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特許7532493火災警報機能及び高い圧縮性能を有する炭素系複合エアロゲル及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】火災警報機能及び高い圧縮性能を有する炭素系複合エアロゲル及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/168 20170101AFI20240805BHJP
   C01B 32/198 20170101ALI20240805BHJP
【FI】
C01B32/168
C01B32/198 ZNM
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022207630
(22)【出願日】2022-12-23
(65)【公開番号】P2023095841
(43)【公開日】2023-07-06
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】202111598554.2
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520463123
【氏名又は名称】中国安全生▲産▼科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】史 聡霊
(72)【発明者】
【氏名】井 静云
(72)【発明者】
【氏名】劉 国林
(72)【発明者】
【氏名】銭 小東
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111019187(CN,A)
【文献】特表2019-502621(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108905981(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103977748(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/15 - 32/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災警報機能及び高い圧縮性能を有する炭素系複合エアロゲルの調製方法であって、
前記炭素系複合エアロゲルは、グラフェン酸化物ナノシートの表面へのアミノカーボンナノチューブの吸着及びFeナノ粒子の界面架橋作用によって自己集合を行った後、凍結乾燥させて調製したものであり、具体的には、
カーボンナノチューブをグラフェン酸化物シートの表面に吸着させ、すなわち、グラフェン酸化物ナノシートの水溶液にN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)と1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を加えて混合溶液とし、ヒドロキシを活性化させた後、この混合溶液をカーボンナノチューブ分散液に加え、アミノとヒドロキシとの間の相互作用を利用して、グラフェン酸化物ナノシートの表面にカーボンナノチューブを吸着させるステップであって、
グラフェン酸化物ナノシート:水:アミノカーボンナノチューブ分散液は(38~42mg):(7~9mL):(2~6g)であり、N-ヒドロキシコハク酸イミド:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩:グラフェン酸化物ヒドロキシのモル比は1:(1.1~1.5):1であるステップ(1)と、
Feナノ粒子を調製し、すなわち、a)アルカリ性触媒及び加熱を経て、ステップ(1)で得られたグラフェン酸化物ナノシートの縁部に共沈によりFe磁性ナノ粒子をインサイチュ成長させ、又は、b)ソルボサーマル法、水熱法及び共沈方法を含む前合成方法によって前合成されたFeナノ粒子の表面についてシランリガンド交換を行い、アミノ変性四酸化三鉄ナノ粒子(Fe@NH)を調製するステップ(2)と、
Feナノ粒子の界面架橋であって、Feナノ粒子間の磁気双極子相互作用を利用して、隣接するグラフェン酸化物シートの界面架橋を行うステップ(3)と、
火災警報機能及び高圧縮性を有する炭素系複合エアロゲルを調製し、すなわち、ステップ(3)で得た系に、溶媒体積に対して0.3~0.5%(v/v)の還元剤としてのエチレンジアミン(EDA)を加え、加熱の条件の下でグラフェン酸化物ナノシートの自己集合を行い、得たハイドロゲルを老化して凍結乾燥させ、前記炭素系複合エアロゲルを得るステップ(4)と、を含み、
前記アミノカーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブのうちの1種又はこれらの組み合わせであり、
