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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】極薄通気性フィルム用表面処理フィラー
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20240805BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240805BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240805BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20240805BHJP
   C01F 11/18 20060101ALN20240805BHJP
【FI】
C08J9/00 A CES
C08L101/00
C08K3/26
C08K9/04
C01F11/18 J
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022121281
(22)【出願日】2022-07-29
(62)【分割の表示】P 2018529171の分割
【原出願日】2016-11-11
(65)【公開番号】P2022172076
(43)【公開日】2022-11-15
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】15197670.1
(32)【優先日】2015-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/264,893
(32)【優先日】2015-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ブルンナー
(72)【発明者】
【氏名】タジオ・フォーネラ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ナー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ティンクル
(72)【発明者】
【氏名】マーカス・ウンガー
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-511838(JP,A)
【文献】国際公開第2015/175593(WO,A1)
【文献】特表2017-515952(JP,A)
【文献】特表2013-530276(JP,A)
【文献】特表2013-530277(JP,A)
【文献】国際公開第2014/128087(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01375579(EP,A1)
【文献】特開平10-237200(JP,A)
【文献】特開2014-019784(JP,A)
【文献】特表2017-524059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60,67/20
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び表面処理フィラー材料製品を含む、1~10g/mの坪量を有する通気性フィルムであって、前記表面処理フィラー材料製品が、
A)少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料であって、
- 0.1μm~7μmの範囲の重量中央粒径d50
- ≦7.5μmのトップカット粒径d98
- ISO9277にしたがう窒素及びBET法を使用して測定される、0.5~150m/gの比表面積(BET)、
- 前記少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、≦1重量%の残留全含水率、及び
- すべての粒子の少なくとも65重量%が<1μmの粒径を有するような細かさ、
を有する材料、並びに
B)前記少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の処理層であって、
i.1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、並びに/又は
ii.少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又は
iii.少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物、並びに/又は
iv.少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、並びに/又は
v.i.~iv.による前記材料の混合物、
を含む処理層
を含み、
前記表面処理フィラー材料製品が、前記少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、0.1~3重量%の量で前記処理層を含む、通気性フィルム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料が、湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料である、請求項1に記載の通気性フィルム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーが、ポリオレフィンである、請求項1又は2に記載の通気性フィルム。
【請求項4】
前記通気性フィルムが、通気性フィルムの全重量に基づいて、1~85重量%の量で前記表面処理フィラー材料製品を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の通気性フィルム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料が、天然粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、改質炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、又はそれらの混合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の通気性フィルム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料が、
a)0.25μm~5μmの重量中央粒径d50、並びに/又は
b)≦μmのトップカット粒径d98並びに/又は
c)すべての粒子の少なくとも70重量%が<1μmの粒径を有するような細かさ
を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の通気性フィルム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料が、ISO9277にしたがう窒素及びBET法を使用して測定される、0.5~50m/gの比表面積(BET)を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の通気性フィルム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料が、前記少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、0.01~0.2重量%の残留全含水率を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の通気性フィルム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の処理層が、少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びそれらの塩反応生成物を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の通気性フィルム。
【請求項10】
前記表面処理フィラー材料製品が、23℃(±2℃)の温度で、0.1~1mg/gの水分吸収を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の通気性フィルム。
【請求項11】
前記表面処理フィラー材料製品が、≧250℃の揮発開始温度を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の通気性フィルム。
【請求項12】
前記フィルムが、5~10g/mの坪量を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の通気性フィルム。
【請求項13】
1~10g/mの坪量を有する通気性フィルムを製造するためのプロセスであって、
a)少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び表面処理フィラー材料製品を含む組成物を提供する工程、並びに
b)工程a)の前記組成物からフィルムを形成する工程、並びに
c)工程b)で得られた前記フィルムを少なくとも1方向に延伸する工程
を含み、
前記表面処理フィラー材料製品が、
A)少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料であって、
- 0.1μm~7μmの範囲の重量中央粒径d50
- ≦7.5μmのトップカット粒径d98
- ISO9277にしたがう窒素及びBET法を使用して測定される、0.5~150m/gの比表面積(BET)、
- 前記少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、≦1重量%の残留全含水率、及び
- すべての粒子の少なくとも65重量%が<1μmの粒径を有するような細かさ、
を有する材料、並びに
B)前記少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の処理層であって、
i.1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、並びに/又は
ii.少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又は
iii.少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物、並びに/又は
iv.少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、並びに/又は
v.i.~iv.による前記材料の混合物、
を含む処理層
を含み、
前記表面処理フィラー材料製品が、前記少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、0.1~3重量%の量で前記処理層を含む、プロセス。
【請求項14】
工程a)において提供される前記組成物が、前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び前記表面処理フィラー材料製品を混合及び/又は混錬して混合物を形成すること及び得られた混合物を水中で連続的にペレット化することによって得られるマスターバッチ又は化合物である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
1~10g/mの坪量を有する通気性フィルム中のフィラーとしての表面処理フィラー材料製品の使用であって、前記表面処理フィラー材料製品が、
A)少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料であって、
- 0.1μm~7μmの範囲の重量中央粒径d50
- ≦7.5μmのトップカット粒径d98
- ISO9277にしたがう窒素及びBET法を使用して測定される、0.5~150m/gの比表面積(BET)、
- 前記少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、≦1重量%の残留全含水率、及び
- すべての粒子の少なくとも65重量%が<1μmの粒径を有するような細かさ、
を有する材料、並びに
B)前記少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の処理層であって、
i.1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、並びに/又は
ii.少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又は
iii.少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物、並びに/又は
iv.少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、並びに/又は
v.i.~iv.による前記材料の混合物、
を含む処理層
を含み、
前記表面処理フィラー材料製品が、前記少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、0.1~3重量%の量で前記処理層を含む、使用。
【請求項16】
衛生用品、医療製品、ヘルスケア製品、フィルター製品、ジオテキスタイル製品、農業製品、園芸製品、衣類、履物製品、鞄製品、家庭製品、工業製品、包装製品、建築製品、及び建設製品からなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の1~10g/mの坪量を有する通気性フィルムを含む物品。
【請求項17】
衛生用途、医療用途、ヘルスケア用途、ろ過材料、ジオテキスタイル製品、農業用途、園芸用途、衣類、履物製品、鞄製品、家庭用途、工業用途、包装用途、建築用途、又は建設における、請求項1~12のいずれか一項に記載の1~10g/mの坪量を有する通気性フィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1~10g/mの坪量を有する通気性フィルム、通気性フィルムを製造するためのプロセス、通気性フィルム中のフィラーとしての表面処理フィラー材料製品の使用、通気性フィルムを含む物品並びに衛生用途、医療用途、ヘルスケア用途、ろ過材料、ジオテキスタイル製品、農業用途、園芸用途、衣類、履物製品、鞄製品、家庭用途、工業用途、包装用途、建築用途、又は建設における通気性フィルムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生用品用の最初の通気性フィルムは、日本で早くも1983年に開発された。通気性フィルムの製造は、米国で1990年代半ばに、欧州でその後始まり、それらは、急速に大きな市場占有率を占めた。現在、通気性フィルムは、用途に関して2つの主要な分野:幼児用おむつ、女性用衛生パッド(ナプキン、パンティライナー)又は成人用失禁製品などの個人的衛生用品、及び屋根下葺メンブレン、ハウスラップ(house wraps)又は壁紙などの建設産業、を有する。しかし、これらのフィルムの特定の透過特性はまた、医療及び工業用途における使い捨て衣類など、他の産業においても使用される。
【0003】
通気性フィルムは通常、熱可塑性ポリマーと炭酸カルシウムなどの無機フィラーのブレンドを含み、キャスティング又はブローイングとそれに続くフィルムの延伸によって上記ブレンドからフィルムを形成することによって製造される。延伸プロセスは、無機フィラー粒子の表面からポリマーを剥離し、これがミクロ細孔を製造し、フィルム断面における「空隙」としばしば称され、これが最終使用時に水蒸気の通過を可能にする。
【0004】
無機鉱物フィラーの使用によって直面する問題は、鉱物フィラーに関連する揮発性物質の存在である。このような揮発性物質は、フィラーの適用時に達する温度で発生する場合があり、このような鉱物フィラー含有製品の加工時に最終鉱物含有ポリマー製品の品質の劣化をもたらす場合がある。更に、このような関連する揮発性物質は、通気性フィルムの引張強度及び引裂強度の低下をもたらす場合があり、通気性フィルムの視覚的側面、特にその視覚的均一性を悪化させる場合がある。揮発性物質はまた、配合工程時に鉱物充填ポリマー溶融体の過剰な発泡を生じさせ、真空引き時に望ましくない生成物の蓄積を引き起こし、したがって生産率の低下を余儀なくする場合がある。
【0005】
上記揮発性物質は、例えば、鉱物フィラーと元々関連する場合があり(「固有揮発性物質」)、特に水と関連し、及び/又は鉱物フィラーの処理時に導入されて、例えば、鉱物フィラーをプラスチック媒体内により分散させる場合もある(「添加揮発性物質」)。更に、揮発性物質は、固有有機材料及び/又は添加有機材料の鉱物フィラーとの反応によって発生する場合があり、一方、このような反応は特に、充填ポリマー材料の導入及び/又は加工時に、例えば、押出又は配合プロセス時に達する温度によって誘起されるか又は増大する場合がある。上記揮発性物質はまた、固有有機材料及び/又は添加有機材料の分解によって発生し、CO、水及び場合によりこれらの有機材料の低分子量部分を生成する場合もある。このような分解は特に、押出又は配合プロセス時などの、処理鉱物フィラーを含むポリマー材料の導入及び/又は加工時に達する温度によって誘起されるか又は増大する場合がある。
【0006】
揮発開始温度を上昇させ、かつ鉱物フィラーに関連する揮発性物質の量を制限するための明らかな手段の1つは、ある一般的なフィラー処理添加剤の使用を回避又は制限することである。
【0007】
しかし、多くの場合、鉱物フィラーがプラスチック用途に適用されるときのように、このような添加剤は他の機能を確保するために必要とされる。例えば、フィルム全体にわたって均一な分布バリア及び蒸気透過特性を得るために、フィラーをできる限りフィルム全体にわたって均等に分布させる必要がある。したがって通常、添加剤は、鉱物フィラーに疎水性コーティングを提供するため、及びフィルム前駆体材料中の鉱物フィラーの分散性を改善するため、並びに場合によりこのフィルム前駆体材料の加工性及び/又は最終用途製品の特性を改善するために導入される。このような添加剤を排除すると、得られるフィルム品質が許容できないほど損なわれる。
【0008】
当技術分野において、鉱物フィラー材料及び特に炭酸カルシウム含有鉱物フィラー材料の適用性を改善するために、例えば、このような鉱物フィラー材料を、場合によっては脂肪酸及び脂肪酸塩とも称される、脂肪族カルボン酸及び脂肪族カルボン酸塩で処理することによる、いくつかの試みがなされてきた。例えば、WO 00/20336は超微細天然炭酸カルシウムに関し、これは1つ若しくはいくつかの脂肪酸又は1つ若しくはいくつかのそれらの塩若しくは混合物で任意に処理されてよく、かつポリマー組成物用レオロジー調整剤として使用される。
【0009】
同様にUS 4,407,986 Aは分散剤によって表面処理される沈降炭酸カルシウムに関し、分散剤は、この炭酸カルシウムを結晶性ポリプロピレンと混錬するときの潤滑剤用添加剤の添加を制限するため、かつポリプロピレンの衝撃強度を制限する炭酸カルシウム凝集体の形成を回避するために高級脂肪酸及びそれらの金属塩を含み得る。
【0010】
EP 0 998 522 A1は、炭素原子が少なくとも10の脂肪酸を使用する通気性フィルム用表面処理炭酸カルシウムフィラーに関し、ここでは処理プロセス前後のフィラーが0.1重量%未満の範囲でほぼ水分を含まない必要がある。しかし、このような低い含水率を達成し維持するためには、高いエネルギー消費量及びコストを必要とする。したがって、このような低い含水率は、低いエネルギーコストで良好な品質の表面処理フィラー材料製品を得るための固体鉱物表面と処理添加剤との反応に影響し、それを制御するための理想的なパラメーターではない。
【0011】
DeArmittら、Improved thermoplastic composites by optimised surface treatment of the mineral fillers、Institute for Surface Chemistry、2000年8月は、鉱物フィラー材料を含むバッチ懸濁液を室温で1時間、分散剤と接触させる湿式処理プロセスについて記載している。しかし、このような湿式処理プロセスは、処理するために乾燥製品を湿らせること及び後続の乾燥がエネルギーかつコストを消費するという欠点を有する。
【0012】
US 2002/0102404 A1は、飽和及び不飽和脂肪カルボン酸並びにそれらの塩並びにフタル酸エステルなどの有機化合物の組合せで表面にコーティングされた、分散性炭酸カルシウム粒子について記載し、これは粘度安定性及び粘着特性を改善するために粘着性組成物中で使用される。しかし、US 2002/0102404は、飽和及び不飽和脂肪族カルボン酸/塩の混合物の導入を必要とする。不飽和脂肪族カルボン酸/塩の存在は、任意の不飽和脂肪族カルボン酸/塩含有材料の加工時に二重結合との望ましくないその場の副反応のリスクを上昇させる。更に、不飽和脂肪族カルボン酸/塩の存在は、それらが導入される材料において、変色又は望ましくない臭気の発生、特に鼻につく臭気を生じる場合がある。
【0013】
US 4,520,073 Aは、コーティング材料用の担体として蒸気を使用する多孔性鉱物の圧力コーティングによって作製された、改良疎水性コーティングを有する鉱物フィラー材料について記載している。上記コーティング材料は、いくつかの選択肢の中で特に、長鎖脂肪族脂肪酸及びそれらの塩から選択されてよい。
【0014】
WO 01/32787 A1は、(a)アルカリ土類金属炭酸塩と少なくとも1つの所与の脂肪族カルボン酸の反応生成物を含む第1の構成成分及び(b)
式CH(CH)mCOOR
の化合物を含み、第1の構成成分よりも実質的に高い炭酸塩放出温度を有する第2の構成成分、から形成される組成物を含む疎水性材料のコーティングをその粒子上に有する、粒子状アルカリ土類金属炭酸塩材料製品について記載している。
【0015】
WO 2008/077156 A2は、少なくとも1つのポリマー樹脂並びに約5マイクロメートル以下の平均粒径を有し及び/又は約15マイクロメートル未満のトップカットを有する少なくとも1つのフィラーを含むスパンレイド(spunlaid)繊維に関し、ここで少なくとも1つのフィラーが、スパンレイド(spunlaid)繊維の全重量に対して、約40重量%未満の量で存在する。フィラーのコーティングは、脂肪酸並びにそれらの塩及びエステル、例えばステアリン酸、ステアリン酸塩、アンモニウムステアリン酸塩及びステアリン酸カルシウムから選択される少なくとも1つの有機材料として記載される。
【0016】
WO 2005/075353は、約0.5マイクロメートル以下のd50及び約0.2重量%未満の水分吸収を有する天然アルカリ土類金属炭酸塩並びに粉砕により粒子状炭酸塩を作製するためのプロセスについて開示する。炭酸塩は、ポリマー組成物中で使用されてよい。
【0017】
WO 2009/094321は、少なくとも1つのポリマー樹脂及び少なくとも1つのコーティングフィラーを含むモノフィラメント繊維について開示し、ここで少なくとも1つのコーティングフィラーは約3マイクロメートル以下の平均粒径を有し及び/又は約10マイクロメートル以下のトップカットを有し、かつここで少なくとも1つのコーティングフィラーはモノフィラメント繊維の全重量に対して約50重量%以下の量で存在する。またそこで開示されるのは、少なくとも1つのポリマー樹脂に粉砕炭酸カルシウムを添加すること及び得られた混合物を押し出しすることを含む、モノフィラメント繊維を製造するための方法である。
