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特許7532398釘又はピンを用いて椎間板にインプラントを内視鏡下に固定するためのセット
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  • 特許-釘又はピンを用いて椎間板にインプラントを内視鏡下に固定するためのセット 図1a)
  • 特許-釘又はピンを用いて椎間板にインプラントを内視鏡下に固定するためのセット 図1b)
  • 特許-釘又はピンを用いて椎間板にインプラントを内視鏡下に固定するためのセット 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】釘又はピンを用いて椎間板にインプラントを内視鏡下に固定するためのセット
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20240805BHJP
   A61F 2/44 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61B17/70
A61F2/44
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021556919
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2020000073
(87)【国際公開番号】W WO2020187444
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】19163831.1
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521435352
【氏名又は名称】バイオティシュー エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】エンドレ ミカエラ
(72)【発明者】
【氏名】クルーガー ジャン フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シュローダー セバスチャン
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102010052113(DE,A1)
【文献】特表2002-501784(JP,A)
【文献】特表平11-500947(JP,A)
【文献】国際公開第2010/092893(WO,A1)
【文献】特表2011-512943(JP,A)
【文献】特表2007-519475(JP,A)
【文献】特表2004-536659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
A61F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釘又はピンを用いて椎間板にインプラントを内視鏡下に固定するためのセットであって、
内視鏡を介して椎間板に挿入可能であり、インプラントを、通過させて椎間板欠陥部に挿入可能なアプリケータスリーブ(1)と、
前記アプリケータスリーブ(1)に挿入可能なサイズであるドリルワイヤガイドスリーブ(2)と、
釘又はピンを用いてインプラントを前記椎間板に固定する際に前記釘又はピンに衝撃を伝達する押し具であって、前記アプリケータスリーブ(1)に挿入可能なサイズである押し具(3)と、を備え、
釘又はピンを用いてインプラントを前記椎間板に固定する前に、椎体の骨部分に前記インプラントを通して穴を開けるためのドリルワイヤをさらに備える、セット。
【請求項2】
前記アプリケータスリーブ(1)は、傾斜した先端部(11)と、中空円筒状の主部(12)と、フランジ状の末端部(13)とを有する、請求項1に記載のセット。
【請求項3】
前記傾斜した先端部(11)は、前記アプリケータスリーブ(1)の空所(17,18)によって形成された2つの先端端部(21,22)を有しており、及び/又は、
前記アプリケータスリーブ(1)の前記先端部(11)が、前記アプリケータスリーブ(1)の長手方向の軸(X)に対して、回転非対称に傾斜している、請求項2に記載のセット。
【請求項4】
前記傾斜した先端部(11)は、前記アプリケータスリーブ(1)の長手方向の軸(X)に対して回転非対称に傾斜しており、且つ、2つの先端端部(21,22)を有しており、
前記2つの先端端部(21,22)と、それらを通って延び、前記アプリケータスリーブ(1)の前記長手方向の軸(X)への少なくとも1本の平行線とが、少なくとも1つの先端面(E1,E2)を規定しており、
前記先端面(E1)に関して、前記先端部(11)の上部傾斜(14)が、当該の先端面(E1)に対して上部先端角αで傾斜した上部面(14)を有する切断によって幾何学的に記述されており、及び/又は、
前記先端面(E1)又は別の先端面(E2)に関して、前記先端部(11)の下部傾斜(15)が、当該の先端面(E1又はE2)に対して下部先端角βで傾斜した下部面(15)を有する切断によって幾何学的に記述されている、請求項2又は3に記載のセット。
【請求項5】
前記上部先端角αに、20°≦α≦30°が適用され、及び/又は、
前記下部先端角βに、20°≦β≦30°が適用される、請求項4に記載のセット。
【請求項6】
前記2つの先端端部(21,22)は、前記アプリケータスリーブ(1)の前記長手方向の軸(X)に直交する方向に、高さhを有しており、その高さに、
0.5mm≦h≦1.5mm
が適用される、請求項3~5のいずれか一項に記載のセット。
【請求項7】
前記ドリルワイヤガイドスリーブ(2)は、中空円筒状の主部(201)と、フランジ状の末端部(202)とを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のセット。
【請求項8】
前記押し具(3)が、任意にその近位端に突出部(301)と、円筒状の主部(302)と、その遠位端に押し具ヘッド部(303)とを有し、及び/又は、
前記押し具(3)の長手方向の軸(Z)に沿った前記押し具ヘッド部(303)の長さLSKに、13mm≦LSK≦17mmが適用され、及び/又は、
