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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】シーリングプラグ
(51)【国際特許分類】
   F16B 13/04 20060101AFI20240805BHJP
   F16L 55/11 20060101ALI20240805BHJP
   F16L 55/132 20060101ALI20240805BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
F16B13/04 C
F16L55/11
F16L55/132
F16J15/06 L
F16J15/06 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022525849
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2020072908
(87)【国際公開番号】W WO2021089210
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】1916187.6
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515069484
【氏名又は名称】アブデル ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ハーサント カール
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06213699(US,B1)
【文献】特開昭60-125406(JP,A)
【文献】特表2011-511224(JP,A)
【文献】特表2005-506504(JP,A)
【文献】特開昭63-199911(JP,A)
【文献】実開昭56-146111(JP,U)
【文献】特表2018-505351(JP,A)
【文献】特開昭58-184310(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0290379(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 13/04
F16L 55/11
F16L 55/132
F16J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作孔(34)内に非貫通的に取り付けられることによって前記孔を塞いで密封するシーリングプラグであって、
第1の軸(A-A)を定めて所定の外径を有する概ね円筒形の中空スリーブ(12)と、
近位円筒形突出部(2)、遠位ステムヘッド(6)、及び近位円筒形突出部と遠位ヘッドとの間に位置する中央部分(4)を有するステム(200)と、
を備え、前記ステムヘッド(6)は前記中央部分の前記外径よりも大きな外径を有し、前記中央部分の前記外径は前記ステム近位円筒形突出部の前記外径よりも大きく、前記ステムは第2の軸(B-B)を定め、
前記ステムヘッド(6)は、前記ステム中央部分(4)に隣接する環状肩部(20)を有し、前記環状肩部は前記第2の軸(B-B)まで半径に対して鋭角(α)で傾斜し、前記環状肩部は内側肩部(21)を含み、
前記ステムヘッドは、前記スリーブの材料よりも硬い材料で形成され、
前記ステム中央部分は、前記スリーブ内に存在する時に、前記ステム中央部分の外側部分と前記スリーブの内側部分との間の摩擦係合によって前記第1の軸と前記第2の軸とが同軸的になるように前記スリーブと共に保持されるように配置され、
前記シーリングプラグは、前記ステム中央部分が前記ステムヘッド(6)に合流する前記地点における最小中央部分直径(18)まで前記ステム中央部分の前記外径が前記ステムの前記軸に対して前記ステム近位円筒形突出部から前記ステム遠位ヘッド(6)への方向にテーパ付けされることを特徴とする、シーリングプラグ。
【請求項2】
前記環状肩部(20)の傾斜は、前記ステム中央部分に面する凹部領域を形成する、
請求項1に記載のシーリングプラグ。
【請求項3】
前記第2の軸までの半径に対する前記環状肩部(20)の傾斜角は5°~25°である、
請求項1に記載のシーリングプラグ。
【請求項4】
前記環状肩部(20)の傾斜角は10°~15°である、
請求項3に記載のシーリングプラグ。
【請求項5】
前記環状肩部(20)の傾斜角は14°である、
請求項4記載のシーリングプラグ。
【請求項6】
前記ステムヘッドに、前記ステム中央部分に面する環状突出部(24)が形成される、
