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特許7532515TIRF顕微鏡検査法のためのメタ表面を含む回折光学素子
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  • 特許-TIRF顕微鏡検査法のためのメタ表面を含む回折光学素子 図1A
  • 特許-TIRF顕微鏡検査法のためのメタ表面を含む回折光学素子 図1B
  • 特許-TIRF顕微鏡検査法のためのメタ表面を含む回折光学素子 図2
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  • 特許-TIRF顕微鏡検査法のためのメタ表面を含む回折光学素子 図5
  • 特許-TIRF顕微鏡検査法のためのメタ表面を含む回折光学素子 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】TIRF顕微鏡検査法のためのメタ表面を含む回折光学素子
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/41 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
G01N21/41 101
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022524999
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2020079768
(87)【国際公開番号】W WO2021083787
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】1912054
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】321004758
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・サクレー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャコモッティ,アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ブーショール,ソフィ
(72)【発明者】
【氏名】ゴルタリ,アントゥ・ネウエン
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/006679(WO,A1)
【文献】特開2011-141265(JP,A)
【文献】特表平11-505046(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0271363(US,A1)
【文献】国際公開第2018/140651(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/83
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 第1の表面(S)と前記第1の表面とは反対側の第2の表面(S)とを有する基板(SB)であって、少なくとも1つのスペクトル範囲内で光に対して透明であり、及び前記スペクトル範囲内で水より高い屈折率を有する基板;並びに
- 誘電材料で作られ及び前記基板の前記第1の表面(S)上に置かれた少なくとも1つのメタ表面(MS)であって、前記メタ表面は、互いに垂直であり且つ前記基板の表面に平行である2つの方向x、yにおいて周期的である周期パターン(E)の繰り返しを介し形成され、前記周期パターンはyに沿って直線的である第1のストリップセグメント(P)を含むサブパターン(E)を含む、メタ表面(MS)
を含む回折光学素子(10)であって、
前記メタ表面は前記方向yの点線(P)の第1のストリップ(M1)を含み、前記点線(P)第1のストリップ(M1)は前記サブパターンから形成され、
前記周期パターンはさらに、前記メタ表面が、前記方向yにおいて連続的である第2のストリップ(M2)を含むように、前記方向yにおいて直線的である第2のストリップセグメントを含み、
前記メタ表面は、光線(L in )を回折して回折放射線(Ldiff)を形成する好適であり前記光線(L in )は、前記スペクトル範囲に含まれる波長λあって、前記光線(L in )は、或る入射角で入射、前記回折放射線は、前記基板を通って伝播し及び前記基板と水との間の全反射の限度角度θ以上の回折角θで前記基板の前記第2の表面(S)にぶつかるようなやり方で形成され、
前記メタ表面は、前記入射角において、回折の次数0に関して5%未満の透過率を、及び回折の次数-1又は+1に対応する回折放射線(Ldiff)に関して50%より高い透過率を有するように構成される、
回折光学素子。
【請求項2】
前記周期パターン内で、前記第1のストリップの面積は前記第2のストリップの面積より小さく、前記第1のストリップの幅(l1)は30nm~500nmに含まれ、前記第2のストリップ(l2)の幅は100nm~700nmに含まれ、及び前記点線(P)の長さは60nm~800nmに含まれる、請求項1に記載の回折光学素子。
【請求項3】
前記サブパターンは前記第1のストリップ(M1)の2つの連続する点線(P)間に置かれる円盤(C)を含む、請求項1又は2に記載の回折光学素子。
