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特許7532465注意欠陥障害及び22q症候群の治療のための非選択的代謝型グルタメート受容体アクチベーター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】注意欠陥障害及び22q症候群の治療のための非選択的代謝型グルタメート受容体アクチベーター
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/454 20060101AFI20240805BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240805BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240805BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240805BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240805BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20240805BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61K31/454
A61P25/14
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P25/00
A61P25/20
A61P25/22
【請求項の数】 41
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022155714
(22)【出願日】2022-09-29
(62)【分割の表示】P 2018512234の分割
【原出願日】2016-09-07
(65)【公開番号】P2023011558
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】62/215,628
(32)【優先日】2015-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/215,633
(32)【優先日】2015-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/215,636
(32)【優先日】2015-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/215,673
(32)【優先日】2015-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】301040958
【氏名又は名称】ザ・チルドレンズ・ホスピタル・オブ・フィラデルフィア
【氏名又は名称原語表記】THE CHILDREN’S HOSPITAL OF PHILADELPHIA
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハゥコーナルソン, ホーコン
(72)【発明者】
【氏名】カオ, チャーリー
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-535985(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0149677(US,A1)
【文献】Am. J. Psychiatry, (2014), Vol. 171, p. 627-639
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/454
A61K 45/00
A61P 43/00
A61P 25/14
A61P 25/00
A61P 25/20
A61P 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量のファソラセタムを含む、対象における注意欠陥多動性障害(ADHD)を治療するための医薬であって、前記ファソラセタムが、対象に投与され、それによりADHDが治療され、
対象は、代謝型グルタメート受容体(mGluR)ネットワーク遺伝子における、少なくとも1の以下の遺伝子変化:
(a)少なくとも1のTier1 mGluRネットワーク遺伝子におけるコピー数多様性(CNV)であって、Tier1 mGluRネットワーク遺伝子は、図1に記載のTier1遺伝子である、CNV、
(b)少なくとも1のTier2 mGluRネットワーク遺伝子におけるCNVであって、Tier2 mGluRネットワーク遺伝子は、図2に記載のTier2遺伝子である、CNV、及び
(c)少なくとも1のTier3 mGluRネットワーク遺伝子におけるCNVであって、Tier3 mGluRネットワーク遺伝子は、図3に記載のTier3遺伝子である、CNV、
を有する、医薬。
【請求項2】
ファソラセタムを含む、対象におけるADHDを治療するための医薬であって、
ファソラセタムは、ADHDを有する対象に、少なくとも1臨床試験の対象の大部分において少なくとも4週間の治療後に1若しくは2の臨床的総合印象-改善(CGI-I)スコア及び/又は少なくとも4週間の治療後にADHD評価尺度スコアの少なくとも25%、例えば、少なくとも30%、少なくとも35%若しくは少なくとも40%の改善をもたらすのに有効な量で、投与され、
対象は、代謝型グルタメート受容体(mGluR)ネットワーク遺伝子における、少なくとも1の以下の遺伝子変化:
(a)少なくとも1のTier1 mGluRネットワーク遺伝子におけるコピー数多様性(CNV)であって、Tier1 mGluRネットワーク遺伝子は、図1に記載のTier1遺伝子である、CNV、
(b)少なくとも1のTier2 mGluRネットワーク遺伝子におけるCNVであって、Tier2 mGluRネットワーク遺伝子は、図2に記載のTier2遺伝子である、CNV、及び
(c)少なくとも1のTier3 mGluRネットワーク遺伝子におけるCNVであって、Tier3 mGluRネットワーク遺伝子は、図3に記載のTier3遺伝子である、CNV、
を有する、医薬。
【請求項3】
前記CNVが、欠失又は重複である、請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項4】
前記対象が、少なくとも2のmGluRネットワーク遺伝子における遺伝子変化を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項5】
前記対象が、小児又は青年対象、例えば、年齢が、5歳から17歳の間、8歳から17歳の間、5歳から12歳の間、5歳から8歳の間、8歳から12歳の間又は12歳から17歳の間の対象である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項6】
前記対象が成人である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
ファソラセタムは、ファソラセタム一水和物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項8】
前記ファソラセタムが、以下の
(i)刺激薬、例えば、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、若しくはリスデキサンフェタミン;
(ii)非刺激薬、例えば、アトモキセチン、クロニジン、若しくはグアンファシン;
(iii)抗うつ薬、例えば、フルオキセチン、エスシタロプラム、ブプロピオン、ミルタザピン、アミトリプチリン、イミプラミン、ベンラファキシン、セルトラリン、パロキセチン、三環式抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、ノルエピネフリン・ドーパミン再取り込み阻害剤、若しくはモノアミンオキシダーゼ阻害剤;
(iv)抗不安薬、例えば、バルビツレート類、プレガバリン、若しくはベンゾジアゼピン類(クロルジアゼポキシド、クロラゼペート、ジアゼパム、フルラゼパム、ハラゼパム、プラゼパム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、クロナゼパム、フルニトラゼパム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、アジナゾラム、アルプラゾラム、エスタゾラム、トリアゾラム、クリマゾラム、ロプラゾラム若しくはミダゾラムを含む);
(v)抗精神病薬、例えば、アリピプラゾール若しくはリスペリドン;及び
(vi)ベータ遮断薬、例えば、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、エスモロール、ネビボロール、メトプロロール、カルテロール、ペンブトロール、ピンドロール、カルベジロール、ラベタロール、レボブノロール、メチプラノロール、ナドロール、プロプラノロール、ソタロール、若しくはチモロール
の少なくとも1と組み合わせて投与される、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項9】
前記ファソラセタムが、非薬物療法、例えば、脳刺激、例えば、迷走神経刺激、反復経頭蓋磁気刺激、磁気痙攣療法、及び/又は脳深部刺激と組み合わせて投与される、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項10】
前記対象が、ADHDに加えて、反抗挑戦性障害(ODD)、22q欠失/重複症候群、不安障害、気分障害、恐怖症、素行障害、トゥレット症候群、自閉症、怒りの制御困難、破壊行動、強迫性障害(OCD)、自傷性皮膚症、発達障害、又は運動障害のうちの少なくとも1を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項11】
前記対象が、反抗挑戦性障害(ODD)、22q欠失/重複症候群、不安障害、素行障害、トゥレット症候群、自閉症、怒りの制御困難、破壊行動、気分障害、恐怖症、強迫性障害(OCD)、自傷性皮膚症、発達障害、又は運動障害のうちの少なくとも1を有しない、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬。
【請求項12】
前記対象が、ODD、22q欠失/重複症候群、不安障害、気分障害、恐怖症、素行障害、トゥレット症候群、自閉症、怒りの制御困難、破壊行動、強迫性障害(OCD)、自傷性皮膚症、発達障害、及び運動障害のいずれも有しない、請求項11に記載の医薬。
【請求項13】
前記対象が、ODDを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項14】
対象におけるODDを、例えば、怒り及び易怒性、口論及び反抗的態度、並びに/又は執念深さの症状を低減させることにより治療する、請求項13に記載の医薬。
【請求項15】
前記遺伝子変化が、前記対象から得られた試料中の核酸を少なくとも1のmGluRネットワーク遺伝子の遺伝子変化について分析することを含むプロセスにより検出される、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項16】
前記プロセスが、前記核酸を少なくとも5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、又は全てのTier1 mGluRネットワーク遺伝子のCNVについて分析することを含む、請求項15に記載の医薬。
【請求項17】
前記プロセスが、前記核酸を少なくとも5、10、20、30、50、100、150、175、又は全てのTier2 mGluRネットワーク遺伝子のCNVについて分析することを含む、請求項15又は16に記載の医薬。
【請求項18】
前記プロセスが、前記核酸を少なくとも5、10、20、50、100、200、300、400、500、又は全てのTier3 mGluRネットワーク遺伝子のCNVについて分析することを含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項19】
前記プロセスが、GRM1、GRM2、GRM3、GRM4、GRM5、GRM6、GRM7又はGRM8のうちの一又は複数のCNVを評価しない、請求項15から18のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項20】
前記対象が、Tier1又はTier2 mGluRネットワーク遺伝子におけるCNVを有するが、Tier3 mGluRネットワーク遺伝子におけるCNVを有しない、請求項1から19のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項21】
前記対象においてADHDを治療することが、前記対象における少なくとも1のADHD症状、例えば、不注意、多動性又は衝動性を低減させることを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項22】
前記対象が、前記ファソラセタムでの少なくとも1、2、3又は4週間の治療後に症状における以下の変化:
a.前記対象が怒り制御困難の症状を有し、該怒り制御症状が低減される;
b.前記対象が破壊行動の症状を有し、該破壊行動症状が低減される;
c.前記対象のCGI-Iが少なくとも1又は少なくとも2低下される;
d.1、2、3又は4週間の治療後の前記対象のCGI-Iスコアが1又は2である;
e.1、2、3又は4週間の治療後の前記対象のCGI-Sスコアが1である;
f.前記対象のADHD評価尺度スコアが、少なくとも25%、例えば、少なくとも30%、少なくとも35%又は少なくとも40%低下される;
g.前記対象が不注意の症状を有し、該不注意症状が低減される;
h.前記対象が多動性の症状を有し、該多動性症状が低減される;
i.前記対象が衝動性の症状を有し、該衝動性症状が低減される;
j.前記対象が、ODDの症状、例えば、怒り及び易怒性、口論及び反抗的態度、及び/又は執念深さを有し、該ODD症状が低減される;
k.前記対象が素行障害の症状を有し、該素行障害症状が低減される;
l.前記対象が不安の症状を有し、該不安症状が低減される;
m.前記対象が、トゥレット症候群の症状を有し、該トゥレット症候群症状が低減される;
n.前記対象が自閉症の症状を有し、該自閉症症状が低減される;並びに
o.前記対象が運動障害の症状を有し、該運動障害症状が低減される
のうちの一又は複数を有する、請求項1から21のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項23】
治療上有効量のファソラセタムを含む、対象における22q欠失及び/又は重複症候群を治療するための医薬であって、ファソラセタムは、22q欠失及び/又は重複症候群を有する対象に投与され、それにより22q欠失及び/又は重複症候群が治療され、
対象は、代謝型グルタメート受容体(mGluR)ネットワーク遺伝子における、少なくとも1の以下の遺伝子変化:
(a)少なくとも1のTier1 mGluRネットワーク遺伝子におけるコピー数多様性(CNV)であって、Tier1 mGluRネットワーク遺伝子は、図1に記載のTier1遺伝子である、CNV、
(b)少なくとも1のTier2 mGluRネットワーク遺伝子におけるCNVであって、Tier2 mGluRネットワーク遺伝子は、図2に記載のTier2遺伝子である、CNV、及び
(c)少なくとも1のTier3 mGluRネットワーク遺伝子におけるCNVであって、Tier3 mGluRネットワーク遺伝子は、図3に記載のTier3遺伝子である、CNV、
を有する、医薬。
【請求項24】
前記対象が、RANBP1におけるコピー数多様性(CNV)を有する、請求項23に記載の医薬。
【請求項25】
前記対象が、22q11.2における欠失又は重複を有する、請求項23又は24に記載の医薬。
【請求項26】
前記対象が、Tier1、Tier2又はTier3などの、少なくとも1のmGluRネットワーク遺伝子における遺伝子変化を有する、請求項23から25のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項27】
前記対象が、注意欠陥多動性障害(ADHD)を有する、請求項23から26のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項28】
前記対象が、小児又は青年対象、例えば、年齢が5歳から17歳の間、8歳から17歳の間、5歳から12歳の間、5歳から8歳の間、8歳から12歳の間、又は12歳から17歳の間の対象である、請求項23から27のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項29】
前記対象が、成人対象である、請求項23から27のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項30】
前記ファソラセタムが、ファソラセタム一水和物である、請求項23から29のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項31】
前記ファソラセタムが、以下の
(i)刺激薬、例えば、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、若しくはリスデキサンフェタミン;
(ii)非刺激薬、例えば、アトモキセチン、クロニジン、若しくはグアンファシン;
(iii)抗うつ薬、例えば、フルオキセチン、エスシタロプラム、ブプロピオン、ミルタザピン、アミトリプチリン、イミプラミン、ベンラファキシン、セルトラリン、パロキセチン、三環式抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、ノルエピネフリン・ドーパミン再取り込み阻害剤、若しくはモノアミンオキシダーゼ阻害剤;
(iv)抗不安薬、例えば、バルビツレート類、プレガバリン、若しくはベンゾジアゼピン類(クロルジアゼポキシド、クロラゼペート、ジアゼパム、フルラゼパム、ハラゼパム、プラゼパム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、クロナゼパム、フルニトラゼパム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、アジナゾラム、アルプラゾラム、エスタゾラム、トリアゾラム、クリマゾラム、ロプラゾラム若しくはミダゾラムを含む);
(v)抗精神病薬、例えば、アリピプラゾール若しくはリスペリドン;及び
(vi)ベータ遮断薬、例えば、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、エスモロール、ネビボロール、メトプロロール、カルテロール、ペンブトロール、ピンドロール、カルベジロール、ラベタロール、レボブノロール、メチプラノロール、ナドロール、プロプラノロール、ソタロール、若しくはチモロール;
の1つ以上と組み合わせて投与される、請求項23から30のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項32】
