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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240805BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20240805BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240805BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240805BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240805BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240805BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20240805BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20240805BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20240805BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M4/13
H01M4/36 Z
H01G11/64
H01G11/62
H01G11/60
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022554374
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 CN2021135413
(87)【国際公開番号】W WO2023097674
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】劉 建禹
(72)【発明者】
【氏名】唐 超
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113097433(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113161515(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103493276(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113451653(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第02650959(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M、H01G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とセパレータと電解液とを含む電気化学装置であって、
前記電解液は、フルオロエチレンカーボネートとトリニトリル化合物とを含み、
前記電解液の質量を基準として、フルオロエチレンカーボネートの質量百分率をA%とし、トリニトリル化合物の質量百分率をB%とした場合、2≦A≦6であり、2≦B≦5であり、AとBとは4≦A×B≦20を満たし、前記負極の欠陥度をId/Igとした場合、0.07<Id/Ig≦0.13を満たし、フルオロエチレンカーボネートの質量百分率A%とId/Igとは1.5≦A/(10×Id/Ig)≦8.6を満たす、電気化学装置。
【請求項2】
前記正極は正極活物質を含み、前記正極活物質は金属元素Mを含み、前記金属元素Mは、Ti、Mg及びAlからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、正極活物質における金属元素Mの含有量をCppmとした場合、CとBとは8≦C×B/1000≦30を満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
C/(1000×Id/Ig)≧20である、請求項2に記載の電気化学装置。
【請求項4】
正極活物質における金属元素Mの含有量Cは2000ppm≦C≦6500ppmを満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記電解液は、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとをさらに含み、前記電解液の質量を基準として、エチレンカーボネートの質量百分率をD%とし、プロピレンカーボネートの質量百分率をE%とした場合、DとEとは15≦D+E≦40、且つD/E≧1.2を満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項6】