前記押し具ヘッド部(303)の外径DSKに、
8mm≦DSK≦12mmが適用され、及び/又は、
前記押し具(3)の前記長手方向の軸(Z)に沿った前記突出部(301)の長さLDに、
1.9mm≦LD≦2.1mmが適用され、及び/又は、
前記突出部(301)の外径DDに、
0.9mm≦DD≦1.1mmが適用される、請求項1~7のいずれか一項に記載のセット。
【請求項9】
前記アプリケータスリーブ(1)の外径DAに、
3.9mm≦DA≦4.1mmが適用され、及び、
前記アプリケータスリーブ(1)の内径dAに、
3.3mm≦dA≦3.5mmが適用され、及び、
前記ドリルワイヤガイドスリーブ(2)の外径DBに、
2.9mm≦DB≦3.1mmが適用され、及び、
前記ドリルワイヤガイドスリーブ(2)の内径dBに、
2.3mm≦dB≦2.5mmが適用され、及び、
前記押し具(3)の外径DSに、
2.9mm≦DS≦3.1mmが適用される、請求項1~8のいずれか一項に記載のセット。
【請求項10】
前記アプリケータスリーブ(1)の長さLAに、
215mm≦LA≦290mmが適用され、及び、
前記ドリルワイヤガイドスリーブ(2)の長さLBに、
210mm≦LB≦285mmが適用され、及び、
前記押し具(3)の長さLSに、
220mm≦LS≦305mmが適用され、及び、
さらに、LB<LA<LSが適用され、及び、
指定された長さLA、LB、LSは、前記アプリケータスリーブ(1)、前記ドリルワイヤガイドスリーブ(2)、前記押し具(3)のそれぞれにフランジ状の末端部(13、202)又はヘッド部(303)がある場合において、それぞれの前記フランジ状の末端部(13、202)又は前記ヘッド部(303)を除いて、決定される、請求項1~9のいずれか一項に記載のセット。
【請求項11】
前記アプリケータスリーブ(1)の主軸(X)に沿った前記アプリケータスリーブ(1)のフランジ状の末端部(13)の長さLFAに、及び、前記アプリケータスリーブ(1)の前記フランジ状の末端部(13)の外径DFAに、2.9mm≦LFA≦3.1mmが適用され、また、9mm≦DFA≦11mmが適用され、及び/又は、
前記ドリルワイヤガイドスリーブ(2)の主軸(Y)に沿った前記ドリルワイヤガイドスリーブ(2)のフランジ状の末端部(202)の長さLFBに、及び、前記ドリルワイヤガイドスリーブ(2)の前記フランジ状の末端部(202)の外径DFBに、LFB=LFA±0.1mmが適用され、また、DFB≧DFAが適用される、請求項1~10のいずれか一項に記載のセット。
【請求項12】
前記セットの構成要素が適切な滅菌後に再利用可能である、請求項1~11のいずれか一項に記載のセット。
【請求項13】
椎間板に挿入するためのインプラントをさらに備える、請求項1~12のいずれか一項に記載のセット。
【請求項14】
前記インプラントが、多孔質、スポンジ状、緻密質、フェルト、不織布、又は、網状である、請求項13に記載のセット。
【請求項15】
前記インプラントが、以下の材料
-コラーゲン;
-ヒアルロナン(ヒアルロン酸);
-ポリグリコール酸、ポリ乳酸、及び/又は、それらの共重合体;
-ポリカプロラクトン:
-天然の膜、軟骨膜、及び/又は、筋膜、それらの改変体;
-アルギン酸塩;
-アガロース;
-フィブリン;
-アルブミン含有材料;
-多糖類;
及び、それらの組み合わせ;
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載のセット。
【請求項16】
椎間板にインプラントを固定するための、少なくとも1つの、再吸収性及び/又は放射線不透過性の釘又はピンをさらに備える、請求項1~15のいずれか一項に記載のセット。
【請求項17】
吸収性の前記釘又はピンは、適用される、1.4mm≦DN≦1.6mmの直径DNを有し、及び/又は、
再吸収性及び/又は放射線不透過性の前記釘又はピンは、適用される、10mm≦LN≦30mmの長さLNを有する、請求項16に記載のセット。
【請求項18】
前記アプリケータスリーブ(1)は、内視鏡に装着可能であり、及び/又は、
内視鏡と前記アプリケータスリーブ(1)との接続に、さらなる固定が必要でなく、及び/又は、
前記アプリケータスリーブ(1)は、個別のホルダ又は取っ手を有さない、請求項1~17のいずれか一項に記載のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釘又はピンを用いて椎間板にインプラントを内視鏡下に固定するためのセットに関する。
【背景技術】
【0002】
脊柱内において、椎間板が各椎骨の間に緩衝材として存在し、衝撃を受け止めることで緩衝機能を担っている。椎間板は、柔らかいゼラチン状の核と、必要な安定性をもたらす外側の固い線維輪とから構成されている。継続的な誤った又は過度の負担、及び加齢による組織の変性によって、椎間板の飛び出しがよく生じる。その際、ゼラチン状の核(髄核)が、外側の線維輪を、椎間板を脊柱管から保護している後縦靭帯に押し付ける。徐々に、外側の線維輪(環状線維柱)に小さな裂け目が生じる。それによって、粘性のある椎間板の核の一部が輪から飛び出し、脊柱管内に入る。この飛び出したゼラチン状の固まりが神経根を圧迫すると、激しい痛みや感覚障害、麻痺などが起こる。飛び出したゼラチン状の固まりを外科的に切除すること(腐骨切除術(Sequestrektomie))によって、神経根が減圧され、症状が緩和される。92%の症例において、この治療法は良い結果を示している。しかしながら、術後2年を過ぎると症状の悪化が見られる。組織が失われると、変性が進行し、それに伴って椎間板の高さが減少する。したがって、腐骨切除術は、症状(腐骨による痛み)に対する治療であって、原因(椎間板変性)に対する治療ではない。
【0003】
