(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】拡散装置のための着脱可能アセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61L 9/03 20060101AFI20240805BHJP
A01M 1/02 20060101ALI20240805BHJP
A01M 29/12 20110101ALI20240805BHJP
【FI】
A61L9/03
A01M1/02 B
A01M29/12
(21)【出願番号】P 2021575217
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 FR2019053207
(87)【国際公開番号】W WO2020254733
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】PCT/FR2019/051490
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520497874
【氏名又は名称】カエリンプ
【氏名又は名称原語表記】CAELIMP
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ペレス ヨアン
(72)【発明者】
【氏名】リヴィエール フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ピション フィリップ
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/074020(WO,A1)
【文献】実開平05-085276(JP,U)
【文献】特開2011-224071(JP,A)
【文献】特開2010-148747(JP,A)
【文献】特開平05-084286(JP,A)
【文献】特表2002-510228(JP,A)
【文献】特開2005-229931(JP,A)
【文献】特開2003-199473(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0284655(US,A1)
【文献】特開2004-313004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
A01M 1/00-99/00
A45D 34/00-34/06
B05B 1/00- 1/36
B65D 83/00
B65D 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を蒸気状態で周囲の空気中に拡散させるよう構成された拡散装置(1)のための着脱可能アセンブリであって、
前記着脱可能アセンブリ(900,1100,1300)は、軸方向に細長い形状を有する貯蔵容器(110,210)を備え、
前記貯蔵容器(110,210)は、当該貯蔵容器(110,210)の軸方向端部に位置するオリフィス(12)を含み、
前記貯蔵容器(110,210)は、液体物質と、前記液体物質を含浸させた内側多孔性保持部材(111)とを収容し、
前記液体物質は、天然又は合成由来のセミオケミカル分子、フェロモン、アロモン、カイロモン、シノモン及び香料のなかから選択される少なくとも1つの物質を含み、
前記貯蔵容器(110,210)は、前記物質を周囲の空気中に蒸発させるために前記オリフィス(12)の出口に配置されるよう構成された分配器部材(30,130)に密閉して組み付けられるよう構成され、
前記分配器部材(30,130)は多孔質体(30,130)を有し、
前記多孔質体(30,130)は、前記オリフィス(12)内に係合するのに適した端部と、前記貯蔵容器(110,210)の外側に位置し前記貯蔵容器(110,210)の前記軸方向に平行となるよう構成された蒸発表面(39)と、を有し、
前記内側多孔性保持部材(111)は、前記オリフィス(12)に隣接する前記貯蔵容器(110,210)のマウスゾーンに少なくとも収容され、
前記内側多孔性保持部材(111)は、前記端部が前記オリフィス(12)内に係合したときに前記端部と接触可能となるよう前記オリフィス(12)から奥にセットされ、
前記着脱可能アセンブリ(900,1100,1300)は、シール(72)を備え、
前記シール(72)は、前記多孔質体(30,130)を前記貯蔵容器(110,210)に密閉して組み付けることを可能にすることで前記貯蔵容器(110,210)と前記分配器部材(30,130)とを流体密閉接続するよう前記オリフィス(12)の周囲に配置され
ており、
前記物質は、温度に応じて変化する粘度を有し、
前記物質の前記粘度及び表面張力は、
重力加速度が前記オリフィス(12)から前記多孔質体(30,130)の方向にかかったときに、前記物質は0℃より高い第1の温度より低い周囲温度で前記多孔質体(30,130)を通って流れず、前記物質は前記第1の温度よりも高い第2の温度で前記多孔質体(30,130)を通って流れるような粘度及び表面張力である、着脱可能アセンブリ。
【請求項2】
複数の内側多孔性保持部材が前記貯蔵容器(110,210)内に配置される、請求項1に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項3】
前記貯蔵容器(110,210)の前記マウスゾーンに位置する第1の内側多孔性保持部材(111)は、前記マウスゾーンから離れて位置する第2の内側多孔性保持部材(112)よりも剛性が高い、請求項2に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項4】
前記内側多孔性保持部材の保持手段(121)が、前記貯蔵容器(110,210)内に配置されるとともに、前記貯蔵容器(110,210)における前記オリフィス(12)とは反対の側の端部から延在して前記内側多孔性保持部材を少なくとも前記マウスゾーンに保持する、請求項1~3の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項5】
前記内側多孔性保持部材
の保持手段は、前記貯蔵容器(110,210)における前記オリフィス(12)とは反対の側の端部に固定されたロッド(121)を含む、請求項2~4の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項6】
前記着脱可能アセンブリ(900,1100,1300)は、前記物質を周囲の空気中に蒸発させるために前記オリフィス(12)の出口に配置された前記分配器部材(30,130)を含み、
前記分配器部材(30,130)の前記端部は、前記内側多孔性保持部材(111)と接触するように前記オリフィス(12)内に係合し、前記蒸発表面(39)は、前記貯蔵容器(110,210)の外側に位置し、
前記多孔質体(30,130)は前記貯蔵容器(110,210)に前記シール(72)によって密閉して組み付けられるよう構成されている、請求項1~5の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項7】
前記着脱可能アセンブリ(900,1100)は、前記多孔質体(30,130)を加熱可能な少なくとも1つの電気加熱部材(32)と、前記加熱部材(32)に関連付けられ、前記拡散装置(1)の固定部と電気接続するよう構成された電気接点とを備える、請求項6に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項8】
前記加熱部材(32)を調整するよう構成された少なくとも1つの電子レギュレータ要素をさらに備える、請求項7に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項9】
前記多孔質体(30,130)は、直径が0.01μm~10μmの細孔を有する、請求項6~8の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項10】
前記物質は、温度に応じて変化する粘度を有し、