エチレンカーボネートの質量百分率D%とフルオロエチレンカーボネートの質量百分率A%とはD×A≧35を満たす、請求項5に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記トリニトリル化合物の質量百分率B%と前記エチレンカーボネートの質量百分率D%と前記プロピレンカーボネートの質量百分率E%とはB×(D+E)≦150を満たす、請求項5に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記電解液は、ジニトリル化合物をさらに含み、前記電解液の質量を基準として、ジニトリル化合物の質量百分率をF%とした場合、1≦F≦6であり、且つ、FとBとは4≦F+B≦9を満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記電解液は、1,3-プロパンスルトン、硫酸ビニル、炭酸ビニレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、及びγ-ブチロラクトンからなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項10】
a)前記電解液の質量を基準として、前記1,3-プロパンスルトンの質量百分率は、0.5%~5%であることと、
b)前記電解液の質量を基準として、前記硫酸ビニルの質量百分率は、0.1%~1%であることと、
c)前記電解液の質量を基準として、前記炭酸ビニレンの質量百分率は、0.1%~1%であることと、
d)前記電解液の質量を基準として、前記炭酸ジメチルの質量百分率は、0.1%~30%であることと、
e)前記電解液の質量を基準として、前記炭酸ジエチルの質量百分率は、0.1%~30%であることと、
f)前記電解液の質量を基準として、前記炭酸エチルメチルの質量百分率は、0.1%~30%であることと、
g)前記電解液の質量を基準として、前記γ-ブチロラクトンの質量百分率は、0.01%~5%であることと
の少なくとも一方を満たす、請求項9に記載の電気化学装置。
【請求項11】
前記トリニトリル化合物は、1,3,5-ペンタントリカルボニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,6-ヘキサントリニトリル、1,2,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、1,2,4-トリス(2-シアノエトキシ)ブタン、及び1,2,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項12】
前記電解液はリチウム塩を含み、前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、テトラフルオロホウ酸リチウム、ビスシュウ酸ホウ酸リチウム、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム、及びジフルオロリン酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項13】
前記ジニトリル化合物は、サクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1,5-ジシアノペンタン、1,6-ジシアノヘキサン、1,7-ジシアノヘプタン、1,8-ジシアノオクタン、1,9-ジシアノノナン、1,10-ジシアノデカン、1,12-ジシアノデカン、テトラメチルスクシノニトリル、2-メチルグルタロニトリル、2,4-ジメチルグルタロニトリル、及び2,2,4,4-テトラメチルグルタロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項8に記載の電気化学装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電気化学の技術分野に関し、特に、電気化学装置及び電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、比エネルギーが大きい、動作電圧が高い、自己放電率が低い、体積が小さい、重量が軽いなどの特徴を有し、電気エネルギー貯蔵、携帯式電子設備及び電気自動車などの分野に広く応用されている。リチウムイオン電池の使用範囲の拡大に従って、業界には、リチウムイオン電池に対して、より高い要求が求められており、例えば、リチウムイオン電池に対して、より速い充電速度、より長い使用寿命を要求する。
【0003】
しかし、リチウムイオン電池の充電速度の向上につれて、リチウム析出しやすくなり、リチウムイオン電池のサイクル特性と安全性に影響する。
【発明の概要】
【0004】
本願は、電気化学装置のサイクル特性を高めるための電気化学装置及び電子装置を提供することを目的とする。具体的な技術案は以下の通りである。
【0005】
本願の第1態様は、正極と負極とセパレータと電解液とを含む電気化学装置であって、前記電解液には、フルオロエチレンカーボネートとトリニトリル化合物とを含み、前記電解液の質量を基準として、フルオロエチレンカーボネートの質量百分率をA%とした場合、2≦A≦6であり、例えば、Aは2、3、4、5、6またはこの間の任意範囲であってもよく、トリニトリル化合物の質量百分率をB%とした場合、2≦B≦5であり、例えば、Bは2、2.5、3、3.5、4、4.5、5またはこの間の任意範囲であってもよい電気化学装置を提供する。AとBとは4≦A×B≦20を満たし、例えば、A×Bは、4、5、6、8、10、12、15、17、20またはこの間の任意範囲であってもよい。負極の欠陥度をId/Igとした場合、0.07<Id/Ig≦0.13を満たし、例えば、Id/Igは、0.07、0.08、0.09、0.10、0.12、0.13またはこの間の任意範囲であってもよく、フルオロエチレンカーボネートの質量百分率A%とId/Igとは1.5≦A/(10×Id/Ig)≦8.6を満たし、例えば、A/(10×Id/Ig)は、1.5、2、3、3.5、4、5、6、7、8、8.6またはこの間の任意範囲であってもよい。いかなる理論に制限されないが、A×(10×Id/Ig)を上記範囲内に調整することにより、良好なサイクル特性、エネルギー密度及び安全性を有するリチウムイオン電池が得られる。本願の正極は正極極片を指すことができ、負極は負極極片を指すことができる。
