(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】地熱回収を利用するオンデマンド電力生産のための方法
(51)【国際特許分類】
F24T 50/00 20180101AFI20240805BHJP
F03G 4/00 20060101ALI20240805BHJP
F01K 25/10 20060101ALI20240805BHJP
E21B 43/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
F24T50/00
F03G4/00 501
F01K25/10 Z
E21B43/00 C
(21)【出願番号】P 2022544163
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(86)【国際出願番号】 CA2020000127
(87)【国際公開番号】W WO2021146791
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-07-20
(32)【優先日】2020-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518327729
【氏名又は名称】エバー・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・テーブス
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー・シュワルツ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・レッドファーン
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ケアンズ
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0011573(US,A1)
【文献】カナダ国特許出願公開第03038294(CA,A1)
【文献】特開2014-025658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0262137(US,A1)
【文献】中国実用新案第201650630(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24T 50/00
F03G 4/00
F01K 25/10
E21B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地熱坑井システムの熱出力を制御するための方法であって、前記地熱坑井システムは、入口坑井と、出口坑井と、地熱層において前記入口坑井と前記出口坑井とを接続する相互接続坑井と、を有し、前記地熱坑井システムは、前記坑井の中に地層から熱チャージすることができる作動流体を含み、前記方法は、
前記地熱坑井システム特有の潜在的
な熱出力容量を越えるまたは以下の双方の熱チャージされた作動流体の熱出力を調節するために、前記地熱坑井システム内での前記作動流体の循環を調節するステップであって、
前記地熱坑井システム特有の潜在的な前記熱出力容量は、前記作動流体が一定の流量で特定の時間枠に亘って流れるベース負荷で動作する場合の容量であり、
前記循環の調節は、前記特定の時間枠に亘る平均熱出力が前記
特有の潜在的な熱出力容量以下となるように前記循環を調節することを含む、
ステップを含み、
前記作動流体の循環は、導入された熱サイフォンによって少なくとも部分的にもたらされる、
方法。
【請求項2】
前記熱出力は、不定である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱出力は、前記作動流体が、前記地層からの伝導による熱伝達を通じて熱チャージされるチャージ動作と、熱エネルギーが処理のために除去される放出動作と、の間で繰り返される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
処理が、電気エネルギー、熱エネルギー、およびこれらの組合せのうちの少なくとも1つへの変換を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
調節するステップが、前記作動流体の流量における変化、
作動流体の前記地熱坑井システムにおける在留時間、
熱出力の変動期間、
作動流体の熱チャージ期間、
電力発生デバイスへの熱放出、およびこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
チャージされた前記作動流体と電力発生デバイスとの間の相互作用を通じて、エネルギーをオンデマンドで最終使用者へと発生させるステップをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱チャージされた作動流体は、電力をオンデマンドで生産するために、放出サイクルにおいて前記特有の潜在的な熱出力容量を上回って循環させられる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記地層は、地熱層、難透水層、堆積岩層、火山岩層、高温層、可変の透水層、およびこれらの組合せを含む群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記地層は、実質的な亀裂、割れ目、空所、および/または破砕を含まない、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
亀裂、割れ目、空所、および/または破砕は、前記地層に誘導される、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
坑井を掘削することと同時に、前記亀裂、前記割れ目、前記空所、および/または前記破砕を封止するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
坑井を掘削することに続いて起こる、前記亀裂、前記割れ目、前記空所、および/または前記破砕を封止するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記作動流体は、抵抗低減添加物、界面活性剤、高分子化合物、懸濁液、生物学的添加物、安定剤、スケール防止剤、腐食防止剤、摩擦低減剤、凍結防止化学品、殺生物剤、炭化水素、アルコール、冷媒、相変化物質、有機流体、およびこれらの組合せを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
チャージされた前記作動流体と前記電力発生デバイスとの間の前記相互作用は、チャージされた前記作動流体の流量を増加させることで在留時間を最小にすることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
チャージされた前記作動流体からの熱エネルギーを前記地層に貯蔵するステップをさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記作動流体を、前記地層における隣接する坑井からのエネルギーのチャージされた作動流体で補完するステップをさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
