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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ずり減粘性熱伝導性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20240805BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240805BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240805BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20240805BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/013
C08K3/34
C09K5/14 E
H01L23/36 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022549725
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 US2021017529
(87)【国際公開番号】W WO2021178119
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】62/985,491
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランケル、エリカ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ベセラ、アンドレス イー.
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ、アンドリュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、ダレン
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-019426(JP,A)
【文献】特開2005-228955(JP,A)
【文献】国際公開第2019/182860(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103289650(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110157388(CN,A)
【文献】特開2004-244491(JP,A)
【文献】特開2004-210856(JP,A)
【文献】特開2009-274929(JP,A)
【文献】特開2009-234112(JP,A)
【文献】特開2010-013521(JP,A)
【文献】特開2013-147600(JP,A)
【文献】特開昭56-028264(JP,A)
【文献】特表2020-500982(JP,A)
【文献】特表2022-536577(JP,A)
【文献】国際公開第2020/137970(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/153505(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/021826(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/031280(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00- 83/16
C09K 5/00- 5/20
C10M101/00-177/00
C10N 10/00- 80/00
H01L 23/34- 23/473
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、以下の成分:
(a)15~39.8未満の体積パーセントであるの第1のポリシロキサンであって、ASTM D4283-98に従って測定される場合、1秒当たり50平方ミリメートル~1秒当たり55000平方ミリメートルの範囲の粘度を有する、第1のポリシロキサンと、
(b)0.2~5体積パーセントの有機粘土と、
(c)60~74体積パーセントの、丸みを帯びた又は粉砕された熱伝導性フィラーであって、
(i)0.1~1.0マイクロメートルの範囲のメジアン粒径を有する5~15体積パーセントの小さい熱伝導性フィラー、
(ii)1.1~5.0マイクロメートルの範囲のメジアン粒径を有する10~25体積パーセントの中間の熱伝導性フィラー、
(iii)5.1~50マイクロメートルの範囲のメジアン粒径を有する25~50体積パーセントの大きい熱伝導性フィラーを含む、熱伝導性フィラーと、
(d)0~5体積パーセントの、前記第1のポリシロキサンとは異なるアルコキシ官能性直鎖状ポリシロキサン及び/又はアルコキシ官能性のシランであって直鎖状アルキル基を有するシランと、を含み、
ただし、(d)における、前記アルコキシ官能性直鎖状ポリシロキサンの含有量が0体積パーセント超~5体積パーセントであることを条件とし、
