(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】成形食品、その製造方法及び容器入り成形食品
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20240805BHJP
【FI】
A23L5/00 A
(21)【出願番号】P 2022095862
(22)【出願日】2022-06-14
【審査請求日】2024-05-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】近藤 翼
【審査官】宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/162138(WO,A1)
【文献】特開平6-30739(JP,A)
【文献】特開2018-108061(JP,A)
【文献】特開2014-82981(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0024097(US,A1)
【文献】国際公開第2019/049941(WO,A1)
【文献】特開2013-212084(JP,A)
【文献】特開2013-208103(JP,A)
【文献】国際公開第2022/024119(WO,A1)
【文献】特開2010-99023(JP,A)
【文献】特開2012-175934(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0153054(US,A1)
【文献】特表2017-510516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00
A23P 10/00、20/20、30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1食品部と、
第1主面及びその裏面である第2主面を有し、前記第1主面は互いに隣接した第1区画及び第2区画を含み、前記第1区画の位置で前記第1食品部を支持した第2食品部と
、
前記第1食品部と前記第2食品部との間に介在し、前記第1食品部の材料と前記第2食品部の材料との混合物からなる中間層と
を備えた成形食品。
【請求項2】
第1食品部と、
第1主面及びその裏面である第2主面を有し、前記第1主面は互いに隣接した第1区画及び第2区画を含み、前記第1区画の位置で前記第1食品部を支持した第2食品部と
を備えた成形食品であって、
前記第1食品部の硬さと前記第2食品部の硬さとの差は1×10
3
N/m
2
以上4.9×10
4
N/m
2
以下の範囲内にあり、
前記第1主面は前記第1区画の位置に凹部を有し、前記第1食品部の少なくとも一部は、前記凹部を埋め込むとともに、前記凹部の側壁から離間しており、前記側壁の位置に溝を形成している成形食品。
【請求項3】
第1食品部と、
第1主面及びその裏面である第2主面を有し、前記第1主面は互いに隣接した第1区画及び第2区画を含み、前記第1区画の位置で前記第1食品部を支持した第2食品部と
を備えた成形食品であって、
前記第1食品部の硬さ及び前記第2食品部の硬さの各々は1×10
3
N/m
2
以上5×10
4
N/m
2
以下の範囲内にあり、
前記第1主面は前記第1区画の位置に凹部を有し、前記第1食品部の少なくとも一部は、前記凹部を埋め込むとともに、前記凹部の側壁から離間しており、前記側壁の位置に溝を形成している成形食品。
【請求項4】
前記第1食品部の少なくとも一部は前記第1主面から突き出ている請求項1
乃至3の何れか1項に記載の成形食品。
【請求項5】
前記第2主面から前記第1食品部までの距離は、前記第1区画と前記第2区画との間の境界からの距離がより大きい位置では、前記境界からの距離がより小さい位置と比較してより小さい請求項1
乃至3の何れか1項に記載の成形食品。
【請求項6】
上方で各々が開口した第1凹部と第2凹部とを有し、前記第1凹部の開口は、前記第2凹部の底面に設けられているか又は前記第2凹部の開口と前記第2凹部の前記底面との間に設けられている成形型を準備することと、
前記第1凹部を、前記第1凹部の前記開口の高さ以下の高さまで第1液状物で充填することと、
前記第2凹部を、前記第1液状物とは異なる第2液状物で充填するとともに、前記第1液状物からなる層の上面を前記第2液状物で覆うことと
を含み、
前記第1液状物及び前記第2液状物の少なくとも一方は、10℃以上30℃以下の範囲内の温度で溶解する増粘剤を含んだ成形食品の製造方法。
【請求項7】
上方で各々が開口した第1凹部と第2凹部とを有し、前記第1凹部の開口は、前記第2凹部の底面に設けられているか又は前記第2凹部の開口と前記第2凹部の前記底面との間に設けられている成形型を準備することと、
前記第1凹部を、前記第1凹部の前記開口の高さ以下の高さまで第1液状物で充填することと、
前記第2凹部を、前記第1液状物とは異なる第2液状物で充填するとともに、前記第1液状物からなる層の上面を前記第2液状物で覆うことと
を含み、
前記第1液状物及び前記第2液状物の少なくとも一方は、シュードプラスチック性を有する増粘剤を含んだ成形食品の製造方法。
【請求項8】
前記成形型は、前記第1凹部と前記第2凹部とを含む複数の凹部へ底部を区画する仕切り部を備えた請求項
6又は7に記載の成形食品の製造方法。
【請求項9】
前記第2凹部は、前記第1凹部の上方の領域である第1領域と、前記第1領域以外の領域である第2領域とを含み、前記第2液状物を前記第2領域へ供給して、前記第2領域を前記第2液状物で充填するとともに、前記第2領域から前記第1領域への前記第2液状物の流れを生じさせて、前記第2領域から流れ出た前記第2液状物によって前記第1液状物からなる前記層の前記上面を覆う請求項
6又は7に記載の成形食品の製造方法。
【請求項10】
前記仕切り部の前記高さは、3mm以上且つ前記成形型の深さの50%以下である請求項
8に記載の成形食品の製造方法。
【請求項11】
前記第1凹部の前記開口は、前記第2凹部の前記底面に設けられている請求項
6又は7に記載の成形食品の製造方法。
【請求項12】
前記第1液状物からなる前記層と前記第2液状物からなる層とを固化させることを更に含み、
前記第2液状物による前記第2凹部の充填及び前記第1液状物からなる前記層の前記上面の被覆は、前記第1液状物からなる前記層を固化させることなしに行う請求項
6又は7に記載の成形食品の製造方法。
【請求項13】
容器と、前記容器に収容された請求項1乃至
3の何れか1項に記載の成形食品とを備えた容器入り成形食品。
【請求項14】
前記容器に収容された調味液を更に備えた請求項
13に記載の容器入り成形食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形食品、その製造方法及び容器入り成形食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者などの咀嚼又は嚥下困難者向けの介護用食品として、ムース状食品やペースト状食品が流通している。このような食品は、ユニバーサルデザインフードとも呼ばれている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