補完するステップは、使用者の要求の下で、作動流体を、隣接する坑井から所定の坑井および電力発生デバイスへと別ルートで送ることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
動作における液圧損失は、熱サイフォン圧力の大きさの1.5倍未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
動作における液圧損失は、熱サイフォン圧力の大きさの1.0倍未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
間欠的な再生可能エネルギー発生方法を、請求項1に記載の方法と併合するステップをさらに含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記間欠的な再生可能エネルギー発生方法は、風力の方法、太陽光の方法、および電気化学の方法を含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽出可能な熱を有する地層からの閉ループエネルギー回収に関し、より詳細には、閉ループ生産システムを用いてオンデマンドでエネルギーを提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地質学的な熱/電力生産の技術における過去の活動は、かなり文書化されている。初期の例のうちの1つは、2012年7月12日に公開された、Vaughanらによる米国特許出願公開第20120174581号に見出せる。
【0003】
他の例には、2004年4月21日に公開された、Mickelsonによる米国特許出願公開第2007024572号、2009年8月26日に公開された、McHargueによる米国特許出願公開第201100480号、2012年10月9日に発行された、Lakicによる米国特許第8,281,591号、および、最近では、2020年1月7日に発行された、Muirらによる米国特許第10,527,026号がある。
【0004】
これらの参考文献は、先行技術の電力生産体についての熱回収における先駆的な開発を表している。それはそれとして有用であるが、電力生産デマンドの問題、および、間欠的な再生可能エネルギー源とどのように組み合わせるかに対処する上で有益または決定的でない。
【0005】
間欠的な再生可能エネルギーは、最近では化石燃料と競争力のある価格となってきており、現在、特定の区域(カリフォルニア、ドイツなど)では電力のうちの大きな割合(30~45%)を生産している。
【0006】
これらのカーボンフリー供給源は、温室効果ガスの排出を劇的に低減する潜在能力を有する。しかしながら、エネルギー発生の固有の断続性によって駆動される太陽光/風力がどれだけ電力伝送網へと組み込めるかには、限界がある。これらの間欠的または変動性の発生源は、出力調整不可能とも称される。
【0007】
電力伝送網における太陽光/風力の大きな普及率は、太陽が照っていないとき、および、風が吹いていないとき、生産されるエネルギーを置き換えることの難しさのため、システム統合に伴う問題を引き起こす。これは、大きな太陽光の普及率を有するカリフォルニアにおいて典型的に示され、口語的に「ダックカーブ」として知られているものを作り出す(https://en.wikipedia.org/wiki/Duck_curve)。
【0008】
現在カリフォルニアでは、太陽光施設は、典型的には2~4時間のリチウムイオン電池貯蔵といった、エネルギー貯蔵の何らかの手段なしでは構築することができない。しかしながら、8時間以上の真のエネルギー貯蔵能力は、極めて高額である。
【0009】
NREL「Electricity Generation Baseline Report」(https://www.nrel.gov/docs/fy17osti/67645.pdf)によって書かれた電力源についての包括的な報告は、出力調整不可能な技術を統合することにおける問題を記載している。現在、伝送網の残りのおおよそ50%を脱炭素させるための実行可能な解決策はない。
【0010】
間欠的な再生可能エネルギー源を統合することに伴う別の問題は、再生可能エネルギー源が、下降の高速ランピングと呼ばれる、非常に素早く低下しようとすることである。したがって、出力調整可能な電力源において望まれる重要で価値のある特徴は、風力/太陽光からの急速な減少を埋め合わせる上昇の「高速ランピング」の能力である。多くの技術が、この高速ランピング能力を欠いている(例えば、石炭、原子力、およびいくつかの種類のガスのエネルギー発生は、高速ランピングではない)。
【0011】
難しいのは、太陽光/風力が利用可能でないとき、夕方および夜間に出力するコスト効率の良いエネルギーシステムを開発することである。
【0012】
従来の地熱は、再生可能で出力調整可能な電力を提供するために、自然なままの適合であったと思われる。しかしながら、従来の地熱システムは、柔軟/出力調整可能な電力出力を提供する能力を妨げるいくつかの基本的な問題のため、ベース負荷の様態で動作する。
【0013】
地熱貯留部からの流れは、多大な寄生ポンプ損失を被ることなく加速させることができない。これは、岩盤の貯留部の中でのダルシー流れ状態および破砕流れ状態のためであり、著しいエネルギーが、流速を通常のベース負荷の動作点を上回るように加速させるために必要とされる。
【0014】
貯留部は加圧させることができるが、これは、貯留部の含有物に損失をもたらし、破砕を誘導し、誘導された地震活動を引き起こす可能性がある。
【0015】
ランピングの間の総計の電力増加を打ち消してしまう寄生損失に加えて、従来の地熱では、ランピングの流れの相当の上下、砂の発生、ライナ損傷、ポンプ動作範囲、液体/気体の流れの状態の変動性、貯留部内の地質工学的問題を引き起こす熱膨張過程および冷却過程、注入坑井の閉塞などによって引き起こされる数々の動作上の問題がある。
【0016】
米国エネルギー省からの提案についての要求(https://www.sbir.gov/sbirsearch/detail/1523867)において、以下のことが示されている。「出力調整可能な発生とは、命令に従って出力された電力を、オン、オフ、または調整することができる電気の供給源を指す。地熱施設は、出力調整可能な電力ではなくベース負荷の電力のために通常は使用される。ハワイにおける8MW Puna Expansion Facilityは、最初の完全に出力調整可能な地熱電力施設(Nordquistら、GRC Transactions、Vol. 37、2013)である。Ormatチームによって記載されているように、完全な出力調整可能性へのベース負荷の電力施設の適用は、容易ではなかった。施設は、その電力出力を、要求されたランプ速度に応答して素早く調整し、その周波数を、伝送網の電力に近い許容範囲内で維持することが必要とされる。これは、熱源が要求における変化に素早く自然に応答しないため、地熱施設にとって難しいことであった。この難しさに対処するために、Ormatは、発生機器の周りに迂回路を必要とされるように提供する一方で、地熱流体の流れを比較的一定の速度で維持することを決めた。部分負荷において、地熱流体の一部は地表へと汲み上げられ、発生機器を迂回し、有用なエンタルピーを抽出することなく地面へと再び注入される。この手法は堅牢であるが、一定の最大限の流れでのポンプ電力の要件のため、部分負荷において大きな寄生電力の引き抜きを必ず被る。」