椎間板ヘルニアと診断される患者の数は非常に多く、間葉系組織欠陥部を治療するための新しい再生治療法の開発はますます重要になってきている。特に椎間板ヘルニア治療の分野では、自己治癒力を刺激してサポートする再生治療の需要が高まっている。椎間板ヘルニア後の椎間板の高さを維持することを目的とした治療法は、革新的なものも、長年にわたって実証されてきたものも、大半がそうである。その際、インプラントは、椎間板の高さを維持する、あるいは、修復組織を作るために椎間板に挿入される。ここでの主な問題の一つは、線維輪が損傷して治癒しないため、負荷がかかるとインプラントが絞り出されるしまうこと(腐骨化(Sequestrieren))である。既存の手術技術では、線維輪の接着、又は、閉鎖システムの使用によって、インプラントは、椎間板から押し出されるのを防止される。この目的のために、CE認定を受けたBarricaid(著作権)、又は、いわゆるInclose System(Anulex Technologies,Inc.、Minnetonka,MN(EUでは認定されていない))等のシステムが使用されている。しかしながら、負荷がかかるとインプラントが押し出されてしまうという問題は、これまで十分に解決されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、インプラントを椎間板に挿入し、固定することができ、対応する外科手術が恒久的に良好な結果をもたらすことができる外科手術セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、独立請求項1によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に示されている。
【0006】
本発明は、釘又はピンを用いて椎間板にインプラントを内視鏡下に固定するためのセットに関するものであり、対応する椎間板の手術中の特定のニーズに革新的に適合させたものである。本発明の背景には、特に吸収性のある釘又はピンを用いて椎間板にインプラントを固定することが可能であるという認識があった。本発明は、このように新しい外科手術のアイデアに基づいている。しかし、この新しい手術方法には、特別に用意された手術セットが必要である。
【0007】
吸収性の釘又はピンを使ってインプラントを固定することは、他の医学分野ではすでに知られている。例えば、整形外科では半月板の剥離した部分を再固定するためにピン固定が使われている。さらに、ピン固定は、膝の関節軟骨欠陥部の吸収性インプラントの固定にも使用されている。しかしながら、膝の関節軟骨の特性は椎間板の軟骨組織とはかなり異なるため、ここでは椎間板手術に直接移転することはできない。さらに、膝関節にピンを固定する既存の器具は、釘又はピンを使って椎間板にインプラントを固定する椎間板手術には適していない。
【0008】
本発明は、釘又はピンを用いて椎間板にインプラントを内視鏡下に固定するためのセットに関するものである。そのセットは、椎間板手術の際には、従来から使用している内視鏡と一緒に使用することができる。
本発明によるセットは、
-内視鏡を介して椎間板に挿入可能であり、インプラントを、通過させて椎間板欠陥部に挿入可能なアプリケータスリーブ(Applikatorhuelse)と、
-アプリケータスリーブに挿入可能なサイズであるドリルワイヤガイドスリーブ(Bohrdrahtfuehrungshuelse)と、
-釘又はピンを用いてインプラントを椎間板に固定する際に衝撃を伝達する押し具(Stoessel)であって、アプリケータスリーブに挿入可能なサイズである押し具と、を備える。
【0009】
スリーブという語句において、比較的薄い壁を有する細長い中空円筒体と解される。この中空円筒体は、中央の長手方向の軸を中心に大きく回転対称とすることができる。しかしながら、スリーブの所定部分がこの回転対称性から外れ、例えば特別な機能を果たすことを否定するものではない。これは特に、それぞれのスリーブの近位端あるいは遠位端の領域に当てはまる。アプリケータスリーブは、好ましくは1つの部品から形成されるが、複数部品から形成することも可能である。同様に、ドリルワイヤガイドスリーブは、好ましくは1つの部品から形成されるが、複数部品から形成することも可能である。
【0010】
アプリケータスリーブは、内視鏡を介して椎間板に挿入可能である。好ましくは、アプリケータスリーブは、内視鏡に取り付けることができ、及び/又は内視鏡とアプリケータスリーブとの間の接続のための更なる固定は必要なく、特にねじ接続は必要ない。好ましくは、アプリケータスリーブは別個のホルダ又は取っ手を有さず、それによって非常に簡単に製造することができる。
【0011】
好ましくは、アプリケータスリーブのサイズは、アプリケータスリーブが少なくとも大部分において内視鏡に挿入できるように選択される。好ましくは、アプリケータスリーブの一部は、内視鏡に挿入できないが、アプリケータスリーブ全体が意図せずに内視鏡に滑り込むのを防ぐためのストッパを形成する。このストッパは、ホルダ又は取っ手を意味しない。すべての実施形態において、アプリケータスリーブの遠位端、すなわちストッパ上の外端に、スリーブの斜めの研削(Anschliff)の位置を示すマーカを設けてもよい。あるいは、すべての実施形態において、マーカはストッパに設けられ得る。
【0012】
同様に、ドリルワイヤガイドスリーブに、アプリケータスリーブに完全又は部分的に挿入できるようなサイズが適用される。ここでも、好ましくは、ドリルワイヤガイドスリーブがアプリケータスリーブに完全に滑り込まないように、対応するストッパが設けられる。アプリケータスリーブへのドリルワイヤガイドスリーブの挿入を可能にするために、アプリケータスリーブの内径は、ドリルワイヤガイドスリーブの外径に適合されている。好ましくは、10分の1ミリメートルの範囲の小さな遊びが存在し、これは挿入を容易にする。しかしながら、アプリケータスリーブ及びドリルワイヤガイドスリーブの全体の長さのために、2つのスリーブの近位端の領域において、アプリケータスリーブ内のドリルワイヤガイドスリーブの位置決めの精度に、実質的に影響を与えない。ドリルワイヤガイドスリーブの内径は、ドリルワイヤが問題なく、しかも正確にドリルワイヤガイドスリーブを通過できるようなサイズである。
【0013】
