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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】量子デバイスの製作
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/01 20230101AFI20240805BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20240805BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240805BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H10N60/01 Z
H01L21/20
H01L21/205
H01L21/302 105A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021541443
(86)(22)【出願日】2020-01-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 US2020012286
(87)【国際公開番号】W WO2020150021
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】16/252,230
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】314015767
【氏名又は名称】マイクロソフト テクノロジー ライセンシング,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アゼーフ パヴェル
(72)【発明者】
【氏名】カロフ-ガオナック,フィリップ
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0195201(US,A1)
【文献】国際公開第2013/137018(WO,A1)
【文献】特表2014-520389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/00-69/00
G06N 10/00-10/80
B82Y 40/00
H01L 21/205-21/208
H01L 21/31
H01L 21/365-21/368
H01L 21/469
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子デバイスを製造する方法であって、
マスキング工程において、基板の下層にアモルファスマスクの第1のセグメントを形成し、前記アモルファスマスクの第1のセグメント中に、前記下層を露出させる第1のトレンチセットを形成することと、
前記マスキング工程において、前記下層にアモルファスマスクの第2のセグメントを形成し、前記アモルファスマスクの第2のセグメント中に、前記下層を露出させる第2のトレンチセットを形成することであって、前記第1および第2のセグメントは重複せず、前記第1のトレンチセットのうちの1つの開放端は前記第2のトレンチセットのうちの1つの開放端に面するが、端は前記アモルファスマスクの一部によって分離されることと、
半導体成長工程において、前記第1および第2のトレンチセット内で半導体材料を選択的領域成長によって成長させ、前記下層上にナノワイヤの第1および第2のサブネットワークを形成することと、
ナノワイヤの前記第1及び第2のサブネットワークを結合して、前記下層上に単一のナノワイヤネットワークを形成することと、を有する方法。
【請求項2】
前記結合は前記半導体成長工程の間に前記半導体材料の横方向成長による合体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結合が、前記半導体成長工程の後の工程において、前記第1のトレンチセットのうちの1つの開放端を、前記第2のトレンチセットのうちの1つの開放端に導電体または超伝導体を介して接続することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記下層が前記基板のウエハである、請求項1ないし3いずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のトレンチセットの第1のトレンチの開放端は、前記ナノワイヤネットワークの非アクティブ領域において、前記第2のトレンチセットの第1のトレンチの開放端から分離される、請求項1ないし3いずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
トレンチの第1及び第2のネットワークは、前記下層から前記アモルファスマスクをエッチングすることによって形成される、請求1ないし5いずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記半導体材料の成長が、
前記第1および第2のトレンチセットにおける第1の材料のそれぞれの液滴を堆積することと、
次に、第2の材料を堆積させて、第1の材料を半導体材料に変換することとを含む、請求項1ないし6いずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記半導体材料がエピタキシーまたは蒸着によって成長される、請求項1ないし7いずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
超伝導体成長工程において、前記ナノワイヤネットワークの少なくとも一部の上に超伝導体材料の層を成長させることを含む、請求項1ないし8いずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
量子デバイスであって、
基板と、前記基板に形成されたアモルファスマスクであって、前記アモルファスマスクは、前記基板の表面に沿って延在する第1のトレンチセットを画定する第1のセグメントと、前記基板の表面に沿って延在する第2のトレンチセットを画定する第2のセグメントとを有し、前記第1及び第2のセグメントは重複しておらず、前記第1のトレンチセットの第1のトレンチの開放端は、前記第2のトレンチセットの第1のトレンチの開放端から分離され、前記第2のトレンチセットの前記第1のトレンチの前記開放端に面している、基板とアモルファスマスク層と、