前記ファソラセタムが、非薬物療法、例えば、脳刺激、例えば、迷走神経刺激、反復経頭蓋磁気刺激、磁気痙攣療法、及び/又は脳深部刺激と組み合わせて投与される、請求項23から31のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項33】
前記対象が、反抗挑戦性障害(ODD)、不安障害、素行障害、トゥレット症候群、自閉症、怒りの制御困難、破壊行動、気分障害、恐怖症、強迫性障害(OCD)、自傷性皮膚症、発達障害、又は運動障害のうちの少なくとも1を有する、請求項23から32のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項34】
前記対象が、反抗挑戦性障害(ODD)、不安障害、素行障害、トゥレット症候群、自閉症、怒りの制御困難、破壊行動、気分障害、恐怖症、強迫性障害(OCD)、自傷性皮膚症、発達障害、又は運動障害のうちの少なくとも1を有しない、請求項23から32のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項35】
前記対象が、ADHDを有するが、ODD、素行障害、不安障害、トゥレット症候群、自閉症、怒りの制御困難、破壊行動、気分障害、恐怖症、強迫性障害(OCD)、又は運動障害のうちの少なくとも1を有しない、請求項34に記載の医薬。
【請求項36】
前記対象が、ODD、素行障害、不安障害、トゥレット症候群、自閉症、怒りの制御困難、破壊行動、気分障害、恐怖症、強迫性障害(OCD)、自傷性皮膚症、発達障害、及び運動障害のいずれも有しない、請求項34又は35に記載の医薬。
【請求項37】
前記対象が、ODDを有する、請求項23から34のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項38】
前記対象におけるODDを、例えば、怒り及び易怒性、口論及び反抗的態度、並びに/又は執念深さの症状を低減させることにより治療する、請求項37に記載の医薬。
【請求項39】
22q欠失及び/又は重複症候群が、前記対象からの試料において22q11.2における欠失若しくは重複の有無並びに/又はRANBP1の遺伝子変化の有無を検出するための遺伝子検査を含むプロセスにより診断される、請求23から38のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項40】
前記ファソラセタムが、少なくとも1臨床試験の対象の大部分において4週間の治療後に1若しくは2の臨床的総合印象-改善(CGI-I)スコア、及び/又は4週間の治療後にADHD評価尺度スコアの少なくとも25%、例えば、少なくとも30%、少なくとも35%若しくは少なくとも40%の改善をもたらすのに有効な量で投与される、請求項23から39のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項41】
22q欠失及び/又は重複症候群が、前記対象におけるADHDの少なくとも1の症状、例えば、衝動性、多動性又は不注意が改善された場合、治療されたと見なされる、請求項23から40のいずれか一項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
本願は、2015年9月8日に各々出願した米国特許仮出願第62/215628号、同第62/215633号、同第62/215636号及び同第62/215673号という4米国特許仮出願の優先権を主張するものであり、前記米国特許仮出願の各々は、その全内容が本明細書に参照により援用される。
【0002】
本願は、注意欠陥多動性障害(ADHD)及び22q症候群を、例えば、少なくとも1の代謝型グルタメート受容体(mGluR)ネットワーク遺伝子の遺伝子変化を有する対象において、代謝型グルタメート受容体の非選択的アクチベーターで治療することに関する。
【背景技術】
【0003】
注意欠陥多動性障害(ADHD)は、小児期及びその後の人生において有意な障害を引き起こし得る神経発達障害である。ADHDの症状は、不注意、多動性及び衝動性を含む。
【0004】
本発明者らは、約13,000のコントロールと比較して約3500のADHD症例におけるコピー数多様性(CNV)を比較する大規模全ゲノム研究を以前に行い、代謝型グルタメート受容体(mGluRタンパク質又はGRM遺伝子)をコードする遺伝子のCNV並びにmGluRと相互作用するタンパク質をコードする遺伝子のCNVが、コントロールと比較してADHD症例におけるほうが有意に高頻度に存在することを見いだした。(国際公開第2012/027491号及び米国特許出願公開第2013/0203814号;Elia等、Nature Genetics, 44(1):78-84(2012)を参照されたい)。個々の遺伝子変化各々の頻度は、極めて低いように思われる。しかし、総合的には、コントロールの約1%と比較してADHD症例の約11%以上が、mGluRネットワークタンパク質をコードする遺伝子の、少なくとも1の遺伝子変化を有する。したがって、ADHD患者は、一又は複数のmGluRネットワーク遺伝子に影響を与える遺伝子変化を有する可能性がコントロール個体より約10倍高い。さらに、ヨーロッパ系アメリカ人集団におけるおおよそ1000症例及び4000コントロールのmGluR経路のネットワーク分析により、mGluRシグナル伝達経路に関与するタンパク質及びそれらの相互作用タンパク質をコードする遺伝子のコピー数多様性(CNV)が、コントロールと比較してADHD症例の約20%に影響を及ぼすことが明らかになった。
【0005】
ADHDの治療法はないが、行動療法と薬物療法の組合せにより症状を管理することができる。AHDHのための現在認可されている治療薬は、いくつかの神経刺激薬及び非精神刺激薬を含む。現行の薬物、特に刺激薬は、潜在的に有害な多数の副作用を有し、且つ短い活性半減期を有するので、理想的ではない。その上、刺激薬は、適格な患者によっても不適格な患者によっても同様に誤用及び乱用されることが多い。それ故、さらなるADHD薬が必要とされている。加えて、ADHD患者の遺伝的不均一性を考えれば、患者の根本的遺伝子プロファイルに基づいて確かな薬物療法スキームを患者に合わせて作ることによりADHD治療が改善される可能性もある。
【0006】
本発明者らは、NFC-1又はファソラセタム一水和物とも呼ばれる、mGluRタンパク質の非選択的アクチベーターを試験する臨床試験を、mGluRネットワーク遺伝子をコードする遺伝子の、少なくとも1の遺伝子変化を有する小児ADHD患者において行った。
【0007】
この治験には、22番染色体の22q11.2領域における欠失を特徴とする22q症候群(22q欠失症候群)又は重複を特徴とする22q症候群(22q重複症候群)を有するADHD患者も組み入れた。これらの症候群は、児童2000-4000のうち少なくとも約1に起こり得るものであり、30-40もの遺伝子の破壊を伴い得る。影響を受け得る遺伝子には、mGluRネットワーク遺伝子であるRANBP1がある。22q11.2における欠失又は重複を有する児童は、ADHD、自閉症スペクトラム(ASD)及び不安障害をはじめとする精神障害率が平均率より高く、かなりの割合が、後年に統合失調症等の精神病を発症し得る。その領域の欠失又は重複を有する児童は、様々な知的障害に罹患していることもある。
【0008】
22q症候群患者における精神症状の治療は、心奇形をはじめとするこれらの患者の身体的異常のため、複雑であり得る。例えば、22q症候群集団におけるマイナスの副作用のため、他では広く処方されている神経刺激薬の使用を回避する必要があり得る。したがって、改善された治療的処置が、特に、基礎をなす22q遺伝子症候群を有するADHD、ASD、不安障害又は他の状態の患者には、必要である。
【発明の概要】
【0009】
対象における注意欠陥多動性障害(ADHD)を治療する方法であって、非選択的代謝型グルタメート受容体(mGluR)アクチベーターの治療有効量を対象に投与することによってADHDを治療することを含む方法を本明細書において提供する。
【0010】
対象における注意欠陥多動性障害(ADHD)を治療する方法であって、非選択的代謝型グルタメート受容体(mGluR)アクチベーターの治療有効量を、mGluRネットワーク遺伝子の、少なくとも1の遺伝子変化を有する対象に投与することによってADHDを治療することを含む方法も提供する。
【0011】
さらに、対象におけるADHDを治療する方法であって、非選択的mGluRアクチベーターを、ADHDを有する対象に、少なくとも1の臨床試験の対象の大部分において少なくとも4週間の治療後に1若しくは2の臨床的総合印象-改善(CGI-I)スコア、及び/又は少なくとも4週間の治療後にADHD評価尺度スコアの少なくとも25%、例えば、少なくとも30%、少なくとも35%若しくは少なくとも40%の改善を得るために有効であることが証明された量又は投与レジメンで、投与することを含む方法を、本明細書において提供する。
【0012】
一部の実施態様では、対象は、少なくとも1のmGluRネットワーク遺伝子の遺伝子変化を有する。一部の実施態様では、対象は、少なくとも2のmGluRネットワーク遺伝子の遺伝子変化を有する。
【0013】
一部の実施態様では、対象は、小児又は青年対象、例えば、年齢が5歳から17歳の間、8歳から17歳の間、5歳から12歳の間、5歳から8歳の間、8歳から12歳の間、12歳から18歳の間、13歳から18歳の間、又は12歳から17歳の間の対象である。他の実施態様では、対象は、成人である。
【0014】
一部の実施態様では、非選択的mGluRアクチベーターは、ファソラセタム、例えば、ファソラセタム一水和物(NFC-1)である。
【0015】
アクチベーターがファソラセタムである一部の実施態様では、ファソラセタムは、50-400mg、例えば、100-400mg、又は100-200mg、又は200-400mg、又は100mg、又は200mg、又は300mg、又は400mgの用量で投与され、前記用量は、1日1回、2回又は3回投与される。一部の実施態様では、ファソラセタムは、1日2回100mg、200mg、300mg又は400mg、例えば、1日2回100-200mgの用量で投与される。
【0016】
上記ADHD治療方法の、一部の実施態様では、アクチベーターは、刺激薬、例えば、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、若しくはリスデキサンフェタミンと組み合わせて、及び/又は非刺激薬、例えば、アトモキセチン、クロニジン、若しくはグアンファシンと組み合わせて、及び/又は抗うつ薬、例えば、フルオキセチン、エスシタロプラム、ブプロピオン、ミルタザピン、アミトリプチリン、イミプラミン、ベンラファキシン、セルトラリン、パロキセチン、三環式抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、ノルエピネフリン・ドーパミン再取り込み阻害剤、若しくはモノアミンオキシダーゼ阻害剤と組み合わせて、及び/又は抗不安薬、例えば、バルビツレート類、プレガバリン、若しくはベンゾジアゼピン類(クロルジアゼポキシド、クロラゼペート、ジアゼパム、フルラゼパム、ハラゼパム、プラゼパム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、クロナゼパム、フルニトラゼパム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、アジナゾラム、アルプラゾラム、エスタゾラム、トリアゾラム、クリマゾラム、ロプラゾラム若しくはミダゾラムを含む)と組み合わせて、及び/又は抗精神病薬、例えば、アリピプラゾール若しくはリスペリドンと組み合わせて、及び/又はベータ遮断薬、例えば、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、エスモロール、ネビボロール、メトプロロール、カルテロール、ペンブトロール、ピンドロール、カルベジロール、ラベタロール、レボブノロール、メチプラノロール、ナドロール、プロプラノロール、ソタロール、若しくはチモロールと組み合わせて投与される。
【0017】
一部の実施態様では、アクチベーターは、非薬物療法、例えば、脳刺激、例えば、迷走神経刺激、反復経頭蓋磁気刺激、磁気痙攣療法、及び/又は脳深部刺激と組み合わせて投与される。
【0018】
一部の実施態様では、ADHD対象は、少なくとも1の併存症表現型又は状態、例えば、反抗挑戦性障害(ODD)、不安障害、素行障害、トゥレット症候群、自閉症、怒りの制御困難、破壊行動、強迫性障害(OCD)、自傷性皮膚症、発達障害、又は運動障害を有する。一部の実施態様では、ADHD対象は、22q欠失又は重複症候群を有する。一部の実施態様では、対象は、ODD、不安障害、素行障害、トゥレット症候群、自閉症、22q欠失若しくは重複症候群、怒りの制御困難、破壊行動、強迫性障害(OCD)、自傷性皮膚症、発達障害又は運動障害のうちの少なくとも1を有さないか、或いはこれらのいずれも有さない。一部の実施態様では、対象は、ODDを有する。一部の実施態様では、方法は、対象におけるODDを、例えば、理屈っぽさ及び反抗的態度、執念深さ並びに/又は怒り及び易怒性の症状を低減させることにより治療する。一部の実施態様では、ADHD対象は、併存症表現型、例えば、気分障害又は睡眠障害、例えば不眠症を有する。場合によっては、方法は、気分又は睡眠障害を、例えば、その症状を低減させることにより治療する。一部の実施態様では、対象は、併存症状、例えば、怒りの制御困難及び/又は破壊行動を有する。場合によっては、方法は、これらの症状の一方又は両方を低減させる。一部の実施態様では、対象は、不安の併存症状を有し、場合によっては、方法は、不安症状を低減させる。一部の実施態様では、対象は、OCDを有し、場合によっては、方法は、OCD症状を低減させる。場合によっては、対象は、過剰な皮膚むしり等の、自傷性皮膚症の併存症状を有し、方法は、それらの症状を低減させる。一部の実施態様では、対象は、一又は複数の併存発達障害を有し、場合によっては、方法は、発達障害に関係する症状の重症度を低下させる。
【0019】
一部の実施態様では、方法は、ADHDの行動症状、例えば、不注意、多動性及び/又は衝動性を低減させることができる。一部の実施態様では、方法は、投与中又は投与後の症状、例えば、不注意、多動性及び/又は衝動性を、例えば、対象におけるそれらの症状のうちの一又は複数が低減されたかどうかを判定するために評価することも含む。一部の方法では、そのような評価をADHD評価尺度に基づいて行うことができ、又は臨床全般印象(CGI)尺度、例えば、CGI-重症度若しくはCGI-改善尺度に基づいて行うことができる。例えば、一部の実施態様では、方法は、投与中又は投与後の対象の重症度又は改善についての臨床全般印象を得ることをさらに含む。一部の実施態様では、方法は、対象における臨床全般改善スコア及び/又はADHD評価尺度スコアを改善することができる。場合によっては、症状は、アクチベーターでの少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間又は少なくとも4週間の治療後に低減され得る。
【0020】
上記ADHD治療方法の一部の実施態様では、対象は、mGluRネットワーク遺伝子の、少なくとも1の遺伝子変化、例えば、点突然変異、挿入、欠失、又はコピー数多様性(CNV)を有する。一部の実施態様では、対象は、2以上のmGluRネットワーク遺伝子の遺伝子変化を有する。一部の実施態様では、遺伝子変化は、対象から試料を得ること、前記試料から核酸を任意選択的に単離すること、前記核酸を任意選択的に増幅すること、及び前記核酸を少なくとも1のmGluRネットワーク遺伝子の遺伝子変化について分析することを含む遺伝子検査を含むプロセスによって検出される。
【0021】
一部の実施態様では、治療方法は、アクチベーターの初回投与の前に遺伝子検査の結果を得ることをさらに含む。一部の実施態様では、遺伝子検査は、核酸を少なくとも5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、又は全てのTier1 mGluRネットワーク遺伝子(本願における図1)のCNV又はSNVについて分析することを含む。
【0022】
一部の実施態様では、遺伝子検査は、核酸を少なくとも5、10、20、30、50、100、150、175、又は全てのTier2 mGluRネットワーク遺伝子(図2)のCNV又はSNVについて分析することを含む。一部の実施態様では、方法は、核酸を少なくとも5、10、20、50、100、200 300、400、500、又は全てのTier3 mGluRネットワーク遺伝子(図3)のCNV又はSNVについて分析することを含む。一部の実施態様では、遺伝子検査は、GRM1、GRM2、GRM3、GRM4、GRM5、GRM6、GRM7又はGRM8のうちの一又は複数のCNV及びSNVを評価しない。一部の実施態様では、対象は、GRM1、GRM2、GRM3、GRM4、GRM5、GRM6、GRM7又はGRM8のうちの一又は複数のCNV及びSNVを有さない。
【0023】
対象におけるADHDを治療する方法であって、ファソラセタムを対象に1日1回、2回又は3回投与される50-400mg、例えば、100-400mg、又は100-200mg、又は200-400mg、又は100mg、又は200mg、又は300mg、又は400mgの用量で投与することによってADHDを治療することを含む方法を、本明細書においてさらに提供する。一部のそのような実施態様では、ファソラセタムは、1日2回100mg、200mg、300mg又は400mg、例えば、1日2回100-200mgの用量で投与される。
【0024】
上記ADHD治療方法の一部の実施態様では、対象は、mGluRネットワーク遺伝子の、少なくとも1の遺伝子変化、例えば、点突然変異、挿入、欠失、一塩基多様性(SNV)又はコピー数多様性(CNV)を有する。一部の実施態様では、対象は、2以上のmGluRネットワーク遺伝子の遺伝子変化を有する。一部の実施態様では、遺伝子変化は、対象から試料を得ること、前記試料から核酸を任意選択的に単離すること、前記核酸を任意選択的に増幅すること、及び前記核酸を少なくとも1のmGluRネットワーク遺伝子の遺伝子変化について分析することを含む遺伝子検査を含むプロセスによって検出される。
【0025】
一部の実施態様では、治療方法は、アクチベーターの初回投与の前に遺伝子検査の結果を得ることをさらに含む。一部の実施態様では、遺伝子検査は、核酸を少なくとも5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、又は全てのTier1 mGluRネットワーク遺伝子(本願における図1)のCNV又はSNVについて分析することを含む。一部の実施態様では、遺伝子検査は、核酸を少なくとも5、10、20、30、50、100、150、175、又は全てのTier2 mGluRネットワーク遺伝子(図2)のCNV又はSNVについて分析することを含む。
【0026】
一部の実施態様では、方法は、核酸を少なくとも5、10、20、50、100、200 300、400、500、又は全てのTier3 mGluRネットワーク遺伝子(図3)のCNV又はSNVについて分析することを含む。一部の実施態様では、遺伝子検査は、GRM1、GRM2、GRM3、GRM4、GRM5、GRM6、GRM7又はGRM8のうちの一又は複数のCNV及びSNVを評価しない。