体積パーセント値が、組成物体積に対するものである、組成物。
【請求項2】
前記熱伝導性フィラーが、アルミナ、アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、及び炭化ケイ素からなる群から選択される任意の1つ又は2つ以上の組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有機粘土が、アリエタイト、バイデライト、ベントナイト、カルシウム-モンモリロナイト、フェロサポナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、ノントロナイト、ピメライト、サリオタイト、サポナイト、サウコナイト、セピオライト、ステベンサイト、スウィンフォーダイト、バーミキュライト、ボルコンスコイト、ヤコントバイト及びジンクシライトからなる群から選択される、任意の1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記有機粘土が、ベントナイト、セピオライト、及びサポナイトから選択される任意の1つ又は2つ以上の組み合わせである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1のポリシロキサンが、直鎖状ポリシロキサンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、前記第1のポリシロキサンに加えて、組成物体積に対して0.5~2体積パーセントのアルコキシ官能性直鎖状ポリシロキサンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物を基材上に配置することを含む、プロセス。
【請求項8】
前記組成物を基材上に排出し、次いで、前記組成物に対して前記基材以外の第2の物体を適用して、前記基材と前記第2の物体との間で、かつそれら両方と熱接触させて、前記組成物を圧縮することを含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
基材上に配置された、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物を含む物品。
【請求項10】
前記組成物が、2つの物体と熱接触している、請求項9に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ずり減粘特性を有する熱伝導性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
熱伝導性シリコーン組成物は、電子産業で広く使用されて、熱源及びヒートシンクなどの構成要素間に熱架橋を提供する。熱伝導性シリコーン組成物は、ポリシロキサン中に熱伝導性フィラーを含む。熱伝導性フィラーは、組成物の熱伝導性を増加させる。組成物の熱伝導性を増加させるために、熱伝導性フィラーの濃度を増加させることが望ましい。フィラー濃度を増加させることはまた、組成物の粘度を増加させる傾向もあり、それは、フィラー沈降を有することから組成物を安定化させ、組成物のかたまりが基材上への堆積時にその形状を保持することを可能にするために望ましい場合がある。しかしながら、粘度を増加させることはまた、組成物の取り扱いにおいて、特に、基材上に組成物を堆積させるときに、組成物をオリフィスを通して押出することにおいて、課題を生じさせる可能性がある。
【0003】
ずり減粘性である熱伝導性シリコーン組成物は、粘度の増加から生じる組成物の抑制押出に悩まされることなく、フィラー含有量を増加させることを可能にするのに役立つ。ずり減粘性組成物は、押出と関連がある剪断による押出を可能にするように減粘する一方で、組成物に安定性を提供するために剪断がほとんどない又は全くない条件下では高粘度を有することになる。この課題は、組成物の押出が可能になるように剪断下で十分に低い粘度を依然として達成しながら、高度に充填された熱伝導性シリコーン組成物において最大量のずり減粘挙動を誘導する方法を特定することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、本明細書で以下に記載するように、0.01パーセント(%)~300%のひずみ振幅範囲にわたって、ひずみ掃引法で測定した場合に、200パスカル秒(Pas)以下の最小粘度と、2.5以上のチキソトロピー指数の両方を達成しながら、50~74体積パーセント(体積%)の熱伝導性フィラーを含有する熱伝導性シリコーン組成物のチキソトロピー指数を増加させることである。
【0005】
本発明の組成物は、本明細書で以下に記載するように、0.01パーセント(%)~300%のひずみ振幅範囲にわたって、ひずみ掃引法で測定した場合に、200パスカル秒(Pas)以下の最小粘度と、2.5以上のチキソトロピー指数の両方を達成しながら、50~74体積パーセント(体積%)の熱伝導性フィラーを含有する熱伝導性シリコーン組成物のチキソトロピー指数を増加させる問題に対する解決策を提供する。
【0006】
