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特許7532411活性エネルギー線硬化型コーティング用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型コーティング用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20240805BHJP
   C09D 175/14 20060101ALI20240805BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20240805BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240805BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D175/14
C09D7/41
C09D7/63
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021563810
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2020042624
(87)【国際公開番号】W WO2021117421
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2019222005
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 晴彦
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104927024(CN,A)
【文献】特開2005-162908(JP,A)
【文献】特開2011-213965(JP,A)
【文献】特開2018-070778(JP,A)
【文献】特開2015-010113(JP,A)
【文献】特表2016-500716(JP,A)
【文献】国際公開第2016/057002(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B05D
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、(B)及び(C)を含み、
成分(A)の含有量は、成分(A)及び(B)の合計質量に対して20~50質量%であり、
成分(C)の含有量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対して1.0~2.0質量部である、活性エネルギー線硬化型コーティング用組成物。
(A)下記式(1)で表される基及び置換又は未置換のアクリロイル基を有し、水添ダイマー酸ポリエステルポリオール及びダイマー酸ポリエステルポリオールからなる群より選択される少なくとも一種に由来するセグメントを含むオリゴマー、
(B)1分子あたり1個の不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、
(C)光重合開始剤
【化1】
〔式(1)中、Rは炭素数4~6のパーフルオロアルキル基を示す。〕
【請求項2】
さらに成分(D)として蛍光増白剤を含み、
前記蛍光増白剤は、オキサゾール系化合物、クマリン系化合物、及びスチルベン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに成分(E)としてチオール化合物を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記チオール化合物は、2~4個のチオール基を有する2級チオール化合物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
記成分(A)は、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物及び芳香族ジイソシアネート化合物からなる群より選択される少なくとも一種に由来するセグメントをさらに含むオリゴマーである、請求項1~4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記成分(A)の質量平均分子量は5000~30000である、請求項1~の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記成分(A)のパーフルオロアルキル基含有量が0.01~0.6mol/kgである、請求項1~の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記成分(B)が、水酸基を分子に有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーである、請求項1~の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記成分(C)はアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤であり、
前記成分(A)及び(B)の合計100質量部に対し、前記成分(C)が0.5~3.0質量部含まれる、請求項1~の何れか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記成分(C)は、下記式(2)又は(3)で表されるアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤である、請求項1~の何れか1項に記載の組成物。
【化2】
【請求項11】
25℃における粘度が3000mPa・s以下である、請求項1~10の何れか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型コーティング用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気・電子部品、特に電子回路実装基板においては、ICチップ及びチップコイル等の電子部品の金属露出部を湿気、塵埃又は腐食性ガス等から保護する目的で、コーティング剤により絶縁防湿コーティングが施されている。
【0003】
近年、電子部品の実装密度が高くなり、電子回路実装基板の信頼性を確保するために、コーティング剤は特に重要なファクターとなっている。電子回路実装基板に塗布されるコーティング剤として、主に溶媒乾燥型、湿気硬化型、及び紫外線硬化型などのコーティング剤が公知である。
【0004】
溶媒乾燥型コーティング剤としては、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、又はポリオレフィン樹脂を用いたコーティング剤が公知である。その他にも、湿気硬化型コーティング剤も知られている。
【0005】
また、特に電子回路基板に好適に使用可能なコーティング剤として、光硬化性コーティング剤が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開2007-308681号公報
【文献】日本国特開2017-179171号公報