請求項1から5のいずれか1項に記載のシーリングプラグ。
【請求項7】
前記環状突出部(24)は、前記中空スリーブと係合するように配置される、
請求項6に記載のシーリングプラグ。
【請求項8】
ステム中央領域(4)に、前記遠位ヘッド(6)から前記近位円筒形突出部(2)に向かう方向に狭くなる軸方向テーパ(15)が形成される、
請求項1から7のいずれか1項に記載のシーリングプラグ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のシーリングプラグの設定方法であって、前記方法は、テーパ状の端部(30)を含むノーズピース(400)を有する設定ツール(600)を採用し、前記テーパ状の端部を通じて前記ツールによって前記ステム円筒形突出部(2)を把持することができ、前記方法は、
前記ステム円筒形突出部が前記孔から突出した状態で前記プラグを非貫通孔に挿入するステップと、
前記設定ツールノーズピースを前記ステム円筒形突出部上に通して前記ノーズピースを前記スリーブに当接させるステップと、
前記ステム円筒形突出部を前記設定ツールに向けて動かすことによって、前記ステムと前記スリーブとの間に相対的な軸方向の動きを生じさせるステップと、
を含み、前記方法は、前記ステムと前記スリーブとの間の前記相対的な動きが、前記ステムヘッドが軸方向に動いて前記スリーブに係合した時に、前記スリーブの前記材料が軸方向圧縮を受けて、最初に前記設定ツールの前記ノーズピースに隣接する前記ステムの前記近位端から開始して半径方向外向きに変形した後に前記中央ステム部分テーパに沿って変形し、前記テーパに沿って前記ステムヘッドに向かって半径方向内側に変形するようなものであることを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記ノーズピースの前記テーパは、前記スリーブの半径方向外向きの拡張を促すために凸状である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ステムに、前記シーリングプラグの設定時に前記捕らわれたステムに所定の軸方向力が加えられた時点で破砕するように適合された破断ネック部が形成される、
請求項9又は請求項10のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非貫通取り付け環境(blind installation environments)において使用されるシーリングプラグに関し、排他的な意味ではないが、特に油圧流体シーリング及び流量制御用途において使用できる非ねじ式プラグに関する。本発明は、これらのブラインドシーリングプラグと共に使用される取り付けツール及びこのようなプラグの適用方法にも関する。非貫通取り付けとは、シーリングプラグを挿入すべき(及びその流体密封シールを提供すべき)孔へのアクセスが片側からのみ可能であることを意味する。
【背景技術】
【0002】
ブラインドシーリングプラグは、一般に非貫通孔内の材料が半径方向に膨張する原理に基づいて動作する。プラグが半径方向に膨張して孔を塞ぐことにより、密封されたプラグを通る流体流を防ぐ。一般に、膨張作動にはプッシュタイプ及びプルタイプという2つのタイプが存在する。いずれの場合にも、孔内で膨張する材料よりも相対的に硬い材料を使用して、相対的に軟らかい膨張材料を孔内で半径方向外向きに流動させる。プッシュ方式では、プラグが設定された後にプッシャーが孔から取り出されることもあるのに対し、プル方式では、設定後にプーラーが孔内に拘束される。通常、このことは、プーラーに何らかの形態の構造的脆弱性が形成されている結果、プーラーが規定の負荷を受けて破砕することによってプーラーを作動させるものから分離し、従ってプラグが孔内に残ることを意味する。
【0003】
既知のプルタイプのシーリングプラグの例が欧州特許第1,440,272号に開示されている。この特許には、ステムの周囲に保持されたスリーブで構成された形態のシーリングプラグが開示されている。ステムは、スリーブの材料よりも相対的に硬い材料で形成されたヘッドを有する。ヘッドは、非貫通孔内におけるプラグの設定時にスリーブ材料に侵入する環状突出部を含む。環状突出部は、スリーブ内で設定されると、孔内における設定時にプラグのヘッドとスリーブとの間に流体密封シールを提供する。
【0004】
