(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】バクテリア由来ナノセルロース生地材料
(51)【国際特許分類】
D06N 7/06 20060101AFI20240805BHJP
D06M 13/02 20060101ALI20240805BHJP
D06M 15/227 20060101ALI20240805BHJP
D06N 3/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
D06N7/06
D06M13/02
D06M15/227
D06N3/00
(21)【出願番号】P 2021559821
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 IB2020053426
(87)【国際公開番号】W WO2020208589
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-02-16
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham MA 02767-0350 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】チャヤ・ウォイチェフ
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ・エリカ
(72)【発明者】
【氏名】インセルマン・ダリック
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0148890(US,A1)
【文献】特開平08-301902(JP,A)
【文献】特表2015-504845(JP,A)
【文献】特表2013-522399(JP,A)
【文献】特開昭58-036260(JP,A)
【文献】特開昭49-041505(JP,A)
【文献】高井光男,微生物セルロースの合成とその利用,繊維と工業,第48巻第4号,日本,1992年,第9-13頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D31/00-31/32
D06M10/00-16/00
19/00-23/18
D06N1/00-7/06
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の相互接続孔を画定するバクテリアナノセルロース繊維の三次元網を含む多孔質体であって、前記多孔質体が、純粋なバクテリアナノセルロースを含む、多孔質体と、
前記複数の相互接続孔内に注入された油と、
を含む、バクテリアナノセルロース(BNC)
生地材料
であって、
前記多孔質体が、決して乾燥されないバクテリアナノセルロースを含む、BNC
生地材料。
【請求項2】
複数の相互接続孔を画定するバクテリアナノセルロース繊維の三次元網を含む多孔質体であって、前記多孔質体が、純粋なバクテリアナノセルロースを含む、多孔質体と、
前記複数の相互接続孔内に注入された油と、
を含む、バクテリアナノセルロース(BNC)生地材料であって、
前記多孔質体が完全に脱水されている
、BNC
生地材料。
【請求項3】
前記バクテリアナノセルロース繊維が、少なくとも65%のXRDによって測定される結晶化度を有する、請求項1
又は2に記載
のBNC
生地材料。
【請求項4】
前記多孔質体が
、15mg/cm
2
~40mg/cm
2の範囲のセルロース含有量を有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載
のBNC
生地材料。
【請求項5】
複数の相互接続孔を画定するバクテリアナノセルロース繊維の三次元網を含む多孔質体であって、前記多孔質体が、純粋なバクテリアナノセルロースを含む、多孔質体と、
前記複数の相互接続孔内に注入された油と、
を含む、バクテリアナノセルロース(BNC)生地材料であって、
前
記BNC
生地材料が
、1mm
~10mmの範囲の厚さを有する
、BNC
生地材料。
【請求項6】
前記油が、前
記BNC
生地材料の総重量の少なくとも70重量%を含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載
のBNC
生地材料。
【請求項7】
前記油が、前
記BNC
生地材料の総重量
の70重量%
~95重量%を含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載
のBNC
生地材料。
【請求項8】
前
記BNC
生地材料が
、275N/cm
2
~2100N/cm
2の範囲の引張強さを有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載
のBNC
生地材料。
【請求項9】
前
記BNC
生地材料が
、50N
~150Nの範囲の破壊時の引張荷重値を有する、請求項1~
8のいずれか一項に記載
のBNC
生地材料。
【請求項10】
前
記BNC
生地材料が
、5N
~40Nの範囲のステッチ引抜き破壊荷重を有する、請求項1~
9のいずれか一項に記載
のBNC
生地材料。
【請求項11】
1種以上の染料又は封止剤を更に含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載
のBNC
生地材料。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のBNC
生地材料を含む、生地材料。
【請求項13】
前記生地材料が、
前記BNC
生地材料の単一シートを含む、請求項
12に記載の生地材料。
【請求項14】
前記生地材料が、
前記BNC
生地材料の複数のシートを含む、請求項
12に記載の生地材料。
【請求項15】
前記生地材料が、ストリップ、ストランド、若しくは繊維、又はこれらの組み合わせの形態の複数の
前記BNC
生地材料を含み、前記ストリップ、前記ストランド、若しくは前記繊維、又は前記これらの組み合わせのそれぞれが、前記ストリップ、前記ストランド、前記繊維、又は前記これらの組み合わせの別のものと相互接続されている、又は絡み合わされている、請求項
12に記載の生地材料。
【請求項16】
バクテリアナノセルロース(BNC)
生地材料の調製方法であって、
バクテリア
で発酵させて、複数の相互接続孔を画定する三次元網を有するバクテリアナノセルロース繊維の多孔質体を形成することと、
前記多孔質体を機械的に押圧することと、
前記多孔質体を脱水することと、
前記多孔質体に油を含む油注入流体を注入して、前記多孔質体の孔内に前記油を捕捉するようにし、
前記BNC
生地材料を形成することと、
を含
み、
前記多孔質体を脱水することが、1種以上の水混和性有機溶媒を含む溶媒を使用することを含み、
前記溶媒が、沸騰するまで加熱される、方法。
【請求項17】
前記発酵工程が
、30±2℃の範囲の温度で発酵させることを含む、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記発酵工程が
、4.1
~4.6のpH範囲で生じる、請求項