前記物質の前記粘度及び表面張力は、
重力加速度が前記オリフィス(12)から前記多孔質体(30,130)の方向にかかったときに、前記物質は0℃より高い第1の温度より低い周囲温度で前記多孔質体(30,130)を通って流れず、前記物質は前記第1の温度よりも高い第2の温度で前記多孔質体(30,130)を通って流れるような粘度及び表面張力である、請求項6~9の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項11】
前記第1の温度は1℃~50℃である、請求項10に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項12】
前記着脱可能アセンブリ(1100,1300)は、前記オリフィス(12)の周辺に配置された気流ガイド(41)を含み、
前記気流ガイド(41)は、前記蒸発表面(39)に対する接線方向に空気の流れをガイドするよう構成され、
前記着脱可能アセンブリ(1100,1300)は、前記貯蔵容器(110,210)と前記気流ガイド(41)との間、及び前記気流ガイド(41)と前記多孔質体(30,130)との間の流体密閉接続をするためのシール体を備える、請求項6~9の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項13】
前記気流ガイド(41)には、前記貯蔵容器(110,210)の周囲に配置される、前記軸方向に平行な複数のフィン(43)が設けられている、請求項12に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項14】
前記着脱可能アセンブリは、前記多孔質体(30,130)の周囲に延在する筒状のシュート(42)を含み、
前記シュート(42)は、空気の流れを前記多孔質体(30,130)上へとガイドすることを可能にする、請求項12又は13に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項15】
前記着脱可能アセンブリ(1100)は、空気混合チャンバ(60)の全部又は一部を含み、
前記空気混合チャンバ(60)は、前記貯蔵容器(110,210)の全周に延在する、請求項1~14の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項16】
前記空気混合チャンバ(60)は、ファン(61)への接続を可能にする開口を含む、請求項15に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項17】
前記空気混合チャンバ(60)は、ファン(61)及び電気コネクタ(33)を含み、
前記ファン(61)は、前記空気混合チャンバ(60)内に空気の流れを生成するように配置され、
前記電気コネクタ(33)は、前記ファン(61)に電力を供給するために、前記拡散装置(1)の固定部にある電気コネクタに関連付けられるよう構成されている、請求項15又は16に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項18】
前記気流ガイド(41)は複数のチャネル(44)を含み、
前記複数のチャネル(44)は、前記空気混合チャンバ上に開口するとともに、前記蒸発表面(39)に対する接線方向に配向されている、請求項12を引用する請求項15~17の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項19】
前記着脱可能アセンブリには、前記貯蔵容器(110,210)の周囲において突出し、前記拡散装置(1)の固定部の開口を覆うように構成されたフランジ(90)が設けられており、
前記開口は、前記拡散装置(1)の前記固定部に前記着脱可能アセンブリを挿入するためのものである、請求項1~18の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項20】
前記貯蔵容器(110,210)には、前記貯蔵容器(212)の内部空間と周囲の空気との間の連通を確立する加圧通気口(213)が設けられている、請求項1~19の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項21】
前記着脱可能アセンブリの移送中に前記オリフィス(12)を密閉して塞ぐように配置されたストッパ(50)をさらに備える、請求項1~20の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項22】
物質を蒸気状態で周囲の空気中に拡散させるよう構成された拡散装置(1)のための着脱可能アセンブリであって、
前記着脱可能アセンブリは、オリフィス(12)を含む貯蔵容器(10,110,210)を備え、
前記貯蔵容器(10,110,210)は、液体物質と、前記液体物質を周囲の空気中に蒸発させるために前記オリフィス(12)の出口に配置され前記オリフィス(12)に接続された分配器部材(30,130)とを収容し、
前記液体物質は、天然又は合成由来のセミオケミカル分子、フェロモン、アロモン、カイロモン、シノモン及び香料のなかから選択される少なくとも1つの物質を含み、
前記分配器部材(30,130)は、多孔質体(30,130)を有し、
前記多孔質体(30,130)は、前記貯蔵容器(10,110,210)の外側に位置する蒸発表面(39)を有し、
前記液体物質は、温度に応じて変化する粘度を有し、
前記液体物質の前記粘度及び表面張力は、
前記貯蔵容器から前記蒸発表面(39)に向かう流れを生成可能な原動力を構成するよう重力加速度が前記オリフィス(12)から前記多孔質体(30,130)の方向にかかったときに、前記液体物質は0℃より高い第1の温度より低い周囲温度で前記多孔質体(30,130)を通って流れず、前記液体物質は前記第1の温度よりも高い第2の温度で前記多孔質体(30,130)を通って流れるような粘度及び表面張力である、着脱可能アセンブリ。
【請求項23】
前記第1の温度は1℃~50℃である、請求項22に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項24】
前記着脱可能アセンブリは、前記多孔質体(30,130)を加熱するための少なくとも1つの加熱部材(32)と、前記加熱部材(32)に関連付けられ、前記拡散装置(1)の固定部と電気接続するよう構成された電気接点(33)とを備える、請求項22又は23に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項25】
前記加熱部材(32)を調整するよう構成された少なくとも1つの電子レギュレータ要素をさらに備える、請求項24に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項26】
前記多孔質体(30,130)は、直径が0.01μm~10μmの細孔を有する、請求項22~25の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項27】
前記着脱可能アセンブリは、前記オリフィス(12)の周辺に配置された気流ガイド(41)を含み、
前記気流ガイド(41)は、前記蒸発表面(39)に対する接線方向に空気の流れをガイドするよう構成され、
前記着脱可能アセンブリは、前記貯蔵容器(10)と前記気流ガイド(41)との間、及び前記気流ガイド(41)と前記多孔質体(30,130)との間の流体密閉接続をするためのシール体を備える、請求項22~26の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項28】
前記貯蔵容器(10)は、軸方向に細長い形状を有し、
前記オリフィス(12)は、前記貯蔵容器(10)の軸方向端部に位置し、
前記多孔質体(30,130)の前記蒸発表面(39)は、前記軸方向に平行であり、
前記気流ガイド(41)には、前記軸方向に平行な、前記貯蔵容器(10)の周囲に配置された複数のフィン(43)が設けられている、請求項27に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項29】