この種のシーリングプラグは効果的に機能するが、その構造は、変形するスリーブによる漸進的な孔埋め作用が達成されて既知のシーリングプラグと同様に設定中にスリーブが孔内で軸方向に動く傾向がないようにさらに制御される非貫通孔内での設定特性を有するプラグを提供するために改善できることが分かっている。また、これにより、スリーブ材料が孔の表面に押し付けられるため、スリーブ材料のより良好な閉じ込めが可能になるとともに、1,600barを上回る油などの非常に高い圧力であってもシールが孔から排出されることなく耐えることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許第1,440,272号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、これらの欠点を克服したシーリングプラグを提供するとともに、設定動作中及びその後に良好にスリーブ内に保持されるステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、その1つの態様において、好適な孔内に非貫通的に取り付けられることによって孔を塞いで密封するシーリングプラグであって、
第1の軸を定めて所定の外径を有する概ね円筒形の中空スリーブと、
近位円筒形突出部、遠位ヘッド、及び近位円筒形突出部と遠位ヘッドとの間に位置する中央部分を有するステムと、
を備え、ステムヘッドが中央部分の外径よりも大きな外径を有し、中央部分の外径がステム近位円筒形突出部の外径よりも大きく、ステムが第2の軸を定め、
ステムヘッドがスリーブの材料よりも硬い材料で形成され、
ステム中央部分が、スリーブ内に存在する時に、ステム中央部分の外側部分とスリーブの内側部分との間の摩擦係合によって第1の軸と第2の軸とが同軸的になるようにスリーブと共に保持されるように配置され、
シーリングプラグが、ステム中央部分がステムヘッドに合流する地点における最小中央部分直径までステム中央部分の外径がステムの軸に対してステム近位円筒形突出部からステム遠位ヘッドへの方向にテーパ付けされることを特徴とする、シーリングプラグを提供する。
【0008】
ステムヘッドは、ステム中央部分に隣接する環状肩部を有し、環状肩部は、第2の軸まで半径に対して鋭角で傾斜することが好ましい。このことは、プラグの設定中におけるスリーブ材料の半径方向流動の制御に役立つ。
【0009】
好ましい実施形態では、環状肩部の傾斜が、ステム中央部分に面する凹部領域を形成する。このことも、シーリングプラグの設定中における材料の流動を支援する。
【0010】
好ましくは第2の軸までの半径に対する肩部の傾斜角は5°~25°であり、より好ましくは10°~15°であり、さらに好ましくは肩部の傾斜角は14°である。
【0011】
ステムヘッドには、ステム中央部分に面する環状突出部が形成されることが有利である。この突出リングの形態を取ることができる環状突出部は、中空スリーブと係合するように配置することができる。これにより、ステムヘッドとスリーブとの間に、このような環状突出部が存在しない場合よりも良好な流体密封シールが提供される。
【0012】
別の態様では、本発明は、上記及び添付の特許請求の範囲に定めるシーリングプラグの設定方法を提供する。
【0013】
特許請求の範囲には、本発明の他の特徴も示す。
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態をほんの一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明によるシーリングプラグのステムの軸方向断面図である。
図2図1の拡大部分Aにおける詳細図である。
図3】本発明による未設定のシーリングプラグの断面図である。
図4図1のステムの等角図である。
図5図1のステムヘッドの拡大部分Dにおける詳細な断面図である。
図6】取り付け前の完全なシーリングプラグの概略図である。
図7】設定ツールに組み込まれ始める時点の図6のシーリングプラグを概略的に示す図であり、
図8】設定ツールによるシーリングプラグの取り付けの開始を示す図である。
図9図8の図の詳細な断面図である。
図10(a)】本発明によるシーリングプラグの順次的取り付け段階の概略図である。
図10(b)】本発明によるシーリングプラグの順次的取り付け段階の概略図である。
図10(c)】本発明によるシーリングプラグの順次的取り付け段階の概略図である。
図10(d)】本発明によるシーリングプラグの順次的取り付け段階の概略図である。
図11】取り付けられたシーリングプラグを示す図である。
図12】環状突出リングを含む本発明による代替のステムヘッドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に図1及び図2を参照すると、本発明によるステム200は、近位円筒形突出部2、中央部分4及び遠位ヘッド端部6という3つの主要領域を含むことが分かる。ステム200は、単一ユニットとして形成することも、又は複数の要素で形成することもできる。この例では、ステムが、熱処理された中炭素鋼の単一ユニットとして形成される。ステムの3つの領域は、それぞれ異なる外径を有する。ヘッド6は中央領域4よりも大きな外径を有する。中央領域4は近位円筒形突出部2よりも大きな外径を有する。これらの異なる外径の理由については後述する。ステム200の長さは本発明とは無関係である。また、本発明のシーリングプラグを配置するためのステムの把持方法も無関係である。