前記基板の前記表面上に接触するナノワイヤネットワークであって、前記ナノワイヤネットワークは、第1のナノワイヤのサブネットワークと第2のナノワイヤのサブネットワークとを含み、前記第1のナノワイヤのサブネットワークと前記第2のナノワイヤのサブネットワークは、前記第1のトレンチセットと前記第2のトレンチセットとにある半導体材料を有し、前記半導体材料は前記基板の前記表面に接触し、前記アモルファスマスク層により画定された前記第1と第2のトレンチセット中に形成されている、ナノワイヤネットワークと
を有する量子デバイス。
【請求項11】
前記量子デバイスは、前記第1のトレンチセットのうちの1つの前記開放端及び前記第2のトレンチセットのうちの1つの前記開放端を接続する導電体を有する、請求項10に記載の量子デバイス。
【請求項12】
前記基板はウエハを含む、請求項10または11に記載の量子デバイス。
【請求項13】
前記アモルファスマスク層は誘電体である、請求項10ないし12いずれか一項に記載の量子デバイス。
【請求項14】
前記量子デバイスは、前記ナノワイヤネットワーク上に少なくとも部分的に成長させた超伝導体材料の層を有する、請求項10ないし13いずれか一項に記載の量子デバイス。
【請求項15】
請求項10ないし14いずれか一項に記載の量子デバイスを作動させる方法であって、前記方法は、前記ナノワイヤネットワークの1つまたは複数のナノワイヤにおいて、少なくとも1つのMajoranaゼロモード(MZM)を誘起することを含み、前記少なくとも1つのMZMは、超伝導体を超伝導温度に冷却し、前記量子デバイスに磁場を印加することによって誘起される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、量子デバイスの制作方法と、その結果得られる量子デバイスとに関する。このような量子デバイスは、例えば、量子コンピュータにおいて使用され得る。
【背景技術】
【0002】
量子コンピューティングは、量子状態の重ね合わせや量子エンタングルメントなどの本質的に量子力学的な現象を利用して、古典コンピュータが可能とするよりもはるかに速く一定の計算を実行する計算クラスである。「トポロジカル」量子コンピュータでは、「非可換エニオン」と呼ばれる、一定の物理系で生じる準粒子を操作することによって計算が行われる。エニオンは、フェルミオン及びボソンの両方と区別されるユニークな物理的特性を有している。非可換エニオンもまた、可換エニオンに対してユニークな特性を有する。これらのユニークな特性は、トポロジカル量子コンピューティングの基礎として役立ち、情報は非可換エニオンのトポロジカルな特性、特にそれらの時空間世界線の組みひも(braiding)としてエンコードされる。これには、量子計算の他のモデルよりもある種の利点がある。1つの主要な利点は安定性であり、量子組みひもが、他のタイプの量子コンピュータにおいて誤差を誘発する量子デコヒーレンスを引き起こし得るスケールでの摂動によって影響されないからである。
【0003】
概略的に言えば、今日まで、2種類の物理系が非可換エニオンの潜在的ホストとして考えられている、すなわち凝集系物理における「5/2分数量子ホール」系と、(より最近では)半導体-超伝導体(SE/SU)ナノワイヤである。後者については、非可換エニオンが超伝導体(SU)に結合した半導体(SE)の領域に「Majoranaゼロモード」(MZMs)の形式で形成できることが認識されたことが、この分野における重要な進歩であった。この現象に基づいて、SE/SUナノワイヤのネットワークを使用して、量子ビットを生成することができる。各SE/SUナノワイヤは、超伝導体で被覆されたある長さの半導体を有する。
【0004】
量子ビットすなわちqビットは、2つの結果の可能性を有する測定を行うことができるが、(測定されていない)任意の時点において、実際には異なる結果に対応する2つの状態の量子的重ね合わせ状態にあり得る要素である。
【0005】
「トポロジカル」量子ビットは、MZMの形態の非可換エニオンの前述の技術に基づいて実装される量子ビットである。非可換エニオンは準粒子の一種であり、粒子そのものではなく、少なくとも部分的に粒子のようにふるまう電子液体中の励起を意味する。特に、エニオンとは、二次元系(空間の2自由度)で生じる準粒子のことである。Majoranaゼロモードは、そのような準粒子のある束縛状態(a particular bound state)である。ある条件下では、これらの状態は、SE/SUナノワイヤネットワーク内の半導体/超伝導体界面に近接して形成することができ、量子コンピューティングの目的のために量子ビットとして操作することができる。MZM間のナノワイヤネットワークの領域または「セグメント」は、「トポロジカル」領域と呼ばれる。
【発明の概要】
【0006】
この要約は、以下の「詳細な説明」でさらに説明する概念の選択を簡略化された形式で導入するために提供される。この要約は、クレームされた主題事項の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、またクレームされた主題事項の範囲を限定するために使用することを意図したものでもない。また、クレームされた主題事項は、ここに記載された欠点のいずれか又は全てを解決する実装に限定されない。
【0007】
製造技術の最近の進歩は、ナノワイヤネットワークの品質の著しい改善をもたらしたが、問題のアプローチはすべて、スケーラビリティおよび/または品質に関する課題に直面している。これは、これらのアプローチで作製され得るナノワイヤネットワークのサイズおよび複雑性に制限を課す。
【0008】
量子計算の分野で使用される可能性のある量子デバイスに必要な高品質の半導体(及び超伝導および絶縁)構造を製造するために、様々なマイクロ/ナノ製造方法を使用することができる。成長プロセスを導くためにマスクが用いられるエピタキシャル構造(面内ワイヤネットワーク)の場合には、成長プロセスが力学的または/および熱力学的に制御され、特定の問題があり、。
【0009】
一つの課題は、欠陥工学に関するものである。ナノワイヤネットワークの欠陥のない領域は、サイズが限られている(典型的には、数ミクロン)。構造欠陥は、その重要な寸法を超えるサイズの構造内でランダムに発生する。これは、欠陥領域がそのアクティブ領域内で発生し、電子輸送に悪影響を与えるため、デバイスの品質にとって有害である。
【0010】
もう1つの課題は、スケーラビリティに関するものである。いくつかの特定の場合において、基本的な力学的および/または熱力学的制限のために、生成される構造(例えば、ネットワーク)の達成可能な最大サイズは、数十ミクロンに制限される。これにより、いくつかの製造方法がより小さなレベルで高品質の構造を生成することができるにもかかわらず、それらをスケーラブルでないものにする。このような方法を、大規模な用途に対してスケーラブルにする必要があるのは当然である。
