(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】イロペリドンの持効性投与
(51)【国際特許分類】
A61K 31/454 20060101AFI20240805BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240805BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240805BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240805BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240805BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240805BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61K31/454
A61K9/10
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/26
A61P25/18
A61P29/02
(21)【出願番号】P 2021532063
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 US2019064401
(87)【国際公開番号】W WO2020117901
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-12-05
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】313006588
【氏名又は名称】バンダ・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VANDA PHARMACEUTICALS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポリメロプロス、ミハエル エイチ.
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-533093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中に懸濁された結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製
剤であって、
前記持効性製剤が、120μm以下のDv50により特徴付けられる結晶性イロペリドン及び水性媒体を、水性媒体溶液1mL当たり166.67mg~200mgの結晶性イロペリドン濃度となるように含み、
前記持効性製剤が、注射器を用い
た、5秒以内の時間
にわたる筋肉内注射
に用いられる、
前記
注射可能な持効性製剤。
【請求項2】
前記結晶性イロペリドンの粒径が91μm~118μmのDv50により特徴付けられる、請求項
1に記載の
注射可能な持効性製剤。
【請求項3】
前記結晶性イロペリドンの粒径が98μm~105μmのDv50により特徴付けられる、請求項
2に記載の
注射可能な持効性製剤。
【請求項4】
前記水性媒体が、Poloxamer188、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、マンニトール、及び水を含
む、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の
注射可能な持効性製剤。
【請求項5】
前記水性媒体が、水性媒体2mL当たり、4.00mgの量のPoloxamer188、14.00mgの量のカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、90.00mgの量のマンニトール、及び総量を2mLとするのに適量の水を含む、
請求項4に記載の注射可能な持効性製剤。
【請求項6】
前記結晶性イロペリドンの量が600mgであり、且つ、前記水性媒体の量が3.0mL~3.6mLである、請求項
1に記載の
注射可能な持効性製剤。
【請求項7】
前記5秒
以内の時間
にわたって注射される前記持効性製剤の量が2.5mL~3.0mLであ
る、
請求項
1に記載の
注射可能な持効性製剤。
【請求項8】
前記注射量中に含まれている結晶性イロペリドンの用量が500mgである、
請求項7に記載の注射可能な持効性製剤。
【請求項9】
前記5秒
以内の時間
にわたって注射される前記持効性製剤の量が1.25mL~1.5mLであ
る、
請求項
1に記載の
注射可能な持効性製剤。
【請求項10】
前記注射量中に含まれている結晶性イロペリドンの用量が250mgである、
請求項9に記載の注射可能な持効性製剤。
【請求項11】
