(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】位置検出装置、位置検出モジュール及びクラッチシステム
(51)【国際特許分類】
G01D 5/12 20060101AFI20240805BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20240805BHJP
G05G 1/38 20080401ALI20240805BHJP
【FI】
G01D5/12 H
G01B7/00 101H
G05G1/38
(21)【出願番号】P 2022141317
(22)【出願日】2022-09-06
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【氏名又は名称】太田 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】石川原 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】大山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】守屋 貴裕
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-205935(JP,A)
【文献】特開2004-20491(JP,A)
【文献】特開平6-258006(JP,A)
【文献】実開平2-75567(JP,U)
【文献】特開2020-153837(JP,A)
【文献】特開2022-39245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252,5/39-5/62
G01B 7/00-7/34
G05G 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物の位置を検出する位置検出装置であって、
第1磁石及び第2磁石と、
前記第1磁石及び前記第2磁石から発生する磁界を検出する磁界検出部と
を備え、
前記磁界検出部は、前記検出対象物に対し第1の方向に沿って相対的に移動可能であり、
前記第1磁石及び前記第2磁石は、前記第1の方向において同じ極性を向かい合わせるように配置されており、
前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれは、第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面とを有し、
前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1面は、前記磁界検出部に対して相対的に近位に位置し、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第2面は、前記磁界検出部に対して相対的に遠位に位置し、
前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1面は、平面視において、前記磁界検出部に対して近位に位置する第1端辺と前記磁界検出部に対して遠位に位置する第2端辺とを有し、
前記検出対象物を下方に位置させ、前記磁界検出部を前記検出対象物の上方に位置させたときに、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1端辺を含む第1仮想平面は、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第2端辺を含む第2仮想平面よりも上方に位置し、
前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1面は、互いに対向するように前記第2の仮想平面に対して所定の傾斜角度で傾斜しており、
前記磁界検出部は、前記第1磁石及び前記第2磁石の間に設けられていることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1面は、前記第2仮想平面に対して28.5°~31.5°の範囲で傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1面は、前記第2仮想平面に対して29.5°~30.75°の範囲で傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第1磁石の前記第1面の前記傾斜角度と、前記第2磁石の前記第1面の前記傾斜角度とは、同一角度であることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記磁界検出部は、前記第1仮想平面と、前記第2仮想平面と、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1面とによって囲まれる磁界検出部配置領域に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記磁界検出部は、第1磁界検出部と第2磁界検出部とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記磁界検出部の感磁方向は、前記第1の方向と平行な第1の感磁方向と、前記第1の感磁方向に直交する第2の感磁方向とを含み、
前記第2の感磁方向は、前記第1仮想平面及び前記第2仮想平面に交差することを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記第1の方向において前記磁界検出部に隣接するようにヨーク部が設けられており、
前記磁界検出部は、前記ヨーク部の間に挟まれるようにして位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記ヨーク部は、第1ヨーク部及び第2ヨーク部を有することを特徴とする請求項8に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記磁界検出部は、前記第1の方向から見て前記第1ヨーク部及び前記第2ヨーク部が重なり合う部分に位置することを特徴とする請求項9に記載の位置検出装置。
