(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】環状電磁誘導ポンプ
(51)【国際特許分類】
H02K 44/06 20060101AFI20240805BHJP
G21C 15/247 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H02K44/06
G21C15/247
(21)【出願番号】P 2022507386
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(86)【国際出願番号】 EP2020072706
(87)【国際公開番号】W WO2021047854
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-07-25
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311015001
【氏名又は名称】コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイ,フレデリク
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第03073972(FR,A1)
【文献】特開平10-304647(JP,A)
【文献】実開昭53-137308(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第04420601(DE,A1)
【文献】特開平02-307096(JP,A)
【文献】特表2019-515623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 44/06
G21C 15/247
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向(X)に延在し、実質的に管状の形状の電磁誘導ポンプ(1)であって、
- 複数の内部コーム(101、102)及び少なくとも前記内部コームの歯(101-1、101-2、101-3)の間に配置された複数の内部コイル(111、112、113)を含む実質的に管状の内部インダクタ(10)であって、前記内部インダクタの内側は空洞(11)を形成する、内部インダクタと、
- 前記内部インダクタ(10)の周りに配置された内部チューブ(31)と、
- 圧送される流体(2)の循環を可能にするポンプ管(32)と、
- 外部チューブ(33)であって、前記ポンプ管(32)は前記内部チューブ(31)と前記外部チューブ(33)との間に形成されている、外部チューブと、
- 前記外部チューブ(33)の周りに配置され、複数の外部コーム(201、202)と、少なくとも前記外部コームの歯(201-1、201-2、201-3)の間に配置された複数の外部コイル(211、212、213)とを備える、実質的に管状の外部インダクタ(20)と、
を備え、
- 前記電磁ポンプは、前記内部コーム(101、102)を動かすための移動装置(40)をさらに備え、前記移動装置は、前記内部コームと前記内部チューブ(31)との間の半径方向のクリアランスを、前記内部コームの歯が前記内部チューブと接触していない第1のクリアランス(J1)と、前記内部コームの前記歯の全部又は一部が前記内部チューブと接触している第2のクリアランス(J2)との間で変化させることができ、前記移動装置は、前記内部インダクタの内側に配置され、それらを半径方向に動かすことができるように前記内部コームと接続された第1の部分(41)と、前記内部インダクタの外側に少なくとも部分的に延在し、前記第1の部分(41)に、前記第1の部分を制御するように接続されている第2の部分(42)と、を備えることを特徴とする、電磁誘導ポンプ。
【請求項2】
前記第2の部分(42)が、実質的に長手方向(X)に延在し、前記長手方向に移動することができる。請求項1に記載の電磁ポンプ。
【請求項3】
前記第2の部分(42)が、複数のバー(421、422)を備え、その第1の端部(421A、422A)は、前記電磁ポンプ(1)の外側に延在し、第2の端部(421B、422B)は、前記内部インダクタ(10)の内側に形成された空洞(11)内に延在し、各バーは、その第1の端部とその第2の端部との間で、前記内部インダクタ内の前記移動装置の前記第1の部分(41)に機械的に接続されている、請求項2に記載の電磁ポンプ。
【請求項4】
各バー(421、422)の前記第1の端部(421A、422A)がねじ山を特徴とし、前記移動装置(40)は複数のナット(431、432)をさらに備え、ナットは、バーの前記第1の端部の前記ねじ山と協働することができ、その結果前記ナットの回転が長手方向(X)の前記バーの動きを制御する、請求項3に記載の電磁ポンプ。