前記5秒以内の時間が4秒以内である、請求項
1~10のいずれか1項に記載の
注射可能な持効性製剤。
【請求項12】
前記4秒以内の時間が3秒以内である、請求項
11に記載の
注射可能な持効性製剤。
【請求項13】
前記3秒以内の時間が2秒以内である、請求項
12に記載の
注射可能な持効性製剤。
【請求項14】
前記筋肉内注射が、注射器を用い
た、一定の速さで行われる1回の押し込む動きを
介した投与のための注射である、
請求項
1~13のいずれか1項に記載の
注射可能な持効性製剤。
【請求項15】
前記注射器が18G(ゲージ)の針を含む、
請求項1~14のいずれか1項に記載の注射可能な持効性製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年12月4日に出願された米国仮特許出願第62/774,979号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は概して、非定型抗精神病剤であるイロペリドンの調製方法及び投与方法、特に、結晶性イロペリドンの懸濁液の調製方法及び投与方法に関する。
【0003】
イロペリドン(1-[4-[3-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル]プロポキシ]-3-メトキシフェニル]エタノン)は、米国再発行特許第39198号に記載されている非定型抗精神病剤であり、抗精神病剤及び鎮痛剤として有用であると記載されている。イロペリドンは米国において統合失調症の治療における使用について承認されている。統合失調症は、重症の長期慢性精神疾患である。通常、統合失調症の治療は、症状の抑制を効果的に維持し、再発を予防するために、抗精神病薬の持続的な長期使用を含む。患者が規定の長期薬物治療計画を遵守することは、統合失調症の治療において最も重要な課題の一つであると認識されている。
【0004】
患者の服薬順守を改善するため、イロペリドンなどの抗精神病薬の放出制御型持効性製剤の開発の努力がなされてきた。例えば、イロペリドンとポリ乳酸-グリコール酸共重合体のマイクロカプセル化持効性製剤が、米国特許第7,767,230号及び同第8,815,293号に記載されている。さらに、水性媒体中に懸濁されたイロペリドン又はイロペリドン代謝物の結晶を含み、血漿中での結晶の放出及び吸収が結晶のサイズと関連している注射可能な持効性製剤が、米国特許第8,293,765号、同第8,227,488号、及び同第8,614,232号に記載されている。
【0005】
持効性製剤の筋肉内注射に関連する課題の一つは、注射中に針が目詰まりする(clogging)ことである。そのような目詰まりは、予め混合されているか、又は予め構成されている持効性製剤と特に関連している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される発明の種々の態様は、媒体中に懸濁された結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤の調製方法及び投与方法に関する。
【0007】
第1の態様では、結晶性イロペリドンを懸濁媒体と合わせて、媒体溶液1mL当たりの結晶性イロペリドンの濃度が166.67mg~200mgである懸濁液を作成することによる、結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤の調製方法が提供される。結晶性イロペリドンは、例えば、撹拌、ボルテックス、又は手動振盪(manually shaking)によって、媒体中に懸濁されてもよい。結晶が懸濁される懸濁媒体は、例えば、水溶液であってもよく、結晶性イロペリドンは、約120μm以下、約91μm~約118μm、又は約98μm~約105μmのDv50により特徴付けられていてもよい。
【0008】
第2の態様では、媒体中に懸濁された結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤の投与方法が提供される。この方法に、注射器を用いて、注射器のプランジャーを1回、素早く押し込むことにより持効性製剤を筋肉内(IM)注射することを含む。例えば、約2.5mL~約3.0mL、又は約1.25mL~約1.5mLの懸濁液量が、約5秒以内の時間でIM注射により投与される。持効性製剤はさらに、約120μm以下、約91μm~約118μm、又は約98μm~約105μmのDv50により特徴付けられる結晶性イロペリドン及び媒体を、媒体1mL当たり約166.67mg~200mgの結晶性イロペリドン濃度で含んでいてもよい。投与は、結晶の媒体中への懸濁後、24時間未満以内又は48時間未満以内に行われてもよい。
【0009】
