(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】HER2及びHER3陽性癌に罹患している対象を治療するための手段及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240805BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240805BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240805BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240805BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240805BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20240805BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240805BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61P35/00
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/12
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2022523992
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(86)【国際出願番号】 NL2020050656
(87)【国際公開番号】W WO2021080428
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-06-21
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510340757
【氏名又は名称】メルス ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アーネスト・アイザック・ワッサーマン
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド・アンドレス・シリュルニク
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/182422(WO,A1)
【文献】Cancer Cell,2018年05月14日,Vol.33, No.5,pp.922-936
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/
A61P 35/
C07K 16/
C12N 15/
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ErbB-2の細胞外部分を結合する第1の抗原結合部位を含む可変ドメイン及びErbB-3の細胞外部分を結合する第2の抗原結合部位を含む可変ドメインを含む、二重特異性抗体を含む医薬組成物であって、前記組成物が、ErbB-2及びErbB-3陽性癌を有する対象の治療における使用のためのものであり、前記癌の細胞が、異なる染色体位置からの配列に融合したニューレグリン-1(NRG1)遺伝子の少なくとも一部を含むNRG1融合遺伝子を含み、前記対象における前記癌が、ErbB-2の細胞外部分若しくはErbB-3の細胞外部分を結合する抗原結合部位を含む単一特異性二価抗体による従前の治療、又はErbB-2のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)若しくは化学療法による従前の治療、或いはこれらの組み合わせを受けた後に進行して
おり、前記抗体が、それぞれ、配列AYYIN、RIYPGSGYTSYAQKFQG及びPPVYYDSAWFAYを有するCDR1、CDR2及びCDR3を有するErbB2特異的重鎖可変領域を含み、前記抗体が、それぞれ、配列GYYMH、WINPNSGGTNYAQKFQG及びDHGSRHFWSYWGFDYを有するCDR1、CDR2及びCDR3を有するErbB3特異的重鎖可変領域、並びに配列QSISSYを有するCDR1、配列AASを有するCDR2、及び配列QQSYSTPPTを有するCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記対象が、ヒト対象である、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
前記TKIが、ラパチニブ、カネルチニブ、ネラチニブ、ツカチニブ、CP-724714、タルロキシチニブ、ムブリチニブ、アファチニブ、バリチニブ、及びダコミチニブのうちの1つ以上である、請求項1又は請求項2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
前記TKIが、アファチニブである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
ErbB-3の細胞外部分を結合する抗原結合部位を含む前記単一特異性二価抗体が、パトリツマブ、セリバンツマブ、ルムレツズマブ、エルゲムツマブ、GSK2849330、KTN3379又はAV-203を含む、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項6】
前記NRG1融合遺伝子が、異なる染色体位置から5’配列に融合した前記NRG1遺伝子の少なくとも3’末端を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項7】
前記癌細胞が、前記NRG1融合遺伝子によって駆動される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項8】
前記癌が、再発癌又は転移癌である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記癌が、乳癌、卵巣癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、膵管腺癌、腎細胞腺癌、肉腫、胆嚢癌、膀胱癌、胆管癌、頭頸部癌、前立腺癌、子宮癌、副鼻腔奇形癌肉腫、大腸腺癌、肝癌又は大腸癌である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
前記癌が、非小細胞肺癌である、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
前記NRG1融合遺伝子が、NRG1 EGF様ドメインを含むタンパク質を発現する、請求項1~10のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
前記NRG1融合遺伝子が、NRG1とヒト第8染色体上の遺伝子との融合である、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
前記NRG1融合遺伝子が、前記NRG1遺伝子の3’末端と、ADAM9、AKAP13、APP、ATP1B1、BMPR1B、CCND1、CD44、CD74、CDH1、CDH6、CDK1、CLU、COX10-AS1、DIP2B、DOC4、DPYSL2、FOXA1、GDF15、HMBOX1、KIF13B、MCPH1、MDK、MRPL13、NOTCH2、PARP8、PDE7A、POMK、RAB2IL1、RAB3IL1、RBPMS、ROCK1、SDC4、SETD4、SLC3A2、SLC4A4、SMAD4、STAU3、THAP7、THBS1、TNC、TNFRSF10B、TNKS、TSHZ2、VAMP2、VTCN1、WHSC1L1、WRN及びZMYM2からなる群から選択される遺伝子のうちの1つの5’配列との融合である、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
前記NRG1融合遺伝子が、前記NRG1遺伝子の3’末端と前記遺伝子SDC4の5’配列との融合である、請求項13に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
前記抗体が、
i
)ErbB2特異的重鎖可変領域配列
:QVQLVQSGAEVKKPGASVKLSCKASGYTFTAYYINWVRQAPGQGLEWIGRIYPGSGYTSYAQKFQGRATLTADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYFCARPPVYYDSAWFAYWGQGTLVTVSS
;並びに
配
列QSISS
Yを有するCDR1、配列AA
Sを有するCDR2、及び配列QQSYSTPPTを有するCDR3を含む軽鎖可変領域;並びに/又は
ii
)ErbB3特異的重鎖可変領域配列
:QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARDHGSRHFWSYWGFDYWGQGTLVTVSS
;並びに
配
列QSISS
Yを有するCDR1、配列AA
Sを有するCDR2、及び配列QQSYSTPPTを有するCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、
請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
前記化学療法が、ゲムシタビン、カペシタビン、カルボプラチン、タキサン、ドセタキセル若しくはパクリタキセル、5-フルオロウラシル(放射線療法と併用又は非併用)、ビノレルビン、ミトキサントロン、ビンブラスチン、シスプラチン(又はペメトレキセド)、オキサリプラチン、カルボプラチン、イホスファミド、マイトマイシンC、ビンデシン、エトポシド、Folfox(すなわち、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、及びオキサリプラチンの組み合わせ)若しくはFolfiri(すなわち、ロイコボリン、5-フルオロウラシル及びイリノテカンの組み合わせ)、Folfirinox(ロイコボリン、5-フルオロウラシル、イリノテカン及びオキサリプラチンの組み合わせ)又はこれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項1~
15のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体の分野に関する。特に、本発明は、ErbB-2/ErbB-3陽性癌に罹患している対象の治療のための治療用(ヒト)抗体の分野に関する。より詳細には、本発明は、異なる染色体位置からの配列に融合したニューレグリン-1(NRG1)遺伝子の少なくとも一部を含むNRG1融合遺伝子を含む癌を治療することに関する。
【背景技術】
【0002】
膜貫通NRG1アイソフォームの細胞外ドメインのタンパク質分解処理は、可溶性因子を放出する。HRG1-β1は、この遺伝子によってコードされるタンパク質のうちの1つである。HRG1-β1は、Igドメイン並びに、受容体チロシンキナーゼErbB-3及びErbB-4への直接結合に必要なEGF様ドメインを含有する。NRG1遺伝子及びそのアイソフォームは、以下のようないくつかの異なる別名の下で公知である。すなわち、ニューレグリン1;Pro-NRG1;HRGA;SMDF;HGL;GGF;NDF;NRG1イントロン転写産物2(非タンパク質コード化);ヘレグリン、アルファ(45kD、ERBB2 P185アクチベーター);アセチルコリン受容体誘導活性;ニューレグリン前駆体1、膜結合型アイソフォーム;感覚ニューロン及び運動ニューロン由来因子;Neu分化因子;グリア成長因子2;NRG1-IT2;MSTP131;MST131;ARIA;GGF2;HRG1、及びHRGである。NRG1遺伝子についての外部Idは、HGNC:7997、Entrez Gene:3084、Ensembl:ENSG00000157168;OMIM:142445、及びUniProtKB:Q02297である。
【0003】
NRG1のアイソフォームは、選択的スプライシングによって生成され、膜貫通型、外膜結合型、脱落型、分泌型又は細胞内型の形態を含む(Falls,2003、Hayes and Gullick,2008)。これらのアイソフォームは、ErbB-3又はErbB-4に結合し、これはErbB-2(HER2)とのヘテロ二量体形成をシグナル伝達すると理解されている。NRG1によりコードされるタンパク質は通常、有糸分裂促進因子と考えられているが、タンパク質は又、強力にアポトーシス促進性でもあることができる。特に、NRG1を細胞内で発現すると、発現細胞のアポトーシスを引き起こすことができるWeinstein et al.(1998).Oncogene 17:2107-2113。
【0004】
NRG1遺伝子融合は、発癌性駆動因子であると理解されている。PCT/NL2018/050206において、本発明者らは、ErbB-2及びErbB-3を標的とする二重特異性抗体とのNRG1融合を含むNRG1融合を有する癌を標的とし治療する能力を報告した。近年、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)及びmAbに対する臨床応答が報告されている(Drilon A et al(2018),Response to ERBB3-directed targeted therapy in NRG1-rearranged cancers.Cancer Discov Vol 8:686-95.Gay ND et al(2017),Durable response to afatinib in lung adenocarcinoma harboring NRG1 gene fusions.J Thorac Oncol 12:e107-10.Jones MR et al(2017),Successful targeting of the NRG1 pathway indicates novel treatment strategy for metastatic cancer.Ann Oncol Vol.28:3092-7、及びCheema PK et al(2017),A case of invasive mucinous pulmonary adenocarcinoma with a CD74-NRG1 fusion protein targeted with afatinib.J Thorac Oncol 12:e200-2)。シグナル伝達軸のターゲティングは、シグナル伝達経路の様々な段階及び部分に向けられることができる。これらの中には、ErbB-2、ErbB-3、又はその両方に向けられた療法がある。医薬品は、この分子の細胞外部分及び/又は細胞内部分に向けられることができる。トラスツズマブなどの抗体は、ErbB-2に結合し、そのシグナル伝達を阻害する。治療用ErbB-3指向抗体も既に説明されている。
【0005】
上述の臨床報告に関して、ある一定のレベルの有効性は、安定した疾患から、限られた耐久性のある部分奏効までの範囲で報告されているが、腫瘍は、破壊耐久性を進行させ得ること、再発させ得ること、又は元の腫瘍の転移が検出され得ることが観察されている。そのような再発、転移は、多くの場合、医薬品による治療に対してより抵抗性になっている。本発明では、本発明者らは、腫瘍をTKI、化学療法、抗ErbB-2又は抗ErbB-3ターゲティング分子で治療した後の再発、進行又は転移が、ErbB-2の細胞外部分を結合する第1の抗原結合部位と、ErbB-3の細胞外部分を結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性抗体で首尾よく治療できることを特定した。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ErbB-2及びErbB-3陽性癌を有する対象の治療における使用のための、ErbB-2の細胞外部分を結合する第1の抗原結合部位と、ErbB-3の細胞外部分を結合する第2の抗原結合部位とを含む、二重特異性抗体を提供し、癌の細胞は、異なる染色体位置からの配列に融合したニューレグリン-1(NRG1)融合遺伝子の少なくとも一部を含むNRG1融合遺伝子を含み、当該対象における癌は、化学療法、ErbB-2の細胞外部分若しくはErbB-3の細胞外部分を結合する抗原結合部位を含む単一特異性二価抗体による従前の治療、又はErbB-2のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による従前の治療、或いはこれらの組み合わせを受けた後に既に進行している。
【0007】
対象は、好ましくはヒト対象である。
【0008】
本発明による化学療法は、好ましくは、ゲムシタビン、カペシタビン、カルボプラチン、ドセタキセル若しくはパクリタキセルなどのタキサン、5-フルオロウラシル(放射線療法と併用又は非併用)、ビノレルビン、ミトキサントロン、ビンブラスチン、シスプラチン(又はペメトレキセド)、オキサリプラチン、カルボプラチン、イホスファミド、マイトマイシンC、ビンデシン、エトポシド、Folfox(すなわち、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、及びオキサリプラチンの組み合わせ)若しくはFolfiri(すなわち、ロイコボリン、5-フルオロウラシル及びイリノテカンの組み合わせ)、Folfirinox(ロイコボリン、5-フルオロウラシル、イリノテカン及びオキサリプラチンの組み合わせ)又はこれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0009】
ErbB-2の細胞外部分を結合する抗原結合部位を含む単一特異性二価抗体は、好ましくは、トラスツズマブ、ペルツズマブ、又はトラスツズマブ-エムタンシンである。ErbB-2 TKIは、好ましくは、ラパチニブ、カネルチニブ、ネラチニブ、ツカチニブ(イルビチニブ)、CP-724714、タルロキシチニブ、ムブリチニブ、アファチニブ、バリチニブ、及びダコミチニブのうちの1つ以上であり、好ましくはアファチニブである。
【0010】
一実施形態では、ErbB-2 TKIはアファチニブである。
【0011】
ErbB-3の細胞外部分を結合する抗原結合部位を含む単一特異性二価抗体は、好ましくは、パトリツマブ、セリバンツマブ、ルムレツズマブ、エルゲムツマブ、GSK2849330、KTN3379又はAV-203を含む。
【0012】
癌が進行した従前の治療は、好ましくは、本明細書で先に示したような、化学療法、TKI、ErbB-2又はErB-3により標的化する腫瘍治療を含む。ErbB-2により標的化する治療は、好ましくは、ErbB-2の細胞外部分を結合する抗原結合部位を含む単一特異性二価抗体を使用する。そのような抗体は、好ましくは、トラスツズマブ、ペルツズマブ、又はトラスツズマブ-エムタンシンである。ErbB-2により標的化する処理は、好ましくは、ErbB-2 TKIである。ErbB-2 TKIは、好ましくは、ラパチニブ、カネルチニブ、ネラチニブ、ツカチニブ(又はイルビチニブ)、CP-724714、タルロキシチニブ、ムブリチニブ、アファチニブ、バリチニブ、及びダコミチニブのうちの1つ以上であり、好ましくはアファチニブである。ErbB-2 TKIは又、ErbB-1シグナル伝達に影響を及ぼし得るが、ErbB-2に対して有意な活性を有するという点でErbB-1 TKIとは異なる。ErbB-3により標的化する治療は、好ましくは、ErbB-3の細胞外部分を結合する抗原結合部位を含む単一特異性二価抗体を使用する。そのような抗体は、好ましくは、パトリツマブ、セリバンツマブ、ルムレツズマブ、エルゲムツマブ、GSK2849330、KTN3379又はAV-203である。
【0013】
標的特異的治療は、同じ標的に対する他の治療と組み合わせてもよい。或いは、1つの標的を標的とする治療は、言及された標的のうちの別の標的に対しても有効であり得る。
【0014】
NRG1融合遺伝子は、好ましくは、異なる染色体位置から5’配列に融合したNRG1遺伝子の少なくとも3’末端を含む。癌細胞に存在する場合、癌細胞は、好ましくは、NRG1融合遺伝子によって駆動される。NRG1融合遺伝子は、好ましくは、NRG1 EGF様ドメインを含むタンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、NRG1融合遺伝子は、NRG1とヒト第8染色体上の遺伝子との融合である。ヒト第8染色体上の遺伝子は、好ましくは、排泄されたタンパク質又は細胞膜結合型タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、NRG1融合遺伝子は、NRG1遺伝子の3’末端と、ADAM9、AKAP13、APP、ATP1B1、BMPR1B、CCND1、CD44、CD74、CDH1、CDH6、CDK1、CLU、COX10-AS1、DIP2B、DOC4、DPYSL2、FOXA1、GDF15、HMBOX1、KIF13B、MCPH1、MDK、MRPL13、NOTCH2、PARP8、PDE7A、POMK、RAB2IL1、RAB3IL1、RBPMS、ROCK1、SDC4、SETD4、SLC3A2、SLC4A4、SMAD4、STAU3、THAP7、THBS1、TNC、TNFRSF10B、TNKS、TSHZ2、VAMP2、VTCN1、WHSC1L1、WRN及びZMYM2からなる群から選択される遺伝子のうちの1つ、好ましくは、SDC4の5’配列との融合;ATP1B1;又はCD74融合、より好ましくは、SDC4-NRG1融合である。好ましい実施形態では、NRG1融合遺伝子は、NRG1遺伝子の3’末端と、遺伝子SDC4の5’配列との融合である。いくつかの場合において、NRG1融合遺伝子は、NRG1遺伝子の5’末端と、融合パートナーの3’配列との融合である。好ましい実施形態では、5’NRG1融合は、FOXA1、PMEPA1、RAD51、及びSTMN2からなる群から選択される遺伝子を包含する。これら全ての場合において、遺伝子融合タンパク質産物は、NRG1 EGF様ドメインを含むタンパク質へと翻訳されることが好ましい。
