(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】深さ表示を有するエウスタキオ管拡開カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20240805BHJP
A61F 11/00 20220101ALI20240805BHJP
A61M 25/095 20060101ALI20240805BHJP
A61M 25/09 20060101ALI20240805BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61M25/10
A61F11/00 350
A61M25/095
A61M25/09
A61M25/00 650
(21)【出願番号】P 2021557828
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(86)【国際出願番号】 IB2020052647
(87)【国際公開番号】W WO2020201887
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-25
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516389190
【氏名又は名称】アクラレント インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Acclarent, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アクバリアン・ファテメ
(72)【発明者】
【氏名】パルシ・ジェットミア
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-531737(JP,A)
【文献】特表2018-525144(JP,A)
【文献】特表2018-510018(JP,A)
【文献】特表2018-510025(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0028785(US,A1)
【文献】特表2009-500051(JP,A)
【文献】特開平10-314312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61F 11/00
A61M 25/095
A61M 25/09
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用システムであって、
(a)その遠位本体端部まで延在するガイドワイヤ本体を含むガイドワイヤと、
(b)前記遠位本体端部に固定され、収縮状態から拡張状態に拡張するように構成された拡張器であって、前記収縮状態においては耳管の峡部を通り抜けるように構成され、前記拡張状態においては前記耳管を拡張するように構成された、拡張器と、
(c)前記ガイドワイヤに対して固定された基準部と、
(d)前記ガイドワイヤ上に前記基準部から第1の所定距離をおいて配置され、解剖学的通路内の前記基準部の深さを確認するために前記第1の所定距離を操作者に示すように構成された第1のマーカーと、
(e)前記ガイドワイヤ本体を通って前記ガイドワイヤ本体の長手方向軸に沿って延在し、遠位端部と近位端部を有する、内部膨張ルーメンであって、前記近位端部は膨張媒体源と流体連通しており、前記遠位端部は前記ガイドワイヤ本体の側壁を通って延びる開口部を介して前記拡張器の内部と流体連通しており、前記膨張ルーメンは、前記開口部の遠位に位置し、前記拡張器の遠位端の近位に位置する遠位壁で終端
となっている、内部膨張ルーメンと、
(f)前記ガイドワイヤに対して固定されるナビゲーションセンサと、
(g)前記ナビゲーションセンサに結合されており、前記遠位壁を貫通し、前記内部膨張ルーメンを通って延びているセンサワイヤと、を含む、外科用システム。
【請求項2】
前記基準部が、前記拡張器の一部である、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項3】
前記拡張器の前記一部が、前記拡張器の近位端である、請求項2に記載の外科用システム。
【請求項4】
前記第1のマーカーが、前記ガイドワイヤの前記ガイドワイヤ本体上に配置されている、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項5】
前記ガイドワイヤ本体が外面を有し、前記第1のマーカーが前記外面に配置されている、請求項4に記載の外科用システム。
【請求項6】
前記第1のマーカーが、前記外面上の第1のエッチングされたマーカーである、請求項5に記載の外科用システム。
【請求項7】
前記基準部が、前記第1のマーカーに対して前記第1の所定距離をおいて遠位に配置されている、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項8】
前記ガイドワイヤ上に前記基準部から第2の所定距離をおいて配置され、前記解剖学的通路内の前記基準部の前記深さをさらに確認するために前記操作者に前記第2の所定距離を示すように構成された第2のマーカーをさらに含む、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項9】
前記基準部が、前記第1のマーカーに対して前記第1の所定距離をおいて遠位に配置され、前記基準部が、前記第2のマーカーに対して前記第2の所定距離をおいて遠位に配置されている、請求項8に記載の外科用システム。
【請求項10】
前記第2の所定距離は、前記第1の所定距離よりも大きい、請求項9に記載の外科用システム。
【請求項11】
前記遠位本体端部が、閉塞した遠位先端を有する、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項12】
前記拡張器が前記収縮状態にある前記ガイドワイヤは、前記ガイドワイヤ本体の周囲の半径方向に収縮した直径を画定し、前記収縮した直径は、1ミリメートル以下である、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項13】
前記拡張器が前記拡張状態にある前記ガイドワイヤは、前記ガイドワイヤ本体の周囲の半径方向に拡張した直径を画定し、前記拡張した直径は、6ミリメートル以下である、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項14】
前記ナビゲーションセンサは、患者の中の前記ナビゲーションセンサの位置を決定するために、ナビゲーションシステムによって検出される信号を生成するように構成されている、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項15】
前記ナビゲーションセンサと通信するプロセッサをさらに含み、前記プロセッサが、前記ナビゲーションセンサによって生成される前記信号を受信して、前記患者の中の前記ナビゲーションセンサの位置を特定するように構成されている、請求項14に記載の外科用システム。
【請求項16】
ガイドワイヤであって、
