(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】熱収縮性多層フィルム及び熱収縮性ラベル
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20240805BHJP
B32B 7/028 20190101ALI20240805BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240805BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20240805BHJP
G09F 3/04 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B7/028
B32B27/30 B
B65D65/02 A
G09F3/04 C
(21)【出願番号】P 2021542045
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2020024729
(87)【国際公開番号】W WO2021039072
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2019158761
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 祐輔
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-052560(JP,A)
【文献】特開2008-307896(JP,A)
【文献】特開2009-137294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
G09F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂を含有する表裏層と、ポリスチレン系樹脂を含有する中間層とが、接着層を介して積層されてなる熱収縮性多層フィルムであって、
前記接着層は、ガラス転移温度が77℃以下であるポリエステル系樹脂を含有
し、更に、ポリエステル系エラストマーを0.3~28重量%含有する
ことを特徴とする熱収縮性多層フィルム。
【請求項2】
接着層は、ポリスチレン系樹脂を2~95重量%、
及び、ポリエステル系樹脂を4.7~96重量
%含有することを特徴とする請求項1記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項3】
接着層を構成するポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分とを含有し、前記ジカルボン酸成分100モル%中、テレフタル酸に由来する成分を60~100モル%、イソフタル酸に由来する成分を0~40モル%含有し、前記ジオール成分100モル%中、エチレングリコールに由来する成分を50~100モル%、ジエチレングリコールに由来する成分を0~25モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を0~25モル%含有することを特徴とする請求項1又は2記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項4】
接着層を構成するポリスチレン系樹脂は、芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体であることを特徴とする請求
項2記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項5】
接着層を構成するポリエステル系エラストマーは、ハードセグメントとしてのポリエステルと、ソフトセグメントとしてのポリエーテルとから構成されることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の熱収縮性多層フィルムを含む熱収縮性ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層間強度に関係なく、高いシール強度を有する熱収縮性ラベルを作製可能であり、かつ、透明性にも優れる熱収縮性多層フィルムに関する。また、該熱収縮性多層フィルムを用いてなる熱収縮性ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットボトル、金属罐等の容器の多くには、熱収縮性樹脂からなるベースフィルムに印刷等を施した熱収縮性ラベルが装着されている。
熱収縮性ラベルには、低温収縮性に優れることからポリスチレン系樹脂フィルムが多用されている。しかしながら、ポリスチレン系樹脂フィルムには、耐熱性及び耐溶剤性が不充分であるという問題がある。そこで、耐熱性及び耐溶剤性に優れたポリエステル系樹脂フィルムを用いる試みもなされているが、ポリエステル系樹脂フィルムは低温収縮性が悪く急激に収縮することから、容器に装着する際には皺が発生しやすい。また、熱収縮性ラベルには、容器をリサイクルするために使用後の容器から容易に熱収縮性ラベルを引き剥がせるようにミシン目が設けられていることが多いが、ポリエステル系樹脂フィルムはこのミシン目におけるカット性が悪い。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば、ポリエステル系樹脂を含有する表裏層と、ポリスチレン系樹脂を含有する中間層とを有する多層フィルムが検討されているが、多層フィルムにおいては、各層間の剥離を防ぐことが重要な課題である。
各層間の剥離を防止するため、表裏層と中間層との間に接着層を設けることが行われており、特許文献1には、接着層の接着性樹脂として、硬質ポリエステル系樹脂と、軟質ポリエステル系樹脂、軟質スチレン系樹脂、硬質スチレン系樹脂又はこれらの混合物とを用いた熱収縮性多層フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱収縮性多層フィルムは、片方の端部と他方の端部とを重ね合わせて筒状とし、重ね合わせた部分を
図1に示すように溶剤シールによって溶着させた熱収縮性ラベルとして用いられる。熱収縮性ラベルは、加熱炉を通過させて熱収縮させることで、PETボトル等の容器に密着して装着される。
熱収縮の際には溶剤シール部に収縮による応力が働き、層間強度が弱いと充分なシール強度が得られないため、
図2に示すように溶剤シール部での層間剥離が生じて、溶剤シール部の剥がれが収縮により広がって、外観不良の原因となるという問題があり、特許文献1に記載のフィルムでは、層間強度を向上させることはできても、溶剤シール部の剥がれを抑制する効果が不充分であるという問題があった。
【0006】
