマー、メトキシPEG-22/ドデシルグリコールコポリマー、PEG-20グリセリルステアレート、PEG-20グリセリルステアレート、PEG-8ミツロウ、ポリグリセリル-2ラウレート 、イソステアリルジグリセリルスクシナート、ステアラミドプロピルPG-塩化ジモニウムリン酸、グリセリルステアレートSE、セテス-20、トリエチルシトレート、PEG-20メチルグルコースセスキステアレート、セテアレス-12、グリセリルステアレート、セチルリン酸、トリセテアレス-4リン酸、トリラウレス-4リン酸、ポリグリセリルメチルグルコースジステアレート、リン酸セチルカリウム、イソステアレス-10、ポリグリセリル-2-セスキイソステアレート、セテス-10、オレト-20、イソセテス-20、セテアレス-20との混合物中のグリセリルステアレート、セテアレス-12、セトステアリルアルコール及びセチルアルコール、PEG-20ステアレートとの混合物中のセチルステアリルアルコール、PEG-30ステアレート、PEG-40ステアレート、PEG-100ステアレート。
【0169】
また、適しているのは、シリコーン乳化剤、アルキルメチコン及び/又はアルキルジメチコンコポリオール、ABIL(登録商標)B8842、ABIL(登録商標)B8843、ABIL(登録商標)B8847、ABIL(登録商標)B8851、ABIL(登録商標)B8852、ABIL(登録商標)B8863、ABIL(登録商標)B8873、及びABIL(登録商標)B8883でありうる。
【0170】
当業者は、任意の数のそのような担体又は賦形剤を組成物中に含めてもよいことを認識しなければならない。
【0171】
特定の実施形態では、組成物は、ゲル、クリーム、軟膏、ローション、液滴、スプレー(エアゾールスプレーを含む)、泡、又は粉末として製剤化してもよい。特定の実施形態では、組成物は、マスク、パッド、パッチ、2チャンバーデバイス(2成分分注システム)、又は化粧品により構成されうる。本発明の組成物は、典型的には、「リーブオン」組成物として意図されうる。
【0172】
本発明の組成物は、1回又は複数回投与することができる。特定の実施形態では、組成物は規則的な間隔で投与され、他の実施形態では、それは不規則な間隔で投与される。例えば、組成物は、1日4回、1日3回、又は1日2回、又は毎日、又は2日、3日、4日、もしくは5日毎、又は週1回、又は2週、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、もしくは8週間又はそれ以上もしくはそれ以下に1回の頻度(その間の全ての値を含む)で投与されうる。
【0173】
組成物の投与の持続時間は、限定されうる、又は限定されない、もしくは制約はないであろう。例えば、投与は、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月間、又は1、2、3、4、もしくは5年間又はそれ以上にわたり持続されうる。
【0174】
また、提供するのは、キット中の本明細書において言及する組成物のいずれかである。一部の実施形態では、キットは、生きた細菌を収容する容器又は凍結乾燥された生きた細菌を収容する容器を含む。キットは、培地(例えばペプトンなど)を含む第2の容器を含むことができる。一部の実施形態では、キットは、抗生物質、消毒剤(例、BPO)、及び/又はサリチル酸を含むことができる。一部の実施形態では、抗生物質、消毒剤、及び/又はサリチル酸を使用し、生きた細菌を含む組成物の適用前に皮膚を前処理する。キットはまた、組成物を投与するための指示を含むことができる。特定の実施形態では、指示が、細菌株を組成物の他の成分と混合するために提供される。一部の実施形態では、キットはさらに、細菌組成物を対象に適用するための塗布器を含む。
【0175】
さらなる態様は、対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を診断するための方法を提供し、この方法は、対象からの皮膚サンプル中のRoxPの量又はC.アクネスの量を決定することを含む。特定の実施形態では、前記の酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患は、AK、BCC、SCC、頭部粃糠疹、脂漏性皮膚炎、ざ瘡、炎症、皮膚炎、乾癬、湿疹、酒さ、蕁麻疹、及び白斑を含む群より選択されうる。
【0176】
別の態様は、対象がRoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得るか否かを決定するための方法を提供し、この方法は、対象からの皮膚サンプル中のRoxPの量又はC.アクネスの量を決定することを含む。
【0177】
用語「診断」は普通にみられ、医療業務において十分に理解されている。さらなる説明を用いて、限定しないが、用語「診断」、又はその代替形態、例えば「診断する」などは、一般的に、症状及び徴候に基づき、ならびに/あるいは種々の診断手順の結果から(例えば、診断された疾患又は状態に特徴的な1つ又は複数のバイオマーカーの存在、非存在、及び/又は量を知ることから、など)対象において疾患又は状態を認識する、判定する、又は結論付けるプロセス又は行為を指す。
【0178】
本明細書中で使用する用語「診断」はまた、疾患のモニタリング、予後、又は予測としてより具体的に言及されうる診断実践の側面を広く包含する。用語「モニタリング」は、一般的に、経時的に起こりうる任意の変化についての、対象における疾患又は状態の経過観察を指す。用語「予後」は、一般的に、疾患又は状態の進行及び回復の見通し(例、確率、期間、及び/又は程度)に関する予測を指す。疾患又は状態の良好な予後は、好ましくは許容可能な期間内に、疾患又は状態からの満足な部分的又は完全な回復の予測を包含しうる。良好な予後はまた、一般に、好ましくは所与の期間内に、疾患又は状態のさらなる悪化又は増悪の予測を包含しうる。疾患又は状態の不良な予後は、一般的に、標準以下の回復及び/又は不満足な遅い回復の予測、あるいは実質的に回復がない、又は疾患もしくは状態のさらなる悪化すら包含しうる。
【0179】
用語「予測する」又は「予測」というは、一般的に、(まだ)前記疾患又は状態を有していない対象における疾患又は状態の事前の宣言、示唆、又は予言を指す。例えば、対象における疾患又は状態の予測は、対象が、例えば、特定の期間内又は特定の年齢までに、前記疾患又は状態を発生する確率、可能性、又はリスクを示しうる。前記の確率、可能性、又はリスクは、とりわけ絶対値、範囲、又は統計値として示されうる、又は適したコントロール対象又は対象集団に比べて(例えば、例、一般的な、正常な、又は健常な対象又は対象集団に比べて)示されうる。それ故に、対象が疾患又は状態を発生する確率、可能性、又はリスクは、適してコントロール対象又は対象集団に比べた、増加もしくは減少として、又は倍増加もしくは倍減少として有利に示されうる。
【0180】
疾患もしくは状態を診断するための、又は対象が所与の行動又は処置の経過から利益をうるか否かを決定するための本発明の方法は、1つ又は複数のインビトロ処理及び/又は分析工程を、対象から除去されたサンプルに適用するという点でインビトロ方法として十分に適格でありうる。用語「インビトロ」は、一般的に、身体(例、動物又はヒトの身体)の外側、又はその外部を表示する。
【0181】
本発明の方法又は使用は、好ましくは、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%、例えば、≧85%又は≧90%又は≧95%、例えば、約80%と100%の間、又は約85%と95%の間の感度及び/又は特異性(好ましくは、感度及び特異性)を可能にしうる。
【0182】
それ故に、そのような方法では、RoxP又はC.アクネスは、対象からの皮膚サンプル中で決定されるバイオマーカーを構成する。したがって、また、開示するのは、対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を診断するための、又は対象がRoxPもしくはRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得るか否かを決定するためのバイオマーカーとしてのRoxP又はC.アクネスの使用である。
【0183】
特定の実施形態では、本発明の方法又は使用によって、単一の変数(例えば単一のバイオマーカーなど)が評価されうる。他の実施形態では、本発明の方法又は使用によって、2つ又はそれ以上の変数(例えば2つ又はそれ以上のバイオマーカーなど)が評価されうる。例えば、これらの方法又は使用によって、RoxP及びC.アクネスが評価されうる。各々のそのように測定された変数(例えば各々のバイオマーカーなど)は、別々に及び非依存的に評価されうる、あるいは2つ又はそれ以上の変数についての値又は量からプロファイルが生成されうる。このように、また、本明細書中で言及する任意の値又は量もプロファイルを包含しうることが、当業者により理解されるべきであろう。同様に、本明細書中で言及する任意の参照値はまた、参照プロファイルを包含しうる。
【0184】
用語「バイオマーカー」は当技術分野において普及しており、一般に、生物学的実体又は物質、例えば生物学的分子及び/又はその検出可能な部分など、あるいは細胞、例えば微生物(例、細菌)細胞などを広く表示し、対象における定性的及び/又は定量的評価は、対象の表現型及び/又は遺伝子型の1つ又は複数の側面に関して、例えば、所与の疾患もしくは状態についての、又は対象の行動もしくは処置の特定の経過の期待される利益についての対象の状態に関して、予測的である又は情報(例、予測的、診断的、及び/又は予後的)を与える。
【0185】
典型的には、バイオマーカーは、細胞ベース、もしくはペプチドベース、ポリペプチドベース、及び/又はタンパク質ベース、又は核酸ベースでありうる。例えば、バイオマーカーは、所与の属、種、型(例、系統型)、亜型又は株の微生物(例、細菌)細胞、あるいは所与の表現型もしくは遺伝子型の、又は特定のタンパク質もしくはポリペプチドを発現する、又は所与の遺伝子エレメントもしくは配列を保有する微生物(例、細菌)細胞でありうる。例えば、バイオマーカーは、所与の遺伝子によりコードされるペプチド、ポリペプチド、及び/又はタンパク質で構成されうる。例えば、核酸ベースのバイオマーカーは、DNA、RNA、及びDNA/RNAハイブリッド分子、例えば所与の遺伝子のDNA又は所与の遺伝子から転写されたRNA分子など、あるいは任意のRNA又は転写されたRNA分子から起こる又はそれから由来するDNA(例、コピーDNA、cDNA)分子を包含しうる。
【0186】
任意のバイオマーカーへの本明細書中での言及は、ペプチドベース、ポリペプチドベース、タンパク質ベース、又は核酸ベースを問わず、そのフラグメントも包含する。特に、バイオマーカーとしてのRoxPへの言及は、完全長RoxPを包含し、及びまた、その任意のフラグメントを包含する。それ故に、所与のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は核酸バイオマーカーを決定又は測定することへの本明細書中での言及は、列挙されたペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は核酸(の量)を測定すること、ならびに/あるいはそれらの1つ又は複数のフラグメントを測定することを包含しうる。例えば、任意のバイオマーカーペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は核酸、ならびに/あるいはそれらの1つ又は複数のフラグメントは、測定された量が、集合的に測定された種の合計量に対応するように、集合的に測定されうる。別の例では、任意のバイオマーカーペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は核酸、ならびに/あるいはそれらの1つ又は複数のフラグメントは各々、個々に測定してもよい。したがって、この文脈における「RoxP」は、RoxPポリペプチドもしくはタンパク質又はそのフラグメント、あるいはRoxP核酸又はそのフラグメント(とりわけ、RoxPプロモーターもしくはその任意の部分及び/又はRoxPコード配列もしくはその任意の部分を含む)に基づくバイオマーカーを包含する。
【0187】
ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に関連する用語「フラグメント」は、一般的に、本明細書中の他で取り組まれている。本発明の文脈において、本発明の診断方法又は利益評価方法の遂行のために必要な情報を保有する任意のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質フラグメントを本明細書中で意図している。そのようなフラグメントは、インビボ及び/又はインビトロの任意の機構により、例えば、限定しないが、選択的転写又は翻訳、エキソ及び/又はエンドタンパク質分解、あるいはペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質のタンパク質分解などにより、例えば、物理的、化学的、及び/又は酵素的タンパク質分解により生じうる。そのようなフラグメントは、好ましくは、完全長バイオマーカーペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の(例えばRoxPなどの)連続アミノ酸配列長の少なくとも約30%、例えば、少なくとも約50%又は少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、例えば、少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、及びさらにはより好ましくは少なくとも約95%又はさらに約99%を含みうる。例えば、そのようなRoxPフラグメントは、対応する完全長RoxPペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の≧5の連続アミノ酸、又は≧10の連続アミノ酸、又は≧20の連続アミノ酸、又は≧30の連続アミノ酸、例えば、≧40の連続アミノ酸、例えば≧50の連続アミノ酸、例えば、≧60、≧70、≧80、≧90、≧100、≧110、≧120、≧130、≧140、又は≧150などの連続アミノ酸の配列を含みうる。
【0188】
核酸(ポリヌクレオチド)への言及を伴う用語「フラグメント」は、一般的に、核酸の5’及び/又は3’切断形態を表示する。本発明の文脈において、本発明の診断方法又は利益評価方法の遂行のために必要な情報を保有する任意の核酸フラグメントを本明細書中で意図している。そのようなフラグメントは、インビボ及び/又はインビトロの任意の機構により、例えば、限定しないが、選択的転写、エキソ及び/又は核酸分解、あるいは核酸の核酸分解などにより、例えば、物理的、化学的、及び/又は酵素的核酸分解により生じうる。そのようなフラグメントは、好ましくは、完全長バイオマーカー核酸の(例えばRoxPなどの)連続核酸配列の少なくとも約30%、例えば、少なくとも約50%又は少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、例えば、少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、及びさらにはより好ましくは少なくとも約95%又はさらに約99%を含みうる。例えば、そのようなRoxP核酸フラグメントは、対応する完全長RoxP核酸の、例えば対応する完全長RoxPプロモーター及び/又はRoxPコード配列の≧15の連続ヌクレオチド、又は≧30の連続ヌクレオチド、又は≧60の連続ヌクレオチド、又は≧90の連続ヌクレオチド、例えば、≧120の連続ヌクレオチド、例えば≧150の連続ヌクレオチドなど、例えば、≧180、≧210、≧240、≧270、≧300、≧330、≧360、≧390、≧420、又は≧450の連続ヌクレオチドの配列を含みうる。
【0189】
用語「量(quantity)」、「量(amount)」、及び「レベル(level)」は同義語であり、当技術分野において一般的に十分に理解されている。本明細書中で使用する用語は、特に、サンプル中のバイオマーカーの絶対的定量化、又はサンプル中のバイオマーカーの相対的定量化(即ち、別の値に比べて、例えば参照値に比べて、など)、又はバイオマーカーのベースラインを示す値の範囲を指す。そのような参照値又は範囲は、単一の対象から又は対象の群から得てもよい。
【0190】
サンプル中のバイオマーカー、例えばペプチドベース、タンパク質ベース、ポリペプチドベース、又は核酸ベースのバイオマーカーなどの絶対量を、重量もしくはモル量として、又はより一般には濃度(例、容積当たりの重量もしくは容積当たりのモル、又は皮膚の表面積当たりの重量、又は皮膚の表面積当たりのモル、例えば1.0cm2の皮膚など)として有利に表現してもよい。サンプル中の細胞ベースのバイオマーカーの絶対量は、細胞の数もしくはコロニー形成単位(CFU)として、又はより一般にはサンプルの容積当たりもしくは皮膚の表面積当たり(例えば1.0cm2の皮膚など)の細胞の数又はCFUとして有利に表現してもよい。サンプル中のバイオマーカーの相対量は、有利には、例えば、前記の別の値と比べた(参照値と比べた)、増加もしくは減少として、又は倍増加もしくは倍減少として表現してもよい。第1の変数と第2の変数(例、第1の量と第2の量)間の相対比較を実施することは、前記の第1の変数及び第2の変数の絶対値を最初に決定することを要求しうるが、しかし、必要ではない。例えば、測定方法によって、前記の第1の変数及び第2の変数についての定量化可能な読み出し(例えばシグナル強度など)が産生されうるが、それにおいて前記の読み出しは、前記変数の値の関数であり、及びそれにおいて前記の読み出しは、直接的に比較され、最初に読み出しをそれぞれの変数の絶対値に変換する実際の必要性を伴うことなく、第1の変数対第2の変数についての相対値を産生する。特定の実施形態では、サンプル中の細胞ベースのバイオマーカーの相対量は、サンプル中の1つもしくは複数又は全ての他の分類群の細胞、あるいはサンプル中の全ての分類群の細胞と比較した、所与の分類群(例、門、遺伝子型、種、型、例えば系統型、亜型、又は株など)の細胞の数、CFU、又は存在量(例、遺伝子型決定又は配列決定により決定される)の増加もしくは減少として、又は倍増加もしくは倍減少として有利に表現してもよい。
【0191】
バイオマーカーは、前記バイオマーカーの存在もしくは非存在及び/又は量がサンプル中で検出又は決定された場合(典型的には他の実体、例えば細胞、分子、又は分析物などを実質的に除外する)、サンプル中で「測定」又は「決定」される。当業者により評価及び決定されることができる因子、例えば、とりわけ、バイオマーカーの型、サンプルの型、サンプル中のバイオマーカーの予想される存在量、バイオマーカーなどを検出するために使用される検出方法の型、ロバスト性、感度、及び/又は特異性などに依存して、バイオマーカーは、サンプル中で直接的に測定してもよい、又はサンプルは、バイオマーカーの適当な測定を達成することを目的とする1つ又は複数の処理工程に供されうる。例を用いると、サンプルは、1つ又は複数の単離工程又は分離工程に供されうるが、それによりバイオマーカーがサンプルから単離される、又はそれによりサンプルの画分が調製され、それはバイオマーカーについて濃縮されている。例えば、バイオマーカーがペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質である場合、任意の公知のタンパク質精製技術をサンプルに適用し、そこからペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質を単離してもよい。バイオマーカーが核酸である場合、任意の公知の核酸精製技術をサンプルに適用し、そこから核酸を単離してもよい。ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は核酸を精製するための方法の非限定的な例は、クロマトグラフィー、分取電気泳動、遠心分離、沈殿、親和性精製、分子インプリントクリオゲルマトリックスを使用する精製などを含みうる。バイオマーカーが細胞である場合、任意の公知の細胞単離技術をサンプルに適用し、そこから細胞を単離してもよい。細胞を単離するための方法の非限定的な例は、フローサイトメトリーによる細胞選別、固体又は液体培地中での細胞培養などである。