(a)外面を有し、その遠位本体端部まで延在するガイドワイヤ本体であって、前記遠位本体端部が閉塞した遠位先端を有する、ガイドワイヤ本体と、
(b)前記遠位本体端部に固定され、収縮状態から拡張状態に拡張するように構成された拡張器であって、前記収縮状態においては耳管の峡部を通り抜けるように構成され、前記拡張状態においては前記耳管を拡張するように構成された、拡張器と、
(c)前記ガイドワイヤ本体に対して固定された基準部と、
(d)前記ガイドワイヤ本体の前記外面上の第1のマーカーであって、前記基準部から第1の所定距離をおいて近位に配置され、解剖学的通路内の前記基準部の深さを確認するために前記第1の所定距離を操作者に示すように構成された、第1のマーカーと、
(e)前記ガイドワイヤ本体を通って前記ガイドワイヤ本体の長手方向軸に沿って延在し、遠位端部と近位端部を有する、内部膨張ルーメンであって、前記近位端部は膨張媒体源と流体連通しており、前記遠位端部は前記ガイドワイヤ本体の側壁を通って延びる開口部を介して前記拡張器の内部と流体連通しており、前記膨張ルーメンは、前記開口部の遠位に位置し、前記拡張器の遠位端の近位に位置する遠位壁で終端
となっている、内部膨張ルーメンと、
(f)前記ガイドワイヤに対して固定されるナビゲーションセンサと、
(g)前記ナビゲーションセンサに結合されており、前記遠位壁を貫通し、前記内部膨張ルーメンを通って延びているセンサワイヤと、を含む、ガイドワイヤ。
【請求項17】
前記基準部から第2の所定距離をおいて近位に配置され、前記解剖学的通路内の前記基準部の前記深さをさらに確認するために前記操作者に前記第2の所定距離を示すように構成された、前記ガイドワイヤの前記外面上の第2のマーカーをさらに含む、請求項16に記載のガイドワイヤ。
【請求項18】
前記第2の所定距離は、前記第1の所定距離よりも大きい、請求項17に記載のガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
本出願は、2019年3月29日出願の、「Eustachian Tube Dilation Catheter with Depth Indicia」と題された米国特許出願第62/825,854号に優先権を主張し、その開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、耳(10)は、外耳(12)、中耳(14)及び内耳(16)の3つの部分に分けられる。外耳(12)は、音を集め、その音を外耳道(20)の内側端部(24)に位置する鼓膜(tympanic membrane)(22)(鼓膜(eardrum)とも呼ばれる)に向かわせる、耳介(18)及び外耳道(20)からなる。中耳(14)は、外耳と内耳(12、16)との間に位置し、耳(10)と副鼻腔との間の均圧弁としての役割を果たす
耳管(以下では「エウスタキオ管(Eustachian tube、ET)
」ともいう。)(26)によって、咽喉の後につながっている。ET(26)は、咽喉(32)の鼻咽頭部(30)にある咽頭口(28)で終端する。鼓膜(22)に加えて、中耳(14)はまた、槌骨(34)(ツチ骨)、砧骨(36)(キヌタ骨)、及び鐙骨(38)(アブミ骨)という3つの小さい耳骨(小骨)からなる。
【0003】
ET(26)は、中耳(14)を鼻咽頭(30)に接続する狭いチャネルである。ET(26)は、通常は空気で満たされている中耳(14)に対する均圧弁として機能する。適切に機能している場合は、ET(26)は、嚥下又はあくびに応答して周期的にほんの一瞬開く。そうすることによって、空気が中耳(14)の中に進入して、中耳内層(粘膜)によって吸収されていた空気と入れ替わるか、又は高度変化時に起こる圧変化を均等にすることができる。ET(26)のこの周期的な開閉に干渉するものはなんでも、難聴又は他の耳の症状が生じることがある。ET(26)の閉塞又は閉鎖は、中耳(14)における負圧をもたらし、鼓膜(22)の退縮(吸い込み)を伴う。これは、充満感又は圧迫感などの何らかの耳の不快感を伴うことがあり、軽度の聴覚障害及びヘッドノイズ(耳鳴り)をもたらすことがある。閉塞が長引く場合、中耳(14)は最終的に感染する場合がある。
【0004】
中耳(14)及びET(26)を治療するための方法としては、その開示は参照により本明細書に組み込まれる、2010年10月28日に公開され、現在は放棄されている、「Method and System for Treating Target Tissue within the ET」と題された米国特許出願公開第2010/0274188号に開示される方法、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2013年10月17日に公開され、現在は放棄されている、「Method and System for Eustachian Tube Dilation」と題された米国特許出願公開第2013/0274715号に開示される方法、及び、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2019年7月16日発行の、「Vent Cap for a Eustachian Tube Dilation System」と題された米国特許第10,350,396号に開示される方法が挙げられる。それらの参考文献に記載されるとおり、ET(26)の機能は、拡張可能な拡張器器具を用いてET(26)を拡開させることによって改善され得る。
【0005】
様々な外科用器具が作製され使用されてきたが、添付の特許請求の範囲に記載する本発明を、本発明者らに先立って作製した者も使用した者もいないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本明細書に組み込まれ、かつその一部をなす添付の図面は、本発明の実施形態を例示するものであり、上記の本発明の一般的な説明、及び以下の実施形態の詳細な説明と共に、本発明の原理を説明する役割を果たすものである。
【
図1】患者の頭部の断面図を示し、内耳、中耳、外耳、及び中耳を咽喉の鼻咽頭領域に接続するエウスタキオ管を示している。
【
図2】膨張式バルーン及びナビゲーションセンサを有する例示的なガイドワイヤの斜視図を示す。
【
図3】
図2のガイドワイヤの側面図を示し、ガイドワイヤの内部膨張ルーメン及びセンサワイヤを概略的に示す。
【
図4】
図2のガイドワイヤを組み込んだ例示的な外科用ナビゲーションシステムの概略斜視図を示す。
【
図5A】患者の頭部の断面図を示し、中耳を介して患者のエウスタキオ管内に配置された
図2のガイドワイヤの遠位部分を示す。
【
図5B】
図5Aと同様に患者の頭部の断面図を示すが、膨張し、それによってエウスタキオ管を拡張させているガイドワイヤのバルーンを示す。
【0007】