【請求項4】
前記方向xの前記パターンの寸法(P)はP<λ/neauが成立するようにされ、neauは水の屈折率である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の回折光学素子。
【請求項5】
前記方向xの前記メタ表面の全寸法xMSはxMS<2×e×sinθが成立するようにされ、eは前記基板の厚さである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の回折光学素子。
【請求項6】
前記方向yのパターン寸法(Py)は300nm~1000nmに含まれる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の回折光学素子。
【請求項7】
前記メタ表面の材料の屈折率は前記基板の材料の屈折率より高い、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の回折光学素子。
【請求項8】
前記基板の前記第1の表面(S)上に置かれた複数のメタ表面(MS、MS、MS)を含み、
各メタ表面のパターンの前記方向xの寸法(Px)は、各メタ表面が、前記範囲に含まれる波長であって他のメタ表面により回折される波長とは異なる波長の光線(Lin)を回折するために好適であるように、異なる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の回折光学素子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の回折光学素子(10)を含む、全反射蛍光顕微鏡検査法により試料を撮像するためのデバイス(D1)であって、
- 前記入射角で前記回折光学素子に入射する前記光線(Lin)を前記スペクトル範囲内で発射するために好適な少なくとも1つの光源(SL)であって、前記回折光学素子による回折後、消散波(OE)を前記基板の前記第2の表面(Se)の少なくとも1つの領域内に生成する、光源(SL);
- 前記消散波が生成され及び前記消散波により励起される蛍光放射線(Fl)を生成する前記第2の表面の少なくとも1つの領域に応じて置かれた試料(Ech);及び
- 前記試料により発射された前記蛍光放射線(Fl)を検出するために好適な検出器(Det)
を含むデバイス。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の回折光学素子(10)を含む表面プラズモン共鳴を介し生体試料を検出するためのデバイス(D2)であって、前記回折光学素子は:
- 複数のメタ表面(MS、MS、MS)であって、各メタ表面のパターンの前記方向xの寸法(P)は、各メタ表面により回折される前記回折放射線diff)が異なる回折角θで前記基板の前記第2の表面(S)にぶつかるように、異なる、複数のメタ表面を含み;
前記デバイスはさらに:
- 前記入射角で前記回折光学素子に入射する前記光線(Lin)を前記スペクトル範囲内で発射するために好適な少なくとも1つの光源(SL);
- 少なくとも1つの第2の基板(S)、前記第2の基板の上に置かれた金属層(Met)、及び前記金属層の上に置かれた被解析層(An)を含む試料(Ech)であって、前記試料は、前記回折放射線が、前記試料の前記金属層により少なくとも部分的に反射される(L)ように前記基板(SB)の上に置かれ、前記回折光学素子はさらに、前記試料により反射された前記光線を自由空間へ結合するために好適な光結合素子(MSout)を含む、試料(Ech);
- 前記試料により反射され及び前記結合素子により自由空間へ結合される前記光線の強度を検出するために好適な検出器(Det)であって、少なくとも1つのメタ表面は、前記メタ表面に関連付けられた前記回折角θ が、前記金属から反射されると表面プラズモンの共振励起と前記回折放射線(Ldiff)の少なくとも部分的吸収とを生成するように構成される、検出器(Det)
を含む、デバイス。
【請求項11】
前記光結合素子は、互いに垂直であり及び前記基板の表面に平行である2つの方向x、yにおいて周期的であるパターン(E)の繰り返しを介し形成される少なくとも1つの出口メタ表面を含み、前記パターンは、yに沿って直線的である第1のストリップセグメント(P)を含むサブパターン(E)を含み、前記出口メタ表面は前記基板の前記第1の表面(S)上に置かれる、請求項10に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TIRF顕微鏡検査法(すなわち全反射蛍光顕微鏡検査法:total-internal-reflection-fluorescence microscopy)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
以下では、その上に入射する放射線の1波長より短い寸法及び周期の基本パターンの周期的又は準周期的繰り返しを含む部品であって前記入射放射線を散乱し及び同時にその位相及びその振幅を修正する部品がメタ表面と呼ばれることになる。
【0003】
全反射蛍光(TIRF)顕微鏡検査法は、スライド試料保持器の極近傍に位置する観察試料中の蛍光分子の励起がナノスケール厚さの領域に閉じ込められる蛍光顕微鏡検査法技術である。これは特に、細胞膜へ局所化される構造及び処理が、回折限界よりはるかに良い軸方向の空間分解能で選択的に観測されることを可能にする。さらに、より伝統的なエピ蛍光技術は、蛍光画像中のより良いコントラストを取得することと細胞光変性及び放射線損傷の影響を低減することとを可能にする。