前記Feナノ粒子は前合成されたアミノ四酸化三鉄ナノ(Fe@NH)粒子又はグラフェンシートを共沈によりインサイチュ成長させたFeナノ粒子であり
エアロゲルにおいて、前記グラフェン酸化物ナノシートとアミノカーボンナノチューブとの質量比が1:(50~150)であり、前記Feナノ粒子とグラフェン酸化物ナノシートとの質量比が1:4~1:1であることを特徴とする調製方法。
【請求項2】
ステップ(1)では、具体的には、まず、グラフェン酸化物ナノシートを超音波で水中に均一に分散させ、次に、N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)と1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を加えて混合溶液とし、常温で12~18min活性化させ、その後、この混合溶液をアミノカーボンナノチューブ分散液に加えて、2~4h超音波反応させ、グラフェン酸化物ナノシートの表面にカーボンナノチューブを吸着させることを特徴とする請求項1に記載の火災警報機能及び高い圧縮性能を有する炭素系複合エアロゲルの調製方法。
【請求項3】
ステップ(2)では、具体的には、
a)ステップ(1)で得られた系を水中に分散させ、不活性ガスを導入して酸素を1~3h除去し、次に、Fe3+及びFe2+を前駆体として加え、不活性雰囲気、室温で2~6h撹拌した後、70~90℃に昇温し、アルカリ性溶液を加えて溶液のpHを9.5~12.5に調整し、0.5~2h反応させ続けた後、磁石を用いて収集して2~4回リンスし、インサイチュ成長Feナノ粒子を得るか、又は、
)前合成方法によってFeナノ粒子を前合成した後、Feナノ粒子をトルエン、ノルマルヘキサン又はエタノールに分散させ、次に、アミノシランを加え、酸性触媒を加えた後、24~48h撹拌又は超音波反応し、溶媒で2~4回洗浄し、磁石を用いて収集し、アミノ変性四酸化三鉄ナノ粒子(Fe@NH)を得ることを特徴とする請求項1に記載の火災警報機能及び高い圧縮性能を有する炭素系複合エアロゲルの調製方法。
【請求項4】
ステップ(2)のa)では、前記不活性ガスは高純度窒素ガス又はアルゴンガスであり、アルカリ性溶液はアンモニア水、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであり、Fe3+とFe2+とのモル比は1:(1.05~1.2)であり、
ステップ(1)で得られた系を水中に分散させるときに、分散用の水量とグラフェン酸化物ナノシートとの比が20mL:(38~42mg)であり、
ステップ(2)のb)では、前記アミノシランは3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルジメチルメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、3-[(2-アミノエチルアミノ)プロピル]二メトキシシラン、(3-アミノプロピル)ジメチルエトキシシランのうちの1種又は複数種であり、アミノシランの添加量は溶媒体積に対して0.1~0.5%(v/v)であり、前記酸性触媒は酢酸、希塩酸又は希硫酸であり、酸性触媒の添加量は溶媒体積に対して0.01~0.03%(v/v)であることを特徴とする請求項に記載の火災警報機能及び高い圧縮性能を有する炭素系複合エアロゲルの調製方法。
【請求項5】
ステップ(3)では、具体的には、ステップ(2)で得られた中間生成物を水中に再分散させ、常温で1~2h超音波反応させ、Feナノ粒子間の磁気双極子相互作用を利用して、隣接するグラフェン酸化物シートの界面架橋を実現し、
ステップ(2)で得られた中間生成物を水中に再分散させるときに、分散用の水量とグラフェン酸化物ナノシートとの比が20mL:(38~42mg)であることを特徴とする請求項1に記載の火災警報機能及び高い圧縮性能を有する炭素系複合エアロゲルの調製方法。
【請求項6】
ステップ(4)では、具体的には、ステップ(3)で得られた系に還元剤としてエチレンジアミン(EDA)を加え、均一に混合した後、80~90℃に昇温して、24~36h反応させ、グラフェン酸化物ナノシートの自己集合を行い、得たハイドロゲルを老化して凍結乾燥させ、前記炭素系複合エアロゲルを得て、
ハイドロゲルの老化時間は2~6h、凍結乾燥温度は(-20)~(-80)℃であり、凍結乾燥時間は12~24hであることを特徴とする請求項1に記載の火災警報機能及び高い圧縮性能を有する炭素系複合エアロゲルの調製方法。
【請求項7】
炭素系複合エアロゲルの断熱、消防、エネルギー貯蔵及び力学デバイスの分野における使用であって、
前記炭素系複合エアロゲルは請求項1~のいずれかに記載の調製方法で調製された炭素系複合エアロゲルであることを特徴とする使用。
【請求項8】