【0027】
一部の実施態様では、ADHD対象は、Tier1又はTier2 mGluRネットワーク遺伝子の遺伝子変化、例えば、CNVを有するが、Tier3 mGluRネットワーク遺伝子の遺伝子変化、例えば、CNVを有さない。一部の実施態様では、検査は、遺伝子のCNV及び/又はSNVの存在を検出するための適切なプローブを含有する固体支持体、マイクロアレイ又はチップを利用する。
【0028】
一部の実施態様では、対象は、小児又は青年対象、例えば、年齢が5歳から17歳の間、8歳から17歳の間、5歳から12歳の間、5歳から8歳の間、8歳から12歳の間、12歳から18歳の間、13歳から18歳の間、又は12歳から17歳の間の対象である。他の実施態様では、対象は、成人である。
【0029】
一部の実施態様では、ファソラセタムは、刺激薬、例えば、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、若しくはリスデキサンフェタミンと組み合わせて、及び/又は非刺激薬、例えば、アトモキセチン、クロニジン、若しくはグアンファシンと組み合わせて、及び/又は抗うつ薬、例えば、フルオキセチン、エスシタロプラム、ブプロピオン、ミルタザピン、アミトリプチリン、イミプラミン、ベンラファキシン、セルトラリン、パロキセチン、三環式抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、ノルエピネフリン・ドーパミン再取り込み阻害剤、若しくはモノアミンオキシダーゼ阻害剤と組み合わせて、及び/又は抗不安薬、例えば、バルビツレート類、プレガバリン、若しくはベンゾジアゼピン類(クロルジアゼポキシド、クロラゼペート、ジアゼパム、フルラゼパム、ハラゼパム、プラゼパム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、クロナゼパム、フルニトラゼパム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、アジナゾラム、アルプラゾラム、エスタゾラム、トリアゾラム、クリマゾラム、ロプラゾラム若しくはミダゾラムを含む)と組み合わせて、及び/又は抗精神病薬、例えば、アリピプラゾール若しくはリスペリドンと組み合わせて、及び/又はベータ遮断薬、例えば、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、エスモロール、ネビボロール、メトプロロール、カルテロール、ペンブトロール、ピンドロール、カルベジロール、ラベタロール、レボブノロール、メチプラノロール、ナドロール、プロプラノロール、ソタロール、若しくはチモロールと組み合わせて投与される。
【0030】
一部の実施態様では、ファソラセタムは、非薬物療法、例えば、脳刺激、例えば、迷走神経刺激、反復経頭蓋磁気刺激、磁気痙攣療法、及び/又は脳深部刺激と組み合わせて投与される。
【0031】
一部の実施態様では、ADHD対象は、少なくとも1の併存症表現型又は状態、例えば、反抗挑戦性障害(ODD)、不安障害、素行障害、トゥレット症候群、自閉症、怒りの制御困難、破壊行動、22q欠失若しくは重複症候群、怒りの制御困難、破壊行動、強迫性障害(OCD)、自傷性皮膚症、発達障害、又は運動障害を有する。一部の実施態様では、対象は、少なくとも1の併存症表現型、例えば、ODD、不安障害、素行障害、トゥレット症候群、自閉症、怒りの制御困難、破壊行動、22q欠失若しくは重複症候群、怒りの制御困難、破壊行動、強迫性障害(OCD)、自傷性皮膚症、発達障害又は運動障害を有さないか、或いはいずれのそのような併存症表現型も有さない。
【0032】
一部の実施態様では、対象は、ODDを有する。一部のそのような実施態様では、方法は、対象におけるODDを、例えば、理屈っぽさ及び反抗的態度、執念深さ並びに/又は怒り及び易怒性の症状を低減させることにより治療する。一部の実施態様では、対象は、ODD及びADHDを有する。
【0033】
一部の実施態様では、ADHD対象は、併存症表現型、例えば、気分障害又は睡眠障害、例えば不眠症を有する。場合によっては、方法は、気分又は睡眠障害を、例えば、その症状を低減させることにより治療する。一部の実施態様では、対象は、不安の併存症状を有し、場合によっては、方法は、不安症状を低減させる。一部の実施態様では、対象は、OCDを有し、場合によっては、方法は、OCD症状を低減させる。場合によっては、対象は、過剰な皮膚むしり等の自傷性皮膚症の併存症状を有し、方法は、それらの症状を低減させる。一部の実施態様では、対象は、一又は複数の併存発達障害を有し、場合によっては、方法は、発達障害に関係する症状の重症度を低下させる。
【0034】
例えば、一部の実施態様では、方法は、ADHDの行動症状、例えば、不注意、多動性及び/又は衝動性を低減させることができる。一部の実施態様では、方法は、投与中又は投与後の症状、例えば、不注意、多動性及び/又は衝動性を、例えば、対象におけるそれらの症状のうちの一又は複数が低減されたかどうかを判定するために評価することも含む。一部の方法では、そのような評価をADHD評価尺度に基づいて行うことができ、又は臨床全般印象(CGI)尺度、例えば、CGI-重症度若しくはCGI-改善尺度に基づいて行うことができる。例えば、一部の実施態様では、方法は、投与中又は投与後の対象の重症度又は改善についての臨床全般印象を得ることをさらに含む。場合によっては、症状は、アクチベーターでの少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間又は少なくとも4週間の治療後に低減され得る。
【0035】
一部の実施態様では、方法は、対象の臨床全般改善スコア及び/又はADHD評価尺度スコアを改善することができる。例えば、上記ADHD治療方法のいずれにおいても、対象は、アクチベーターでの少なくとも1、2、3又は4週間の治療後に症状に関する以下の変化のうちの一又は複数を有し得る:(a)対象は、怒り制御の症状を有し、それらの怒り制御症状が低減される;(b)対象は、破壊行動の症状を有し、それらの破壊行動症状が低減される;(c)対象のCGI-Iが、少なくとも1又は少なくとも2低下される;(d)1、2、3又は4週間の治療後の対象のCGI-Iスコアは1又は2である;(e)1、2、3又は4週間の治療後の対象のCGI-Sスコアは1である;(f)対象のADHD評価尺度スコアが、少なくとも25%、例えば、少なくとも30%、少なくとも35%又は少なくとも40%低下される;(g)対象は、不注意の症状を有し、それらの不注意症状が低減される;(h)対象は、多動性の症状を有し、それらの多動性症状が低減される;(i)対象は、衝動性の症状を有し、それらの衝動性症状が低減される;(j)対象は、ODDの症状、例えば、怒り及び易怒性、口論及び反抗的態度、及び/又は執念深さを有し、それらのODD症状が低減される;(k)対象は、素行障害の症状を有し、それらの素行障害症状が低減される;(l)対象は、不安の症状を有し、それらの不安症状が低減される;(m)対象は、トゥレット症候群の症状を有し、それらのトゥレット症候群症状が低減される;(n)対象は、自閉症の症状を有し、それらの自閉症症状が低減される;並びに(o)対象は、運動障害の症状を有し、それらの運動障害症状が低減される。
【0036】
ADHD対象がmGluRネットワーク遺伝子の、少なくとも1の遺伝子変化を有する一部の実施態様では、遺伝子変化は、対象から試料を得ること、前記試料から核酸を任意選択的に単離すること、前記核酸を任意選択的に増幅すること、及び前記核酸を少なくとも1のmGluRネットワーク遺伝子の遺伝子変化について分析することを含む遺伝子検査を含むプロセスによって検出される。
【0037】
一部の実施態様では、治療方法は、アクチベーターの初回投与の前に遺伝子検査の結果を得ることをさらに含む。一部の実施態様では、遺伝子検査は、核酸を少なくとも5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、又は全てのTier1 mGluRネットワーク遺伝子(本願における図1)のCNV又はSNVについて分析することを含む。
【0038】
一部の実施態様では、遺伝子検査は、核酸を少なくとも5、10、20、30、50、100、150、175、又は全てのTier2 mGluRネットワーク遺伝子(図2)のCNV又はSNVについて分析することを含む。一部の実施態様では、方法は、核酸を少なくとも5、10、20、50、100、200 300、400、500、又は全てのTier3 mGluRネットワーク遺伝子(図3)のCNV又はSNVについて分析することを含む。
【0039】
一部の実施態様では、遺伝子検査は、GRM1、GRM2、GRM3、GRM4、GRM5、GRM6、GRM7又はGRM8のうちの一又は複数のCNV及びSNVを評価しない。一部の実施態様では、対象は、GRM1、GRM2、GRM3、GRM4、GRM5、GRM6、GRM7又はGRM8のうちの一又は複数のCNV及びSNVを有さない。一部の実施態様では、ADHD対象は、Tier1又はTier2 mGluRネットワーク遺伝子の遺伝子変化、例えば、CNVを有するが、Tier3 mGluRネットワーク遺伝子の遺伝子変化、例えば、CNVを有さない。
【0040】
対象における22q症候群を治療する方法であって、22q症候群を有する対象に、非選択的代謝型グルタメート受容体(mGluR)アクチベーターの有効量を投与することによって22q症候群を治療することを含む方法も、本明細書において提供する。一部の実施態様では、対象は、遺伝子RANBP1の遺伝子変化、例えば、点突然変異、挿入、欠失、又はコピー数多様性(CNV)を有する。例えば、対象は、22q11.2の欠失又は重複、すなわち、22q欠失又は22q重複症候群を有し得る。一部の実施態様において提供する方法は、対象における22q欠失症候群を治療することを含み、この治療は、22q欠失症候群を有する対象に、非選択的代謝型グルタメート受容体(mGluR)アクチベーターの有効量を投与することによって22q欠失症候群を治療することを含む。
【0041】
一部の実施態様において提供する方法は、対象における22q重複症候群を治療する方法であって、22q重複症候群を有する対象に、非選択的代謝型グルタメート受容体(mGluR)アクチベーターの有効量を投与することによって22q欠失症候群を治療することを含む。一部の実施態様では、対象は、RANBP1の遺伝子変化を有し、少なくとも1のさらなるmGluRネットワーク遺伝子、例えば、本願における図1-3において開示するようなTier1、Tier2又はTier3遺伝子の遺伝子変化を有する。一部の実施態様では、対象は、GRM1、GRM2、GRM3、GRM4、GRM5、GRM6、GRM7又はGRM8のうちの一又は複数のCNV及び一塩基多様性(SNV)を有さない。
【0042】
一部の実施態様では、22q症候群対象は、注意欠陥多動性障害(ADHD)を有し、前記対象を治療することは、ADHDを治療すること、例えば、不注意、多動性多動性及び衝動性を含む、前記対象における少なくとも1のADHD症状を緩和することを含み得る。一部の実施態様では、対象は、小児又は青年対象、例えば、年齢が5歳から17歳の間、8歳から17歳の間、5歳から12歳の間、5歳から8歳の間、8歳から12歳の間、12歳から18歳の間、13歳から18歳の間、又は12歳から17歳の間の対象である。他の実施態様では、対象は、成人である。
【0043】
一部の実施態様では、非選択的mGluRアクチベーターは、ファソラセタム、例えば、ファソラセタム一水和物(NFC-1)である。
【0044】
アクチベーターがファソラセタムである一部の実施態様では、ファソラセタムは、50-400mg、例えば、100-400mg、又は100-200mg、又は200-400mg、又は100mg、又は200mg、又は300mg、又は400mgの用量で投与され、1日1回、2回又は3回投与される。一部の実施態様では、ファソラセタムは、1日2回100mg、200mg、300mg又は400mg、例えば、1日2回100-200mgの用量で投与される。
【0045】
一部の実施態様では、アクチベーターは、別の医薬品、例えば、刺激薬、例えば、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、若しくはリスデキサンフェタミンと組み合わせて、及び/又は非刺激薬、例えば、アトモキセチン、クロニジン、若しくはグアンファシンと組み合わせて、及び/又は抗うつ薬、例えば、フルオキセチン、エスシタロプラム、ブプロピオン、ミルタザピン、アミトリプチリン、イミプラミン、ベンラファキシン、セルトラリン、パロキセチン、三環式抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、ノルエピネフリン・ドーパミン再取り込み阻害剤、若しくはモノアミンオキシダーゼ阻害剤と組み合わせて、及び/又は抗不安薬、例えば、バルビツレート類、プレガバリン、若しくはベンゾジアゼピン類(クロルジアゼポキシド、クロラゼペート、ジアゼパム、フルラゼパム、ハラゼパム、プラゼパム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、クロナゼパム、フルニトラゼパム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、アジナゾラム、アルプラゾラム、エスタゾラム、トリアゾラム、クリマゾラム、ロプラゾラム若しくはミダゾラムを含む)と組み合わせて、及び/又は抗精神病薬、例えば、アリピプラゾール若しくはリスペリドンと組み合わせて、及び/又はベータ遮断薬、例えば、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、エスモロール、ネビボロール、メトプロロール、カルテロール、ペンブトロール、ピンドロール、カルベジロール、ラベタロール、レボブノロール、メチプラノロール、ナドロール、プロプラノロール、ソタロール、若しくはチモロールと組み合わせて投与される。
【0046】
一部の実施態様では、アクチベーターは、非薬物療法、例えば、脳刺激、例えば、迷走神経刺激、反復経頭蓋磁気刺激、磁気痙攣療法、及び/又は脳深部刺激と組み合わせて投与される。
【0047】
一部の実施態様では、22q欠失及び/又は重複症候群対象は、少なくとも1の併存症表現型又は状態、例えば、反抗挑戦性障害(ODD)、不安障害、素行障害、トゥレット症候群、自閉症、怒りの制御困難、破壊行動、強迫性障害(OCD)、自傷性皮膚症、発達障害、又は運動障害を有し得る。一部の実施態様では、対象は、反抗挑戦性障害(ODD)、不安障害、素行障害、トゥレット症候群、自閉症、怒りの制御困難、破壊行動、強迫性障害(OCD)、自傷性皮膚症、発達障害、若しくは運動障害のうちの少なくとも1を有さず、又は一部の実施態様では、これらの併存状態のいずれも有さない。
【0048】
22q欠失及び/又は重複対象がADHDを有する一部の実施態様では、対象は、ODD、素行障害、不安障害、トゥレット症候群、自閉症、怒りの制御困難、破壊行動、強迫性障害(OCD)、自傷性皮膚症、発達障害又は運動障害のうちの少なくとも1を有さない。一部の実施態様では、対象は、ODD、素行障害、不安障害、トゥレット症候群、自閉症、怒りの制御困難、破壊行動、強迫性障害(OCD)、自傷性皮膚症、発達障害及び運動障害のいずれも有さない。一部の実施態様では、22q欠失及び/又は重複対象は、気分障害又は睡眠障害、例えば不眠症も有する。一部のそのような実施態様では、方法は、気分又は睡眠障害を、例えば、その症状を低減させることにより治療する。一部の実施態様では、対象は、ODDを有する。一部のそのような実施態様では、方法は、対象におけるODDを、例えば、理屈っぽさ及び反抗的態度、執念深さ並びに/又は怒り及び易怒性の症状を低減させることにより治療する。一部の実施態様では、対象は、不安の併存症状を有し、場合によっては、方法は、不安症状を低減させる。一部の実施態様では、対象は、OCDを有し、場合によっては、方法は、OCD症状を低減させる。場合によっては、対象は、過剰な皮膚むしり等の、自傷性皮膚症の併存症状を有し、方法は、それらの症状を低減させる。一部の実施態様では、対象は、一又は複数の併存発達障害を有し、場合によっては、方法は、発達障害に関係する症状の重症度を低下させる。
【0049】
22q症候群は、22q欠失又は重複の存在を判定するために現在使用されている検査により対象に診断することができる。一部の実施態様では、対象は、該対象からの試料の22q11.2における欠失若しくは重複の有無及び/又はRANBP1の遺伝子変化の有無を検出するための遺伝子検査を含むプロセスにより診断される。一部の実施態様では、治療方法は、アクチベーターの初回投与の前に22qについて(例えば、対象からの試料の22q11.2における欠失若しくは重複の有無及び/又はRANBP1の遺伝子変化の有無について)の遺伝子検査の結果を得ることを含む。一部の実施態様では、アクチベーターは、少なくとも1の臨床試験の対象の大部分において4週間の治療後に1若しくは2の臨床的総合印象-改善(CGI-I)スコア、及び/又は4週間の治療後にADHD評価尺度スコアの少なくとも25%、例えば、少なくとも30%、少なくとも35%若しくは少なくとも40%の改善を得るために有効であることが証明された量又は投与レジメンで投与される。上記実施態様のいずれにおいても、22q症候群は、一部の症例では、22q欠失及び/又は重複症候群に関連する神経行動、神経精神及び神経発達症状が緩和された場合、治療されたと見なされ得る。そのような症状としては、記憶、注意、認知、不安の改善、並びに気分障害、自閉症スペクトラム障害、精神病及び多動性の安定化又は好転が挙げられるが、これらに限定されない。上記実施態様のいずれにおいても、22q欠失及び/又は重複症候群は、一部の症例では、ADHDの少なくとも1症状が対象において改善された場合、治療されたと見なされ得る。例えば、一部の実施態様では、方法は、行動症状、例えば、不注意、多動性及び/又は衝動性を低減させることができる。一部の実施態様では、方法は、例えば、投与中又は投与後の症状、例えば、不注意、多動性及び/又は衝動性並びに怒り制御及び/又は破壊行動を、対象におけるそれらの症状のうちの一又は複数が低減されたかどうかを判定するために評価することも含む。一部の方法では、そのような評価をADHD評価尺度に基づいて行うことができ、又は臨床全般印象(CGI)尺度、例えば、CGI-重症度若しくはCGI-改善尺度に基づいて行うことができる。例えば、一部の実施態様では、方法は、投与中又は投与後の対象の重症度又は改善についての臨床全般印象を得ることをさらに含む。一部の実施態様では、方法は、対象における臨床全般改善スコア及び/又はADHD評価尺度スコアを改善することができる。例えば、上記22q欠失及び/又は重複症候群治療方法のいずれにおいても、対象は、アクチベーターでの少なくとも1、2、3又は4週間の治療後に症状に関する以下の変化のうちの一又は複数を有し得る:(a)対象は、怒り制御の症状を有し、それらの怒り制御症状が低減される;(b)対象は、破壊行動の症状を有し、それらの破壊行動症状が低減される;(c)対象のCGI-Iが、少なくとも1又は少なくとも2低下される;(d)1、2、3又は4週間の治療後の対象のCGI-Iスコアは、1又は2である;(e)1、2、3又は4週間の治療後の対象のCGI-Sスコアは、1である;(f)対象のADHD評価尺度スコアが、少なくとも25%、例えば、少なくとも30%、少なくとも35%又は少なくとも40%低下される;(g)対象は、不注意の症状を有し、それらの不注意症状が低減される;(h)対象は、多動性の症状を有し、それらの多動性症状が低減される;(i)対象は、衝動性の症状を有し、それらの衝動性症状が低減される;(j)対象は、ODDの症状、例えば、怒り及び易怒性、口論及び反抗的態度、及び/又は執念深さを有し、それらのODD症状が低減される;(k)対象は、素行障害の症状を有し、それらの素行障害症状が低減される;(l)対象は、不安の症状を有し、それらの不安症状が低減される;(m)対象は、トゥレット症候群の症状を有し、それらのトゥレット症候群症状が低減される;(n)対象は、自閉症の症状を有し、それらの自閉症症状が低減される;並びに(o)対象は、運動障害の症状を有し、それらの運動障害症状が低減される。