【0004】
TIRF顕微鏡検査法が基づく原理が図1Aに示される。考察されるケースは、屈折率n<nの周囲媒体MAと接触する表面Sを有する屈折率nの基板SBのケースである。例えば、基板SBはスライド試料保持器で構成され得る又はこのようなスライドが置かれるガラスで作られた要素で構成され得、周囲媒体MAは蛍光体で標識付けられた細胞を懸濁状態で含む水溶液であり得る。基板SBを通って送達される光線FLIは表面Sに入射し;その伝搬方向は、表面に対する法線zに対し臨界値θ(限度角度)より大きな角度をなす:
【数1】
【0005】
したがって、ビームFLIは全反射され(参照符号FLRは反射されたビームを表す)、消散波OEが周囲媒体MA中に出現する。この消散波は表面Sからの距離zと共に次式のように指数関数的に低下する強度を有する:I(z)=I(z/δ)、ここで、進入長δは
【数2】
により与えられ、λは光放射線の波長である。消散波は、周囲媒体に含まれる蛍光体を励起するが、δ程度の厚さにわたってだけである。これは、それを越えると消散波の強度が急速に無視可能になるためである。一例として、λ=488nm、n=1.514(BK7ガラス)、n=1.33(水)、θ=67°>θ≒61.45°に関して、δ≒93nmということが分かった。これは、約100nmの厚さの層内に位置する蛍光体だけが励起され、及び蛍光画像の生成に寄与するということを意味する。
【0006】
図1Bは、TIRF顕微鏡検査法において最も一般的に使用される構成を示す。
【0007】
図1Bの場合、媒体MAに対向する基板の側に位置する同じ顕微鏡対物レンズOBJは、全反射を介し消散波を生成するため及び蛍光放射線を収集するための両方のために使用される。対物レンズは通常、油浸対物レンズであり、及び高開口数(NA)(例えば1.45程度の)を有し得、延いては、高い横方向空間分解能(方向zに対し垂直な分解能)が取得されることを可能にするが、これは、横方向空間分解能がd=λ/2NAにより与えられるためである。加えて、高いNAを有する対物レンズOBJは、入射光線FLIが光軸に対して偏向させられる(したがって、レンズによる入射光線FLIの大きな偏向が取得される)ことを可能にし、したがって光線FLIは全反射を取得するためには十分に大きい入射角θで伝播することができるので、必須である。しかし、このようなレンズは非常に高価であり、及び著しい収差を導入する。加えて、このようなアセンブリのアラインメントは複雑である。
【0008】
本発明は、従来技術の上述の欠点を克服することを目的とする。より具体的には、本発明は、例えばTIRF顕微鏡検査法を行うことと従来技術の高開口数対物レンズの使用無しで済ますこととを可能にするメタ表面を含む回折光学素子を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明の1つの主題は、
- 第1の表面と第1の表面に対向する第2の表面とを有する基板であって、少なくとも1つのスペクトル範囲内で光に対して透明であり且つ前記スペクトル範囲内で水より高い屈折率を有する、基板;
- 誘電材料で作られ及び基板の前記第1の表面上に置かれた少なくとも1つのメタ表面であって、メタ表面は、互いに垂直であり且つ基板の表面に平行2つの方向x、yにおいて周期的であるパターン(E)の繰り返しを介し形成され、前記パターンはyに沿って直線的である第1のストリップセグメントを含むサブパターンを含み、メタ表面は方向yの点線(P)の第1のストリップ(M1)を含み、前記点線のストリップは前記サブパターンから形成される、メタ表面、を含む回折光学素子であり:
前記周期パターンはさらに、メタ表面が、方向yにおいて連続的である第2のストリップ(M2)を含むように、方向yにおいて直線的である第2のストリップセグメントを含み、
前記メタ表面は、回折放射線を形成するために、前記スペクトル範囲に含まれる波長λの光線であって入射角で入射する光線を回折するために好適であり、前記回折放射線は、基板を通って伝播し及び前記基板と水との間の全反射の限度角度θ以上の回折角θで基板の前記第2の表面にぶつかるようなやり方で形成され、
メタ表面は、前記入射角において、回折の次数0に関して5%未満の透過率を及び回折の次数-1又は+1に対応する回折放射線に関して50%より高い透過率を有するように構成される。
【0010】
本発明の特別のいくつかの実施形態によると:
- パターン内で、第1のストリップの面積は第2のストリップの面積より小さく、第1のストリップの幅は30nm~500nmに含まれ、第2のストリップの幅は100nm~700nmに含まれ、及び点線の長さは60nm~800nmに含まれる;
- サブパターンは前記第1のストリップの2つの逐次点線間に置かれた円盤を含み;
- 方向xのパターンの寸法はP<λ/neauが成立するようにされ、neauは水の屈折率である;
- 方向xのメタ表面の全寸法xMSはxMS<2×e×sinθが成立するようにされ、eは基板の厚さである;
- 方向yのパターンの寸法は300nm~1000nmに含まれる;
- メタ表面の材料の屈折率は基板の材料の屈折率より高い;
- 回折光学素子は、基板の前記第1の表面上に置かれた複数のメタ表面を含み、メタ表面それぞれのパターンの前記方向xの寸法は、各メタ表面が、前記範囲に含まれる波長の光線であって他のメタ表面により回折される波長とは異なる波長の光線を回折するために好適となるように、異なる。