【0017】
上記の例におけるこの地熱貯留部(地下システム)は、最大容量で製作されていない。いわゆる出力調整可能性は、実際には、地熱の地下容量に基づいて、小さい設備利用率で動作すること、または、ほとんどの時間について、地熱システムの潜在的な熱出力容量未満でシステムを動作させ、出力調整するときに潜在的な熱出力容量と同等で動作することである。
【0018】
他の研究者は、圧縮空気エネルギー貯蔵における空気、https://asmedigitalcollection.asme.org/memagazineselect/article/137/12/36/380449/Earth-BatteryCarbon-Dioxide-Sequestration-Utilityの文献におけるCO2、または加圧水について、貯蔵媒体として地下を使用することに注力している。これらのシステムは、すべての同様の欠点に直面している。重大な問題は、それらが開放システムであり(システム内の作動流体の体積が常に変化している)、そのため、多孔性媒体において、および、広範囲にわたって変化し得る破砕した網状組織において、流れを制御および管理する難しさに悩まされる。さらに、それらシステムは、エネルギー生産システムというより、主としてエネルギー貯蔵システムである。
【0019】
また他の研究者は、最終使用者へ出力される毎日のエネルギーを最適化するために、地熱システムによって生産された熱を貯蔵するための、地表における熱エネルギー貯蔵(TES: Thermal Energy Storage)システムを使用することに注目している。しかしながら、重要な難しさは、感知可能な熱交換器による温度の損失であり、その結果生じるより低いラウンドトリップ効率である。さらに、電気発生に適する高温のための大規模なTESの設置コストが現在法外となっている。
【0020】
はるかに異なるが、なお関連する先行技術の分野は、低温地下熱エネルギー貯蔵システムである。これらは、ボアホール熱エネルギー貯蔵(BTES: Borehole Thermal Energy Storage)と帯水層熱エネルギー貯蔵(ATES: Aquifer Thermal Energy Storage)との2つの変形がある。ATESおよびBTESは、夏から冬へ、および冬から夏へ、季節のエネルギーを貯蔵して引き出す本質的に低い温度のヒートポンプシステムである。BTESは、夏における空調の排熱から熱を、周囲の岩との伝導による熱伝達を介して貯蔵し、そして冬にその熱を引き出す。ATESとBTESとの両方は、エネルギー発生システムではなく、単純なエネルギー貯蔵システムでさえある。むしろ、それらは、エネルギーで駆動されるヒートポンプとの組合せで動作し、完全なシステムは、標準的なACおよび空間を加熱する技術より効率的であるが、エネルギーを消費する側である。
【0021】
極低温空気貯蔵は、再生可能エネルギーシステムによって発生させられた過剰な電気を貯蔵し、必要とされるときに放出するための魅力的な技術である。貯蔵技術のラウンドトリップ効率は、地熱との組合せで使用されるときに増加する。この種類の統合は、例えば、Cetinらによる「Cryogenic energy storage powered by geothermal energy」、vol 77 Geothermics、2018においてなど、何人かの研究者によって調査されている。
【0022】
上記の学術的な文献は、本明細書で開示されている出力調整可能地熱システムというより、ベース負荷の様態で動作させられる地熱システムを検討している。この方法論および他の先行技術の主な難しさは、極低温の放出が数時間のピーク時間にわたって起こるが、地熱出力はベース負荷(つまり、24時間にわたる平坦な出力)であることである。
【0023】
現在の技術およびベース負荷の限定による問題を改善するために必要とされていることは、オンデマンドの電力をいつでも最終使用者に提供し、必要とされるときに間欠的な再生可能エネルギーを補完および最適化する新規のパラダイムである。
【0024】
本明細書でさらに検討される本技術は、ベース負荷の供給源、出力調整不可能な再生可能エネルギー、または電池に依拠することなく、電力発生、インフラ、および分配における現在の問題のすべてに対処する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】米国特許出願公開第20120174581号
【文献】米国特許出願公開第2007024572号
【文献】米国特許出願公開第201100480号
【文献】米国特許第8,281,591号
【文献】米国特許第10,527,026号
【文献】PCT/CA2019000076
【非特許文献】
【0026】
【文献】https://en.wikipedia.org/wiki/Duck_curve
【文献】NREL「Electricity Generation Baseline Report」(https://www.nrel.gov/docs/fy17osti/67645.pdf)
【文献】https://www.sbir.gov/sbirsearch/detail/1523867
【文献】Nordquistら、GRC Transactions、Vol. 37、2013
【文献】https://asmedigitalcollection.asme.org/memagazineselect/article/137/12/36/380449/Earth-BatteryCarbon-Dioxide-Sequestration-Utility
【文献】Cetinら、「Cryogenic energy storage powered by geothermal energy」、vol 77 Geothermics、2018
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の一実施形態の1つの目的は、閉ループで設計された地熱回収システムを利用して、出力調整可能で、拡張性があり、かつ高速ランピングの電気を生産するための方法を提供することである。
【0028】
本発明の一実施形態のさらなる目的は、分配期間にわたって平均化された変動した不連続の出力サイクルと実質的に等しいベースロード分配を有する地熱電力出力システムを提供することである。
【0029】
本発明の一実施形態の別の目的は、地層から熱チャージすることができる作動流体を含む坑井システムの特有の潜在的な熱出力容量を最適化するための方法であって、そのシステムは、入口坑井と出口坑井とを有し、特有の潜在的な熱出力容量を有する地層の中に配置され、所定の特有の潜在的な熱出力容量を中心に、熱チャージされた作動流体からの熱出力を変動させるために、坑井システム内での作動流体の循環を調節するステップであって、平均化された変動させられた熱出力は、地層の所定の潜在的な熱出力容量と実質的に一致する、ステップを含む方法を提供することである。
【0030】
この実施形態では、熱出力は、不定であり、作動流体が、地層から伝導による熱伝達を通じて熱チャージされるチャージ動作と、熱エネルギーが処理のために除去される放出動作との間で繰り返される。
【0031】
処理は、電気エネルギー、熱エネルギー、およびこれらの組合せのうちの少なくとも1つへの変換を含み得る。