【請求項11】
前記ヨーク部は、第1ヨーク部及び第2ヨーク部を有し、
前記第1の方向において、前記磁界検出部は、前記第1ヨーク部及び前記第2ヨーク部の間に挟まるようにして位置し、
平面視において、前記第1ヨーク部及び前記第2ヨーク部は、実質的にU字形状を有しており、互いの開口部を向かい合わせるようにして設けられていることを特徴とする請求項8に記載の位置検出装置。
【請求項12】
平面視において、前記ヨーク部は方形枠状を有しており、
前記磁界検出部は、前記方形枠状の前記ヨーク部の内側に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の位置検出装置。
【請求項13】
前記磁界検出部と前記第1磁石との間の前記第1の方向に沿った距離と、前記磁界検出部と前記第2磁石との間の前記第1の方向に沿った距離とが、同一であり、
前記磁界検出部から前記第1磁石側に位置する前記ヨーク部までの前記第1の方向に沿った距離と、前記磁界検出部から前記第2磁石側に位置する前記ヨーク部までの前記第1の方向に沿った距離とが、同一であることを特徴とする請求項8に記載の位置検出装置。
【請求項14】
前記第1磁石及び第2磁石は、同一材料により構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項15】
前記第1ヨーク部及び前記第2ヨーク部は、同一材料により構成されることを特徴とする請求項9に記載の位置検出装置。
【請求項16】
請求項1又は2に記載の位置検出装置と、
前記位置検出装置の前記磁界検出部からの出力信号を処理することで、前記第1磁石及び前記第2磁石により発生し前記磁界検出部に印加される磁界の角度を演算する信号処理部と、
前記位置検出装置及び前記信号処理部を収容する筐体と
を備えることを特徴とする位置検出モジュール。
【請求項17】
請求項16に記載の位置検出モジュールと、
前記検出対象物としてのクラッチと
を備えることを特徴とするクラッチシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置、位置検出モジュール及びクラッチシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁性体である検出対象物の位置を検出する位置検出装置として、第1磁石及び第2磁石と、第1磁石及び第2磁石により発生する磁界の向きを検出する検出素子とを備えるものが知られている(特許文献1参照)。この位置検出装置において、第1磁石と第2磁石とは、同じ極性が対向して配置されている。検出対象物は、第1磁石と第2磁石との対向方向に直交する方向から見て、第1磁石と第2磁石との間の範囲に位置する。そして、第1磁石と第2磁石との対向方向における検出対象物の移動により、検出素子によって検出される磁界の向きが変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、位置検出装置において、検出対象物の移動量をさらに高い精度でリニアに検出することが要求されてきている。また、位置検出装置が用いられる環境(例えば、温度環境等)が変化したとしても、検出対象物の移動量の検出精度をより低下させないことも要求される。
【0005】
上記課題に鑑みて、本発明の一実施形態としては、検出対象物の移動量をさらに高い精度でリニアに検出することができる位置検出装置、位置検出モジュール及びクラッチシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態としての位置検出装置は、検出対象物の位置を検出する位置検出装置であって、第1磁石及び第2磁石と、前記第1磁石及び前記第2磁石から発生する磁界を検出する磁界検出部とを備え、前記磁界検出部は、前記検出対象物に対し第1の方向に沿って相対的に移動可能であり、前記第1磁石及び前記第2磁石は、前記第1の方向において同じ極性を向かい合わせるように配置されており、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれは、第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面とを有し、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1面は、前記磁界検出部に対して相対的に近位に位置し、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第2面は、前記磁界検出部に対して相対的に遠位に位置し、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1面は、平面視において、前記磁界検出部に対して近位に位置する第1端辺と前記磁界検出部に対して遠位に位置する第2端辺とを有し、前記検出対象物を下方に位置させ、前記磁界検出部を前記検出対象物の上方に位置させたときに、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1端辺を含む第1仮想平面は、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第2端辺を含む第2仮想平面よりも上方に位置し、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1面は、互いに対向するように前記第2の仮想平面に対して所定の傾斜角度で傾斜しており、前記磁界検出部は、前記第1磁石及び前記第2磁石の間に設けられている。
【0007】
本発明の一実施形態としての検出モジュールは、上記位置検出装置と、前記位置検出装置の前記磁界検出部からの出力信号を処理することで、前記第1磁石及び前記第2磁石により発生し前記磁界検出部に印加される磁界の角度を演算する信号処理部と、前記位置検出装置及び前記信号処理部を収容する筐体とを備える。