【0192】
本明細書中で使用する用語「サンプル」又は「生物学的サンプル」は、対象から得られた任意の生物学的標本を含む。有用なサンプルは、本明細書中で教示する目的のバイオマーカー又はバイオマーカーを検出可能な量で含むサンプルである。好ましくは、サンプルは、対象からのサンプルの除去/単離を可能にする低侵襲方法により容易に入手可能でありうる。用語「皮膚サンプル」は、対象の皮膚又は対象の皮膚の表面をサンプリングすることにより得られる任意のサンプルを表示するために本明細書中で広く使用する。皮膚サンプルは、対象の皮膚細胞を含みうるが、しかし、含む必要はない。本発明の方法及び使用と適合性のある、対象の皮膚表面をサンプリングするための便利であるが、しかし、非限定的な方法は、皮膚表面の所与の部位(例、1×1cm、又は2×2cm、又は3×3cm、又は4×4cm、又は5×5cm、又は1cm2と25cm2の間)を、従来の皮膚スワブ(好ましくは緩衝液に事前に浸している)を用いて、所与の持続時間、例えば10秒間と1分間の間(例、約30秒間)などにわたり拭き取ることである。スワブ上に収集された材料は、振盪により適した液体培地又は溶剤中に放出され、要求されるように分析用に調製されることができる。特定の実施形態では、適した皮膚サンプルは、少なくとも皮膚表面に存在する微生物(例えば細菌など)を(好ましくは偏りなく)サンプリングする方法により得ることができる。特定の実施形態では、適した皮膚サンプルは、皮膚表面に存在するペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質を(好ましくは偏りなく)サンプリングする方法により得ることができる。特定の実施形態では、1つ又は複数の皮膚サンプル(例、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、又は少なくとも6)を使用し、その中のバイオマーカーの量を測定してもよい。複数の皮膚サンプルの使用によって、皮膚表面にわたるバイオマーカーの潜在的に不均一な分布に起因して、バイオマーカーの量における可能な変動を補うことができる。特定の実施形態では、サンプリングは、例えば、視覚的又は顕微鏡的検査により結論付けられるように、疾患又は状態により罹患している又は影響を受けていると疑われる皮膚部位を特に標的化しうる。
【0193】
本明細書中の他で考察されている任意の分離、検出、及び定量化方法を使用し、サンプル中のバイオマーカーペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の(例えばRoxPなどの)量を測定してもよい。例えば、そのような方法は、生化学的アッセイ方法、イムノアッセイ方法、質量分析方法、クロマトグラフィー方法、静電容量バイオセンサー方法、又はそれらの組み合わせを含みうる。用語「イムノアッセイ」は、一般的に、サンプル中の目的の1つ又は複数の分子又は分析物を検出するためのものとして公知である方法を指し、それにおいて目的の分子又は分析物についてのイムノアッセイの特異性は、特異的結合剤(一般には、しかし、限定しないが、抗体)と目的の分子又は分析物の間の特異的結合により与えられる。イムノアッセイ技術は、限定しないが、免疫組織化学、直接的ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、間接的ELISA、サンドイッチELISA、競合ELISA、マルチプレックスELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISPOT技術、及び当技術分野において公知の他の同様の技術を含む。これらのイムノアッセイ方法の原理は当技術分野、例えば、John R. Crowther, “The ELISA Guidebook”, 1st ed., Humana Press 2000, ISBN 0896037282において公知である。
【0194】
さらなる説明を用いると、限定はしないが、直接的ELISAでは、標識された一次結合剤(例、抗体)を用いて、固体支持体(例えばマイクロウェルプレートなど)上に固定化されたサンプル中の標的抗原に結合し、それにより定量化する。間接的ELISAでは、標的抗原に結合する非標識一次結合剤(例、抗体)及び抗原結合一次結合剤を認識し、その定量化を可能にする二次標識結合剤(例、抗体)を使用する。サンドイッチELISAにおいては、標的抗原を、抗原内の1つの抗原部位に結合する固定化「捕捉」結合剤(例、抗体)を使用してサンプルから捕捉し、非結合分析物の除去に続き、そのように捕捉された抗原を、前記抗原内の別の抗原部位に結合する「検出」結合剤(例、抗体)を使用して検出し、ここで、検出結合剤は、上のように直接的に標識されうる、又は間接的に検出可能でありうる。競合ELISAでは、一次結合剤(例、抗体)又は標的抗原のいずれかでありうる標識「競合物質」を使用する。一例において、非標識固定化一次結合剤(例、抗体)をサンプルとインキュベートし、この反応を平衡に到達させ、次に標識標的抗原を加える。後者は、その結合部位がサンプルからの非標識標的抗原によりまだ占められていない場合はどこでも、一次結合剤に結合する。このように、結合した標識抗原の検出量は、サンプル中の非標識抗原の量と逆相関する。マルチプレックスELISAによって、通常は複数のアレイアドレスで単一区画(例、マイクロプレートウェル)内の2つ又はそれ以上の分析物の同検出が可能になる(例えば、Nielsen & Geierstanger 2004. J Immunol Methods 290: 107-20及び詳細なガイダンスについてはLing et al. 2007. Expert Rev Mol Diagn 7: 87-98を参照のこと)。認識されているように、ELISA技術における標識は通常、酵素(例えば、例、西洋ワサビペルオキシダーゼなど)共役により、終点は典型的には、比色、化学発光又は蛍光、磁気、圧電、焦電などである。
【0195】
ラジオイムノアッセイ(RIA)は競合ベースの技術であり、公知の量の放射性標識(例、125I又は131I標識)標的抗原を、前記抗原への結合剤(例、抗体)と混合すること、次にサンプルからの非標識抗原又は「コールド」抗原を加えること、及び置換された標識抗原の量を測定することを含む(例えば、ガイダンスについては“An Introduction to Radioimmunoassay and Related Techniques”, by Chard T, ed., Elsevier Science 1995, ISBN 0444821198を参照のこと)。
【0196】
一般的に、ペプチドの質量に関する、好ましくは、また、選択されたペプチドのフラグメント化及び/又は(部分的)アミノ酸配列に関する正確な情報を得ることが可能な任意の質量分析(MS)技術(例、タンデム質量分析、MS/MSにおいて;又はポストソース崩壊TOF MSにおいて)が本明細書中で有用である。適したペプチドMSならびにMS/MS技術及びシステムは、それ自体が周知であり(例、Methods in Molecular Biology, vol. 146: “Mass Spectrometry of Proteins and Peptides”, by Chapman, ed., Humana Press 2000, ISBN 089603609x;Biemann 1990. Methods Enzymol 193: 455-79;又はMethods in Enzymology, vol. 402: “Biological Mass Spectrometry”, by Burlingame, ed., Academic Press 2005, ISBN 9780121828073を参照のこと)、本明細書中で使用してもよい。バイオマーカーペプチド分析のために適したMS配置、機器、及びシステムは、限定しないが、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)MS;MALDI-TOFポストソース崩壊(PSD);MALDI-TOF/TOF;表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF)MS;エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS);ESI-MS/MS;ESI-MS/(MS)n(nはゼロより大きい整数である);ESI 3D又は線形(2D)イオントラップMS;ESIトリプル四重極MS;ESI四重極直交TOF(Q-TOF);ESIフーリエ変換MSシステム;シリコン上の脱着/イオン化(DIOS);二次イオン質量分析(SIMS);大気圧化学イオン化質量分析(APCI-MS);APCI-MS/MS;APCI-(MS)n;大気圧光イオン化質量分析(APPI-MS);APPI-MS/MS;及びAPPI-(MS)nを含みうる。タンデムMS(MS/MS)配置におけるペプチドイオンフラグメンテーションは、当技術分野において確立された方法、例えば、衝突誘起解離(CID)などを使用して達成してもよい。質量分析によるバイオマーカーの検出及び定量化は、とりわけKuhn et al. 2004(Proteomics 4: 1175-86)により記載されているような多重反応モニタリング(MRM)を含みうる。MSペプチド分析方法は、上流のペプチド又はタンパク質の分離方法又は分画方法、例えば、下に記載するクロマトグラフィー及び他の方法などと有利に組み合わせてもよい。
【0197】
クロマトグラフィーはまた、バイオマーカーを測定するために使用してもよい。本明細書中で使用するように、用語「クロマトグラフィー」は、化学物質を分離するための方法を包含し、そのようなものとして言及され、当技術分野において大いに利用可能である。好ましいアプローチでは、クロマトグラフィーは、液体又は気体の移動流(「移動相」)により運ばれる化学物質(分析物)の混合物が、それらが、固定液相又は固相(「固定相」)の周囲又は上を、前記移動相と前記固定相の間で流れる際に、分析物の差次的分布の結果として成分中に分離されるプロセスを指す。固定相は通常、細かく分割された固体、フィルター材料のシート、又は固体の表面上の液体の薄膜などでありうる。クロマトグラフィーはまた、生物学的起源の化学的な化合物(例えば、例、アミノ酸、タンパク質、タンパク質又はペプチドのフラグメントなど)の分離のために広く適用可能である。
【0198】
本明細書中で使用するクロマトグラフィーは、好ましくは柱状(即ち、固定相がカラム中に堆積又は充填されている)、好ましくは液体クロマトグラフィー、さらにより好ましくはHPLCでありうる。クロマトグラフィーの詳細は当技術分野において周知であるが、さらなるガイダンスについては、例えば、Meyer M., 1998, ISBN: 047198373X、及び“Practical HPLC Methodology and Applications”, Bidlingmeyer, B. A., John Wiley & Sons Inc., 1993を参照のこと。例示的な型のクロマトグラフィーは、限定しないが、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、正常相HPLC(NP-HPLC)、逆相HPLC(RP-HPLC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)(例えば陽イオン又は陰イオン交換クロマトグラフィーなど)、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(ゲルろ過クロマトグラフィー又はゲル透過クロマトグラフィーを含む)、クロマトフォーカシング、親和性クロマトグラフィー(例えば免疫親和性など)、固定化金属親和性クロマトグラフィーなどを含む。
【0199】
クロマトグラフィー(一次元、二次元、又はそれ以上のクロマトグラフィーを含む)は、例えば、本明細書中の他で記載するような下流質量分析を伴うさらなるペプチド分析方法との併用において、ペプチド分画方法として使用されうる。
【0200】
さらなるペプチド又はポリペプチドの分離方法、同定方法、又は定量化方法を、本開示においてバイオマーカーを測定するために、場合により上記の分析方法のいずれかとの併用において使用してもよい。そのような方法は、限定しないが、化学抽出分配、等電点電気泳動(IEF)(キャピラリー等電点電気泳動(CIEF)、キャピラリー等速電気泳動(CITP)、キャピラリー電気泳動(CEC)などを含む)、一次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D-PAGE)、キャピラリーゲル電気泳動(CGE)、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、ミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)、フリーフロー電気泳動(FFE)などを含む。
【0201】
静電容量バイオセンサーは、センサー表面の生体認識エレメントと同族バイオマーカーの間での直接的な結合を登録することにより作動する親和性バイオセンサーである。生体認識エレメントは、例えば、免疫学的分子(例えば抗体など)、又はバイオマーカーについての生体認識キャビティを含む分子インプリントポリマー(MIP)でありうる。バイオセンサーは、電解質/電極界面での誘電特性及び/又は誘電層の厚さにおける変化を測定する。例えば、Erturk et al.(2018 PLoS ONE 13:e0193754)を参照のこと。
【0202】
核酸レベルでのバイオマーカーのレベルを、当技術分野において公知の標準的な定量的DNA、RNA、又はcDNA測定ツールを使用して検出してもよい。非限定的な例は、ハイブリダイゼーションベースの分析、マイクロアレイ発現分析、デジタル遺伝子発現(DGE)、RNA-in-situハイブリダイゼーション(RISH)、ノーザンブロット分析など;PCR、RT-PCR、RT-qPCR、エンドポイントPCR、デジタルPCR、ドロップレットデジタルPCRなど;サポートされているオリゴヌクレオチド検出、パイロシークエンシング、合成によるポロニーサイクリックシークエンシング、同時双方向配列決定、単一分子配列決定、単一分子リアルタイム配列決定、真の単一分子配列決定、ハイブリダイゼーション支援ナノポア配列決定、合成による配列決定などを含む。
【0203】
サンプルのマイクロバイオーム組成を決定するために、DNAをサンプルから単離してもよく、及び適した遺伝子エレメント又は領域(例えば、例えば、リボソームRNA遺伝子、例えば、好ましくは16S rRNAなど、例えば、より好ましくは16S rRNAのV1-V3領域など)は、典型的には高い配列決定深度で、そこから増幅及び配列決定してもよい。結果として得られる読み取りは、公知の統計ツール及び関連する皮膚細菌の手動での包含を伴う、公的に利用可能なマイクロバイオームシーケンスデータベース、例えばHuman Oral Microbiome Database(HOMD)(http://www.homd.org/)などを使用して分類することができる(Chen et al. 2010 Database : the journal of biological databases and curation baq013)。
【0204】
皮膚スワブサンプル中のC.アクネス集団の型又は亜型を決定するために、公知の多遺伝子座シーケンスタイピングスキーム(MLST)又は単一遺伝子座シーケンスタイピング(SLST)スキームを用いることができ、一般的に、選択した遺伝子座の増幅及び配列決定ならびに対立遺伝子のシーケンス分析(例えばwww.medbac.dk/slst/pacnesを使用する、など)(McDowell et al., 2012 PLoS One 7:e41480;Scholz et al. 2014 PLoS ONE 9:e104199)を含む。
【0205】
バイオマーカーを測定するための種々の技術で、前記のそれぞれのバイオマーカー用の結合剤を用いてもよい。それ故に、本明細書中で教示するように、マーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は核酸に特異的に結合することが可能な結合剤をさらに開示する。本明細書を通して意図する結合剤は、とりわけ、抗体、アプタマー、フォトアプタマー、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣物、核酸(例えばオリゴヌクレオチドなど)、又は小分子を含みうる。
【0206】
本明細書を通して使用する用語「特異的結合」は、薬剤(本明細書中で「特異的結合剤」としても表示する)が、ランダム又は無関係である他の分子の実質的な除外まで、及び場合により、構造的に関連する他の分子を実質的な除外まで、1つ又は複数の所望の分子又は分析物に結合することを意味する。用語「特異的に結合する」は、薬剤がその意図された標的に排他的に結合することを必ずしも要求しない。例えば、薬剤は、結合の条件下でそのような意図される標的についてのその親和性が、非標的分子についてのその親和性よりも、少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約5倍大きい、より好ましくは少なくとも約10倍大きい、さらにより好ましくは少なくとも約25倍大きい、さらにより好ましくは少なくとも約50倍大きい、さらにより好ましくは少なくとも約100倍又はそれ以上大きい場合、目的の標的に特異的に結合すると言うことができる。
【0207】
本明細書を通して使用する特異的結合剤は、とりわけ、抗体、アプタマー、シュピーゲルマー(L-アプタマー)、フォトアプタマー、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣物、核酸(例えばオリゴヌクレオチドなど)、又は小分子を含みうる。
【0208】
好ましくは、薬剤は、そのような結合KA≧1×106M-1、より好ましくはKA≧1×107M-1、さらにより好ましくはKA≧1×108M-1、さらにより好ましくはKA≧1×109M-1、及びさらにより好ましくはKA≧1×1010M-1、又はKA≧1×1011M-1の親和性定数(KA)を伴い、その意図される標的に結合しうるが、それにおいてKA=[SBA_T]/[SBA][T]、SBAは特異的結合剤を表示し、Tは意図する標的を表示する。KAの決定は、当技術分野において公知の方法により(例えば、平衡透析及びスキャッチャードプロット分析を使用するなど)行うことができる。
【0209】
本明細書中で使用するように、用語「抗体」は、その最も広い意味において使用され、一般的に、任意の免疫学的結合剤を指す。この用語は、具体的には、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多価(例、2、3又はそれ以上の価)及び/又は少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多特異性抗体(例、二又はそれ以上の特異性抗体)、及び抗体フラグメント(それらが所望の生物学的活性(特に、目的の抗原に特異的に結合する能力)を示す限りにおいて)、ならびにそのようなフラグメントの多価及び/又は多特異性複合体を包含する。用語「抗体」は、免疫化を含む方法により生成された抗体を含んでいるだけでなく、しかし、また、任意のポリペプチド(例、目的の抗原上のエピトープに特異的に結合することが可能な少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を包含するように作製された組換え発現ポリペプチド)を含む。それ故に、この用語は、それらがインビトロ又はインビボで生成されるかに関係なく、そのような分子に適用される。
【0210】
