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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】脳機能改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20240805BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240805BHJP
   A61K 35/745 20150101ALN20240805BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20240805BHJP
【FI】
A23L33/135
A61P25/28
A61K35/745
C12N1/20 E ZNA
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022161862
(22)【出願日】2022-10-06
(62)【分割の表示】P 2021039956の分割
【原出願日】2017-05-31
(65)【公開番号】P2022176361
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2016108944
(32)【優先日】2016-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋大
(72)【発明者】
【氏名】久原 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】清水 金忠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓海
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/070016(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/034166(WO,A1)
【文献】Behavioural brain research, 2015, Vol.287, p.59-72
【文献】The American journal of clinical nutrition, 2012, Vol.95 No.5, p.1278-87
【文献】Alzheimer's & dementia, 2010, Vol.6 No.6, p.456-64
【文献】小動物臨床, 2007, Vol.26 No.5, p.315-20
【文献】Lipids,2010年,Vol.45 No.5,p.429-436
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
A23L 33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物を有効成分とする、Aβによる神経細胞死抑制のための脳機能改善用食品組成物であって、
前記ビフィドバクテリウム・ブレーベがビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V(BCCM LMG23729)である、脳機能改善用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、脳機能改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトは歳を重ねるにつれ学習能力や記憶力といった脳機能が徐々に低下していき、物忘れや不安障害、意欲の低下、睡眠の質の低下などを引き起こしやすくなる。この自然の摂理に加えて、認知症に罹患したときには、ヒトの尊厳までも脅かされる深刻な事態を招く場合がある。現在、認知症の予防と治療の研究が精力的に進められている。
【0003】
認知症とは、種々の原因で脳細胞が死んだり、働きが悪くなったりすることにより起こる様々な障害が原因となり、物事の判断ができなくなったり、記憶力の急速な低下が生じたりすることで継続的に生活に支障が出ている状態を指す。認知症を引き起こす原因のうち、もっとも多いのは、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく神経変性疾患であり、続いて多いのが、脳血管型認知症である。この神経変性疾患としては、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症等が挙げられる。また、脳血管型認知症は、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などが引き金となって脳の神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れたりしてしまうことにより起こる。
【0004】
アルツハイマー病は、認知症の50%~60%を占める神経変性疾患である。このアルツハイマー病の神経病理学的特徴は、大脳皮質や海馬での神経原線維変性、老人斑と大量の神経細胞脱落である。神経原線維変性は、微小管結合タンパクの1つであるタウタンパクが過剰にリン酸化され線維封入体となったもので、老人斑はアミロイドβタンパクの細胞外蓄積である。アルツハイマー病では、このアミロイドβタンパクの蓄積が神経原線維変性を加速し、繊維化したタウタンパクは細胞内輸送を阻害する。さらには、アミロイドβタンパク自体がシナプスの機能障害などの細胞毒性を有する。
【0005】
現在、アルツハイマー病の根本的な治療薬はないが、その症状の改善や抑制を目的とした医薬は既に報告されている(例えば、特許文献1及び2)。
【0006】
今後、超高齢者社会の到来とともに、認知症患者が激増し、社会的な問題となることが懸念される。そこで、現在、特に、食事など生活習慣への介入によって、アルツハイマー病等の認知症の発症予防や改善、進行抑制についての研究が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-009214号公報
【文献】特開2014-101324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本技術では、新たな脳機能改善剤を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本技術では、まず、ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物を有効成分とする脳機能改善剤を提供する。
本技術の脳機能改善剤は、前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V(BCCM LMG23729)であってもよい。
また、本技術の脳機能改善剤は、前記脳機能改善が、認知症、うつ病、統合失調症及びせん妄からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善であってもよい。