【0011】
本発明の実施形態は、ナノワイヤ構造を製造する方法を提供し、これは、高品質な構造を製造することができるだけでなく、スケーラブルな方法で製造することにより、大規模で潜在的に複雑なナノワイヤネットワークの製造を可能にすることができる。
【0012】
本明細書に開示される1つの態様によれば、量子デバイスを製造する方法が提供されてもよく、該方法は、マスキング工程において、基板の下層上にアモルファスマスクの第1のセグメントを形成し、該第1のセグメントは、該下層を露出する第1のトレンチのセットを備え、マスキング工程において、該下層上に該アモルファスマスクの第2のセグメントを形成し、該第2のセグメントは、該下層を露出する第2のトレンチのセットを備え、該第1および第2のセグメントは、重複しておらず(non-overlapping)、該第1のトレンチのセットの1つトレンチの開口端は、該第2のトレンチのセットの1つのトレンチの開口端に面しているが、該端は、該アモルファスマスクの一部によって分離され、半導体成長工程において、該第1および第2のトレンチセットの中で半導体材料を選択的領域成長(selective-area-growth)によって成長させ、該下層上にナノワイヤの第1および第2のサブネットワークを形成させ、該第1および第2のナノワイヤのサブネットワークを結合して、単一のナノワイヤネットワークを該下層上に形成してもよい。
【0013】
第1および第2のセグメントは、同時に形成されてもよい。すなわち、第1及び第2のトレンチセットを同時に形成することができる。あるいは、第1および第2のセグメントは、次々と形成されてもよい。
【0014】
このように、分離されたトレンチは、ナノワイヤを画定する(より広い、またはより大きい)全体トレンチ(すなわち、チャネル)の第1および第2の部分を形成するが、マスクの前記部分によって形成される全体トレンチには不連続性がある。換言すれば、マスクの前記部分は、分離されたトレンチによって形成されるより長いトレンチにおいて、不連続性として効果的に作用する。この部分は、トレンチの方向に数ナノメートルのオーダーであることが好ましい。いくつかの選択的領域成長技術(selective area growth techniques)の特徴は、トレンチが充填される確率が表面積の減少とともに増加することである。基本的な力学的制限および/または熱力学的制限のために、生成される構造(例えば、ネットワーク)の達成可能な最大サイズが数十ミクロンに制限される場合、大きなマスクをより小さなセグメントに分割して、ナノワイヤネットワークが完全に成長する可能性を高めることが有益である。
【0015】
本発明の実施形態は、セグメント化アプローチを使用して、2つ以上のナノワイヤのサブネットワーク(すなわち、より小さいネットワーク)から単一の(すなわち、より大きな)ナノワイヤネットワークを構築する。これにより、大きな構造を作ることができない成長法を、より大きなスケール(例えば、ウエハスケール)で使用することが可能になる。また、実施形態は、欠陥がマスクのセグメント間の分離、すなわち、トレンチの第1のセットのうちの1つの開放端とトレンチの第2のセットのうちの1つの開放端との間の分離に制約されるため、大規模ナノワイヤネットワーク内で効果的な欠陥工学(defect engineering)を可能にする。
【0016】
実施形態において、前記結合は、半導体成長工程中の半導体材料の横方向成長(lateral growth)による合体を含んでもよい。
【0017】
あるいは、前記結合は、半導体成長工程の後の工程において、第1のトレンチセットの1つのトレンチの開放端を第2のトレンチセットの1つのトレンチの開放端に導電体を介して接続することを含んでもよい。
【0018】
実施形態において、下層は基板のウエハであってもよい。あるいは、1つ以上の中間層が、マスクとウェハとの間に配置されてもよい。
【0019】
実施形態において、第1のセットの第1のトレンチの開放端は、ナノワイヤネットワークの非アクティブ領域において、第2のセットの第1のトレンチの開放端から分離されてもよい。
【0020】
ナノワイヤネットワーク内の全ての領域(例えば、点または領域)が、量子および/または電気的目的を果たすわけではない。ネットワーク全体が量子コンピューティングにおいて特定の役割を果たす一方で、異なる部分の結晶品質に対する要求は異なる。量子効果が「起きる」部分は、結晶の品質に対する要求が最も高い部分である。これを「アクティブ領域」と呼ぶ。換言すれば、例えば、量子コンピューティングに必要な量子効果または電気効果は、典型的には、ナノワイヤネットワーク内の特定の領域、例えば、ネットワークの特定の結合部に限定される。ナノワイヤネットワークのアクティブ(または作動)領域とは、前記効果と一致する、または前記効果が生じると予想される任意の領域を指す。言い換えると、作動領域は、量子デバイスのアクティブ領域または動作領域である。対照的に、非作動領域とは、前記効果と一致しない、または前記効果が生じることが予測されない領域を指す。したがって、マスクの第1のセグメントと第2のセグメントの間の分離、すなわち、第1のトレンチセットのうちの1つのトレンチの開放端と第2のトレンチセットのうちの1つのトレンチの開放端とを分離するマスクの部分は、マスクの非作動領域と一致するように配置されてもよい。本発明者らは、ナノワイヤ構造の欠陥は、もし存在しても、ランダムな位置ではなく、前記分離部に生じると考える。従って、これは、作動領域全体にわたってランダムに発生するのではなく、欠陥を非作動領域に限定することを可能にし、従って、デバイスの全体的な品質を改善する。
【0021】
実施形態において、第1および第2のトレンチのネットワークは、下層からアモルファスマスクをエッチングすることによって形成されてもよい。あるいは、トレンチは、ナノインプリントまたは他のパターン化技術を用いて形成されてもよい。
【0022】
実施形態において、第1および第2のトレンチのそれぞれのパターンは、リソグラフィによって画定されてもよい。
【0023】
実施形態において、アモルファスマスクは誘電体であってもよい。実施形態において、下層は絶縁材料であってもよい。
【0024】
実施形態において、半導体材料は、エピタキシャル技術によって成長させることができる。例えば、半導体材料は、分子ビームエピタキシーによって成長させることができる。
【0025】
実施形態において、本方法は、超伝導体成長工程において、ナノワイヤネットワークの少なくとも一部の上に超伝導体材料の層を成長させることを含んでもよい。