【文献】日本国特開2008-159437号公報
【文献】日本国特開2014-159573号公報
【文献】日本国特開2017-155207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、湿気硬化型コーティング剤は、一般的にシリコーン樹脂が使用されているところ、硬化時間が湿度により左右されるため、硬化に数時間もの時間を要することがあり、作業性に課題がある。
【0008】
また、溶剤乾燥型コーティング剤は、溶剤を乾燥させる工程に時間を要するため、生産性の面で劣る。加えて、溶剤を含有するが故に、塗布現場(製造ライン)での作業環境管理が必要となる。
【0009】
そこで、これらの課題を解決するために、近年では紫外線硬化型防湿コーティング剤が用いられる傾向にある。
【0010】
紫外線硬化型のコーティング剤としては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートエステルモノマー等のアクリル系化合物を用いたコーティング剤が主に使用されており、特に電子部品用途としてはラジカル重合型が主流となっている。こうした紫外線硬化型のコーティング剤は光源が高圧水銀ランプあるいはメタルハライドランプである場合には光重合開始剤の組み合わせにより、十分な深部硬化性を得られるが、単一波長であるUV-LED光源では十分な深部硬化性が得られないという課題がある。
【0011】
特に、かかるUV-LED光源は、装置の光源寿命が長いことや照射装置が比較的安価であることから、工場ラインの設備としてコスト面での優位性がある。したがって、高圧水銀ランプなどに変わって近年、普及しつつあるため、上記した深部硬化性に関する課題は、なおさら無視できないものとなっている。
【0012】
また、電子回路実装基板によっては絶縁信頼性を確保するために1mm以上の膜厚が必要な場合があり、その場合に十分な深部硬化性が得られないと、絶縁信頼性が低下する。
【0013】
また一方で、前記紫外線硬化型のコーティング剤を使用した場合、ICチップのリード部のリード下に入り込んだコーティング剤がリード部により紫外線が遮蔽されその箇所が暗部となり、未硬化な状態で残存する可能性がある。このような未硬化の状態は電子回路基板に何らかの影響を及ぼす可能性がある。
【0014】
これらの解決策として湿気硬化併用光硬化型組成物なるコーティング剤(特許文献2)が提案されているが、空気中の湿気に触れると硬化が進むため、塗布現場(工場ライン)での取り扱い性が悪くなることが予想され、作業時にはコーティング剤の繊細な管理が必要となり、現実的ではない。
【0015】
さらにはこのようなコーティング剤は常温~40℃の温度にて塗布機で塗布できる適切な粘度が要求される。特許文献3にはダイマー酸成分を含有するポリエステルポリオールを用いたウレタン(メタ)アクリレートを主成分とするコーティング剤が提案されているが、粘度が高く、実用的であるとは考えられ難く、またダイマー酸成分を含有することにより、耐水性および透湿性は向上できると考えられるが、絶縁信頼性を確保するには不十分である。
【0016】
特許文献4にフッ素系UV硬化型官能基含有化合物をベースとしたコーティング組成物が提案されており、ベース樹脂にはフッ素骨格を有しており、耐水性に優れた事は予想できるが、LED光源での深部硬化性や暗部硬化性、耐熱衝撃性および絶縁信頼性については不十分である。
【0017】
また、特許文献5にはブタジエン骨格を有するオリゴマーをベースとしたLED硬化型防湿絶縁コート組成物が提案されており、耐水性及び絶縁信頼性に優れることは予測できるが、LED光源による深部硬化性及び暗部硬化性については不十分である。
【0018】
上記のような事情に鑑み、本発明の目的とするところは、厚膜での深部硬化性、絶縁信頼性及び耐熱衝撃性に優れた活性エネルギー線硬化型コーティング用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、所定のオリゴマーを使用することにより、厚膜での深部硬化性、絶縁信頼性及び耐熱衝撃性に優れた活性エネルギー線硬化型コーティング用組成物を提供できることを見出した。本発明者は、かかる知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0020】
即ち、本発明は、以下の活性エネルギー線硬化型コーティング用組成物を提供する。
【0021】
項1.
下記成分(A)、(B)及び(C)を含む活性エネルギー線硬化型コーティング用組成物。
(A)下記式(1)で表される基及び置換又は未置換のアクリロイル基を有するオリゴマー、
(B)1分子あたり1個の不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、
(C)光重合開始剤
【化1】
〔式(1)中、Rは炭素数4~6のパーフルオロアルキル基を示す。〕
項2.
さらに成分(D)として蛍光増白剤を含み、
前記蛍光増白剤は、オキサゾール系化合物、クマリン系化合物、及びスチルベン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である、項1に記載の組成物。
項3.
さらに成分(E)としてチオール化合物を含む項1又は2に記載の組成物。
項4.
前記チオール化合物は、2~4個のチオール基を有する2級チオール化合物である、項3に記載の組成物。
項5.
前記不飽和基は、置換又は未置換のアクリロイル基であり、
前記成分(A)は、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物及び芳香族ジイソシアネート化合物からなる群より選択される少なくとも一種に由来するセグメント、並びに
水添ダイマー酸ポリエステルポリオール、ダイマー酸ポリエステルポリオール及びポリカーボネートジオールからなる群より選択される少なくとも一種に由来するセグメントを含むオリゴマーである、項1~4の何れかに記載の組成物。
項6.
前記成分(A)及び前記成分(B)の合計質量に対する前記成分(A)の質量が20~50質量%である、項1~5の何れかに記載の組成物。
項7.
前記成分(A)の質量平均分子量は5000~30000である、項1~6の何れかに記載の組成物。
項8.
前記成分(A)のパーフルオロアルキル基含有量が0.01~0.6mol/kgである、項1~7の何れかに記載の組成物。
項9.
前記成分(B)が、水酸基を分子に有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーである、項1~8の何れかに記載の組成物。
項10.
前記成分(C)はアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤であり、
前記成分(A)及び(B)の合計100質量部に対し、前記成分(C)が0.5~3.0質量部含まれる、項1~9の何れかに記載の組成物。
項11.
前記成分(C)は、下記式(2)又は(3)で表されるアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤である、項1~10の何れかに記載の組成物。
【化2】
項12.