さらに、本技術の脳機能改善剤は、前記認知症が、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症及び脳血管型認知症からなる群から選択される一又は複数の認知症であってもよい。
【0010】
また、本技術では、本技術の脳機能改善剤を含有する医薬も提供する。
本技術の医薬は、前記ビフィドバクテリウム・ブレーベを、1×106~1×1012CFU/g含有していてもよい。
【0011】
さらに、本技術では、ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物を含有する脳機能改善用飲食品も提供する。
【0012】
加えて、本技術では、認知症、うつ病、統合失調症及びせん妄からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善への使用のためのビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物も提供する。この場合、前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V(BCCM LMG23729)であってもよい。
【0013】
また、本技術では、ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物を対象に投与することを含む、認知症、うつ病、統合失調症及びせん妄からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善方法も提供する。この場合、前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V(BCCM LMG23729)であってもよい。
【0014】
さらに、本技術では、認知症、うつ病、統合失調症及びせん妄からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善用医薬の製造のためのビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物の使用も提供する。加えて、本技術では、認知症、うつ病、統合失調症及びせん妄からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善用飲食品の製造のためのビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物の使用も提供する。この場合、前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V(BCCM LMG23729)であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本技術によれば、新たな脳機能改善剤を提供できる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術を実施するための好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0017】
<1.脳機能改善剤>
本技術の脳機能改善剤は、ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物を有効成分とすることを特徴とする。
【0018】
ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)とは、ビフィドバクテリウム属に属する菌種の一つである。ビフィドバクテリウム・ブレーベは、主に乳幼児の大腸内に多く住みついており、ビフィドバクテリウム属に属する菌種の中でもビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(Bifidobacterium longum subsp. infantis)等とともに、乳幼児型のビフィドバクテリウム属細菌として知られている。
【0019】
近年の研究により、腸はただ食べ物を消化吸収するだけでなく、気分やストレス等のメンタルの状態にまで影響を与えることが分かってきた。そして、腸内細菌叢による脳機能への効果が注目され、ビフィズス菌などのプロバイオティクス摂取による抗不安作用なども既に報告されている(例えば、Sampson TR et al., Cell Host Microbe. 17(5):565-76, 2015、Ait-Belgnaoui, A. et al., Neurogastroenterol Motil26(4):510-520, 2014)。
【0020】
また、ある種の微生物、ラクトバチルス・ヘルベティカス R0052とビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum) R0175をヒトに摂取させると、ストレス、不安、怒りなどにおける改善がみられたとの報告もある(Messaoudi, M. et al., British Journal of Nutrition 105:755-764, 2011)。さらに、ビフィドバクテリウム・ロンガムの摂取により、海馬BDNF量が上昇し、不安及び関連疾患が予防できる可能性も報告されている(Bercik et al., Gastroenterology 139: 2102-2112, 2010、特表2011-517568号公報)。
【0021】
以上のように、ビフィドバクテリウム属細菌等のプロバイオティクスの摂取による脳機能の低下に関連する症状又は疾患の改善効果についての報告が既に存在するものの、上述した報告は、成人の腸に常在するビフィドバクテリウム・ロンガムに関する報告である。
【0022】
しかし、本願発明者らは、成人の腸に常在する細菌ではなく、乳幼児型のビフィドバクテリウム属細菌に着目し、鋭意実験研究を行ったところ、意外にも、乳幼児型のビフィドバクテリウム属細菌の中でも、特に、ビフィドバクテリウム・ブレーベによって、脳機能改善効果が得られることが判明した。
【0023】
本技術の脳機能改善剤は、その有効成分が、主に乳幼児の大腸内に多く住みついている、ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物であることから、安全性に優れ、長期間、連続的に投与しても副作用を心配する必要性も少ないため、非常に有用である。さらに、他の薬剤との併用においても安全性が高い。
【0024】
ここで、本明細書における「改善」とは、症状又は疾患の好転、症状又は疾患の悪化の防止若しくは遅延、症状又は疾患の進行の逆転、防止若しくは遅延、又は症状又は疾患の治療等を意味する。さらに、本明細書における「改善」とは、予防の意味をも包含する。「予防」とは、適用対象における症状又は疾患の発症の防止若しくは発症の遅延、又は適用対象における症状又は疾患の発症の危険性を低下させる等を意味する。
【0025】