【0015】
癌は、好ましくは、再発癌又は転移癌である。再発とは、典型的には局所再発を指し、癌が元の癌と同じ場所にあるか又は当該場所に非常に近いことを意味する。腫瘍は、典型的には、腫瘍が元の癌の近くのリンパ節若しくは組織に移動したか、又は元の癌から遠くのより遠位の臓器若しくは組織に広がったとき、転移性腫瘍であるといわれる。再発と転移との違いは、多かれ少なかれ、元の腫瘍と同じ位置にあるときには常に非常にはっきりしているとは限らない。そのような場合、両方の適応症を使用することができる。
【0016】
癌は、好ましくは、膵癌、膵管腺癌、肉腫、膀胱癌、大腸癌、胆嚢癌、頭頸部癌、前立腺癌、子宮癌、乳癌、卵巣癌、肝癌、子宮内膜癌、非小細胞肺癌などの肺癌、好ましくは、非小細胞肺癌、より好ましくは、浸潤性粘液性腺癌である。好ましくは、癌は膵管腺癌であり、腫瘍ゲノムは、EGFR、KRAS、cKIT-BRCA1-2、MET、ROS、RET、ALKからなる群から選択される1つ以上の遺伝子、好ましくはKRASに変異がないことを示す。したがって、好ましくは、癌は膵管腺癌であり、腫瘍ゲノムはKRAS野生型である。
【0017】
ErbB-2の細胞外部分を結合する第1の抗原結合部位と、ErbB-3の細胞外部分を結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性抗体は、好ましくは、ErbB-2のドメインIを結合する第1の抗原結合部位と、ErbB-3のドメインIIIを結合する第2の抗原結合部位とを有する。いくつかの実施形態では、ErbB-2に対する第1の抗原結合部位の親和性は、ErbB-3に対する第2の抗原結合部位の親和性よりも低い。
【0018】
二重特異性抗体は、好ましくは
i)MF2926、MF2930、MF1849からなる群から選択されるErbB2特異的重鎖可変領域の少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列;MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003及びMF1898を含み、若しくは当該抗体は、MF2926、MF2930、MF1849のCDR1、CDR2、及びCDR3配列とは最大で3アミノ酸、好ましくは最大で2アミノ酸、好ましくは最大で1アミノ酸が異なっているCDR配列;MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003、若しくはMF1898、並びに/又は
ii)MF3178;MF3176;MF3163;MF3099;MF3307;MF6055;MF6056;MF6057;MF6058;MF6059;MF6060;MF6061;MF6062;MF6063;MF6064;MF6065;MF6066;MF6067;MF6068;MF6069;MF6070;MF6071;MF6072;MF6073及びMF6074からなる群から選択されるErbB3特異的重鎖可変領域の少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列、若しくは当該抗体は、MF3178;MF3176;MF3163;MF3099;MF3307;MF6055;MF6056;MF6057;MF6058;MF6059;MF6060;MF6061;MF6062;MF6063;MF6064;MF6065;MF6066;MF6067;MF6068;MF6069;MF6070;MF6071;MF6072;MF6073又はMF6074のCDR1、CDR2、及びCDR3配列とは、最大で3アミノ酸、好ましくは最大で2アミノ酸、好ましくは最大で1アミノ酸が異なっているCDR配列、を含む。
【0019】
一実施形態では、二重特異性抗体は、
i)MF2926、MF2930、MF1849の重鎖可変領域配列からなる群から選択されるErbB2特異的重鎖可変領域配列;MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003及びMF1898を含み、若しくは当該抗体は、MF2926、MF2930、MF1849の重鎖可変領域配列とは最大で15アミノ酸が異なっている重鎖可変領域配列;MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003、若しくはMF1898、並びに/又は
ii)MF3178;MF3176;MF3163;MF3099;MF3307;MF6055;MF6056;MF6057;MF6058;MF6059;MF6060;MF6061;MF6062;MF6063;MF6064;MF6065;MF6066;MF6067;MF6068;MF6069;MF6070;MF6071;MF6072;MF6073及びMF6074の重鎖可変領域配列からなる群から選択されるErbB3特異的重鎖可変領域配列、又は当該抗体は、MF3178;MF3176;MF3163;MF3099;MF3307;MF6055;MF6056;MF6057;MF6058;MF6059;MF6060;MF6061;MF6062;MF6063;MF6064;MF6065;MF6066;MF6067;MF6068;MF6069;MF6070;MF6071;MF6072;MF6073又はMF6074のCDR1、CDR2、及びCDR3配列とは、最大で15アミノ酸が異なっている重鎖可変領域配列、を含む。
【0020】
好ましい実施形態では、二重特異性抗体のErbB-2結合可変ドメインは、ErbB2特異的重鎖可変領域MF3958のCDR1、CDR2、及びCDR3配列を少なくとも含み、二重特異性抗体のErbB-3結合可変ドメインは、ErbB3特異的重鎖可変領域MF3178のCDR1、CDR2、及びCDR3配列を少なくとも含む。
【0021】
当該二重特異性抗体の当該第1の抗原結合部位を含む可変ドメイン、及び当該第2の抗原結合部位を含む可変ドメインは、好ましくは、IgVKl-39遺伝子セグメントを含む軽鎖可変領域、最も好ましくは、再構成生殖細胞系列ヒトカッパ軽鎖IgVKl-39*01/IGJKl*01を含む。
【0022】
当該二重特異性抗体の当該第1の抗原結合部位を含む可変ドメイン及び当該第2の抗原結合部位を含む可変ドメインは、好ましくは、KABAT番号付けにより、又はIMGT番号付けシステムにより、配列(RASQSISSYLN)を有するCDR1と、配列(AASSLQS)を有するCDR2と、配列(QQSYSTPPT)を有するCDR3とを含む軽鎖可変領域を含み、CDRはそれぞれ、QSISSY、AAS及びQQSYSTPPTである。
【0023】
当該二重特異性抗体の当該第1の抗原結合部位を含む可変ドメイン及び当該第2の抗原結合部位を含む可変ドメインは、好ましくは、
図1a又は図bの軽鎖可変領域を含む。
【0024】
本発明は更に、ErbB-2及びErbB-3陽性癌を有する対象を治療する方法を提供し、癌の細胞が、異なる染色体位置からの配列に融合したNRG1遺伝子の少なくとも一部を含むNRG1融合遺伝子を含み、対象が、先行化学療法又はErbB-2若しくはErbB-3を標的とした腫瘍治療を受けた前処置癌対象であり、方法は、それを必要とする対象に、ErbB-2の細胞外部分を結合する第1の抗原結合部位と、ErbB-3の細胞外部分を結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性抗体を投与することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0025】
NRG1融合遺伝子は、異なる染色体位置からの配列に融合したNRG1遺伝子の少なくとも一部を含む。「少なくとも一部」は、NRG-1遺伝子全体が、融合又はその一部に存在し得ることを示す。融合は、好ましくは、少なくともエキソン6、7及び8のコード配列を有する。好ましくは、NRG1融合遺伝子中のNRG1部分は、NRG1のEGF様ドメインを含む。NRG1遺伝子の少なくとも一部は、当該配列がNRG1遺伝子の少なくとも一部に対して5’又は3’に位置するように、異なる染色体位置からの配列に融合し得る。
【0026】
好ましくは、NRG1遺伝子の3’末端は、異なる染色体位置から5’配列に融合し得る。NRG1遺伝子は、NRG1の様々なアイソフォームをコードする。様々なアイソフォーム及びそれらの予想される機能は、Adelaide et al(2003)に説明されている。GGF及びGGF2アイソフォームは、クリングル様配列+Ig及びEGF様ドメインを含有し、SMDFアイソフォームは、EGF様ドメインのみを他のアイソフォームと共有する。EGF様ドメインは、この遺伝子の3’末端によってコードされる。EGF様ドメインは、本発明の全てのNRG1融合遺伝子に存在する。異なる染色体位置からの5’が、少なくとも1つの細胞外ドメインを有する細胞膜タンパク質の排泄シグナル及び/又は膜貫通ドメインを含むことが見出されている。例は、CD74-NRG1融合である。異なる染色体位置からの5’配列は又、NRG1の転写を活性化する配列を挿入してもよく、例は、プロモーター又はエンハンサーである。この5’配列は、典型的には、NRG1とは異なる遺伝子からの配列である。この配列は、コード領域、プロモーター若しくはエンハンサーなどの発現調節配列、又はこれらの組み合わせを含むことができる。NRG融合は、異なる場所からの5’配列を含み、異なる染色体から、又は8番染色体の別の部分からであることができる。好ましい実施形態では、5’配列は、ヒト第8染色体上の遺伝子からのものである。
【0027】
融合におけるNRG1遺伝子、例えば、NRG-1遺伝子の3’末端は、好ましくは、少なくともエキソン6、7及び8のコード配列を有する。NRG1融合遺伝子におけるNRG1部分を定義する別の方法は、NRG1のEGF様ドメインを含むことである。このドメインは、NRG1遺伝子の3’末端(エキソン6~8)によってコードされ、ErbB-3への結合に必要である。NRG1融合は、融合の3’末端でこのEGF様ドメインについてのインフレームコード領域を保持する。EGF様ドメインは、典型的には約30~40アミノ酸残基の長さであり、そのプロトタイプは、上皮成長因子(EGF)の配列において見られる(PMID:2288911、PMID:6334307、PMID:1522591、PMID:6607417、PMID:3282918、PMID:11498013)。EGF様ドメインは、多数の他の主に動物タンパク質では、多かれ少なかれ保存された形態で存在することが知られている。EGF様ドメインの共通の特徴は、ドメインが膜結合型タンパク質の細胞外ドメインにおいて、又は分泌されることが知られているタンパク質において認められる(例外:プロスタグランジンG/Hシンターゼ)。
【0028】
NRG1融合遺伝子は、好ましくは、NRG1遺伝子の3’末端と、ADAM9、AKAP13、APP、ATP1B1、BMPR1B、CCND1、CD44、CD74、CDH1、CDH6、CDK1、CLU、COX10-AS1、DIP2B、DOC4、DPYSL2、FOXA1、GDF15、HMBOX1、KIF13B、MCPH1、MDK、MRPL13、NOTCH2、PARP8、PDE7A、POMK、RAB2IL1、RAB3IL1、RBPMS、ROCK1、SDC4、SETD4、SLC3A2、SLC4A4、SMAD4、STAU3、THAP7、THBS1、TNC、TNFRSF10B、TNKS、TSHZ2、VAMP2、VTCN1、WHSC1L1、WRN及びZMYM2からなる群から選択される遺伝子のうちの1つ、好ましくは、SDC4、ATP1B1又はCD74融合、より好ましくはSDC4-NRG1融合の5’配列との融合である。好ましい実施形態では、NRG1融合遺伝子は、NRG1遺伝子の3’末端と、遺伝子SDC4の5’配列との融合である。いくつかの場合において、NRG1融合遺伝子は、NRG1遺伝子の5’末端と、融合パートナーの3’配列との融合である。好ましい実施形態では、5’NRG1融合は、FOXA1、PMEPA1、RAD51、及びSTMN2からなる群から選択される遺伝子を包含する。これら全ての場合において、遺伝子融合タンパク質産物は、NRG1 EGF様ドメインを含むタンパク質へと翻訳されることが好ましい。
【0029】
NRG1融合遺伝子は、好ましくは、NRG1遺伝子の3’末端とSDC4遺伝子の5’配列との融合である。
【0030】
NRG1融合遺伝子は、NRG1遺伝子の少なくとも一部と、3’に位置する異なる染色体位置からの配列との融合であってもよい。そのようなNRG1融合遺伝子は、NRG1遺伝子の少なくとも一部と、3’に位置する異なる染色体位置CD74、STMN2、PMEPA1、PROSC又はPSAPからの配列との融合であってもよい。
【0031】
全てのNRG1アイソフォームについての受容体は、チロシンキナーゼ膜貫通受容体のErbBファミリーである。このファミリーは、ヒト上皮成長因子(EGF)受容体ファミリー(HER)ともいわれる。このファミリーは、4つのメンバー、ErbB(赤芽球腫)-1、ErbB-2、ErbB-3、及びErbB-4を有する。これらの受容体(Yarden and Pines 2012において総説されている)は、上皮細胞上で広く発現する。HER受容体又は、ヘレグリン(HRG)若しくは上皮成長因子(EGF)などのHER受容体リガンドのアップレギュレーションは、ヒト癌における頻繁な事象である(Wilson,Fridlyand et al.2012)。ErbB-1及びErbB-2の過剰発現は特に、上皮腫瘍において生じ、腫瘍浸潤、転移、化学療法に対する耐性、及び予後不良と関係している(Zhang,Berezov et al.2007)。正常な乳房では、ErbB-3は、管腔上皮の成長及び分化において重要であることが示されている。例えば、ErbB-3の喪失/阻害は、管腔上皮上の基底の選択的増殖をもたらす(Balko,Miller et al.2012)。RTKの細胞外ドメインへのリガンドの結合は、同じ受容体サブタイプ(ホモ二量体化)と異なる受容体サブタイプ(ヘテロ二量体化)の間の受容体二量体化をいずれも誘導する。二量体化は、自己リン酸化を受ける細胞内チロシンキナーゼドメインを活性化することができ、次いで、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)及び生存促進性経路Aktによって介在されるものを含むいくつかの下流の増殖促進性シグナル伝達経路を活性化することができる(Yarden and Pines,2012において総説)。ErbB-2についての特異的内因性リガンドは特定されておらず、それゆえ、通常、ヘテロ二量体化を経てシグナル伝達されることが推定されている(Sergina,Rausch et al.2007)。ErbB-3は、そのリガンドの結合によって活性化することができる。これらのリガンドには、ニューレグリン(NRG)及びヘレグリン(HRG)が含まれるが、それらに限定されない。
【0032】
ErbB-1は、様々な同義語で知られており、その最も一般的なものがEGFRである。EGFRは、4つのサブドメインから構成される細胞外ドメイン(extracellular domain、ECD)を有し、これらのドメインのうちの2つは、リガンド結合に関与し、そのうちの2つは、ホモ二量体化及びヘテロ二量体化に関与する。EGFRは、多様な細胞内応答を得るために、様々なリガンドからの細胞外シグナルを統合する。EGFRは、いくつかのヒト上皮悪性腫瘍、特に乳房、膀胱、非小細胞肺癌肺、結腸、卵巣、頭頸部、及び脳の癌に関与している。この遺伝子における活性化突然変異、並びに受容体及びそのリガンドの過剰発現が見出されており、自己分泌活性化ループが生じる。この受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、癌療法の標的として広く使用されている。細胞外リガンド結合ドメインに定方向のRTK及びモノクローナル抗体(monoclonal antibody、mAb)(単一特異性二価)を標的とする小分子阻害体がいずれも開発されてきたが、これは、今までのところは、いくつかの臨床的成功を示している。ヒトEGFRタンパク質及びそれをコードする遺伝子についてのデータベース登録番号は、(GenBank NM_005228.3)である。この登録番号は、主に、EGFRタンパク質を標的として同定する更なる方法を提供するために与えられ、抗体によって結合されたEGFRタンパク質の実際の配列は、例えば、いくつかの癌などで生じるものなどのコード遺伝子における変異のために変化し得る。
【0033】
本明細書で使用される「ErbB-2」という用語は、ヒトにおいてERBB-2遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。この遺伝子又はタンパク質の代替名としては、CD340、HER-2;HER-2/neu、MLN19;NEU;NGL;TKR1;ERBB-2遺伝子は、HER2(human epidermal growth factor receptor 2、ヒト上皮成長因子受容体2)と呼ばれることが多い。本明細書においてErbB-2に言及する場合、この言及は、ヒトErbB-2を指す。ErbB-2に結合する抗原結合部位を含む抗体は、ヒトErbB-2に結合する。ErbB-2抗原結合部位は、ヒトと他の哺乳類のオルソログとの間の配列及び三次構造類似性に起因して、そのようなオルソログにも結合するが、必ずしもそうではなくてもよい。ヒトErbB-2タンパク質及びそれをコードする遺伝子に対するデータベース登録番号の番号は、(NP_001005862.1、NP_004439.2、NC_000017.10、NT_010783.15、NC_018928.2)である。この登録番号は、主に、ErbB-2を標的として同定する更なる方法を提供するために与えられ、抗体によって結合されたErbB-2タンパク質の実際の配列は、例えば、いくつかの癌などで生じるものなどのコード遺伝子における変異のために変化し得る。ErbB-2抗原結合部位は、ErbB-2、及びいくつかのErbB-2陽性腫瘍細胞によって発現されるものなどの様々なその変異体に結合する。ErbB-2を結合する抗原結合部位は、好ましくは、ErbB-2のドメインIを結合する。
【0034】
本明細書で使用される「ErbB-3」という用語は、ヒトにおいてERBB3遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。遺伝子又はタンパク質の代替名は、HER3;LCCS2;MDA-BF-1;c-ErbB-3、c-ErbB3;ErbB3-S;p180-ErbB3;p45-sErbB3;及びp85-sErbB3である。本明細書においてErbB-3に言及する場合、この言及は、ヒトErbB-3を指す。ErbB-3を結合する抗原結合部位を含む抗体は、ヒトErbB-3を結合する。ErbB-3抗原結合部位は、ヒトと他の哺乳類のオルソログとの間の配列及び三次構造類似性に起因して、そのようなオルソログをも結合してもよいが、必ずしもそうではなくてもよい。ヒトErbB-3タンパク質及びそれをコードする遺伝子に対するデータベース登録番号は、(NP_001005915.1、NP_001973.2、NC_000012.11、NC_018923.2、NT_029419.12)である。この登録番号は、主に、ErbB-3を標的として同定する更なる方法を提供するために与えられ、抗体によって結合されたErbB-3タンパク質の実際の配列は、例えば、いくつかの癌などで生じるものなどのコード遺伝子における変異のために変化し得る。ErbB-3抗原結合部位は、ErbB-3、及びいくつかのErbB-3陽性腫瘍細胞によって発現するものなど、その様々な変異体を結合する。ErbB-3を結合する抗原結合部位は、好ましくは、ErbB-3のドメインIIIを結合する。
【0035】
ErbB-1、ErbB-2若しくはErbB-3、又はそれについての代替名に対して言及がなされる場合、この言及は、ヒトErbB-1、ErbB-2又はErbB-3である。本明細書で言及される抗体は、ErbB-1、ErbB-2又はErbB-3、及び癌において認められることができる多くの変異型ErbB-1、ErbB-2又はErbB-3タンパク質に結合する。
【0036】
CD74は、別名の数字の下に知られている。これらのうちのいくつかは、CD74分子;CD74抗原(主要組織適合性複合体、クラスII抗原関連のインバリアントポリペプチド);CD74分子、主要組織適合性複合体、クラスIIインバリアント鎖;HLA-DR抗原関連インバリアント鎖;クラスII抗原のガンマ鎖;Ia関連インバリアント鎖;MHC HLA-DRガンマ鎖;HLA-DR-ガンマ;DHLAG;P33;HLAクラスII組織適合性抗原ガンマ鎖;Ia抗原関連インバリアント鎖;Ia-ガンマ及びHLADG。CD74についての外部Idは、HGNC:1697;Entrez Gene:972;Ensembl:ENSG00000019582;OMIM:142790、及びUniProtKB:P04233である。
【0037】
DOC4又はテニューリン膜貫通タンパク質4(TENM4)は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、Protein Odd Oz/Ten-Mホモログ4;テネイシン-M4;Ten-M4;Ten-4;ODZ4;TNM4;Odz,Odd Oz/Ten-Mホモログ4(ショウジョウバエ);Odz,Odd Oz/Ten-Mホモログ4;テニューリン-4;KIAA1302;Doc4;及びETM5であり得ると考えられている。DOC4についての外部Idは、HGNC:29945;Entrez Gene:26011;Ensembl:ENSG00000149256;OMIM:610084、及びUniProtKB:Q6N022である。
【0038】