第3の態様では、結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤の調製及び投与の方法が提供される。この方法によれば、約120μm以下、約91μm~約118μm、又は約98μm~約105μmのDv50により特徴付けられる結晶性イロペリドンが、媒体溶液1mL当たり166.67mg~200mgの結晶性イロペリドン濃度で懸濁媒体と合わせられる。結晶性イロペリドンは、例えば、撹拌、ボルテックス、又は手動振盪によって、媒体中に懸濁されてもよい。結晶が懸濁される懸濁媒体は、例えば、水溶液であってもよい。懸濁に続いて、持効性製剤は、注射器を用いて、注射器のプランジャーを1回、素早く押し込むことによって持効性製剤を筋肉内(IM)注射することにより投与される。例えば、約2.5mL~約3.0mLの懸濁液量が、約5秒以内の時間でIM注射により投与される。投与は、結晶の媒体中への懸濁後、24時間未満以内又は48時間未満以内に行われてもよい。
【0010】
第4の態様では、結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤が本明細書で提供され、これは、例えば、上記の第一の態様又は以下のいずれかに記載されるような、本明細書に記載されるプロセスにより調製される。
【0011】
本発明のこれらの態様及び他の態様、利点、並びに顕著な特徴は、本発明の実施形態を開示する以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の種々の実施形態において、本明細書に記載される方法には、結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤の調製方法、これらのプロセスにより調製される生成物、及び結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤の投与方法が含まれる。本明細書に記載される方法において使用される結晶性イロペリドンは、当該技術分野において周知であるか、又は周知の方法により調製され得る。例えば、約1μm~約200μm、約10μm~約170μm、又は約15μm~約70μmのD50を有するイロペリドン結晶を記載する米国特許第8,293,765号、同第8,227,488号、及び同第8,614,232号を参照のこと。
【0013】
懸濁のためのイロペリドン結晶は、針状形状、三方晶形状、正方晶形状、扁平桿状、立方体、平行六面体、又は板状であってもよい。結晶の粒径分布は、Dv10、Dv50、及びDv90など、多くの手段によって特徴付けられていてもよい。この文脈において、Dv10、Dv50、及びDv90は、当業者に理解される通常の意味を有する。すなわち、Dv50値は、体積による中間粒子サイズ、又はその値以下に試料体積の50%が存在する最大粒径を表す。Dv10値は、その値以下に試料体積の10%が存在する最大粒径を表し、Dv90は、その値以下に試料体積の90%が存在する最大粒径を表す。本発明の実施形態において、イロペリドン結晶は、約120μm以下、約91μm~約118μm、又は約98μm~約105μmであってもよいDv50により特徴付けられていてもよい。Dv50に加えて、イロペリドンの結晶は、Dv10及びDz90、例えば、約14μm~約50μm又は約22μm~約29μmのDv10、及び約188μm~約241μm又は約174μm~約180μmのDv90によりさらに特徴付けられていてもよい。以下の粒子サイズは、本明細書の実施例1に記載されるような方法を用いて決定されてもよい。数量に関連して使用される「約」との修飾語句は、明言された値を含み、且つ、文脈によって左右される意味を有し、例えば、「約180μm」は、180μm±特定の数量の測定に関連する誤差の程度を含む。結晶性イロペリドンは、単一の単位用量剤形(例えば、バイアル)に含まれていてもよく、約600mgの結晶性イロペリドンを含んでいてもよい。
【0014】
ある実施形態では、筋肉内注射のための結晶性イロペリドンの適切な再構築をもたらす、上記結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤の調製方法が本明細書において提供される。本明細書において提供される調製方法によれば、結晶性イロペリドンは懸濁媒体と合わせられる。
【0015】
様々な実施形態では、懸濁媒体としては、湿潤剤、増粘剤、浸透圧性薬剤、溶媒が挙げられ、処理ガスであってもよい。具体的には、湿潤剤は、2mL当たり4.00mgの量で存在していてもよいPoloxamer188であってもよく、増粘剤は、2mL当たり14.00mgの量で存在していてもよいカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウムであってもよく、浸透圧性薬剤は、2mL当たり90.00mgの量で存在していてもよいマンニトールであってもよく、溶媒は、2mLまでの適量で存在していてもよい(0.2mLの過充填を含まない)水であってもよく、処理ガスは、適量で存在し得る窒素であってもよい。処理ガスは、省略されてもよく、結晶性イロペリドンの懸濁に先立つ処理の間に除去されてもよい。