【0006】
本願の発明者は、A×B、A/(10×Id/Ig)を上記範囲内に調整することにより、リチウムイオン電池のエネルギー密度及びサイクル特性を向上させることができることを発見した。いかなる理論に制限されないが、これは、本願における電解液に上記含有量範囲のトリニトリル化合物を含むと、トリニトリル化合物は正極界面の安定性を向上させることができるが、より速い充電速度を得るために、リチウムイオン電池の動力学特性を向上させる必要もあるからであると考えられる。これに基づいて、本願では、フルオロエチレンカーボネートのような負極成膜添加剤の含有量を調整することにより、リチウム析出を改善するとともにリチウムイオン電池の動力学特性を向上させることができ、そして、A/(10×Id/Ig)を相乗的に調整することにより、リチウムイオン電池の負極動力学特性及び高温安定性を両立して、リチウムイオン電池全体に良好なサイクル性能、エネルギー密度及び安全性を有させることができる。
【0007】
本願の一形態において、前記正極は正極活物質を含み、前記正極活物質は金属元素Mを含み、前記金属元素MはTi、Mg及びAlからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、正極活物質における金属元素Mの含有量をCppmとした場合、CとBとは8≦C×B/1000≦30を満たし、例えば、C×B/1000は8、10、13、15、18、20、22、25、27、30またはこの間の任意範囲であってもよい。本願では、C×B/1000を上記範囲内に調整することにより、正極活物質の構造安定性を向上させて、リチウムイオン電池のエネルギー密度及びサイクル特性を向上させることができる。
【0008】
本願の一形態において、Id/IgとCとはC/(1000×Id/Ig)≧20を満たし、好ましくは、20≦C/(1000×Id/Ig)≦70を満たす。C/(1000×Id/Ig)は、20、25、30、35、50、55、60、70またはこの間の任意範囲であってもよい。いかなる理論に制限されないが、C/(1000×Id/Ig)が小さすぎる(例えば20より小さい)と、リチウムイオン電池のサイクル安定性の向上に不利である。A×(10×Id/Ig)を上記範囲内に調整することにより、良好なサイクル特性、エネルギー密度及び安全性を有するリチウムイオン電池が得られる。
【0009】
本願では、負極の欠陥度Id/Igにおいて、Idは、負極活物質のラマンスペクトルにおけるDピークのピーク強度を指し、Igは負極活物質のラマンスペクトルにおけるGピークのピーク強度を指し、Id/Igは負極活物質の欠陥の密集程度を示し、Id/Igの比値が大きいほど、欠陥度が大きい。本願では、負極欠陥度を調整する方法に特に制限がないが、例えば、負極活物質を表面コーティングするなどの方法が挙げられる。負極活物質の欠陥度は、一般的に、表面コーティング層の基体に対するコーティング面積の割合が大きくなるほど小さくなる。そのため、表面コーティング層の基体に対するコーティング面積の割合を調整することにより、負極活物質の欠陥度を調整することができる。
【0010】
本願の一形態において、正極活物質における金属元素Mの含有量Cは、2000ppm≦C≦6500ppmを満たす。例えば、Cは、2000ppm、2500ppm、3000ppm、3500ppm、4000ppm、4500ppm、5000ppm、5500ppm、6000ppm、6500ppm、またはこの間の任意範囲であってもよい。いかなる理論に制限されないが、Cが低すぎる(例えば2000ppmより低い)と、リチウムイオン電池のサイクル特性の向上幅が制限される。Cが高すぎる(例えば6500ppmより高い)と、正極活物質の相対含有量が低下し、エネルギー密度の向上に不利である。Cを上記範囲内に調整することにより、良好なサイクル特性、エネルギー密度及び安全性を有するリチウムイオン電池が得られる。
【0011】
本願の一形態において、前記電解液は、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとをさらに含み、前記電解液の質量を基準として、エチレンカーボネートの質量百分率をD%とし、プロピレンカーボネートの質量百分率をE%とした場合、DとEとは15≦D+E≦40、且つD/E≧1.2を満たし、好ましくは、1.2≦D/E≦3.5を満たす。例えば、D+Eは、15、20、25、30、35、40またはこの間の任意範囲であってもよく、D/Eは、1.2、1.3、1.4、1.5、2、2.5、3、3.5またはこの間の任意範囲であってもよい。いかなる理論に制限されないが、D+E及びE/Dを上記範囲内に相乗的に調整することにより、リチウムイオン電池のエネルギー密度及びサイクル特性を更に向上させ、リチウムイオン電池のリチウム析出を減少させ、リチウムイオン電池の安全性を向上させることができる。
【0012】
本願の一形態において、エチレンカーボネートの質量百分率D%とフルオロエチレンカーボネートの質量百分率A%とはD×A≧35を満たし、好ましくは、35≦D×A≦150を満たす。例えば、D×Aは、35、50、70、80、100、110、130、150またはこの間の任意範囲であってもよい。いかなる理論に制限されないが、D×Aを上記範囲内に調整することにより、良好なサイクル特性、エネルギー密度及び安全性を有するリチウムイオン電池が得られる。
【0013】