16又は
17に記載の方法。
【請求項19】
前記発酵工程が
、5日
~30日の範囲の期間、発酵させることを含む、請求項
16~
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
発酵後に前記多孔質体を精製することを更に含む、請求項
16~
19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
バクテリアナノセルロース(BNC)生地材料の調製方法であって、
バクテリアで発酵させて、複数の相互接続孔を画定する三次元網を有するバクテリアナノセルロース繊維の多孔質体を形成することと、
前記多孔質体を機械的に押圧することと、
前記多孔質体を脱水することと、
前記多孔質体に油を含む油注入流体を注入して、前記多孔質体の孔内に前記油を捕捉するようにし、前記BNC生地材料を形成することと、
を含み、
前記多孔質体を脱水することが、1種以上の水混和性有機溶媒を含む溶媒を使用することを含み、
前記バクテリアナノセルロース繊維対前記溶媒の、mg/mlで表した重量対体積比が
、15:1
~8:1の範囲である
、方法。
【請求項22】
バクテリアナノセルロース(BNC)生地材料の調製方法であって、
バクテリアで発酵させて、複数の相互接続孔を画定する三次元網を有するバクテリアナノセルロース繊維の多孔質体を形成することと、
前記多孔質体を機械的に押圧することと、
前記多孔質体を脱水することと、
前記多孔質体に油を含む油注入流体を注入して、前記多孔質体の孔内に前記油を捕捉するようにし、前記BNC生地材料を形成することと、
を含み、
前記油注入流体が、前記注入工程中に加熱される
、方法。
【請求項23】
バクテリアナノセルロース(BNC)生地材料の調製方法であって、
バクテリアで発酵させて、複数の相互接続孔を画定する三次元網を有するバクテリアナノセルロース繊維の多孔質体を形成することと、
前記多孔質体を機械的に押圧することと、
前記多孔質体を脱水することと、
前記多孔質体に油を含む油注入流体を注入して、前記多孔質体の孔内に前記油を捕捉するようにし、前記BNC生地材料を形成することと、
を含み、
前記バクテリアナノセルロース繊維対前記油注入流体の、mg/mlで表した重量対体積比が
、15:1
~1:1の範囲である
、方法。
【請求項24】
バクテリアナノセルロース(BNC)生地材料の調製方法であって、
バクテリアで発酵させて、複数の相互接続孔を画定する三次元網を有するバクテリアナノセルロース繊維の多孔質体を形成することと、
前記多孔質体を機械的に押圧することと、
前記多孔質体を脱水することと、
前記多孔質体に油を含む油注入流体を注入して、前記多孔質体の孔内に前記油を捕捉するようにし、前記BNC生地材料を形成することと、
を含み、
前記油注入流体が、乳化剤を含む
、方法。
【請求項25】
前記乳化剤が、水混和性有機溶媒である、請求項
24に記載の方法。
【請求項26】
前記油注入流体が
、90:10
~10:90の範囲の体積による油対乳化剤比を有する、請求項
24又は
25に記載の方法。
【請求項27】
前
記BNC
生地材料を染色することを更に含む、請求項
16~
26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2019年4月11日出願の米国仮特許出願第62/832,311号の利益を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、布地及び生地として使用するための油注入バクテリアナノセルロース材料、並びにその製造方法を目的とする。
【背景技術】
【0003】
皮革産業は、動物の皮や革の機械的及び化学的処理を通じて、(他の生地材料と比較して)所望の物理的及び取り扱い特性を備えた固有の生地材料を製造する1000億ドル超の産業である。皮革産業は、皮革製品の需要が肉産業を上回る速度で成長している。動物肉に対する需要は、約3パーセントの速度で上昇し、人口の上昇率を厳密に反映しているが、皮革製品の需要は4~7%の速度で上昇している。この需要増により、皮革材料の供給業者は、皮革材料の需要増を満たすために、他の家畜類にも目を向けざるを得なかった。
【0004】
皮革のなめしは大量の水の消費を必要とし、化学物質に労働者を曝露し、土壌や水の汚染、及び大量の有機廃棄物を生み出している。処理される皮材料1トン(約1,000kg)毎に、推定200kgの最終製品が製造される。残りの材料は、現在商業的価値がない有機廃棄物である。
【0005】
合成皮革材料は環境及び家畜にあまり影響を与えない代替物を提供するが、合成皮革は、取り扱い特性、耐久性、及び美観に劣り、採用がうまくいっていない。合成皮革は、実際の皮革生地よりも優れたいくつかの特性を提供するが、プラスチックのような品質と均一な外観が、安価に感じられ、ファッション業界に好まれず、実際の革の香りや手触りを含む動物の皮によって提供されるランダムな特性や質感の方が好まれている。
【0006】
合成皮革産業の別の問題は、環境に配慮した閉鎖的なプロセスではないことである。皮革なめし産業は大きな環境影響をもたらすが、皮革製品は経時的に容易に分解し、生分解するのに対し、合成皮革製品は生分解性ではなく、毒素、ダイオキシン、及びフタレートを、耐用年数後も何年も環境に放出し得ることが一般的に認識されている。ポリウレタン、溶媒、可塑剤、及びポリ塩化ビニルなど、合成皮革の製造に使用される原材料の多くは、採掘又は前処理されたときに環境に悪影響を及ぼす。
【0007】
更に、合成皮革は本物の皮革よりも耐久性に劣るだけでなく、天然材料と比較して、摩耗の性質が望ましくない。実際には、本物の皮革材料は、年月が過ぎると、使い込んだ趣きと軟らかな質感が出てきて、より望ましくなることがある。使い古された合成皮革は、剥離し始めて、望ましくない美的特性を呈する。
【0008】
皮革及び模造皮革製品の消費者に利用可能な現在の選択肢は、価格と品質の妥協を要する複雑な取引を表している。倫理観、環境影響、及び製品性能の妥協を必要としない天然材料の入る隙間が市場に存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
天然皮革の望ましい属性に似せた美的品質を維持しながら、原材料の獲得における環的影響、並びに生産及び劣化の両方の悪影響を低減する生地及び布地用の材料を利用することは有益であろう。
【0010】
様々な由来のセルロースが、複数の用途に使用できる汎用性の高い生体材料であることは既に証明されている。紙製品、食品、電子機器、薬物コーティング、及び包帯などを含む広範な用途で使用される、全天然、再生可能、生体適合性、及び分解性ポリマーは、ほぼあらゆる種類の植物及び選択された数の微生物(ある種の酵母やバクテリア)によって合成されている。
【0011】
バクテリアから形成されるセルロース、すなわち、バクテリアナノセルロース(BNC)は、高強度、適合性、及び取り扱い特性を有する天然に生じる材料を表す。バクテリア由来のセルロースは、特定の条件下で、きめの質感及び柔軟性などの、天然の皮(例えば、皮革)の物理的及び機械的特性の一部をシミュレートすることができるセルロースナノ繊維の多孔質三次元網を形成する。