本発明は、層間強度に関係なく、高いシール強度を有する熱収縮性ラベルを作製可能であり、かつ、透明性にも優れる熱収縮性多層フィルムを提供することを目的とする。また、該熱収縮性多層フィルムを用いてなる熱収縮性ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリエステル系樹脂を含有する表裏層と、ポリスチレン系樹脂を含有する中間層とが、接着層を介して積層されてなる熱収縮性多層フィルムであって、前記接着層は、ガラス転移温度が77℃以下であるポリエステル系樹脂を含有することを特徴とする熱収縮性多層フィルムである。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、ポリエステル系樹脂を含有する表裏層と、ポリスチレン系樹脂を含有する中間層とを、特定の物性を有するポリエステル系樹脂を含有する接着層を介して積層することで、層間強度に関わらず、高いシール強度を有する熱収縮性ラベルが得られることを見出した。また、透明性が低下することがなく、外観に優れた熱収縮性ラベルが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、表裏層と中間層とを有する。
なお、本明細書中、表裏層とは、表面層と裏面層との両方を意味する。従って、本発明の熱収縮性多層フィルムは、中間層が表面層と裏面層とに挟まれた構造を有する。
【0010】
(表裏層)
上記表裏層は、ポリエステル系樹脂を含有する。
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分とを縮重合させることにより得られるものが挙げられる。
上記ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、o-フタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル等が挙げられる。
上記ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0011】
上記ジカルボン酸成分100モル%中、テレフタル酸に由来する成分の含有量の好ましい下限が50モル%、より好ましい下限が60モル%、更に好ましい下限が65モル%、好ましい上限が100モル%である。
また、上記ジカルボン酸成分100モル%中、イソフタル酸に由来する成分の含有量の好ましい下限が0モル%、好ましい上限が40モル%、より好ましい上限が35モル%、更に好ましい上限が33モル%である。
【0012】
上記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール)、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール類;2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール類等が挙げられる。
上記ジオールとしては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0013】
上記ジオール成分100モル%中、エチレングリコールに由来する成分の含有量の好ましい下限が40モル%、より好ましい下限が50モル%、更に好ましい下限が60モル%、好ましい上限が100モル%である。
上記ジオール成分100モル%中、ジエチレングリコールに由来する成分の含有量の好ましい下限が0モル%、好ましい上限が40モル%、より好ましい上限が30モル%、更に好ましい上限が25モル%である。
上記ジオール成分100モル%中、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分の含有量の好ましい下限が0モル%、好ましい上限が70モル%、より好ましい上限が60モル%、更に好ましい上限が50モル%である。
【0014】
上記ポリエステル系樹脂としては、なかでも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含有し、かつ、ジオール成分としてエチレングリコール及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含有するものが好ましい。このような芳香族ポリエステル系ランダム共重合樹脂を用いることにより、熱収縮性多層フィルムに優れた収縮性を付与することができる。
【0015】
上記表裏層を構成するポリエステル系樹脂のガラス転移温度の好ましい下限は55℃、より好ましい下限が60℃、更に好ましい下限が65℃、好ましい上限は95℃、より好ましい上限が90℃、更に好ましい上限が85℃である。
上記ガラス転移温度が55℃以上であると、熱収縮性多層フィルムの収縮開始温度が低くなりすぎたり、自然収縮率が大きくなったり、ブロッキングが発生しやすくなったりすることを防止することができる。上記ガラス転移温度が95℃以下であると、熱収縮性多層フィルムの低温収縮性及び収縮仕上り性が低下したり、経時での低温収縮性の低下が大きくなったり、延伸時に樹脂白化が発生しやすくなったりすることを防止することができる。
なお、上記ガラス転移温度は、ISO 3146に準拠した方法で測定することができる。
【0016】
上記表裏層を構成するポリエステル系樹脂の引張弾性率の好ましい下限は1000MPaを超え、好ましい上限は4000MPaである。上記引張弾性率が1000MPaを超えるものであると、熱収縮性フィルムの収縮開始温度が低くなりすぎたり、自然収縮率が大きくなったりすることを防止することができる。上記引張弾性率が4000MPa以下であると、熱収縮性多層フィルムの低温収縮性及び収縮仕上り性が低下したり、経時での低温収縮性の低下が大きくなったりすることを防止することができる。上記引張弾性率のより好ましい下限は1500MPa、より好ましい上限は3700MPaである。
なお、上記引張弾性率は、ASTM-D882(TestA)に準拠した方法で測定することができる。
【0017】
上記表裏層を構成するポリエステル系樹脂の市販品としては、例えば、「Easter」、「EmbraceLv」(イーストマンケミカル社製)、「ベルペット」(ベルポリエステルプロダクツ社製)、「ノバデュラン」(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)等が挙げられる。
【0018】
上記表裏層に含まれるポリエステル系樹脂としては、上述した組成を有するポリエステル系樹脂を単独で用いてもよく、上述した組成を有する2種以上のポリエステル系樹脂を併用してもよい。
【0019】
上記表裏層は、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0020】
(中間層)
上記中間層は、ポリスチレン系樹脂を含有する。
上記ポリスチレン系樹脂としては、例えば、芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体、芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン等が挙げられる。上記ポリスチレン系樹脂を用いることで、本発明の熱収縮性多層フィルムは低温から収縮を開始することができ、また、高収縮性を有する。
【0021】
本明細書中、芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体とは、芳香族ビニル炭化水素に由来する成分と、共役ジエンに由来する成分とを含有する共重合体をいう。
