(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】水性コーティングの低温硬化
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240805BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240805BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240805BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240805BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240805BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240805BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240805BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/02
C09D5/00 D
C09D175/04
C09D7/63
B05D7/24 302T
B05D7/24 302S
B05D7/24 303A
B05D7/24 302X
B05D3/00 D
B05D3/02 Z
(21)【出願番号】P 2021537149
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2019084850
(87)【国際公開番号】W WO2020136016
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ,ガジャナン
(72)【発明者】
【氏名】パテル,チンタンクマール ジャヤンティラル
(72)【発明者】
【氏名】アム ラマンナ,プラサッド
(72)【発明者】
【氏名】ターレイ,ケヴィン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】サンキ,パラグクマール
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チンリン
(72)【発明者】
【氏名】ラトード,ラジェシュ
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/119969(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/131101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
B05D 1/00 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ベースコート組成物であって、
(A)(i)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂、及び
(ii)アミノプラスト樹脂及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤、
(B)少なくとも1種の酸硬化触媒、及び
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド
を含
み、
前記少なくとも1種の酸硬化触媒が、25℃の水中で1.5以下のpKa値を有する強酸を含み、前記強酸が、少なくとも1種のアミンでブロックされていることを特徴とする水性ベースコート組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂が、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル-ポリウレタンハイブリッドポリマー、ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマー、ポリエステル-ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマー、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエステルポリオール及びポリシロキサンからなる群から選択される、請求項1に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂が、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した、30,000g/mol以上50,000g/mol以下の範囲の重量平均分子量を有する、請求項1又は2に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項4】
前記アミノプラスト樹脂がメラミン樹脂である、請求項1
~3のいずれか一項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のアミンが、アミノメチルプロパノール、ジメチルオキサゾリジン、ジイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアミノメチルプロパノール、ジメチルオキサゾリジン、アミノメチルプロパノール及びジイソプロパノールアミンから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項6】
前記25℃の水中で1.5以下のpKa値を有する強酸が、有機酸からなる群から選択される、請求項
1~5のいずれか一項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項7】
前
記有機酸がスルホン酸又はホスホン酸である、請求6項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項8】
前記スルホン酸が、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸及びジノニルナフタレンジスルホン酸からなる群から選択され、前記ホスホン酸が、ブチルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート及び2-エチルヘキシルアシッドホスフェートからなる群から選択される、請求項7に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種のポリカルボジイミドが、100g/mol以上600g/mol以下の範囲のカルボジイミド当量を有する、請求項1
~8のいずれか一項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の顔料をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の水性ベースコート組成物を含むマルチコート塗装系。
【請求項12】
下記の工程:
(iii)基材の少なくとも一部の上にコーティング層を塗布する工程、
ここで該コーティング層は、
(A)(a)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂、及び
(b)アミノプラスト樹脂及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤、
(B)少なくとも1種の酸硬化触媒、及び
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド
を含
み、
前記少なくとも1種の酸硬化触媒が、25℃の水中で1.5以下のpKa値を有する強酸を含み、前記強酸が、少なくとも1種のアミンでブロックされている、
及び
(iv)80℃以上140℃以下の温度で、塗布したコーティング層を硬化させる工程
を備えることを特徴とする基材をコーティングする方法。
【請求項13】
塗布したコーティング層を、80℃以上110℃以下の温度で硬化する、請求項12に記載の基材をコーティングする方法。
【請求項14】
自動車仕上げ、工業コーティング、修理コーティング、塗料及び木材コーティングにおける、請求項1~10のいずれか一項に記載の水性ベースコート組成物の使用
法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の水性ベースコート組成物でコーティングした物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題は、水性ベースコート組成物に関する。本主題は、特に、基材をコーティングする方法、及びベースコート材料の性能特性を改善するための水性ベースコート組成物の使用及びベースコート組成物を使用して製造したコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
環境規制がますます厳しくなっていることから、水性コーティング組成物は自動車補修市場で需要がある。修理ラインからはOEMベースコートの需要もある。伝統的に、OEM市場では、修理箇所の適切なカラーマッチングが保証され、工場でスプレーされるカラー全てについて、特別な低温焼付けベースコートを少量使用することが妨げられている。自動車補修市場又はOEM市場向けに商業的に受け入れられる水性コーティング組成物は、特定の要件を満たす必要がある。水性コーティング組成物は、周囲温度又はそれよりわずかに高い温度で硬化し、良好なポットライフ、耐水性、密着性及び硬度を示すものでなければならない。ラインからすでに知られているOEMベースコートは、80°C~140°Cの範囲のような低温で硬化して十分な特性を実現するようなものではない。この問題に対処するために、従来から、2-成分イソシアネートクリアコート組成物が知られており、従来技術にも記載されている。しかし、これらの組成物は、修理中、通常、屋根を開放した工場で、手作業でスプレーするもので、害が及ぶ恐れがある。したがって、生(live)のイソシアネートを含まないコーティング組成物が必要とされる。
【0003】
水性コーティング組成物の性能特性を改善する目的で、カルボジイミド架橋剤が当該組成物に配合されている。当技術分野では、カルボジイミド架橋剤又は酸触媒を有する溶媒系コーティング組成物及び水性コーティング組成物が知られており、例えば、以下の参考文献に記載されている。
【0004】
EP0610533A1は、(A)(a1)アクリル樹脂、(a2)添加剤、(B)(b1)ポリカルボジイミド、(b2)所望により、ポリイソシアネート、アミノプラスト、及びそれらの混合物からなる群から選択される架橋剤、及び(b3)添加剤を含む、物品の多層コーティング用クリアコートとして二液系塗料組成物を開示している。
【0005】
EP1539894B1は、少なくとも1種の、塩基で中和した活性水素含有フィルム形成樹脂と、水分散性カルボジイミド架橋剤とを含む水性塗料組成物を開示している。
【0006】
EP0709415B1は、樹脂成分、硬化剤、ルイス酸触媒及び顔料を含む硬化性ベースコート組成物を開示している。
【0007】
米国特許第6,084,038Aは、少なくとも1個のカルバメート基又は末端尿素基を有し、かつ、ラクトン又はヒドロキシカルボン酸部分を有する化合物、ポリマー樹脂及び硬化剤を含む硬化性塗料組成物を開示している。
【0008】
米国特許第6,239,212B1は、カルバメート官能性材料、架橋剤、及びヒドロキシル官能性ポリシロキサン成分を含む硬化性コーティング組成物を開示している。
【0009】