抗体は、IgAクラス、IgDクラス、IgEクラス、IgGクラス、及びIgMクラスのいずれか、好ましくはIgGクラスの抗体でありうる。抗体は、ポリクローナル抗体、例えば、そこから精製された(例、親和性精製された)抗血清又は免疫グロブリンでありうる。抗体はモノクローナル抗体又はモノクローナル抗体の混合物でありうる。モノクローナル抗体は、特定の抗原又は抗原内の特定のエピトープを、より高い選択性及び再現性を伴い標的化することができる。例を用いると、限定しないが、モノクローナル抗体は、Kohler et al. 1975(Nature 256: 495)により最初に記載されたハイブリドーマ方法により作製されうる、又は組換えDNA方法(例、US 4,816,567のように)により作製されうる。モノクローナル抗体はまた、例えば、Clackson et al. 1991(Nature 352: 624-628)及びMarks et al. 1991(J Mol Biol 222: 581-597)により記載されているような技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離されうる。
【0211】
抗体結合剤は抗体フラグメントでありうる。「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の部分を含み、その抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体フラグメントの例は、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、及びscFvフラグメント;ダイアボディ;線形抗体;単鎖抗体分子;ならびに抗体フラグメントから形成された多価及び/又は多特異性抗体(例、ダイボディ、トリボディ、及びマルチボディ)を含む。上の命名Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFvなどは、それらの当技術分野において確立された意味を有することが意図される。
【0212】
用語「抗体」は、任意の動物種、好ましくは脊椎動物種(例、鳥類及び哺乳動物を含む)に起源をもつ、又はそれらから由来する1つ又は複数の部分を含む抗体を含む。限定しないが、抗体は、ニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、アヒル、ホロホロチョウ、ウズラ又はキジでありうる。また、限定しないが、抗体は、ヒト、マウス(例、マウス、ラットなど)、ロバ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、ラクダ(例、フタコブラクダ及びヒトコブラクダ)、ラマ(例、ラマ・パコス、ラマ・グラマ、又はラマ・ビクーニャ)、又はウマでありうる。
【0213】
当業者は、抗体が1つ又は複数のアミノ酸の欠失、付加、及び/又は置換(例、保存的置換)を含むことができる(そのような変化が、それぞれの抗原のその結合を保存する限りにおいて)ことを理解するであろう。抗体はまた、その構成アミノ酸残基の1つ又は複数の天然又は人工の修飾(例、グリコシル化など)を含んでもよい。
【0214】
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体ならびにそれらのフラグメントを産生する方法は、組換え抗体又はそれらのフラグメントを産生するための方法と同様に、当技術分野において周知である(例えば、Harlow and Lane, “Antibodies: A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbour Laboratory, New York, 1988;Harlow and Lane, “Using Antibodies: A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbour Laboratory, New York, 1999, ISBN 0879695447;“Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques”, by Zola, ed., CRC Press 1987, ISBN 0849364760;“Monoclonal Antibodies: A Practical Approach”, by Dean & Shepherd, eds., Oxford University Press 2000, ISBN 0199637229;Methods in Molecular Biology, vol. 248: “Antibody Engineering: Methods and Protocols”, Lo, ed., Humana Press 2004, ISBN 1588290921を参照のこと)。
【0215】
用語「アプタマー」は、標的分子(例えばペプチドなど)に特異的に結合する一本鎖又は二本鎖オリゴDNA、オリゴRNA、もしくはオリゴDNA/RNA、又はその任意の類似体を指す。有利には、アプタマーは、それらの標的についてのかなり高い特異性及び親和性(例、1×109M-1オーダーのKA)を呈する。アプタマー産生は、とりわけ、US 5,270,163;Ellington & SzostAK1990(Nature 346: 818-822);Tuerk & Gold 1990 (Science 249: 505-510);又は“The Aptamer Handbook: Functional Oligonucleotides and Their Applications”, by Klussmann, ed., Wiley-VCH 2006, ISBN 3527310592(参照により本明細書中に組み入れられる)において記載されている。用語「フォトアプタマー」は、標的分子と共有結合的に結合する又は架橋することができる1つ又は複数の光反応性官能基を含むアプタマーを指す。用語「シュピーゲルマー」は、L-DNA、L-RNA、又は他の左利きヌクレオチド誘導体もしくはヌクレオチド様分子を含むアプタマーを指す。左利きヌクレオチドを含むアプタマーは、通常、右利きヌクレオチドを含む基質に作用する、天然に生じる酵素による分解に対して耐性がある。用語「ペプチドミメティック」は、対応するペプチドのトポロジー類似体である非ペプチド薬剤を指す。ペプチドのペプチドミメティックを合理的に設計する方法は、当技術分野において公知である。例えば、硫酸化8量体ペプチドCCK26-33に基づく3つのペプチドミメティックの、及び11量体ペプチドサブスタンスPに基づく2つのペプチドミメティックの合理的な設計、ならびに関連するペプチドミメティックの設計原理が、Horwell 1995(Trends Biotechnol 13: 132-134)において記載されている。用語「小分子」は、医薬品において一般的に使用されるそれらの有機分子と同等のサイズを伴う化合物、好ましくは有機化合物を指す。この用語は、生物学的高分子(例、タンパク質、ペプチド、核酸など)を除外する。好ましい有機小分子は、サイズにおいて、約5000Daまで、例えば、約4000まで、好ましくは3000Daまで、より好ましくは2000Daまで、さらにより好ましくは約1000Daまで、例えば、約900、800、700、600まで、又は約500Daまでの範囲である。本明細書中で使用する用語「オリゴヌクレオチド」は、本明細書中で定義する核酸(核酸アナログ及び核酸ミメティックを含む)オリゴマー又はポリマーを指す。好ましくは、オリゴヌクレオチド、例えば特にアンチセンスオリゴヌクレオチドなどは、(実質的に)一本鎖である。本明細書中で意図するオリゴヌクレオチドは、好ましくは約10と約100ヌクレオシド単位(即ち、ヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ)の間の長さ、好ましくは約15と約50の間、より好ましくは約20と約40の間、また好ましくは約20と約30の間でありうる。本明細書中で意図するようなオリゴヌクレオチドは、1つ又は複数又はすべての非天然の複素環式塩基及び/又は1つ又は複数の又は全ての天然に生じない複素環塩基及び/又は1つ又は複数の又は全ての天然に生じないヌクレオシド間連結を含みうるが、その包含によって特性が改善されうる(例えば、ヌクレアーゼの存在における増加した安定性、及び増加したハイブリダイゼーション親和性、ミスマッチについての増加した耐性など)。核酸結合剤(例えばオリゴヌクレオチド結合剤など)は、典型的には、目的の標的核酸に対して少なくとも部分的にアンチセンスである。用語「アンチセンス」は、一般的に、標的核酸中(例えば標的DNA又はRNA中など)の所与の配列と特異的にアニールする(ハイブリダイズする)ように形成された薬剤(例、オリゴヌクレオチド)を指し、典型的には、前記の標的核酸配列に相補的である又は実質的に相補的である核酸配列を含む、それから本質的になる、又はそれからなる。本明細書中での使用のために適したアンチセンス薬剤は、典型的には、高ストリンジェンシー条件でそれぞれの標的核酸配列とアニーリングする(それにハイブリダイズする)ことが可能で、及び生理学的条件下で標的に特異的にハイブリダイズすることが可能である。核酸に言及して本明細書中で使用する用語「相補的」又は「相補性」は、許容的な塩(イオン強度)及び温度条件の下での、塩基対形成、好ましくはワトソン-クリック塩基対形成による一本鎖核酸の通常の結合を指す。例を用いると、相補的なワトソン-クリック塩基対が、AとT、AとU、又はGとCの塩基の間で生じる。例えば、配列5’-A-G-U-3’は配列5’-A-C-U-3’に相補的である。オリゴヌクレオチドへの言及は、特に、しかし、限定しないが、核酸検出技術において一般に使用されるような、ハイブリダイゼーションプローブ及び/又は増幅プライマー及び/又は配列決定プライマーなどを含みうる。
【0216】
一部の実施形態では、本明細書中で教示する試薬、例えば結合剤などは、検出可能な標識を含みうる。用語「標識」は、検出可能で、及び好ましくは定量化可能な読み取り又は特性を提供するために使用でき、目的の実体(例えば結合剤など)に付着する、又はその一部を作製することができる任意の原子、分子、部分、又は生体分子を指す。標識は、例えば、質量分析的、分光学的、光学的、比色的、磁気的、光化学的、生化学的、免疫化学的、又は化学的な手段により適切に検出可能でありうる。標識は、限定しないが、色素;放射性標識、例えば32P、33P、35S、125I、131Iなど;高電子密度試薬;酵素(例、イムノアッセイにおいて一般に使用される西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ);結合部分(例えばビオチン-ストレプトアビジンなど);ハプテン(例えばジゴキシゲニンなど);発光性部分、リン光性部分、又は蛍光発生性部分;質量タグ;及び単独での、又は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により発光スペクトルを抑制しうる又はシフトさせうる部分との組み合わせにおける蛍光色素を含む。一部の実施形態では、結合剤は、別の薬剤(例、プローブ結合パートナー)による検出を許すタグと共に提供されうる。そのようなタグは、例えば、ビオチン、ストレプトアビジン、hisタグ、mycタグ、マルトース、マルトース結合タンパク質、又は結合パートナーを有する当技術分野において公知の任意の他の種類のタグでありうる。プローブ:結合パートナー配置において利用されうる会合の例は、任意でよく、及び、例えば、ビオチン:ストレプトアビジン、hisタグ:金属イオン(例、Ni2+)、マルトース:マルトース結合タンパク質などを含む。バイマーカー-結合剤コンジュゲートを、検出を促進するために、検出剤と会合させてもよく又はそれに付着させてもよい。検出剤の例は、限定しないが、発光標識;比色標識、例えば色素など;蛍光標識;又は化学的標識、例えば電気活性剤(例、フェロシアン化物)など;酵素;放射性標識;又は高周波標識を含む。検出薬剤は粒子でありうる。そのような粒子の例は、コロイド状金粒子、コロイド状硫黄粒子;コロイド状セレン粒子;コロイド状硫酸バリウム粒子;コロイド状硫酸鉄粒子;金属ヨウ素酸塩粒子;ハロゲン化銀粒子;シリカ粒子;コロイド状金属(含水)酸化物粒子;コロイド状金属硫化物粒子;コロイド状セレン化鉛粒子;コロイド状セレン化カドミウム粒子;コロイド状金属リン酸塩粒子;コロイド状金属フェライト粒子;有機層又は無機層を用いてコーティングされた上で言及するコロイド粒子のいずれか;タンパク質分子又はペプチド分子;リポソーム;あるいは、有機ポリマーラテックス粒子(例えばポリスチレンラテックスビーズなど)を含むが、しかし、これらに限定しない。好ましい粒子はコロイド状金粒子である。
【0217】
本発明の方法又は使用は、対象からのサンプル中で測定された1つ又は複数のバイオマーカーの量を、適した参照値と比較することを含みうるが、それにおいて前記参照値は公知の結果を表す。
【0218】
それ故に、特定の実施形態では、方法又は使用は以下を含みうる:
(a)対象からの皮膚サンプル中のRoxPの量を決定すること;
(b)決定されたRoxPの量を参照値と比較すること(前記参照値は、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の公知の診断を表す);
(c)前記参照値からの、決定されたRoxPの量の偏差又は無偏差を見出すこと;及び
(d)前記の偏差又は無偏差の知見を、対象における酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の特定の診断に帰すること。
【0219】
特定の実施形態では、方法又は使用は以下を含みうる:
(a)対象からの皮膚サンプル中のC.アクネスの量を決定すること;
(b)決定されたC.アクネスの量を参照値と比較すること(前記参照値は、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の公知の診断を表す);
(c)前記参照値からの、決定されたC.アクネスの量の偏差又は無偏差を見出すこと;及び
(d)前記の偏差又は無偏差の知見を、対象における酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の特定の診断に帰すること。
【0220】
特定の実施形態では、方法又は使用は以下を含みうる:
(a)対象からの皮膚サンプル中のRoxPの量及びC.アクネスの量を決定すること;
(b)決定されたRoxPの量及び決定されたC.アクネスの量を参照値と比較すること(前記参照値は、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の公知の診断を表す);
(c)前記参照値からの、決定されたRoxPの量及び決定されたC.アクネスの量の偏差又は無偏差を見出すこと;及び
(d)前記の偏差又は無偏差の知見を、対象における酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の特定の診断に帰すること。
【0221】
特定の実施形態では、方法又は使用は以下を含みうる:
(a)対象からの皮膚サンプル中のRoxPの量を決定すること;
(b)決定されたRoxPの量を参照値と比較すること(前記参照値は、RoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与の利益の公知の指標を表す);
(c)前記参照値からの、決定されたRoxPの量の偏差又は無偏差を見出すこと;及び
(d)前記の偏差又は無偏差の知見を、対象がRoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得うるか否かの特定の指標に帰すること。
【0222】
特定の実施形態では、方法又は使用は以下を含みうる:
(a)対象からの皮膚サンプル中のC.アクネスの量を決定すること;
(b)決定されたC.アクネスの量を参照値と比較すること(前記参照値は、RoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与の利益の公知の指標を表す);
(c)前記参照値からの、決定されたC.アクネスの量の偏差又は無偏差を見出すこと;及び
(d)前記の偏差又は無偏差の知見を、対象がRoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得うるか否かの特定の指標に帰すること。
【0223】
特定の実施形態では、方法又は使用は以下を含みうる:
(a)対象からの皮膚サンプル中のRoxPの量及びC.アクネスの量を決定すること;
(b)決定されたRoxPの量及び決定されたC.アクネスの量を参照値と比較すること(前記参照値は、RoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与の利益の公知の指標を表す);
(c)前記参照値からの、決定されたRoxPの量及び決定されたC.アクネスの量の偏差又は無偏差を見出すこと;及び
(d)前記の偏差又は無偏差の知見を、対象がRoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得うるか否かの特定の指標に帰すること。
【0224】
参照値は、他のバイオマーカーのために以前に用いられた公知の手順に従って確立されうる。例えば、参照値は、ストレスに関連付けられる皮膚疾患の特定の公知の診断、あるいはRoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与の利点の特定の公知の指標により特徴付けられる個人又は個人の集団において確立されうる。そのような集団は、限定しないが、≧2、≧5、≧10、≧50、≧100又はさらに多い個体を含みうる。前に言及したように、2つ又はそれ以上のバイオマーカーを評価する場合、各々のバイオマーカーを別々に及び非依存的に評価してもよく、あるいは2つ又はそれ以上のバイオマーカーの値又は量からプロファイルを生成してもよい。したがって、本明細書中で言及する任意の参照値はまた、参照プロファイルを包含しうる。
【0225】
例を用いると、RoxPの及び/又はC.アクネスの量の参照値を確立するための方法であって、前記参照値は以下を表す:
(a)対象が酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有するという診断、又は
(b)対象が酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有していないという診断
が、以下を含みうる:
(i)以下におけるRoxP及び/又はC.アクネスの量を測定すること:
a.酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有するとして診断された1人又は複数の対象からの1つ又は複数の皮膚サンプル、あるいは
b.酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有さないとして診断された1人又は複数の対象からの1つ又は複数の皮膚サンプル、及び
(ii)RoxPの及び/又はC.アクネスの量を保存すること:
a.「(i)a」において測定されたとおり(対象が酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有するとの診断を表す参照値として)、又は
b.「(i)b」において測定されたとおり(酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有さないとの診断を表す参考値として)。
【0226】
例を用いると、RoxP及び/又はC.アクネスの量の参照値を確立するための方法であって、前記参照値は以下を表す:
(a)対象がRoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得るという指標、又は
(b)対象がRoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得ないという指標、
が、以下を含みうる:
(i)複数の対象(例えば、好ましくは、酸化ストレスに関連付けられる疾患を有さない対象など)からの1つ又は複数の皮膚サンプル中のRoxP及び/又はC.アクネスの量を測定すること、ならびに前記皮膚サンプル中のRoxP及び/又はC.アクネスの平均又は中央値を決定すること、及び
(ii)RoxPの及び/又はC.アクネスの量を保存すること:
a.「(i)」において測定されたように、平均又は中央値よりも低い(対象がRoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネスの投与から利益を得るであろうことを示す参照値として)、又は
b.「(i)」において測定されたように、平均又は中央値に等しい又はそれよりも高い(対象がRoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネスの投与から利益を得ないであろうことを示す参照値として)。
【0227】
値、例えば、サンプルにおいて得られた値と参照値の間での比較は、一般的に、少なくとも1つの差の存在又は非存在及び、場合により、比較されている値の間のそのような差のサイズを決定するための任意の手段を含みうる。比較は、目視検査、測定値の算術的又は統計的比較を含みうる。そのような統計的比較は、ルールを適用することを含むが、それに限定しない。
【0228】
一実施形態では、本明細書中で意図する参照値は、本明細書中で意図する、バイオマーカーの絶対量を伝えうる。別の実施形態では、テストされる対象からのサンプル中のバイオマーカーの量は、参照値に比べて(例、増加もしくは減少、又は倍増加もしくは倍減少に関して)、直接的に決定されうる。有利には、これによって、最初にバイオマーカーのそれぞれの絶対量を決定する必要性を伴わずに、対象からのサンプル中のバイオマーカーの量と参照値との比較(言い換えれば、参照値に対する対象からのサンプル中のバイオマーカーの相対量を測定すること)が可能になる。
【0229】
第2の値からの第1の値の「偏差」は、一般的に、任意の方向(例、増加:第1の値>第2の値;又は減少:第1の値<第2の値)及び変更の任意の範囲を包含しうる。
【0230】
例えば、偏差は、限定しないが、比較する第2の値に比べて、少なくとも約10%(約0.9倍又はそれ以下)だけの、又は少なくとも約20%(約0.8倍又はそれ以下)だけの、又は少なくとも約30%(約0.7倍又はそれ以下)だけの、又は少なくとも約40%(約0.6倍又はそれ以下)だけの、又は少なくとも約50%(約0.5倍又はそれ以下)だけの、又は少なくとも約60%(約0.4倍又はそれ以下)だけの、又は少なくとも約70%(約0.3倍又はそれ以下)だけの、又は少なくとも約80%(約0.2倍又はそれ以下)だけの、又は少なくとも約90%(約0.1倍又はそれ以下)だけの、第1の値における減少を包含しうる。
【0231】
例えば、偏差は、限定しないが、比較されている第2の値に比べて、少なくとも約10%(約1.1倍又はそれ以上)だけの、又は少なくとも約20%(約1.2倍又はそれ以上)だけの、又は少なくとも約30%(約1.3倍又はそれ以上)だけの、又は少なくとも約40%(約1.4倍又はそれ以上)だけの、又は少なくとも約50%(約1.5倍又はそれ以上)だけの、又は少なくとも約60%(約1.6倍又はそれ以上)だけの、又は少なくとも約70%(約1.7倍又はそれ以上)だけの、又は少なくとも約80%(約1.8倍又はそれ以上)だけの、又は少なくとも約90%(約1.9倍又はそれ以上)だけの、又は少なくとも約100%(約2倍又はそれ以上)だけの、又は少なくとも約150%(約2.5倍又はそれ以上)だけの、又は少なくとも約200%(約3倍又はそれ以上)だけの、又は少なくとも約500%(約6倍又はそれ以上)だけの、又は少なくとも約700%(約8倍又はそれ以上)などだけの、第1の値の増加を包含しうる。
【0232】
好ましくは、偏差は、統計的に有意な観察された変化を指す。例えば、偏差は、所与の母集団における参照値の許容誤差の外に入る観察された変化を指しうる(例えば、標準偏差又は標準誤差、又はその所定の倍数(例、±1×SDもしくは±2×SD、又は±1×SEもしくは±2×SEにより表現する)。偏差はまた、所与の母集団における値により定義された参照範囲の外に入る値を指しうる(例えば、前記集団中の値の≧40%、≧50%、≧60%、≧70%、≧75%、又は≧80%又は≧85%又は≧90%又は≧95%又はさらに≧100%を含む範囲の外)。
【0233】
さらなる実施形態では、偏差は、観察された変化が所与の閾値又はカットオフを超える場合に結論付けてもよい。そのような閾値又はカットオフは、予測方法の選ばれた感度及び/又は特異性(例、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%の感度及び/又は特異性)を提供するために、当技術分野において一般的に公知であるように選択されうる。
【0234】
例えば、受信者操作特性(ROC)曲線分析を使用し、許容可能な感度及び特異性、又はそれ自体が周知である関連する性能測定、例えば陽性的中率(PPV)、陰性的中率(NPV)、陽性尤度比(LR+)、陰性尤度比(LR-)、Youden指数、又は類似のものなどに基づいて、所定のバイオマーカーの量の最適なカットオフ値を選択することができる。
【0235】
そのような比較によって、対象からのサンプル中で測定された、本明細書中で教示する任意の1つ又は複数のバイオマーカーの量と所与の参照値の間の偏差の存在もしくは非存在又は無偏差が明らかになりうる。
【0236】
特定の好ましい実施形態では、対象からの皮膚サンプル中のRoxPの量は、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患(即ち、健常な状態)の非存在の診断を表す参照値と比較して低下しうる。そのように低下した量によって、対象が酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有している、及び/又はRoxPもしくはRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得るという診断が可能になりうる。
【0237】
特定の好ましい実施形態では、対象からの皮膚サンプル中のC.アクネスの量は、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の非存在(即ち、健常な状態)の診断を表す参照値と比較して低下しうる。そのように低下した量によって、対象が酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有している、及び/又はRoxPもしくはRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得るという診断が可能になりうる。
【0238】
特定の好ましい実施形態では、対象からの皮膚サンプル中のRoxPの量は、健常な対象の集団におけるRoxPの平均値又は中央値と比較して低下しうる。そのように低下した量によって、対象が酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、もしくは発生するリスクがある、及び/又はRoxPもしくはRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得ると結論付けることが可能になりうる。
【0239】
特定の好ましい実施形態では、対象からの皮膚サンプル中のC.アクネスの量は、健常な対象の集団におけるC.アクネスの平均値又は中央値と比較して低下しうる。そのように低下した量によって、対象が酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、もしくは発生するリスクがある、及び/又はRoxPもしくはRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得ると結論付けることが可能になりうる。
【0240】
特定の好ましい実施形態では、皮膚サンプル中のC.アクネスの量は、その皮膚サンプル中の他の微生物の、及び特に細菌の分類群(例えば属又は種など)に比べて、例えば、コクリア、コリネバクテリウム、マイクロコッカス、又はスタフィロコッカスより選択される1つ又は複数の属に比べて評価されうる(例えば、存在量(%)、例えば16S rRNA遺伝子のディープシークエンシングによる存在量(%)など)。例えば、対象からの皮膚サンプル中のC.アクネスの相対存在量(%)は、健常な対象の集団におけるC.アクネスの相対存在量(%)の平均値又は中央値と比較して低下しうる。そのように低下した相対的存在量によって、対象が酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、もしくはそれを発生するリスクがある、及び/又はRoxPもしくはRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得ると結論付けることが可能になりうる。
【0241】
特定の好ましい実施形態では、皮膚サンプル中のC.アクネスの型又は亜型の量を、他のC.アクネスの型又は亜型に比べて評価しうる(例、存在量(%)、例えば16S rRNA遺伝子のディープシークエンシングによる存在量(%)など)。それ故に、特定の実施形態では、方法及び使用はさらに、対象からの皮膚サンプル中の2つ又はそれ以上のC.アクネス型(例、系統型)、MLST型、SLST型、又は株の相対量を決定することを含みうる。例えば、対象からの皮膚サンプル中のC.アクネスI型対II型の存在量(例、I型/II型の比率)は、健常な対象の集団におけるC.アクネスI型対II型の存在量の平均値又は中央値と比較して低下しうる。そのような低下したC.アクネスI型対II型の存在量によって、対象が酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、もしくはそれを発生するリスクがある、及び/又はRoxPもしくはRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得ると結論付けることが可能になりうる。
【0242】
特定の好ましい実施形態では、1つ又は複数のRoxPプロモーター配列、RoxP-35ボックス配列、及び/又はRoxP-10ボックス配列(例えば、
図8中に示す1つ又は複数のRoxPプロモーター配列、RoxP-35ボックス配列、及び/又はRoxP-10ボックス配列)は、絶対条件において、あるいは全てに比べて、あるいは1つもしくは複数の又は全ての他のRoxPプロモーター配列、RoxP-35ボックス配列、及び/又はRoxP-10ボックス配列に比べて(例えば、
図8中に示す全てに比べて、あるいは1つもしくは複数の又は全ての他のRoxPプロモーター配列、RoxP-35ボックス配列、及び/又はRoxP-10ボックス配列に比べて)評価しうる。例えば、比較的高いRoxP発現に関連付けられる1つ又は複数のRoxPプロモーター配列(例えば
図8中の配列番号7~12の配列など)の量は、絶対条件において、あるいは低いRoxP比較的低いRoxP発現に関連付けられる全てのRoxPプロモーター配列に比べて、あるいは1つもしくは複数の又は全てのRoxPプロモーター配列(例えば
図8中の配列番号5~6の配列など)に比べて評価しうる。そのようなデータは、RoxPを産生する、皮膚サンプル中に存在するC.アクネスの能力についての情報価値がある。
【0243】
特定の好ましい実施形態では、1つ又は複数のRoxPコード配列(例えば、
図10中に示す1つ又は複数のRoxPコード配列型)の量は、絶対条件において、あるいは全てのRoxPコード配列に比べて、あるいは1つもしくは複数の又は他の全てのRoxPコード配列(例えば、
図10中に示す全てのRoxPコード配列型に比べて、あるいは1つもしくは複数の又は全ての他のRoxPコード配列型に比べて)評価しうる。例えば、
図10中で特徴付ける第2型に属する1つ又は複数のRoxPコード配列型(例、KPA171202 RoxPコード配列を含む)の量は、絶対条件において、あるいは
図10中で特徴付ける全てのRoxPコード配列型に比べて、あるいは
図10中で特徴付ける第1型及び第3型の1つ又は両方に比べて評価しうる。そのようなデータは、RoxPを産生する、皮膚サンプル中に存在するC.アクネスの能力についての情報価値がある。
【0244】
皮膚サンプル中の1つ又は複数のRoxPプロモーター型及び/又はRoxPコード配列型の絶対量は、本明細書中の他で言及されている、生物学的サンプル中の核酸測定のための公知の定量的方法(例えば、限定しないが、定量的PCRなど、例えばドロップレットデジタルPCRなど)により決定しうる。皮膚サンプル中の1つ又は複数のRoxPプロモーター型及び/又はRoxPコード配列型の相対量は、公知の方法(例えばプロモーター又はコード配列アンプリコンの増幅、及び、典型的には高い配列決定深度での配列決定など)、ならびに前記の1つ又は複数のRoxPプロモーター型及び/又はRoxPコード配列型への読み取り配列の定量的割り付けなどにより決定しうる。
【0245】
それ故に、対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を診断するための、又は対象がRoxPもしくはRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得うるか否かを決定するための方法も開示し、この方法は、対象からの皮膚サンプル中の1つ又は複数のRoxPコード配列型及び/又はRoxPプロモーター型の絶対量又は相対量を決定することを含む。
【0246】
特定の好ましい実施形態では、皮膚サンプル中で測定されたC.アクネスにより分泌されるRoxPの量も評価されうる。それ故に、特定の実施形態では、方法及び使用はさらに、対象からの皮膚サンプル中のC.アクネスにより分泌されるRoxPの量を決定することを含みうる。
【0247】
例えば、C.アクネスにより産生されたRoxPの全体的な量、あるいは対象からの皮膚サンプル中の平均又は低RoxP発現C.アクネス型、亜型、又は株に対する高RoxP発現C.アクネス型、亜型、又は株の相対的な存在量は、健常な対象の集団における対応する測定値と比較して低下しうる。C.アクネスにより産生されるRoxPのそのような低下した全体的な量、あるいは高RoxP発現C.アクネス型、亜型、又は株の相対的な存在量によって、対象が酸化ストレスに関連付けられる疾患を有する、もしくはそれを発生するリスクがある、及び/又はRoxPもしくはRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得ると結論付けられうる。
【0248】
特定の実施形態では、本発明の方法及び使用はまた、同じ対象の非罹患皮膚領域に対する罹患皮膚領域を含みうる。
【0249】
それ故に、対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を診断するための方法の特定の実施形態は、以下を含みうる:
a)酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患により罹患されていることが疑われる対象の皮膚の領域からのサンプル中のRoxPの量を決定すること;
b)対象の皮膚の健常な領域からのサンプル中のRoxPの量を決定すること;ならびに
c)工程a)及びb)において決定されたRoxP量を比較すること;
それにおいて、工程b)において決定されたRoxPの量と比較した、工程a)において決定されたRoxPの量は、対象が酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、又は有するリスクがあることを示す。
【0250】
対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を診断するための方法の特定の他の実施形態は、以下を含みうる:
a)酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患により罹患されていることが疑われる対象の皮膚の領域からのサンプル中のC.アクネスI型、II型、及びIII型株の量を決定すること;
b)対象の皮膚の健常な領域からのサンプル中のC.アクネスI型、II型、及びIII型株の量を決定すること;ならびに
c)工程a)及びb)において決定されたC.アクネスI型、II型、及びIII型株の量を比較すること;
それにおいて、対象の皮膚の健常な領域からのサンプル中のPアクネスI型株の相対量と比較した、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患により罹患されていることが疑われる対象の皮膚の領域からのサンプル中のPアクネスI型株のより低い相対量は、対象が酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、又は有するリスクがあることを示す。
【0251】
また、本発明の診断又は利益評価の方法又は使用を用いて、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、又は有するリスクがあるとして、あるいはRoxPを分泌する生きたC.アクネスの投与から、又はRoxPの投与から利益を得うる対象として対象を選択する、コンパニオン診断アプローチ及び個別化医療アプローチを熟慮する。そのように選択された対象は、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与、あるいはRoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントの投与を含む、本明細書中に開示する予防的又は治療的介入を受けることができる。
【0252】
それ故に、一態様は、対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置する方法における使用のための、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む組成物を提供し、それにおいて、対象は、本明細書中に開示する方法により、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、又は有するリスクがあるとして選択されている。関連する態様は、それを必要とする対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置するための方法を提供し、この方法は、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む、予防的又は治療的に効果的な量の組成物を対象の皮膚に投与することを含み、それにおいて、対象は、本明細書中に開示する方法により、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、又は有するリスクがあるとして選択されている。別の関連する態様は、対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置する方法における使用のための薬物の製造のための、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む組成物の使用を提供し、それにおいて、対象は、本明細書中に開示する方法により、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、又は有するリスクがあるとして選択されている。さらなる関連する態様は、対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置するための、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む組成物の使用を提供し、それにおいて、対象は、本明細書中に開示する方法により、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、又は有するリスクがあるとして選択されている。
【0253】
別の態様は、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を対象に投与することを含む方法を提供し、それにおいて、対象は、本明細書中に開示する方法により、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得る対象として選択されている。
【0254】
