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特許7532408導電性架橋ポリマー膜に導電性ナノ粒子材料を統合するプロセス
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  • 特許-導電性架橋ポリマー膜に導電性ナノ粒子材料を統合するプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】導電性架橋ポリマー膜に導電性ナノ粒子材料を統合するプロセス
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/56 20130101AFI20240805BHJP
   H01G 11/32 20130101ALI20240805BHJP
   H01G 11/36 20130101ALI20240805BHJP
   H01G 11/42 20130101ALI20240805BHJP
   H01G 11/46 20130101ALI20240805BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20240805BHJP
【FI】
H01G11/56
H01G11/32
H01G11/36
H01G11/42
H01G11/46
H01G11/86
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021560602
(86)(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 GB2020050910
(87)【国際公開番号】W WO2020208348
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】1905107.7
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521444295
【氏名又は名称】スーパーダイエレクトリックス エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】SUPERDIELECTRICS LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハイゲイト,ドナルド ジェイムス
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-223089(JP,A)
【文献】特開2004-221224(JP,A)
【文献】特開2011-109045(JP,A)
【文献】特開2001-181853(JP,A)
【文献】特開2013-241648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/055
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ナノ粒子材料を導電性架橋ポリマーの表面層に統合するプロセスであって、
導電性架橋ポリマーを第1の媒体に浸漬するステップと、
続いて、前記導電性架橋ポリマーを第2の媒体に浸漬するステップと、を含み、
前記第1の媒体が、非水性極性液体に分散された導電性ナノ粒子材料を含み、
前記第2の媒体が、水性液体を含む、プロセス。
【請求項2】
前記導電性架橋ポリマーを前記第1の媒体に浸漬するステップの前に、前記導電性架橋ポリマーを水和するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記導電性ナノ粒子材料が、導電性炭素、遷移金属酸化物、またはそれらの組み合わせである、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記遷移金属酸化物が、MnO、MnO、NaMnO、ZnO、Fe、MoS、V、RuO、IrO、またはそれらの組み合わせである、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記導電性炭素が、活性炭粉末、粉末グラファイト、粉末グラフェン(graphene)、粉末グラファン、粉末カーボンナノチューブ、またはそれらの組み合わせの形態である、請求項3または請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記導電性ナノ粒子材料が、2:1~100:1のアスペクト比を有する粒子からなる、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第1の媒体の前記非水性極性液体が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、またはそれらの混合物である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第2の媒体の前記水性液体が、蒸留脱イオン水、生理食塩水の水溶液、ブラインの水溶液、酸の水溶液、またはアルカリの水溶液である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記導電性架橋ポリマーが、親水性である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記導電性架橋ポリマーが、重合混合物を重合することによって形成され、前記重合混合物が、少なくとも1つの疎水性モノマー、少なくとも1つの親水性モノマー、および少なくとも1つの架橋剤を含み、
前記重合混合物が、
少なくとも1つの電子伝導性ポリマー、または