【0018】
WO 2011/028934は、少なくとも1つのポリマー樹脂及び少なくとも1つのコーティングフィラーを含む、短繊維などの繊維に関し、ここで少なくとも1つのコーティングフィラーは約3マイクロメートル以下の平均粒径を有し、かつここで少なくとも1つのコーティングフィラーは繊維の全重量に対して約50重量%以下の量で存在する。またそこで開示されるのは、少なくとも1つのポリマー樹脂に少なくとも1つのフィラーを添加すること及び得られた混合物を加工することを含む、短繊維、織物、布及び敷物を製造するための方法である。
【0019】
WO 2012/052778は、ポリエステル及びフィラーを含む引き裂くことが可能なポリマーフィルム、上記フィルムを作製するためのポリマー組成物、それらの製造方法並びに使用について開示する。
【0020】
GB 2 336 366 Aは、充填熱可塑性組成物、及び特に押出プロセスによって製品又は物品に形成される充填低密度ポリエチレン組成物に関する。それは更に、疎水化剤が好ましくは有機カルボン酸又は部分的に若しくは全体的に中和されたその塩であり、粒子状鉱物フィラーが中性~アルカリ性表面反応を有する場合、例えば炭酸カルシウムである場合、それは8~28の炭素原子を有する少なくとも1つの飽和若しくは不飽和炭化水素鎖を有する、ことを記載する。
【0021】
EP 2 159 258 A1は、少なくとも1つの鉱物フィラー、上記鉱物フィラーの表面に位置する処理層を含む処理鉱物フィラー製品に関し、ここで処理層が少なくとも1つの飽和C8~C24脂肪族カルボン酸並びに1つ以上の飽和C8~C24脂肪族カルボン酸の少なくとも1つの二価及び/又は三価のカチオン塩、を含み、ここですべての上記脂肪族カルボン酸:すべての上記脂肪酸の重量比が51:49~75:25であり、かつ上記処理層が上記鉱物フィラーの少なくとも2.5mg/mの量で存在する。
【0022】
EP 1 980 588は、鉱物フィラー処理プロセスの領域に関する。処理鉱物フィラー製品の作製プロセスは、以下の工程を含む。:(a)少なくとも1つの乾燥鉱物フィラーをC8~C24脂肪族モノカルボン酸の少なくとも1つの第II属又は第III属塩で処理して、鉱物フィラー製品中間体を製造する工程;続いて(b)工程(a)の鉱物フィラー製品中間体を少なくとも1つのC8~C24脂肪族モノカルボン酸で処理して、処理鉱物フィラー製品を製造する工程。
処理炭酸カルシウムなどの処理鉱物フィラー製品は、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)系の通気性又は押出コーティングフィルム用途でなど、プラスチック用途に使用されてよい。
【0023】
DE 958 830は、天然又は合成脂肪酸、アミノ脂肪酸、酸アミド、脂肪族アルコール、ワックス、及び樹脂の存在下で炭酸カルシウムが粉砕されることを特徴とする、天然炭酸カルシウムを表面活性物質で処理する方法に関する。天然又は合成表面活性物質は、0.1~40%の量で存在してよく、粉砕は、少なくとも80℃の温度で実施されてよい。
【0024】
WO 2013/190274 A2は充填バイオポリマー、特にバイオポリマー及び粒子状鉱物フィラーを含む組成物について言及し、ここで粒子状鉱物フィラーは粒子状焼成粘土を含む。
【0025】
WO 03/050167 A1は、延伸熱可塑性ポリオレフィンフィルムの水蒸気透過性を上昇させる目的で、延伸熱可塑性ポリオレフィンフィルム中の鉱物フィラーとしての1.0μm未満のd50を有する粉砕粒子状炭酸カルシウム材料の使用について言及する。
【0026】
WO 02/55596 A1は、ポリジアルキルシロキサン及び脂肪酸で鉱物フィラーを処理する方法、得られた疎水性フィラー並びにフィルム、特に通気性フィルムを作製するためのポリマー中でのその使用に関する。
【0027】
EP 2 390 285 A1は、表面処理鉱物フィラー製品を作製するためのプロセス、及びプラスチック用途、特にポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)系の通気性又は押出コーティングフィルム用途の領域におけるその好ましい使用に関する。
【0028】
非公開ヨーロッパ特許出願第14 181 082.0号は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び表面処理フィラー材料製品を含む通気性フィルムについて言及し、ここで表面処理フィラー材料製品は、少なくとも1つの湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料並びに少なくとも1つの単一置換の無水コハク酸及び/若しくは少なくとも1つの単一置換のコハク酸並びに/又はそれらの塩反応生成物を含む少なくとも1つの湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料表面の処理層を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【文献】国際公開第2000/020336号
【文献】米国特許第4407986号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0998522号明細書
【文献】米国特許出願公開第2002/0102404号明細書
【文献】米国特許第4520073号明細書
【文献】国際公開第2001/032787号
【文献】国際公開第2008/077156号
【文献】国際公開第2005/075353号
【文献】国際公開第2009/094321号
【文献】国際公開第2011/028934号
【文献】国際公開第2012/052778号
【文献】英国特許出願公開第2336366号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2159258号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1980588号明細書
【文献】独国特許発明第958830号明細書
【文献】国際公開第2013/190274号
【文献】国際公開第2003/050167号
【文献】国際公開第2002/055596号
【文献】欧州特許出願公開第2390285号明細書
【非特許文献】
【0030】
【文献】DeArmittら、Improved thermoplastic composites by optimised surface treatment of the mineral fillers、Institute for SurfaceChemistry、2000年8月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
しかし、記載された通気性フィルムは、極薄通気性フィルム、すなわち1~10g/mの坪量を有するフィルムが、フィルムの破断時の力、破断時の伸び、弾性率又は水柱、並びに表面品質などのその機械的特性の低下なしではほとんど作製できないという欠点を有する。
【0032】
したがって、極薄通気性フィルム、すなわち1~10g/mの坪量を有し、より高い坪量のフィルムと比較して、維持されるか又は改善された機械的特性及び良好な表面品質を有するフィルムの供給は、依然として当業者の興味を引く。
【0033】
したがって、1~10g/mの坪量を有する通気性フィルムを提供することが、本発明の目的である。破断時の力、破断時の伸び、弾性率又は水柱などの良好な機械的特性を有する通気性フィルムを提供することも望ましい。良好な通気性及び低いフィルム欠陥レベルを保持する通気性フィルムを提供することも望ましい。良好な色特性及び低いメヤニ特性などの良好な加工性を有する通気性フィルムを提供することも望ましい。
【0034】
本発明の別の目的は、1~10g/mの坪量を有する通気性フィルム用フィラー材料の供給である。通気性フィルム用途において良好な分散特性及び配合性能を示す、通気性フィルム用フィラー材料を提供することも望ましい。高温耐性を有するフィラー材料を提供することも望ましく、したがって、通気性フィルムの製造時の高い加工温度が可能になる。更に、低い吸水性を示し、したがって、関連する揮発性物質、特に水によって直面する問題を低減又は回避するフィラー材料を提供することが望ましい。破断時の力、破断時の伸び、弾性率又は水柱などの良好な機械的特性を付与しかつフィルムの表面品質を改善する、通気性フィルム用フィラー材料を提供することも望ましい。連続プロセスを使用して、マスターバッチ又は化合物への加工を可能にする、通気性フィルム用フィラー材料を提供することも本発明の目的である。
【0035】
前述の目的及びその他の目的は、独立請求項において本明細書で定義されるような主題によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明の態様によれば、1~10g/mの坪量を有する通気性フィルムが提供される。通気性フィルムは、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び表面処理フィラー材料製品を含み、表面処理フィラー材料製品は、
A)少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料であって、
-0.1μm~7μmの範囲の重量中央粒径d50
-≦15μmのトップカット粒径d98
-窒素及びISO9277にしたがってBET法を使用して測定される、0.5~150m/gの比表面積(BET)、並びに
-少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、≦1重量%の残留全含水率、
を有する材料、並びに
B)少なくとも1つの上記粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の処理層であって、
i.1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、並びに/又は
ii.少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又は
iii.少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物、並びに/又は
iv.少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、並びに/又は
v.i.~iv.による材料の混合物、
を含む処理層
を含み、
表面処理フィラー材料製品は、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、0.1~3重量%の量で処理層を含む。
【0037】
更なる態様によれば、1~10g/mの坪量を有する通気性フィルムを製造するためのプロセスが提供され、
a)少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び表面処理フィラー材料製品を含む組成物を提供する工程、並びに
b)工程a)の組成物からフィルムを形成する工程、並びに
c)工程b)で得られたフィルムを少なくとも1方向に延伸する工程
を含み、
表面処理フィラー材料製品が、
A)少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料であって、
-0.1μm~7μmの範囲の重量中央粒径d50
-≦15μmのトップカット粒径d98
-窒素及びISO9277にしたがってBET法を使用して測定される、0.5~150m/gの比表面積(BET)、並びに
-少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、≦1重量%の残留全含水率、
を有する材料、並びに
B)少なくとも1つの上記粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の処理層であって、
i.1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、並びに/又は
ii.少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又は
iii.少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物、並びに/又は
iv.少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、並びに/又は
v.i.~iv.による材料の混合物、
を含む処理層
を含み、
表面処理フィラー材料製品は、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、0.1~3重量%の量で処理層を含む。
【0038】
本発明の更に別の態様によれば、1~10g/mの坪量を有する通気性フィルム中のフィラーとしての表面処理フィラー材料製品の使用が提供され、表面処理フィラー材料製品は、
A)少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料であって、
-0.1μm~7μmの範囲の重量中央粒径d50
-≦15μmのトップカット粒径d98
-窒素及びISO9277にしたがってBET法を使用して測定される、0.5~150m/gの比表面積(BET)、並びに
-少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、≦1重量%の残留全含水率、
を有する材料、並びに
B)少なくとも1つの上記粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の処理層であって、
i.1つ以上のリン酸エステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、並びに/又は
ii.少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又は
iii.少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物、並びに/又は
iv.少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、並びに/又は
v.i.~iv.による材料の混合物、
を含む処理層
を含み、
表面処理フィラー材料製品は、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、0.1~3重量%の量で処理層を含む。
【0039】
本発明の更なる別の態様によれば、本明細書で定義されるような1~10g/mの坪量を有する通気性フィルムを含む物品が提供され、物品は、衛生用品、医療製品、ヘルスケア製品、フィルター製品、ジオテキスタイル製品、農業製品、園芸製品、衣類、履物製品、鞄製品、家庭製品、工業製品、包装製品、建築製品、及び建設製品からなる群から選択される。
【0040】
本発明の更なる別の態様によれば、衛生用途、医療用途、ヘルスケア用途、ろ過材料、ジオテキスタイル製品、農業用途、園芸用途、衣類、履物製品、鞄製品、家庭用途、工業用途、包装用途、建築用途、又は建設における本明細書で定義されるような1~10g/mの坪量を有する通気性フィルムの使用が提供される。
【0041】
本発明の有利な実施形態は、本明細書及び対応する従属請求項でも定義される。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料は、湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料である。したがって、本発明の前述の態様に関して、湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の使用が、具体的に企図されるか又は好ましい。
【0043】
別の実施形態によれば、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、ポリオレフィン、好ましくはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0044】
更に別の実施形態によれば、通気性フィルムは、通気性フィルムの全重量に基づいて、1~85重量%の量で、好ましくは2~80重量%、より好ましくは5~75重量%、更により好ましくは10~65重量%、及び最も好ましくは15重量%~60重量%で表面処理フィラー材料製品を含む。別の実施形態によれば、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)、沈降炭酸カルシウム、改質炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、又はそれらの混合物、及び好ましくは天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)である。
【0045】
一実施形態によれば、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、a)0.25μm~5μm、好ましくは0.5μm~4μm、及び最も好ましくは0.6μm~1μmの重量中央粒径d50、並びに/若しくはb)≦12.5μm、好ましくは≦10μm、より好ましくは≦7.5μm及び最も好ましくは≦3μmのトップカット粒径d98、並びに/又はc)すべての粒子の少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも70重量%、更により好ましくは少なくとも75重量%及び最も好ましくは少なくとも80重量%が<1μmの粒径を有するような細かさ、を有する。
【0046】
別の実施形態によれば、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、窒素及びISO9277にしたがってBET法を使用して測定される、0.5~50m/g、より好ましくは0.5~35m/g、及び最も好ましくは0.5~15m/gの比表面積(BET)を有する。
【0047】
更に別の実施形態によれば、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、0.01~0.2重量%、好ましくは0.02~0.15重量%、及び最も好ましくは0.04~0.15重量%の残留全含水率を有する。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の処理層は、少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びそれらの塩反応生成物を含み、好ましくは少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸は、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸及びそれらの混合物からなるカルボン酸からなる群から選択される。
【0049】
別の実施形態によれば、表面処理フィラー材料製品は、23℃(±2℃)の温度で、0.1~1mg/g、好ましくは0.2~0.9mg/g、及び最も好ましくは0.2~0.8mg/gの水分吸収を有する。
【0050】
更に別の実施形態によれば、表面処理フィラー材料製品は、≧250℃、好ましくは≧260℃、及び最も好ましくは≧270℃の揮発開始温度を有する。
【0051】
一実施形態によれば、フィルムは、5~10g/m、好ましくは6~10g/m、より好ましくは7~9g/m及び最も好ましくは約8g/mの坪量を有する。
【0052】
別の実施形態によれば、本発明のプロセスの工程a)において提供される組成物は、上記構成成分を混合すること又は配合することによって得られるマスターバッチ又は化合物である。少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び表面処理フィラー材料製品、並びに、存在する場合、他の任意の添加剤は、適切なミキサー、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー又はタンブラー型ミキサー等を使用して混合されてよい。
【0053】
配合工程は、好ましくは二軸押出機(同方向若しくは異方回転)により又は任意の他の適切な連続配合装置、例えば連続コニーダー(Buss)、連続ミキサー(Farrel Pomini)、リング押出機(Extricom)等により、適切な押出機を用いて行われてよい。押出からの連続ポリマー塊を、水中ペレット化、偏心ペレット化及びウォータリングペレット化を用いる(ホットカット)ダイフェイスペレット化によって、又は水中での従来のストランドペレット化を用いる(コールドカット)ストランドペレット化によってのどちらでペレット化して、押出ポリマー塊をペレットへと形成してよい。
【0054】
任意に、配合工程はまた、インターナル(バッチ)ミキサー、例えばバンバリーミキサー(HF Mixing Group)又はブラベンダーミキサー(Brabender)等を使用する不連続又はバッチプロセスを用いて実施されてもよい。
【0055】
本発明の目的のために、以下の用語が以下の意味を有することを理解すべきである。
【0056】
本発明の要旨における用語「粉砕炭酸カルシウム含有フィラー」は、少なくとも1つの粉砕工程を含むプロセスによって製造される炭酸カルシウム含有フィラーを意味する。「粉砕炭酸カルシウム含有フィラー」は、「湿式粉砕」又は「乾燥粉砕」であってよく、本発明の意味における「湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー」は、20~80重量%の固体含有率を有する水性懸濁液中での少なくとも1つの粉砕工程を含むプロセスによって製造された粉砕炭酸カルシウム含有フィラーであり、「乾燥粉砕炭酸カルシウム含有フィラー」は、80超から100重量%までの固体含有率を有する水性懸濁液中での少なくとも1つの粉砕工程を含むプロセスによって製造された粉砕炭酸カルシウム含有フィラーである。
【0057】
本発明の意味における用語「通気性フィルム」は、例えば、ミクロ細孔の存在によって、ガス及び水蒸気が通過できるポリマーフィルムを指す。通気性フィルムの「通気性」は、g/(m・日)で規定される、その水蒸気透過率(WVTR)によって測定できる。例えば、ポリマーフィルムは、少なくとも1000g/(m・日)のWVTRを有する場合、「通気性」があると見なしてよい。WVTRは、ASTM E398にしたがってLyssy L80-5000測定装置を用いて決定されてよい。
【0058】
本発明の意味における用語「極薄」通気性フィルムは、1~10g/m、好ましくは5~10g/m、より好ましくは6~10g/m、更により好ましくは7~9g/m及び最も好ましくは約8g/mの坪量を有するポリマーフィルムを指す。
【0059】
本発明の意味における「フィルム」は、その長さ及び幅と比較して小さいメジアン厚みを有する材料のシート又は層である。例えば、用語「フィルム」は、200μm未満であるが、1μm超のメジアン厚みを有する材料のシート又は層を指してよい。