介護用食品は、ユニバーサルデザインフード規格によって硬さ等に応じて4区分に規定されている。よりやわらかい区分の食品であるほど、容器に直接充填され容器形状に成型されたムース状食品や、微細に刻まれ、あるいは裏ごしされた食材等からなるペースト状食品などの形態で流通していることが多い。
【0004】
咀嚼又は嚥下困難者のクオリティオブライフ(QOL)の向上には、食事の質の向上は不可欠である。最近では、食品の外観を考慮した介護用食品として、複数の食材や調味料等を混合したペースト原料を、柔らかい食感を残しつつ所定の形状に成形した成形食品が提供されている(例えば、特許文献2及び3等参照)。例えば、一つの容器に2種以上のこれら成形食品を盛り付けることで、喫食者のための食事の質の向上が図られてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5847295号公報
【文献】特開2021-112184号公報
【文献】特開2021-36345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くの食品は動植物又は海産物などの食材から成り、単一の食品であっても、硬さなどの食感や、味、色彩、形状等の性状が異なる部分を含んでいる。しかしながら、上述した従来の成形食品は、単一のペースト原料を成形して得られるものであるため、食材由来の彩り、形状などの外観を充分に再現できるものではなく、またその食感や味も単調となる。
【0007】
単一の成形食品に、硬さ、味、色彩、形状等の性状が部分的に異なる特性を付与することができれば、喫食者の五感を刺激することが可能な成形食品となるだけでなく、動植物又は海産物などの食材を使用した食品の再現性に優れた成形食品を提供することが可能となる。更に、この成形食品をユニバーサルデザインフード規格に従った軟質食品として提供するができれば、咀嚼又は嚥下困難者は、通常の食品を喫食している状態により近い形で食事を楽しむことができるようになり、食事の質が向上する。
【0008】
本発明は、単一の成形食品において性状が異なる部分を含み、その部分の脱落を生じ難い成形食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によると、第1食品部と、第1主面及びその裏面である第2主面を有し、上記第1主面は互いに隣接した第1区画及び第2区画を含み、上記第1区画の位置で上記第1食品部を支持した第2食品部とを備えた成形食品が提供される。
【0010】
本発明の他の側面によると、上記第1主面は上記第1区画の位置に凹部を有し、上記第1食品部の少なくとも一部は、上記凹部を埋め込むとともに、上記凹部の側壁から離間しており、上記側壁の位置に溝を形成している上記側面に記載の成形食品が提供される。
【0011】
本発明の更に他の側面によると、上記第1食品部の少なくとも一部は上記第1主面から突き出ている上記側面の何れかに記載の成形食品が提供される。
【0012】
本発明の更に他の側面によると、上記第2主面から上記第1食品部までの距離は、上記第1区画と上記第2区画との間の境界からの距離がより大きい位置では、上記境界からの距離がより小さい位置と比較してより小さい上記側面の何れかに記載の成形食品が提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、上記第1食品部と上記第2食品部との間に介在し、上記第1食品部の材料と上記第2食品部の材料との混合物からなる中間層を更に備えた上記側面の何れかに記載の成形食品が提供される。
【0014】
本発明の更に他の側面によると、上記第1食品部の硬さと上記第2食品部の硬さとの差は1×103N/m2以上4.9×104N/m2以下の範囲内にある上記側面の何れかに記載の成形食品が提供される。
【0015】
本発明の更に他の側面によると、上記第1食品部の硬さ及び上記第2食品部の硬さの各々は、1×103N/m2以上5×104N/m2以下の範囲内にある上記側面の何れかに記載の成形食品が提供される。
【0016】
本発明の更に他の側面によると、上方で各々が開口した第1凹部と第2凹部とを有し、上記第1凹部の開口は、上記第2凹部の底面に設けられているか又は上記第2凹部の開口と上記第2凹部の上記底面との間に設けられている成形型を準備することと、上記第1凹部を、上記第1凹部の上記開口の高さ以下の高さまで第1液状物で充填することと、上記第2凹部を、上記第1液状物とは異なる第2液状物で充填するとともに、上記第1液状物からなる層の上面を上記第2液状物で覆うこととを含んだ成形食品の製造方法が提供される。
【0017】
本発明の更に他の側面によると、上記成形型は、上記第1凹部と上記第2凹部とを含む複数の凹部へ底部を区画する仕切り部を備えた上記側面に記載の成形食品の製造方法が提供される。
【0018】
本発明の更に他の側面によると、上記第2凹部は、上記第1凹部の上方の領域である第1領域と、上記第1領域以外の領域である第2領域とを含み、上記第2液状物を上記第2領域へ供給して、上記第2領域を上記第2液状物で充填するとともに、上記第2領域から上記第1領域への上記第2液状物の流れを生じさせて、上記第2領域から流れ出た上記第2液状物によって上記第1液状物からなる上記層の上記上面を覆う上記側面の何れかに記載の成形食品の製造方法が提供される。
【0019】
本発明の更に他の側面によると、上記仕切り部の上記高さは、3mm以上且つ上記成形型の深さの50%以下である上記側面の何れかに記載の成形食品の製造方法が提供される。
【0020】
本発明の更に他の側面によると、上記第1凹部の上記開口は、上記第2凹部の上記底面に設けられている上記側面の何れかに記載の成形食品の製造方法が提供される。
【0021】
本発明の更に他の側面によると、上記第1液状物からなる上記層と上記第2液状物からなる層とを固化させることを更に含み、上記第2液状物による上記第2凹部の充填及び上記第1液状物からなる上記層の上記上面の被覆は、上記第1液状物からなる上記層を固化させることなしに行う上記側面の何れかに記載の成形食品の製造方法が提供される。
【0022】
本発明の更に他の側面によると、上記第1液状物及び上記第2液状物の少なくとも一方は、10℃以上30℃以下の範囲内の温度で溶解する増粘剤を含んだ上記側面の何れかに記載の成形食品の製造方法が提供される。
【0023】
本発明の更に他の側面によると、上記第1液状物及び上記第2液状物の少なくとも一方は、シュードプラスチック性を有する増粘剤を含んだ上記側面の何れかに記載の成形食品の製造方法が提供される。
【0024】
本発明の更に他の側面によると、容器と、上記容器に収容された上記側面の何れかに記載の成形食品とを備えた容器入り成形食品が提供される。
【0025】