米国特許第8,981,005B2は、オニウム塩基(onium salt groups)を有するポリカルボジイミドと、当該ポリカルボジイミドとは異なるフィルム形成樹脂とを含むコーティング組成物を開示している。
【0010】
WO2018/022788A1は、ポリマー樹脂、酸硬化触媒、及び1,1-ジ-活性化ビニル化合物を含む酸触媒コーティング組成物を開示している。
【0011】
US2016/0175886A1は、ベースコート材料を含む少なくとも1つの第1のベースコートからなるマルチコート着色(colour)及び/又は効果(effect)塗装系を開示している。当該ベースコート材料は、少なくとも1種のバインダー、少なくとも1種の着色又は効果顔料、及び少なくとも1種の水溶性又は水分散性、防蝕性オリゴマー又はポリマー成分を含むものである。
【0012】
先行技術に開示されている方法及び組成物には限界がある。上記の先行技術に記載された組成物は、感熱性構成部品を保護するために低温で硬化させることができるコーティング組成物をもたらすものではない。自動車のOEMアプリケーションには、車両が完全に組み立てられた後でも修理が必要となる最終アセンブリの感熱性部品がある。従来技術に開示されている標準的な水性ベースコート組成物にあっては、より低い温度で十分に硬化することができず、要求されるフィルム特性を提供するように機能することができない。従来技術で知られているOEMベースコートは、一般に、2-成分イソシアネートクリアコートと共に使用されるが、当該2-成分イソシアネートクリアコートは危険性があり吹付け塗り作業中、有害である可能性がある。自動車OEM市場の需要が高まってきていることから、上記の欠点を克服し、低温硬化を実現することができる、改良されたコーティング組成物が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】EP0610533A1
【文献】EP1539894B1
【文献】EP0709415B1
【文献】米国特許第6,084,038A
【文献】米国特許第6,239,212B1
【文献】米国特許第8,981,005B2
【文献】WO2018/022788A1
【文献】US2016/0175886A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、低温で、好ましくは80℃以上140℃以下の範囲の温度で硬化することができ、さらに硬度、サンダビリティ(sandability:研磨性)/研磨性(polishability)及び密着性などのフィルム特性を改善する水性ベースコート組成物を提供することにある。
【0015】
本発明の更なる目的は、塗布したコーティング層を低温で、好ましくは80℃以上140℃以下の範囲の温度で硬化させることからなるコーティング方法を提供することにある。
【0016】
概要
驚くべきことであるが、以下に記載する、少なくとも1種の酸硬化触媒及び少なくとも1種のポリカルボジイミドを含むコーティング組成物が、硬度、サンダビリティ/研磨性及び密着性などの、改善された物理的フィルム特性を実現することが分かった。また、予想外にも、以下に記載するコーティング組成物で基材をコーティングする方法が、より一層効率的であり、80℃以上140℃以下の範囲の低温での硬化を可能にすることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、一態様によれば、本発明は、水性ベースコート組成物であって、
(A)(i)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂、及び
(ii)アミノプラスト樹脂及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤、
(B)少なくとも1種の酸硬化触媒、及び
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド
を含む水性ベースコート組成物に関する。
【0018】
別の態様では、本発明は、基材をコーティングする方法であって、下記の工程:
(i)基材の少なくとも一部の上にコーティング層を塗布する工程、ここで該コーティング層が、
(A)(a)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂、及び
(b)アミノプラスト樹脂及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤、
(B)少なくとも1種の酸硬化触媒、及び
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド
を含むものである、
及び
(ii)80℃以上(≧)140℃以下(≦)の温度で、塗布したコーティング層を硬化させる工程
とを備える基材をコーティングする方法に関する。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は、自動車仕上げ、工業コーティング、修理(補修)コーティング、塗料及び木材コーティングにおける、以下に説明する水性ベースコート組成物の使用に関する。
【0020】
別の態様では、本発明は、以下に記載する水性ベースコート組成物でコーティングした物品に関する。
【0021】
本特許請求の範囲に係る発明は、以下に挙げる利点のうちの少なくとも1つに関連している。
【0022】
(i)本発明の水性ベースコート組成物は、80℃以上から140℃以下の範囲の低温で十分に硬化することができる。
【0023】
(ii)本発明の水性ベースコート組成物は、硬度、サンダビリティ/研磨性及び密着性などの改善された物理的フィルム特性を実現する。
【0024】
(iii)水性ベースコート組成物は、修復用クリアコートと一緒であっても、修復積層の一部として、研磨したOEMボディパネル上にスプレーすることができる。
【0025】
(iv)水性ベースコート組成物は、屋根なしの工場で、生イソシアネートを含有しないクリアコートと併せて使用して、以前では達成できなかった温度での硬度、サンダビリティ/研磨性、密着性などの物理的フィルム特性を実現することができる。そうすることで、そこで働く作業者はイソシアネートに暴露されることがないように保護される。
【0026】
特許請求の範囲に係る本発明の他の目的、利点及び用途についても、以下の詳細な説明から当業者に明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
以下の詳細な説明は、本質的に単なる例示的なものに過ぎず、本特許請求の範囲に記載の発明を、又は特許請求の範囲に記載の発明の適用及び使用を限定することを意図するものではない。さらに、前述した、技術分野、背景、概要、又は以下の発明の詳細な説明に提示した理論に拘束されることを意図するものではない。
【0028】
ここで使用する「含む(又は、備える、からなる)(comprising)」、「含む(又は、備える、からなる)(comprises)」及び「含む(又は、備える、からなる)(comprised of)」という用語は、「含む(又は包含する)(including)」、「含む(又は包含する) (includes)」又は「含有する(又は含む)(containing)」、「含有する(又は含む) (contains)」と同義であり、包括的又は非制限的であり、追加の、列挙しなかった構成員、要素又は方法工程を排除するものではない。ここで使用する「含む(又は、備える、からなる)(comprising)」、「含む(又は、備える、からなる)(comprises)」及び「含む(又は、備える、からなる)(comprised of)」という用語は、「からなる(consisting of)」、「からなる(consists)」及び「からなる(consists of)」という用語を含むものと理解される。
【0029】
また、明細書及び特許請求の範囲で使用する記号「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」等は、類似する要素を識別するために使用するものであって、必ずしも、順序又は時系列の順序を記述するためではない。このように使用する記号は状況に応じて適宜に言い換え可能であり、また、本明細書に記載の本主題の実施形態は、本明細書に記載した又は図示した以外の順序で実施することもできることを理解されたい。「(A)」、「(B)」及び「(C)」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」、「(i)」、「(ii)」などの記号が、方法又は使用方法又はアッセイの各工程に関連する場合、工程間には時間又は時間間隔の一貫性が存在しない。すなわち、本書で上述した又は下記に示す塗装法で別段言及しない限り、これらの工程は、同時に実施してもよく、又は、そのような工程間に秒、分、時間、日、週、月、又はさらには年の時間間隔が存在してもよい。
【0030】
以下の各節で、本主題の様々な態様について、より詳細に明確に説明する。ここに明確に説明する各態様にあっては、明確にこれとは矛盾する記載がない限り、他の1つ又は複数の態様と組み合わせることができる。特に、好適な又は有利な特徴は、好適な又は有利な他の1つ又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0031】
本明細書の全体を通じて、「一実施形態」又は「実施形態」又は「好適な実施形態」と言う場合は、当該実施形態に関連して説明した、特定の特徴、構造又は特色が本特許請求の範囲に記載の発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所で「一実施形態では」又は「実施形態では」又は「好適な実施形態では」という文言が出現する場合は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らないが、そういう場合もあり得る。さらに、特徴、構造又は特色は、1つ又は複数の実施形態で、本開示から当業者に明らかであるような、適切な方法で組み合わせることができる。さらに、本明細書に記載の一部の実施形態は、他の実施形態に含まれる一部の特徴を含むが、他の特徴は含まないが、異なる実施形態の特徴の組合せは、本主題の範囲内にあり、異なる実施形態を形成することを意味する。この点は当業者に理解されるところである。例えば、添付の特許請求の範囲では、各請求項に記載の実施形態は、いずれも任意に組み合わせて使用することができる。
【0032】
さらに、明細書全体を通じて定義する範囲には両端の値も含まれる。つまり、1~10の範囲には、1と10の両方の値がその範囲に含まれることを意味する。疑義を回避するために、出願人は、適用される法律に従って均等とされるものについて主張する法的権利を有するものである。
【0033】
また、「ポリ」で始まる化合物名については、この明細書全体を通じて、1分子当たり2つ以上の官能基を形式上含む物質を示す。化合物自体は、モノマー、オリゴマー、又はポリマー化合物である可能性がある。例えば、ポリオールは2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物であり、ポリイソシアネートは2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。
【0034】
本特許請求の範囲に記載の発明について、質量平均(Mw)及び数平均(Mn)分子量は、高速液体クロマトグラフィーポンプ及び屈折率検出器を使用して、40℃でのゲル浸透クロマトグラフィーによって決定する。使用する溶離液はテトラヒドロフランで、溶出速度は1ml/分とした。較正はポリスチレン標準を使用して行う。