【0016】
結晶性イロペリドンと媒体を合わせることは、例えば、注射器によって、適当な量の媒体を1本又は複数本の媒体アンプルから吸い込むことにより達成される。例えば、600mgの結晶性イロペリドンを懸濁するために、約3.0mL~約3.6mL(例えば、3.3mL又は3.4mL)の媒体が用いられる。必要であれば、過剰な量の媒体及び空気を注射器から取り除き、注射筒を必要に応じてタッピングしてもよい。
【0017】
上記のように、結晶性イロペリドンは、容器又は机の表面に対しておよそ45°の角度で置かれてもよいバイアル中に含まれていてもよい。結晶を流動させるため、バイアルの端は、例えば4回、表面に対してしっかりとタッピングされる。次にバイアルはおよそ3分の1回転されて、タッピングプロセスが繰り返される。回転及びタッピングプロセスは、15~30秒の時間で約3回~約5回、又はバイアル中の大部分の結晶が自由に流動するまで行われてもよい。
【0018】
所望の量の媒体を含む注射器を用いて結晶性イロペリドンを含むバイアル中に媒体がゆっくりと注入され、このプロセスでバイアルの全ての壁が湿る。例えば上記のように注入することにより、結晶性イロペリドンを懸濁媒体と合わせた後、結晶性イロペリドンは、例えば、結晶性イロペリドンと媒体とを含むバイアルを撹拌、ボルテックス、手動混合、又は振盪することによって、懸濁媒体中に懸濁されてもよい。撹拌、ボルテックス、手動混合、又は振盪は、約30秒間以上(例えば、60~90秒)行ってもよい。目視検査により結晶性イロペリドンが完全に懸濁されていないことが示された(例えば、バイアルの底部に粉末の残渣が残っているか、又は懸濁液が均一でないように見える)場合は、撹拌、ボルテックス、手動混合、又は振盪が繰り返される。
【0019】
目視検査により結晶性イロペリドンが完全に懸濁されたことが示された場合は、懸濁液は任意に15分間静置してもよい。15分間の経過後、例えば、撹拌、ボルテックス、手動混合、又は振盪せずに、バイアルを10~15秒間、ゆっくりと上下逆さまにすることにより、懸濁液を穏やかに再分散してもよい。
【0020】
上記のように媒体中での結晶の懸濁に続いて、結晶性イロペリドン及び懸濁媒体は、結果として生じた懸濁液中に、媒体溶液1mL当たり約166.67mg~約200mgの結晶性イロペリドン濃度で存在していてもよい。この濃度は、600mgの結晶性イロペリドンを3.0mL~3.6mLに懸濁した結果、又はより多い若しくはより少ない用量の結晶性イロペリドンを(それぞれ)より多い若しくはより少ない媒体量中に懸濁した結果であってもよい。3.0mL~3.6mLの媒体中の600mgの結晶性イロペリドンにより、調製及び投与の間、容器中(例えば、バイアル中、注射筒中、又は針中)に残存する過多量を構成した後、500mg用量のイロペリドンに対する適切な必要量(fill)が提供される。例えば、125mg~500mg、125~250mg、又は約250mgなどの少量の所望の用量のイロペリドンについては、使用されるイロペリドンの量及び媒体の量は、本明細書に記載される割合を維持したまま、減少させてもよい。
【0021】
媒体中への結晶の懸濁に続いて、任意の15分間の静置及びそれに続く穏やかな再分散ステップが行われたかにかかわらず、対象への投与のために懸濁液の投与量は直ちに注射器に吸い込まれてもよい。任意の15分間の静置及び穏やかな再分散ステップを含む方法においては、懸濁液の投与量は、例えば、穏やかな再分散ステップの完了後約20秒以内に、注射器に吸い込まれてもよい。
【0022】
注射器中に含まれる懸濁液の所望の量は、投与される正確な投与量に依存する。ある実施形態では、約2.5mL~約3.0mLの懸濁液量中に含まれる、500mgの結晶性イロペリドン用量が所望される。これは、2.5mL~3.0mL(例えば、約2.8mL)の懸濁液を注射器に吸い込むこと、又は所望の量より多い量の懸濁液を注射器に吸い込み、余分な懸濁液量及び注射器内に存在する気泡を取り除くことにより達成されてもよい。他の例では、約1.25mL~約1.5mLの懸濁液量中に含まれる、250mgの結晶性イロペリドン用量が所望される。これは、約1.25mL~約1.5mLの懸濁液を注射器に吸い込むこと、又は所望の量より多い量の懸濁液を注射器に吸い込み、余分な懸濁液量及び注射器内に存在する気泡を取り除くことにより達成されてもよい。以下で類似的に調製される他の例は、以下の表1に示される。いずれにしても、続いて、結晶性イロペリドンの完全な懸濁を確実にするために投与の前に最終的な目視検査が行われる。必要であれば、可能な限りの沈殿物を再懸濁するために、注射器を、例えば、2回、穏やかに反転させてもよい。
【0023】
【0024】