【0011】
本発明の別の主題は、全反射蛍光顕微鏡検査法により試料を撮像するためのデバイスであって、以下のものを含む光学素子を含むデバイスである:
- 前記スペクトル範囲内で発射するために好適な少なくとも1つの光源であって、前記光線は前記入射角で前記回折光学素子に入射し、前記光線は、前記回折光学素子による回折後、消散波を基板の第2の表面の少なくとも1つの領域内に生成する、光源;
- 前記消散波が、生成され、及び前記消散波により励起される蛍光放射線を生成する第2の表面の少なくとも1つの領域に応じて置かれた試料;
-前記試料により発射された前記蛍光放射線を検出するために好適な検出器。
【0012】
本発明のさらに別の主題は表面プラズモン共鳴を介し生体試料を検出するためのデバイスであって回折光学素子を含むデバイスであり、前記回折光学素子は以下のものを含み:
- 複数のメタ表面であって、メタ表面それぞれのパターンの前記方向xの寸法は、各メタ表面により回折される放射線が、異なる回折角θで基板の前記第2の表面にぶつかるように、異なる、複数のメタ表面;
前記デバイスはさらに以下のものを含み:
- 前記入射角で前記回折光学素子に入射する前記光線を前記スペクトル範囲内で発射するために好適な少なくとも1つの光源;
- 少なくとも1つの第2の基板、第2の基板の上に置かれた金属層、及び金属層の上に置かれた被解析層を含む試料であって、前記試料は前記回折放射線が試料の金属層により少なくとも部分的に反射されるように第1の基板の上に置かれ、前記回折光学素子はさらに、試料により反射された前記光線を自由空間へ結合するために好適な光結合素子を含む、試料;
- 試料により反射され及び前記結合要素により自由空間へ結合された前記光線の強度を検出するために好適な検出器、
少なくとも1つのメタ表面は、メタ表面に関連付けられた前記回折角が、金属面から反射されると表面プラズモンの共振励起と前記回折放射線の少なくとも部分的吸収とを生成するように構成される。
【0013】
本発明の1つの特定実施形態によると、光結合素子は、互いに垂直であり及び基板の表面に平行である2つの方向x、yにおいて周期的であるパターンの繰り返しを介し形成される少なくとも1つの出口メタ表面を含み、前記パターンは、yに沿って直線的である第1のストリップセグメントを含むサブパターンを含み、前記出口メタ表面は基板の前記第1の表面上に置かれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、一例として与えられ及び以下の図を示す添付図面を参照して提供される説明を読むと明確になる:
【0015】
図1A】従来技術から知られたTIRF顕微鏡検査法技術である。
図1B】従来技術から知られたTIRF顕微鏡検査法技術である。
図2】本発明による回折光学素子の概略図である。
図3A】それぞれ本発明の第1の実施形態による回折光学素子の概略図及び回折効率を示すグラフである。
図3B】それぞれ本発明の第1の実施形態による回折光学素子の概略図及び回折効率を示すグラフである。
図4A】それぞれ本発明の第1の実施形態の一変形形態による回折光学素子の概略図及び回折効率を示すグラフである。
図4B】それぞれ本発明の第1の実施形態の一変形形態による回折光学素子の概略図及び回折効率を示すグラフである。
図5】TIRF顕微鏡検査法により試料を撮像するための本発明による回折光学素子を含むデバイスの概略図である。
図6】表面プラズモン共鳴を介し生体試料を検出するための本発明による回折光学素子を含むデバイスの概略図である。
【0016】
添付図面では、別途示さない限り、要素は原寸に比例しない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図2は本発明による回折光学素子の概略図を示す。この回折光学素子10は、第1の表面Sと第1の表面に対向する第2の表面Sとを有する屈折率nの基板SBであって少なくとも1つのスペクトル範囲内で光に対して透明であり及び前記スペクトル範囲内で水より高い屈折率nを有する基板を含む。基板の表面Sは屈折率n<nの周囲媒体MAと接触する。
【0018】
加えて、本発明の回折光学素子は誘電材料で作られ及び基板Sの第1の表面上に置かれる少なくとも1つのメタ表面MSを含む。本発明の1つの好適な実施形態によると、このメタ表面は二酸化チタンで作られる。代替的に、本発明の別の実施形態によると、このメタ表面はシリコンで作られる。
【0019】
本発明によると、メタ表面は、回折放射線Ldiffを形成するために、前記スペクトル範囲に含まれる波長λの光線Linであって入射角θで入射する光線を回折するために好適であり、前記回折放射線は、基板を通って伝播し及び前記基板と水との間の全反射の限度角度θ以上の回折角θで基板の前記第2の表面Sにぶつかるようなやり方で形成される。非限定的例として、光線Linの波長λは400nm~800nmに含まれる。
【0020】
加えて、メタ表面の構造は、前記入射角θにおいて、回折の次数0に関して5%未満の透過率を及び回折の次数-1又は+1に対応する回折放射線Ldiffに関して50%より高い透過率を有するように構成される。
【0021】
以下において、及びすべての図において、回折放射線Ldiffは入射放射線が主として回折(又は方向転換)される回折次数のものを表す。
【0022】