25℃における粘度が3000mPa・s以下である、項1~11の何れかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティング用組成物は、厚膜での深部硬化性、絶縁信頼性及び耐熱衝撃性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】深部硬化性評価試験の説明図。
図2】暗部硬化性評価試験の説明図。
図3】耐熱衝撃性評価試験の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティング用組成物(以下、単に「本発明の組成物」ともいう。)は、活性エネルギー線が照射されることにより硬化するコーティング用組成物である。かかる活性エネルギー線としては特に限定されず、紫外線、可視光線、X線及び電子線を例示することができる。中でも硬化の際には紫外線を採用することが好ましく、紫外線光源としては、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ、及びLEDランプ等が挙げられ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、又はLEDが好ましい。
【0025】
紫外線の照射量は通常2000~5,000mJ/cm2(好ましくは3500~4500mJ/cm2)の紫外線を照射すればよいが、光源がLEDの場合は365nm~405nmの発光波長を発する装置が好ましく、3500~5000mJ/cm2(好ましくは4000~4500mJ/cm)の紫外線を照射すればよい
【0026】
本発明の組成物は、成分(A)、(B)及び(C)を含む。
【0027】
1.成分(A)
成分(A)は、下記式(1)で表される基及び置換又は未置換のアクリロイル基を有するオリゴマーである。
【0028】
【化3】
【0029】
式(1)において、Rは炭素数4~6のパーフルオロアルキル基である。当該パーフルオロ基は直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であることがより好ましい。また、炭素数は4又は6であることがより好ましい。
【0030】
オリゴマーは、一つの末端に置換又は未置換のアクリロイル基を有しており、当該基は下記式(4)で表されるアクリロイル基であることがより好ましい。
【0031】
【化4】
【0032】
式(4)において、Rは任意の置換基とすることが可能であるが、水素原子又はメチル基であることが好ましい。つまり、未置換のアクリロイル基又はメタアクリロイル基であることが好ましい。
【0033】
成分(A)のオリゴマーは、直鎖状オリゴマーであることが好ましく、一方の末端に上記式(1)で表される基、並びにもう一方の末端に置換若しくは未置換のアクリロイル基を有することが好ましい。
【0034】
また、成分(A)のオリゴマーは、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物及び芳香族ジイソシアネート化合物からなる群より選択される少なくとも一種に由来するセグメント(以下、単に「Seg1」ともいう。)、並びに、水添ダイマー酸ポリエステルポリオール、ダイマー酸ポリエステルポリオール及びポリカーボネートジオールからなる群より選択される少なくとも一種に由来するセグメント(以下、単に「Seg2」ともいう。)を含むことが好ましい。
【0035】
上記Seg1が由来する化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4(または2,6)-ジイソシアネート、1,3-(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、オクタデシレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、3-フェニル-2-エチレンジイソシアネート、クメン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-エトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、5,6-ジメチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、ベンジジンジイソシアネート、9,10-アンスラセンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートベンジル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアネートジフェニルメタン、2,6’-ジメチル-4,4’-ジイソシアネートジフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジイソシアネートジフェニル、1,4-アンスラセンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、2,4,6-トリレントリイソシアネート、2,4,4’-トリイソシアネートジフェニルエーテル、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、及び4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)などを挙げることができる。これらは一種のみを単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0036】
上記した中でも、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及びトリレンジイソシアネートが特に好ましく、イソホロンジイソシアネートが最も好ましい。
【0037】
Seg2は、水添ダイマー酸ポリエステルポリオール、ダイマー酸ポリエステルポリオール及びポリカーボネートジオールからなる群より選択される少なくとも1種に由来する残基とすることが好ましい。
【0038】
成分(A)のオリゴマーは、より具体的には、下記式(5)又は(6)で表されるオリゴマーである。
【化5】
〔式(5)及び(6)中、Rは炭素数1~6、好ましくは炭素数2~4のアルケニル基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。nは、3~7の実数である。〕
【0039】
かかるオリゴマーにおいて、上記式(1)で表される基は、例えば、2-(パーフルオロヘキシル)エタノール又は2-(パーフルオロブチル)エタノール、並びに、前記脂環族ジイソシアネート化合物、脂肪族ジイソシアネート化合物及び芳香族ジイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種を、イソシアネート基と水酸基とを付加反応(ウレタン化反応とも言う)ことにより得ることができる。
【0040】
2-(パーフルオロヘキシル)エタノール及び2-(パーフルオロブチル)エタノールは、市販品を用いてもよい。市販品としてはユニマテック社製 製品名「CHEMINOXFA-4」「CHEMINOX FA-6」等が挙げられる。