本発明の更に他の側面によると、上記容器に収容された調味液を更に備えた上記側面に記載の容器入り成形食品が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、単一の成形食品において性状が異なる部分を含み、その部分の脱落を生じ難い成形食品及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る成形食品を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す第1実施形態に係る成形食品の一変形例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す第1実施形態に係る成形食品の他の変形例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す第1実施形態に係る成形食品の製造に使用される成形型の斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示す成形型に充填された第1液状物及び第2液状物を、成形型を省略して示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態に係る成形食品の製造に使用される成形型の斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す成形型を使用して製造される本発明の第2実施形態に係る成形食品を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3実施形態に係る成形食品の製造に使用される成形型の斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8に示す成形型を使用して製造される本発明の第3実施形態に係る成形食品を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の第4実施形態に係る成形食品の製造に使用される成形型の斜視図である。
【
図11】
図11は、
図10に示す成形型を使用して製造される本発明の第4実施形態に係る成形食品の一例を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、
図10に示す成形型を使用して製造される本発明の第4実施形態に係る成形食品の他の例を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、本発明の第5実施形態に係る成形食品の製造に使用される成形型の斜視図である。
【
図14】
図14は、
図13に示す成形型を使用して製造される本発明の第5実施形態に係る成形食品を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独で又は複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。
【0029】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の構成部材の材質、形状、及び構造等によって限定されるものではない。本発明の技術的思想には、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0030】
なお、同様又は類似した機能を有する要素については、以下で参照する図面において同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は模式的なものであり、或る方向の寸法と別の方向の寸法との関係、及び、或る部材の寸法と他の部材の寸法との関係等は、現実のものとは異なり得る。
【0031】
<1>第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る成形食品を示す斜視図である。
図1に示す成形食品1A-1は、第1食品部11と第2食品部12とを備える。第2食品部12は、第1主面12A及びその裏面である第2主面12Bを有する。第1主面12Aは、互いに隣接した第1区画12A1及び第2区画12A2を含み、第1区画12A1の位置で第1食品部11を支持している。ここで、第1食品部11と第2食品部12とは、互いに異なる食品組成物であって、後述する第1液状物と第2液状物から各々形成されている。
【0032】
成形食品1A-1において、第1食品部11と第2食品部12とは、前者が後者の第1区画12A1に支持されることにより、多層構造を形成している。すなわち、第1食品部11はその下面で第2食品部12の上面の一部と接している。この多層構造により、成形食品1A-1の喫食前に、第1食品部11が第2食品部12から意図せず剥離又は欠落(以下において、「脱落」という。)することが生じ難くなり、形状保持特性に優れる。このため、成形食品に使用する食材や形状などの選択肢が広がり、成形食品が模す実際の食品の再現性が向上する。
【0033】
第1食品部11の脱落を生じ難くする観点からは、第1食品部11の下面の面積は大きい方が好ましい。
【0034】
成形食品1A-1において、第1主面12Aは、第1区画12A1の位置に凹部を有し、第1食品部11はこの凹部を埋め込む形で第2食品部12に支持されている。そして、凹部を埋め込んでいる第1食品部11は、凹部の側壁から離間しており、側壁の位置に溝15を形成している。
【0035】
この溝15の存在により、第1食品部11及び第2食品部12各々が有する性状の違いが喫食者においてより明確となる。すなわち、口中での成形食品の分断が溝15の位置で生じ易くなるため、例えば、溝15の位置で分断された一方の部分と他方の部分とを別々に味わうことができ、それ故、食感や味を多様化することができる。また、例えば、成形食品1A-1に調味液をかけて喫食する場合、溝15の存在により、調味液の絡みもよくなる。
【0036】
溝15の底部は、第1食品部11と第2食品部12との境界(すなわち、第1食品部11の下面)に位置してもよいし、それより下方であってもよい。
【0037】
図2は、成形食品1A-1の一変形例を示す斜視図である。
図2に示す成形食品1A-2において、第1食品部11からなる層と第2食品部12からなる層との間には、第1食品部11の材料と第2食品部12の材料との混合物からなる中間層17が介在している。この中間層17が介在することにより、第1食品部11の脱落抑制効果は更に向上する。その結果、成形食品における形状保持特性は更に改善され、食材や形状などの選択肢が更に広がり、再現性高く模することが可能となる。なお、この中間層17は、後述する第1液状物と第2液状物との混合物の固化物からなる。成形食品1A-2は、後述するように、成形食品1A-1の製造に使用される成形型と同じ成形型を用いて製造することができる。
【0038】
図3は、成形食品1A-1の他の変形例を示す斜視図である。成形食品1A-1では、第2食品部12の第2主面12Bから第1食品部11までの距離は、第1食品部11の下面全体にわたって略一定である。