【0017】
後述するように、近位円筒形突出部2は、ステムをより容易に設定ツールに挿入できるように内向きにテーパ付けされた端部8で終端する。プラグの設定をさらに支援するために、この例ではステムがその軸方向範囲に沿って一連の環状溝10を有する。環状溝は、プラグの取り付け中に設定ツールが突出部2を効率的に把持して引っ張ることを可能にする。
【0018】
図3から分かるように、ステム200は、ステム200の材料よりも柔らかい材料で形成された外側スリーブ12内に収まるように配置される。この例では、スリーブ12が、アニール処理されたアルミニウム合金6061で形成される。スリーブ12は軸A-Aを定める。ステム200は第2の軸B-Bを定める(図2を参照)。
【0019】
シーリングプラグは、ステム200がスリーブ12内に収まってスリーブ12と同軸であるようなスリーブ12及びステム200の結合体で形成される。図3では、明確にするために軸A-Aのみを示しているが、当業者であれば、両軸A-A及びB-Bは同軸であり、この例では一致すると理解するであろう。
【0020】
図2を参照すると、中央領域4の構造が分かる。中央領域は、既知の態様では十分な軸方向負荷が加わると取り付けプロセス中にステム200が折れる位置を提供する脆弱ゾーン14を含む。当業者には明らかなように、ゾーン14においてステムが折れる力は、主にゾーン14の半径方向深さによって決定される。
【0021】
中央ゾーン4の最大外径は16に存在する。ここでの直径は、ステム200がスリーブ12に挿入された時にステムをスリーブ12内の適所に保持する締まり嵌めが存在するように、少なくともスリーブ12の内径と同じであるように選択される。この締まり嵌めは、ステム200及びスリーブ12が同軸的であって、アセンブリの取り扱い時に相対的な軸方向の動きが避けられることを確実にする。
【0022】
ゾーン14と中央ゾーン4の最大直径16との間にはテーパ領域15が位置する。このテーパ15は、スリーブ12をステム200上に組み立てやすくする。テーパ15は、最大直径16から脆弱領域14まで半径方向内向きであり、その目的は、ステム200上におけるスリーブ12の組み立てを可能にする導入部(lead-in)を提供することである。このテーパ15は(ステム200とスリーブ12の組み合わせである)プラグの形成中の組み立て支援であり、使用されているシーリングプラグの設定中には何の役割も果たさない。
【0023】
B-Bに沿ってステムの近位円筒形突出端部2からヘッド6の遠位端まで軸方向に(図2を見て右から左へ)移動すると、中央領域4の外径は50において最小直径地点18まで半径方向内向きにテーパ付けされている。この中央領域4に沿ったテーパの目的についても後述する。最小直径地点18とヘッド6との間には内側肩部21が存在する。内側肩部21は、最小直径位置18との接合部におけるステムヘッド6の半径方向内側部分にステムヘッド6の一部として形成される。この例では内側肩部21を示しているが、これは好ましい特徴であり、採用する必要はない。当業者であれば理解するように、本発明はこのような肩部21が存在せずとも十分に機能する。
【0024】
次に図5も参照すると、ステムヘッド6には、中央領域4に隣接する環状肩部20が形成されていることが分かる。この例では、肩部20が最小直径地点18において内側肩部21に当接する。肩部20は、半径R-Rに対して軸B-Bまで鋭角αで傾斜した表面22に沿って位置する。角度αは、5°~20°の範囲内であるように、好ましくは10°~15°の範囲内であるように選択される。この例では角度が14°である。いずれにせよ、この角度αは、半径R-Rに対する環状肩部20の傾斜がステムの中央部分4に面する凹部領域を形成するように選択される。この例では、凹部領域が、23における肩部の外側リムまで広がる。しかしながら、凹部領域は、中心軸B-Bからステムヘッド6の周縁部まで完全に放射状に広がる必要はない。この凹部領域は、(単一の連続した長さとは対照的に)軸方向中心と半径方向外周との間に、さらにはこれらの間の部分に部分的にのみ広がることもできる。また、この凹部領域を定める表面20は直線である必要はない。この凹部領域の目的については後述する。
【0025】
ステム200の等角図は図4で確認することができる。
【0026】