他の実施形態では、媒体中に懸濁された結晶性イロペリドン又はその代謝物の注射可能な持効性製剤の投与方法が提供される。注射可能な持効性製剤は、例えば、本明細書に記載される方法を用いて調製されていてもよく、特に、注射可能な持効性製剤の投与のための本明細書に記載されるステップを行う前の48時間未満以内又は24時間未満以内に調製されていてもよい。より具体的には、注射可能な持効性製剤は、注射可能な持効性製剤の投与のための本明細書に記載されるステップを行う直前又は実質的に直前に、本明細書に記載される方法を用いて調製されていてもよい。「実質的に直前」は、例えば、投与の1分以内、5分以内、10分以内、又は15分以内を指し得る。
【0025】
持効性製剤の投与は、例えば、18G×1.5インチTW(薄壁)(1.2mm×40mm)針などの注射器を用いる、深部筋肉内(例えば、臀部内)注射によるものである。注射は、約5秒以内の時間で行われる。様々な実施形態では、前記約5秒以内の時間は、約4秒以内、約3秒以内、又は約2秒以内であってもよい。
【0026】
筋肉内注射は、注射器のプランジャーロッドが1回の連続的な動きで押し下げられる、注射器を1回押し込む動きを用いて行われ、全投与量が5秒以内の時間で供給される。前記押し込む動きは実質的に一定の速さで行われる。
【0027】
5秒未満の時間で投与される懸濁液の量は、1回用量を含んでおり、約2.5mL~約3.0mL、又は約1.25mL~約1.5mLであってもよい。投与される量は、例えば、媒体中に懸濁された125mg~500mg、250~500mg、約500mg、又は約250mgの結晶性イロペリドンを、媒体1mL当たり約166.67mg~約200mgの結晶性イロペリドン濃度で含んでいてもよい。
【0028】
さらに他の実施形態では、前述の結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤の調製方法及び投与方法は組み合わされてもよく、例えば、本明細書に記載される調製方法を行った直後に投与方法が実行される。
【0029】
さらに他の実施形態では、結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤が提供され、前記注射可能な持効性製剤は上記に記載されるプロセスにしたがって調製される。
【0030】
当業者であれば、追加の好ましい実施形態が上記の好ましい実施形態を組み合わせることにより、又は本明細書に記載される実施例を参照にして選択されてもよいことを十分理解するであろう。
【実施例】
【0031】
実施例1:結晶性イロペリドンの粒径の決定
結晶性イロペリドンの粒径は、以下の実施例にしたがって決定される。Malvern Mastersizer 2000(Malvern Instruments社、イギリス、マルヴァーン)レーザー光散乱粒径分析器及びHydro 2000(Malvern Instruments社、イギリス、マルヴァーン)湿試料分散ユニットを作動させ、レーザーが暖まるまで(例えば、約30分間)時間をとる。PCを作動させ、Mastersizer 2000ソフトウェアを開き、ソーティング結果のためのファイルを作成する。Mastersizer 2000のSGS SOP EQP-525-10 Operation Preventative Maintenance and Performance Verificationにしたがって、機器の検証検査を実施する。結果の保存のための新しいファイルを作成し、機器はイロペリドンについてExisting SOPに設定される。SOP下に列挙されるパラメーターにより、精度、すなわち、試料材料の名称「注射用イロペリドン持効性製剤」、屈折係数「1.53」、吸収「0.1」、分散媒体「0.1%(w/v)試料で飽和させた0.1% Tween 80(Sigma Aldrich社、ミズーリ州、セントルイス)」、反射率「1.33」、結果モデル「汎用」、粒子形状「不規則」、感度「標準」、ポンプ速度「2000RPM」、試料測定時間「12秒(12,000スナップ)」、バックグラウンド測定時間「12秒(12,000スナップ)」、サイズ範囲「0.020~2000.000μm」、SOP当たりのアリコートが「1」、測定サイクル数「5(レポート平均)」、遮蔽限界「10~20%」であることが検証される。分散ユニットの排出管が廃棄タンク中にあること、及びタンクが満杯ではないことも検証され、廃棄容器は必要に応じて空にされる。SOP EQP-525D-10の“Operation, Preventative Maintenance and Performance Verification of the Mastersizer 2000”を用いてQuality Audit Standardが試験され、機器の検証検査基準はSOP EQP-525D-10によって合格する。
【0032】