【0012】
したがって、本開示は、バクテリアナノセルロース繊維の三次元網を有する多孔質体であって、ナノセルロース繊維網が複数の相互接続孔を画定する多孔質体と、複数の孔内に注入された油と、を含む油注入バクテリアナノセルロース(BNC)材料に関する。
【0013】
特定の実施形態では、油注入BNC材料は、決して乾燥されないバクテリアナノセルロースの多孔質体を含む。特定の実施形態では、多孔質体は純粋なBNC材料である。特定の追加の実施形態では、多孔質体は完全に脱水されている。
【0014】
特定の実施形態によれば、ナノセルロース繊維は、少なくとも65%のX線回折(XRD)によって測定される結晶化度を有する。特定の実施形態では、多孔質体は、約20mg/cm2~約30mg/cm2の範囲のセルロース含有量を有する。更に他の実施形態では、油注入BNC材料は、約1mm~約10mmの範囲の厚さを有する。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、油は、油注入BNC材料の総重量の少なくとも70重量%を含む。更に他の実施形態では、油は、油注入BNC材料の総重量の約70重量%~約95重量%を含む。
【0016】
特定の実施形態によれば、油注入BNC材料は、約275N/cm2~約2100N/cm2の範囲の引張強さを有する。更なる実施形態によれば、油注入BNC材料は、約50N~約150Nの範囲の破壊時の引張荷重値を有する。なお更なる実施形態によれば、油注入BNC材料は、約5N~約40Nの範囲のステッチ引抜き破壊荷重を有する。
【0017】
特定の実施形態によれば、油注入BNC材料は、1つ以上の染料又は封止剤を更に含む。
【0018】
本開示によれば、既に詳述したように、油注入BNCを含む生地又は布地材料が記載される。
【0019】
特定の実施形態では、生地又は布地材料は、油注入BNCの単一シートを含む。特定の更なる実施形態では、生地材料は、油注入BNCの複数のシート、換言すれば、油注入BNCの多層生地材料を含む。特定の追加の実施形態では、シートは、織られた、編まれた、編組された、又は当業者にとって一般的に既知な織り合わせ若しくは相互接続方法による、複数の油注入BNCのストリップ、ストランド、繊維、又はこれらの組み合わせを含むことができる。代替実施形態では、油注入シートは、連続的で均一な一体構造である。
【0020】
本開示は、油注入バクテリアナノセルロース(BNC)材料の調製方法を更に説明し、この方法は、
バクテリアを発酵させて、複数の相互接続孔を画定する三次元網を有するバクテリアナノセルロース繊維の多孔質体を形成する工程と、
多孔質体を機械的に押圧する工程と、
多孔質体を脱水する工程と、
多孔質体に油を含む油注入流体を注入して、多孔質体の孔内に油を捕捉するようにし、油注入BNC材料を形成する工程と、を含む。
【0021】
特定の実施形態によると、発酵工程は、約30℃±2℃の範囲の温度で発酵させることを含む。追加の実施形態によると、発酵工程は、約5日~約30日の範囲の期間、発酵させることを含む。特定の実施形態では、発酵は、約4.1~約4.6のpH範囲で行われる。特定の実施形態では、本方法は、発酵後に多孔質体を精製することを含むことができる。
【0022】
特定の実施形態によれば、多孔質体を脱水することは、1つ以上の水混和性有機溶媒を含む溶媒を使用することを含む。特定の実施形態では、溶媒は沸騰するまで加熱される。更なる実施形態では、ナノセルロース繊維対溶媒の、mg/mlで表した重量対体積比は、約15:1~約8:1の範囲であり得る。
【0023】
特定の実施形態によれば、油注入流体は、注入工程中に加熱される。更なる実施形態によれば、ナノセルロース繊維対油注入流体の、mg/mlで表した重量対体積比は、約1:1~約1:10の範囲である。
【0024】
特定の実施形態によれば、油注入流体は乳化剤を含む。更なる実施形態では、乳化剤は、水混和性有機溶媒を含む。更なる実施形態によれば、油注入流体は、約90:10~約10:90の範囲の体積による油対乳化剤比を有する。
【0025】
更なる実施形態によれば、本方法は、油注入BNC材料を染色する工程を更に含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】以下に記載される引張強さ試験で使用される試験片(
図1Aは#1~10、
図1Bは#11~20、及び
図1Cは#21~30)の写真画像である。
【
図1B】以下に記載される引張強さ試験で使用される試験片(
図1Aは#1~10、
図1Bは#11~20、及び
図1Cは#21~30)の写真画像である。
【
図1C】以下に記載される引張強さ試験で使用される試験片(
図1Aは#1~10、
図1Bは#11~20、及び
図1Cは#21~30)の写真画像である。
【
図2A】以下に記載される縫合糸引抜き試験で使用される試験片(
図2Aは#1~10、
図2Bは#11~20、及び
図2Cは#21~30)の写真画像である。
【
図2B】以下に記載される縫合糸引抜き試験で使用される試験片(
図2Aは#1~10、
図2Bは#11~20、及び
図2Cは#21~30)の写真画像である。
【
図2C】以下に記載される縫合糸引抜き試験で使用される試験片(
図2Aは#1~10、
図2Bは#11~20、及び
図2Cは#21~30)の写真画像である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本文書において、「a」又は「an」なる語は、1つ又は1つよりも多くのものを含むために用いられ、「又は」なる語は、特に断らないかぎりは非限定的な「又は」のことを指して用いられる。更に、本明細書で用いられ、他の意味で定義されていない語法又は用語法は、あくまで説明を目的としたものであって限定を目的としたものではない点を理解されたい。更に、本文書において参照されるすべての刊行物、特許、及び特許文献は、恰も個別に参照により援用されたのと同様にしてそれらの全容を参照により本明細書に援用するものである。本文書と参照によりそのように援用された文書との間で矛盾する使用が見られる場合には、援用文献における使用は、本文書における使用の補足とみなすべきであり、相容れない矛盾の場合には、本文書における使用が優先されるものとする。値の範囲が表されている場合、別の実施形態においては、ある特定の値から、及び/又は他の特定の値までが含まれる。同様に、先行する「約」によって値が近似の形式で表現された場合、その特定値により別の実施形態が形成されることが理解されるであろう。範囲はいずれも包括的であり、組み合わせが可能である。更に、範囲で記述される値への言及は、その範囲内のあらゆる値が含まれる。分かりやすさのために別々の実施形態として本明細書に述べられる本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて示される場合もある点も認識されるであろう。逆に、簡潔のために単一の実施形態として記載される本発明の様々な特徴はまた、別個に、又は任意の下位の組み合わせで提示されてもよい。
【0028】