以下では、回折放射線Ldiffが基板の第2の表面の法線zに対してなす角度θは「回折角」と呼ばれる。本発明の1つの好適な実施形態によると、基板の2つの対向面S及びSは平行であり、及び回折角は回折面Sの法線と回折放射線とのなす角度に等しい。本発明の本明細書の残りでは、非限定的に、基板の2つの面S及びSは平行である。
【0023】
本発明の一実施形態によると、基板は、硼珪酸塩ガラス及びBK-7ガラスがそうであるように400nmから800nmのスペクトル範囲内で透明である光学ガラスで作られる。この実施形態では、上に述べたように、限度角度θはθ≒61°であり、したがって回折角θは61°より大きい。
【0024】
代替的に、別の実施形態によると、基板は石英又は融解石英で作られる。
【0025】
本発明の回折光学素子10は、回折の次数0に関して非常に低い透過率を有し、及び、ブレーズド回折格子と全く同様に、周囲媒体MA(基板の上の)が水溶性である場合に回折放射線の全反射(TIR)を可能にするために十分に大きい角度θで入射放射線の強度が(回折の次数+1に関して)回折の次数-1(又は逆もまた同様)へ主として方向転換されることを可能にする。基板内の回折放射線の全反射は、消散波が周囲媒体MA(回折放射線が全反射されける領域の上の)内で励起されることを可能にする。
【0026】
したがって、本発明の光学素子は、消散波が基板(通常はスライドガラス)と水溶性媒体内に保存される試料との間の界面において励起されることを必要とするTIRF顕微鏡検査法アプリケーションに特に好適である。具体的には、TIRF顕微鏡検査法では、回折の次数0の透過率は、入射放射線が透過される場合に蛍光体を含む試料により発射されるエピ蛍光放射線から生じる背景雑音を低減するために可能な限り低いことが望ましい。
【0027】
前述の効果を実現するために、数値シミュレーションを使用することにより、本発明者らは、ここでは本発明の第1の実施形態(図3Aにおいて詳述される)と第1の実施形態の変形形態(図4Aに示される)とを参照して説明される、特定タイプのメタ表面を開発した。本発明のすべての実施形態において、メタ表面は、互いに垂直であり且つ基板の表面に平行である2つの方向x、yにおいて周期的であるパターンから形成され、パターンの寸法Pは入射放射線の波長λより短い。パターンは、yに沿って直線的である第1のストリップセグメントPを含むサブパターンEを含む。
【0028】
本発明のメタ表面は、当業者に知られている方法を使用することにより基板上に生成される。非限定的例として、これらは、電子線リソグラフィ又はナノインプリントリソグラフィを使用することにより、及び次にパターン(及び必要に応じてサブパターン)を形成するためにプラズマエッチングすることにより構造化することにより、生成され得る。これらの方法は高速、再現可能、且つ比較的安価である。
【0029】
知られているように、方向xのパターンの寸法Pは以下の式により回折の次数m、入射放射線の波長λ、及び回折角θに関係する:
【数3】
【0030】
ここで、方向xのパターンPの寸法はメタ表面のパターンの繰り返しの周期を意味するものと理解され得る。
【0031】
式(2)と式(1)に基づき、本発明のすべての実施形態では、方向xのパターンの寸法PはP<λ/nが成立するようにされる。
【0032】
したがって、回折ビームの回折角は基板の表面Sと屈折率nの周囲媒体MAとの間の界面における臨界角より大きくなる。周囲媒体MAが水である場合、方向xのパターンの寸法PはP<λ/1.33が成立するようにされる。
【0033】
式(2)に示すように、方向xのパターンの寸法が小さいほど、回折角は大きい。加えて、式(1’)が示すように、回折角が大きいほど消散波の進入長は小さい。したがって、TIRF顕微鏡検査法への適用に関して、メタ表面のパターンの寸法が小さいほど試料の蛍光体の励起は薄層へより局所化されることになり、したがってデバイスの距離分解能を改善する。
【0034】
回折の次数-1又は+1の効率を最大化するために、及び次数0の透過を制限するために、すべての実施形態において、メタ表面の材料の屈折率nmatは基板の材料の屈折率nより高くなければならない。この条件は、回折の様々な次数の回折効率と入射放射線Linによる方向zのメタ表面内で励起されるBlochモード間の結合との関係の結果である。回折の次数0、1、-1の透過に関して、励起された伝搬性Blochモードは、ほぼ同じ振幅であるが異なる位相プロファイルを有する結合係数を保有し、したがって、回折の次数-1又は+1に関して建設的に加算されるが次数0に関して破壊的に加算される。したがって、本発明によるメタ表面により、入射放射線は主として回折の次数+1又は-1へ向けられる。
【0035】
図3Aは本発明の第1の実施形態による回折光学素子10の概略図を示す。この第1の実施形態は、前記サブパターンEから形成される点線Pの第1のストリップ(すなわち方向yにおいて非連続的ストリップ)M1を含む。点線Pは第1の直線的ストリップセグメントのy軸に沿った繰り返しに対応する。加えて、メタ表面が方向yにおいて連続である第2のストリップM2を含むように、周期パターンEはさらに、方向yにおいて直線的であり及びパターンEのyに沿った寸法全体にわたって延伸する第2のストリップセグメント(第2セグメントSPと呼ばれる)を含む。
【0036】
この実施形態ではしたがって、メタ表面は、yに沿って直線的である連続的ストリップM2のxに沿ったアレイを含み、各連続的ストリップ間に、yに沿ってまた延伸する点線のストリップM1を有する。