TNFRSF10B又はTNF受容体スーパーファミリーメンバー10bは、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー10b;TNF関連アポトーシス誘導性リガンド受容体2;細胞死受容体5;TRAIL-R2;TRAILR2;KILLER、TRICK2;ZTNFR9;DR5;P53制御DNA損傷誘導性細胞死受容体(キラー)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10B;腫瘍壊死因子受容体様タンパク質ZTNFR9、TRAIL/Apo-2L用の受容体を含有する細胞死ドメイン、ポトーシス(poptosis)誘導タンパク質TRICK2A/2B;アポトーシス誘導受容体TRAIL-R2、細胞傷害性TRAIL受容体-2、Fas様タンパク質、TRAIL受容体2;CD262抗原;KILLER/DR5、TRICK2A;TRICK2B;TRICKB、及びCD262としても知られている。TNFRSF10Bについての外部Idは、HGNC:11905;Entrez Gene:8795;Ensembl:ENSG00000120889;OMIM:603612、及びUniProtKB:O14763である。
【0039】
CLU遺伝子又はクラステリンは、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、テストステロン抑制性前立腺メッセージ(Testosterone-Repressed Prostate Message)2;アポリポタンパク質J;補体関連タンパク質SP-40,40;補体細胞溶解阻害体;補体溶解抑制剤;硫酸化糖タンパク質2;Ku70結合タンパク質1;NA1/NA2TRPM-2;APO-J;APOJ;KUB1;CLI;クラステリン(補体溶解抑制剤、SP-40,40、硫酸化糖タンパク質2、テストステロン抑制性前立腺メッセージ2、アポリポタンパク質J);加齢関連遺伝子4タンパク質;加齢関連タンパク質4;SGP-2;SP-40;TRPM2;AAG4;CLU1;CLU2;並びにCLUについてのSGP2外部Idは、HGNC:2095;Entrez Gene:1191;Ensembl:ENSG00000120885;OMIM:185430、及びUniProtKB:P10909である。
【0040】
VAMP2又は小胞関連膜タンパク質2は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、シナプトブレビン2;SYB2;小胞関連膜タンパク質2;及びシナプトブレビン-2である。VAMP2についての外部Idは、HGNC:12643;Entrez Gene:6844;Ensembl:ENSG00000220205;OMIM:185881、及びUniProtKB:P63027である。
【0041】
SLCA3A2又は溶質輸送体ファミリー3メンバー2は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、リンパ球活性化抗原4F2大サブユニット;溶質輸送体ファミリー3(二塩基性及び中性アミノ酸輸送の活性化因子)、メンバー2;モノクローナル抗体4F2、TRA1.10、TROP4、及びT43によって同定された抗原;溶質輸送体ファミリー3(アミノ酸輸送体重鎖)、メンバー2;4F2細胞表面抗原重鎖;CD98重鎖;4F2HC;MDU1;モノクローナル抗体4F2、重鎖によって定義される抗原;モノクローナル抗体4F2によって定義される抗原;4F2重鎖抗原;4F2重鎖;CD98抗原;CD98HC;4T2HC;NACAE;CD98及び4F2である。SLC3A2についての外部Idは、HGNC:11026;Entrez Gene:6520;Ensembl:ENSG00000168003;OMIM:158070、及びUniProtKB:P08195である。
【0042】
多重スプライシングを伴うRBPMS又はRNA結合タンパク質は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、多重スプライシングを伴うRNA結合タンパク質;心臓及びRRM発現配列;HERMES;多重スプライシングを伴うRNA結合タンパク質;及びRBP-MS。RBPMSについての外部Idは、HGNC:19097;Entrez Gene:11030;Ensembl:ENSG00000157110;OMIM:601558、及びUniProtKB:Q93062である。
【0043】
WRN又はウェルナー症候群RecQ様ヘリカーゼは、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、ウェルナー症候群RecQ様ヘリカーゼ;DNAヘリカーゼ、RecQ様3型;RecQタンパク質様2;エキソヌクレアーゼWRN;RECQL2;RECQ3;ウェルナー症候群ATP依存性ヘリカーゼ;ウェルナー症候群、RecQヘリカーゼ様;ウェルナー症候群;EC3.6.4.12;EC3.1.-.-;EC3.6.1;及びRECQL3。WRNについての外部Idは、HGNC:12791;Entrez Gene:7486;Ensembl:ENSG00000165392;OMIM:604611、及びUniProtKB:Q14191である。
【0044】
SDC4又はシンデカン4は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、シンデカン4(アンフィグリカン、リュードカン);シンデカンプロテオグリカン4;リュードカンコアタンパク質;アンフィグリカン;SYND4;リュードカンアンフィグリカン;及びシンデカン-4。SDC4についての外部Idは、HGNC:10661;Entrez Gene:6385;Ensembl:ENSG00000124145;OMIM:600017、及びUniProtKB:P31431である。
【0045】
ADAM9又はジスインテグリン及びメタロプロテイナーゼドメイン9(メルトリンガンマ)は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、ADAMメタロペプチダーゼドメイン;ジスインテグリン及びメタロプロテイナーゼドメイン含有タンパク質9;メタロプロテアーゼ/ジスインテグリン/システインリッチタンパク質9;細胞ジスインテグリン関連タンパク質;骨髄腫細胞メタロプロテイナーゼ;錐体杆体ジストロフィ9;MCMP;MDC9;ADAMメタロペプチダーゼドメイン9(メルトリンガンマ);メルトリン-ガンマ;メルトリンガンマ;EC3.4.24.;EC3.4.24;KIAA0021;CORD9;MLTNG。ADAM9遺伝子についての外部Id HGNC:216;Entrez Gene:8754;Ensembl:ENSG00000168615;OMIM:602713、及びUniProtKB:Q13443である。
【0046】
AKAP13又はA-キナーゼアンカータンパク質13は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、リンパ様芽球発症癌遺伝子;乳癌核受容体結合補助タンパク質;非癌遺伝子Rho GTPアーゼ特異的GTP交換因子;グアニンヌクレオチド交換因子Lbc;プロテインキナーゼA-アンカータンパク質13;ヒト甲状腺アンカータンパク質31;Aキナーゼ(PRKA)アンカータンパク質13;A-キナーゼアンカータンパク質13;LBC癌遺伝子;AKAP-Lbc;AKAP-13;PRKA13;LBC;BRX;P47;プロトLBC;ARHGEF13;プロトLB;C-Lbc;HA-3;Ht31;及びHT31であり得ると考えられている。AKAP13遺伝子についての外部Idは、HGNC:371;Entrez Gene:11214;Ensembl:ENSG00000170776;OMIM:604686、及びUniProtKB:Q12802である。
【0047】
APP又はアミロイドベータ前駆体タンパク質は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、アミロイドベータ(A4)前駆体タンパク質;アルツハイマー病アミロイドタンパク質;脳血管アミロイドペプチド;アミロイドベータ前駆体タンパク質;アミロイド前駆体タンパク質;アミロイドベータA4タンパク質;ペプチダーゼネキシン-II;プロテアーゼネキシン-II;PreA4;PN-II;ABPP;APPI;CVAP;AD1;ベータアミロイド前駆体タンパク質;精巣組織タンパク質Li;ベータアミロイドペプチド(1~40);ベータアミロイドペプチド(1~42);アミロイドβA4タンパク質;ベータアミロイドペプチド;アルツハイマー病;CTFガンマ;ABETA;AAA;PN2;及びA4であり得ると考えられている。APP遺伝子についての外部Idは、HGNC:620;Entrez Gene:351;Ensembl:ENSG00000142192;OMIM:104760、及びUniProtKB:P05067である。
【0048】
ATP1B1は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、ATPアーゼNa+/K+輸送サブユニットベータ1;ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼサブユニットベータ1;ナトリウム-カリウムATPアーゼサブユニットベータ1(非触媒)、ATPアーゼ,Na+/K+輸送,ベータ1ポリペプチド;ナトリウムポンプサブユニットベータ1;ATP1B;ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼベータ1鎖;ナトリウム/カリウム依存性ATPアーゼベータ1サブユニット;ナトリウム/カリウム依存性ATPアーゼサブユニットベータ1;Na(+),K(+)-ATPアーゼのベータ1サブユニット;Na,K-ATPアーゼベータ1ポリペプチド;及びアデノシントリホスファターゼ。ATP1B1遺伝子についての外部Idは、HGNC:804;Entrez Gene:481;Ensembl:ENSG00000143153;OMIM:182330、及びUniProtKB:P05026である。
【0049】
BMPR1Bは、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、骨形態形態タンパク質受容体1B型;骨形態形態タンパク質受容体、IB型;骨形態形態タンパク質受容体1B型;BMP 1B型受容体;EC2.7.11.30;BMPR-1B;セリン/トレオニン受容体キナーゼ;アクチビン受容体様キナーゼ6;CDw293抗原;EC2.7.11;CDw293;ALK-6;BDA1D;ALK6;AMDD、及びBDA2としても知られている。BMPR1B遺伝子についての外部Idは、HGNC:1077;Entrez Gene:658;Ensembl:ENSG00000138696;OMIM:603248、及びUniProtKB:O00238である。
【0050】
CCND1又はサイクリンD1は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、B細胞リンパ腫1タンパク質;G1/S特異的サイクリン-D1;B細胞CLL/リンパ腫1;BCL-1癌遺伝子;PRAD1癌遺伝子;PRAD1;BCL1;サイクリンD1(PRAD1:副甲状腺腫症1型)、副甲状腺腫症1型;G1/S特異的サイクリンD1;D11S287E;U21B31;及びBCL-1であり得ると考えられている。CCND1遺伝子についての外部Idは、HGNC:1582;Entrez Gene:595;Ensembl:ENSG00000110092;OMIM:168461、及びUniProtKB:P24385である。
【0051】
CD44又は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、CD44分子(Indian Blood Group);造血細胞E及びL-選択性リガンド;GP90リンパ球ホーミング/接着受容体;コンドロイチン硫酸プロテオグリカン8;細胞外マトリックス受容体III;ヘパラン硫酸プロテオグリカン;食細胞糖タンパク質1;ヒアルロン酸受容体;Hermes抗原;CD44抗原;ECMR-III;HUTCH-I;エピカン;MDU2;MDU3;MIC4;LHR;CD44抗原(ホーミング機能及びIndian式血液型系);ホーミング機能及びIndian式血液型系;細胞表面糖タンパク質CD44;Indian Blood Group抗原;食細胞糖タンパク質I;可溶性CD44;CDW44;CSPG8;HCELL;CDw44;PGP-1;MC56;Pgp1、及びINである。CD44遺伝子についての外部Idは、HGNC:1681;Entrez Gene:960;Ensembl:ENSG00000026508;OMIM:107269、及びUniProtKB:P16070である。
【0052】
CDH1又はカドヘリン1は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、カドヘリン1、1型、E-カドヘリン(上皮);上皮カドヘリン;カドヘリン-1;ウボモルリン;E-カドヘリン;CAM120/80;CDHE;UVO;カルシウム依存性接着タンパク質、上皮;精巣上体分泌精子結合タンパク質;カドヘリン1、E-カドヘリン(上皮);Cell-CAM120/80;CD324抗原;E-カドヘリン1;Arc-1;BCDS1;CD324;ECAD;及びLCAM。CDH1遺伝子についての外部Idは、HGNC:1748;Entrez Gene:999;Ensembl:ENSG00000039068;OMIM:192090、及びUniProtKB:P12830である。
【0053】
CDH6又はカドヘリン6は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、カドヘリン6、2型、K-カドヘリン(胎児腎臓);カドヘリン-6;K-カドヘリン;腎カドヘリン;CAD6、及びKCADである。CDH6遺伝子についての外部Idは、HGNC:1765;Entrez Gene:1004;Ensembl:ENSG00000113361;OMIM:603007、及びUniProtKB:P55285である。
【0054】
CDK1又はサイクリン依存性キナーゼ1は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、細胞分裂周期2、G1~S及びG2~M;細胞分裂制御タンパク質2ホモログ;細胞分裂プロテインキナーゼ1;サイクリン依存性キナーゼ1;P34プロテインキナーゼ;P34CDC2;CDC28A;CDC2;細胞周期制御因子CDC2;EC2.7.11.22;EC2.7.11.23;及びCDKN1。CDK1遺伝子についての外部Idは、HGNC:1722;Entrez Gene:983;Ensembl:ENSG00000170312;OMIM:116940、及びUniProtKB:P06493である。
【0055】
COX10-AS1又はCOX10アンチセンスRNA1は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、COX10アンチセンスRNA1(非タンパク質コード化);COX10アンチセンスRNA(非タンパク質コード化);COX10-AS;及びCOX10ASであり得ると考えられている。COX10-AS1遺伝子についての外部Idは、HGNC:38873;Entrez Gene:100874058;及びEnsembl:ENSG00000236088である。
【0056】
DIP2B又はDisco相互作用タンパク質2 ホモログBは、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、Disco相互作用タンパク質2ホモログB;DIP2 Disco相互作用タンパク質2ホモログB(ショウジョウバエ);DIP2 Disco相互作用タンパク質2ホモログB;DIP2ホモログB;及びKIAA1463。DIP2B遺伝子についての外部Idは、HGNC:29284;Entrez Gene:57609;Ensembl:ENSG00000066084;OMIM:611379、及びUniProtKB:Q9P265である。
【0057】
DPYSL2又はジヒドロピリミジナーゼ様2は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、ジヒドロピリミジナーゼ関連タンパク質2;Unc-33様リンタンパク質2;CRMP-2;ULIP-2;CRMP2;DRP-2;ULIP2;N2A3;コラプシン応答メディエータータンパク質HCRMP-2;コラプシン応答メディエータータンパク質2;ジヒドロピリミジナーゼ様2;DHPRP2;及びDRP2であり得ると考えられている。DPYSL2遺伝子についての外部Idは、HGNC:3014;Entrez Gene:1808;Ensembl:ENSG00000092964;OMIM:602463、及びUniProtKB:Q16555である。
【0058】
FGFR1又は線維芽細胞成長因子受容体1は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、塩基性線維芽細胞成長因子受容体1;Fms関連チロシンキナーゼ2;プロトオンコジーンC-Fgr;EC2.7.10.1;BFGF-R-1;FGFR-1;BFGFR;FGFBR;FLT-2HBGFR;FLT2CEK;FLG;ヘパリン結合成長因子受容体;FMS様チロシンキナーゼ2;ヒドロキシアリールプロテインキナーゼ;Fms様チロシンキナーゼ2;FGFR1/PLAG1融合;ファイファー症候群;CD331抗原;EC2.7.10;HRTFDS;CD331;N-SAM;N-Sam;ECCL;KAL2;HH2、及びOGDである。FGFR1遺伝子についての外部Idは、HGNC:3688;Entrez Gene:2260;Ensembl:ENSG00000077782;OMIM:136350、及びUniProtKB:P11362である。
【0059】
FOXA1又はフォークヘッドボックスA1は、肝細胞核因子3-アルファなどのいくつかの異なる名称で知られており;フォークヘッドボックスタンパク質A1;転写因子3A;HNF-3-アルファ;HNF-3A;TCF-3A;HNF3A;TCF3A;及び肝細胞核因子3、アルファ。FOXA1遺伝子についての外部Idは、HGNC:5021;Entrez Gene:3169;Ensembl:ENSG00000129514;OMIM:602294、及びUniProtKB:P55317である。
【0060】
GDF15又は成長分化因子15は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、前立腺分化因子;非ステロイド系消炎薬活性化遺伝子1;胎盤骨形態形成タンパク質;成長/分化因子15;マクロファージ阻害性サイトカイン1;NSAID活性化遺伝子1タンパク質;NSAID調節遺伝子1タンパク質;胎盤TGF-ベータ;GDF-15;MIC-1;NAG-1;NRG-1;PTGFB;MIC1;PLAB;PDF;NSAID(非ステロイド系消炎薬)活性化タンパク質1;マクロファージ阻害性サイトカイン-1;PTGF-ベータ。GDF15遺伝子についての外部Idは、HGNC:30142;Entrez Gene:9518;Ensembl:ENSG00000130513;OMIM:605312、及びUniProtKB:Q99988である。
【0061】
HMBOX1又はホメオボックス含有1;ホメオボックステロメア結合タンパク質1;テロメア関連ホメオボックス含有タンパク質1;ホメオボックス含有タンパク質1;HOT1;ホメオボックス含有タンパク質PBHNF;HNF1LA;PBHNF;及びTAH1である。HMBOX1遺伝子についての外部Idは、HGNC:26137;Entrez Gene:79618;Ensembl:ENSG00000147421;及びUniProtKB:Q6NT76。
【0062】
KIF13B又はキネシンファミリーメンバー13Bは、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、キネシン様タンパク質KIF13B;キネシン様タンパク質GAKIN;GAKIN;グアニル酸キナーゼ関連キネシン;キネシン13B;及びKIAA0639。KIF13B遺伝子についての外部Idは、HGNC:14405;Entrez Gene:23303;Ensembl:ENSG00000197892;OMIM:607350、及びUniProtKB:Q9NQT8である。
【0063】
MCPH1は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、ミクロセファリン1;TERT発現のBRCT反復阻害体1;ミクロセファリン;小脳症、原発性常染色体劣性1;短縮型ミクロセファリン;BRIT1、及びMCTである。MCPH1遺伝子についての外部Idは、HGNC:6954;Entrez Gene:79648;Ensembl:ENSG00000147316;OMIM:607117、及びUniProtKB:Q8NEM0である。
【0064】
MDK又はミッドカインは、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、神経突起成長促進因子2;神経突起成長促進因子2;アンフィレギュリン関連タンパク質;妊娠中期及び腎タンパク質;NEGF2;ARAP;MK;神経突起成長促進タンパク質;レチノイン酸誘導性因子;及びMK1。MDK遺伝子についての外部Idは、HGNC:6972;Entrez Gene:4192;Ensembl:ENSG00000110492;OMIM:162096、及びUniProtKB:P21741である。
【0065】