図面は、いかなる方式でも限定することを意図しておらず、本発明の様々な実施形態は、図面に必ずしも描写されていないものを含め、他の様々な方式で実施し得ることが企図される。本明細書に組み込まれ、かつその一部をなす添付図面は、本発明のいくつかの態様を例示するものであり、説明と共に本発明の原理を説明する役割を果たすものである。しかしながら、本発明が、示される正確な配置に限定されない点は理解される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の特定の実施例の以下の説明文は、本発明の範囲を限定する目的で用いられるべきではない。本発明の他の実施例、特徴部、態様、実施形態、及び利点は、本発明を実施するために想到される最良の形態の1つを実例として示す以下の説明文より、当業者には明らかとなろう。理解されるように、本発明は、いずれも本発明から逸脱することなく、他の異なるかつ明白な態様が可能である。したがって、図面及び説明は、限定的な性質のものではなく、例示的な性質のものとみなされるべきである。
【0009】
本開示の明瞭さのために、「近位」及び「遠位」という用語は、遠位外科用エンドエフェクタを有する外科用器具を握持する外科医又は他の操作者に対して本明細書で定義される。「近位」という用語は、外科医のより近くに配置された要素の位置を指し、「遠位」という用語は、外科用器具の外科用エンドエフェクタのより近くにかつ外科医からより遠くに配置された要素の位置を指す。さらに、図面を参照して本明細書で空間的な用語が使用される限り、そのような用語は例示的な説明の目的でのみ使用され、限定又は絶対的であることを意図しないことが理解されよう。その点において、本明細書に開示されるものなどの外科用器具を、本明細書で図示及び記載するものに限定されない様々な配向及び位置で使用してもよいことが理解される。
【0010】
本明細書で任意の数値や数値の範囲について使用する「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書で述べるその意図された目的に沿って機能することを可能とする、適当な寸法の許容誤差を示すものである。
【0011】
I.中耳を介してエウスタキオ管を拡張するための例示的な器具、及び関連する外科用ナビゲーションシステム
図1に関し、中耳(14)と咽頭口(28)との間に十分な連通を提供しないET(26)を治療するために実行され得る治療の一例として、ガイドカテーテル及びバルーン拡張カテーテルを使用してET(26)にアクセスしてこれを拡張することが挙げられる。しかしながら、バルーン拡張カテーテルのガイドカテーテルが使用できない場合、ガイドワイヤを含む装置が好適であり得る。他の例では、鼻孔を介して口鼻腔に器具を挿入してから、咽頭口を介して器具を挿入することによってET(26)にアクセスすることは困難又は不可能であり得る。これは、患者の解剖学的制約、又は場合によっては、特定の従事者のスキルセットの限界によるものであり得る。したがって、場合によっては、鼓膜(22)及び中耳(14)を通してET(26)にアクセスするほうがより効果的であり得る。しかしながら、鼓膜(22)及び中耳構造の敏感な性質により、ET(26)の完全性を保存する、又はET(26)への外傷を最小化する方法で、ET(26)にアクセスすることは有利であり得る。そのうえ、ET(26)にアクセスするこのアプローチは、峡部(29)を通して器具を導くことが従事者に求められるので、峡部(29)の小さいサイズ及び敏感な性質、並びに内耳(16)の隣接した構造のため、注意が必要である。
【0012】
図2に関し、以下に説明する例示的なガイドワイヤ(300)などの拡張器具の一実施例は、施術者が中耳(14)を介してET(26)に安全にアクセスすることを可能にすると共に、さらに、それが配置されたときに、ET(26)の十分な拡張を提供するように動作可能である。
【0013】
A.マーカーを有する例示的な膨張式ガイドワイヤ
図2は、鼓膜(22)、中耳(14)、及び峡部(29)を介してET(26)にアクセスするようにサイズに形成されて構成されるガイドワイヤ(300)を示す。ガイドワイヤ(300)は、遠位端部分(304)を有する細長い管状本体(302)と、遠位端部分(304)に配置された閉塞した非侵襲性の遠位先端部(306)とを含む。本実施例の非侵襲性の先端部(306)は、一般に丸みを帯びた形状であり、以下でより詳細に説明するように、峡部(29)を通過してET(26)に入るような適切なサイズに形成される。
【0014】
本実施例のガイドワイヤ本体(302)は、ガイドワイヤ(300)が、座屈又は塑性変形することなく、かつ、ガイドカテーテル(図示せず)などの外側の案内装置なしで、患者の中耳(14)とET(26)との間に延在する蛇行した内部経路に弾性的に適合することを可能にするのに十分な横方向の可撓性及びカラム強度(すなわち、剛性)をもって適切に構成される。例えば、本体(302)の少なくとも一部は、編組ステンレス鋼で形成してもよい。他の例では、本体(302)の少なくとも一部は、外側コイル(図示せず)及び内側コアワイヤ(図示せず)で構成してもよい。様々な例では、ガイドワイヤ本体(302)は、316ステンレス鋼、チタン、コバルト-クロム、ニチノール、MP35N鋼合金、又は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2019年11月5日発行の「Guidewire Navigation for Sinuplasty」と題された米国特許第10,463,242号に開示されるその他の適切な材料などの1種類以上の金属材料で形成してもよい。
【0015】
本実施例のガイドワイヤ(300)は、さらに、遠位先端(306)に近位のガイドワイヤ本体(302)の外部に固定された膨張式バルーン(308)の形で、拡張可能な拡張器を含む。バルーン(308)は、構造がコンプライアントであっても、セミコンプライアントであっても、ノンコンプライアントであってもよく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PEBAX(登録商標)(ポリエーテルブロックアミド)、ナイロンなどの任意の適切なポリマー材料から形成してもよい。本実施例のバルーン(308)は、
図5Aに示すように、バルーン(308)が収縮したときに約1ミリメートル以下の最大外径を有し、かつ、
図2~
図3及び
図5Bに示すように、バルーン(308)が完全に膨張したときに約6ミリメートル以上の最大外径を有するガイドワイヤ(300)を提供するように、適切なサイズに形成されて構成される。少なくともいくつかの用途では、約6ミリメートルの最大外径は、ET拡張処置中に患者のET(26)の十分な拡張を提供する。ただし、バルーン(308)は、他の用途及び拡張手順で使用するために他の最大サイズを想定するよう適切に構成することができることが理解されよう。本実施例のバルーン(308)は、約12ミリメートルから約24ミリメートルの作業長を有することができる。他の例では、バルーン(308)は、約20ミリメートルから約40ミリメートルの作業長を有することができる。
【0016】
図3に最もよく示されているように、内部膨張ルーメン(310)は、ガイドワイヤ本体(302)を通って本体(302)の長手方向中心軸に沿って長手方向に延在する。膨張ルーメン(310)の近位端部(図示せず)は、膨張媒体源(図示せず)と流体連通している。膨張ルーメン(310)の遠位端は、ガイドワイヤ本体(302)の側壁を通って横方向に延びる複数の開口部(312)を介してバルーン(308)の内部と流体連通している。本実施例のガイドワイヤ本体(302)は、バルーン(308)の中間部分にほぼ整列した4つの開口部(312)を含むが、他の実施例では、任意の適切な数及び配置の開口部(312)を設けることができる。膨張ルーメン(310)は、最遠位開口部(312)の遠位に位置し、バルーン(308)の遠位端(313)の近位に位置する遠位壁(314)で終端する。膨張ルーメン(310)は、