本願の一形態において、前記トリニトリル化合物の質量百分率B%と前記エチレンカーボネートの質量百分率D%と前記プロピレンカーボネートの質量百分率E%とはB×(D+E)≦150を満たし、好ましくは、40≦B×(D+E)≦150を満たし、例えば、B×(D+E)は、40、50、60、80、100、110、130、140、150またはこの間の任意範囲であってもよい。いかなる理論に制限されないが、B×(D+E)を上記範囲内に調整することにより、良好なサイクル特性、エネルギー密度及び安全性を有するリチウムイオン電池が得られる。
【0014】
本願の一形態において、前記電解液は、ジニトリル化合物をさらに含み、前記電解液の質量を基準として、ジニトリル化合物の質量百分率をF%とした場合、1≦F≦6であり、且つ、FとBとは4≦F+B≦9を満たす。例えば、Fは、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、またはこの間の任意範囲であってもよい。F+Bは、4、4.5、5、5.5、6.5、7、8、8.5、9またはこの間の任意範囲であってもよい。いかなる理論に制限されないが、F及びF+Bを上記範囲内に相乗的に調整することにより、正極を効果的に保護し、リチウムイオン電池のサイクル特性及びエネルギー密度を更に向上させることができる。
【0015】
本願の一形態において、前記電解液は、1,3-プロパンスルトン、硫酸ビニル、炭酸ビニレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、及びγ-ブチロラクトンからなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含む。前記電気化学装置は、a)前記電解液の質量を基準として、前記1,3-プロパンスルトンの質量百分率は、0.5%~5%であることと、b)前記電解液の質量を基準として、前記硫酸ビニルの質量百分率は、0.1%~1%であることと、c)前記電解液の質量を基準として、前記炭酸ビニレンの質量百分率は、0.1%~1%であることと、d)前記電解液の質量を基準として、前記炭酸ジメチルの質量百分率は、0.1%~30%であることと、e)前記電解液の質量を基準として、前記炭酸ジエチルの質量百分率は、0.1%~30%であることと、f)前記電解液の質量を基準として、前記炭酸エチルメチルの質量百分率は、0.1%~30%であることと、g)前記電解液の質量を基準として、前記γ-ブチロラクトンの質量百分率は、0.01%~5%であることの少なくとも一方を満たす。いかなる理論に制限されないが、前記電解液添加剤を本願範囲内に調整することにより、リチウムイオン電池のサイクル特性及びエネルギー密度を更に向上させることができる。
【0016】
本願では、トリニトリル化合物に対して、特に制限がなく、本願の目的を実現できればよい。例えば、トリニトリル化合物は、1,3,5-ペンタントリカルボニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,6-ヘキサントリニトリル、1,2,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、1,2,4-トリス(2-シアノエトキシ)ブタン、及び1,2,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0017】
本願の電解液はリチウム塩を含む。本願では、リチウム塩に対して、特に制限がなく、本願の目的を実現できればよい。例えば、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、テトラフルオロホウ酸リチウム、ビスシュウ酸ホウ酸リチウム、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム、及びジフルオロリン酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0018】
本願では、ジニトリル化合物に対して、特に制限がなく、本願の目的を実現できればよい。例えば、ジニトリル化合物は、サクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1,5-ジシアノペンタン、1,6-ジシアノヘキサン、1,7-ジシアノヘプタン、1,8-ジシアノオクタン、1,9-ジシアノノナン、1,10-ジシアノデカン、1,12-ジシアノデカン、テトラメチルスクシノニトリル、2-メチルグルタロニトリル、2,4-ジメチルグルタロニトリル、及び2,2,4,4-テトラメチルグルタロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0019】
本願の第2態様は、上記形態に記載の上記電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0020】
本願は、電気化学装置及び電子装置を提供し、電気化学装置における電解液は、フルオロエチレンカーボネートとトリニトリル化合物とを含み、フルオロエチレンカーボネートの質量百分率をA%とし、トリニトリル化合物の質量百分率をB%とした場合、2≦A≦6であり、2≦B≦5であり、AとBとは4≦A×B≦20を満たし、負極の欠陥度をId/Igとした場合、0.07<Id/Ig≦0.13を満たし、フルオロエチレンカーボネートの質量百分率A%とId/Igとは1.5≦A/(10×Id/Ig)≦8.6を満たすことにより、電気化学装置のサイクル特性、エネルギー密度及び安全性を改善する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願の発明目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、実施例を参照して、本願をさらに詳細に説明する。明らかに、記載される実施例は全部の実施例ではなく、単に本願の一部の実施例にすぎない。本願における実施例に基づいて、本分野の当業者が得る全ての他の技術案は、本願の特許請求の範囲に含まれる。