図3に示す他の変形例に係る成形食品1A-3によれば、第2主面12Bから第1食品部11までの距離は、第1区画12A1と第2区画12A2との間の境界からの距離がより大きい位置では、上記境界からの距離がより小さい位置と比較してより小さい。すなわち、成形食品1A-3は、上記境界から周縁部にいくほど、第1食品部11からなる層の厚さが大きくなり、第2食品部12からなる層の厚さが小さくなる構造を有している。このような構造は、例えば、赤身と脂身を有するステーキ肉、赤身又は白身と皮を有する魚の切り身など、組成が異なる部位が厚さ方向に対して垂直な方向に並んだ構造を有する食材又は食品の再現に適している。成形食品1A-3は、後述するように、成形食品1A-1の製造に使用される成形型と同じ成形型を用いて製造することができる。
【0039】
成形食品1A-1は、軟質食品であってよい。ここで「軟質食品」は、6×105N/m2以下の硬さを有している食品であり、好ましくは5×104N/m2以下の硬さを有している食品である。軟質食品の硬さの測定方法については、後で説明する。
【0040】
第1食品部11及び第2食品部12は、例えば、互いに異なるムース状食品からなる。ムース状食品は、固形の食品を磨り潰し、これと増粘剤等とを含む液状物を調製し、この液状物を成形(固化)することにより得られる食品である。固形の食品は、例えば、肉類、魚介類、野菜類、キノコ類、海藻、果実、木の実、穀類又はそれらの2以上を含むことができる。
【0041】
成形食品1A-1は、一例によれば、嚥下困難者用食品又は咀嚼困難者用食品として供されるユニバーサルデザインフードである。ユニバーサルデザインフードは、硬さ等に応じて4つの区分、即ち、「容易にかめる」、「歯ぐきでつぶせる」、「舌でつぶせる」、及び「かまなくてよい」へ分類される。区分「容易にかめる」の食品には硬さが5×105N/m2以下であることが要求され、区分「歯ぐきでつぶせる」の食品には硬さが5×104N/m2以下であることが要求される。区分「舌でつぶせる」の食品には、ゲルの場合は硬さが2×104N/m2以下であることが要求され、ゾルの場合は硬さが1×104N/m2以下であることが要求される。区分「かまなくてよい」の食品には、ゲルの場合は硬さが5×103N/m2以下であることが要求され、ゾルの場合は3×103N/m2以下であることが要求される。
【0042】
成形食品1A-1において、第1食品部11の硬さ及び第2食品部12の硬さの各々は、一例によれば、区分「歯ぐきでつぶせる」に分類される5×104N/m2以下であってよく、他の例によれば、区分「舌でつぶせる」に分類される2×104N/m2以下であってよい。また、第1食品部11の硬さ及び第2食品部12の硬さの各々は、一例によれば、1×103N/m2以上であってよい。第1食品部11及び第2食品部12を柔らかくしすぎると、成形食品1A-1に形状を保持させることが難しくなる。
【0043】
第1食品部11の硬さと第2食品部12の硬さとは、等しくてもよく、異なっていてもよい。それらの硬さが異なる場合、第1食品部11は第2食品部12と比較してより硬くてもよく、第2食品部12は第1食品部11と比較してより硬くてもよい。一例によれば、第2食品部12は第1食品部11と比較してより硬いことが好ましい。
第1食品部11の硬さと第2食品部12の硬さとの差は、例えば、1×103N/m2以上4.9×104N/m2以下の範囲内にあることが好ましく、3×103N/m2以上2×104N/m2以下の範囲内にあることがより好ましい。硬さに適度な差を設けることで、喫食者は、これらの硬さの違いを感じやくなる。一方、硬さの差を大きくしすぎると、第1食品部11及び第2食品部12の一方が硬くなりすぎるためユニバーサルデザインフードに適さない場合がある。
【0044】
なお、軟質食品の硬さは、以下の方法により測定する。
測定装置としては、直線運動により物質の圧縮応力を測定することが可能な装置を用いる。直径40mmの容器に試料を15mmの高さに充填し、直径が20mmのプランジャでこれを圧縮して、圧縮応力を測定する。この測定は、20±2℃の温度で、圧縮速度を10mm/秒とし、容器の底面とプランジャとのクリアランスが5mmになるまで行う。試料が不定形である場合などには、クリアランスを試料の厚さの30%として測定してもよい。この測定を5回行い、最大値及び最小値を除いた3回の値の平均を測定値とする。
【0045】
成形食品1A-1は、例えば、以下の方法により製造することができる。
図4及び
図5を参照しながら説明する。
【0046】
図4は、
図1に示す成形食品1A-1の製造に使用される成形型の斜視図である。
図4に示す成形型2Aは、上方で各々が開口した第1凹部21と第2凹部22とを有し、第1凹部21の開口は、第2凹部22の開口と第2凹部22の底面との間に設けられている。成形型2Aは、第1凹部21と第2凹部22へ底部を区画する仕切り部25を備えている。
具体的には、成形型2Aは、円盤形状を有している底部と、その周縁部から上方へ突き出た円筒形状の側壁部とを含んでいる。仕切り部25は、底部の上面に設けられており、底部と側壁部とによって囲まれた空間のうち下方の領域を2つの部分領域へ区分している。これら部分領域の各々は、成形型2Aの深さ方向から観察した場合に半円形状を有している。第1凹部21は、これら2つの部分領域の一方に相当している。他方、第2凹部22は、底部と側壁部とによって囲まれた空間のうち、上記一方の部分領域を除く領域に相当している。
【0047】
図5は、
図4に示す成形型2Aに充填された第1液状物及び第2液状物を、成形型2Aを省略して示す斜視図である。
図5に示す充填物3は、第1液状物からなる層(第1充填層)31と、第2液状物からなる層(第2充填層)32とを含む。
【0048】
成形食品1A-1の製造においては、
図3に示す成形型2Aと、互いに異なる食品組成物からなる第1液状物及び第2液状物とを使用する。先ず、成形型2Aの第1凹部21を、第1凹部21の開口の高さ以下、すなわち、仕切り部25の高さ以下まで第1液状物で充填することにより、第1液状物からなる層31を形成する。次いで、第2液状物を第2凹部22に供給し、第2凹部22を第2液状物で充填するとともに、第1液状物からなる層31の上面を第2液状物で覆うことにより、第2液状物からなる層32を形成する。これにより
図4に示す充填物3を得る。充填物3において、第1液状物からなる層31を固化させたものが第1食品部11であり、第2液状物からなる層32を固化させたものが第2食品部12である。
【0049】
上記方法において、第1凹部21を第1液状物で充填した後、第2凹部22への第2液状物の供給は、例えば、以下の方法により行うことが好ましい。なお、以下の説明では、第2凹部22のうち、第1凹部21の上方の領域を第1領域と呼び、第1領域以外の領域を第2領域と呼ぶ。この好ましい方法では、第2液状物の第2凹部22への供給は、第2液状物を第2領域へ供給することにより行う。第2液状物を第2領域へ供給すると、第2領域が第2液状物で充填される途中で、第2液状物が第2領域の下部領域から仕切り部25を越えて溢れ出し、第2領域から第1領域への第2液状物の流れを生じる。これにより、第1液状物からなる層31の上面は、第2領域から流れ出た第2液状物によって覆われる。そして、第2液状物の第2領域への供給を継続することにより、第1領域の全体が第2液状物により充填される。