上記芳香族ビニル炭化水素は特に限定されず、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記共役ジエンは特に限定されず、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
上記芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体は、特に熱収縮性に優れることから、スチレン-ブタジエン共重合体(SBS樹脂)を含有することが好ましい。また、上記芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体は、よりフィッシュアイの少ない熱収縮性多層フィルムを作製するためには、上記共役ジエンとして2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)を用いたスチレン-イソプレン共重合体(SIS樹脂)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体(SIBS樹脂)等を含有することが好ましい。
なお、上記芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体は、SBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂のうちの何れか1つを単独で含有してもよく、複数を組み合わせて含有してもよい。また、SBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂のうちの複数を用いる場合には、各樹脂をドライブレンドしてもよく、各樹脂を特定の組成にて押出機を用いて練り上げペレタイズしたコンパウンド樹脂を用いてもよい。
【0023】
上記ポリスチレン系樹脂100重量%に占めるスチレン含有量は、好ましい下限が65重量%、より好ましい下限が70重量%、更に好ましい下限が76重量%、好ましい上限が90重量%、より好ましい上限が85重量%、更に好ましい上限が83重量%である。
上記スチレン含有量が65重量%以上であると、成形加工時にゲル等の異物が発生し難く、熱収縮性フィルムの機械的強度を充分に高めることができる。また、上記スチレン含有量が65重量%以上であると、良好なシール強度を得ることができる。
上記スチレン含有量が90重量%以下であると、熱収縮性フィルムにテンションをかけた際や印刷等の加工時の破断を防止することができる。
また、上記ポリスチレン系樹脂100重量%に占める共役ジエン含有量は、好ましい下限が10重量%、より好ましい下限が15重量%、更に好ましい下限が17重量%、好ましい上限が35重量%、より好ましい上限が30重量%、更に好ましい上限が24重量%である。
上記共役ジエン含有量が10重量%以上であると、熱収縮性フィルムにテンションをかけた際や印刷等の加工時の破断を防止することができる。
上記共役ジエン含有量が35重量%以下であると、成形加工時にゲル等の異物が発生し難く、熱収縮性フィルムの機械的強度を充分に高めることができる。また、上記共役ジエン含有量が35重量%以下であると、良好なシール強度を得ることができる。
【0024】
上記ポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度の好ましい下限は60℃、より好ましい下限は65℃、更に好ましい下限は67℃、好ましい上限は85℃、より好ましい上限は80℃、更に好ましい上限は77℃である。
上記ビカット軟化温度が60℃以上であると、熱収縮性多層フィルムの低温収縮性が高くなりすぎることがなく、容器に装着する際のシワの発生を防止することができる。上記ビカット軟化温度が85℃以下であると、熱収縮性多層フィルムの低温収縮性を良好なものとして、容器に装着するときに未収縮部分の発生を防止することができる。なお、上記ビカット軟化温度は、ISO 306:1994に準拠した方法で測定することができる。
【0025】
上記ポリスチレン系樹脂の200℃でのMFR(melt flow rate)の好ましい下限は2g/10分、好ましい上限は15g/10分である。200℃でのMFRが2g/10分未満であると、フィルムの製膜が難しくなる。200℃でのMFRが15g/10分を超えると、フィルムの機械的強度が低くなり、実用に耐えられなくなる。200℃でのMFRのより好ましい下限は4g/10分、より好ましい上限は12g/10分である。なお、MFRは、ISO 1133に準拠した方法で測定することができる。
【0026】
上記中間層を構成するポリスチレン系樹脂の市販品としては、例えば、「クリアレン」(電気化学工業社製)、「アサフレックス」(旭化成ケミカルズ社製)、「Styrolux」(BASF社製)、「PSJ-ポリスチレン」(PSジャパン社製)等が挙げられる。
【0027】
上記中間層は、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0028】
(接着層)
本発明の熱収縮性多層フィルムは、上記表裏層と上記中間層とが、ガラス転移温度が77℃以下であるポリエステル系樹脂を含有する接着層を介して積層されてなるものである。
このような接着層を用いることで、層間強度に関わらず、高いシール強度を有し、かつ、透明性にも優れた熱収縮性ラベルを作製することができる。
【0029】
上記接着層を構成するポリエステル系樹脂としては、上述した表裏層に用いられるポリエステル系樹脂と同じものを使用してもよく、別のものを使用してもよい。
【0030】
上記接着層を構成するポリエステル系樹脂は、上記ジカルボン酸成分100モル%中、テレフタル酸に由来する成分の含有量の好ましい下限が60モル%、より好ましい下限が65モル%、更に好ましい下限が67モル%、好ましい上限が100モル%である。
また、上記ジカルボン酸成分100モル%中、イソフタル酸に由来する成分の含有量の好ましい下限が0モル%、好ましい上限が40モル%、より好ましい上限が35モル%、更に好ましい上限が33モル%である。
上記ジオール成分100モル%中、エチレングリコールに由来する成分の含有量の好ましい下限が50モル%、より好ましい下限が60モル%、更に好ましい下限が63モル%、好ましい上限が100モル%である。
上記ジオール成分100モル%中、ジエチレングリコールに由来する成分の含有量の好ましい下限が0モル%、好ましい上限が30モル%、より好ましい上限が25モル%、更に好ましい上限が22モル%である。
上記ジオール成分100モル%中、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分の含有量の好ましい下限が0モル%、好ましい上限が25モル%、より好ましい上限が22モル%、更に好ましい上限が20モル%である。
【0031】
上記接着層を構成するポリエステル系樹脂のガラス転移温度は77℃以下である。
上記ガラス転移温度が77℃以下であると良好なシール強度を得ることができる。
上記ガラス転移温度は、好ましい下限が60℃、より好ましい下限が62℃、更に好ましい下限が65℃、好ましい上限が76℃、より好ましい上限が75℃、更に好ましい上限が73℃である。