本技術の脳機能改善剤は、具体的には、例えば、認知症、うつ病、統合失調症、せん妄、健忘症、判断力・思考力の低下、認知能力の低下、知的障害等の症状の予防、治療及び/又は改善に用いることができる。
【0026】
本技術の脳機能改善剤は、これらの中でも特に、認知症、うつ病、統合失調症及びせん妄からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善に用いられることが好ましい。
【0027】
また、認知症としては、一般的に、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、脳血管型認知症等が知られている。本技術に係る脳機能改善剤は、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症及び脳血管型認知症からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善に用いられることがより好ましい。
【0028】
ここで、一般的に、アルツハイマー病の患者においては、脳萎縮(大脳皮質・海馬の萎縮、及び脳室の拡大)が見られ、さらに、大脳皮質には老人斑と呼ばれる病理学的所見が見られる。この老人斑の主要な構成成分はアミロイド・ベータ蛋白質(以下、「Aβ」ともいう)であることが知られている。
【0029】
アルツハイマー病の原因は完全には明らかになってはいないが、このAβが脳内に凝集・蓄積して老人班となる過程で神経毒性を生じ、神経原線維を変性させ、最終的には神経細胞死に至ることが主要因であると想定されている。
【0030】
後述する実施例の結果を鑑みると、本発明の脳機能障害改善剤は、上述した認知症の中でも特に、アルツハイマー病に対して有用であると考えられる。
【0031】
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌としては、例えば、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V(BCCM LMG23729)等が挙げられる。
【0032】
MCC1274は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国 〒305-8566 茨城県つくば市東1-1-1 中央第6(現IPOD 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(NITE-IPOD):日本国 〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)))に、2009年8月25日より、IPOD FERM BP-11175の受託番号で寄託されている。
M-16Vは、BCCM ベルギー総合微生物収集所(BCCM Coordination Cell, Federal Public Planning Service Policy, 231, avenue Louise, 1050 Brussels, Belgium)に、2006年6月27日より、BCCM LMG23729の受託番号で寄託されている。
これらの細菌は、上記保存機関より一般に入手可能である。
【0033】
本技術では、これらの中でも、細胞死抑制効果が良好であるという点で、前記ビフィドバクテリウム・ブレーベとして、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V(BCCM LMG23729)を用いることが好ましく、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)を用いることが特に好ましい。
【0034】
本技術に用いられるビフィドバクテリウム・ブレーベは、例えば、前述した細菌を培養することにより容易に取得できる。培養する方法は、これらの細菌が増殖できる限り特に限定されず、細菌の性質に応じた適当な条件下で培養を行うことができる。
具体的には、例えば、培養温度は、通常25~50℃であり、35~42℃であることが好ましい。また、培養は嫌気条件下で行うことが好ましく、例えば、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら培養することができる。また、液体静置培養等の微好気条件下で培養してもよい。
【0035】
本技術に用いられるビフィドバクテリウム・ブレーベを培養する培地としては、特に限定されず、ビフィドバクテリウム属に属する細菌の培養に、通常用いられる培地を用いることができる。
【0036】
すなわち、炭素源としては、例えば、グルコース、ガラクトース、ラクトース、アラビノース、マンノース、スクロース、デンプン、デンプン加水分解物、廃糖蜜等の糖類を資化性に応じて使用できる。窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩類や硝酸塩類を使用できる。また、無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄等を用いることができる。また、ペプトン、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキス等の有機成分を用いてもよい。
【0037】
本技術に用いられるビフィドバクテリウム・ブレーベは、培養後、得られた培養物をそのまま用いてもよく、希釈又は濃縮して用いてもよく、培養物から回収した菌体を用いてもよい。
【0038】
また、本技術では、ビフィドバクテリウム・ブレーベのみならず、ビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物も有効成分として用いることができる。また、本明細書における「培養物」には、培養上清をも含む概念である。
【0039】
本技術の脳機能改善剤が有効成分として含有するビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。また、本技術の脳機能改善剤は、前記有効成分のみからなるものであってもよく、前記有効成分と有効成分以外の任意成分とを配合した組成物であってもよい。前記任意成分としては、特に限定されず、従来、医薬品に配合されている添加剤(例えば、後述する製剤担体など)を配合できる。
【0040】
<2.医薬>
本技術では、本技術の脳機能改善剤を含有する医薬も提供する。本技術の医薬は、認知症、うつ病、統合失調症及びせん妄からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善の用途に応用できる。具体的には、例えば、抗認知症用医薬、抗うつ病用医薬、抗統合失調症用医薬、抗せん妄用医薬等である。
【0041】
また、抗認知症用医薬とは、具体的には、例えば、抗アルツハイマー病用医薬、抗レビー小体型認知症用医薬、抗前頭側頭型認知症用医薬、抗脳血管型認知症用医薬等である。
【0042】
本技術の医薬は、公知の医薬に本技術の脳機能改善剤を添加して調製することもできるし、医薬の原料中に該脳機能改善剤を混合して新たな医薬を製造することもできる。