本発明は、有機粘土を、0.2体積%以上のレベルで、かつ同時に5体積%未満のレベルで、50体積%を超える熱伝導性フィラーを含有するポリシロキサン組成物に添加して、前述のチキソトロピー指数及び最大粘度の要件条件を満たすずり減粘性熱伝導性シリコーン組成物を製造することができるという驚くべき発見の結果である。有機粘土は、流体のずり減粘挙動を誘発するための既知の添加剤であるが、本明細書では、20~40体積%の熱伝導性フィラーを含有する熱伝導性シリコーン組成物においてはずり減粘挙動を誘発するのに特に効果的ではないことを明らかにする。更に、熱伝導性フィラーをより高い量で充填すると、有機粘土は、驚くべきことに、0.2体積%という低い充填レベルで組成物においてずり減粘挙動を誘導することにおいて著しく効果的になる。したがって、これらの熱伝導性シロキサン組成物におけるずり減粘を誘導する際の有機粘土の有効性は、熱伝導性フィラーの充填量に依存し、40体積%を超える熱伝導性フィラーの充填量で著しく顕著な有効性を有する。
【0007】
第1の態様では、本発明は、以下の成分:(a)15~49.8体積パーセントの第1のポリシロキサンであって、ASTM D4283-98に従って測定される場合、50センチストーク~550センチストークの範囲の粘度である(を有する)、第1のポリシロキサンと、(b)0.2~5重量パーセントの有機粘土と、(c)50~74体積パーセントの、丸みを帯びた又は粉砕された熱伝導性フィラーであって、(i)0.1~1.0マイクロメートルの範囲のメジアン粒径を有する5~15体積パーセントの小熱伝導性フィラー、(ii)1.1~5.0マイクロメートルの範囲のメジアン粒径を有する10~25体積パーセントの中間の熱伝導性フィラー、(iii)5.1~50マイクロメートルの範囲のメジアン粒径を有する25~50体積パーセントの大きい熱伝導性フィラーを含む、熱伝導性フィラーと、(d)0~5体積パーセントの、第1のポリシロキサンとは異なるアルコキシ官能性直鎖状ポリシロキサン及び/又はアルコキシ官能性直鎖状シランと、を含む、組成物であり、体積パーセント値は、組成物体積に対するものである。
【0008】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の組成物を基材上に配置することを含むプロセスである。
【0009】
第3の態様では、本発明は、第1の態様の組成物を含有する物品である。
【0010】
本発明の組成物及びプロセスは、熱伝導性シリコーン組成物を含む本発明の物品を調製するのに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
試験方法は、日付が試験方法の番号と共に示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。以下の試験方法の略語及び識別名が本明細書に適用される:ASTMは米国試験材料協会(American Society for Testing and Materials)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、ULは、米国保険業者安全試験所(Underwriters Laboratory)を指す。
【0012】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0013】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、端点を含む。特に明記しない限り、全ての重量パーセント(重量%)値は組成物の重量に対するものであり、全ての体積パーセント(体積%)の値は組成物の体積に対するものである。
【0014】
組成物の「最大粘度」、「最小粘度」、及び「チキソトロピー指数」は、以下の振動剪断ひずみ振幅掃引(「ひずみ掃引」)法に従って測定される。直径25ミリメートル(mm)の円形平行鋸歯状プレート(TA Instruments(NewCastle,DE,USA)から部品番号401978.901)を提供する。試料組成物を一方のプレートに配置し、プレートが互いに平行になり、プレート間のギャップ間隔が1.0mmになり、試料組成物が両方のプレートと熱接触し、プレート間のギャップ間隔が満たされるまで、もう一方のプレートを試料組成物に押し付ける。ARES-G2ひずみ制御されたレオメーター(TA Instruments(New Castle,DE,USA))を使用して、1秒当たり10ラジアンの角周波数を使用して、1桁当たり20個のサンプリング点で0.01パーセント(%)~300%のひずみ振幅の対数掃引を行う。パーセント振動ひずみ振幅の関数として、パスカル秒(Pas)の複素粘度を記録する。「最大粘度」は、0.1マイクロニュートンメートルの振動トルク振幅(又は同等に、0.0326パスカルの振動応力振幅閾値を超える)を超えて記録された最高複素粘度である。「最小粘度」は、同じ閾値を超えて記録された最低複素粘度である。「チキソトロピー指数」は、最大粘度対最小粘度の比である。本発明の組成物は、2.5以上、2.7以上、及び3.0以上、更には4.0以上のチキソトロピー指数を達成することができ、同時に、200Pas以下、更に175Pas以下、150Pas以下、125Pas以下、又は更に100Pas以下の最小粘度を達成することができる。