【請求項5】
前記第1の部分(41)が複数のばねリーフ(411)を備え、ばねリーフは、一方では内部コーム(101)と接触し、他方ではバー(421)と接触している、請求項3又は4のいずれか一項に記載の電磁ポンプ。
【請求項6】
各ばねリーフが、例えば、フィンガー(412)によって内部コーム(101)に固定されている、請求項3~5のいずれか一項に記載の電磁ポンプ。
【請求項7】
各バー(421)は、コームに面するその外側側面の、ばねリーフ(411)と協働することができる少なくとも1つのくぼみ(421-1)を特徴とし、その結果、前記バーが長手方向(X)に移動すると、前記ばねリーフは前記くぼみの内側と前記くぼみの外側との間で、又は逆に、前記くぼみの外側と前記くぼみの内側との間で、半径方向に移動され、したがって、前記ばねリーフと接触する前記内部コーム(101)の半径方向の動きを引き起こす、請求項5又は6のいずれか一項に記載の電磁ポンプ。
【請求項8】
バー(421)が単一の内部コーム(101)の前記半径方向の動きを制御できる、請求項3~7のいずれか一項に記載の電磁ポンプ。
【請求項9】
バーがいくつかの内部コームの前記半径方向の動きを制御できる、請求項3~7のいずれか一項に記載の電磁ポンプ。
【請求項10】
バーがその外側側面において、内部コームと接触している複数のばねリーフと協働することができる複数のくぼみを特徴とする、請求項3~9のいずれか一項に記載の電磁ポンプ。
【請求項11】
前記移動装置(40)が、その上に前記バー(421、422)が配置される支持チューブ(44)をさらに備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の電磁ポンプ。
【請求項12】
前記バー(421、422)が前記支持チューブ(44)の周りに均等に配置されている、請求項11に記載の電磁ポンプ。
【請求項13】
前記支持チューブ(44)が、バー(421、422)のくぼみ(421-1、422-1)の部位で前記支持チューブの内壁に対して配置された少なくとも補強リング(441)を備える、請求項11又は12のいずれか一項に記載の電磁ポンプ。
【請求項14】
前記支持チューブ(44)が、その外壁において、前記バー(421、422)の前記くぼみ(421-1、422-1)の部位での追加の厚み(442)を特徴とする、請求項11~13のいずれか一項に記載の電磁ポンプ。
【請求項15】
前記支持チューブ(44)が、その外壁において、前記バー(421、422)を誘導するための誘導リング(443)を備え、前記誘導リングは、前記バーが長手方向(X)に移動するのを可能とするオリフィスを備える、請求項11~14のいずれか一項に記載の電磁ポンプ。
【請求項16】
前記移動装置(40)が、前記内部コーム(101、102)を誘導するための半径方向誘導手段(45)をさらに備える、請求項1~15のいずれか一項に記載の電磁ポンプ。
【請求項17】
前記外部インダクタ(20)の前記外部コーム(201、202)を移動させるための半径方向移動装置をさらに備え、前記移動装置は、前記外部コームと前記外部チューブ(33)との間の半径方向のクリアランスを変化させることができる、請求項1~16のいずれか一項に記載の電磁ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ポンプ(以下、「EMポンプ」と呼ぶこともある)、より具体的には、環状EM誘導ポンプ、特に、典型的には500kWを超える高出力のものに関する。
【0002】
本発明は、一般に「Na-FNR」と呼ばれるナトリウム冷却高速中性子炉での、特に、Na-FNRの二次冷却回路での用途をとりわけ見出すことができる。
【背景技術】
【0003】
従来、液体金属を圧送するために電磁ポンプを使用することが既知のやり方である。液体金属で使用するこの特定の分野では、そのようなポンプは実際には機械式ポンプに比べて多くの利点を提供する。電磁ポンプは可動部がなく、したがって潤滑が必要な部品がないため、潤滑回路が不要である。これにより、機械式ポンプと比較して信頼性が高い。さらに、電磁ポンプの冷却回路は、それが圧送している液体金属、例えばナトリウムを有利に使用する。その場合、電磁ポンプは一般的に受動的に冷却されるものとして定義される。このように、電磁ポンプは補助回路の数を限定することを可能にすると同時に、全体的な信頼性の向上を可能にする。
【0004】