【0060】
本発明で使用する場合、「水頭」は、液体浸透に対する通気性フィルムの抵抗の尺度であり、これはそのバリア特性を意味する。通気性フィルムのバリア特性は、低静水圧力下で水の浸透に対するフィルムサンプルの抵抗を測定する、静水圧力試験を使用して測定された。使用した手順は、AATCC試験方法127-2013、WSP80.6及びISO811と同じである。フィルムサンプル(試験面積=10cm)を試験ヘッドリザーバーに取付けて、カバーを形成する。このフィルムサンプルに標準水圧をかけ、フィルムの外表面に漏れが現れるか又はフィルム破損の結果として水の吹き出しが生じるまで一定速度で上昇させる(圧力速度勾配=100mbar/分)。水圧は、フィルムサンプルの3つの分離領域における漏れの最初の兆候時、又は吹き出しが生じるときに達した静水頭高さとして測定される。頭高さの結果は、試験片に対する水圧のセンチメートル又はミリバールで記録する。高い値は、透水への高い抵抗を示す。TEXTEST FX-3000、Hydrostatic Head Tester(Textest AG、スイス)を静水圧力測定のために使用した。
【0061】
本発明の目的に関して、用語「炭酸カルシウム含有フィラー材料」は、炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、少なくとも80重量%の炭酸カルシウムを含む材料を指す。
【0062】
本発明の意味における「天然粉砕炭酸カルシウム」(GCC)は、石灰岩、大理石、ドロマイト又はチョークなどの天然源から得られ、粉砕、ふるい分け及び/又は分画などの湿式処理を通して、例えばサイクロン又は分級機によって、加工される炭酸カルシウムである。
【0063】
本発明の意味における「改質炭酸カルシウム」(MCC)は、内部構造改質生成物又は表面反応生成物を有する天然粉砕又は沈降炭酸カルシウム、すなわち「表面反応炭酸カルシウム」を特徴としてよい。「表面反応炭酸カルシウム」は、炭酸カルシウム及び不溶性の、好ましくは少なくとも部分的に結晶性である、表面における酸のアニオンのカルシウム塩を含む材料である。好ましくは、不溶性カルシウム塩は、炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面から広がる。上記アニオンの上記の少なくとも部分的に結晶性のカルシウム塩を形成するカルシウムイオンは、大部分が炭酸カルシウム出発材料に由来する。MCCは、例えば、US 2012/0031576 A1、WO 2009/074492 Α1、ΕΡ 2 264 109 A1、EP 2 070 991 A1、又はEP 2 264 108 A1に記載されている。
【0064】
本発明の意味における用語「表面処理フィラー材料製品」は、例えば、炭酸カルシウム含有フィラー材料の少なくとも一部の表面にコーティング層を得るために、表面処理剤と接触させた炭酸カルシウム含有フィラー材料を指す。
【0065】
用語「乾燥」炭酸カルシウム含有フィラー材料は、フィラー材料の重量に対して0.3重量%未満の水を有するフィラー材料であると理解される。水の%(「残留全含水率」に等しい)は電量カールフィッシャー測定法にしたがって決定され、ここでフィラー材料は220℃に加熱され、蒸気として放出され窒素ガス流(100ml/分)を使用して分離される含水量が、電量カールフィッシャー装置で決定される。
【0066】
本発明の意味における用語「吸水感度(moisture pick-up susceptibility)」は、鉱物フィラーの表面に吸着される水分量を指し、10及び85%の相対湿度の雰囲気にそれぞれ+23℃(±2℃)の温度で2.5時間曝露後の、乾燥処理鉱物フィラー製品のmg水分/gで決定できる。
【0067】
用語「ポリマー組成物」は、ポリマー製品の製造に使用され得る、少なくとも1つの添加剤(例えば、少なくとも1つのフィラー)及び少なくとも1つのポリマー材料を含む複合材料を指す。
【0068】
用語「ポリマーマスターバッチ」(=又は「マスターバッチ」)は、好ましくは少なくとも60重量%又は60重量%に等しい(組成物の全重量に基づいて)、相対的に高フィラー含量を有する組成物に関する。「ポリマーマスターバッチ」は、高フィラー含量を達成するために、加工時に未充填又は低充填ポリマーに添加されてよい。しかしそれでも、相対的に低フィラー含量、好ましくは60重量%未満(組成物の全重量に基づいて)を有し、多くの場合「ポリマー化合物」(=又は「化合物」)とも称される、前に定義されるような「ポリマー組成物」(=又は「組成物」)もまた、ポリマー製品の製造で直接使用されてもよい。
【0069】
したがって、本発明で使用される場合、用語「ポリマー組成物」(=組成物)は、「ポリマーマスターバッチ」及び「ポリマー化合物」の双方を含む。
【0070】
本出願の目的のために、「揮発開始温度」は、後述する熱重量分析にしたがって検出される、粉砕助剤を用いる又は用いない粉砕、浮選助剤又は他の薬剤を用いる又は用いない選鉱、及び上で明確に列挙されていない他の前処理剤を含む一般的な鉱物フィラー作製工程の結果として導入される揮発性物質を含む揮発性物質が発生し始める温度として定義され、温度(x軸)の関数として残留サンプルの質量(y軸)をプロットする熱重量(TGA)曲線で観察され、このような曲線の作成及び解釈は以下で定義される。
【0071】
TGA分析方法は、重量損失及び揮発開始温度に関する情報を高い精度で提供し、一般的な知識であり、例えば、「Principles of Instrumental analysis」、第5版、Skoog、Holler、Nieman、1998年(第1版1992年)第31章、ページ798~800、及び多くの他の一般的に知られている参考文献に記載されている。本発明では、熱重量分析(TGA)は、500+/-50mgのサンプル及び70ml/分の空気流量下にて20℃/分の速度で25~280℃又は25~400℃の走査温度に基づいて、Mettler Toledo TGA 851を使用して実施される。当業者は、以下のようなTGA曲線の分析によって「揮発開始温度」を決定できる:TGA曲線の一時導関数を得て、その150と280℃の間又は25~400℃の変曲点を特定する。水平線に対して45°より大きい接線の傾き値を有する変曲点のうち、200℃超の最も低い関連温度を有するものが特定される。一時導関数曲線のこの最低温度の変曲点に関連する温度の値が、「揮発開始温度」である。フィラーの接触可能な表面積上の表面処理剤の全重量は、105℃~400℃間の重量損失による熱重量分析によって決定できる。
【0072】
本出願の目的のために、鉱物フィラーと関連しかつ25~280℃又は25~400℃の温度範囲にわたって発生する「全揮発性物質」は、熱重量(TGA)曲線上で読み取られる温度範囲にわたる鉱物フィラーサンプルの質量損失%によって特徴づけられる。TGA曲線上で発生した「全揮発性物質」は、Star(登録商標)SW 9.01 ソフトウェアを使用して決定される。このソフトウェアを使用して、元のサンプルに対して%値で重量損失を得るために、曲線は元のサンプル重量に対して最初に正規化される。その後、25~280℃又は25~400℃の温度範囲が選択され、選択した温度範囲にわたる質量損失%を得るために、ステップホリゾンタル(step horizontal)(ドイツ語で「Stufe horizontal」)オプションが選択される。
【0073】
本発明の意味における用語、鉱物フィラーの「比表面積」(m/g)は、当業者に周知である、吸着ガスとして窒素を用いるBET方法を使用して決定される(ISO9277:1995)。鉱物フィラーの全表面積(m)が次に、処理の前に鉱物フィラーの比表面積を質量(g)で乗じることによって得られる。
【0074】
本文献を通して、炭酸カルシウム含有フィラーの「粒径」は、その粒径分布によって記載される。値dは、それに対して粒子のx重量%が、d未満の直径を有する直径を示す。これは、d20値は、その値においてすべての粒子の20重量%がそれより小さい粒径であり、d98値は、その値においてすべての粒子の98重量%がそれより小さい粒径であることを意味する。d98値はまた、「トップカット」としても呼ばれる。d50値はしたがって重量中央粒径であり、すなわちすべての粒子の50重量%は、この粒径より小さい。本発明の目的に関して、特に示されない限り、粒径は重量中央粒径d50として規定される。重量中央粒径d50値又はトップカット粒径d98値を決定するために、米国のMicromeritics社のSedigraph5100又は5120装置を使用できる。方法及び機器は、当業者に既知であり、フィラー及び顔料の粒径を決定するために一般的に使用される。測定は、0.1重量%Naの水溶液中で実施される。サンプルは、高速攪拌機及び超音波を使用して分散される。
【0075】
本発明の目的に関して、液体組成物の「固体含有率」は、すべての溶媒又は水が蒸発した後に残留する材料の量の尺度である。
【0076】
本発明の意味における「懸濁液」又は「スラリー」は、不溶性固体かつ水、及び任意に更なる添加剤を含み、大量の固体を通常は含有し、したがって、それから形成される液体より粘稠であり高密度であり得る。
【0077】
本発明の要旨における「処理層」は、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面上の表面処理剤の層、好ましくは単一層を指す。「処理層」は、表面処理剤として、i.1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、並びに/又はii.少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又はiii.少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物、並びに/又はiv.少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、並びに/又はv.i.~iv.の材料による混合物、を含む。
【0078】
用語「含む(comprising)」が、本説明及び特許請求の範囲に使用される場合、それは、機能的に重要な又はそれほど重要でない他の非明記の要素を排除しない。本発明の目的に関して、用語「からなる(consisting of)」は、用語「を含む(comprising of)」の好ましい実施形態であると見なされる。以下で一群が少なくとも一定数の実施形態を含むと定義される場合、これはまた、好ましくはこれらの実施形態のみからなる、一群を開示すると理解されるべきである。
【0079】
用語「含む(including)」又は「有する(having)」が使用されるときはいつでも、これらの用語が、上で定義されるような「含む(comprising)」と同等であることを意味する。
【0080】
不定冠詞又は定冠詞が使用される場合に単数名詞、例えば、「a」、「an」又は「the」を意味するとき、これは何か他のものが特に記載されない限り、その名詞の複数を含む。
【0081】
「得ることができる(obtainable)」又は「定義できる(definable)」及び「得られる(obtained)」又は「定義される(defined)」のような用語は、互換的に使用される。これは例えば、その文脈に別段の明確な指示がない限り、用語「得られる(obtained)」は、このような限定された理解が好ましい実施形として用語「得られる(obtained)」又は「定義される(defined)」に常に含まれるものの、例えばある実施形態が、例えば、用語「得られる(obtained)」に続く一連の工程によって得られなければならないことを示すと意味しないことを、意味する。
【0082】
本発明の通気性フィルムは、1~10g/mの坪量を有し、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び表面処理フィラー材料製品を含む。表面処理フィラー材料製品は、(A)少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料であって、0.1μm~7μmの範囲の重量中央粒径d50、≦15μmのトップカット粒径d98、窒素及びISO9277にしたがうBET法を使用して測定される、0.5~150m/gの比表面積(BET)、及び少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、≦1重量%の残留全含水率、を有する材料、並びに(B)少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の処理層であって、i.1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、並びに/又はii.少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又はiii.少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物、並びに/又はiv少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、並びに/又はv.i.~iv.による材料の混合物、を含む処理層、を含む。表面処理フィラー材料製品は、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、0.1~3重量%の量で処理層を含む。
【0083】
本発明の以下の詳細及び好ましい実施形態では、製品についてより詳細に述べる。これらの技術的詳細及び実施形態はまた、本発明の上記通気性フィルムを製造するためのプロセス並びに本発明の通気性フィルム及び表面処理フィラー材料製品の使用に適用されると理解すべきである。
【0084】
熱可塑性ポリマー
本発明の1~10g/mの坪量を有する通気性フィルムは、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む。ポリマーが通気性フィルムの作製のために適切である限り、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは特定の材料に制限されないと理解される。当業者は、耐温度性又は弾性回復などの通気性フィルムの所望の特性にしたがって、熱可塑性ポリマーを選択する。
【0085】
語句「少なくとも1つの」熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマーが、1種類以上の熱可塑性ポリマーを含むか、好ましくはそれからなることを意味すると理解される。
【0086】
したがって、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、1種類の熱可塑性ポリマーであってよいことを留意すべきである。あるいは、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、2種類以上の熱可塑性ポリマーの混合物であってよい。例えば、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、2種類の熱可塑性ポリマーのような、2又は3種類の熱可塑性ポリマーの混合物であってよい。
【0087】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、2種類の熱可塑性ポリマーを含むか、好ましくはそれらからなる。
【0088】
あるいは、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、1種類の熱可塑性ポリマーを含むか、好ましくはそれからなる。
【0089】
一実施形態によれば、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーはポリオレフィンである。使用してよいポリオレフィンポリマーは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、及びそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される。
【0090】
一実施形態によれば、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、及びそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される、ポリエチレンである。
【0091】
0.936g/cm~約0.965g/cmの範囲の密度を有するポリエチレンは通常、「高密度ポリエチレン(HDPE)」と称される。
【0092】
0.910g/cm~約0.940g/cmの範囲の密度を有するポリエチレンは通常、「低密度ポリエチレン(LDPE)」と称される。
【0093】
用語「直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)」は、一般的にエチレンと長い鎖のオレフィンの共重合によって生成する、かなりの数の短い分岐を有する、実質的に直鎖のポリマー(ポリエチレン)を指す。直鎖低密度ポリエチレンは、長鎖の分岐がなく、低密度ポリエチレン(LDPE)と構造的に異なる。LLDPEの直鎖性は、LLDPEの異なる製造プロセスからもたらされる。一般的に、LLDPEは、エチレンと1-ブテン、1-ヘキセン、又は1-オクテンなどの高級アルファオレフィンとの共重合によって、低い温度及び圧力で製造される。LLDPEは、通気性フィルム用途のために通常、0.911g/cm~0.940g/cmの範囲、好ましくは0.912g/cm~0.928g/cmの範囲の密度を有する。
【0094】
「極低密度直鎖低密度ポリエチレン(VLDPE)は、一般的にエチレンと1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンなどの短鎖アルファオレフィンとの共重合によって生成される、短鎖分岐を高レベルで有する実質的に直鎖のポリマーである。VLDPEは通常、0.900~0.914g/cmの範囲の密度を有する。
【0095】
「超低密度直鎖状低密度ポリエチレン(ULDPE)は、一般的にエチレンと1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンなどの短鎖アルファオレフィンとの共重合によって生成される、短鎖分岐を高レベルで有する実質的に直鎖のポリマーである。ULDPEは通常、0.860~0.899g/cmの範囲の密度を有する。
【0096】
一実施形態によれば、熱可塑性ポリマーは、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、好ましくは0.912g/cm~0.928g/cmの範囲の密度を有するLLDPEを含む。本発明者らは、上記範囲の密度を有するLLDPEポリマーが、本発明による表面処理フィラー材料製品との組合せで特に、非常に良好なバリア特性及び加工特性を示し得ることを見いだした。熱可塑性ポリマーが直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む場合、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマーの全量に基づいて、80~98重量%のLLDPE、より好ましくは86~94重量%のLLDPE、最も好ましくは約90重量%のLLDPEを含む。
【0097】
一実施形態によれば、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマーの全量に基づいて、2~20重量%のLDPE、より好ましくは6~14重量%のLDPE、及び最も好ましくは約10重量%のLDPEを含む。
【0098】
例えば、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマーの全量に基づいて、80~98重量%のLLDPE、より好ましくは86~94重量%のLLDPE、及び最も好ましくは約90重量%のLLDPE、並びに熱可塑性ポリマーの全量に基づいて、2~20重量%のLDPE、より好ましくは6~14重量%のLDPE、及び最も好ましくは約10重量%のLDPEを含むか、好ましくはそれらからなる。LLDPEとLDPEの量の合計は、熱可塑性ポリマーの全量に基づいて、好ましくは100重量%であると理解される。
【0099】
代替的実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、特定の重量比率でLLDPEかつLDPEを含むか、好ましくはそれらからなる。例えば、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、40:10~45:5、及び最も好ましくは約45:5の重量比[LLDPE:LDPE]でLLDPEかつLDPEを含むか、好ましくはそれらからなり、ここでLLDPEの密度は、0.912g/cm~0.928g/cmであり、LDPEの密度は、0.910g/cm~約0.940g/cmである。
【0100】
別の実施形態によれば、熱可塑性ポリマーは、ポリプロピレン(PP)、好ましくは0.890g/cm~0.910g/cmの範囲の密度を有するPPを含む。熱可塑性ポリマーがポリプロピレン(PP)を含む場合、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマーの全量に基づいて、10~30重量%のPP、より好ましくは15~25重量%のPP、及び最も好ましくは約20重量%のPPを含む。
【0101】
更に又はあるいは、熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン(PE)、好ましくは0.912g/cm~0.928g/cmの範囲の密度を有するPEを含む。例えば、PEは二峰性直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)である。熱可塑性ポリマーがポリエチレン(PE)を含む場合、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマーの全量に基づいて、70~90重量%のPE、より好ましくは75~85重量%のPE、及び最も好ましくは約80重量%のPEを含む。
【0102】
例えば、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマーの全量に基づいて、10~30重量%のPP、より好ましくは15~25重量%のPP、及び最も好ましくは約20重量%のPP、並びに熱可塑性ポリマーの全量に基づいて、70~90重量%のPE、より好ましくは75~85重量%のPE、及び最も好ましくは約80重量%のPEを含むか、好ましくはそれらからなる。PP及びPEの量の合計は、熱可塑性ポリマーの全量に基づいて、好ましくは100重量%であると理解される。
【0103】
あるいは、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、0.890g/cm~0.910g/cmの範囲の密度を有するポリプロピレン(PP)を含むか、好ましくはそれからなる。
【0104】