0.1% Tween 80(Sigma-Aldrich社、ミズーリ州、セントルイス)ポリソルベート80を0.1%(w/v)の結晶性イロペリドンで飽和させることにより試料を調製する。約950mLのE-pure水を含む1000mLのメスフラスコ中に1.0gのTween 80を秤量し、Tween 80が完全に溶解するまで混合する。次に、1.0mgの試料を秤量し、同じメスフラスコに添加する。メスフラスコを30分間撹拌し、30分間超音波処理する。混合物をE-pure水で容量まで希釈し、十分に混合し、真空を用いて0.2μmフィルターを通して濾過する。200mgの試料をプラスチックの20mL容器に移す。数滴のDispersant Mediaを添加し、ボルテックスにより30秒間混合する。約5.0mLのDispersant Mediaを添加し、試料スラリーをボルテックスで30秒間混合し、15秒間超音波処理して内容物を完全に分散させる。QAS3001B標準的測定の後、E-pure水でセルを3回洗浄する。セルの水気を切り、Dispersant Mediaを手動で満たす。撹拌速度を2500RPMまで上昇させ、少なくとも30秒間、媒体をセル中で循環させる。撹拌を止め、Dispersant Mediaを排出する。次に、セルをDispersant Mediaで満たし、少なくとも30秒間平衡化する。Hydro 2000ユニットに試料が導入されるとすぐに機器が測定を実行できるように、試料についてのパラメーターを用いてSOPを開始する。自動モードでバックグラウンド測定を実行する。外付けの超音波処理の直後に試料スラリーをHydroユニットに添加して遮蔽範囲間で遮蔽を行い、測定を開始する。各試料を(1回の調製に対して)2回測定する。
【0033】
次に、結果として得られるヒストグラムを評価する。均一性が0.9以上である場合、測定を破棄して、E-pure水でセルを3回リンスする前述のステップから開始して測定を繰り返す。必要であれば、新たな試料を調製してもよい。2回の試料測定のDv50についての結果は、25%以上の相対的差異(%RD)で互いに異なっていてはならない。
【0034】
【0035】
Dv50についての結果が25%以上異なっている場合は、同じ試料の3番目のレプリケートを測定する。どちらのレプリケートが傾向と一致していないのかを確認するため、3番目のレプリケートを(二つ一組で)最初の2つのレプリケートと比較する。同様の試験を用いて平均Dv10値、平均Dv50値、及び平均Dv90値を計算する。前述の方法によれば、平均Dv10値は14~50μmであり、平均Dv50値は91~118μmであり、平均Dv90値は188~241μmであることが分かる。平均値は、n=2回の試験に基づいて計算され、各試験は同一の測定からのn=5回の獲得の平均(ソフトウェアにより報告される平均)である。
【0036】
実施例2:注入性試験
注入性(injectability)試験は、600mgの結晶性イロペリドンを本明細書に記載される手順にしたがって媒体中に懸濁し、注射特性を評価するために豚肉に注射することにより行われる。結果は以下の表2に示される。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
表2に記載される観察は、媒体中の結晶性イロペリドン濃度が媒体1mL当たり166.67mg~200mgの結晶性イロペリドンである、本明細書に記載される調製方法により、過度の抵抗又は針の目詰まりを伴わずに投与され得る、例えば、250mg用量又は500mg用量の結晶性イロペリドンの持効性製剤がもたらされることを実証する。表2のデータは、懸濁液量が5秒未満の時間で注射される投与方法により注射量の投与の成功がもたらされることをさらに実証する。さらに、前記観察は、懸濁後の静置時間が有る場合又は無い場合のいずれにおいても、媒体中に結晶性イロペリドンを懸濁するために手動振盪及びボルテックの使用を支持する。
【0042】
種々の実施形態が本明細書に記載されるが、当業者により、本発明の範囲内で、要素の種々の組み合わせ、変形、又は改善が行われてもよいことが明細書から十分に理解されるだろう。さらに、本発明の主要な範囲から逸脱することなく、本発明の開示に対して特定の状況又は材料に適合させるために多くの改変が行われ得る。したがって、本発明は開示される特定の実施形態に限定されないが、本発明は添付の特許請求の範囲の範囲内の全ての実施形態が含まれることになることが意図される。
本発明の態様は以下を含む。
<1>
結晶性イロペリドンを懸濁媒体と合わせることを含み、ここで、前記結晶性イロペリドンは、媒体溶液1mL当たり166.67mg~200mgの結晶性イロペリドン濃度で前記懸濁媒体中に存在する、
結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤を調製する方法。
<2>
前記懸濁媒体と合わせる前記結晶性イロペリドンの量が約600mgである、<1>に記載の方法。