炭素系複合エアロゲルを採用する際には、火災警報機能とは、アミノカーボンナノチューブとグラフェン酸化物ナノシートとの熱還元作用を利用して、高温で官能基を脱除すると、抵抗が急激に低下し、警報を誘発することにより実現され、高圧縮性は、グラフェン酸化物ナノシートの表面へのカーボンナノチューブの吸着とFeナノ粒子の界面架橋との二重補強手段が、集合により生成された隣接シート間の強い相互作用と相まって実現することを特徴とする請求項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機能性ナノ複合材料の技術分野に関し、具体的には、火災警報機能及び高い圧縮性能を有する炭素系複合エアロゲル及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2Dグラフェンナノシートは優れた柔軟性、弾性、引張強度及び圧縮強度を持つが、弱い相互作用により直接でランダムに集合されたグラフェンエアロゲルは圧縮と引張の際に明らかな脆性を示すことが多く、応用の要求を満たすことが難しい。現在、炭素系複合エアロゲルの脆性を克服するために主に2つの対策があり、1つは3Dプリントやその他の共同集合技術により、階層構造を生成し、エアロゲルの靭性を強化する。例えば郭らとその同僚(Highly stretchable carbon aerogels. Nat. Commun. 2018, 9, 881)はスマート3Dインクプリント技術を採用して、エネルギー消費量が少なく、耐疲労性が高く、環境安定性に優れた4段階の層状構造を有する高延性グラフェン/多層カーボンナノチューブ複合エアロゲルを製造する。しかし、3Dプリント技術の制限により、この方法は合成技術に高い要求を求めており、かつエアロゲル材料の量産を実現することができなかった。もう1つは、架橋剤として弾性ポリマーまたは小分子をマトリックス中に導入することであり、例えば邱ら(Ultralight and highly compressible graphene aerogels. Adv. Mater. 2013, 25, 2219-2223)はグラフェンエアロゲルの還元調製に基づいて、高圧縮率の超軽量グラフェンエアロゲルを製造するために、機能化、集合及び後続のマイクロ波放射処理を一体化したプロセスを提案している。しかし、このエアロゲルは分子間の相互作用が弱く、厳しい化学・物理条件下での安定性が劣る。
【0003】
これに基づいて、どのように簡便な合成技術を利用してエアロゲル分子間の相互作用を強化し、火災警報機能及び高圧縮性を有する多機能炭素系複合エアロゲルを調製するには依然として一定の挑戦が存在し、さらなる検討が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在の上記の技術的課題に対して、本発明は火災警報機能及び高い圧縮性能を有する炭素系複合エアロゲル及びその調製方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明目的を達成させるために、以下の技術的解決手段を提案する。
【0006】
火災警報機能及び高い圧縮性能を有する炭素系複合エアロゲルであって、
前記炭素系複合エアロゲルは、アミノカーボンナノチューブとグラフェン酸化物ナノシートとを表面吸着及びFeナノ粒子の界面架橋作用によって自己集合した後、凍結乾燥させて調製したものである。
【0007】
前記アミノカーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブのうちの1種又は組み合わせである。
【0008】
前記Feナノ粒子は前合成されたアミノ四酸化三鉄ナノ(Fe@NH)粒子又はグラフェンシートを共沈によりインサイチュ成長させたFeナノ粒子であり、粒径が5~200nmである。
【0009】
好ましくは、前記複合エアロゲルにおいて、前記グラフェン酸化物ナノシートとアミノカーボンナノチューブとの質量比が1:(50~150)であり、前記Feナノ粒子とグラフェン酸化物ナノシートとの質量比が1:4~1:1である。
【0010】
前記火災警報機能及び高い圧縮性能を有する炭素系複合エアロゲルの調製方法であって、
カーボンナノチューブをグラフェン酸化物シートの表面に吸着させ、すなわち、グラフェン酸化物ナノシートの水溶液にN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)と1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を加えて混合溶液とし、ヒドロキシを活性化させた後、この混合溶液をカーボンナノチューブ分散液にゆっくりと加え、アミノとヒドロキシとの間の相互作用を利用して、グラフェン酸化物ナノシートの表面にカーボンナノチューブを吸着させるステップ(1)と、