本発明によるセットの押し具は、釘又はピンを用いて椎間板にインプラントを固定する際の衝撃を伝達するのに適しており、そのために意図されている。好ましくは、押し具は緻密質(kompakt)であり、中空体として形成されていない。これによって、安定性が増し、固定の際の、衝撃あるいはハンマーの衝撃が伝わりやすい。さらに、押し具はアプリケータスリーブに挿入できるようなサイズである。押し具の外径はアプリケータスリーブの内径に適合されている。好ましくは、アプリケータスリーブと押し具との間には、10分の1ミリメートルの範囲の小さな遊びが設けられている。これによって、押し具のアプリケータスリーブへの挿入が容易になる。しかしながら、押し具の位置決めの精度に影響はない。釘又はピンによって椎間板にインプラントを固定する際に衝撃を伝達する場合、自由に、すなわちアプリケータスリーブを揺らすことなく衝撃を与えなければならないため、好ましくは、押し具の長さはアプリケータスリーブよりもわずかに長く選択される。また、押し具は、好ましくは、構成部品から1つの部品として形成される。しかしながら、複数部品として形成することも可能である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、アプリケータスリーブは、傾斜した先端部と、中空円筒状の主部と、フランジ状の末端部とを有する。傾斜した先端部はアプリケータスリーブの近位端に設けられ、フランジ状の末端部はアプリケータスリーブの遠位端に設けられている。アプリケータスリーブは、機能的に3つの部分に分けられている。アプリケータスリーブは、1つ又は複数の部品によって製造することができる。アプリケータスリーブが複数の部品によって構成されている場合、これらは、好ましくは、溶接又は接着されている。フランジ状の末端部も中空であり、中空の円筒状の主部と、特に内側において継ぎ目なしに結合している。すべての実施形態において、アプリケータスリーブの遠位端、すなわちストッパ上の外端に、スリーブの斜めの研削の位置を示すマーカを設けてもよい。あるいは、すべての実施形態において、マーカをストッパに設けてもよい。
【0015】
しかしながら、フランジ状の末端部の外径は、中空円筒状の主部の外径よりも大きい。それによって、アプリケータスリーブが内視鏡の中に滑り込むのを防ぐことができる。傾斜した先端部は、好ましくは、アプリケータスリーブ又は中空円筒状の主部の近位端にある1つ又は複数の空所によって形成される。したがって、アプリケータスリーブの外径が傾斜した先端部の領域において小さくなることは好ましくない。外径を維持することによって、機器セットの他の構成要素を、又はアプリケータスリーブを通過する必要のある他の部品を、実際に問題なくアプリケータスリーブに収容することができる。その際、先端部が傾斜していることによって、釘又はピン、インプラント、及び、場合によっては、使用したドリルワイヤを内視鏡によって確認することができ、それによって、釘又はピンが実際にインプラントを固定していることを確認できる、という利点がある。本発明の一実施形態によれば、傾斜した先端部は、アプリケータスリーブの空所によって形成された少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の先端端部を有する。さらに、又は代替的に、アプリケータスリーブの先端部は、アプリケータスリーブの長手方向の軸に対して回転非対称に傾斜している。先端端部は、隣接する椎体への接触によって、手術中にアプリケータスリーブを椎間板のスペースに正確に配置するために、使用される。
【0016】
先端端部は、好ましくは、握っても怪我をしないように鈍く形成されている。先端端部は、アプリケータを当接位置において安定させる役割を果たしている。例えば、先端端部は、鈍い歯の形状に形成され得る。先端端部は、狭い、特に丸みを帯びた接触面又は接触線を有することができる。アプリケータスリーブの先端部の回転非対称な傾斜は、挿入された内視鏡と機器セットとの相互作用を容易にしている。回転非対称の傾斜は、アプリケータスリーブの長手方向の軸が通る平面内において、先端端部が少なくとも対称的に存在しない、という結果を生む。最も単純なケースにおいては、傾斜した先端部の2つの先端端部の場合、2つの空所はそれぞれ、平面を有する切断(Schnitt)によって幾何学的に記述される。アプリケータスリーブの中空円筒状の主部が回転対称である場合、この切断の際に、中空円筒状の主部の壁内に、対応する楕円をもたらし、それによって、一般に、傾斜した先端部が形成される。
【0017】
本発明の好ましい実施形態は、以下の特徴を有する。すなわち、
傾斜した先端部は、アプリケータスリーブの長手方向の軸に対して回転非対称に傾斜しており、且つ、2つの先端端部を有しており、
2つの先端端部と、それらを通って延び、アプリケータスリーブの長手方向の軸への少なくとも1本の平行線とが、少なくとも1つの先端面を規定しており、
先端面に関して、先端部の上部傾斜が、先端面に対して上部先端角αで傾斜した上部面を有する切断によって幾何学的に記述され、及び/又は
同一又は別の先端面に関して、先端部の下部傾斜が、先端面に対して下部先端角βで傾斜した下部面を有する切断によって幾何学的に記述される。
このように形成されたアプリケータスリーブの製造は、簡単な方法で行うことができる。さらに、有利な回転非対称性が達成され、本発明によるセットの取り扱いにおいても、それに応じた利点が得られる。
【0018】
1つの先端面を規定するか、2つの先端面を規定するかは、基本的に2つの先端端部の幾何学的形状に依存する。例えば、2つの先端端部が鈍く、ある高さhを有している場合、高さhを有する2つの先端端部の上部端と下部端とにそれぞれ先端面を規定することができる。この場合、アプリケータスリーブの角度αとβの切断によって空所を作ることができる2つの先端面であり、その先端部は、それに応じて上部傾斜及び下部傾斜とを有する。しかしながら、2つの先端端部が実際に尖っている場合、先端面は1つしかなく、この先端面は2つの先端端部の先端部を直接通ることになる。この場合、2つの角度α及びβは直接接している。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、上部先端角に、20°≦α≦30°、好ましくはα=25°が適用される。さらに、又は代替的に、下部先端角に、20°≦β≦30°、好ましくはβ=25°が適用される。