別の態様は、対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置する方法における使用のための、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物を提供し、それにおいて、対象は、本明細書中に開示する方法により、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、又は有するリスクがあるとして選択されている。関連する態様は、それを必要とする対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置するための方法を提供し、この方法は、対象の皮膚に、予防的又は治療的に効果的な量のRoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物を投与することを含み、それにおいて、対象は、本明細書中に開示する方法により、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、又は有するリスクがあるとして選択されている。別の関連する態様は、対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置する方法における使用のための薬物の製造のための、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物の使用を提供し、それにおいて、対象は、本明細書中に開示する方法により、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、又は有するリスクがあるとして選択されている。さらに関連する態様は、対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置するための、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物の使用を提供し、それにおいて、対象は、本明細書中に開示する方法により、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、又は有するリスクがあるとして選択されている。
【0255】
さらなる態様は、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物を対象に投与することを含む方法を提供し、対象は、本明細書中に開示する方法により、RoxPの投与から利益を得る対象として選択されている。
【0256】
それ故に、本願はまた、以下の記載において示す態様及び実施形態を提供する:
【0257】
記載1.対象において皮膚老化を防止する又は低下させるための、RoxP(プロピオニバクテリウム・アクネスのラジカルオキシゲナーゼ)を分泌する生きたC.アクネス株を含む組成物の美容的な使用。
【0258】
記載2.酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置する方法における使用のための、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む組成物。
【0259】
記載3.記載2に従った使用のための組成物であって、それにおいて、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患が、光線角化症(AK)、基底細胞癌(BCC)、扁平上皮癌(SCC)、頭部粃糠疹、脂漏性皮膚炎、ざ瘡、炎症、皮膚炎、乾癬、湿疹、酒さ、蕁麻疹、及び白斑を含む群より選択される。
【0260】
記載4.記載1に従った使用、又は記載2もしくは3に従った使用のための組成物であって、それにおいて、C.アクネス株が内因性にRoxPを分泌する。
【0261】
記載5.記載1 もしくは4に従った使用、又は記載2から4のいずれか1つに従った使用のための組成物であって、それにおいて、C.アクネス株が遺伝子操作されていない。
【0262】
記載6.記載1、4、もしくは5に従った使用、又は記載2から5のいずれか1つに従った使用のための組成物であって、それにおいて、組成物は、RoxPを分泌する2つ又はそれ以上のC.アクネス株を含む。
【0263】
記載7.記載1もしくは4から6のいずれか1つに従った使用、又は記載2から5のいずれか1つに従った使用のための組成物であって、それにおいて、C.アクネス株は、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株は個々に、又は合わせて、定常期において測定された場合、培地1mL当たり少なくとも1μgのRoxPを分泌する。
【0264】
記載8.記載1もしくは4から7のいずれか1つに従った使用、又は記載2から7のいずれか1つに従った使用のための組成物であって、それにおいて、C.アクネス株の、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つの内因性 RoxPプロモーターは、TGCTATACTもしくはTGCTACACT、好ましくはTGCTATACTより選択される配列を有する-10ボックス、及び/又はACTTCGATもしくはACTTCAATより選択される配列を有する-35ボックスを含む。
【0265】
記載9.記載1 もしくは4から8のいずれか1つに従った使用、又は記載2から8のいずれか1つに従った使用のための組成物であって、それにおいて、C.アクネス株は、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも 1つは、各々が非依存的に、I型、II型、又はIII型、好ましくはIA型、IB型、又はIII型である。
【0266】
記載10.記載1もしくは4から8のいずれか1つに従った使用、又は記載2から8のいずれか1つに従った使用のための組成物であって、それにおいて、C.アクネス株は、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株の少なくとも1つは、各々が非依存的に、SLST A型、C型、G型、H型、L型、又はK型である。
【0267】
記載11.記載1もしくは4から10のいずれか1つに従った使用、又は記載2から10のいずれか1つに従った使用のための組成物であって、それにおいて、C.アクネス株は、あるいは2つ又はそれ以上のC.アクネス株は個々に、又は合わせて、組成物1グラム当たり少なくとも100コロニー形成単位(CFU)の量で組成物中に存在する。
【0268】
記載12.記載1もしくは4から11のいずれか1つに従った使用、又は記載2から11のいずれか1つに従った使用のための組成物であって、それにおいて、組成物は皮膚への局所投与用に形成され、例えば、それにおいて、組成物はジェル、クリーム、軟膏、ローション、液滴、スプレー(エアゾールスプレーを含む)、泡、又は粉末であり、場合により、それにおいて、組成物はマスク、パッド、パッチ、2チャンバーデバイス、又は化粧品により構成される。
【0269】
記載13.対象において皮膚老化を防止する又は低下させるための、RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物の美容的な使用。
【0270】
記載14.酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置する方法における使用のための、RoxP又はその生物活性変異体もしくはフラグメントを含む組成物。
【0271】
記載15.記載14に従った使用のための組成物であって、それにおいて、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患は、AK、BCC、SCC、頭部粃糠疹、脂漏性皮膚炎、ざ瘡、炎症、皮膚炎、乾癬、湿疹、酒さ、蕁麻疹、及び白斑を含む群より選択される。
【0272】
記載16.記載13に従った使用、又は記載14もしくは15に従った使用のための組成物であって、それにおいて、組成物は、RoxPを分泌する、好ましくは内因性にRoxPを分泌する、培養された生きたC.アクネス株の上清又は上清のRoxP濃縮画分を含む。
【0273】
記載17.記載14から16のいずれか1つに従った使用のための組成物であって、それにおいて、組成物は少なくとも1×10-9M RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む。
【0274】
記載18.記載13もしくは16から17のいずれか1つに従った使用、又は記載14から17のいずれか1つに従った使用のための組成物であって、それにおいて、組成物は皮膚への局所投与用に形成され、例えば、それにおいて、組成物はジェル、クリーム、軟膏、ローション、液滴、スプレー(エアゾールスプレーを含む)、泡、又は粉末であり、場合により、それにおいて、組成物はマスク、パッド、パッチ、2チャンバーデバイス、又は化粧品により構成される。
【0275】
記載19.対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を診断するための、又は対象がRoxPもしくはRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得るか否かを決定する方法であって、この方法は、対象からの皮膚サンプル中のRoxPの量又はC.アクネスの量を決定することを含む。
【0276】
記載20.以下を含む、記載19に従った方法:
(A)(a)対象からの皮膚サンプル中のRoxPの量又はC.アクネスの量を決定すること;
(b)決定されたRoxPの量又は決定されたC.アクネスの量を参照値と比較すること(前記参照値は、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の公知の診断を表す);
(c)前記参照値からの、決定されたRoxPの量又は決定されたC.アクネスの量の偏差又は無偏差を見出すこと;及び
(d)前記の偏差又は無偏差の知見を、対象における酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患の特定の診断に帰すること;
又は
(B)(a)対象からの皮膚サンプル中のRoxPの量又はC.アクネスの量を決定すること;
(b)決定されたRoxPの量又は決定されたC.アクネスの量を参照値と比較すること(前記参照値は、RoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与の利益の公知の指標を表す);
(c)前記参照値からの、決定されたRoxPの量又は決定されたC.アクネスの量の偏差又は無偏差を見出すこと;及び
(d)前記の偏差又は無偏差の知見を、対象がRoxP又はRoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得うるか否かの特定の指標に帰すること。
【0277】
記載21.対象からの皮膚サンプル中の前記C.アクネスにより分泌されるRoxPの量を決定することをさらに含む、記載19又は20に従った方法。
【0278】
記載22.対象からの皮膚サンプル中の2つ又はそれ以上のC.アクネス型、MLST型、SLST型、又は株の相対量を決定することをさらに含む、記載19又は20に従った方法。
【0279】
記載23.記載19又は20に従った方法であって、それにおいて、前記の酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患は、AK、BCC、SCC、頭部粃糠疹、脂漏性皮膚炎、ざ瘡、炎症、皮膚炎、乾癬、湿疹、酒さ、蕁麻疹、及び白斑を含む群より選択される。
【0280】
記載24.対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置する方法における使用のための、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を含む組成物であって、それにおいて、対象は、記載19から23のいずれか1つの方法により、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、又は有するリスクがあるとして選択されている。
【0281】
記載25.RoxPを分泌する生きたC.アクネス株を対象に投与することを含む方法であって、それにおいて、対象は、記載19から23のいずれか1つの方法により、RoxPを分泌する生きたC.アクネス株の投与から利益を得うる対象として選択されている。
【0282】
記載26.対象において酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を防止する又は処置する方法における使用のためのRoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物であって、それにおいて、対象は、記載20から23のいずれか1つの方法により、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患を有する、又は有するリスクがあるとして選択されている。
【0283】
記載27.RoxP又はその生物学的に活性な変異体もしくはフラグメントを含む組成物を対象に投与することを含む方法であって、それにおいて、対象は、記載19から23のいずれか1つの方法により、RoxPの投与から利益を得うる対象として選択されている。
【0284】
本発明をその特定の実施形態と組み合わせて記載してきたが、多くの代替、改変、及びバリエーションが、前述の記載に照らして、当業者に明らかであろうことは明白である。したがって、以下のような全ての代替、改変、及びバリエーションを添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲において包含することが意図される。
【0285】
本明細書中に開示する本発明の態様及び実施形態は、以下の非限定的な実施例によりさらに支持される。
【0286】
実施例。
【0287】
実施例1から6において使用した材料及び方法。
【0288】
菌株及び培養。
【0289】
キューティバクテリウム・アクネス単離菌(I型、II型、及びIII型株の代表である)を、対数期(1~3日)又は定常期(5~7日)のいずれかに達するまで、ウィルキンス- チャルグレン嫌気性培養液(WC)中で、嫌気性条件下で、37℃で成長させた。特定のC.アクネス株及びそれらの単離に関するさらなる情報は、Homberg et al. 2009 Clin Microbiol Infect 15:787-95において見出すことができ、及びそれらのそれぞれのRoxPホモログに関する情報は、Allhorn et al. 2016 Sci Rep 6:36412において見出すことができる。単離菌は、例えば、C.アクネス株 KPA171202を含み、Leibniz Institute DSMZ-German Collection of Microorganisms and Cell Culturesから受入番号DSM-16379の下で公的に入手可能である。C.アクネスKPA171202の完全なゲノムは、Genbankにおいて受入番号NC_006085.1/AE017283.1の下で注釈が付けられている。単離菌はさらに、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から受入番号ATCC 11828の下で公的に入手可能なC.アクネス亜種デフェンデンスを含んだ。C.アクネスATCC 11828の完全なゲノムには、Genbankにおいて受入番号NC_017550.1/CP003084.1の下で注釈が付けられている。単離菌はさらに、ATCC から受入番号ATCC 6919の下で公的に入手可能なC.アクネス株を含んだ。C.アクネスATCC 6919の完全なゲノムには、Genbankにおいて受入番号NZ_CP023676.1/CP023676.1の下で注釈が付けられている。単離菌はさらに、DSMZ から受入番号DSM 1897の下で公的に入手可能なC.アクネス株を含んだ。単離菌はさらに、以下のC.アクネス株を含んだが、その完全なゲノムがGenbankにおいてそれぞれの受入番号の下で注釈が付けられている:SK137(NC_014039.1/CP001977.1)、266 (NC_017534.1/CP002409.1)、6609(NC_017535.1/CP002815.1)、P.acn33(NC_016516.1/CP003195.1)、P.acn17(NC_016512.1/CP003196.1)、P.acn31(NC_016511.1/CP003197.1)、C1(NC_018707.1/CP003877.1)、HL096PA1(NC_021085.1/CP003293.1)、hdn-1(NZ_CP006032.1/CP006032.1)、KCOM 1861(= ChDC B594)(NZ_CP012647.1/CP012647.1)、PA_15_1_R1(NZ_CP012355.1/CP012355.1)、PA_21_1_L1(NZ_CP012351.1/CP012351.1)、PA_15_2_L1(NZ_CP012352.1/CP012352.1)、PA_12_1_L1(NZ_CP012354.1/CP012354.1)、KCOM 1315(NZ_CP031442.1/CP031442.1)、PA_30_2_L1(NZ_CP012350.1/CP012350.1)、PA_12_1_R1(NZ_CP012353.1/CP012353.1)、A1-14(NZ_CP013693.1/CP013693.1)。合計では、上の供給源から入手可能な155のC.アクネス単離菌又はゲノム配列が分析されている。
【0290】
RoxP遺伝子発現のqPCR分析。
【0291】
対数期及び/又は定常期のC.アクネス培養物のRNA 内容物を、製造者の指示に従って、Bacteria Protect Reagent(Qiagen)を添加したRNeasy(登録商標)Mini Kit(Qiagen、ドイツ、ヒルデン)を使用して抽出した。手短に言うと、C.アクネス培養物を等容積のBacteria Protect Reagentと混合し、膜構造の破壊前に RNA 安定化を確実にした。細胞溶解をその後、15mg/mlリゾチーム(Sigma-Aldrich、ミズーリ州セントルイス)及びプロテイナーゼK(Qiagen)を添加したTE緩衝液(10mM Tris-HCl、1mM EDTA、pH 8.0))の添加により達成した。サンプルを後に、βメルカプトエタノール添加緩衝液RLT(RNeasy Mini Kit)、エタノールを用いて処理し、製造者のプロトコールに従って RNeasyスピンカラムに加えた。結果として得られたRNA濃度を、NanoDrop(登録商標)(Saveen Werner、スウェーデン、リムハム )を使用して測定し、サンプルを後の使用まで-20℃で保存した。
【0292】
roxP転写物及びgapdh転写物の相対存在量を、ヌクレアーゼ不含水中の10ngのRNA及び100nMのプライマーと1:1(v/v)で混合したPower SYBR(登録商標)Green RNA-to-Ct 1-step Master Mix(ThermoFisher Scientific、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用した定量的リアルタイム PCR(qPCR)を通じて決定した:
【化9】
【0293】
プレートを、iCycler iQ(登録商標)(Bio-Rad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)上で、48℃で30分間、及び95℃で10分間にわたり、ならびに95℃で15秒間、60℃で1分を交互に40サイクルの逆転写で実行した。結果を、C.アクネス株266についての記録値を参照として使用し、二重デルタCq分析を介して解釈した。実験を、生物学的及び技術的な複製において実行した。
【0294】
RoxP発現酵母ベクターの生成。
【0295】