【0032】
調節に関して、これは、作動流体の流量における変化、システムにおける在留時間、変動期間、熱チャージ期間、熱放出、およびこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む多くの形態を取り得る。
【0033】
方法の実施は、チャージされた作動流体と電力発生デバイスとの間の相互作用を通じて、エネルギーをオンデマンドで最終使用者へ発生させるステップを可能とする。
【0034】
本発明の一実施形態のさらなる目的は、熱を生産する地層に入口坑井、出口坑井を有する坑井システムにより、電力をオンデマンドで最終使用者に提供するための方法であって、入口と出口とを動作可能に接続する電力発生デバイスを伴う閉ループを形成するステップと、循環する作動流体を、地層からの伝導を通じて熱的に負荷を掛けるために、作動流体をループにおいて所定の在留時間で循環させるステップと、ループ内の熱的に負荷の掛けられた作動流体の流量を、使用者の要求に基づいて、電力発生のために調節するステップとを含む方法を提供することである。
【0035】
地層に起因させられる特定のパラメータに応じて、入口坑井および出口坑井は、熱を生産する地層においての伝導のために配置される相互接続区域と動作可能に流体的に接続され得る。
【0036】
多数の他の利点のうち、熱回収および坑井システムのネットワーク化を高めるために、入口坑井および出口坑井は、複数の相互接続区域と、地層の中において所定のパターンで接続され得る。出願者の特許権を受けて公開された技術のおかげで、坑井システム、相互接続区分、坑井システムのネットワークのパターニングは、単純化されており、システム設計の観点から制限がない。
【0037】
電力の作成、出力管理、および出力調整可能性のために、作動流体の循環の選択的な調節が、地層の特有の所定の潜在的な熱出力容量を中心に、熱チャージされた作動流体からの熱出力を変動させるために、坑井システムの複数の相互接続区域のうちの所定の区域内で実施されてもよく、平均化された変動させられた熱出力は、前記地層の前記所定の潜在的な熱出力容量と実質的に一致する。
【0038】
坑井システムが、複数の相互接続区域を伴う複数の坑井システムを含む場合、作動流体の選択的な調節は、使用者が選択した手法で、隣接する坑井システムと同じ特定の時間および特定の順序で、相互接続区域のうちの一部または全部において、坑井システムの個別の相互接続区域にもたらされ得る。
【0039】
方法は、展開における柔軟性に基づいており、したがって、岩石の種類、つまり、高い透水性、低い透水性、高温乾燥岩石、地熱層、堆積岩層、火山岩層、可変の透水層、およびこれらの組合せに関係なく、90℃を超える温度を有する任意の地層が利用できる。柔軟性の促進において、方法論は、岩石層の不一致によって、つまり、自然に割れ目のある岩石、自然に破砕した岩石、自然に亀裂した岩石、合成的に割れ目のある岩石、合成的に破砕した岩石、合成的に亀裂した岩石、およびこれらの組合せによって限定されない。方法は、任意の状況において適用できる。
【0040】
作動流体に関して、望ましい流体は、界面活性剤などの抵抗低減添加物、高分子化合物、懸濁液、生物学的添加物、安定剤、スケール防止剤、腐食防止剤、摩擦低減剤、凍結防止化学品、殺生物剤、炭化水素、アルコール、有機流体、およびこれらの組合せを含み得る水であり得る。
【0041】
他の適切な流体には、超臨界二酸化炭素、例えばC1~C10といった低級アルカン、相変化物質を含む流体、冷媒があり得る。例は数多くあり、先行技術から容易に導き出せる。
【0042】
坑井システムの保守を促進するための添加物が、作動流体の熱力学的効率を増大させるための化合物として、作動流体における使用のために検討されている。
【0043】
本発明の一実施形態のまた別の目的は、地熱機構で、エネルギーをオンデマンドで最終使用者に提供するための方法であって、機構は、入口坑井と、出口坑井と、それらの間における地層での相互接続区域とを備え、入口と出口とを接続する電力発生デバイスを伴う閉地熱ループを形成するステップと、循環する作動流体を、地層からの伝導を通じて熱的に負荷を掛けるために、作動流体をループにおいて所定の在留時間で循環させるステップと、ループ内の熱的に負荷の掛けられた作動流体の流量を、使用者の要求に基づいて適合させるステップとを含む方法を提供することである。
【0044】
地熱坑井と相互接続区域とは、新規に形成され得る、または、既存であり得る。既存である場合、ここでの方法論は、効率を高めるために既存の設備を改造するように、容易に適合させることができる。
【0045】
エネルギーは、使用者の要求の期間にわたって電力発生を容易にするのに十分な在留時間で、提案された最終使用に応じた電気エネルギーまたは熱エネルギーであり得る。
【0046】
ループ内でのチャージされた作動流体と電力発生デバイスとの間の相互作用は、チャージされた作動流体の流量を増加させることで在留時間を最小にすることを含む。
【0047】
さらなる追加の効率のために、チャージされた作動流体からの熱エネルギーが地熱層に貯蔵されてもよく、作動流体は、地層における隣接する坑井から、エネルギーのチャージされた作動流体で補完されてもよい。補完は、使用者の要求の下で、作動流体を、隣接する坑井から坑井および電力発生デバイスへと別ルートで送る形態を取ることができる。
【0048】
本発明の一実施形態のまた別の目的は、電力をオンデマンドで最終使用者に送達するための方法であって、入口坑井、出口坑井、および、入口坑井と出口坑井との間の、少なくとも90℃の温度を有する地層内に配置される坑井相互接続区域を提供するステップであって、前記地層は所定の潜在的な熱容量を有する、ステップと、坑井と電力発生デバイスとの間の閉ループにおける坑井配置からエネルギーを回収するために、出口坑井を電力発生デバイスに接続することを通じて、地層内で閉ループ構成を実施するステップであって、閉ループ構成は、利用可能な潜在的な熱容量の中に所定のエネルギー出力を有する、ステップと、エネルギーのチャージされた作動流体を形成するために、作動流体を、少なくとも相互接続区域内において所定の在留時間で、ループ内において循環させるステップと、チャージされた作動流体と電力発生デバイスとの間の相互作用を通じて、エネルギーをオンデマンドで最終使用者へ発生させるステップとを含む方法を提供する。
【0049】
本明細書において方法によってすでに確立されている柔軟性と一致して、相互接続区域は、覆われてもよく、覆いが取られてもよく、補強されてもよく、伝導の増加のために化学的に処置されてもよく、化学的に封止されてもよく、封止されるときに自己修復してもよく、熱的に封止されてもよく、任意選択で孔の開けられた単一の管を含んでもよく、任意選択で孔の開けられた同軸の管を含んでもよく、および、連続または不連続の構成でこれらの組合せを含んでもよい。作動流体は、破砕、または発生した透水性を封止することで、裸孔の完全性を保つように設計され得る。裸孔に破壊または圧縮の失陥の危険性がある場合、流体密度は、地層に十分な圧縮強度を提供するために増加させられ得る。逆に、地層が十分に冷却されている場合、引っ張りの失陥の危険性があり得、その場合には、流体は、低下した密度を有するように選択され得る。
【0050】