次に、一連の図6~11に、図1~5のシーリングプラグをどのように非貫通孔34内に設定するかを示す。図示の例では、孔34が(油圧弁ブロックなどの)加工物36内に形成される。
【0027】
図6の説明図には、スリーブ12内に保持されたステム200で形成された完全なシーリングプラグを示す。上述したように、ステム200は、ステム中央領域4の外径16及びスリーブ12の内径の選択によってもたらされるスリーブ12との間の締まり嵌めによってスリーブ12内に保持される。
【0028】
ステムヘッド6の外径まで引かれる半径R6は、スリーブ12の外径まで引かれる半径R12よりも大きいことが分かる。このような半径が選択される理由は、密封すべき非貫通孔34にプラグを挿入する際に、プラグを孔に挿入するプロセス中に孔を形成する材料によって(この例では、ステムの鋼よりも相対的に柔らかいアルミニウム材料で形成される)スリーブ12が損傷する恐れがあるからである。このことは、孔を形成する材料が鋼などである場合に特に顕著である。R6をR12よりも確実に大きくすることによって、スリーブが破損するリスクを回避することができる。本例では、参照数字26で示すR6とR12との間の差分が0.1mmであるが、いずれかの好適な差分を採用することができる。図6の左側から分かるように、ステムヘッド6の孔(図示せず)内への挿入を支援するために、ヘッド6の端部は、ヘッド6が孔34への挿入時に容易に孔内に移行してその中心に収まるように丸み28を帯び又は面取りすることができる。
【0029】
次に、図7に、設定ツール600のノーズピース400に挿入されている近位円筒形突出部2を示す。当業者はこのようなツールがブラインドシーリングプラグを設定するためにどのように動作するかを理解し認識しているので、ここでは設定ツール600についてはさらに説明しない。ツール600の目的は、スリーブ12に向かうヘッド6の相対的な動きを生じるように、スリーブ12を軸方向の動きに対して保持しながら突出部2を把持して軸方向力を加えることであると述べれば十分である。後述するように、ノーズピース400の前面30はテーパ状であり、この例では凸状の円錐形として示す。
【0030】
図8には、突出部2がノーズピース400を介してツール600内に完全に引き込まれてテーパ面30がスリーブ12に当接するようになる位置を示す。通常は、真空進角機構(vacuum advance mechanism)が突出部2をツール内に引き込み、スリーブ12を表面30に接して保持する。このように表面30とスリーブ12とを当接させる理由は、プラグの設定中にこのスリーブ12の端部がツール600に向かって軸方向に動くのを防ぐためである。ノーズピース400のテーパ面30は、スリーブ12に向かう凸状の円錐面を提供するように配置される。テーパがステム200の半径Rに対して形成する角度βは10°~20°であり、好ましくは14°~16°である。この例では角度が15°である。このことは、表面30とスリーブ12との間にテーパ状の隙間32が形成されることを意味し、その目的については後述する。
【0031】
次に図9を参照すると、テーパ面30が孔34内のスリーブ12に係合することに加え、ツール600の前方部材38がノーズピース400上の環状肩部として形成されて加工物36の表面に係合する(そして接触する)ことが分かる。
【0032】
プラグを設定するために、ツール600は、既知の方法で(図9の右側に向かって)突出部2に軸方向力を加える。
【0033】
次に、図10(a)~(d)にこの動作の結果を示す。図10(a)では、ツールによってステム200に加えられるわずかな開始時の軸方向力が、ステムをスリーブ12に対して動かすのに不十分である。
【0034】
ツール600によってステム200に加えられる力が、ステムとスリーブ12との間の相対的な動きを引き起こすほど十分になると、ツール600のノーズピース400の前方部材38が加工物36に当接して確動的に(positively)保持されるので、ツール600と加工物36との間の相対的な動きが防がれる。従って、唯一の許容される動きは、(矢印Mで示すように図の右側に向かう)孔34内のステム200の動きである。
【0035】
このステム200の動きの結果、ステムヘッド6がスリーブ12の左側に引き寄せられてスリーブ12に係合するようになる。ステムヘッド6とスリーブ12との間の最初の接触は、内側肩部21の接触である。内側肩部21はステムヘッド6の材料(ここでは鋼)で形成されており、スリーブ12の材料はこの材料よりも軟らかい(この例では、スリーブ材料はアルミニウムである)ので、肩部21の突出する外側リムがスリーブ12の端部に侵入するようになる。このスリーブの侵入はシール効果の一部である。これが図10(b)に示す状況である。