【0035】
本特許請求の範囲に記載の発明について、酸価は、それぞれの成分の1gを中和するために必要とされる水酸化カリウムの量をミリグラムで示す。本特許請求の範囲に記載の発明にあっては、酸価は、特記しない限り、DIN EN ISO2114に従い滴定で実験的に決定する。
【0036】
本特許請求の範囲に記載の発明について、当量とは、1グラムの水素と反応又は置換する物質の質量をグラムで示すもの、又はそれに等しいものであり、原子価に対する原子量又は分子量の比で表される。
【0037】
本特許請求の範囲に記載の発明について、pKa値は、電位差滴定によって水中で決定する。電位差滴定では、既知体積の試薬を測定対象物の溶液に段階的に添加する。その結果、反応時の電位の変化を、2つの電極、表示器、及び参照電極を使用して測定する。これらは多くの場合、一体化pH電極に組み込まれている。電位対体積をプロットすると、その後、S字形曲線が得られ、そこで変曲点が平衡状態の電位を示す。pHが既知の標準を使用すると、この電位は、pKaに等しいpHに直線的に変換することができる。pKa値は、pHとpKaをそれぞれ解離酸[A-]と非解離酸[HA]の平衡濃度に関連付ける、下記のヘンダーソンハッセルバルヒ方程式を使用して計算する。
【0038】
pH=pKa+log([A-]/[HA])
【0039】
本特許請求の範囲に記載の発明に関して、「水性(aqueous)」という用語は、有機溶媒に加えて、主分散媒としてかなりの割合の水を含む系として定義される。「水性(aqueous)」という用語は、「水性又は水系(waterborne)」という用語と同じ意味で使用することができる。本特許請求の範囲に記載の発明に関して、水性コーティング組成物とは、主溶媒として水を含む組成物である。
【0040】
また、本特許請求の範囲に記載の発明に関して、ベースコート又はベースコートフィルムは、一般に、着色又は顔料成分を含む層である。
【0041】
本特許請求の範囲に記載の発明にあっては、クリアコート又はクリアコートフィルムとは、光沢、滑らかさ、及び、耐候性を含む表面安定性、並びに耐傷性及び耐引っかき性をもたらす層である。
【0042】
また、本特許請求の範囲に記載の発明にあっては、「硬化」という用語は、自己架橋性結合剤を用いるか、そうでなければ、別の架橋剤を、親コーティング材料に使用する結合剤としてのポリマーと組み合わせて使用する(外部架橋)、いずれかのコーティングフィルムの熱開始架橋を意味する。
【0043】
本特許請求の範囲に記載の発明について、結合剤又は固体結合剤は、顔料及び充填剤を除く、本特許請求の範囲に記載の発明の水性ベースコート組成物の不揮発性成分である。
【0044】
また、本特許請求の範囲に記載の発明に関し、顔料は、選択的吸収によって材料の色を変える物質、又は光を散乱及び反射する物質であると定義される。
【0045】
本特許請求の範囲に記載の発明に関し、効果顔料は、それらが適用される基材に指向性光反射率、散乱、吸収、又は光学的に可変の外観を与えるフレーク又は板状構造物として定義される。
【0046】
本特許請求の範囲に記載の発明に関し、本特許請求の範囲に記載の発明の説明で使用する「質量%(% by weight)」又は「質量%(wt.%)」は、コーティング組成物の総質量に対するものである。さらに、以下で説明するように、それぞれの成分中のすべての化合物の質量%の合計は、合計で100質量%になる。
【0047】
上記の測定技術は、当業者に周知なことであり、したがって、本特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。
【0048】
本特許請求の範囲に係る発明は、その一態様によれば、下記の成分、すなわち、
(A)(i)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂、及び
(ii)アミノプラスト樹脂及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤、
(B)少なくとも1種の酸硬化触媒、及び
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド
を含む水性ベースコート組成物である。
【0049】
成分(A)
本特許請求の範囲に係る発明の水性ベースコート組成物は、(i)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂と、(ii)アミノプラスト樹脂及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤とを含有する。これらは、ともに成分(A)を構成する。
【0050】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、成分(A)の、少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂としては、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル-ポリウレタンハイブリッドポリマー、ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマー、ポリエステル-ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマー、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエステルポリオール及びポリシロキサンからなる群から選択する。本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態では、成分(A)の、少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂として、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル-ポリウレタンハイブリッドポリマー、ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマー、ポリエステル-ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマー、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエステルポリオール及びポリシロキサンからなる群から選択される、異なるポリマーの混合物から選択する。
【0051】
本特許請求の範囲に記載の発明のより好適な実施形態では、成分(A)の、少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂は、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエステル-ポリウレタンハイブリッドポリマー、ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマー、及びポリエステル-ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマーからなる群から選択する。
【0052】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態では、成分(A)の、少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂は、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した、1,000g/mol以上100,000g/mol以下の範囲の重量平均分子量を有する。本特許請求の範囲に記載の発明のより好適な実施形態では、成分(A)の、少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂は、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した、30,000g/mol以上50,000g/mol以下の範囲の重量平均分子量を有する。
【0053】
本特許請求の範囲に記載の発明のさらに別の好適な実施形態では、成分(A)の、少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂は、ASTMD4662に従って決定した、5mg KOH/g以上100mg KOH/g以下の範囲の酸価を有する。
【0054】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態では、成分(A)の、少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂は、水性ベースコート組成物の総質量に基づき10質量%以上40質量%以下の範囲の量で存在する。本特許請求の範囲に記載の発明のより好適な実施形態では、成分(A)の、少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂は、水性ベースコート組成物の総質量に基づき20質量%以上35質量%以下の範囲の量で存在する。
【0055】
本特許請求の範囲に記載の発明の水性ベースコート組成物は、アミノプラスト樹脂及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤を含む。
【0056】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、成分(A)の少なくとも1種の架橋剤はアミノプラスト樹脂から選択されるが、より好ましくは、成分(A)の少なくとも1種の架橋剤はメラミン樹脂である。
【0057】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、成分(A)の少なくとも1種の架橋剤はブロックポリイソシアネートから選択されるが、より好ましくは、成分(A)の少なくとも1種の架橋剤は、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、2,3-ジメチルエチレンジイソシアネート、1-メチルトリメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,2-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トルイレンジイソシアネート、2,6-トルイレンジイソシアネート、4,4-ジフェニレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビスジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,4-ナフチレンジイソシアネート、1-イソシアナトメチル-3-イソシアナト-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート又はIPDI、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、m-テトラメチルキシレンジイソシアネート又はTMXDI、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(4-イソシアナトフェニル)メタン、4,4’-ジイソシアナトジフェニルエーテル及び2,3-ビス(8-イソシアナトオクチル)-4-オクチル-5-ヘキシルシクロヘキサンからなる群から選択されるポリイソシアネートから選択される。
【0058】