【0026】
実施形態において、超伝導材料の層は、粒子ビームを用いて塗布されてもよい。
【0027】
実施形態において、超伝導体材料は、エピタキシーによって成長させてもよい。
【0028】
本明細書に開示される別の態様によれば、量子デバイスが提供され得る。該量子デバイスは、基板および基板の下層上に形成されるアモルファスマスクを有し、該アモルファスマスクは、第1のセットのトレンチを含む第1のセグメントと、第2のセットのトレンチを含む第2のセグメントを有し、該第1と第2のセットのトレンチの開放端は、重複しておらず、該第1のセットの第1のトレンチの開放端は、該第2のセットのトレンチの第1のトレンチの開放端から分離され、該第2のセットの第1のトレンチの開放端に対向し、該下層上のナノワイヤネットワークであって、該ナノワイヤネットワークは、該マスク上のナノワイヤの第1のサブネットワークと第2のサブネットワークとの結合から形成され、該ナノワイヤの第1と第2のサブネットワークは、該第1のセットおよび該第2のセットのトレンチ内の選択的領域成長半導体材料を含む。
【0029】
実施形態において、デバイスは、第1および第2のトレンチセットの第1のトレンチの開放端を接続する導電体を含んでもよい。
【0030】
本明細書に開示される別の態様によれば、前記デバイスを作動させる方法が提供されてもよい。前記方法は、前記ナノワイヤネットワークの1つ以上のナノワイヤにおいて、少なくとも1つのMajoranaゼロモードMZMを誘起することを含み、前記少なくとも1つのMZMは、前記超伝導体を超伝導温度に冷却し、前記デバイスに磁場を印加することによって誘起される。少なくとも1つのMZMの誘起は、1つ以上のナノワイヤのうちの少なくとも1つを静電ポテンシャルでゲート制御するステップをさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本技術のより良い理解のため、および実施形態がどのように実施され得るかを示すために、単なる例示として、以下の図を参照する。
図1】ナノワイヤのネットワークを制作する例示的方法を概略的に示す。
図2A】選択的領域成長ナノワイヤネットワークの例を示す。
図2B】選択的領域成長ナノワイヤネットワークの例を示す。
図3】部分的な大規模(>10μm)ナノワイヤネットワークのSEM画像の例を示す。
図4】小規模(<7μm)ナノワイヤネットワークのSEM画像の例を示す。
図4A】小規模(<7μm)ナノワイヤネットワークのSEM画像の例を示す。
図5】単一のナノワイヤネットワークを形成するように結合されるナノワイヤのサブネットワークの概略例を示す。
図5A】単一のナノワイヤネットワークを形成するように結合されるナノワイヤのサブネットワークの概略例を示す。
図6】10μmセグメントに分割された30μm線上のセグメント化アプローチを示す例示的なSEM画像を示し、挿入図はセグメント間のギャップのクローズアップを示す。
図7A】ナノワイヤ内のランダムな位置で生じるセグメント化マスク欠陥の一例と連続マスクの一例を概略的に示す。
図7B】ナノワイヤ内のランダムな位置で生じるセグメント化マスク欠陥の一例と連続マスクの一例を概略的に示す。
図8】ナノワイヤ内のランダムな位置で発生する欠陥を有するナノワイヤの例示的な断面TEMを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
エピタキシャル半導体超伝導材料は、超伝導エレクトロニクスおよび超伝導量子計算のための有望なプラットフォームである。トポロジカル量子コンピューティングの文脈において、強いスピン-軌道結合を有する超伝導ナノワイヤは、フォールトトレラント量子情報処理の基礎として役立つことができるトポロジカル励起をサポートすることができる。
【0033】
超伝導ナノワイヤエレクトロニクス用の半導体超伝導材料を合成する現在のアプローチは、二次元平面材料(例えば、Shabaniら、PRB 93、155402(2016)参照)またはボトムアップ成長ナノワイヤ材料(例えば、Krogstrupら、Nature Mater.14、400~406(2015)参照)のいずれかに基づく。どちらのアプローチも、異なる理由から拡張性の課題に直面している。
【0034】
特に、あるマスクガイド下の作成方法は、小規模では高品質の構造をもたらすが、より大きな構造に拡張することはできない。図3は、ナノワイヤネットワークの成長をガイドするために使用されるマスクの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。マスクは、10μmより大きいが、成長後に材料で完全に満たされていない(画像の丸印部分を参照)。対照的に、図4および図4Aは、より小さなマスクの完全な充填によって成長した小規模ナノワイヤネットワークを示すSEM画像である。ここで、マスク開口部の特徴的なサイズは、それぞれ7μm未満である。
【0035】
さらに、大規模ネットワークを実現することが可能な場合には、ネットワーク内のランダムな位置で欠陥が形成されるという欠陥形成問題が生じる。これは、図7Aの概略図に示されており、ここでは、ナノワイヤが連続した(uninterrupted)マスクを使用して成長されており、従来の方法の場合と同様である。ここで、欠陥702a、702bはランダムな位置で生じる。図8の断面画像は、ナノワイヤの透過型電子顕微鏡(TEM)画像であり、ナノワイヤに生じる欠陥の実例を示す。
【0036】
これらの問題および他の問題を解決するために、本発明の実施形態は、量子デバイスを製造するセグメント化アプローチを使用し、それによって、大きなネットワークのためのマスク設計はより小さなセグメントに分割される。ナノワイヤのサブネットワークを形成するより小さなセグメントで成長が一旦起こると、サブネットワークは結合(joined)され得る(例えば、マージされ得る)。例えば、サブネットワークは、結晶の横方向の伸長によって結合されてもよい。結果として生じる構造(ネットワーク)は、連続した(uninterrupted)設計と同様であるが、欠陥は(もしあっても)意図的なマスク破壊位置に限定される。これは、図7Bに概略的に示されており、そこでは、欠陥902aは、ナノワイヤ906全体にわたるランダムな位置ではなく、破断位置(break location)904で発生する。これにより、欠陥問題が解決される。スケーラビリティの問題に関して、各サブネットワークは、それぞれが特定の材料および成長条件に対して達成可能な臨界サイズを下回ることを確実にしつつ独立して成長する。完全に成長した任意の数のサブネットワークを結合して、より大きなネットワークを形成することができる。これにより、ナノワイヤネットワークの非束縛スケーラビリティを保証する。