MRPL13又はミトコンドリアリボソームタンパク質L13は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、ミトコンドリア大リボソームサブユニットタンパク質UL13m;39Sリボソームタンパク質L13、ミトコンドリア;MRP-L13;L13mt;RPML13;RPL13;L13A;及びL13であり得ると考えられている。MRPL13遺伝子についての外部Idは、HGNC:14278;Entrez Gene:28998;Ensembl:ENSG00000172172;OMIM:610200、及びUniProtKB:Q9BYD1である。
【0066】
NOTCH2又はNotch受容体2は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、Notch2;神経原性遺伝子座Notchホモログタンパク質2;HN2;Notch(ショウジョウバエ)ホモログ2;Notchホモログ2(ショウジョウバエ);Notchホモログ2;HJCYS、及びAGS2としても知らている。NOTCH2遺伝子についての外部Idは、HGNC:7882;Entrez Gene:4853;Ensembl:ENSG00000134250;OMIM:600275、及びUniProtKB:Q04721である。
【0067】
PARP8又はポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼファミリーメンバー8は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、ADP-リボシルトランスフェラーゼジフテリア毒素様16;タンパク質モノ-ADP-リボシルトランスフェラーゼPARP8;ポリ[ADP-リボース]ポリメラーゼ8;ARTD16;EC2.4.2.30;EC2.4.2.-;PART16;及びPARP-8であり得ると考えられている。PARP8遺伝子についての外部Idは、HGNC:26124;Entrez Gene:79668;Ensembl:ENSG00000151883;及びUniProtKB:Q8N3A8である。
【0068】
PDE7A又はホスホジエステラーゼ7Aは、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、高親和性CAMP特異的3’,5’-環状ホスホジエステラーゼ7A;HCP1;TM22;ホスホジエステラーゼアイソザイム7;EC3.1.4.17;EC3.1.4.53;EC3.1.4;PDE7;PDE7A遺伝子についての外部Idは、HGNC:8791;Entrez Gene:5150;Ensembl:ENSG00000205268;OMIM:171885、及びUniProtKB:Q13946である。
【0069】
POMK又はプロテインO-マンノースキナーゼは、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、プロテインキナーゼ様タンパク質SgK196;Sugenキナーゼ196;SGK196;推定不活性プロテインキナーゼ様タンパク質SgK196;プロテイン-O-マンノースキナーゼ;EC2.7.1.183;MDDGA12;及びMDDGC12であり得ると考えられている。POMK遺伝子についての外部Idは、HGNC:26267;Entrez Gene:84197;Ensembl:ENSG00000185900;OMIM:615247、及びUniProtKB:Q9H5K3である。
【0070】
RAB3IL1は、いくつもの異なる名称で知られており、例えば、RAB3A相互作用タンパク質様1;Rab-3Aについてのグアニンヌクレオチド交換因子;RAB3A相互作用タンパク質(ラビン3)様1;Rab3A相互作用様タンパク質1;ラビン3様1;Rab3Aについてのグアニンヌクレオチド交換因子;Rab-3A相互作用様タンパク質1;及びGRABである。RAB3IL1遺伝子についての外部Idは、HGNC:9780;Entrez Gene:5866;Ensembl:ENSG00000167994;及びUniProtKB:Q8TBN0である。
【0071】
ROCK1又はRho関連コイル化コイル含有プロテインキナーゼ1は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、腎癌抗原NY-REN-35;Rho関連プロテインキナーゼ1;P160 ROCK-1;EC2.7.11.1;P160ROCKROCK-I;Rho関連コイル化コイル含有プロテインキナーゼ1;Rho関連コイル化コイル含有プロテインキナーゼI;EC2.7.11.1;及びEC2.7.11である。ROCK1遺伝子についての外部Idは、HGNC:10251;Entrez Gene:6093;Ensembl:ENSG00000067900;OMIM:601702、及びUniProtKB:Q13464である。
【0072】
SETD4又はSETドメイン含有4は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、SETドメイン含有タンパク質4;C21orf18;C21orf27;21番染色体オープンリーディングフレーム27;21番染色体オープンリーディングフレーム18;及びEC2.1.1.-である。SETD4遺伝子についての外部Idは、HGNC:1258;Entrez Gene:54093;Ensembl:ENSG00000185917;及びUniProtKB:Q9NVD3である。
【0073】
SLC4A4は、いくつもの異なる名称で知られており、例えば、溶質輸送体ファミリー4メンバー4;溶質輸送体ファミリー4(重炭酸ナトリウム共輸送体)、メンバー4;起電性重炭酸ナトリウム共輸送体1;Na(+)/HCO3(-)共輸送体;KNBC1;NBC1;重炭酸ナトリウム共輸送体1(重炭酸ナトリウム共輸送体、腎臓;重炭酸ナトリウム共輸送体、膵臓);溶質輸送体ファミリー4、重炭酸ナトリウム共輸送体、メンバー4、脳型;溶質輸送体ファミリー4、重炭酸ナトリウム共輸送体、メンバー5;溶質輸送体ファミリー4、重炭酸ナトリウム共輸送体、メンバー4;重炭酸ナトリウム共輸送体;NBCe1-A;SLC4A5;HNBC1;HhNMC;NBCE1;KNBC;NBC2;PNBC;NBCである。SLC4A4遺伝子についての外部Idは、HGNC:11030;Entrez Gene:8671;Ensembl:ENSG00000080493;OMIM:603345、及びUniProtKB:Q9Y6R1である。
【0074】
SMAD4は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、SMADファミリーメンバー4;膵癌における欠失標的4;デカペンタプレジックホモログに対する母材4;MADホモログ4;MADH4;DPC4;MAD、デカペンタプレジックホモログに対する母材4(ショウジョウバエ);デカペンタプレジックに対する母材、ショウジョウバエ、そのホモログ、4;SMAD、DPPホモログに対する母材4(ショウジョウバエ);膵癌遺伝子座における欠失4;SMAD、DPPホモログに対する母材4;DPPホモログに対する母材4;SMAD4;HSMAD4;MYHRS;Smad4、及びJIPである。SMAD4遺伝子についての外部Idは、HGNC:6770;Entrez Gene:4089;Ensembl:ENSG00000141646;OMIM:600993、及びUniProtKB:Q13485である。
【0075】
THAP7は又、THAPドメイン含有7又はTHAPドメイン含有タンパク質7としても知られている。THAP7遺伝子についての外部Idは、HGNC:23190;Entrez Gene:80764;Ensembl:ENSG00000184436;OMIM:609518;及びUniProtKB:Q9BT49である。
【0076】
THBS1又はトロンボスポンジン1は、いくつもの異なる名称で知られており、例えば、トロンボスポンジン-1p180;トロンボスポンジン-1;糖タンパク質G;TSP1;TSP;トロンボスポンジン-P50;THBS-1;TSP-1;THBSである。THBS1遺伝子についての外部Idは、HGNC:11785;Entrez Gene:7057;Ensembl:ENSG00000137801;OMIM:188060、及びUniProtKB:P07996である。
【0077】
TNC又はテネイシンCは、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、グリオーマ関連細胞外マトリックス抗原;聾、常染色体ドミナント56;ヘキサブラキオン(テネイシン);筋腱間抗原;ニューロネクチン;シトタクチン;GP150-225;テネイシン;GMEM;TN-C;HXB;JI;TN;ヘキサブラキオン(テネイシンC、シトタクチン);テネイシン-C追加ドメイン1;テネイシン-Cアイソフォーム14/AD1/16;ヘキサブラキオン;テネイシン-C;150-225;DFNA56、及びGPである。TNC遺伝子についての外部Idは、HGNC:5318;Entrez Gene:3371;Ensembl:ENSG00000041982;OMIM:187380、及びUniProtKB:P24821である。
【0078】
TNKS又はタンキラーゼは、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、タンキラーゼ、TRF1相互作用アンキリン関連ADP-リボースポリメラーゼ;TRF1相互作用アンキリン関連ADP-リボースポリメラーゼ1;タンパク質ポリ-ADP-リボシルトランスフェラーゼタンキラーゼ-1;ADP-リボシルトランスフェラーゼジフテリア毒素様5;ポリ[ADP-リボース]ポリメラーゼタンキラーゼ-1;ポリ[ADP-リボース]ポリメラーゼ5A;タンキラーゼI;タンキラーゼ-1;PARP5A;TNKS-1;ARTD5;PARPL;TANK1;TINF1;TNKS1;TIN1;TRF1相互作用アンキリン関連ADP-リボースポリメラーゼ;EC2.4.2.30;EC2.4.2.-;PARP-5a;及びPART5である。TNKS遺伝子についての外部Idは、HGNC:11941;Entrez Gene:8658;Ensembl:ENSG00000173273;OMIM:603303、及びUniProtKB:O95271である。
【0079】
TSHZ2又はTeashirt亜鉛フィンガーホメオボックス2は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、亜鉛フィンガータンパク質218;卵巣癌関連タンパク質10-2;Teashirtファミリー亜鉛フィンガー2;Teashirtホモログ2;C20orf17;OVC10-2;ZNF218;TSH2;血清学的に定義された結腸癌抗原33様;20番染色体オープンリーディングフレーム17;細胞成長阻害タンパク質7;及びZABC2である。TSHZ2遺伝子についての外部Idは、HGNC:13010;Entrez Gene:128553;Ensembl:ENSG00000182463;OMIM:614118、及びUniProtKB:Q9NRE2である。
【0080】
VTCN1又はV-セットドメイン含有T細胞活性化阻害体1は、いくつかの異なる名称のもとで知られており、例えば、V-セットドメイン含有T細胞活性化阻害体1;免疫共刺激性タンパク質B7-H4、B7スーパーファミリーメンバー1、B7ファミリーメンバー、H4、B7ホモログ4;B7-H4;B7h.5;B7H4;T細胞共刺激性分子B7x、T-細胞共刺激性分子B7x、タンパク質B7S1;PRO1291;VCTN1;B7S1;及びB7Xであり得ると考えられている。VTCN1遺伝子についての外部Idは、HGNC:28873;Entrez Gene:79679;Ensembl:ENSG00000134258;OMIM:608162;及びUniProtKB:Q7Z7D3である;。
【0081】
WHSC1L1又はNSD3は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、核受容体結合SETドメインタンパク質3;リジンへのメチルトランスフェラーゼ活性を有するWHSC1様1アイソフォーム9;ウォルフ・ヒルショルン症候群候補1様1;ヒストン-リジンN-メチルトランスフェラーゼNSD3;核SETドメイン含有タンパク質3;タンパク質Whistle;EC2.1.1.43;WHSC1L1;ウォルフ・ヒルショルン症候群候補1様タンパク質1;WHSC1様タンパク質1;WHISTLE;Pp14328;KMT3F;及びKMT3Gであり得ると考えられている。NSD3遺伝子についての外部Idは、HGNC:12767;Entrez Gene:54904;Ensembl:ENSG00000147548;OMIM:607083、及びUniProtKB:Q9BZ95である。
【0082】
ZMYM2は、いくつもの異なる名称で知られており、例えば、亜鉛フィンガーMYM型含有2;亜鉛フィンガータンパク質198;骨髄増殖性障害タンパク質における融合;亜鉛フィンガーMYM型タンパク質2;ZNF198;RAMP;FIM;非定型骨髄増殖性障害タンパク質における再構成;非定型骨髄増殖性障害における再構成;亜鉛フィンガー、MYM-2型;SCLL;及びMYMである。ZMYM2遺伝子についての外部Idは、HGNC:12989;Entrez Gene:7750;Ensembl:ENSG00000121741;OMIM:602221、及びUniProtKB:Q9UBW7である。
【0083】
PMEPA1は、いくつもの異なる名称で知られており、例えば、前立腺膜貫通タンパク質、アンドロゲン誘導1;膜貫通、前立腺アンドロゲン誘導RNA;固形腫瘍関連1タンパク質;タンパク質TMEPAI、TMEPAI;STAG1;前立腺膜貫通タンパク質アンドロゲン誘導1;膜貫通前立腺アンドロゲン誘導タンパク質;及び固形腫瘍関連1である。PMEPA1遺伝子についての外部Idは、HGNC:14107;Entrez Gene:56937;Ensembl:ENSG00000124225;OMIM:606564、及びUniProtKB:Q969W9である。
【0084】
RAD51は、いくつかの異なる名称で知られており、例えば、RAD51リコンビナーゼ;BRCA1/BRCA2含有複合体、サブユニット5;DNA修復タンパク質RAD51ホモログ1;RAD51ホモログA;HRAD51;RAD51A;RECA;RAD51ホモログ(RecAホモログ、E.Coli)(S.Cerevisiae);RAD51(S.Cerevisiae)ホモログ(E Coli RecAホモログ);RAD51ホモログ(S.Cerevisiae);RecA、E.Coli、そのホモログ;組換えタンパク質A;RecA様タンパク質;HsT16930;HsRad51;HsRAD51;BRCC5;FANCR、及びMRMV2としても知られている。RAD51遺伝子についての外部Idは、HGNC:9817;Entrez Gene:5888;Ensembl:ENSG00000051180;OMIM:179617;amd UniProtKB:Q06609である。
【0085】
STMN2は、いくつもの異なる名称で知られており、例えば、Stathmin2;上頚神経節-10タンパク質;Stathmin様2;Stathmin-2;SCGN10;SCG10;ニューロン成長関連タンパク質(サイレンサー要素);上頚神経節、神経特異的10;ニューロン特異的成長関連プロテイ;及びプロテインSCG10である。STMN2遺伝子についての外部Idは、HGNC:10577;Entrez Gene:11075;Ensembl:ENSG00000104435;OMIM:600621、及びUniProtKB:Q93045である。
【0086】
様々なNRG1融合遺伝子が、Dhanasekaran et al.Nature Communications 5:5893,2014において、及びJonna et al.,Clin Cancer Res 8/15 2019,25(16)4966-4972において説明されている。
【0087】
本発明は更に、ErbB-2及びErbB-3陽性癌を有するリスクがある対象の治療に使用するための、ErbB-2の細胞外部分を結合する第1の抗原結合部位と、ErbB-3の細胞外部分を結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性抗体であって、癌の細胞が、異なる染色体位置からの配列に融合したNRG1遺伝子の少なくとも一部を含むNRG1融合遺伝子を含み、対象が、従前のErbB-1を受けた前処置癌対象である、二重特異性抗体を提供する;ErbB-2又はErbB-3を標的とした腫瘍治療。
【0088】
ErbB-2及びErbB-3陽性癌を有するリスクがある対象を治療する方法であって、癌の細胞が、異なる染色体位置からの配列に融合したNRG1遺伝子の少なくとも一部を含むNRG1融合遺伝子を含み、対象が、先行化学療法又はErbB-2若しくはErbB-3を標的とした腫瘍治療を受けた前処置癌対象である、方法が更に提供され、方法は、それを必要とする対象に、ErbB-2の細胞外部分を結合する第1の抗原結合部位と、ErbB-3の細胞外部分を結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性抗体を投与することを含む。
【0089】
対象は、化学療法、ErbB-1による治療の結果として癌の寛解にあるとき、上述の癌を有するリスクがある;ErbB-2又はErbB-3を標的とした腫瘍治療。そのような対象は、本発明による二重特異性抗体で予防的に治療されてもよい。
【0090】
本発明による化学療法は、好ましくは、ゲムシタビン、カペシタビン、カルボプラチン、ドセタキセル若しくはパクリタキセルなどのタキサン、5-フルオロウラシル(放射線療法と併用又は非併用)、ビノレルビン、ミトキサントロン、ビンブラスチン、シスプラチン(又はペメトレキセド)、オキサリプラチン、カルボプラチン、イホスファミド、マイトマイシンC、ビンデシン、エトポシド、Folfox(すなわち、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、及びオキサリプラチンの組み合わせ)若しくはFolfiri(すなわち、ロイコボリン、5-フルオロウラシル及びイリノテカンの組み合わせ)、Folfirinox(ロイコボリン、5-フルオロウラシル、イリノテカン及びオキサリプラチンの組み合わせ)又はこれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0091】
好ましい実施形態では、化学療法は、対象のためのゲムシタビン、カペシタビン、5-フルオロウラシル(単独又は放射線療法との併用)、Folfirinox、アルブミン結合パクリタキセルと組み合わせたゲムシタビン、エルロチニブと組み合わせたゲムシタビンを含む膵癌、好ましくは膵管腺癌(PDAC)と診断する。
【0092】
好ましい実施形態では、化学療法は、対象のための白金類似体(シスプラチン、オキサリプラチン及び/又は、カルボプラチンなど)と組み合わせたゲムシタビン、白金類似体(シスプラチン、オキサリプラチン及び/又は、カルボプラチンなど)と組み合わせたタキサン(パクリタキセル又はドセタキセルなど)、白金類似体(シスプラチン、オキサリプラチン及び/又は、カルボプラチンなど)と組み合わせたペメトレキセド。イホスファミド、マイトマイシン(mytomycine)C、ビンデシン、ビンブラスチン、エトポシド及び/又はビノレルビンを含む肺癌、好ましくは非小細胞肺癌(NSCLC)と診断する。対象のための当該化学療法は、肺癌、好ましくは非小細胞肺癌(NSCLC)と診断する抗EGFR薬(エルロチニブ又はセツキシマブなど)、抗血管内皮成長因子療法、ベバシズマブ及び/又はジブ-アフリベルセプト(ziv-aflibercept)などのVEGFトラップと組み合わせることができる。
【0093】
好ましくは、化学療法は、肝臓への転移を含む、膵腺癌又は肝癌などの膵癌の治療におけるゲムシタビン及びカペシタビン及び/又はFolfiriの組み合わせを含むか、又はそれらからなる。癌の細胞は、好ましくは、ATP1B1に融合したNRG1遺伝子を含む。本発明の二重特異性抗体の投与は、750mg抗体の隔週用量を含む。
【0094】
好ましくは、化学療法は、肺癌、好ましくは肺腺癌の治療において、好ましくはペンブロリズマブと組み合わせて投与されるカルボプラチンとペメキシトレド(pemextred)の組み合わせを含むか、又はそれからなる。癌の細胞は、好ましくは、CD74に融合したNRG1遺伝子を含む。本発明の二重特異性抗体の投与は、750mg抗体の隔週用量を含む。
【0095】
好ましくは、化学療法は、膵腺癌の治療におけるゲムシタビンとカペシタビンとの組み合わせを含むか、又はそれからなる。ゲムシタビンとカペシタビンとの組み合わせの後に、好ましくは、本発明の二重特異性抗体が投与される前に、Folfiri投与が後続する。癌の細胞は、好ましくは、CD74に融合したNRG1遺伝子を含む。本発明の二重特異性抗体の投与は、750mg抗体の隔週用量を含む。
【0096】
抗体中の抗原結合部位は、典型的には、可変ドメインに存在する。可変ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。
【0097】
対象は、好ましくは、ErbB-2阻害を標的とする化学療法又は療法を受けたことがある。ErbB-2標的腫瘍治療とも呼ばれるErbB-2シグナル伝達の阻害は、好ましくは、ErbB-2の細胞外部分を結合する抗原結合部位を含む単一特異性二価抗体の投与を含み;若しくはErbB-2のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)又はそれらの組み合わせであり、単一特異性二価抗体は、好ましくはトラスツズマブ、ペルツズマブ、又はトラスツズマブ-エムタンシンであり、ErbB-2 TKIは、好ましくはラパチニブ、カネルチニブ、ネラチニブ、ツカチニブ(イルビニチニブ)、CP-724714、タルロキシチニブ、ムブリチニブ、アファチニブ、バリチニブ、及びダコミチニブ、好ましくはラパチニブ、カネルチニブ、ネラチニブ、ツカチニブ(イルビニチニブ)、ムブリチニブ、アファチニブ、バリチニブ、又はダコミチニブのうちの1つ以上、より好ましくはアファチニブである。
