(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質前駆体、正極活物質、及びそれを含む正極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240805BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240805BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240805BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/505
C01G53/00 A
(21)【出願番号】P 2022570713
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(86)【国際出願番号】 KR2021018559
(87)【国際公開番号】W WO2022124801
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0170277
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヘ-ジュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジ-ヘ・キム
(72)【発明者】
【氏名】テ-グ・ヨ
(72)【発明者】
【氏名】ワン-モ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チ-ホ・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-ウク・ホ
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-001935(JP,A)
【文献】特開2020-177860(JP,A)
【文献】特開2020-027800(JP,A)
【文献】特開2020-064858(JP,A)
【文献】特開2019-106238(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0326596(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/36
H01M 4/505
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部分及びシェル部分を含む正極活物質用2次粒子前駆体の製造方法であって、
前記正極活物質用2次粒子前駆体の粒径(D50)が6±2μmであり、
前記コア部分の粒径(D50)が1~5μmであり、
前記コア部分が前記シェル部分に比べて多孔度が高く、
(S1)ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質、及びマンガン含有原料物質を含む遷移金属溶液に、窒素含有キレート剤と塩基性化合物とを1次撹拌する1次撹拌段階と、
(S2)前記1次撹拌段階の結果物を2次撹拌する2次撹拌段階と、を含み、
前記1次撹拌段階の1次撹拌速度が前記2次撹拌段階の2次撹拌速度よりも遅く、
前記1次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度が前記2次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度よりも高い、正極活物質用2次粒子前駆体の製造方法。
【請求項2】
前記1次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度は5000ppm以上であり、
前記2次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度は5000ppm以下である、請求項
1に記載の正極活物質用2次粒子前駆体の製造方法。
【請求項3】
前記1次撹拌速度は800rpm以下であり、前記2次撹拌速度は1000rpm以上である、請求項
1に記載の正極活物質用2次粒子前駆体の製造方法。
【請求項4】
前記1次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度は5000ppm以上であり、
前記2次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度は4000ppm以下である、請求項
1に記載の正極活物質用2次粒子前駆体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たな概念の正極活物質用2次粒子を製造する前駆体、正極活物質、及びそれを含むリチウム二次電池に関する。
【0002】
本出願は、2020年12月8日付け出願の韓国特許出願第10-2020-0170277号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車など電池を使用する電子機器の急速な普及に伴って、小型軽量でありながらも相対的に高容量である二次電池の需要が急速に伸びている。特に、リチウム二次電池は、軽量であって且つ高エネルギー密度を有しているため、携帯機器の駆動電源として脚光を浴びている。そこで、リチウム二次電池の性能向上のための研究開発が活発に行われている。