本発明の一実施形態としてのクラッチシステムは、上記位置検出モジュールと、前記検出対象物としてのクラッチとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施の形態としての位置検出装置、位置検出モジュール及びクラッチシステムによれば、検出対象物の移動量をさらに高い精度でリニアに検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る位置検出装置の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る位置検出装置の概略構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る位置検出装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の一実施形態に係る位置検出装置の他の態様の概略構成を示す断面図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の一実施形態に係る位置検出装置の他の態様の概略構成を示す平面図である。
【
図4C】
図4Cは、本発明の一実施形態に係る位置検出装置の他の態様の概略構成を示す断面図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の一実施形態に係る位置検出装置の他の態様の概略構成を示す断面図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の一実施形態に係る位置検出装置の他の態様の概略構成を示す平面図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の一実施形態に係る位置検出装置の他の態様の概略構成を示す断面図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の一実施形態に係る位置検出装置の他の態様の概略構成を示す平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る位置検出装置の他の態様の概略構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係る位置検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態における位置検出モジュールの概略構成を示す模式図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態におけるクラッチシステムの概略構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、試験例1において用いた位置検出装置の概略構成を示す断面図である。
【
図13】
図13は、試験例2において用いた位置検出装置の概略構成を示す断面図である。
【
図21】
図21は、試験例9のシミュレーション試験結果を示すグラフである。
【
図22】
図22は、試験例10のシミュレーション試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の態様1に係る位置検出装置は、検出対象物の位置を検出する位置検出装置であって、第1磁石及び第2磁石と、前記第1磁石及び前記第2磁石から発生する磁界を検出する磁界検出部とを備え、前記磁界検出部は、前記検出対象物に対し第1の方向に沿って相対的に移動可能であり、前記第1磁石及び前記第2磁石は、前記第1の方向において同じ極性を向かい合わせるように配置されており、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれは、第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面とを有し、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1面は、前記磁界検出部に対して相対的に近位に位置し、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第2面は、前記磁界検出部に対して相対的に遠位に位置し、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1面は、平面視において、前記磁界検出部に対して近位に位置する第1端辺と前記磁界検出部に対して遠位に位置する第2端辺とを有し、前記検出対象物を下方に位置させ、前記磁界検出部を前記検出対象物の上方に位置させたときに、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1端辺を含む第1仮想平面は、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第2端辺を含む第2仮想平面よりも上方に位置し、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1面は、互いに対向するように前記第2の仮想平面に対して所定の傾斜角度で傾斜しており、前記磁界検出部は、前記第1磁石及び前記第2磁石の間に設けられていることを特徴とする位置検出装置である。
【0011】
本発明の態様2に係る位置検出装置は、上記態様1において、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1面は、前記第2仮想平面に対して28.5°~31.5°の範囲で傾斜していることを特徴とする。
【0012】
本発明の態様3に係る位置検出装置は、上記態様1において、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1面は、前記第1の方向に対して29.5°~30.75°の範囲で傾斜していることを特徴とする。
【0013】