【0020】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、2つの先端端部は、アプリケータスリーブの長手方向の軸に直交する方向に高さhを有しており、その高さhに、0.5mm≦h≦1.5mm、好ましくはh=1.0mmが適用される。この場合、2つの先端端部は鈍く形成され、特に椎間板に接触した際に狭く丸みを帯びた接触面又は接触弧を形成することができる。
【0021】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、傾斜した先端部は、空所によってアプリケータスリーブ内に形成された複数の、好ましくは3~5個の先端端部を有する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、ドリルワイヤガイドスリーブは、中空円筒状の主部と、フランジ状の末端部とを有する。このフランジ状の末端部によって、ドリルワイヤガイドスリーブがアプリケータスリーブに挿入された場合に、ストッパが形成される。フランジ状の末端部も中空であり、好ましくはドリルワイヤガイドスリーブの中空円筒状の主部の空洞と内側において継ぎ目なしに結合している。ドリルワイヤガイドスリーブは、好ましくは、先端端部を含めてアプリケータスリーブと同じ長さであるか、又はアプリケータスリーブより短い。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、押し具は、その近位端に突出部と、円筒状の主部と、その遠位端に押し具ヘッド部とを有する。その際、好ましくは、突出部(Dorn)、円筒状の主部、及び押し具ヘッド部は、緻密質であり、したがって実質的に中空ではない。突出部の外径は、円筒状の主部の外径よりもかなり小さく、円筒状の主部の外径は、押し具ヘッド部の外径よりも同様に小さい。その際、突出部は、刻み目を有する釘又はピンの接触点とされる。突出部が釘又はピンの刻み目に正確にフィットすることで、釘又はピンを使って椎間板にインプラントを固定する際に、衝撃時にかかる力又は圧力が、釘又はピンのヘッド部に最適に伝導されるため、衝撃を最適に伝達することができる。
突出部、円筒主部、押し具ヘッド部の3つの機能を有する押し具は、1つ又は複数の構成要素によって製造することができる。好ましくは、突出部と主部が一体化して製造され、押し具ヘッド部は後に別個に固定される。押し具の個々の部品が別々に製造される場合は、個々の部品は、好ましくは、溶接又は接着される。
【0024】
本発明の別の実施形態によれば、押し具は、上記のように、円筒状主部とその遠位端にある押し具ヘッド部から形成されているが、この実施形態では、押し具はその近位端に突出部を有していない。この実施形態に関連して、ヘッド端部に刻み目を有さない釘又はピンを使用することが好ましく、それによって、突出部を有さない押し具は、インプラントの固定中に衝撃のよりよい伝達性を有する。
【0025】
押し具あるいはその部品のサイズに、好ましくは、以下のサイズが適用される。
-押し具の長手方向の軸に沿った押し具ヘッド部の長さLSKに、13mm≦LSK≦17mm、好ましくはLSK=15mm、が適用され、及び/又は
-押し具ヘッド部の外径DSKに、8mm≦DSK≦12mm、好ましくはDSK=10mm、が適用され、及び/又は
-押し具の長手方向の軸に沿った突出部の長さLDに、1.9mm≦LD≦2.1mm、好ましくはLD=2.0mm、が適用され、及び/又は
-突出部の外径DDに、0.9mm≦DD≦1.1mm、好ましくはDD=1.0mmが適用される。
押し具ヘッド部の外径DSKは、最もシンプルで正確な衝撃又はハンマー衝撃の的中を可能にする。円筒状主部は、そのサイズがアプリケータスリーブ又はその内径に適合している。押し具の突出部は、そのサイズが、ヘッド部に刻み目を有する使用可能な釘又はピンのサイズに適合しているか、又は、釘又はピンが刻み目を有していない実施形態では、好ましくは存在しない。
【0026】
さらなる好ましい実施形態によれば、セットの器具の外径と内径は以下のように互いに調整されている。
-アプリケータスリーブの外径DAに、3.9mm≦DA≦4.1mm、好ましくは大きなDA=4.0mmが適用され;及び
-アプリケータスリーブの内径dAに,3.3mm≦dA≦3.5mm,好ましくはdA=3.4mmが適用され;及び
-ドリルワイヤガイドスリーブの外径DBに、2.9mm≦DB≦3.1mm、好ましくはDB=3.0mmが適用され;及び
-ドリルワイヤガイドスリーブの内径dBは、2.3mm≦dB≦2.5mm、好ましくはdB=2.4mmが適用され;及び
-押し具の外径DSに、2.9mm≦DS≦3.1mm、好ましくはDS=3.0mmが適用される。
【0027】
釘又はピンによる椎間板へのインプラントの内視鏡下の固定を成功させるためには、アプリケータスリーブ、ドリルワイヤガイドスリーブ、及び押し具の長さも互いに調整されていることが望ましい。
その際、好ましくは、以下の関係が適用される。
-アプリケータスリーブの長さLAに、250mm≦LA≦290mm,好ましくはLA=270mmが適用され;及び
-ドリルワイヤガイドスリーブの長さLBに、245mm≦LB≦285mm、好ましくはLB=265mmが適用され;及び
-押し具の長さLSに、265mm≦LS≦305mm、好ましくはLS=285mmが適用され;及び
-さらに、本実施形態によれば、LB<LA<LSが適用される。その際、指定された長さLA、LB、LSは、それぞれの部品にフランジ状の末端部又はヘッド部がある場合において、それぞれのフランジ状の末端部又はヘッド部を除いて、決定される。
【0028】
別の好ましい実施形態によれば、以下の関係が適用される。
-アプリケータスリーブの長さLAに、215mm≦LA≦290mm、好ましくはLA=230~250mm、特に好ましくは235~245mm、最も好ましくは240mmが適用され;及び
-ドリルワイヤガイドスリーブの長さLBに、210mm≦LB≦285mm、好ましくはLB=230~240mm、最も好ましくは235mmが適用され;及び
-押し具の長さLSに、220mm≦LS≦305mm、好ましくはLS=250mm~260mm、より好ましくは255mmが適用され;及び