【0004】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入(intercalation)及び脱離(deintercalation)が可能な活物質からなる正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充填した状態で、リチウムイオンが正極及び負極で挿入/脱離するときの酸化反応と還元反応によって電気エネルギーが生産される。
【0005】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMnO2またはLiMn2O4など)、リチウムリン酸鉄化合物(LiFePO4)などが使用されている。中でも、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)は、作動電圧が高くて容量特性に優れるという長所から広く使用され、高電圧用正極活物質として適用されている。しかし、コバルト(Co)の価格上昇及び供給不安定のため、電気自動車などのような分野の動力源としての大量使用には限界があり、これに代替可能な正極活物質を開発する必要があった。
【0006】
そこで、コバルト(Co)の一部をニッケル(Ni)とマンガン(Mn)で置換したニッケルコバルトマンガン系リチウム複合遷移金属酸化物(以下、「NCM系リチウム複合遷移金属酸化物」とする)が開発された。
【0007】
一方、従来開発されたNCM系リチウム複合遷移金属酸化物は、1次微細粒子が凝集した2次粒子形態であって、比表面積が大きく、粒子強度が低い。また、1次微細粒子が凝集した2次粒子を含む正極活物質で電極を製造した後、圧延すると、粒子割れが酷くてセル駆動時にガスが多量発生し、安定性に劣るという問題がある。特に、高容量を確保するためニッケル(Ni)の含量を増加させた高含量ニッケル(High‐Ni)のNCM系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、構造的及び化学的安定性がさらに低下し、熱安定性をさらに確保し難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するため、従来と同一または類似水準の平均粒径(D50)を有する2次粒子でありながらも、従来と異なって1次巨大粒子を含むことで、正極活物質の圧延時の粒子割れを最小化する正極活物質を提供可能な前駆体をまず提供することを目的とする。
【0009】
これにより、本発明は、長寿命及びガス性能に優れたニッケル系正極活物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、下記具現例による2次粒子前駆体を提供する。
【0011】
具体的には、
コア部分及びシェル部分を含む正極活物質用2次粒子前駆体であって、
前記2次粒子前駆体は、粒径(D50)が6±2μmであり、
前記コア部分の粒径(D50)は1~5μmであり、
前記コア部分が前記シェル部分に比べて多孔度が高いことを特徴とする正極活物質用2次粒子前駆体である。
【0012】
前記コア部分の多孔度は、タップ密度基準で2.0g/cc未満であり得る。より具体的には、前記コア部分の多孔度は、タップ密度基準で1.9g/cc以下であり得る。
【0013】
前記コア部分は、粒径(D50)が1μm~3μmであり得る。
【0014】
前記シェル部分の多孔度は、タップ密度基準で2.0g/cc以上であり得、より具体的には、前記シェル部分の多孔度は、タップ密度基準で2.1g/cc以上であり得る。
【0015】
前記2次粒子前駆体は、LiaNi1-x-yCoxM1yM2w(OH)2(1.0≦a≦1.5、0≦x≦0.2、0≦y≦0.2、0≦w≦0.1、0≦x+y≦0.2、M1はMn及びAlからなる群より選択される少なくとも1種、M2はBa、Ca、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb及びMoからなる群より選択される少なくとも1種)で表されるニッケル系リチウム遷移金属水酸化物であり得る。
【0016】
本発明の一態様は、上述した正極活物質用前駆体を焼成して酸化物として製造されたリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0017】
前記酸化物は、粒径(D50)が1μm以上である1次巨大粒子が凝集した粒径(D50)3~5μmの2次粒子であり得る。
【0018】
前記1次巨大粒子の平均結晶サイズは、200nm以上であり得る。
【0019】
前記2次粒子の平均粒径(D50)/前記1次巨大粒子の平均粒径(D50)は2~4であり得る。
【0020】
前記酸化物は、LiaNi1-x-yCoxM1yM2wO2(1.0≦a≦1.5、0≦x≦0.2、0≦y≦0.2、0≦w≦0.1、0≦x+y≦0.2、M1はMn及びAlからなる群より選択される少なくとも1種、M2はBa、Ca、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb及びMoからなる群より選択される少なくとも1種)で表されるニッケル系リチウム遷移金属酸化物であり得る。
【0021】
本発明の他の一態様は、上述した正極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0022】
本発明の他の一態様は、下記の製造方法を提供する。
【0023】
具体的には、
(S1)ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質、及びマンガン含有原料物質を含む遷移金属溶液に、窒素含有キレート剤(chelating agent)と塩基性化合物とを1次撹拌する段階と、