前記着脱可能アセンブリは、前記多孔質体(30,130)の周囲に延在する筒状のシュート(42)を含み、
前記シュート(42)は、空気の流れを前記多孔質体(30,130)上へとガイドすることを可能にする、請求項27又は28に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項30】
前記着脱可能アセンブリは、空気混合チャンバ(60)の全部又は一部を含み、
前記空気混合チャンバ(60)は、前記貯蔵容器(10)の全周に延在する、請求項22~29の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項31】
前記空気混合チャンバ(60)は、ファンへの接続を可能にする開口を含む、請求項30に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項32】
前記空気混合チャンバ(60)は、ファン(61)及び電気コネクタ(33)を含み、
前記ファン(61)は、前記空気混合チャンバ(60)内に空気の流れを生成するように配置され、
前記電気コネクタ(33)は、前記ファン(61)に電力を供給するために、前記拡散装置(1)の固定部にある電気コネクタに関連付けられるよう構成されている、請求項31に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項33】
前記気流ガイド(41)は複数のチャネル(44)を含み、
前記複数のチャネル(44)は、前記空気混合チャンバに開口するとともに、前記蒸発表面(39)に対する接線方向に配向されている、請求項27を引用する請求項30~32の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項34】
前記着脱可能アセンブリには、前記貯蔵容器(10)の周囲において突出し、前記拡散装置(1)の固定部の開口を覆うように構成されたフランジ(90)が設けられており、
前記開口は、前記拡散装置(1)の前記固定部に前記着脱可能アセンブリを挿入するためのものである、請求項22~33の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項35】
前記貯蔵容器(10)には、前記貯蔵容器(212)の内部空間と周囲の空気との間の連通を確立する加圧通気口(213)が設けられている、請求項22~34の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項36】
前記着脱可能アセンブリの移送中に前記オリフィス(12)を密閉して塞ぐように配置されたストッパ(50)をさらに備える、請求項22~35の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ。
【請求項37】
請求項1~36の何れか一項に記載の着脱可能アセンブリ(900,1000,1100,1300)と、
ハウジングを画定するケーシング(80)を含む固定部と、
加熱部材と、
を備える拡散装置(1)であって、
前記ハウジングに前記着脱可能アセンブリが動作位置で挿入されることで、前記蒸気状態の前記物質を周囲の空気中に拡散させることができるように構成された、拡散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気状態の物質を周囲の空気中に拡散させることを意図した拡散装置の分野に関し、この物質は、天然又は合成由来のセミオケミカル分子、フェロモン、アロモン、カイロモン、シノモン及び香料から選択される少なくとも1つの物質を含む液体である。特に、本発明は、この種の拡散装置に使用することができる着脱可能アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
天然又は合成由来のセミオケミカル分子、フェロモン、アロモン、カイロモン、シノモン及び香料などの化合物は多くの用途に使用することができる。農薬用途では、例えば、セミオケミカル物質は、略奪を行おうとする動物の群れを追い出す又は制御するために使用される。
【0003】
米国特許出願公開第2018/0000977号明細書には、臭気の範囲及び有効性を拡げるための蒸発器装置が記載されている。この装置は臭気を含む取り外し可能容器を備える。
【0004】
米国特許第2140516号明細書には、水蒸気を瞬時に発生させる電気蒸気発生器が記載されており、その蒸気は薬剤又は燻蒸剤を含むことができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明のいくつかの態様は拡散装置のための着脱可能アセンブリを提案するという考えに基づいており、拡散装置は、蒸気状態の物質を周囲の空気中に拡散させることを意図しており、これにより長期間の自律性を保証するためにエネルギー消費を低くすることが可能とする。
【0006】
本発明のいくつかの態様は、単純な温度制御によって多孔質体を通る分配される物質の流速を調整するよう構成された拡散装置のための着脱可能アセンブリを提案するという考えに基づいている。
【0007】
本発明のいくつかの態様は、特に高い精度でかつ物質の損失なく高い値を有する物質を使用するように構成された拡散装置のための着脱可能アセンブリを提案するという考えに基づいている。
【0008】
高価な物質という文脈において、フェロモンを含む物質、例えば周囲温度で液体形態となる物質については、その廃棄を避けなければならない。したがってこの状況では、多孔質分配器部材の蒸発表面に、流れを生じさせるのに十分に小さい量の液体を、液滴の形成なしに供給することが望まれる。
【0009】
多孔質体を通る液体の流れは、冷たい状態でJurinの法則によって、そして熱い状態でDarcyの法則によって支配される。
【0010】
Darcyの法則によれば、Q=KA(ΔH)/Lであり、ここで、Qは体積流量、Kは透水係数、Aは多孔質体における調査対象の断面の面積、ΔHは多孔質体サンプルの上流及び下流のピエゾ高さ差、Lは多孔質体サンプルの長さである。透水係数は、K=kρg/μであり、ここで、kは多孔質体の固有透過係数、ρは液体物質の単位体積当たりの質量、gは重力加速度、μは液体物質の粘度である。
【0011】
Jurinの法則は、式:h=(2γcos(θ))/(rρg)に対応し、ここで、hは液体の高さ、γは液体の表面張力、θは液体とマイクロチャネルの壁と間の接触角、ρは液体の単位体積当たりの質量、rはマイクロチャネルの半径、gは重力定数である。
【0012】
「着脱可能アセンブリ」とは、特に長い耐用年数を有する部材を含む拡散装置の固定部とは対照的に、拡散装置に対して一体で移動、挿入又は引き抜くことができる、特に消耗要素、具体的には拡散される液体物質を含むアセンブリを指す。
【0013】
拡散装置のためのこの種の着脱可能アセンブリは種々の態様で設計されてもよく、即ち、液体物質を貯蔵する容器をベースにして、これを拡散装置のより多くの又はより少ない要素と一体化させて設計されてもよく、そのような要素とは特に、貯蔵容器の外に液体物質を分配する機能を有する要素や、液体物質を蒸発させるための空気の流れを生成する及び/又は方向付ける機能を有する要素である。拡散装置の要素を固定部ではなく取り外し可能部と一体化するという選択は多くの考察に基づき得る。第1の考察は、例えば装置の全体的なサイズ又は生産コストを制限することを目的とした、要素の貯蔵容器への機械的な一体化である。例えば、空気の流れを生成又はガイドするように協働する特定の要素を着脱可能アセンブリに一体化することでそのような目的を果たすことができる。第2の考察は、例えば汚染のリスクを伴わずに又は換言すれば望ましくない混合を伴わずに複数の異なる物質と拡散装置との適合性を有利にすることを目的とした、要素と分配される液体物質との間の機能的関係である。例えば、液体物質を運ぶよう協働する特定の要素を着脱可能アセンブリに一体化することでそのような目的を果たすことができる。
【0014】