本開示によれば、油注入バクテリアナノセルロース(BNC)材料、並びにその形成方法について説明する。本開示に特に適したバクテリアセルロースの1つの種は、バクテリアアセトバクター・キシリナム(グルコナセトバクター及び/又はコマガタアイバクターとして再分類される)によって合成される。このバクテリアによって生成されるセルロースは、水素間結合によって安定化された純粋なセルロースナノ繊維(すなわち、ナノメートル範囲の断面寸法を有するセルロース繊維)から成る高度な結晶性三次元網を特徴とする。このような繊維網は、高強度、柔軟性、及び大きなナノ繊維表面積を発揮する。セルロースナノ繊維は、二次充填材料の捕捉及び保持を可能にする、高い空隙空間(すなわち、多孔性)を有する相互連結不均質孔網を画定する。これらの特性により、この材料は、タンパク質コラーゲンの三次元網から形成される天然皮革製品の代替品として理想的に適する。特定の実施形態によれば、バクテリアナノセルロースは、バクテリア源のみから合成されたセルロースであるという点で、「純粋なバクテリアナノセルロース」である。換言すれば、セルロース合成プロセス又は最終製品の全体的な構造及び外観に寄与する、例えば酵母などの他の種類の微生物は存在しない。特定の実施形態では、純粋なバクテリアナノセルロースは、ビネガーバクテリア源、例えば、グルコナセトバクターからのみ合成される。
【0029】
特定の実施形態によれば、バクテリアナノセルロース繊維は、XRDによって測定されるとき、少なくとも65%、好ましくは少なくとも80%、最大で少なくとも95%の結晶化度を有する。更なる実施形態によれば、多孔質体は、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の孔体積(すなわち、多孔性)を有する。追加の実施形態によると、多孔質体は、約15mg/cm2~約40mg/cm2の範囲、例えば、約20mg/cm2~約30mg/cm2の範囲のセルロース含有量を有する。本明細書で測定されるセルロース含有量について、以下に更に説明する。
【0030】
本開示によれば、バクテリアナノセルロース繊維の多孔質体と、油成分とを含み、油成分が多孔質体の孔網内に捕捉される油注入BNC材料が記載されている。本明細書で使用するとき、「油」は、鉱油及びミネラルワックス、並びに植物及び動物由来の天然の油、脂肪、及びワックス、並びにそれらの合成誘導体を含む。動物の皮のなめしプロセスにおいて有用であることが知られている油及びワックスは、本開示において好適であると考えられる。油成分は、純粋な油の組成物、並びに重量の大部分が油を含む組成物、又は油の組み合わせ若しくは混合物を含むことができる。特定の実施形態では、油成分は、多孔質体の多孔質網への油の浸透を助けるために、少量部分の乳化剤を含むことができる。好適な乳化剤としては、例えば、以下により詳細に記載されるような水混和性有機溶媒を挙げることができる。
【0031】
鉱油及びミネラルワックス:
鉱油及びミネラルワックスは、原油から得られる副産物であり、典型的には、蒸留によって分離される多くのアルカン及びシクロアルカンの混合物を含む。鉱油は、典型的には水と不混和性であり、ある程度の防水特性を提供することができる。これらは様々な粘度で入手可能であり、典型的には水よりも密度が高い。ミネラルワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、亜炭ワックス、及びセレシンワックスを挙げることができる。このリストは排他的であることを意味するものではない。
【0032】
天然の油、脂肪、及びワックス:
典型的には、動物、魚、及び植物における油及び脂肪の大部分は、脂肪酸グリセリドである。これらの脂肪酸はほとんど水不溶性であり、非常に流動性の高い油性液体からグリース状ペースト及び硬質ワックス状物質までに及ぶ。
【0033】
脂肪酸は、飽和又は不飽和として分類され得る。飽和脂肪酸は、通常、より粘性が高いか又は固体であり、太陽光への曝露によって黒く変色せず、典型的には、空気及び水分への曝露時に酸化に耐え得る。不飽和脂肪酸は、より流動性が高く(より粘性が低く)、太陽光で黒く変色し、空気による酸化時に粘着性を有する、又はねばねばするようになる可能性がある。
【0034】
ほとんどの天然に存在する脂肪酸は、偶数のC原子を有する。C-6、C-8、及びC-10などの短鎖飽和脂肪酸は、ココナツ油及びパーム油、乳脂肪、及び他の軟質油中に見出される。C-12、ラウリン酸は、マッコウ鯨油中に見出される。C-16及びC-18の飽和脂肪酸は、動物性脂肪及び多くの植物油に共通である。C-24及びC-25カテゴリーは、カルナウバワックス及び蜜蝋などのワックスに見出される。
【0035】
2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸は、亜麻仁油又は綿実油などの乾燥油として分類することができる。一部は、羊毛脂(又は羊毛グリース)に見出されるラノパルミック酸(C-16ヒドロキシ、飽和)及びヒマシ油中に見出されるリシノール酸(C-18ヒドロキシ、不飽和)などの-OH基を含有する。
【0036】
例示的な動物油及び脂肪としては、タラ肝油、ニシン油、サケ油、イワシ油、日本魚油、メンハーデン油、鯨油(例えば、マッコウ鯨油)、牛脂、羊脂、羊毛脂肪及びグリース、ステアリン、ステアリン酸、乳脂肪(又はバター脂肪)、及び牛脚油を挙げることができる。例示的な植物油としては、ココナッツ油、綿実油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、亜麻仁油、及び大豆油を挙げることができる。例示的な天然ワックスとしては、カルナウバワックス、カンデリラワックス、及び蜜蝋を挙げることができる。
【0037】
更なる実施形態によれば、多孔質体は完全に脱水されている。本明細書で使用するとき、「完全に脱水されている」とは、多孔質体が5重量%未満の遊離水分子を含有し、特定の実施形態では、1重量%未満の遊離水分子を含有し得ることを意味する。何らかの程度の水素結合が、多孔質体のナノセルロースポリマー鎖内及びそれらの間で発生し、それにより、ある割合の水分子がポリマー網内の水素結合によって結合され得、したがって、当該技術分野において理解されるようには「遊離」でないことを理解されたい。
【0038】
本開示の特定の実施形態によれば、多孔質体は、合成から最終状態まで「決して乾燥されない」。本明細書で使用するとき、多孔質体を指すとき、「決して乾燥されない」とは、バクテリアナノセルロース繊維の多孔質網によって画定される空隙空間の総体積の少なくとも80%、好ましくは90%、最も好ましくは95%以上が、発酵から本明細書に記載される最終的な油注入BNC材料の実施形態まで、液体で連続的に占められることを意味する。特定の実施形態では、明示される場合、「決して乾燥されない」は、空隙空間の総体積の95%以上を占める多孔質体又は油注入BNC材料が、発酵開始から液体で連続的に占有されていることを指す。
【0039】
本明細書で使用するとき、用語「脱水」及び「乾燥」は、同じ範囲を対象とすることを意図するものではないことに更に留意されたい。脱水は、特定の状況下で乾燥を含み得る水除去のプロセスを指す。乾燥は、(任意の種類の)液体が多孔質体の孔から除去され、孔空間が気体又は蒸気(例えば、空気又はCO2)によって占有されるプロセスを指す。