【0022】
なお、本願における発明を実施するための形態において、リチウムイオン電池を電気化学装置の例として本願を説明するが、本願の電気化学装置は、リチウムイオン電池に限定されない。
【0023】
本願では、金属元素Mを含む正極活物質(以下、変性正極活物質と略称する)の調製方法は、特に制限がなく、当業者が採用する調製方法を使用することできる。例えば、正極活物質であるLiCoOにアルミニウム含有化合物(例えばAl、Al(OH)、AlF)、マグネシウム含有化合物(例えばMgO)或はTi含有化合物(例えばTiO)を添加して、前記変性正極活物質が得られる。なお、本願では、変性正極活物質における金属元素Mの含有量を調整すること、例えば、金属元素Mを含む化合物の添加量を調整することにより、正極活物質層における金属元素Mの変化を実現することができる。本願では、その具体的な調整過程に限定がなく、本願の目的を実現できればよい。
【0024】
本願における正極集電体は特に制限がなく、本分野の任意の正極集電体、例えば、アルミ箔、アルミ合金箔、又は複合集電体などであってもよい。
【0025】
本願における負極集電体は特に制限がなく、金属箔材料又は多孔金属板などの材料を使用してもよく、例えば、銅、ニッケル、チタンや鉄などの金属、又はそれらの合金の箔材料や多孔板であってもよく、例えば、銅箔である。負極活物質層は、負極活物質と導電剤とバインダーと増稠剤とを含む。バインダーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルブチラール(PVB)、水性アクリル樹脂(water-basedacrylic resin)、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。増稠剤はカルボキシメチルセルロース(CMC)であってもよい。
【0026】
本願のセパレータにおける基材は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリイミド(PI)、及びアラミドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。例を挙げれば、ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび超高分子量ポリエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。特に、ポリエチレン及びポリプロピレンは、短絡の防止に対して良好な効果を有するとともに、シャットダウン効果により電気化学装置の安定性を向上させることができる。基材は、単層構造であってもよく、多種混合の多層複合構造であってもよい。基材の厚さは、3μm~20μmである。
【0027】
本願の電子装置は、特に限定されなく、従来技術において既知の任意の電子装置であってもよい。いくつかの実施例において、電子装置は、ノートパソコン、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニCD、トランシーバー、電子ノートブック、計算機、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、大型家庭用ストレージバッテリー、及びリチウムイオンコンデンサーなどを含むが、これらに限定されない。
【0028】
電気化学装置の製造プロセスは、当業者がよく知っているものであり、本願では、特に制限がない。例えば、リチウムイオン電池は、正極と負極を、セパレータを介して重ねて、必要に応じてそれを巻き取り、折り畳みなどを行って、ケース内に入れて、電解液をケースに注入して密封することで、製造するできる。また、必要に応じて過電流防止要素、ガイド板などをケースに設置することで、リチウムイオン電池内部の圧力上昇、過充放電を防止することができる。
【0029】
以下、実施例及び比較例を挙げて本願の実施方式をより具体的に説明する。各試験および評価は、下記の方法に従って行う。なお、特に断らない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0030】
測定方法及び設備
【0031】
正極活物質である金属元素Mの含有量の測定
DMC(炭酸ジメチル)で洗浄した正極極片の活物質をスクレーパーで削り取り、混合溶媒(例えば、正極活物質0.4gに対して、(硝酸と塩酸を1:1で混合)王水10mlとHF 2mlとの混合溶媒を使用)で溶解し、100mLに定容した後、ICP分析装置を用いて、溶液におけるTi、Mg、Alなどの金属Mの含有量を測定し、単位はppmであった。
【0032】
負極の欠陥度の測定
乾燥した負極極片の表面を平らに保持し、ラマン測定装置(JobinYvonLabRAM HR)の試料台に置いて測定を行い、ラマンスペクトルを得た。ラマンスペクトルから、Dピークのピーク強度及びGピークのピーク強度を確定し、Id/Igを負極の欠陥度として算出した。
【0033】
リチウムイオン電池のサイクル特性の測定