本発明は、一実施形態では、拡散装置のための着脱可能アセンブリを提案し、拡散装置は、蒸気状態の物質を周囲の空気中に拡散させるよう構成され、着脱可能アセンブリには、オリフィスを有し液体物質を収容する貯蔵容器が含まれる。
【0015】
この種の着脱可能アセンブリは、種々の物質を拡散するように設計されてもよい。
【0016】
一実施形態では、上記の液体物質は、天然又は合成由来のセミオケミカル分子、フェロモン、アロモン、カイロモン、シノモン及び香料から選択される少なくとも1つの物質を含む。
【0017】
一実施形態では、物質は、標的種に関して正又は負の応答を誘発するための少なくとも1つの性的又は他のフェロモン、アロモン、シノモン又はカイロモンを含有する溶液であって、その物質による挙動的結果は、アラキア類又は特に害虫を含む昆虫を含む六脚類を含む節足動物における性的混乱、別の種類の混乱、性的誘引、別の種類の誘引、任意の種類の嫌悪感であってもよい。
【0018】
一実施形態では、物質は、標的種に関連して正又は負の応答を誘発するための少なくとも1つのフェロモン又は性的フェロモン、アロモン、シノソーム又はカイロモンを含有する溶液であり、その物質による挙動的結果は、特に、哺乳動物及び鳥類における鎮静、リラックス、快楽又は脅迫感であってもよい。
【0019】
一実施形態では、物質は、ミリスチン酸イソプロピル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びイソパラフィン炭化水素、例えばイソパラフィンL若しくはP若しくはN若しくはVのなかから選択される溶媒を含む。
【0020】
一実施形態では、物質は、ヒト又は動物に使用される臭気剤、セミオケミカル物質、化粧品剤、精油、香料、植物生産薬及び農薬からなるグループのなかの少なくとも1つの物質を含む溶液である。
【0021】
一実施形態では、動物に使用可能な臭気剤は、脂肪酸、又は前記脂肪酸のエステル化形態、例えばオレイン酸メチル、パルミチン酸メチル、アゼラートジメチル及びピメリン酸ジメチルなどから選択される。
【0022】
一実施形態では、液体物質の粘度は、25℃で1cPa・s超、例えば25℃で8cPa・s超であり、かつ60℃で1cPa・s未満である。
【0023】
一実施形態では、物質の沸点は、大気圧で30℃~400℃である。
【0024】
一実施形態では、貯蔵容器は、液体物質が含浸された内側多孔性保持部材をさらに含む。
【0025】
一実施形態では、多孔性保持部材は、例えば羊毛フェルトなどのフェルト及びメラミン発泡体から選択される材料を含む。
【0026】
一実施形態では、接触する複数の多孔性保持部材が貯蔵容器内に配置される。
【0027】
一実施形態では、多孔性保持部材は、異なる剛性及び/又は異なる硬度及び/又は異なる密度を有してもよい。
【0028】
一実施形態では、内側多孔性保持部材は、オリフィスに隣接する貯蔵容器のマウスゾーンに少なくとも収容され、多孔性保持部材はオリフィスから奥にセットされる。
【0029】
一実施形態では、多孔性保持部材は、貯蔵容器におけるオリフィスに隣接するマウスゾーンの断面全体を覆う。
【0030】
上記の種類の多孔性保持部材のおかげで、貯蔵容器が多孔質体の形態の分配器部材に接続されていないときに、液体物質が制御不能に流れてしまうリスクなしに液体物質を毛細管現象によって容器内に確実に保持することができる。
【0031】
一実施形態では、複数の内側多孔性保持部材が貯蔵容器内に配置され、貯蔵容器のマウスゾーンに位置する第1の内側多孔性保持部材は、マウスゾーンから離れて位置する第2の内側多孔性保持部材よりも剛性が高い。
【0032】
一実施形態では、内側多孔性保持部材の保持手段が、貯蔵容器内に配置されるとともに、貯蔵容器におけるオリフィスとは反対の側の端部から延在して多孔性保持部材を固定してマウスゾーンに保持する。
【0033】
一実施形態では、内側多孔性保持部材の保持手段は、貯蔵容器におけるオリフィスとは反対の側の端部に固定されたロッドを含む。例えば、ロッドは十字形の端部を有し、この端部は多孔性保持部材と接触している。
【0034】
一実施形態では、貯蔵容器は、オリフィスの周囲に配置され、内側に突出する保持リップを含む。したがって、保持リップの内縁は、オリフィスよりも小さい寸法の開口を有する。これらの寸法により、貯蔵容器内の奥にセットされた内側多孔性保持部材を収容することが可能となる。
【0035】
着脱可能アセンブリは、液体物質を貯蔵容器の外部に分配するように協働する1つ以上の要素を含むことができる。一実施形態では、着脱可能アセンブリは多孔質体の形態の分配器部材を含み、分配器部材は、物質を周囲の空気中に蒸発させるための、貯蔵容器の外側に位置する蒸発表面を有する。換言すれば、多孔質体は、蒸発表面上に開口するマイクロチャネルを構成する細孔を含む。
【0036】
「マイクロチャネル」とは、断面積が10-4μm2~106μm2である通路を示す。一実施形態では、上記細孔は、0.01μm~10μmの直径を有する。
【0037】
一実施形態では、多孔質体は、木材、織物、セラミック又はポリマー芯を含む。
【0038】
一実施形態では、多孔質体は円筒形状を有する。
【0039】
一実施形態では、多孔質体は、多孔質体の内側部分の細孔率が、内側部分を取り囲む多孔質体の外側部分における細孔率よりも低い。これにより、低い細孔率で多孔質体内の流れの流量を制御し、高い表面細孔率で空気との交換を増やすことが可能となる。
【0040】
この種の分配器部材は、様々な方法で容器のオリフィスに直接又は間接的に接続されてもよい。
【0041】
一実施形態では、貯蔵容器とこれに関連付けられた分配器部材との間の接続はパイプによって提供される。
【0042】
固定部に分配器部材を含む拡散装置に好適な一実施形態では、分配器部材は中空針を含み、中空針は、貯蔵容器のバルブを形成するフィルムを突き刺し、及び/又は貯蔵容器のバルブを形成する膜を移動させて、貯蔵容器に収容された物質を蒸発表面に運ぶように構成され、フィルム又は膜はオリフィスの出口に位置し、穿孔されるよう構成されている。
【0043】
一実施形態では、針は、多孔質体の端部のうちの1つに配置される。この種の針はまた、貯蔵容器のオリフィスに収容された「自己修復」穿孔可能ストッパ、即ち、針を抜いた後に流れが生じないように針によって生成された穿孔を弾性的に閉じる弾性材料の塊と組み合わせて使用されてもよい。
【0044】
一実施形態では、フィルムは、エラストマー又は金属フィルムから作製される。
【0045】
一実施形態では、分配器部材はオリフィスの出口に配置され、多孔質体は、容器に密閉して組み付けられ、多孔性保持部材と接触するようオリフィスに係合する端部を有する。
【0046】
上記の特徴のおかげで、容器と蒸発表面との間の液体物質の分配は、多孔質体と保持部材との直接接触によって生成されてもよく、その接触により毛細管張力が生成される。
【0047】
一実施形態では、端部は突起を含み、突起は、多孔質体の上部に配置され、多孔質体の長手方向軸に沿って延在し、多孔性保持部材との接触を介して物質を受けるように構成される。
【0048】
一実施形態では、着脱可能アセンブリは、多孔質体を加熱可能な少なくとも1つの加熱部材と、加熱部材に関連付けられ、拡散装置の固定部と電気接続するよう構成された電気接点とを含む。
【0049】
一実施形態では、着脱可能アセンブリ又は固定部は、分配器部材の温度及び/又は空気の流れの温度を測定する少なくとも1つの温度センサを含む。一実施形態では、分配器部材は、例えば自由端のレベルにて温度センサを備える。
【0050】
温度センサは、例えば、膨張温度計又はサーミスタであってもよい。
【0051】
一実施形態では、加熱部材及び貯蔵容器は、着脱可能アセンブリ内の分配器部材の各対向端部に配置される。
【0052】
一実施形態では、加熱部材は多孔質体の表面上に直接配置される。
【0053】
一実施形態では、多孔質体は、加熱部材の少なくとも一部を収容する少なくとも1つの凹部を含む。
【0054】
一実施形態では、加熱部材は、物質の沸点に到達することなく物質の粘度を変更することによって分配器部材を通る物質の流量を調整するように構成される。
【0055】