【0041】
オリゴマーのもう一方の末端に存在する不飽和基は、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種と前記ジイソシアネート化合物とをイソシアネート基と水酸基とを付加反応(ウレタン化反応とも言う)させることにより、アクリロイル基として得ることができる。
【0042】
Seg2製造におけるダイマー酸ポリエステルポリオールのダイマー酸は植物系油脂を原料とするC18不飽和脂肪酸の二量化によって生成され、C36ジカルボン酸(炭素数38)の二塩基酸を有する。その代表的な化合物としては、リノール酸、オレイン酸を加熱することによって得られる。また本明細書において、ダイマー酸とは、分子内に二重結合が存在するものに加えて、水素添加反応により、分子内に存在する二重結合が還元されて飽和二塩基酸となったものも含む概念であると定義される。
【0043】
ダイマー酸ポリエステルポリオールは、上記したダイマー酸と、例えば、短鎖のジオール、ポリアルキレングリコール、長鎖のポリオール、またはその他各種のジオールなど反応させた反応生成物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0044】
前記ダイマー酸ポリエステルポリオールの分子量は1000~3000が好ましく、1000~2000がより好ましい。かかる数値範囲内であることによりオリゴマーの分子量が適切な範囲となり、機械物性、耐熱衝撃性、及び絶縁信頼性に優れたコーティング用組成物を得ることができる。
【0045】
また、Seg2製造におけるポリカーボネートジオールは、ジアルキルカーボネート類、アルキレンカーボネート類、その他カーボネート類とジオールとの反応によって得られる化合物であり、カーボネート結合を介してジオールに由来する炭化水素基(C3~C18)が連結した高分子鎖と、この高分子鎖の両末端に結合した水酸基とを有するものであって、例えば下記式(7)で表される構造のものが挙げられる。
【0046】
【化6】
〔式(7)中、Rはカーボネート類と反応するジオールから水酸基を除いた残基を示し、R及びpは、カーボネートジオールの数平均分子量が500~3000となるように設定される。〕
【0047】
ここで、ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、500~2000以下であることが好ましく、500~1000であることがより好ましい。かかる構成を採用することにより、機械物性、耐熱衝撃性、及び絶縁信頼性に優れたコーティング用組成物を得ることができる。
【0048】
式(5)又は(6)で表されるオリゴマーは、例えば、Seg1が由来する化合物とSeg2が由来する化合物とを、(Seg1が由来する化合物):(Seg2が由来する化合物)=2:1のモル比、或いは、3:2~3.5:2のモル比で反応させることにより得ることができる。つまり、Seg1が由来する化合物のイソシアネート基1当量に対して、Seg2が由来する化合物のヒドロキシ基を0.5当量、若しくは、0.57~0.65当量となる割合にて、Seg1が由来する化合物とSeg2が由来する化合物とを反応させることにより、得ることができる。
【0049】
式(5)又は(6)で表されるオリゴマーの質量平均分子量は、5000~30000とすることが好ましい。質量平均分子量が5000以上であることにより、組成物の硬度が高くなりすぎず、優れた柔軟性と共に優れた耐熱衝撃性を得ることができる。一方、質量平均分子量が30000以下とすることにより、コーティング用組成物としての粘度が高くなりすぎることがなく、その結果、当該組成物の優れた塗布性を維持することができる。
【0050】
特にSeg2がダイマー酸ポリエステル由来の場合には、8000~30000とすることが好ましく、10000~18000とすることがより好ましい。また、特にSeg2がポリカーボネートジオール由来の場合には、式(5)又は(6)で表されるオリゴマーの質量平均分子量は、5000~10000とすることが好ましい。
【0051】
本明細書において、成分(A)の質量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ測定装置を用いて、標準ポリスチレンで換算することにより得られる測定値であると定義される。
【0052】
成分(A)の質量平均分子量は例えば、下記測定装置および測定条件にて測定することができる。
測定機器:HLC-8320(東ソー)
測定条件:
・移動層:THF
・カラム:TSKgel Super Multipore HZ-M ×4
・カラム温度:40℃
・流速:0.35ml/min
・標準物質:ポリスチレン
【0053】
成分(A)のパーフルオロアルキル基含有量は0.01~0.6mol/kgとすることが好ましく、0.1~0.5mol/kgとすることがより好ましい。ここでいうパーフルオロアルキル基とはCF(CF)q-(但し、qは4~6の自然数である)を意味する。つまりオリゴマー1kgあたりに含まれるパーフルオロヘキシルのモル数を表し、成分(A)を合成するために2-(パーフルオロヘキシル)エタノールを用いた場合には、仕込まれた原料の全量を1kgとした場合に、2-(パーフルオロヘキシル)エタノールの仕込み量(g)×0.876/319(mol)/kgで計算される。同様に、成分(A)を合成するために2-(パーフルオロブチル)エタノールを用いた場合にはオリゴマー1kgあたりに含まれるパーフルオロブチルのモル数を表し、成分(A)を合成するために仕込まれた原料の全量を1kgとした場合に、2-(パーフルオロブチル)エタノールの仕込み量(g)×0.829/219(mol)/kgで表される。
【0054】
成分(A)の含有量は、該成分(A)及び後述する成分(B)の合計質量に対する成分(A)の質量を20~50質量%とすることが好ましく、30~40質量%とすることがより好ましい。かかる構成を採用することにより、コーティング用組成物の粘度が高くなり過ぎない結果、組成物の良好な塗布性を維持することができる。また、コーティング用組成物の優れた絶縁信頼性も維持することができる。
【0055】
2.成分(B)
成分(B)は、不飽和結合を分子に1個有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーである。不飽和結合を分子に1個有する単官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを使用しない場合、コーティング剤組成物の柔軟性及び耐熱衝撃性が充分なものとならない。
【0056】