本特許請求の範囲に記載の発明のより好適な実施形態では、成分(A)の少なくとも1種の架橋剤は、ヘキサメチレンジイソシアネート、IPDI及びTMXDIから選択される。より高級のイソシアネート官能性のポリイソシアネートを使用することも可能である。より高級のイソシアネート官能性のポリイソシアネートの代表例としては、トリス(4-イソシアナトフェニル)メタン、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン、1,3,5-トリス(6-イソシアナトヘキシルビウレット)、ビス(2,5-ジイソシアナト-4-メチルフェニル)メタン、1,3,5-トリス(6-イソシアナトヘキシル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(すなわち、ヘキサメチレンジイソシアネート環状三量体)、1,3,5-トリス(6-イソシアナトヘキシル)及び高分子量ポリイソシアネート(ジイソシアナトトルエンの二量体及び三量体など)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ポリイソシアネートの混合物を使用することも、また可能である。また、本特許請求の範囲に記載の発明において架橋剤として使用するためのイソシアネートは、例えば、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールを含むポリオールから誘導されるプレポリマーであることができる。
【0059】
本特許請求の範囲に記載の発明のさらに別の好適な実施形態では、成分(A)の少なくとも1種の架橋剤は、水性ベースコート組成物の総質量に基づき5質量%以上45質量%以下の範囲の量で存在する。本特許請求の範囲に記載の発明のより好適な実施形態では、成分(A)の少なくとも1種の架橋剤は、水性ベースコート組成物の総質量に基づき20質量%以上40質量%以下の範囲の量で存在する。
【0060】
成分(B)
本特許請求の範囲に記載の発明の水性ベースコート組成物は、成分(B)として少なくとも1種の酸硬化触媒を含む。本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、少なくとも1種の酸硬化触媒成分(B)は、強酸を含む。
【0061】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態では、当該強酸は25℃の水中で1.5以下のpKa値を有する。本特許請求の範囲に記載の発明のより好適な実施形態では、強酸は25℃の水中で1.0以下のpKa値を有する。本特許請求の範囲に記載の発明のさらに別の好適な実施形態では、強酸は有機酸からなる群から選択される。本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、有機酸はスルホン酸又はホスホン酸である。
【0062】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、当該スルホン酸は、パラ-トルエンスルホン酸(p-TSA)、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸及びジノニルナフタレンジスルホン酸からなる群から選択する。
【0063】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態においては、上記ホスホン酸は、ブチルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート及び2-エチルヘキシルアシッドホスフェートからなる群から選択される。
【0064】
本特許請求の範囲に記載の発明のさらに別の好適な実施形態では、強酸は、少なくとも1種のアミンでブロックされたものである。本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態においては、少なくとも1種のアミンとしては、アミノメチルプロパノール、ジメチルオキサゾリジン、ジイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアミノメチルプロパノール、ジメチルオキサゾリジン、アミノメチルプロパノール及びジイソプロパノールアミンからなる群から選択する。
【0065】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態では、上記少なくとも1種の酸硬化触媒は、ブロックスルホン酸である。
【0066】
本特許請求の範囲に記載の発明のさらに別の好適な実施形態では、少なくとも1種の酸硬化触媒は、水性ベースコート組成物の総質量に基づき0.1質量%以上5質量%以下の範囲の量で存在する。本特許請求の範囲に記載の発明のより好適な実施形態において、少なくとも1種の酸硬化触媒は、水性ベースコート組成物の総質量に基づき0.5質量%以上2.5質量%以下の範囲の量で存在する。
【0067】
成分(C)
本特許請求の範囲に記載の発明の水性ベースコート組成物は、成分(C)として少なくとも1種のポリカルボジイミドを含む。
【0068】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、少なくとも1種のポリカルボジイミドは、100g/mol以上600g/mol以下の範囲のカルボジイミド当量を有する、本特許請求の範囲に記載の発明のより好適な実施形態では、少なくとも1種のポリカルボジイミドは、250g/mol以上450g/mol以下の範囲のカルボジイミド当量を有する。本特許請求の範囲に記載の発明の最も好適な実施形態においては、少なくとも1種のポリカルボジイミドは、300g/mol以上450g/mol以下の範囲のカルボジイミド当量を有する。
【0069】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態では、少なくとも1種のポリカルボジイミドは、水性ベースコート組成物の総質量に基づいて、0.1質量%以上10質量%以下の範囲の量で存在する。本特許請求の範囲に記載の発明のより好適な実施形態において、少なくとも1種のポリカルボジイミドは、水性ベースコート組成物の総質量に基づいて、0.5質量%以上5質量%以下の範囲の量で存在する。
【0070】
添加剤
本特許請求の範囲に記載の発明の水性ベースコート組成物は、さらに添加剤を含む。本特許請求の範囲に記載の発明について、添加剤の代表的な例には、結合剤、ペイント、染料、可塑剤、難燃剤、希釈剤、溶媒、充填剤、湿潤剤、UV安定剤、酸化防止剤、流動剤、レオロジー制御剤及び光安定剤が挙げられるが、これらに限定されない。本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、添加剤としては、溶媒、結合剤、充填剤、湿潤剤、UV安定剤、酸化防止剤、流動剤、レオロジー制御剤及び光安定剤からなる群から選択する。本特許請求の範囲に記載の発明のためにあっては、少なくとも1種の結合剤としては、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、アルキド、多糖類及びポリウレタンからなる群から選択することが好ましい。
【0071】
安定剤
安定剤は、崩壊を防ぎ、経年劣化や風化作用から保護するために使用する。本特許請求の範囲に記載の発明のため、安定剤の代表的な具体例としては、好ましくは、一次及び二次酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、UV吸収剤、加水分解制御剤及び失活剤(クエンチャー)がある。一次酸化防止剤の具体例には、BASFのIrganox(登録商標)がある。これは、貯蔵中及び変換中の両方で、ポリオール中のフリーラジカル種及びヒドロペルオキシドの形成を抑制する。紫外線吸収剤の具体例には、BASFのTinuvin(登録商標)がある。ヒンダードアミン光安定剤の具体例には、BASFのChimassorb(登録商標)がある。市販されている安定剤の具体例は、プラスチック添加剤ハンドブック(Plastics Additive Handbook)、第5版、H.Zweifel編、Hanser Publishers、Munich、2001([1])、p.98 S136に記載されている。適切な安定剤は、BASFのCycloquart(登録商標)などのシラン化合物である。
【0072】
湿潤及び分散剤
湿潤剤又は分散剤は、粒子の分離を改善し、沈降又は凝集するのを防ぐために添加する非界面活性物質又は界面活性物質のいずれかである。本特許請求の範囲に記載の発明について、湿潤剤及び分散剤の代表的な具体例としては、不飽和ポリアミンアミド及び低分子酸性ポリエステルの塩、並びにそれらの混合物が好ましく、例えば、BYK Chemie社製のantiterra(登録商標)U、disperbyk(登録商標)、Byk(登録商標)088がある。
【0073】
難燃剤
難燃剤は、最終完成品が発火する可能性を減少し、燃焼を遅延させるために添加する化学物質である。本特許請求の範囲に記載の発明に関して、難燃剤の代表的な具体例には、好ましくは、リン酸トリクレジル、リン酸トリス(2-クロロエチル)、リン酸トリス(2-クロロプロピル)、リン酸トリス(1,3-ジクロロプロピル)、リン酸トリス(2,3-ジブロモプロピル)及びエチレン二リン酸テトラキス(2-クロロエチル)が含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
充填剤
本特許請求の範囲に記載の発明について、充填剤としては、好ましくは、慣用的な馴染みの有機及び無機の充填剤、補強剤及び増量剤が挙げられるが、これに限定されない。無機充填剤の代表的な例には、ケイ酸塩鉱物、例えば、アンチゴライト、蛇紋石、普通角閃石、角閃石、クリソタイル、タルクなどの層状ケイ酸塩;カオリン、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、及び酸化鉄などの金属酸化物、チョーク、バライトなどの金属塩、及び硫化カドミウム、硫化亜鉛などの無機顔料、さらにはガラス粒子がある。有機充填剤の代表的な例には、カーボンブラック、メラミン、発泡性グラファイト、ロジン、シクロペンタジエニル樹脂、グラフトポリマー、セルロース繊維、芳香族及び/又は脂肪族ジカルボン酸エステルに基づくポリエステル繊維、及び炭素繊維があるが、これらに限定されない。これらの無機及び有機充填剤は、個別に使用することも、混合物として使用することもできる。
【0075】
希釈剤
本特許請求の範囲に記載の発明に関し、希釈剤は有機溶媒であることが好ましい。適切な有機溶媒の代表的な例には、好ましくは、ナフタレン、ミネラルスピリット又はアルコール、及び、アルキレングリコール及びジメチロールシクロヘキサンなどの低分子量ジオールがある。
【0076】
レオロジー調整剤
レオロジー調整剤は、好ましくは、貯蔵、輸送、加工処理、及び塗布のとき、及び特定の表面へ後塗布するときの、コーティング組成物の流動性を制御するのに使用する。本特許請求の範囲に記載の発明に関連して、レオロジー調整剤の代表的な例には、好ましくは、改質及び未改質の有機質粘土、並びに多種多様な有機化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、添加剤は、水性ベースコート組成物の総質量に基づき0.1質量%以上10質量%以下の範囲の量で存在する。本特許請求の範囲に記載の発明のより好適な実施形態では、添加剤は、水性ベースコート組成物の総質量に基づいて0.5質量%以上5質量%以下の範囲の量で存在する。