また、上記接着層を構成するポリエステル系樹脂のガラス温度と上記表裏層を構成するポリエステル系樹脂のガラス転移温度との差は、10℃以下であることが好ましい。
上記ガラス転移温度の差が10℃以下であると、良好なシール強度を得ることができる。
なお、上記ガラス転移温度は、ISO 3146に準拠した方法で測定することができる。
【0032】
上記接着層における上記ポリエステル系樹脂の含有量は、好ましい下限が4.7重量%、好ましい上限が96重量%である。
上記ポリエステル系樹脂の含有量が上記範囲であると良好なシール強度を得ることができる。
上記ポリエステル系樹脂の含有量は、より好ましい下限が47.5重量%、更に好ましい下限が48重量%、更により好ましい下限が49重量%、より好ましい上限が95重量%、更に好ましい上限が94重量%、更により好ましい上限が93重量%である。
【0033】
上記接着層を構成するポリスチレン系樹脂としては、上述した中間層に用いられるポリスチレン系樹脂と同様のものを使用してもよく、別のものを使用してもよい。別のものを使用する場合には、中間層に用いられるポリスチレン系樹脂より軟質のものが好ましい。
【0034】
上記接着層を構成するポリスチレン系樹脂としては、特に接着性に優れることから、芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体を含有することが好ましく、特に、スチレン-ブタジエン共重合体(SBS樹脂)を含有することが好ましい。スチレン-ブタジエン共重合体を用いる場合には、中間層で用いられるスチレン-ブタジエン共重合体に比べて、ブタジエンの含有量が多い方が、接着性に優れるという観点から好ましい。また、より接着性に優れる熱収縮性多層フィルムを作製するためには、上記芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体の共役ジエンとして2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)を用いたスチレン-イソプレン共重合体(SIS樹脂)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体(SIBS樹脂)等を含有することが好ましい。更に芳香族ビニル炭化水素-共役ジエン共重合体に水素添加を施したスチレン-ブタジエン-ブチレン共重合体(SBBS樹脂)やスチレン-エチレン-ブチレン共重合体(SEBS樹脂)等の水添スチレン系樹脂をポリスチレン系樹脂の主成分にならない範囲で含有させても良い。水添スチレン系樹脂がポリスチレン系樹脂中の主成分となると透明性が低下しやすくなる。
なお、上記ポリスチレン系樹脂は、SBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂のうちの何れか1つを単独で含有してもよく、複数を組み合わせて含有してもよい。また、SBS樹脂、SIS樹脂、SIBS樹脂、SBBS樹脂又はSEBS樹脂のうちの複数を用いる場合には、各樹脂をドライブレンドしてもよく、各樹脂を特定の組成にて押出機を用いて練り上げペレタイズしたコンパウンド樹脂を用いてもよい。
【0035】
上記ポリスチレン系樹脂100重量%に占めるスチレン含有量は、好ましい下限が50重量%、より好ましい下限が60重量%、更に好ましい下限が73重量%、更により好ましい下限が75重量%、特に好ましい下限が76重量%、好ましい上限が98重量%、より好ましい上限が95重量%、更に好ましい上限が93重量%、更により好ましい上限が92重量%、特に好ましい上限が90重量%である。
上記スチレン含有量が50重量%以上であると、成形加工時にゲル等の異物が発生することを防止することができる。上記スチレン含有量が98重量%以下であると層間強度を充分に向上させることができる。
上記ポリスチレン系樹脂100重量%に占めるブタジエン含有量は、好ましい下限が2重量%、より好ましい下限が5重量%、更に好ましい下限が7重量%、更により好ましい下限が8重量%、特に好ましい下限が10重量%、好ましい上限が50重量%、より好ましい上限が40重量%、更に好ましい上限が27重量%、更により好ましい上限が25重量%、特に好ましい上限が24重量%である。
上記ブタジエン含有量が2重量%以上であると層間強度を充分に向上させることができる。上記ブタジエン含有量が50重量%以下であると、成形加工時のゲル等の異物が発生することを防止することができる。
【0036】
上記接着層を構成するポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度の好ましい下限は30℃、より好ましい下限は40℃、更に好ましい下限は42℃、特に好ましい下限は45℃、好ましい上限は85℃、より好ましい上限は80℃、更に好ましい上限は77℃、特に好ましい上限は75℃である。
上記ビカット軟化温度が30℃以上であると、熱収縮性多層フィルムは、容器に装着するときの加熱によって各層間での層間剥離が生じることを防止することができる。上記ビカット軟化温度が85℃以下であると、熱収縮性多層フィルムの接着強度をより向上させることができる。
なお、上記ビカット軟化温度は、ISO 306に準拠した方法で測定することができる。
【0037】
上記接着層を構成するポリスチレン系樹脂の200℃でのMFR(melt flow rate)の好ましい下限は2g/10分、好ましい上限は15g/10分である。200℃でのMFRが2g/10分未満であると、連続生産工程において押出機内で樹脂が滞留し、ゲル等の異物が発生し易くなる。200℃でのMFRが15g/10分を超えると、製膜工程において圧力が十分にかからず、厚み変動が大きくなり易くなる。200℃でのMFRのより好ましい下限は4g/10分、より好ましい上限は12g/10分である。なお、MFRは、ISO 1133に準拠した方法で測定することができる。
【0038】
上記接着層における上記ポリスチレン系樹脂の含有量は、好ましい下限が2重量%、好ましい上限が95重量%である。
上記ポリスチレン系樹脂の含有量が上記範囲であると良好なシール強度を得ることができる。
上記ポリスチレン系樹脂の含有量は、より好ましい下限が2.5重量%、更に好ましい下限が3重量%、更により好ましい下限が4重量%、より好ましい上限が47.5重量%、更に好ましい上限が47重量%、更により好ましい上限が46重量%である。
【0039】
上記接着層に用いられるポリエステル系エラストマーとは、ハードセグメントとしてのポリエステルと、ゴム弾性に富むソフトセグメントであるポリエーテル又はポリエステルとから構成されるものである。
上記ハードセグメントであるポリエステルとしては、例えば、芳香族ポリエステル等が挙げられる。
上記ソフトセグメントであるポリエステルとしては、例えば、脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
また、上記ソフトセグメントであるポリエーテルとしては、例えば、ポリアルキレンエーテルグリコール等の脂肪族ポリエーテル等が挙げられる。