【0043】
また、本技術の脳機能改善剤を医薬品として用いたものや、本技術の脳機能改善剤を既存の医薬品に添加したものも本技術の医薬に含まれる。
【0044】
本技術の脳機能改善剤を医薬として用いる際には、そのまま、又は濃縮してから、或いは固体状、顆粒状又は粉末状に加工してから用いてもよい。
【0045】
本技術の医薬は、経口投与や非経口投与等の投与方法に応じて適宜所望の剤形に製剤化することができる。その剤形は特に限定されないが、経口投与の場合、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。非経口投与の場合、例えば、座剤、噴霧剤、吸入剤、軟膏剤、貼付剤、注射剤等に製剤化することができる。本技術では、経口投与の剤形に製剤化することが好ましい。
なお、製剤化は剤形に応じて、適宜、公知の方法により実施できる。
【0046】
製剤化に際しては、適宜製剤担体を配合する等して製剤化してもよい。また、本技術の脳機能改善剤のほか、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。さらに、公知の又は将来的に見出される疾患や症状の予防、治療及び/又は改善の効果を有する成分を、適宜目的に応じて併用することも可能である。
【0047】
前記製剤担体としては、剤形に応じて、各種有機又は無機の担体を用いることができる。
固形製剤の場合の担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0048】
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α-デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
【0049】
前記結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
【0050】
前記崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
【0051】
前記滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
【0052】
前記安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
【0053】
前記矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0054】
また、本技術の脳機能改善剤及び医薬は、公知の又は将来的に見出される脳機能改善作用を有する薬、抗認知症作用を有する薬、抗うつ病作用を有する薬、抗統合失調症作用を有する薬、抗せん妄作用を有する薬等と併用することも可能である。
【0055】
本技術の医薬におけるビフィドバクテリウム・ブレーベの含有量は特に制限されないが、効果的な脳機能改善効果のための1日当たりの投与量を無理なく摂取できる程度のビフィドバクテリウム・ブレーベを含有することが好ましく、1×106~1×1012CFU/g含有することがより好ましい。また、本技術の医薬におけるビフィドバクテリウム・ブレーベの1日当たりの投与量は、少なくとも1×106CFU/kg体重/日、又はそれ以上であることが好ましい。
なお、CFUは、コロニー形成単位:colony forming unitを表す。
【0056】
本技術の医薬において、1日の投与量を1日1回から3回に分けてもよい。投与経路は、例えば、経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、経粘膜投与、鼻腔内投与、直腸内投与等が挙げられる。投与対象は、通常ヒトであるが、本技術では、ヒト以外の哺乳動物、例えばイヌ、ネコ等のペット動物、ウシ、ヒツジ、ブタ等の家畜も含む。
【0057】
<3.脳機能改善用飲食品>
本技術では、ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物を含有する脳機能改善用飲食品も提供する。また、本技術の脳機能改善用飲食品は、認知症、うつ病、統合失調症及びせん妄からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善の用途に応用できる。具体的には、例えば、脳機能改善用、抗認知症用、抗うつ病用、抗統合失調症用、抗せん妄用等の用途をコンセプトとする健康食品、機能性食品、病者用食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、及び前述した用途等が表示された特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品等に応用できる。
【0058】
また、抗認知症用飲食品とは、具体的には、例えば、抗アルツハイマー病用飲食品、抗レビー小体型認知症用飲食品、抗前頭側頭型認知症用飲食品、抗脳血管型認知症用飲食品等である。
【0059】
飲食品としては、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等のほか、例えば、小麦粉製品、即席食品、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂類、基礎調味料、複合調味料・食品類、冷凍食品、菓子類、飲料、これら以外の市販食品等が挙げられる。
【0060】
乳製品としては、例えば、発酵乳、乳飲料、乳酸菌飲料、加糖れん乳、脱脂粉乳、加糖粉乳、調整粉乳、クリーム、チーズ、バター、アイスクリーム類等が挙げられる。
小麦粉製品としては、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等が挙げられる。
即席食品類としては、例えば、即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等が挙げられる。
農産加工品としては、例えば、農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等が挙げられる。
水産加工品としては、例えば、水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等が挙げられる。
畜産加工品としては、例えば、畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等が挙げられる。
油脂類としては、例えば、バター、マーガリン類、植物油等が挙げられる。
基礎調味料としては、例えば、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等が挙げられ、前記複合調味料・食品類として、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等が挙げられる。
冷凍食品としては、例えば、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等が挙げられる。