図5A~
図5Bを参照して説明される一実施例において以下で説明されるように、拡張処置中において選択的な膨張及び収縮を可能にするために、ユーザ入力に応答して、バルーン(308)の内部との間で加圧媒体(例えば、生理食塩水)を連通させるように構成される。
【0017】
図示されていないが、ガイドワイヤ(300)は、ユーザが保持して操作することができる任意の適切なタイプの作動装置で作動させることができ、それは、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2019年1月17日に公開され、「Adjustable Instrument for Dilation of Anatomical Passageway」と題された米国特許出願公開第2019/0015645号に開示されるものと同様の特徴を有し得る。
【0018】
図3に示す本実施例のガイドワイヤ(300)は、さらに、バルーン(308)の遠位先端(306)に近位かつ遠位端(313)に遠位の遠位端部分(304)に配置されたナビゲーションセンサ(316)(概略的に示す)を含む。ナビゲーションセンサ(316)は、外科手術中に患者内の遠位端部分(304)の位置に対応する信号を生成するように動作可能であり、その結果、以下でより詳細に説明するように、外科医が患者内の遠位端部分(304)の位置をリアルタイムで追跡することが可能になる。ナビゲーションセンサ(316)は、後述するように、外部から発生する磁場内に配置されたときに電気信号を生成するように構成された導電性コイル(図示せず)の形態であってもよい。
【0019】
図3に示すように、ガイドワイヤ(300)は、ナビゲーションセンサ(316)に結合し、遠位ルーメン壁(314)及び膨張ルーメン(310)を通ってガイドワイヤ(300)の近位端部(図示せず)に向かって近位に延びる、一対のセンサワイヤ(318)を収容する。センサワイヤ(318)が遠位ルーメン壁(314)を通って延在する位置は、ルーメン(310)からナビゲーションセンサ(316)への膨張流体の浸入を防止するのに適した接着剤(図示せず)又は他の材料で封止してもよい。したがって、ナビゲーションセンサ(316)は、膨張ルーメン(310)から流体的に隔離される。センサ線(318)は、ナビゲーションセンサ(316)から、後述する外科手術ナビゲーションシステム(401)のプロセッサ(408)(
図4参照)などのナビゲーションシステムのプロセッサに電気信号を通信するように構成される。ただ1つのナビゲーションセンサ(316)が示されているが、他の実施例では、例えば、患者内のガイドワイヤ(300)の遠位端部(304)の位置及び回転方向の両方を追跡するために、ガイドワイヤ(300)内の様々な位置に2つ以上のナビゲーションセンサを設けてもよい。ただし、ナビゲーションセンサ(316)は、単に任意選択であり、いくつかの実施例では、ガイドワイヤ(300)並びにセンサワイヤ(318)から完全に省略されてもよいことが理解されよう。そのような実施例では、ガイドワイヤ(300)は、当業者には容易に明らかな、以下に開示される様々な他の適切な案内装置及び方法の助けを借りて、あるいは、そのような案内装置なしで、患者の解剖学的通路をナビゲートすることができる。
【0020】
ガイドワイヤ(300)は、さらに、バルーン(308)の近位端(317)に近接して配置されるといったように、ガイドワイヤ(300)の遠位端部分(304)の近くに1つ以上のマーカー(602、604)を含むマーカーパターン(600)と、マーカー(602、604)を分離するための1つ以上の仕切り(606、608)とを含む。本実施例では、かかるマーカー(602、604)は、バルーン(308)の近位端(317)などの基準特徴部が患者の所望の解剖学的構造の内側にどれだけ遠く位置するかを視覚的に示すように構成された深さ表示である。かかる基準特徴部は、かかる各マーカー(602、604)からそれぞれ所定距離をおいて本体(302)に固定される。したがって、マーカー(602、604)は、基準特徴部から固定された長手方向距離をおいて配置され、この実施例では、より具体的には、基準特徴部は、バルーン(308)の近位端(317)である。本実施例に示されるマーカー(602、604)は、レーザなどによって本体(302)の外面(319)上に直接エッチングされるが、代替のマーカー(図示せず)は、締結具又は着色などの他の既知の方法によって本体(302)上に配置してもよい。
【0021】
ガイドワイヤ(300)が耳(10)内などの解剖学的通路を通って前進すると(
図5A参照)、マーカー(602、604)が内視鏡の下に配置され、チェックされて、ガイドワイヤ(300)が解剖学的通路内をどれだけ前進しているかが高精度で判定される。マーカー(602、604)は、顕微鏡観察、内視鏡観察、又は任意の他の適切な手段で視認することができる。また、1つ以上のマーカー(602、604)を使用するパターンは、1つのマーカー(602、604)が空洞内で1センチメートル、2つのマーカー(602、604)が空洞内で2センチメートルなど、といったように、解剖学的通路内にあるガイドワイヤ(300)の距離を示すことができる。あるいは、ガイドワイヤ(300)上のバルーン(308)の近位端からセンチメートルごとに1つのマーカー(602、604)を配置することもできる。当然のことながら、マーカー(602、604)は、本発明が本明細書に示され説明される特定のマーカー(602、604)及びパーティション(606、608)に不必要に限定されることを意図しないように、任意の所定の基準特徴部に対して、ガイドワイヤ(300)の本体(302)上の任意の既知の位置に配置してもよい。したがって、用途に適した任意の単位の距離を用いることができ、任意の数のマーカー(602、604)をガイドワイヤ(300)上に配置することができる。
【0022】
B.マーカー付きガイドワイヤを組み込んだ例示的な外科手術ナビゲーションシステム
図4は、画像誘導を用いてENT処置を実行することを可能にするガイドワイヤ(300)及び例示的なIGSナビゲーションシステム(401)を組み込んだ例示的な外科用システム(400)を示す。患者(P)の頭部(H)内で医療処置を実施するとき、特に器具が患者(P)の頭部(H)内の器具の作業要素の内視鏡視野を得ることが困難又は不可能である場所にある場合に、患者(P)の頭部(H)内の器具の位置に関する情報を有することが望ましい場合がある。本明細書に記載の構成要素及び操作性を有することに加えて、又はその代わりに、IGSナビゲーションシステム(401)は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2010年5月18日発行の、「Methods and Devices for Performing Procedures within the Ear,Nose,Throat and Paranasal Sinuses」と題された米国特許第7,720,521号、及び、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2014年12月11日に公開され、「Systems and Methods for Performing Image Guided Procedures within the Ear,Nose,Throat and Paranasal Sinuses」と題された米国特許出願公開第2014/0364725号が教示するところの少なくとも一部に従って、構築し、動作させることができる。