なかでも、ハードセグメントとしての芳香族ポリエステルと、ソフトセグメントとしての脂肪族ポリエーテルとからなるブロック共重合体、又は、ハードセグメントとしての芳香族ポリエステルと、ソフトセグメントとしての脂肪族ポリエステルとからなるブロック共重合体が好ましく、ハードセグメントとしての芳香族ポリエステルと、ソフトセグメントとしてのポリアルキレンエーテルグリコールとからなるブロック共重合体がより好ましい。
【0040】
上記ポリエステル系エラストマーとして、芳香族ポリエステルとポリアルキレンエーテルグリコールとからなるブロック共重合体を用いる場合、ポリアルキレンエーテルグリコールからなるセグメントの割合は、好ましい下限が5重量%、好ましい上限が90重量%である。5重量%未満であると、中間層との接着性が低下し、90重量%を超えると、表裏層に対する接着性が低下する。より好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は80重量%であり、更に好ましい下限は55重量%である。
【0041】
上記ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。
【0042】
上記ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量の好ましい下限は400、好ましい上限は6000である。より好ましい下限は600、より好ましい上限は4000、更に好ましい下限は1000、更に好ましい上限は3000である。上記範囲内の数平均分子量を有するポリアルキレンエーテルグリコールを用いることにより、良好な層間強度を得ることができ好ましい。なお、本明細書において、数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたもののことをいう。
【0043】
上記ポリエステル系エラストマーを作製する方法としては特に限定されないが、例えば、(i)炭素数2~12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールと、(ii)芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸又はそれらのエステルと、(iii)数平均分子量が400~6000のポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応によりオリゴマーを得た後、更に、オリゴマーを重縮合させることにより、作製することができる。
【0044】
上記炭素数2~12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールとしては、例えば、ポリエステルの原料、特に、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として常用されているものが使用できる。具体的には例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらのなかでは、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールが好ましく、1,4-ブタンジオールがより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸としては、例えば、ポリエステルの原料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として常用されているものが使用できる。具体的には例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらのなかでは、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記ポリエステル系エラストマーのうち市販されているものとしては、例えば、商品名「プリマロイ」(三菱化学社製)、商品名「ペルプレン」(東洋紡績社製)、商品名「ハイトレル」(東レ・デュポン社製)等が挙げられる。
【0047】
上記ポリステル系エラストマーの融点は、120~200℃であることが好ましい。120℃未満であると耐熱性が低下し、熱収縮性ラベルとして容器に被覆させる際に溶剤シール部分から剥離が発生し易くなり、200℃を超えると充分な接着強度が得られない場合がある。より好ましい下限は130℃、より好ましい上限は190℃である。
なお、上記融点はISO 3146に準拠した方法で、示差走査熱量計(島津製作所社製、DSC-60)を用いて測定することができる。
【0048】
上記ポリエステル系エラストマーの融点はハードセグメントであるポリエステルと、ソフトセグメントであるポリエーテル又はポリエステルの共重合比率や構造に起因する。一般的にポリエステル系エラストマーの融点はソフトセグメントであるポリエーテル又はポリエステルの共重合量に依存しやすく、ポリエーテル又はポリエステルの共重合量が多いと融点が低く、少ないと融点が高くなる。
また、ポリエステル系エラストマーを構成するハードセグメントであるポリエステルの融点を共重合成分の変更により調整し、ポリエステル系エラストマー全体の融点を調整することができる。
また、ソフトセグメントであるポリエーテル又はポリエステルの分子量が小さくなると得られるポリエステル系エラストマーのブロック性が低下するため融点が低下しやすくなる。
【0049】
上記ポリエステル系エラストマーのデュロメーター硬さの好ましい下限は10、好ましい上限は80である。デュロメーター硬さを10以上とすることで、上記接着層の機械的強度が向上する。デュロメーター硬さを80以下とすることで、上記接着層の柔軟性及び耐衝撃性が向上する。デュロメーター硬さのより好ましい下限は15、より好ましい上限は70、更に好ましい下限は20、更に好ましい上限は60である。
なお、上記デュロメーター硬さは、ISO 18517に準拠した方法でデュロメータ タイプDを用いることにより測定することができる。
【0050】
上記ポリエステル系エラストマーの比重の好ましい下限は0.95、好ましい上限は1.20である。比重を0.95以上とすることで耐熱性を付与でき、熱収縮性ラベルとして容器に被覆させる際に溶剤シール部分からの剥離を抑制することができる。また、比重を1.20以下にすることで表裏層と中間層との接着強度を高めることができる。
上記比重のより好ましい下限は0.98、より好ましい上限は1.18である。
なお、上記比重はASTM D 792に準拠した方法で水中置換法を用いて測定することができる。
【0051】
上記接着層を構成するポリエステル系エラストマーの引張弾性率の好ましい下限は1MPa、好ましい上限は1000MPaである。上記引張弾性率が1MPa未満であると上記接着層の機械的強度が低下しやすくなる。上記引張弾性率が1000MPaを超えると、表裏層と中間層との接着強度が低下しやすくなる。上記引張弾性率のより好ましい下限は5MPa、より好ましい上限は900MPaである。なお、上記引張弾性率は、ASTM-882(TestA)に準拠した方法で測定することができる。