【0050】
この供給方法は、第2凹部22の第1領域へ第2液状物を供給する場合と比較し、以下の効果がある。すなわち、第2液状物の供給に伴う第1充填層31に含まれる第1液状物の撹拌効果が小さく、第1液状物と第2液状物とが過度に混ざり合うことを抑制することができる。これにより、第1充填層31と第2充填層32とを含む多層構造を形成し易くなり、更には、これら2層の間に第1液状物と第2液状物との混合物からなる中間層が介在した多層構造をも形成し易くなる。これは、成形食品1A-1において、第1食品部11と第2食品部12とを含む多層構造を形成し易くなり、更には、一変形例である
図2に示す成形食品1A-2において、第1食品部11の材料と第2食品部12の材料との混合物からなる中間層17が介在した多層構造をも形成し易くなることを意味する。
【0051】
上掲で説明した成形食品1A-1の他の変形例、すなわち、
図3に示す成形食品1A-3は、ここで説明した第2凹部22への第2液状物の供給方法により容易に形成することができる。即ち、第2液状物を第2領域へ供給する際に、第1充填層31を形成している第1液状物の粘度と第2液状物の粘度とが適切な範囲内にあれば、第2領域から第1領域への第2液状物の流れによって、仕切り部25の近傍に位置した第1液状物の一部は、仕切り部25から離れた位置へと押し流される。従って、第2主面12Bから第1食品部11までの距離が、第1区画12A1と第2区画12A2との間の境界からの距離がより大きい位置では、この境界からの距離がより小さい位置と比較してより小さい構造が得られる。
【0052】
これら距離の差は、例えば、第1液状物及び第2液状物の粘度、第2液状物の供給速度などによって調整することができる。例えば、第1液状物が低粘度であり、第2液状物が高粘度である場合、これら距離の差が大きな構造を得ることができる。第1液状物が高粘度であり、第2液状物が低粘度である場合、これら距離の差が小さいか又はゼロである構造を得ることができる。また、第2液状物の供給速度を大きくすると、これら距離の差を大きくすることができる。
【0053】
仕切り部25は、例えば、高さが3mm以上であり、且つ、成形型2Aの深さdの50%以下であることが好ましい。仕切り部25の高さが3mm以上である場合、第1液状物を仕切り部25の高さ以下まで充填する際の充填量を調整しやすい。また、仕切り部25の高さが成形型2Aの深さの50%以下である場合、成形食品1A-1において溝15に起因した破断、崩壊、又は欠損等を生じ難くすることができる。より好ましくは、仕切り部25の高さは、成形型2Aの深さ30%以下である。成形型2Aの深さdは、例えば、6mm以上100mm以下であることが好ましい。
【0054】
第1食品部11の形成に用いられる第1液状物、及び、第2食品部12の形成に用いられる第2液状物は、粘性の液状物であり、加熱又は冷却などにより固化する性質を有するものであればよい。第1液状物及び第2液状物は、例えば、原料と増粘剤などの他の成分とを含む。
【0055】
原料としては、例えば、固形の食品を磨り潰した成分が挙げられる。固形の食品は、例えば、肉類、魚介類、野菜類、キノコ類、海藻、果実、木の実、穀類又はそれらの2以上を含むことができる。固形の食品は、調理前の食材であってもよく、調理済みの食品であってもよい。後者の場合、固形の食品は、油脂類と砂糖及び塩等の調味料類との1以上を更に含んでいてもよい。
【0056】
固形の食品は、粒子径が十分に小さくなるまで磨り潰すことが好ましい。粒子径が小さくなるほど口当たりは滑らかになる。磨り潰した食品の粒子径は、2.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましく、0.1mm以下であることが更に好ましい。ここで、「粒子径」は、レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定によって得られる値である。
【0057】
第1液状物及び第2液状物は、例えば、他の成分として増粘剤を含む。第1液状物及び第2液状物が適度な粘性を有する粘性液状物であることは、充填物3が備える第1充填層31と第2充填層32を含む多層構造を形成する上で重要である。すなわち、第1液状物及び第2液状物の粘度が小さい場合、第1液状物と第2液状物との過度の混合を生じ、上記多層構造を有する充填物3が得られない場合がある。第1液状物及び第2液状物の粘度は、例えば、0.5Pa・s以上であることが好ましい。同様の観点から、第1液状物の粘度の方が第2液状物の粘度より高いか、あるいは、第1液状物が後述するシュードプラスチック性を有する増粘剤を含むことが好ましい。
【0058】
一方、成形型2Aへの充填時における第1液状物及び第2液状物の粘度が大きい場合、充填時において成形型2Aの中で液状物が十分に広がらないなどの不都合を生じやすい。第1液状物及び第2液状物の粘度は、例えば、(10)Pa・s以下であることが好ましい。
【0059】
なお、液状物の粘度は、B型回転粘度計を用い、測定温度を20±2℃とし、12rpmでM3ロータを回転させ、2分後の示度を読み、その値に対応する計数を乗じて得られる値をPa・sで表したものである。
【0060】
増粘剤の例は、これらに限定するものではないが、キサンタンガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロース、ラムダカラギナン、アルギン酸ナトリウム、タマリンドシードガム、カラヤガム、ペクチン、プルラン、グルコマンナン、アラビアガム、タマリンドガム、カラギーナン、タラガム、ローカストビーンガム、カードラン、サイリウムシードガム、ジェランガム、キチン、キトサン、アラビノガラクタン、ウェランガム、セスバニアガム、アロエベラ抽出物、ダルマン樹脂、ガディガム、エレミ樹脂、デキストラン、オリゴグルコサミン、トロロアオイ、微小繊維状セルロース、トラガントガム、納豆菌ガム、フクロノリ抽出物、ファーセレラン、カシアガム、マクロホモプシスガム、キダチアロエ抽出物、モモ樹脂、アウレオバシジウム培養液、グァーガム酵素分解物、ラムザンガム、グルコサミン、レバン、アグロバクテリウムスクシノクリカン、酵母細胞膜、アマシードガム、サバクヨモギシードガム、アーモンドガム、スクレロガム、又はそれらの2以上である。
【0061】
増粘剤として、第1液状物及び第2液状物の少なくとも一方が、10℃以上30℃以下の範囲内の温度で溶解する増粘剤を含むことが好ましい。液状物の温度が10℃以上30℃以下の範囲内にあるとき、含有成分が安定するため、増粘剤がこの温度範囲内において溶解することは好ましい。中でも、第1液状物及び第2液状物の少なくとも一方が、キサンタンガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロース、ラムダカラギナン、アルギン酸ナトリウム、タマリンドシードガム、カラヤガム、ペクチン、プルラン、グルコマンナン、アラビアガム、又はそれらの2以上を含むことがより好ましく、第1液状物及び第2液状物の双方がこれら増粘剤の1又は2以上を含むことが更に好ましい。