【0037】
図1図5および図5Aを参照して、例示的な3工程制作方法を説明する。この製造方法を用いて、半導体(SE)および/または半導体/超伝導体(SE/SU)ナノワイヤのネットワークを作製でき、これらは、(例えば量子コンピュータの)量子デバイスまたは回路、または他の半導体/超伝導体混合プラットフォームの基盤を形成することができる。特に、この方法は、フォールトフリー(fault-free)トポロジカル量子計算の基礎を形成することができる安定なMZMをホスティングすることができるSE/SUナノワイヤネットワークを作製するのに特に適している。ここで、SE/SUナノワイヤとは、超伝導体で被覆された半導体ワイヤをいう。
【0038】
例示的な製造方法は、選択的領域成長(SAG)を利用する。SAGは、化学ビームエピタキシー(CBE)、分子ビームエピタキシー、及びMOCVDなどの結晶成長真空チャンバーを用いた成長法である。例えば、G.J Davies著「SPIE2140,Epitaxial Growth Processes,58(May 11,1994)」(doi:10.1117/12.175795)、M Fahed著博士論文「Selective area growth of in-plane III-V nanostructures using molecular beam epitaxy」(2016.http://www.theses.fr/2016LIL10114)、Fukuiら著Appl.Phys.Lett.58,2018(2018年(1991年);doi:http://dx.doi.org/10.1063/1.105026)を参照されたい。
【0039】
SE/SUナノワイヤネットワークはSAGを使用して作製されるため、ナノワイヤネットワーク全体またはそのような複数のネットワークを、基板上に全体として製造することができる。基板およびナノワイヤネットワークは、最終製品に直接組み込むことができ、ナノワイヤを異なる表面に転写する必要はない。
【0040】
量子デバイスの製造は、基板上に、通常は異なるパターンで、複数の層または材料を堆積させることによって、ウェハを構築することを含む。全体のプロセスは、異なる層が構築されるので、複数のステップを含む。以下の説明では、「ウェハ」は、ここではベース層を指すものとし、「基板」は、ウェハと、製造プロセスの現在の段階でウェハ上に既に堆積されている他の任意の層とを指す。
【0041】
第1の工程I(マスキング工程)において、アモルファスマスク102が、基板104の下層上に形成される。アモルファスマスク102は、誘電体材料で作製されてもよい。基板の下層(underlying layer)は、基板104自体であってもよく、または基板上に堆積された材料の中間層であってもよい。アモルファスマスク102は、複数のセグメントから構成される。以下の実施例は、第1のセグメントおよび第2のセグメントに関して説明するが、言うまでもなく、説明する方法は、3つ以上のセグメントにも適用される。各セグメントは、下層、例えば基板を露出する一組のトレンチを含み、第1のセグメントは、下層の第1のパターンを露出する第1のセットのトレンチを含み、第2のセグメントは、下層の第2のパターンを露出する第2のセットのトレンチを含む。第1および第2のセグメントは、同時に形成されてもよく、または1つのセグメント(例えば、第1のセグメント)が最初に形成され、他のセグメント(例えば、第2のセグメント)がそれに続いて形成されてもよい。
【0042】
第1および第2のセグメントは、それらがオーバーラップしないように、すなわち、それらのトレンチが空間的にオーバーラップせず、または基板の下層の同じエリアをカバーしないように形成される。また、第1および第2のセグメントは、(マスクの第1のセグメントに属する)第1のセットのトレンチのうちの1つの開放端が、(マスクの第2のセグメントに属する)第2のセットのトレンチのうちの1つの開放端に面する(faces)ようにも形成される。開放端は、アモルファスマスクの一部によって分離される。すなわち、マスクのその一部は、互いに面する(face)トレンチの開放端間の初期バリアとして質問(asks)する。これは、図5および図5Aの実施例において概略的に図示される。図5において、(マスクの第1のセグメントに属する)第1セットのトレンチのトレンチ502aは、(マスクの第2のセグメントに属する)第2セットのトレンチのトレンチ502bに面している。トレンチの分離は、点線のボックスでハイライト表示される。この例では、第2セットのトレンチのトレンチ502bの開放端は、(マスクの第3のセグメントに属する)第3セットのトレンチのトレンチ502cの開放端に面している。同様に、図5Aでは、(マスクの第1のセグメントに属する)第1セットのトレンチ504aのトレンチ502aが、(マスクの第2のセグメントに属する)第2セットのトレンチ504bのトレンチ502bに面する。
【0043】
アモルファス材料はエピタキシャル成長を維持できない。すなわち、それらは、それらが基板上に堆積される領域における成長を阻害し、成長はマスクが開いている結晶基板上で進行し得る。
【0044】
一般に、第1および第2のセグメントは、同じサイズであっても異なるサイズであってもよい。第1および第2のセグメントは、同じ形状であっても異なる形状であってもよい。
【0045】
図1の例では、アモルファス材料102のパターン化された層(アモルファスマスク)が、基板104の上に形成される。図1の左側には、アモルファスマスク102を有する基板104の側面図および上面図が示されている。基板104は、InP(リン化インジウム)などの任意の適切な基板材料から形成することができ、説明した実施例における絶縁基板である。説明した実施例では、マスク材料102は酸化物であるが、製造方法の第2の工程IIにおいてSAGを促進する任意のアモルファス材料であり得る(後述する)。
【0046】
アモルファスマスクまたは酸化物層102が、基板のトレンチ(または狭いストリップ)が所望の領域106において露出させる(すなわち、マスク102によって覆われない)ように酸化物層102が形成されるようにパターニングされる。この文脈におけるパターンは、所望の領域106の構造を指し、この所望の領域106は、最終的にはナノワイヤネットワークの構造となる。SEナノワイヤが成長するのはこの露出領域106だからである。したがって、ナノワイヤのサイズおよび構造は、露出領域106のサイズおよび構造と一致する。図1には、1つの露出領域106のみが示されているが、ナノワイヤは、複数の領域において同時に成長され得、所望の領域106に関連するすべての説明は、そのような複数の領域に等しく適用される。従って、ナノワイヤネットワーク全体の構造は、マスクの各セグメントのトレンチの構造によってそれ自体が規定される、露出領域の構造によって規定され得る。この実施例では、ストリップ、したがって、結果として生じるナノワイヤは、数十ナノメートルまたは数百ナノメートルのオーダーの幅を有する。