【0098】
本発明に説明される治療における使用のための治療方法又は二重特異性抗体は、好ましくは、細胞がNRG1融合を含むかどうか、又は腫瘍がNRG1融合を有する細胞を含むかどうかを更に決定する。これは、例えば、生検の細胞で行うことができる。様々な方法が利用可能であり、多くは技術分野において公知である。染色体破壊がNRG1融合の場合に発生する領域は、腫瘍がそのようなNRG1融合を含むかどうかを決定するために当業者にとって日常的であることは知られている。1つの方法は、NRG1融合の接合部にまたがるプライマーを用いたPCR増幅によるものである。これは、発生することが知られているNRG1融合について容易に実施することができる。新たな融合も又容易に検出することができる。適切な方法は、例えば、レトロウイルスゲノムの結合部位を見出すために使用される接合クローニング技術によるものである。適切な方法は、LAM-PCRによるものでありSchmidt et al Nature Methods 4,1051-1057(2007)doi:10.1038/nmeth1103及びその中のLAM技術への具体的な参考文献を参照されたい。
【0099】
推定NRG1融合を特定するために利用可能な技術としては、市販の利用可能な技術の中でもとりわけ、アンカーマルチプレックスPCR、nCounter、RT-PCR、トランスクリプトーム分析、FISH、ハイブリッド捕捉ベースの次世代配列決定(NGS)、アンプリコンベースのNGSを含むDNAベースの方法論を含む、RNAベースの方法論がある。
【0100】
癌の細胞上のErbB受容体のレベルを決定するために、様々な方法が利用可能である。例は、免疫組織化学又は蛍光原位置ハイブリッド形成である。いずれも、Dako Denmark A/Sによって市販されている、及び/又はHERmark(登録商標)アッセイを用い、Monogram Biosciencesによって市販されているHercepTest(商標)及び/又はHER2 FISH(pharm Dx(登録商標))は、ErbB-2又はErbB-3細胞表面受容体密度を決定するための適切なアッセイの例である。ErbB-2受容体細胞密度を決定するための他の方法は、当業者に周知である。ErbB-2を決定するためのインビボでの方法も公知であり、例えば、Chernomoridik et al.Mol Imaging.2010 Aug;9(4):192-200、及びArdeshirpour et al.Technol Cancer Res Treat.2014 Oct;13(5):427~434を参照されたい。好ましくは、本明細書に開示される方法は、当該細胞又は腫瘍についてErbB-2細胞表面受容体密度を決定することを更に含む。そのような方法は、当業者に公知である(例えば、van der Woning and van Zoelen Biochem Biophys Res Commun.2009 Jan 9;378(2):285~9を参照されたい)。好ましくは、本明細書に開示される方法は、当該細胞又は腫瘍についてErbB-1細胞表面受容体密度を決定することを更に含む。そのような方法は、当業者に公知である(例えば、EGFR pharmDx(商標)キット(Dako))amd McDonagh et al.Mol Cancer Ther 2012;11:582を参照されたい)。同様の方法を使用して、ErbB-4細胞表面受容体密度を決定することができる。いくつかの実施形態では、ErbB-1、ErbB-2、ErbB-3、及びErbB-4細胞表面受容体密度は、生検腫瘍細胞におけるFACS分析によって決定される。
【0101】
対象に投与されるべき二重特異性抗体の量は、典型的には、治療用ウィンドウ内にあり、これは、治療効果を得るために十分な量が使用されるが、その量は、許容不可能な程度の副作用につながる閾値を超えないことを意味する。所望の治療効果を得るために必要とされる抗体の量が少なくなるほど、治療用ウィンドウは典型的にはより大きくなるであろう。選択された薬用量レベルは、投与経路、投与時間、採用される特定化合物の排泄速度、治療の継続期間、併用される他の薬物、化合物及び/又は材料、治療される対象の齢、性別、体重、容態、全身レベルの健康状態、及び病歴、並びに医療技術分野で周知の同様の因子を含む様々な要因に依存する。薬用量は、ニボルマブの投与レジメンの範囲内又はそれを下回ることができる。
【0102】
本発明の二重特異性抗体に関して、それは、比較的高い用量で良好な安全性プロファイルを有し、したがって大きな治療用ウィンドウを提供し、それを併用療法のための良好なパートナーにする。本発明の二重特異性抗体の投与は、750mgの毎週、隔週又は3週間毎の、好ましくは750mgの隔週又は3週間毎の投与レジメンに従う。投与は、好ましくは、膵癌、NSCLC、又は固形腫瘍に罹患している対象においてであり、NRG1融合を有する固形腫瘍を有するいずれの対象も含み、そのような対象は、化学療法又はErbB-2若しくはErbB-3ターゲティング薬又はTKIの投与で進行している。或いは、投与レジメンは、400mgの毎週の一定用量の投与を含むことに後続され、好ましくは800mgの単回投与後に開始する。この代替投与レジメンに続いて、本発明の二重特異性抗体は、好ましくは、400mgの週用量で3週間投与され、続いて投与せずに1週間とする。次に、400mgの毎週の一定の薬用量からなる4週間の期間の1つ以上のサイクル、続いて投与なしで1週間が後続する。これは、好ましくは、治療効果が観察されるまで続く。
【0103】
投与は、好ましくは、完全な用量に到達するための本発明の二重特異性抗体の2回の注入からなる静脈内注射を、好ましくは360mg超の抗体を投与するときに包含する。或いは、完全な用量からなる単回注入は、例えば、360mg以下の抗体を投与するときに、より低い薬用量について与えられ得る。事前投薬は、おそらく、注入関連反応を軽減するために投与レジメンに含んだ。
【0104】
好ましい実施形態では、治療は、NSCLC、好ましくは肺及び胸膜における転移性疾患、並びにアファチニブ前処置を受けた患者のErbB-2の細胞外部分を結合する第1の抗原結合部位と、ErbB-3の細胞外部分に結合する第2の抗原結合部位とを有するSDC4-NRG1融合を有する癌細胞を有する対象への二重特異性抗体の投与を含む。好ましくは、治療は、腫瘍の低減を含む、サイズ若しくは病変の点での腫瘍の安定化、又は更なる腫瘍成長の防止を含む。好ましくは、治療又は投与は、毎週のレジメンに対する本発明による二重特異性抗体を用いるものであり、少なくとも1、2、4、8又は少なくとも12か月の期間にわたって進む。好ましくは、800mgの初回投与後に毎週400mgの一定用量が始まる週1回のサイクルを含む投与レジメンに従う。3週目から、本発明の二重特異性抗体は、400mgの週用量で3週間与えられ、続いて本発明の二重特異性抗体の投与がない1週間が後続する。或いは、4時間の間にわたる750mgの注入の初回投与後に750mgの一定用量が始まる2週間のサイクルを含む投与レジメンに続いて、4週間サイクルの750mgの隔週の2時間注入に従う。更なる代替法は、対象当たり750mgの一定用量の3週間毎の投与を含む。
【0105】
好ましくは、診断は、標的配列決定法を使用した分子プロファイリング、融合、挿入/欠失(インデル)、単一ヌクレオチド変異体及び/又はコピー数変動を含む、最後の1つのバイオマーカーの分析を包含する。好ましくは、腫瘍ゲノムは、EGFR、KRAS、cKIT-BRCA1-2、MET、ROS、RET、ALKからなる群から選択される1つ以上の遺伝子に変異がないことを示す。
【0106】
好ましくは、疾患進行は、CTスキャンを用いることによる肺内での抗腫瘍活性の測定並びにRECIST第1.1版による評価で、客観的な完全奏効率(ORR)、応答の持続時間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)及び生存率を決定することを含む。好ましくは、ErbB-2の細胞外部分を結合する第1の抗原結合部位と、ErbB-3の細胞外部分を結合する第2の抗原結合部位とを有する二重特異性抗体、特にMF3958×MF3178は、サイズ若しくは病変に関して腫瘍を安定化させるか、又は治療は更なる腫瘍成長を防止する。好ましくは、治療は、薬物関連毒性を伴わないか、又は実際に薬物関連であるか若しくはそれが疑われるグレード3~5の有害事象の発生が限定された良好な安全性プロファイルを有する。
【0107】
二重特異性抗体は、医薬として許容され得る担体、希釈剤、又は賦形剤と、追加の任意の活性薬とを含む医薬組成物として製剤することができる。抗体及び抗体を含む組成物は、非経口投与、経腸投与、及び局所投与を含むいずれかの経路によって投与することができる。非経口投与は、通常、注射によるものであり、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、腫瘍内、及び胸骨内の注射及び注入が含まれる。
【0108】
本開示は、本明細書に説明する方法及び治療における使用のための二重特異性抗体を提供する。適切な二重特異性抗体は、ErbB-2を結合する第1の抗原結合部位と、ErbB-3を結合する第2の抗原結合部位とを含む。二重特異性抗体は、ErbB-2及びErbB-3陽性細胞に対するErbB-3のリガンド誘導受容体機能を低減するか、並びに/若しくはErbB-2及びErbB-3ヘテロ二量体化を破壊するか、又はそうすることができる。好ましい抗体及びそれらの調製は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/130173に開示されている。国際公開第2015/130173における例は、リガンド結合及びエピトープマッピングなどの抗体のいくつかの特性を更に説明する。
【0109】
本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、同義で用いられ、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ブタなどの哺乳動物(例えば、ヒトの患者など、癌を患っている患者)を指す。
【0110】
本明細書で使用される「治療する」、「治療すること」、及び「治療」という用語は、活性薬又は活性薬の組み合わせを、疾患又はその症状を治癒させる又は改善する目的で対象に行うか、又は投与する何らかの種類の介入又はプロセスを指す。これは、疾患と関係する症状、合併症、容態、又は生化学的指標を逆転、緩和、改善、阻害、又は遅延させること、並びに疾患と関係する症状、合併症、容態、又は生化学的指標の発症、進行、発達、重症度、又は再発を防止することを含む。
【0111】
本明細書で使用される場合、「有効治療」又は「陽性治療反応」は、有益な効果、例えば、癌などの疾患又は障害の少なくとも1つの症状の回復をもたらす治療を指す。有益な効果により、本方法による療法の開始前に行われた測定又は観察を超える改善などの、基準を超える改善された状態を得ることができる。例えば、疾患の臨床的若しくは診断的症状の減少若しくは排除、又は癌のマーカーの減少若しくは排除によって証明されるように、有益な効果により、任意の臨床段階での対象における癌の進行を減速、安定化、停止、又は逆転させる状態を得ることができる。有効治療により、例えば、腫瘍サイズを減少、循環腫瘍細胞の存在を減少、腫瘍の転移を低減若しくは防止、腫瘍成長を減速若しくは阻止、及び/又は腫瘍の再発若しくは再燃を防止若しくは遅延させることができる。
【0112】
「治療量」又は「有効量」という用語は、所望の生物学的、治療的、及び/又は予防的結果を提供する薬剤又は薬剤の組み合わせの量を指す。その結果は、疾患の1つ以上の兆候、症状、又は原因の低減、回復、緩解、減少、遅延、及び/又は緩和、或るいは生態系における他の所望の変化であり得る。いくつかの実施形態では、治療量は、腫瘍の発達を遅延させるのに十分な量である。いくつかの実施形態において、治療量は、腫瘍の再発を防止又は遅延させるのに十分な量である。
【0113】
薬物又は組成物の治療量は、(i)癌細胞の数を低減する;(ii)腫瘍のサイズを低減する;(iii)末梢器官への癌細胞浸潤を、ある程度阻害、阻止、減速し、停止させ得る;(iv)腫瘍転移を阻害する;(v)腫瘍成長を阻害する;(vi)腫瘍の発生及び/又は再発を防止又は遅延させる;及び/又は(vii)癌に関連する1つ以上の症状をある程度和らげることができる。
【0114】
治療量は、治療される個体の疾患状態、齢、性別、及び体重、並びに個体における所望の応答を誘起する薬剤又は薬剤の組み合わせの能力などの要因によって変化し得る。治療量は、1回以上の投与で投与することができる。治療量は又、薬剤又は薬剤の組み合わせの何らかの毒性の又は有害な作用と治療上有益な作用とのバランスをとる量も含む。
【0115】
本明細書で使用される場合、「抗原結合部位」という用語は、抗原に結合することができる二重特異性抗体に由来する、好ましくはそれに存在する部位を指す。抗原結合部位は、典型的には、抗体の可変ドメインによって形成され、それに存在する。可変ドメインは、当該抗原結合部位を含有する。抗原に結合する可変ドメインは、抗原に結合する抗原結合部位を含む可変ドメインである。
【0116】
一実施形態では、抗体可変ドメインは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。抗原結合部位は、組み合わされたVH/VL可変ドメイン、又はVH領域のみ、又はVL領域のみに存在し得る。抗原結合部位が可変ドメインの2つの領域のうちの1つのみに存在する場合、対応する可変領域は、結合可変領域の折り畳み及び/又は安定性に寄与し得るが、抗原自体の結合にそれほど寄与しない。
【0117】
本明細書で使用するとき、抗原結合は、抗体のその抗原に対する典型的な結合能力を指す。ErbB-2に結合する抗原結合部位を含む抗体は、ErbB-2に結合し、そうでなければ同一の条件下で、同じ種の相同受容体ErbB-1及びErbB-4に少なくとも100倍低く結合する。ErbB-3に結合する抗原結合部位を含む抗体は、ErbB-3に結合し、そうでなければ同一の条件下で、同じ種の相同受容体ErbB-1及びErbB-4には結合しない。
【0118】
ErbBファミリーが細胞表面受容体のファミリーであることを考慮すると、結合は、典型的には、受容体(複数可)を発現する細胞で評価される。抗体の抗原に対する結合は、様々な方法で評価することができる。1つの方法は、抗体を抗原(好ましくは、抗原を発現する細胞)とインキュベートし、未結合の抗体を除去し(好ましくは、洗浄工程によって)、結合した抗体に結合する標識抗体によって結合抗体を検出することである。
【0119】
抗体による抗原結合は、典型的には、抗体の相補性領域と抗原及び可変ドメインとの両方の特定の三次元構造を介して介在され、これらの2つの構造が、抗体のランダムで非特異的な粘着とは対照的に、正確に一緒に結合する(ロックとキーとに類似した相互作用)ことを可能にする。抗体は、典型的には、抗原のエピトープを認識し、このようなエピトープは他の化合物中に同様に存在してもよいので、ErbB-2及び/又はErbB-3を結合する本発明による抗体は、そのような他の化合物が同じエピトープを含有する場合、他のタンパク質も同様に認識し得る。したがって、用語「結合」は、同じエピトープを含有する別の1つ又は複数のタンパク質に対する抗体の結合を排除するものではない。このような他のタンパク質(複数可)は、好ましくはヒトタンパク質ではない。本明細書で定義されるErbB-2抗原結合部位及びErbB-3抗原結合部位は、典型的には、生後、好ましくは成ヒトにおいて細胞の膜上の他のタンパク質に結合しない。本明細書に開示される二重特異性抗体は、典型的には、ErbB-2及びErbB-3を少なくとも1×10e-6Mの結合親和性で結合することができる。
【0120】
本明細書で使用される「結合に干渉する」という用語は、抗体がErbB-3上のエピトープに向けられ、抗体がErbB-3への結合のためにリガンドと競合することを意味する。抗体は、リガンド結合を減少させ得、これがErbB-3に既に結合しているときはリガンドを置き換えるか、又は例えば立体障害を経て、リガンドがErbB-3に結合することができるのを少なくとも部分的に防止し得る。
【0121】
本明細書で使用するとき、用語「抗体」は、好ましくは、抗原上のエピトープに結合する1つ以上の可変ドメインを含有するタンパク質の免疫グロブリンクラスに属するタンパク質分子を意味し、このようなドメインは、抗体の可変ドメインに由来するか又は配列相同性を共有する。治療用の抗体は、好ましくは、可能な限り治療される対象の天然抗体(例えば、ヒト対象の場合のヒト抗体)に近いものである。抗体結合は、特異性及び親和性の観点から表すことができる。特異性は、どの抗原又はそのエピトープが結合ドメインによって特異的に結合されるかを決める。親和性は、特定の抗原又はエピトープへの結合の強度についての尺度である。典型的には、治療用途のための抗体は、最大1×10e-10M以上の親和性を有する。本発明の二重特異性抗体のような抗体は、天然抗体の定常ドメイン(Fc部分)を含む。本発明の抗体は、典型的には、二重特異性完全長抗体、好ましくはヒトIgGサブクラスである。好ましくは、本明細書に開示される抗体は、ヒトIgG1サブクラスのものである。そのような抗体は、良好なADCC特性を有しており、ヒトへのインビボでの投与の際に好ましい半減期を有しており、クローン細胞の共発現の際にホモ二量体を上回るヘテロ二量体を優先的に形成する修飾された重鎖を準備することができるCH3工学技術が存在する。
【0122】
本発明に開示する抗体は、好ましくは「完全長」抗体である。「完全長抗体」という用語は、本質的に完全な抗体を含むものとして定義されるが、必ずしもインタクトな抗体の全ての機能を有するわけではない。誤解を避けるために、完全長抗体は、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む。各鎖は、定常(C)及び可変(V)領域を含有し、これは、CH1、CH2、CH3、VH、及びCL、VLと呼ばれるドメインに分解することができる(それぞれのドメインの適切なアミノ酸配列を
図1及び2に示す)。抗体は、Fab部分に含まれる可変ドメインを介して抗原に結合し、結合後、定常ドメイン、主にFc部分を介して免疫系の分子及び細胞と相互作用することができる。「可変ドメイン」、「VH/VL対」、「VH/VL」という用語は、本明細書では互換的に使用される。本発明による完全長抗体は、所望の特性を提供する変異が存在し得る抗体を包含する。このような変異は、領域のうちのいずれかの実質的な部分の欠失であるべきではない。しかしながら、得られる抗体の結合特性を本質的に変えることなく、1つ又はいくつかのアミノ酸残基が欠失している抗体は、「完全長抗体」という用語に含まれる。例えば、IgG抗体は、定常領域において、1~20個のアミノ酸残基の挿入、欠失、又はこれらの組み合わせを有することができる。例えば、抗体のADCC活性は、抗体自体が低いADCC活性を有する場合には、抗体の定常領域をわずかに修飾することにより向上させることができる(Junttila,T.T.,K.Parsons,et al.(2010).「Superior In vivo Efficacy of Afucosylated Trastuzumab in the Treatment of HER2-Amplified Breast Cancer.」Cancer Research 70(11):4481-4489を参照されたい)。
【0123】
完全長IgG抗体は、それらの好ましい半減期、及び免疫原性の理由から完全な自家(ヒト)分子に近いままであるという必要性のために好ましい。本明細書に開示される抗体は、好ましくは二重特異性IgG抗体、好ましくは二重特異性完全長IgG1抗体である。IgG1は、ヒトにおけるその長い循環半減期に基づいて優勢である。ヒトにおける何らかの免疫原性を防止するために、二重特異性IgG抗体は、ヒトIgG1であることが好ましい。
【0124】
「二重特異性」(bispecific(bs))という用語は、抗体の1つの部分(先に定義)が抗原上の1つのエピトープに結合する一方で、第2の部分が、異なるエピトープに結合することを意味する。異なるエピトープは、典型的には、異なる抗原上に存在する。二重特異性抗体の重鎖可変領域は、典型的には互いに異なるのに対し、軽鎖可変領域は、好ましくは同じである。異なる重鎖可変領域が同じ又は共通軽鎖と結合している二重特異性抗体は、共通軽鎖を有する二重特異性抗体とも呼ばれる。本明細書に説明する二重特異性抗体は、典型的には、ErbB-2を結合する1つの可変ドメインと、ErbB-3を結合する別の可変ドメインとを含む。
【0125】
好ましい二重特異性抗体は、単一細胞における2つの異なる重鎖及び共通軽鎖の共発現によって得ることができる。野生型CH3ドメインが使用される場合、2つの異なる重鎖と共通軽鎖との共発現は、3つの異なる種AA、AB及びBBをもたらすことになる。所望の二重特異性生成物(AB)の割合を増加させるために、CH3遺伝子操作を使用することができ、又は言い換えれば、以下に定義されるように、適合性ヘテロ二量体化ドメインを有する重鎖を使用することができる。適切な適合性CH3ヘテロ二量体化ドメインを
図2d及び2eに示す。
【0126】
本明細書で使用する場合、「適合性ヘテロ二量体化ドメイン」という用語は、遺伝子操作ドメインA’が遺伝子操作ドメインB’を有するヘテロ二量体を優先的に形成する、及びその逆も又真であるのに対し、A’-A’間及びB’-B’間のホモ二量体化が減少するように遺伝子操作された、タンパク質ドメインを指す。
【0127】