作動流体は、所定のエネルギー出力容量を中心に熱出力を変動させて、平均熱出力が所定の潜在的な熱出力容量と等しくなり得る電力をオンデマンドで生産するために、ループ内において変化する流量で循環させられ得る。
【0051】
代替的な実施形態では、入口坑井および出口坑井と共通の複数の相互接続区域(多元的)が、前記地層の熱勾配からの熱回収を最大化するための構成で配置される。配置のための設置面積が問題である場合、入口坑井と出口坑井とは同じ場所に配置され得る。
【0052】
さらなる代替的な実施形態では、地層内の熱勾配を利用するために、相互接続区域は、隣接する相互接続区域に対して対称に、隣接する相互接続区域に対して非対称に、隣接する相互接続区域に対して櫛歯状に、隣接する相互接続区域に対して同一平面上の関係で、隣接する相互接続区域に対して平行な平面上の関係で、隔離またはグループ化されたネットワークで、およびそれらの適切な組合せで配置され得る。
【0053】
本明細書において後でさらに明確にされる向上した分配の目的のために、隣接するループの出口坑井を伴う複数の閉ループが、芋蔓式構成の形態を取る追加の坑井の入口坑井に選択的に接続されてもよく、芋蔓式構成はさらに、使用者の選択のために弁で調節され得る。
【0054】
本発明の一実施形態の別の目的は、既存の伝送網において電力分配を最適化するための方法であって、設計された最大電力生産量、および、既存の伝送網における第2の有効電力生産量を有する間欠的電力生産構成を提供するステップと、間欠的電力生産構成に隣接する熱を生む地層内にエネルギー回収生産閉ループを位置決めするステップであって、ループは、入口坑井、出口坑井、および、入口坑井と出口坑井との間の相互接続区分を備え、相互接続区分は、地層における熱回収を容易にするように地層に位置決めされ、地層は、利用可能な潜在的な熱容量を有する、ステップと、利用可能な潜在的な熱容量から所定のエネルギー出力を生産するために、閉ループを地層内における構成に位置決めするステップと、循環する作動流体を、地層からの伝導を通じて熱的にチャージするために、作動流体をループ内において所定の在留時間で循環させるステップと、電力生産を、第2の有効電力生産量を上回り、かつ、設計された最大電力生産量を下回る量へと増加させるために、間欠的電力生産構成を通じて作動流体を選択的に熱的に放出するステップであって、それによって、全体の電力生産が、既存の伝送網を用いて最適化される、ステップとを含む方法を提供することである。
【0055】
間欠的電力生産構成とエネルギー回収生産閉ループとは、エネルギーをオンデマンドで生産するために、共通の地理的設置面積に位置決めされ得る。
【0056】
間欠的電力生産構成を通る作動流体の選択的な熱放出は、著しい使用者の電力要求の期間の間にもたらされ、間欠的電力生産構成の既存の伝送網の伝送容量およびインフラを用いて伝送される。間欠的供給源は、風力供給源、太陽光供給源、および電池供給源として広く知られている。
【0057】
本発明の一実施形態のまたさらなる目的は、生産された電力を最終使用者へ伝送するための電力伝送網を提供するステップであって、伝送網は出力容量を有する、ステップと、指定された最大電力生産量、および、伝送網における第2の有効電力生産量を有する電力生産構成を提供するステップと、電力生産構成に隣接する熱を生む地層内にエネルギー回収生産閉ループを位置決めするステップであって、ループは、入口坑井、出口坑井、および、入口坑井と出口坑井との間の相互接続区分を備え、相互接続区分は、地層における熱回収を容易にするように地層に位置決めされ、地層は、利用可能な潜在的な熱容量を有する、ステップと、利用可能な潜在的な熱容量から所定のエネルギー出力を生産するために、閉ループを地層内における構成に位置決めするステップと、循環する作動流体を、地層からの伝導を通じて熱的にチャージするために、作動流体をループ内において所定の在留時間で循環させるステップと、電力伝送網を通じた容量までの電力生産を維持するために、電力生産構成を通じて作動流体を選択的に熱的に放出するステップとを含む電力生産方法を提供することである。
【0058】
電力伝送網は、地理的領域にわたって電力の分配のための複数の分かれた分配ゾーンを含み得、ゾーンのうちの少なくとも一部はエネルギー回収生産閉ループを含む。
【0059】
したがって、本発明の一実施形態のさらなる目的は、使用者が予め決定した電力分配を提供するための電力施設であって、熱を生産する地層における作動流体の循環を調節し、それによって熱エネルギーが作動流体へと伝達されるように構成され、分配期間にわたって平均化された不連続出力サイクルを変動させるための熱エネルギー回収装置と、平均化された電力出力を、使用者が予め決定した電力出力として分配するための分配装置とを備える電力施設を提供することである。
【0060】
このように本発明を概して説明してきたが、ここで、添付の図面が参照される。
【0061】
産業上の利用可能性
本明細書における技術は、エネルギー回収および電力生産技術において利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】熱を生む地層に配置されたエネルギー回収構成の概略図である。
【
図2A】回収構成における使用のための交互の相互接続区域または多元的区域の概略図である。
【
図2B】回収構成における使用のための交互の相互接続区域または多元的区域の概略図である。
【
図2C】回収構成における使用のための交互の相互接続区域または多元的区域の概略図である。
【
図2D】回収構成における使用のための交互の相互接続区域または多元的区域の概略図である。
【
図4】各々の状況についての時間の関数としての温度(熱出力)を描写する一連の動作状況のグラフである。
【
図5】数日間にわたって提供されたデータによる、
図4におけるグラフと同様のグラフである。
【
図6】
図4および
図5において参照された特定の状況の30年間にわたる熱出力の概略図である。
【
図7】他の出力調整不可能な再生可能エネルギーと統合された出力調整可能地熱システムの概略図である。
【
図8】ネットワークにおける複数の出力調整可能地熱ループの概略図である。
【
図9】出力調整可能地熱システムとの出力調整不可能な再生可能エネルギーの統合を計画、制御、および最適化するための過程を示す流れ図である。
【
図10】発電機のネットワークの組み合わされた電力出力容量の概略図である。
【
図11】電気伝送網の飽和状態を電力の間欠的な供給源で軽減するための概略図である。
【
図12】本発明の代替的な実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図において使用されている同様の符号は、同様の要素を指示している。
【0064】
ここで図面を参照すると、
図1は、本明細書において記述される方法の実践的な実施形態に使用される全体的な構成の例を示している。符号10は、全体的な構成を全体的に参照している。少なくとも90℃の温度を有し、典型的には150℃を上回り、または600℃以上でさえあり得る熱エネルギーを有する地層12は、同じ場所に配置され、少なくとも1つの相互接続区域18と相互接続され得る入口坑井14および出口坑井16を有する地下のループ構成を含む。例では、いくつかの区域18が描写されている。熱勾配は地層の特徴に依存することになる。
【0065】