別の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、特定の重量比率でポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)を含むか、好ましくはそれらからなる。例えば、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、40:10~45:5、及び最も好ましくは約40:10の重量比[PE:PP]でポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)を含むか、好ましくはそれらからなり、ここでポリエチレン(PE)の密度は、0.912g/cm~0.928g/cmであり、ポリプロピレン(PP)の密度は、0.890g/cm~0.910g/cmである。
【0105】
本発明の一実施形態によれば、ISO 1133(190℃、2.16kg)にしたがって決定される少なくとも1つの熱可塑性ポリマーのメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01~20、及びより好ましくは0.1~10g/10分である。
【0106】
通気性フィルムは、通気性フィルムの全重量に基づいて、少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、及び最も好ましくは少なくとも40重量%、例えば、約50重量%の量で少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含んでよい。一実施形態によれば、通気性フィルムは、通気性フィルムの全重量に基づいて、15~70重量%、好ましくは20~70重量%、より好ましくは30~65重量%、及び最も好ましくは40~60重量%の量で少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む。
【0107】
表面処理フィラー材料製品
本発明の通気性フィルムはまた、表面処理フィラー材料製品も含み、表面処理フィラー材料製品は、いくつかの本質的な特徴を有する少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料を含み、これは、請求項1に定義され、以下でより詳細に記載される。
【0108】
本発明の意味における少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料は、天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)、沈降炭酸カルシウム(PCC)、改質炭酸カルシウム(MCC)、表面処理炭酸カルシウム、又はそれらの混合物から選択されるフィラー材料を指す。好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料は、天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)であり、より好ましくは粉砕炭酸カルシウム含有フィラーは、湿式粉砕天然粉砕炭酸カルシウムである。
【0109】
GCCは、石灰岩若しくはチョークなどの堆積岩から又は変成大理石岩(metamorphic marble rocks)から採掘され、並びに例えばサイクロン又は分級機による、湿式形態での粉砕、ふるい分け及び/若しくは分画などの処理を通して加工される、天然に生じる形態の炭酸カルシウムであると理解される。本発明の一実施形態では、GCCは、大理石、チョーク、ドロマイト、石灰岩及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0110】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、水性環境中での二酸化炭素と石灰の反応に続く沈降により、又は水中のカルシウムと炭酸イオン源の沈降により、又は溶液からのカルシウムと炭酸イオン、例えばCaClとNaC0の沈降によって一般的に得られる、合成材料である。PCCを製造する更なる可能な方法は、石灰ソーダ法、又はPCCがアンモニア製造の副生成物であるソルベー法である。沈降炭酸カルシウムは、3つの主要な結晶形態:カルサイト、アラゴナイト及びバテライトで存在し、これらの結晶形態のそれぞれに対して多くの異なる多形体(晶癖)が存在する。カルサイトは、偏三角面体(S-PCC)、菱面体(R-PCC)、六方晶柱状、コロイド状(C-PCC)、立方晶、及び柱状(P-PCC)などの一般的な晶癖を有する三方晶系構造を有する。アラゴナイトは、双晶の六方晶柱状結晶、並びに薄く細長い柱状、曲線の刀状、急こう配の錐状、チゼル状結晶、枝分かれした木、及びサンゴ又は蠕虫様形状のさまざまなとりあわせの一般的な晶癖を有する直方晶構造である。バテライトは、六方晶結晶系に属する。得られたPCCスラリーは、機械的に脱水及び乾燥できる。
【0111】
改質炭酸カルシウムは、内部構造改質若しくは表面反応GCC又はPCCを有するGCC又はPCCを特徴とし得る。表面反応炭酸カルシウムは、水性懸濁液の形態でGCC又はPCCを提供すること、及び上記懸濁液に酸を添加することによって作製されてよい。適切な酸は、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、又はそれらの混合物である。次の工程では、炭酸カルシウムは、ガス状二酸化炭素で処理される。硫酸又は塩酸などの強酸が酸処理工程のために使用される場合、二酸化炭素がその場で自動的に生成する。あるいは又は更に、二酸化炭素を、外部源から供給できる。表面反応炭酸カルシウムは、例えば、US 2012/0031576 A1、WO 2009/074492 Α1、ΕΡ 2 264 109 A1、EP 2 070 991 A1、又はEP 2 264 108 A1に記載されている。
【0112】
好ましい一実施形態では、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料は、大理石、より好ましくは湿式粉砕大理石である。
【0113】
少なくとも1つの炭酸カルシウム含有フィラー材料内における粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウムの量は、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、少なくとも80重量%、例えば、少なくとも95重量%、好ましくは97と100重量%の間、より好ましくは98.5と99.95重量%の間であると理解される。
【0114】
少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、好ましくは粒子状材料の形態であり、製造される製品の種類に含まれる材料に従来用いられるような粒度分布を有してよい。一般的には、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料が0.1~7μmの範囲で重量中央粒径d50値を有することは、本発明における特定の必要条件の1つである。例えば、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、0.25μm~5μm、好ましくは0.5μm~4μm及び最も好ましくは0.6μm~1μmの重量中央粒径d50を有する。
【0115】
本発明の更なる必要条件は、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料が≦15μmのトップカット(d98)を有することである。例えば、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、≦12.5μm、好ましくは≦10μm、より好ましくは≦7.5μm及び最も好ましくは≦3μmのトップカット(d98)を有する。
【0116】
少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の重量中央粒径d50値及びトップカット(d98)は特定の比率を満たすと理解される。例えば、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、0.1~0.4、好ましくは0.1~0.3及び最も好ましくは0.15~0.25の重量中央粒径d50値とトップカット(d98)の比率[d50/d98]を有する。
【0117】
更に又はあるいは、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、すべての粒子の少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも70重量%、更により好ましくは少なくとも75重量%及び最も好ましくは少なくとも80重量%が、<1μmの粒径を有するような細かさを有する。
【0118】
一実施形態では、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、すべての粒子の少なくとも10重量%、好ましくは10~70重量%、更により好ましくは10~60重量%及び最も好ましくは10~50重量%が、<0.5μmの粒径を有するような細かさを有する。例えば、すべての粒子の10~15重量%は、<0.5μmの粒径を有する。あるいは、すべての粒子の30~45重量%は、<0.5μmの粒径を有する。
【0119】
少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料が微細粒子を多量に含む場合、特に有利である。好ましくは、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、すべての粒子の少なくとも80重量%が<1μmの粒径を有しかつすべての粒子の30~45重量%が<0.5μmの粒径を有するような細かさを有する。
【0120】
一実施形態では、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、
i)0.25μm~5μm、好ましくは0.5μm~4μm及び最も好ましくは0.6μm~1μmの重量中央粒径d50、並びに
ii)≦12.5μm、好ましくは≦10μm、より好ましくは≦7.5μm及び最も好ましくは≦3μmのトップカット(d98)、並びに
iii)すべての粒子の少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも70重量%、更により好ましくは少なくとも75重量%及び最も好ましくは少なくとも80重量%が<1μmの粒径を有するような細かさ、
を有する。
【0121】
例えば、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、
i)0.6μm~1μmの重量中央粒径d50、並びに
ii)≦3μmのトップカット(d98)、並びに
iii)すべての粒子の少なくとも80重量%が、<1μmの粒径を有するような細かさ、を有する。
【0122】
少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、窒素及びISO9277にしたがうBET法を使用して測定される、0.5~150m/gのBET比表面積を有すると更に理解される。例えば、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、窒素及びISO9277にしたがうBET法を使用して測定される、0.5~50m/g、より好ましくは0.5~35m/g及び最も好ましくは0.5~15m/gの比表面積(BET)を有する。
【0123】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、好ましくは、0.1μm~7μm、好ましくは0.25μm~5μm、より好ましくは0.5μm~4μm及び最も好ましくは0.6μm~1μmの中央粒径直径d50値を有する大理石である。この場合、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、窒素及びISO9277にしたがうBET方法を使用して測定される、0.5~150m/g、好ましくは0.5~50m/g、より好ましくは0.5~35m/g及び最も好ましくは0.5~15m/gのBET比表面積を示す。
【0124】
好ましい実施形態では、粉砕炭酸カルシウム含有フィラーは、湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラーである。しかし、乾燥粉砕炭酸カルシウム含有フィラーを使用してもよい。
【0125】
湿式粉砕工程は、自生粉砕が生じるような条件下で、並びに/又は水平型ボールミリングにより、及び/若しくは当業者に既知の他のこのようなプロセスによって、実施されてよい。こうして得られた加工済み粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料は、乾燥の前に、周知のプロセス、例えば、凝集、ろ過又は強制蒸発によって洗浄及び脱水されてよい。後続の乾燥工程は、噴霧乾燥などの単一の工程で、又は少なくとも2つの工程で、例えば湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料に第1の加熱工程を適用することによって、実施されてよく、少なくとも1つの湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、約0.5重量%以下のレベルに関連する含水率を低下させる。フィラーの残留全含水率はカールフィッシャー電量滴定法によって測定されてよく、195℃のオーブンで水分を脱着し10分間100ml/分で乾燥Nを使用してそれをKF電量計(Mettler oven DO 0337と組み合わされたMettler Toledo Coulometric KF Titrator C30)中に連続的に通過させる。残留全含水率は検量線を用いて決定でき、またサンプルを含まない10分のガスフローのブラインドも考慮できる。残留全含水率は、少なくとも1つの湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料に第2の加熱工程を適用することによって、更に低減されてよい。上記乾燥が2つ以上の乾燥工程によって実施される場合、第1の工程は熱い気流中での加熱によって実施されてよく、一方、第2及び更なる乾燥工程は間接的な加熱によって好ましくは実施され、そこでは相当する容器中の雰囲気は表面処理剤を含む。少なくとも1つの湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料を、選鉱工程(浮遊選鉱、漂白又は磁気分離工程など)にかけて不純物を除去することもまた一般的である。
【0126】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料は、水平型ボールミル中で粉砕され、続いて周知の噴霧乾燥プロセスを使用して乾燥される材料である。
【0127】
本発明によれば、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料は、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、≦1重量%の残留含水率を有する。少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料に応じて、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料は、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、0.01~1重量%、好ましくは0.01~0.2重量%、より好ましくは0.02~0.15重量%及び最も好ましくは0.04~0.15重量%の残留全含水率を有する。
【0128】
例えば、粉砕(特に湿式粉砕)及び噴霧乾燥大理石が、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料として使用される場合、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の残留全含水率は、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、好ましくは0.01~0.1重量%、より好ましくは0.02~0.08重量%及び最も好ましくは0.04~0.07重量%である。PCCが、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料として使用される場合、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の残留全含水率は、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、好ましくは0.01~0.2重量%、より好ましくは0.05~0.17重量%及び最も好ましくは0.05~0.10重量%である。
【0129】
本発明によれば、表面処理フィラー材料製品は、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面に処理層を更に含む。
【0130】
処理層は、
i)1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、並びに/又は
ii)少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又は
iii)少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物、並びに/又は
iv)少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、並びに/又は
v)i.~iv.による材料の混合物、
を含む。
【0131】
本発明の一実施形態によれば、表面処理フィラー材料製品は、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の少なくとも一部の表面に処理層を含み、ここで処理層は、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/又は1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。
【0132】
本発明の意味における用語「リン酸モノエステル」は、アルコール置換基中にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する不飽和又は飽和、分岐鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族アルコールから選択される1つのアルコール分子でモノエステル化されたo-リン酸分子を指す。
【0133】
本発明の意味における用語「リン酸ジエステル」は、アルコール置換基中にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する同一の又は異なる、不飽和又は飽和、分岐鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族アルコールから選択される2つのアルコール分子でジエステル化されたo-リン酸分子を指す。
【0134】
本発明の意味における用語「1つ以上のリン酸モノエステル及び/又は1つ以上のリン酸ジエステルにおけるリン酸エステルブレンドの塩反応生成物」は、炭酸カルシウム含有フィラー材料を1つ以上のリン酸モノエステル及び1つ以上のリン酸ジエステル並びに任意にリン酸と接触させることによって得られる生成物を指す。上記塩反応生成物は、適用される1つ以上のリン酸モノエステル及び1つ以上のリン酸ジエステル並びに任意にリン酸とフィラー材料、好ましくは少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面に位置する反応性分子の間で生成される。
【0135】
リン酸のアルキルエステルは、特に界面活性剤、潤滑剤及び帯電防止剤として産業において周知である(Die Tenside;Kosswig und Stache、Carl Hanser Verlag Munchen、1993年)。
【0136】
異なる方法によるリン酸のアルキルエステルの合成及びリン酸アルキルエステルでの鉱物の表面処理は、当業者に周知であり、例えば、Pesticide formulations and Application Systems:第15巻;Collins HM,Hall FR,Hopkinson M,STP1268;1996年、US 3,897,519 A、US 4,921,990 A、US 4,350,645 A、US 6,710,199 B2、US 4,126,650 A、US 5,554,781 A、EP 1092000 Bl及びWO 2008/023076 A1からである。
【0137】
語句「1つ以上の」リン酸モノエステルは、1種類以上のリン酸モノエステルがリン酸エステルブレンド中に存在してよいことを意味すると理解される。
【0138】
したがって、1つ以上のリン酸モノエステルは、1種類のリン酸モノエステルであってよいことを留意すべきである。あるいは、1つ以上のリン酸モノエステルは、2種類以上のリン酸モノエステルの混合物であってよい。例えば、1つ以上のリン酸モノエステルは、2種類のリン酸モノエステルのような、2又は3種類のリン酸モノエステルの混合物であってよい。
【0139】
本発明の一実施形態では、1つ以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中にC6~C30の炭素原子の全量を有する不飽和又は飽和、分岐鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1つ以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中にC8~C22、より好ましくはC8~C20及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する不飽和又は飽和、分岐鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0140】
本発明一実施形態では、1つ以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中にC6~C30の炭素原子の全量を有する飽和及び直鎖又は分岐鎖並びに脂肪族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1つ以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中にC8~C22、より好ましくはC8~C20及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する飽和及び直鎖又は分岐鎖並びに脂肪族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0141】
本発明の一実施形態では、1つ以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する飽和及び直鎖並びに脂肪族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。あるいは、1つ以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する飽和及び分岐鎖並びに脂肪族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0142】