【0037】
実効媒体領域を実現するために十分である実効屈折率勾配をメタ表面のパターン内で生成するために、及びしたがって入射放射線が偏向又は回折されることを保証するために、パターンE内で第1のストリップ(したがって点線P)の面積が第2のセグメントSPの面積より小さいことが必要である。これらの面積は、点線により形成される領域と連続的ストリップM1により形成される領域との間の十分な実行屈折率変動を生成するように数値シミュレーションを介し判断される。
【0038】
同様に、点線P間の間隔は、点線により形成される領域の実効屈折率に影響を与え、及び、数値シミュレーションにより判断される。
【0039】
連続的な第2のストリップM2に対する点線の第1のストリップM1の相対位置Δyは、方向xにおける対称性の破綻を生成する効果があり、これは、メタ表面が入射放射線の強度を回折の別の次数よりむしろ次数1へ方向転換することを可能にする。第2のストリップに対する第1のストリップのこの相対位置は、メタ表面のすべての要素の寸法に依存しており、及び数値的RCWAシミュレーションにより最適化される(RCWAは、rigorous coupled-wave analysis(厳密結合波解析)の頭文字語である)。
【0040】
非限定的例として、この第1の実施形態では、第1のストリップの幅l1は30nm~500nmに含まれ、第2のストリップの幅l2は100nm~700nmに含まれ、及び点線Pの長さは60nm~800nmに含まれる。方向xにおけるパターンの寸法Pは300nm~1000nmに含まれ、及びサブパターンの方向yにおける寸法Pは300nm~1000nmに含まれる。ストリップの深さ(方向zにおけるメタ表面の寸法)は100nm~500nmに含まれる。通常、波長λは400nm~800nmに含まれる。
【0041】
図3Bは、-5°と5°の間に含まれる入射角の範囲に関する本発明の第1の実施形態による回折光学素子の回折効率を示す。非限定的に与えられるこの例では、第1のストリップの幅は160nmに等しく、第2のストリップの幅は61nmに等しく、及び点線の長さは322nmに等しい。第2のストリップに対する第1のストリップの相対位置は186nmに等しい。方向xにおけるパターンの寸法Pは465nmに等しく、及び方向yにおけるサブパターンの寸法Pは465nmに等しい。これらの透過率は640nmにおいて取得される。
【0042】
回折次数-1の効率は、回折次数+1の効率より高く、及び回折次数0の効率より非常に明確に高い。0°の入射角に関して、回折次数-1の効率は55%に等しく、回折次数+1の効率は15%に等しく、及び回折次数0の効率は約3%である。この例では、回折角θは65°に等しい。
【0043】
したがって、図3Aのメタ表面の構造は、入射放射線が主として回折次数-1へ方向転換されることを可能にし、次数0の透過率を非常に低く維持する。
【0044】
図4Aは本発明の第1の実施形態の一変形形態による回折光学素子の概略図を示す。この変形形態では、回折光学素子のメタ表面の各サブパターンEは、第1のストリップM1の2つの逐次的点線P間の置かれた円盤Cを含む。したがって第1のストリップM1は方向yにおける点線と円盤Cとの交番で形成される。
【0045】
第1の実施形態のこの変形では、円盤Cの径及びサブパターンE内の方向yにおける点線Pに対するその位置は、パターンEの実効屈折率に対するサブパターンE内の好適な実効屈折率を生成するようにRCWAシミュレーションにより最適化される。
【0046】
非限定的例として、第1の実施形態のこの変形形態では、円盤の径は30nm~500nmに含まれ、及びサブパターンの点線からの方向yにおけるその分離は20nm~100nmに含まれる。
【0047】
図4Bは、-5°~5°に含まれる入射角の範囲に関する本発明の第1の実施形態の変形形態による回折光学素子の回折効率を示す。非限定的に与えられるこの例では、第1のストリップM1の幅は170nmに等しく、第2のストリップM2の幅は31nmに等しく、及び点線Pの長さは246nmに等しい。第2のストリップM2に対する第1のストリップM1の相対位置は123nmに等しい。円盤の径は112nmに等しく、及びサブパターンの点線からの方向yのその分離は53nmに等しい。方向xにおけるパターンの寸法Pは465nmに等しく、及びサブパターンの方向yの寸法Pは465nmに等しい。これらの透過率は640nmにおいて取得される。
【0048】
したがって、この変形形態では、メタ表面はyに沿って直線的である連続的ストリップM2のxに沿ったアレイを含み、各連続的ストリップ間に、yに沿ってまた延伸する点線のストリップM1を有し、点線ストリップは各点線間に円盤Cを含む。
【0049】
回折次数-1、+1の効率は回折次数0の効率より非常に明確に高い。したがって、-5°の入射角に関して、回折次数-1の効率は51%に等しく、回折次数+1の効率は20%に等しく、及び回折次数0の効率は1%未満である。回折次数+1の効率は回折次数-1の効率に相当する。この例では、回折角θは65°に等しい。
【0050】
したがって、図4Aのメタ表面の構造は、入射放射線が主として回折次数-1へ方向転換されることを可能にする一方で、次数0の透過率を極低く維持する。
【0051】
本発明の別の主題は、上述のような回折光学素子10を含む全反射蛍光顕微鏡検査法により試料を撮像するためのデバイスD1である。デバイスD1の概略図が図5に示される。