不飽和結合を分子に1個有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、1-エチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、1-ブチルアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレートなどの鎖状アルキル(メタ)アクリレート、またイソボルニル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、アルキルフェノキシ(メタ)アクリレート、アルキルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、などの環状構造を持つ(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレートなどの水酸基を持つヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートあるいは2-ヒドロキシ -3-フェノキシプロピルアクリレート;および、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのオリゴまたはポリオキシアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、などが挙げられる。これらは一種のみを単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0057】
これらの中でも、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、芳香族骨格などの環状構造を持つ(メタ)アクリル酸エステルモノマー、芳香族骨格を有し且つエチレンオキサイド変性された(メタ)アクリル酸エステルモノマー、水酸基を分子に有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーからなる群より選択される少なくとも一種を使用することが好ましい。これらの中でも、コーティング剤の被処理表面に対する良好な付着性が得られるという理由から、水酸基を分子に有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを使用することが特に好ましい。
【0058】
脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートを例示することができる。また、芳香族骨格を有しかつエチレンオキサイド変性された(メタ)アクリレートとしては、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及び芳香族骨格などの環状構造を持つ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしてはフェノキシエチル(メタ)アクリレートを例示することができる。
【0059】
これらの中でも、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。
【0060】
水酸基を分子に有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートを例示することができ、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートが特に好ましい。これらを含有することにより、コーティング膜の柔軟性を損なうことなく電子回路実装基板のソルダーレジストや電子部品への付着性またフラックス残渣がある場合にも、コーティング剤による被処理表面に対して付着性が向上し、電子回路実装基板の信頼性をさらに維持することができる。
【0061】
また、成分(B)のアクリル酸エステルモノマーとしては、市販品を使用することができる。市販品として、例えばフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとしては共栄社化学社 製品名「ライトアクリレートP―200A」、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとしては東亞合成化学社製 製品名「アロニックスM-111」、イソボルニルアクリレートとしては大阪有機化学社製 製品名「IBXA」、ジシクロペンタニルメタアクリレートとしては日立化成社「FA-513M」が挙げられる。また、フェノキシエチルアクリレートとしては大阪有機化学工業社製 製品名「ビスコート192」、共栄社化学社製 製品名「ライトアクリレートPO-A」、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートとしては東亜合成化学社製 製品名「アロニックスM-5700」、共栄社化学社製 製品名「エポキシエステルM-600A」が挙げられる。
【0062】
成分(B)の含有量は、成分(A)及び(B)の合計質量に対する成分(B)の質量を50~80質量%とすることが好ましく、60~70質量%とすることがより好ましい。かかる構成を採用することにより、コーティング用組成物の粘度が高くなり過ぎない結果、組成物の良好な塗布性を維持することができる。また、コーティング用組成物の優れた絶縁信頼性も維持することができる。
【0063】
3.成分(C)
成分(C)として使用される光重合開始剤としては、光によりラジカルを発生し、そのラジカルが不飽和基含有オリゴマーおよび(メタ)アクリル酸エステルモノマーのラジカル重合を効率的に開始するものであれば特に制限はなく、公知の光重合開始剤を広く使用することができる。
【0064】
かかる光重合開始剤として、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルフォリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フォスフィンオキサイド、ジフェニル(2,4,6―トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、ヒドロキシベンゾフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-S-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロ)-S-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-S-トリアジン、などが挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0065】
上述の中でも、UV光における長波長域に吸収を有する、下記式(2)又は(3)で表されるアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フォスフィンオキサイド、ジフェニル(2,4,6―トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド)が最も好ましい。ここで、UV光における長波長とは主にUV-Aを表し、315~400nmの波長を表し、特に375nm近辺に吸収ピーク波長を有することを意味する。
【0066】
【化7】
【0067】
成分(C)の含有量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対し、0.5~3.0質量部とすることが好ましく、1.0~2.0質量部とすることがより好ましい。かかる構成を採用することにより、優れた深部硬化性を得ることができる。
【0068】
成分(C)の光重合開始剤としては、市販品を使用してもよい。市販品としては、IGM Resin社 製品名「Omnirad 819」「Omnirad TPO-H」などが挙げられる。