本発明の一実施形態では、1つ以上のリン酸モノエステルは、ヘキシルリン酸モノエステル、ヘプチルリン酸モノエステル、オクチルリン酸モノエステル、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ノニルリン酸モノエステル、デシルリン酸モノエステル、ウンデシルリン酸モノエステル、ドデシルリン酸モノエステル、テトラデシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0143】
例えば、1つ以上のリン酸モノエステルは、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。本発明の一実施形態では、1つ以上のリン酸モノエステルは、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステルである。
【0144】
語句「1つ以上の」リン酸ジエステルは、1種類以上のリン酸ジエステルが、表面処理材料製品及び/又はリン酸エステルブレンドの処理層に存在してよいことを意味すると理解される。
【0145】
したがって、1つ以上のリン酸ジエステルは、1種類のリン酸ジエステルであってよいことを留意すべきである。あるいは、1つ以上のリン酸ジエステルは、2種類以上のリン酸ジエステルの混合物であってよい。例えば、1つ以上のリン酸ジエステルは、2種類のリン酸ジエステルのような、2又は3種類のリン酸ジエステルの混合物であってよい。
【0146】
本発明の一実施形態では、1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC6~C30の炭素原子の全量を有する不飽和又は飽和、分岐鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族アルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC8~C22、より好ましくはC8~C20及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する不飽和又は飽和、分岐鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族アルコールから選択される2つの脂肪族アルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0147】
リン酸をエステル化するために使用される2つのアルコールは、アルコール置換基中にC6~C30の炭素原子の全量を有する同一の又は異なる、不飽和又は飽和、分岐鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族アルコールから独立に選択されてよいと理解される。換言すれば、1つ以上のリン酸ジエステルは同一のアルコールに由来する2つの置換基を含んでよく、又はリン酸ジエステル分子は異なるアルコールに由来する2つの置換基を含んでよい。
【0148】
本発明一実施形態では、1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC6~C30の炭素原子の全量を有する同一の又は異なる、飽和及び直鎖又は分岐鎖並びに脂肪族アルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC8~C22、より好ましくはC8~C20及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する同一の又は異なる、飽和及び直鎖又は分岐鎖並びに脂肪族アルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0149】
本発明の一実施形態では、1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する同一の又は異なる、飽和及び直鎖並びに脂肪族アルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。あるいは、1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する同一の又は異なる、飽和及び分岐鎖並びに脂肪族アルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0150】
本発明一実施形態では、1つ以上のリン酸ジエステルは、ヘキシルリン酸ジエステル、ヘプチルリン酸ジエステル、オクチルリン酸ジエステル、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ノニルリン酸ジエステル、デシルリン酸ジエステル、ウンデシルリン酸ジエステル、ドデシルリン酸ジエステル、テトラデシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0151】
例えば、1つ以上のリン酸ジエステルは、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。本発明の一実施形態では、1つ以上のリン酸ジエステルは、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステルである。
【0152】
本発明の一実施形態では、1つ以上のリン酸モノエステルは、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステル及びそれらの混合物を含む群から選択され、1つ以上のリン酸ジエステルは、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0153】
例えば、炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部は、1つのリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに1つのリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。この場合、1つのリン酸モノエステルは、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル及び2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステルを含む群から選択され、1つのリン酸ジエステルは、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル及び2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステルを含む群から選択される。
【0154】
少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部が1つのリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに1つのリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む場合、1つのリン酸モノエステル及び1つのリン酸ジエステルのアルコール置換基は、好ましくは同一であると理解される。例えば、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部は、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに2-エチルヘキシルリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。あるいは、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部は、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。あるいは、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部は、ヘキサデシルリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びにヘキサデシルリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。あるいは、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部は、オクタデシルリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びにオクタデシルリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。あるいは、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部は、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。
【0155】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部は、2つ以上のリン酸モノエステル及びそれらの塩反応生成物並びに2つ以上のリン酸ジエステル及びそれらの塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。この場合、2つ以上のリン酸モノエステルは、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル及び2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステルを含む群から選択され、2つ以上のリン酸ジエステルは、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル及び2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステルを含む群から選択される。
【0156】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部は、2つのリン酸モノエステル及びそれらの塩反応生成物並びに2つのリン酸ジエステル及びそれらの塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。例えば、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部は、ヘキサデシルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル及びそれらの塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。
【0157】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部上のリン酸エステルブレンドは、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物対1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物を特定のモル比で含む。特に処理層及び/又はリン酸エステルブレンドにおける、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物対1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のモル比は、1:1~1:100であってよい。
【0158】
本発明の意味における表現「1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物対1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のモル比」は、リン酸モノエステル分子の分子量の合計及びその塩反応生成物中のリン酸モノエステル分子の分子量の合計対リン酸ジエステル分子の分子量の合計及びその塩反応生成物中のリン酸ジエステル分子の分子量の合計を指す。
【0159】
一実施形態によれば、リン酸エステルブレンド中の1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物対1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のモル比は、1:1~1:100、好ましくは1:1.1~1:80、より好ましくは1:1.1~1:60、更により好ましくは1:1.1~1:40、なお更により好ましくは1:1.1~1:20、及び最も好ましくは1:1.1~1:10である。
【0160】
更に又はあるいは、処理層のリン酸エステルブレンドは、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のモル合計に基づいて、1~50モル%の量で1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物を含む。例えば、処理層のリン酸エステルブレンドは、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のモル合計に基づいて、10~45モル%の量で1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物を含む。
【0161】
本発明の一実施形態によれば、
I)1つ以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する不飽和若しくは飽和、分岐鎖若しくは直鎖、脂肪族若しくは芳香族アルコールから選択される1つのアルコール分子でモノエステル化されたo-リン酸分子からなり、並びに/又は
II)1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する同一の又は異なる、不飽和又は飽和、分岐鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族脂肪族アルコールから選択される2つのアルコール分子でジエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0162】
本発明の一実施形態では、処理層のリン酸エステルブレンドは、1つ以上のリン酸トリエステル並びに/又はリン酸及びその塩反応生成物を更に含む。
【0163】
本発明の意味における用語「リン酸トリエステル」は、アルコール置換基中にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する同一の又は異なる、不飽和又は飽和、分岐鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族アルコールから選択される3つのアルコール分子でトリエステル化されたo-リン酸分子を指す。
【0164】
語句「1つ以上の」リン酸トリエステルは、1種類以上のリン酸トリエステルが、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部上に存在してよいことを意味すると理解される。
【0165】
したがって、1つ以上のリン酸トリエステルは、1種類のリン酸トリエステルであってよいことを留意すべきである。あるいは、1つ以上のリン酸トリエステルは、2種類以上のリン酸トリエステルの混合物であってよい。例えば、1つ以上のリン酸トリエステルは、2種類のリン酸トリエステルのような、2又は3種類のリン酸トリエステルの混合物であってよい。
【0166】
本発明の一実施形態では、1つ以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中にC6~C30の炭素原子の全量を有する同一の又は異なる、不飽和又は飽和、分岐鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族アルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1つ以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中にC8~C22、より好ましくはC8~C20及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する同一の又は異なる、不飽和又は飽和、分岐鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族脂肪族アルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0167】
リン酸をエステル化するために使用される3つのアルコールは、アルコール置換基中にC6~C30の炭素原子の全量を有する不飽和又は飽和、分岐鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族アルコールから独立に選択されてよいと理解される。換言すれば、1つ以上のリン酸トリエステル分子は、同一のアルコールに由来する3つの置換基を含んでよく、又はリン酸トリエステル分子は、異なるアルコールに由来する3つの置換基を含んでよい。
【0168】
本発明の一実施形態では、1つ以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中にC6~C30の炭素原子の全量を有する同一の又は異なる、飽和及び直鎖又は分岐鎖並びに脂肪族アルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1つ以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中にC8~C22、より好ましくはC8~C20及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する同一の又は異なる、飽和及び直鎖又は分岐鎖並びに脂肪族アルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0169】
本発明の一実施形態では、1つ以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する飽和及び直鎖並びに脂肪族アルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。あるいは、1つ以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20及び最も好ましくはC8~C18の炭素原子の全量を有する飽和及び分岐鎖並びに脂肪族アルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0170】
本発明の一実施形態では、1つ以上のリン酸トリエステルは、ヘキシルリン酸トリエステル、ヘプチルリン酸トリエステル、オクチルリン酸トリエステル、2-エチルヘキシルリン酸トリエステル、ノニルリン酸トリエステル、デシルリン酸トリエステル、ウンデシルリン酸トリエステル、ドデシルリン酸トリエステル、テトラデシルリン酸トリエステル、ヘキサデシルリン酸トリエステル、ヘプチルノニルリン酸トリエステル、オクタデシルリン酸トリエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸トリエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸トリエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0171】
例えば、1つ以上のリン酸トリエステルは、2-エチルヘキシルリン酸トリエステル、ヘキサデシルリン酸トリエステル、ヘプチルノニルリン酸トリエステル、オクタデシルリン酸トリエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸トリエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸トリエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0172】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部は、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸トリエステル並びに任意にリン酸及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。例えば、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部は、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸トリエステル並びにリン酸及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。
【0173】
あるいは、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部は、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物並びに任意にリン酸及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。例えば、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部は、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物並びにリン酸及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。
【0174】
少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部が1つ以上のリン酸トリエステルを含むリン酸エステルブレンドを含む場合、リン酸エステルブレンドが、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸トリエステル並びにリン酸及びその塩反応生成物のモル合計に基づいて、≦10モル%の量で1つ以上のリン酸トリエステルを含むことが好ましい。例えば、リン酸エステルブレンドは、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸トリエステル並びにリン酸及びその塩反応生成物のモル合計に基づいて、≦8モル%、好ましくは≦6モル%、より好ましくは0.1~4モル%のように≦4モル%の量で1つ以上のリン酸トリエステルを含む。
【0175】