一実施形態では、設定点温度は物質に応じて定義される。
【0056】
液体物質の流れは様々な方法で制御することができる。多孔質分配器部材は特に、主に多孔質体の温度に基づき液体物質の流れを制御することを可能にする。
【0057】
そのためには、周囲温度において、多孔質分配器部材を加熱することなく、透水係数Kは流れが発生するには低すぎる状態であることが望まれ、この状態はいわゆる「毛細管」状態である。
【0058】
一方、高温時には、蒸発表面を形成する多孔質体の外面に液体物質が広がり、液体がこの表面に付着するのに十分な流れであることが望ましい。表面に付着した液体の層によりピエゾ高さ差ΔHが変更され、その結果として、透水係数Kが最大値に達するために流れの流量が断たれることとなる。換言すると、熱い流れ、即ち加熱部材によって課される温度での流れは、表面に付着した液体の層が蒸発によって隠され多孔質体の表面から離脱する液滴がない程度にのみ生成される。
【0059】
したがって、より重要なパラメータは、流体の粘度、流体の表面張力及び多孔質体の温度である。
【0060】
一実施形態では、cosθは正であり、即ち、物質が例えばセラミックから作製される分配器部材を濡らし、液体の単位体積当たりの質量が0.6g/cm3~1g/cm3であり、マイクロチャネルの半径が5nm~1μmである。
【0061】
低温時、つまり温度閾値以下の周囲温度では、蒸発性液体の面積は非常に小さく、蒸発表面上に開口するマイクロチャネルの断面の合計である。したがって、液体物質が多孔質体内の奥に位置し流れの可能性がない状態を得ることができる。この状態では、低温時の蒸発は、液体の揮発性に依存し、その揮発性が十分に低い場合には実質的にゼロであってもよい。温度閾値は、多孔質体の物理的性質(細孔率、細孔の断面)、液体の物理的性質(粘度、表面張力)及び流れを生成し得る原動力(重力、圧力)に依存する。
【0062】
加熱部材によって与えられる熱による物質の動的粘度の減少によって、流体がDarcyの法則にしたがって分配器部材内を循環し、次いで分配器部材の表面上に広がることを可能にする。熱の入力なしでは、分配器部材中の付着力の合計はJurinの法則にしたがうので、流れは固定される。換言すると、分配器部材を通る流れは、高温時には上昇する温度によって誘発される動的粘度の低下のために許容されるが、蒸発表面上の流体の濡れ性の結果として、流体と分配器部材の表面との間の付着力によって表面にとどめられる。室温では、流体と多孔質体内のマイクロチャネルの表面との間の付着力は、液体が分配器部材内に閉じ込められたままとなるような力である。
【0063】
流れている間、分配器部材及び貯蔵容器内に液体物質を維持するよりも、離脱する液滴を形成するのにより多くのエネルギーが必要とされる。このことは以下の2つの条件を意味する。
1. 物質の動的粘度は、加熱部材を用いて到達することができる温度範囲内で低すぎてはならない。
2. 貯蔵容器を出る液体は、多数の方法でもたらされ得る大気圧と平衡状態になければならない。例えば、貯蔵容器における液体のない部分は減圧される。あるいは、この平衡は、液体のない部分の圧力管理システムによって保証される。
【0064】
一実施形態では、物質は、温度に応じて変化する粘度を有し、液体物質の粘度及び表面張力は、重力加速度がオリフィスから多孔質体の方向にかかったときに、物質は0℃より高い第1の温度より低い周囲温度で多孔質体を通って流れることができず、物質は第1の温度よりも高い第2の温度で多孔質体を通って流れることができる。
【0065】
第1の温度は様々な範囲内で決めることができる。拡散装置が屋外で使用されるためのものである場合、第1の温度は、特に、局地的な気候データに応じて選択されるであろう。実施形態では、第1の温度は、例えば1℃~50℃、又は5℃~40℃、又は10℃~35℃、又は15℃~25℃である。
【0066】
着脱可能アセンブリは、液体物質を蒸発させるための空気の流れを生成及び/又はガイドするために協働する要素を含むことができる。一実施形態では、着脱可能アセンブリは、オリフィスの周辺に位置する気流ガイドを含む。
【0067】
一実施形態では、気流ガイドは、蒸発表面に対して接線方向の又は蒸発表面の意図された位置への空気の流れをガイドすることよう構成され、着脱可能アセンブリは、容器と気流ガイドとの間、及び気流ガイドと多孔質体との間に密封接続を作り出すためのシール体を含む。
【0068】
一実施形態では、着脱可能アセンブリは、多孔質体の周囲又は多孔質体のための位置に延在する筒状のシュートを含み、シュートは、空気の流れを多孔質体の上へガイドすることを可能にする。
【0069】
一実施形態では、貯蔵容器は、軸方向に細長い形状を有し、オリフィスは、貯蔵容器の軸方向端部に位置し、多孔質体の蒸発表面は軸方向に平行であり、気流ガイドには、軸方向に平行な、容器の周囲に配置される複数のフィンが設けられている。
【0070】
一実施形態では、着脱可能アセンブリは空気混合チャンバの全部又は一部を含み、空気混合チャンバは容器の全周に延在する。一実施形態では、着脱可能アセンブリは空気混合チャンバの上壁を備え、上壁は貯蔵容器の全周に延在する。
【0071】
一実施形態では、空気混合チャンバは通気口への接続を可能にする開口を含む。
【0072】
一実施形態では、空気混合チャンバはファン及び電気コネクタを含み、ファンは空気混合チャンバ内に空気の流れを生成するように配置され、電気コネクタはファンに電力を供給するために、拡散装置の固定部にある電気コネクタに関連付けられるよう構成されている。例えば、ファンの空気流量は、0.2m3/h~60m3/hであってもよい。
【0073】
一実施形態では、気流ガイドは複数のチャネルを含み、複数のチャネルは、混合チャンバ上に開口するとともに、蒸発表面に対する接線方向に又は蒸発表面の意図された位置に向かって配向されている。
【0074】
一実施形態では、着脱可能アセンブリには、貯蔵容器の周囲において突出し、拡散装置の固定部の開口を覆うように構成されたフランジが設けられており、開口は、拡散装置の固定部に着脱可能アセンブリを挿入するためのものである。
【0075】
一実施形態では、着脱可能アセンブリは、空気混合チャンバ及び/又は気流ガイド内の空気の流量を調整するためにファンを制御するように構成された空気流量調整部材を含む。
【0076】
貯蔵容器は、様々な方法で製造することができる。
【0077】
一実施形態では、貯蔵容器には、貯蔵容器の内部空間と周囲の空気との間の連通を確立する加圧通気口が設けられている。
【0078】
一実施形態では、着脱可能アセンブリは、外側貯蔵容器と、外側容器に収容される内側貯蔵容器とを含み、内側貯蔵容器は、オリフィスを介して分配器部材に接続され、オリフィスと反対の側の端部で大気に接続される通気口を含み、外側貯蔵容器と内側貯蔵容器との間の連通開口はオリフィスの近傍のマウスゾーンに設けられており、外側貯蔵容器は連通開口以外の開口を有さない。1つ又は複数の多孔性保持部材は、内側貯蔵容器及び/又は外側貯蔵容器内に配置される又は好適に配置される。
【0079】
固定部が分配器部材を含む拡散装置に好適な一実施形態では、着脱可能アセンブリはストッパを含み、ストッパは着脱可能アセンブリの移送中にオリフィスを密封して塞ぐように配置される。例えば、装置が使用されていないとき、即ち容器が分配器部材に接続される前又は分配器部材から接続解除された後に、この種の貯蔵容器は排水オリフィス上に配置されたストッパを有することができる。
【0080】
一実施形態では、着脱可能アセンブリは、貯蔵容器と分配器部材との間の密閉接続を確立するようにオリフィスの周囲に配置されたシールを含む。
【0081】
一実施形態では、着脱可能アセンブリは、拡散装置の固定部内に着脱可能アセンブリを安定化させることができる機械的保持手段を含む。例えば、着脱可能アセンブリは、ねじ留め又はクリップ留めによって、拡散装置の固定部に取り付けられる。
【0082】
一実施形態では、貯蔵容器はオリフィス以外の開口を有さず、貯蔵容器は、液体物質とともに、貯蔵容器の容積の少なくとも20%を占める気相を含む。
【0083】