【0078】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、本特許請求の範囲に記載の発明の水性ベースコート組成物は、さらに、遊離形態のアミンを含む。本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態では、遊離形態のアミンは、アルキルアミン、アルカノールアミン、及びアンモニアからなる群から選択される。本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態において、遊離形態のアミンは、アンモニア、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、エチレンジアミンプロピレンジアミン、エチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、及びモルホリンから選択される。
【0079】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、遊離形態のアミンは、水性ベースコート組成物の総質量に基づいて、0.01質量%以上10質量%以下の範囲の量で存在する。本特許請求の範囲に記載の発明のより好適な実施形態では、遊離形態のアミンは、遊離形態のアミンは、水性ベースコート組成物の総質量に基づいて、0.05質量%以上5質量%以下の範囲の量で存在する。
【0080】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、少なくとも1種のアミンと遊離形態の少なくとも1種のアミンの、少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂に対するモル比は、1.5:1以上3.5:1以下の範囲である。本特許請求の範囲に記載の発明のより好適な実施形態においては、少なくとも1種のアミンと遊離形態の少なくとも1種のアミンの、少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂に対するモル比は、2:1以上3:1以下の範囲である。
【0081】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、水性ベースコート組成物は、少なくとも1種の顔料を含む。
【0082】
本特許請求の範囲に記載の発明についての、少なくとも1種の顔料は、ドイツの標準仕様DIN55944の定義による、実質的に不溶性で、微細に分散された、有機又は無機の着色剤である。
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、少なくとも1種の顔料は、有機顔料及び金属顔料からなる群から選択される。
【0083】
少なくとも1種の顔料の代表的な例には、有機顔料、着色顔料、金属顔料、及び効果顔料があるが、これらに限定されない。着色顔料及び効果顔料は当業者に知られており、例えば、Roempp-Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、1998年、176頁及び451頁に記載されている。「着色(colouring)顔料」及び「着色(colour)顔料」という用語は、「視覚効果(effect)顔料」及び「効果顔料」という用語と同様に交換可能である。
【0084】
有機顔料の代表的な例には、モノアゾ顔料、例えばC.I.ピグメントブラウン25;C.I.ピグメントオレンジ5、13、36及び67;C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、8、9、12、17、22、23、31、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、52:1、52:2、53、53:1、53:3、57:1、63、112、146、170、184、210、245及び251;C.I.ピグメントイエロー1、3、73、74、65、97、151及び183;ジスアゾ顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ16、34及び44;C.I.ピグメントレッド144、166、214及び242;C.I.ピグメントイエロー12、13、14、16、17、81、83、106、113、126、127、155、174、176及び188;アンサンスロン顔料、例えばC.I.ピグメントレッド168(C.I.バットオレンジ3);アントラキノン顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー147及び177;C.I.ピグメントバイオレット31;アントラキノン顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー147及び177;C.I.ピグメントバイオレット31;アントラピリミジン顔料:C.I.ピグメントイエロー108(C.I.バットイエロー20);キナクリドン顔料、例えばC.I.ピグメントレッド122、202及び206;C.I.ピグメントバイオレット19;キノフタロン顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー138;ジオキサジン顔料、例えばC.I.ピグメントバイオレット23及び37;フラバントロン顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー24(C.I.バットイエロー1);インダンスロン顔料、例えばC.I.ピグメントブルー60(C.I.バットブルー4)及び64(C.I.バットブルー6);イソインドリン顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ69;C.I.ピグメントレッド260;C.I.ピグメントイエロー139及び185;イソインドリノン顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ61;C.I.ピグメントレッド257及び260;C.I.ピグメントイエロー109、110、173及び185;イソビオラントロン顔料、例えばC.I.ピグメントバイオレット31(C.I.バットバイオレット1);金属錯体顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー117、150及び153;C.I.ピグメントグリーン8;ペリノン顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ43(C.I.バットオレンジ7);C.I.ピグメントレッド194(C.I.バットレッド15);ペリレン顔料、例えばC.I.ピグメントブラック31及び32;C.I.ピグメントレッド123、149、178、179(C.I.バットレッド23)、190(C.I.バットレッド29)及び224;C.I.ピグメントバイオレット29;フタロシアニン顔料、例えばC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6及び16;C.I.ピグメントグリーン7及び36;ピランスロン顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ51;C.I.ピグメントレッド216(C.I.バットオレンジ4);チオインジゴ顔料、例えばC.I.ピグメントレッド88及び181(C.I.バットレッド1);C.I.ピグメントバイオレット38(C.I.バットバイオレット3);トリアリールカルボニウム顔料、例えばC.I.ピグメントブルー1、61及び62;C.I.ピグメントグリーン1;C.I.ピグメントレッド81、81:1及び169;C.I.ピグメントバイオレット1、2、3及び27;C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック);C.I.ピグメントイエロー101(アルダジンイエロー)、及びC.I.ピグメントブラウン22を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0085】
効果顔料の代表的な例には、層状アルミニウム顔料、金青銅、酸化青銅及び/又は酸化鉄-アルミニウム顔料などの薄片状金属効果顔料、パールエッセンス、塩基性炭酸鉛、ビスマスオキシドクロリド及び/又は金属酸化物-マイカ顔料などの真珠光沢顔料、及び/又は薄片状グラファイト、薄片状鉄酸化物、PVDフィルムから構成される多層効果顔料及び/又は液晶ポリマー顔料など他の効果顔料が含まれるが、これらに限定されない。必ずしも排他的ではないが、いずれにせよ使用するのに特に好適なものは、薄片状金属効果顔料、より具体的には薄片状アルミニウム顔料である。
【0086】
着色顔料の代表的な例には、二酸化チタン、ジンクホワイト、硫化亜鉛、又はリトポンなどの白色顔料;カーボンブラック、鉄マンガンブラック、又はスピネルブラックなどの黒色顔料;酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン、コバルトグリーン又はウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルー又はマンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット又はコバルトバイオレット及びマンガンバイオレット、赤色酸化鉄、カドミウムスルホセレニド、モリブデートレッド又はウルトラマリンレッド;ブラウン酸化鉄、ミックスブラウンのスピネル相及びコランダム相又はクロムオレンジ;又は黄色酸化鉄、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、硫化カドミウム亜鉛、クロムイエロー、又はバナジン酸ビスマスなどの有彩顔料のような、無機着色顔料が含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
本特許請求の範囲に記載の発明にあっては、上記少なくとも1種の顔料としては、また、2種以上の異なる顔料の混合物を含ませることができる。
【0088】
本特許請求の範囲に記載の発明の水性ベースコート組成物の固形分は、関わっている事例の要求に応じて変化させることができる。固形分は、主に、塗布、特にスプレー塗布に必要な粘度によって決まる。本特許請求の範囲に記載の発明の水性ベースコート組成物の固形分は、好ましくは少なくとも20質量%、より好ましくは少なくとも30質量%、最も好ましくは20質量%以上から50質量%以下の範囲である。
【0089】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、以下の成分:
(A)(i)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂;及び
(ii)メラミン及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤;
(B)スルホン酸又はホスホン酸から選択される少なくとも1種の酸硬化触媒;及び
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド
を含む水性ベースコート組成物が提供される。
【0090】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、以下の成分:
(A)(i)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂;及び