本発明の態様4に係る位置検出装置は、上記態様1~3のいずれかにおいて、前記第1磁石の前記第1面の前記傾斜角度と、前記第2磁石の前記第1面の前記傾斜角度とは、同一角度であることを特徴とする。
【0014】
本発明の態様5に係る位置検出装置は、上記態様1~4のいずれかにおいて、前記磁界検出部は、前記第1仮想平面と、前記第2仮想平面と、前記第1磁石及び前記第2磁石のそれぞれの前記第1面とによって囲まれる磁界検出部配置領域に設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の態様6に係る位置検出装置は、上記態様1~5のいずれかにおいて、前記磁界検出部は、第1磁界検出部と第2磁界検出部とを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の態様7に係る位置検出装置は、上記態様1~6のいずれかにおいて、前記磁界検出部の感磁方向は、前記第1の方向と平行な第1の感磁方向と、前記第1の感磁方向に直交する第2の感磁方向とを含み、前記第2の感磁方向は、前記第1仮想平面及び前記第2仮想平面に交差することを特徴とする。
【0017】
本発明の態様8に係る位置検出装置は、上記態様1~7のいずれかにおいて、前記第1の方向において前記磁界検出部に隣接するようにヨーク部が設けられており、前記磁界検出部は、前記ヨーク部の間に挟まれるようにして位置することを特徴とする。
【0018】
本発明の態様9に係る位置検出装置は、上記態様8において、前記ヨーク部は、第1ヨーク部及び第2ヨーク部を有することを特徴とする。
本発明の態様10に係る位置検出装置は、上記態様9において、前記磁界検出部は、前記第1の方向から見て前記第1ヨーク部及び前記第2ヨーク部が重なり合う部分に位置することを特徴とする。
【0019】
本発明の態様11に係る位置検出装置は、上記態様8において、前記ヨーク部は、第1ヨーク部及び第2ヨーク部を有し、前記第1の方向において、前記磁界検出部は、前記第1ヨーク部及び前記第2ヨーク部の間に挟まるようにして位置し、平面視において、前記第1ヨーク部及び前記第2ヨーク部は、実質的にU字形状を有しており、互いの開口部を向かい合わせるようにして設けられていることを特徴とする。
【0020】
本発明の態様12に係る位置検出装置は、上記態様8において、平面視において、前記ヨーク部は方形枠状を有しており、前記磁界検出部は、前記方形枠状の前記ヨーク部の内側に設けられていることを特徴とする。
【0021】
本発明の態様13に係る位置検出装置は、上記態様8~12のいずれかにおいて、前記磁界検出部と前記第1磁石との間の前記第1の方向に沿った距離と、前記磁界検出部と前記第2磁石との間の前記第1の方向に沿った距離とが、同一であり、前記磁界検出部から前記第1磁石側に位置する前記ヨーク部までの前記第1の方向に沿った距離と、前記磁界検出部から前記第2磁石側に位置する前記ヨーク部までの前記第1の方向に沿った距離とが、同一であることを特徴とする。
【0022】
本発明の態様14に係る位置検出装置は、上記態様1~13のいずれかにおいて、前記第1磁石及び第2磁石は、同一材料により構成されることを特徴とする。
本発明の態様15に係る位置検出装置は、上記態様8~13のいずれかにおいて、前記第1ヨーク部及び前記第2ヨーク部は、同一材料により構成されることを特徴とする。
【0023】
本発明の態様16に係る位置検出モジュールは、上記態様1~15のいずれかの位置検出装置と、前記位置検出装置の前記磁界検出部からの出力信号を処理することで、前記第1磁石及び前記第2磁石により発生し前記磁界検出部に印加される磁界の角度を演算する信号処理部と、前記位置検出装置及び前記信号処理部を収容する筐体とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明の態様17に係るクラッチシステムは、上記態様16の位置検出モジュールと、前記検出対象物としてのクラッチとを備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、本実施形態において、必要に応じ、いくつかの図面中、「X方向、Y方向及びZ方向」を規定している。ここで、X方向及びY方向は、磁界検出部3の検出対象物7に対向する面と平行な向きである。X方向は、検出対象物7の移動方向に平行な方向である。Y方向は、X方向に直交する方向である。Z方向は、X方向及びY方向に直交する方向である。X方向において、第2磁石42から第1磁石41に向かう方向と平行な方向を+X方向とし、第1磁石41から第2磁石42に向かう方向と平行な方向を-X方向とする。Z方向において、検出対象物7から磁界検出部3に向かう方向と平行な方向を+Z方向とし、磁界検出部3から検出対象物7に向かう方向と平行な方向を-Z方方向とする。X方向に平行な方向は、本技術における「第1の方向」に対応する。Z方向に平行な方向は、本技術における「第2の方向」に対応する。Y方向に平行な方向は、本技術における「第3の方向」に対応する。
【0026】
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る位置検出装置1は、一方向に着磁され、一方端を第1磁極(例えばN極)とし、他方端を第2磁極(例えばS極)とする第1磁石41及び第2磁石42と、磁界検出部3とを含む。本実施形態に係る位置検出装置1は、検出対象物7の±X方向への移動量を検出するストロークセンサとして用いられ得る。
【0027】
検出対象物7は、Z方向から見たときに、すなわち、平面視において、位置検出装置1(磁界検出部3)の-Z方向に位置し、±X方向に沿って移動可能に構成される。検出対象物7は、鉄、鉄合金等の軟磁性体(磁性体)により構成される。検出対象物7は、例えば、円盤状(板状)を呈している(X方向から見て円形状を有する)が、検出対象物7の形状はこの態様に限定されるものではない。検出対象物7は、その厚み方向がX方向と平行になるように配置される。この検出対象物7の移動により、後述する第1磁石41及び第2磁石42から磁界検出部3に印加される磁界の強度(磁束密度)や磁界の向き(角度)が変化する。