電磁ポンプは、導体、この場合は、単に「管」と呼ばれることがあるポンプ管を通って移動する液体金属が、磁場に置かれ、その中を電流が通過するときに受けている、ラプラス力を使用する。例えば、原子炉の一次又は二次冷却回路などの熱伝達回路を介して流体を運ぶポンプの場合、誘導ポンプは、必要なポンプ出力のために、唯一の考えられる技術である。以下では、簡略化のために、前記電磁誘導ポンプを「電磁ポンプ」と呼ぶことにする。このタイプのポンプの動作原理は、(スライディング又はロータリー)インダクタによって生成される時間可変電磁場によってポンプ管内に電流を生成することである。
【0005】
既知の環状リニア誘導ポンプ(頭字語「ALIP」でよく知られている)は、仏国特許第3073972号明細書に記載されており、
図1に複製されている。
【0006】
図1に示される環状電磁誘導ポンプ1は、前記電磁ポンプの中心軸Xから開始して、以下を備える。
- 内部インダクタ(「内部固定子」と呼ばれることもある)10。
- 内部インダクタを含む内部チューブ31。
- 圧送される流体が循環するポンプ管32。ポンプ管の内壁は、内部チューブ31によって形成されている。
- ポンプ管の外壁を形成し、その周りに外部インダクタが配置されている外部チューブ33。ポンプ管は、内部チューブと外部チューブとの間にある。
- 外部チューブ33の周りに配置された外部インダクタ(「外部固定子」と呼ばれることもある)20。
【0007】
内部インダクタ、内部チューブ、ポンプ管、外部チューブ、及び外部インダクタは、中心軸Xを中心に同心である。
【0008】
内部インダクタ10と外部インダクタ20は、それぞれ次のもので構成されている。
- 一般にコームと呼ばれ、それぞれ個別に101、102、103及び201、202、203と示された磁気積層スタックの集合100及び200。
- 電磁ポンプ1の中心軸Xに沿って互いに連続するコイル111、112、113及び211、212、213。各コイルは、前記中心軸の周りに巻かれた環状形状を有する。
【0009】
内部インダクタ10のコーム101、102、103は、「内部コーム」と呼ばれることがある。外部インダクタ20のコーム201、202、203は、「外部コーム」と呼ばれることがある。
【0010】
各コームは、コイルが通過するハウジングをそれぞれ形成する周辺の溝又はスロットを備えている。
【0011】
主軸に沿ってスライドする磁場を生成するために、内部及び外部磁気インダクタ10、20のコイル111、112、113及び211、212、213は、多相、一般に三相の、電気ネットワークから電力を供給される。
【0012】
示されている電磁ポンプは受動的に冷却される。それはNa-FNRの二次冷却回路に有利に使用される。このような場合、及び高温レベル(通常は200℃を超える)では、ポンプ内部の熱伝達を完全に制御する必要がある。これは、内部インダクタと外部インダクタの巻線が熱出力源であり、そこから熱を取り除く必要があるためである。これは、熱伝達のための唯一の可能な境界面が、このように伝達された熱を除去するナトリウムと接触している内部チューブである内部インダクタに特に当てはまる。
【0013】
その場合、電磁ポンプの内部インダクタからの熱の除去を厳密に制御することが絶対に不可欠である。一般に、電磁ポンプの熱伝達を厳密に制御することが不可欠である。
【0014】
特願平10-304647号公報は、(外部及び/又は内部)インダクタのコームと環状電磁誘導ポンプの(内部及び/又は外部)チューブとの間の接触を維持するための、弾性体によって形成される接触維持システムを開示している。弾性体はばね式で、様々な要素間の半径方向の熱膨張の違いを吸収するように設計されている。このソリューションの欠点の1つは、特に電磁ポンプを組み立てた後は、接触力の強さを調整できないことである。さらに、電磁ポンプが組み立てられると、特に内部インダクタが挿入されると、弾性体が提供されていない場合、接触力を加えることができなくなる。加えて、提供されるソリューションは、電磁ポンプへの内部インダクタの挿入を妨げる可能性がある。最終的には、接触力は、ポンプを分解せずに調整することはできない。
【0015】
特開平11-104817号公報は、(外部及び/又は内部)インダクタのコームと環状電磁誘導ポンプの(内部及び/又は外部)チューブとの間の接触を維持するための、一連の外部ばねによって形成される接触維持システムについても説明している。外部インダクタ接触システムは、横方向に配置されたスクリューナットシステムによって調整可能であり、外部ばねに多かれ少なかれ圧縮を加え、外部チューブに加えられる力を調整する。内部インダクタは上部から取り外すことができる。それにもかかわらず、内部インダクタが取り外されて接触システムが変更されない限り、内部ばねによって提供される力は調整できない。
【0016】