【0023】
本実施例のIGSナビゲーションシステム(401)は、磁場発生器アセンブリ(402)を含み、これは、馬蹄形フレーム(404)に組み込まれた磁場発生器(406)のセットを含む。磁場発生器(406)は、患者(P)の頭部(H)の周りに異なる周波数の交流磁場を発生させるように動作可能である。この実施例では、ガイドワイヤ(300)が患者(P)の頭部(H)に挿入される。本実施例では、フレーム(404)が椅子(430)に装着され、患者(P)は、フレーム(404)が患者(P)の頭部(H)に隣接して位置するように椅子(430)に着座している。単なる例として、椅子(430)及び/又はフィールドジェネレータアセンブリ(402)は、米国特許出願公開第2018/0310886号、発明の名称「Apparatus to Secure Field Generating Device to Chair」(2018年11月1日出願)(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)の少なくとも一部の教示に従って構成され、動作可能であり得る。
【0024】
本実施例のIGSナビゲーションシステム(401)は、さらに、プロセッサ(408)を含み、これがIGSナビゲーションシステム(401)のフィールドジェネレータ(406)及び他の要素を制御する。例えば、プロセッサ(408)は、磁界発生器(406)を駆動して交流電磁界を生成し、ナビゲーションガイドワイヤ(300)からの信号を処理して患者(P)の頭部(H)内におけるガイドワイヤ(300)内のセンサ(316)(
図2を参照)の場所を特定するように動作可能である。プロセッサ(408)は、1つ以上のメモリ(図示せず)と通信する処理ユニット(図示せず)を含む。本実施例のプロセッサ(408)は、コンソール(410)内に装着され、コンソール(410)は、キーパッド及び/又はマウス若しくはトラックボールなどのポインティングデバイスを含む動作制御部(412)を含む。医師などの操作者は、外科手術を実行する間、プロセッサ(408)と情報のやりとりをする操作制御部(412)を使用する。
【0025】
ガイドワイヤ(300)は、磁場発生器(406)によって生成された交流磁場内の位置決めに応答するセンサ(316)(
図2参照)を含む。通信ユニット(416)は、ガイドワイヤ(300)の近位端に固定され、コンソール(410)とガイドワイヤ(300)との間のデータ及び他の信号の通信を提供するように構成される。通信ユニット(416)は、データ及び他の信号の有線又は無線通信を提供することができる。
【0026】
本実施では、ガイドワイヤ(300)のセンサ(316)(
図2参照)は、ナビゲーションガイドワイヤ(14)の遠位端に少なくとも1つのコイル(図示せず)を含む。かかるコイル(図示せず)が磁場発生器(406)によって生成された交流電磁場内に配置されると、交流磁場はコイル(図示せず)に電流を生成することができ、この電流は、ガイドワイヤ(300)内の電気ワイヤ(318)(
図3参照)を通って、さらに通信ユニット(416)を介してプロセッサ(408)に通信することができる。この現象は、IGSナビゲーションシステム(401)が、三次元空間(すなわち、患者(P)の頭部(H)内など)内における、ガイドワイヤ(300)又は他の医療器具(例えば、拡張器具、外科用切断器具など)の遠位端部(304)(
図2参照)の位置を特定することを可能にし得る。これを達成するために、プロセッサ(408)は、ガイドワイヤ(300)内のコイル(図示せず)の位置関連信号からガイドワイヤ(300)の遠位端部(304)の位置座標を計算するアルゴリズムを実行する。この実施例では、センサ(316)(
図2参照)がガイドワイヤ(300)に配置されているが、かかる位置センサは、様々な他の種類の器具に統合されてもよい。
【0027】
プロセッサ(408)は、プロセッサ(408)のメモリ(図示せず)に格納されたソフトウェアを使用して、IGSナビゲーションシステム(401)を較正し、動作させる。そのような動作は、フィールドジェネレータ(406)の駆動、ガイドワイヤ(300)からのデータの処理、動作制御装置(412)からのデータの処理、及びディスプレイ画面(414)の駆動を含む。いくつかの実装形態では、動作はまた、IGSナビゲーションシステム(401)の1つ以上の安全機能又は機能の監視及び実施を含むことができる。プロセッサ(408)は、さらに、ディスプレイ画面(414)を介してリアルタイムでビデオを提供するように動作可能であり、患者の頭部(H)のビデオカメラ画像、患者の頭部(H)のCTスキャン画像、及び/又は患者の鼻腔内の及び鼻腔に隣接する解剖学的構造のコンピュータ生成三次元モデルに関するガイドワイヤ(300)の遠位端部(304)(
図2参照)の位置を示す。ディスプレイ画面(414)は、外科手術中にかかる画像を、同時にかつ/又は互いに重ね合わせて表示することができる。そのようなディスプレイ画像は、また、操作者がリアルタイムでその実際の位置で器具の仮想レンダリングを見ることができるように、ナビゲーションガイドワイヤ(14)などの患者の頭部(H)に挿入された器具のグラフィカル表現を含むことができる。ほんの一例として、ディスプレイ画面(414)は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2019年11月5日発行の、「Guidewire Navigation for Sinuplasty」と題された米国特許第10,463,242号が教示するところの少なくとも一部に従って画像を提供することができる。操作者が内視鏡も使用している場合には、内視鏡画像もディスプレイ画面(414)に表示することができる。
【0028】
ディスプレイ画面(414)を介して提供される画像は、かかる器具がガイドワイヤ(300)を組み込んでいる場合、患者の頭部(H)内において、その器具を操縦し、さもなければ操作する際に、操作者を案内するのに役立ち得る。本明細書に記載の外科用器具及び他の種類の外科用器具の他の構成要素が、ガイドワイヤ(300)のセンサ(316)(
図2参照)のようなセンサを組み込むことができることも理解されたい。
【0029】
C.マーカー付きガイドワイヤを使用してエウスタキオ管を拡張する例示的な方法
図5A~
図5Bは、上述のガイドワイヤ(300)を使用して患者のET(26)を膨張させる例示的な方法を示す。ガイドワイヤ(300)を、鼻孔に通して鼻腔内に、そして咽頭口(28)を通して挿入するのではなく、
図5A~