「共通軽鎖」という用語は、完全長抗体の結合特異性が影響を受けない一方で、同一であってもよいか、又はいくつかのアミノ酸配列差を有してもよい軽鎖を指す。例えば、保存的なアミノ酸の変化、重鎖と対形成するときに結合特異性に寄与しないか又は部分的にのみ寄与する領域におけるアミノ酸の変化などを導入及び試験することによって、同一ではないが依然として機能的に同等である軽鎖を調製又は見出すことができる。「再構成された」という用語の追加の有無にかかわらず、「共通軽鎖」、「共通VL」、「単一軽鎖」、「単一VL」という用語は、全て本明細書で互換的に使用される。
【0128】
共通軽鎖(可変領域)は、好ましくは生殖細胞系列配列を有する。好ましい生殖細胞系列配列は、ヒトレパートリーで頻繁に使用され、良好な熱力学的安定性、収率、及び溶解度を有する軽鎖可変領域である。好ましい実施形態では、軽鎖は、0~10個の、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はこれらの組み合わせを有する、配列1C「共通軽鎖IGKV1ー39/jk1」において示すようなIgVκ1-39
*01遺伝子セグメントのアミノ酸配列を含む軽鎖領域を含む。IgVκ1-39は、免疫グロブリン可変カッパ1-39遺伝子についての短縮形である。この遺伝子は又、免疫グロブリンカッパ可変1-39、IGKV139;又はIGKV1-39である。この遺伝子についての外部Idsは、HGNC:5740、Entrez Gene:28930;Ensembl:ENSG00000242371である。IGKV1-39の可変領域を
図1に列挙する。V領域は、5つのJ領域のうちの1つと組み合わせることができる。
図1は、J領域と組み合わせたIgVκ1-39についての2つの好ましい配列を説明している。接合された配列は、IGKV1-39/jk1及びIGKV1-39/jk5として示され、代替名は、IgVκ1-39
*01/IGJκ1
*01又はIgVκ1-39
*01/IGJκ5
*01である(ワールドワイドウェブのimgt.orgにあるIMGTデータベースによる命名法)。
【0129】
軽鎖可変領域を含むIgVκ1-39*01は生殖細胞系列配列であることが好ましい。軽鎖可変領域を含むIGJκ*01又は/IGJκ5*01は、生殖細胞系列配列であることが更に好ましい。好ましい実施形態では、IGKV1-39/jk1又はIGKV1-39/jk5軽鎖可変領域は、生殖細胞系列配列である。
【0130】
好ましい実施形態では、軽鎖可変領域は、生殖系列IgVκ1-39*01を含む。好ましい実施形態では、軽鎖可変領域は、カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又はIgVκ1-39*01/IGJκ5*01を含む。好ましい実施形態では、IgVκ1-39*01/IGJκ1*01である。軽鎖可変領域は、好ましくは、生殖系列カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又は生殖系列カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ5*01、好ましくは生殖系列IgVκ1-39*01/IGJκ1*01を含む。
【0131】
明らかに、当業者は、「共通」とは、アミノ酸配列が同一ではない軽鎖の機能的等価物を指すことを認識するであろう。当該軽鎖の多くの変異体が存在し、機能的結合領域の形成に実質的に影響を与えない変異(欠失、置換、付加)が存在する。軽鎖は又、本明細書で先に明示した、1~5個のアミノ酸の挿入、欠失、置換、付加又はこれらの組み合わせを有する軽鎖であることができる。
【0132】
好ましくは、第1の抗原結合部位及び当該第2の抗原結合部位の両方は、配列(RASQSISSYLN)を有するCDR1と、配列(AASSLQS)を有するCDR2と、配列(QQSYSTPPT)を有するCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む。
【0133】
本明細書に開示される抗体は、ErbB-2及びErbB-3陽性細胞に対するErbB-3のリガンド誘導受容体機能を低減することができる。過剰なErbB-2の存在下で、ErbB-2/ErbB-3ヘテロ二量体は、ヘテロ二量体中のErbB-3鎖のための検出可能なリガンドの非存在下で発現細胞に成長シグナルを提供し得る。このErbB-3受容体機能は、本明細書では、ErbB-3のリガンド非依存性受容体機能と呼ばれる。ErbB-2/ErbB-3ヘテロ二量体は又、ErbB-3リガンドの存在下でも発現細胞に成長シグナルを提供する。このErbB-3受容体機能は、本明細書では、ErbB-3のリガンド誘導受容体機能と呼ばれる。
【0134】
本明細書で使用される「ErbB-3リガンド」という用語は、ErbB-3を結合し及び活性化させるポリペプチドを指す。ErbB-3リガンドの例としては、ニューレグリン1(NRG)及びニューレグリン2、ベータセルリン、ヘパリン結合上皮成長因子、並びにエピレギュリンがあるが、これらに限定されない。この用語は、天然に存在するポリペプチドの生物学的に活性のある断片及び/又は変異体を含む。
【0135】
好ましくは、ErbB-3のリガンド誘導受容体機能は、ErbB-2及びErbB-3陽性細胞のErbB-3リガンド誘導成長である。好ましい実施形態では、当該細胞は、MCF-7細胞(ATCC(登録商標)HTB-22(商標));SKBR3(ATCC(登録商標)HTB-30(商標))細胞;NCI-87(ATCC(登録商標)CRL-5822(商標))細胞;BxPC-3-luc2細胞(Perkin Elmer 125058)、BT-474細胞(ATCC(登録商標)HTB-20(商標))又はJIMT 1細胞(DSMZ番号:ACC589)である。
【0136】
本明細書で使用される場合、リガンド誘導受容体機能は、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30、40、50 60、又は少なくとも70%低減され、特に好ましい実施形態では、リガンド誘導受容体機能は、80、より好ましくは90%低減される。この低減は、好ましくは、本明細書に開示される二重特異性抗体の存在下でリガンド誘導受容体機能を決定すること、及びそれを抗体の非存在下でその他の同一の条件下で同じ機能と比較することによって決定される。この条件は、少なくともErbB-3リガンドの存在を含む。存在する配位子の量は、好ましくは、ErbB-2及びErbB-3陽性細胞株の最大成長の半分を誘導する量である。この試験のためのErbB-2及びErbB-3陽性細胞株は、好ましくはMCF-7細胞株(ATCC(登録商標)HTB-22(商標))、SKBR3細胞株(ATCC(登録商標)HTB-30(商標))細胞、JIMT 1細胞株(DSMZ ACC 589)又はNCI-87細胞株(ATCC(登録商標)CRL-5822(商標))である。ErbB-3リガンド誘導受容体機能を決定するための試験及び/又はリガンドは、好ましくは、実施例で明示されるErbB-3リガンド誘発成長低減のための試験である。
【0137】
ErbB-2タンパク質は、いくつかのドメインを含む(Landgraf,R Breast Cancer Res.2007;9(1):202-の
図1を参照のこと)。細胞外ドメインは、ドメインI~IVと呼ばれる。本明細書に説明される抗体の抗原結合部位のそれぞれのドメインへの結合の場所は既にマッピングされている。ErbB-2(第1の抗原結合部位)のドメインI又はドメインIVを結合する抗原結合部位(第1の抗原結合部位)を有する二重特異性抗体は、様々な軽鎖と組み合わせたときに、ErbB-2に対する有意な結合特異性及び親和性を維持する重鎖可変領域を含む。ErbB-2(第1の抗原結合部位)のドメインI又はドメインIVを結合する抗原結合部位(第1の抗原結合部位)と、ErbB-3(第2の抗原結合部位)のための抗原結合部位とを有する二重特異性抗体は、ErbB-2の別の細胞外ドメインに結合する抗原結合部位(第1の抗原結合部位)を含む二重特異性抗体と比較したとき、ErbB-3のリガンド誘導受容体機能を低減するのにより有効である。ErbB-2を結合する抗原結合部位(第1の抗原結合部位)を含む二重特異性抗体であって、当該抗原結合部位がErbB-2のドメインI又はドメインIVに結合する、二重特異性抗体が好ましい。好ましくは、当該抗原結合部位は、ErbB-2のドメインIVに結合する。好ましい抗体は、ErbB-2のドメインIを結合する第1の抗原結合部位と、ErbB-3のドメインIIIを結合する第2の抗原結合部位とを含む。
【0138】
1つの好ましい実施形態では、当該抗体は、T144、T164、R166、P172、G179、S180及びR181からなる群から選択されるErbB-2のドメインIの少なくとも1つのアミノ酸を結合する抗原結合部位と、T144、T164、R166、P172、G179、S180又はR181から約5以内のアミノ酸位置に位置する表面露出アミノ酸残基とを含む。
【0139】
1つの好ましい実施形態では、当該抗体は好ましくは、R426からなる群から選択されるErbB-3のドメインIIIの少なくとも1つのアミノ酸を結合する抗原結合部位と、天然ErbB-3におけるR426から11.2A以内に位置する表面露出アミノ酸残基とを含む。
【0140】
ErbB-2を結合し、ADCCを更に含む抗原結合部位(第1の抗原結合部位)を有する二重特異性抗体は、特にインビボで有意なADCC活性を有さなかった他のErbB-2結合抗体よりも有効である。それゆえ、ADCCを呈する二重特異性抗体が好ましい。当該第1の抗原結合部位がErbB-2のドメインIVに結合する抗体が、固有のADCC活性を有することが見出された。固有のADCC活性が低いドメインI結合ErbB-2結合抗体は、ADCC活性Fc領域が、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、B細胞、及び好中球などの免疫エフェクター細胞上の異なる受容体に結合することによって抗体機能に介在するのを増強するように遺伝子操作することができる。CD16A(FcγRIIIA)及びCD32A(FcγRIIA)などのこれらの受容体のいくつかは、細胞を活性化して抗原に対する応答を構築する。CD32Bなどの他の受容体は、免疫細胞の活性化を阻害する。より高い選択性を有する活性化受容体に結合するFc領域を(アミノ酸置換を導入することにより)操作することによって、抗癌Mabによって所望される細胞傷害性活性に介在する能力がより大きな抗体を作製することができる。抗体のADCCを増強するための1つの技術は、アフコシル化である。(Junttila,T.T.,K.Parsons,et al.(2010).「Superior In vivo Efficacy of Afucosylated Trastuzumab in the Treatment of HER2-Amplified Breast Cancer.」Cancer Research 70(11):4481-4489を参照されたい)。それゆえ、本発明に開示されるアフコシル化された二重特異性抗体が更に提供される。或いは、又はこれに加えて、例えば、糖鎖工学及び突然変異誘発を含む複数の他の戦略を使用して、ADCC増強を達成することができ、これらは全て、低親和性活性化FcγRIIIaに対するFc結合を改善し、かつ/又は低親和性抑制性FcγRIIbへの結合を低減しようとする。
【0141】
ADCCの誘発における抗体又はエフェクター細胞の有効性を決定するための、複数のインビトロ方法が存在する。これらはとりわけ、クロム-51[Cr51]放出アッセイ、ユーロピウム[Eu]放出アッセイ、及び硫黄-35[S35]放出アッセイである。通常、ある特定の表面曝露抗原を発現する標識された標的細胞株は、その抗原に特異的な抗体でインキュベートされる。洗浄後、Fc受容体であるCD16を発現するエフェクター細胞は典型的には、抗体標識標的細胞と共にインキュベートされる。標的細胞の溶解はその後、典型的にはシンチレーションカウンタ又は分光測光による細胞内標識の放出によって測定される。
【0142】
好ましい二重特異性抗体では、ErbB3陽性細胞に対する当該第2の抗原結合部位の親和性は、ErbB-2陽性細胞に対する当該第1の抗原結合部位の親和性と等しいか、又は好ましくはより高い。ErbB-3陽性細胞に対する当該第2の抗原結合部位の親和性(KD)は、好ましくは2.0nM以下であり、より好ましくは、1.5nM以下、より好ましくは、1.39nM以下、より好ましくは、0.99nM以下である。好ましい一実施形態では、SK BR 3細胞上のErbB-3に対する当該第2の抗原結合部位の親和性は、2.0nM以下であり、より好ましくは、1.5nM以下、より好ましくは、1.39nM以下、好ましくは、0.99nM以下である。一実施形態では、当該親和性は、1.39~0.59nMの範囲内である。好ましい一実施形態では、BT 474細胞上のErbB-3に対する当該第2の抗原結合部位の親和性は、2.0nM以下であり、より好ましくは、1.5nM以下、より好ましくは、1.0nM以下、より好ましくは、0.5nM未満、より好ましくは、0.31nM以下、より好ましくは、0.23nM以下である。一実施形態では、当該親和性(KD)は、0.31~0.15nMの範囲内である。上述した親和性は、好ましくは、国際公開第2015/130173の実施例において説明されるように、定常状態の細胞親和性の測定値を使用して測定されるものであり、放射性標識抗体を使用して細胞が4℃でインキュベートされ、その後、細胞に結合した放射能が測定される。
【0143】
ErbB-2陽性細胞に対する当該第1の抗原結合部位の親和性(KD)は、好ましくは5.0nM以下、より好ましくは4.5nM以下、より好ましくは3.9nM以下である。好ましい一実施形態では、SK BR 3細胞上のErbB-2に対する当該第1の抗原結合部位の親和性は、5.0nM以下であり、好ましくは、4.5nM以下、より好ましくは、4.0nM以下、より好ましくは、3.5nM以下、より好ましくは、3.0nM以下、より好ましくは、2.3nM以下である。一実施形態では、当該親和性は、3.0~1.6nMの範囲内である。1つの好ましい実施形態では、BT474細胞上のErbB-2に対する当該第1の抗原結合部位の親和性は、5.0nM以下、好ましくは4.5nM以下、より好ましくは3.9nM以下である。一実施形態では、当該親和性は、4.5~3.3nMの範囲内である。上述した親和性は、好ましくは、国際公開第2015/130173の実施例において説明されるように、定常状態の細胞親和性の測定値を使用して測定されるものであり、放射性標識抗体を使用して細胞が4℃でインキュベートされ、その後、細胞に結合した放射能が測定される。
【0144】
好ましくは、開示された方法で使用される二重特異性抗体は、心筋細胞の生存に有意に影響を及ぼさない。心毒性は、ErbB-2ターゲティング療法における公知の危険因子であり、トラスツズマブがアントラサイクリンと併用されると、合併症の頻度が高まり、それにより心臓のストレスを誘発する。
【0145】
本明細書に開示される二重特異性抗体は、好ましくはヒトで使用され、したがって、好ましい抗体はヒト又はヒト化抗体である。ポリペプチドに対するヒトの寛容は、多くの異なる態様によって管理される。免疫は、T細胞に媒介されるか、B細胞に媒介されるか、又は他のものに媒介されるものであり、ポリペプチドに対するヒトの寛容に包含される変数のうちの1つである。二重特異性抗体の定常領域は、好ましくはヒト定常領域である。この定常領域は、1つ以上の、好ましくは10個以下の、好ましくは5個以下の、天然に存在するヒト抗体の定常領域とは異なるアミノ酸を含有することができる。定常部分は、天然に存在するヒト抗体から完全に由来することが好ましい。本明細書で産生される様々な抗体は、ヒト抗体可変ドメインライブラリーに由来する。したがって、これらの可変ドメインはヒトである。独自のCDR領域は、ヒトに由来してもよく、合成であってもよく、又は別の生物に由来してもよい。この可変領域は、これが、CDR領域を除いて、天然に存在するヒト抗体の可変領域のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する場合、ヒト可変領域と見なされる。抗体におけるErbB-2結合VH、ErbB-3結合VH、又は軽鎖の可変領域は、1つ以上の、好ましくは、10個以下、好ましくは5個以下の、天然に存在するヒト抗体の可変領域とは異なるアミノ酸を含有してもよく、CDR領域のアミノ酸配列における考えられる差異は数に入れない。このような変異は又、体細胞超変異という状況下で本質的に生じる。
【0146】
抗体は、少なくとも重鎖可変領域に関して、様々な動物種に由来し得る。例えば、ネズミ重鎖可変領域をヒト化することが一般的なやり方である。これを達成することができる様々な方法が存在し、その中には、マウス重鎖可変領域の3-D構造と一致する3D構造を有するヒト重鎖可変領域へのCDR移植;好ましくは、既知の又は疑われるT細胞若しくはB細胞エピトープをマウス重鎖可変領域から除去することによって行われる、マウス重鎖可変領域の脱免疫化がある。除去は、典型的には、エピトープの配列がもはやT細胞若しくはB細胞エピトープではないように、エピトープの配列が修飾されるように、エピトープ中の1つ以上のアミノ酸を別の(典型的には保存的な)アミノ酸に置換することによる。
【0147】
そのような脱免疫化マウス重鎖可変領域は、元のマウス重鎖可変領域よりもヒトにおいて免疫原性が低い。好ましくは、可変領域又はドメインは、例えばベニヤ化など、更にヒト化される。ベニアリング技術を使用することにより、免疫系によって容易に遭遇する外部残基は、ヒト残基と選択的に置き換えられて、弱免疫原性又は実質的に非免疫原性のベニヤ化表面のいずれかを含むハイブリッド分子を提供する。本発明で使用される動物は、好ましくは哺乳動物、より好ましくは霊長類、最も好ましくはヒトである。
【0148】
本明細書に開示される二重特異性抗体は、好ましくは、ヒト抗体の定常領域を含む。それらの重鎖定常ドメインの違いに従って、抗体は5つのクラス、又はアイソタイプ:IgG、IgA、IgM、IgD、及びIgEに分類される。これらのクラス又はアイソタイプは、対応するギリシャ文字で命名される当該重鎖のうちの少なくとも1つを含む。好ましくは、定常領域は、IgG定常領域、より好ましくはIgG1定常領域、好ましくは変異IgG1定常領域を含む。IgG1の定常領域におけるいくつかの変化は、例えば、アロタイプG1m1、17及びG1m3など、天然であり、及び/又は得られる抗体の免疫学的特性を変化させることなく許容される。典型的には、約1~10個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はこれらの組み合わせが、定常領域で許容される。
【0149】
本明細書に開示されるような好ましい二重特異性抗体は、以下を含む:
- MF2926、MF2930、MF1849からなる群から選択されるErbB2特異的重鎖可変領域の少なくともCDR3配列、好ましくは少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列、又は少なくとも重鎖可変領域配列、列挙された重鎖可変領域配列とは最大で15個のアミノ酸、好ましくは最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸、より好ましくは最大で1、2、3、4、又は5個のアミノ酸が異なっているMF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003及びMF1898、又は重鎖可変領域配列、並びに/或いは
- MF3178;MF3176;MF3163;MF3099;MF3307;MF6055;MF6056;MF6057;MF6058;MF6059;MF6060;MF6061;MF6062;MF6063;MF6064;MF6065;MF6066;MF6067;MF6068;MF6069;MF6070;MF6071;MF6072;MF6073及びMF6074からなる群から選択されるErbB3特異的重鎖可変領域の少なくともCDR3配列、好ましくは少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列、又は少なくとも重鎖可変領域配列、又は列挙された重鎖可変領域配列から最大で15アミノ酸、好ましくは最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10アミノ酸、より好ましくは最大で1、2、3、4、若しくは5アミノ酸が異なる重鎖可変領域配列。
【0150】
CDR配列は例えば、最適化する目的のため、好ましくは抗体の結合効力又は安定性を向上させるために変化させられる。最適化は例えば、得られた抗体の安定性及び/又は結合親和性が好ましくは試験された後に、並びに向上したErbB-2特異的又はErbB-3特異的CDR配列が好ましくは選択された後に、変異誘発手順により実施される。当業者は、本発明の少なくとも1つの変更したCDR配列を含む抗体変異体を生成することが十分可能である。例えば、保存的アミノ酸置換が適用される。保存的アミノ酸置換の例としては、イソロイシン、バリン、ロイシン、又はメチオニンなどの1つの疎水性残基の、別の疎水性残基への置換、並びに1つの極性残基の、別の極性残基への置換、例えば、アルギニンのリジンへの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸への置換、又はグルタミンのアスパラギンへの置換などがある。
【0151】