【0028】
第1磁石41及び第2磁石42は、それぞれ、第1面41A,42Aと、第1面41A,42Aの反対側に位置する第2面41B,42Bとを有する。第1面41A,42Aは、磁界検出部3の近くに位置し、第2面41B,42Bは、磁界検出部3の遠くに位置する。第1磁石41の第1面41A及び第2面41Bは、互いに実質的に平行な平面であり、第2磁石42の第1面42A及び第2面42Bは、互いに実質的に平行な平面である。なお、実質的に平行とは、第1面41A,42Aを含む平面と第2面41B,42Bを含む平面とが5deg以内で交差することをも含む概念である。
【0029】
第1磁石41及び第2磁石42は、それぞれの第1磁極(N極)を向かい合わせるようにして配置されている。第1磁極(N極)を向かい合わせるとは、第1磁石41の着磁方向と第2磁石42の着磁方向とをXY平面に投影したときに、互いの着磁方向が反平行であることを意味する。なお、着磁方向とは、磁石(第1磁石41及び第2磁石42)内部で磁力線が第2磁極(S極)から第1磁極(N極)に向かう方向を意味する。本実施形態において、第1磁石41及び第2磁石42は、互いの第1磁極(N極)を向かい合わせるようにして配置されているが、この態様に限定されるものではなく、第1磁石41及び第2磁石42は、互いの第2磁極(S極)を向かい合わせるようにして配置されていてもよい。すなわち、第1磁石41及び第2磁石42は、同一極性の磁極(N極又はS極)を互いに向かい合わせるようにして配置されていればよい。
【0030】
第1磁石41の第1面41Aは、Z方向から見たときに、Y方向(Y軸)に平行な第1端辺411と第2端辺412とを有する。第1端辺411は、Z方向から見たときに磁界検出部3の近くに位置し、第2端辺412は、Z方向から見たときに磁界検出部3の遠くに位置する。すなわち、第1端辺411は、第2端辺412よりも-X側に位置する。第2磁石42の第1面42Aは、Z方向から見たときに、Y方向(Y軸)に平行な第1端辺421と第2端辺422とを有する。第1端辺421は、Z方向から見たときに磁界検出部3の近くに位置し、第2端辺422は、Z方向から見たときに磁界検出部3の遠くに位置する。すなわち、第1端辺421は、第2端辺422よりも+X側に位置する。
【0031】
第1磁石41の第1面41Aの第1端辺411と第2磁石42の第1面42Aの第1端辺421とを含む平面を第1仮想平面VP1と定義し、第1磁石41の第1面41Aの第2端辺412と第2磁石42の第1面42Aの第2端辺422とを含む平面を第2仮想平面VP2と定義する。検出対象物7を下方(Z方向における下方,-Z側)に位置させ、磁界検出部3を検出対象物7の上方(Z方向における上方,+Z側)に位置させた場合において、第1仮想平面VP1は、第2仮想平面VP2よりも上方(Z方向における上方,+Z側)に位置する。すなわち、第1磁石41及び第2磁石42は、第1磁石41の第1面41Aと第2磁石42の第1面42Aとが側面視においてハの字状(inverted V-shaped)になるように設けられている。換言すると、第1磁石41の第1面41Aを含む平面と第2磁石42の第1面42Aを含む平面とは、-Z側に向かって開放し、+Z側において互いに交差する。
【0032】
第1磁石41の第1面41Aは、第2仮想平面VP2に対して第1傾斜角度θ41で傾斜しており、第2磁石42の第1面42Aは、第2仮想平面VP2に対して所定の第2傾斜角度θ42で傾斜している。第1傾斜角度θ41及び第2傾斜角度θ42は、それぞれ28.5~31.5°の範囲内であればよく、29.5~30.75°の範囲内であるのが好ましい。第1傾斜角度θ41及び第2傾斜角度θ42は、それぞれ上記数値範囲内である限りにおいて異なる角度であってもよいが、同一角度であるのが特に好ましい。第1磁石41の第1面41A及び第2磁石42の第1面42Aのそれぞれが上記のように傾斜していることで、磁界検出部3に印加される磁界の強度(磁束密度)を増大させることができ、磁界検出部3に印加される磁界の向き(角度)の範囲を増加させることができ、位置検出装置1における検出対象物7の位置検出精度を向上させることができる。
【0033】
上記第1仮想平面VP1、第2仮想平面VP2、第1磁石41の第1面41A及び第2磁石42の第1面42Aにより囲まれる空間を「磁界検出部配置領域S」と定義することができ、この磁界検出部配置領域S内に磁界検出部3が設けられている。すなわち、Y方向から見たときに、磁界検出部3は、第1磁石41と第2磁石42との間に設けられている。磁界検出部3が、第2仮想平面VP2に対して第1傾斜角度θ41及び第2傾斜角度θ42で傾斜した第1磁石41の第1面41A及び第2磁石42の第1面42A、第1仮想平面VP1並びに第2仮想平面VP2で囲まれた磁界検出部配置領域Sに設けられていることで、磁界検出部3に印加される磁界の強度(磁束密度)を増大させることができ、磁界検出部3に印加される磁界の向き(角度)の範囲を増加させることができ、位置検出装置1における検出対象物7の位置検出精度を向上させることができる。なお、本実施形態においては、第2仮想平面VP2上に磁界検出部3が位置しているが、この態様に限定されるものではなく、磁界検出部3は、磁界検出部配置領域S内である限りにおいて、当該平面上に位置していなくてもよい。
【0034】
第1磁石41及び第2磁石42の間隔D4は、X方向に沿って移動する検出対象物7の移動量に応じて適宜設定されればよく、少なくとも検出対象物7の最大移動量以上に設定されればよい。なお、第1磁石41及び第2磁石42の間隔D4は、第1端辺411と第1端辺421との間の長さであって、X方向に平行な長さである。
【0035】