菓子類としては、例えば、キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、その他の菓子等が挙げられる。
飲料類としては、例えば、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等が挙げられる。
前記以外の市販食品としては、例えば、ベビーフード、ふりかけ、お茶漬けのり等が挙げられる。
【0061】
また、本発明の脳機能改善用飲食品としては、これらの中でも特に、乳製品とすることが好ましく、発酵乳とすることが特に好ましい。これにより、脳機能改善効果に加え、乳製品の有する高い栄養化をも享受できる。
【0062】
本技術において、「表示」行為には、需要者に対して上述した用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本技術の「表示」行為に該当する。
【0063】
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0064】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP(Point of purchase advertising)等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0065】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、病者用食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。これら中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品制度、機能性表示食品制度、これらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。より具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、機能性表示食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク低減表示等を挙げることができる。この中でも典型的な例としては、健康増進法施行規則(平成15年4月30日日本国厚生労働省令第86号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に、保健の用途の表示)、食品表示法(平成25年法律第70号)に定められた機能性表示食品としての表示及びこれらに類する表示等が挙げられる。
【0066】
なお、上述したような表示を行うために使用する文言は、「脳機能改善用、抗認知症用、抗うつ病用、抗統合失調症用、抗せん妄用」等の文言のみに限られるわけではなく、それ以外の文言であっても、脳機能の低下に関連する各種疾患や症状の予防、改善及び/又は治療の効果を表す文言であれば、本技術の範囲に包含されることは言うまでもない。そのような文言としては、例えば、需要者に対して、脳機能改善、抗認知症、抗うつ病、抗統合失調症、抗せん妄等の効果を認識させるような種々の用途に基づく表示も可能である。
【0067】
本技術は、以下の構成を採用することも可能である。
〔1〕ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物を有効成分とする脳機能改善剤。
〔2〕前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V(BCCM LMG23729)である、〔1〕に記載の脳機能改善剤。
〔3〕前記脳機能改善が、認知症、うつ病、統合失調症及びせん妄からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善である、〔1〕又は〔2〕に記載の脳機能改善剤。
〔4〕前記認知症が、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症及び脳血管型認知症からなる群から選択される一又は複数の認知症である、〔3〕に記載の脳機能改善剤。
〔5〕〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載の脳機能改善剤を含有する医薬。
〔6〕前記ビフィドバクテリウム・ブレーベを、1×106~1×1012CFU/g含有する、〔5〕に記載の医薬。
〔7〕ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物を含有する脳機能改善用飲食品。
〔8〕認知症、うつ病、統合失調症及びせん妄からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善への使用のためのビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物。
〔9〕前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V(BCCM LMG23729)である、〔8〕に記載のビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物。
〔10〕ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物を対象に投与することを含む、認知症、うつ病、統合失調症及びせん妄からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善方法。
〔11〕前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V(BCCM LMG23729)である、〔10〕に記載の方法。
〔12〕認知症、うつ病、統合失調症及びせん妄からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善用医薬の製造のためのビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物の使用。
〔13〕認知症、うつ病、統合失調症及びせん妄からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善用飲食品の製造のためのビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物の使用。
〔14〕前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V(BCCM LMG23729)である、〔12〕又は〔13〕に記載の使用。
【0068】
また、本技術は、以下の構成を採用することも可能である。
〔15〕脳機能改善剤へのビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物の使用。