【0015】
本発明の組成物は、第1のポリシロキサンを含む。第1のポリシロキサンは、典型的には50センチストーク(centistoke、cSt)以上、80cSt以上、90cSt以上、100cSt以上、5ストーク(St)以上、10St以上、50St以上である粘度であり(を有し)、同時に、典型的には550St以下、500St以下、400St以下、300St以下、200St以下、100St以下、50St以下、10St以下、5St以下、又は更には100cSt以下である。ASTMD4283-98に従って第1のポリシロキサンの粘度を測定する。
【0016】
第1のポリシロキサンの実際の組成は、最も広い範囲では、限定されないが、但しポリシロキサンは前述の範囲の粘度を有する。望ましくは、第1のポリシロキサンは、「直鎖状」ポリシロキサンである。直鎖状ポリシロキサンは、RSiO1/2及びRSiO2/2シロキサン単位、シロキサン単位の総モル数に対して1分子当たり最大3モルパーセントのRSiO3/2及びSiO4/4シロキサン単位を含み、好ましくはそれらからなり、式中、「R」は、独立して、出現ごとにおいて、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、又はアルコキシルからなる群から選択される。好適なヒドロカルビルとしては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、及びアリール(ベンジル及び置換ベンジルなど)から選択される任意のものが挙げられる。好適なアルコキシルとしては、メトキシル、エトキシル、プロポキシル、ブチオキシル、ペントキシル、ヘキソキシル、及びヘプトキシルから選択される任意のものが挙げられる。
【0017】
望ましくは、第1のポリシロキサンは、ポリジメチルシロキサン(polydimethyl siloxane、PDMS)である。PDMSは、2つの(CHSiO1/2単位を含み、鎖の両端の一方は、複数の(CHSiO2/2単位からなっている。(CHSiO1/2単位の数は、第1のポリシロキサンが、第1のポリシロキサン成分について前述した所望の範囲の粘度を有するようなものである。
【0018】
本発明の組成物は有機粘土を含む。有機粘土は、組成物のずり減粘特性を誘導又は増強する。有機粘土は、組成物の体積に対して、0.2体積%(体積%)以上、好ましくは0.3体積%以上、0.4体積%以上、0.5体積%以上、0.7体積%以上、0.8体積%以上、0.9体積%以上、更に1.0体積%以上の濃度で組成物中に存在し、同時に、典型的には、5体積%以下、4体積%以下、3体積%以下、2体積%以下、更には1.0体積%以下の濃度で存在する。
【0019】
有機粘土は、層状構造を有する二次元無機材料である。望ましくは、有機粘土は、シートに配列されたシリケート四面体を有するフィロシリケート材料である。好ましくは、有機粘土は、スメクタイト粘土である。本発明で使用するための望ましい有機粘土の例としては、アリエタイト、バイデライト、ベントナイト、カルシウム-モンモリロナイト、フェロサポナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、ノントロナイト、ピメライト、サリオタイト、サポナイト、サウコナイト、セピオライト、ステベンサイト、スウィンフォーダイト(swinefordite)、バーミキュライト、ボルコンスコイト、ヤコントバイト及びジンクシライトから選択される、任意の1つ又は任意の組み合わせ又は2つ以上が挙げられる。有機粘土は、ベントナイト、セピオライト、及びサポナイトからなる群から選択される、1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせであることができる。ベントナイトが単独で使用される場合、それは、組成物のチキソトロピー指数を増加させる際に他の有機粘土よりも効果が低くなり得るため、1.0体積%以上の濃度で存在することが望ましい。
【0020】
本発明の組成物は、熱伝導性フィラーを含む。本発明の最も広い範囲では、熱伝導性フィラーの組成物は、ポリシロキサンよりも高い熱伝導性を有する任意の組成物であることができる。例えば、熱伝導性フィラーは、各々独立して、アルミニウム、銅、銀、カーボンナノチューブ、炭素繊維、グラフェン、グラファイト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンド、炭化ケイ素、アルミナ、酸化ベリリウム及び酸化マグネシウムからなる群から選択される材料の粒子であることができる。
【0021】
熱伝導性フィラーは、「丸みを帯びた」又は「粉砕された」として記載される粒子形状を有する粒子である。「粉砕された」フィラー粒子は、1つ以上の破砕面を有し、粉砕する他の機械的手段によって作出された角のある、粗い、又は破壊された表面を有することを特徴とする。「丸みを帯びた」フィラー粒子は、米国特許第7789330号で教示されているように、機械的ミリングによってエッジが除去された粉砕フィラー粒子として特徴付けられる。
【0022】