【0050】
さらなる目的及び利点は、一部は、後続の説明で述べることとし、一部は、その説明から明らかとなり、又は実施により学ぶことができる。それらの目的及び利点は、添付の特許請求の範囲において特に指し示す要素及び組み合せによって実現及び達成されることになる。
【0051】
上述の概要及び下記の詳細な説明の両方が例示的及び説明的なものに過ぎず、本特許請求の範囲を制限するものではないことは、理解されるはずである。
【0052】
本明細書に援用され、本明細書の一部を構成する添付の図面は、1(いくつかの)実施形態をその説明と共に例証するものであり、本明細書に記載の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】Tier1遺伝子セットに含まれるmGluRネットワーク遺伝子を示す図である。これらの遺伝子は、生体分子相互作用ネットワークをハイスループットデータと統合するための(Shannon P (2003) Genome Research 13:2498-2504に記載の)ソフトウェアであるCytoscape Human Interactomeに基づき、mGluR遺伝子(GRM1-8)とのタンパク質間相互作用度2を有する。Tier1遺伝子セットは76の遺伝子を含む。Tier1内の各遺伝子についての正確な座位は、Human Genomeバージョン18(hg18)とHuman Genomeバージョン19(hg19)の両方に収載されている。加えて、hg19には正確な遺伝子座位+500キロベース(すなわち、目的の遺伝子の500キロベース前から500キロベース後までの範囲)が収載されている。最初の一塩基多型(StartSNP)(すなわち、目的の遺伝子の500キロベース前に位置するSNP)及びEndSNP(すなわち、目的の遺伝子の500キロベース後に位置するSNP)も収載されている。mGluRの遺伝子自体は「GRM」と記されている。拡張領域(すなわち、500kg上流及び下流)は、調節エレメントを担持することが多く、CNVによる影響を受けた場合、遺伝子発現に対して同じ影響を及ぼし、その遺伝子配列自体に存在するCNVとして機能し得る。
図2】Tier2遺伝子セットに含まれるmGluRネットワーク遺伝子を示す図である。これらの遺伝子は、Cytoscape Human Interactomに基づき、mGluR遺伝子(GRM1-8)とのタンパク質間相互作用度2を有するが、Tier1からの遺伝子を含まない。Tier2遺伝子セットは197の遺伝子を含む。Tier2の各遺伝子についての正確な座位は、Human Genomeバージョン18(hg18)とHuman Genomeバージョン19(hg19)の両方に収載されている。加えて、hg19には正確な遺伝子座位+500キロベース(すなわち、目的の遺伝子の500キロベース前から500キロベース後までの範囲)が収載されている。最初の一塩基多型(StartSNP)(すなわち、目的の遺伝子の500キロベース前に位置するSNP)及びEndSNP(すなわち、目的の遺伝子の500キロベース後に位置するSNP)もhg19に収載されている。
図3】Tier3遺伝子セット内の遺伝子を示す図である。Cytoscape Human Interactomに基づき、mGluR遺伝子とのタンパク質間相互作用度2で検索して片割れの遺伝子がある遺伝子を含む。Tier1及び2に含まれる遺伝子は、Tier3から除外される。Tier3遺伝子セットは599の遺伝子を含む。Tier3の各遺伝子についての正確な座位は、Human Genomeバージョン18(hg18)とHuman Genomeバージョン19(hg19)の両方に収載されている。加えて、hg19には正確な遺伝子座位+500キロベース(すなわち、目的の遺伝子の500キロベース前から500キロベース後までの範囲)が収載されている。StartSNP(すなわち、目的の遺伝子の500キロベース前に位置するSNP)及びEndSNP(すなわち、目的の遺伝子の500キロベース後に位置するSNP)もhg19に収載されている。
図4】実施例1に記載の第Ib相臨床試験における、全研究対象集団と遺伝子Tier(1、2又は3)の両方に基づく、臨床試験の第1週(プラセボベースライン)から第5週目の用量漸増期の各週に1又は2の臨床全般印象-改善(CGI-I)スコア(中程度改善又は著明改善)を有したことに基づいてNFC-1に対する応答者であると見なされた対象の百分率を示す図である。
図5a-5b】研究前ベースライン(図5a)又はプラセボベースライン(第1週目)(図5b)のいずれかと比較してヴァンダービルトADHDスコアの改善を各週に示した臨床試験対象のパーセントを遺伝子Tierと全研究対象集団の両方に関して示す図である。ヴァンダービルトADHDスコアの少なくとも25%低下を応答性及び改善と見なす。
図6a-6b】研究前ベースライン(図6a)又はプラセボベースライン(第1週目)(図6b)のいずれかと比較してヴァンダービルトADHDスコアの強い改善を各週に示した臨床試験対象のパーセントを遺伝子tierと全研究対象集団の両方に関して示す図である。ヴァンダービルトADHDスコアの少なくとも40%低下を強い改善と見なす。
図7a-7b】第5週目に1日2回400mg NFC-1への全用量漸増を完了した臨床試験対象であって、研究前ベースライン(図7a)又はプラセボベースライン(第1週目)(図7b)のいずれかと比較したヴァンダービルトADHDスコアの改善を各週に示した臨床試験対象のパーセントを遺伝子tierと全研究対象集団の両方に関して示す図である。ヴァンダービルトADHDスコアの少なくとも25%低下を改善と見なす。
図8a-8b】第5週目に1日2回400mg NFC-1への全用量漸増を完了した臨床試験対象であって、研究前ベースライン(図8a)又はプラセボベースライン(第1週目)(図8b)のいずれかと比較してヴァンダービルトADHDスコアの強い改善を各週に示した臨床試験対象のパーセントを遺伝子tierと全研究対象集団の両方に関して示す図である。ヴァンダービルトADHDスコアの少なくとも40%低下を強い改善と見なす。
図9a】遺伝子tier群ごとに臨床試験の対象におけるアクティグラフィー検査からの結果を示す図である。遺伝子Tier-1について第1週目(プラセボ)から第5週目にかけて中高強度身体活動(MVPA)に関して観察された低下は、400mg bid用量群において最も顕著であった。
図9b】遺伝子tier群ごとに臨床試験の対象におけるアクティグラフィー検査からの結果を示す図である。遺伝子Tier-2について第1週目(プラセボ)から第5週目にかけて中高強度身体活動(MVPA)に関して観察された低下は、400mg bid用量群において最も顕著であった。
図9c】遺伝子tier群ごとに臨床試験における対象のアクティグラフィー検査からの結果を示す図である。遺伝子Tier-3について第1週目(プラセボ)から第5週目にかけて中高強度身体活動(MVPA)に関して観察された低下は、400mg bid用量群において最も顕著であった。
図10】用量漸増の第4週目(1日2回200mg)から第5週目(1日2回400mg)の間の正規化不注意値100強から約90へのTier-1群における不注意の低減(P<0.05)によって示される通り、Tier-1遺伝子群の臨床試験対象が、第1週目(プラセボ)から第5週目(1日2回400mg)の間に不注意についてのQUOTIENT(登録商標)ADHD試験測度の有意な改善を有したことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
I.定義
この小節に含まれている定義に加えて、用語のさらなる定義が本文書全体に渡って散在する。
【0055】
本発明において、別途文脈による明らかな指示がない限り、「a」又は「an」は、「少なくとも1」又は「一又は複数」等を意味する。「又は」という用語は、別途指示がない限り、「及び/又は」を意味する。しかし、多項従属請求項の場合、「又は」という用語の使用は、1を超える先行請求項に戻って専ら択一的に該請求項を参照する。
【0056】
「mGluR」又は代謝型グルタメート受容体は、mGluR1、mGluR2、mGluR3、mGluR4、mGluR5、mGluR6、mGluR7及びmGluR8という名の、神経組織において発現される8の代謝型グルタメート受容体のうちの1を指す。それらの遺伝子は、GRM1からGMRM8と略記される。mGluRタンパク質は、Gタンパク質共役型受容体である。それらは、典型的に3サブグループに分類され、mGluR1及びmGluR5を含むグループI受容体は、緩徐興奮性受容体として分類される。グループIIは、mGluR2及びmGluR3を含む。グループIIIは、mGluR4、mGluR6、mGluR7及びmGluR8を含む。グループII及びIIIは、緩徐抑制性受容体として分類される。mGluRは、イオンチャネル結合型グルタメート受容体であって高速興奮性受容体として分類されるイオンチャネル型GluR又はiGluRとは区別される。
【0057】
「mGluRネットワーク遺伝子」は、本発明では、mGluRm遺伝子GRM1、GRM2、GRM3、GRM4、GRM5、GRM6、GRM7及びGRM8のみならず、本明細書の図1-3に収載されている他の遺伝子の各々並びに図1-3に収載されている遺伝子を調節するDNAの領域も含む。加えて、「mGluRネットワークタンパク質」は、mGluRネットワーク遺伝子によりコードされるタンパク質である。
【0058】
mGluRネットワーク遺伝子は、Tier1、Tier2及びTier3という3サブセットに分類される。(図1-3を参照されたい)。図1に示されているTier1 mGluRネットワーク遺伝子は、いくつかのGRM遺伝子自体はもちろん多数の他の遺伝子も含む76の遺伝子を含む。図2に示されているTier2 mGluRネットワーク遺伝子は197の遺伝子を含み、Tier1遺伝子を含まない。
【0059】
Tier1及び2は共に「一次mGluRネットワーク」に含まれる。mGluR遺伝子の「一次ネットワーク」は、合計276の遺伝子で、遺伝子4-Sep、LOC642393及びLOC653098も含む。4-Sep、LOC642393及びLOC653098遺伝子の評価は、現在の技術では困難である。それ故、それらはTier1及びTier2に含まれないが、本発明の遺伝子の一次ネットワークにはそれらを含める。Tier1及び2遺伝子は、Tier1遺伝子の変化が、精神障害に罹患している対象についての以前のジェノタイピング研究で立証されている点で異なる。
【0060】
図3に示されているTier3 mGluRネットワーク遺伝子は、Cytoscapeソフトウェア(Shannon P等 (2003) Genome Research 13:2498- 2504)により提供されるマージされたヒトインタラクトームに基づきmGluRネットワークの末端部にある599の遺伝子を含み、Tier1及びTier2遺伝子を含まない。したがって、Tier3遺伝子は、「末端mGluRネットワーク」の一部である。Tier3遺伝子に加えて、遺伝子LOC285147、LOC147004及びLOC93444は、「末端mGluRネットワーク」に含まれるが、技術的に困難であるため、それらを本研究では評価しておらず、Tier3に含めない。
【0061】
本明細書で使用される「遺伝子変化」は、例えば、変化していないDNAから産生された遺伝子産物と比較して機能的に変化した遺伝子産物をもたらし得る、遺伝子のDNAの、又は遺伝子を調節するDNAの、任意の変化を意味する。機能的変化は、例えば、異なる発現レベル(アップレギュレーション又はダウンレギュレーション)であってもよく、又は一若しくは複数の生物活性の喪失若しくは変化であってもよい。遺伝子変化は、これらに限定されないが、コピー数多様性(CNV)、一塩基多様性(SNV)(本明細書では一塩基多型(SNP)とも呼ばれる)、フレームシフト突然変異、又は任意の他の塩基対置換、挿入及び欠失若を含む。
【0062】
「コピー数多様性」又は「CNV」は、参照ゲノムと比較した場合のDNAセグメントの重複又は欠失であり、前記DNAセグメントは、遺伝子(単数)、遺伝子(複数)、遺伝子のセグメント、又は遺伝子を調節するDNA領域を包含する。一部の実施態様では、CNVは、正常な二倍体状態からの変化に基づいて判定される。一部の実施態様では、CNVは、1キロベース(kb)以上であるDNA断片に関わるコピー数変化を表す。本明細書に記載のCNVは、転位因子(例えば、6kb KpnIリピート)の挿入/欠失から生じるバリアントを含まない。したがって、CNVという用語は、大規模コピー数多様性(LCV;Iafrate等、2004)、コピー数多型(CNP;Sebat等、2004)、及び中間サイズのバリアント(ISV;Tuzun等、2005)等の用語を包含するが、レトロトランスポゾン挿入は包含しない。
【0063】
「CNV欠失」又は「欠失CNV」又は同様の用語は、遺伝子又は遺伝子セグメントが欠失されている、CNVを指す。「CNV重複」又は「重複CNV」又は同様の用語は、遺伝子又は遺伝子セグメントが、正常な参照ゲノムにおいて見いだされる単一コピーと比較して少なくとも2コピー、ことによると2を超えるコピー中に存在する、CNVを指す。
【0064】
「試料」は、本明細書に記載の通り、例えば一又は複数のmGluRネットワーク遺伝子タンパク質のCNVの存在について、検査され得る対象からの試料を指す。試料は、細胞を含むこともあり、体液、例えば、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、涙、胸膜液等を含むこともある。
【0065】
本明細書で使用される「22q症候群」及び「22q11.2症候群」は、同義で使用される。
【0066】
「小児対象」又は「小児患者」という用語は、18歳未満のヒトを指すために同義で使用される。「成人患者」又は「成人対象」は、18歳以上のヒトを指す。「青年患者」又は「青年対象」は、典型的には約12から18歳、例えば、12から17歳、又は13から18歳である。
【0067】
II.注意欠陥多動性障害(ADHD)
「注意欠陥多動性障害」又はADHDという用語は、少なくとも一部は不注意、多動性及び衝動性を特徴とし得る不均一な障害を指す。ADHDの症状としては、集中力を保つこと及び注意を払うことが困難、行動制御困難及び多動性が挙げられる。Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第5版(DSM-5)によれば、医師は、対象が、該対象の機能又は発達を妨げる不注意又は多動性-衝動性の持続的パターンを示す場合、ADHDの診断を下すことができる。ADHDは、集団の少なくとも5%に起こり得るものであり、成人対象にも小児対象にも診断され得る。
【0068】
多動性・衝動性優位型、不注意優位型、及び多動性-衝動性・不注意混合型という、3クラスのADHDがある。多動性・衝動性優位型患者は、不注意より顕著な多動性-衝動性を有する。不注意優位型は、注意力を欠くが、より少ない多動性-衝動性症状を有し、これらの患者は、教室で静かに座っていることができることもあるが、行わなければならない課題に対して注意を払っていない。多動性-衝動性・不注意混合型患者は、不注意と多動性-衝動性の両方の有意な症状を有する。混合型ADHDは、児童に最もよく見られる型である。本明細書に記載の方法の各々は、全てのクラスのADHDの治療を包含する。
【0069】
ADHDは、不均一な状態であり、遺伝子、環境因子及び/又は脳損傷等の因子の組合せの結果として生じ得る。加えて、ADHD患者は、少なくとも1のmGluRネットワーク遺伝子の遺伝子変化、例えば、CNVを有する可能性が正常個体より有意に高い。(国際公開第2012/027491号及び米国特許出願公開第2013/0203814号;Elia等、Nature Genetics, 44(1):78-84(2012)を参照されたい)。
【0070】
ADHDのための現在認可されている治療薬は、神経刺激薬、例えばメチルフェニデート及びアンフェタミン、並びに非神経刺激薬、例えばアトモキセチンを含む。抗うつ薬、例えば、セロトニン選択的取り込み阻害剤、例えばフルオキセチン、セルトラリン及びシタロプラム、並びにクロニジン及びグアンファシンも、一部の症例では投与され得る。しかし、これらの薬物は、多数の潜在的副作用を有し得、一部は、短い活性半減期も有し得る。
【0071】
ADHDを有する一部の対象は、一又は複数の併存障害、例えば、反抗挑戦性障害(ODD)、不安障害、気分障害、恐怖症、強迫性障害(OCD)、うつ病、素行障害、トゥレット症候群、自閉症、又は運動障害を有し得る。他の場合、ADHD対象は、ODD、不安障害、気分障害、恐怖症、強迫性障害(OCD)、うつ病、素行障害、トゥレット症候群、自閉症及び運動障害のいずれも有さない。ADHDを有する一部の対象は、気分障害又は睡眠障害、例えば不眠症も示し得る。
【0072】
小児ADHD患者の約40%は、例えば、ODDも有し、一部のADHD薬は、ADHDの治療の一部としてODD症状を改善すると考えられている。DSM-5によれば、対象は、兄弟姉妹以外の少なくとも1個体に関して起こる、職場、学校又は家庭で有意な問題を引き起こす、及び少なくとも6カ月間持続する、怒り及び易怒気分、理屈っぽい反抗的な態度又は執念深さを示す少なくとも4症状を示した場合、ODDと診断され得る。怒り及び易怒気分を示す症状としては、次のものが挙げられる:カッとなることが多い;短気であることが多い又は他人にイライラしやすい;怒っている及び憤慨していることが多い。理屈っぽい反抗的な態度を示す症状としては、次のものが挙げられる:大人又は権力者に文句を言うことが多い、大人の要求又は規則に従うことを能動的に無視又は拒絶することが多い、故意に人をイライラさせることが多い、及び彼/彼女自身のミス又は不正行為を他人のせいにすることが多い。執念深さを示す症状としては、次のものが挙げられる:意地悪又は報復的であることが多い、及び過去6カ月以内に少なくとも2回、意地悪な又は報復的な行動を示した。これらの症状は、独自に起こるものでなければならず、薬物乱用、うつ病又は双極性障害等の別の精神衛生上の問題の過程の一部として起こるものであってはならない。5歳以上の人は、前記症状が少なくとも6カ月間、1週間に少なくとも1回起こった場合、ODDと診断され得る。したがって、「ODD」を有する対象は、上記DSM-5基準に基づいてODDを有すると診断された者と本明細書では定義する。
【0073】