少なくとも1つのアミノ酸、のいずれか一方をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記導電性架橋ポリマーが、重合混合物を重合することによって形成され、前記重合混合物が、少なくとも1つの疎水性モノマー、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つの電子伝導性ポリマー、および少なくとも1つの架橋剤を含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記少なくとも1つの電子伝導性ポリマーが、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記導電性架橋ポリマーが、重合混合物を重合することによって形成され、前記重合混合物が、少なくとも1つの疎水性モノマー、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つのアミノ酸、および少なくとも1つの架橋剤を含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項14】
前記少なくとも1つのアミノ酸が、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびチロシン、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記少なくとも1つの疎水性モノマーが、メチルメタクリレート、アリルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項10~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記少なくとも1つの親水性モノマーが、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルピロリドン、プロペン酸メチルエステル、モノメタクリロイルオキシエチルフタレート、アンモニウムスルファトエチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項10~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記少なくとも1つの架橋剤が、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、またはそれらの組み合わせである、請求項10~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記重合が、熱、UV、またはガンマ線によって実施される、請求項10~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記導電性ナノ粒子材料が、前記導電性架橋ポリマーの上面層および下面層の両方に統合される、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
スーパーキャパシタを形成するプロセスであって、
請求項1~19のいずれか一項に記載のプロセスを使用して、導電性ナノ粒子材料を導電性架橋ポリマーの表面層に統合するステップと、
2つの電極の間に前記ポリマーを位置付けるステップと、を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、統合されたポリマー材料、およびスーパーキャパシタ中の構成要素としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のキャパシタは、電気エネルギーを貯蔵する手段を提供する。一般に、従来のキャパシタは、誘電体材料によって分離された一対の導電性プレート(それによって一対の電極として機能する)で構成される。誘電体材料は、一般に導電率が低いが、電界によって分極することができる。そのため、電極に電位差が生じると、誘電体材料全体に電界が発生し、電気エネルギーが貯蔵可能になる。しかしながら、従来のキャパシタによって達成される最大キャパシタンス値は、電気エネルギー貯蔵容量が一般に電気化学電池の電気エネルギー貯蔵容量よりも低くなるようなものである。
【0003】
一方、スーパーキャパシタは、従来のキャパシタと比較して大幅に高いキャパシタンス値を達成するため、エネルギー貯蔵容量の増加をもたらす。スーパーキャパシタは、一般に、2つの電極と、それらの間に配置された電解質成分と、から構成される。電解質成分は、一般にイオン伝導性である(したがって、前述のように一般に低伝導性である従来のキャパシタの誘電体成分の性質とは対照的である)。スーパーキャパシタ内では、電気エネルギーは、主に2つの原理:静電容量(電解質成分内の電荷分布による)、および電気化学的キャパシタンス(電解質と電極との間の可逆的酸化還元(レドックス)反応からの電気エネルギーによる)によって貯蔵され、スーパーキャパシタ内では、エネルギーは、これら2つの原理の一方または両方によって貯蔵され得る。二層スーパーキャパシタ、疑似容量性スーパーキャパシタ、およびハイブリッドスーパーキャパシタを含む、多数の異なる種類のスーパーキャパシタシステムが存在する。二層スーパーキャパシタは、典型的には、比較的低コストの炭素電極を備える。二層スーパーキャパシタのキャパシタンスは、主に静電容量である。一方、疑似容量性スーパーキャパシタは、電解質と一緒にレドックス反応を受けることができる比較的高コストの電極を備える。そのようなレドックス活性電極は、例えば、ルテニウムまたはバナジウムを含むことができる。したがって、疑似容量性スーパーキャパシタのキャパシタンスは、電気化学的キャパシタンスによって増加(または増大)する。ハイブリッドスーパーキャパシタは、異なる特徴を有する電極の組み合わせを備え、例えば、1つの炭素電極および電解質とのレドックス反応を受けることができる1つの電極を備えることができる。したがって、ハイブリッドスーパーキャパシタのキャパシタンスは、静電容量と電気化学キャパシタンスとの組み合わせである。