【0052】
上記接着層を構成するポリエステル系エラストマーのガラス転移温度の好ましい下限は-70℃、より好ましい下限は-35℃、更に好ましい下限は-30℃、好ましい上限は55℃、より好ましい上限は53℃、更に好ましい上限は50℃である。
上記ガラス転移温度が-70℃以上であると、樹脂ブロッキングが発生しにくく、ハンドリング性を良好なものとすることができる。上記ガラス転移温度が55℃以下であると、表裏層と中間層との接着強度を良好なものとすることができる。
なお、上記ポリエステル系エラストマーのガラス転移温度は、ISO 6721-4に準拠した方法で得られるtanδピークから算出することができる。
【0053】
上記ポリエステル系エラストマーは、変性物であってもよい。変性物としては、上記ポリエステル系エラストマーに、例えば、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸をグラフトして変性したポリエステル系エラストマーを例示できる。
上記α,β-エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸;コハク酸2-オクテン-1-イル無水物、コハク酸2-ドデセン-1-イル無水物、コハク酸2-オクタデセン-1-イル無水物、マレイン酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、1-ブテン-3,4-ジカルボン酸無水物、1-シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、exo-3,6-エポキシ-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、endo-ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。これらのなかでは、反応性が高いことから、酸無水物が好ましい。
【0054】
上記接着層における上記ポリエステル系エラストマーの含有量は、好ましい下限が0.3重量%、好ましい上限が80重量%である。
上記ポリエステル系エラストマーの含有量が上記範囲であると良好なシール強度が得ることができる。
上記ポリエステル系エラストマーの含有量は、より好ましい下限が0.5重量%、更に好ましい下限が0.7重量%、更により好ましい下限が0.8重量%、より好ましい上限が28重量%、更に好ましい上限が27重量%、更により好ましい上限が26重量%である。
【0055】
上記接着層は、必要に応じて酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0056】
(フィルム)
本発明の熱収縮性多層フィルム全体の厚さは、好ましい下限が10μm、好ましい上限が100μmであり、より好ましい下限が15μm、より好ましい上限が80μmであり、更に好ましい下限が20μm、更に好ましい上限が70μmである。熱収縮性多層フィルム全体の厚さが上記範囲内であると、優れた熱収縮性、印刷又はセンターシール等の優れたコンバーティング性、優れた装着性が得られる。
また、本発明の熱収縮性多層フィルムにおいて、上記表裏層の厚さは、熱収縮性多層フィルム全体の厚みに対する好ましい下限が5%、好ましい上限が25%であり、上記中間層の厚さは、熱収縮性多層フィルム全体の厚みに対する好ましい下限が50%、好ましい上限が90%である。上記表裏層及び上記中間層の厚さが上記範囲内であると、高い層間強度、高い透明性等が得られる。
【0057】
本発明の熱収縮性多層フィルムにおいて、上記接着層の厚さは、好ましい下限が0.3μm、好ましい上限が3.0μmである。上記接着層の厚さが0.3μm未満であると、上記接着層は充分な接着性が得られないことがある。上記接着層の厚さが3.0μmを超えると、熱収縮性多層フィルムの熱収縮特性、光学特性が悪化することがある。上記接着層の厚さのより好ましい下限は0.5μm、より好ましい上限は2.0μmである。
なお、上記接着層の厚さ分を差し引いて上記表裏層及び上記中間層の厚さを調整することにより、熱収縮性多層フィルム全体の厚さを調整することができる。
【0058】
また、例えば、本発明の熱収縮性多層フィルムが表面層(A)/接着層(E)/中間層(B)/接着層(E)/裏面層(C)の5層構造であり、熱収縮性多層フィルム全体の厚さが40μmである場合、上記表面層(A)及び上記裏面層(C)の厚さは、それぞれ、2.0~10.0μmであることが好ましく、3.0~8.0μmであることがより好ましい。また、上記接着層(E)の厚さは、0.3~3.0μmであることが好ましく、0.5~2.0μmであることがより好ましい。また、上記中間層(B)の厚さは、19.0~35.4μmであることが好ましく、20.0~33.0μmであることがより好ましい。
【0059】
更に本発明の熱収縮性多層フィルムは表面層(A)/接着層(E)/中間層(B)/接着層(E)/中間層(B)/接着層(E)/中間層(B)/接着層(E)/裏面層(C)のように接着層(E)/中間層(C)/接着層(E)単位を表面層(A)、裏面層(C)の間で繰返し構成しても良い。熱収縮性多層フィルム全体の厚さが40μmである場合、上記表面層(A)及び上記裏面層(C)の厚さは、それぞれ、2.0~10.0μmであることが好ましく、3.0~8.0であることがより好ましい。また、上記接着層(E)の合計した厚さは、1.0~10.0μmあることが好ましく、1.5~8.0μmであることがより好ましい。また、上記中間層(B)の合計した厚さは、18.0~34.0μmであることが好ましく、19.0~31.0μmであることがより好ましい。
【0060】
上記接着層(E)/中間層(C)/接着層(E)単位を表面層(A)、裏面層(C)の間で繰返し構成する方法としては、複数の押出機から押し出される樹脂をフィードブロックで合流させてもよく、いったん接着層(E)/中間層(C)/接着層(E)単位を合流させた後にマルチプライヤーを用いて繰返し単位を構成しても良い。
【0061】
上記接着層(E)/中間層(C)/接着層(E)単位を表面層(A)、裏面層(C)の間で繰返し構成するとラベルに衝撃が加わった際に応力が分散され剥離が抑制できる。
【0062】
本発明の熱収縮性多層フィルムにおいて、主収縮方向における収縮率は70℃10秒間において好ましくは5~50%、より好ましくは8~47%、更に好ましくは10~45%、特に好ましくは15~45%、80℃10秒間において好ましくは35~70%、より好ましくは38~69%、更に好ましくは41~68%、特に好ましくは43~67%、沸騰水10秒間において好ましくは65~85%、より好ましくは68~83%、更に好ましくは70~82%である。このような収縮率とすることにより、熱風トンネル、スチームトンネルにて優れた収縮仕上り性を付与できる。
【0063】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、主収縮方向(TD方向)と直交する方向(MD方向)の常温での層間強度の好ましい下限が0.05N/10mm、より好ましい下限が0.1N/10mm、好ましい上限が15N/10mm、より好ましい上限が10N/10mmである。