好ましい抗体は、ErbB-2を結合する可変ドメインを含み、当該可変ドメインのVH鎖は、VH鎖MF2926;MF2930;MF1849;MF2973;MF3004;MF3958(ヒト化MF2971である);MF2971;MF3025;MF2916;MF3991(ヒト化MF3004である);MF3031;MF2889;MF2913;MF1847;MF3001、MF3003、若しくはMF1898のアミノ酸配列;又はVH鎖MF2926;MF2930;MF1849;MF2973;MF3004;MF3958(ヒト化MF2971である);MF2971;MF3025;MF2916;MF3991(ヒト化MF3004である);MF3031;MF2889;MF2913;MF1847;MF3001、MF3003若しくはMF1898のアミノ酸配列を含み、上述のVH鎖配列に関して、最大で15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10より好ましくは最大で1、2、3、4又は5アミノ酸の挿入、欠失、置換、或いはこれらの組み合わせを有するものとして含む。ErbB-2を結合する可変ドメインのVH鎖は、好ましくは、
- MF1849;又は
- MF2971若しくはそのヒト化バージョンであって、当該ヒト化バージョンは好ましくは、MF3958のアミノ酸配列を含む、MF2971若しくはそのヒト化バージョン;又は
- MF3004若しくはそのヒト化バージョンであって、当該ヒト化バージョンは好ましくは、MF3991のアミノ酸配列を含む、MF3004又はそのヒト化バージョンのアミノ酸配列を含む。一実施形態では、ErbB-2を結合する可変ドメインのVH鎖は、VH鎖MF1849;又はMF2971若しくはそのヒト化バージョンであって、当該ヒト化バージョンが好ましくは、MF3958のアミノ酸配列を含む、MF2971若しくはそのヒト化バージョン;又はMF3004若しくはそのヒト化バージョンであって、当該ヒト化バージョンが、好ましくは、それぞれの配列に関して、最大で15、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10、より好ましくは最大で1、2、3、4、若しくは5アミノ酸の挿入、欠失、置換、若しくはこれらの組み合わせを有する、MF3991若しくはそのヒトかバージョンのアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、ErbB-2を結合する可変ドメインのVH鎖は、MF3958のアミノ酸配列を含むか;又はVH鎖に関して、最大で15個、好ましくは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個、好ましくは1個、2個、3個、4個若しくは5個のアミノ酸の挿入、欠失、置換、若しくはこれらの組み合わせを有する、MF3958のアミノ酸配列を含む。
【0152】
Erb-B3を結合する可変ドメインのVH鎖は、好ましくは、VH鎖MF3178;MF3176;MF3163;MF3099;MF3307;MF6055;MF6056;MF6057;MF6058;MF6059;MF6060;MF6061;MF6062;MF6063;MF6064;MF6065;MF6066;MF6067;MF6068;MF6069;MF6070;MF6071;MF6072;MF6073若しくはMF6074のアミノ酸配列を含むか;又はVH鎖MF3178;MF3176;MF3163;MF3099;MF3307;MF6055;MF6056;MF6057;MF6058;MF6059;MF6060;MF6061;MF6062;MF6063;MF6064;MF6065;MF6066;MF6067;MF6068;MF6069;MF6070;MF6071;MF6072;MF6073又はMF6074の、VH鎖配列に関して、最大で15個、好ましくは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個、より好ましくは1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又はこれらの組み合わせを有する、アミノ酸配列を含む。Erb-B3を結合する可変ドメインのVH鎖は、好ましくは、MF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061若しくはMF6065のアミノ酸配列を含むか;又はVH鎖に関して、最大で15個、好ましくは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個、より好ましくは最大で1個、2個、3個、4個若しくは5個のアミノ酸の挿入、欠失、置換若しくはこれらの組み合わせを有する、MF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061若しくはMF6065のアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、ErbB-3を結合する可変ドメインのVH鎖は、MF3178のアミノ酸配列を含むか;又はVH鎖に関して、最大で15個、好ましくは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個、より好ましくは1個、2個、3個、4個若しくは5個のアミノ酸の挿入、欠失、置換、若しくはこれらの組み合わせを有する、MF3178のアミノ酸配列を含む。好ましくは、上述のアミノ酸の挿入、欠失及び置換は、CDR3領域には存在しない。上述のアミノ酸の挿入、欠失及び置換は又、好ましくは、CDR1及びCDR2領域にも存在しない。上述のアミノ酸の挿入、欠失及び置換は又、好ましくは、FR4領域にも存在しない。
【0153】
好ましくは、この抗体は、MF1849、MF2971、MF3958、MF3004又はMF3991の少なくともCDR1、CDR2及びCDR3配列、最も好ましくはMF3958の少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む。当該抗体は、好ましくは、MF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061、又はMF6065のCDR1、CDR2、及びCDR3配列、最も好ましくはMF3178の少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む。
【0154】
好ましくは、ErbB-2特異的重鎖可変領域は、当該VHに関して、最大で15個、好ましくは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個、より好ましくは最大で1個、2個、3個、4個又は5個の、アミノ酸の挿入、欠失、置換、又はこれらの組み合わせを有するVH鎖MF3958のアミノ酸配列を含む(好ましくは、当該挿入、欠失、置換は、CDR1、CDR2、又はCDR3にはない)。それらは又、好ましくは、FR4領域に存在しない。アミノ酸置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。
【0155】
好ましくは、ErbB-3特異的重鎖可変領域は、当該VHに関して、最大で15個、好ましくは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個、より好ましくは最大で1個、2個、3個、4個又は5個の、アミノ酸の挿入、欠失、置換、又はこれらの組み合わせを有するVH鎖MF3178のアミノ酸配列を含む。1個以上のアミノ酸の挿入、欠失、置換、又はこれらの組み合わせは、好ましくは、VH鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3領域にはない。それらは又、好ましくは、FR4領域に存在しない。アミノ酸置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。
【0156】
好ましくは、ErbB-2特異的重鎖可変領域は、当該VHに関して、最大で15個、好ましくは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個、より好ましくは最大で1個、2個、3個、4個又は5個の、アミノ酸の挿入、欠失、置換、又はこれらの組み合わせを有するVH鎖MF3991のアミノ酸配列を含む(好ましくは、当該挿入、欠失、置換は、CDR1、CDR2、又はCDR3にはない)。それらは又、好ましくは、FR4領域に存在しない。アミノ酸置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。
【0157】
好ましくは、ErbB-3特異的重鎖可変領域は、当該VHに関して、最大で15個、好ましくは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個、より好ましくは最大で1個、2個、3個、4個又は5個の、アミノ酸の挿入、欠失、置換、又はこれらの組み合わせを有するVH鎖MF3178のアミノ酸配列を含む。1個以上のアミノ酸の挿入、欠失、置換、又はこれらの組み合わせは、好ましくは、VH鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3領域にはない。それらは又、好ましくは、FR4領域に存在しない。アミノ酸置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。
【0158】
好ましくは、抗体の第1の抗原結合部位は、MF3958の少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列、又はMF3958のCDR1、CDR2、及びCDR3配列から最大で3個の、好ましくは最大で2個の、好ましくは最大で1個のアミノ酸が異なっているCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、当該第2の抗原結合部位は、MF3178の少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列を、又はMF3178のCDR1、CDR2、及びCDR3配列から最大で3個、好ましくは最大で2個、好ましくは最大で1個のアミノ酸が異なっているCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む。
【0159】
好ましくは、二重特異性抗体は、i)MF3958のCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含むErbB-2特異的重鎖可変領域と、軽鎖可変領域とを含む第1の抗原結合部位と、ii)MF3178のCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含むErbB-3特異的重鎖可変領域と、軽鎖可変領域とを含む第2の抗原結合部位とを含む。
【0160】
好ましくは、ErbB-2特異的重鎖可変領域は、MF3958配列を有し、ErbB-3特異的重鎖可変領域は、MF3178配列を有する。この組み合わせは、PB4188抗体とも呼ばれる。好ましくは、PB4188抗体は、アフコシル化されている。
【0161】
好ましくは、二重特異性抗体は、配列表第4部に示されるような「ErbB-2結合のための重鎖」と、配列表第4部に示されるような「ErbB-3結合のための重鎖」とを含む。
【0162】
好ましくは、二重特異性抗体の抗原結合部位は、本明細書に定義されるような共通軽鎖、好ましくは生殖細胞系共通軽鎖、好ましくは再構成された生殖細胞系ヒトカッパ軽鎖IgVκ1-39
*01/IGJκ1
*01又はその断片若しくは機能的誘導体を含む(imgt.orgにおけるIMGTデータベースワールドワイドウェブによる命名法)。再構成された生殖細胞系ヒトカッパ軽鎖IgVκ1-39
*01/IGJκ1
*01、IGKV1-39/IGKJ1、huVκ1-39軽鎖、又は短縮形のhuVκ1-39、という用語が使用される。軽鎖は、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸の挿入、欠失、置換、又はこれらの組み合わせを有することができる。言及された1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換は、好ましくは保存的アミノ酸置換であり、その挿入、欠失、置換、又はこれらの組み合わせは、好ましくはVL鎖のCDR3領域にはないことが好ましく、VL鎖のCDR1、CDR2、若しくはCDR3領域又はFR4領域にはないことが好ましい。好ましくは、第1の抗原結合部位及び第2の抗原結合部位は、同じ軽鎖可変領域、又はむしろ共通軽鎖を含む。好ましくは、軽鎖可変領域は、配列(RASQSISSYLN)を有するCDR1と、配列(AASSLQS)を有するCDR2と、配列(QQSYSTPPT)を有するCDR3とを含む。好ましくは、軽鎖可変領域は、
図1に示される共通軽鎖配列を含む。
【0163】
様々な方法が、二重特異性抗体を製造するために利用可能であり、国際公開第2015/130173で論じられている。1つの方法は、細胞内の2つの異なる重鎖及び2つの異なる軽鎖の発現、及び細胞によって産生される抗体を収集することを伴う。このようにして産生される抗体は、典型的には、重鎖及び軽鎖の異なる組み合わせを有する抗体の集合体を含有し、そのうちのいくつかは、所望の二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、その後、集合体から精製することができる。
【0164】
細胞によって産生される他の抗体に対する二重特異性の比は、様々な方法で増加させることができる。好ましくは、この比は、細胞内で、2つの異なる軽鎖を発現しないが、2つの本質的に同一の軽鎖を発現させることによって増加する。この概念は、「共通軽鎖」法とも称される技術分野におけるものである。本質的に同一の軽鎖が2つの異なる重鎖と一緒に作用し、異なる抗原結合部位及び付随する異なる結合特性を有する可変ドメインの形成を可能にする場合、二重特異性抗体と、細胞によって産生される他の抗体との比は、2つの異なる軽鎖の発現よりも有意に改善される。細胞によって産生される二重特異性抗体の比は、2つの同一の重鎖のペアリングに対して2つの異なる重鎖の互いのペアリングを刺激することによって、更に改善することができる。この技術では、重鎖のこのようなヘテロ二量体化が達成されることができる様々な方法が説明されている。好ましい方法は、参照により本明細書に組み込まれるPCT出願第PCT/NL2013/050294号(国際公開第2013/157954A1)に説明されている。二重特異性抗体を単一細胞から産生するための方法及び手段が開示され、これにより、単一特異性抗体の形成よりも二重特異性抗体の形成を有利にする手段が提供される。
【0165】
明確さ及び簡潔な説明のために、特徴は本明細書では同じ又は別個の実施形態の一部として記載されているが、本発明の範囲は、記載される特徴の全て又は一部の組み合わせを有する実施形態を含んでもよいことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【
図1】a)共通軽鎖アミノ酸配列。b)共通軽鎖可変領域DNA配列及び翻訳(IGKV1-39/jk1)。c)共通軽鎖定常領域DNA配列及び翻訳。d)IGKV1-39/jk5共通軽鎖可変領域翻訳。e)V-領域IGKV1-39A。f)共通軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3。
【
図2-1】二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖。a)CH1領域。b)ヒンジ領域。c)CH2領域。d)バリエーションL351K及びT366K(KK)を含有するCH3ドメイン。e)バリエーションL351D及びL368E(DE)を含有するCH3ドメイン。
【
図2-2】二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖。e)バリエーションL351D及びL368E(DE)を含有するCH3ドメイン。
【
図3】MF3178の変異体のアミノ酸アラインメント。点は、その位置でMF3178におけるのと同じアミノ酸を示す。MF3178のCDR1、CDR2、及びCDR3配列は、太字であり、下線を付されている。変異体のCDRは、相応の位置にある。
【
図4-1】本出願で言及されるいくつかの核酸及びペプチド分子に関する配列情報。配列4A(ErbB-2特異的)。
【
図4-2】本出願で言及されるいくつかの核酸及びペプチド分子に関する配列情報。配列4A(ErbB-2特異的)。
【
図4-3】本出願で言及されるいくつかの核酸及びペプチド分子に関する配列情報。配列4A(ErbB-2特異的)。
【
図4-4】本出願で言及されるいくつかの核酸及びペプチド分子に関する配列情報。配列4A(ErbB-2特異的)。
【
図4-5】本出願で言及されるいくつかの核酸及びペプチド分子に関する配列情報。配列4A(ErbB-2特異的)。
【
図4-6】本出願で言及されるいくつかの核酸及びペプチド分子に関する配列情報。配列4A(ErbB-2特異的);配列4B(ErbB-3特異的)。
【
図4-7】本出願で言及されるいくつかの核酸及びペプチド分子に関する配列情報。配列4B(ErbB-3特異的)。
【
図4-8】本出願で言及されるいくつかの核酸及びペプチド分子に関する配列情報。配列4B(ErbB-3特異的)。
【
図4-9】本出願で言及されるいくつかの核酸及びペプチド分子に関する配列情報。配列4C本明細書に説明する二重特異性抗体におけるErbB-2結合アームについての重鎖及びErbB-3結合アームについての重鎖。
【
図4-10】本出願で言及されるいくつかの核酸及びペプチド分子に関する配列情報。配列4D HER2特異的VH配列及びHER3特異的VH配列。
【
図4-11】本出願で言及されるいくつかの核酸及びペプチド分子に関する配列情報。配列4D HER2特異的VH配列及びHER3特異的VH配列。
【
図4-12】本出願で言及されるいくつかの核酸及びペプチド分子に関する配列情報。配列4D HER2特異的VH配列及びHER3特異的VH配列。
【
図4-13】本出願で言及されるいくつかの核酸及びペプチド分子に関する配列情報。配列4D HER2特異的VH配列及びHER3特異的VH配列。
【
図4-14】本出願で言及されるいくつかの核酸及びペプチド分子に関する配列情報。配列4D HER2特異的VH配列及びHER3特異的VH配列。
【
図5】本発明で投与される例示的なHER2/3二重特異性抗体の作用機序及び治療方法の図。二重特異性抗体のHER2への選択的ドッキングの後、NRG1のHER3への結合は、第2のアームを選択的に結合することにより防止され、次いで、ホスホイノシチド3-キナーゼ/プロテインキナーゼB(PI3K/AKT)介在性細胞増殖/生存を防止する。
【実施例】
【0167】
本明細書で使用される場合、「MFXXXX」(式中、Xは独立して、0~9の数字である)は、可変ドメインを含むFabを指し、ここでVHは、
図3又は4で表される4桁で同定されたアミノ酸配列を有する。別途記載のない限り、可変ドメインの軽鎖可変領域は、典型的には、
図1aの配列を有する。実施例における軽鎖は、
図1bに表される配列を有する。「MFXXXX VH」は、4桁で同定されたVHのアミノ酸配列を指す。MFは、軽鎖の定常領域と、軽鎖の定常領域と通常相互作用する重鎖の定常領域とを更に含む。重鎖のVH/可変領域は、異なる、典型的にはCH3領域であって、重鎖のうちの1つは、そのCH3ドメインのKK突然変異を有し、他方は、
図2d及び2eの、そのCH3ドメインの相補的なDE突然変異を有する(参考文献PCT/NL2013/050294号(国際公開第2013/157954号として公開)を参照されたい)。実施例における二重特異性抗体は、
図2に示されているKK/DE CH3ヘテロ二量体形成ドメイン、CH2ドメイン及びCH1ドメインを有するFc尾部と、
図1aに示される共通軽鎖と、MF数により明示されるVHとを有する。
【0168】
実施例1:
固形腫瘍に罹患している患者における、HER2及びHER3を標的とする完全長IgG1二重特異性抗体である二重特異性抗体MF3958×MF3178を用いた第I/II相試験
試験継続時間:
本試験の用量漸増部分(第1部)のために、28人の患者を動員した。本試験の第2部は、用量拡大相とする。第2部の総継続時間は、おおよそ25~32か月であり、しかしながら、実際の継続時間は、いくつかの変数、例えば、全体的な対象の動員率によって影響される。
【0169】
患者数:
28(28)人の患者を第1部に登録した。第2部については、少なくとも20人の評価可能な患者、及び最大おおよそ40人を、浸潤性粘液腺癌又は文書化NRG1融合を伴う進行性/転移性非小細胞肺癌(NSCLC)の群に登録してもよい。
【0170】
疾患の進行以外の理由により試験治療の少なくとも2サイクルを完了していない患者は、有効性について評価可能ではなく、それぞれの群に置き換えられている。
【0171】
本実施例は、本試験の第2部を説明する。
【0172】
試験目的:
【0173】
【0174】
【0175】
試験デザイン:
これは、MF3958×MF3178の安全性、忍容性、PK、PD、免疫原性、及び抗腫瘍活性を評価するための第I/II相、非盲検、多施設、多国家、用量漸増、単一群割当試験である。
【0176】
本試験は、2つの部分で設計されている:
第1部
本試験の第1部は、9回用量レベルの研究を含む:1人の患者のコホートにおける40mg、80mg、160mg並びに3人の患者のコホートにおける240mg、360mg、480mg、600mg、750mg、及び900mg。MF3958×MF3178は、最初に3週間の治療サイクルの1日目におおよそ60分間にわたって与えられた。第1部の間、注入関連反応(IRR)を軽減するために最大4時間に増やす選択肢つきで、注入継続時間を2時間まで延長した。
用量制限毒性(DLT)は、用量レベルのいずれにおいてもなかった。十分なPK情報を有するために、3つの追加の患者に600mg及び750mgのコホートの各々で投与した。
MTDは、900mgの用量レベルで達成されなかったので、MF3958×MF3178-CL01についてのデータレビュー委員会(DRC)は、累積安全性、利用可能なPKデータ及びPKシミュレーションに基づいて、本試験のRP2Dとして750mgの用量レベルを割り当てると決定した。
【0177】
第2部