Feナノ粒子を調製し、すなわち、a)アルカリ性触媒及び加熱を経て、ステップ(1)で得られたグラフェン酸化物ナノシートの縁部に共沈によりFe磁性ナノ粒子をインサイチュ成長させ、又は、b)従来のソルボサーマル法、水熱法及び共沈方法を含む前合成方法によって前合成されたFeナノ粒子の表面についてシランリガンド交換を行い、アミノ変性四酸化三鉄ナノ粒子(Fe@NH)を調製するステップ(2)と、
Feナノ粒子の界面架橋であって、Feナノ粒子間の磁気双極子相互作用を利用して、隣接するグラフェン酸化物シートの界面架橋を行うステップ(3)と、
火災警報機能及び高圧縮性を有する炭素系複合エアロゲルを調製し、すなわち、ステップ(3)で得た系にエチレンジアミン(EDA)を加え、加熱の条件の下でグラフェン酸化物ナノシートの自己集合を行い、得たハイドロゲルを老化して凍結乾燥させ、前記炭素系複合エアロゲルを得るステップ(4)と、を含む。
【0011】
好ましくは、ステップ(1)では、具体的には、まず、グラフェン酸化物ナノシートを超音波で水中に均一に分散させ、次に、N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)と1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を加えて混合溶液とし、常温で12~18min活性化させ、その後、この混合溶液をアミノカーボンナノチューブ分散液にゆっくりと加えて、2~4h超音波反応させ、グラフェン酸化物ナノシートの表面にカーボンナノチューブを吸着させる。
【0012】
ここで、グラフェン酸化物ナノシート:水:アミノカーボンナノチューブ分散液は(38~42mg):(7~9mL):(2~6g)であり、N-ヒドロキシコハク酸イミド:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩:グラフェン酸化物ヒドロキシのモル比は1:(1.1~1.5):1である。
【0013】
好ましくは、ステップ(2)では、具体的には、
a)ステップ(1)で得られた系を水中に分散させ、不活性ガスを導入して酸素を1~3h除去し、次に、Fe3+及びFe2+を前駆体として加え、不活性雰囲気、室温で2~6h撹拌した後、70~90℃に昇温し、アルカリ性溶液を加えて溶液のpHを9.5~12.5に調整し、0.5~2h反応させ続けた後、磁石を用いて収集して2~4回リンスし、インサイチュ成長Feナノ粒子を得るか、又は、
b)従来の前合成方法によってFeナノ粒子を前合成した後、Feナノ粒子をトルエン、ノルマルヘキサン又はエタノールに分散させ、次に、アミノシランを加え、酸性触媒を加えた後、24~48h撹拌又は超音波反応し、溶媒で2~4回洗浄し、磁石を用いて収集し、アミノ変性四酸化三鉄ナノ粒子(Fe@NH)を得る。
【0014】
好ましくは、ステップ(2)のa)では、前記不活性ガスは高純度窒素ガス又はアルゴンガスであり、アルカリ性溶液はアンモニア水、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであり、Fe3+とFe2+とのモル比は1:(1.05~1.2)であり、
ステップ(1)で得られた系を水中に分散させるときに、分散用の水量とグラフェン酸化物ナノシートとの比が20mL:(38~42mg)であり、
ステップ(2)のb)では、前記アミノシランは3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルジメチルメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、3-[(2-アミノエチルアミノ)プロピル]二メトキシシラン、(3-アミノプロピル)ジメチルエトキシシランのうちの1種又は複数種であり、アミノシランの添加量は溶媒体積に対して0.1~0.5%(v/v)であり、前記酸性触媒は酢酸、希塩酸又は希硫酸であり、酸性触媒の添加量は溶媒体積に対して0.01~0.03%(v/v)である。
【0015】
好ましくは、ステップ(3)では、具体的には、ステップ(2)で得られた中間生成物を水中に再分散させ、常温で1~2h超音波反応させ、Feナノ粒子間の磁気双極子相互作用を利用して、隣接するグラフェン酸化物シートの界面架橋を実現し、
ステップ(2)で得られた中間生成物を水中に再分散させるときに、分散用の水量とグラフェン酸化物ナノシートとの比が20mL:(38~42mg)である。
【0016】
好ましくは、ステップ(4)では、具体的には、ステップ(3)で得られた系に、溶媒体積に対して0.3~0.5%(v/v)の還元剤としてのエチレンジアミン(EDA)を加え、均一に混合した後、80~90℃に昇温して、24~36h反応させ、グラフェン酸化物ナノシートの自己集合を行い、得たハイドロゲルを老化して凍結乾燥させ、前記炭素系複合エアロゲルを得て、
ハイドロゲルの老化時間は2~6h、凍結乾燥温度は(-20)~(-80)℃であり、凍結乾燥時間は12~24hである。