一実施形態では、着脱可能アセンブリは、拡散装置の固定部内に着脱可能アセンブリをその動作位置で挿入することを容易にするための機械的キーイング手段を備える。
【0084】
一実施形態では、多孔質体は、拡散装置の加熱要素との熱的接続部を確立するように構成される。
【0085】
一実施形態では、着脱可能アセンブリは、拡散デバイスの固定部への挿入中に、多孔性保持部材と分配器部材との間の接触接続部として配される。
【0086】
一実施形態では、分配器部材に接続された容器のオリフィスは、装置がその使用位置にあるとき、下向き、即ち重力加速度の方向に向いている。
【0087】
本発明はまた、上記実施形態のいずれかに記載の着脱可能アセンブリと、ハウジングを画定するケーシングを含む固定部とを備える拡散装置を提供することを目的とし、ハウジングに着脱可能アセンブリが動作位置で挿入されることで、蒸気状態の物質を周囲の空気中に拡散させることができる。
【0088】
一実施形態では、固定部は、外側ケーシングと、拡散装置における着脱可能アセンブリに一体化されていない基本的に全ての要素とを含み、そのような要素は即ち、気流ガイド、シュート、混合チャンバ又はチャンバ部分、ファン、分配器部材、加熱部材、通信モジュール、例えば電子カードなどの形態の制御装置、着脱可能アセンブリをハウジング内に例えばクリップ留め又はねじ留めで固定するための固定手段を、別々に又は組み合わせて、非網羅的に含む。
【0089】
ケーシングの蓋体は、例えば、貯蔵容器に取り付けられたフランジの形成で、固定部又は着脱可能アセンブリに一体化されてもよい。
【0090】
一実施形態では、固定部又は着脱可能アセンブリは、加熱部材を調整するように構成された少なくとも1つの電子レギュレータ要素を含む。
【0091】
一実施形態では、電子レギュレータ要素は、少なくとも1つの電子カードと、電子カードによって通電される少なくとも1つの電気抵抗とを含む。電気抵抗は電子カード上に配置されてもよく、又は電子カードから遠隔に配置されてもよい。
【0092】
一実施形態では、電子レギュレータ要素は、分配器部材内の設定点温度に応じて加熱部材を制御するように構成される。
【0093】
一実施形態では、着脱可能アセンブリは、容器内に格納された物質を識別するための手段、例えば無線周波識別(RFID)チップなどのデジタル及び電磁手段、又はバーコード又は他のマーキングなどのアナログ手段を含む。
【0094】
一実施形態では、電子レギュレータ要素は検出器に接続され、検出器は固定部に配置されかつ容器内に含まれる物質を示す貯蔵容器のレベルにおけるマーキングを検出するように構成され、制御装置は、マーキングに応じて、設定点温度、空気流量及び停止/開始サイクルを定める時間指標のなかから選択される装置の動作パラメータの少なくとも1つを決定する。このような時間指標には、例えば、サイクル開始日、サイクル終了日、サイクル期間、サイクル間の期間などが含まれる。
【0095】
一実施形態では、電子レギュレータ要素は、物質を設定点温度と関連付ける値のテーブルを記憶するメモリを含む。
【0096】
一実施形態では、固定部は、例えば値のテーブルを変更するため又は調整プログラムを更新するために、データサーバとの有線又は無線通信を提供するための通信モジュールをさらに含む。
【0097】
一実施形態では、固定部は、各々が液体物質を収容する複数の貯蔵容器を受け入れるハウジングを含む。
【0098】
非限定的な例示として与えられる本発明の特定の実施形態の以下の説明を添付の図面を参照して読むことで、本発明はより良く理解され、本発明のその他の目的、詳細、特徴及び利点がより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【
図1】着脱可能アセンブリの固定部の形態で製造することができる拡散装置の分解図である。
【
図5】第3の実施形態による二重貯蔵容器を含む貯蔵容器を示す。
【
図6】一実施形態によるストッパを含む貯蔵容器の斜視図である。
【
図7】一実施形態による加熱部材を有する分配器部材を示す。
【
図8】一実施形態による貯蔵容器及び気流ガイドを含む着脱可能アセンブリを示す。
【
図9】一実施形態による貯蔵容器、気流ガイド及び分配器部材を含む着脱可能アセンブリを示す斜視図である。
【
図10】一実施形態による、貯蔵容器、気流ガイド及びシュートを含む着脱可能アセンブリの断面図である。
【
図11】一実施形態による貯蔵容器、空気混合チャンバ、気流ガイド、シュート及び分配器部材を含む着脱可能アセンブリを示す切り取り斜視図である。
【
図12】一実施形態による貯蔵容器、空気混合チャンバ、ファン、気流ガイド及びシュートを含む着脱可能アセンブリを示す斜視図である。
【
図13】一実施形態による貯蔵容器、分配器部材、シール体及びシュートを含む着脱可能アセンブリの断面図である。
【
図14】
図9の着脱可能アセンブリのより大きなスケールのXIV-XIV線に沿った部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0100】
次に、蒸気状態の物質を周囲の空気中に拡散させるよう構成された拡散装置の実施形態について説明する。
【0101】
図1及び
図2は、同図において分解斜視図で示す要素で構成された拡散装置1を示す。円筒状の貯蔵容器10,110,210は液体物質を収容するよう構成される。貯蔵容器10,110,210は円筒状の中空体17を含み、円筒状の中空体17はその上端において、上部に保持タブ13が設けられた流体密封端部片11によって密封されている。円筒状の中空体17の下部にはオリフィス12が設けられている。オリフィスは、貯蔵容器10,110,210の外部への液体物質の連通を可能にする。拡散装置1は空気ガイド部40を備える。空気ガイド部40は、貯蔵容器10のオリフィス12の周辺に配置されるよう構成されたシュート42に関連付けられた気流ガイド41を含む。空気混合チャンバ60は、貯蔵容器10,110,210の周囲に配置され、気流ガイド41と連通するように構成される。混合チャンバ60は、貯蔵容器10,110,210の高さの全部又は一部にわたって延在してもよい。多孔質体30は、その上面から突出する突起31を含み、オリフィス12を貫通するか又は不図示のパイプによってオリフィス12に接続されるよう構成されている。
【0102】
多孔質体30の下部には、多孔質体30を加熱することができる加熱要素32と、ケーシング80内に配置された電子カード85に接続されるよう構成された電気コネクタ33とが設けられている。電気コネクタ33は、使用位置において電子カード85及び/又はエネルギー源86に接続され、電流及び/又は制御信号の供給を可能にする。制御信号は電子カード85によって生成されてもよく、例えば加熱要素32の停止/開始サイクル、サイクル開始日、サイクル終了日又はサイクル期間を定める制御プログラムの使用によって生成されてもよい。エネルギー供給は、バッテリや、外部主電源及び/又はソーラーパネルへの接続などの種々の形態をとることができる。
【0103】
ケーシング80は、ヒンジ83を含む蓋体82と、外部環境へ開口する開口部を含む底部片81と、固定部84とを含む。蓋体82は、閉じた位置と開いた位置との間で枢動してもよく、これにより、貯蔵容器10,110,210内の拡散される物質がなくなったときに貯蔵容器10,110,210を交換することが可能になる。閉じた位置では、蓋体82は保持タブ13に押しつけられることができ、これにより貯蔵容器10,110,210をケーシング80内に安定した状態で保持することができる。
【0104】
一実施形態では、拡散装置1は、後述するように少なくとも貯蔵容器10,110,210を単独で又は他の要素と組み合わせて含む取り外し可能部と、取り外し可能部を受けるように構成されたケーシング80を少なくとも含む固定部と、の2つの部品で製造される。
【0105】
貯蔵容器10は様々な方法で製造することができる。
【0106】
図3は、流体密封先端部11によって閉じられた上部と、オリフィス12及び当該オリフィス12の周辺に配置された保持リップ19を含む下部と、を含む円筒状の中空体17を備える貯蔵容器10が示されている。流体密封先端部11は、貯蔵容器10が充填された後にこれを密封することを可能にする。オリフィス12は、貯蔵容器10に収容された物質を多孔質体30に流すことを可能にする。