(S2)前記(S1)段階の結果物を2次撹拌する段階と、を含み、
前記1次撹拌段階の1次撹拌速度が前記2次撹拌段階の2次撹拌速度よりも遅く、
前記1次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度が前記2次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度よりも高いことを特徴とする、正極活物質用2次粒子前駆体の製造方法である。
【0024】
具体的には、前記1次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度は5,000ppm以上であり、2次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度は4,000ppm以下であり得る。
【0025】
前記1次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度は5,000ppm以上であり、2次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度は5,000ppm以下であり得る。
【0026】
より具体的には、前記1次撹拌速度は800rpm以下であり、2次撹拌速度は1,000rpm以上であり得る。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、1次巨大粒子の平均粒径(D50)の成長と同時に結晶サイズも成長して抵抗が向上した2次粒子を含む正極活物質前駆体を提供することができる。
【0028】
本発明の一態様によれば、正極活物質の圧延密度が増加し、長寿命及びガス性能に優れたニッケル系正極活物質を提供可能な前駆体をまず提供することができる。
【0029】
本明細書に添付される図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。一方、本明細書に添付される図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などはより明確な説明を強調するため誇張されることもある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の比較例による正極活物質を撮影したSEMイメージである。
【
図2】本発明の一実施例による正極活物質を撮影したSEMイメージである。
【
図3】従来の2次粒子用前駆体を1次焼成したときの正極活物質粒子を概略的に示した模式図である。
【
図4】本発明の一実施例による2次粒子用前駆体を1次焼成したときの正極活物質粒子を概略的に示した模式図である。
【
図5】本発明の実施例及び比較例の圧延密度を示したグラフである。
【
図6】本発明の実施例及び比較例の充放電プロファイルを示したグラフである。
【
図7】本発明の実施例及び比較例の高温寿命特性を示したグラフである。
【
図8】本発明の実施例及び比較例のガス発生量を測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の具現例を詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲において使用された用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0032】
本明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0033】
本明細書及び特許請求の範囲において、「多数の結晶粒を含む」とは、特定範囲の平均結晶サイズを有する二つ以上の結晶粒子が集まってなる結晶体を意味する。このとき、前記結晶粒の結晶サイズは、CuKαX線(Xrα)によるX線回折分析(XRD)を用いて定量的に分析され得る。具体的には、製造した粒子をホルダーに入れてX線を前記粒子に照射し回折パターンを分析することで、結晶粒の平均結晶サイズを定量的に分析可能である。
【0034】
明細書及び特許請求の範囲において、D50は、粒子サイズ分布の50%基準での粒子サイズと定義され、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定可能である。例えば、前記正極活物質の平均粒径(D50)の測定方法は、正極活物質粒子を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、マイクロトラックMT3000)に導入して約28kHzの超音波を出力60Wで照射し、測定装置における体積累積量の50%に該当する平均粒径(D50)を算出し得る。
【0035】
本発明において「1次粒子」とは、走査型電子顕微鏡を用いて5,000倍~20,000倍の視野で観察したとき、外観上粒界が存在しない粒子を意味する。
【0036】
本発明において「2次粒子」とは、前記1次粒子が凝集して形成された粒子である。
【0037】
本発明において「単粒子」とは、前記2次粒子とは独立して存在するものであって、外観上粒界が存在せず、例えば、粒子径が0.5μm以上の粒子を意味する。
【0038】
本発明において「粒子」との記載は、単粒子、2次粒子、1次粒子のうちのいずれか一つまたはすべてが含まれる意味であり得る。
【0039】
本発明の一態様は、従来と異なる2次粒子形態の正極活物質を提供可能な前駆体を先に提供する。