地表20において、入口14および出口16は電力発生デバイス22に接続されている。デバイス22は、簡潔にするためにLと称されることになる閉ループとしてのループ構成を完結させる。明らかなように、区域18は、周囲の地層12から熱エネルギーを回収する目的のために、地層の中に配置されている。明確にするために、閉ループL、具体的には区域18は、流体が輸送され得る割れ目、破砕、亀裂を含み得るが、これは、局所的な多方向の流れの特異性があるという事実にも拘わらず、閉ループの概念の特質を損なうことはなく、流れパターンは、入口、相互接続、出口、電力発生デバイス22の要素の組合せにおいて閉じられたままである。
【0066】
地層は、先に言及されたような温度を提供する任意の地層であり得る。この点において、例は、地熱層、難透水層、高温乾燥岩石、堆積岩層、火山岩層、高温層、可変の透水層、およびこれらの組合せが含む。これらは単なる例であり、いくつもの他のものが本発明の範囲内にある。
【0067】
地層は、その性質に依存して、当業者に知られている適切な技術によって前もって分析され得る所定の潜在的な熱出力容量を有することになる。各々の地層は、当然ながら、異なる出力容量を有することになる。
【0068】
これを考慮して、各々のループLは、とりわけ、区域18の数、区域18の地理的な配置、深さ、長さ、地層温度、地層岩石特性など、その設計パラメータを反映した所定の潜在的な熱出力容量を有する。これらのパラメータのすべてが、当業者には明らかとなる。
【0069】
回収のために、作動流体が、ループLを通じて循環させられ、出口坑井16を出て電力発生デバイス22を通じて流れ、電力発生デバイス22は、符号24によって全体的に参照されている最終使用者による使用のために、熱エネルギーおよび/もしくは運動エネルギーを電気へと変換する、ならびに/または、本明細書において後で検討されている代替の使用のために、符号26において再分配する。指示されているように循環させられると、作動流体は入口14へと再導入される。
【0070】
作動流体は、チャージ期間の間、比較的低い流量において閉ループLを通じて作動流体を循環することによって、熱的に「チャージ」される、または、熱的に負荷が掛けられる。地下流路内での作動流体の在留時間は増加させられ、したがって、流体は、周囲の地層12との伝導による熱伝達を介して、高温まで加熱させられる。
【0071】
システムは、流量を相当に増加させ、閉回路Lの高温の地下部分の中に多量の加熱した作動流体を勢いよく流すことで、「放出」させられる。
【0072】
作動流体は、水、超臨界二酸化炭素などを含み、界面活性剤などの抵抗低減添加物、高分子化合物、懸濁液、生物学的添加物、安定剤、スケール防止剤、腐食防止剤、摩擦低減剤、凍結防止化学品、殺生物剤、炭化水素、アルコール、有機流体、およびこれらの組合せを含み得る。他の適切な例は、当業者によって理解されるものである。作動流体が、変化する地下の熱特性が影響する場合、組成において動的に変更され得ることは、検討されている。
【0073】
ここで、
図2A、
図2B、
図2C、および
図2Dを参照すると、相互接続区域18の可能な配列および組合せの概略図が示されている。図は、隣接する相互接続区域が、隣接する相互接続区域に対して対称に、隣接する相互接続区域に対して非対称に、隣接する相互接続区域に対して櫛歯状に、隣接する相互接続区域に対して同一平面上の関係で、隣接する相互接続区域に対して平行な平面上の関係で、隔離またはグループ化されたネットワークで、およびこれらの組合せで配置され得ることを示している。特定の地理的な配列は温度勾配特性を変化させることになる。図は単なる例示であり、適切な変形は設計者によって理解されるものである。
【0074】
図3は、ループLが複数の相互接続区域18を含む例を示しており、1つの区域18の出口16が、隣接する区域18の入口14として供しており、電力発生デバイス22において共通の収集部を伴っている。この手法では、ループLは、方法の動作のために芋蔓式の構成へとさらに分割させられる。
【0075】
潜在的な熱出力容量は、システムについての最大持続可能熱エネルギー出力である。熱出力は、本明細書に開示されている方法論で一時的に変化させられ得るが、長期の(つまり、数か月間または数年間にわたって平均化された)平均出力は、潜在的な熱出力容量を超えることができない。
【0076】
システムの全体の地熱効率は、潜在的な熱出力容量によって除算された平均熱出力に等しく、これは、地熱の「設備利用率」と典型的には称される。大きな設備利用率、または、利用可能な潜在的な熱出力容量の大きな利用を有することは、有利である。従来、これは、潜在的な熱出力容量またはその近くの一定の熱出力によって達成される。多くの地熱システムは、この手法において、「ベース負荷」動作と称されることもある90%を超える設備利用率で動作する。開示されている方法論は、大きな地熱の設備利用率を可能にする一方で、一定の出力ではなく柔軟なオンデマンドのエネルギー出力も提供する。
【0077】
図4は、本出願者の同時係属中の国際出願第PCT/CA2019000076号に記載されている閉ループ多元的システムの過渡的な熱力学モデルに基づく例を示している。熱力学モデルのための入力は、以下で表にされている。
【0078】
【0079】
図は、同じ地熱ループについての3つの動作状況、すなわち、熱出力が潜在的な熱出力容量に等しい、一定の流量でのベース負荷の手法での動作(ベースの場合)と、33kg/sでの16時間にわたるチャージサイクルと、130kg/sでの8時間の放出とを伴う動作と、30kg/sでの12時間にわたるチャージサイクルと、100kg/sでの12時間の放出とを伴う動作とを示している。
【0080】
典型的には、チャージサイクルは、エネルギー価格が低いとき、または、変化する再生可能エネルギーの供給の過剰があるとき、行われる。これは、本明細書で参照される相互接続区域18に、熱エネルギーを地層から回収させることができる。
【0081】
図5は、注目した3日間の時間枠にわたっての詳細を示している。組み合わされたチャージ期間/放出期間にわたる平均流量は、システムがベース負荷の手法で動作させられる場合、最適な固定流量におおよそ等しい。この例では、先の図で示されているのと同じ地下の坑井の配置は、ベース負荷の手法で動作させられる場合、流量が60L/sに等しいときにすべての時間において潜在的な熱出力容量に等しくなる。専門的に言えば、システムは最大地下地熱容量で動作することになる。これが、組み合わされた「チャージ」サイクルと「放出」サイクルとにわたる平均地熱出力が長期間の容量より相当に低い一部の先行技術(PunaにおけるOrmat)とは決定的に異なる因子である。
【0082】
チャージサイクルは、出口坑井16における高温流体と比べて、入口坑井14における低温流体の密度の差によって駆動される強い熱サイフォンを確立している。チャージサイクルの間、熱サイフォンによる圧力駆動は、所望の流量を維持するために必要とされるものより大きい。そのため、流量は、圧力損失を適用するために流れ制御弁または他の装置(図示されていない)を用いて、出口坑井16の下流において流れを絞ることで制御される。流れ制御弁は自動化されており、弁の必要な位置を計算するために熱力学モデルを使用するソフトウェアで制御され得る。制御弁は、作動流体の密度およびポンプ吐き出し圧力に基づいて、地下ループにおける圧力を所望の境界内に保つように、その圧力を維持するのを助けもする。
【0083】