熱伝導性フィラーは、3つの異なるメジアン粒径、すなわち、小さいメジアン粒径(0.1マイクロメートル以上、好ましくは0.2マイクロメートル以上であり、同時に1.0マイクロメートル以下、好ましくは0.8マイクロメートル以下のメジアン粒径、並びに0.6マイクロメートル以下、0.5マイクロメートル以下、更には0.4マイクロメートル以下であることができる)、中間のメジアン粒径(1.1マイクロメートル以上、好ましくは2マイクロメートル以上、同時に、典型的には5.0マイクロメートル以下、好ましくは4.5マイクロメートル以下、及び4.0マイクロメートル以下、3.5マイクロメートル以下のメジアン粒径、並びに2.5マイクロメートル以下、更には2マイクロメートル以下であることができる)、大きいメジアン粒径(5.1マイクロメートル以上、6.0マイクロメートル以上、7.0マイクロメートル以上、更には8.0マイクロメートル以上のメジアン粒径、同時に、典型的には50マイクロメートル以下、40マイクロメートル以下、30マイクロメートル以下、20マイクロメートル以下、又は更には10マイクロメートル以下、9マイクロメートル以下、又は8マイクロメートル以下である)の組み合わせとして存在する。HELOS Instrument,Sympatec GmbH(Clausthal-Zellerfeld,Germany)を使用してレーザ回折粒径分析によって、フィラーのメジアン粒径を測定する。
【0023】
小さい熱伝導性フィラーは、典型的には、0.1体積%以上(vol%)以上、0.5体積%以上、1.0体積%以上、3.0体積%以上、5.0体積%以上、7.0体積%以上、9.0体積%以上、10体積%以上、更には12体積%以上の濃度で存在し、同時に、典型的には15体積%以下、14体積%以下、13体積%以下、更には12体積%以下である。濃度は、組成物の体積に対するものである。
【0024】
中間の熱伝導性フィラーは、典型的には、10体積%以上、15体積%以上、16体積%以上、17体積%以上、18体積%以上、19体積%以上、更には20体積%以上の濃度で存在し、同時に、典型的には25体積%以下、23体積%以下、21体積%以下、20体積%以下の濃度で存在する。濃度は、組成物の体積に対するものである。
【0025】
大きい熱伝導性フィラーは、典型的には、25体積%以上、30体積%以上、35体積%以上、36体積%以上、37体積%以上、38体積%以上、39体積%以上、更には40体積%以上の濃度で存在し、同時に、典型的には50体積%以下、45体積%以下、更には40体積%以下である。濃度は、組成物の体積に対するものである。
【0026】
熱伝導性フィラーの総量は、典型的には50体積%以上、55体積%以上、60体積%以上、65体積%以上、70体積%以上であり、71体積%以上、72体積%以上、更には73体積%以上であることができ、同時に、典型的には74体積%以下であり、73体積%以下、72体積%以下、71体積%以下、更には70体積%以下であることができる。濃度は、組成物の体積に対するものである。驚くべきことに、熱伝導性フィラーの濃度が、20~40体積%であるとき、同様な充填量の有機粘土は、2.5以上の値に達するのに十分な組成物のチキソトロピー指数を増加させない。
【0027】
組成物は、第1のポリシロキサンとは異なるアルコキシ官能性直鎖状ポリシロキサン及び/又はアルコキシ官能性直鎖状シランを更に含むことができる。アルコキシ官能性直鎖状ポリシロキサン及び/又はアルコキシ官能性直鎖状シランは、フィラー及び有機粘土の分散助剤として望ましい。アルコキシ官能性ポリシロキサンは、組成物体積に対して、0体積%以上、0.5体積%以上、1体積%以上、2体積%以上、3体積%以上の濃度で存在し、また4体積%以上で存在することができ、同時に、典型的には、5体積%以下、4体積%以下、更には3体積%以下の濃度で存在する。
【0028】
アルコキシ官能性直鎖状ポリシロキサンは、直鎖状ポリシロキサンである。好ましくは、アルコキシ官能性直鎖状ポリシロキサンは、アルコキシ基で置き換えられた、より好ましくは、メトキシ、エトキシ又はプロポキシ基、最も好ましくはメトキシ基で置換された、末端(CHSiO1/2単位のうちの1つについて1つ、2つ又は3つ全てメチル基を有するポリジメチルシロキサンである。例えば、アルコキシ官能性ポリシロキサンは、以下の構造を有することができ、
(CHSiO1/2[(CHSiO2/2(C2e+1O)(CH3-mSiO1/2
式中、下付き文字dは、1分子当たりの[(CHSiO2/2]単位の平均数を指し、典型的には5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、更には110以上であり、同時に、典型的には300以下、250以下、200以下、150以下、140以下、130以下、120以下、又は更には110以下であり、下付き文字mは、末端シロキサン単位上のメトキシ基の平均数であり、1以上、2以上の値であり、かつ3であり得、同時に3以下であり、下付き文字eは、1、2及び3からなる群から選択される。
【0029】
アルコキシ官能性直鎖状シランは、望ましくは、以下の式を有するものから選択され、
(C2n+14-mSi(C2e+1O)