C.アクネス株KPA171202からのroxPの切断型(アミノ酸残基24~161、N末端シグナルペプチドを削除)を増幅した(プライマー:5’-GGCTGAAGCTGAATTCACACCCATCGATGAGAGCCAAC-3’(配列番号17)+5’-GATGATGATGGTCGACTCCTGCTGCGCCGTTGAGGGCGGGATCCACC-3’(配列番号18))、C末端 GAAGリンカーを含むRoxPフラグメントを生成し、pPICZαA ベクター(ThermoFisher Scientific)のEcoRI及びSalI部位中にクローニングした。配列が検証された線形化プラスミドを使用し、SuperMan5ピキア・パストリスをトランスフェクトした。
【0296】
組換えRoxP(rRoxP)の発現。
【0297】
以前に記載したベクターを保有する生成されたSuperMan5ピキア・パストリス株を分注し、50%(v/v)グリセロールを添加したYPD培地中で、-80℃で保存した。組換えタンパク質の効率的な発現のために、解凍した凍結培養物を、緩衝化メタノール複合培地(BM*(70%、v/v)、0.5Mカリウム緩衝液pH 6.0(10%、v/v)、YNB(1.4%、w/v)、99.8%メタノール(1.5%、v/v)、ビオチン(4×10-7%、w/v))中に再懸濁する前に、緩衝化グリセロール複合培地(BM*(70%、v/v)、0.5Mカリウム緩衝液 pH 6.0(10%、v/v)、YNB(1.4% 、w/v)、>99% グリセロール(1%、v/v)、ビオチン(4×10-7%、w/v))中で24時間にわたり成長させた。培養物をその後、振盪インキュベーター(30℃、180rpm)中で5日間にわたり維持し、24時間毎にメタノール(1% v/v)の添加を通じてroxPの連続誘導を達成した。
*BM:酵母エキス(1.4%、w/v)、ペプトン(2.9%、w/v)、CAS アミノ酸(1.4%、w/v)。
【0298】
rRoxPの精製。
【0299】
800×gで10分間の遠心分離及び0.22μmフィルターの通過の後に続き、酵母上清をニッケルカラム(His Gravitrap(商標)、GE Healthcare、イリノイ州シカゴ) 上にロードし、製造者の指示に従って、イミダゾール緩衝液(20mMリン酸ナトリウム pH 7.4、500mM NaCl、500mM イミダゾール)を使用して溶出させた。精製タンパク質を、透析 (MWCO:6~8kDa、Novagen(登録商標))を用いて、リン酸ナトリウム(20mM、pH 7.4) 中で直ちに再緩衝化し、その後、タンパク質濃度をNanoDrop(登録商標)(Saveen Werner)を通じて分光光度的に、サンプル純度を15%SDS-PAGEを介して決定した。
【0300】
凍結ゲル化。
【0301】
凍結ゲル化のために使用される方法は、Erturk et al.(2013 J Mol Recognit 26:633-642)により以前に記載されている。簡単には、機能性モノマーN-メタクリロイル-1-ヒスチジンメチルエステル (1mM)及びテンプレートRoxP(1mM)を、前複合体形成のために脱イオン水中に溶解した。2-ヒドロキシエチルメタクリレート (20mM)を同時に調製した(1:1 v/v)。モノマー溶液を次に、等量の架橋剤N,N’-メチレンビスアクリルアミド(最終濃度90mM)と混合し、反応混合物を一酸化窒素でパージした。重合を、その後、過硫酸アンモニウム(4.4mM)及びN,N,N’,N’-テトラメチレンエチレンジアミン(0.125%)の添加により開始した。結果として得られた溶液を、閉鎖された下部出口を伴う4×5mlのプラスチックシリンジ(O =1.3cm)中に等分し、直ちに14℃中に24時間にわたり置いた。解凍した後、カラムを最初にH2Oで洗浄し、テンプレートタンパク質を後に、イミダゾール緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、500mM NaCl、500mMイミダゾール、pH 7.4)で除去した。溶出は、RoxPがフロースルー中で検出できなくなった際に中止した(280nmで分光光度的に測定)。
【0302】
天然RoxPの精製。
【0303】
主なRoxP変異体は、以前に記載されている(Allhorn et al. 2016 Sci Rep 6:36412)硫酸アンモニウム沈殿及びイオン交換クロマトグラフィーの手順に従って、定常期のC.アクネスKPA171202培地から精製した。C.アクネスAD24培養培地からのあまり一般的でない変異体の精製には、より感度の高い技術の使用が要求された。定常期のC.アクネスAD24の硫酸アンモニウム(80%)タンパク質画分を、蠕動ポンプ(1mL/分)を使用して事前に平衡化したクリオゲルカラムに通過させた。天然RoxPの吸収を可能にするために、タンパク質画分を1時間にわたる連続的な撹拌下で、繰り返しゲルに通過させた。結合したRoxPを、イミダゾール緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、500mM NaCl、500mM イミダゾール、pH 7.4)を使用して溶出し、結果として得られたタンパク質濃度及びサンプル純度を、それぞれ NanoDrop(登録商標)(Saveen Werner)及び15% SDS-PAGEを通じて分析した。
【0304】
ABTS ラジカルカチオンアッセイ。
【0305】
RoxPの存在における事前に形成されたABTS ラジカルカチオンの還元を、Reら(1999 Free Radic Biol Med 26:1231-1237)により以前に記載された分光光度アッセイを使用して分析した。2,2’-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)(Sigma-Aldrich)を最初に ddH2O 中で濃度7nMに溶解した。過硫酸カリウム(Merck KGaA、ドイツ、ダルムシュタット)をその後、最終濃度2.45mMまで加え、結果として得られた溶液を暗所に保ち、室温で一晩インキュベートした。形成されたABTSラジカルを、PBS(pH 7.4)を用いて、734nmでの吸光度が約0.7に達するまで希釈した。酸化防止剤 (1.7μM)を加えて(1:9 v/v)、吸収スペクトル500~900nmを30秒後に記録した。
【0306】
細胞培養。
【0307】
ヒトケラチノサイト(HaCat細胞;Boukamp et al. 1988 J Cell Biol 106:761-71において開示されており、Deutsches Krebsforschungszentrum、DKFZ、info@cell-lines-service.deから入手可能;また、例えば、Addexbio(カリフォルニア州サンディエゴ)から商業的に入手可能、カタログ番号T0020001)を、L-グルタミン、EGF(表皮成長因子)、及びウシ下垂体抽出物(Gibson、Invitrogen)を添加したSFM培地中で、96ウェルプレート(Nunc A/S、Roskilde、デンマーク)中で90%コンフルエントまで成長させた。ヒト単球(THP-1細胞;Tsuchiya et al. 1980 Int J Cancer 26:171-6において開示されている;例えば Sigma-Aldrichから商業的に入手可能、カタログ番号88081201;Dr Arne Egesten(ルンド大学)の厚意により提供)を、Glutamax-1(Gibco(登録商標)、ThermoFisher Scientific)、100μg/mlストレプトマイシン、100μg/ml ペニシリン、及び10% v/v ウシ胎児血清(ThermoFisher Scientific)を添加したRPMI 1640培地中で培養した。全ての細胞を5%CO2及び95%湿度中で、37℃で培養した。
【0308】
MTTアッセイ。
【0309】
90%コンフルエントまで培養したHaCat細胞、又は96ウェルプレート中のTHP-1細胞(1.2×106個細胞/ウェル)を、2mMパラコート(Sigma-Aldrich)及び/又は5μM RoxPを用いて24~48時間にわたり処理した。HaCat細胞を培養培地中に保持し、単球をpH 7.4のHEPES-HBSS(ハンクス平衡塩溶液)緩衝液に移した。生存率を、1~5時間にわたる0.5mg/mlの3-(4,5-デメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の添加により測定した。細胞を、PBSを用いて洗浄し、DMSOの添加が続いた。サンプルを30分間にわたりインキュベートし、550nmでの吸光度を、Wallac 1420マルチラベルカウンター(Bio-Rad)を用いて測定した。
【0310】
皮膚スワブの収集。
【0311】
サンプルを2016年11月と2017年5月の間にルンド大学病院(スウェーデン)の皮膚科で収集した。顔、首、胸上部、又は肩の領域の臨床的に疑われる光線角化症(AK)又は表在性/結節性基底細胞癌(BCC)を提示する患者(n=54、50~70 歳)が参加のために求められた。
【0312】
【0313】
個人は、緩衝液で事前に浸したスワブを用いて、病変領域(4cm2)で30秒間にわたり、及び解剖学的に同一の健常部位(4cm2)で30秒間にわたり拭き取り(Venturi Transystem、イタリア、コパン)、このように、彼/彼女自身のコントロールとして機能させた。スワブをそれらの液体保存溶液中で穏やかに振盪させ、4℃で一晩保存し、次に分析のために調製した。除外基準は、以下を伴う患者を含んだ:適用された化粧品、新たに洗浄された顔(<1時間)、糖尿病、認知障害、他の活動性皮膚障害、潰瘍性腫瘍、免疫抑制、進行中の/新たに終了した抗生物質又はコルチコステロイド処置(全身又は局所、<4週間)。試験は、ヘルシンキ宣言に従って、Malmo/Lund(2016/465)における倫理委員会により承認された。書面によるインフォームドコンセントが、登録前に全ての患者から得られた。
【0314】
静電容量バイオセンサーを使用した皮膚スワブサンプル中での RoxP濃度の分析。
【0315】
健常ボランティア又はAK/BCC患者のいずれかから採取されたサンプル中のRoxPの存在量を、Erturk et al.(2018 PLoS ONE 13:e0193754)により以前に記載された分子インプリンティング技術を適用し、静電容量式バイオセンサーで分析した。潜在的なバックグラウンドを考慮し、較正曲線を最初に、リン酸ナトリウム緩衝液(10mM、pH 7.4)中で1:100(v/v)に希釈したRoxPスパイク(0.14~0.71mM)モック皮膚スワブ(Venturi Transystem、イタリア、コパン) から得た。患者スワブからの細胞及び破片をその後、遠心分離(15分、4000xg)を通じて除去し、上清をリン酸ナトリウム緩衝液中で1:100(v/v)希釈し、最終的に静電容量システム中に3通りに注入した。較正曲線は、健常な皮膚、AK、及びBCCにおけるそれぞれの存在量としてプール及びプロットする前に、各々のサンプル中での RoxP濃度の決定のために使用した。
【0316】
皮膚スワブからのDNAの調製。
【0317】
患者及び健常な個人からの皮膚スワブを伴う綿棒を4℃で一晩保管した。細胞物質を、遠心分離(5000g、10分)により液体保存緩衝液から収集し、DNAを、Qiagen DNeasyを使用して抽出した。DNA抽出の量及び質を、NanoDrop(登録商標)(Saveen Werner)により評価した。
【0318】
DNA配列決定及びバイオインフォマティクス分析。
【0319】
皮膚マイクロバイオームを決定するために、16S rRNA遺伝子のV1-V3領域を増幅し、アンプリコンを、Eurofins(ドイツ)により実施された、Illumina技術を使用してディープ配列決定に供した。読み取りのエラー率を低下させるために、Illuminaプラットフォームからの生読み取りの処理を、Mothurソフトウェアv1.39.1を使用し、及びMiSeq SOPに従って(一部の改変を伴う)行った。最初に、ペアエンド読み取りを、コマンド「make.contig」(Kozich et al. 2013 Applied and environmental microbiology 79:5112-20)を使用して組み合わせた。組み合わせた読み取りを次に、プライマー配列から切り落とし、あいまいな塩基を含む配列、又は8つよりも長く伸展されたホモポリマーを含む配列を、さらなる分析から外した。読み取りを後に、Silva参照アラインメントv128に対して整列させて、結果として得られるアラインメントをフィルターにかけて、全ての読み取りが同じ領域だけに重複するようにした。配列決定エラーの数をさらに低下させるために、Huse et al.(2010 Environmental microbiology 12(7):1889-98)により最初に開発された疑似単一リンケージアルゴリズムを実施する事前クラスタリング工程を、「diff」変数を4に設定して実施した。キメラを、Mothur(Edgar et al. 2011 Bioinformatics 27:2194-200)におけるUCHIME アルゴリズムの組み込みバージョンを使用して除去した。最後に、全てのシングルトン、デュプリケート、及びトリリケートを最終分析の前に除去し、以前の工程において検出されなかった潜在的な混入又は配列エラーからの配列の包含を排除した。結果として得られた読み取りを次に、ベイジアン方法を使用したclassify.seqsコマンド及びHuman Oral Microbiome Database(HOMD)(http://www.homd.org/)からの分類学的アウトライン v14.51(関連する皮膚細菌の手動での包含を伴う(Chen et al. 2010 Database : the journal of biological databases and curation baq013))を用いて分類した。信頼度のカットオフを80%に設定した。線形判別分析(LDA)を効果サイズ測定(LEfSe)と組み合わせて、群間の差次的に豊富な細菌分類群(門、属、種)を検出する。因子のクラスカル・ウォリス検定及びペアワイズウィルコクソン検定についてのアルファ値を0.05に設定し、弁別的な特色についてのLDAスコア閾値を3.5に設定した。LEfSeプログラムのオンラインバージョンを使用した(Segata et al. 2011 Genome Biology 12:R60)。
【0320】
皮膚スワブサンプル中のC.アクネス集団の系統型を決定するために、本発明者らは、以前に確立されたSLST アプローチ(Scholz et al. 2014 PLoS ONE 9:e104199)を使用した。SLST アンプリコンを、Eurofins(ドイツ)により実施された、MiSeq 配列決定に供した。全ての高品質の配列読み取りペアをSLST対立遺伝子に割り当てた;全ての現在公知のSLST対立遺伝子は、www.medbac.dk/slst/pacnesでアクセスできる。
【0321】
実施例1:roxPの発現はC.アクネス系統型に依存的である。
【0322】
roxP発現率を、全ての主要なC.アクネス系統型における定量的リアルタイムPCR(qPCR)により決定した。I系統型として同定されたC.アクネス単離菌は、大半のII又はIII系統型株と比較し、roxPの有意により高い発現レベルを呈した(
図1)。以下の表2 は、図 1の基礎となる実験において利用された株コホートを提示する。変化(倍)は得られた値を表し、gapdhに対して標準化されており、及びC.アクネス株 266 から認められたRoxP発現との関係に置かれている。
【0323】
【0324】
それぞれのプロモーター領域の配列決定によって、RoxP上流領域の8つの優位配列の存在が明らかになったが(
図9)、及び、さらに、予測されるroxPプロモーターの-35領域に影響を及ぼし、転写率にネガティブに影響する、II型株における塩基置換が明らかになった(
図8)。155の配列決定されたC.アクネスゲノムの比較によって、大半のI系統型株が、高い発現に関連付けられる、同じroxP上流領域を共有しているのに対し、大半のII系統型株のroxP上流領域は異なっていることが明らかになった(
図9)。-35配列ACTTCGAT又はACTTCAAT は、比較的より高いRoxP発現を達成するために好ましいように見えた。-10配列TGCTATACTは、比較的より高いRoxP発現を達成するために好ましいように見えたが、-10配列TGCTACACT も比較的良好なRoxP発現を達成した。
【0325】
また、株の好気性/嫌気性成長能力を調べた。大半のI系統型株により示された、増加したroxP発現は、有酸素環境及び無酸素環境において等しく十分に成長するための能力と相関していたのに対し、低いroxP発現は、酸素が豊富な状況において低下又は遅延した成長をもたらした(
図2)。
【0326】
実施例2:RoxPホモログは同等の抗酸化活性を呈する。
【0327】
RoxPは高度に保存されており、単離菌の大部分(約93%)において99~100%のアミノ酸同一性を伴うが、C.アクネスII及びIII系統型として分類される株のサブセット(約7%)は、より遠く関連するタンパク質を発現し、約83%のアミノ酸同一性を伴う(
図10)。異なるRoxPホモログの還元活性を比較した。主な変異体は(IB型)C.アクネス株 KPA171202培養培地から、及びそれほど一般的ではないホモログは(II型)C.アクネス株AD24培養培地から成功裏に単離することができた。後者は、組換えRoxPでインプリントされたマクロ多孔性クリオゲルを使用して精製したが(
図11)、その後、タンパク質の同一性をウエスタンブロット分析により検証した(データは示さず)。734nmでの減少した吸光度により実証されるように、2つのホモログはカチオン性ABTS
+基質を、等しい効率を伴い還元することができ、そうする際に、高度に類似した抗酸化活性を呈した(
図3、A:事前に形成されたABTS+ラジカル、B:事前に形成されたABTSラジカル+NaCl)。I系統型株によりより一般に発現される変異体は、継続的により高い活性を呈したが、その差はわずかだけであり、統計的に有意ではなかった。
【0328】
実施例3:RoxPの抗酸化活性は過酷な条件において維持される。
【0329】
RoxPは濃度依存的な還元活性を呈し(
図4A)、CaCl
2の存在において活性の喪失を有したが、しかし、生理学的濃度のNaClには持ちこたえた(
図4B)。このタンパク質はさらに、活性の任意の有意な喪失を伴うことなく、70℃を上回る温度(
図4C)、ならびに室温での長期保存(
図4D)に耐えることができた。これらのデータは、RoxPが生理学的状況において活性なままであり、過酷な条件下で顕著な安定性を示すことを示し、皮膚上でのその機能性及び生物製剤としてのその有用性を証明している。
【0330】
実施例4:RoxPはインビトロで酸化的損傷からヒト細胞を保護することができる。
【0331】
生物学的システムにおいてフリーラジカルを還元するためのRoxPの能力を調べるために、本発明者らはヒト細胞を酸化(パラコートを使用)に曝露し、細胞を致死的な酸化ストレスから救うためのRoxPの能力を調べた。その後の様式において加えられた1:400の比率(RoxP:酸化剤)でさえ、RoxPはパラコートのネガティブな酸化効果を完全に阻害した(
図5)。効果は単球においてより顕著であったが、ケラチノサイトは酸化及び抗酸化の両方にそれほど十分に反応しなかった(
図5A-B)。注目すべきことに、RoxPはまた、加えた酸化剤の非存在において、ヒト細胞の全体的な生存率を増加させることができた。
【0332】
実施例5:RoxPは、酸化ストレスに関連付けられる皮膚疾患においてそれほど豊富ではない。
【0333】
光線角化症(AK)及び基底細胞癌(BCC)におけるRoxPタンパク質の存在量を試験した。皮膚スワブ(n=54)を、疾患の罹患領域及び非罹患領域の両方で、健常な皮膚を伴う、前癌状態のAKを伴う、及び発生したBCCを伴う個人から得た。サンプルをその後、8.25ng RoxP/cm
2皮膚という少量の濃度を検出することが以前に示された高感度静電容量バイオセンサー(Erturk and Lood et al. 2018 J Vis Exp, doi: 10.3791/57208)を使用して分析し、記録された静電容量の変化を、事前に確立された較正曲線に対して平衡化した(
図12)。結果は、集団(
図6)及び個人ベース(
図13)で分析した。後者の場合では、RoxP濃度の正確な決定が罹患領域又は非罹患領域のいずれかにおいて不成功であった場合、患者を除外した(データは示さず)。全体的に高いRoxP存在量がBCCを伴う患者の間で観察された(