図5Bに示す方法は、外耳道(20)及び鼓膜(22)を通してET(26)にアクセスすることを含む。
図5Aに示す本実施例では、ガイドワイヤ(300)は、外耳道(20)を通って前進し、上述のようにナビゲーションセンサ(316)及びIGSナビゲーションシステム(401)によって提供されるリアルタイムガイダンスを用いて患者の頭部の内部通路をナビゲートされる。外耳道(20)に配置された近位シャフト(390)から延びるガイドワイヤ(300)が示されている。いくつかの変形例では、近位シャフト(390)を省略することができ、そのようなバルーン(308)を備えるガイドワイヤ(300)は、シャフト(390)なしで外耳道(20)内に延びる。上述したように、同じく、ナビゲーションセンサ(316)は単に任意選択である。したがって、他の例では、内視鏡又は照明ファイバ(図示せず)などの代替タイプの誘導機構を用い、又はそのような誘導機構を用いることなく、ガイドワイヤ(300)を使用してET(26)にアクセスして拡張することができる。
【0030】
当業者は、鼓膜(22)が、バルーンカテーテルなどの器具の外耳道(20)からET(26)への通過の物理的障壁となることを理解するであろう。したがって、操作者は、外耳道(20)からET(26)にアクセスするために、何らかの方法で鼓膜(22)の存在に対処しなければならない。そのような外耳道(20)を介してET(26)にガイドワイヤ(300)を適切に挿入するために鼓膜(22)を通過させる例示的な方法の1つは、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2018年9月11日発行の、「System and Method for Treatment of Eustachian Tube from Middle Ear Approach」と題された米国特許第10,070,993号に開示されている。
【0031】
操作者は、鼓膜(22)の完全性を損なうことなく、バルーン(308)を中耳(14)及びET(26)を越えて遠位に挿入し続ける。本実施例では、峡部(29)に配置されたガイドワイヤ(300)を視覚化するために、内視鏡(60)がガイドワイヤ(300)に沿って中耳(14)に挿入される。中耳(14)内の内視鏡(60)の配置に関連する追加の教示は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2019年12月26日公開の、「Guidewire for Dilating Eustachian Tube Via Middle Ear」と題される米国特許出願公開第2019/0388661号に開示されている。
【0032】
操作者は、バルーン(308)を接触状態から拡張状態に拡張させる目標位置に向けてバルーン(308)を遠位方向にET(26)へと前進させ、それによってET(26)を拡張させる。バルーン(308)を目標位置により正確かつ正確に位置決めするために、操作者は、同時に、峡部(29)又は他の隣接する基準解剖学的構造に関連するマーカー(602、604)の視覚化を視認する。一例では、バルーン(308)から近位に配置された各マーカー(602、604)がバルーン(308)から追加のそれぞれのセンチメートルを示している状態で、操作者は、各マーカー(602、604)が峡部(29)を越えて通過することをカウントする。次に、操作者は、峡部(29)に対して近位に配置された最後の可視マーカー(602、604)と、本実施例における基準特徴部であるバルーン(308)の近位端(317)との間の距離を確認する。操作者は、バルーン(308)の近位端(317)から1センチメートル離れた1つのマーカー(602)が峡部(29)を越えて遠位に通過するのをカウントし得る一方で、バルーン(308)の近位端(317)から2センチメートル離れたもうひとつのマーカー(604)は、峡部(29)に隣接して視認可能な状態を維持する。次いで、操作者は、バルーン(308)の近位端(317)を直接視認することなく、バルーン(308)の近位端(317)が峡部(29)から約2センチメートル離れていることを確認することができる。他の例では、操作者は、マーカー上の特定のパターン(602、604)に基づいて同様の確認を行うことができる。
【0033】
さらに、
図3及び
図4をさらに参照する一例では、操作者は、上述したマーカー(602、604)の視覚化を併せて視認しながら、ガイドワイヤ(300)上のセンサ(316)の位置のディスプレイ(414)を視認することができる。そのような観察は、バルーン(308)を所望の目標位置により正確かつ精密に配置するべく、ET(29)内のバルーン(308)の位置を裏付けるためにET(29)内のバルーン(308)の近位端(317)を確認しながら、ディスプレイ(414)上でガイドワイヤ(300)の遠位端部(304)を配置することにおいて有益であり得る。いずれの場合も、ET(ET)内の目標位置に入ったら、操作者は、
図5Aに示す収縮状態から
図5Bに示す拡張状態にバルーン(308)を拡張させ、それによってETを拡張させる。拡張させた後、操作者は、取り外すために、又は、必要に応じて別の拡張のために再配置するために、バルーン(308)を収縮状態に戻すことができる。そのような再配置は、マーカー(602、604)及び/又はディスプレイ(414)の視覚化に基づいて再び実行することができる。
【0034】
II.例示的な組み合わせ
以下の実施例は、本明細書の教示を組み合わせるか又は適用することができる、様々な非網羅的な方法に関する。以下の実施例は、本出願における又は本出願の後の書類提出におけるどの時点でも提示され得る、いずれの請求項の適用範囲をも限定することを目的としたものではないと理解されよう。一切の権利放棄を意図するものではない。以下の実施例は、単なる例示の目的で与えられるものに過ぎない。本明細書の様々な教示は、他の多くの方法で構成及び適用が可能であると考えられる。また、いくつかの変形では、以下の実施例において言及される特定の特徴部を省略してよいことも考えられる。したがって、本発明者又は本発明者の利益の承継者により、後日、そうである旨が明示的に示されない限り、以下に言及される態様又は特徴部のいずれも重要なものとしてみなされるべきではない。以下に言及される特徴部以外のさらなる特徴部を含む請求項が本出願において、又は本出願に関連する後の書類提出において示される場合、それらのさらなる特徴部は、特許性に関連するいかなる理由によっても追加されたものとして仮定されるべきではない。
【実施例1】
【0035】
外科用システムであって、(a)その遠位本体端部まで延在するガイドワイヤ本体を含むガイドワイヤと、(b)当該遠位本体端部に固定され、収縮状態から拡張状態に拡張するように構成された拡張器であって、当該収縮状態においてはエウスタキオ管の峡部を通り抜けるように構成され、当該拡張状態においては当該エウスタキオ管を拡張するように構成された、拡張器と、(c)当該ガイドワイヤに対して固定された基準特徴部と、(d)当該ガイドワイヤ上に当該基準特徴部から第1の所定距離をおいて配置され、解剖学的通路内の当該基準特徴部の深さを確認するために当該第1の所定距離を操作者に示すように構成された第1のマーカーと、を含む外科用システム。
【実施例2】
【0036】