【0069】
4.成分(D)
本発明の組成物は、さらに成分(D)として蛍光増白剤を含むことも好ましい。かかる蛍光増白剤としては、公知のものを広く採用することが可能であり、特に限定はない。蛍光増白剤として、例えば、オキサゾール系、クマリン系、トリアゾール系、イミダゾール系、ビラゾロン系、ナフタルイミド系、スチルベンゼン系などの蛍光増白剤が挙げられる。これらの中でも、下記式(8)で表されるオキサゾール系蛍光増白剤である2,2'-(2,5-チオフェンジイル)ビス(5-tert-ブチルベンゾキサゾール)を使用することが特に好ましい。
【0070】
【化8】
【0071】
オキサゾール系蛍光増白剤は、波長320~400nm(ピーク波長370nm)の紫外光線を吸収して励起され、波長400~460nm(ピーク波長430nm)の紫青から青緑の蛍光(可視光線)を発するものである。前記、式8で表されるオキサゾール系蛍光増白剤である2,2‘-(2,5-チオフェンジイル)ビス(5-tert-ブチルベンゾキサゾール)は成分(C)の光重合開始剤と併用することにより、365nm~405nmの発光波長を発する紫外線照射において、より、感光性が増し、コーティング用組成物のより優れた深部硬化性及び暗部硬化性の獲得に寄与する。
【0072】
成分(D)の配合量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対し、0.1~0.5質量部とすることが好ましく、0.1~0.2質量部とすることがより好ましい。蛍光増白剤を使用することにより、365nm~405nmの発光波長を発する紫外線照射において、より感光性が増し、コーティング用組成物の深部硬化性及び暗部硬化性を向上させることができる。
【0073】
成分(D)の蛍光増白剤は、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、BASF社 製品名「TINOPAL OB」などを挙げることができる。
【0074】
5.成分(E)
本発明の組成物は、さらに成分(E)としてチオール化合物を含むことも好ましい。かかるチオール化合物としては1級、2級、及び3級の何れのチオール化合物であってもよい。中でも、2級チオール化合物を使用することが好ましい。2級チオール化合物を使用することにより、コーティング用組成物の貯蔵安定性に影響を及ぼすことなく、適切な貯蔵安定期間を保持することができる。また、2級チオール化合物の中でも、2~4個のチオール基を有する化合物が好ましく、4個のチオール基を有する化合物が特に好ましい。
【0075】
具体的には、1,4‐ビス(3‐メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5‐トリス(3‐メルカプトブチルオキシエチル)‐1,3,5‐トリアジン‐2,4,6(1H,3H,5H)‐トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)トリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3‐メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3‐メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3‐メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3‐メルカプトプロピオネート)などを挙げることができる。これらは一種のみを単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0076】
上記した中でも、2級チオール化合物であるペンタエリスリトールテトラキス(3‐メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)が特に好ましい。
【0077】
成分(E)の配合量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対し、1.0質量部以下とすることが好ましく、0.3~0.5質量部とすることがより好ましい。成分(A)及び(B)の合計100質量部に対し成分(E)の配合量を1.0質量部以下とすることにより、365nm~405nmの発光波長を発する紫外線照射においてコーティング組成物の架橋度が向上し、高い硬化度を有するコーティングを形成することができる。これら硬化度はゲル分率で確認できる。また、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対し成分(E)の配合量を0.3質量部以上とすることにより充分な暗部硬化性を得ることができる。
【0078】
6.その他の成分
本発明の組成物は、その目的等に応じ適宜、充填剤を含んでもよい。充填剤としては、通常の硬化性樹脂組成物に用いられる無機充填剤が利用できる。充填剤は、微粒子状のものが好ましい。例えば、無機充填剤としては、溶融シリカ、結晶シリカ、フュームドシリカ、石英微粉末、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、などが使用できるが、フュームドシリカを用いることがより好ましい。フュームドシリカの平均一次粒子径は、5nm~50μmが好ましい。このようなフュームドシリカを用いることにより、本発明の組成物に良好なチクソ性を付与することができ、厚膜の確保が必要な箇所へのコーティングとして好適に使用できる。さらにほぼ透明に近い組成物を得ることができ、紫外線照射した場合にも、十分な硬化性を得ることができる。
【0079】
その他、必要に応じ本発明の効果を損ねない範囲で、重合禁止剤、密着性付与剤、レべリング剤、消泡剤、酸化防止剤、難燃剤などを適宜添加することができる。
【0080】
本発明の組成物は、25℃における粘度が50~3000mPa・sであることが好ましく、100~2000mPa.sであることが好ましい。当該粘度は、ブルックフィールド回転粘度計を使用することにより、計測・算出することが可能である。
【0081】
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、常法により製造することができる。例えば、上述の成分(A)~(C)、及び必要に応じてその他の成分を、温度調節可能な混練機、例えば、プラネタリーミキサー、二軸ミキサー、高せん断型ミキサー、バタフライミキサーなどを用いて混練することにより製造することができる
【0082】
また、本発明の組成物を使用して電子回路実装基板をコーティングする方法としては特に限定されず、従来公知の方法によりコーティングすることができ、特にディスペンサー装置を用いてコーティングする方法が好適である。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例
【0084】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0085】
成分(A-1):合成例1