25℃で、リチウムイオン電池を0.7C(倍率)で4.5Vまで定電流充電し、その後、電流が0.05Cまで定電圧充電し、そして、1Cで3.0Vまで定電流放電した。これは、一回の充放電サイクルで、この時は、初回サイクルで、リチウムイオン電池の初回サイクルの放電容量を記録した。リチウムイオン電池を上記のように充放電サイクルを行って、リチウムイオン電池の放電容量が初回サイクルの放電容量の80%に減衰するまで、毎回のサイクルの放電容量を記録し、充放電サイクル回数を記録した。
【0034】
リチウムイオン電池の容量の測定
25±0.5℃の恒温ボックスに、リチウムイオン電池を0.5C(倍率)で電圧4.5Vまで定電流充電し、その後、4.5Vで電流0.05Cまで定電圧充電し、そして、0.2C(倍率)で電圧3Vまで定電流放電した。得られた放電容量は、リチウムイオン電池の電池容量であった。
【0035】
リチウムイオン電池のリチウム析出度の測定
1)リチウムイオン電池を10℃の高低温テストボックスに置いて、30分間放置して、リチウムイオン電池を恒温にした。
2)恒温に達したリチウムイオン電池を0.5Cで電圧3.0Vまで定電流放電した。
3)10分間静置した後、0.1Cで電圧4.5Vまで定電流充電し、その後、4.5Vで電流0.05Cまで定電圧充電した(充電容量C1を記録した)。
4)10分間静置した後、0.5Cで電圧3.0Vまで定電流放電し、10分間静置した後、0.025Cで電圧3.0Vまで定電流放電し、引き続き10分間静置した後、0.005Cで電圧3.0Vまで定電流放電し、当該ステップを完了した時の放電容量をD1として記録した。
5)10分間静置した後、0.7Cで電圧4.5Vまで定電流充電し、その後、4.5Vで電流0.05Cまで定電圧充電した。
6)10分間静置した後、0.5Cで電圧3.0Vまで定電流放電し、10分間静置した後、0.025Cで電圧3.0Vまで定電流放電し、引き続き10分間静置した後、0.005Cで電圧3.0Vまで定電流放電した。
7)ステップ5)とステップ6)を12回繰り返し、最終回を完了した時の放電容量をD12として記録した。リチウム析出量を充電特性の判断根拠(リチウム析出量が低いほど、リチウム析出度が軽微であり、リチウム析出量が0.3より低いと、肉眼でリチウム析出が見えにくくなる)として算出し、ここで、リチウム析出量の算出は下記の通りであった。
リチウム析出量=(C1-D12)/C1
【0036】
実施例1
<変性正極活物質の作製>
市販のコバルト酸リチウム(LiCoO)と、金属元素Mを含む酸化物(酸化マグネシウム(MgO)、二酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)の混合物)とを混合して、高速混合機に300r/minで20分間混合して、混合物を空気窯炉に置いて、5℃/minで820℃まで昇温して、24h保持して、自然に冷却してから取り出して、300メッシュの篩を通して変性正極活物質(即ち、変性LiCoO)を得た。当該変性正極活物質において、正極活物質における金属元素M(Mg、Ti、Al)の含有量合計は4000ppmで、Mg元素とTi元素とAl元素とのモル比は1:1:1であった。
【0037】
<正極極片の作製>
得られた変性LiCoO、導電剤であるカーボンナノチューブ(CNT)、バインダーであるポリフッ化ビニリデンを質量比95:2:3で混合して、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)を添加して、真空攪拌機により、均一で、固形含有量が75wt%である正極スラリーになるまで攪拌した。正極スラリーを厚さ12μmの正極集電体であるアルミ箔に均一に塗布して、85℃で乾燥して、冷間圧延した後、正極活物質層の厚さが100μmである正極極片を得、そして、当該正極極片のもう一方の表面に上記ステップを繰り返して、両面に正極活物質層を塗布した正極極片を得た。正極極片を74mm×867mmに切断して、タブを溶接して、後続の手順で使用するまで取っておいた。
【0038】
<負極極片の作製>
負極活物質である人造黒鉛と、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)と、カルボキシルメチルセルロース(CMC)とを質量比95:2:3で混合して、その後、溶媒として脱イオン水を添加して、固体含有量70wt%のスラリーを調製して、均一に攪拌した。スラリーを厚さ8μmの銅箔の片面に均一に塗布して、110℃で乾燥して、冷間圧延した後、負極活物質層の厚さが150μmである、負極活物質層が片面に塗布された負極極片を得、そして、当該負極極片のもう一つの表面に上記塗布ステップを繰り返して、両面に負極活物質層を塗布した負極極片を得た。負極極片を(74mm×867mm)に切断して、タブを溶接して、後続の手順で使用するまで取っておいた。ここで、負極極片の欠陥度Id/Igが0.1であった。
【0039】
<電解液の調製>
含水量が10ppm未満であるアルゴンガス雰囲気のグローブボックスに、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、炭酸ジエチル(DEC)を重量比1:1:1で均一に混合して、ベース溶媒として、LiPFと、トリニトリル化合物である1,3,6-ヘキサントリニトリルと、フルオロエチレンカーボネートとを添加して、均一に撹拌し、電解液を形成した。ここで、LiPFの濃度が12.5wt%であり、トリニトリル化合物である1,3,6-ヘキサントリニトリル及びフルオロエチレンカーボネートの質量百分率は表1の通りであった。
【0040】
<セパレータの作製>