提供されるこれら全てのソリューションでは、電磁ポンプを組み立てるためのシステムは困難であり、接触誘導システムは長くて調整が困難であり、又は内部インダクタの場合は調整が不可能でさえある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】仏国特許第3073972号明細書
【文献】特願平10-304647号公報
【文献】特開平11-104817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、特に電磁ポンプの内部インダクタの場合、インダクタと電磁ポンプのポンプ管との間の接触を確保するためのシステムが現実的に必要であり、それは、実装が容易であり、調整するのが迅速でありながら、同時に、従来の特許と同じ熱除去性能を得るために、同じ品質の接触を提供し、又はさらにより良い性能を提供するものである。
【0019】
有利には、本発明は、前記ポンプを分解する必要なしにこの問題に対処でき、同時に内部インダクタの組み立ての容易さを維持し、或いはその組み立てを容易にすることができる必要がある。
【0020】
これは特に、とりわけ200℃を超える温度で、改善されたパッシブ冷却を備えた電磁ポンプを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
これらの欠点を克服することができる装置は、長手方向に延在し、実質的に管状の形状の、電磁誘導ポンプであり、以下を含む。
- 複数の内部コーム及び少なくとも前記内部コームの歯の間に配置された複数の内部コイルを含む実質的に管状の内部インダクタ。前記内部インダクタの内側は空洞を形成する。
- 内部インダクタの周りに配置された内部チューブ。
- 圧送される流体の循環を可能にするポンプ管。
- 外部チューブ。ポンプ管は内部チューブと外部チューブとの間に形成されている。
- 外部チューブの周りに配置され、複数の外部コームと、少なくとも前記外部コームの歯の間に配置された複数の外部コイルとを備える、実質的に管状の外部インダクタ。
電磁ポンプは、内部コームを動かすための移動装置をさらに備え、前記移動装置は、前記内部コームと内部チューブとの間の半径方向のクリアランスを、内部コームの歯が前記内部チューブと接触していない第1のクリアランスと、前記内部コームの歯の全部又は一部が前記内部チューブと接触している第2のクリアランスとの間で変化させることができ、前記移動装置は、内部インダクタの内側に配置され、それらを半径方向に動かすことができるように内部コームと接続された第1の部分と、内部インダクタの外側に少なくとも部分的に延在し、前記第1の部分に、前記第1の部分を制御するように接続されている第2の部分と、を備えることを特徴とする。
【0022】
圧送される流体は、導電性流体であり、好ましくは液体金属である。
【0023】
「内部コームの歯が前記内部チューブと接触していない第1のクリアランスと、前記内部コームの歯の全部又は一部が前記内部チューブと接触している第2のクリアランスとの間」が意味するのは、本発明によれば、半径方向のクリアランスは、第1のクリアランスと第2のクリアランスとの間に含まれており、前記第1のクリアランス及び前記第2のクリアランスとを含んだ、任意の値を採用できる、ということである。
【0024】
本発明の原理は、電磁ポンプの内部磁気回路の全てのコームによって形成される熱経路を利用することである。より具体的には、本発明は、これらの構成要素間の接触の熱抵抗を可能な限り制限して実装と調整が容易な方法でこれを行うために、内部インダクタのコーム(「内部コーム」と呼ばれる)と電磁ポンプの内部チューブとの間の密接な接触を可能にすることにある。
【0025】
本発明によってもたらされる注目すべき改善は、内部チューブに対する各内部コームの接触力(「押圧力」とも呼ぶことができる)を調整し、ポンプを分解する必要なしにそうできることにある。したがって、調整は、ポンプの外側にアクセスすることによって達成できるが、ポンプは静止しており、動作中の回路にまだ配置されたままである。
【0026】
このような調整は、電磁ポンプ内に内部インダクタを組み立てる場合の大きな利点である。各内部コームと内部チューブとの接触力を調整できることにより、熱伝達を確保するのに十分な接触力を作り出すか、若しくはそのような接触力を低減又は排除するか、又は内部コームを半径方向に後退した位置に配置することによって挿入クリアランスを作り出して電磁ポンプへの内部インダクタの挿入を容易にすることができる。
【0027】
これは、電磁ポンプの信頼性とその可用性のレベルに関しても重要な利点である。具体的には、内部インダクタと内部チューブとの間に簡単にクリアランスを作り出すことにより、内部インダクタは、故障した場合に、より迅速且つ簡単に交換できるようになる。これにより、可用性が向上する。信頼性に関しては、押圧力を変更できるため、インダクタの寿命全体にわたって可能な限り最良の熱交換を保証でき、それによりインダクタの温度が制限され、信頼性が向上する。