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4口フラスコに、ダイマー酸ポリエステルポリオール(クローダー社 プリプラスト1838、水酸基価:56mgKOH/g、数平均分子量:2,000)500gと、イソホロンジイソシアネート(エボニック社 VESTNAT IPDI)111.12gを投入し、窒素還流下で80℃で3時間攪拌し反応させ、次に2-(パーフルオロヘキシル)エタノール45.51gと2―ヒドロキシエチルアクリレート43.54gを投入し 80℃において15時間攪拌し反応させ、反応終了はJIS K7301に準ずる滴定によりイソシアネート残基が消失していることにより確認した。これにより成分(A-1)(質量平均分子量 14,900、パーフルオロヘキシル基含有量:0.18mol/kg)を得た。
【0086】
成分(A-2):合成例2
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4口フラスコに、ダイマー酸ポリエステルポリオール(クローダー社 プリプラスト1838、水酸基価:56mgKOH/g、数平均分子量:2,000)500.0gと、イソホロンジイソシアネート(エボニック社 VESTNAT IPDI)111.12gを投入し、窒素還流下で80℃で3時間攪拌し反応させ、次に2-(パーフルオロヘキシル)エタノール91.03g と2-ヒドロキシエチルアクリレート29.03gを投入し、80℃において15時間攪拌し反応させ、反応終了はJIS K7301に準ずる滴定によりイソシアネート残基が消失していることにより確認した。これにより成分(A-2)(質量平均分子量:15200、パーフルオロヘキシル基含有量:0.34mol/kg)を得た。
【0087】
成分(A-3):合成例3
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4口フラスコに、ダイマー酸ポリエステルポリオール(クローダー社 プリプラスト1838、水酸基価:56mgKOH/g、数平均分子量:2,000)500.0gと、イソホロンジイソシアネート(エボニック社 VESTNAT IPDI)111.12gを投入し、窒素還流下で80℃で3時間攪拌し反応させ、次に2-(パーフルオロブチル)エタノール66.02g と2-ヒドロキシエチルアクリレート29.03gを投入し、80℃において15時間攪拌し反応させ、反応終了はJIS K7301に準ずる滴定によりイソシアネート残基が消失していることにより確認した。これにより成分(A-3)(質量平均分子量:14900、パーフルオロヘキシル基含有量:0.35mol/kg)を得た。
【0088】
成分(A-4):合成例4
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4口フラスコに、ポリカーボネートジオール(東ソー社 ニッポラン965、水酸基価:112mgKOH/g、数平均分子量:1000)400gと、イソホロンジイソシアネート(エボニック社 VESTNAT IPDI)177.83gを投入し、窒素還流下で80℃で3時間攪拌し反応させ、次にパーフルオロヘキシルアルコール72.82gと2-ヒドロキシプロピルアクリレート78.08gを投入し 80℃において15時間攪拌し反応させ、反応終了はJIS K7301に準ずる滴定によりイソシアネート残基が消失していることにより確認した。これにより成分(A-4)(質量平均分子量:7300 パーフルオロヘキシル基含有量:0.27mol/kg)を得た。
【0089】
成分(A-5):合成例5
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4口フラスコに、ポリカーボネートジオール(東ソー社 ニッポラン965、水酸基価:112mgKOH/g、数平均分子量:1000)400gと、イソホロンジイソシアネート(エボニック社 VESTNAT IPDI)177.83gを投入し、窒素還流下で80℃で3時間攪拌し反応させ、次にパーフルオロヘキシルアルコール145.64g と2-ヒドロキシプロピルアクリレート52.06gを投入し、80℃において15時間攪拌し反応させ、反応終了はJIS K7301に準ずる滴定によりイソシアネート残基が消失していることにより確認した。これにより成分(A-5)(質量平均分子量:7700、 パーフルオロヘキシル基含有量:0.52mol/kg)を得た。
【0090】
成分(A-6):合成例6
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4口フラスコに、ダイマー酸ポリエステルポリオール(クローダー社 プリプラスト1838、水酸基価:56mgKOH/g、数平均分子量:2,000)500 gと、イソホロンジイソシアネート(エボニック社 VESTNAT IPDI )83.36gを投入し、窒素還流下で80℃で3時間攪拌し反応させ、次に2-(パーフルオロヘキシル)エタノール9.10gと2―ヒドロキシエチルアクリレート26.12gを投入し、80℃において15時間攪拌し反応させ、反応終了はJIS K7301に準ずる滴定によりイソシアネート残基が消失していることにより確認した。これにより成分(A-6)(質量平均分子量 16,000 パーフルオロヘキシル基含有量:0.04 mol/kg)を得た。
【0091】
成分(A-7):合成例7
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4口フラスコに、ダイマー酸ポリエステルポリオール(クローダー社 プリプラスト1838、水酸基価:56mgKOH/g、数平均分子量:2,000)500 gと、イソホロンジイソシアネート(エボニック社 VESTNAT IPDI )83.36gを投入し、窒素還流下で80℃で3時間攪拌し反応させ、次に2-(パーフルオロヘキシル)エタノール22.76gと2―ヒドロキシエチルアクリレート21.77gを投入し、80℃において15時間攪拌し反応させ、反応終了はJIS K7301に準ずる滴定によりイソシアネート残基が消失していることにより確認した。これにより成分(A-7)(質量平均分子量 16,300 パーフルオロヘキシル基含有量:0.10 mol/kg)を得た。
【0092】
成分(A-8):合成例8
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4口フラスコに、ダイマー酸ポリエステルポリオール(クローダー社プリプラスト1838、水酸基価:56mgKOH/g、数平均分子量:2,000)500gと、イソホロンジイソシアネート(エボニック社 VESTNAT IPDI)111.12gを投入し、窒素還流下で80℃で3時間攪拌し反応させ、次に2-ヒドロキシエチルアクリレート 58.05gを投入し、80℃において15時間攪拌し反応させ、反応終了はJIS K7301に準ずる滴定によりイソシアネート残基が消失していることにより確認した。これにより成分(A-8)(質量平均分子量:14,600)を得た。
【0093】
成分(A-9):合成例9