図6)。AKを伴う個人は、疾患部位においてさらなる RoxP濃度の減少を示したが、BCCを伴う個人は、罹患部位及び非罹患部位の両方で同様のレベルを呈した(
図13)。
【0334】
実施例6:酸化的皮膚疾患における腸内毒素症は、減少したC.アクネスの有病率により特徴付けられる。
【0335】
細菌組成を、AK及びBCCにおいて属、種、C.アクネス系統型レベルで試験した。皮膚スワブを、16S rDNAアンプリコンディープシークエンシングにより追跡し、健常な皮膚と比較し、疾患において著しく減少したプロピオニバクテリウム及び上昇したスタフィロコッカスの存在量が明らかになった(
図7A及び
図14)。酸化的疾患(AK)の急性期の間でのC.アクネスの有病率における下落は、疾患の後期(BCC)におけるスタフィロコッカス種、特にSアウレウスにおける急増を表面上進めた(
図7A)。単一遺伝子座配列タイピング(SLST)を通じたC.アクネス集団のさらなる特徴付けによって、特定のC.アクネス型の有病率がまた、AK罹患皮膚及び、より少ない程度で、BCC罹患皮膚においてシフトしたことが明らかになった(
図7B)。C.アクネスII型に属する株は、より一般には罹患皮膚領域から単離することができるが、健常な皮膚部位は、I型株の平均に近い優位性を呈した。
【0336】
実施例7から11において使用される材料及び方法。
【0337】
Synelvia SAS(フランス、ラベージュ)は、再構成されたヒト表皮(RHE)モデルにおいて、細胞ストレッサーに対するRoxP含有C.アクネスの上清(培地中に10% v/vの活性成分として含まれる)の保護効果をテストするように指示された。分析の関連結果を下に示す。
【0338】
活性成分
【0339】
RoxP含有C.アクネスの上清を以下のように調製した。H1株を、20L発酵槽において、37℃で3日間にわたり適した培地中で成長させた。次に、上清を、タンジェンシャルフローろ過を使用して濃縮した。第1の工程では30kDaのカットオフを使用し、第2の工程では3kDaのカットオフが使用した。最終濃縮物を、TSKgel QC-PAK(Tosoh Bioscience、ドイツ、グリースハイム)を使用したiProminence HPLC(Shimadzu、日本、京都)上でのゲルろ過により分析した。濃縮物は80%純粋なRoxPで、濃度は約2mM(~34mg/ml)であった。5% v/vの純粋なグリセロールを、それをアッセイにおいて使用する前に、-80℃で保存する前に産物に加えた。この高度にRoxP濃縮されたC.アクネスの上清を、実験用の培地に10% v/vとして加えた;培地は次に、約0.16mMのRoxPを含んだ。
【0340】
ストレッサー及び条件。
【0341】
オゾンストレス:オゾン産生は、RHE(再構成されたヒト表皮)培養培地(通気)中にO2及びO3の混合物(99/1%(v/v))を導入することにより、0.3L/分で行った。このプロセスによって、約1%のオゾンが産生されたが、それは4ppmのオゾン曝露と等価である。
【0342】
オゾン分解反応によって、Criegee転位に従って一次及び二次産物と呼ばれるいくつかの産物が誘導される。結果として得られた一次オゾニドは、一次カルボニル(アルデヒド又はケトン)及びカルボニル-O-オキシド(しばしばCriegee中間体と呼ばれる)中に分解する。二次産物はオゾン下で親分子と反応し、他の分解産物を生成する。オゾン分解反応はまた、タンパク質酸化又はDNA損傷を誘導しうる。
【0343】
UVストレス:RHEを、Bio-Sunシステム(Vilber Lourmat、フランス、コレジアン)を使用し、2MED(最小紅斑線量)でのUV放射(UVA + UVB)に曝露させた。
【0344】
光酸化によって、脂質及びタンパク質酸化、DNA損傷が誘導され、特定の酸化/分解産物(例えばCPD又は8-OHdGなど)が生成される。
【0345】
以下の条件をテストしている。
【0346】
陰性コントロール1:活性成分を伴わないストレスのないRHE。RHEをインキュベーター中で5%CO2、37℃の下で10日間産生させ、培地を10日目まで2日毎に変えた。10日目に、RHE及び培地を回収し、分析まで-20℃で保存した。
【0347】
陰性コントロール2:活性成分を伴うストレスのないRHE(RoxP濃縮されたC.アクネスの上清)。RHEをインキュベーター中で5%CO2、37℃の下で10日間産生させ、培地を8日目まで2日毎に変えた。8日目及び9日目に、活性成分(RoxP濃縮されたC.アクネスの上清)を10% v/vで培地中に加えた。10日目に、RHE及び培地を回収し、分析まで-20℃で保存した。
【0348】
陽性コントロール1:UVを用いたストレスのあるRHE。RHEをインキュベーター中で5%CO2、37℃の下で10日間産生させ、培地を8日目まで2日毎に変えた。9日目に、RHEをチャンバー中に導入し、2MED(UVA:9J/cm2(365nm)及びUVB 300mJ/cm2(312nm))で曝露させた。ストレス後、新たな培地をRHEに加えた。10日目に、RHE及び培地を回収し、分析まで-20℃で保存した。
【0349】
テスト1:活性成分(RoxP濃縮されたC.アクネスの上清)と接触させた、UVを用いたストレスのあるRHE。RHEをインキュベーター中で5%CO2、37℃の下で10日間産生させ、培地を8日目まで2日毎に変えた。8日目に、活性成分(RoxP濃縮されたC.アクネスの上清)を培地中に10% v/vで加えた。9日目に、RHEをチャンバー中に導入し、活性成分を10% v/vで含む培地を用いて、2MED(UVA:9J/cm2(365nm)及びUVB 300mJ/cm2(312nm))で曝露させた。ストレス後、10% v/vの活性成分を含む新たな培地をRHEに加えた。10日目に、RHE及び培地を回収し、分析まで-20℃で保存した。
【0350】
陽性コントロール2:オゾンでストレスを受けたRHE。RHEをインキュベーター中で5%CO2、37℃の下で10日間産生させ、培地を8日目まで2日毎に変えた。9日目に、RHEにオゾンでストレスを与えた(反応チャンバー中)。反応培地をオゾンとの反応の間(約1分間)に5℃に冷却した。ストレス後、新たな培地をRHEに加えた。10日目に、RHE及び培地を回収し、分析まで-20℃で保存した。
【0351】
テスト2:活性成分(RoxP濃縮されたC.アクネスの上清)と接触させた、オゾンを用いたストレスのあるRHE。RHEをインキュベーター中で5%CO2、37℃の下で10日間産生させ、培地を8日目まで2日毎に変えた。8日目に、活性成分(RoxP濃縮されたC.アクネスの上清)を培地中に10% v/vで加えた。9日目に、RHEにオゾンでストレスを与えた(反応チャンバー中)。反応培地をオゾンとの反応の間(約1分間)に5℃に冷却した。ストレス後、活性成分を含む新たな培地をRHEに加えた。10日目に、RHE及び培地を回収し、分析まで-20℃で保存した。
【0352】
各々の条件を3通りに実施した。
【0353】
活性成分(C.アクネスの上清)を、細胞培養アッセイにおける使用の前に滅菌ろ過した。
【0354】
形態評価。
【0355】
形態を、ヘマトキシリンエオシン着色を使用して評価した。
【0356】
有効性評価。
【0357】
DNA損傷評価-CPD(免疫蛍光分析):活性物質によりもたらされる誘導性光防御を評価するために、著者らは、CPD免疫染色を使用してDNA損傷を評価した。UVB放射(290~320nm)(太陽放射の最もエネルギー性の変異原性成分及び発癌性成分)は、DNAにより直接的に吸収され、隣接するピリミジン塩基間に二量体の光産物を生じる。これらの多量の修飾の2つの型、シクロブタンピリミジンダイマー(CPD)及びピリミジン(6-4)ピリミドン光産物が産生される(Cadet et al. 2005 Mutat Res 571:3-17)。これらの産物の両方が、同じDNA鎖上の隣接ピリミジンの二量体化を含む。CPD形成の関連性は、Sproul et al. 2014 Photochem Photobiol 90:145-154においてさらに記載されている。
【0358】
DNA損傷評価-8-OHdG(免疫蛍光分析):核DNA及びミトコンドリアDNAにおいては、8-ヒドロキシ-2-デオキシグアノシン(8-OHdG)又は8-オキソ-7,8-ジヒドロ-2-デオキシグアノシン(8-oxodG)がフリーラジカル誘導性の酸化的病変の主な形態の1つであるたり、従って、酸化ストレス及び発癌についてのバイオマーカーとして広く使用されてきた。このバイオマーカーの関連性は、例えば、Valavanidis et al. 2009 J Environ Sci Health C Environ Carcinog Ecotoxicol Rev 27:120-39及びNu et al. 1999 Br J Dermatol 140:226-31において記載されている。
【0359】
システム解毒評価(比色キットによるGPx分析):グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)は、ペルオキシダーゼ活性を伴うセレン含有抗酸化酵素ファミリーを表し、その主な生物学的役割は、生物を酸化的損傷から保護することである。GPxは、H2O2及び過酸化脂質をそれぞれ水及び脂質アルコールに効果的に還元し、次にグルタチオンをグルタチオンジスルフィドに酸化する(Arthur JR. 2000 Cell Mol Life Sci 57:1825-1835)。酸化ストレスからの保護のためのグルタチオンペルオキシダーゼの重要性はまた、グルタチオンペルオキシダーゼ活性の不活性化がUV誘導性の扁平上皮癌形成に寄与するという事実により例証されている(Walshe et al. 2007 Cancer Res 67:4751-8)。皮膚扁平上皮癌(CSCC)は、過剰なUV照射に曝露された皮膚の部位において起こるケラチノサイトの一般的な悪性腫瘍である。
【0360】
アポトーシス評価(免疫蛍光分析によるカスパーゼ3):カスパーゼ(システイニルアスパラギン酸特異的プロテアーゼ)は、含まれる亜型及び器官に依存して種々のタスクを伴う重要なシグナル伝達分子のファミリーである。カスパーゼ3は、「デスカスケード」の開始に関連付けられる「エフェクター」カスパーゼとして関係づけられ、従って、アポトーシスシグナル伝達経路中への細胞のエントリーポイントの重要なマーカーである。カスパーゼ3は上流のカスパーゼ8及びカスパーゼ9により活性化され、それは異なるシグナル伝達経路についての収束点として機能するため、それは、アポトーシスアッセイにおける読み出しとして十分に適する(Nicholson et al. 1995 Nature 376:37-43;Shi 2002 Molecular Cell 9:459-470)。
【0361】
実施例7:UVストレスのある再構築されたヒト表皮(RHE)に対するRoxPの効果の形態評価。
【0362】
陰性コントロール1(C.アクネス株の上清を伴わない、ストレスのないRHE):RHEは4つの層(基底層、有棘層、顆粒層、角質層)を伴い完全に分化した。基底層は増殖性コンパートメントであり、本発明者らは、クロマチンが豊富な楕円形の核を伴う、整列した円柱細胞を観察することができた;基底細胞はポリカーボネート膜に付着している。有棘層の4つの層は、上層中で平坦化された下層中の多角形細胞を示した。顆粒細胞層は、目に見えるケラトヒアリン顆粒を含む平坦化された顆粒細胞の2~3層で作られていた。
図15Aを参照のこと。
【0363】
陰性コントロール2(10% v/vのC.アクネスの上清を伴う、ストレスのないRHE)。
【0364】
培地中の10% v/vの活性成分で処理されたRHEは、異常な基底層を伴い、及び欠損した分化プロセスを伴い、より薄く見えた。実際に、基底ケラチノサイトは十分に整列しておらず、及び立方形状を示さなかった。さらに、ケラトヒアリン顆粒の数の減少及び不全角化(角質層における核の保持)が観察された。最後に、ストレスのないRHEと比較し、活性成分で処理されたRHEにおけるアポトーシス細胞(オレンジ細胞)の数が増加した。この特定の表現型は、培地中の10% v/vの濃度での活性成分の一部の毒性を示していた。
図15Bを参照のこと。
【0365】
陽性コントロール1(UVを用いたストレスのあるRHE):UVA/UVBを用いたストレスのあるRHEは、サンバーンセルで典型的な表現型を示した。実際に、UV誘導性ケラチノサイトアポトーシスの最初の証拠は、表皮におけるサンバーンセルの出現であった。サンバーンセルの特性は、丸い形状、周囲のケラチノサイトとの接触の喪失(核における典型的なクロマチン凝縮と組み合わせて)である。アポトーシスは、DNA損傷の誘導への皮膚の主要な保護反応である。それは、それらのゲノム中の損傷を伴って分裂する細胞における変異の蓄積を回避するための防止的な細胞死に導き、このように、腫瘍形成の開始を遮断する。大半のサンバーンセルは基底層及び有棘層中に出現したが、しかし、一部は顆粒層中で区別された。基底層細胞全体がアポトーシス中にあり、増殖細胞の非存在及び表皮の死に導いているように思われた。ケラトヒアリン顆粒の減少も認められた。アポトーシスの誘導の証拠がまた、酵素の切断及び活性形態に対して向けられた抗体を使用したカスパーゼ3のインサイチュ検出により提供された(下を参照のこと)。
図15Cを参照のこと。
【0366】
テスト1(10% v/vのC.アクネスの上清を伴う、UVを用いたストレスのあるRHE):活性成分を用いて処理され、UVA/UVBを用いたストレスのあるRHEは、有棘層においてわずかな表現型を示したが、しかし、基底層中の核は存在しなかった、又は異常であった。基底ケラチノサイト全体がアポトーシス中にあったが、有棘層中のサンバーンセルの数は減少した。それ故に、UVストレス下では、基底層及び有棘層中で観察される古典的なサンバーンセルの数が、活性成分の存在において減少した。
図15Dを参照のこと。
【0367】
実施例8:UVストレスのあるRHEに対するRoxPの効果のDNA損傷/CPD評価。
【0368】
組織を処理し、赤色蛍光検出を使用してパラフィン切片からシクロブタンピリミジン二量体(CPD)レベルを検出した。核は、DAPIを用いて青色に染色した。破線は、RHEモデルにおける膜インサート及びヒト皮膚における真皮表皮接合部に対応する。
図16中のスケールバー=50μm。
【0369】
二量体形成は、活性成分を伴う(
図16B)又は伴わない(
図16A)ストレスのないRHEにおいて観察されなかった。UV条件下で、二量体光産物(CPD)がRHEの有核層において形成された(
図16C、D)。活性成分は、UVにより誘導されるDNA損傷を減少させるように見えた(
図16D、E)。
【0370】
実施例9:UVストレスのあるRHEに対するRoxPの効果のDNA損傷/8-OHdG評価。
【0371】
組織を処理し、赤色蛍光検出を使用してパラフィン切片から8-ヒドロキシ-2-デオキシグアノシン(8-OHdG)レベルを検出した。核を、DAPIを用いて青色に染色した。破線は、RHEモデルにおける膜インサート及びヒト皮膚における真皮表皮接合部に対応する。
図17中のスケールバー=50μm。
【0372】
8-OHdGを、活性成分を伴わない、ストレスのないRHEにおいて検出した(
図17A、E)。活性成分は8-OHdGの産生をわずかに増加させ(
図17B、E)、それによって、形態評価において既に観察された、選ばれた濃度での活性成分の限定された毒性が確認された。
【0373】
UV下では、有核層の全体がDNA損傷を示し、8-OHdGの強い形成を伴った(
図17C-E)。活性成分は、8-OHdG検出の減少を伴う保護効果を有するように思われた(
図17D-E)。
【0374】
実施例10:システム解毒評価(GPx分析)。
【0375】
グルタチオンペルオキシダーゼ活性を、BioAssay Systems(カリフォルニア州ヘイワード)(EGPX-100)からの比色キットを使用して決定した。結果を表3及び
図18中に示す。
【0376】
【0377】
UVストレス及びオゾンストレスの両方について、活性成分はGPX活性に対するストレスの効果を阻害した。
【0378】
実施例11:アポトーシス評価(活性カスパーゼ3)。
【0379】
組織を処理し、赤色蛍光検出を使用してパラフィン切片から活性カスパーゼ3レベルを検出した。核を、DAPIを用いて青色に染色した。破線は、RHEモデルにおける膜インサート及びヒト皮膚における真皮表皮接合部に対応する。
図19中のスケールバー=50μm。
【0380】
少数の細胞だけが、活性成分を伴わない、ストレスのないRHEにおいて活性カスパーゼ3の免疫染色を示した(
図19A、Eバー#1)。活性成分の存在において、カスパーゼ3はわずかに活性化され、活性成分がRHEにおいてアポトーシスを誘導したことを示す(
図19B、Eバー#2)。カスパーゼ3は、基底層から有棘層まで、UVストレス下で強く活性化され、アポトーシス細胞を示した(
図19C、Eバー#3)。活性成分は、基底層においてカスパーゼ3活性化を低下させた(
図19D、Eバー#4)。
【0381】
実施例12:抗酸化活性を伴うRoxPペプチド。
【0382】
RoxPから由来する2つのペプチドは、本質的に以前の実験において記載されているように、ABTSラジカルカチオンアッセイにおいて、及び酸素ラジカル吸収能(ORAC)アッセイにおいて抗酸化活性についてテストした。
【0383】
ペプチド(本明細書中で「RoxP-ペプチド1」及び「RoxP-ペプチド2」と表示)は、配列番号1において示す天然RoxPタンパク質のアミノ酸位置66~83及び128~140に対応し、RoxP-ペプチド1及びRoxP-ペプチド2(それぞれ太字及び太字+斜体で示す)に対応するアミノ酸位置を伴い、下に再生する:
【化10】
【0384】
ペプチドの配列を下に示す:
RoxP-ペプチド1:VRADGYQESMVTRVLDDK(配列番号20)、
RoxP-ペプチド2:RTLSYCAYPHYVN(配列番号21)。
【0385】
図20A及びBは、両方のペプチドがABTSアッセイにおいて抗酸化活性を呈し、それが、ペプチドの濃度と共に増加したことを実証する。
【0386】
ORACアッセイによって、フリーラジカル発生剤、例えばアゾ開始剤化合物など、例えばAAPH(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナミジン)二塩酸塩などと混合した後に、蛍光分子、例えばフルオレセイン又はベータフィコエリトリンなどの酸化分解を測定する。アゾ開始剤は典型的には、熱分解時にペルオキシラジカルを産生し、それによって酸化が起こり、それにより蛍光分子の蛍光を消光させる。酸化防止剤の添加によって、蛍光分子の酸化的変性が防止され、この保護の程度は、蛍光光度計により定量化することができる。有利には、ペルオキシフリーラジカルは一般に身体において見出され、それによって、ORACアッセイは特に、インビボでのテスト化合物の抗酸化特性の情報を与える。
【0387】
本実施例では、ORACアッセイ(Zenbio、注文番号AOX-2)を以下のように実施した:
【0388】
RoxPサンプルの希釈物を、提供されたアッセイ緩衝液中で調製した。次に、全ての溶液及び機械を37℃に予熱し、150μlの作業用フルオレセイン溶液を、透明な底を伴う黒色96ウェルプレートに加えた。次に、25μlのサンプルをフルオレセイン含有ウェルに加え、プレートを37℃のインキュベーター中に10分間にわたり暗所に置いた。次に、25μlの新たに調製したAAPH溶液(2,2’-アゾビス-2-メチル-プロパニミダミド、二塩酸塩)を加え、プレートをプレートリーダー中に入れた。読み出しを、485nmでの励起及び528nmと538nmの間での発光を伴う蛍光モードにおいて行った。
図21A及びBは、両方のペプチドが、ORACアッセイにおいて抗酸化活性を呈し、それはペプチドの濃度と共に増加したことを実証する。
【0389】
実施例 13:RoxPはヒドロキシルラジカル (・OH)の生成を阻害する。
【0390】