当該基準特徴部が、当該拡張器の一部である、実施例1に記載の外科用システム。
【実施例3】
【0037】
当該拡張器の当該一部が、当該拡張器の近位端である、実施例2に記載の外科用システム。
【実施例4】
【0038】
当該第1のマーカーが、当該ガイドワイヤの当該ガイドワイヤ本体上に配置されている、実施例1から3のいずれか1以上に記載の外科用システム。
【実施例5】
【0039】
当該ガイドワイヤ本体が外面を有し、当該第1のマーカーが当該外面に配置されている、実施例4に記載の外科用システム。
【実施例6】
【0040】
当該第1のマーカーが、当該外面上の第1のエッチングされたマーカーである、実施例5に記載の外科用システム。
【実施例7】
【0041】
当該基準特徴部が、当該第1のマーカーに対して当該第1の所定距離をおいて遠位に配置されている、実施例1から6のいずれか1以上に記載の外科用システム。
【実施例8】
【0042】
当該ガイドワイヤ上に当該基準特徴部から第2の所定距離をおいて配置され、当該解剖学的通路内の当該基準特徴部の当該深さをさらに確認するために当該操作者に当該第2の所定距離を示すように構成された第2のマーカーをさらに含む、実施例1から7のいずれか1以上に記載の外科用システム。
【実施例9】
【0043】
当該基準特徴部が、当該第1のマーカーに対して当該第1の所定距離をおいて遠位に配置され、当該基準特徴部が、当該第2のマーカーに対して当該第2の所定距離をおいて遠位に配置されている、実施例8に記載の外科用システム。
【実施例10】
【0044】
当該第2の所定距離は、当該第1の所定距離よりも大きい、実施例9に記載の外科用システム。
【実施例11】
【0045】
当該遠位本体端部が、閉塞した遠位先端を有する、実施例1から10のいずれか1以上に記載の外科用システム。
【実施例12】
【0046】
当該拡張器が当該収縮状態にある当該ガイドワイヤは、当該ガイドワイヤ本体の周囲の半径方向に収縮した直径を画定し、当該収縮した直径は、1ミリメートル以下である、実施例1から11のいずれか1以上に記載の外科用システム。
【実施例13】
【0047】
当該拡張器が当該拡張状態にある当該ガイドワイヤは、当該ガイドワイヤ本体の周囲の半径方向に拡張した直径を画定し、当該拡張した直径は、6ミリメートル以下である、実施例1から12のいずれか1以上に記載の外科用システム。
【実施例14】
【0048】
当該ガイドワイヤに対して固定されるナビゲーションセンサをさらに含み、当該ナビゲーションセンサは、患者の中の当該ナビゲーションセンサの位置を決定するために、ナビゲーションシステムによって検出される信号を生成するように構成されている、実施例1から13のいずれか1以上に記載の外科用システム。
【実施例15】
【0049】
当該ナビゲーションセンサと通信するプロセッサをさらに含み、当該プロセッサが、当該ナビゲーションセンサによって生成される当該信号を受信して、当該患者の中の当該ナビゲーションセンサの位置を特定するように構成されている、実施例14に記載の外科用システム。
【実施例16】
【0050】
ガイドワイヤであって、(a)外面を有し、その遠位本体端部まで延在するガイドワイヤ本体であって、当該遠位本体端部が閉塞した遠位先端を有する、ガイドワイヤ本体と、(b)当該遠位本体端部に固定され、収縮状態から拡張状態に拡張するように構成された拡張器であって、当該収縮状態においてはエウスタキオ管の峡部を通り抜けるように構成され、当該拡張状態においては当該エウスタキオ管を拡張するように構成された、拡張器と、(c)当該ガイドワイヤ本体に対して固定された基準特徴部と、(d)当該ガイドワイヤ本体の当該外面上の第1のマーカーであって、当該基準特徴部から第1の所定距離をおいて近位に配置され、解剖学的通路内の当該基準特徴部の深さを確認するために当該第1の所定距離を操作者に示すように構成された、第1のマーカーと、を含むガイドワイヤ。
【実施例17】
【0051】
当該基準特徴部から第2の所定距離をおいて近位に配置され、当該解剖学的通路内の当該基準特徴部の当該深さをさらに確認するために当該操作者に当該第2の所定距離を示すように構成された、当該ガイドワイヤの当該外面上の第2のマーカーをさらに含む、実施例16に記載のガイドワイヤ。
【実施例18】
【0052】
当該第2の所定距離は、当該第1の所定距離よりも大きい、実施例17に記載のガイドワイヤ。
【実施例19】
【0053】
解剖学的通路内にガイドワイヤを配置する方法であって、当該解剖学的通路内の当該ガイドワイヤのガイドワイヤ本体上のマーカーを視認することにより、当該解剖学的通路内の当該ガイドワイヤ上に固定された拡張器の位置を確認することを含む、方法。
【実施例20】
【0054】
当該解剖学的通路がエウスタキオ管であり、当該方法が、当該拡張器を視認された当該マーカーに基づいて当該エウスタキオ管に沿って目標位置まで挿入することをさらに含む、実施例19に記載の方法。
【0055】
III.その他
本明細書に記載の教示、表現、実施形態、実施例などのうちのいずれか1つ又は2つ以上を、本明細書に記載の他の教示、表現、実施形態、実施例などのうちのいずれか1つ又は2つ以上と組み合わせることができる点が理解されるべきである。したがって、上記の教示、表現、実施形態、実施例などは、互いに対して独立して考慮されるべきではない。本明細書の教示に照らして、本明細書の教示を組み合わせることができる様々な好適な方式が、当業者には容易に明らかとなろう。かかる改変及び変形は、「特許請求の範囲」内に含まれるものとする。
【0056】
本明細書に参照により組み込まれると言及されるあらゆる特許、公報、又はその他の開示内容は、全体的に又は部分的に、組み込まれる内容が現行の定義、見解、又は本開示に記載されるその他の開示内容とあくまで矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれると理解されるべきである。それ自体、また必要な範囲で、本明細書に明瞭に記載される開示内容は、参照により本明細書に組み込まれるあらゆる矛盾する記載に優先するものとする。参照により本明細書に組み込まれると言及されているが、現行の定義、見解、又は本明細書に記載される他の開示内容と矛盾する任意の内容、又はそれらの部分は、組み込まれた内容と現行の開示内容との間に矛盾が生じない範囲においてのみ、組み込まれるものとする。
【0057】
上記の装置の変形例は、医療専門家により行われる従来の治療及び処置における用途のみではなく、ロボット支援された治療及び処置における用途をも有することができる。単に一例として、本明細書の様々な教示は、ロボット外科用システム、例えばIntuitive Surgical,Inc.(Sunnyvale,California)によるDAVINCI(商標)システムなどに容易に組み込まれ得る。
【0058】