ADHDを有する対象は、併存障害と診断されたか否かを問わず、様々なさらなる行動表現型、例えば、怒りの制御困難及び破壊行動も示し得る。
【0074】
ADHD対象が罹患し得る他の併存障害としては、強迫性障害(OCD)、発達障害、又は自傷性皮膚症が挙げられる。本明細書における「発達障害」は、例えば、国際疾病分類第9版(世界保健機関)のコード299.80、299.90、315.2、315.39、315.4、315.5、315.8及び315.9に分類されるものであって、学習、協調運動及び会話等の行動に影響を与え得るものを含む。「自傷性皮膚症」は、皮膚むしり症又は皮膚むしりとも呼ばれ、損傷を生じさせるほど過剰に自分自身の皮膚をむしることを伴う障害であり、正常な皮膚はもちろん、現実の又は仮想の皮膚欠損創、例えば、ほくろ、そばかす又はざ創をむしることも含む。
【0075】
III.22q症候群
「22q症候群」又は「22q11症候群」又は「22q11.2症候群」という用語は、RANBP1 mGluRネットワーク遺伝子座位を含む22番染色体のq11.2領域のCNVがゲノムにある対象を指すために、本明細書では同義で使用される。RANBP1は、mGluR3と相互作用するタンパク質をコードする。「22q欠失症候群」又は「22qDS」又は「22q11.2DS」を有する対象は、その染色体領域に欠失があり、その一方で「22q重複症候群」又は「22qDupS」又は「22q11.2DupS」を有する対象は、その領域に重複がある。
【0076】
RANBP1 mGluRネットワーク遺伝子座位を含む22番染色体のq11.2の小片の欠失は、「22q欠失症候群」又は「22q11.2DS」と呼ばれる。22q欠失は、RANBP1を含むおおよそ30から40の遺伝子の欠損を伴う頻度が高く、心臓の欠損、口蓋裂、及び特徴的顔貌、並びに低い知能レベルを特徴とし得る。22q11.2DSを有する児童の約37%は、ADHDとも診断される。22q11.2DSを有する児童は、自閉症スペクトラム(ASD)及び不安障害率も高く、かなりの割合が、後年に統合失調症等の精神病を発症し得る。22q11.2DSは、2000-4000人中約1人に起こるが、これは、低い見積もりであり得る。軽症例は必ずしも診断され得るとは限らないからである。22q11.2DSの遺伝的基礎が理解される前、22q11.2DSの症状の異なる群は、以前はディ・ジョージ症候群、口蓋心臓顔面症候群、及び円錐動脈幹異常顔貌症候群と呼ばれていた。
【0077】
RANBP1座位を含む22番染色体上のq11.2位における重複は、「22q重複症候群」、「22q11.2重複症候群」又は「22q11.2DupS」と呼ばれ、知的/学習障害、神経運動発達遅延、成長遅滞、及び筋緊張低下を特徴とし得る。22q11.2DupSの高頻度に重複している22番染色体片は、30-40の遺伝子を含む、22q11.2DSの高頻度に欠失される頻度が高いものと同じものであることが多い。発育遅延又は知的障害を調査するためにゲノムマイクロアレイ分析で調べられた患者における22q11.2DupSの出現率は、300-700中約1である。
【0078】
22q11.2DSに利用可能な診断検査としては、標的バリアント分析(標的のパネル中のバリアントを探す分析)、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、及び全コード領域の配列コード化が挙げられる。22q11.2DupSに利用可能な診断検査としては、染色体マイクロアレイ及びFISH方法が挙げられる。
【0079】
IV.mGluRネットワーク遺伝子
本明細書における一部の実施態様では、ADHD患者は、Tier1、2及び/又は3 mGluRネットワーク遺伝子うちの一又は複数、例えばそのような遺伝子の単一の遺伝子又はパネル、の遺伝子変化について、治療前に評価され得る。一部の実施態様では、遺伝子変化は、遺伝子の一方若しくは両方のコピーの重複若しくは他の多重重複又は遺伝子の一方若しくは両方のコピーの欠失の結果として生じる、コピー数多様性(CNV)である。CNV欠失又は重複は、結果として生じる遺伝子産物であって、CNVの中に含まれている遺伝子産物の発現を、この遺伝子のコピー数の変化のため、変化させることができ、したがって、疾患表現型の一因になることがある。しかし、CNV欠失又は重複はまた、いずれの組織における遺伝子産物の相対発現にも影響を与えることがない(Henrichsen CNら(2009)Human Molecular Genetics, 2009, Vol. 18(1):R1-R8を参照されたい)。CNV欠失又は重複は、CNVの付近に位置する遺伝子の発現にも影響を与えることがあり、したがって、実際のCNVの外部の遺伝子の発現にも影響を与えることがある。CNVは、転写物構造の摂動により遺伝発現に影響することもあり得る。例えば、重複CNVは、コピー数の増加をもたらすこともあるが、正常な転写に干渉するため、実際には遺伝子産物の減少をもたらすことがある。
【0080】
一部の実施態様では、mGluRネットワーク遺伝子の、例えば、図1-3に示されているようなTier1、Tier2及び/又はTier3遺伝子の、少なくとも1の遺伝子変化、例えば、少なくとも1のCNVを有するADHD患者が、治療される。一部の実施態様では、患者は、22q症候群の歳に欠失又は重複され得る遺伝子である遺伝子RANBP1を含む遺伝子の変化、例えばCNV、例えば、欠失又は重複を有する。
【0081】
一部の実施態様では、mGluRネットワーク遺伝子の遺伝子セット又はパネルは、ADHD又は22q欠失及び/若しくは重複症候群を有する疑いのある患者からの試料の分析に使用される。一部の実施態様では、これらの遺伝子セット又はパネル内の遺伝子の変化、例えば、CNV重複又は欠失の存在が判定される。一部の実施態様では、図1に示されているTier1遺伝子の遺伝子変化、例えば、CNVが判定される。一部の実施態様では、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70又は全てのTier1遺伝子のパネルが、CNVの等の遺伝子変化の存在について評価される。これらの実施態様の中の一部の実施態様では、パネルは、RANBP1又はGRM1-8等の特定の遺伝子を含む。任意のそのような遺伝子パネル内の任意の個々の特定のTier1遺伝子がパネルから除外されることもある。例えば、一部の実施態様では、GRM1-8遺伝子のうちの一又は複数は、パネルに含まれない。
【0082】
一部の実施態様では、任意選択的に、上記Tier1評価の評価に加えて、又は上で説明したようなTier1遺伝子のサブセットの評価に加えて、図2に示されているようなTier2遺伝子がCNV等の遺伝子変化の存在について分析される。一部の実施態様では、少なくとも50のTier2遺伝子が評価されるが、一部の実施態様では、少なくとも10、20、30、50、100、150、又は全てのTier2遺伝子が評価される。一部の実施態様では、個々の特定のTier2遺伝子が評価用の遺伝子セットから除外されることがある。
【0083】
一部の実施態様では、任意選択的に、上記Tier1及び/若しくはTier2評価の評価に加えて、又は上で説明したようなTier1及び/若しくはTier2遺伝子のサブセットの評価に加えて、図3に示されている599のTier3遺伝子がCNV等の遺伝子変化の存在について評価される。Tier3遺伝子は、mGluRネットワークとの広範な潜在的相互作用因子と考えられ、Tier3に含まれる遺伝子は、Tier1及びTier2には含まれない。一部の実施態様では、少なくとも10、20、50、100、200、300、400、500、又は全てのTier3遺伝子が、遺伝子変化を評価するためのパネルに含まれる。
【0084】
V.mGluRネットワーク遺伝子の遺伝子変化の評価
血液、尿、血清、胃洗浄液、中枢神経系液、任意の細胞型(例えば、脳細胞、白血球、単核細胞)又は体組織を含むがこれらに限定されない、任意の生物学的試料を使用して、mGluRネットワーク遺伝子変化の有無を判定することができる。DNAを抽出することができる任意の生物学的供給源を使用して、mGluRネットワーク遺伝子変化の有無を判定することができる。試料は、新たに採取したてのものであってもよく、又は任意の使用/目的のために以前に採取され、遺伝子変化について検査するときまで保存されたものであってもよい。異なる目的で以前に精製されたDNAも使用することができる。
【0085】
遺伝子変化を判定するための様々な方法が公知であり、それらは以下のものを含む。
【0086】
A.一塩基多様性(SNV)/一塩基多型(SNP)ジェノタイピング
患者が、mGluRネットワーク遺伝子の遺伝子変化、例えば、CNVを有するかどうかの判定は、Illumina又はAffymetrixから市販されているもの等のSNV/SNPジェノタイピングアレイを使用して、SNV/SNPジェノタイピングにより行うことができる。「一塩基多様性(SNV)」は、本明細書では同義で「一塩基多型(SNP)」とも称され、DNA中の単一塩基がその位置の通常の塩基と異なる変化を指す。ヒトゲノムの何百万ものSNVの目録が作成されている。一部のSNVは、ゲノムの通常の変異であるが、他のものは、疾患に関連している。特定のSNVは、病状又は易罹患性に関連し得るが、SNVの配列決定情報を使用して個体の特有の遺伝子構造を決定する、高密度SNVジェノタイピングに取り組むこともでる。
【0087】
SNVジェノタイピングでは、相補的DNAプローブをSNV部位にハイブリダイズさせることにより、SNVを判定することができる。広範なプラットフォームをSNVジェノタイピングツールと共に使用して、様々な試料スループット、多重化能力及び化学的性質に対応することができる。高密度SNVアレイでは、標的DNAをチップ上で処理するときに同時に多くのSNVを照合することができるように、何十万ものプローブが小型チップ上に配列される。試料中の標的DNAのアレイ上のプローブ(又は冗長プローブ)へのハイブリダイゼーションの量を決定することにより、特異的SNV対立遺伝子を決定することができる。SNVジェノタイピングのためのアレイの使用は、SNVの大規模照合を可能にする。
【0088】
CNVを分析する場合、SNVを分析した後、コンピュータプログラムを使用して、CNVデータに到達するようにSNVデータを操作することができる。その場合、PennCNV又は同様のプログラムを使用して、ゲノム全体にわたってシグナルパターンを検出し、コピー数変化に関する連続した遺伝子マーカーを同定することができる。(Wang K等(June 2008) Cold Spring Harb Protocを参照されたい)。PennCNVは、CNVのキロベース分解能検出を可能にする(Wang K等(Nov 2007) Genome Res.17(11):1665-74を参照されたい)。
【0089】
CNV分析では、SNVジェノタイピングデータを正常な二倍体DNAの挙動と比較する。ソフトウェアは、SNVジェノタイピングデータを使用して、シグナル強度データ及びSNV対立遺伝子比の分布を決定し、次いでこれらのデータを使用して、CNVを示すDNAの正常な二倍体状態からの逸脱がいつあるのかを決定する。これは、SNVの2対立遺伝子についての全シグナル強度の正規化された測度であるlog R比(LRR)を使用することにより一部は行われる(Wang 2008)。ソフトウェアが0を下回る傾向を示す強度(LRR)を有する、近接するSNVの領域を検出した場合、これは、CNV欠失を示す。ソフトウェアが0を上回る傾向を示す強度(LRR)を有する近接するSNVの領域を検出した場合、これは、CNV重複を示す。二倍体DNAの挙動と比較してLRRの変化が認められなかった場合、配列は、CNVが存在しない正常な二倍体状態である。ソフトウェアは、CNV欠失若しくは重複と同様に、対立遺伝子を失った又は獲得した場合に変化する2対立遺伝子の対立遺伝子強度比の正規化された測度である、B対立遺伝子頻度(BAF)も使用する。例えば、CNV欠失は、LRR値の減少と、BAF値中のヘテロ接合体の欠如との両方により示される。対照的に、CNV重複は、LRR値の増加と、ヘテロ接合遺伝子型BAFクラスターの異なる2クラスターへの分割との両方により示される。ソフトウェアは、全ゲノムSNVデータについてCNV欠失及び重複を検出するためのLRR及びBAFの計算を自動化する。強度データと遺伝子型データの同時分析により、正常な二倍体状態が正確に定義され、CNVが判定される。
【0090】
Illumina、Affymetrix及びAgilentからのもの等のアレイプラットフォームをSNVジェノタイピングにおいて使用することができる。カスタムアレイを設計することもでき、本明細書に記載のデータに基づいて使用することもできる。
【0091】
B.比較ゲノムハイブリダイゼーション
比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)は、CNV等の遺伝子変化を評価するために使用することができる別の方法である。CGHは、競合的蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を使用して参照試料との比較でCNV等の遺伝子変化を分析する分子細胞遺伝学的方法である。患者及び参照供給源からDNAを単離し、DNAの変性後に蛍光分子(すなわち、フルオロフォア)で独立して標識する。得られた試料へのフルオロフォアのハイブリダイゼーションを各染色体の長さに沿って比較して、2供給源間の染色体の差を同定する。色の不一致は、検査試料の特異的領域内の物質の獲得又は喪失を示し、色の一致は、特定の領域における検査試料と参照試料間のコピー数等の遺伝子変化に差がないことを示す。ある特定の実施態様では、フルオロフォアは、天然に存在しない。
【0092】
C.全ゲノム配列決定、全エクソーム配列決定、及び標的配列決定
全ゲノム配列決定、全エクソーム配列決定、又は標的配列決定を使用して、CNV等の遺伝子変化を分析することもできる。全ゲノム配列決定(完全長ゲノム配列決定、完全ゲノム配列決定、又はゲノム全体配列決定としても公知)は、タンパク質をコードする又はコードしない遺伝子を含む、種の完全長ゲノムの配列決定を含む。対照的に、全エクソーム配列決定は、ゲノム内のタンパク質コード遺伝子(ゲノムのおおよそ1%)のみの配列決定である。標的配列決定は、ゲノムの選択された部分のみの配列決定を含む。
【0093】
対象からの精製されたDNAを用いて全ゲノム、全エクソーム又は標的配列決定を行うための広範な技法が当業者に公知であるであろう。同様の技法を異なるタイプの配列決定に使用することができるであろう。全ゲノム配列決定に使用される技法としては、ナノポア技術、フルオロフォア技術、DNAナノボール技術、及びパイロシークエンシング(すなわち、合成による配列決定)が挙げられる。詳細には、次世代配列決定(NGS)は、DNAの何百万もの小断片の並行した配列決定、続いて、前記断片からの配列決定データをつなぎ合わせるためのバイオインフォマティクス解析の使用を含む。
【0094】
全エクソーム配列決定は、全ゲノム配列決定のような大量のDNAの配列決定を行う必要がないので、広範な技法を使用することができる。全エクソーム配列決定のための方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応法、NGS法、分子反転プローブ、マクロアレイを使用するハイブリッドキャプチャー、溶液中キャプチャー、及び古典的サンガー配列決定が挙げられる。標的配列決定は、全ゲノムではなく特定の遺伝子についての配列データを得ることを可能にするものであり、目的の遺伝子の配列決定用の材料を含有する特殊化マイクロアレイを含む、他のタイプの配列決定に使用される任意の技法を使用することができる。
【0095】
D.遺伝子変化を判定するための他の方法
ゲノムマッピング技術を使用する、BioNano又はOpGenからのもの等の、知的財産権を有する方法を使用して、CNV等の遺伝子変化を評価することもできる。
【0096】
標準的な分子生物学方法、例えば、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、液滴PCR、及びTaqManプローブ(すなわち、定量的PCRの特異性を増大させるために設計された加水分解プローブ)を使用して、CNV等の遺伝子変化を評価することができる。蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)プローブを使用して、CNV等の遺伝子変化を評価してもよい。患者に存在するCNV等の遺伝子変化の分析は、CNV等の遺伝子変化を判定するまさにその方法によって限定されるものではない。
【0097】
VI.非選択的mGluRアクチベーターでのADHD及び22q症候群の治療
一部の実施態様では、ADHDを有する対象は、非選択的mGluRアクチベーターで治療される。他の実施態様では、22q欠失及び/又は重複症候群を有する対象は、非選択的mGluRアクチベーターで治療される。さらに他の実施態様では、ADHD並びに22q欠失及び/又は重複症候群を有する対象は、非選択的mGluRアクチベーターで治療される。「対象」及び「患者」という用語は、ヒトを指すために同義で使用される。「小児対象」又は「小児患者」という用語は、18歳未満のヒトを指すために同義で使用される。一部の実施態様では、対象は、6から17歳の間、例えば、12から17歳の間、又は6から12歳の間であり得る。「成人対象」又は「成人患者」という用語は、少なくとも18歳のヒトを指す。「青年」対象は、例えば、12から18歳の間、例えば、12-17、13-17、又は13-18歳の間であり得る。
【0098】
本明細書で使用される「治療」という用語は、対象における疾患のための治療の投与又は適用を包含し、疾患を抑制すること、その発症を阻止すること、疾患の一若しくは複数の症状を軽減すること、又は疾患の一若しくは複数の症状の再発を防止することを含む。例えば、22q欠失及び/又は重複症候群対象の治療は、22q欠失及び/又は重複症候群に関連する神経行動、神経精神及び神経発達症状を緩和することを含み得る。そのような症状としては、記憶、注意、認知、不安の改善、並びに気分障害、自閉症スペクトラム障害、精神病及び多動性の安定化又は好転が挙げられるが、これらに限定されない。ADHD又は22q欠失及び/若しくは重複対象を治療することは、ADHDに関連する不注意、多動性及び/又は衝動性の症状を緩和すること、並びに関連表現型、例えば、気分障害及び睡眠障害、怒り制御、及び破壊行動を改善することを含む。
【0099】
mGluRタンパク質は、典型的に3サブグループに分類され、mGluR1及びmGluR5を含むグループI受容体は、緩徐興奮性受容体として分類される。グループIIは、mGluR2及びmGluR3を含む。グループIIIは、mGluR4、mGluR6、mGluR7及びmGluR8を含む。グループII及びIIIは、緩徐抑制性受容体として分類される。mGluRは、イオンチャネル結合型グルタメート受容体であって高速興奮性受容体として分類されるイオンチャネル型GluR又はiGluRとは区別される。
【0100】
「mGluRの非選択的アクチベーター」は、グループI、II及びIIIカテゴリーのうちの1を超えるカテゴリーからのmGluRを活性化する分子を指す。したがって、mGluRの非選択的アクチベーターは、mGluRネットワークに対する全般的刺激を提供し得る。これは、例えばmGluR5等の、単一のmGluRを専ら有意に活性化することができる特異的mGluRアクチベーターとは対照的である。非選択的mGluRアクチベーターは、例えば、非選択的mGluRアゴニストを含む。