【0028】
本発明はまた、接触が正しく達成されたこと、及び/又はそれが時間の経過とともに弛緩していないことを検証することを可能にする。
【0029】
同じタイプの半径方向移動装置を外部インダクタに適用することもできる。
【0030】
したがって、生成された熱の放散は、電磁ポンプのそのような適切な機械的設計によって促進され、この設計はまた、電磁ポンプ内の内部インダクタの組み立てを著しく容易にする。
【0031】
移動装置は、以下に説明する実施形態を含むいくつかの実施形態に分解することができ、逆に示されない限りは、これらは互いに組み合わせることができる。
【0032】
一実施形態によれば、移動装置の第2の部分は、実質的に長手方向に延在し、前記長手方向に移動することができる。
【0033】
一実施形態によれば、移動装置の第2の部分は、複数のバーを備え、その第1の端部は電磁ポンプの外側に延在し、第2の端部は内部インダクタの内側に形成された空洞内に延在し、各バーは、その第1の端部と第2の端部との間で、前記内部インダクタ内の移動装置の第1の部分に機械的に接続されている。バーとは、一般に均一で円筒形の断面の細長い構成要素を指す。それは、ロッド、スルーボルトなどであり得る。バーは、好ましくは金属でできている。
【0034】
1つの特定の実施形態によれば、各バーの第1の端部はねじ山を特徴とし、移動装置は複数のナットをさらに備え、ナットは、バーの第1の端部のねじ山と協働することができ、その結果ナットの回転が長手方向の前記バーの動きを制御する。
【0035】
一実施形態によれば、移動装置の第1の部分は、複数のばねリーフを備え、ばねリーフは、一方では内部コームと接触し、他方ではバーと接触している。ばねリーフはまた、好ましくは、前記内部コームに固定される。ばねリーフの代替として、これは、コームと接触させることができ、好ましくはコームに固定することができ、バーが動かされるときに前記コームを半径方向に動かすのに適した何らかの他の構成要素であり得る。したがって、前記構成要素は、ばねリーフ以外の変形可能な構成要素、又は、仮にあったとしてもほとんど変形できない構成要素、例えば、カムタイプの機械的構成要素であり得る。
【0036】
1つの特定の実施形態によれば、各バーは、コームに面するその外側側面において、ばねリーフと協働することができる少なくとも1つのくぼみを特徴とし、その結果、バーが長手方向に移動すると、前記ばねリーフはくぼみの内側と前記くぼみの外側との間で、又は逆に、くぼみの外側と前記くぼみの内側との間で、半径方向に移動され、したがって、前記ばねリーフと接触する内部コームの半径方向の動きを引き起こす。ばねリーフは、特に温度レベルによって引き起こされる寸法変化の影響下で、製造及び機械的組み立ての不完全さ、及び動作中のクリアランスの変化を吸収できるように変形可能である。
【0037】
1つの特定の実施形態によれば、バーは、単一の内部コームの半径方向の動きを制御できる。代替の実施形態によれば、バーは、いくつかの内部コームの半径方向の動きを制御できる。
【0038】
一実施形態によれば、バーは、その外側側面において、内部コームと接触している複数のばねリーフと協働することができる複数のくぼみを特徴とする。
【0039】
一実施形態によれば、移動装置は、その上にバーが配置される支持チューブをさらに備える。
【0040】
1つの特定の実施形態によれば、バーは、支持チューブの周りに均等に配置されている。
【0041】
1つの特定の実施形態によれば、支持チューブは、バーのくぼみの部位で前記支持チューブの内壁に対して配置された少なくとも補強リングを備える。
【0042】
1つの特定の実施形態によれば、支持チューブは、その外壁において、バーのくぼみの部位での追加の厚みを特徴とする。
【0043】
1つの特定の実施形態によれば、支持チューブは、その外壁に、バーを誘導するための誘導リングを備え、前記誘導リングは、前記バーが長手方向に移動することを可能にするオリフィスを備える。
【0044】
一実施形態によれば、移動装置は、内部コームを誘導するための半径方向誘導手段をさらに備える。
【0045】
さらに、1つの特定の実施形態によれば、電磁ポンプは、外部インダクタ(外部コーム)のコームを移動させるための装置である追加の移動装置を備え、前記追加の移動装置は、前記外部コームと外部チューブとの間の半径方向のクリアランスを変化させることができる。内部コームを動かすための移動装置に関して説明された全ての実施形態及び変形は、外部コームを動かすための移動装置にも適用される。