【0040】
正極活物質用前駆体
従来の2次粒子は、
図1から分かるように、正極活物質内部の粒子成長(粒成長)が均一ではなかった。この場合、2次粒子を均一に製造できず、電気化学性能に劣るという問題があった。
【0041】
本発明者らは、上述した問題点を解決するために研究した結果、前駆体内部の密度を異ならせることで、正極活物質内部の粒子を均一に成長させた。
図2から分かるように、本発明の一態様による前駆体を使用して2次粒子を製造すると、均一に粒成長した正極活物質を提供することができる。
【0042】
具体的には、本発明の一態様による正極活物質用2次粒子前駆体は、
コア部分及びシェル部分を含む正極活物質用2次粒子前駆体であって、
前記2次粒子前駆体の粒径(D50)が6±2μmであり、
前記コア部分の粒径(D50)は1~5μmであり、
前記コア部分が前記シェル部分に比べて多孔度が高いことを特徴とする。
【0043】
一般に、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物は2次粒子である。このような2次粒子は1次粒子が凝集した形態であり得る。
【0044】
具体的には、共沈法によって製造された高密度の(密な、dense)ニッケル系リチウム遷移金属水酸化物2次粒子を前駆体にし、該前駆体をリチウム前駆体と混合して960℃未満の温度で焼成すれば、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物2次粒子が得られる。このような一連の過程を
図3に示した。
図3を参照すると、従来の密な前駆体を1次焼成すると、2次粒子の表面からの粒成長により、表面の1次粒子は平均粒径が大きくなるが、内部の1次粒子は平均粒径が相対的に小さく成長する問題がある。このような従来の2次粒子を含む正極活物質を集電体上に塗布してから圧延すると、粒子自体が割れて比表面積が広くなる。比表面積が広くなれば、表面に岩塩(rock salt)型構造が形成されて抵抗が高くなる。
【0045】
一方、本発明の一態様では、このような問題を解決しようとして、上述した密なニッケル系リチウム遷移金属水酸化物2次粒子を前駆体とする従来方法と異なり、従来の前駆体に比べて内部が多孔性(porous)である前駆体を使用することで、同一ニッケル含量対比低い焼成温度で合成可能であり、それ以上2次粒子の形態を持たず、単粒子化されたニッケル系リチウム遷移金属酸化物を収得することができる。
【0046】
前記2次粒子前駆体は、LiaNi1-x-yCoxM1yM2w(OH)2(1.0≦a≦1.5、0≦x≦0.2、0≦y≦0.2、0≦w≦0.1、0≦x+y≦0.2、M1はMn及びAlからなる群より選択される少なくとも1種、M2はBa、Ca、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb及びMoからなる群より選択される少なくとも1種)で表されるニッケル系リチウム遷移金属水酸化物であり得る。
【0047】
図4に示したように、本発明の一態様による2次粒子用前駆体は、コア部分の多孔度がシェル部分の多孔度よりも相対的に高い。これにより、焼成温度を高くしなくても粒径が大きい1次巨大粒子が成長できる一方、2次粒子は従来に比べて相対的に成長しない。また、粒成長が均一な2次粒子を提供することができる。結果的に、内部まで均一に粒子が成長することで、優れた電気化学特性を見せ、粒子割れを最小化して寿命及びガス性能を改善することができる。
【0048】
本発明の具体的な一実施形態において、前記2次粒子用前駆体は、粒径が6±2μmである。すなわち、本発明の一態様による2次粒子用前駆体は、従来と同一または類似の平均粒径(D50)を有し得る。
【0049】
本発明の具体的な一実施形態において、前記コア部分の粒径(D50)は1~5μmである。より具体的には、前記コア部分の粒径(D50)は1μm~3μmであり得る。
【0050】
一方、本発明の具体的な一実施形態において、前記シェル部分とは、単一粒子用前駆体においてコア部分を除いた残りの部分を意味する。コア部分より多孔度が減少する境界部分からシェル部分と定義される。
【0051】
シェル部分の厚さとは、前駆体全体の粒径(D50)からコア部分の粒径(50)を引いた残りの部分の厚さを意味する。シェル部分の厚さは0.1~5μmであり得、具体的には0.5μm~4μmであり得、より具体的には1~3μmであり得る。
【0052】
本発明の一態様による2次粒子前駆体において、前記コア部分は前記シェル部分に比べて多孔度が高い。
【0053】
このとき、多孔度は、タップ密度によって決定可能であるが、本発明の具体的な一実施形態において、前記コア部分の多孔度は、タップ密度基準で2.0g/cc未満であり得る。より具体的には、1.9g/cc以下、1.8g/cc以下、1.7g/c、または1.5g/cc以下であり得る。本発明の具体的な一実施形態において、前記シェル部分の多孔度は、タップ密度基準で2.0g/cc以上であり得る。より具体的には、2.0g/cc以上、2.1g/cc以上、2.2g/cc以上、または2.5g/cc以上であり得る。このようにタップ密度が相異なる前駆体を使用することで、焼成温度を高くしなくても粒径が大きい1次巨大粒子が成長できる一方、2次粒子は従来に比べて相対的に成長しない。また、粒成長が均一な2次粒子を提供することができる。
【0054】