【0047】
アモルファスマスク102は、任意の適切な方法で所望の領域106を露出させるように形成することができる。例えば、酸化物などのアモルファス材料の均一な連続層を基板104または他の下層上に堆積させ、次いで、アモルファスマスク102を所望の領域106から選択的にエッチング除去することによって、露出領域106を形成することができる(この場合、最終的なナノワイヤネットワーク構造を規定するのは、リソグラフィおよび後のエッチングである)。別の例として、絶縁材料102は、所望の領域106内における材料(例えば、酸化物)102の堆積を防止するために使用されるマスクを用いて、基板104上に選択的に堆積され得る(この場合、最終的なナノワイヤネットワーク構造を画定するのはマスクである)。酸化物102は、例えば、酸化シリコン(SiOx)であってもよい。より一般的には、他の適切なアモルファス材料を使用することができる。
【0048】
第2の第II工程(半導体成長工程、またはSAG工程)では、半導体材料108が、基板の下層を露出させる第1および第2のセットのトレンチにおいて成長させられる。下層が基板自体である場合、半導体材料108は、基板の露出部分上に成長させられる。半導体材料の成長は、トレンチの各セットにおいて開始される。選択的領域成長する半導体材料は、トレンチの各セットにおいてナノワイヤの第1および第2のサブネットワークを形成する。ナノワイヤの各サブネットワークは、1つ以上のナノワイヤを含んでもよい。図5の例に示すように、各セグメントは単一のトレンチを有し、従って、対応する各サブネットワークは単一のナノワイヤを有する。対照的に、図5Aの例では、各セグメントは複数のトレンチを有し、従って対応する各サブネットワークは複数のナノワイヤを有する。
【0049】
図1の例を再び参照すると、半導体材料108は、基板104の露出部分の上に、所望の領域106内で選択的に成長させられる。図1の右上に、基板104の側面図を示す例が示されている。アモルファスマスク102のパターン化のために、選択的に成長された半導体108は、面内ナノワイヤを形成する(すなわち、ナノワイヤは、開口部から全体として成長され、成長は、x-y面内に画定される開口部のセット全体にわたってz方向に進む)。半導体材料108は、例えば、インジウムヒ素(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)、または比較的大きなスピン軌道およびG因子を有する任意の他の半導体であってもよく、または複数の材料(いくつかの材料からなるヘテロ構造)のセットであってもよい。SAG半導体108は、例えば、閉じ込められた2DEG (二次元電子ガス)半導体または単一材料半導体とすることができる。
【0050】
SAGは成長法である。SAGとは、基板の露出領域における半導体の局所的成長をいい、成長条件は、アモルファスマスク自体の成長を防止するように選択される。これは、例えば、化学ビームエピタキシ(CBE)、分子ビームエピタキシ(MBE)、または金属-有機化学蒸着(MOCVD)に基づくことができる。半導体に関しては、SAGは、エピタキシャル半導体成長のクラスを指し(選択的領域エピタキシーとも呼ばれ)、パターン化されたアモルファスマスクを用いて、成長させる半導体材料の意図的構造を規定する(リソグラフィーの一形態)。エピタキシーとは、第1の結晶をシード結晶として用いて第1の結晶上に第2の結晶を成長させる技術をいう。SAGでは、半導体成長が、アモルファスマスク102によって覆われておらず、アモルファスマスク自体にではなく、例えばアモルファスマスク上ではなく、基板の領域にのみ生じるように、プロセスが調整される。これは、マスクが使用されず、材料の組成に関係なく材料が表面全体に均一に堆積される(下記第III工程参照)均一な堆積(エピタキシャルまたは他の方法)のような他の堆積/成長プロセスとは異なる。SAGは、高真空または超高真空中で実施することができ、所望の選択的半導体成長を達成するために注意深い調整を必要とする場合がある。
【0051】
任意の適切なSAGプロセスを第2の工程IIで使用して、露出領域106内に所望のSEナノワイヤを生成することができる。SAGナノワイヤは、基板上の高対称性面内結晶配向(high symmetry in-lane crystal orientations)に沿って画定され、これもまた、ナノワイヤの明確に画定されたファセット(well-defined faceting)を与える。これにより、SU/SEインターフェースは平坦になり、原子レベルで平坦になる可能性があり、明確に定義される(well defined)。
【0052】
SAGそれ自体は知られており、従って、本明細書ではこれ以上詳細には説明しない。参考として、Aseev P. et al.「Selectivity Map for Molecular Beam Epitaxy of Advanced III-V Quantum Nanowire Networks,DOI:10.1021/acs.nanolett.8b03733,https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.nanolett.8b03733.」を参照されたい。SAGの詳細については、例えば、G.J. Davies、M. Fahed、およびFukui et al.による上述の参考文献を参照されたい。
【0053】
半導体成長工程(すなわち、SAG工程II)は、半導体材料108が、その工程の終わりに、所望の領域106(すなわち、下層または基板104がマスク102によって覆われていない領域106)を満たすが、下層または基板104の面(以下、xy面)において、マスク102により画定される所望の領域106の境界を越えて実質的に延びないようなものであると言えば十分である。場合によっては、マスク102の外方に突出するように、下層または基板104の平面に対して直交(垂直)方向(以下、z方向) に外方に延びてもよい。すなわち、半導体材料108は、マスク102よりも、z方向に下層または基板104からより長い距離だけ延在する。このように、半導体材料108は、実質的に下層または基板102(in-place ナノワイヤ)の平面内に存在するナノワイヤを形成する。