デオキシリボースアッセイは、生物学的システムにおけるヒドロキシルラジカルの生成を測定し、抗酸化剤が・OHラジカル生成を低下させる能力を評価するための十分に確立された方法である。そのようなアッセイは、例えば、Gutteridge & Halliwell(Biochem J. 1988, vol. 253(3), 932-933)及びその中の参考文献において記載されている。特に、H202及びFe2+(又はFe3++還元剤)とインキュベートされたデオキシリボースは、反応してチオバルビツール酸-マロンジアルデヒド(古典的なTBA-MDAアッセイ)色原体を形成することができる産物中に分解される。この反応は、・OHラジカルにより駆動される。・OHラジカルの普及における低下によって、より少ない複合体形成及びより低い吸光度がもたらされる。
【0391】
緩衝液A(20mM KH2PO4-KOH、pH 7,4)中に5mM 2-デオキシリボース、100μM FeCl3、100μM EDTA、1mM H2O2、及び7.6μg/mlアスコルビン酸を含む反応混合物(2mg/ml RoxPを含む、又は含まない)を3通りに、37℃で1時間にわたりインキュベートした(総量1ml)。インキュベーション後、50mM NaOH中の1% w/v TBA(チオバルビツール酸)及び2~8% v/v TCA(トリクロロ酢酸)を加え、95℃で15分間にわたるインキュベーション、及び532nmでの吸光度の読み取りが続いた。
【0392】
RoxPの添加によって、TBA-MDAアッセイにおける532nmでの吸光度が低下し、・OHラジカルの生成を減少させるその能力を示す(
図22を参照のこと)。
【0393】
実施例14:RoxPによって、照射された血漿中の脂質ヒドロペルオキシドレベルが減少する。
【0394】
脂質過酸化(脂質の酸化的分解)は、脂質に対するフリーラジカルの作用に起因する。細胞膜中での脂質の過酸化は、細胞損傷をもたらしうる。
【0395】
ヒドロペルオキシドはFe2+イオンと反応してFe3+イオンを産生し、それは、色原体としてチオシアン酸イオンを使用して検出される。Fe3+イオンのより低い存在量によって、より低い吸光度がもたらされ、照射された血漿中での脂質ヒドロペルオキシドのより低いレベルを示す。
【0396】
血液をEDTAチューブ中に収集した。500μlの血液+150μlのRoxP(300μg RoxP)、又は500μlの血液+150μlのPBSを含むサンプルを照射に供した。
【0397】
UVA-照射3×5000μJ/cm2;チューブを照射工程間で回転させた;又は
【0398】
UVB-照射1×9000μJ/cm2、2×5000μJ/cm2。
【0399】
サンプルと同一の組成を有するが、しかし、照射されていないコントロールを実験において含めた。
【0400】
血液サンプルを1000×gで遠心分離し、血漿を収集して-80℃で凍結した。脂質ヒドロペルオキシドを、脂質ヒドロペルオキシドアッセイキット(Cayman Chemical、アイテム番号アイテム番号705002)を使用して定量化した。
【0401】
血漿(照射及び非照射の両方)へのRoxPの添加によって、低下した脂質ヒドロペルオキシドレベルがもたらされた(
図23を参照のこと)。
【0402】
実施例15:RoxPはFe3+を還元する。
【0403】
フェナントロリンはFe2+を特異的にキレート化し、550nmで吸光度を生成する。それ故に、より多くのFe2+がサンプル中に存在するほど、550nmでの吸光度が高くなる。
【0404】
0.7mM硫酸アンモニウム鉄(II)六水和物(PBS中の1.4mM作業溶液から)又は0.5mM硫酸アンモニウム鉄(III)十二水和物(PBS中の1.0mM作業溶液から)を含む;及び、さらに、10μg又は20μgのRoxP(PBS中の2mg/ml RoxP作業溶液から)又はコントロールとして同等量のPBSを含む;及び、さらに、0.75mMフェナトロリン(PBS中の5mM作業溶液から)を含む反応混合物;総量200μl;を、室温で15分間にわたりインキュベートした。吸光度を550nmで読み取った。
【0405】
RoxPの添加によってFe
3+がFe
2+に還元され、高い吸光度が生成されたが、それは、Fe
2+だけが存在する場合は反応に影響を及ぼさなかった(
図24を参照のこと)。
【0406】
これらの結果は、RoxPによるFe
2+へのFe
3+の還元を確認したフェロジンアッセイを使用して確証された(
図25を参照のこと)。フェロジンアッセイにおいて使用した試薬は、100μlの50mM鉄アンモニウム12水和物、H
2O中の100μlの2mMフェロジン、及びRoxP(50μl)を含み、PBS中の2mg/ml RoxPのストック溶液から希釈された、グラフ中に示す種々のRoxP濃度をもたらした。インキュベーションは17時間のインキュベーションであった。
【0407】
実施例16:RoxPとコプロポルフィリンIIIとの相互作用。
【0408】
1mg/ml RoxP(100μl)を50μgのコプロポルフィリン(10μl)と混合し、総量を、PBSを用いて290μlに調整した。吸光度を異なる波長で測定した。吸光度曲線は、RoxPによるコプロポルフィリンIIIの結合を示す(
図26を参照のこと)。
【0409】
実施例17:ABTSとの反応におけるRoxPに対するFMN/FDNの効果。
【0410】
ABTSアッセイにおけるRoxP活性に対するフラビンモノヌクレオチド(FMN)/フラビンアデニンジヌクレオチド(FDN)の効果を測定した。反応成分は、ABTS(プロトコールに従って酸化)(PBS中で20×、37℃に予熱、89μl加えた);RoxP(2mg/ml、10μl);FMN/FDN(1mM、1μl又は3μl)(グラフ中の「1FMN」、「1FDN」又は「3FMN」、「3FDN」)を含んだ;総量を、PBSを用いて100μlに調整した。結果は、FMN/FDN、特にFDNを加えた場合、RoxPによるABTSラジカルの還元の増加を示した(
図27を参照のこと)。
【0411】
実施例18:RoxPは、ポルフィリンを通じて形成されるラジカルの生成を阻害する。
【0412】
正常なヒトの皮脂は、皮膚上での活性酸素種(ROS)の生成において関係する大量のポルフィリンを含む。ポルフィリンの量は、UV光又は蛍光写真により簡単に可視化することができる。
【0413】
一重項酸素センサーグリーン色素をメタノール中に溶解し、PBS緩衝液中に加えて、最終濃度0.4μMに達した。この溶液を、透明な96ウェルプレート中に分配した。ウェルに、1μMコプロポルフィリンIII、又は1μMプロトポルフィリンIXを加えた。次に、変動量のRoxPを加えた。各々の条件を4つのレプリカとして設定した。レプリカの2つを、曝露の間にアルミホイルにより覆い、2つのウェルを10分間にわたりUVランプに曝露した。曝露後、一重項酸素センサーグリーン色素の蛍光を読み出し、生成された一重項酸素の量を示した。
【0414】
RoxPは、ポルフィリンを通じて形成されるラジカルの生成を効率的に阻害し(
図32を参照のこと)、このように、UV誘導性の一重項酸素生成により起こされる損傷を低下させるための優先的な方法となることができる。
【0415】
実施例19:RoxPは、UVA/UVB照射試験においてヒト対象に投与された場合に抗酸化能を示した。
【0416】
本試験の目的は、抗酸化効果及び皮膚紅斑を測定することにより、7名の健常な対象におけるRoxPを含む3つの組成物のUV保護能を評価することであった。酸化ストレスを、上背部上の皮膚へのUVA及びUVB光への曝露により誘導した。テスト産物の抗酸化活性を、皮膚表面からのスワブサンプルの皮脂脂質酸化レベル(スクアレンモノヒドロペルオキシドの濃度)の測定により評価した。能力を、軽度の日焼け(1.25MED)の誘導後、水、未処理コントロール、及び1つの親水性標準抗酸化剤(H1)との比較において、RoxPの2回適用後に評価した。特定のサンプリングキット(Synelvia)を使用し、分析用の脂質サンプルを得た。加えて、産物のUV保護能を、産生された紅斑(クロマメーター)を測定することにより評価した。
【0417】
テストされた産物は以下の通りである:未処理(「UT」);脱塩水(「Aqua」);抗酸化剤H1、水中の天然親水性カテコール1%(陽性コントロール)(「H1」);水溶液中の0.3mM(「EC-AA-001」)、1.2mM(「YE-LU-001」)、又は4.0mM(「CA-FT-001」)の完全長RoxPタンパク質。サンプルを溶液として提供し、室温で保存した。全ての参考について、Aquaコントロールを使用した。なぜなら、サンプルは水溶液として適用されたからである。
【0418】
本試験は、皮脂脂質の分析のためにランダム化された二重盲検として設計し、個人内比較を伴い、プラセボ対照であった。
【0419】
紅斑を、t1=照射前のベースライン、t2=照射後30~50分、及びt3=照射後16~24時間で評価した(クロマメーター)。スクアレンモノヒドロペルオキシド(SQOOH)を照射後25~45分で定量化した。
【0420】
一般的なテスト部位は上背部であった。処置領域は4.5cm×4.5cmのサイズを有した。照射部位は4cm×4cmのサイズを有した。丸い拭き取り領域は約2.6cmの直径を有した。テスト部位の数を、背中の左上側から始まり、列を構築する背中の右上側に向かって割り当てた(部位1から4)。第2の列は左側の最初の列の下から始まった(部位5及び6)。2つの領域を常に一緒に照射した(例、部位1及び3、2及び4、5及び6)。
図28を参照のこと。処置は、バランスを取り、固定サイズのランダムに順序を変えたブロックを伴う6×6の直交ラテン方格に従ってテスト部位に割り当てた。
【0421】
45μl(約2mg/cm2)のそれぞれのテスト溶液を、ピペットを用いて適用した。テスト産物をテスト部位に適用した後、それらを、不飽和指サックを用いて穏やかに擦り(軽い圧力を伴うソフトタッチ)、最初に回転させ、それに続く最終的な皮膚上での均一なコーティングのための横方向の動きにより素早く広げた。
【0422】
適した包含基準及び除外基準を適用した。対象は、少なくとも18歳の年齢であり、テスト部位における健常な皮膚、テスト部位における均一な皮膚の色、紅斑又は色素沈着はなく、及びテスト部位においてITA>28を伴う男性及び女性の両方を含んだ。例えば、テスト部位での活動性皮膚疾患、テスト部位でのタンニングベッドの定期的な最近の使用、ほくろ、入れ墨、傷跡、刺激を受けた皮膚、毛など(それらは研究に影響を及ぼしうる)、公知の光毒性及び/又は光増感の可能性を伴う医薬品の最近の使用、テスト部位での任意の局所医薬品の最近の使用、ならびに/あるいは抗酸化効果を伴う栄養補助食品の摂取を伴う対象は、試験から除外した。対象は、試験の期間を通して、研究に影響を及ぼしうる因子を回避するように指示された。
【0423】
1日目、機器測定前に、対象を、発汗した場合に皮膚を乾燥させるために、周囲温度の待合区域において少なくとも15分間にわたり腹臥位にさせた。対象の皮膚タイプ(ITA°)を、皮膚の比色測定の使用により分類した。その後、各々約1cm×1cmの6スポットを背部(処置部位とは別に)に照射し、最小紅斑線量(MED)を検出した。UV-B線量を、スポットからスポットへ25%増分で増加させた。
【0424】
次に、試験産物を、技術者によるランダム化スキームに従って適用した。衣服によるテスト産物の吸収を回避するために、対象は室温で約15分間にわたり服を脱いだままであった。
【0425】
2日目、対象は照射後20±4時間に試験場所に戻った。機器測定前に、対象を、発汗した場合に皮膚を乾燥させるために、周囲温度の待合区域において少なくとも15分間にわたり腹臥位にさせた。MEDの読み取りを実施し、1MEDについての照射時間を決定した。テスト部位の照射についての正確な線量を、1MEDの照射線量に、照射についての係数(1.25)を乗じることにより算出した。
【0426】
クロマメーター測定を全てのテスト部位(ベースライン)で実施し、紅斑を評価した。試験産物を、ランダム化スキームに従って適用した。衣服によるテスト産物の吸収を回避するために、対象は室温で約15分間にわたり服を脱いだままであった。適用後45分±5分、すべての処置部位に1.25MEDで照射した。照射後25~45分に、拭き取りを、スワブ方法に従って全ての処置部位で実施し、Synelvia(付録2)により記載されるように分析した。拭き取り後5~10分に、クロマメーター測定を繰り返した。
【0427】
3日目、対象は照射後20±4時間に試験場所に戻った。機器測定前に、対象を、発汗した場合に皮膚を乾燥させるために、周囲温度の待合区域において少なくとも15分間にわたり腹臥位にさせた。クロマメーター測定を全てのテスト部位上で繰り返した。
【0428】
以下の機器測定を実施した:
-クロマメーターCR400(Minolta、Device D-Langenhagen、ドイツ):皮膚の色は、三刺激値測色計を用いた反射率測定により客観的に定量化することができる。測定原理は、直径8mmの部位上で皮膚を拡散的に明るくするXenonフラッシュの反射に基づく。皮膚からの垂直反射光を次に、検出光の色分析を提供する高感度シリカフォトダイオードにより検出する。クロマメーターによって、L*a*b*色座標系における測定色が定義される。L*値は輝度を定義する。色は、パラメーターa*(赤-緑軸;負のa*値緑、正のa*値赤)及びb*(青-黄軸、負のb*値青、正のb*値黄)により定義される。a*値は、皮膚の発赤(紅斑)の視覚的評価と十分に相関する。a*は紅斑についての測定値である。a*値における増加は、皮膚の発赤の程度における増加に対応する。パラメーター:a*皮膚の発赤。テスト部位当たり3回の測定及び紅斑の評価のための評価時間。
【0429】
以下の研究方法を実施した:
-UV照射(Solar Simulator UVASPOT 1000、Dr.HonleAG、ドイツ、グレーフェルフィング)。
-照射を、UVA Spot 1000を使用して実施した。それによって、大きく均質な照射野が産生される(線源から50cmの距離において約20cm×20cm)。スペクトルは特定のフィルターにより定義される。「H2」フィルターを使用した(UVB及びUVA放射)。太陽シミュレーターを使用し、テスト部位上での要求される照射強度を用いてテスト部位を照射した。複数のスポットが同時に照射された可能性がある。太陽刺激装置によって、約20cm×20cmの部位が照射される(テスト部位当たり1回の照射)。
-スワブサンプリング、保存、輸送。スワブサンプリングが、訓練を受けた技術者により各々のテスト部位上で実施された。綿棒を、サンプリング緩衝液を用いて湿らせ、最初のスワブを、テスト部位全体にわたるスワブの定期的な移動の間に45秒間にわたり圧力を適用することにより採取する。スワブを、はさみを用いて切断したが、そのため、それは緩衝液を含む、提供されたエッペンドルフチューブ中に収まる。この手順を、第2の緩衝液で湿らせたスワブを用いて、同じテスト部位上で繰り返した。第2のスワブを、第1のスワブと同じエッペンドルフチューブ中に保存した。テスト部位当たり2つのスワブを含むエッペンドルフチューブを、サンプリング後に氷上で直接的に保存し、サンプリング後2時間以内に-20℃の冷凍庫中に入れ、輸送まで-20℃で保存した。サンプルの輸送は、試験の終了後に(次の作業日に)、適切な宅配便を用いてドライアイス上で実施した(テスト部位当たり1つのスワブ)。
-スワブサンプリング分析。皮脂脂質過酸化産物スクアレンモノヒドロペルオキシド(SQOOH)の含量についてのスワブサンプルの分析を、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)により行った。
【0430】
研究者らは、データを分析する前に、試験において生じたいずれのプロトコールの偏差が小さい又は大きいと想定されるかを判定した。有効な対象は、プロトコールからの大きく偏差を伴わずに試験を終了し、彼らの同意を撤回しなかった登録対象として定義した。欠落データの置換は実施せず、影響が及んだ評価は、分析について失われたと見なした。人口統計学的変数(年齢、性別)を分析母集団について与えた。非盲検化はデータの分析のために必要なかった。なぜなら、統計分析は、処置コードを使用して行ったためである。脱ランダム化を、固有の識別子変数を使用してデータをランダム化リストに統合することにより行っている。生データ(スクアレン含量(ng/mg)及びクロマメーター a*値)を、評価時間及び処理ごとに列挙した。クロマメーター値については、ベースライン(照射前)に対する差を算出し、評価時間及び処理ごとに列挙した。N、平均値、標準偏差、中央値、最小値、及び最大値を、生データ及びベースラインに対する差について与えた。対象にわたる生データの平均値及びベースラインに対する差を、標準偏差を伴う処置時間及び評価時間ごとに棒グラフにおいて提示する。
【0431】
7名の対象を試験において登録し、大きな偏差を伴わずに試験を終了した。年齢:55±9.8歳(平均値±標準偏差);性別:男性1名(14%)、女性6名(86%)。有害反応は本試験において観察されなかった。
【0432】
クロマメーター測定の結果:皮膚の色a
*(紅斑)を、照射の前(2日目、ベースライン)及び30~50分後(2日目)及び16~24時間後(3日目)にクロマメーターを用いて測定した。a
*値の増加は、皮膚発赤の増加に対応する。
図29は、クロマメーターによる皮膚の色a
*(紅斑)を示す-生データの平均値及び95%信頼区間を伴う棒グラフ(n=7)。
図30は、クロマメーターによる皮膚の色a
*(紅斑)を示す-ベースラインに対する差の平均値及び95%信頼区間を伴う棒グラフ(n=7)。
【0433】
皮脂脂質過酸化産物スクアレンモノヒドロペルオキシドの分析の結果:皮脂脂質過酸化産物スクアレンモノヒドロペルオキシド(SQOOH)の分析用のサンプルを、上背部上で採取した。
図31はSQOOH含量(ng/mg)を示す―生データの平均値及び95%信頼区間の棒グラフ(n=5、対象#4及び#5からのデータは、サンプルの混合に起因する可能性が高い、信じ難い結果のために除外された)。
【0434】
結論として、SQOOHの評価によって、未処置の照射部位上での大量のSQOOH及び水を用いて処置された照射部位でのさらに大量のSQOOHが示された。水を用いて処置された照射部位上のより大量のSQOOHは、皮膚をより透明にする水の効果により説明されうるが、従って、より多くの光が皮膚により吸収され、より高い酸化レベルに導いた可能性がある。陽性コントロール「H1」を用いて処置された照射部位は、予想通り、SQOOHについての非常に低い値を示した。3つのテスト産物によってSQOOHにおける減少した値がもたらされた:テスト産物EC-AA-001が最も低い抗酸化効果を示し、YE-LU-001が続き、及びテスト産物CA-FT-001は抗酸化効果についての最も高い傾向を示した。製品の有効性における差は、抗酸化物質の濃度と一致していた。CA-FT-001テスト産物とAquaコントロールの間の差は統計的に有意であり、p値0.05未満を伴った。
【0435】
1.25MEDを用いた照射は、24時間の間に全ての対象にわたり皮膚の色a*の平均増加をもたらし、このように、わずかな紅斑をもたらした。テストされた産物とコントロールの間での統計的に有意な差は観察されなかった;しかし、紅斑の低下についての明らかな傾向が、全てのテストされた抗酸化剤において見られ、効果サイズは全ての抗酸化剤の間で等しかった。水コントロールは中央値6単位だけ増加したが、RoxP処置領域は中央値3.4単位だけしか増加せず、それは、中央値3.5単位のH1コントロールの増加と一致する。高い標準偏差のため、統計的有意性はこのサンプルサイズでは観察できなかった。特に、UV照射後30~50分での測定では、RoxP処置領域は、水コントロールよりも少ない紅斑及び陽性コントロールと等しい又はそれ以下の紅斑を示した。
【0436】
本試験は、このように、美容的及び治療的に関連する設定において、即ち、実際のヒト対象の皮膚上で、RoxPが皮膚のUV照射後に意味のある及びさらに統計的に有意な抗酸化効果を示したこと、ならびに抗酸化効果が、投与されたRoxPの濃度の増加に伴い増加することを示した。
【0437】
実施例20:組成物。
【0438】
本実施例は、美容的及び医薬的な設定において適切に用いることができる、本発明の原理を具体化する例証的な組成物(例、ローション、ゲル、又はクリーム)を示す。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【配列表】