【0004】
スーパーキャパシタのキャパシタンス(したがってエネルギー貯蔵容量)を増やすことが望ましい。スーパーキャパシタによって達成される最大キャパシタンス値は、電極の性質および電解質の性質に依存し得る。例えば、キャパシタンスを直接増加させる各電極プレートの有効表面積を増加させる技術が存在し、これはスーパーキャパシタの性能における最新の改善を表している。非常に大きな有効面積を有する電極の開発は、例えば、電極表面上に成長または堆積されたナノ構造の開発によって達成された-したがって、そのような「拡張表面」電極は、滑らかな電極と比較して表面積が増加した。ナノロッドの規則的な配列からなる典型的な例を図1に示し、またはカーボン微粒子に基づく不規則な構造からなる典型的な例を図2に示す。しかしながら、拡張表面電極に関連する様々な欠点が存在する。例えば、単純な「滑面」電極と比較して表面積が拡張された電極の製造、および電解質とのそれらのアセンブリには課題がある。さらに、拡張表面電極によって提供される追加面積の全電位を実現するために、拡張電極表面のナノ/マイクロ構造に浸透することができる電解質のみを使用することができる。これは、従来のスーパーキャパシタ電解質、すなわち液体のものに使用を制限し、ゼラチン状電解質を使用し得るが、これらの特性は、それらが拡張電極表面の浸透を妨げる降伏応力を示さないようなものでなければならない。したがって、これにより、拡張表面電極を使用する場合に、電解質成分に対してより高度な選択肢を使用できなくする。例えば、WO2017/153705、WO2017/153706、およびWO2017/115064は、スーパーキャパシタ中の従来の液体電解質の代わりに使用できる導電性架橋親水性ポリマーの生成を教示している。これらの材料は、好都合の電気的特性を有するが、固体であるため、拡張電極表面のナノ/マイクロ構造を貫通するのに好適ではないため、そのような拡張表面の潜在能力を完全に実現することはできない。
【0005】
要約すると、キャパシタンスを増加させるための改善された技術の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0006】
キャパシタンスを増加させるための新しく驚くべき手段が本明細書に提供されている。これは、導電性架橋ポリマーの表面層内に導電性ナノ粒子材料を統合することによって提供される、新しい「統合された」ポリマー構造によって達成される。この「統合された」ポリマーは、スーパーキャパシタの電解質成分として含まれる場合、キャパシタンスの増加を可能にし、それによってエネルギー貯蔵容量を改善する。理論に束縛されることを望まないが、統合されたポリマーが電極表面に接触すると、電解質/電極界面での有効表面積の増加が提供され、ポリマーの表面層内に統合された導電性ナノ粒子材料によって達成されると考えられる。この有効表面積の増加は、拡張表面電極を必要とせずに提供され、それにより、単純な滑面電極を使用することを可能にする。
【0007】
第1の態様では、導電性ナノ粒子材料を導電性架橋ポリマーの表面層に統合するプロセスであって、
導電性架橋ポリマーを第1の媒体に浸漬するステップと、
続いて、導電性架橋ポリマーを第2の媒体に浸漬するステップと、を含み、
第1の媒体が、非水性極性液体に分散された導電性ナノ粒子材料を含み、
第2の媒体が、水性液体を含む、プロセスが存在する。
【0008】
第1の態様によるプロセスは、統合されたポリマーを達成するための驚くほど効果的な方法である。理論に束縛されることを望まないが、第1の媒体への浸漬は、ポリマー格子の膨張をもたらし、導電性ナノ粒子材料がポリマー構造の表面層に浸透することを可能にすると考えられる。次いで、第2の媒体へのその後の浸漬ステップは、ポリマー格子を収縮させ、それにより、ポリマーの表面層にナノ粒子材料を捕捉する。ナノ粒子材料は、それが浸出/こすり落とされないように表面層に統合されており、粒子材料中のポリマーを単に「ディップコーティング」するよりも改善されることを表している。
【0009】
第2の態様では、スーパーキャパシタを形成するプロセスであって、
第1の態様のプロセスを使用して、導電性ナノ粒子材料を導電性架橋ポリマーの表面層に統合するステップと、
2つの電極の間にポリマーを位置付けるステップと、を含む、プロセスが存在する。
【0010】
第3の態様では、表面層に統合された導電性ナノ粒子材料を含有する導電性架橋ポリマーが存在する。このポリマーは、第1の態様によるプロセスによって得られる。
【0011】
第4の態様では、スーパーキャパシタにおける第3の態様によるポリマーの使用が存在する。
【0012】
第5の態様では、2つの電極と、それらの間に配置された第3の態様によるポリマーと、を含むスーパーキャパシタが存在する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に開示されるプロセスで使用されるポリマーは、スーパーキャパシタ中の電解質成分として作用することができる。したがって、本明細書に開示されるプロセスで使用されるポリマーは、導電性である。本明細書で使用される場合、「導電性」という用語は、当技術分野でその通常の定義を取り、したがって、電子伝導性および/またはイオン伝導性である材料、すなわち、何らかの形態の電子および/またはイオン移動度を用いる材料を包含することができる。
【0015】