【0036】
次に、図10(c)に示すように、設定ツール600の軸方向の引張力によってステムヘッド6の動きが継続すると、ステムヘッド6の環状外側リム23とスリーブ12の半径方向外側部分との間に接触が生じる。これにより、参照数字42で示すようにやはりステムヘッド6がスリーブ12内に侵入するようになる。この侵入もシール効果の一部である。
【0037】
ステムヘッド6とスリーブ12との間の上記接触に伴って、スリーブ12の他方の側(図10の右側)とノーズピース400のテーパ面30との間にも接触が生じる。この場合も、ノーズピース400の材料(この例では硬化鋼)の方がスリーブ12の材料よりも硬いので、スリーブ12の右側の変形が発生する。(スリーブ12から見た)テーパ面30の凸形状に起因して、ここでのスリーブの変形によって(テーパ面30に最初に接触する)スリーブ12の半径方向内側部分44からスリーブ12の材料流動が開始するようになり、このスリーブ材料の(塑性流動である)流動は、軸B-Bから離れる半径方向外向き方向である。このことを図10(d)に示す。
【0038】
ステム200の動きによって引き起こされるスリーブ材料の最初の流動は、ノーズピースのテーパ30の形状によって引き起こされる流動であると理解されたい。換言すれば、(スリーブ12の右側における)スリーブ12の材料の半径方向外向きの塑性流動が最初の流動である。この流動の効果は、半径方向外向きに流動するスリーブ12材料を孔34の内面に接触するように押し込むことによって、孔34内の35で表記する領域におけるスリーブ12の軸方向の動きを完全に防ぐことである。(スリーブの変形が最初にスリーブの遠位端から発生する先行技術のシーリングプラグ設定動作において発生することが分かっている)設定プロセス中における孔34内のスリーブ12の軸方向の滑りは、スリーブ12と孔34表面との境界面に提供される出来上がったシーリング面の完全性を損なう恐れがあるので絶対に回避すべきである。
【0039】
設定ツール600に向かうステム200の継続的な動きは、スリーブ材料の継続的な流動を誘発する(この流動はスリーブ12の右側から開始し、そこから左側に向かって進んでいる)。この孔埋め作用は、ステムヘッド6が左から右へと動くにつれてスリーブ12が徐々に右から左へと孔34の内面に接触することによるものである。次の流動は、スリーブ12が孔34内でテーパ面30とステムヘッド6との間で圧迫されることによる半径方向の(半径方向外向きの)膨張である。スリーブ12の右側端部ではスリーブ12の軸方向の動きが(設定ツールのノーズピース前面30との接触によって)不可能であるため、スリーブ12の材料は、位置48において孔34の内面に到達して接触すると半径方向に膨張して孔34を埋める。
【0040】
スリーブ12の最終的な半径方向の動きは、ステムヘッド6に接触しているその左側において発生する。ここでの半径方向の動きは、ステムの中央領域4上にその最大直径から最小直径18まで形成されたテーパ50に起因して軸B-Bに向かう内向きの動きである。スリーブ12の外側部分は既に両領域35及び48において孔34の内側部分に接触しているので、この段階でのスリーブ材料の流動は、テーパ50とスリーブ12の内側との間に形成された隙間52内へのものであると理解されるであろう。この流動は、テーパ50と、ステムヘッドの肩部20の角度αとに起因する。これらの2つの特徴の複合効果により、スリーブ材料の塑性流動は、隙間52内、及び表面22とスリーブ12の左側端部との間の凹部内に半径方向内向きに強制されるようになる。
【0041】
ここでの半径方向内向きの動きによってスリーブ12による孔34の密封が完了し、ノーズピース400によってステム突出部2に継続的に軸方向力が加えられることによって破断ネック部(breakneck)14において(当業者であれば理解できる)歪み限度に達し、この時点でステム突出部2が折れて、図11に示すように孔34内に密封された設定プラグが残るようになる。
【0042】
図12に示すように、この例では鋭角のピーク形状で形成される環状リングである環状突出部24を任意に追加すると、設定動作中にスリーブ12の材料を半径方向外向きにずらして孔34をシールするとともに、半径方向内向きにずらして内側肩部21及びテーパ50をシールする役割をさらに果たすことができると理解できるであろう。また、環状突出部24は、ステムヘッド6と(ステムヘッド6に当接する)スリーブ12の端部との間に幅広いシール面をもたらして流体漏出抵抗を強化することもできる。
【0043】