〔16〕前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V(BCCM LMG23729)である、〔15〕に記載のビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物の使用。
〔17〕認知症、うつ病、統合失調症及びせん妄からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善へのビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物の使用。
〔18〕アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症及び脳血管型認知症からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善へのビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物の使用。
〔19〕脳機能改善用医薬へのビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物の使用。
〔20〕前記ビフィドバクテリウム・ブレーベを、1×106~1×1012CFU/g含有する、〔19〕に記載のビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物の使用。
〔21〕脳機能改善用飲食品へのビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物の使用。
〔22〕脳機能改善剤のための、ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物。
〔23〕アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症及び脳血管型認知症からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善のための、ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物。
〔24〕脳機能改善用医薬、抗認知症用医薬、抗うつ病用医薬、抗統合失調症用医薬、又は抗せん妄用医薬のための、ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物。
〔25〕脳機能改善用飲食品、抗認知症用飲食品、抗うつ病用飲食品、抗統合失調症用飲食品、又は抗せん妄用飲食品のための、ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物。
〔26〕脳機能改善剤の製造のための、ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物の使用。
〔27〕脳機能改善用医薬、抗認知症用医薬、抗うつ病用医薬、抗統合失調症用医薬、又は抗せん妄用医薬の製造のための、ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物の使用。
〔28〕脳機能改善用飲食品、抗認知症用飲食品、抗うつ病用飲食品、抗統合失調症用飲食品、又は抗せん妄用飲食品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物の使用。
〔29〕ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物を有効成分として含有し、脳機能改善用、抗認知症用、抗うつ病用、抗統合失調症用、又は抗せん妄用の旨の用途が表示された飲食品。
〔30〕哺乳動物の、認知症、うつ病、統合失調症及びせん妄からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善のための、ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物の使用。
〔31〕哺乳動物の、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症及び脳血管型認知症からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善のための、ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物の使用。
〔32〕ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物を有効成分として含有する、哺乳動物の、認知症、うつ病、統合失調症及びせん妄からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善方法。
〔33〕ビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物を有効成分として含有する、哺乳動物の、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症及び脳血管型認知症からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療及び/又は改善方法。
【実施例
【0069】
以下、実施例に基づいて本技術をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0070】
〔in vivoデータの実施例〕
(1)実験方法
本実験では、アルツハイマー病モデルマウスを下記手順にて作成し、乳児由来のビフィズス菌(ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)及びビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス ATCC15697)の認知機能改善効果を評価した。生理食塩水(大塚製薬株式会社製)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス ATCC15697を1×109CFU投与し始めた日をDay1とし、Day3にアミロイドβタンパク質フラグメント1-42(Amyloid β-Protein (Human, 1-42)、Aβ(1-42)(配列番号1):Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-His-Asp-Ser-Gly-Tyr-Glu-Val-His-His-Gln-Lys-Leu-Val-Phe-Phe-Ala-Glu-Asp-Val-Gly-Ser-Asn-Lys-Gly-Ala-Ile-Ile-Gly-Leu-Met-Val-Gly-Gly-Val-Val-Ile-Ala (Trifluoroacetate Form))(株式会社ペプチド研究所、cat.No.4349-v)の注入を実施した。
【0071】