本明細書で使用される場合、「電子伝導性」という用語は、当技術分野でその通常の定義を取り、伝導プロセスが主に電子移動に依存する、または電子がインターフェイスで出力として生じるような、何らかの形態の電子移動度が存在する材料を指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「イオン伝導性」という用語は、当技術分野でその通常の定義を取り、伝導プロセスが主にイオン移動に依存するような、何らかの形態のイオン移動度が存在する材料を指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、当技術分野でその通常の定義を取り、したがって、1つ以上のモノマーの重合から形成されるホモポリマーまたはコポリマーを指す。本明細書で使用される場合、「ホモポリマー」という用語は、当技術分野でその通常の定義を取り、したがって、ポリマー鎖が1つのタイプのモノマーを含むポリマーを指す。本明細書で使用される場合、「コポリマー」という用語は、当技術分野でその通常の定義を取り、したがって、ポリマー鎖が2つ以上の異なるタイプのモノマーを含むポリマーを指す。本明細書で使用される場合、「モノマー」という用語は、当技術分野でその通常の定義を取り、したがって、別のモノマーに化学的に結合してポリマーを形成し得る分子化合物を指す。
【0018】
本明細書に開示されるプロセスで使用される導電性架橋ポリマーは、好ましくは親水性ポリマーである。本明細書で使用される場合、「親水性ポリマー」という用語は、架橋されていないときに水に溶解し、水を吸収して膨潤し、架橋されたときに安定した弾性固体を形成するポリマーを指す。親水性ポリマーは、その水特性のために特定の利点がある。
【0019】
本明細書で使用される場合、「親水性モノマー」という用語は、当技術分野でその通常の定義を取り、したがって、水分子に親和性を有するモノマーを指す。「疎水性モノマー」という用語もまた、当技術分野でその通常の定義を取り、したがって、水分子をはじくモノマーを指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「架橋剤」という用語は、ポリマー鎖の間に化学結合を形成することができる分子化合物を指す。鎖の間にそのような化学結合を含むポリマーは、「架橋」ポリマーと呼ばれる。
【0021】
本明細書に開示されるプロセスで使用される導電性架橋ポリマーは、特定の形状に限定される必要はないが、一般に、ポリマーは、上面、下面、およびいくつかの壁のような側面(典型的には、4つ)を含む。典型的には、ポリマーは、実質的に3D平面形状に近似する。一般に、ポリマーの厚さ(すなわち、上面と下面との間の距離)は、250μm~2mmの範囲である。本明細書に開示される導電性ナノ粒子材料は、導電性架橋ポリマーの表面層に統合される。これにより、統合されたポリマーが2つの電極の間に配置され、かつスーパーキャパシタ中の電解質成分として使用されるときに、統合されたナノ粒子材料が電解質/電極界面の一部を形成することが可能になる。「表面層」という用語は、ポリマーの最も外側の領域、典型的には、80~120μm、好ましくは90~110μmの厚さを有する最も外側の領域を指す。本明細書に開示されるナノ粒子材料は、ポリマーの上面層(すなわち、最も外側の最上層)および/または下面層(すなわち、最も外側の最下層)に統合され得る。好ましくは、ナノ粒子材料は、上面層および下面層の両方に統合される。一般に、ナノ粒子材料は、ポリマー全体に組み込まれるのではなく、ポリマーの表面層にのみ統合されることが理解されよう。これは、ナノ粒子材料が表面層に統合され、ポリマーの残りの領域が実質的にナノ粒子材料を含まないポリマーをもたらす。
【0022】
本明細書で使用される場合、「ナノ粒子材料」という用語は、(μm範囲ではなく)nm範囲に入るのに十分小さい寸法を有し、したがって1000nm未満の寸法、より具体的には1~1000nmの寸法を有する複数の粒子として提供される材料を指す。好ましくは、ナノ粒子材料は、800nm未満、より好ましくは600nm未満の寸法を有する複数の粒子として提供される。ナノ粒子材料は、1nmを超える、10nmを超える、または50nmを超える寸法を有する複数の粒子として提供され得る。当業者は、例えば画像分析によって、粒子が毛細管を通って流れ、かつ画像分析器によってスキャンされて関連する寸法を測定することにより、ナノ粒子材料の粒子の関連する寸法を測定するために必要な技術に精通しており、好適な装置は、Sysmex FPIA-3000フロー粒子画像分析器である。
【0023】
ナノ粒子材料の形状は、アスペクト比によって定義され得、アスペクト比は、最大寸法を最小直交寸法で割ったものとして定義される(したがって、管状粒子の場合、長さを直径で割ったものに等しい)。アスペクト比が高くなるほど、粒子は細長くなり、アスペクト比が低くなるほど、粒子は、球形になる。アスペクト比を調整することにより、ナノ粒子材料がポリマー格子に特に効果的に取り込まれると考えられる。ナノ粒子材料は、アスペクト比が100:1未満、好ましくは50:1未満、より好ましくは10:1未満の粒子からなり得る。ナノ粒子材料は、少なくとも2:1、好ましくは少なくとも3:1のアスペクト比を有する粒子からなり得る。特に好ましい実施形態では、ナノ粒子材料は、3:1~10:1のアスペクト比を有する粒子からなる。アスペクト比の測定に関して、当業者は、(上記のように)ナノ粒子材料に関連する寸法を測定する方法、例えば、粒子が毛細管を通って流れ、画像分析器によってスキャンされて粒子の関連する寸法が測定される画像分析の手段に精通しており、好適な装置は、Sysmex FPIA-3000フロー粒子画像分析器である。この方法では、最大寸法および最小直交寸法が測定され、次いでこれらを使用してアスペクト比が計算される。
【0024】