また、本発明の熱収縮性多層フィルムは、主収縮方向(TD方向)の層間強度の好ましい下限が0.05N/10mm、より好ましい下限が0.1N/10mm、好ましい上限が15N/10mm、より好ましい上限が10N/10mmである。
【0064】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、シール強度の好ましい下限が2.35N/10mm、より好ましい下限が2.4N/10mm、好ましい上限が15N/10mm、より好ましい上限が10N/10mmである。
【0065】
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法は特に限定されないが、共押出法により各層を同時に成形する方法が好ましい。上記共押出法がTダイによる共押出である場合、積層の方法は、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、又は、これらを併用した方法の何れであってもよい。
【0066】
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法としては、具体的には、例えば、上記表裏層、上記中間層及び上記接着層を構成する原料をそれぞれ押出機に投入し、多層ダイスによりシート状に押出し、引き取りロールにて冷却固化した後、1軸又は2軸に延伸する方法が挙げられる。
上記延伸の方法としては、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法又はこれらの組み合わせを用いることができる。延伸温度はフィルムを構成する樹脂の軟化温度、熱収縮性多層フィルムに要求される収縮特性等に応じて変更されるが、好ましい下限は65℃、好ましい上限は120℃、より好ましい下限は70℃、より好ましい上限は115℃である。主収縮方向の延伸倍率はフィルムを構成する樹脂、延伸手段、延伸温度等に応じて変更されるが、好ましくは3倍以上、より好ましくは4倍以上であって、好ましくは7倍以下、より好ましくは6.5倍以下である。このような延伸温度及び延伸倍率とすることにより、優れた厚み精度を達成することができ、また、ミシン目を裂いたときに層間剥離が生じて内面側の表裏層のみが容器に残ってしまうことを防止することができる。
【0067】
本発明の熱収縮性多層フィルムの用途は特に限定されないが、本発明の熱収縮性多層フィルムは、層間強度に関係なく、高いシール強度を有する熱収縮性ラベルを作製できるとともに、透明性にも優れることから、例えば、ペットボトル、金属罐等の容器に装着される熱収縮性ラベルのベースフィルムとして好適に用いられる。本発明の熱収縮性多層フィルムを用いてなる熱収縮性ラベルもまた本発明の1つである。
【発明の効果】
【0068】
本発明によれば、層間強度に関係なく、高いシール強度を有する熱収縮性ラベルを作製可能であり、かつ、透明性にも優れる熱収縮性多層フィルムを提供することができる。また、該熱収縮性多層フィルムを用いてなる熱収縮性ラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】熱収縮性ラベルの溶剤シール部を示す模式図である。
【
図2】溶剤シール部の剥離状態を示す模式図である。
【
図3】層間強度評価におけるフィルムの剥離方法を示す模式図である。
【
図4】層間強度評価におけるフィルムの剥離方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
実施例及び比較例においては、以下の原料を用いた。
【0071】
(ポリエステル系樹脂)
・PET-1:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を100モル%、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を65モル%、ジエチレングリコールに由来する成分を20モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を15モル%含有する芳香族ポリエステル共重合体(ガラス転移温度69℃)
・PET-2:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を70モル%、イソフタル酸に由来する成分を30モル%、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を100モル%含有する芳香族ポリエステル共重合体(ガラス転移温度70℃)
・PET-3:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を100モル%、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を70モル%、ジエチレングリコールに由来する成分を10モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を20モル%含有する芳香族ポリエステル共重合体(ガラス転移温度72℃)
・PET-4:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を100モル%<ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を70モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を30モル%含有する芳香族ポリエステル共重合体(ガラス転移温度82℃)
(ポリスチレン系樹脂)
・PS-1:スチレン-ブタジエンブロック共重合体(スチレン成分76重量%、ブタジエン成分24重量%、ビカット軟化温度70℃、MFR8g/10分)
・PS-2:スチレン-ブタジエンブロック共重合体(スチレン成分78重量%、ブタジエン成分22重量%、ビカット軟化温度72℃、MFR7g/10分)
(ポリエステル系エラストマー)
・TPE-1:ハードセグメントとしてのポリエステルと、ソフトセグメントとしてのポリエーテルとから構成される無変性ポリエステル-ポリエーテルブロック共重合体(東レデュポン社製、ハイトレル2521、デュロメーター硬さ55、ガラス転移温度45℃)
【0072】
(実施例1)
表裏層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂(PET-1)100重量%を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ポリスチレン系樹脂(PS-2)100重量%を用いた。
接着層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂(PET-1)75重量%とポリスチレン系樹脂(PS-1)20重量%とポリエステル系エラストマー(TPE-1)5重量%とを用いた。