【0040】
「決して乾燥されない」バクテリアナノセルロースの多孔質体の利点は、生地産業における潜在的な用途に関連し得る。セルロース系材料が生地製造のために検討されてきたが、大きな欠点は、セルロースシートが乾燥時に好ましい品質の一部を失う可能性があることである。天然の水和(すなわち、「湿潤」)状態のセルロースは、生地材料にとって多くの特性を発揮する。しかしながら、湿潤セルロースが環境に曝されると、繊維網によって画定される孔空間を占める水が蒸発し始める。これにより、多糖鎖中の鎖内架橋と、多孔質網中の水分子からの水素結合によって提供される鎖間架橋の両方で、架橋が切断される。この架橋の損失が生じると、水によってそれまで占有されていた孔が潰れ、利用可能な孔空間及び孔径が減少し、残りの孔空隙へのアクセスが阻害される。その結果、残りの低減された孔空間を操作する能力の低下と共に、望ましくない取り扱い特性を有する、セルロースが密に潰れた製品となる。
【0041】
したがって、乾燥後に調整して湿らせることができる動物の皮とは異なり、バクテリアナノセルロース繊維から構成される多孔質体の乾燥は、多孔質構造が崩壊して材料を薄く稠密化させる程度まで不可逆的であり、このことは、材料に柔軟剤を注入しようとする後続の試みを阻害する。決して乾燥されない状態に保たれたバクテリアナノセルロースの多孔質体は、続いて油を注入されると、広範な環境条件において安定になり得、動物の皮革と非常に類似した取り扱い及び機械的特性を有する。バクテリアナノセルロースの多孔質体への油、脂肪、及びワックスの注入は、動物の皮の従来のなめし技術を使用しては効率的に達成されない。本開示の実施形態による、決して乾燥されないバクテリアナノセルロースの多孔質体への油注入は、強度な化学的処理の使用、動物の屠殺、及び環境汚染を排除するという追加の利点と共に、皮革のような特性、耐久性、及び外観を備えた、完全に自然な環境分解性製品を作り出すことができる。
【0042】
本開示の実施形態によれば、油注入BNC材料は、約1mm~約20mmの範囲、例えば、約1mm~約10mmの範囲、例えば、約1mm~約5mmの範囲の厚さを有することができる。更なる実施形態によれば、油は、油注入BNC材料の総重量の少なくとも70重量%、最大約95重量%、例えば、約75重量%~約95重量%、約75重量%~約90重量%、約80重量%~約95重量%、約80重量%~約90重量%、約80重量%~約85重量%、約85重量%~約90重量%、及び本明細書に開示される範囲の任意の部分的組み合わせを含む。
【0043】
本開示の実施形態によれば、油注入BNC材料は、約275N/cm2~約2100N/cm2の範囲の引張強さを有する。更なる実施形態によれば、油注入BNC材料は、約50N~約150Nの破壊時の引張荷重値を有する。なお更なる実施形態によれば、油注入BNC材料は、約5N~約40Nのステッチ引抜き破壊荷重を有する。
【0044】
本開示によれば、既に詳述したように、油注入BNCを含む生地又は布地材料が記載される。特定の実施形態では、生地又は布地材料は、油注入BNCの単一シートを含む。特定の更なる実施形態では、生地材料は、油注入BNCの複数のシート、換言すれば、油注入BNCの多層生地材料を含む。特定の追加の実施形態では、シートは、織られた、編まれた、編組された、又は当業者にとって一般的に既知な織り合わせ若しくは相互接続方法による、複数の油注入BNCのストリップ、ストランド、繊維、又はこれらの組み合わせを含むことができる。代替実施形態では、油注入シートは、連続的で均一な一体構造である。
【0045】
本開示によれば、油注入BNC材料の調製方法は、
バクテリアを発酵させて、複数の相互接続孔を画定する三次元網を有するバクテリアナノセルロース繊維の多孔質体を形成することと、
多孔質体を機械的に押圧することと、
多孔質体を脱水することと、
多孔質体に油を含む油注入流体を注入して、多孔質体の孔内に油を捕捉するようし、油注入BNC材料を形成することと、
油注入BNC材料を乾燥させることと、を含む。
【0046】
セルロース膜の成長
本開示の油注入BNC材料を調製する際、バクテリア細胞(この場合、グルコナセトバクター・キシリナム(アセトバクター・キシリナム))が、液体栄養培地を含むバイオリアクター内で培養/インキュベートされる。液体栄養培地の変更は、培養されたバクテリアから産生されるセルロースの得られる品質及び量に影響を及ぼし得る。セルロースの増殖のための培養培地は、典型的には、糖源及び窒素源、並びに追加の栄養添加剤を含む。好適な糖源としては、グルコース、フルクトース、及びガラクトースなどの単糖類、並びにスクロース及びマルトースなどの二糖類、並びにこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。好適な窒素源としては、アンモニウム塩及びアミノ酸を挙げることができる。コーンスティープリカーは、窒素源並びにビタミン及びミネラルを含む追加の望ましい添加剤の両方を提供する、好ましい培養培地成分である。好適な栄養素添加剤は、例えば、リン酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、クエン酸、及び酢酸を更に含み得る。
【0047】
培地の総糖含有量を増加させることにより、より多量のセルロースが生成され得る。添加される糖の種類を変更すること、又は複数の糖が添加される場合、それらのそれぞれの比は、得られるセルロースの収率に変化を生じさせ得る。例えば、グルコース及びフルクトースを含む糖源ブレンドは、一実施形態によると、より高いグルコース対フルクトース比を有することで、より低い強度のセルロース材料をもたらし得る。あるいは、別の実施形態によると、より高いフルクトース対グルコース比を有することで、より高い強度のセルロース材料をもたらし得る。更なる実施形態では、窒素源の量を増加させることにより、生成されるセルロースの量を増加させることができる。
【0048】
特定の実施形態では、培養培地は、例えば、約4.0~4.5の酸性pHに維持される。培地pHを5.0以上に上昇させると、特定の状況では、バクテリア細胞の増殖を減少させ得る。特定の実施形態では、培養培地の温度は、室温よりも高く、例えば、25℃超~約35℃の範囲で維持される。好ましい実施形態では、培養培地は、約30℃の範囲にある。インキュベーション温度の調節は、特定の場合では、セルロース材料の増殖に影響を及ぼし得る。インキュベーション温度を上昇させると、一実施形態によれば、セルロースの収量を増加させ得る。あるいは、インキュベーション温度を低下させると、セルロース材料の収量を減少させ得る。一実施形態によると、バクテリア細胞は、発酵プロセスを開始する前に約1~4日間培養される。
【0049】