ナノ粒子材料は、質量中央径が1000nm未満、好ましくは800nm未満、より好ましくは600nm未満である複数の粒子として提供され得る。ナノ粒子材料は、質量中央径が1nmを超える、10nmを超える、または50nmを超える複数の粒子として提供され得る。当業者は、例えば、Malvern-Panalyticalの「Zetasizer」によるレーザー回折によって、質量中央径を測定する方法に精通しているであろう。
【0025】
ナノ粒子材料の導電性性質は、統合されたポリマーがスーパーキャパシタの電解質成分として使用され、かつ電極表面に接触するときに、電解質/電極界面で拡張された有効表面積が提供されるようなものである。したがって、ナノ粒子材料は、任意の適切な導電性材料、特に電極構成要素を形成するために他の方法で使用されるそれらの材料であり得る-当業者は、そのような材料に精通しているであろう。例えば、導電性ナノ粒子材料は、導電性炭素、遷移金属酸化物、またはそれらの組み合わせであり得る。そのような材料は、電極を形成するために他の方法で使用され、したがって、そのような材料は、本明細書に開示される統合されたポリマーによって与えられる拡張電解質/電極界面を形成するのに特に効果的である。「遷移金属酸化物」という用語は、周期表のdブロック(すなわち、第3族~第12族)に特徴的な金属の酸化物を指す。遷移金属酸化物は、MnO、MnO、NaMnO、ZnO、Fe、MoS、V、RuO、IrO、またはそれらの組み合わせであり得る。好ましくは、遷移金属酸化物は、MnO、MnO、ZnO、NaMnO、のFe、またはMoSである。
【0026】
好ましくは、導電性ナノ粒子材料は、導電性炭素である。当業者は、導電性である炭素の形態に精通しているであろう。例えば、導電性炭素は、活性炭粉末、粉末グラファイト、粉末グラフェン、粉末グラファン、粉末カーボンナノチューブ、またはそれらの組み合わせの形態であり得る。好ましくは、導電性炭素は、活性炭粉末、粉末黒鉛、粉末グラフェン(graphene)、粉末グラファン、またはそれらの組み合わせの形態である。
【0027】
図4は、導電性ナノ粒子材料を表面層に統合する前(右側)および後(左側)の両方の導電性架橋ポリマーの写真を示している。ポリマーは、図4の例では導電性カーボンの形態であった、統合されたナノ粒子によって「不透明」になっていることが分かる。
【0028】
導電性架橋ポリマーは、電子伝導性および/またはイオン伝導性であり得る。好ましくは、導電性架橋ポリマーは、電子伝導性である。
【0029】
導電性架橋ポリマーは、一般に、重合混合物を重合することによって形成される。本明細書で使用される場合、「重合混合物」という用語は、ポリマー形成成分の溶液または分散液を指す。混合物は、一般に均質であり、これはポリマー形成成分が均一に溶解または混合されることを意味する。導電性架橋ポリマーは、導電性ナノ粒子材料を表面層に統合するステップに供される前に完全に形成される。好ましくは、導電性架橋ポリマーは、重合混合物を重合することによって形成され、重合混合物は、少なくとも1つの疎水性モノマー、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つの架橋剤を含み、重合混合物は、少なくとも1つの電子伝導性ポリマー、または少なくとも1つのアミノ酸のいずれか一方をさらに含む。得られたポリマーは、電子伝導性である。得られたポリマーは、特に良好な水特性(すなわち、水および他の水性環境に関して良好な特性/挙動)を有し、スーパーキャパシタ中の電解質成分として使用される場合に特に良好に動作する。これらのポリマーの詳細は、WO2017/153705およびWO2017/115064に開示されている。
【0030】
上述のように、重合混合物は、少なくとも1つの疎水性モノマーを含むことができる。重合混合物は、1つの疎水性モノマーを含み得る。
【0031】
好ましくは、少なくとも1つの疎水性モノマーは、メチルメタクリレート、アリルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、またはそれらの組み合わせから選択される。より好ましくは、少なくとも1つの疎水性モノマーは、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0032】
上述のように、重合混合物は、少なくとも1つの親水性モノマーを含むことができる。なんじを重合混合物は、1つの親水性モノマーを含み得る。
【0033】
好ましくは、少なくとも1つの親水性モノマーは、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルピロリドン、プロペン酸メチルエステル、モノメタクリロイルオキシエチルフタレート、アンモニウムスルファトエチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、またはそれらの組み合わせから選択される。より好ましくは、少なくとも1つの親水性モノマーは、1-ビニル-2-ピロリドン(VP)および2-ヒドロキシエチルメタクリレート、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0034】
少なくとも1つの架橋剤は、メチレンビスアクリルアミド、N-(1-ヒドロキシ-2,2-ジメトキシエチル)アクリルアミド、アリルメタクリレート、およびエチレングリコールジメタクリレートであり得る。好ましくは、架橋剤アリルメタクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレート。架橋剤は、疎水性であっても親水性であってもよい。
【0035】