【0046】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図を参照して非限定的な例示として与えられる以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図2A】本発明による電磁ポンプの一実施形態を示す。
【
図2B】本発明による電磁ポンプの一実施形態を示す。
【
図3A】本発明の実施形態による電磁ポンプの内部インダクタの分解図を示す。
【
図3B】本発明の実施形態による電磁ポンプの内部インダクタの分解図を示す。
【
図4】本発明の実施形態による電磁ポンプの移動装置を詳細に示す。
【
図6】内部インダクタと内部チューブとの間の熱伝達を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
従来技術の環状電磁誘導ポンプを示す
図1がすでに上で説明されており、ここでは再考されない。
【0049】
図2A、2B、3A及び3Bは、本発明による電磁ポンプの一実施形態を示し、
図3A及び3Bは、特に、ポンプの内部インダクタを示す。
図4は、この実施形態による電磁ポンプの移動装置を詳細に示す。
図5A及び5Bは、2つの異なる半径方向の位置にある移動装置を示す。
【0050】
電磁ポンプは、環状電磁誘導ポンプであり、
図1に示されている従来技術の電磁ポンプと同じように、電磁ポンプ1の中心軸X(これは長手方向でもある)から開始して以下を備える。
- 内部インダクタ(又は内部固定子)10。
- 内部インダクタを含む内部チューブ31。
- 圧送される流体2が循環することができるポンプ管32。ポンプ管の内壁は、内部チューブ31によって形成されている。
- ポンプ管の外壁を形成する外部チューブ33。
- 外部チューブ33の周りに配置された外部磁気インダクタ(又は外部固定子)20。
【0051】
したがって、ポンプ管32は、内部チューブ31と外部チューブ33との間に形成される。
【0052】
さらに、電磁ポンプ1は、流体2をポンプ管に運ぶように構成された入口シェルリング50(「集中入口」と呼ばれ得る)、及びポンプ管を出る流体2を回収することができる出口シェルリング60(これは「コレクタ」と呼ばれることもある)と組み立てられた、外部円筒形シェル70を備える。
【0053】
内部インダクタ、内部チューブ、ポンプ管、外部チューブ、外部インダクタ、及び外部シェルは、中心軸Xを中心に実質的に同心に配置されている。
【0054】
内部インダクタ10は、実質的に管状であり、「内部コーム」と呼ばれるいくつかのコーム101、102、及び複数の内部コイル111、112、113を備え、各内部コイルは、少なくとも各内部コーム101の歯101-1、101-2、101-3の間に巻かれている。前記内部インダクタの内側11は中空である。
【0055】
外部インダクタ20も実質的に管状であり、「外部コーム」と呼ばれるいくつかのコーム201、202、並びに複数の外部コイル211、212、213を備え、各外部コイルは、少なくとも各外部コームの歯201-1、201-2、201-3の間に巻かれている。
【0056】
内部(又は外部)コームの歯の間のスペースは、スロットによって形成することができ、これらのスロットは、内部(又は外部)のそれぞれのコイルが通過できるように設計されている。
【0057】
各コイルは、コームの歯の間を通り、中心軸の周りに巻かれた環状の形状をしている。
【0058】
本発明によれば、電磁ポンプは、内部コーム101、102に作用して、内部インダクタ10と内部チューブ31との間の半径方向のクリアランスを調整することを可能にする半径方向移動装置40を備える。
【0059】
図示の移動装置は、カム状機構からなり、複数のバー421、422を備え、その第1の端部421A、422Aは、電磁ポンプの外側に延在し、その結果、制御及び/又は調整は、電磁ポンプの外側から相殺及び実施され得る。「電磁ポンプの外側」とは、少なくとも電磁ポンプの能動要素(インダクタなど)の外側、例えば電磁ポンプのポンプヘッド上を意味する。したがって、調整はポンプの外側へのアクセスを介して行うことができるが、しかし停止されたポンプは、動作中の回路にまだ配置されたままである。
【0060】
図示の例によれば、各バー421の第1の端部421Aはねじ山が付けられている。より具体的には、その第1の端部において、各バー421、422は、コレクタ60のエンドプレート610に形成されたオリフィス611、612を通って延在し、ナット431、432は、このオリフィスを出てバー421、422のねじ山に固定される。このように、ねじ山のナットを締めたり又は緩めたりすることで、電磁ポンプの長手方向Xでのバーの動きを調整することができる。この締め付け/緩め操作は、手動又は自動で実行できる。
【0061】