更に又はあるいは、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部がリン酸及びその塩反応生成物を含むリン酸エステルブレンドを含む場合、リン酸エステルブレンドは、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸トリエステル並びにリン酸及びその塩反応生成物のモル合計に基づいて、≦10モル%の量でリン酸及びその塩反応生成物を含むことが好ましい。例えば、リン酸エステルブレンドは、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸トリエステル並びにリン酸及びその塩反応生成物のモル合計に基づいて、≦8モル%、好ましくは≦6モル%、及びより好ましくは0.1~4モル%のように≦4モル%の量でリン酸及びその塩反応生成物を含む。
【0176】
リン酸エステルブレンドがリン酸及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸トリエステルを更に含む場合、リン酸エステルブレンド中の、リン酸及びその塩反応生成物対1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物対1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物対1つ以上のリン酸トリエステルのモル比は、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物並びに1つ以上のリン酸トリエステル並びにリン酸及びその塩反応生成物のモル合計に基づいて、≦10モル%:≦40モル%:≧40モル%:≦10モル%であることがしたがって好ましい。
【0177】
本発明の意味における表現「リン酸及びその塩反応生成物対1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物対1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物対1つ以上のリン酸トリエステルのモル比」は、リン酸の分子量の合計及びその塩反応生成物中のリン酸分子の分子量の合計対リン酸モノエステル分子の分子量の合計及びその塩反応生成物中のリン酸モノエステル分子の分子量の合計対リン酸ジエステル分子の分子量の合計及びその塩反応生成物中のリン酸ジエステル分子の分子量の合計対リン酸トリエステル分子の分子量の合計を指す。
【0178】
リン酸エステルブレンドは、少なくとも1つのフィラー材料、好ましくは少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料を1つ以上のリン酸モノエステル及び1つ以上のリン酸ジエステル並びに任意にリン酸と接触させることから得られる塩反応生成物を含んでよいと理解される。このような場合、リン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1つ以上のカルシウム、マグネシウム及び/又はアルミニウム塩並びにリン酸ジエステルの1つ以上のカルシウム、マグネシウム及び/又はアルミニウム塩並びに任意にリン酸の1つ以上のカルシウム、マグネシウム及び/並びにアルミニウム塩などの塩反応生成物を好ましくは含む。好ましくは、リン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1つ以上のカルシウム及び/又はマグネシウム塩並びにリン酸ジエステルの1つ以上のカルシウム及び/又はマグネシウム塩並びに任意にリン酸の1つ以上のカルシウム及び/又はマグネシウム塩などの塩反応生成物を含む。
【0179】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つのフィラー材料、好ましくは少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料が作製される前に、1つ以上のリン酸モノエステル及び/又は1つ以上のリン酸ジエステル並びに任意にリン酸は、一価及び/若しくは二価及び/若しくは三価のカチオンの1つ以上の水酸化物並びに/又は一価及び/若しくは二価及び/若しくは三価のカチオンの弱酸の1つ以上の塩によって、少なくとも部分的に中和されてよい。1つ以上の二価及び/又は三価のカチオンの水酸化物は、Ca(OH)、Mg(OH)、Al(OH)及びそれらの混合物から選択されてよい。
【0180】
更に又はあるいは、1つ以上のリン酸モノエステル及び/又は1つ以上のリン酸ジエステル並びに任意にリン酸が一価のカチオンにおける1つ以上の水酸化物及び/又は弱酸の1つ以上の塩によって少なくとも部分的に中和される場合、一価のカチオンの量は、1つ以上のリン酸モノエステル及び1つ以上のリン酸ジエステル並びに任意にリン酸の酸性基のモル合計に基づいて、好ましくは≦10モル%であり、中和する一価のカチオンの1つ以上の水酸化物及び/又は弱酸の1つ以上の塩は、LiOH、NaOH、KOH、NaC0、LiC0、KC0及びそれらの混合物から選択されてよい。
【0181】
本発明の一実施形態では、1つ以上のリン酸モノエステル及び/又は1つ以上のリン酸ジエステル並びに任意にリン酸の部分的中和のために使用される二価のカチオンは、このようなカチオンの弱酸塩に、好ましくは炭酸カルシウムなどの炭酸塩/又はホウ酸塩に由来する。
【0182】
本出願の意味における用語「弱酸」は、>2、好ましくは4~7のpKaを特徴とする、ブレンステッド-ローリー酸、すなわちHイオン提供源を指す。
【0183】
したがって、処理層のリン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1つ以上のカルシウム及び/又はマグネシウム塩並びにリン酸ジエステルの1つ以上のカルシウム及び/又はマグネシウム塩並びに任意にリン酸の1つ以上のカルシウム及び/又はマグネシウム塩などの塩反応生成物を更に含んでよい。更に又はあるいは、処理層のリン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1つ以上のアルミニウム塩及びリン酸ジエステルの1つ以上のアルミニウム塩並びに任意にリン酸における1つ以上のアルミニウム塩などの塩反応生成物を更に含む。更に又はあるいは、処理層のリン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1つ以上のリチウム塩及びリン酸ジエステルの1つ以上のリチウム塩並びに任意にリン酸における1つ以上のリチウム塩などの塩反応生成物を更に含む。更に又はあるいは、処理層のリン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1つ以上のナトリウム塩及びリン酸ジエステルの1つ以上のナトリウム塩並びに任意にリン酸における1つ以上のナトリウム塩などの塩反応生成物を更に含む。更に又はあるいは、処理層のリン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1つ以上のカリウム塩及びリン酸ジエステルの1つ以上のカリウム塩並びに任意にリン酸における1つ以上のカリウム塩などの塩反応生成物を更に含む。
【0184】
1つ以上のリン酸モノエステル及び/又は1つ以上のリン酸ジエステル並びに任意にリン酸が一価のカチオンにおける1つ以上の水酸化物及び/又は弱酸の1つ以上の塩によって少なくとも部分的に中和される場合、処理層及び/又はリン酸エステルブレンドは、好ましくは1つ以上のリン酸モノエステル及び1つ以上のリン酸ジエステル並びに任意にリン酸中の酸性基のモル合計に基づいて、≦10モル%の一価のカチオンの量を含む。
【0185】
本発明の一実施形態では、処理層のリン酸エステルブレンドは、本発明の1つ以上のリン酸モノエステル、1つ以上のリン酸ジエステル及び任意に1つ以上のリン酸トリエステル並びに/又はリン酸に相当しない、追加の表面処理剤を更に含んでよい。
【0186】
一実施形態では、1つ以上のリン酸モノエステル及び/又は1つ以上のリン酸ジエステル対それらの塩反応生成物のモル比は、99.9:0.1~0.1:99.9、好ましくは70:30~90:10である。
【0187】
本発明の意味における表現「1つ以上のリン酸モノエステル及び/又は1つ以上のリン酸ジエステル対それらの塩反応生成物のモル比」は、リン酸モノエステル分子の分子量の合計及び/又はリン酸ジエステル分子の分子量の合計対その塩反応生成物中のリン酸モノエステル分子の分子量の合計及び/又はリン酸ジエステル分子の塩反応生成物における合計を指す。
【0188】
本発明の別の実施形態によれば、表面処理フィラー材料製品は、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部上に処理層を含み、ここで処理層は、少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸若しくはその塩反応生成物又は少なくとも1つのポリジアルキルシロキサンを含む。
【0189】
コーティング用の少なくとも1つのリン酸エステルブレンド及び適切な化合物で処理された表面処理フィラー材料製品を作製するための方法は、例えば、EP 2 770 017 A1に記載され、それはしたがって参考により本明細書とともに組み込まれる。
【0190】
代替的実施形態では、処理層は、C4~C24の炭素原子及び/又はその反応生成物の全量を有する脂肪族カルボン酸を含む。
【0191】
本発明の意味における用語、脂肪族直鎖又は分岐鎖カルボン酸の「塩反応生成物」は、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料を少なくとも1つの脂肪族直鎖又は分岐鎖カルボン酸と接触させることによって得られる生成物を指す。上記反応生成物は、適用される少なくとも1つの脂肪族直鎖又は分岐鎖カルボン酸の少なくとも一部と少なくとも1つのフィラー材料、好ましくは少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面に位置する反応性分子との間で生成される。
【0192】
本発明の意味における脂肪族カルボン酸は、1つ以上の直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和及び/又は脂環式カルボン酸から選択されてよい。好ましくは、脂肪族カルボン酸はモノカルボン酸であり、すなわち単一のカルボキシル基が存在することを特徴とする脂肪族カルボン酸である。上記カルボキシル基は、炭素骨格の最後に位置する。
【0193】
本発明の一実施形態では、脂肪族直鎖又は分岐鎖カルボン酸は、飽和非分岐鎖カルボン酸から選択され、すなわち、脂肪族カルボン酸は好ましくは、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸及びそれらの混合物からなるカルボン酸の群から選択される。
【0194】
本発明の別の実施形態では、脂肪族直鎖又は分岐鎖カルボン酸は、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、脂肪族直鎖又は分岐鎖カルボン酸は、オクタン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0195】
例えば、脂肪族直鎖又は分岐鎖カルボン酸は、オクタン酸又はステアリン酸である。好ましくは、脂肪族直鎖又は分岐鎖カルボン酸は、ステアリン酸である。
【0196】
一実施形態では、少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖又は分岐鎖カルボン酸対その塩反応生成物のモル比は、99.9:0.1~0.1:99.9、好ましくは70:30~90:10である。
【0197】
本発明の意味における表現「少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖又は分岐鎖カルボン酸対その塩反応生成物のモル比」は、飽和脂肪族直鎖又は分岐鎖カルボン酸の分子量の合計対その塩反応生成物中の飽和脂肪族直鎖又は分岐鎖カルボン酸の分子量の合計を指す。
【0198】
本発明の別の実施形態によれば、表面処理フィラー材料は、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部上に処理層を含み、ここで処理層は、少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物を含む。
【0199】
この関連で、少なくとも1つの脂肪族アルデヒドは、表面処理剤を示し、任意の直鎖、分岐鎖又は脂環式、置換又は非置換、飽和又は不飽和脂肪族アルデヒドから選択されてよい。上記アルデヒドは、炭素原子の数が6以上及びより好ましくは8以上であるように好ましくは選択される。更に、上記アルデヒドは、一般的に14以下、好ましくは12以下及びより好ましくは10以下の炭素原子の数を有する。好ましい一実施形態では、脂肪族アルデヒドの炭素原子の数は、6と14の間、好ましくは6と12の間及びより好ましくは6と10の間である。
【0200】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの脂肪族アルデヒドは、炭素原子の数が6と12の間、より好ましくは6と9の間、及び最も好ましくは8又は9であるように好ましくは選択される。
【0201】
脂肪族アルデヒドは、ヘキサナール、(E)-2-ヘキサナール、(Z)-2-ヘキサナール、(E)-3-ヘキサナール、(Z)-3-ヘキサナール、(E)-4-ヘキサナール、(Z)-4-ヘキサナール、5-ヘキサナール、ヘプタナール、(E)-2-ヘプテナール、(Z)-2-ヘプテナール、(E)-3-ヘプテナール、(Z)-3-ヘプテナール、(E)-4-ヘプテナール、(Z)-4-ヘプテナール、(E)-5-ヘプテナール、(Z)-5-ヘプテナール、6-ヘプテナール、オクタナール、(E)-2-オクテナール、(Z)-2-オクテナール、(E)-3-オクテナール、(Z)-3-オクテナール、(E)-4-オクテナール、(Z)-4-オクテナール、(E)-5-オクテナール、(Z)-5-オクテナール、(E)-6-オクテナール、(Z)-6-オクテナール、7-オクテナール、ノナナール、(E)-2-ノネナール、(Z)-2-ノネナール、(E)-3-ノネナール、(Z)-3-ノネナール、(E)-4-ノネナール、(Z)-4-ノネナール、(E)-5-ノネナール、(Z)-5-ノネナール、(E)-6-ノネナール、(Z)-6-ノネナール、(E)-6-ノネナール、(Z)-6-ノネナール、(E)-7-ノネナール、(Z)-7-ノネナール、8-ノネナール、(E)-2-デセナール、(Z)-2-デセナール、(E)-3-デセナール、(Z)-3-デセナール、(E)-4-デセナール、(Z)-4-デセナール、(E)-5-デセナール、(Z)-5-デセナール、(E)-6-デセナール、(Z)-6-デセナール、(E)-7-デセナール、(Z)-7-デセナール、(E)-8-デセナール、(Z)-8-デセナール、9-デセナール、ウンデカナール、(E)-2-ウンデセナール、(Z)-2-ウンデセナール、(E)-3-ウンデセナール、(Z)-3-ウンデセナール、(E)-4-ウンデセナール、(Z)-4-ウンデセナール、(E)-5-ウンデセナール、(Z)-5-ウンデセナール、(E)-6-ウンデセナール、(Z)-6-ウンデセナール、(E)-7-ウンデセナール、(Z)-7-ウンデセナール、(E)-8-ウンデセナール、(Z)-8-ウンデセナール、(E)-9-ウンデセナール、(Z)-9-ウンデセナール、10-ウンデセナール、ドデカナール、(E)-2-ドデセナール、(Z)-2-ドデセナール、(E)-3-ドデセナール、(Z)-3-ドデセナール、(E)-4-ドデセナール、(Z)-4-ドデセナール、(E)-5-ドデセナール、(Z)-5-ドデセナール、(E)-6-ドデセナール、(Z)-6-ドデセナール、(E)-7-ドデセナール、(Z)-7-ドデセナール、(E)-8-ドデセナール、(Z)-8-ドデセナール、(E)-9-ドデセナール、(Z)-9-ドデセナール、(E)-10-ドデセナール、(Z)-10-ドデセナール、11-ドデセナール、トリデカナール、(E)-2-トリデセナール、(Z)-2-トリデセナール、(E)-3-トリデセナール、(Z)-3-トリデセナール、(E)-4-トリデセナール、(Z)-4-トリデセナール、(E)-5-トリデセナール、(Z)-5-トリデセナール、(E)-6-トリデセナール、(Z)-6-トリデセナール、(E)-7-トリデセナール、(Z)-7-トリデセナール、(E)-8-トリデセナール、(Z)-8-トリデセナール、(E)-9-トリデセナール、(Z)-9-トリデセナール、(E)-10-トリデセナール、(Z)-10-トリデセナール、(E)-11-トリデセナール、(Z)-11-トリデセナール、12-トリデセナール、ブタデカナール、(E)-2-ブタデセナール、(Z)-2-ブタデセナール、(E)-3-ブタデセナール、(Z)-3-ブタデセナール、(E)-4-ブタデセナール、(Z)-4-ブタデセナール、(E)-5-ブタデセナール、(Z)-5-ブタデセナール、(E)-6-ブタデセナール、(Z)-6-ブタデセナール、(E)-7-ブタデセナール、(Z)-7-ブタデセナール、(E)-8-ブタデセナール、(Z)-8-ブタデセナール、(E)-9-ブタデセナール、(Z)-9-ブタデセナール、(E)-10-ブタデセナール、(Z)-10-ブタデセナール、(E)-11-ブタデセナール、(Z)-11-ブタデセナール、(E)-12-ブタデセナール、(Z)-12-ブタデセナール、13-ブタデセナール、及びそれらの混合物からなる脂肪族アルデヒドの群から選択されてよい。好ましい実施形態では、脂肪族アルデヒドは、ヘキサナール、(E)-2-ヘキサナール、(Z)-2-ヘキサナール、(E)-3-ヘキサナール、(Z)-3-ヘキサナール、(E)-4-ヘキサナール、(Z)-4-ヘキサナール、5-ヘキサナール、ヘプタナール、(E)-2-ヘプテナール、(Z)-2-ヘプテナール、(E)-3-ヘプテナール、(Z)-3-ヘプテナール、(E)-4-ヘプテナール、(Z)-4-ヘプテナール、(E)-5-ヘプテナール、(Z)-5-ヘプテナール、6-ヘプテナール、オクタナール、(E)-2-オクテナール、(Z)-2-オクテナール、(E)-3-オクテナール、(Z)-3-オクテナール、(E)-4-オクテナール、(Z)-4-オクテナール、(E)-5-オクテナール、(Z)-5-オクテナール、(E)-6-オクテナール、(Z)-6-オクテナール、7-オクテナール、ノナナール、(E)-2-ノネナール、(Z)-2-ノネナール、(E)-3-ノネナール、(Z)-3-ノネナール、(E)-4-ノネナール、(Z)-4-ノネナール、(E)-5-ノネナール、(Z)-5-ノネナール、(E)-6-ノネナール、(Z)-6-ノネナール、(E)-7-ノネナール、(Z)-7-ノネナール、8-ノネナール及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0202】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの脂肪族アルデヒドは飽和脂肪族アルデヒドである。この場合、脂肪族アルデヒドは、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール、トリデカナール、ブタデカナール及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、飽和脂肪族アルデヒドの形態である少なくとも1つの脂肪族アルデヒドは、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール及びそれらの混合物からなる群から選択される。例えば、飽和脂肪族アルデヒドの形態である少なくとも1つの脂肪族アルデヒドは、オクタナール、ノナナール及びそれらの混合物から選択される。
【0203】
2つの脂肪族アルデヒド、例えばオクタナール及びノナナールなどの2つの飽和脂肪族アルデヒドの混合物が本発明にしたがって使用される場合、オクタナールとノナナールの重量比は、70:30~30:70及びより好ましくは60:40~40:60である。本発明の特に好ましい実施形態では、オクタナールとノナナールの重量比は、約1:1である。
【0204】
本発明の意味における用語、少なくとも1つの脂肪族アルデヒドの「塩反応生成物」は、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料を少なくとも1つの脂肪族アルデヒドと接触させることによって得られる生成物を指す。上記反応生成物は、適用される少なくとも1つの脂肪族アルデヒドの少なくとも一部と少なくとも1つのフィラー材料、好ましくは少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面に位置する反応性分子との間で生成される。
【0205】
一実施形態では、少なくとも1つの脂肪族アルデヒド対その塩反応生成物のモル比は、99.9:0.1~0.1:99.9、好ましくは70:30~90:10である。
【0206】
本発明の意味における表現「少なくとも1つの脂肪族アルデヒド対その塩反応生成物のモル比」は、脂肪族アルデヒドの分子量の合計対その塩反応生成物中の脂肪族アルデヒドの分子量の合計を指す。
【0207】
コーティング用の少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び適切な化合物で処理された表面処理フィラー材料製品を作製するための方法は、例えば、EP 2 390 285 A1に記載され、それはしたがって参考により本明細書とともに組み込まれる。
【0208】
本発明の別の実施形態によれば、表面処理フィラー材料は、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部上に処理層を含み、ここで処理層は、少なくとも1つのポリジアルキルシロキサンを含む。
【0209】
好ましいポリジアルキルシロキサンは、例えば、US 2004/0097616 A1に記載される。最も好ましいのは、ポリジメチルシロキサン、好ましくはジメチコン、ポリジエチルシロキサン及びポリメチルフェニルシロキサン並びに/又はそれらの混合物からなる群から選択されるポリジアルキルシロキサンである。
【0210】
例えば、少なくとも1つのポリジアルキルシロキサンは、好ましくはポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0211】
少なくとも1つのポリジアルキルシロキサンは、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部上の上記ポリジアルキルシロキサンの全量が、1000ppm未満、より好ましくは800ppm未満及び最も好ましくは600ppm未満であるような量で好ましくは存在する。例えば、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部上のポリジアルキルシロキサンの全量は、100~1000ppm、より好ましくは200~800ppm及び最も好ましくは300~600ppm、例えば、400~600ppmである。
【0212】
一実施形態では、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部上の処理層は、上記材料の混合物を含む。
【0213】