上記の定義から、「疎水性モノマー」および「架橋剤」という用語は、必ずしも相互に排他的ではないことが理解されよう。本明細書に開示される疎水性モノマーおよび架橋剤は、同じであっても異なっていてもよい。疎水性モノマーは、特定の実施形態では、架橋剤と同じであり得る。例えば、特定の実施形態では、架橋剤および疎水性モノマーの両方は、アリルメタクリレートである。他の実施形態では、疎水性モノマーは、非架橋であり、そのような実施形態では、架橋剤および疎水性モノマーは、異なる化学種である。好ましくは、疎水性モノマーは、架橋剤とは異なる化学種である。一般に、親水性モノマーは、架橋剤および疎水性モノマーの両方とは異なる化学種である。
【0036】
好ましくは、重合は、熱、UV、またはガンマ線によって実施される。より好ましくは、重合ステップは、UVまたはガンマ線によって実施される。当業者が理解するように、UVまたはガンマ線は、周囲温度および圧力下で実施され得、一方、熱重合は、最大70℃の温度で実施され得る。
【0037】
好ましい実施形態では、重合混合物は、重合開始剤をさらに含む。重合開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)または2-ヒドロキシ-2-メチルプリオフェノンであり得る。重合が熱またはUV線による場合、重合開始剤の存在が特に好ましい。一実施形態では、重合は、熱的手段によるものであり、開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)である。別の実施形態では、重合は、UV線によるものであり、開始剤は、2-ヒドロキシ-2-メチルプリオフェノンである。
【0038】
一実施形態では、導電性架橋ポリマーは、重合混合物を重合することによって形成され、重合混合物は、少なくとも1つの疎水性モノマー、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つの電子伝導性ポリマー、および少なくとも1つの架橋剤を含む。得られたポリマーは、電子伝導性である。得られたポリマーは、特に良い水特性、優れた機械的特性、優れた導電性を有し、かつ特に高いキャパシタンス値を提供する。
【0039】
好ましくは、少なくとも1つの電子伝導性ポリマーは、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、またはそれらの組み合わせから選択される。より好ましくは、本質的に電子的に活性な材料は、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)である。
【0040】
一実施形態では、導電性架橋ポリマーは、重合混合物を重合することによって形成され、重合混合物は、少なくとも1つの疎水性モノマー、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つのアミノ酸、および少なくとも1つの架橋剤を含む。得られたポリマーは、電子伝導性であり、これは芳香族系内の電子共役/アミノ酸中の非局在化電子孤立電子対が、ポリマー材料の電子特性を有利に変えるためであると考えられる。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、当技術分野でその通常の定義を取り、したがって、アミノおよびカルボン酸官能基、ならびに各アミノ酸に特異的な側鎖を有する有機化合物を指す。この用語は、慣習的な「天然」アミノ酸だけでなく、アミノ酸骨格を有する(すなわち、任意の側鎖を有する)任意の化合物も包含する。好ましくは、アミノ酸(好ましくは天然アミノ酸)は、その側鎖に芳香族基を含む。
【0041】
一実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびチロシン、またはそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンおよびチロシン、またはそれらの組み合わせから選択される。さらにより好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸は、フェニルアラニンおよびトリプトファン、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0042】
本明細書に開示されるプロセスでは、導電性架橋ポリマーを第1の媒体に浸漬するステップと、続いて導電性架橋ポリマーを第2の媒体に浸漬するステップと、が存在する。ポリマーは、ポリマーの上面または下面のうちの少なくとも1つを、各媒体に沈ませ、露出するように、しかし好ましくは上面および下面の両方を各媒体に沈ませ、露出するように、各媒体に浸漬される。したがって、当業者が理解するように、「浸漬する」という用語は、ポリマーをそれぞれの各媒体に部分的または完全に沈めることを指すことができるが、好ましくは、ポリマーを各媒体に完全に沈めることを指す。
【0043】
第1の媒体への浸漬は、ポリマー格子を膨張させ、導電性ナノ粒子材料がポリマー表面層に浸透することを可能にすると考えられる。好ましくは、導電性架橋ポリマーは、少なくとも30秒、より好ましくは少なくとも2分、より好ましくは少なくとも15分、より好ましくは少なくとも30分の期間、第1の媒体に浸漬される。そのような期間の浸漬は、導電性ナノ粒子材料の良好な取り込みを可能にする。
【0044】
本明細書に開示されるプロセスでは、導電性架橋ポリマーを第1の媒体に浸漬するステップ後、ポリマーは、第1の媒体から除去され、続いて第2の媒体に浸漬され、それによって表面層に統合された導電性ナノ粒子材料を有するポリマーに到達する。第1の媒体への浸漬によってポリマー格子を膨張させた後、第2の媒体への浸漬は、次いでポリマー格子を収縮させ、それによって導電性ナノ粒子材料をポリマーの表面層(または複数の表面層)に閉じ込めると考えられる。第2の媒体への浸漬の期間は、第1の媒体への浸漬後のポリマーの厚さに応じて調整することができる。好ましくは、導電性架橋ポリマーは、ポリマーの厚さ1mm当たり少なくとも1分、より好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも2時間、第2の媒体に浸漬される。第2の媒体に浸漬した後、次いでポリマーを第2の媒体から除去することができる。