厚さ15μmのポリエチレン(PE)製の多孔質ポリマーフィルムをセパレータとした。
【0041】
<リチウムイオン電池の作製>
セパレータが正極極片と負極極片の間に介在して隔離の役割を果たすように、正極極片、セパレータ、負極極片を順に積層してから巻き取り、電極アセンブリが得られた。電極アセンブリをアルミプラスチックフィルム包装袋に入れて、80℃で水分を除去して、調製した電解液を注入して、真空密封、静置、フォーメーション、整形などの工程によって、リチウムイオン電池を得た。
【0042】
実施例2~実施例5
電解液におけるフルオロエチレンカーボネートの含有量を調整し、負極コーティング層の基体に対するコーティング面積の割合を調整することにより負極極片の欠陥度Id/Igを調整し、関連作製パラメータ及び特性を表1に示すように変化した以外、実施例1と同じようにした。
【0043】
実施例6~実施例8
電解液におけるフルオロエチレンカーボネートの含有量及びトリニトリル化合物の含有量を調整し、関連作製パラメータ及び特性を表1に示すように変化した以外、実施例1と同じようにした。
【0044】
実施例9~実施例20
電解液におけるトリニトリル化合物の種類、フルオロエチレンカーボネートの含有量及びトリニトリル化合物の含有量、並びに金属元素Mの合計含有量を調整し、関連作製パラメータ及び特性を表2に示すように変化した以外、実施例1と同じようにした。
【0045】
実施例21
<変性正極活物質の作製>において、金属元素Mを含む酸化物はMgOとAlとの混合物であり、Mg元素とAl元素とのモル比は1:1であり、関連作製パラメータ及び特性を表2に示すように変化した以外、実施例18と同じようにした。
【0046】
実施例22
<変性正極活物質の作製>において、金属元素Mを含む酸化物はAlであり、関連作製パラメータ及び特性を表2に示すように変化した以外、実施例18と同じようにした。
【0047】
実施例23
<電解液の調製>が実施例1と異なった以外、実施例1と同じようにした。
【0048】
<電解液の調製>
含水量が10ppm未満であるアルゴンガス雰囲気のグローブボックスに、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、炭酸ジエチル(DEC)を重量比9:7:64.5で均一に混合して、ベース溶媒として、LiPFと、トリニトリル化合物である1,3,6-ヘキサントリニトリルと、フルオロエチレンカーボネートとを添加して、均一に撹拌し、電解液を形成した。ここで、LiPFの濃度が12.5wt%であり、トリニトリル化合物である1,3,6-ヘキサントリニトリル及びフルオロエチレンカーボネートの質量百分率、並びに関連作製パラメータ及び特性の変化を表3の通りであった。
【0049】
実施例24
<電解液の調製>が実施例1と異なった以外、実施例1と同じようにした。
【0050】
<電解液の調製>
含水量が10ppm未満であるアルゴンガス雰囲気のグローブボックスに、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、炭酸ジエチル(DEC)を重量比20:8:52.5で均一に混合して、ベース溶媒として、LiPFと、トリニトリル化合物である1,3,6-ヘキサントリニトリルと、フルオロエチレンカーボネートとを添加して、均一に撹拌し、電解液を形成した。ここで、LiPFの濃度が12.5wt%であり、トリニトリル化合物である1,3,6-ヘキサントリニトリル及びフルオロエチレンカーボネートの質量百分率、並びに関連作製パラメータ及び特性の変化を表3の通りであった。
【0051】
実施例25
<電解液の調製>が実施例1と異なった以外、実施例1と同じようにした。
【0052】
<電解液の調製>
含水量が10ppm未満であるアルゴンガス雰囲気のグローブボックスに、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、炭酸ジエチル(DEC)を重量比30:10:40.5で均一に混合して、ベース溶媒として、LiPFと、トリニトリル化合物である1,3,6-ヘキサントリニトリルと、フルオロエチレンカーボネートとを添加して、均一に撹拌し、電解液を形成した。ここで、LiPFの濃度が12.5wt%であり、トリニトリル化合物である1,3,6-ヘキサントリニトリル及びフルオロエチレンカーボネートの質量百分率、並びに関連作製パラメータ及び特性の変化を表3の通りであった。
【0053】
実施例26
<電解液の調製>が実施例13と異なった以外、実施例13と同じようにした。
【0054】
<電解液の調製>
含水量が10ppm未満であるアルゴンガス雰囲気のグローブボックスに、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、炭酸ジエチル(DEC)を重量比1:1:1で均一に混合して、ベース溶媒として、LiPFと、トリニトリル化合物である1,3,6-ヘキサントリニトリルと、フルオロエチレンカーボネートと、ジニトリル化合物であるサクシノニトリルとを添加して、均一に撹拌し、電解液を形成した。ここで、LiPFの濃度が12.5wt%であり、トリニトリル化合物である1,3,6-ヘキサントリニトリル、フルオロエチレンカーボネート及びジニトリル化合物であるサクシノニトリルの質量百分率、並びに関連作製パラメータ及び特性の変化を表4の通りであった。
【0055】
実施例27~実施例31
<電解液の調製>において、表4のようにジニトリル化合物の種類及び含有量を調整した以外、実施例26と同じようにした。
【0056】
実施例32
<電解液の調製>が実施例13と異なった以外、実施例13と同じようにした。