【0107】
図4に示す実施形態では、貯蔵容器110は、保持発泡体のブロックを2つ含む。第1の発泡体111は、オリフィス12から奥にセットされた貯蔵容器110のマウスゾーンに配置され、第2の発泡体112は、第1の発泡体111と接触して貯蔵容器110内に配置される。ロッド121は、流体密封先端部120から容器内に延在する。ロッド121は例えば十字形の断面を有する。ロッド121は保持発泡体を定位置に保持する。ロッド121は圧力をかけて第2の発泡体112が第1の発泡体111と接触した状態を維持し、これにより、第1の発泡体111を貯蔵容器110のマウスゾーン内に保持することが可能になる。第1の発泡体111は、拡散されることが意図される液体物質の汚染、損傷又は廃棄の原因をとなり得る外部要素との偶発的な接触のリスクを低減するためにオリフィスから奥にセットされる。保持リップ19はオリフィス12の周囲に配置される。保持リップ19は、オリフィス12のサイズを小さくし、オリフィス12から奥にセットされた多孔性保持部材111の保持を可能にする。
【0108】
図5は別の実施形態による貯蔵容器210を示す。貯蔵容器210は外側貯蔵容器211を備え、外側貯蔵容器211はその端部において内側貯蔵容器212と接触していない場合には完全に閉じられている。内側貯蔵容器211の上端を乗り越えて通気口213が設けられている。通気口213により、内側貯蔵容器212の外側の空気と内側の空気との間の圧力のバランスをとることが可能となる。内側貯蔵容器212は、オリフィス12を通って多孔質体(不図示)と接触するよう構成された、例えばスポンジ又はセルラーフォーム(多孔性発泡体)などの多孔性保持部材を含む。保持リップ19は、オリフィス12の周囲に配置され、オリフィス12から奥にセットされた多孔性保持部材111の保持を可能にする。したがって、各液滴が多孔質体に流れるにつれて、内側貯蔵容器212内の圧力は、その通気口213を介して平衡状態となり、レベル(高さ)が減少する。2つの貯蔵容器の間の接続部214を介する連通により、外側貯蔵容器211は内側貯蔵容器212をレフィルするが、その後、外側貯蔵容器211の減圧が、液体が存在しないか又はもはや存在しなくなった貯蔵容器内の一部で大きくなる。これにより、内側貯蔵容器212は外側貯蔵容器211の減圧と平衡の取れた状態となる。それにもかかわらず、内側貯蔵容器212は、通気口213及び分配器部材(不図示)の多孔質体により生じるけん引力のおかげで、常にこの平衡状態から抜け出すことができる。流れが正常に起こることができるためには、貯蔵容器210を拡散装置の固定部に配置する際に、外側貯蔵容器211が物質で完全に満たされる。
【0109】
図5はまた、フランジ90が、貯蔵容器210の周囲に突出して配置され、貯蔵容器210の拡散装置へ挿入する際に拡散装置の固定部の開口を覆うようになっていてもよいことを示している。この場合、拡散装置の固定部は必ずしも蓋体を備えていなくてもよい。フランジ90は、容器210の長さにおける任意の場所に配置することができる。
【0110】
固定部は、符号88で示すように、混合チャンバの全部又は一部を含み得る。一実施形態では、フランジ90は混合チャンバ88の上壁を構成して、着脱可能アセンブリが動作位置に挿入されたときに混合チャンバ88を閉じる。あるいは、上壁90は、着脱可能アセンブリにではなく、固定部にかたく接続されてもよい。この場合、貯蔵容器210は、貯蔵容器210の外径と等しい直径を有する上壁90の中央開口に挿入されることで混合チャンバ88を閉じる。
【0111】
図6を参照すると、貯蔵容器10,110,210のオリフィス12には、貯蔵容器10,110,210に収容された液体物質が貯蔵容器の使用時及び/又は移送時に流出しないようにするために、ストッパ50が設けられている。このストッパ50は、Oリングを支持するリング51を備えている。ストッパ50は、例えば、上にねじ込むことによって又は上にクリッピングすることによって、上に固定することができる。ストッパを使用することにより、容器10,110,210の移送が容易となり、コストのかかり得る物質の損失を回避することが可能となる。密封ストッパにより、落下、衝撃又は他の外乱があった場合でも物質の損失を回避することが可能となる。
【0112】
図7は多孔質体30の実施形態を示す。多孔質体30は、突起301によって取り囲まれた円筒状の本体部300を含む。この突起により、物質を多孔質体30の本体部300に向けて運ぶことができる。多孔質体30において突起301が設けられた側と反対の側には2つの凹部302が形成されており、これらは各々、加熱要素132及び/又は温度センサを受け入れるためにものである。加熱要素132は電気回路185によって電力が供給される電気抵抗である。温度センサはサーミスタであってもよい。本体部300の周面は蒸発表面39を形成し、蒸発表面39の上に多孔質体30の多孔性により形成されたオープンマイクロチャネルが形成される。
【0113】
多孔質体30は、容器110又は210を有する着脱可能アセンブリに一体化されてもよい。この場合、突起301は、オリフィス12に挿入されて、貯蔵容器110,210のマウスゾーンに位置する多孔性保持部材を圧縮する。多孔質体30は、均等に良好に、均一又は不均一な細孔率を有してもよい。開孔率(細孔率)は、コア部で25%、表面で45%であることが好ましい。するとこれは、開孔率、即ち多孔質体の単位体積当たりの細孔の体積が、コア部から蒸発表面に向かって増大する多孔質体であり、この構造は、細孔の出口から多孔質体の表面の全体にわたって広がるのに有利に働き、かつ、より緻密なコア部で多孔質コアの機械的一体性を強化する。
【0114】
図8の実施形態は、貯蔵容器10,110,210及びオリフィス12の周辺部に位置する気流ガイド41を含む着脱可能アセンブリ800を示す。この気流ガイド41は、空気の流れを特定の方向にガイドするものである。この着脱可能アセンブリ800は、特に気流発生器及び分配器部材を含む拡散装置の第1の部分に取り付けられるよう構成されている。気流発生器で気流ガイド41の方向に生成された気流は、次に拡散装置の固定部の分配器部材の方向にガイドされる。
【0115】
図9は、
図8の要素に加えて、オリフィス12に接続された多孔質体130を含む着脱可能アセンブリ900の実施形態を示す。多孔質体130は、拡散装置の固定部に位置する加熱要素に接続されるよう構成される。拡散装置の固定部に一体化された1つ以上の加熱部材を使用して多孔質体130の温度を制御することによって、物質の拡散を調整することができる。気流ガイド41は、チャネル44を区画する複数の平行なフィン43を含み、これにより空気の流れを多孔質体130の方向にガイドすることが可能となる。
【0116】
図10の実施形態は、オリフィス12の周辺に配置された気流ガイド41と、気流ガイド41に固定された筒状のシュート42とに関連付けられた貯蔵容器10,110,210を備える着脱可能アセンブリ1000を示す。シュート42は、収束し次いで発散する断面を有する内部空間45を有する回転体である。最小部は、多孔質体30の半分の長さのレベルにほぼ位置する。シュート42の上側リム46は、例えばクリップ留めによって、気流ガイド41の周囲に取り付けられる。シュート42は、空気の流れを多孔質体30の上へガイドすることを可能にし、必要な方向、即ちケーシング80の底部へ物質が蒸発するのに有利に働く。この実施形態において、多孔質体及び気流発生器は拡散装置の固定部に位置していてもよい。
【0117】
図11及び
図12は、容器10,110,210と、貯蔵容器10,110,210の周囲に配置された空気混合チャンバ60と、複数のフィン43を含む気流ガイド41と、シュート42と、を含む着脱可能アセンブリ1100を示す。フィン43は、軸方向と平行であり、貯蔵容器10,110,210の周囲に配置されている。空気混合チャンバ60はファン61を含んでもよい。
【0118】