放出するとき、流量は、絞りを解放する(制御弁を開ける)ことですぐに増加させることができる。流量におけるこの瞬間的に近い増加は、高速ランピング能力を可能にする。流量は、閉回路ループを通る液圧損失が熱サイフォン圧力駆動に等しくなるまで増加させられ得る。
【0084】
流れは、ポンプを使用してこのレベルを超えて増加させることができ、ポンプは寄生電力負荷を必要とする。しかしながら、圧力駆動の大部分が熱サイフォン効果によって発生させられる限り、寄生負荷は実用的に許容可能である。
【0085】
これらの方法論を使用することで、流量は、チャージサイクルと放出サイクルとの両方を通じて、および、ループにおける作動流体の在留時間を通じて、電力出力を最終使用者の要求に合致させるように制御できる。
【0086】
先行技術の従来の解放した地熱システム、または多孔質媒体における流れでは、放出する間に大きな流量に到達するために必要とされるポンプ圧力は、許容不可能な大きな規制ポンプ負荷をもたらし、正味の電力出力における利得を劇的に低減するかまたは消し去ることになる。実用的な限度は、熱サイフォン圧力駆動に対する回路における圧力損失の比がおおよそ1.5であるときに実現されることが分かっている。システムは、熱サイフォン圧力駆動の1.5倍未満の液圧損失を有するように設計されなければならない。理想的には、圧力損失は熱サイフォン駆動の1倍未満であり、全体の流れが熱サイフォンによって駆動される。したがって、寄生ポンプ負荷がない。
【0087】
エネルギーは作動流体自体の中に貯蔵される。チャージサイクルの間、十分な在留時間が、放出サイクルを受け入れるのに十分なほど作動流体を加熱するために必要とされる。例えば、放出サイクルが典型的には8時間の長さである場合、流体回路の移送時間は少なくとも8時間でなければならない(放出サイクルとチャージサイクルとの両方にわたって平均化されている)。
【0088】
チャージサイクルの間、エネルギーは、地下流路と出口坑井16に隣接する岩石に一時的に貯蔵されてもよい。小さい流量において、熱は、地層12におけるより暖かい岩石から作動流体へと伝導で伝達され、流体は、システムを通じて進行するにつれて、(典型的にはより浅い、例えば出口坑井16において)より冷たい岩石に直面し、そこでエネルギーが流体からより冷たい岩石へと伝達され、一時的に貯蔵される。放出サイクルの間、平均流体温度は低下し、貯蔵された熱は作動流体へと伝達される。
【0089】
閉ループは、従来の地熱システムによる動作上の問題を回避しており、本明細書で検討されているように流れを劇的に変化させるときに悪化させられる。例えば、共通の動作上の問題は、ブライン、固形物、スケール、閉塞、および溶解した気体によって引き起こされる。
【0090】
本明細書に開示されている出力調整可能性は、極低温空気貯蔵(CES)、水素生産、または、貯蔵された電気エネルギーを使用する他のシステムと良好に統合する。プロセス流の例が以下に示されている。CESチャージサイクルは、伝送網、または同じ場所に配置された再生可能エネルギー(例えば、ピーク日中時間の間の太陽光)からの安価で過剰な電力を使用することができる。CESは、生産された地熱電力をチャージするために使用することもできるが、必然ではない。一実施形態において、地熱システムは、チャージサイクルおよび放出サイクルを通じて、固定された量の電気を発生させることになる。放出サイクルの間に生産された熱エネルギーにおける増加は、タービンにおける膨張の前にCES過程からの空気流を加熱するように向かわされる。
【0091】
CESを地熱出力調整可能で使用するとき、いくつかの利点がある。
【0092】
熱エンジン(熱エネルギーを電気へと変換する)が、放出サイクルのピーク出力ではなく、チャージサイクルのための大きさとされているだけであり、機器コストおよび資本コストを劇的に低下させる。
【0093】
小規模の追加の施設が、CES施設に熱を供給するために必要とされる。
【0094】
CESは、一日におけるピークの数時間にわたってのみ放出する。出力調整可能地熱システムの放出サイクルは、CES放出サイクルと合致することができる。
【0095】
図6は、先の図において参照された「ベースの場合」および「8時間の出力調整可能の場合」の30年間にわたる熱出力を示している。ベースの場合は、ベース負荷の手法で動作させられており、利用可能な熱出力容量に等しく、一方、「8時間の出力調整可能の場合」は、調整可能な出力で動作させられているが、約97%の有効な設備利用率を得ており、したがって、地層の所定の潜在的な熱出力容量と実質的に一致する。
【0096】
これは、出力が調整可能とできるが、典型的には80%を上回ると共に100%に近い大きな地熱設備利用率をも保持することができるという主の発明を示している。
【0097】
先に記載されている過渡的な熱力学シミュレーションは、カナダのアルバータ中部における試作品の地熱システムで試験された。システムは、現場の地表から現場まで2.4kmから2.5kmの深さにある多元的なU字管熱交換器を備える。結果は、モデル化の正当性を立証し、出力調整可能性が、この実施形態では出口坑井における自動制御弁を用いて流量を調節させることで実施および制御できることを実演している。実験に基づいた結果は、システムが非常に高速のランピングであり、有機ランキンサイクル(ORC)などの電力発生システムと組み合わされるとき、太陽光システムとの統合の高速ランピングの要件を満たすことができることを裏付けている。
【0098】
図7は、出力調整可能地熱システムが他の出力調整不可能な再生可能エネルギーと統合されるときにどのように使用されるかを実演している。システムは、太陽光についてのピーク時間の間に弱められ、太陽光が低下するにつれて強められる。出力調整可能な地熱は、エネルギー要求と出力調整不可能な再生可能エネルギーとの間の隔たりを埋める。これは単なる例であり、出力は、チャージサイクル/放出サイクルの任意の組合せに合致するように変更させることができ、流量は、物理的な限度内で任意の形とされた出力を満たすように変化させることができる。
【0099】
太陽光電気が例として使用されているが、同じ出力調整可能な機構は、地域加熱システムまたは地域冷却システムなど、直接的な熱使用用途に統合するために使用されてもよい。
【0100】
図8は、ネットワークにおける複数の出力調整可能地熱ループを示している。チャージサイクル/放出サイクルは、集合した出口が要求される形とされた出口プロフィールを満たすように、各々のループについてスケジュール化され得る。流量、熱サイフォン、および温度が、熱力学モデルに結合された児童制御システムを用いて、各々のループにおいて制御される。チャージサイクル/放出サイクルは、各々のループの状況およびパラメータに応じて、連続させられ得る、または同時であり得る。
【0101】
図9は、出力調整可能な地熱との出力調整不可能な再生可能エネルギーの統合を計画、制御、および最適化するための過程の流れ図である。PV、風力、ベース負荷の原子力など、変化する出力調整不可能な再生可能エネルギー供給源からの既存の供給プロフィールに、時間に伴う要求プロフィールを有する電気伝送網システムを提供する場合、制御技術は、既存の出力調整不可能な供給プロフィールと要求プロフィールとの間の隔たりを埋めるために、出力調整可能な再生可能エネルギーの地熱発電機のネットワークを最適化する。最適化パラメータは、正味の要求を満たすことができるか、受け取られる価格もしくは収益(量によって乗じられた価格)、または、任意の他の因子の組合せを最大化することができる。これらは、最適化/スケジュール化のアルゴリズムの一部だけを形成し得る。