(ii)メラミン及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤;
(B)25℃の水中で1.5以下のpKa値を有する少なくとも1種の酸硬化触媒;及び
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド
を含む水性ベースコート組成物が提供される。
【0091】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態では、以下の成分:
(A)(i)ポリエステル、ポリエーテル、ポリエステル-ポリウレタンハイブリッドポリマー、ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマー、及びポリエステル-ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマーからなる群から選択される、少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂;及び
(ii)メラミン及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤;
(B)少なくとも1種のブロックスルホン酸;及び
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド
を含む水性ベースコート組成物が提供される。
【0092】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態では、以下の成分:
(A)(i)ポリエステル、ポリエーテル、ポリエステル-ポリウレタンハイブリッドポリマー、ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマー、及びポリエステル-ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマーからなる群から選択される、少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂;及び
(ii)少なくとも1種のメラミン;
(B)少なくとも1種のブロックスルホン酸;及び
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド
を含む水性ベースコート組成物が提供される。
【0093】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態では、以下の成分:
(A)(i)ポリエステル、ポリエーテル、ポリエステル-ポリウレタンハイブリッドポリマー、ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマー、及びポリエステル-ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマーからなる群から選択される、少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂;及び
(ii)メラミン及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤;
(B)少なくとも1種のアミンブロック酸硬化触媒;及び
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド
を含む水性ベースコート組成物が提供される。
【0094】
本特許請求の範囲に記載の発明のさらに別の実施形態では、以下の成分:
(A)(i)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂;及び
(ii)アミノプラスト樹脂及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤;
(B)少なくとも1種の酸硬化触媒;
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド;及び
(D)少なくとも1種の中和剤
を含む水性ベースコート組成物が提供される。
【0095】
本特許請求の範囲に記載の発明の実施形態では、上記少なくとも1種の中和剤はアミンである。
【0096】
本特許請求の範囲に記載の発明のさらに別の好適な実施形態では、以下の成分:
(A)(i)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂;及び
(ii)メラミン及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤;
(B)少なくとも1種のアミンブロック酸硬化触媒;
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド;及び
(D)アルキルアミン、アルカノールアミン及びアンモニアからなる群から選択される遊離形態の少なくとも1種のアミン
を含む水性ベースコート組成物が提供される。
【0097】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態では、以下の成分:
(A)(i)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂;及び
(ii)メラミン及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤;
(B)少なくとも1種のブロックスルホン酸;
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド;及び
(D)アルキルアミン及びアルカノールアミンからなる群から選択される遊離形態の少なくとも1種のアミン
を含む水性ベースコート組成物が提供される。
【0098】
本特許請求の範囲に記載の発明に関し、水性ベースコート組成物は、本書に記載の成分を混合することにより製造することが好ましい。混合は、当業者に知られているミキサーによって行うことができる。ミキサーの代表的な例としては、攪拌容器、溶解器、ビーズミル、ロールミル、静的ミキサー(バッチ単位又は連続的のいずれか)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
別の態様では、本特許請求の範囲に記載の発明は、以下の工程:
基材の少なくとも一部の上にコーティング層を塗布する工程、
ここで該コーティング層は
(A)(a)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂、及び
(b)アミノプラスト樹脂及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤、
(B)少なくとも1種の酸硬化触媒、及び
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド
を含む、
及び
塗布したコーティング層を80℃以上140℃以下の温度で硬化させる工程
を含む基材をコーティングする方法に関する。
【0100】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態にあっては、塗布したコーティング層を80℃以上110℃以下の温度で硬化させる。
【0101】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態では、以下の工程:
基材の少なくとも一部の上にコーティング層を塗布する工程、
ここで該コーティング層は、
(A)(a)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂、及び
(b)アミノプラスト樹脂及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤、
(B)少なくとも1種の酸硬化触媒、及び
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド
を含む、
及び
塗布したコーティング層を80℃以上110℃以下の温度で硬化させる工程
を含む基材をコーティングする方法に関する。
【0102】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態では、以下の工程:
基材の少なくとも一部の上にコーティング層を塗布する工程、
ここで該コーティング層は、
(A)(a)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂、及び
(b)メラミン及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤、
(B)少なくとも1種のブロックスルホン酸又はブロックホスホン酸、及び
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド
を含む、
及び
塗布したコーティング層を80℃以上140℃以下の温度で硬化させる工程
を含む基材をコーティングする方法に関する。
【0103】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態では、以下の工程:
基材の少なくとも一部の上にコーティング層を塗布する工程、
ここで該コーティング層は、
(A)(a)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂、及び
(b)メラミン及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤、
(B)少なくとも1種のブロックスルホン酸、及び
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド
を含む、
及び
塗布したコーティング層を80℃以上110℃以下の温度で硬化させる工程
を含む基材をコーティングする方法に関する。
【0104】
本特許請求の範囲に記載の発明にあっては、慣用の塗布方法のいずれかにより、水性ベースコート組成物を基材に塗布することが好ましい。塗布するための方法の代表的な具体例としては、スプレー法、ナイフコーティング法、展着法(spreading)、注入法、浸漬法、含浸法、トリックリング法、又はローリング法が挙げられるが、これらに限定されない。このように塗布する場合、塗布装置又は機器を移動させて、塗装する基材それ自体は静止させておくことも可能である。そうする代わりに、塗装する基材、より具体的にはコイルを移動させ、その基材に対して塗布装置を静止させるか、又は適宜移動させてもよい。好ましい塗布方法には、例えば、空気スプレー法、無気スプレー法、高速回転法、静電スプレー塗布法があり、これらの方法は、単独で、又は熱風スプレー法などのホットスプレー塗布法と組み合わせて実施する。
【0105】
ベースコート組成物は、自動車仕上げや一般的な工業用塗装で使用する色彩付与中間体として使用する。このベースコート組成物は、一般に、焼付けた(完全に硬化した)プライマーサーフェーサで前処理した金属製基材に塗布する。使用する基材には、既存の塗装系が含まれる場合があり、このとき、必要に応じて前処理(例えば、研磨による)が必要になることがある。特に環境の影響からベースコートフィルムを保護するためには、その上に、少なくとも1層の追加クリアコートフィルムを塗布するのが一般的である。これは、通常、ウェットオンウェットプロセスで行う。つまり、ベースコートフィルムを硬化させることなく、クリアコート組成物を塗布する。その後、最終的には、クリアコートと一緒に硬化させるものである。
【0106】