磁界検出部3は、第1磁石41及び第2磁石42により発生する磁界の向きを検出する。具体的には、磁界検出部3は、第1磁石41及び第2磁石42により発生し、磁界検出部3に対して印加される磁界の向き(ベクトル)、すなわち磁界検出部3における磁力線の向きを検出する。磁界検出部3は、第1磁界検出部31及び第2磁界検出部32を含んでいればよい。磁界検出部3(第1磁界検出部31及び第2磁界検出部32)は、例えば、ホール素子、ホールIC(Integrated Circuit)、GMR素子、TMR素子等を磁界検出素子として含んでいればよい。磁界検出部3は、X方向に沿った感磁方向と、Z方向に沿った感磁方向とを有する。Z方向は、X方向に直交し、かつ第1仮想平面VP1及び第2仮想平面VP2に直交する。
【0036】
本実施形態において、磁界検出部3は、第1磁界検出部31及び第2磁界検出部32を一体的に(モノリシックに)形成してワンチップ化したものであってもよいし、第1磁界検出部31及び第2磁界検出部32を樹脂封止してワンパッケージ化したものであってもよいし、第1磁界検出部31及び第2磁界検出部32を別個独立に樹脂封止したものであってもよい。後述するように、磁界検出部3に含まれる第1磁界検出部31の出力BX1,BZ1及び第2磁界検出部32の出力BX2,BZ2の差分を用いて下記式により逆正接(arctangent,ATAN)演算をすることで、磁界検出部3に印加される磁界の向き(ベクトル)を角度値(検出値)θBとして求める。このように、当該角度値の演算に第1磁界検出部31及び第2磁界検出部32のそれぞれの出力の差分を用いることで、位置検出装置1における検出対象物7の位置検出精度を向上させることができる。
【0037】
【0038】
本実施形態に係る位置検出装置1において、第1磁石41及び第2磁石42は、磁界検出部3の中心からのX方向の距離を同一とするように設けられているのが好ましい。すなわち、第1磁界検出部31から第1磁石41までの距離(X方向に沿った距離)と、第2磁界検出部32から第2磁石42までの距離(X方向に沿った距離)とが同一であるのが好ましい。当該距離が同一であることで、位置検出装置1における検出対象物7の位置検出精度を向上させることができる。
【0039】
本実施形態に係る位置検出装置1は、磁界検出部3の±X側に隣接するヨーク部5を備えていてもよい。ヨーク部5は、磁界検出部3の+X側に位置する第1ヨーク部51と、磁界検出部3の-X側に位置する第2ヨーク部52とを含んでいてもよい。第1ヨーク部51及び第2ヨーク部52は、Y方向から見たときに、第1ヨーク部51及び第2ヨーク部52の間に磁界検出部3を挟むように設けられていればよい。磁界検出部3の位置ずれ等により、第1磁界検出部31から第1磁石41までの距離と第2磁界検出部32から第2磁石42までの距離とが異なる場合、第1磁界検出部31及び第2磁界検出部32のそれぞれに印加される磁界の強度が不均一となることで、磁界検出部3からの出力信号の精度が悪化してしまう。しかしながら、そのような場合であっても、位置検出装置1がヨーク部5を備えることで、位置検出装置1における検出対象物7の位置検出精度を向上させることができる。
【0040】
第1ヨーク部51及び第2ヨーク部52は、Z方向から見たときに、長手方向をY方向とする長方形状を有していてもよいし(
図4A及び
図4B参照)、互いに開口部を向かい合わせたコの字状(U字状又はC字状)を有していてもよい(
図5A及び
図5B参照)。また、第1ヨーク部51及び第2ヨーク部52は、互いに連続した一体物であって、Z方向から見たときに、磁界検出部3の周囲を囲む枠状(ロの字状)を有していてもよい(
図6A及び
図6B参照)。さらに、第1ヨーク部51及び第2ヨーク部52の+Z側の端面51A,52Aは、第1磁石41の第1面41A及び第2磁石42の第1面42Aと同様に、第2仮想平面VP2に対して所定の角度(例えば第1傾斜角度θ41及び第2傾斜角度θ42と同一角度)で傾斜していてもよい(
図7参照)。当該端面51A,52Aが傾斜していることで、第1ヨーク部51及び第2ヨーク部52の体積を相対的に大きくすることができ、位置検出装置1における検出対象物7の位置検出精度をさらに向上させることができる。なお、本実施形態に係る位置検出装置1がヨーク部5(第1ヨーク部51及び第2ヨーク部52)を備える場合において、第1傾斜角度θ41及び第2傾斜角度θ42は、それぞれ28.5~32.5°の範囲内であればよく、29.5~31.25°の範囲内であるのが好ましい。
【0041】
第1ヨーク部51及び第2ヨーク部52は、例えばNiFe等の磁性材料により構成される。好適には、第1ヨーク部51及び第2ヨーク部52は、同一の磁性材料により構成される。
【0042】
磁界検出部3と第1ヨーク部51との間の距離L1と、磁界検出部3と第2ヨーク部52との間の距離L2とは、同一であるのが好ましい。距離L1,L2が同一であることで、位置検出装置1における検出対象物7の位置検出精度を向上させることができる。なお、距離L1,L2は、Z方向から見たときに、磁界検出部3の中心と第1ヨーク部51及び第2ヨーク部52の磁界検出部3側の面との間の距離を意味する。
【0043】
図8に示すように、本実施形態に係る位置検出装置1は、信号処理部6を備える。信号処理部6は、磁界検出部3から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D(アナログ-デジタル)変換部61と、A/D変換部61によりデジタル変換されたデジタル信号を演算処理する演算部62とを含む。なお、演算部62にて演算処理された演算処理結果をアナログ信号として出力する場合には、信号処理部6は、演算部62の下流側にD/A(デジタル-アナログ)変換部(図示を省略)をさらに含んでいればよい。
【0044】
信号処理部6は、第1磁石41及び第2磁石42から発生し、磁界検出部3に印加される磁界の方向のX方向に対する角度を表す検出値θBを生成する。検出値θBは、検出対象物7の磁界検出部3に対する相対位置と対応関係を有する。
【0045】
A/D変換部61は、磁界検出部3から出力されるセンサ信号(電流に関するアナログ信号)をデジタル信号に変換し、当該デジタル信号が演算部62に入力される。演算部62は、A/D変換部61によりアナログ信号から変換されたデジタル信号についての演算処理を行う。この演算部62は、例えば、マイクロコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成される。