【0062】
増粘剤として、第1液状物及び第2液状物の少なくとも一方が、シュードプラスチック性を有する増粘剤を含むことが好ましく、中でもキサンタンガム及びグァーガムの少なくとも一方を含むことがより好ましい。シュードプラスチック性を有する増粘剤を使用すると、液状物に圧力等が印加されたときに、液状物の粘性が低下する特性が付与される。つまり、液状物の充填時には低粘度であっても、充填後に粘度が高くなる。このため、液状物をポンプで吸い上げる際や液状物をノズルから吐出して充填するときは粘度低下により適切な生産速度を達成しつつ、充填後は粘度増加により多層構造を形成しやすい。多層構造を形成し易くする観点からは、上述したとおり、少なくとも第1液状物がシュードプラスチック性を有する増粘剤を含むことが好ましい。
【0063】
第1液状物及び第2液状物は、増粘剤以外の他の成分として、ゲル化剤、凝固剤、調味料、水、食用色素等を更に含んでよい。ゲル化剤の例は、これらに限定するものではないが、寒天、ゼラチン、増粘多糖類、又はそれらの2以上である。
【0064】
凝固剤は、例えば、加熱することにより熱変性して不可逆的に固化する蛋白質であってよい。そのような蛋白質は、例えば、水溶液の形態で、磨り潰した上記原料と混合する。蛋白質又はその水溶液としては、例えば、卵白を使用することができる。
【0065】
成形食品1A-1の製造方法は、通常、第1液状物からなる層(第1充填層)31と第2液状物からなる層(第2充填層)32を固化させることを含む。固化は、第1液状物を充填した直後と、第2液状物を充填した直後に行ってもよいし、第1液状物及び第2液状物を充填した後に纏めて行ってもよいが、以下のメリットを考慮すると後者が好ましい。
【0066】
すなわち、第1充填層31を固化させることなく、第2液状物を第2凹部22(好ましくは、第2領域)へ供給する。第2液状物で第2凹部22(第2領域)を充填するとともに、第1充填層31の上面を被覆して第2凹部22を充填した後、初めて固化する。このメリットとしては、より高い生産効率を達成できる、中間層が形成されるため、成形食品1A-1において第1食品部11の意図しない欠落をより生じ難くする、成形食品1A-1が含む多層構造を構成する層の厚みに多様性を付与すことができる、などが挙げられる。
【0067】
固化は、公知の方法を用いて行うことができる。固化方法の例として、特に限定するものではないが、加熱処理又は冷却処理が挙げられる。
【0068】
加熱処理としては、加工食品の分野で通常行われる加熱方法を用いることができ、例えば、蒸し加熱又はボイル加熱が挙げられる。これら処理は、加工食品の分野での常法により行うことができる。第1液状物及び第2液状物が、加熱により固化する液状物である場合には、加熱処理された段階で成形食品1A-1を得ることができるが、更に冷却処理に付してもよい。
【0069】
第1液状物及び第2液状物が、冷却又は冷凍により固化する液状物である場合には、冷却処理に付すことにより、成形食品1A-1を得ることができる。なお、成形型2Aに替えて、例えば後述する他の成形型を使用することにより、異なる外観を有する成形食品を得ることができる。
【0070】
固化により成形された成形食品1A-1は、成形型2Aから離型されることなく開口部を蓋で塞いで密閉され、容器入り成形食品として流通してもよい。この場合、「容器入り成形食品」における「容器」とは、開口部が蓋で塞がれ密閉された成形型2Aを意味する。
【0071】
あるいは、固化により成形された成形食品1A-1は、成形型2Aから離型されて成形型2Aとは異なる容器に収容され、容器入り成形食品として流通してもよい。容器の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、カップ状の容器本体の開口を蓋で塞いで密封する形態であってもよいし、易開封構造としてノッチが設けられた四方シール袋であってもよいし、三方シール袋及びガセット袋などの他の袋であってもよい。
【0072】
容器入り成形食品は、容器に成形食品1A-1を単独で収容した形態で流通させることができる。或いは、容器入り成形食品は、容器に成形食品1A-1と、調味液などの他の可食物を収容した形態で流通させることができる。
【0073】
容器入り成形食品が、容器に成形食品1A-1と調味液とを収容しているとき、成形食品1A-1と調味液は、一例によれば、混合された状態で収容されていてよい。
【0074】
調味液は、一例によれば、水、調味料、動物性食材の抽出液、植物性食材の抽出液、又はそれらの組み合わせを含有した液である。調味液は、例えば、溶液、ゾルなどの分散液、又はそれらの組み合わせである。
【0075】
調味液は、増粘剤を更に含むことができる。増粘剤の例は、第1液状物及び第2液状物において上述した増粘剤の例と同様である。
【0076】
調味液は、ゲル化剤を更に含んでいてもよい。ゲル化剤の例は、第1液状物及び第2液状物において上述したゲル化剤の例と同様である。
【0077】
調味液は、粘度が0.5乃至20.0Pa・sの範囲内にあることが好ましく、0.5乃至10.0Pa・sの範囲内にあることがより好ましく、1.5乃至2.0Pa・sの範囲内にあることが更に好ましい。上記の区分「舌でつぶせる」及び「かまなくてよい」の溶液又はゾルは、1.5Pa・s以上であることが要求される。
【0078】
なお、調味液の粘度は、第1液状物及び第2液状物において上述した粘度の測定方法と同様である。
【0079】
<2>第2実施形態
図6は、本発明の第2実施形態に係る成形食品の製造に使用される成形型の斜視図である。
図6に示す成形型2Bは、仕切り部25が円筒形状をなして底部の中央に存在していること以外は、成形型2Aと同様である。
【0080】
図7は、
図6に示す成形型2Bを使用して製造される本発明の第2実施形態に係る成形食品を示す斜視図である。
図7に示す第2実施形態に係る成形食品1Bは、成形型2Aの代わりに成形型2Bを使用すること以外は、第1実施形態において成形食品1A-1について上述したのと同様の方法により製造することができる。この成形食品1Bは、第1主面12Aの凹部が円柱形状をなして中央部に存在していること以外は、成形食品1A-1と同様である。
【0081】
成形食品1Bは、成形食品1A-1と同様に、第1食品部11の下面が第2食品部12により支持されてなる多層構造を含むため、第1食品部11の脱落が生じ難い。このため、成形食品に使用する食材や形状などの選択肢が広がり、食品の再現性に優れる。
【0082】
更に、成形食品1Bの製造方法において、成形食品1A-1の製造方法と同様に、第1凹部21を第1液状物で充填した後、第2凹部22の上記第2領域に第2液状物を供給することで第2凹部22を第2液状物で充填し、固化を纏めて行うことにより、食品の再現性に優れた成形食品を高い生産効率において製造することが可能となる。