【0101】
一部の実施態様では、非選択的mGluRアクチベーターは、「ファソラセタム」である。ファソラセタムは、インビトロ研究でグループI mGluRとグループII/III mGluRの両方を刺激することができる向知性(すなわち、認知促進)薬である。(Hirouchi M等 (2000) European Journal of Pharmacology 387:9-17を参照されたい)。ファソラセタムは、グループI mGluRの活性化によってアデニル酸シクラーゼ活性を刺激することができる一方で、グループII及びIII mGluRを刺激することによりアデニル酸シクラーゼ活性を阻害することもできる。(Oka M等 (1997) Brain Research 754:121-130)。ファソラセタムは、生物学的利用率が高く(79%-97%)、5-6.5時間の半減期を有することが以前のヒト研究で認められている(Malykh AG等(2010) Drugs 70(3):287-312を参照されたい)。ファソラセタムは、5炭素オキソピロリドン環を共有する化学物質のラセタムファミリーのメンバーである。
【0102】
ファソラセタムの構造は、
である。
【0103】
本明細書で使用される「ファソラセタム」という用語は、薬学的に許容される水和物及び任意の固体、非晶質又は結晶質形態のファソラセタム分子を包含する。例えば、本明細書におけるファソラセタムという用語は、ファソラセタム一水和物であるNFC-1等の形態を含む。NFC-1に加えて、ファソラセタムは、C-NS-105、NS105、NS-105及びLAM-105としても公知である。
【0104】
NFC-1は、認知症関連認知障害の第I-III相臨床試験で以前に研究されているが、第III相治験で認知症に関して十分な有効性を示さなかった。これらの治験は、NFC-1がそれらの適応症のための一般に安全であり且つ良好な耐容性を示すものであることを実証した。第III相データは、NFC-1が脳梗塞患者及び脳血管疾患を有する成人認知症患者における精神症状に対して有益な効果を示すことを示した。ファソラセタムは、化合物のラセタムファミリーのメンバーである。別のラセタム化合物であるピラセタムは、小児ADHD対象において試験され、それらの対象におけるADHD症状をプラセボコントロールと比較して実際に増加させることが判明した。(Akhundian, J., Iranian J. Pediatrics 2001, 11(2):32-36を参照されたい)。
【0105】
治療実施態様の各々の方法では、代謝型グルタメート受容体陽性アロステリックモジュレーター、代謝型グルタメート受容体陰性アロステリックモジュレーター、又はタキキニン-3/ニューロキニン-3受容体(TACR-3/NK3R)アンタゴニストは、単独で、又は例えばmGluRの非選択的アクチベーターと組み合わせて、mGluRネットワーク遺伝子の変化を有する対象に投与され得る。一部の実施態様では、治療剤は、ADX63365、ADX50938、ADX71149、AMN082、1-(ヘテロ)アリール-3-アミノ-ピロリジン誘導体、LY341495、ADX48621、GSK1144814又はSB223412を含む。
【0106】
VII.投与方法及び投薬量
一部の実施態様では、ファソラセタムをファソラセタム一水和物(NFC-1)として投与することができる。一部の実施態様では、ファソラセタムを口経由で(すなわち、経口)投与することができる。一部の実施態様では、ファソラセタムをカプセル、錠剤、カプレット、経口液剤、及び経口懸濁液として投与することができる。一部の実施態様では、ファソラセタムカプセル又は錠剤等は、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、600mg若しくは800mgのファソラセタム、又は前記数値のうちの2値により制約される任意の範囲のファソラセタムを含有し得る。
【0107】
一部の実施態様では、ファソラセタムを上記投薬量50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg又は400mgのいずれかで、1日1回、2回又は3回投与することができる。一部の実施態様では、ファソラセタムの全1日用量は、1日1回投与される50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg若しくは400mg、又は1日2回投与される50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg若しくは400mgであり得る。一部の実施態様では、一連の用量漸増を使用してファソラセタム投薬を調整することができる。一部の実施態様では、薬物レベル又は臨床応答に関する薬物動態データは、投薬の変化を判定するために使用される。一部の実施態様では、ファソラセタムの用量漸増は使用されない。一部の実施態様では、対象は、用量漸増プロトコールなしで臨床的に効果的であると予想されるファソラセタム用量で治療される。
【0108】
VIII.治療の併用
一部の実施態様では、mGluRネットワークタンパク質の非選択的アクチベーター、例えば、ファソラセタムは、ADHD並びに22q欠失及び/又は重複症候群の治療用の他の薬剤と組み合わせて使用される。一部の実施態様では、それは、現行のADHD薬、例えば、神経刺激及び/又は非刺激薬と組み合わせて使用される。ADHDの治療に使用される「刺激薬(stimulant)/神経刺激薬(stimulant drug)」は、脳内のドーパミン又は他の神経伝達物質のレベルを増加させる薬物である。それらは、短時間放出から持続放出まで様々な放出形態で利用可能である。刺激薬は、注意持続時間及び焦点化を改善する傾向があり、衝動的行動を調節する傾向がある。現在使用されている刺激薬としては、メチルフェニデート(例えば、Concerta(登録商標)、Ritalin(登録商標)、Daytrana(登録商標)パッチ、Methylin(登録商標)、Metadate(登録商標))、デクスメチルフェニデート(例えば、Focalin(登録商標))、並びにアンフェタミン、例えば、Adderall XR(登録商標)(アンフェタミン混合塩)、Dexedrine(登録商標)(デキストロアンフェタミン)、及びVyvanse(登録商標)(リスデキサンフェタミンメシル酸塩)が挙げられる。
【0109】
「ADHDのための非刺激薬(nonsimulant)/非神経刺激薬(nonstimulant drug)」(本明細書では「非刺激薬(non-simulant)/非神経刺激薬(non-stimulant drug)」とも称する)は、神経伝達物質に作用し得るが、脳内のドーパミンレベルを上昇させない薬物である。非刺激薬は、様々な薬物クラスを包含する。現在使用されている非神経刺激薬としては、脳内のノルエピネフリンの作用を延長することができるアトモキセチン(Strattera(登録商標))、並びにADHD患者における精神機能を向上させることもできる血圧薬クロニジン(Kapvay(登録商標))及びグアンファシン(Intuniv(登録商標))が挙げられる。
【0110】
一部の実施態様では、アクチベーターは、抗不安薬(例えば、バルビツレート類、プレガバリン、又は次のものを含むベンゾジアゼピン類:クロルジアゼポキシド、クロラゼペート、ジアゼパム、フルラゼパム、ハラゼパム、プラゼパム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、クロナゼパム、フルニトラゼパム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、アジナゾラム、アルプラゾラム、エスタゾラム、トリアゾラム、クリマゾラム、ロプラゾラム若しくはミダゾラム)と組み合わせて投与され得る。アクチベーターはまた、抗うつ薬、例えば、セロトニン選択的取り込み阻害剤、例えば、フルオキセチン、セルトラリン及びシタロプラムと組み合わせて投与され得る。抗うつ薬は、例えば、フルオキセチン;エスシタロプラム;ブプロピオン;ミルタザピン;アミトリプチリン;イミプラミン;ベンラファキシン;セルトラリン;パロキセチン;又は次のクラスの中の他の化合物:三環式抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、ノルエピネフリン・ドーパミン再取り込み阻害剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤;又はうつ病の使用に認可されている他の薬物も含む。一部の実施態様では、他の薬剤は、ベータ遮断薬(例えば、アセブトロール 、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、エスモロール、ネビボロール、メトプロロール、カルテロール、ペンブトロール、ピンドロール、カルベジロール、ラベタロール、レボブノロール、メチプラノロール、ナドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール、又はベータアドレナリン受容体の他の選択的若しくは非選択的遮断薬)であり得る。一部の実施態様では、他の薬剤は、抗精神病薬、例えば、アリピプラゾール又はリスペリドンであり得る。
【0111】
一部の実施態様では、ファソラセタムを、非薬理学的治療、例えば、心理療法又は脳刺激療法と組み合わせて使用することができる。例えば、一部の実施態様では、患者は、脳刺激を用いてさらに治療され、そのような脳刺激は、迷走神経刺激、反復経頭蓋磁気刺激、磁気痙攣療法、脳深部刺激、又は電気、磁石若しくは留置剤による脳機能の調節を含む任意の他の療法であり得る。
【0112】
IX.治療への応答性を判定するための有効性評価基準
多数の異なる効果指標及び評価尺度が、臨床試験において例えばADHD治療の有効性を判定するのに妥当であることが確認されている。これらは、注意の評価基準、作業の評価基準、及び患者の重症度又は改善の全般的評価基準を含み得る。小児患者におけるADHD臨床試験に現在使用されている評価尺度としては、ADHD評価尺度IV、ヴァンダービルト問診票、アクティグラフィー、Quotient ADHD試験尺度、及びPERMP-Math試験尺度が挙げられる。臨床全般印象重症度/改善(CGI-S及びCGI-I)スコアも、臨床医がADHD患者の治療の通常の臨床診療において行う全般的な健康状態の判断によく対応するので、副次的な有効性測定法として使用される頻度が高い。
【0113】
ADHD評価尺度IVは、アメリカ精神医学会により発行されたDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの第4版、1994年(DSM-4)又は第5版、2016年(DSM-V)に収載されているADHDについての18の不注意及び多動性/衝動性診断基準に基づく。[DSM-IV及びDSM-Vの質問は本質的に同じか?]18項目の各々は、無症状を示す0から重度の症状を示す3まである、0、1、2又は3の4段階評価で採点される。したがって、この尺度により0から54の範囲のスコアを得ることが可能であり、スコアが高いほど病状の重症度が高い。親/教師又は臨床医、誰が情報を記録するのか、及び患者が小児患者であるのか、成人患者であるのかに依存して、数バージョンのADHD評価尺度IVがある。しかし、全てのバージョンは、18項目の同じセットを評価するように設計されている。
【0114】
ヴァンダービルト評価尺度は、親又は教師によって記入され得る評価基準である(別々の記入用紙、親用ヴァンダービルト評価尺度及び教師用ヴァンダービルト評価尺度を参照されたい)。ヴァンダービルト問診票は、注意、作用を終えること、多動性、待てないこと等の項目、及び素行又は反抗挑戦性障害の評価基準-並びに全体的な学業成績及び他者との意思疎通の評価基準を用いて児童の行動を評価する。ヴァンダービルト問診票の最初の18項目は、上記ADHD評価尺度IVのものに対応するが、ヴァンダービルト問診票は、ODD(項目19-26)、素行障害(項目27-40)、不安(項目41、42及び47)及びうつ病(項目43-46)を含む、他の精神障害に関する項目19-47も含む。ヴァンダービルト問診票の行動評価項目の各々は、0、1、2又は3と評価され、0=決して起こらない、1=時々ある、2=よくある、及び3=非常によくあるである。したがって、ADHD評価尺度IV、ADHD評価尺度V、及びヴァンダービルト評価尺度の項目1-18は、同等の尺度であるが、ヴァンダービルト問診票のさらなる項目は、併存症表現型及び障害を評価する。
【0115】
親用ヴァンダービルト評価尺度の最初の18項目は、質問票の形であり、次のような項目を含む:(3)直接話しかけたとき聞いているように見えない;(4)指示を与えたとき、(拒絶するためでも、理解できないためでもなく)最後まで従わず、活動を終えることができない;(9)日常活動において物忘れしやすい;(10)そわそわと手足を動かす、又は座っていてもじもじ動いてしまう;(16)質問が終わる前に思わず答えてしまう;(17)自分の順番を待てない。項目の各々は、0、1、2又は3の尺度で評価され、0=決してない、1=時々ある、2=よくある、及び3=非常によくあるである。0から54までの合計スコアが、18の質問に対する回答に基づいて算出される。
【0116】
本明細書で使用される「ADHD評価尺度スコア」、「ADHDスコア」又は「ヴァンダービルトADHDスコア」は、ADHD評価尺度IV若しくはVの18項目、又はヴァンダービルト評価尺度の関連バージョン、例えば親、教師若しくは臨床医が記入するためのバージョン及び小児対象若しくは大人対象のためのバージョンのいずれかにおける最初の18項目の算出スコアを指すために同義で使用される。臨床試験は、ADHDスコア又はヴァンダービルトADHDスコア(すなわち、ADHD又はヴァンダービルト評価尺度の最初の18項目に基づく0から54のスコア)に基づいて薬物又はプラセボの影響を評価することができる。場合によっては、臨床試験対象集団の結果を、薬物投与期間にわたっての平均スコア又はスコアの百分率変化を比較することにより、分析することができる。患者は、例えば、彼らのヴァンダービルトAHDHスコアがプラセボ又は研究前ベースラインと比較して少なくとも25%低下した場合、「改善された」と見なすことができ、例えば、彼らのスコアがプラセボ又は研究前ベースラインと比較して少なくとも40%低下した場合「強く改善された」と見なすことができる。
【0117】
本明細書における治療方法の一部の態様は、ある特定の治療期間、例えば、1、2、3、4又は5週間の後、臨床試験対象の大部分においてADHD評価尺度スコア又はヴァンダービルトADHDスコアを少なくとも25%、例えば、少なくとも30%又は少なくとも35%又は少なくとも40%低下させるのに有効な量の非選択的mGluRネットワークアクチベーターを対象に投与することである。そのような実施態様では、投与の量は、例えば、その量が以前に評価した臨床患者の大部分においてそのような結果をもたらしたことを示す臨床結果に基づいて選択することができる。例えば、治療すべき対象が小児対象である場合、治療量は、小児対象の臨床試験での患者の大部分におけるそのような結果の達成に基づいて選択することができる。
【0118】
臨床全般印象尺度(CGI)は、精神医学で広範に使用されている評価手段であり、ADHD臨床試験の一般的な副次的有効性評価基準である。CGI尺度は、一般に、ADHD患者に関する臨床医の経験に基づく患者の機能、症状及び有害事象の包括的評価の提供するように臨床医に要請する。CGI尺度には、CGI-S(臨床全般印象-重症度;疾患重症度の評価基準)及びCGI-I(臨床全般印象-向上;症状の評価基準)という2要素の測定がある。両方の尺度は、1から7にわたる。CGI-S尺度は、1(正常)から3(軽度の疾患)、4(中等度の疾患)、5(顕著な疾患)、6(重度の疾患)そして7(非常に重度の障害)にわたる。CGI-I尺度は、1(著明改善)から、2(中等度改善)、3(軽度改善)、4(不変)、5(軽度悪化)、6(中等度悪化)、7(重度悪化)にわたる。一般に、ベースライン又はプラセボレベルと比較して1又は2のCGI-Iスコアを有する対象は、治療レジメンに対する応答者と見なされる。例えば、場合によっては、投薬レジメンに対する応答者は、ある特定の治療期間、例えば、1、2、3、4又は5週間の後、少なくとも25%、例えば、少なくとも30%、少なくとも35%、又は少なくとも40%のADHDスコア又はヴァンダービルトADHDスコアの低下、並びに1又は2どちらかのCGI-Iスコアを示し得る。場合によっては、応答者は、1、2、3、4又は5週間後にCGI-Iの、例えば1から2点の変化を示し得る。場合によっては、応答者は、1、2、3、4又は5週間後に1又は2又は3のCGI-Sスコアを示し得る。
【0119】
本明細書における方法の一部の実施態様では、対象に投与される非選択的mGluRアクチベーターの量は、臨床試験、例えば、同様の対象の臨床試験における対象の大部分において1又は2のCGI-Iスコアをもたらす、その量の能力に基づいて選択される。したがって、例えば、小児臨床試験により、特定の量のアクチベーターが特定の期間の後にその治験における患者の大部分において1又は2のCGI-Iスコアをもたらすことが明らかになった場合、その量を治療用量として別の小児対象への投与に選択することができる。同様に、一部の実施態様では、対象に投与される非選択的mGluRアクチベーターの量は、同様の対象の臨床試験におけるヴァンダービルトADHDスコアの少なくとも25%、例えば、少なくとも35%、少なくとも35%、又は少なくとも40%の低下をもたらす量に基づいて選択される。一部の実施態様では、治療期間後に対象において1-3、例えば、1-2のCGI-Sスコアを達成した量に基づいて、投与のための量が選択される。場合によっては、臨床試験対象の大部分においてこれらの効果の組合せをもたらす、投与のための量が選択される。
【0120】
成績の恒常結果測定法(PERMP)-Mathは、ADHDに対する薬物治療を受けている及び受けていないときに定期的に患者が行うことができる個人別数学試験である。これは、例えば、実験検査室の場で学業成績をモニターするために使用される。
【0121】
一般に、PERMP試験は、対象が10分間にわたって取り組むように指示される400問の5頁を含む。対象に先ず予備試験を行って彼らの数学力レベルを判定することもある。10分間でできるだけ多くの問題に答えるように対象に指示し、一般に、時間内に取り組んだ問題の数及び正答した問題の数に基づいて0-800段階評価で試験を採点する。対象は、それぞれの場で異なるバージョンの試験を受ける。
【0122】
Quotient ADHDスコアは、医療機器を使用して、ADHDの患者における多動性、注意及び衝動性を測定するものである。Quotient ADHDツールは、動作追跡技術を使用して、患者が15-20分のコンピュータによる試験を完了する間の患者の極小さな動きを追跡する。患者の試験完了後、動作のパターン、回答の正確さ、及び注意状態の変動を分析することができる。
【0123】