これらをバレル温度が160~250℃の押出機に投入し、250℃の多層ダイスから5層構造のシート状に押出し、30℃の引き取りロールにて冷却固化した。次いで、予熱ゾーン105℃、延伸ゾーン90℃、熱固定ゾーン85℃のテンター延伸機内で延伸倍率6倍にて延伸した後、巻き取り機で巻き取ることにより、主収縮方向と直交する方向がMD、主収縮方向がTDとなる熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが40μmであり、表裏層(5.5μm)/接着層(0.9μm)/中間層(27.2μm)/接着層(0.9μm)/表裏層(5.5μm)の5層構造であった。
【0073】
(実施例2)
接着層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂(PET-2)75重量%とポリスチレン系樹脂(PS-1)20重量%とポリエステル系エラストマー(TPE-1)5重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、5層構造の熱収縮性多層フィルムを得た。
【0074】
(実施例3)
接着層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂(PET-3)75重量%とポリスチレン系樹脂(PS-1)20重量%とポリエステル系エラストマー(TPE-1)5重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、5層構造の熱収縮性多層フィルムを得た。
【0075】
(実施例4)
接着層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂(PET-1)50重量%とポリスチレン系樹脂(PS-1)45重量%とポリエステル系エラストマー(TPE-1)5重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、5層構造の熱収縮性多層フィルムを得た。
【0076】
(実施例5)
接着層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂(PET-1)90重量%とポリスチレン系樹脂(PS-1)5重量%とポリエステル系エラストマー(TPE-1)5重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、5層構造の熱収縮性多層フィルムを得た。
【0077】
(実施例6)
接着層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂(PET-1)85重量%とポリスチレン系樹脂(PS-1)10重量%とポリエステル系エラストマー(TPE-1)5重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、5層構造の熱収縮性多層フィルムを得た。
【0078】
(実施例7)
接着層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂(PET-1)79重量%とポリスチレン系樹脂(PS-1)20重量%とポリエステル系エラストマー(TPE-1)1重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、5層構造の熱収縮性多層フィルムを得た。
【0079】
(実施例8)
接着層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂(PET-1)77重量%とポリスチレン系樹脂(PS-1)20重量%とポリエステル系エラストマー(TPE-1)3重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、5層構造の熱収縮性多層フィルムを得た。
【0080】
(実施例9)
接着層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂(PET-1)55重量%とポリスチレン系樹脂(PS-1)20重量%とポリエステル系エラストマー(TPE-1)25重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、5層構造の熱収縮性多層フィルムを得た。
【0081】
(比較例1)
接着層を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂(PET-4)75重量%とポリスチレン系樹脂(PS-1)20重量%とポリエステル系エラストマー(TPE-1)5重量%とを用いた。
その他は実施例1と同様にして、5層構造の熱収縮性多層フィルムを得た。
【0082】
(評価)
実施例及び比較例で得られた熱収縮性多層フィルムについて、以下の評価を行った。熱収縮性多層フィルムの構成及び評価結果を表1に示した。
【0083】
(1)層間剥離強度
熱収縮性多層フィルムを長さ100mm×幅10mmのサイズにカットし、
図1に示すようにフィルム端部の一部分を層間剥離した後、引張速度200mm/minで、
図2に示すように180度方向に剥離させたときの強度を離着性強度試験機(HEIDON TYPE17、新東科学社製)を用いて測定した。なお、層間剥離強度については、各実施例及び比較例につき、4つの試験片を用いて、TD方向、MD方向の層間剥離強度を測定し、その平均値を算出した。
【0084】
(2)シール強度
熱収縮性多層フィルムの両端を1,3-ジオキソラン100重量部とシクロヘキサン30重量部との混合溶剤を用いて接着し、幅10mmの範囲で接着したシール部を長さ100mm×幅10mmのサイズにカットし、シール部の一部分を剥離した後、引張速度200mm/minで、180℃方向に剥離させたときの強度を離着性強度試験機(HEIDON TYPE17、新東科学社製)を用いて測定した。なお、シール強度については、各実施例及び比較例につき、4つの試験片を用いて、TD方向のシール強度を測定し、その平均値を算出し、以下の基準で評価した。
〇:シール強度が2.4N/10mm以上
×:シール強度が2.4N/10mm未満
また、層間剥離強度との関係について、以下の基準で評価した。
〇:TD方向、MD方向の何れかの層間剥離強度が0.5N/10mm以下、シール強度が2.4N/10mm以上
△:TD方向、MD方向の層間剥離強度がともに0.5N/10mmを超え、シール強度が2.4N/10mm以上
×:シール強度が2.4N/10mm未満
【0085】
(3)ヘイズ
得られた熱収縮性多層フィルムについて、NDH5000(日本電色工業社製)を用いてJIS K 7136に準拠した方法でヘイズを測定し、以下の基準で評価した。
〇:ヘイズが6%未満
×:ヘイズが6%以上
【0086】
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、層間強度に関係なく、高いシール強度を有する熱収縮性ラベルを作製可能であり、かつ、透明性にも優れる熱収縮性多層フィルムを提供することができる。また、該熱収縮性多層フィルムを用いてなる熱収縮性ラベルを提供することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 表裏層
2 中間層
3 接着層