ねじ山/ナットシステムは例として示されるものであり、制限ではない。図示のねじ/ナット変換システムの代替として、各バーの制御された動きを可能にする任意の他のシステム、例えば、アクチュエータ、スライドウェイシステム、ケーブル、ラック/ピニオンシステムなどが想定され得る。さらに、そのようなシステムは、コレクタエンドプレート以外の場所、又はポンプの別の場所に配置することもできる。
【0062】
各バーの第2の端部421B、422Bは、電磁ポンプの内側に、より具体的には、内部インダクタ10の空洞11に配置されている。各バーの第1の端部と第2の端部との間に提供されるのは、半径方向移動装置の第1の部分41を駆動するための機構であり、特に、少なくとも1つのばねリーフ411を半径方向に駆動するための機構である。
【0063】
各バー421は、内部コームに面するその側面上の、少なくとも1つの半径方向のくぼみ421-1をさらに特徴とし、くぼみは、ばねリーフ411に関連付けられている。ばねリーフの中央部分411Cはバーの側面と接触しており、リーフの端部411A、411Bも内部コーム101と接触している。リーフはさらに、少なくとも1本のフィンガー412によって第1のコームに固定されるので、リーフはバーによって方向Xの並進運動で駆動することができず、その結果それが主に半径方向の動きで内部コームに作用する。
【0064】
したがって、リーフは有利にはばねリーフである。リーフの変形は、接触が確立され、内部コームと内部チューブを互いに圧縮する接触力が加えられることを効果的に保証する。この接触力は、電磁ポンプの全動作範囲で、リーフの作用により比較的一定である。さらに、リーフの変形は、特に温度レベルによって引き起こされる寸法変化の影響下で、製造及び機械的組み立ての不完全さを吸収することを可能にし、また動作中のクリアランスの変化を可能にする。
【0065】
或いは、リーフは変形不可能であるか、又はほとんど変形することができないか、又は例えばカムなどの他の機械的構成要素によって置き換えられ得る。
【0066】
図示の実施形態によれば、各バー421は内部コーム101に関連付けられ、バー421-1のくぼみはばねリーフ411に関連付けられている。したがって、内部コームと同じ数のバーがある。
【0067】
内部コームに関連付けられたバーは、長手方向Xに配置されたいくつかの半径方向のくぼみを有利に特徴とすることができ、各くぼみは、ばねリーフに関連付けられている。その場合、くぼみがあるのと同じ数のばねリーフが前記内部コームに接続されている。これは、前記内部コームに加えられる圧力を分散させることができることを意味する。
【0068】
バー421が長手方向Xに移動されると、ばねリーフ411がバーの表面に追従する。したがって、リーフが半径方向のくぼみ421-1に接触すると、リーフは内部コーム101を電磁ポンプの内側に向かって駆動又は維持し、したがって内部チューブに対するクリアランスJ1を増加させる(
図5A)。逆に、リーフが平らな面に接触すると、リーフは内部コームを内部チューブに向かって押す(
図5B)。クリアランスJ2はゼロ又は実質的にゼロになる。リーフの弾力性は、リーフが半径方向のくぼみに接触してもバーとの接触が維持されることを意味する。
図4に示すように、くぼみが面取りされている場合は、内部チューブに対する内部コームの位置決めをより適切に調整できる中間位置があり得る。より一般的には、くぼみの輪郭は、関連するばねリーフの作動モード及び求められる接触制御要件に適合するように適応させることができる。
【0069】
図示の移動装置は、その上にバーが配置される支持チューブ44をさらに備える。示されている装置では、バーは支持チューブの周囲全体に均等に配置されている。支持チューブの内側は、例えば、前記くぼみの部位で支持チューブの内壁に対して形成された補強リング441を使用して、バーの少なくとも1つのくぼみの部位で補強され得る。任意の他の補強手段を想定することができる。
【0070】
支持チューブの外側は、バーの少なくとも1つのくぼみの部位における少なくとも1つの追加の厚み442を特徴とし得る。この追加の厚みは、リーフに作用を及ぼすときに発生するバーの屈曲を補償する局所的な支持を形成する。この支持機能を実行することができる他の任意の手段が想定され得、それは付随的に支持チューブ以外の場所で形成され得る。
【0071】
さらに、支持チューブの外面には、バー誘導リング443が配置されている。オリフィスは、バーを受け入れて維持すると同時に、それらを長手方向Xにスライドさせることを可能にするために前記リングに形成される。バーのスライドを維持及び可能にするこの機能を実行できる任意の他の手段が想定され得る。
【0072】