なお、第2凹部22の上記第2領域への第2液状物の供給を、仕切り部25の周囲へ向けて第2液状物を均等に吐出する3以上のノズルを用いて行ってもよい。この場合、第1液状物及び第2液状物の粘度や第2液状物の供給速度を適宜設定すると、第1食品部11の下面中央部が下方へ突き出た構造を有する成形食品1Bを得ることができる。
【0083】
<3>第3実施形態
図8は、本発明の第3実施形態に係る成形食品の製造に使用される成形型の斜視図である。
図8に示す成形型2Cは、以下の構成を採用したこと以外は、成形型2Aと同様である。すなわち、成形型2Cは、第1凹部21の開口が第2凹部22の底部に設けられ、第1凹部21と第2凹部22に底部を区画する仕切り部を有していない。
【0084】
図9は、
図8に示す成形型2Cを使用して製造された本発明の第3実施形態に係る成形食品を示す斜視図である。
図9に示す第3実施形態に係る成形食品1Cは、成形型2Aの代わりに成形型2Cを使用すること以外は、第1実施形態において成形食品1A-1について上述したのと同様の方法により製造することができる。この成形食品1Cでは、第1食品部11が第2食品部12の第1主面12Aから突き出ている。成形食品1A-1とは異なり、第1食品部11は、第2食品部12の凹部に埋め込まれる形で存在していない。そのため、成形食品1Cは、第1食品部11が凹部の側壁から離間することにより形成される溝15も含んでいない。
【0085】
成形食品1Cでは、成形食品1A-1と同様に、第1食品部11の下面が第2食品部12により支持されてなる多層構造を含むため、第1食品部11の脱落が生じ難い。このため、成形食品に使用する食材や形状などの選択肢が広がり、食品の再現性に優れる。
【0086】
成形食品1Cは、成形食品1A-1の製造方法と同様に、第1凹部21を第1液状物で充填した後、第2凹部22の上記第2領域に第2液状物を供給することで第2凹部22を第2液状物で充填し、固化を纏めて行うことにより、食品の再現性に優れた成形食品を高い生産効率において製造することが可能となる。
【0087】
成形食品1Cは、一例において目玉焼き様の成形食品である。白身部のための第2凹部22への第2液状部の供給方法として上記方法を採用し、第1液状物及び第2液状物の粘度、第2液状物の供給速度、第2液状物を供給するノズルの位置や数などを調整することにより、黄身部である第1食品部11の中央部が第2食品部12の第2主面12B側に盛り上がり、黄身部の中央部の厚みが周縁部と比較してより厚い目玉焼き様の成形食品が得られる。
【0088】
<4>第4実施形態
図10は、本発明の第4実施形態に係る成形食品の製造に使用される成形型の斜視図である。
図10に示す成形型2Dは、上方で各々が開口した第1凹部21と第2凹部22と第3凹部23とを有している。成形型2Dは、仕切り部26を更に有していること以外は、成形型2Aと同様である。仕切り部26は、仕切り部25とともに、第1凹部21と第2凹部22と第3凹部23とへ底部を区画している。
【0089】
ここで、仕切り部26の高さは、成形型2Dを以下に説明する
図11に示す成形食品1D-1の製造に使用する場合は任意である。この場合、仕切り部26の高さは、仕切り部25と同様に、3mm以上且つ成形型2Dの深さdの50%以下であることが好ましく、3mm以上且つ成形型2Dの深さの30%以下であることがより好ましい。一方、成形型2Dを後述する
図12に示す成形食品1D-2の製造に使用する場合、仕切り部26の高さは、仕切り部25より高いことが必要である。この場合、仕切り部26の高さは、例えば、仕切り部25より1mm以上高く且つ成形型2Dの深さdの50%以下であることが好ましい。
【0090】
図11は、
図10に示す成形型2Dを使用して製造される本発明の第4実施形態に係る成形食品の一例を示す斜視図である。
図11に示す成形食品1D-1は、以下の構造を有していること以外は、成形食品1A-1と同様である。即ち、成形食品1D-1は、第3食品部13を更に含んでいる。第2食品部12の第1主面12Aは、第1食品部11が埋め込んでいる凹部(以下において、「第1食品部用凹部」ともいう。)に加え、第3食品部13によって埋め込まれた凹部(以下において、「第3食品部用凹部」ともいう。)を更に有している。第3食品部13は、その下面を第2食品部12により支持されている。第3食品部13は、第3食品部用凹部の側壁から離間しており、その側壁の位置に溝16を形成している。
【0091】
成形食品1D-1では、成形食品1A-1と同様に、第1食品部11及び第3食品部13の下面が各々第2食品部12により支持されてなる多層構造を有するため、第1食品部11及び第3食品部13の脱落が生じ難い。このため、成形食品に使用する食材や形状などの選択肢が広がり、食品の再現性に優れる。
【0092】
成形食品1D-1は、以下の点を除き、成形食品1A-1の製造方法と同様の方法により製造することができる。
【0093】
すなわち、成形食品1D-1の製造においては、第1液状物と第2液状物に加え、第3液状物を使用する。第3液状物を固化させた層が第3食品部13であり、第3液状物は第2液状物とは異なり、第1液状物と同一でも異なっていてもよい。
【0094】
成形食品1D-1の製造方法は、第3凹部23を第3凹部23の開口の高さ以下、すなわち、仕切り部26の高さ以下まで第3液状物で充填する工程を更に含む。この工程は、第2液状物で第2凹部22を充填する前であれば、第1凹部21を第1液状物で充填する前に行ってもよいし、第1凹部21を第1液状物で充填した後に行ってもよい。
【0095】
第1凹部21を第1液状物で充填し、かつ、第3凹部23を第3液状物で充填した後、第2凹部22へ第2液状物を供給し、第2凹部22を第2液状物で充填するとともに、第1液状物からなる層の上面及び第3液状物からなる層の上面を第2液状物で覆う。
【0096】
ここで、第2凹部22への第2液状物の供給は、例えば、以下の方法により行うことが好ましい。すなわち、第2液状物の第2凹部22への供給は、第2凹部22を第1凹部21の上部である第1領域と、第3凹部23の上部である第3A領域と、第1領域及び第3A領域以外の領域である第2A領域とに分けたとき、第2A領域へ供給することにより行う。この場合、第2液状物を第2A領域へ供給していく中で、第2A領域から溢れた第2液状物により第1液状物からなる層と第3液状物からなる層の上面が覆われ、第2凹部22が第2液状物により充填される。
【0097】
成形食品1D-1の製造方法において、更に固化を纏めて行うことにより、食品の再現性に優れた成形食品を高い生産効率において製造することが可能となる。
【0098】
図12は、
図10に示す成形型2Dを使用して製造される本発明の第4実施形態に係る成形食品の他の例を示す斜視図である。
図12に示す成形食品1D-2は、以下の構造を有していること以外は、成形食品1A-1と同様である。即ち、成形食品1D-2は、第3食品部13を更に含んでいる。第3食品部13は、第1主面13A及びその裏面である第2主面13Bを有する。第1主面13Aは凹部を有し、第2食品部12はこの凹部(以下において、「第2食品部用凹部」ともいう。)を埋め込む形でその下面を第3食品部13に支持されている。そして、第2食品部12は、第2食品部用凹部の側壁から離間しており、側壁の位置に溝16を形成している。