適切な量のバクテリアが増殖されると、発酵プロセスが開始する。培養培地は、典型的には、発酵プロセスを開始するためにバイオリアクタートレイに注がれる。特定の実施形態によれば、培養培地中のバクテリア細胞の量が多いほど、産生されるセルロースの量が多くなる。特定の実施形態によると、培養培地の充填重量は、約1.5L~約15Lの範囲、例えば、約4L~約8L、又は約5L~約10Lの範囲である。発酵プロセスは一般的に、蒸発を低減する蓋を有する浅いバイオリアクター中で行うことができる。このようなシステムは、均一なセルロース膜を確実に形成する助けとなる酸素抑制条件を与えることが可能である。バイオリアクターの寸法は、合成されるセルロースの所望の形状、サイズ、厚さ、及び収率に応じて異なりうる。
【0050】
好ましい実施形態では、発酵プロセスは、約30±2℃で、約4.1~約4.6のpHを有する酸性環境において、静的条件下で約5日~約30日間行われる。
【0051】
特定の実施形態では、発酵工程は、約20℃~約40℃、例えば、20℃~30℃、30℃~40℃、25℃~35℃、28℃~32℃、28℃~30℃、及び30℃~32℃の温度範囲で行うことができる。好ましい実施形態では、発酵は28℃~32℃の範囲で行われ、より具体的には約30℃で行われる。
【0052】
発酵は、例えば、約3.3~約7.0の範囲、例えば約3.5~約6.0又は4.0~約5.0の範囲の酸性pH下で行うことができる。好ましい実施形態では、発酵は、約4.1~約4.6のpH範囲で生じる。
【0053】
発酵の期間は変更され得る。本開示の実施形態によると、発酵は、セルロース膜の所望の成長に応じて、約5日~約60日間行うことができる。例えば、発酵は、約5日~約10日、約5日~約30日、約10日~約50日、約10日~約25日、約20日~約60日、約20日~約50日、及び約20日~約30日、並びに本明細書に記載の範囲内に入る範囲の組み合わせで行うことができる。特定の実施形態によれば、発酵期間が長いほど、多量のセルロースが産生され、あるいは発酵時間が短いほど、少量のセルロースが産生される。所望の厚さ及び/又はセルロース収率に応じて発酵を停止させることができ、その時点でセルロース膜(すなわち、セルロースの多孔質体)を発酵トレーバイオリアクターから採取することができる。
【0054】
セルロースの精製
特定の実施形態によると、発酵及び採取完了後、ナノセルロースの多孔質体は、多孔質体が微生物を含まなくなる精製プロセスを経ることができる。すなわち、多孔質体は、バクテリア副生成物及び残留培地を除去するために化学的に処理される。約0.1M~4Mの範囲の好ましい濃度で、苛性溶液、好ましくは水酸化ナトリウムを使用して、多孔質体から発酵中に生成された生菌及びピロゲン(内毒素)を除去する。この処理は最適化するため、約1~約12時間の水酸化ナトリウム中でのプロセス時間を、約30℃~約100℃の温度変化と組み合わせて調べた。好ましい、又は推奨される温度処理は、70℃又はその近辺で生じる。処理された多孔質体を濾過水ですすいで、微生物汚染(バイオバーデン)を低減し、中性pHを達成することができる。加えて、多孔質体を希酢酸溶液で処理して、残存する水酸化ナトリウムを中和することができる。
【0055】
本開示の更なる実施形態によると、採取後、多孔質体は、(利用される場合には精製の前又は後のいずれかの)1回以上の機械的加圧を経て、過剰な水を除去し、全体の厚さを減少させ、多孔質体のセルロース密度を増加させることができる。所望の場合、特定の実施形態によれば、多孔質体は、約-5℃~-80℃の範囲で、約1~30日間、凍結及び脱水を介して熱改質によって更に処理されてもよく、これにより、厚さを更に減少させ、セルロース密度を増加させることができる。
【0056】
多孔質体の溶媒脱水
本開示の更なる実施形態によれば、セルロース膜の採取後、ほとんどの場合、大量の水を物理的に除去し、厚さを圧縮するために多孔質体の初回機械加圧を行った後より頻繁に、多孔質体を水混和性有機溶媒で1~最大数サイクル処理して、更に脱水することができる。必要に応じて、多孔質体は、溶媒交換脱水工程の完了後に更に機械的加圧を経ることができる。
【0057】
例示的な水混和性有機溶媒としては、例えば、アセトアルデヒド、酢酸、アセトン、アセトニトリル、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-ブトキシエタノール、酪酸、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エタノール、エチルアミン、エチレングリコール、ギ酸、フルフリルアルコール、グリセロール、メタノール、メチルジエタノールアミン、メチルイソシアニド、N-メチル-2-ピロリドン、1-プロパノール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-プロパノール、プロパン酸、プロピレングリコール、ピリジン、テトラヒドロフラン、及びトリエチレングリコールが挙げられる。溶媒の好ましいリストとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
特定の実施形態によれば、多孔質体は溶媒中に浸漬される。更なる実施形態によれば、多孔質体は、多孔質体の脱水を増加させるために、処理中に1回以上の溶媒交換を行うことができる。例えば、多孔質体は、溶媒脱水中に、1、2、3、4、5、最大約10回の溶媒交換で浸漬させることができる。特定の実施形態によれば、溶媒は、溶媒脱水プロセス中に、沸点のほぼ近傍又は沸点で加熱され得る。好ましい実施形態では、溶媒は、脱水プロセス全体で沸騰状態にある。更なる実施形態によれば、セルロースナノ繊維対溶媒の重量対体積比(mg/mL)は、15:1以下、12:1以下、10:1以下、又は8:1以下の範囲であり得る。更なる実施形態では、溶媒は、プロセス中、例えば、磁気撹拌装置又は他の既知のプロセスで機械的に撹拌される。前述のように、溶媒交換脱水プロセスの完了後、多孔質体は、再び1回以上の機械的加圧を経て、過剰な溶媒を除去する、又は所望の厚さを達成することができる。
【0059】
超臨界二酸化炭素乾燥
上記の溶媒脱水工程に代えて、又はそれと併せて、多孔質体は、超臨界二酸化炭素を利用する臨界点乾燥によって更に脱水され得る。臨界点乾燥中、湿潤多孔質体(水若しくは溶媒を有するか、又は両方が孔内に封入されたかのいずれか)をホルダ上に装填し、ステンレス鋼メッシュプレートの間に挟み、次いで、加圧下の超臨界二酸化炭素を収容するチャンバ内で浸漬する。ホルダは、多孔質網を通ってCO2が循環できるように設計されており、メッシュプレートは多孔質体を安定化させて乾燥プロセス中に多孔質体が変形することを防止する。溶媒(又は水)がすべて交換された時点で(最も一般的な場合では約1~6時間の範囲)、チャンバ内の温度を二酸化炭素の臨界温度よりも高い温度に上げることにより、CO2が超臨界液/ガスを形成する。この移行の間には表面張力がいっさい存在しないことにより、得られる生成物はその形状、厚さ、及び3Dナノ構造が維持された脱水乾燥多孔質体となる。本開示によれば、得られた多孔質体は、「臨界乾燥された」と称することができる。
【0060】
油注入プロセス