【0057】
<電解液の調製>
含水量が10ppm未満であるアルゴンガス雰囲気のグローブボックスに、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、炭酸ジエチル(DEC)を重量比1:1:1で均一に混合して、ベース溶媒として、LiPFと、トリニトリル化合物である1,3,6-ヘキサントリニトリルと、フルオロエチレンカーボネートと、添加剤である1,3-プロパンスルトンとを添加して、均一に撹拌し、電解液を形成した。ここで、LiPFの濃度が12.5wt%であり、トリニトリル化合物である1,3,6-ヘキサントリニトリル、フルオロエチレンカーボネート及び添加剤である1,3-プロパンスルトンの質量百分率、並びに関連作製パラメータ及び特性の変化を表4の通りであった。
【0058】
実施例33~実施例34
<電解液の調製>において、表5のように添加剤の種類及び含有量を調整した以外、実施例32と同じようにした。
【0059】
比較例1、比較例2
電解液におけるフルオロエチレンカーボネートの含有量及びトリニトリル化合物の含有量を調整し、関連作製パラメータ及び特性を表1に示すように変化した以外、実施例1と同じようにした。
【0060】
比較例3~比較例6
電解液におけるトリニトリル化合物の種類と、フルオロエチレンカーボネートの含有量及びトリニトリル化合物の含有量と、金属元素Mの合計含有量を調整し、関連作製パラメータ及び特性を表2に示すように変化した以外、実施例1と同じようにした。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
表1における実施例1~実施例8、比較例1~比較例2から、A×B、A/(10×Id/Ig)を本願の範囲内に調整することにより、リチウムイオン電池は、電池容量及び容量維持率が著しく向上し、リチウム析出が発生しないことがわかる。これは、本願のリチウムイオン電池が良好なサイクル特性、容量特性及び安全性を有することを示している。
【0067】
表2における実施例9~実施例14、比較例3~比較例4から、A×B、A/(10×Id/Ig)が本願の範囲内を満たした上で、C×B/1000を本願の範囲内に調整することにより、リチウムイオン電池は、電池容量及び容量維持率が著しく向上し、リチウム析出が発生しないことがわかる。これは、本願のリチウムイオン電池が良好なサイクル特性、容量特性及び安全性を有することを示している。
【0068】
表2における実施例15~実施例18、比較例5~比較例6から、金属元素Mの含有量が高すぎる(例えば比較例5)と、リチウムイオン電池は、電池容量及び容量維持率が著しく低下し、且つリチウム析出がわずか発生し、そして、金属元素Mの含有量が低すぎる(例えば比較例6)と、リチウムイオン電池は、電池容量及び容量維持率も著しく低下し、且つリチウム析出がわずか発生することがわかる。これは、A×B、A/(10×Id/Ig)が本願の範囲内を満たした上で、金属元素Mの含有量及びC×B/1000を本願の範囲内に調整することにより、良好なサイクル特性、容量特性及び安全性を有するリチウムイオン電池が得られることを示している。
【0069】
表2における実施例12、実施例19及び実施例20から、A×B、A/(10×Id/Ig)が本願の範囲を満たした上で、トリニトリル化合物の種類を本願の範囲内にする限り、良好なサイクル特性及び安全性を有するリチウムイオン電池が得られることがわかる。
【0070】
実施例18、実施例21及び実施例22から、A×B、A/(10×Id/Ig)が本願の範囲を満たした上で、金属元素Mの種類を本願の範囲内にする限り、良好なサイクル特性及び安全性を有するリチウムイオン電池が得られることが分かる。
【0071】
表2における実施例9~実施例22から、A×B、A/(10×Id/Ig)が本願の範囲を満たした上で、C/(1000×Id/Ig)を本願の範囲内に調整することにより、良好な電池容量、容量維持率及び安全性を有するリチウムイオン電池が得られることが分かる。
表3における実施例13、実施例23~実施例25から、A×B、A/(10×Id/Ig)が本願の範囲を満たした上で、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートの含有量を調整することにより、良好なサイクル特性を有するリチウムイオン電池が得られることがわかる。
【0072】
表4における実施例13、実施例26~実施例31から、A×B、A/(10×Id/Ig)が本願の範囲を満たした上で、電解液にはジニトリル化合物をさらに含み、ジニトリル化合物及びトリニトリル化合物の合計含有量が本願の範囲を満たすと、リチウムイオン電池のサイクル特性をさらに向上させることができることがわかる。
【0073】
表5における実施例13、実施例32~実施例34から、A×B、A/(10×Id/Ig)が本願の範囲を満たした上で、電解液には1,3-プロパンスルトン、硫酸ビニル、炭酸ビニレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル及びγ-ブチロラクトンからなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含むと、リチウムイオン電池のサイクル特性をさらに向上させることができることがわかる。
【0074】
以上は、本願の好ましい実施例に過ぎず、本願を制限するためのものではない。本願の精神及び原理を逸脱しない範囲においてなされたいかなる補正、均等の置換、改良などは、いずれも本願の請求の範囲に含まれている。