式中、下付き文字nは、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、更には10以上の値を有し、同時に、一般的には18以下、16以下、14以下、12以下、更には10以下であり、mは、1以上、2以上の値を有し、かつ3であり得、同時に3以下であり、eは、1、2及び3からなる群から選択される。
【0030】
本組成物は、他の組成物にしばしば含まれる成分を必要としない。それに関して、本発明の組成物は、次の成分、すなわち、ポリシロキサン樹脂、オリゴマーポリエステルポリオール、有機溶媒、及び有機チキソトロピー剤、例えば、キャスタワックス、ポリエチレンオキシドワックス、アミドワックスリン種子油及びそれらの組み合わせのうちの、任意の1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含まない場合がある。
【0031】
本発明の組成物は、熱伝導性材料として有用である。そのような用途では、本発明の組成物は、基材上に配置される。典型的には、組成物は、リザーバからオリフィスを通して基材上に組成物を押出するか、又は別様に排出することによって基材上に配置される。組成物は、ドット、ドロップ、又はラインなどの任意の形状又はパターンで適用することができる。組成物は、チョコレートキャンディーキスのような平らなボトムティアドロップ輪郭を有するドロップとして適用することができる。組成物は、好ましくは、適用されるとドロップ形状を保持するのに十分に高い静粘度と、更にリザーバからオリフィスを通して排出することを可能にするために剪断下で十分に低い粘度とを有する。
【0032】
組成物を基材上に配置したら、典型的には、第2の物体を組成物に対して適用して、基材及び第2の物体の両方との熱接触を確立しながら、基材と第2の物体との間で当該組成物を圧縮する。その場合、組成物は、基材と第2の物体との間の熱架橋として機能することができる。基材及び第2の物体のうちの1つは、熱源であることができ、他方は、ヒートシンク又は放熱物体である。
【0033】
本発明の組成物は、特に、組成物が基材及び第2の物体と熱接触しているとき、組成物が物品の基材上に配置されている物品において有用である。そのような物品の例としては、電子回路又は電子デバイスが挙げられる。そのような物品では、組成物は、熱源とヒートシンク又は他の放熱物体との間に熱架橋を形成するのに有用である。
【実施例
【0034】
表1に、以下の試料を調製する際に使用するための材料を示す。
【0035】
まず最初に、第1のポリシロキサン、小TCフィラー、中TCフィラー、大TCフィラー、及び、存在する場合、アルコキシ官能性直鎖状ポリシロキサンのマスターバッチを調製することによって試料を調製する。有機粘土成分中のマスターバッチミックスに対して。いくつかの試料では、混合後に、追加の第1のポリシロキサン成分を、有機粘土成分中に混合して、熱伝導性フィラーの濃度を低下させる。マスターバッチ及び試料に関する配合を、試料の各々についてのチキソトロピー指数及び最小粘度の特徴付けとして以下の教示及び表に提供する。マスターバッチの質量%及び体積%の値は、それぞれマスターバッチ質量及び体積に対するものである。
【0036】
【表1】
【0037】
マスターバッチI:第1のポリシロキサン(7.97質量%、26.33体積%)、Sm TCフィラー(15.34質量%、12.31体積%)、Md TCフィラー(25.57質量%、20.46体積%)、及びLg TCフィラー(51.12質量%、40.90体積%)。
【0038】
マスターバッチII:第1のポリシロキサン(7.56質量%、24.97体積%)、Sm TCフィラー(15.34質量%、12.30体積%)、Md TCフィラー(25.57質量%、20.46体積%)、Lg TCフィラー(51.12質量%、40.90体積%)及びアルコキシ官能性直鎖状ポリシロキサンI(0.41質量%、1.36体積%)。
【0039】
マスターバッチIII:アルコキシ官能性直鎖状ポリシロキサン Iをアルコキシ官能性直鎖状シランで置き換えたことを除いて、マスターバッチIIと同じである。
マスターバッチIII:第1のポリシロキサン(7.56質量%、24.95体積%)、Sm TCフィラー(15.34質量%、12.29体積%)、Md TCフィラー(25.57質量%、20.44体積%)、Lg TCフィラー(51.12質量%、40.87体積%)及びアルコキシ官能性直鎖状シラン(0.41質量%、1.45体積%)。
【0040】
結果の概要
有機粘土を含まない試料は全て、70体積%の熱伝導性フィラーを含む参照試料を除いて、目標2.5値未満のチキソトロピー指数を有する。
【0041】
20~40体積%の熱伝導性フィラーを含む試料は全て、目標2.5値未満のチキソトロピー指数を有し、ほとんどの場合、関連する参照試料と区別できないチキソトロピー指数を有する。
【0042】
40体積%を超える熱伝導性フィラーの濃度を含むほぼ全ての試料は、0.2体積%以上の有機粘土の添加時にチキソトロピー指数の増加を実証している。この結果は、アルコキシ官能性直鎖状ポリシロキサンが存在する、直鎖状アルコキシシランが存在する、又はアルコキシ官能性線状ポリシロキサン若しくは直鎖状アルコキシシランが存在しない、にかかわらず起こる。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】