多孔質体30には電気加熱要素32が設けられている。電気接続部33により、拡散装置の固定部に配置された電源回路への電気加熱要素32の接続が可能となる。
【0119】
動作中、電気加熱要素32は、多孔質体30を加熱し、液体物質の粘度を低下させ、その結果、液体物質を貯蔵容器のマウス(くち)から分配器部材の方向に流すことになる。したがって、液体は、毛細管現象によって多孔質体30の細孔の頂部まで上昇し、頂部は共に蒸発表面を構成し、この蒸発表面はしたがって多孔質体30の外面に位置する。
【0120】
空気の流れは、空気混合チャンバ60を通過すると、次いで気流ガイド41及びシュート42を介して蒸発表面39について接線方向に向けられ、表面上の物質を蒸発させ、これを蒸気状態で空気の流れの方向に移動させる。
【0121】
毛細管力は、毛細管けん引を生成するのに十分に狭いチャネル又は細孔から構成される表面の性質によって引き起こされる。毛細管けん引力及び保持力は、液体が蒸発表面39の細孔の頂部まで上昇することを可能にしなければならないが、これは、重力場による力(潜在的に存在する地球の引力及び液体カラムの静水圧)又は溶液と多孔質体30の表面の残りの部分との間の相互作用によって生成される静的引力によって蒸発表面39上に制御不能に拡散させることなく起こらなければならない。
【0122】
この毛細管けん引は、最終体積ブロック(細孔の頂部の円筒状の液体部分)が更新されることによってのみ存在する。この体積は、蒸発によって更新されるとともに、各溶液に固有のパラメータにしたがって及び主に(大気圧での)温度即ち飽和蒸気圧に依存して、液体と気体の界面における液体と気体分子の濃度の平衡によって支配される。蒸発させる溶液の温度を上昇させると、飽和蒸気圧が上昇し、したがって、界面における液体と気体分子の濃度の平衡が気体分子に向かって移動し、蒸発は平衡が再び確立されるまで続く。気相が移動している場合は、平衡に達することはなく、液相がなくなるまで蒸発が続く。気相が移動しやすいほど(より速い分子は気相を空にする傾向がある)、蒸発は速くなる。
【0123】
使用位置では、ファン61は、電子カード85と電気エネルギー発生器86とに電気接続部によって接続されたままである。ファン61は、混合チャンバ60内の空気の流れを、気流ガイドのフィン43と直交する方向に発生させる。空気の流れは、かく乱され、気流ガイド60のフィン43において方向が変更され、シュート42を通過し、その後、空気の流れは加熱要素32を含む多孔質体30に向けられる。上述のように、多孔質体30を加熱することで物質の粘度が低下し、このことと空気の流れとにより物質が外部環境へ蒸発することが可能となる。本実施形態の変形例では、ファン61は拡散装置の固定部に取り付けられ、混合チャンバ60にオリフィスがあることで、着脱可能アセンブリが拡散装置の固定部に取り付けられたときにファン61を一体化させることが可能となる。
【0124】
図13は、多孔質体の全周に位置する容器10,110,210、気流ガイド41及びシュート42を含む着脱可能アセンブリ1300を示す。気流ガイド41とシュート42とは一体に形成されていてもよい。容器10,110,210、シュート42及び多孔質体30の間には二重シールが設けられている。シール体70が容器10,110,210とシュート42との間に位置し、シール体71がシュート42と多孔質体30との間に位置する。多孔質体30は2つの凹部402を含み、その各々が加熱要素132及び/又は温度センサを受け入れるような形状とされている。本実施形態では、使用位置において、着脱可能アセンブリの2つの凹部は、拡散装置の固定部の2つの加熱要素132を囲う入れ子となっている。
【0125】
図14は、貯蔵容器110と気流ガイド41と多孔質体30とを含む着脱可能アセンブリ900の断面を示す。多孔質体30は、多孔性保持部材111を圧縮するまで容器110のオリフィス12に挿入され、接触接続部を形成する。気流ガイド41は、貯蔵容器110と多孔質体30との間の接続部のレベルにて貯蔵容器110の周囲に配置される。Oリング72は、貯蔵容器110と多孔質体30との間の接続部のレベルにて嵌合される。別のシール47が気流ガイド41内の溝48に収容されてもよい。使用位置においてシールは、液体を、関連する物質の漏出なしに多孔質体30の方向に流れるように制約することを可能とする。シールは、例えばシングル、ダブル、径方向及び/又は圧縮性であってもよい。
【0126】
本発明を特定の実施形態に関連して説明してきたが、本発明はそれらに限定されるものではなく、記載された方法及びその組み合わせの全ての技術的均等物を、これらが本発明の範囲内に入る場合に、包含することは明らかである。
【0127】
「含む」又は「備える」との動詞及びその活用形の使用は、特許請求の範囲に記載されたもの以外の要素又は工程の存在を排除しない。
【0128】
特許請求の範囲において、括弧の間のいかなる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0129】
<例>
拡散装置1の多数の実施形態が構成され試験された。
【0130】
・実験1
使用された活性分子は、引火点が137℃、単位体積当たりの質量(20℃にて)が0.903g/cm3、粘度が23℃にて8mPa・s、及び飽和蒸気圧が15℃にて0.15Paの(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエニルアセテートである。
【0131】
調査した組成物は、(7E,9Z)-ドデカ-7,9-ジエニルアセテートを99.5重量%と、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)を0.5重量%とを含む。
【0132】
この化合物は、製品名Rak(登録商標)2Newとして知られており、この実験のための貯蔵容器に使用される。
【0133】
3つのシステムについて調査した。
【0134】
多孔質体は、細孔径100nm、均一細孔率40%の焼結アルミナセラミック芯である。
【0135】
システム1:
芯の蒸発面積は7.9cm2であり、芯は直径が2.3cm(センチメートル)で高さが1.2cmである。表面の周囲の空気の流れの平均速度は0.2m/sである。外気温は25℃である。
【0136】
システム2:
芯の蒸発面積は15.5cm2であり、芯は直径が2.6cm(センチメートル)で高さが1.9cmである。表面の周囲の空気の流れの平均速度は0.45m/sである。外気温は25℃である。
【0137】
システム3:
芯の蒸発面積は22.8cm2であり、芯は直径が2.8cm(センチメートル)で高さが2.6cmである。表面の周囲の空気の流れの平均速度は0.50m/sである。外気温は25℃である。
【0138】
【0139】
測定は、蒸発に続いて分子がシステムから放出されたことから生じる質量の損失を全て(目視で)考慮し、システムの相対質量損失プロトコルにしたがって行われた。
【0140】
・実験2
使用された分子は、引火点が160℃、単位体積当たりの質量(20℃にて)が0.855g/cm3、動的粘度が20℃にて5.58mPa・s、及び飽和蒸気圧が20℃にて100Paのミリスチン酸イソプロピルである。
【0141】
システム1:
芯の蒸発面積は7.9cm2であり、芯は直径が2.3cm(センチメートル)で高さが1.2cmである。表面の周囲の空気の流れの平均速度は0.2m/sである。外気温は25℃である。
【0142】
システム2:
芯の蒸発面積は15.5cm2であり、芯は直径が2.6cm(センチメートル)で高さが1.9cmである。表面の周囲の空気の流れの平均速度は0.2m/sである。外気温は25℃である。
【0143】
システム3:
芯の蒸発面積は15.5cm2であり、芯は直径が2.6cm(センチメートル)で高さが1.9cmである。表面の周囲の空気の流れの平均速度は0.45m/sである。外気温は25℃である。
【0144】
【0145】
測定は、蒸発に続いて分子がシステムから放出されたことから生じる質量の損失を全て(目視で)考慮し、システムの相対質量損失プロトコルにしたがって行われた。