例えば、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部上の処理層は、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド並びに少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物並びに任意に少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン又は任意に少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物を含む。
【0214】
あるいは、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部上の処理層は、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド並びに少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン並びに任意に少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物又は任意に少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物を含む。
【0215】
あるいは、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部上の処理層は、少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物並びに少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン並びに任意に1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド又は任意に少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物を含む。
【0216】
あるいは、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部上の処理層は、少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物並びに少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物並びに任意に少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン又は任意に1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド又は任意に少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物を含む。
【0217】
あるいは、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部上の処理層は、少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物並びに少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン並びに任意に少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物又は任意に1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド又は任意に少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物を含む。好ましくは、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部上の処理層は、1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド又は少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物又は少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物並びに少なくとも1つのポリジアルキルシロキサンを含む。より好ましくは、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の少なくとも一部上の処理層は、少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖又は分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物並びに少なくとも1つのポリジアルキルシロキサンを含むか、最も好ましくはそれらからなる。
【0218】
したがって、後処理層は、処理層上に存在してよく、上記の後処理層は、好ましくは少なくとも1つのポリジアルキルシロキサンを含む。
【0219】
好ましい一実施形態では、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面処理は、2つの工程、処理層を形成するための1つ以上のリン酸モノエステル及び/若しくは1つ以上のリン酸ジエステルのリン酸エステルブレンド又は少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸又は少なくとも1つの脂肪族アルデヒドによる処理を含む第1の工程、並びに後処理層を形成するための少なくとも1つのポリジアルキルシロキサンによる処理を含む第2の工程、で実施される。
【0220】
別の実施形態では、表面処理は、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料を、処理層を形成するための1つ以上のリン酸モノエステル及び/若しくは1つ以上のリン酸ジエステルのリン酸エステルブレンド又は少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸又は少なくとも1つの脂肪族アルデヒド並びに少なくとも1つのポリジアルキルシロキサンで同時に処理することによって、実施される。
【0221】
更に、表面処理は、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料を、最初にポリジアルキルシロキサンで、続いて1つ以上のリン酸モノエステル及び/若しくは1つ以上のリン酸ジエステルのリン酸エステルブレンド又は少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸又は少なくとも1つの脂肪族アルデヒドで処理することによって、実施できる。
【0222】
一実施形態によれば、リン酸エステル、1つ以上のリン酸モノエステル、1つ以上のリン酸ジエステルのブレンド、又は少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸又は少なくとも1つの脂肪族アルデヒドの塩反応生成物は、1つ以上のそれらのカルシウム及び/又はマグネシウム塩である。
【0223】
したがって、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料製品は、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料、並びに
i.1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、並びに/又は
ii.少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又は
iii.少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物、並びに/又は
iv.少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、並びに/又は
v.i.~iv.による材料の混合物、
を含む処理層、を含むか、好ましくはそれらからなると理解される。
【0224】
処理層は、上記少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面に形成される。
【0225】
表面処理フィラー材料製品が、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、0.1~3重量%の量で処理層を含むことは、本発明の必要条件の1つである。
【0226】
一実施形態によれば、表面処理フィラー材料製品は、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、0.1~2.8重量%の量、より好ましくは0.1~2.5重量%の量、更により好ましくは0.3~2.5重量%の量及び最も好ましくは0.5~2.5重量%の量で処理層を含む。
【0227】
処理層は好ましくは、表面処理フィラー材料製品の表面上の1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、並びに/又は少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又は少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物、並びに/又は少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、並びに/又は上記材料の混合物の全重量が、少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料の0.05~1重量%/m、より好ましくは0.1~0.5重量%/m及び最も好ましくは0.15~0.25重量%/mであることを特徴とする。
【0228】
本発明の一実施形態では、処理層は、表面処理フィラー材料製品の表面上の1つ以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、並びに/又は少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又は少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物、並びに/又は少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、並びに/又は上記材料の混合物の全重量が、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料の0.1~5mg/m、より好ましくは0.25~4.5mg/m及び最も好ましくは1.0~4.0mg/mであることを特徴とする。
【0229】
特に、表面処理フィラー材料製品は、≧250℃の揮発開始温度を特徴とすると理解される。例えば、本発明のプロセスによって得られる表面処理フィラー材料製品は、≧260℃又は≧270℃の揮発開始温度を特徴とする。
【0230】
更に又はあるいは、表面処理フィラー材料製品は、25と350℃の間で0.25%未満の、及び好ましくは0.23質量%未満の、例えば0.04~0.21質量%の、好ましくは0.08~0.15質量%、より好ましくは0.1~0.12質量%の全揮発性物質を特徴とする。
【0231】
更に、表面処理フィラー材料製品は、低い吸水感度(water pick up susceptibility)を特徴とする。表面処理フィラー材料製品の吸水感度(moisture pick up susceptibility)は、その全表面水分レベルが、約+23℃(±2℃)の温度で乾燥炭酸カルシウム含有フィラー材料の1mg/g未満であるようなことが好ましい。例えば、表面処理フィラー材料製品は、+23C(±2℃)の温度での後に、乾燥炭酸カルシウム含有材料の0.1~1mg/gの、より好ましくは0.2~0.9mg/gの及び最も好ましくは0.2~0.8mg/gの吸水感度(moisture pick up susceptibility)を有する。
【0232】
更に又はあるいは、表面処理フィラー材料製品は、沈降法を用いて+23℃(±2℃)で測定される8:2未満の水:エタノールの体積比の親水性を有する。例えば、表面処理フィラー材料製品は、沈降法を用いて+23℃(±2℃)で測定される7:3未満の水:エタノールの体積比の親水性を有する。
【0233】
一実施形態によれば、通気性フィルムは、通気性フィルムの全重量に基づいて、1~85重量%、好ましくは2~80重量%、より好ましくは5~75重量%、更により好ましくは10~65重量%、及び最も好ましくは15重量%~60重量%の量で表面処理フィラー材料製品を含む。
【0234】
本発明の一態様によれば、上記の表面処理フィラー材料製品は、通気性フィルム中のフィラーとして使用される。
【0235】
通気性フィルム
本発明によれば、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び表面処理フィラー材料製品を含む通気性フィルムが提供され、表面処理フィラー材料製品は、
A)少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料であって、
-0.1μm~7μmの範囲の重量中央粒径d50
-≦15μmのトップカット粒径d98
-窒素及びISO9277にしたがってBET法を使用して測定される、0.5~150m/gの比表面積(BET)、並びに
-少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、≦1重量%の残留全含水率、
を有する材料、並びに
B)少なくとも1つの上記粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の処理層であって、
i.1つ以上リン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、並びに/又は
ii.少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又は
iii.少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物、並びに/又は
iv.少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、並びに/又は
v.i.~iii.による材料の混合物、
を含む処理層
を含み、
表面処理フィラー材料製品は、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、0.1~3重量%の量の処理層を含む。
【0236】
通気性フィルムは、低い坪量を特に特徴とすると理解される。したがって、通気性フィルムは、1~10g/mの坪量を有する。一実施形態では、通気性フィルムは、5~10g/m、好ましくは6~10g/m、及び最も好ましくは約8g/mの坪量を有する。
【0237】
一実施形態によれば、通気性フィルムの厚みは、4~10μm、好ましくは6~10μmである。
【0238】
通気性フィルムは、それが高い機械的特性で低い坪量を提供するので有利である。
【0239】
例えば、8g/mの坪量で、通気性フィルムは、ISO527-3にしたがって測定される、4~40Nの範囲で、より好ましくは4~35Nの範囲で、及び最も好ましくは4~35Nの範囲で縦方向における破断時の力を有する。
【0240】
少なくとも1つの熱可塑性ポリマーがポリエチレン、例えばLLDPEを含む場合、8g/mの坪量で、通気性フィルムは好ましくは、ISO527-3にしたがって測定される、4~15Nの範囲で、及びより好ましくは4~12Nの範囲で縦方向における破断時の力を有する。
【0241】
少なくとも1つの熱可塑性ポリマーがポリプロピレンを含む場合、8g/mの坪量で、通気性フィルムは好ましくは、ISO527-3にしたがって測定される、10~30Nの範囲で、より好ましくは14~25Nの範囲で及び最も好ましくは20~23Nの範囲で縦方向における破断時の力を有する。
【0242】
更に又はあるいは、8g/mの坪量で、通気性フィルムは、ISO527-3にしたがって測定される、300~2500N/mmの範囲で、及び最も好ましくは500~2400N/mmの範囲で弾性率を有する。
【0243】
少なくとも1つの熱可塑性ポリマーがポリエチレン、例えば、LLDPEを含む場合、8g/mの坪量で、通気性フィルムは好ましくは、ISO527-3にしたがって測定される、300~1000N/mmの範囲で、及び最も好ましくは500~800N/mmの範囲で弾性率を有する。
【0244】
少なくとも1つの熱可塑性ポリマーがポリプロピレンを含む場合、8g/mの坪量で、通気性フィルムは好ましくは、ISO527-3にしたがって測定される、1000~2500N/mmの範囲で、より好ましくは1100~2400N/mmの範囲で、及び最も好ましくは2000~2300N/mmの範囲で弾性率を有する。
【0245】
更に又はあるいは、8g/mの坪量で、通気性フィルムは、実施例セクションで概要を述べる方法にしたがって測定される、50~700mbarの範囲で、及び最も好ましくは75~600mbarの範囲で水柱を有する。
【0246】
少なくとも1つの熱可塑性ポリマーがポリエチレン、例えば、LLDPEを含む場合、8g/mの坪量で、通気性フィルムは好ましくは、実施例セクションで概要を述べる方法にしたがって測定される、75~500mbarの範囲で、及び最も好ましくは150~300mbarの範囲で水柱を有する。
【0247】
少なくとも1つの熱可塑性ポリマーがポリプロピレンを含む場合、8g/mの坪量で、通気性フィルムは好ましくは、実施例セクションで概要を述べる方法にしたがって測定される、100~700mbarの範囲で、より好ましくは300~600mbarの範囲で及び最も好ましくは400~500mbarの範囲で水柱を有する。
【0248】
更に、通気性フィルムは、良好な表面品質及び皮膚刺激の低下された可能性を有すると理解される。
【0249】
通気性フィルムの通気性は、その水蒸気透過率によって測定できる。一実施形態によれば、通気性フィルムは、ASTM398にしたがってLyssy L80-5000測定装置を用いて測定される、500~10000g/(m・日)、好ましくは750~8000g/(m・日)、及びより好ましくは1000~7000g/(m・日)の水蒸気透過率(WVTR)を有する。
【0250】
一実施形態によれば、通気性フィルムは、上記の方法にしたがってFX 3000 Hydrotesterを用いて測定される、100~500mbar、好ましくは200~400mbar、及びより好ましくは250~350mbarの静水圧力を有する。
【0251】
一実施形態によれば、通気性フィルムは、UV吸収剤、光安定剤、加工安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、核剤、金属不活性化剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤、潤滑剤、レオロジー変性剤、加工助剤、顔料、染料、蛍光増白剤、抗菌薬、帯電防止剤、スリップ剤、粘着防止剤、カップリング剤、分散剤、相溶化剤、脱酸素剤、酸補足剤、マーカー、防曇剤、表面改質剤、難燃剤、発泡剤、煙抑制剤、ガラス繊維、炭素繊維及び/若しくはガラスバブルなどの補強剤、又は前述添加剤の混合物からなる群から選択される添加剤を更に含む。
【0252】
好ましくは、添加剤は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、及び乳酸カルシウムなどの長鎖カルボン酸の塩に基づく酸捕捉剤部類から選択されるか、又は、フェノール系酸化防止剤、ベンゾフラノン、ヒドロキシルアミン、ニトロン、チオ相乗剤、及びホスファイト/ホスホナイトに基づく安定剤の部類からの、ヒンダードアミン(HALS)に基づく光安定剤の部類からの、金属不活性化剤の部類からの、分散剤、カップリング剤、若しくは相溶化剤の部類からの、ハイドロタルサイト、又は任意の前述した添加剤の混合物であってよい。
【0253】
適切なフェノール系酸化防止剤は、例えば:オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸、ペンタエリトリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパン酸、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイル-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミドである。
【0254】
適切なホスファイト/ホスホナイトは、例えば:トリス-(2,4-ジ-tertブチルフェニル)-ホスファイト、3,9-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファ-スピロ[5.5]ウンデセン、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジイルビスホスホナイトである。
【0255】
適切な立体障害アミンは、例えば:1,1-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-n-ブチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルマロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン及びコハク酸の縮合生成物、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン及び4-tert-オクチルアミノ-2,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ニトリロトリアセテート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,1’-(1,2-エタンジイル)-ビス(3,3,5,5-テトラメチルピペラジノン)、4-ベンゾイル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの直鎖又は環式縮合生成物、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレン-ジアミン及び4-モルホリノ-2,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンの直鎖又は環式縮合生成物、7,7,9,9-テトラメチル-2-シクロウンデシル-1-オキサ-3,8-ジアザ-4-オキソスピロ[4.5]デセン及びエピクロロヒドリンの反応生成物である。
【0256】
適切な分散剤は、例えば:長い側鎖を有するコポリマー、及びポリアクリレートブロックコポリマーなどのポリアクリレート;N,N’-1,2-エタンジイルビスオクタデカンアミドなどのアルキルアミド;モノステアリルソルビタンエステルなどのソルビタンエステル;チタネート及びジルコネート;ポリプロピレン-アクリル酸コポリマーなどの反応性コポリマー;ポリプロピレン-無水マレイン酸コポリマー;ポリエチレン-グリシジル-メタクリレートコポリマー;ジメチルシランジオール-エチレンオキシドコポリマーなどのポリスチロール-無水マレイン酸-ポリシロキサン交互コポリマー;ポリフェニルシロキサンコポリマー;ポリエチレン-ポリエチレンオキシドブロックコポリマーなどの両親媒性コポリマー;並びにヒドロキシ含有デンドリマーなどのデンドリマーである。