【0054】
一旦、ナノワイヤの第1のサブネットワークおよび第2のサブネットワークが形成されると、それらは結合されて、単一のナノワイヤネットワークを形成する。従って、ナノワイヤネットワークは、サブネットワークを足し合わせたものであり、各サブネットワークよりも大きい。これにより、小規模なサブネットワークから大規模なネットワークを構築することが可能になる。サブネットワークの結合は、自然に起こる可能性がある。すなわち、サブネットワークは、半導体成長工程の間に(またはその最後に)半導体の横方向の成長によって合体(merge)することができる。換言すれば、互いに面するトレンチの前に分離された開放端は、横方向に延びて互いに合体する。この現象の一例を図6に示す。図6の最上部の画像は、ナノワイヤの成長中に部分的に充填される30mのトレンチ602を示している。下の画像は、ナノワイヤの成長中に完全に充填される3つの別々の10mトレンチ604a、604b、604cを示す。画像は、トレンチの合体の前に撮影される。ズームイン画像は、合体前のナノワイヤの第1および第2のサブネットワークを示す。
【0055】
あるいは、第1および第2のサブネットワークは、半導体成長工程の後(ただし、もしあれば、任意の超伝導体成長工程の前)に結合されてもよい。サブネットワークは、導電体、例えば、金属リードまたは材料を使用して接続することができる。すなわち、分離されたトレンチの開放端は、導電性材料と接続される。
【0056】
しかしながら、サブネットワークは、アモルファスマスク上で結合される。つまり、半導体の横方向の延長により、半導体材料は、開放端トレンチ間のバリアとして作用するマスクの部分の上に成長する。あるいは、導電体が、その部分の上に位置し、開放端トレンチを接続する。
【0057】
SAGプロセスの性質は、構造が大きく成長すればするほど、スレッディング転位または類似のタイプの欠陥の形成に影響を受けやすくなることである。マスクを故意に破断させたセグメントに分割することにより、故意に破断した近傍に欠陥形成を引き寄せ、他の場所での意図しない欠陥形成を防止する。従ってこれは、欠陥の制御及び任意のサイズの上部構造の形成を可能にする。
【0058】
半導体成長工程では、いくつかのタイプの半導体材料を成長させて積層(ヘテロ構造)を形成することができる。任意的な第3の工程III(超伝導体成長工程)において、1つ以上の超伝導材料112の層を、ナノワイヤネットワークの少なくとも一部の上に成長させてもよい。いくつかの例では、他の材料(例えば、誘電体)を成長させることができる。図1の例では、超伝導材料の層は、粒子ビーム110を用いて成長される。ここで、超伝導材料とは、少なくとも特定の条件下で超伝導特性を示す材料を意味する。そのような材料の例はアルミニウムである。あるいは、超伝導体材料112は、ニオブ(Nb)、窒化チタン(TiN)、または任意の他のs波超伝導体(s-wave superconductor)であってもよい。以下の実施例では、超伝導体は、第III工程でエピタキシャルに成長され、超伝導体成長工程IIIは、ここではエピタキシャル成長工程と呼ぶことができる。しかし、この技術は、これに限定されるものではなく、第III工程における非エピタキシャル超伝導体の成長によって、所期の結果を達成することが可能である。
【0059】
超伝導材料112は、例えば、分子ビームエピタキシー(MBE)または電子ビーム蒸着を用いて、第III工程で成長させることができる。
【0060】
超伝導体層112の少なくとも一部は、SEナノワイヤ108の上に堆積され、それにより超伝導体層112のこの部分(図1のラベル116)が、ナノワイヤのSE 108と直接接触する。すなわち、ナノワイヤの半導体108が、少なくとも部分的に超伝導材料でカバーされるようにする。
【0061】
これはエピタキシーの一形態でもあるが、SAGではない。特に、エピタキシャル成長工程IIIでは、エピタキシャル成長は、ナノワイヤのSE108と同様に、アモルファスマスク(または誘電体層)102上で起こる。
【0062】
いくつかの例では、第III工程の間において1つ以上の層を成長させた後、半導体材料の1つ以上の層を再び成長させることができる。
【0063】
1つの可能な技術において、ビームはz方向(基板の平面に垂直な方向)に角度をつけることができ、これにより実質的に、SE材料108およびアモルファスマスク102の露出表面の全てがSU層112によってカバーされる。しかしながら、図示されている別の例では、粒子ビーム110は、z方向に対してゼロでない入射角(堆積角)で基板104に入射される。このゼロでない堆積角度およびナノワイヤのSEコア108の突出構造の結果として、ナノワイヤのSEは、超伝導体層112によって部分的にのみコーティングされる。すなわち、SEナノワイヤコア(ラベル118)の一部は、超伝導体材料によってコーティングされない。アモルファスマスク102のバルクもまた、超伝導体層112によってコーティングされるが、入射ビーム110の角度およびSEナノワイヤコア108の突出構造のため、突出SEナノワイヤ108にすぐ隣接するアモルファスマスク102の小さな領域(シャドウ領域)は、露出されたままとなり、すなわち、SU材料によってコーティングされない。1つのそのようなシャドウ領域は、図1においてラベル120で示されている。シャドウ領域120は、SE材料108を「サイドゲート」領域122内のSU層112の一部から分離する。サイドゲート領域122内のSU層112の一部を使用して、ナノワイヤを制御するためのゲートを形成することができ、または(より可能性が高い)SU材料を、この領域からエッチング除去して、より適切なゲート材料と置き換えることができる。いずれの方法においても、シャドウギャップ120は、ゲートが意図した通りに動作することを保証する。SUエピタキシー工程III(上述)におけるそのような「現場の」パターンニングを使用してギャップ120を形成することによって、材料を、デリケートなナノワイヤ108にあまり近くでエッチング除去する必要がない。
【0064】
SAG工程IIおよび超伝導体成長工程IIIは、好ましくは、基板104を工程間で移動させることなく、真空チャンバ内で行うことができる。これらの工程は、高真空または超高真空条件下で実施することができ、これらの真空条件は、工程間で維持することができる。とりわけ、これは、望ましくない不純物がない、清浄なSE/SUインターフェースを保証する。
【0065】