【0017】
炭素系複合エアロゲルの断熱、消防、エネルギー貯蔵及び力学デバイスの分野における使用であって、前記炭素系複合エアロゲルは前述の炭素系複合エアロゲル、又は前述調製方法で調製された炭素系複合エアロゲルである。
【0018】
好ましくは、炭素系複合エアロゲルを採用する際には、火災警報機能とは、アミノカーボンナノチューブとグラフェン酸化物ナノシートとの熱還元作用を利用して、高温で官能基を脱除すると、抵抗が急激に低下し、警報を誘発することにより実現され、高圧縮性は、グラフェン酸化物ナノシートの表面へのカーボンナノチューブの吸着とFeナノ粒子の界面架橋との二重補強手段が、集合により生成された隣接シート間の強い相互作用と相まって実現する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の技術的效果は以下のとおりである。
現在、火の安全性と機械的総合性能に優れたエアロゲルに対する需要と従来の製造技術の制限に鑑み、本発明は、簡単なグラフェン酸化物ナノシートの表面-界面二重補強手段によって火災警報機能及び高圧縮性を有する炭素系複合エアロゲルを調製することを提案している。本発明の技術的解決手段では、熱還元性を有し機械的特性に優れたグラフェン酸化物及びカーボンナノチューブを用いて前記エアロゲルの本体構造を構築し、特有の吸着挙動を利用して、カーボンナノチューブがグラフェン酸化物ナノシートの基面を始め、吸着して、連続網目を構築する。アミノカーボンナノチューブとグラフェン酸化物ナノシートの熱還元作用を利用して、高温で対応する官能基が除去されると、抵抗が急激に低下するという性質によって火災警報機能を図る。本発明では、調製方法の各ステップ及び実験パラメータを合理的に設定することで、火災警報機能と高圧縮性を兼ね備えるエアロゲルを調製し、このエアロゲルは断熱、消防、エネルギー貯蔵、力学デバイスなどの分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の炭素系複合エアロゲルの調製過程の概略図である。
図2】本発明の炭素系複合エアロゲルの走査型電子顕微鏡SEM像(800x)である。
図3】本発明の炭素系複合エアロゲルの火災警報過程の概略図である。
図4】本発明の炭素系複合エアロゲルの圧縮変形である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施例を参照して本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施例は説明するために過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。当業者であれば、本発明の趣旨及び精神を逸脱することなく、本発明についてさまざまな修正や置換を行うことができる。
【0022】
下記の実施例に使用される実験方法は、特に断らない限り、一般的な方法である。下記の実施例に所用される材料や試薬などは、特に断らない限り、市販品として入手する。
【0023】
<実施例1>
本実施例は、本発明の前記火災警報機能及び高い圧縮性能を有する炭素系複合エアロゲル材料を提供し、ここでは、界面架橋Feナノ粒子は前合成されたものであり、サイズが約10nmである。調製過程の概略図は図1に示され、具体的には、ステップ(1)~(4)を含む。
(1)グラフェン酸化物ナノシートの表面へのカーボンナノチューブ吸着
グラフェン酸化物ナノシート40mgを水8mLに均一に超音波分散させ、それに1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩EDC 62mgとN-ヒドロキシコハク酸イミドNHS 31mgを加え、常温で15min活性化させたものを、アミノカーボンナノチューブ分散液2gにゆっくりと加え、2h超音波反応させ、カーボンナノチューブをグラフェンナノシートの基面に吸着させた。
(2)Fe@NHナノ粒子の合成
(A)ソルボサーマル法によって約10nmのFeナノ粒子を合成し、すなわち、オレイン酸ナトリウム水溶液(0.2M)100mLと無水塩化鉄(III)水溶液(0.2M)100mLとを混合し、十分に撹拌して赤褐色沈殿を生成し、濾過して、脱イオン水でリンスした後、真空オーブンに入れて乾燥させた。乾燥後のろう状物をエタノール60mLに溶解し、オレイン酸6mLを加えて均一に混合し、ポリテトラフルオロエチレン高圧反応釜に移し、180℃で5h反応させた。無水エタノールで洗浄し、磁石で分離した後、トルエン(20mg/mL)に分散させておいた。
(B)シランリガンド交換によってFe@NHナノ粒子を調製し、すなわち、Feナノ粒子トルエン分散液(30mL)6mgに0.5%(v/v)3-アミノプロピルトリエトキシシランと0.01%(v/v)酢酸を加え、室温で24h撹拌反応した。トルエンで洗浄し、磁石で分離した後、凍結乾燥させておいた。