上述の装置の変形例は、1回の使用後に処分するように設計することができ、又はそれらは、複数回使用するように設計することができる。変形例は、いずれか又は両方の場合においても、少なくとも1回の使用後に再利用のために再調整され得る。再調整は、装置の分解工程、それに続く特定の部品の洗浄又は交換工程、及びその後の再組立工程の、任意の組み合わせを含み得る。特に、装置のいくつかの変形例は分解することができ、また、装置の任意の数の特定の部分若しくは部品を、任意の組み合わせで選択的に交換又は取り外してもよい。特定の部品の洗浄及び/又は交換後、装置のいくつかの変形例を、再調整用の施設において、又は処置の直前にユーザによってのいずれかで、その後の使用のために再組立することができる。当業者であれば、装置の再調整において、分解、洗浄/交換、及び再組立のための様々な技術を利用することができることを理解するであろう。かかる技術の使用、及び結果として得られる再調整された装置は、全て本発明の範囲内にある。
【0059】
単に一例として、本明細書に記載される変形例は、処置の前及び/又は後に滅菌されてもよい。1つの滅菌技術では、装置をプラスチック製又はTYVEK製のバックなど、閉鎖及び封止された容器に入れる。次いで、容器及び装置を、γ線、X線、又は高エネルギー電子線などの、容器を透過し得る放射線場に置いてもよい。放射線は、装置上及び容器内の細菌を死滅させ得る。次いで、滅菌された装置を、後の使用のために、滅菌容器内に保管してもよい。β線若しくはγ線、エチレンオキシド、又は水蒸気が挙げられるがこれらに限定されない、当該技術分野で既知のその他の任意の技術を用いて、装置を滅菌してもよい。
【0060】
以上、本発明の様々な実施形態を示し、記載したが、当業者による適切な改変により、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及びシステムのさらなる適合化を実現することができる。かかる可能な改変のうちのいくつかについて述べたが、他の改変も当業者には明らかになるであろう。例えば、上記の実施例、実施形態、形状、材料、寸法、比率、工程などは例示的なものであって、必須のものではない。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲の観点から考慮されるべきものであり、本明細書及び図面に示され記載された構造及び動作の細部に限定されないものとして理解される。
【0061】
〔実施の態様〕
(1) 外科用システムであって、
(a)その遠位本体端部まで延在するガイドワイヤ本体を含むガイドワイヤと、
(b)前記遠位本体端部に固定され、収縮状態から拡張状態に拡張するように構成された拡張器であって、前記収縮状態においてはエウスタキオ管の峡部を通り抜けるように構成され、前記拡張状態においては前記エウスタキオ管を拡張するように構成された、拡張器と、
(c)前記ガイドワイヤに対して固定された基準特徴部と、
(d)前記ガイドワイヤ上に前記基準特徴部から第1の所定距離をおいて配置され、解剖学的通路内の前記基準特徴部の深さを確認するために前記第1の所定距離を操作者に示すように構成された第1のマーカーと、を含む外科用システム。
(2) 前記基準特徴部が、前記拡張器の一部である、実施態様1に記載の外科用システム。
(3) 前記拡張器の前記一部が、前記拡張器の近位端である、実施態様2に記載の外科用システム。
(4) 前記第1のマーカーが、前記ガイドワイヤの前記ガイドワイヤ本体上に配置されている、実施態様1に記載の外科用システム。
(5) 前記ガイドワイヤ本体が外面を有し、前記第1のマーカーが前記外面に配置されている、実施態様4に記載の外科用システム。
【0062】
(6) 前記第1のマーカーが、前記外面上の第1のエッチングされたマーカーである、実施態様5に記載の外科用システム。
(7) 前記基準特徴部が、前記第1のマーカーに対して前記第1の所定距離をおいて遠位に配置されている、実施態様1に記載の外科用システム。
(8) 前記ガイドワイヤ上に前記基準特徴部から第2の所定距離をおいて配置され、前記解剖学的通路内の前記基準特徴部の前記深さをさらに確認するために前記操作者に前記第2の所定距離を示すように構成された第2のマーカーをさらに含む、実施態様1に記載の外科用システム。
(9) 前記基準特徴部が、前記第1のマーカーに対して前記第1の所定距離をおいて遠位に配置され、前記基準特徴部が、前記第2のマーカーに対して前記第2の所定距離をおいて遠位に配置されている、実施態様8に記載の外科用システム。
(10) 前記第2の所定距離は、前記第1の所定距離よりも大きい、実施態様9に記載の外科用システム。
【0063】
(11) 前記遠位本体端部が、閉塞した遠位先端を有する、実施態様1に記載の外科用システム。
(12) 前記拡張器が前記収縮状態にある前記ガイドワイヤは、前記ガイドワイヤ本体の周囲の半径方向に収縮した直径を画定し、前記収縮した直径は、1ミリメートル以下である、実施態様1に記載の外科用システム。
(13) 前記拡張器が前記拡張状態にある前記ガイドワイヤは、前記ガイドワイヤ本体の周囲の半径方向に拡張した直径を画定し、前記拡張した直径は、6ミリメートル以下である、実施態様1に記載の外科用システム。
(14) 前記ガイドワイヤに対して固定されるナビゲーションセンサをさらに含み、前記ナビゲーションセンサは、患者の中の前記ナビゲーションセンサの位置を決定するために、ナビゲーションシステムによって検出される信号を生成するように構成されている、実施態様1に記載の外科用システム。
(15) 前記ナビゲーションセンサと通信するプロセッサをさらに含み、前記プロセッサが、前記ナビゲーションセンサによって生成される前記信号を受信して、前記患者の中の前記ナビゲーションセンサの位置を特定するように構成されている、実施態様14に記載の外科用システム。
【0064】
(16) ガイドワイヤであって、
(a)外面を有し、その遠位本体端部まで延在するガイドワイヤ本体であって、前記遠位本体端部が閉塞した遠位先端を有する、ガイドワイヤ本体と、
(b)前記遠位本体端部に固定され、収縮状態から拡張状態に拡張するように構成された拡張器であって、前記収縮状態においてはエウスタキオ管の峡部を通り抜けるように構成され、前記拡張状態においては前記エウスタキオ管を拡張するように構成された、拡張器と、
(c)前記ガイドワイヤ本体に対して固定された基準特徴部と、
(d)前記ガイドワイヤ本体の前記外面上の第1のマーカーであって、前記基準特徴部から第1の所定距離をおいて近位に配置され、解剖学的通路内の前記基準特徴部の深さを確認するために前記第1の所定距離を操作者に示すように構成された、第1のマーカーと、を含むガイドワイヤ。
(17) 前記基準特徴部から第2の所定距離をおいて近位に配置され、前記解剖学的通路内の前記基準特徴部の前記深さをさらに確認するために前記操作者に前記第2の所定距離を示すように構成された、前記ガイドワイヤの前記外面上の第2のマーカーをさらに含む、実施態様16に記載のガイドワイヤ。
(18) 前記第2の所定距離は、前記第1の所定距離よりも大きい、実施態様17に記載のガイドワイヤ。
(19) 解剖学的通路内にガイドワイヤを配置する方法であって、前記解剖学的通路内の前記ガイドワイヤのガイドワイヤ本体上のマーカーを視認することにより、前記解剖学的通路内の前記ガイドワイヤ上に固定された拡張器の位置を確認することを含む、方法。
(20) 前記解剖学的通路がエウスタキオ管であり、前記方法が、前記拡張器を視認された前記マーカーに基づいて前記エウスタキオ管に沿って目標位置まで挿入することをさらに含む、実施態様19に記載の方法。