【0045】
本明細書に開示される第1の媒体および第2の媒体は、両方とも液体である。「液体」という用語は、当技術分野でその通常の定義を取り、当業者によって容易に理解されるであろう、したがって、周囲温度および圧力(すなわち、30℃の温度および1バールの圧力で)で液体形態で存在する物質を指す。
【0046】
本明細書に開示される第1の媒体は、非水性極性液体に分散された導電性ナノ粒子材料を含む。好ましくは、第1の媒体中に存在する導電性ナノ粒子材料の量は、第1の媒体の総重量に基づいて、2~30重量%、より好ましくは2~10重量%の範囲である。
【0047】
極性液体に関して使用される場合の「非水性」という用語は、極性液体が実質的に水を含まないことを意味し、より具体的には、極性液体が、極性液体の総重量に基づいて、10重量%未満の水、好ましくは5重量%未満の水、より好ましくは1重量%未満の水、または0.5重量%未満の水を含有することを意味する。極性液体は、0.1%あるいは0%の水を含み得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、第1の媒体の極性液体に関して使用される「極性」という用語は、電荷の非対称分布のために分子構成成分が双極子モーメントを有する液体を指す。当業者は、どの物質が非水性極性液体を構成するかについて精通しているであろう。そのような極性の尺度の1つは、誘電率である。誘電率は、CRC、Handbook of Chemistry and Physics(92nd Edition、2011-2012、「Laboratory solvents and other liquid reagents」というタイトルの章)に開示されている方法を使用して測定することができる。誘電率が大きいほど極性が大きいことを示す(これは双極子モーメントが大きいとも呼ぶことができる)。好ましくは、非水性極性液体は、少なくとも10、より好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも20の誘電率を有する。
【0049】
好ましくは、第1の媒体の非水性極性液体は、アルコールである。より好ましくは、第1の媒体の非水性極性液体は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、またはそれらの混合物である。最も好ましくは、第1の媒体の非水性極性液体は、エタノールである。エタノールへの浸漬は、ポリマーの特に効果的な膨張をもたらし、それにより、ナノ粒子材料の特に効果的な取り込みを可能にすると考えられる。
【0050】
本明細書に開示されるように、導電性架橋ポリマーを第1の媒体に浸漬するステップ後に、導電性架橋ポリマーを第2の媒体に浸漬するステップが存在する。第2の媒体は、水性液体を含む。好ましくは、第2の媒体は、水性液体からなる。第2の媒体の液体に関して使用される場合の「水性」という用語は、かなりの割合の水、例えば、液体の総重量に基づいて、50重量%を超える水、好ましくは75重量%を超える水、より好ましくは85重量%を超える水を含有する液体を指す。
【0051】
好ましくは、第2の媒体の水性液体は、蒸留脱イオン水、生理食塩水の水溶液、ブラインの水溶液、酸の水溶液、またはアルカリの水溶液である。より好ましくは、第2の媒体は、酸の水溶液である。生理食塩水を使用する場合、生理食塩水は、好ましくは水中に0.002g/cc~0.1g/ccのNaCl、より好ましくは水中に0.009g/ccのNaClを有する。ブライン溶液を使用する場合、ブライン溶液は、好ましくは、水中に0.3g/ccのNaClを有する。酸性溶液を使用する場合、酸は、好ましくは5mol/dmのHSOである。アルカリ性溶液を使用する場合、アルカリ性溶液は、好ましくは、KOHが10重量%~30重量%で存在するKOHの水溶液である。
【0052】
好ましくは、本明細書に開示されるプロセスは、導電性架橋ポリマーを第1の媒体に浸漬するステップの前に、導電性架橋ポリマーを水和するステップをさらに含む。この最初の水和ステップは、ポリマーの最初の膨張を提供し、これは、第1の媒体への浸漬時にナノ粒子材料の最終的な取り込みに寄与すると考えられる。
【0053】
この水和ステップは、好ましくは、水性液体である水和媒体に浸漬することによって実施される。水和媒体は、第2の媒体の水性液体と同じであっても異なっていてもよい。したがって、水和媒体の水性液体は、蒸留脱イオン水、生理食塩水の水溶液、ブラインの水溶液、酸の水溶液、またはアルカリの水溶液であり得る。好ましくは、第2の媒体は、蒸留脱イオン水である。生理食塩水を使用する場合、生理食塩水は、好ましくは水中に0.002g/cc~0.1g/ccのNaCl、より好ましくは水中に0.009g/ccのNaClを有する。ブライン溶液を使用する場合、ブライン溶液は、好ましくは、水中に0.3g/ccのNaClを有する。酸性溶液を使用する場合、酸は、好ましくは5mol/dmのHSOである。アルカリ性溶液を使用する場合、アルカリ性溶液は、好ましくは、KOHが10重量%~30重量%で存在するKOHの水溶液である。
【0054】