【0046】
本実施形態において、第1磁石41及び第2磁石42から発生し、磁界検出部3に印加される磁界の向きが、±X方向への検出対象物7の移動に伴い変化すると、磁界検出部3に対する検出対象物7の±X方向における相対的な位置に対応するセンサ信号が磁界検出部3から出力される。このセンサ信号を用いて信号処理部6により検出値θBが生成される。なお、例えば、センサ電源がオフとなった後に再度オンとなった場合でも、検出値θBは変化せず、絶対位置の検出が可能である。
【0047】
本実施形態に係る位置検出装置1によれば、第1磁石41の第1面41A及び第2磁石42の第1面42Aが第2仮想平面VP2に対して傾斜していることで、磁界検出部3に印加される磁界の強度(磁束密度)を増大させることができ、磁界検出部3に印加される磁界の向き(角度)の範囲を増加させることができ、位置検出装置1における検出対象物7の位置検出精度を向上させることができる。
【0048】
本実施形態に係る位置検出装置1は、所定の筐体11に収容されることで、位置検出モジュール10を構成する(
図9参照)。本実施形態における位置検出モジュール10は、位置検出装置1と、信号処理部6と、位置検出装置1及び信号処理部6を収容する筐体11とを備える。位置検出装置1及び信号処理部6は、樹脂により構成される支持体12により支持された状態で筐体11内に収容されている。筐体11は、位置検出装置1の磁界検出部3から出力されるセンサ信号を用いて信号処理部6にて生成された検出値θ
Bを外部に取り出すためのコネクタ13を有する。
【0049】
上記実施形態における位置検出装置1及びそれを有する位置検出モジュール10は、実質的に直線的に移動する検出対象物7の位置変化を検知する用途に用いることができる。本実施形態に係る位置検出装置1を備える位置検出モジュール10は、例えば、クラッチシステムにおけるクラッチの位置検出装置等として用いられ得る。例えば、
図10に示すように、本実施形態に係る位置検出装置1を備える位置検出モジュール10は、車両クラッチペダル等のペダル、ECU(Electronic Control Unit)101及びクラッチ102を備えるクラッチシステム100において、車両クラッチペダルの踏み込みによって移動するクラッチ102の位置を検出可能に設けられる。
【0050】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0051】
上記実施形態において、磁界検出部3として、第1磁界検出部31及び第2磁界検出部32を含む態様を例に挙げて説明したが、この態様に限定されるものではなく、例えば、磁界検出部3は、1つの磁界検出部(例えば第1磁界検出部31)のみを含むものであってもよい(
図4C参照)。
【実施例】
【0052】
以下、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0053】
〔試験例1〕
図11に示すように磁界検出部3として第1磁界検出部31のみを含み、第1磁石41の第1面41Aの第1傾斜角度θ41及び第2磁石42の第1面42Aの第2傾斜角度θ42をそれぞれ0°とした位置検出装置(Sample 1)を用い、磁界検出部3に印加される磁場強度(磁束密度)、磁界検出部3に印加される磁界の角度範囲及び信号処理部6から出力される検出値の誤差をシミュレーションにより求めた。結果を
図12A~12Cに示す。
【0054】
〔試験例2〕
図13に示すように磁界検出部3として第1磁界検出部31のみを含み、第1磁石41の第1面41Aの第1傾斜角度θ41及び第2磁石42の第1面42Aの第2傾斜角度θ42をそれぞれ30°とした位置検出装置1(Sample 2)を用いた以外は、試験例1と同様にして磁界検出部3に印加される磁場強度(磁束密度)、磁界検出部3に印加される磁界の角度範囲及び信号処理部6から出力される検出値の誤差をシミュレーションにより求めた。結果を
図14A~14Cに示す。
【0055】
〔試験例3〕
図1に示す構成を有する位置検出装置1(Sample 3)を用いた以外は、試験例1と同様にして磁界検出部3(第1磁界検出部31及び第2磁界検出部32)に印加される磁場強度(磁束密度)、磁界検出部3に印加される磁界の角度範囲及び信号処理部6から出力される検出値の誤差をシミュレーションにより求めた。なお、位置検出装置1において、第1磁石41の第1面41Aの第1傾斜角度θ41及び第2磁石42の第1面42Aの第2傾斜角度θ42をそれぞれ30°とした。結果を
図15A~15Cに示す。
【0056】
図12A~12C、
図14A~14C及び
図15A~15Cにおいて、横軸は検出対象物7のストローク量(規格化した数値)を表す。
図15Aにおいて、実線は、第1磁界検出部31に印加される磁界の磁束密度(mT)を表し、破線は、第2磁界検出部32を備える場合における第2磁界検出部32に印加される磁界の磁束密度(mT)を表す。
図12B、14B、15Bの縦軸は、磁界検出部3に印加される磁界の角度(deg)を表し、
図12C、14C、15Cの縦軸は、信号処理部6から出力される検出値の誤差(mm)を表す。
【0057】
図12A~12C及び
図14A~14Cに示すように、第1磁石41の第1面41A及び第2磁石42の第
1面42Aを第2仮想平面VP2に対して傾斜させることで、磁界検出部3に印加される磁界の磁束密度を増大させ得ることが確認された。また、試験例3においては、磁界検出部3が第1磁界検出部31及び第2磁界検出部32を含むことにより、検出値の最大誤差(mm)は0.27mmとなっており、試験例1及び2と比較して、検出対象物7の位置検出精度がより改善している。
【0058】
〔試験例4〕