本発明の一態様は、上述した正極活物質用前駆体を焼成して酸化物として製造されたリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0055】
これにより、本発明の一態様による酸化物を構成する2次粒子は、従来と同一または類似の平均粒径(D50)を有しながらも、1次粒子の平均直径(D50)が大きい形態である。すなわち、従来の正極活物質が有する一般的な形態、すなわち平均粒径が小さい1次粒子が集まって2次粒子を形成する形態と異なり、1次粒子のサイズを大きくした1次巨大粒子が凝集した2次粒子の形態を提供する。
【0056】
本発明の具体的な一実施形態において、前記2次粒子は、1個~10個以内の前記1次巨大粒子が凝集したものであり得る。より具体的には、前記2次粒子は、前記数値範囲内で1個以上、2個以上、3個以上、または4個以上の前記1次巨大粒子が凝集したものであり得、前記数値範囲内で10個以下、9個以下、8個以下、または7個以下の前記1次巨大粒子が凝集したものであり得る。
【0057】
本発明において「1次巨大粒子」とは、平均直径(D50)が1μm以上であり得る。
【0058】
本発明の具体的な一実施形態において、前記1次巨大粒子の平均粒径は1μm以上、2μm以上、2.5μm以上、3μm以上、または3.5μm以上であり得、5μm以下、4.5μm以下、または4μm以下であり得る。前記1次巨大粒子の平均粒径が1μm未満であると、従来の2次粒子に該当して圧延時に粒子破れが発生するおそれがある。
【0059】
一方、本発明において、1次巨大粒子は、平均粒径(D50)/平均結晶サイズが10以上であり得る。すなわち、前記1次巨大粒子は、従来の2次粒子を構成する1次微細粒子と比べて、1次粒子の平均粒径と平均結晶サイズとが同時に成長することができる。
【0060】
クラック(crack)の点で見ると、従来の単粒子のように外観上粒界が存在せず且つ平均粒径が大きいことが有利である。これにより、本発明者らは1次粒子の平均粒径(D50)を成長させるために努力した。その過程で、過焼成などによって1次粒子の平均粒径(D50)のみを増やす場合は、1次粒子の表面に岩塩型構造が形成されて抵抗が高くなる問題があることに気付いた。そして、これを解決するためには、1次粒子の平均結晶サイズもともに成長させることが抵抗を下げるのに有利であることを見出した。
【0061】
これにより、本発明における1次巨大粒子は、平均粒径だけでなく平均結晶サイズも大きく、外観上粒界が存在しない粒子であり得る。
【0062】
このように1次粒子の平均粒径と平均結晶サイズとが同時に成長する場合、高温での焼成によって表面に岩塩型構造が生じて抵抗が大きく増加する従来の単粒子に比べて、抵抗が低くなって長寿命の面でも有利である。
【0063】
このように、従来の単粒子に比べて、本発明の一態様で使われた「1次巨大粒子の凝集体で構成された2次粒子」の場合、1次粒子自体の大きさが増加し、且つ、岩塩型構造の形成が減少することで、抵抗が低くなるという面で有利である。
【0064】
このとき、前記1次巨大粒子の平均結晶サイズは、CuKαX線によるX線回折分析(XRD)を用いて定量的に分析され得る。具体的には、製造した粒子をホルダーに入れてX線を前記粒子に照射し回折パターンを分析することで、1次巨大粒子の平均結晶サイズを定量的に分析可能である。
【0065】
本発明の具体的な一実施形態において、前記平均粒径(D50)/平均結晶サイズは、4以上、7以上、または10以上であり得、30以下、または20以下であり得る。
【0066】
また、前記1次巨大粒子の平均結晶サイズは、200nm以上、または250nm以上であり得、450nm以下、または400nm以下であり得る。
【0067】
本発明の一態様による2次粒子は、従来と同一または類似の平均粒径(D50)を有しながらも、1次粒子の平均直径(D50)が大きい形態である。すなわち、従来の正極活物質が有する一般的な形態、すなわち平均粒径が小さい1次粒子が集まって2次粒子を形成する形態と異なり、1次粒子のサイズを大きくした1次巨大粒子が凝集した2次粒子の形態を提供する。
【0068】
本発明の一態様による2次粒子は、平均直径(D50)が3μm~5μmであり得る。より具体的には、3μm以上、3.5μm以上、4μm以上、4.5μm以上であり得、5μm以下、4.5μm以下、4μm以下、または3.5μm以下であり得る。
【0069】
一般に、粒子の形態にかかわらず、同じ組成であると、焼成温度が上昇するほど、粒子のサイズ及び粒子内の平均結晶サイズは増加する。一方、本発明の一態様による1次粒子は、従来に比べて焼成温度を高くしなくても粒径が大きい1次巨大粒子が成長できる一方、2次粒子は従来に比べて相対的に成長しない。
【0070】
これにより、本発明の一態様による2次粒子は、従来の2次粒子と平均直径(D50)が同一または類似でありながらも、従来の1次微細粒子に比べて平均直径及び平均結晶サイズが大きい1次巨大粒子からなっている。
【0071】
本発明の具体的な一実施形態において、前記2次粒子の平均粒径(D50)/前記1次巨大粒子の平均粒径(D50)は2~4であり得る。
【0072】
前記2次粒子は、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物であり得る。
【0073】