具体的には、マウス(ddyマウス:日本エスエルシー株式会社)を塩酸メデトミジン(Meiji Seikaファルマ株式会社製)0.3mg/kg、ミダゾラム(サンド株式会社製)4mg/kg、酒石酸ブトルファノール(Meiji Seikaファルマ株式会社製)5mg/kgの腹腔内投与により麻酔した。麻酔後、動物の頭頂部の毛を刈り、頭部を脳定位固定装置に固定した。頭皮を消毒用エタノールで消毒後に切開して、頭蓋骨を露出させた。歯科用ドリルを用いてbregmaより側方1mm(右側)、後方0.2mmの頭蓋骨にステンレスパイプ刺入用の穴を開け、骨表面から2.5mmの深さまで外径0.5mmのシリコンチューブ及びマイクロシリンジに接続されたステンレスパイプを垂直に脳室内に刺入した。
Aβ(1-42)をリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline:PBS、pH7.4、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、cat.No.10010023)に溶解して調製したAβ(1-42)溶液3μL(200pmol/3μL)をマイクロシリンジポンプで3分間かけて脳室内に注入してアルツハイマー病モデルマウス(アルツハイマー病モデルマウス群)を作成した。
なお、偽手術マウス群(PBS注入群)は、PBS3μLをマイクロシリンジポンプで3分間かけて脳室内に注入して作成した。
注入後は、ステンレスパイプを挿入したまま3分間静置し、ステンレスパイプをゆっくりと外した。その後、ステンレスパイプを取り除き、頭蓋穴を非吸収性骨髄止血剤(ネストップ(登録商標)、アルフレッサファーマ株式会社製)で塞ぎ、頭皮を縫合した。生理食塩水、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス ATCC15697投与は、行動試験終了まで続けた。なお、各群あたり12匹のddYマウスを使用した。
【0072】
認知機能の測定方法は、Y迷路試験により行った。本試験には、1本のアームの長さが39.5cm、床の幅が4.5cm、壁の高さが12cmで、3アームがそれぞれ120度に分岐しているプラクチック製のY字型迷路(有限会社ユニコム製)を用いた。装置の設置後、装置の床面の照明が20Luxになるように調節した。試験は生理食塩水、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス ATCC15697の投与後約1時間に行なった。動物をY字型迷路のいずれかのアームに置き、8分間迷路内を自由に探索させた。動物が測定時間内に移動したアームの順番を記録し、アームに移動した回数を数え、総エントリー数とした。次にこの中で連続して異なる3つのアームを選択した組み合わせを調べ、この数を自発的交替行動数とした。下記の式(1)を用いて自発的交替行動率を算出した。
【0073】
なお、ATCC15697は、ATCC アメリカ国立菌培養収集所(アメリカ合衆国 ヴァージニア州 20110-2209 マナサス 10801 ユニバーシティブルバード)に、ATCC15697の受託番号で寄託されている。
この細菌は、D.A.Sela et al., PNAS, December 2, 2008, vol.105, no.48, pp.18964-18969のSupporting Information等に記載のとおり上記保存機関より入手でき、分譲可能な状況にあることから、上記保存機関より一般に入手可能である。
【0074】
【数1】
【0075】
(2)試験結果
本試験の結果を以下の表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1に示すように、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス ATCC15697の摂取では、アルツハイマー病モデルマウスの認知機能は改善されなかったが、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)の摂取により、アルツハイマー病モデルマウスの認知機能が改善されたことが認められた。
【0078】
〔in vitroデータの実施例〕
(1)実験方法
本実験では、Aβによる神経細胞死へのビフィドバクテリウム・ブレーベの効果を評価した。ヒト神経芽細胞SH-SY5Y細胞にAβを添加し、細胞の生存率をMTT法(MTT assay)により測定した。
具体的には、以下のようにして行った。10%ウシ胎児血清含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を入れた96ウェルプレートに、ヒト神経芽細胞SH-SY5Y細胞を4×104cells/wellの濃度にて播種した。12時間後に、Aβ処理群は、1μMのAβ(1-42)を含む培地100μlに培地交換した。非処理群は、Aβを含まない培地に培地交換した。Aβ処理群には、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)又はビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V(BCCM LMG23729)の培養上清を10nl分加え24時間培養した。ビフィドバクテリウム・ブレーベの培養上清は、MRS培地で37℃、16時間、静置条件で培養した培養液をOD600が1.0になるように調整後、2,400g、20分遠心分離して得た。培養後の細胞生存数を、CellQuanti-MTT Cell Viability Assay Kit(BioAssay Systems)により測定した。
【0079】
(2)試験結果
本試験の結果を以下の表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
表2に示すように、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)及びビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V(BCCM LMG23729)を含むビフィドバクテリウム・ブレーベに細胞死抑制効果が認められ、特に、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)を用いた場合に強い細胞死抑制効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本技術によれば、新たな脳機能改善剤を提供することができる。本技術の脳機能改善剤は、その有効成分がビフィドバクテリウム・ブレーベ及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベを含む培養物であることから、安全性に優れ、長期間、連続的に投与しても副作用を心配する必要性も少ないため、非常に有用である。
【配列表】
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