【0257】
適切な金属不活性化剤は、例えば、N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジンであってよい。別の実施形態によれば、金属不活性化剤は、以下の構造の1つ以上から選択されてよい。
【化1】
【化2】
【0258】
好ましい実施形態によれば、通気性フィルムは、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び表面処理フィラー材料製品を含み、表面処理フィラー材料製品は、
A)少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム、好ましくは天然粉砕炭酸カルシウムであって、
-0.25μm~5μm、好ましくは0.7~4μmの範囲の重量中央粒径d50、
-≦10μm、好ましくは≦7.5μmのトップカット粒径d98
-窒素及びISO9277にしたがってBET法を使用して測定される、0.5~35m/g、好ましくは0.5~15m/gの比表面積(BET)、並びに
-少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、0.01~0.2重量%、好ましくは0.02~0.15重量%の残留全含水率、
を有する粉砕炭酸カルシウム、並びに
B)少なくとも1つの上記粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の処理層であって、
i.1つ以上リン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、並びに/又は
ii.少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又は
iii.少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物、並びに/又は
iv.少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、並びに/又は
v.i.~iv.による材料の混合物、
を含む処理層
を含み、
表面処理フィラー材料製品は、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、0.1~1重量%、好ましくは0.2~0.08重量%の量の処理層を含む。
【0259】
本発明の通気性フィルムは、当技術分野に既知の任意の方法によって製造されてよい。一実施形態によれば、通気性フィルムの製造プロセスは、
a)少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び表面処理フィラー材料製品を含む組成物を提供する工程、並びに
b)工程a)の組成物からフィルムを形成する工程、並びに
c)工程b)で得られたフィルムを少なくとも1方向に延伸する工程
を含み、
表面処理フィラー材料製品が、
A)少なくとも1つの粉砕(特に湿式粉砕)炭酸カルシウム含有フィラー材料であって、
-0.1μm~7μmの範囲の重量中央粒径d50
-≦15μmのトップカット粒径d98
-窒素及びISO9277にしたがってBET法を使用して測定される、0.5~150m/gの比表面積(BET)、並びに
-少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、≦1重量%の残留全含水率、
を有する材料、並びに
B)少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の表面の処理層であって、
i.1つ以上リン酸モノエステル及びその塩反応生成物並びに/若しくは1つ以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、並びに/又は
ii.少なくとも1つの飽和脂肪族直鎖若しくは分岐鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又は
iii.少なくとも1つの脂肪族アルデヒド及び/若しくはその塩反応生成物、並びに/又は
iv.少なくとも1つのポリジアルキルシロキサン、並びに/又は
v.i.~iv.による材料の混合物、
を含む処理層
を含み、
表面処理フィラー材料製品は、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の全乾燥重量に基づいて、0.1~3重量%の量の処理層を含む。
【0260】
工程a)のプロセスにおいて提供される少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び表面処理フィラー材料製品の組成物は、上記構成成分を混合又は配合することによって製造できる。少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び表面処理フィラー材料製品、並びに、存在する場合、他の任意の添加剤は、適切なミキサー、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー又はタンブラー型ミキサー等を使用して混合されてよい。配合工程は、適切な押出機を用いて、好ましくは二軸押出機(同方向若しくは異方回転)により又は任意の他の適切な連続配合装置、例えば、連続コニーダー(Buss)、連続ミキサー(Farrel Pomini)、リング押出機(Extricom)等により行われてよい。押出からの連続ポリマー塊を、水中ペレット化、偏心ペレット化及びウォータリングペレット化を用いる(ホットカット)ダイフェイスペレット化、又は水中での従来のストランドペレット化を用いる(コールドカット)ストランドペレット化のどちらかによってペレット化して、押出ポリマー塊をペレットへと形成してよい。
【0261】
任意に、配合工程はまた、インターナル(バッチ)ミキサー、例えば、バンバリーミキサー(HF Mixing Group)又はブラベンダーミキサー(Brabender)等を使用する不連続又はバッチプロセスを用いて実施されてもよい。
【0262】
任意の実施形態によれば、工程a)のプロセスにおいて提供される組成物は、上記の1つ以上の添加剤を更に含む。
【0263】
一実施形態によれば、工程a)のプロセスにおいて提供される組成物は、マスターバッチである。好ましい実施形態によれば、マスターバッチは、マスターバッチの全重量に基づいて、50~85重量%で、好ましくは60~85重量%で及びより好ましくは70~80重量%の量で表面処理フィラー材料製品を含む。マスターバッチは、ペレット、ビーズ、又は細粒の形態であってよい。
【0264】
本発明の一実施形態によれば、工程a)において提供される組成物は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び表面処理フィラー材料製品を混合及び/又は混錬して混合物を形成し、かつ得られた混合物を水中で連続的にペレット化することによって得られるマスターバッチ又は化合物である。
連続的にとは、途切れることなく、少なくとも8時間、好ましくは少なくとも24時間及びより好ましくは170時間超を意味する。
【0265】
本発明の表面処理フィラー材料製品の使用は、生産率の低下を引き起こす製造プロセスの中断をもたらす恐れのある、マスターバッチ又は化合物の製造時における水浴中の発泡の問題を回避できることを、本発明の発明者らは驚くべきことに見いだした。したがって、本発明の表面処理フィラー材料製品は、マスターバッチ及び化合物の連続製造を可能にし、それによって通気性フィルムのためのマスターバッチ及び化合物の製造効率を上昇させる。
【0266】
表面コーティングの浸出リスクは、特にヒトの皮膚と接触するとき、本発明の表面コーティングによって最小限に抑えられる。したがって、本発明の表面処理フィラー材料製品を使用することによって、皮膚刺激の可能性が低下した通気性フィルムを製造できる。
【0267】
分散品質を決定するために、フィルター圧力試験を実施した。フィルター圧力試験を市販のCollin Pressure Filter Test Teach-Line FT-E20T-ISで実施した。試験方法は、European Standard EN 13900-5に従い、それぞれの相当するポリマー組成物(200gの最終的なサンプル当たり16gの有効炭酸カルシウム、希釈剤:LLDPE ExxonMobil LL 1001VX)を用い、14μmタイプ30フィルター(GKD Gebr.Kufferath AG、Diiren、ドイツ)を使用して実施し、ここでは溶解ポンプを使用せず、押出スピードを100rpmに維持し、溶融温度は225~230℃だった(設定温度:190℃/210℃/230℃/230℃/230℃)。
【0268】
本発明の発明者らは、通気性フィルムにおける本発明の表面処理フィラー材料製品の使用が、非常に微細で均一に充填された通気性フィルム材料が生じ得ることを見いだした。いかなる理論にも束縛されるものではないが、フィルム全体にわたり均一な分布バリア及び蒸気透過特性を得るために、フィルム全体にわたってできるだけ均等に分布されるフィラーを有することを必要とする通気性フィルムでの用途に、本発明による特定の表面処理フィラー材料製品の特性は、特に適切になり得ると考えられる。
【0269】
マスターバッチは、工程b)のプロセスにおいて直接使用されてもよく、又は工程b)のプロセスの前に1つ以上の熱可塑性ポリマーと混合されてよい。マスターバッチはまた、1つ以上の上記の添加剤と混合できる。好ましい実施形態によれば、マスターバッチは、工程b)のプロセスで直接使用される。
【0270】
工程b)のプロセスは、ポリマーフィルムを作製するために使用される任意の周知の技術によって実施されてよい。適切なフィルム押出技術の例は、インフレーション成形又はキャストフィルム押出である。
【0271】
工程c)のプロセスで、工程b)のプロセスで得られるフィルムは、少なくとも1方向に延伸される。延伸工程時に、ポリマーは、表面処理フィラー材料製品の表面から剥離されてよく、それによって通気性フィルムに細孔を形成できる。延伸工程c)は、当技術分野に既知の任意の手段によって実施されてよい。
【0272】
フィルムは、室温~熱可塑性ポリマーの軟化点の温度で、ロール法、インターデジタイジング法(interdigitizing method)、又はテンター法などの周知の技術によって、少なくとも単軸方向に延伸できる。
【0273】
一実施形態によれば、工程c)のプロセスにおいて、工程b)で得られるフィルムは、機械方向配向(MDO)によって延伸される。当業者に既知であるように、MDOプロセスは、予熱、配向、アニーリング及び冷却などの一連のステージからなる。通常、フィルムはMDOに入り、必要とされる配向温度に予熱される。配向ステージで、フィルムは、低速回転ローラーと高速回転ローラーの間に挟まれる。所望のフィルム特性に応じて、フィルムは配向の後クエンチ又はアニールされてよい。最終ステージで、フィルムは周囲温度近くに冷却されてよい。
【0274】
延伸は、1工程により又はいくつかの工程により、実施されてよい。一実施形態によれば、工程c)のプロセスは、1~10回実施される。
【0275】
延伸倍率は得られるフィルムの高延伸時のフィルム破損並びに通気性及び蒸気透過を決定し、そのため過度の高延伸倍率及び過度の低延伸倍率を避けることが望ましい。一実施形態によれば、工程c)のプロセスで、工程b)で得られたフィルムは、少なくとも1方向に1.2~6倍、より好ましくは1.2~4倍の延伸倍率に延伸される。
【0276】
一実施形態によれば、本発明のプロセスの工程c)で、工程b)で得られたフィルムは2方向に延伸される。二軸延伸が実施される場合、例えば第1の方向の延伸が機械方向又はその垂直方向に適用され、次に第2の方向の延伸が第1の方向に対して直角に適用されることが可能である。あるいは、二軸延伸は、機械方向及びその垂直方向で同時に実施されてよい。
【0277】
一実施形態によれば、工程c)のプロセスは、約30~160℃、好ましくは40~130℃、より好ましくは45~80℃、及び最も好ましくは50~70℃の温度で実施される。
【0278】
延伸後に、通気性フィルムの構造を安定させるために必要であれば、ヒートセット処理を実施してよい。ヒートセット処理は、例えば、0.1~100秒の期間で、ポリマーの軟化点~ポリマーのおよそ融点未満の温度の範囲の温度でのヒートセット処理であってよい。
【0279】
本発明の発明者らは、本発明の通気性フィルムが良好な通気性及び低いフィルム欠陥レベルを保持することを見いだした。更に、通気性フィルムは、低いメヤニ特性などの良好な色特性及び良好な加工特性を提供でき、かつ押出中の単なる低い圧力上昇が観察される。本発明の通気性フィルムは、乳児用おむつ、成人用失禁製品、又は創傷包帯などの衛生用品に特に適切であり得る。
【0280】
本発明の通気性フィルムは、多くの異なる用途で使用できる。一実施形態によれば、通気性フィルムは、衛生用途、医療用途、ヘルスケア用途、ろ過材料、ジオテキスタイル製品、農業用途、園芸用途、衣類、履物製品、鞄製品、家庭用途、工業用途、包装用途、建築用途、又は建設で使用される。
【0281】
本発明の更なる態様によれば、本発明の通気性フィルムを含む物品が提供され、ここで物品は、衛生用品、医療製品、ヘルスケア製品、フィルター製品、ジオテキスタイル製品、農業製品、園芸製品、衣類、履物製品、鞄製品、家庭製品、工業製品、包装製品、建築製品、及び建設製品からなる群から選択される。
【0282】
好ましくは、衛生用品は、乳児用おむつ(diapers)又はおむつ(nappies)、女性用衛生製品、成人用失禁製品、脱毛用ストリップ、包帯及び創傷包帯、使い捨てバスタオル及びフェイスタオル、使い捨てスリッパ及び履物、表面シート又はカバーストック、消費者用フェイスマスク、レッグカフ(leg cuffs)、収集/分布層、コアラップ(core wraps)、バックシート(back sheets)、伸縮性イアー(stretch ears)、ランディングゾーン(landing zones)、ダスティング層(dusting layers)及び固定システムなどの吸収衛生用品を含む群から選択される。
【0283】
好ましくは、医療及びヘルスケア製品は、滅菌できる医療製品、医療包装、手術用使い捨てキャップのようなキャップ、防護衣類、手術用ガウン、手術用マスク及びフェイスマスク、手術着、手術用カバー、手術用ドレープ、ラップ、パック、スポンジ、包帯、ワイプ、ベッドリネン、汚染防止ガウン、検査用ガウン、実験室用白衣、アイソレーションガウン(isolation gowns)、経皮薬物送達、シュラウド(shrouds)、アンダーパッド(underpads)、処置用パック(procedure packs)、ヒートパック、オストミーバッグライナー(ostomy bag liners)、固定テープ、インキュベーターマットレス(incubator mattress)、滅菌ラップ(CSRラップ)、創傷ケア、コールド/ヒートパック、貼付剤のような薬物送達システムを含む群から選択される。
【0284】
好ましくは、衣類、履物及び鞄製品は、オーバーコートのフロント、カラー、フェイシング(facings)、ウェストバンド(waistbands)、下襟等のような芯地、使い捨て下着、靴ひも小穴強化材、運動靴及びサンダル強化材並びにインナーソールの裏地等のような靴構成材料、鞄構成材料、結合剤、組成物及び(洗濯)注意事項ラベルを含む群から選択される。
【0285】
好ましくは、包装製品は、乾燥剤の包装、吸着剤の包装、ギフトボックス、ファイルボックス、不織布バッグ、ブックカバー、封筒、エクスプレスエンベロープ(Express envelopes)、宅配バッグ等のような芯地を含む群から選択される。
【0286】
好ましくは、建築及び建設製品は、ハウスラップ(house wrap)、アスファルトオーバーレイ(asphalt overlay)、道路及び鉄道の道床、ゴルフコート及びテニスコート、壁装材の裏地、音響用壁装材、屋根材及びタイルの下張り、土壌安定材及び道路の下敷き、基礎安定材、浸食制御、用水路建設、排水システム、ジオメンブレン保護、霜よけ、農業用マルチ、池及び用水路のウォーターバリア、並びに暗渠排水用砂侵入バリアを含む群から選択される。
【0287】
本発明の範囲及び関心の対象は、本発明のある実施形態を例示し非制限的である以下の実施例に基づいてより理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0288】
図1】サンプル3のSEM画像を示す。
図2】サンプル6のSEM画像を示す。
図3】サンプル9のSEM画像を示す。
図4】サンプル12のSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0289】
実施例
1 測定方法及び材料
以下に、実施例で実施される測定方法及び材料が記載される。
【0290】
粒径
未処理粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材料の粒子分布を、米国のMicromeritics社のSedigraph 5120を使用して測定した。方法及び機器は、当業者に既知であり、一般的にフィラー及び顔料の粒径を決定するために使用される。測定を、0.1重量%Naを含む水溶液中で実施した。高速攪拌機及び超音波を使用してサンプルを分散させた。
【0291】
比表面積(BET)
比表面積を、窒素及びISO9277にしたがうBET法を使用して測定した。
【0292】
灰分
マスターバッチ中の灰分[%]を、570℃で2時間焼却炉に入れた焼却るつぼ中のサンプルの灰化によって決定した。灰分を、残留している無機残留物の全量として測定した。
【0293】
破断時の力
破断時の力の測定を、ISO527-3にしたがって実施した。フィルム試験片の幅は15mmであり、試験長さは5cmだった。
【0294】
破断時の最大伸び
破断時の伸び測定を、ISO527-3にしたがって実施した。フィルム試験片の幅は15mmであり、試験長さは5cmだった。
【0295】
引張弾性率(弾性率)
引張弾性率測定を、ISO527-3にしたがって実施した。フィルム試験片の幅は15mmであり、試験長さは5cmだった。弾性率は、0.02%と2%の伸長での点の間の引張試験曲線の傾斜と一致した。
【0296】
フィルムの目視による評価
フィルムサンプルを光学顕微鏡下に置いた。炭酸カルシウム凝集体は、下方からの照明で黒く見え、上方からの照明で白く見える。
【0297】
水蒸気透過率(WVTR)
通気性フィルムのWVTR値を、ASTM E398にしたがって、Lyssy L80-5000(PBI-Dansensor A/S、デンマーク)測定装置を用いて測定した。
【0298】
静水圧力試験(水柱)
静水圧力試験を、AATCC試験方法127-2013、WSP80.6及びISO811と同等である手順にしたがって実施した。フィルムサンプル(試験面積=10cm2)を試験ヘッドリザーバーに取付けてカバーを形成した。このフィルムサンプルを標準水圧に供し、水圧を、フィルムの外表面に漏れが現れるか又はフィルム破損の結果として水の吹き出しが生じるまで、一定速度で上昇させた(圧力速度勾配=100mbar/分)。水圧を、フィルムサンプルの3つの分離領域における漏れの最初の兆候時に又は吹き出しが生じたときに達した静水頭高さとして測定した。頭高さの結果を、試験片について水圧のセンチメートル又はミリバールで記録した。高い値は、透水への高い抵抗を示した。TEXTEST FX-3000、Hydrostatic Head Tester(Textest AG、スイス)を静水圧力測定に使用した。
【0299】
2 材料
CC1(発明):スイスのOmya International AGから市販されている天然粉砕炭酸カルシウム(d50:0.8μm;d98:3μm、<0.5μmの粒子含量=35%)、天然粉砕炭酸カルシウムの全重量に基づいて、2.2重量%ステアリン酸(Sigma-Aldrich、Crodaから市販)で表面処理。BET:8.5m/g
【0300】
CC2(発明):スイスのOmya International AGから市販されている天然粉砕炭酸カルシウム(d50:1.7μm;d98:6μm、<0.5μmの粒子含量=12%)、天然粉砕炭酸カルシウムの全重量に基づいて、1.0重量%ステアリン酸(Sigma-Aldrich、Crodaから市販)で表面処理。BET:3.4m/g。
【0301】
P1:LLDPE Dowlex 2035G(MFR:6g/10分(190℃、2.16kg)、密度:技術データシートにより0.919g/cm)、米国のDow Chemical Companyから市販。
【0302】
P2:LDPE Dow SC 7641(MFR:2g/10分(190℃、2.16kg)、密度:技術データシートにより0.923g/cm)、米国のDow Chemical Companyから市販。
【0303】
P3:ポリエチレン Elite 5230G(MFR:4g/10分(190℃、2.16kg)、密度:技術データシートにより0.916g/cm)、米国のDow Chemical Companyから市販。
【0304】
P4:ポリプロピレンホモポリマーBraskemポリプロピレンH358-02(MFR:2.1g/10min(230℃、2.16kg)、密度:技術データシートにより0.900g/cm)、Braskem Europe GmbHから市販。
【0305】
3 実施例
実施例1-化合物(CO)の調製
50重量%CC1又はCC2を含有する化合物をそれぞれ、実験室規模のBuss混錬機(Buss AGからのPR46、スイス)で連続的に作製した。得られた化合物を、20と25℃の間の開始温度を有する水浴中でスプリングロードペレタイザー(spring load pelletizer)、型式SLC(Gala、米国)でペレット化した。作製した化合物の組成及びフィラー含量を、以下の表1にまとめる。正確なフィラー含量を、灰分によって決定した。
【0306】
【表1】
【0307】
表1に示す結果は、良好な品質を有する化合物が製造されたことを裏付ける。
【0308】
実施例2-通気性フィルムの作製
実施例1の化合物を使用して、通気性フィルムを、統合MDO-IIユニット(Dr.Collin GmbH、ドイツ)を備えるパイロット押出キャストフィルムラインによって製造し、押出機の温度設定は195℃-210℃-230℃-230℃であり、押出機の回転速度はそれぞれ、およそ35rpm及び20rpmだった。延伸ユニットの回転速度を、「良好な」延伸フィルムが達成されるまで変化させ最適化した。
【0309】
得られた通気性フィルムのフィルム品質を目視で検査し、フィルムを、それらの水蒸気透過率(WVTR)及び静水圧力に関して試験した。結果を次の表2に示す。
【0310】
【表2】
【0311】
表2に示す結果は、本発明の通気性フィルムが良好な品質及び通気性を有することを裏付けた。
【0312】
サンプル3、6、9及び12のSEM画像を図1~4に示す。
【0313】
得られた通気性フィルムの破断時の力、弾性率並びに機械方向及び横方向の破断時における伸びなどの機械的特性を、表3及び4にまとめる。
【0314】
【表3】
【0315】
【表4】
図1
図2
図3
図4