このとき、前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物は、LiaNi1-x-yCoxM1yM2wO2(1.0≦a≦1.5、0≦x≦0.2、0≦y≦0.2、0≦w≦0.1、0≦x+y≦0.2、M1はMn及びAlからなる群より選択される少なくとも1種、M2はBa、Ca、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb及びMoからなる群より選択される少なくとも1種)を含み得る。
【0074】
上記の式において、a、x、y及びwはニッケル系リチウム遷移金属酸化物内の各元素のモル比を示す。
【0075】
このとき、前記2次粒子の結晶格子内にドーピングされた金属M1及びM2は、元素M1及び/または元素M2の位置選好度に応じて、粒子の一部表面のみに位置してもよく、粒子の表面から中心方向に減少する濃度勾配を有しながら位置してもよく、または粒子全体にかけて均一に存在してもよい。
【0076】
前記2次粒子は、金属M1及びM2によってドーピング、またはコーティング及びドーピングされる場合、特に表面構造の安定化によって活物質の長寿命特性がさらに改善できる。
【0077】
正極活物質2次粒子用前駆体の製造方法
本発明の一態様による前駆体は、次のような方法で製造されるが、これに限定されることはない。
【0078】
具体的には、ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質、及びマンガン含有原料物質を含む遷移金属溶液に、窒素含有キレート剤と塩基性化合物とを撹拌及び共沈反応させて製造する。
【0079】
前記ニッケル含有原料物質は、例えば、ニッケル含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物、またはオキシ水酸化物などであり得、具体的にはNi(OH)2、NiO、NiOOH、NiCo3・2Ni(OH)2・4H2O、NiC2O2・2H2O、Ni(NO3)2・6H2O、NiSO4、NiSO4・6H2O、脂肪酸ニッケル塩、ニッケルハロゲン化物、またはこれらの組合せであり得るが、これらに限定されることはない。
【0080】
前記コバルト含有原料物質は、コバルト含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物、またはオキシ水酸化物などであり得、具体的にはCo(OH)2、CoOOH、Co(OCOCH3)2・4H2O、Co(NO3)2・6H2O、CoSO4、Co(SO4)2・7H2O、またはこれらの組合せであり得るが、これらに限定されることはない。
【0081】
前記マンガン含有原料物質は、例えば、マンガン含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物、またはこれらの組合せであり得、具体的にはMn2O3、MnO2、Mn3O4などのようなマンガン酸化物;MnCo3、Mn(NO3)2、MnSO4、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン塩、クエン酸マンガン、脂肪酸マンガン塩のようなマンガン塩;オキシ水酸化マンガン、塩化マンガン、またはこれらの組合せであり得るが、これらに限定されることはない。
【0082】
前記遷移金属溶液は、ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質、及びマンガン含有原料物質を溶媒、具体的には水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(例えば、アルコールなど)の混合溶媒に添加して製造されるか、又は、ニッケル含有原料物質の水溶液、コバルト含有原料物質の水溶液、及びマンガン含有原料物質を混合して製造されたものであり得る。
【0083】
アンモニウム陽イオン含有キレート剤は、例えばNH4OH、(NH4)2SO4、NH4NO3、NH4Cl、CH3COONH4、NH4CO3、またはこれらの組合せであり得るが、これらに限定されることはない。一方、前記アンモニウム陽イオン含有キレート剤は、水溶液の形態で使用され得、このとき溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水との混合物が使用され得る。
【0084】
前記塩基性化合物は、NaOH、KOHまたはCa(OH)2などのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、これらの水和物またはこれらの組合せであり得る。前記塩基性化合物も水溶液の形態で使用され得、このとき溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水との混合物が使用され得る。
【0085】
前記塩基性化合物は、反応溶液のpHを調節するために添加されるものであって、金属溶液のpHが11~13になる量で添加され得る。
【0086】
このとき、前記撹拌段階は、窒素含有キレート剤の濃度及び撹拌機の反応速度を制御することで、コア-シェル構造である2次粒子前駆体を製造することができる。
【0087】
具体的には、前記撹拌段階は、1次撹拌段階及び2次撹拌段階を含み、1次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度が2次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度よりも高く、1次撹拌段階の1次撹拌速度が2次撹拌段階の2次撹拌速度よりも遅いことを特徴とする。
【0088】