工程IIのSAG半導体の成長と、工程IIIの超伝導体の成長は、両方とも、これらの2つの工程それぞれの「成長ウィンドウ」において到達し、それによってそれぞれ所望の半導体および超伝導体の成長を達成するために、注意深く較正された条件を必要とする。成長条件、温度およびフラックスは、材料の種類に依存して選択される。例えば、 (半導体SAG工程IIおよび超伝導体成長工程IIIの両方に使用することができる)MBEの場合、自然酸化物の表面を洗浄するために、基板は通常約500℃以上の温度に加熱される。しかし、SE SAG成長工程IIおよびSU成長工程IIIでは、所望の成長が起こるそれぞれの温度ウィンドウは、それぞれSE材料108およびSU材料112の組成に依存する。超伝導体は、真空を破壊することなく、その場で成長/堆積され得る。このようにして、SAGの表面は空気中で酸化されず、SUが装着されるまで清浄に保たれるので、清浄なSE-SUインターフェースが確保される。
【0066】
SE/SUナノワイヤネットワークが成長させられる基板(または基板の下層)104およびマスク102は、SE/SUナノワイヤネットワークとともに、SE/SUナノワイヤネットワークが最初に作製された基板からナノワイヤを転写することなく、最終製品(例えば、量子回路または量子コンピュータ)に組み込むことができる。
【0067】
要約すると、一体で大きな構造を作る代わりに、小さな構造のアレイを作成し、それを次に工程互接続して大きな構造にする。これは、マスク開口を互いに近くに配置し、成長プロセスの間にナノ構造を合体させることによって行うことができる。これにより、構造を接続するための追加の材料を必要とせずに、大きなネットワークの製造が可能になる。これは、例えば、量子コンピューティングにおいて、ナノワイヤネットワーク全体にわたって同じ材料セットを維持することが極めて重要である構造にとって特に有益である。
【0068】
マスキング工程は、1.結晶性基板上へのアモルファスマスクフィルムの堆積すること、2.全てのトレンチの位置をリソグラフィーで画定し、それによりトレンチを互いに近接して配置して、セグメント化を実現すること、3.トレンチ内のマスク材料を除去し、基板の結晶性材料を開いてエピタキシーのために露出されること、4.成長させることを含む。成長工程は、ナノワイヤネットワークのエピタキシャル成長を含んでもよい。
【0069】
成長工程は金属源選択的領域成長(MS SAG)を利用することができる。MS SAGは3段階のプロセスである。ステップ(i)の間、インジウム(In)が高温T(i)で堆積(deposit)され、マスク開口部の内部のみにおいてInを回収し、マスク表面への蓄積を回避する。これは、結晶基板表面と比較してアモルファスマスクからのIn吸着原子の高い脱着レートのために可能である。ステップ(ii)の間、基板を臨界温度T(ii)≦Tcrit以下に冷却し、続いてInをInSbに変換し、Sbフラックスのみを供給する。Sbフラックスのみが外部的に供給されるにもかかわらず、成長は、金属リザーバとして作用する液滴の周囲の局所的なIn-richレジーム(In-rich regime)の下で進行することに注意されたい。ステップ(iii)の間に、基板温度をT(iii)に上昇させ、選択的InSb成長を同時に供給されるInおよびSbフラックスの両方で進行させることができる。
【0070】
いくつかの例において、ステップ(i)の初期選択的In堆積は、ほぼT(i)=465℃、FIn=0.16MLInSb/s、t=10minの条件下で行われる。これらの条件は選択的に有利である。ステップ(ii)の間、Sbフラックス下のみにおけるInのInSbへの変換を、ほぼT(ii)=360℃、FSb=0.22MLInSb/s、t=10minの条件下で実施する。これらの条件は核形成(nucleation)に有利である。これらの条件下では選択的にInSbの成長は好ましくないが、In原子はそこにしか存在せず、マスクへの移動の確率は低いので、InSbの成長はマスク内でのみ進行する。ステップ(iii)の間、基板温度が上昇したときのInおよびSbフラックスの同時供給を伴うInSbのSAGを、ほぼT(iii)=430℃、FIn=0.03MLInSb/s、FSb=0.38MLInSb/s、t=60minの条件下で実施する。これらの条件は選択的に有利である。ここで、Tは基板温度であり、FINおよびFSbはそれぞれ、MLInSb/s秒あたり成長させた等価な2D単層で測定したInおよびSbのフラックスであり、tは各ステップの持続時間である。
【0071】
開示される技術の実施形態は、そのような半導体および超伝導体の混合領域を使用して形成されるナノワイヤのネットワークを含む、トポロジカルに保護された量子コンピューティング回路を含む。図2には、例えば、絶縁性GaAs基板上に成長させたInAsナノワイヤからなるワイヤパターンが示されている。特に、図2は、一次元ナノワイヤネットワークに基づく複雑なネットワークの作製を示す。
【0072】
上述のように、ナノワイヤネットワークの選択的領域成長(SAG)は、Majoranaベースのトポロジカル量子ビットを生成するために使用することができ、これは、超伝導アイランドの形成を利用し、その一部はトポロジカル(T)であり、その一部は非トポロジカル(例えば、従来のs波(S))である。SAG技術は、生成されたデバイスの形状を高度に制御することができ、従って、スケーラブルなトポロジカル量子計算に使用されるコンポーネントを生成するのに有用である。例示的実施形態では、1つ以上のMajoranaゼロモードMZMは、超伝導体を超伝導温度に冷却し、磁場をデバイスに印加することによって、ナノワイヤネットワークの少なくとも1つのナノワイヤ内に誘起されてもよい。
【0073】
ここに記載される実施例は、本発明の実施形態の例示的な実施例として理解されるべきである。さらなる実施形態および実施例が想定される。任意の1つの例または実施形態に関連して記載される任意の特徴は、単独で、または他の特徴と組み合わせて使用され得る。さらに、任意の1つの例または実施形態に関連して記載される任意の特徴を、任意の他の例または実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、または任意の他の例または実施形態の任意の他の組み合わせと組み合わせて使用してもよい。さらに、本明細書に記載されていない等価物および修正物も、特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲内で使用することができる。



図1
図2A
図2B
図3
図4
図4A
図5
図5A
図6
図7A
図7B
図8