【0052】
デバイスD1は、基板が透明であるスペクトル範囲内で光線Linを発射するための少なくとも1つの光源SLを含む。回折光学素子は、波長λにおいて光源SLにより発射された光線が入射角θでメタ表面MSにぶつかるように、及び前記回折光学素子により回折された光線Ldiffが基板の第2の面により全反射を介し反射されるように構成され、及び、消散波OEを基板の第2の表面Sの少なくとも1つの領域内に生成する。
【0053】
デバイスD1はさらに、前記消散波が生成され及び前記消散波により励起された蛍光放射線Flを生成する第2の表面の少なくとも1つの領域に応じて置かれた試料Echを含む。
【0054】
一実施形態では、試料Echは細胞培養の試料であり、細胞は、水溶性媒体内に保存され、及び基板SBと同一である材料で作られたスライド上で培養される。回折放射線Ldiffの回折角θは前記基板と水との間の全反射の臨界角より大きいので、第2の表面Sと水溶性媒体との間の界面において回折された放射線の全反射が消散波OEを生成する。これらの波形は、薄層(約100nmの厚さの)内に(試料内に)位置し及び蛍光画像の生成に寄与する蛍光体を励起する。
【0055】
デバイスD1は加えて、蛍光放射線F1を収集するために好適である対物レンズObjであって試料により発射された前記蛍光放射線を検出するために好適な検出器Detの方向へ向けるために好適な対物レンズObjを含む。
【0056】
回折放射線の伝搬の角度は基板内で一定のままなので、回折放射線は、基板の全長にわたって伝播し、消散波を基板の表面から反射の各領域内に生成する。これは、基板の方向xの寸法が許せば、消散波が生成される基板の表面から複数の反射の領域、したがって蛍光放射線が試料内で励起され得る複数の領域が存在することとなる、ということを意味する。
【0057】
消散波が生成される領域の横寸法(方向x、yにおける)は、メタ表面MSの横寸法及び入射放射線Linの光線の径の横寸法のうちの最小値により設定される。
【0058】
メタ表面MSの方向xにおける全横方向寸法は、回折角θ及び基板の厚さeにより設定される。具体的には、基板の第2の表面Sにより反射された回折放射線(反射放射線Lと呼ばれる)は、メタ表面MSを介して基板から抽出されてはならない。したがって、方向xにおけるメタ表面の横方向寸法xMSは、xMS<2esinθが成立するようにされる。
【0059】
デバイスD1は、TIRF顕微鏡検査法が本発明による回折光学素子10を使用することにより試料Echに対し行われることを可能にする。この回折光学素子10は、入射放射線が、光学的回折素子の基板と試料との間の界面において消散波を生成するために好適な方向に回折光学素子の基板を通って伝播するのに十分に偏位することを可能にする。
【0060】
したがって、デバイスD1は、細胞膜へ局所化される構造及び処理が回折限界よりはるかに良い軸方向の空間分解能で選択的に観測されることを可能にする。
【0061】
加えて、デバイスD1は、TIRF顕微鏡検査法が高NAの対物レンズを使用すること無く行われることを可能にし、従来技術のTIRF顕微鏡検査法デバイスに対してデバイスD1のコストを大幅に低減する。
【0062】
さらに、デバイスD1の回折光学素子の回折次数0の透過率は非常に低いので、入射放射線の直接透過の結果として試料により発射されるエピ蛍光放射線の強度は大幅に低減される。この放射線により生成される背景雑音は低減され、試料の薄層の蛍光画像のコントラストは改善される。
【0063】
本発明の一実施形態によると、光源SLと回折光学素子との間の入射光放射線の経路は自由空間を通る。この実験的配置は、単純であり、試料の励起領域が容易に制御されることを可能にする。この実施形態では、光源はメタ表面MSに極近接して置かれたレーザ源又はLED光源であり得る。光源が、メタ表面MSに極近接して置かれたLED光源である場合、試料Echを、メタ表面MSから方向xにおいて横に遠い消散波が生成される基板の第2の表面Sの領域の上に置くことが有利である。換言すれば、基板の表面からの複数の反射に対応する領域の上に試料を置くことが有利である。具体的には、メタ表面により散乱される寄生放射線(すなわちLEDにより発射された放射線)であって試料を照射する寄生放射線の強度は大幅に低減される。したがって、この寄生放射線により生成される背景雑音は低減され、コントラストが改善される。
【0064】
代替的に、別の実施形態によると、光源SLと回折光学素子との間の入射光放射線の経路は光ファイバを通り、及びデバイスD1は、光線Linが回折光学素子のメタ表面MSの方向へ向けられることを可能にする光ファイバ結合器(図5に示さない)を含む。本実施形態の利点は、光ファイバ結合器の好適な配置後は、その後のアラインメントを必要としないということである。この実施形態では、光源SLはレーザ源である。
【0065】
代替的に、別の実施形態によると、対物レンズObjはまた、メタ表面MSに入射する放射線Linを平行にするために好適である。この実施形態では、デバイスD1は、光源SLにより発射された入射放射線Linを対物レンズObjの物体焦点面上へ収束させる別のレンズ(図示せず)を含み、このとき放射線の像は対物レンズObjの画像面内の無限遠に合焦される。この実施形態では、入射放射線の入射角θは、反射放射線Lが対物レンズにより収集されないように構成される。
【0066】