-さらに、この実施形態では、LB<LA<LSが適用される。その際、指定された長さLA、LB、LSは、それぞれの部品にフランジ状の末端部又はヘッド部が有る場合において、それぞれのフランジ状の末端部又はヘッド部を除いて、決定される。
【0029】
特に好ましい実施形態では、以下の関係が適用される。
-アプリケータスリーブの長さLAに、215mm≦LA≦290mm、好ましくはLA=230~250mm、特に好ましくは235~245、最も好ましくは240mmが適用され;及び
-ドリルワイヤガイドスリーブの長さLBに、210mm≦LB≦285mm、好ましくはLB=230~240mm、特に好ましくは235mmが適用され;及び
-押し具の長さLSに、220mm≦LS≦305mm、好ましくはLS=250mm~260mm、特に好ましくは255mmが適用され;及び
-さらに、本実施形態によれば、LB<LA<LSが適用される。その際、指定された長さLA、LB、LSは、それぞれの部品にフランジ状の末端部又はヘッド部が有る場合において、それぞれのフランジ状の末端部又はヘッド部を除いて、決定される。さらに、本実施形態では、円筒状の主部とその遠位端の押し具ヘッド部から形成される押し具は、その近位端に突出部を有していない。なお、この実施形態では、ヘッド端部に刻み目のない釘又はピンを使用することが好ましいため、突出部のない押し具の方が、インプラントの固定時の衝撃をよりよく伝達することができる。
【0030】
アプリケータスリーブに比べてドリルワイヤガイドスリーブがわずかに短くなっていることで、すべての実施形態において、椎間板又は椎体の中に穴を事前に開ける際に、ドリルワイヤガイドスリーブを介して挿入されたドリルワイヤが十分な自由空間を有することができる。また、内視鏡の視野が狭められることが最小限に抑えられる。押し具はアプリケータスリーブよりも長く、それによって、釘又はピンが椎間板内に固定される際に、妨害なく、あるいは、実質的にアプリケータスリーブに伝導することなく、衝撃を実行することができる。押し具は、アプリケータスリーブより、約2mm~50mm、好ましくは5mm~40mm、最も好ましくは10mm~20mm、最も好ましくは約15mm長い。
【0031】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、以下の関係は、アプリケータスリーブの主軸に沿ったアプリケータスリーブのフランジ状の末端部の長さLFAと、アプリケータスリーブのフランジ状の末端部の外径DFAに適用される。2.9mm≦LFA≦3.1mm、好ましくはLFA=3mmが適用され;また、9mm≦DFA≦11mm、特にDFA=10mmが適用される。
さらに、又は代替的に、以下の関係は、ドリルワイヤガイドスリーブの主軸に沿ったドリルワイヤガイドスリーブのフランジ状の末端部の長さLFBと、ドリルワイヤガイドスリーブのフランジ状の末端部の外径DFBに適用される。LFB=LFA 01mm、好ましくはLFB=3mmが適用され;またDFB≧DFA、好ましくはDFB=12mmが適用される。
【0032】
ドリルワイヤガイドスリーブのフランジ状の末端部の外径DFBがアプリケータスリーブの外径DFAよりもわずかに大きい場合、アプリケータスリーブの末端部に比べてフランジ状の末端部の領域がわずかに大きくなるため、ドリルワイヤガイドスリーブがアプリケータスリーブのストッパ内に挿入された後、あるいは完全にストッパまで挿入された後において、ドリルワイヤガイドスリーブをアプリケータスリーブからより容易に取り外すことができる。
【0033】
さらなる好ましい実施形態によれば、セットの構成要素は、適切な滅菌後に再利用可能である。好ましくは、アプリケータスリーブ、ドリルワイヤガイドスリーブ、及び押し具はそれぞれ、以下に列挙する材料の少なくとも1つからなる。
好ましくはステンレス鋼、特に外科用鋼、例えば以下のような鋼組成物。
WNr(材料番号).1.4016(X6Cr17)、AISI430;
WNr.1.4021(X20Cr13)、AISI420;
WNr.1.4301(X5CrNi18-10)、AISI304、(V2A)、SUS304;
WNr.1.4404(X2CrNiMo17-12-2)、AISI316L、(V4A、A4L);
WNr.1.4452(X13CrMnMoN18-14-3)、P2000;
特に、1.4021、1.4104、1.4301、1.4303、1.4305、1.4306、1.4307、1.4310、1.4401、1.4404、1.4435、1.4456、1.4541、1.4571、1.4028、1.4031、1.4034、1.4035、1.4037、1.4197、1.4057、1.4104、1.4112、1.4122、1.4123、1.4125、9.9440、1.4108、1.4542、1.4568、及び、1.4543。
【0034】
さらに、チタン及びチタン原材料、それに対応する硬さの滅菌可能なプラスチックも使用できる。特に、多種多様な成分を混合することで、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)のような現代の高機能ポリマー、又は、硬さ及び弾性などの対応する特性を有するセラミック射出成形部品(PIM/CIMプロセス)は、製品の適正な形成によって、鋼に匹敵する安定性を得ることができ、その結果、使用に適したものとなる。また、高機能ポリマーは、化学薬品、熱、及び紫外線等の処理の際に、金属と同じような挙動を示す。そのため、このカテゴリー及び品質の樹脂は同様に適している。さらに、本発明によるセットの構成要素は、3Dプリントによって製造することができる。そのため、3Dプリントにおいて知られ、且つ使用される、対応する特性を有するすべての材料を使用することもできる。好ましくは、外科用鋼が使用される。
【0035】
本発明のさらなる実施形態によれば、セットはさらに以下を含む。ドリルワイヤ、特にキルシュナーワイヤ(K-ワイヤ)は、椎体の骨部にインプラントを通して事前に穴を開けるためのものである。好ましくは、このようなドリルワイヤ又はKワイヤは、外科用鋼から形成されている。外科用鋼には、強度の異なるタイプがある。その際、前端部は、通常、ネジ付き又はネジなしの尖端部を有する。後端部には、ドリルを固定するための固定具を有してもよい。