本開示によれば、溶媒若しくは超臨界乾燥、又はその両方を介する多孔質体の脱水後、多孔質体は1回以上の油注入工程を経て、油成分を多孔質体に浸透させ、油注入BNC材料を形成するように、孔網内に捕捉させることができる。典型的には、多孔質体は、油を含む油注入流体を収容する容器内に完全に浸漬される。多孔質体が油注入流体中に浸漬される実施形態では、ナノセルロース繊維対油注入流体の重量対体積比(mg/ml)は、約15:1未満~約1:1、例えば、12:1、10:1、8:1、5:1、4:1、3:1、2:1、及び前述の比のそれぞれの組み合わせ及び部分範囲などである。あるいは、油注入流体は、例えばローラー、ブラシ、又はパッドを使用するなどして、多孔質体に塗布され、加圧され得る。
【0061】
特定の実施形態によれば、油注入流体は、油成分のみを含む。あるいは、油注入流体は、油成分を乳化剤と組み合わせて、多孔質体への油成分の注入を促進することができる。特定の実施形態では、乳化剤及び油を有する油注入流体は、最終的な油注入BNC材料中に捕捉された油の総量を増加させることができる。好適な乳化剤としては、例えば、溶媒脱水プロセスに適するとして上述した水混和性有機溶媒を挙げることができる。特定の実施形態によれば、油注入流体は、約90:10~約10:90の範囲及びその中の任意の部分範囲、例えば、80:20、70:30、60:40、50:50、40:60、30:70、及び20:80の体積による油対乳化剤比を有するように調製することができる。特定の実施形態では、油対乳化剤比が高いほど、最終的な油注入BNC材料中に捕捉された油の濃度が高くなり得る。更に別の実施形態によれば、油注入流体は、油注入プロセス中に加熱することができる。油注入流体を加熱する1つの利点は、周囲温度よりも高い融点を有するより重い油成分のいずれかが、溶融するか、又は少なくとも粘度を低下させて、好適なエマルションの形成を助けることができることを確実にすることである。一実施形態によれば、油注入流体は、沸騰するまで加熱される。更に別の実施形態によれば、油注入流体は、注入プロセス中に常に撹拌される、又は別の方法で混合される。撹拌は、例えば、1つ以上の油が油成分中に存在する、又は油成分が乳化剤と組み合わされる場合などに、油注入流体内の均質性を確保するのに有益である。撹拌は、多孔質体の多孔質網への油注入流体の浸透を更に促進することができる。
【0062】
注入後処理
本開示の更なる実施形態によれば、油注入BNC材料は、更なる加工を経ることができる。例えば、油注入BNC材料を乾燥させて、孔網内に残っている残留水又は溶媒を除去することができる。特定の実施形態では、乾燥は、空気オーブン内で行うことができ、回転式乾燥機で乾燥させることを更に含むことができる。油注入BNCは、表面の質感を変更する、又は表面にデザイン若しくは模様を加えるために、染色及び/又は表面処理などの美的性質を付与するように更に加工することができる。加えて、油注入BNC材料は、最終的な所望の厚さ若しくは重量に達する、又は最終BNC材料から余分な油を除去するために、更に機械的に加圧することができる。更なる実施形態によれば、油注入BNC材料は、孔網内に油を保持するのに役立つ封止又は仕上げ工程を経ることができる。
【実施例】
【0063】
セルロースの調製
グルコナセトバクター(コマガタアイバクター)株をスクロース及びコーンスティープリカー系培地(オートクレーブ工程を含む)中で培養し、7.2L(培地4.2L+接種材料3L)を、発酵のために静止リアクタートレイに注いだ。4.1~4.6のpH範囲で約31℃の温度で26日間発酵させた。採取時、膜は約5cmの平均厚さと5.605kgの重量を有していた。表面に形成された多孔質体(すなわち、膜)は、天然皮革中で観察される美的及び触覚的特性を有した。多孔質体を1~6%水性NaOHで洗浄し、0.1~1%H2O2で漂白し、続いて蒸留/精製水に浸漬して中性pHを得た。最後に、多孔質体を所望の厚さまで機械的に加圧した。精製及び加圧後の水注入多孔質体の重量は230.96gであり、多孔質体は約22.9mg/cm2の平均セルロース含有量を有した。セルロース含有量は、既知の面積の湿潤多孔質体の試料を採取し、55℃で約12時間空気乾燥して、ナノセルロース繊維のみを理論的に含む多孔質体を得ることによって測定した。換言すれば、乾燥多孔質体の総重量は、完全にナノセルロース繊維のみによるものであった。乾燥試料の重量を試料の面積で割ることによってセルロース含有量を測定した。
【0064】
溶媒抽出
次いで、湿潤加圧された多孔質体を45個のストリップに切断し、各ストリップは約5cm×5cmであり、約575mg(すなわち、22.9mg/cm2)のセルロース含有量を有していた。湿潤ストリップの厚さを、4隅のそれぞれで測定し、それらの平均湿潤厚さを以下の表に記録した。次いで、ストリップを10個の試料の3つの群にランダムに分割し、各試料を溶媒抽出工程及び油注入工程によって処理した。試料についての溶媒抽出は同じであり、純度99%の沸騰エチルアルコール[ETOH](約70℃)を使用した多工程抽出を含んだ。試料を、約200rpmで動作する機械撹拌機を備え、約1500mLのETOHを収容したフラスコ内に、約2時間~24時間置いた。第2の抽出工程は、第1、2、及び第3群の10試料のそれぞれで別々に、200rpmで動作する撹拌機を含め、500mLの沸騰ETOHを用いて約2時間~24時間行った。試料を溶媒抽出から除去した後、それらを秤量し、油注入工程のために調製した。溶媒洗浄後の試料の重量を、以下の表に「洗浄重量」として記録する。
【0065】
油注入
群1の試料(試料1~10)を、一定混合下で約70℃で加熱した油注入流体を入れたフラスコ内に置いた。油注入流体は、250mLのETOHを乳化剤として、及び250mlの未精製ココナッツ油(50:50乳化剤/油比)を含有した。群2の試料(試料11~20)を、一定混合下で約70℃で加熱した油注入流体を入れたフラスコ内に置いた。油注入流体は、350mLのETOHを乳化剤として、及び150mlの未精製ココナッツ油(70:30乳化剤/油比)を含有した。群3の試料(試料21~30)を、一定混合下で約70℃で加熱した油注入流体を入れたフラスコ内に置いた。油注入流体は、150mLのETOHを乳化剤として、350mlの未精製ココナッツ油(30:70乳化剤/油比)を含有した。試料の各群は、約2時間の油注入を経た。油注入プロセスの完了後、試料を秤量して重量を記録し、以下の表に「注入重量」として示した。試料を、換気フード内で約24時間乾燥させ、その乾燥重量及び平均厚さを記録した。最終的な乾燥生成物の油重量及び油パーセントは、油注入BNC材料の総乾燥重量から、試料の既知のセルロース重量(約575mg)を差し引くことによって計算した。以下は、群1~3に関して、溶媒洗浄段階から乾燥までの試料の測定重量及び厚さを示す表である。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
油注入BNC材料試料を、引張強さ及びスティク引抜きについて更に試験して、生地材料としての適合性を評価した。
【0070】
引張強さ
試料を、250Nのロードセル容量を有し、50mm/分に設定されたMTS Insight 100(EM05)で試験した。
図1A~Cに示されるように、各群1~3の試験片の形状を、試験用に約5cm×1.5cmに変更し、長さ約2cm及び幅4~5mmの中央切取り部を有する略バーベル形状にした。試料を計器グリップに置き、破壊するまでの引張荷重及び変位長を記録した。群1~3のそれぞれについての測定値を、以下の表に示す。「引張荷重」は、ニュートンでの破壊時の力の測定値である。「引張強さ」は、破壊時の引張荷重を試験片の断面積(厚さ×幅)で割った測定値である。