好ましくは、ポリマーは、好ましくは、1つ以上の表面層のみが、バルクポリマー全体ではなく、液体の侵入によって影響を受けるため、水力学的平衡に到達するように、第1の媒体、第2の媒体、または水和媒体に浸漬されない。それにもかかわらず、第1の媒体の性質は、好ましくは、水力学的平衡に到達するようにポリマーを浸漬する場合、ポリマーは、任意の直線寸法で少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%膨張するようなものである。好ましくは、線膨張比(第1の媒体へのポリマーの浸漬後の幅:第1の媒体へのポリマーの予備浸漬の幅の比として)は、水力学的平衡に達する場合は、少なくとも1.4:1、より好ましくは少なくとも1.7:1、最も好ましくは少なくとも1.8:1である。同様に、第2の媒体の性質は、好ましくは、水力学的平衡に達するようにポリマーを浸漬した場合、ポリマーが、第1の媒体で水力学的平衡に達することによって達成されるポリマーサイズと比較して、任意の直線寸法で少なくとも10%収縮するようなものである。好ましくは、線膨張比(第2の媒体への浸漬後のポリマーの幅:第1および第2の媒体の両方におけるポリマーの予備浸漬の幅の比として)は、水力学的平衡に達する場合は、最大で1.8:1、より好ましくは最大で1.6:1、最も好ましくは最大で1.4:1である。同様に、(任意選択の)初期水和ステップにおける水和媒体の性質は、水圧平衡に達するようにポリマーが水和された場合、線形膨張比(水和ポリマー幅:乾燥、非水和ポリマー幅の比として)が、少なくとも1.2:1、より好ましくは少なくとも1.4:1、最も好ましくは少なくとも1.6:1であり、ポリマー中の水の量は、水圧平衡に到達する場合、水和ポリマーの総重量に基づいて、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%であるようなものである。
【0055】
本明細書に開示されるのは、表面層に統合された導電性ナノ粒子材料を含有する導電性架橋ポリマーであり、本明細書に開示されるプロセスによって得られる。ナノ粒子材料、量、重合混合物、および重合条件などの好ましい特徴は、上に開示されている。
【0056】
本明細書に開示されるプロセスを使用して導電性ナノ粒子材料を導電性架橋ポリマーの表面層に統合するステップと、得られた統合されたポリマーを2つの電極の間に位置付けするステップと、を含む、スーパーキャパシタを形成するプロセスも本明細書に提供される。ポリマーは、通常、スーパーキャパシタで使用する前に第2の媒体から除去される。本明細書で提供されるのは、スーパーキャパシタにおける統合されたポリマーの使用、および2つの電極を備え、かつそれらの間に配置された統合されたポリマーを含むスーパーキャパシタである。ポリマーが電極に接触するように2つの電極の間に統合されたポリマーを位置付け/配置することにより、ポリマー/電極界面で有効な拡張表面積として機能するポリマー/電極界面が形成される。これは、拡張表面積の電極に頼る必要なしに、増加したキャパシタンスを提供し、したがって、単純な滑面電極を使用しながら、増加したキャパシタンスを達成することを可能にする。
【0057】
本明細書に開示される統合されたポリマーは、滑らかでない電極表面で使用する必要はないが、それらは、滑らかでない表面と互換性がある。有効表面積は、導電性架橋ポリマーを好適な形状の表面にキャストして、その形成中に金型として機能し、本明細書に開示されるプロセスを適用し、次いで、統合されたポリマーを同じプロファイルの機械加工された電極と一致させることによってさらに増加させることができる。これは、図3に概略的に示されている。
【0058】
以下の非限定的実施例は、本発明を例証する。
【実施例
【0059】
これらの実施例では、以下の略語が使用される:
AN:アクリロニトリル
VP:ビニル-2-ピロリドン
PEDOT:PSS:ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート
【0060】
これらの実施例では、図5に示すように、膜を2つの滑らかな炭素電極表面の間に押し付けながらSencoreキャパシタンス計を使用してキャパシタンスを測定した。
【0061】
実施例1
導電性架橋ポリマーは、組成物AN-VP-フェニルアラニンで形成した。「形成されたままの」このポリマーのこのキャパシタンスを測定した。
【0062】
このポリマーは、最初に水に浸漬することによって水和した。次いで、水和ポリマーをエタノール中の細長くないカーボンナノ粒子の分散液に浸漬し、続いてH2SO4の水溶液に浸漬した。
【0063】
その結果は、カーボンナノ粒子が閉じ込められた、すなわちその表面層に統合されたポリマー膜であった。ポリマー膜を水中で洗浄し、ごく微量の炭素粒子しか除去されなかったため、統合されたナノ粒子材料は、表面を洗浄または「こする」ことによって容易に除去されないと結論付けた。
カーボンナノ粒子が表面層に統合されたポリマーのキャパシタンスを測定した。
【0064】
統合されたポリマーと「形成されたままの」ポリマーとの単位面積当たりのキャパシタンスの比は、1.40:1であることが分かった。これは、統合されたポリマーのキャパシタンスの40%の増加を表す。
【0065】
実施例2
導電性架橋ポリマーは、組成物VP-PEDOT-ANで形成した。
【0066】
このポリマーは、最初に水に浸漬することによって水に水和した。次いで、水和ポリマーをエタノール中の細長くないカーボンナノ粒子の分散液に浸漬し、続いてH2SO4の水溶液に浸漬した。
【0067】
その結果は、カーボンナノ粒子が閉じ込められた、すなわちその表面層に統合されたポリマー膜であった。ポリマー膜を水中で洗浄し、ごく微量の炭素粒子しか除去されなかったため、統合されたナノ粒子材料は、表面を洗浄または「こする」ことによって容易に除去されないと結論付けた。
【0068】
統合されたポリマーと「形成されたままの」ポリマーとの単位面積当たりのキャパシタンスの比は、1.25~1.3:1であることが分かった。これは、統合されたポリマーのキャパシタンスの25%および30%の増加を表す。
図1
図2
図3
図4
図5