【0036】
ドリルワイヤの長さは、好ましくは、少なくとも35mmである。有利には、ドリルワイヤを使用する場合、ドリル内に固定するために、後端部において、約10mm~40mm、好ましくは約35mmを使用する。そのため、前端部では、尖端部がアプリケータスリーブから約1mm~25mm、好ましくは約20mm突出している。
【0037】
本発明のさらなる実施形態によれば、セットは、椎間板に挿入するためのインプラントをさらに備える。
【0038】
本発明の文脈においては、インプラントとは、人間又は動物の体内に埋め込むことができ、永久的に、又は少なくともより長い期間そこに留まることが意図されている天然又は人工の材料であると解される。好ましくは、インプラントは吸収性の材料から構成されている。好ましくは、用語「インプラント」は、生物学的又は人工的な基質、生物学的又は人工的な組織又は組織部分、又はそれらの組み合わせ;例えば、同種の、自家移植の、異種の又は人工的な組織、天然の細胞外マトリックス又は細胞性マトリックス、又はそれらの組み合わせを含む。インプラントは、必要に応じて細胞又は細胞成分を含んでいてもよい。好ましくは、繊維のインプラントが使用される。このインプラントは、例えば、多孔質、スポンジ状、緻密質、フェルト、不織布、網状であり得る。このインプラントは、特に椎間板内に椎間板ヘルニア後の椎間板の高さを維持するのに適している。さらなる利点は、細胞が、欠陥部の再生のために移動して定着できることにある。典型的には、インプラントは、内視鏡ポータル及び/又はアプリケータスリーブを介して、例えば、把持鉗子を用いて、椎間板欠陥部に挿入される。インプラントは、体積ができるだけ少ない状態、又は直径が非常に小さい状態において、内視鏡のポータル及び/又は塗布のスリーブを通過する。
【0039】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、インプラントは、以下の材料の少なくとも1つを含む。コラーゲン;ヒアルロナン(ヒアルロン酸);ポリグリコール酸;ポリ乳酸、及び/又はそれらの各共重合体;ポリカプロラクトン;天然の膜、特に骨膜、軟骨膜、及び/又は筋膜、ならびにそれらの改変体;アルギン酸塩;アガロース;フィブリン;アルブミン含有材料;多糖類;及び/又はそれらの組み合わせである。
【0040】
本発明のさらなる実施形態によれば、セットは、椎間板にインプラントを固定するための、少なくとも1つの釘又はピンをさらに備える。好ましくは、釘又はピンは、1つ以上の吸収性材料からなり、特に吸収性の釘又はピンは、例えばポリ乳酸(PLA)から成るポリマーのように、1つ以上の生分解性材料からなる。代替的には、釘又はピンは、放射線不透過性であり得、又は、再吸収性で且つ放射線不透過性であり得る。例えば、再吸収性で且つ放射線不透過性の釘又はピンは、その一部又は全部において、ハイドロキシアパタイトから構成され得る。
【0041】
セットに含まれ、好ましくは吸収性及び/又は放射線不透過性である釘又はピンは、椎間板にインプラントを固定する用途に特に適するような幾何学的なサイズを有する。好ましくは、釘又はピンは、適用される以下の直径DNを有している。1.4mm≦DN≦1.6mm、好ましくは直径DN=1.5mm。さらに、又は代替的に、釘又はピンの長さLNは、以下の関係を有する。10mm≦LN≦30mm。最も好ましくは、上記のサイズを有する吸収性の釘又はピンが使用される。
【0042】
上記の本発明の実施形態は、技術的な矛盾が生じない限り、全部又は一部を組み合わせてもよい。
【0043】
本発明は、添付の図を参照することでさらによく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明によるセットのアプリケータスリーブを示す。
図2】本発明によるセットのドリルワイヤガイドスリーブを示す。
図3】本発明によるセットの押し具を示す。
図4】本発明によるセットのアプリケータスリーブ、ドリルワイヤガイドスリーブ、押し具の典型的なサイズの表を示す。
図5】アプリケータスリーブ、ドリルワイヤガイドスリーブ、押し具を備えた本発明によるセットの公差を含む例示的なサイズの表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、釘又はピンを用いて椎間板にインプラントを内視鏡下に固定するための、本発明によるセットのアプリケータスリーブ1を例示的に示している。その際、図1a)は、長手方向の軸Xを通る、アプリケータスリーブ1の側方断面図を示す。図1b)は、さらに、長手方向の軸Xを介して90°回転させた断面図を、平面図において示す。アプリケータスリーブ1は、中空円筒状の主部12を有しており、その際、傾斜した先端部11がアプリケータスリーブ1の近位端に配置されている。中空円筒状の主部12の遠位端には、フランジ状の末端部13が存在する。傾斜した先端部11は、中空円筒状の主部12の円筒状外殻内の空所18及び19によって生成される。その幾何学的な関係は、図1a)に詳しく示される。傾斜した先端部11は、2つの先端端部21及び22を有している。図1a)においては、これらの2つの先端端部は、一方が他方の後方において同一の位置にあるため、図1a)の描写においては、先端端部22のみが見える。2つの先端端部21、22は、それぞれ、アプリケータスリーブ1の円筒状外殻の端部によって形成された高さhの歯状部(Zahn)を有している。傾斜した先端部11は、アプリケータスリーブ1の長手方向の軸Xに関して、回転非対称に傾斜している。そのため、図1a)に示す例では、2つの歯状部21,22は、アプリケータスリーブ1の長手方向の軸Xの下方に位置している。2つの先端端部21,22と、それらを通るアプリケータスリーブ1の長手方向の軸Xに対する平行線とが、先端面E1,E2を規定している。先端面E1及びE2は、先端端部21、22の上端部と、先端端部21、22の下端部とによってそれぞれ思考上において規定される。先端面E1に関連して、先端部11の上部傾斜14は、この先端面E1に対して上部先端角αで傾斜した上部面14を有する切断によって幾何学的に記述される。さらに、先端面E2に関連して、下部傾斜15は、先端面E2に対して下部先端角βで傾斜した下部面15を有する切断によって幾何学的に記述される。実行された切断の結果は、空所18及び19であり、それら空所は、図1b)において最もよく認識できる。