本特許請求の範囲に記載の発明のベースコートをコーティングした基材及びクリアコートをコーティングした基材の硬化は、一定の休止時間後に行うのが好ましい。この休止時間は、例えば、コーティング膜のレベリング化及び脱気に、又は溶媒などの揮発性成分の蒸発に使える。コーティング膜が損傷又は変化を受けるような事態、例えば、時期尚早に完全に架橋するといった事態を伴わない場合には、高温を施すことによって及び/又は大気湿度を低下させることによって、休止時間を促進し及び/又は短縮することができる。
【0107】
コーティング材料の熱硬化は、方法の面では特殊なものではない。強制空気オーブンでの加熱やIRランプによる照射など、慣習的で既知の方法に従って実施する。この熱硬化は段階的に行う場合もあり得る。別の好適な硬化方法には、近赤外線(NIR放射)で硬化する方法がある。
【0108】
硬化は、好ましくは、80℃以上140℃以下、より好ましくは80℃以上110℃以下のより低い温度で有利に行われ、自動車部品の熱に敏感な構成部品の保護を可能にする。
【0109】
本特許請求の範囲に記載の発明に関連し、ベースコート及びクリアコートを基板にコーティングする方法には、少なくとも、基材に本特許請求の範囲に記載の発明の水性ベースコートを塗布する工程が包含される。続いて、基材を最初に乾燥させる。すなわち蒸発段階で、有機溶媒及び/又は水の少なくとも一部をベースコートフィルムから除去する。この乾燥は、室温から80℃までの温度で行うことが好ましい。乾燥を実施した後、クリアコート組成物を塗布する。適切なクリアコート組成物は、例えば、米国特許第8,808、805号、米国特許第9,206,330B2、米国特許出願公開第2005/0210886A1及びWO2009/086029A1に記載されている。続いて、その2回塗り仕上げしたものについては、好ましくは自動車OEM仕上げで採用されている条件下で、80℃~140℃の温度で焼付けを行う。
【0110】
別の態様では、本特許請求の範囲に記載の発明は、自動車仕上げ、工業コーティング、修理コーティング、塗料及び木材コーティングにおける、上述し以下に記載する水性ベースコート組成物の使用に関する。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、上述し以下に記載する水性ベースコート組成物は、自動車OEM仕上げ、自動車及び/又はユーティリティ車両内又はその上に取り付けるための部品の仕上げ、自動車補修、修理コーティング、塗料、木材コーティング、及び家具コーティングを含む、多種多様の用途で使用することができる。その用途はこれらに限定されない。
【0111】
さらに別の態様では、本特許請求の範囲に記載の発明は、上述し以下に記載する水性ベースコート組成物でコーティングした物品に関する。
【0112】
本特許請求の範囲に記載の発明の水性ベースコート組成物は、輸送手段(特に、自転車、オートバイ、バス、トラック又は自動車などの動力付き車両)の車体又はその部品の;建物の内部と外部の;家具、窓及びドアの;プラスチック成形品、特にCDや窓の;小型工業用部品の;コイル、容器類、パッケージングの;白もの家電製品の;フィルム類(films)の;光学的、電気的及び機械的部品の;中空ガラス製品及び日用生活品の、さらには、木材コーティング及び家具コーティングの、装飾的、保護用及び/又は効果付与的コーティング及び仕上げとして非常に適している。
【0113】
したがって、本特許請求の範囲に記載の発明の水性ベースコート組成物は、着色して又は着色しないで、例えば、未コート基材又はプレコート基材に塗布することができる。本特許請求の範囲に記載の発明の水性ベースコート組成物は、技術的及び審美的に特に要求の厳しい自動車OEM仕上げの分野で、また、車体内又は車体上に設置するプラスチック部品のコーティングに使用することができ、より具体的には、トップクラスの車体用の部品、例えば、屋根、ハッチ、フード、フェンダー、バンパー、スポイラー、シル、保護ストリップ、サイドトリムなどを製造するための部品のコーティングに使用することができる。さらには、例えばトラック、鎖駆動建設車両(例えば、クレーン車、ホイールローダー及びコンクリートミキサー)、バス、鉄道車両、船舶、航空機、及び、農業機器(例えば、トラクター及びコンバイン)の商用車両及びこれらの部品の仕上げ用に用いることができる。プラスチック材料の代表的な例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、配向ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミドが含まれるが、これらに限定されない。本特許請求の範囲に記載の発明の水性ベースコート組成物は、自動車補修にも使用することができる。自動車補修には、ライン上のOEM仕上げの修理だけでなく、例えば、引っかき傷、石の破片による損傷などの局所的欠陥の修理、さらには、車両の価値を高めるための、対応する修理工場や自動車塗装工場での完全な再塗装も包含される。
【0114】
特に好ましくは、本特許請求の範囲に記載の発明の水性ベースコート組成物は、多段階コーティングプロセスで使用することができる。したがって、本特許請求の範囲に記載の発明は、水性ベースコート組成物を含むマルチコート着色及び/又は効果仕上げも提供するものである。
【0115】
実施形態
以下に、本開示をさらに説明するため実施形態のリストを提供する。ただし、本開示を以下に列挙される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0116】
1.水性ベースコート組成物であって、
(A)(i)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂、及び
(ii)アミノプラスト樹脂及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤、
(B)少なくとも1種の酸硬化触媒、及び
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド
を含む水性ベースコート組成物。
【0117】
2.前記少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂が、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル-ポリウレタンハイブリッドポリマー、ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマー、ポリエステル-ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマー、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエステルポリオール及びポリシロキサンからなる群から選択される、実施形態1に記載の水性ベースコート組成物。
【0118】
3.前記少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂が、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエステル-ポリウレタンハイブリッドポリマー、ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマー、及びポリエステル-ポリウレタン-ポリアクリレートハイブリッドポリマーからなる群から選択される、実施形態1又は2に記載の水性ベースコート組成物。
【0119】
4.前記少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂が、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した、30,000g/mol以上50,000g/mol以下の範囲の重量平均分子量を有する、請求項1~3に記載の水性ベースコート組成物。
【0120】
5.前記少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂が、ASTMD4662に従って決定した、5mg KOH/g以上100mg KOH/g以下の範囲の酸価を有する、請求項1~4に記載の水性ベースコート組成物。
【0121】
6.前記少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂が、水性ベースコート組成物の総質量に基づき10質量%以上40質量%以下の範囲の量で存在する、実施形態1~5に記載の水性ベースコート組成物。
【0122】
7.前記アミノプラスト樹脂がメラミン樹脂である、実施形態1に記載の水性ベースコート組成物。
【0123】
8.前記少なくとも1種の架橋剤が、水性ベースコート組成物の総質量に基づき5質量%以上45質量%以下の範囲の量で存在する、実施形態1に記載の水性ベースコート組成物。
【0124】
9.前記少なくとも1種の酸硬化触媒が、25℃の水中で1.5以下のpKa値を有する強酸を含む、実施形態1に記載の水性ベースコート組成物。
【0125】
10.前記強酸が、25℃の水中で1.0以下のpKa値を有する、実施形態9に記載の水性ベースコート組成物。
【0126】
11.前記25℃の水中で1.5以下のpKa値を有する強酸が、有機酸からなる群から選択される、実施形態9又は10に記載の水性ベースコート組成物。
【0127】
12.前記有機酸がスルホン酸又はホスホン酸である、実施形態11に記載の水性ベースコート組成物。
【0128】
13.前記スルホン酸は、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸及びジノニルナフタレンジスルホン酸からなる群から選択される、実施形態12に記載の水性ベースコート組成物。
【0129】
14.前記ホスホン酸が、ブチルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート及び2-エチルヘキシルアシッドホスフェートからなる群から選択される、実施形態12に記載の水性ベースコート組成物。
【0130】
15.前記25℃の水中で1.5以下のpKa値を有する強酸が、少なくとも1種のアミンでブロックされている、実施形態10に記載の水性ベースコート組成物。
【0131】
16.前記少なくとも1種のアミンが、アミノメチルプロパノール、ジメチルオキサゾリジン、ジイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアミノメチルプロパノール、ジメチルオキサゾリジン、アミノメチルプロパノール及びジイソプロパノールアミンからなる群から選択される、実施形態15に記載の水性ベースコート組成物。
【0132】
17.前記少なくとも1種の酸硬化触媒が、ブロックスルホン酸である、実施形態1に記載の水性ベースコート組成物。
【0133】
18.前記少なくとも1種の酸硬化触媒が、水性ベースコート組成物の総質量に基づき0.1質量%以上5質量%以下の範囲の量で存在する、実施形態1~10に記載の水性ベースコート組成物。
【0134】
19.前記少なくとも1種のポリカルボジイミドが、100g/mol以上600g/mol以下の範囲のカルボジイミド当量を有する、実施形態1に記載の水性ベースコート組成物。
【0135】
20.前記少なくとも1種のポリカルボジイミドが、250g/mol以上450g/mol以下の範囲のカルボジイミド当量を有する、実施形態19記載の水性ベースコート組成物。
【0136】
21.前記少なくとも1種のポリカルボジイミドが、水性ベースコート組成物の総質量に基づき0.1質量%以上10質量%以下の範囲の量で存在する、実施形態1~20のいずれかに記載の水性ベースコート組成物。