アクティグラフィーは、患者が装着したアクティグラフを使用して体の動きを記録する、ヒトの休止/活動サイクルの非侵襲的モニタリングである。アクティグラフは、例えば活動レベルを測定するために、学校に居る間、装着されることもある。アクティグラフィー分析は、AHDHの治療で見られることがある睡眠及び多動性の変化を測定することができる。
【0124】
併存症状、例えば、怒り制御及び破壊行動を評価するために、並びに併存病状を評価するために、さらなる質問票が臨床医により使用されることもある。
【0125】
X.製造品
一部の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の方法及び治療において使用することができる製造品を含む。一実施態様では、製造物は、図1-3に収載されているmGluRネットワーク遺伝子(すなわち、Tier1-3)の一部又は全ての遺伝子変化の検出に使用するための固体支持体又はマイクロアレイである。一部の実施態様では、複数のTierに含まれる遺伝子が同じ固体支持体又はマイクロアレイ内で評価される。一部の実施態様では、ある特定のmGluRネットワーク遺伝子は除外される。一部の実施態様では、GRM遺伝子が除外される。
【0126】
したがって、例えば、mGluRネットワーク遺伝子をアッセイして前記遺伝子のうちの一又は複数にCNV等の遺伝子変化があるかどうかを判定する一部の実施態様では、10、20、30、40、50、60、70又は全てのTier1遺伝子の遺伝子変化の存在を判定するための適切なプローブを含有する固体支持体又はマイクロアレイ、例えば、チップが使用される。一部の実施態様では、固体支持体又はマイクロアレイは、少なくとも10、20、30、50、100、150又は全てのTier2遺伝子の遺伝子変化の存在を判定するための適切なプローブも含み得る。一部の実施態様では、それは、少なくとも10、20、50、100、200、300、400、500又は全てのTier3遺伝子の遺伝子変化の存在を判定するための適切なプローブをさらに含み得る。例えば、そのような固体支持体、マイクロアレイ又はチップは、ADHD又は22q欠失及び/若しくは重複患者を治療する方法の一部としてTier1、Tier1+2、又はTier1+2+3 mGluR遺伝子ネットワークの遺伝子変化、例えば、CNV又はSNVの存在を判定するために使用することができる。
【0127】
一部の実施態様では、製造物は、Tier1、2及び/又は3からの目的のmGluRネットワーク遺伝子のためのプローブセットである。一部の実施態様では、プローブは標識される。ある特定の実施態様では、標識は、天然に存在しない。同様に、10、20、30、40、50、60、70又は全てのTier1遺伝子の遺伝子変化の存在を判定するためのプローブセットを製造することができる。一部の実施態様では、少なくとも10、20、30、50、100、150又は全てのTier2遺伝子の遺伝子変化の存在を判定するためのプローブを製造することができる。一部の実施態様では、プローブは、少なくとも10、20、50、100、200、300、400、500又は全てのTier3遺伝子の遺伝子変化の存在を判定するためのものをさらに含み得る。これらの様々なプローブセットは、ADHD又は22q欠失及び/若しくは重複患者を治療する方法の一部としてTier1、Tier1+2、又はTier1+2+3 mGluR遺伝子ネットワークの遺伝子変化、例えば、CNV又はSNVの存在を判定する方法において使用することができる。
【実施例
【0128】
実施例1:mGluRネットワーク遺伝子のCNVを有するADHD患者のNFC-1(ファソラセタム一水和物)での治療
mGluRネットワーク遺伝子の、少なくとも1の遺伝子変化も有する、以前にADHDと診断された年齢が12歳から17歳の間の青年対象において、非盲検第Ib相臨床試験を開始して、NFC-1(ファソラセタム一水和物)の安全性、薬物動態及び有効性を調査した。
【0129】
この研究には、任意の出自又は人種の、その年齢が5から95パーセンタイル以内の体重の、他の点では良好な医学的健康状態であると判断された、年齢が12歳から17歳の間である、30の対象を組み入れた。対象は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第5版(DSM-5)及びベースラインでの(親又は教師により判定された)16以上のヴァンダービルトADHDスコアによって定義されるADHDに罹患しており、従来のADHD治療を受けていることもあり、又は受けていないこともある。対象の遺伝子型を同定し、彼らが、遺伝子の機能を破壊する可能性のある、mGluRネットワーク遺伝子の、少なくとも1のコピー数多様性(欠失又は重複)の形態の少なくとも1の遺伝子変化を有した場合、彼らを治験に組み入れた。30の対象のうちの17は、tier1 mGluRネットワーク遺伝子のCNVを有するが、7の対象は、Tier2遺伝子のCNVを有し、6はTier3遺伝子のCNVを有する。治験のADHD対象の30のうちの2は、22q症候群にも罹患しており、1は、22q欠失症候群を有し、1は、22q重複徴候群を有した。数名の治験対象は、ヴァンダービルト問診票の項目19-47の結果に基づき、登録時にADHDに加えて併存症表現型、例えば、不安、気分障害、睡眠障害、例えば不眠症、うつ病、ODD又は素行障害を証拠を示した。
【0130】
除外基準は、治験責任医師の見解として、研究の結果を混乱させる可能性がある又は研究の完了を妨げる可能性がある、臨床的に有意な精神的若しくは肉体的いずれかの疾患に罹患している対象;妊娠中又は授乳中である対象;薬物乱用の履歴がある、違法薬物についての検査で陽性を示す対象;アルコール飲料を飲む対象;又は別の点で彼らのコンプライアンス若しくは適合性に関して治験責任医師に懸念を持たせる対象を含んだ。
【0131】
ファソラセタム一水和物を有効成分として含む50mg又は200mgのいずれかのNFC-1カプセル、及びマイクロセルロースを含むプラセボカプセルを研究に使用した。治験の計画は、電話スクリーニング(1日)、登録期(1から2日)、現在ADHD薬で治療中の対象についてのウォッシュアウト期(1-14日)、薬物動態(PK)評価(2日)、その後、用量漸増期(35日)、そして最終投与のおおよそ4週間後の追跡調査期来院、最大127日間であった。全てのADHD薬を研究前のウォッシュアウト期の間に中止した。刺激薬のウォッシュアウト期間は、2-3日であり、アトモキセチン又はノルアドレナリンアゴニストのウォッシュアウト期間は、10-12日であった。新たなADHD薬を研究中に開始しなかった。
【0132】
全ての対象がPK評価に参加した。治験のPK部については、対象に1回量50から800mgのNFC-1を投与し、血液試料を投薬前並びに投薬の0.5、1、1.5、2、3、4、6、8、12及び24時間後に採取した。30の対象をPK及び初期安全性評価のために6の対象の5群に分類し、各群に50、100、200、400又は800mgの異なる用量範囲を投与した。PKパラメーターCmax、Tmax及びAUC0-24hを血清中のNFC-1レベルに基づいて計算した。
【0133】
PK及び初期安全性評価の後に治験の用量漸増期が続き、5週間にわたってそれを行った。第1週目の間、全ての対象にプラセボカプセルを1日2回投与した。1週間のプラセボ治療後、患者に1週間の50mg bid NFC-1を開始させた。ファソラセタムの以前の用量レベルからの安全性及び応答性データが適切であった場合には、対象の用量を次のより高い用量(100、200又は400mg)に上昇させた。50mg bid用量への耐容性及び薬物への応答を示した対象は、治験の残りの3週間の間、そのレベルを維持することになった。耐容性を示したが、50mg bid用量への応答欠如又は部分的応答を示した対象は、後続の週の間、次のより高い100mg用量に上昇させることになった。100mgで耐容性を示したが、応答の欠如又は部分的応答を示した対象は、後続の週、200mg用量に上昇させることになったが、100mgで耐容性と応答の両方を示した対象は、治験の残りの間、100mg bidを保つことになった。同様に、耐容性と応答の両方を示した、200mg用量に上昇させた対象は、治験の最終週の間200mgを保つことになったが、耐容性を示したが応答の欠如又は部分的応答を示した対象は、最終週の間、400mg用量に変えさせた。30の治験対象のうち、3は、100mgの最大容量を摂取し、9は、200mgの最大容量を摂取し、残りの18は、400mgの最大容量を摂取した。
【0134】
アクティグラフィーを除く全ての有効性評価を研究登録時(「登録ベースライン」)に行い、プラセボ週(「第1週目」又は「プラセボベースライン」)については1週間に1回、そして4週間のNFC-1治療の各週に、アクティグラフィーを含む前記評価を再び行った。これらの有効性評価基準は、不注意及び多動性-衝動性に関する症状を評価するヴァンダービルト問診票の項目1-18、及び他の行動症状を評価するヴァンダービルト問診票のさらなる質問19-47(親により行われる);活動の定量的測定のためのアクティグラフィー;極小さな動作及び注意状態の移行の客観的測定のためのQuotient(登録商標)ADHD試験;PERMP-Math試験;並びに全般的機能の評価のためのCGI-I及びCGI-Sを含む。PK評価用量を投与する前に、対象は、診療所に戻って、PERMP-Math試験を受け、アクティグラフィー(2日後の初回プラセボ投与時に作動するように設定)を受け、バイタルサイン及び体重、採血及び採尿、並びに女性対象については妊娠検査を含む全身の健康診断を受けた。研究の5週間のプラセボ及び用量漸増期の間に、対象は、各週末に診療所に再び来院して、Quotient(登録商標)及びPERMP-Math試験を受け、アクティグラフィー、ヴァンダービルト及びBRIEF測定(親により行われる)を受け、バイタルサイン及び体重、採血及び採尿、並びに女性対象については妊娠検査を含む全身の健康診断を受けた。
【0135】
データ分析については、対象を全体として、及び遺伝子tier(1、2若しくは3)ごとに、又は遺伝子tier群(1及び2対3)ごとに考察した。対象番号、投与した最大用量、年齢、遺伝子tier、並びに30の対象全てのプラセボベースライン(すなわち、第1週目)及び最終(すなわち、第5週目)CGI-I、ヴァンダービルト及びPERMP結果を下の表1に示す。対象110及び127は、ADHDと22q欠失及び/又は重複症候群の両方に罹患している。13の対象は、ODDの診断を受けており、これらの対象のうちの1は、治験を完了しなかった。したがって、番号102、103、108、111、112、114、117、122、125、126、128及び130である12の対象は、ADHDとODDの両方を有し、且つ治験を完了した。
【0136】
次の頁の表1を参照されたい(頁の残部は故意に空白のままにしておく)。
【0137】
表1に基づいて、30の対象についての最初のCGI-Iスコアの平均値及び最後のCGI-Iスコアの平均値は、第1週目における3.67(プラセボベースライン)及び第5週目における2.27であり、平均改善は1.4であった。これは、一般に、対象には治療の用量漸増期の最後までに平均して「中等度改善」又は「著明改善」(1又は2のCGI-I)があったことを示す。30の治験対象についての登録ベースラインから第5週目にかけてのCGI-Iスコアの変化を下の表2(a)-(c)に要約する。下に示すように、全対象についてのCGI-Iスコアの平均改善は1.57であり、これは、「中等度改善」から「著明改善」状態に相当する。遺伝子Tier1及び2の対象は、Tier3の対象より大きく改善され、P=0.0402であった。
表2(a)、(b)、(c):全対象についての、遺伝子tierごとの、及びtier群ごとの、予備研究登録ベースラインでのCGI-Iと比較した第5週目のCGI-I
【0138】
CGI-Sスコアは、登録から第5週目にかけて平均値約4から平均値約3に低下した。登録ベースラインから第5週目にかけてのCGI-Sの変化を下の表2(d)-(f)に示す。平均変化は、全対象にわたっておおよそ1であった。
【0139】
表3は、応答者と見なされた、すなわち、治験の用量漸増期の各週に1又は2のCGI-Iスコアを有した、全研究対象集団及び遺伝子tierにおける対象の百分率の分析を提供するものである。これらのデータをグラフで図4にも示す。表3及び図4に示されているように、第4週目に、Tier1の56%及びTier2の50%を含む、対象の約55%は、CGI-Iスコアに基づき応答者と見なされたが、6のTier3対象はいずれも有意な応答者ではなかった。用量漸増の第5週目までに、遺伝子Tier1及び2の81%及び86%並びに遺伝子Tier3の40%を含む、治験対象の83%は、CGI-Iスコアに基づき応答者と見なされた。下の表において、「N」は、CGI-Iスコアを測定した対象の数を表し、「%」は、遺伝子tier群と比較して又は(表の「全体」という行の)全研究対象集団と比較して1又は2のCGI-Iスコアを示した対象の百分率を示す。
【0140】
研究の各週における平均ヴァンダービルトADHDスコア(と標準誤差)を表4に示す。これらの値は、反復測定分散分析(RMANOVA)を使用して計算したものである。この分析は、実験の効果に寄与し得る変化をより容易に検出するために、反復有効性測定の個体内変化を補正する。標準誤差は、RMANOVA統計モデルから推定したため、下の表4における毎週の値各々について同一であることに留意されたい。表4が示す通ように、平均ヴァンダービルトADHDスコアは、プラセボベースライン(第1週目)から第5週目にかけて毎週低下した。患者内変化も統計的に有意(p<0.001)であり、これは、この集団のヴァンダービルトスコアがこの研究への参加の時間経過に伴って低下したという結論を裏付ける。
【0141】
下の表5は、研究前ベースライン又はプラセボベースライン(第1週目)のいずれかと比較してヴァンダービルトADHDスコアの改善を各週に示した対象の数及びパーセントを遺伝子Tierと全研究対象集団の両方に関して提示するものである。これらの結果をグラフで図5a及び5bにも示す。ヴァンダービルトADHDスコアの少なくとも25%の低下を応答性及び改善と見なし、さらに、スコアの少なくとも40%の低下を強い改善と見なす。
【0142】
表5及び図5に示されているように、対象の78%は、ヴァンダービルトADHDスコアに基づきベースラインと比較して第5週目に治療に応答性であり、さらに52%は、プラセボベースラインと比較して第5週目に応答性であった。Tier3における対象と比較して遺伝子Tier1及び2における対象の高い百分率が応答性であった。研究ベースライン及びプラセボベースラインと比較して第5週目に強く改善された患者の割合をグラフで図7a及び7bに示し、さらに表6に示す。これらの図及び表から分かるように、対象の52%は、ベースラインと比較して強く改善され、さらに37%は、プラセボベースラインと比較して強く改善され、これらの全てが遺伝子Tier1及び2におけるものであった。
【0143】
表1に示されているように、この研究における30の対象のうちの18は、第5週目に400mg bidへの用量漸増を完了した。研究前ベースラインと又は第1週目プラセボベースラインと比較して第5週目にヴァンダービルトADHDスコアの改善(すなわち、応答)及び強い改善を示す18の対象の割合を表7及び8並びに図7及び8にそれぞれ示す。
【0144】
表1のデータに基づいて、研究前ベースラインから第5週目にかけてのPERMPスコアの平均変化は、マイナス3.43であった。遺伝子tierに基づいて分析した場合、全平均変化との有意差はなかった。Tier1及び2における者は、マイナス3.0のPERMPの平均変化(Tier1についてマイナス3.35及びTier2についてマイナス2.14の平均)を有したが、Tier3における者は、マイナス5.17の平均変化を有した。PERMPスコアは殆ど変化を示さなかったが、これは、少なくとも一部は、PERMP試験を行った方法に起因する非管理環境因子に起因し得る。この試験は、診療所来院時に行ったため、各対象に対して必ずしも投与後の同じ時刻に又は毎週毎週同じ時刻に行わなかった。この試験はまた、診療所来院中に行い、教室で行わなかった。したがって、例えば、診療所の待合室の気を散らす要因は来院ごとに異なる可能性があり、それを管理しなかった。
【0145】
全体的に見れば、親により評価されるヴァンダービルトADHDスコアは、対象の約75-80%が、研究の用量漸増期の最後(すなわち、第5週目の終わり)に研究前ベースラインと比較してスコアの少なくとも25%低下を有したことを示す。対象の約63%は、強い改善、すなわち、少なくとも40%のヴァンダービルトADHDスコアの変化を示した。加えて、対象の約80-85%は、第5週目に1又は2のCGI-Iスコアを示した。これは、研究前ベースラインと比較して研究の第5週目までに中等度改善又は著明改善が彼らにあったことを示す。PERMP結果は、研究の過程で有意な変化を示さなかった。
【0146】
アクティグラフィーからの結果は、NFC-1の最高用量(400mg bid)でプラセボと比較して中/高強度の動きの突発の有意な低減を示した(P<0.001)。図9a-9cに示されているように、遺伝子Tier-1(図9a)、遺伝子Tier-2(図9b)及び遺伝子Tier-3(図9c)について第1週目(プラセボ)から第5週目にかけて中高強度身体活動(MVPA)に関して観察された低下は、400mg bid用量群において最も顕著であった。
【0147】
QUOTIENT(登録商標)ADHD試験からの結果は、高いノイズレベルを示した。それにもかかわらず、図10に示されているように、Tier-1遺伝子群の臨床試験対象は、用量漸増の第4週目から第5週目の間の正規化不注意値100強から約90へのTier-1群における不注意の低減(P<0.05)から分かるように、第1週目(プラセボ)から第5週目(1日2回400mg)の間に不注意についての試験測度の有意な改善を有した。
【0148】
両者とも遺伝子Tier1であるこの研究の対象110及び127は、mGluR3の相互作用因子であるRANBP1遺伝子を含む22qにおける欠失又は重複のどちらかを有し、したがってADHDの診断に加えて22q症候群を有する。両方の対象は、研究の第5週目までの400mg bidへの全用量漸増を完了した。対象110は、研究前に91のIQ測定値を有し、第1週目と比較して第5週目までに中等度の疾患から軽度の疾患への変化を示すCGI-Sの1点改善を示し、且つ中等度改善を示す2のCGI-Iを示した。対象110は、第1週目と比較して第5週目までに22から17への5点のヴァンダービルトADHDスコアの変化も示した。
【0149】
対象127は、研究前に65のIQ測定値を有し、第1週目に重度の疾患を示す6のCGI-Sを有し、第3週目までに中等度の疾患を示す4へのCGI-Sの2点改善を有し、その改善を第5週までずっと維持した。対象127は、対象110と同様に、2のCGI-Iも有した。これは、臨床医の見解としてこの対象には用量漸増終了までに中等度改善があったことを示す。対象127は、第3週目に44から25へのヴァンダービルトADHDスコアの強い低下も示したが、第4目のヴァンダービルトADHDスコアは得られず、第5週目のスコアは33であった。対象110及び127についての全CGI、ヴァンダービルトADHD及びPERMP結果を下の表に示す。これら両方の22Q対象は、NFC-1を摂取している間、社会的交流/意思疎通障害、社会参加の欠如、不安、気分変動、うつ病、不注意、多動性、及び学校での成績(一般には生活における能力)の低下の改善を含む、22Q症候群の改善を有した。したがって、NFC-1は、22q症候群患者において有用である。