図示の移動装置は、内部コームを誘導するための半径方向誘導手段45をさらに備え、それは例えば、一方では内部コームに接続され、他方では入口シェルリングのエンドプレート510に接続されたスライドウェイ又はレールを含む。
【0073】
例えば、一方では内部コームに接続され、他方では第2のプレート520に接続されたスライドウェイ又はレールを含む、第2の半径方向誘導手段46は、
図3Bに示されるように、内部コームの他端に提供され得る。その場合、好ましくは、第2のプレートは、バー421、422の通過のためのオリフィス521、522を有する。
【0074】
内部コームの半径方向誘導のこの機能を実行することができる他の任意の手段が想定され得る。
【0075】
したがって、図示のように、バーは、少なくとも1つのばねリーフと組み合わせて、内部コームの半径方向の動き専用にすることができる。したがって、内部コームの半径方向の動きは、それに専用のバーを使用して個別に調整できる。
【0076】
さらに、そのような移動装置はまた、電磁ポンプを分解する必要なしに、そして特に流体回路に割り込む必要なしに、有利には個別に、内部コームの接触力をチェックすることを可能にする。接触力は、(調整ナット431、432を超えて)電磁ポンプから突き出ているバーの長さをチェックすることで測定できる。或いは、バーの引張力を測定することができる。これを行うために、(圧縮を測定するための)ロードセルをナット431、432とプレート610との間に挿入することができる。
【0077】
接触力を測定する能力は、流体がナトリウムである場合、特に本発明による電磁ポンプ、特に上述の接触力測定手段で可能であるように、この測定が電磁ポンプの分解を必要としない場合に、特に有利である。
【0078】
移動装置はまた、内部コーム(内部インダクタのコーム)と内部チューブとの間に半径方向のクリアランスを形成することを可能にし、それにより、内部インダクタを前記内部チューブに誘導することを可能にする。その後、装置は、内部コームを内部チューブに押し付けるように、クリアランスを再び閉じることができる。これにより、動作外では内部インダクタを内部チューブに挿入する際の抵抗力を制限し、動作中には熱の伝達を確保することができる。
【0079】
本発明が可能とする熱伝達機能を
図6に示す。したがって、内部コーム101、2つの内部コームの間のスロットに配置された内部コイル111、内部チューブ31、及び圧送される流体2が循環するポンプ管32が示されている。内部コイル111は、容積熱出力源である電流を通過させている。この熱出力は、コイルによって、冷却流体として機能する圧送される流体2に伝達される。この熱の伝達は2つの経路を通過する。第1の経路は、矢印64、61、及び62で示されている。熱出力は、コイル111からインシュレータ5を経由してコーム101(矢印64)に流れ、次にコーム101からクリアランスJを経由してチューブ31(矢印61)に流れ、次にチューブ31から流体2(矢印62)に流れる。第2の経路は、矢印63、61、及び62で示されている。その経路上で、熱出力は、コイル111からインシュレータ5(矢印63)及びクリアランスJ(矢印61又は65)を経由して内部チューブ31に流れ、次に内部チューブ31から流体2に直接接触(矢印62)によって流れる。したがって、クリアランスJは、コイル111内で生成された熱を流体2に除去するための2つの経路に直接且つ有意に関与している。
【0080】
本発明は、一方では内部コーム101及びコイル111のインシュレータ5と、他方では内部チューブ31と、の間のクリアランスJを、内部コームを内部チューブに押し付けることによって、又は少なくともそこにできるだけ近づけることによって減らすことを可能にする。これにより、内部コームと内部チューブの間(矢印61)及びコイルと内部チューブの間(矢印63)の熱伝達を大幅に改善し、それによって内部チューブを介して流体2に(矢印62)除去される熱を改善することができる。
【0081】
さらに、電磁ポンプは、外部コーム(外部インダクタのコーム)を移動させるための移動装置を備えてもよく、これは、実施形態に記載されているように内部コームを移動するための移動装置と同等であり得るか、又は特許請求の範囲内で異なるものでもよい。これにより、内部コームと内部チューブの場合と同様に、外部コームと外部チューブとの間の熱伝達を改善することができる。内部コームを移動するための装置に関して説明されている全ての変形は、外部コームを移動するための装置に適用される。
【0082】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内にある任意の実施形態に及ぶ。
【0083】
本発明は、ナトリウム冷却高速中性子炉、特にNa-FNRの二次冷却回路でとりわけ応用することができる。