試験例3の位置検出装置1(Sample 3)において、第1磁界検出部31及び第2磁界検出部32を+X方向(第1磁石41側)に0.1mm変位させた以外は、試験例3(Sample 3)と同様の構成を有する位置検出装置1(Sample 4)を用い、試験例1と同様にして磁界検出部3に印加される磁場強度(磁束密度)、磁界検出部3に印加される磁界の角度範囲及び信号処理部6から出力される検出値の誤差をシミュレーションにより求めた。結果を
図16A~16Cに示す。
【0059】
〔試験例5〕
図4A及び
図4Bに示すようにヨーク部5(第1ヨーク部51及び第2ヨーク部52)を備える位置検出装置1(Sample 5)を用いた以外は、試験例1と同様にして磁界検出部3に印加される磁場強度(磁束密度)、磁界検出部3に印加される磁界の角度範囲及び信号処理部6から出力される検出値の誤差をシミュレーションにより求めた。結果を
図17A~17Cに示す。
【0060】
〔試験例6〕
試験例5の位置検出装置1(Sample 5)において、第1磁界検出部31及び第2磁界検出部32を+X方向(第1磁石41側)に0.1mm変位させた以外は、試験例5(Sample 5)と同様の構成を有する位置検出装置1(Sample 6)を用い、試験例1と同様にして磁界検出部3に印加される磁場強度(磁束密度)、磁界検出部3に印加される磁界の角度範囲及び信号処理部6から出力される検出値の誤差をシミュレーションにより求めた。結果を
図18A~18Cに示す。
【0061】
〔試験例7〕
図4Cに示すように磁界検出部3が第1磁界検出部31のみを含み、ヨーク部5(第1ヨーク部51及び第2ヨーク部52)を備える位置検出装置1(Sample 7)を用いた以外は、試験例1と同様にして磁界検出部3に印加される磁場強度(磁束密度)、磁界検出部3に印加される磁界の角度範囲及び信号処理部6から出力される検出値の誤差をシミュレーションにより求めた。結果を
図19A~19Cに示す。
【0062】
〔試験例8〕
試験例7の位置検出装置1(Sample 7)において、第1磁界検出部31を+X方向(第1磁石41側)に0.1mm変位させた以外は、試験例7(Sample 7)と同様の構成を有する位置検出装置1(Sample 8)を用い、試験例1と同様にして磁界検出部3に印加される磁場強度(磁束密度)、磁界検出部3に印加される磁界の角度範囲及び信号処理部6から出力される検出値の誤差をシミュレーションにより求めた。結果を
図20A~20Cに示す。
【0063】
図16A~20Cにおいて、横軸は検出対象物7のストローク量(規格化した数値)を表す。
図16A、17A、18A、19A、20Aにおいて、実線は、第1磁界検出部31に印加される磁界の磁束密度(mT)を表し、破線は、第2磁界検出部32に印加される磁界の磁束密度(mT)を表す。
図16B、17B、18B、19B、20Bの縦軸は、磁界検出部3に印加される磁界の角度(deg)を表し、
図16C、17C、18C、19C、20Cの縦軸は、信号処理部6から出力される検出値の誤差(mm)を表す。
【0064】
図16A~20Cに示すように、磁界検出部3(第1磁界検出部31及び第2磁界検出部32)の位置ずれ(X方向における位置ずれ)が生じた場合であっても、磁界検出部3の±X側にヨーク部5(第1ヨーク部51及び第2ヨーク部52)が設けられていることで、第1磁界検出部31及び第2磁界検出部32に印加される磁界のバランスを改善可能であること、磁界検出部3に印加される磁界の角度範囲を拡大し、位置検出装置1の分解能を向上させ得ること、並びに位置検出装置1の位置検出精度を向上させ得ることが確認された。
図20Aに示すように、上記は、磁界検出部3が第1磁界検出部31のみを備える場合も同様である。
【0065】
また、試験例5においては、磁界検出部3が第1磁界検出部31及び第2磁界検出部32を含むこと、ヨーク部5(第1ヨーク部51及び第2ヨーク部52)が設けられていることで、検出値の最大誤差(mm)は0.18mmとなっており、試験例1~3、及び試験例7と比較して、検出対象物7の位置検出精度がより改善している。
【0066】
〔試験例9〕
試験例3(Sample 3)と同様の構成を有する位置検出装置1を用い、第1磁石41の第1面41Aの第1傾斜角度θ41及び第2磁石42の第1面42Aの第2傾斜角度θ42のそれぞれを25°から35°の間で変化させた場合における信号処理部6から出力される検出値の誤差をシミュレーションにより求めた。結果を
図21に示す。
【0067】
〔試験例10〕
試験例5(Sample 5)と同様の構成を有する位置検出装置1を用い、第1磁石41の第1面41Aの第1傾斜角度θ41及び第2磁石42の第1面42Aの第2傾斜角度θ42のそれぞれを25°から35°の間で変化させた場合における信号処理部6から出力される検出値の誤差をシミュレーションにより求めた。結果を
図22に示す。
【0068】
図21に示すように、第1磁石41の第1面41Aの第1傾斜角度θ41及び第2磁石42の第
1面42Aの第2傾斜角度θ42を28.5~31.5°の範囲内とすることで、信号処理部6から出力される検出値の誤差を1mm以内にすることができ、第1傾斜角度θ41及び第2傾斜角度θ42を29.5~30.75°の範囲内とすることで、信号処理部6から出力される検出値の誤差を0.5mm以内にすることができ、位置検出装置1における位置検出精度を高くすることができることが確認された。また、
図22に示すように、位置検出装置1がヨーク部5を備えることで、第1傾斜角度θ41及び第2傾斜角度θ42を28.5~32.5°の範囲内としても、信号処理部6から出力される検出値の誤差を1mm以内にすることができ、第1傾斜角度θ41及び第2傾斜角度θ42を29.5~31.25°の範囲内としても、信号処理部6から出力される検出値の誤差を0.5mm以内にすることができ、位置検出装置1における位置検出精度を高くすることができることが確認された。
【符号の説明】
【0069】
1…位置検出装置
3…磁界検出部
31…第1磁界検出部
32…第2磁界検出部
41…第1磁石
42…第2磁石
5…ヨーク部
51…第1ヨーク部
52…第2ヨーク部
6…信号処理部
10…位置検出モジュール
11…筐体