【0099】
成形食品1D-2では、第1食品部11の下面が第2食品部12により支持され、更に第2食品部12の下面が第3食品部13により支持された多層構造を有するため、喫食前に各食品部間で意図しない脱落が生じ難い。このため、成形食品に使用する食材や形状などの選択肢が広がり、食品の再現性に優れる。
【0100】
成形食品1D-2は、例えば、以下の方法により製造することができる。
【0101】
すなわち、成形食品1D-2の製造においては、第1液状物と第2液状物に加え、第3液状物を使用する。第3液状物を固化させた層が第3食品部13であり、第3液状物は第2液状物とは異なり、第1液状物と同一でも異なっていてもよい。
【0102】
成形食品1D-1の製造方法では、第1液状物による第1凹部21の充填と、第2液状物による第2凹部22の充填と、第3液状物による第3凹部23の充填とがこの順序で行われる。
先ず、成形食品1A-1と同様の方法により第1凹部21を第1液状部で充填する。次いで、第2凹部22に第2液状物を、第2凹部22の開口の高さ以下、すなわち、仕切り部26の高さ以下まで供給し、第2凹部22を第2液状物で充填するとともに、第1液状物からなる層の上面を第2液状物で覆う。次いで、第3凹部23に第3液状物を供給し、第3凹部23を第3液状物で充填するとともに、第2液状物からなる層の上面を第3液状物で覆う。これにより多層構造を得る。
【0103】
ここで、第2凹部22への第2液状物の充填、並びに第3凹部23への第3液状物の充填は、例えば、以下の方法により行うことが好ましい。
すなわち、第3凹部23を第1凹部21の上部である第1領域と、第2凹部22の上部である第2B領域と、第1領域及び第2B領域以外の領域である第3B領域とに分けたとき、第2液状物の第2凹部22への供給は、第2B領域へ供給することにより行う。この場合、第2液状物を第2B領域へ供給していく中で、第2B領域から溢れた第2液状物により第1液状物からなる層の上面が覆われ、第2凹部22が第2液状物により充填される。
【0104】
更に、第3液状物による第3凹部23の充填は、第3液状物を上記第3B領域へ供給することにより行う。この場合、第3液状物を第3B領域へ供給していく中で、第3凹部23が充填されるとともに、第3B領域から溢れた第3液状物により第2液状物からなる層の上面が覆われる。
【0105】
成形食品1D-2の製造方法において、更に固化を纏めて行うことにより、食品の再現性に優れた成形食品を高い生産効率において製造することが可能となる。
【0106】
<5>第5実施形態
図13は、本発明の第5実施形態に係る成形食品の製造に使用される成形型の斜視図である。
図13に示す成形型2Eは、上方で各々が開口した第1凹部21と第2凹部22と第3凹部23と第4凹部24とを有している。成形型2Eは、第1凹部21と第2凹部22へ底部を区画する仕切り部25に交差することにより、底部を第3凹部23と第4凹部24に更に区画する仕切り部26を備えていること以外は、成形型2Aと同様である。成形型2Eにおいて、仕切り部25及び仕切り部26の高さは同じである。
【0107】
図14は、
図13に示す成形型2Eを使用して製造される本発明の第5実施形態に係る成形食品の一例を示す斜視図である。
図14に示す成形食品1Eは、第3食品部13及び第4食品部14を更に有すること以外は、成形食品1A-1と同様である。第2食品部12が第1主面12Aに有する凹部は、第1食品部11によってのみ埋め込まれておらず、この凹部の一部が第1食品部11によって埋め込まれ、この凹部の他の一部が第3食品部13によって埋め込まれ、この凹部の残りが第4食品部14によって埋め込まれている。第3食品部13及び第4食品部14は、各々の下面を第2食品部12により支持されている。第3食品部13と第4食品部14は、溝15により互いに離間し、第2食品部12と第3食品部13、及び、第1食品部11と第4食品部14は、各々溝16により互いに離間している。
【0108】
成形食品1Eでは、成形食品1A-1と同様に、第1食品部11と第3食品部13と第4食品部14の下面が各々第2食品部12により支持された多層構造を有するため、喫食前に第1食品部11、第3食品部13及び第4食品部14の脱落が生じ難い。このため、成形食品に使用する食材や形状などの選択肢が広がり、食品の再現性に優れる。
【0109】
成形食品1Eは、以下の点を除き、成形食品1A-1の製造方法と同様の方法により製造することができる。
すなわち、成形食品1Eの製造においては、第1液状物と第2液状物に加え、第3液状物及び第4液状物を使用する。第3液状物を固化させた層が第3食品部13であり、第4液状物を固化させた層が第4食品部14である。第3液状物及び第4液状物は、各々第2液状物とは異なる。第1液状物、第3液状物及び第4液状物は、各々、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0110】
成形型2Eの第1凹部21、第3凹部23及び第4凹部24を、各々第1液状物、第3液状物及び第4液状物で充填する。これら工程の順序は、第2液状物で第2凹部22を充填する前であれば、任意である。
【0111】
次いで、第2凹部22を第2液状物で充填するとともに、第1液状物からなる層、第3液状物からなる層、及び第4液状物からなる層各々の上面を第2液状物で覆う。これにより多層構造を得る。
【0112】
ここで、第2凹部22への第2液状物の充填は、例えば、以下の方法により行うことが好ましい。すなわち、第2液状物の第2凹部22への供給は、第2凹部22を第1凹部21の上部である第1領域と、第3凹部23の上部である第3領域と、第4凹部24の上部である第4領域と、第1領域、第3領域及び第4領域以外の領域である第2C領域とに分けたとき、第2C領域へ供給することにより行う。この場合、第2液状物を第2C領域へ供給していく中で、第2C領域から溢れた第2液状物により第1液状物からなる層、第3液状物からなる層及び第4液状物からなる層各々の上面が覆われ、第2凹部22が第2液状物により充填される。
【0113】
成形食品1Eの製造方法において、更に固化を纏めて行うことにより、食品の再現性に優れた成形食品を高い生産効率において製造することが可能となる。
【0114】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0115】
1A―1…成形食品、1A―2…成形食品、1A―3…成形食品、1B…成形食品、1C…成形食品、1D-1…成形食品、1D-2…成形食品、1E…成形食品、2A…成形型、2B…成形型、2C…成形型、2D…成形型、2E…成形型、3…充填物、11…第1食品部、12…第2食品部、13…第3食品部、14…第4食品部、15…溝、16…溝、21…第1凹部、22…第2凹部、23…第3凹部、24…第4凹部、25…仕切り部、26…仕切り部、31…第1液状物からなる層(第1充填層)、32…第2液状物からなる層(第2充填層)、d…成形型の深さ