第2部は、選択された患者集団の拡張群における、CR、PR、又は耐久性のあるSD(持続時間における少なくとも12週間のSD)を有する患者の比率として定義される、MF3958×MF3178の選択された用量レベルの安全性及び忍容性の更なる特性評価、並びにCBRの評価を含む。
【0178】
4週間サイクルを用いた週用量レジメンを、最初の2サイクルに対して毎週400mgの一定用量からなる新たに動員された患者において評価し、初回投与には800mgの投与量を用いる。サイクル3から、MF3958×MF3178を、毎週400mgの用量で3週間与え、次いで1週間休薬する。IRRを軽減するために、必須の事前医薬品が投与される。しかしながら、コルチコステロイドは、サイクル1の1日目の投与量の前にのみ必須であり、IRRを管理するための治験分担医師の裁量による後続の注入にのみ使用されるものとする。
【0179】
毎週のスケジュールの安全性は、治療された最初の5人の患者が少なくとも2回の治療サイクルを完了した後の実行期間中に再検討される。DRCは、グレード3~4の毒性の発生率、IRRの発生率及び重症度、並びに服薬遵守に焦点を当てて全ての安全データを再検討する。毒性が許容できないとDRCの再検討が結論付ける場合、治験依頼者は、コホート毎に十分な数の患者が登録されるまで、3週間サイクルの用量レジメンで患者の登録を続行する。
【0180】
患者内の用量漸増は、第2部では許可されない。
【0181】
本試験の第2部において評価される関心対象の患者集団は次のとおりである:
●NRG1融合文書を有するNSCLC
【0182】
少なくとも20人及び最大でおおよそ40人の患者が、毎週の推奨用量で治療されるコホート当たり最低10人の患者を含む各群(C~F)に登録され得る。以前に閉じたコホートを再開放してもよい。
【0183】
治療継続期間
本試験の第1部及び第2部の両方における患者は、疾患の進行、死亡、許容し得ない毒性、又は何らかの他の理由についての中止まで、治療し続けてもよい。
【0184】
データ再検討委員会(DRC):
第1部における全ての用量漸増決定は、利用可能な全ての安全データ及びPKデータを再検討することを規定したDRCによって行われた。DRC参加者は、治験責任医師(又はそれらの代理人)、治験依頼者の医療ディレクター、試験医療モニター、試験の医薬品安全性監視医師、試験のプロジェクトマネージャ、試験の統計学者、及び必要に応じて指名された専門家(臨床薬理学の専門家など)を含んだ。
【0185】
第2部では、DRCは、全ての後続の患者において週1回用量レジメンを拡大する前に、週1回の用量についての安全性試行期間の完了後のデータを再検討する。
【0186】
試験評価:
本試験は、4週間(28日)のスクリーニング期間までの分子予備スクリーニング評価、続いて、何らかの利用のために治療を離脱又は終了するまでの連続治療サイクルからなる。治療サイクル継続時間は、第2部の初回推奨用量で治療された患者については3週間(21日)とし、第2部で週1回の推奨用量で治療された患者については4週間(28日)とする。全ての患者は、治療終了後1週間以内に治療終了来所に参加するものとし、最終試験来所は、治療終了又は試験中止後の30日間とする。
【0187】
最終試験来所の完了の同意に進まなかったか又は同意を撤回した患者は、次回の抗癌治療の開始まで疾患の進行及び/又は生存状態を確認するために、3か月毎に最大2年間(おおよそ)経過観察される。
【0188】
試験中の安全性データ並びに利用可能なPK、PD、及び抗腫瘍活性データの継続的な評価は、交互の投与頻度を評価するべきであるか、又は他の患者集団を第2部で評価するべきであることを示唆しており、これらの修正は、これらの評価を開始する前にプロトコル補正において明らかにされる。
【0189】
分子レベルの事前スクリーニング及びスクリーニング:
分子レベルの事前スクリーニングは、NRG1融合の分子スクリーニングを実施するために認定された現地の実験室で実施される。事前スクリーニングを開始するために、患者は以下の基準のうちの1つを満たさなければならない:
●IMAの組織学的診断、及びEGFR/ALK変化なしの記録。注:NRG1融合についての事前スクリーニング試験を実施していないIMA患者は、本試験に入ることができる。
又は
●病理学的検査は、IMA診断を許可しないが、治験担当医師は、症状、画像化の特徴(例えば、局所的な硬化像、多重両側結節又は硬化像)、非喫煙者、及びEGFR/ALK変化なしの記録に基づいてIMAを疑う。
【0190】
分子レベルの事前スクリーニングの説明と同意の用紙(ICF)は、潜在的な試験参加に特定されたNSCLC患者によって署名されなければならず、その後に新鮮な又は保管所の腫瘍組織がNRG1融合状態の決定のための分析に供与される。試験は、サイクル1の1日目の最大で1年前に、疾患の自然病歴のいずれかの時に(例えば、診断時、治療の初回ラインの中、進行時、など)行うことができる。新鮮な腫瘍試料(ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE))又は1年以内の保管腫瘍試料は、NRG1融合の存在の評価に必要である。試料は、NRG1融合状態の分子プロファイリング(PCR、次世代配列決定(DNA又はRNA)又はFISH)による試験に適格な現地実験室に供与されるものとする。次いで、陽性の局所NRG1融合結果を有する患者は、本試験のICFに署名する資格があり、希望する場合、本試験に入ることができる。
【0191】
本試験の説明と同意の用紙
本試験のICFは、何らかのスクリーニング手順又は評価が実施される前に、全ての患者によって署名されなければならない。スクリーニング評価は、サイクル1の1日目の前の4週間以内に行われなければならないが、サイクル1の1日目から7日間以内に行わなければならない血清妊娠検査を除く。スクリーニングのために考慮されるべく、ベースライン必須腫瘍試料、好ましくは、新鮮な組織又は保管所の組織からのブロックが要求される。依頼者は、新鮮な組織の選好を示す。保管所は許容可能であり、スクリーニングから2年以内に採取されたものとするが、NSCLCについては1年以内でなければならない。NSCLC患者について、事前スクリーニング生検試料がNRG1の事前スクリーニングの現地試験に提供される場合でさえ、スクリーニングのためのベースライン生検は依然として必要であることに留意されるものとする。全ての必要なスクリーニング評価及び全ての適格性基準の確認の完了後、患者はサイクル1の1日目の投与を開始することができる。
【0192】
安全性評価
併発している病気はベースラインで捕捉され、AE及び併用療法は、試験の参加を通して監視される。安全性評価には、米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG))体力状態、身体検査(身長及び体重を含む)、バイタルサイン及び心電図(ECG)の再検討が含まれる。左心室駆出率(LVEF)の心機能試験は又、スクリーニング時、サイクル4の終了時(又はサイクル5の1日目)、試験来所終了時、及び臨床的に示されている場合は本試験中のいずれかの時点で行われる。実験室評価には、臨床化学、血液学、凝固検査、尿検査及び妊娠検査が含まれる。サイトカインパネル分析は、2017年8月1日まで行われたことに留意されたい。
【0193】
全てのMF3958×MF3178投与日に、診療所から退院する前に、観察及び反復バイタルサインのために、診療所に注入終了時間から少なくとも60分間いなければならない(PK試料が必要な場合はそれより長い)。更なる追加の安全性評価は、臨床的に示されているように実施されるものとし、必要な場合、治験分担医師の判断に基づいて、診療所での入院期間を延ばすものとする。
【0194】
免疫原性評価
抗MF3958×MF3178抗体の血清力価は、サイクル1、2、3、4の各々についての投薬前の1日目に、次いでその後第4のサイクル毎に(サイクル8、12、16など)、並びに試験来所終了時及び最終試験来所時に測定され、MF3958×MF3178投与前の約3日間のウィンドウとする。
【0195】
薬物動態評価
第1部及び第2部の初回推奨投薬スケジュール:サイクル1において、血液試料を投薬前、注入終了時(EOI)、EOIの1、2、4、8、24時間後、次いで、4日目(又は3日目)、8日目、及び15日目にPK分析のために収集する。サイクル2~4では、投与前及びEOIの血液試料のみが収集される。
【0196】
第2部の週1回の推奨投与スケジュール:サイクル1では、投与前、EOIの2、4、24時間後、次いで8日目及び15日目の投与前、並びに22日目の投与前及びEOIに、血液試料をPK分析のために収集する。サイクル2及び3では、投与前及びEOI血液試料は15日目に収集される。サイクル4では、血液試料は、1日目の投与前、並びに15日目の投与前及びEOIに収集される。その後、2サイクル毎(サイクル6、8、10など)に、投与前血液試料が15日目に収集される。
【0197】
腫瘍評価
腫瘍評価は、治験分担医師当たりでRECIST第1.1版により評価される。画像化は、3週間サイクルのレジメンを受ける患者についてはスクリーニング時、及び治療の2サイクル毎の終了時に、並びに4週間サイクルのレジメンを受ける患者については6週間毎に得られる。
【0198】
バイオマーカー及び薬物動態評価
一連のバイオマーカー及び薬力学的試験を、保管された又は既存の腫瘍組織の利用可能性、更なる腫瘍試料に対する同意、及び具体的なバイオマーカー試験に対する同意に応じて、保管された及び/又は新鮮な腫瘍試料材料及び/又は血液(液体生検)に対して実施する。
【0199】
以下の候補バイオマーカーは、十分な試料が利用可能である場合に評価される:
●HER2、HER3、HER2:HER3二量体化、リン酸化HER2(pHER2)及びHER3(pHER3)並びにヘレグリン;
●循環血漿腫瘍DNA(ctDNA)及び腫瘍試料DNA(利用可能性に応じて)を使用して、HER2及びHER3シグナル伝達と関係するものを含む癌遺伝子の変異を検査する
●MAPK及びAKTシグナル伝達経路におけるリン酸化分子;
●Fcガンマ受容体多型;
●HER2についての循環腫瘍細胞;
●ヘレグリン-遺伝子融合
【0200】
生殖系DNA評価は含まれない(Fcガンマ受容体多型を除く)。
【0201】
ベースラインでは、患者は、必須の腫瘍試料組織、好ましくは、新鮮な組織又は保管組織からのものであり得るブロックを提供するように要求される。依頼者は、新鮮な組織の選好を示す。保管所は許容可能であり、スクリーニングから2年以内に採取されたものとするが、NSCLCについては1年以内でなければならない。加えて、患者は、サイクル4の終了時に、及び場合により、治療来所の終了時に、腫瘍試料/生検を場合により提供するように要求される。
【0202】
液体生検試験の目的で、これらの時点で血液試料も又採取される。
【0203】
適格性基準:
本試験は、NSCLCに罹患している患者を登録する。
【0204】
第2部についての一般的な包含基準
1. 18歳以上、
2. RECIST第1.1による少なくとも1つの測定可能な病変、
3. ECOGが0又は1である体力状態、
4. 少なくとも12週間の平均余命、
5. 非臨床的に有意なグレード2の感覚神経毒性として評価された脱毛症、リンパ球減少症を除く、グレード1(NCI CTCAE第4.03版により定義)に分けられる従前の抗癌療法の結果として生じる毒性、
6. 最後に受けた放射線療法とMF3958×MF3178の投薬を予定された最初の日との間の少なくとも4週間の間隔(疼痛緩和のための最大1×8Gyを除く)、
7. 主要な手術からの完全な回復(安定及びグレード2未満の毒性が許容され得る)、
8. スクリーニング時の検査値:
a. 絶対好中球数≧1.5×109/L、コロニー刺激因子支持体なし、
b. 血小板≧100×109/L、
c. ヘモグロビン≧9g/dL又は≧2.2mmol/L(輸血依存性ではない)、
d. 正常上限(ULN)の<1.5倍の総ビリルビン(ジルベール症候群に起因していない限り)、
e. AST(SGOT)≦2.5×ULN、ALT(SGPT)≦2.5×ULN、肝臓転移を伴う進行固形腫瘍に罹患している患者についての≦5×ULN、骨転移が確認された患者は、ALP>5×ULNにおける上昇が単離された試験に関して許可され、
f. 血清クレアチニン≦1.5×ULN、又はCockroft-Gault式に基づく>50mL/分超の推定糸球体濾過率(GFR)、
g. 凝固機能(治療用抗凝固薬に限定されない限り、INR及びaPTT≦1.5ULN)
h. 尿タンパク質≦2+(ディップスティックによって測定)又は≦100mg/24時間尿、
9. ベースラインで、必須の腫瘍生検試料(FFPE)、好ましくは、新鮮な(好ましい)又は保管されている組織からのブロックを提供することができる。保管されている組織は、1年以内でなければならないNSCLCを除き、スクリーニング前2年以内に収集されていなければならない。
10. 妊孕能のある女性におけるスクリーニング時及びサイクル1、1日目の7日以内の尿又は血液ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)検査によって定義されるような利用可能な陰性妊娠検査結果(≦50歳の又は試験登録前≦12か月間の無月経歴の女性と定義)、
11. 妊孕能のある性的に活発な男女の患者は、本試験の期間全体及びMF3958×MF3178の最終投与後6か月間、有効な産児制限方法(例えば、殺精子薬、経口若しくは非経口避妊薬、及び/又は子宮内装置を用いたバリア法)を使用することに同意しなければならない。女性患者における不妊は、患者の医療記録で確認されなければならず、以下のいずれかとして定義されなければならないことに留意されたい:両側性卵巣摘出術を伴う外科的子宮摘出術、両側性卵管結紮術、最後の月経が1年超前である自然閉経;最後の月経が1年超前の放射線誘発性卵巣摘出術;最後の月経から1年の間隔がある化学療法誘発性閉経、
12. 同意が事前診断なしで何らかの時点で患者によって撤回されてもよいことを理解したうえで、何らかの試験特異的スクリーニング手順の前に説明と同意の書面を提供できること、
13. 義務付けられた及び任意のプロトコル要件を理解することができ、試験プロトコル手順に準拠することを希望し、かつそれが可能であり、主要な説明と同意の文書に署名をしていること。何らかの生検試料採取(組織及び/又は血液)及び長期試料保管について、追加の同意が必要であり、
14. 臨床的利益を受けることが公知の全ての利用可能な療法で治療を受けた後に疾患が進行した、転移性癌に罹患している患者。
15. 以下の条件のうちの1つを満たす切除不能又は転移性NSCLC:
●生検証明済み浸潤性粘液腺癌(IMA)。注:NRG1融合についての事前スクリーニング試験を実施していないIMA患者は、本試験に入ることができる。
又は
●EGFR/ALK遺伝子に既知のドライバー変異若しくは融合を有さない患者において、PCR、次世代配列決定法(DNA又はRNA)若しくはFISHなどの方法を用いた分子プロファイリングによって、適格な現地の実験室で決定されたNRG1融合が記録されたNSCLC。
16. 局所的に進行した又は転移性の設定における標準療法の少なくとも1つのラインでの治験分担医師の評価による記録された疾患の進行。
【0205】
統計解析:
第1部及び第2部
抗腫瘍の及び臨床的な利益変数は、第2部における各群について記述的に要約されている。適宜、変数は、ベースラインからの絶対変化及び相対変化に関して提示される。カテゴリーデータは、百分率及び頻度の表として提示される。
【0206】
適宜、第1部のMTD又はMRDとして特定されるものを受けた患者、及び第2部において同じ用量を受けた患者からのデータを組み合わせ、要約し、及び独立して要約してもよい。
【0207】
重篤なAE及び非重篤なAEの頻度及び性質は、絶対頻度及び相対頻度で評価され、MedDRA医学事典によってコードされる。
【0208】
第1部
データ評価は、本質的に記述的である。患者の人口統計、疾患特性、並びに薬物動態学的及び薬力学的変数は、各投与レベルで要約される。DLTの頻度及び性質も又、各投与レベルで要約される。
【0209】
第2部
第2部においてコホート当たりN=20では、少なくとも0.38の臨床的に意味のある観察された相関係数は、95%の信頼性でゼロと区別可能であろうし、より低い、非臨床的に意味のある観察された相関関係は、ゼロと区別可能ではない。この故に、第2部におけるコホート当たり20人の対象は、MF3958×MF3178の抗腫瘍活性と疾患関連バイオマーカーとの間の関連性を探索するのに十分であると見なされる。
臨床活性の兆候が見られる場合、合計おおよそ40までの追加の患者を動員してもよい。40人の患者では、例えば、10%~50%の真の臨床応答率は、おおよそ±5%~±8%の妥当な精度で推定することができる。
【0210】
PKパラメータは、第1部の各コホート及び第2部の各腫瘍群について要約される。算術的及び幾何学的手段は、中央値、範囲、SD、及びCV%に加えて提供される。AUCは、台形則によって計算される。時間に対する血清濃度プロファイルを各群についてプロットする。
【0211】
実施例2
前処置としてアファチニブを受けて癌が進行した患者のHER2-HER3二重特異性抗体による治療
【0212】
組織学的浸潤性粘液腺癌を有するNSCLCと診断された38歳の女性を、MF3958×MF3178で治療した。本試験は、MF3958×MF3178が、サイズ又は病変に関して腫瘍を安定させることを示す。この治療は、更なる腫瘍成長を防止する
【0213】
腫瘍の分子プロファイリング:
肺から得られた腫瘍組織の分析は、SDC4-NRG1融合を示した。加えて、腫瘍ゲノムは、EGFR、KRAS、EGFR、cKIT-BRCA1-2、MET、ROS、RET、ALKに変異がないことを示した。
本分析を、癌研究用に設計された標的DNA配列決定法でありかつ、融合、挿入/欠失(インデル)、単一ヌクレオチド変異体、及びコピー数変動を含む複数のバイオマーカーの分析を可能にするOncomineを使用して実施した。本結果を、RNA配列及びアンカー多重PCR(Archer)によって確認した。
【0214】
従前の治療:
患者は、4か月間、シスプラチン、カルボプラチン、ペメトレキセドでアジュバント治療を受けた。5~6か月以内に、患者は肺の両側の再発を提示した。その後、患者は、癌の新たな進行が検出されるまでおおよそ11か月間アファチニブによる治療を受けた。患者は、アファチニブ治療を停止した後2か月以内に本試験に入った。
【0215】
試験登録時の臨床状態:
本試験の登録時に、この患者は、肺及び胸膜における転移性腫瘍拡張を伴うNSCLCを表した。
患者は、良好な全身レベルの容態(体力状態(ECOG)が1)と提示された。体力状態のECOG尺度は、患者自身に対してケアする能力、毎日の活動、及び身体能力に関して、患者の機能レベルを説明する。1というECOGスコアは、患者が、身体的に激しい活動が制限されているものの、歩行可能であり、軽度の性質の業務又は座業を実行することができることを反映している。
【0216】
二重特異性抗体MF3958×MF3178による治療:
治療を、二重特異性抗体MF3958×MF3178が週1回のレジメンで与えた。最初の用量を事前医薬品と共に投与した。8か月間の試験期間中に、合計8サイクルを投与した。
【0217】
4週間サイクルを有する週1回の投与レジメンは、最初の2サイクルについて週1回400mgの一定用量からなり、最初の投与については800mgの投与量である。サイクル3から、MF3958×MF3178を、毎週400mgの用量で3週間与え、次いで1週間休薬する。IRRを軽減するために、必須の事前医薬品が投与される。しかしながら、コルチコステロイドは、サイクル1の1日目の投与量の前にのみ必須であり、IRRを管理するための治験分担医師の裁量による後続の注入にのみ使用されるものとする。
【0218】
安全性:
患者は、試験薬関連毒性のいかなる重度のエピソードも経験しなかった。
【0219】
有効性:
疾患は、CT走査を使用することによって、肺における測定可能な疾患と評価された。客観的全体奏効率(ORR)、奏効継続時間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、及び生存率を決定するRECIST第1.1版によって評価された抗腫瘍活性及び臨床的利益。4つの腫瘍評価は、安定疾患を報告した(RECIST第1.1版)。本試験は、MF3958×MF3178が、サイズ又は病変に関して腫瘍を安定させることを示す。この治療は、更なる腫瘍成長を防止する。
【0220】
実施例3
NRG1融合患者におけるHER2-HER3二重特異性抗体による化学療法及びアファチニブ後の治療。
【0221】
実施例2の投与レジメンに代えて、医薬品は、以下のように隔週投与スケジュールで提供することができる。
隔週のスケジュールは、最初の注入については4時間にわたって、次いで、4週間サイクルで1週間おきにその後の各注入毎に2時間にわたって、750mgのMF3958×MF3178からなる。又、事前医薬品は、全ての注入のための解熱薬及び抗ヒスタミン薬からなるIRR(注入関連反応)を管理するために含まれる。コルチコステロイドは1日目のサイクル1の投与の前に含まれ、その後、治験担当医師の裁量によって、IRRを管理するために投与される。
【0222】
実施例4
NRG1融合患者におけるHER2-HER3二重特異性抗体による化学療法及びアファチニブ後の治療。
【0223】
実施例3の投与レジメンに代えて、医薬品は、以下のように3週おきの投与スケジュールで提供することができる。
3週おきのスケジュールは、最初の注入については4時間にわたって、次いで、4週間サイクルで1週間おきにその後の各注入毎に2時間にわたって、750mgのMF3958×MF3178からなる。又、事前医薬品は、全ての注入のための解熱薬及び抗ヒスタミン薬からなるIRR(注入関連反応)を管理するために含まれる。コルチコステロイドは1日目のサイクル1の投与の前に含まれ、その後、治験担当医師の裁量によって、IRRを管理するために投与される。
【配列表】