<3>
前記結晶性イロペリドンと合わせる前記懸濁媒体の量が約3.0mL~約3.6mLである、<1>に記載の方法。
<4>
前記結晶性イロペリドンの粒径が約120μm以下のDv50により特徴付けられる、<1>に記載の方法。
<5>
前記結晶性イロペリドンの粒径が約91μm~約118μmのDv50により特徴付けられる、<4>に記載の方法。
<6>
前記結晶性イロペリドンの粒径が約98μm~約105μmのDv50により特徴付けられる、<5>に記載の方法。
<7>
前記懸濁媒体が、Poloxamer188、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、マンニトール、及び水を含む、<1>~<6>のいずれかに記載の方法。
<8>
前記懸濁媒体が、懸濁媒体2mL当たり、4.00mgの量のPoloxamer188、14.00mgの量のカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、90.00mgの量のマンニトール、及び2mLまでの適量の水を含む、<7>に記載の方法。
<9>
前記結晶性イロペリドンを前記懸濁媒体と合わせた後に、撹拌、ボルテックス、又は振盪により前記結晶性イロペリドンを前記懸濁媒体中に懸濁することをさらに含む、<1>~<6>のいずれかに記載の方法。
<10>
前記懸濁に続いて、前記懸濁液を15分間静置することをさらに含む、<9>に記載の方法。
<11>
前記15分間の経過後に、前記懸濁液を穏やかに再分散することをさらに含む、<10>に記載の方法。
<12>
投与のために注射器中に前記懸濁液の投与量を吸い込むことをさらに含む、<9>に記載の方法。
<13>
前記再分散から20秒以内に注射器中に前記懸濁液の投与量を吸い込むことをさらに含む、<11>に記載の方法。
<14>
余分な懸濁液量及び気泡を前記注射器から除去することをさらに含み、ここで、前記除去ステップの後に投与対象の注射量が約2.5mL~約3.0mLとなる、
<12>又は<13>に記載の方法。
<15>
前記注射量中に含まれている結晶性イロペリドンの用量が約500mgである、<14>に記載の方法。
<16>
余分な懸濁液量及び気泡を前記注射器から除去することさらに含み、ここで、前記除去ステップの後に投与対象の注射量が約1.25mL~約1.5mLとなる、
<12>又は<13>に記載の方法。
<17>
前記注射量中に含まれている結晶性イロペリドンの用量が約250mgである、<16>に記載の方法。
<18>
媒体中に懸濁された結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤を投与する方法であって、
注射器を用いて、前記持効性製剤を約5秒以内の時間で筋肉内注射することを含む、
前記方法。
<19>
前記結晶性イロペリドンの粒径が約120μm以下のDv50により特徴付けられる、<18>に記載の方法。
<20>
前記結晶性イロペリドンの粒径が約91μm~約118μmのDv50により特徴付けられる、<19>に記載の方法。
<21>
前記結晶性イロペリドンの粒径が約98μm~約105μmのDv50により特徴付けられる、<20>に記載の方法。
<22>
前記持効性製剤が、結晶性イロペリドン及び前記媒体を媒体溶液1mL当たり約166.67mg~約200mgの結晶性イロペリドン濃度で含む、<18>に記載の方法。
<23>
前記5秒未満の時間で注射される前記持効性製剤の量が約2.5mL~約3.0mLである、<22>に記載の方法。
<24>
前記結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤が、約500mgの用量の結晶性イロペリドンを含む、<23>に記載の方法。
<25>
前記5秒未満の時間で注射される前記持効性製剤の量が約1.25mL~約1.5mLである、<22>に記載の方法。
<26>
前記結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤が、約250mgの用量の結晶性イロペリドンを含む、<25>に記載の方法。
<27>
前記懸濁媒体が、Poloxamer188、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、マンニトール、及び水を含む、<18>~<26>のいずれかに記載の方法。
<28>
前記懸濁媒体が、懸濁媒体2mL当たり、4.00mgの量のPoloxamer188、14.00mgの量のカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、90.00mgの量のマンニトール、及び2mLまでの適量の水を含む、<27>に記載の方法。
<29>
前記約5秒以内の時間が約4秒以内である、<18>~<26>のいずれかに記載の方法。