【0137】
22.溶媒、充填剤、結合剤、湿潤剤、UV安定剤、酸化防止剤、流動剤、レオロジー制御剤及び光安定剤からなる群から選択される添加剤をさらに含む、実施形態1に記載の水性ベースコート組成物。
【0138】
23.前記添加剤が、水性ベースコート組成物の総質量に基づいて0.1質量%以上10質量%以下の範囲の量で存在する、実施形態22に記載の水性ベースコート組成物。
【0139】
24.遊離形態の少なくとも1種のアミンをさらに含む、実施形態1に記載の水性ベースコート組成物。
【0140】
25.前記遊離形態のアミンが、アルキルアミン、アルカノールアミン、及びアンモニアからなる群から選択される、実施形態24に記載の水性ベースコート組成物。
【0141】
26。前記遊離形態のアミンが、水性ベースコート組成物の総質量に基づいて0.01質量%以上10質量%以下の範囲の量で存在する、実施形態24又は25に記載の水性ベースコート組成物。
【0142】
27.少なくとも1種のアミンと遊離形態の少なくとも1種のアミンの、少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂に対するモル比が、1.5:1以上3.5:1以下の範囲である、実施形態1~26のいずれかに記載の水性ベースコート組成物。
【0143】
28.少なくとも1種の顔料をさらに含む、実施形態1~27のいずれかに記載の水性ベースコート組成物。
【0144】
29.前記少なくとも1種の顔料が、有機顔料及び金属顔料からなる群から選択される、実施形態28に記載の水性ベースコート組成物。
30.実施形態1~29のいずれかに記載の水性ベースコート組成物を含むマルチコート塗装系。
【0145】
31.下記の工程:
(i)基材の少なくとも一部の上にコーティング層を塗布する工程、
ここで該コーティング層は、
(A)(a)少なくとも1種の活性水素含有フィルム形成樹脂、及び
(b)アミノプラスト樹脂及びブロックポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤、
(B)少なくとも1種の酸硬化触媒、及び
(C)少なくとも1種のポリカルボジイミド
を含むものである、
及び
(ii)塗布したコーティング層を80℃以上140℃以下の温度で硬化させる工程
を含む基材をコーティングする方法。
【0146】
32.塗布したコーティング層を、80℃以上110℃以下の温度で硬化する、実施形態31に記載の基材をコーティングする方法。
【0147】
33.自動車仕上げ、工業コーティング、修理コーティング、塗料及び木材コーティングにおける、実施形態1~29のいずれかに記載の水性ベースコート組成物の使用。
【0148】
34.実施形態1~29のいずれかに記載の水性ベースコート組成物でコーティングした物品。
【0149】
本特許請求の範囲に記載の発明について、これまで、その特定の実施形態の観点から説明しているが、一定の修正及び均等物が当業者に明らかであり、これらも本特許請求の範囲に記載の発明の範囲内に含むことを意図している。
【実施例】
【0150】
本特許請求の範囲に記載の発明について、下記の実施例により詳細に説明する。これら実施例は非制限的なものである。より具体的には、以下に明記する試験方法は、本出願の一般的な開示の一部であり、特定の実施例に限定されない。
【0151】
表1に、調製して基材に塗布したベースコート組成物の詳細を提供する。
【0152】
【0153】
カルボジイミド当量が350g/molのポリカルボジイミドは、Stahl Polymers社から入手した。
【0154】
4,4-ジメチルオキサゾリジンでブロックされたブロックパラ-トルエンスルホン酸は、King Industries社から入手した。
【0155】
2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールは、Anguschemical社から入手した。
【0156】
表2に、表1に記載し使用した黒色水性ベースコート(標準)組成物の組成を示す。
【0157】
【0158】
【0159】
コーティングした基材の製造
OEMパネルの製造
寸法4インチx12インチの冷間圧延鋼試験パネルを基材として使用した。これらのパネルについて、Bondrite(登録商標)958亜鉛ホスフェート・プレトリートメントを用いて前処理を行い、Parcolene(登録商標)90ポストリンスでリンスした(両化学品はともにHenkel社から入手可能)。パネルにBASF Cathoguard(登録商標)800エレクトロコートの0.7~0.8ミル(mil)の層を電気コーティングし、176.7°C(350°F)で20分間焼付けを行った。パネルにBASF U338AU225F灰色プライマーの0.6~0.8ミルの層をワンコート(1回塗り)でスプレーし、5分間の周囲フラッシュを施し、さらにその後60℃(140°F)で5分間フラッシュを実施した。次に、パネルに上記のOEM黒色水性ベースコートの0.5~0.6ミルの層をコーティングした。これは、ツーコート(2度塗り)でパネルに塗布した。そのベースコートをコーティングした後、パネルに5分間の周囲フラッシュと60℃(140°F)で5分間の加熱フラッシュを施した。続いて、1.8~2.0ミルのBASF E10CG081G溶剤型、2-成分クリアコートをツーコートでパネルに塗布した。そのクリアコートを塗布した後、パネルに10分間の周囲フラッシュと129.4℃(265°F)の温度で25分間の焼付けを施した。
【0160】
低温焼付け修理パネルの製造
硬化したOEMパネルを24時間エージングした後、800番(粒度)サンドペーパーを用いて手作業で研磨し完全に艶消した。研磨したOEMパネルをイソプロパノールワイプで洗浄し、修理層をスプレーする準備を行った。OEMパネルの製造に使用した上記OEM黒色水性ベースコートと同じサンプルを表1に示すように変更した。変更したベースコートを、研磨したOEMパネルにワンコートで0.3~0.4ミル厚さに塗布した。変更したベースコートをコーティングした後、パネルに5分間の周囲フラッシュ及び80℃(176°F)で5分間の加熱フラッシュを施した。続いて、1.3~1.5ミルの低温焼付けスポット修理クリアコート(上述した)をワンコートでパネルに塗布した。クリアコートを塗布した後、パネルに10分間の周囲フラッシュ及び15分間の焼付けを施した。焼付け温度として、87.8℃(190°F)と98.9℃(210°F)の両方を使用した。硬化した低温焼付け修理パネルを72時間エージングした後、以下の表4に示すように、キシレンの二重(往復)摩擦試験、ケーニッヒ(Koenig)硬度、ツーコン(Tukon)硬度、初期及び事後の湿気密着性(humidity adhesion)について評価した。
【0161】
【0162】
結果についての考察
表4に、上記のプロセスに従って製造した種々のサンプルについて測定した物理的特性を示す。ポリカルボジイミド樹脂とブロックpTSA触媒の両方を添加すると、表4に示すように、硬度と密着性が向上する。
【0163】
表4は、ポリカルボジイミドと酸触媒の両方をベースコート組成物に添加した場合、相乗効果と超-相加効果により物理的特性に及ぼす最も著しい影響を示している。ポリカルボジイミド樹脂を単独で添加すると、キシレン耐性、密着性、及び膨れ性能が向上する。酸触媒のみを添加すると、密着性と硬度がわずかに向上する。しかし、ポリカルボジイミドと酸触媒とを一緒に加えると、この組成物の密着性が改善され、また、硬度が著しく改善される。このようなことは、当該樹脂及び酸触媒の両方の組合せなしでは達成できないことである。アミンのような中和剤又はブロッキング剤又は酸触媒をベースコートに添加すると、コーティングの性能が向上する。アミンのような中和剤をカルボジイミド及びブロック化した酸とともに添加すると、実施例6に示すように、QCT後又は加湿後(post-humidity)の密着性が改善する。
【0164】
特許請求の範囲に記載の発明に係る実施例のベースコート組成物は、上記に示すように、硬化温度が低温であっても、硬度、研磨性、及び密着性に関する性能が改善する。
【0165】
試験方法
ポリマーの分子量測定
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリマーの分子量を測定するために、ポリマー試料の完全に溶解した分子を多孔質カラム固定相で分画した。その溶離剤溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を使用した。ポリマー試料の分子量分布、数平均分子量Mnと質量平均分子量Mw、及び多分散度Mw/Mnを、クロマトグラフィーソフトウェアを用いて計算した。このソフトウェアは、Polymer Standards Serviceから入手できる、さまざまな分子量の一連の非分岐ポリスチレン標準物を含むEasyValid検証キットで作成した検量線を利用している。
【0166】
当量の測定
当量は、標準試験方法ASTM D1652に従って測定した。
【0167】
固形分の測定
固形分は、標準試験方法ASTM D2369に従って測定した。
【0168】
酸価の測定
酸価は、標準試験方法ASTM D3643に従って測定した。
【0169】
ケーニッヒ(Konig)硬度の測定
ケーニッヒ硬度は、標準試験方法ASTM D4366に従ってケーニッヒ振り子硬度計を使用して測定した。
【0170】
キシレン二重摩擦の測定
キシレンの二重摩擦は、次の手順に従って測定した。2インチx2インチの正方形のチーズクロス(VWRカタログ番号21910-107)を1インチ×1インチの正方形に折り畳み、キシレン入り容器に浸した。チーズクロスを取り出し、コーティングした基材に親指で押し当てた。適度な圧力でチーズクロスを外向きに4インチの長さで擦りつけ、次に同じ経路を擦り戻した。これで1回の「二重摩擦」を構成した。この手順を繰り返して合計10回の二重摩擦を施した。
【0171】
この二重摩擦を10回完了させた後、残留溶媒をパネルから蒸発させた。次に、パネルを視覚的に検査して、引っかき傷や塗膜の剥がれがないかどうかを確認した。
【0172】
フォード密着力(凝縮湿度あり)の測定:
フォード密着力は標準試験方法FLTM BI 106-01に従って測定した。
【0173】
パネルを72時間エージングした後、密着性について試験を行った。パネルの2つの領域で別々に接着した。最初は、試験環境下で240時間経過後(湿度室から取り出した後30分経過してから密着性試験を行う)。試験環境は標準試験方法ASTMD4585に従う。凝縮湿度に使用した温度は43.33℃(110°F)であった。さらに、パネルを目視検査して、恒久的な膨れの有無を確認した。膨れが存在する場合、膨れについての所見を記録する。
【0174】
ツーコン(Tukon)硬度の測定
コーティングした基材のツーコン硬度又は微小硬度を評価するため、Wolpert Wilson Tukon2100を使用した。コーティングした基材をツーコン圧子の下に置いた機器の台に設置した。その圧子はピラミッド形状ダイヤモンド先端部を使用するもので、コーティングした基材の表面に25gの荷重を18±0.5秒間掛ける。この機器は、糸線測微尺付き接眼鏡(filar micrometer eyepiece)を持つ顕微鏡も備えている。圧痕が完了した後、痕跡の長さをその顕微鏡を使用して測定した。その機器により、次の式からのヌープ(Knoop)硬度数(KHN)を算出する。
【0175】
【0176】
式中、
0.025=圧子に適用した荷重、kg
L=圧痕の長対角線の長さ、mm
Cp=圧子定数=7.028×10(-2)