【0102】
出力調整可能地熱ループのネットワークでは、潜在的な熱エネルギーを電気へと変換する電力発生モジュールのネットワーク(図示されていない)が利用される。これらの電力発生システムは、ORC、フラッシュ施設、圧力駆動システム、ダイレクトタービン、または任意の他の変換手段であり得る。電力発生モジュールは、並列で、直列で、または組合せで配置され得る。制御システムは、近接度、スケジュール、温度、および他の関連する因子に基づいて、各々の地熱ループからの流れを適切な変換モジュールへと向かわせる。
【0103】
図10は、地熱ループネットワークの潜在的な熱出力容量より必ず大きい発電機のネットワークの組み合わされた電力出力容量を示している。電力発生容量は、最終使用者からのピーク要求を満たすために設定され得る、出力調整するときの地熱ネットワークのピーク出力を満たすように設計される。この図は、地下システムが、80%を上回り、典型的には90%を上回る大きな地熱の設備利用率を有する一方で(ここで、分母は潜在的な熱出力容量である)、地表の電力変換モジュールは、出力調整を可能とするために、比較的小さい設備利用率を有することを示している。
【0104】
図11は、電力の間欠的な供給源で電力伝送網の飽和状態を軽減するように設計された本発明の実施形態を示している。例では、太陽光回収構成30がループL(ループ構成またはループ解決策)に動作可能に接続され、より明確には、符号32において配列30に動作可能に接続されている。電力発生デバイス22は、特定の容量を伴う伝送網(図示されていない)と電気連通している。これは、概して参照符号34によって指示されている。
【0105】
以下の例の場合、ループ構成またはループ解決策は、本明細書において先に検討されている配置、つまり、坑井14、16と、熱を生む地層における、電力発生デバイス22を含み得る相互接続18とを採用するように意図されている。
【0106】
太陽光は、最近の電力のよりクリーンな形態への今日のシフトにおいて、中心的な役割を持っている。しかしながら、成功がそれ自体の複雑性をもたらしている。現在、多くの電気伝送網は、電力のより間欠的な供給源を吸収するのが難しくなるまでに、風力および太陽光で飽和されている。拡張性のある環境に良い出力調整可能な電力が、この状況において必要とされる。本明細書における技術は、新規の太陽光施設、または既存の太陽光施設さえ補完することができる。
【0107】
典型的な10MWのループLユニットは、5MWの地下のベース負荷の解決策を、10MWへと拡大されたORCおよび地表の施設と組み合わせる。これは、ループLによって生産されたエネルギーの固有の出力調整可能性を容易にすることになる。そのため、これは、より多くのループ構成Lの単純な追加によってさらに拡大させることができる。例として、200MWのループLの構成が以下の動作データを有する。
【0108】
【0109】
太陽光のみの解決策
200MWのソーラーファームについて、その間欠的な性質のため、平均で40MWしか生産しない。平均電力生産を3.5倍に増加させたい場合、または、平均で100MWを追加で増加させたい場合、太陽光の負荷率が10%から25%の間の範囲になるという単純な理由のため、追加で500MWのソーラーファームと、伝送容量における追加の500MWとを追加する必要がある。あいにく、これは、地表の設置面積を3.5倍に増加させることを伴うだけでなく、伝送ネットワークを3.5倍にアップグレードする(または、望ましくはないが、新規のソーラーファームへの新規の伝送線を構築する)ことを必要とする。これは、増加した容量のほとんどが、相当に低い平均価格に達し得る日のときに生産されるため、さらに悪化させられる。
【0110】
ループの解決策
対照的に、これは、現在または計画されたソーラーファームの既存の地表の設置面積の下に直接的に200MWのループの解決策を組み込むことで、同じ結果を達成することができる。有利には、新規の土地取得が必要とされない。さらに、ループ構成が、ソーラーファームの20%の負荷率のあたりで電力を生産するために、その固有の出力調整可能性を使用するため、追加の伝送容量を必要とせず、時間と金銭との両方を節約する。最後に、ループは、真昼前後のピークの太陽光生産の期間に多く生産するための伝送容量を有さないが、真昼の生産(しばしば、価値が小さい)は、間欠的またはベース負荷の電力ではなく出力調整可能な電力のために達成される価格決定の割増のため、魅力的な収益化に移行させることができる。
【0111】
太陽光+電池の解決策
当然ながら、太陽光は、相当のコストにおいてであるが、十分な電池の追加によってループ解決策を模倣することができる。200MWのループ解決策を追加する代わりに、太陽光開発者は、500MWの太陽光の容量を追加する必要があり、大規模に拡張された地表の設置面積と、200MWの8時間の電池の貯蔵とを必要とし、コストおよび遅れの不可避的な増加をもたらす。
【0112】
例への変形として、
図11は、風車36を原動機として使用する構成を描写している。
【0113】
ここで
図12を参照すると、例へのさらなる変形が示されている。符号40は、電力分配センター42が符号44を介して電力伝送網(図示されていない)に電気送達を提供するために配置されている地理的領域を表している。知られているように、伝送網は出力容量を有する。センター42は、伝送網における設計された最大電力生産量および第2の有効または「実際」の電力生産量によって、地理的領域40にわたる電力生産システムに寄与している。
【0114】
明確には、センター42同士の間の領域40の広がりにわたって、大きな使用者の要求の急増、または、センター42同士の間の再分配など、当業者に知られている様々な理由のために起こる「電圧低下」または他の送達の異常が、時としてある。
【0115】
不整合の送達の問題を軽減するために、ループ構成Lは、隣接して電気的に通信するセンター42同士の間など、センター42の回路に統合され得る。本明細書における先の例および仕様と同様に、閉ループ構成は、所定のエネルギー出力を、地層に起因させられる利用可能な潜在的な熱容量から生産するために、下にある地層の中に設けられ得る。
【0116】
そのため、作動流体は、検討されているように循環させることができ、電力生産を前記電力伝送網を通じた容量に維持するために、前記電力生産構成22を通じて選択的に熱的に放出させることができる。したがって、これは、先に言及された異常または不規則性を軽減する。
【0117】
地理的な領域および他の因子に依存して、複数のループ構成Lを備える主分配ハブ46が、センター42の一部または全部と、個別に位置決めされたループLとを増大または置き換えすることができる。
【符号の説明】
【0118】
10 構成
12 地層
14 入口坑井、入口
16 出口坑井、出口
18 相互接続区域
20 地表
22 電力発生デバイス、電力生産構成
24 使用者による使用
26 再分配
30 太陽光回収構成、配列
32 接続
34 伝送網
36 風車
40 地理的領域
42 電力分配センター
44 電力伝送網への電気送達
46 主分配ハブ
L 閉ループ、閉回路、ループ構成