<30>
前記約4秒以内の時間が約3秒以内である、<29>に記載の方法。
<31>
前記約3秒以内の時間が約2秒以内である、<30>に記載の方法。
<32>
注射器を用いて、前記持効性製剤を約5秒以内の時間で1回の押し込む動きを用いて筋肉内注射することをさらに含む、<18>~<26>のいずれかに記載の方法。
<33>
前記1回の押し込む動きが一定の速さで行われる、<32>に記載の方法。
<34>
前記注射が前記結晶性イロペリドンの前記媒体中への懸濁後の48時間未満以内に行われる、<18>~<26>のいずれかに記載の方法。
<35>
前記注射が前記結晶性イロペリドンの前記媒体中への懸濁後の24時間未満以内に行われる、<34>に記載の方法。
<36>
結晶性イロペリドンを水性媒体と合わせて懸濁液を形成すること、ここで、前記結晶性イロペリドン及び前記水性媒体は、水性媒体1mL当たり166.67mg~200mgの結晶性イロペリドン濃度で前記懸濁液中に存在する、及び
注射器を用いて、前記懸濁液を約5秒以内の時間で筋肉内注射することを含む、
水性媒体中に懸濁された結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤を調製及び投与する方法。
<37>
前記結晶性イロペリドンの粒径が約120μm以下のDv50により特徴付けられる、<36>に記載の方法。
<38>
前記結晶性イロペリドンの粒径が約91μm~約118μmのDv50により特徴付けられる、<37>に記載の方法。
<39>
前記結晶性イロペリドンの粒径が約98μm~約105μmのDv50により特徴付けられる、<38>に記載の方法。
<40>
前記懸濁媒体が、Poloxamer188、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、マンニトール、及び水を含む、<36>のいずれかに記載の方法。
<41>
前記懸濁媒体が、懸濁媒体2mL当たり、4.00mgの量のPoloxamer188、14.00mgの量のカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、90.00mgの量のマンニトール、及び2mLまでの適量の水を含む、<40>に記載の方法。
<42>
前記結晶性イロペリドンの量が約600mgであり、且つ、前記水性媒体の量が約3.0mL~約3.6mLである、<36>に記載の方法。
<43>
前記懸濁液の形成後、前記懸濁液の筋肉内注射の前に、前記懸濁液を15分間静置することをさらに含む、<36>~<42>のいずれかに記載の方法。
<44>
前記15分間の経過後に、前記懸濁液を穏やかに再分散することをさらに含む、<43>に記載の方法。
<45>
投与のために注射器中に前記懸濁液の投与量を吸い込むことをさらに含む、<36>~<42>のいずれかに記載の方法。
<46>
余分な懸濁液量及び気泡を前記注射器から除去することをさらに含む、<36>~<42>のいずれかに記載の方法。
<47>
前記5秒未満の時間で注射される前記持効性製剤の量が約2.5mL~約3.0mLである、<46>に記載の方法。
<48>
前記注射量中に含まれている結晶性イロペリドンの用量が約500mgである、<48>に記載の方法。
<49>
前記5秒未満の時間で注射される前記持効性製剤の量が約1.25mL~約1.5mLである、<46>に記載の方法。
<50>
前記注射量中に含まれている結晶性イロペリドンの用量が約250mgである、<49>に記載の方法。
<51>
前記約5秒以内の時間が約4秒以内である、<36>~<42>のいずれかに記載の方法。
<52>
前記約4秒以内の時間が約3秒以内である、<51>に記載の方法。
<53>
前記約3秒以内の時間が約2秒以内である、<52>に記載の方法。
<54>
前記持効性製剤を約5秒以内の時間で1回の押し込む動きを用いて筋肉内注射することをさらに含む、<36>~<42>のいずれかに記載の方法。
<55>
前記1回の押し込む動きが一定の速さで行われる、<54>に記載の方法。
<56>
前記筋肉内注射するステップが前記結晶性イロペリドンを前記水性媒体と合わせるステップ後の48時間未満以内に行われる、<36>~<42>のいずれかに記載の方法。
<57>
前記筋肉内注射するステップが前記結晶性イロペリドンを前記水性媒体と合わせるステップ後の24時間未満以内に行われる、<56>に記載の方法。
<58>
<1>~<6>のいずれかの方法により調製された結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤。
<59>
<15>のいずれかの方法により調製された結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤。
<60>
<17>のいずれかの方法により調製された結晶性イロペリドンの注射可能な持効性製剤。