【0071】
【表4】
**試験片5は引張特性について試験しなかった。
【0072】
【0073】
【0074】
ステッチ/縫合引抜き
試料を、250Nのロードセル容量を有し、300mm/分に設定されたMTS Insight 100(EM05)で試験した。
図2A~Cに示されるように、各群1~3の試験片の形状を試験用に約4cm×1.0cmに変更し、各境界から約0.5cmの一端にステッチを配置した。試料を一方のグリップに置き、過剰なステッチ長を他方のグリップで把持した。器具を作動させ、試料の変位距離及び破壊時の荷重を記録し、その値を以下の表に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
以上、本開示を複数の実施形態に基づいて説明したが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例えば添付の特許請求の範囲に示されるような様々な変更、代替及び改変を本明細書において行い得る点が理解されるはずである。したがって、本開示の範囲は本明細書に述べられるプロセス、製造、物質の組成、方法及び工程の特定の実施形態に限定されるものではないことを認識するべきである。例えば、一実施形態による上記に述べたような様々な特徴は、特に断らないかぎりは他の実施形態に取り入れることができる。更に、当業者であれば本開示から容易に認識されるように、本明細書に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能を行うか又は実質的に同じ結果を実現する既存の、又は将来的に開発されるプロセス、製造、物質の組成、方法、又は工程を本開示に基づいて利用することが可能である。
【0079】
〔実施の態様〕
(1) 複数の相互接続孔を画定するバクテリアナノセルロース繊維の三次元網を含む多孔質体と、
前記複数の孔内に注入された油と、
を含む、油注入バクテリアナノセルロース(BNC)材料。
(2) 前記多孔質体が、決して乾燥されないバクテリアナノセルロースを含む、実施態様1に記載の油注入BNC材料。
(3) 前記多孔質体が、純粋なバクテリアナノセルロースを含む、実施態様1又は2に記載の油注入BNC材料。
(4) 前記多孔質体が完全に脱水されている、実施態様1~3のいずれかに記載の油注入BNC材料。
(5) 前記ナノセルロース繊維が、少なくとも65%のXRDによって測定される結晶化度を有する、実施態様1~4のいずれかに記載の油注入BNC材料。
【0080】
(6) 前記多孔質体が、約15mg/cm2~約40mg/cm2の範囲のセルロース含有量を有する、実施態様1~5のいずれかに記載の油注入BNC材料。
(7) 前記油注入BNC材料が、約1mm~約10mmの範囲の厚さを有する、実施態様1~6のいずれかに記載の油注入BNC材料。
(8) 前記油が、前記油注入BNC材料の総重量の少なくとも70重量%を含む、実施態様1~7のいずれかに記載の油注入BNC材料。
(9) 前記油が、前記油注入BNC材料の総重量の約70重量%~約95重量%を含む、実施態様1~8のいずれかに記載の油注入BNC材料。
(10) 前記油注入BNC材料が、約275N/cm2~約2100N/cm2の範囲の引張強さを有する、実施態様1~9のいずれかに記載の油注入BNC材料。
【0081】
(11) 前記油注入BNC材料が、約50N~約150Nの範囲の破壊時の引張荷重値(tensile load at failure value)を有する、実施態様1~10のいずれかに記載の油注入BNC材料。
(12) 前記油注入BNC材料が、約5N~約40Nの範囲のステッチ引抜き破壊荷重を有する、実施態様1~11のいずれかに記載の油注入BNC材料。
(13) 1つ以上の染料又は封止剤を更に含む、実施態様1~12のいずれかに記載の油注入BNC材料。
(14) 複数の相互接続孔を画定するバクテリアナノセルロース繊維の三次元網を含む多孔質体と、
前記複数の孔内に注入された油と、
を含む、油注入バクテリアナノセルロース(BNC)材料を含む、生地材料。
(15) 前記生地材料が、油注入BNC材料の単一シートを含む、実施態様14に記載の生地材料。
【0082】
(16) 前記生地材料が、油注入BNC材料の複数のシートを含む、実施態様14に記載の生地材料。
(17) 前記生地材料が、ストリップ、ストランド、若しくは繊維、又はこれらの組み合わせの形態の複数の油注入BNC材料を含み、前記ストリップ、前記ストランド、若しくは前記繊維、又は前記これらの組み合わせのそれぞれが、前記ストリップ、前記ストランド、前記繊維、又は前記これらの組み合わせの別のものと相互接続されている、又は絡み合わされている、実施態様14に記載の生地材料。
(18) 油注入バクテリアナノセルロース(BNC)材料の調製方法であって、
バクテリアを発酵させて、複数の相互接続孔を画定する三次元網を有するバクテリアナノセルロース繊維の多孔質体を形成することと、
前記多孔質体を機械的に押圧することと、
前記多孔質体を脱水することと、
前記多孔質体に油を含む油注入流体を注入して、前記多孔質体の前記孔内に前記油を捕捉するようにし、油注入BNC材料を形成することと、
を含む、方法。
(19) 前記発酵工程が、約30±2℃の範囲の温度で発酵させることを含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記発酵工程が、約4.1~約4.6のpH範囲で生じる、実施態様18又は19に記載の方法。
【0083】
(21) 前記発酵工程が、約5日~約30日の範囲の期間、発酵させることを含む、実施態様18~20のいずれかに記載の方法。
(22) 発酵後に前記多孔質体を精製することを更に含む、実施態様18~21のいずれかに記載の方法。
(23) 前記多孔質体を脱水することが、1つ以上の水混和性有機溶媒を含む溶媒を使用することを含む、実施態様18~22のいずれかに記載の方法。
(24) 前記溶媒が、沸騰するまで加熱される、実施態様23に記載の方法。
(25) 前記ナノセルロース繊維対前記溶媒の、mg/mlで表した重量対体積比が、約15:1~約8:1の範囲である、実施態様23又は24に記載の方法。
【0084】
(26) 前記油注入流体が、前記注入工程中に加熱される、実施態様18~25のいずれかに記載の方法。
(27) 前記ナノセルロース繊維対前記油注入流体の、mg/mlで表した重量対体積比が、約15:1~約1:1の範囲である、実施態様18~26のいずれかに記載の方法。
(28) 前記油注入流体が、乳化剤を含む、実施態様18~27のいずれかに記載の方法。
(29) 前記乳化剤が、水混和性有機溶媒である、実施態様28に記載の方法。
(30) 前記油注入流体が、約90:10~約10:90の範囲の体積による油対乳化剤比を有する、実施態様28又は29に記載の方法。
【0085】
(31) 前記油注入BNC材料を染色することを更に含む、実施態様18~30のいずれかに記載の方法。