(3)グラフェン酸化物シートの縁部へのFe@NHナノ粒子の吸着
ステップ(1)の前記反応系に1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩EDC 31mgとN-ヒドロキシコハク酸イミドNHS 16mgとを加え、常温で15min活性化させ、その後、超音波処理したままで、それにステップ(2)で合成したFe@NHナノ粒子10mgを加え、2h超音波反応させ、Fe@NHナノ粒子をグラフェンナノシートの縁部に吸着させた。
(4)Feナノ粒子の界面架橋
ステップ(3)で得られた中間生成物を遠心分離してから、水20mLに再分散させ、常温で1h超音波反応し、Feナノ粒子間の磁気双極子相互作用を利用して界面架橋を行った。
(5)火災警報機能及び高圧縮性を有する炭素系複合エアロゲルの調製
ステップ(4)の反応系にエチレンジアミンEDA 60μLを加え、80℃に昇温して、24h反応させ、黒色懸濁ハイドロゲルを得た。得た架橋ハイドロゲルを室温で3h老化し、12h凍結乾燥させ(-45℃、260Pa)、前記エアロゲルを調製した。このエアロゲル材料の横断面を走査型電子顕微鏡SEMで観察した結果、図2に示すように、孔径が約5μmの多孔質構造が認められ、図2は顕微鏡S4800、加速電圧15 kV、拡大倍数800xの場合のSEM像である。
【0024】
<実施例2>
本実施例は、本発明の前記火災警報機能及び高い圧縮性能を有する炭素系複合エアロゲル材料を提供し、ここでは、界面架橋Feナノ粒子はインサイチュ成長させたものであり、サイズが約30nmである。具体的には、ステップ(1)~(4)を含む。
(1)グラフェン酸化物ナノシートの表面へのカーボンナノチューブの吸着
グラフェン酸化物ナノシート40mgを水8mLに均一に超音波分散させ、それに1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩EDC 62mgとN-ヒドロキシコハク酸イミドNHS 31mgを加え、常温で15min活性化させたものを、アミノカーボンナノチューブ分散液6gにゆっくりと加え、2h超音波反応させ、カーボンナノチューブをグラフェンナノシートの基面に吸着させた。
(2)グラフェン酸化物シートの縁部へのFeナノ粒子の吸着
ステップ(1)で得られた中間生成物を脱イオン水50mLに分散させ、Nを導入しえ酸素を2h除去した後、それにFeCl・6HO 0.4gとFeSO・7HO 0.25gとを加え、N雰囲気、室温で5h撹拌し、次に、80℃に昇温し、アンモニア水を加えて溶液pH=12に調整し、1h反応させ、Feナノ粒子をグラフェンナノシートの縁部に吸着させた。
(3)Feナノ粒子の界面架橋
ステップ(2)で得られた中間生成物を磁石で収集し、脱イオン水で3回リンスした後、水20mLに再分散させ、常温で1h超音波反応し、Feナノ粒子間の磁気双極子相互作用を利用して界面架橋を行った。
(4)火災警報機能及び高圧縮性を有する炭素系複合エアロゲルの調製
ステップ(3)の反応系にエチレンジアミンEDA 60μLを加え、80℃に昇温して、24h反応させ、黒色懸濁ハイドロゲルを得た。得た架橋ハイドロゲルを室温で3h老化し、12h凍結乾燥させ(-45℃、260Pa)、前記エアロゲルを調製した。
【0025】
(適用例)
本発明の前記其火災警報機能及び高圧縮性を有する炭素系複合エアロゲルは、アミノカーボンナノチューブとグラフェン酸化物ナノシートの熱還元作用を十分に利用して、高温で対応する官能基が除去されると抵抗が急激に減少し、警報をトリガーし、その火災警報の過程の概略図を図3に示す。火災が発生した場合、エアロゲルにおいてアミノカーボンナノチューブやグラフェン酸化物からアミノ、ヒドロキシなどの官能基が離脱し、これらの抵抗が急激に低下し、閉回路の電流が変化し、火災警報が誘発される。また、グラフェン酸化物ナノシートの表面へのカーボンナノチューブの吸着による連続網目構造と界面Feナノ粒子架橋との二重補強手段によって高圧縮性が実現され、このエアロゲルが力を受けて圧縮されて変形する過程を図4に示す。図示した通り、エアロゲルの最大圧縮変形は最大で95%に達し、しかも、外力が取り外されると、元の体積に回復し、体積縮小がなく、200回繰り返して圧縮されても、完全な回復が可能である。
【0026】
本発明の前記炭素系複合エアロゲルは、火災警報能力及び高圧縮性を有し、断熱、消防、エネルギー貯蔵及び力学デバイスなどの分野に適用できる。
【符号の説明】
【0027】
(a) グラフェン酸化物ナノシート
(b) グラフェン酸化物ナノシートの基面へのアミノカーボンナノチューブの吸着
(c) グラフェン酸化物ナノシートの縁部へのFeナノ粒子の吸着
(d) 隣接するグラフェン酸化物ナノシートのFeナノ粒子架橋
(e) グラフェン酸化物ナノシートの自己集合
I 元の状態
II 圧縮の場合
III 回復後

図1
図2
図3
図4