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた1Lの4口フラスコに、水添ポリブタジエンポリオール(東ソー社 GI-1000、水酸基価:70mgKOH/g、数平均分子量:1,000)400gと、イソホロンジイソシアネート(エボニック社 VESTNAT IPDI)177.83gを投入し、窒素還流下で80℃で3時間攪拌し反応させ、次に2-ヒドロキシエチルアクリレート92.88gを投入し、80℃において15時間攪拌し反応させ、反応終了はJIS K7301に準ずる滴定によりイソシアネート残基が消失していることにより確認した。これにより成分(A-9)(質量平均分子量:20,500)を得た。
【0094】
成分(B):アクリル酸エステルモノマー
(B-1)単官能アクリレート(ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート)
東亞合成社製 アロニックスM-111
(B-2)単官能アクリレート (フェノキシポリエチレングリコールアクリレート)共栄社化学 ライトアクリレートP-200
(B-3)単官能アクリレート (イソボルニルアクリレート)
大阪有機化学工業 IBXA
(B-4)単官能アクリレート(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート)
東亜合成化学社製 アロニックスM-5700
【0095】
成分(C):光重合開始剤
アシルフォスフィンオキサイド化合物
(C1)IGM Resin社 Omnirad819
(C2)IGM Resin社 Omnirad TPO-H
【0096】
成分(D):蛍光増白剤
オキサゾール系蛍光増白剤 BASF社 TINOPAL OB
【0097】
成分(E):チオール化合物
4官能2級チオール 昭和電工社 カレンズMTPE1
【0098】
(実施例及び比較例)
上記成分(A)~(E)を、表1及び2に示される配合に基づき、加熱装置を備えた攪拌混合機を使用して活性エネルギー線硬化型コーティング用組成物を製造し、評価を行った。
【0099】
(粘度測定)
ブルックフィールドB型粘度計(タイプDVE)を用い、(スピンドルSC4-No.29)とサーモセルを準備し、コーティング用組成物をチャンバーに13cc充填し、25℃における粘度を測定した。
【0100】
(深部硬化性評価試験)
ステンレス板(5cm×5cm)に剥離用PETを剥離面が上になるように両面テープで張り合わせ、塗布用のベース基材を作成した。厚さがそれぞれ1mm、1.5mm、2mm、3mmのシリコンゴムシートを準備し、2cm×2cmにカットし、図1のようにコーティング剤の充填部分が15mm×15mmとなるように切り抜き、スペーサーとした。当該スペーサーを準備した塗布用ベース基材の上にセットし、コーティング用組成物をスペーサーの高さまで充填した。充填したコーティング用組成物をUV照射装置(パナソニック社製 Aicure UJ30 ヘッド 波長365nm ANUJ6186)により4500mJ/cm2の積算照射量にて硬化させた。UV照度と積算照射量の調整は照度計(ヘレウス社 UV Power PuckII)を用いて行った。硬化させた塗膜を剥がし、剥がした塗膜が下になるように上質紙上に置いて、1時間養生した。養生後、塗膜をとり除き、下記評価基準に従って評価した。硬化させたコーティング用組成物の裏面を確認し、上記シリコンゴムシート1.5mmの膜厚のモデルにおいて未硬化部分が観察されない場合に、合格とした。その上で、上記シリコンゴムシートの各厚さにより得られる1mm、1.5mm、2mm、3mmの膜厚のモデルに関して、下記の評価基準で判定した。
◎:膜厚2mmのコーティングモデルかつ3mmのコーティングモデルにおいても未硬化物が確認できない
○:膜厚2mm以上では未硬化物が確認されるが、1.5mmでは確認されない
×:膜厚1.5mmのコーティングモデルで未硬化物が確認される
(暗部硬化性評価試験)
上記、深部硬化性評価と同様の方法で、1mmのスペーサーを使用し、コーティング剤を充填し、膜厚を1mmとし、次に充填部の1/2の面積を図2のようにアルミニウムフォイルにて覆い、UV光が非照射部となるようにした。深部硬化性と同様のUV照射装置および積算照射量にて、照射部を硬化させ、アルミニウムフォイルを取り除き、照射部端面を基準にして、その端面から硬化に至った距離を観察し、下記の基準で判定した。
◎:照射部端面から5.0以上7.5mm以下の距離が硬化にいたる
○:照射部端面から2.5以上5.0mm未満の距離が硬化にいたる
△:照射部端面から1.0以上2.5mm未満の距離が硬化にいたる
×:照射部のみ硬化。アルミニウムフォイルで覆った非照射部への硬化は全くなし。
【0101】
(耐熱衝撃性評価試験)
塗布装置(ノードソン社製、アプリケーター(ユニティーIC30 PLUS )、3軸ロボット(w/4XPロボット)、 Unityコントローラー、 ノズル1.35mm)を用意した。厚さが2mmのシリコンゴムシートを準備し、2cm×3.5cmにカットし、図3のようにコーティング剤の充填部分が15×30mmとなるように切り抜き、スペーサーとした。上記スペーサーを準備した銅張積層板の上にセットし、コーティング組成物を当該塗布装置で、スペーサー高さまで充填し、塗布された活性エネルギー線コーティング組成物に深部硬化性評価と同様のUV照射装置および同様の積算照射量で硬化させ、スペーサーを取り除き、厚み2mmのコーティング塗膜を得た次にコーティング組成物が塗布され、硬化した試験体を熱衝撃試験機に投入し、-40℃30分/80℃30分の繰り返しを1サイクルのとし、500サイクル実施し、下記評価基準にしたがって評価した。
◎:銅張り積層板からの剥がれがまったく引き起こされていない。
○:塗布面積100%とした場合、剥がれ10%未満である
△:塗布面積100%とした場合、10~30%の剥がれがある
×:塗布面積100%とした場合、30%以上の剥がれがある
【0102】
(絶縁信頼性評価試験)
JIS Z3197 8.5.3e に準ずるくし型電極基板(電極間隔0.318mm)にコーティング用組成物を前記、耐熱衝撃性の測定で用いた同一の塗布装置にて厚みが1mmとなるように塗布し、次に深部硬化性評価に用いた同一のUV照射装置および積算照射量にてコーティング用組成物を硬化させ、85℃ 87.5%RHの条件にてマイグレーションテスターを使用し500時間の試験を行い、下記評価基準にしたがって評価した。
○:絶縁抵抗値が10Ω以上でデンドライトの発生がない
△:絶縁抵抗値が10Ω以上であるが、デンドライトが発生している
×:絶縁抵抗値が10Ω未満である
【0103】
(付着性評価)
銅張積層板(70mm×90mm×1.6mm)にコーティング組成物を厚みが500μmとなるように45mm×45mmの面積を塗布した。次に深部硬化性評価に用いた同一のUV照射装置および積算照射量にてコーティング用組成物を硬化させた後、24時間室温で放置し、JISK5400に準ずるクロスカット法(カットの間隔2mm、マス目の数25)にて、下記評価基準にしたがって評価した。
◎:残存マス目が25
〇:残存マス目が20以上25未満
△:残存マス目が15以上20未満
×:残存マス目が15未満
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
図1
図2
図3