本発明の一実施形態によると、回折光学素子は基板Sの前記第1の表面上に置かれる複数のメタ表面MS、MS、MSを含み、各メタ表面のパターンの前記方向xにおける寸法Pは異なる。したがって、各メタ表面は、他のメタ表面により回折される波長とは異なる波長の光線Linを回折するように構成される。本発明の本実施形態では、図5の撮像デバイスD1は波長チューニング可能であるという利点を有する。
【0067】
本発明の別の主題は、本発明による回折光学素子を含む表面プラズモン共鳴を介し生体試料を検出するためのデバイスD2である。デバイスD2の概略図が図6に示される。
【0068】
図6のデバイスの回折光学素子は複数(n個)のメタ表面MS、MS、…、MSを含み、各メタ表面の前記パターンの前記方向xにおける寸法Pは、第i番目メタ表面MSにより回折された放射線Ldiffが角度θ(d,i)で基板の前記第2の表面Sにぶつかるように、異なる。
【0069】
図6のデバイスD2はさらに、基板が透明であるスペクトル範囲内で光線Linを発射するために好適な少なくとも1つの光源SLを含む。この光源は、光線が入射角θでメタ表面に入射するように構成される。
【0070】
図6のデバイスD2はさらに、少なくとも1つの第2の基板S2、第2の基板の上に置かれた金属層Met、及び金属層の上に置かれた被解析層Anを含む試料Echを含む。
【0071】
本発明の一実施形態によると、被解析層は水溶性層である。
【0072】
試料Echは、前記回折放射線が試料の金属層により少なくとも部分的に反射されるように第1の基板SBの上に置かれ、これにより反射放射線Lが形成される。
【0073】
デバイスD2の回折光学素子はさらに、基板の第1の表面S上に置かれた光結合素子MSoutであって試料により反射された前記光線Lを自由空間へ結合するために好適な光結合素子MSoutを含む。
【0074】
本発明の一実施形態によると、光結合素子MSoutは、互いに垂直であり及び基板の表面に平行である2つの方向x、yにおいて周期的であるパターンEの繰り返しを介し形成される少なくとも1つの出口メタ表面を含み、前記パターンは、yに沿って直線的である第1のストリップセグメントPを含むサブパターンEを含み、前記出口メタ表面は基板の前記第1の表面S上に置かれる。
【0075】
本発明の1つの好適な実施形態によると、光結合素子MSoutは回折光学素子MSinの「鏡像」である。換言すれば、光学素子MSout及び回折光学素子MSnは方向zに平行な軸を中心に互いに軸対称である。
【0076】
図6のデバイスD2は、試料により反射され及び前記結合要素により自由空間へ結合された前記光線の強度を検出するために好適な検出器Detを含む。
【0077】
一実施形態によると、デバイスD2は加えて、前記結合要素により自由空間へ結合された反射放射線Lを収集するために及び検出器Detの方向へ向けるために好適な対物レンズObjを含む。
【0078】
回折光学素子は、メタ表面に関連付けられた回折角θが、金属面から反射されると、表面プラズモンの共振励起と前記回折放射線Ldiffの少なくとも部分的吸収とを生成するように、構成された少なくとも1つのメタ表面MSを含む。入射放射線が、金属層Metによる反射に関する表面プラズモン共鳴の励起を可能にする関連回折角θ(di)でメタ表面MSにより偏位されると、回折放射線は部分的に吸収され、反射放射線Lの強度は低下する。
【0079】
一実施形態によると、検出することが望まれ及び被解析層An内に存在する特定生物分子の吸着を可能にするように構成された化学的機能化層が、試料の金属層Metの上に置かれる。
【0080】
したがって、分子の有無を検出するために、光源SLを使用することにより各メタ表面MSを逐次的に照射することと、反射放射線Lの強度を使用することにより検出器Detを検出することとが必要である。被解析層Anから検出される分子が無い状態での層Metの表面プラズモン共鳴の励起の角度を、θ(SPR0)とする。このとき、表面プラズモン共鳴は、回折角θ(d,k)=θ(SPR0)に関連付けられたK番目メタ表面MSにより励起される。この単一メタ表面MSに関して、反射放射線Lの強度は、他のメタ表面により取得される反射放射線Lの強度と比較して低減される。
【0081】
検出される分子が被解析層内に存在すると、これらは金属層Metへ吸着することになり、したがって、表面プラズモン共鳴が励起される角度を変更する。次に、表面プラズモン共鳴が励起される角度をθ(SPR1)とする。
【0082】
したがって、表面プラズモン共鳴を励起する変化(回折角θ(dm)=θ(SPR1)に関連する)がメタ表面MS内で観測されると分子がメタ表面へ吸着した(反射放射線Lの強度が低下する)ということが検出される。
【0083】
図6のデバイスD2は、従来技術のデバイスに対して著しく単純化されたアセンブリにより、表面プラズモン共鳴を介し生物学的検出を行うことを可能にする。より正確には、本デバイスは、入射放射線Linの波長又は入射角θが変更されることを必要することなく、表面プラズモン共鳴を介し検出を可能にする。加えて、本デバイスは、表面プラズモン共鳴を励起するためにプリズム(このようなプリズムは嵩張り、アラインメントするのが複雑である)を結合することを主に使用する従来技術のデバイスとは異なり、アラインメントすることが容易である。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6