当業者であれば、環状突出部24の存在は本発明の実用性にとって好ましいものの必須ではないと理解するであろう。環状突出部24は、肩部20上に存在する場合には、欧州特許第1,440,272号に開示されているものと同じ目的のためのもの、すなわちシーリングプラグの設定中に環状突出部24がスリーブ12の材料内に侵入し、これによって非貫通孔内でヘッド6とスリーブ12との間にさらなる効果的な流体密封シールを形成するためのものであることが分かる。上述したように、環状突出部24がスリーブ12の材料内に侵入できる理由は、ヘッド6の材料の方がスリーブ12の材料よりも硬いからである。
【0044】
上述した例におけるシーリングプラグの設定中には、ステムヘッド6によってスリーブ12に高い軸方向力(この例では、17.5kNで8mm径の孔34を密封する)が加えられることにより、結果として得られる高い(半径方向圧力は200MPaでピークに達することができ、破断ネック部14の破砕後には残留応力が約100MPaになる)半径方向応力に起因して孔34及び静的なテーパ状のノーズピース30内にスリーブ材料が効果的に軸方向に閉じ込められるようになると理解されるであろう。これらの応力は、孔34とスリーブ12との間、並びにスリーブ12とステム200表面(6、50及び46)との間に効果的なシールをもたらして漏出防止プラグを提供する役割を果たす。
【0045】
孔34内のステムヘッド6の密接な嵌合は、肩部の外側リム23の周囲でスリーブ12の材料が逃れるのを最小化する役割をさらに果たす。内側肩部21又は外側リム23上に形成される24などの環状突出部は、スリーブ12に接するステムヘッド6の独立したシーリング特徴を埋め込んで提供することにより、取り付けられたスリーブ12ボアを通じた漏れを防ぐ役割を果たす。同様に、孔34内におけるノーズピースの円錐形前面30の密接な嵌合は、このノーズピース前面30の周囲でスリーブ12の材料が設定ツール600に向かって逃がれるのを制限する。
【0046】
破断ネック部14が破砕すると、図12の矢印「N」によって示すように当業者に周知の方法でスリーブ12内の残りのステム200部分を左方向に付勢するように作用する反跳力が生じる。しかしながら、ステム200上のテーパ50と、隙間52に流入した半径方向内側の圧縮されたスリーブ12の材料との間に形成される密接な接触は、スリーブ12の外面と孔34との間に形成されるシールの有効性を低下させるように作用し得る相対的な軸方向の動きが存在しないことを確実にする。このテーパ50は、後でステム200の端部が外部の物体又は意図的な改竄によって予想外の衝撃を受けた場合にシールの完全性を維持する役割も果たす。
【0047】
上記の例では、ステム200がその軸方向範囲に沿って一連の環状溝10を有するように示しているが、当業者が利用できる代替例も存在する。例えば、ステム200の外面に螺旋状の溝を形成することもできる。この場合、設定ツール600のノーズピース400もステムの外部螺旋溝と回転係合する補完的な螺旋溝を有し、これによってツール600がステム200をスリーブ12に対して動かして既知の方法でプラグの取り付けを行うことが可能になる。実際には、例えばステムが雌ねじを有し、設定ツール600が相補的な雄ねじを有することができると理解されるであろう。しかしながら、ステムの外面がいずれかの形状を有するという要件も一切存在しない。
【0048】
当業者であれば、破断ネック部14は本発明に不要であると理解するであろう。代替例として、ツール600は、ステム200に所定の引張力を及ぼした後にステムから単純に分離することもできる。このような代替例は、例えば外面2に形成された螺旋溝外面に係合する回転引張ツール(spin-pull tool)によって可能になる。
【符号の説明】
【0049】
200 ステム
400 ノーズピース
600 設定ツール
2 近位円筒形突出部
4 中央領域
6 遠位ヘッド端部
8 ステムのテーパ状端部
10 ステム環状溝
12 スリーブ
13 前方テーパ領域
14 破断ステムの脆弱ゾーン
15 後方テーパ領域
16 中央部4の最大直径
18 中央部の最小直径
20 環状肩部
21 内側肩部
22 肩部20の表面
23 肩部の外側リム
24 環状突出部
26 ヘッドとスリーブとの間の直径差
28 ステムヘッドの丸み
30 ノーズピース前面
32 ノーズピースとスリーブとの間の隙間
34 非貫通孔
35 第1のスリーブ材料の流動領域
36 孔34が形成された加工物
38 ノーズピースの前方部材
42 ヘッド6のスリーブ12内への侵入
44 スリーブの半径方向内側部分
46 スリーブ12の半径方向内側部分
48 孔34とスリーブとの間の接触点
50 内部ステムテーパ
52 スリーブ12の内側とステムテーパ50との間の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12