【0046】
また、図1にはアプリケータスリーブ1の内径及び外径が示される。アプリケータスリーブ1の有効長さLAは、長手軸方向に先端端部からフランジ状末端部13の始端側まで測定される。フランジ状の末端部は、適合して、大きな外径DFAと追加の長さLFAを有している。フランジ状の末端部13における内径は、中空円筒状の主部12の内部と同じである。
【0047】
図2は、釘又はピンを用いて椎間板にインプラントを内視鏡下に固定するための本発明によるセットのドリルワイヤガイドスリーブ2を示す。ドリルワイヤガイドスリーブ2は、中空円筒状の主部201と、フランジ状の末端部202とを含む。ドリルワイヤガイドスリーブ2は、内径dBと外径DBとを有している。ドリルワイヤガイドスリーブ2の有効長LBは、好ましくは、図1のアプリケータスリーブ1の有効長さLAよりも幾らか短い。図2から、ドリルワイヤガイドスリーブ2は、その近位端に開口部203を有しており、その遠位端には、ドリルワイヤガイドスリーブ2のフランジ状の末端部202に設けられた開口部204を有している。その際、ドリルワイヤガイドスリーブ2の外径DFBは、本実施例においては、アプリケータスリーブ1のフランジ状の末端部13の外径DFAよりもわずかに大きい。これによって、ドリルワイヤガイドスリーブ2とアプリケータスリーブ1が互いに接触した後に、容易に分離することができる。
【0048】
図3は、椎間板にインプラントを内視鏡下に固定するためのセットの押し具を示す。図の押し具3は一体に形成されており、2つ又は3つの異なる機能領域を有する。近位端における任意の突出部301と、円筒状の主部302と、また、遠位端における押し具ヘッド部303とが設けられている。突出部は、実施形態に応じて存在してもしなくてもよい。図示された例では、押し具が完全に緻密質に形成されており、それは、固定のための衝撃又はハンマーの衝撃を与える際に、力又は圧力をよりよく伝達することを可能にする。押し具3又はその円筒状の主部302の外径DSは、アプリケータスリーブ1の内径dAに適合している。これに比べて、突出部の外径DDは著しく小さく、また、押し具3の長手方向又は軸方向Zに沿った突出部の長さLDは極めて短く、わずか数ミリに過ぎない。一方、押し具ヘッド部303は、大きな外径DSKを有し、いくらか多いミリの範囲の長さLSKを有している。そのため、押し具ヘッド部303は、打たれても十分に安定しているように、且つ、槌打器のための、衝撃の対象として十分に大きい、長手方向の軸Zに垂直な表面を提供するために、十分に大きく安定して形成されている。
【0049】
手術中に釘又はピンを用いて椎間板にインプラントを内視鏡下に固定するための本発明によるセットの使用は、例えば以下のように実施することができる。まず、アプリケータスリーブ1を内視鏡孔を介して椎間板に挿入する。次に、インプラントは、例えば、把持鉗子を用いて、アプリケータスリーブ1を通過して椎間板欠陥部に挿入される。把持鉗子を外した後、ドリルワイヤガイドスリーブ2をアプリケータスリーブ1に挿入する。ドリルワイヤ、特にKワイヤを使って、インプラントを介して、隣接する椎体の骨部分に穴を開ける。その後、ドリルワイヤが引き抜かれ、ドリルワイヤガイドスリーブ2もアプリケータスリーブ1から引き抜かれる。その際、ドリル穴への角度は変えてはならない。次のステップでは、吸収性の釘又はピンが、アプリケータスリーブ1に挿入され、スリーブ1を介して事前に開けられた穴までスライドする。挿入された押し具3によって、短いハンマーの衝撃によって釘を椎体にあらかじめ開けられた穴に打ち込むことができる。それによって、釘のヘッドがインプラントを椎間板に固定する。
【0050】
アプリケータスリーブ1、ドリルワイヤガイドスリーブ、及び押し具3の長さ関係は調整されており、それらの内径又は外径についても同様である。図1図2図3に示したセットの各部品は、図のような方法によって互いに組み合わせることができる。
【0051】
図4は、アプリケータスリーブ1、ドリルワイヤガイドスリーブ2、及び押し具3の長さ関係と調整された内径又は外径を対応させてまとめたものである。ドリルワイヤガイドスリーブ2は、アプリケータスリーブ1よりもわずかに短い(LBがLAよりもわずかに短い)。一方、押し具3は、適応してより長い(LS>LA)。ドリルワイヤガイドスリーブ2及び押し具3は、アプリケータスリーブ1に相前後して挿入することができる。従って、ドリルワイヤガイドスリーブの外径DBと押し具3の外径DSは、図示の例では同じで、それぞれ3.0mmである。アプリケータスリーブ1及びドリルワイヤガイドスリーブ2の壁の厚さは、それぞれ10分の数ミリしかない。これに対して、押し具3は緻密に形成されている。
【0052】
図5は、さらなる例示的な実施形態において、アプリケータスリーブ1、ドリルワイヤガイドスリーブ2、及び押し具3のサイズ及び公差を示している。表示されている公差は、本発明によるセットの機能を損なわない、許容可能な製造公差である。最も精度が求められるのは、アプリケータスリーブ1の内径dA及びドリルワイヤガイドスリーブ2の内径dBである。ここでは、10分の1ミリの精度で生産することが求められる。ドリルワイヤガイドスリーブ2の外径DBの許容範囲は若干大きく、+0.04mmとなっている。押し具3の外径DSについても同様である。このようにして初めて、ドリルワイヤガイドスリーブ2あるいは押し具3を、傾き又は摩擦の影響を受けずにアプリケータスリーブ1に押し通すこと、あるいは挿入することが保証される。
本発明によって、釘又はピンを使って椎間板にインプラントを内視鏡下に固定するセットを初めて提供することができる。これによって、椎間板手術の際に椎間板の高さを長期的に維持することが大幅に改善されることが、期待されている。
図1a)】
図1b)】
図2
図3
図4
図5