【0150】
治験に登録した30の対象のうちの13は、ADHDばかりでなくODDの症状も示した。スクリーニング時に行ったK-SADS-P V6並びにスクリーニング時及び第1週目のODDについてのヴァンダービルトスコア(ODDを評価する8のヴァンダービルト項目、すなわち項目19から26、のうちの少なくとも4項目に関して2又は3のスコア)から、対象をODDと同定した。第5週目の治験の用量漸増期の終わりまでに、12の対象のうちの4(番号108、117、125及び128)は、もはやODDのスクリーニング基準を満たさなかった。残りの8のうちの4は、第1週目から第5週目にかけて2点以上の改善を示した。
【0151】
項目19-26に関する登録及び第1週目プラセボベースラインスコア(「ヴァンダービルトODDスコア」)が、最高24スコア中それぞれ23及び19スコアであった対象108は、第5週目の終わりまでに24スコア中7スコアを有し、個々のスコアで2より上のものはなかった。対象117は、19のプラセボベースラインヴァンダービルトODDスコア及び8の第5週目スコアを有し、1問だけはスコア2であった。対象128は、それぞれ23及び24の登録及びプラセボヴァンダービルトODDベースラインスコアを有し、これらのスコアは第5週目までに8/24に低下し、個々のスコアで1より上のものはなかった。加えて、第5週目の終わりまでに、13全ての対象についてのヴァンダービルトODDスコアが第1週目から第5週目にかけて改善された。13の対象のうちの11は、少なくとも3点の改善を示し、さらにその13のうちの6は、第1週目から第5週目にかけて少なくとも8点の改善を示した。
【0152】
加えて、登録時にODDについてスクリーニング陽性であった13の対象のうちの3は、登録時もこの研究中も抗精神病薬治療を受けていた。対象111及び126は、Abilify(登録商標)(アリピプラゾール)は受けており、その一方で対象122は、Risperdal(登録商標)(リスペリドン)を受けていた。それにもかかわらず、これら3の対象の各々についてのヴァンダービルトODDスコアは、第1週目から第5週目の間に改善した。
【0153】
ODDについてスクリーニング陽性であった1の対象(番号130)は、登録時及び再び第1週目にヴァンダービルト問診票の項目27-40により評価した15行動のうちの3行動についての2又は3のスコアに基づいて、素行障害(CD)についてもスクリーニング陽性であった。第5週目までに、この個体のヴァンダービルトODDスコアは、第1週目の24/24から21/24へと3点改善し、ヴァンダービルトCDスコアは、第1週目の16/16から第5週目の12/16へと4点改善した。
【0154】
この研究におけるある特定の対象は、登録の際及び第1週目に記録した情報によると、他の併存症表現型、例えば、不安、うつ病、気分障害、及び睡眠障害、例えば不眠症も示した。2対象は、登録時に不安に関する3項目のヴァンダービルト項目41、42及び47のうちの2項目に関して最高スコア3を有した。第5週目にこれらの対象は、3項目全てに関してスコア3であった。これらの対象のうちの1はまた、登録時にうつ病に関する4ヴァンダービルト項目(項目43-46)のうちの3項目に関してスコア3であり、第1週目に4項目全てに関してスコア3であった。第5週目までに、この対象は、4項目全てに関して1又は2のスコアとなった。これは、うつ病症状の改善を示す。
【0155】
簡易問診票の結果も、30全ての対象に関して不安/気分スコアの変化について分析した。親により行われる簡易問診票は、不安及び気分に関する項目セット、具体的には以下のものを含む:
1.小さな問題に過剰に反応する;
6.新たな状況に動揺する;
7.急に激怒する;
12.計画の変更により動揺する;
13.先生/クラスが変わることで不安になる;
20.涙もろい;
23.いつものやり方、食物、計画が変わることに抵抗感がある;
25.殆ど理由なしに感情が爆発する;
26.頻繁に気分が変わる;
30.新たな状況に慣れるのが苦手;
45.状況に対して他の児童より強く反応する;
50.気分が状況による影響を受けやすい;
62.怒り及び涙ながらの感情の爆発が激しいが、突然に終わる;
64.小さな出来事が大きな反応を誘発する;及び
70.非常に容易に動揺する。
【0156】
これらの質問に対する答えを「決してない」、「時々ある」又は「よくある」として点数化した。この簡易テストを登録時に施し、プラセボ週から第5週目までの各用量漸増治療週後に再び施した。「決してない」又は「よくある」各々のスコアについて1点を与えて、上記各質問についての30全ての対象についての全スコアを、登録及び第5週目について合計した。登録時の全ての対象の全ての質問についての「決してない」の合計スコアは125であり、第5週目は191であることが判明した。これは、改善に向かう傾向を示す。同様に、登録時の「よくある」の合計スコアは154であったのに対して、第5週目の「よくある」の合計スコアは77であった。この場合もやはり、これは、不安及び気分症状の改善に向かう傾向を示す。
【0157】
実施例2:mGluRネットワーク遺伝子のCNVを有するADHD患者のNFC-1(ファソラセタム一水和物)での治療の第2相研究
NFC-1の安全性及び有効性をプラセボのものと比較するために、12-17歳のADHD対象の無作為化、二重盲検、プラセボコントロール、並行群間比較第2相研究を行う。計画通りに研究を完了する80の対象を得るために、おおよそ90の男性及び女性対象にNFC-1又はプラセボでの無作為化治療を施すことになる。対象は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第5版(DSM-5)及びベースラインでの注意欠陥多動性障害評価尺度バージョン5(ADHD RS-5)>28によって定義されるADHDを有し、従来のADHD治療を受けていることもあり、又は受けていないこともある。約45の対象が各治療群に居ることになる。
【0158】
第1日目に対象をNFC-1又はプラセボどちらかの摂取に無作為に割り当てることになり、対象は、第1日目に1日2回100mgの用量で製品の摂取を開始することになる。4週間の治療にわたって、臨床応答及び耐容性に基づき、必要に応じて1日2回100mg、200mg又は300mgに投薬を最適化することになる(用量最適化期)。対象が、用量に良好な耐容性を示した場合、その用量をさらに2週間維持し(用量維持期)、このとき有効性及び耐容性の一次評価を行うことになる。有効性は、ADHD評価尺度スコア、CGI-I、CGI-S、児童青年睡眠衛生尺度(ASHS)、及び小児期不安関連情動障害尺度(SCRED)により評価することになる。ASHSは、12歳以上の年齢の青年における最適な睡眠にとって理論的に重要な睡眠習慣を評価する自己評価質問票である。これは、生理的なこと(例えば、夜間カフェイン摂取)、認知的なこと(例えば、行う必要があることについて就寝前に考えること)、情動的なこと(例えば、動揺を感じる就寝)、睡眠環境(点灯したまま寝入ること)、睡眠安定性(例えば、平日及び週末における異なる就寝/起床時間パターン)、物質使用(例えば、夜間アルコール使用)、日中の睡眠(例えば、昼寝)、並びに入眠儀式を有することを評価する。SCAREDは、全般不安障害、分離不安障害、パニック障害及び社会恐怖症を含む、小児期不安障害についてのスクリーニングに使用される-18歳用の児童自己記入式手段である。加えて、これは、学校恐怖症に関する症状を評価する。SCAREDは、41項目及び不安障害のDSM-IV分類に匹敵する5因子からなる。この尺度は、良好な内部整合性、試験-再試験信頼性、及び判別妥当性を有し、治療応答に対する感度が高い。安全性及び有害事象も研究中に評価することになる。
【0159】
実施例3:22q11.2欠失障害を有する対象におけるNFC-1(ファソラセタム一水和物)の12週間、二重盲検、プラセボコントロール、無作為化治療中止研究
NFC-1の1日2回経口用量の安全性及び耐容性を評価するために、神経精神疾患:ADHD及び/又は自閉症スペクトラム障害(ASD)と合併した、22q11.2欠失症候群(22q11.2DS)を有する12-17歳の対象において、12週間の第I相治験を行うことになる。12-17歳の対象において、5週間の非盲検用量最適化後に7週間の二重盲検、プラセボコントロール、無作為化治療中止評価を行うことになる。約40の対象を参加させ、用量を最適化し、5週間にわたってNFC-1で維持することになる。
【0160】
用量を1日2回経口投与し、最初の5週間の間に必要に応じて1日2回50、100、200又は400mgに最適化することになる。治療への応答は、5週間の用量最適化後に<3のCGI-Iスコア及び<4のCGI-Sスコアにより示されるような症状の有意な改善の達成と定義する。
【0161】
第5週目の終わりに、対象が<3のCGI-Iスコア及び<4のCGI-Sを有した(応答者であった)場合、NFC-1又はプラセボに無作為化して、治験の7週間治療中止期を行うことになる。次いで、治療中止期の対象を、その後7週間にわたって有効性の維持又は治療の失敗(第5週目の終わりのスコアと比較してCGI-Sの2点以上の増加と定義する)について評価することになる。再発(第5週目の終わりのCGI-Sスコアに対する少なくとも2点の増加と定義する)を経験する対象は、治療を中止することになる。
【0162】
個々の症状に対するNFC-1の有効性及び効果は、CGI-I、CGI-S、ADHD評価尺度スコア、小児不安評価尺度(PARS)、異常行動チェックリスト(ABC)、及び小児自閉症評価尺度2(CARSTM-2)を使用して評価することになる。ABC試験は、精神遅滞を有する個体における問題行動を評価するための症状チェックリストである。これは、その人の精神遅滞、医学的状態及び現在の病状の程度の臨床評価を含み、その対象についての知識がある親、教育者、心理学者、看護師又は医師によって行われる58の特異的症状の評価を含む。評価する行動には、易怒性/激越、嗜眠/引きこもり、常同行動、多動性/不服従、及び不適切な発話がある。PARSは、50の不安関連障害のリストからなる小児対象における不安症状の臨床医評価尺度である。50項目の各々を、無症状を示す0から重度の症状を示す5までの、0から5までの尺度で採点する。CARSTM-2評価尺度は、小児期自閉症の症状を評価するのに役立つ質問に基づく尺度である。この尺度は、正常に1点、軽度の異常に2点、中等度の異常に3点、及び重度の異常に4点を与える。質問票は、対人関係、模倣、情緒反応、変化への適応、視覚反応、聴取反応、恐れ/神経質、言語及び非言語コミュニケーション、並びに活動レベル等の、15項目を評価する。スコアは、各項目のスコア(1-4)に依存して15から60にわたる。
【0163】
実施例4:mGluRネットワークCNVについてのバイオレポジトリー試料の盲検スクリーニング及びADHD診断への関連付け
精神鑑定の記録を有するChildren’s Hospital of PhiladelphiaのCenter for Applied Genomicsのバイオレポジトリーからの合計3445のバイオレポジトリー試料を、Tier1又は2 mGluRネットワーク遺伝子の一又は複数のCNVを有する試料の数を決定するために研究した。遺伝子型検査者/分析者は、CNV分析を行ったが、対象の精神科診断を知らなかった。この研究の目的は、付随する精神鑑定データからADHDを有することが以前に確証されたCNV陽性試料の数を分析することにより、mGluRネットワーク遺伝子のCNVの予測値を推定することであった。3445試料のうち155、又は約4.5%は、Tier1若しくはTier2 mGluRネットワーク遺伝子の少なくとも1のCNVを有することが確証された。Tier1又は2 mGluRネットワーク遺伝子のCNVを有した155のうち138は、ADHDを有することが以前に確証されたものであったが、残りについてはそのような記録がなかった。加えて、138のADHD対象の約60%は、併存不安症状も有した。
【0164】
記録がなかった17の対象のうち14の家族に連絡を取ることに成功し、対象がADHDと診断されたかどうかに関して質問した。14家族のうちの13は、対象が確かにADHDと診断されたことを確証した。その13のうちの1はダウン症候群を有し、この研究ではADHDについて陰性と見なされたことに留意されたい。したがって、全体的に見れば、mGluRネットワーク遺伝子の少なくとも1のCNVを有した155の対象のうち、138+12の対象(150)、又は約97%は、ADHDとも診断されていたが、残りのうちの3についてはデータがなかった。これらのデータは、Tier1又は2 mGluRネットワーク遺伝子のCNVの存在が小児対象におけるADHDの強力な指標であり得ることを示す。
【0165】
実施例5:mGluRネットワークCNVに関連する表現型の研究
年齢が6-17歳である合計1,000のADHD患者を治験に登録させて、Tier1又は2 mGluRネットワーク遺伝子のCNVに関連し得る表現型を考察した。研究実施施設がDNA試料用の唾液を採取した。次いで、各DNA試料をDNA抽出、遺伝子配列決定、及びDNAのバイオバンキングに付した。
【0166】
遺伝子配列決定結果を病歴と共に使用して、遺伝子型(遺伝子配列決定に基づいて)及び表現型(臨床医と対象の親/後見人により行われた問診に基づいて)評価した。対象は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第5版(DSM-V)により定義された通りのADHD有した。
【0167】
遺伝子型データを知らない単独の臨床医が、親又は対象の法的後見人に、可能性のある行動又は健康表現型に関する一連の質問をした。個々の表現型各々について、親/後見人に「これは現在の懸念事項ですか」と尋ね、ハイ又はイイエの答えを収集した。臨床医は、ハイ又はイイエの返答の頻度を判定して、表現型データを生成した。
【0168】
この研究により、現在の懸念事項としての怒りの制御についての有病率は、Tier1又は2 mGluRネットワーク遺伝子CNVを有するADHD対象では58.9%であったが、そのようなmGluRネットワーク遺伝子CNVを有さないADHD対象では47.4%に過ぎなかった。この差は、統計的に有意であった(1.59のオッズ比、P=0.003)。1より大きいこのオッズ比は、現在の怒りの制御という懸念事項についての、Tier1又は2 mGluRネットワーク遺伝子CNVを有するADHD対象の、そのようなCNVを有さない対象に対する高い有病率を含意する。
【0169】
患者にとっての現在の懸念事項としての破壊行動の有病率は、Tier1又は2 mGluRネットワーク遺伝子CNVを有するADHD対象では57.1%であり、そのようなmGluRネットワーク遺伝子CNVを有さないADHD対象では43.9%であった。この差も統計的に有意であった(1.70のオッズ比、P<0.001)。この差は、現在の破壊行動という懸念事項についての、mGluRネットワーク遺伝子突然変異も有するADHD対象の、突然変異を有さない対象に対する高い有病率を示す。
【0170】
実施例6:併存障害を有するADHD対象におけるmGluRネットワーク遺伝子のコピー数多様性
ADHDであることが判明している2707の小児対象(平均年齢が10-10.5歳)からの試料の遺伝子型を、550/610 Illuminaチップを用いて同定して、それらがTier1又はTier2遺伝子の一又は複数のCNVを有するかどうかを判定した。2707の対象は、アフリカ系アメリカ人又は白人(それぞれ、1063及び1483)の759の女性及び1778の男性を含んだ。2707の対象のうちの430(16.9%)は、mGluR Tier1又はTier2遺伝子の、少なくとも1のCNVを有した。
【0171】
2707の対象の記録を点検して、世界保健機関国際疾病分類第9版(ICD-9)に従って彼らが併存症と診断されるかどうかも判定した。2707の対象のうち、1902(約70%)は併存症を有したが、805は有さなかった。併存症を有するこれらの1902の対象のうち、約30%は、1を超える併存症を有し、約20%は、2以上を有したが、わずかな百分率は、より多数の共存症を有した。
【0172】
各々100を超える対象に存在した最も有病率の高い共存症を表10に収載する。この表は、共存症をICD-9コードにより収載し、2707の対象の中での症例数(「N」と題する列)及び共存する状態又は障害各々についての名称を提供するものである。
【0173】
表10中の共存症は、以下の少数の異なる群にクラスター化する傾向がある:不安、うつ病又は気分に関係する障害;有病率の高い発達障害;有病率の低い発達障害;並びに自閉症及び関連障害。
【0174】
次いで、表現型データ及び共存症データを組み合わせて、Tier1又は2 mGluRネットワーク遺伝子のCNVを有する対象のうちの何名が共存症も有するのか判定した。そのようなCNVを有する対象のうちの316(CNV陽性対象の約18%又は全対象の12%)が少なくとも1の共存症も有する一方で、Tier1又は2 mGluRネットワーク遺伝子CNVを有さない対象のうちの114(CNV陰性対象の約15%又は全対象の4%)が少なくとも1共存症も有することが判明した。この差は、0.118のP値を示した。したがって、併存症は、全体的に見て、CNV陰性対象よりCNV陽性対象のほうによく見られる傾向があった。白人と同定された対象のみを考えた場合、mGluR CNVとADHD併存症には非常に有意な相関関係があった。具体的には、1483の対象のうちの218は、Tier1又は2 mGluRネットワーク遺伝子の、少なくとも1のCNVを有し、これらの218の対象のうち、169は併存症も有したが、49は有さなかった。この差は、0.004のP値を示した。
【0175】
上記明細書は、当業者が実施態様を実施できるようにするのに十分なものであると考えられる。上文の説明及び実施例は、ある特定の実施態様を詳述し、本発明者らが企図する最良の形態を説明するものである。しかし、本文中に出現し得る前述の事項がいかに詳述されていようとも、実施態様を多くの方法で実施することができ、添付の特許請求の範囲及びその任意の均等物に従って実施態様を解釈すべきであることは、理解されるであろう。
【0176】
本明細書で使用される約という用語は、例えば、明確に示されているか否かを問わず、整数、分数及び百分率を含む、数値を指す。約という用語は、当業者が、列挙されている値と等価である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と考えるであろう数値範囲(例えば、列挙されている範囲の+/-5-10%)を、一般に指す。少なくとも及び約等の用語が数値又は範囲のリストの前にある場合、これらの用語は、そのリストに与えられている値又は範囲の全てを修飾する。場合によっては、約という用語は、最近有効数字に丸められた数値を含み得る。
図1-1】
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図4
図5a-5b】
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図8a-8b】
図9a
図9b
図9c
図10