例えば、1次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度は、5,000ppm以上、6,000ppm以上、7,000ppm以上、8,000ppm以上、9,000ppm以上または10,000ppm以上であり得、2次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度は、5,000ppm以下、4,000ppm以下、または3,000ppm以下であり得る。より具体的には、前記1次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度は5,000ppm以上であり、2次撹拌段階の窒素含有キレート剤の濃度は4,000ppm以下であり得る。
【0089】
例えば、1次撹拌速度は800rpm以下、700rpm以下、または600rpm以下であり得、2次撹拌速度は1,000rpm以上、1,100rpm以上、または1,200rpm以上であり得る。
【0090】
一方、前記共沈反応は、窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気下で、40℃~70℃の温度で行われ得る。すなわち、1次焼成され得る。
【0091】
上記のような工程によってコア部分及びシェル部分を含み、上述した特性を有する正極活物質用2次粒子前駆体を製造することができる。
【0092】
その後、上述した前駆体とリチウム原料物質とを混合して2次焼成する。
【0093】
前記リチウム原料物質としては、リチウム含有硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、またはオキシ水酸化物などが使用され得、水に溶解可能であれば特に限定されない。具体的には、前記リチウム原料物質は、Li2CO3、LiNO3、LiNO2、LiOH、LiOH・H2O、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CH3COOLi、Li2O、Li2SO4、CH3COOLi、またはLi3C6H5O7などであり得、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。
【0094】
前記2次焼成は、ニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である高含量ニッケル(High‐Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、700~1,000℃で行われ得、より望ましくは780~980℃、さらに望ましくは780~900℃で行われ得る。前記1次焼成は、空気または酸素雰囲気下で10~35時間行われ得る。
【0095】
このような工程を経て、1次巨大粒子を含む2次粒子凝集体を備えた正極活物質を製造することができる。
【0096】
正極及びリチウム二次電池
本発明のさらに他の一態様によれば、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池を提供する。
【0097】
具体的には、前記正極は、正極集電体、及び前記正極集電体上に形成されて前記正極活物質を含む正極活物質層を含む。
【0098】
前記正極において、正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えばステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用され得る。また、前記正極集電体は、通常3~500μmの厚さを有し得、前記正極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めてもよい。例えばフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用され得る。
【0099】
前記正極活物質層は、上述した正極活物質とともに、導電材及びバインダーを含み得る。
【0100】
このとき、前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池に化学変化を引き起こさず電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうちの1種単独でまたは2種以上の混合物が使用され得る。前記導電材は、通常、正極活物質層の総重量に対して1~30重量%で含まれ得る。
【0101】
また、前記バインダーは、正極活物質粒子同士の間の付着及び正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的な例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうちの1種単独でまたは2種以上の混合物が使用され得る。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して1~30重量%で含まれ得る。
【0102】
前記正極は、上述した正極活物質を用いることを除き、通常の正極製造方法によって製造され得る。具体的には、前記正極活物質、及び選択的に、バインダー及び導電材を含む正極活物質層形成用組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することで製造され得る。このとき、前記正極活物質、バインダー、導電材の種類及び含量は、上述した通りである。
【0103】
前記溶媒は、当技術分野で一般に使われる溶媒であり得、ジメチルスルホキシド(DMSO)、イソプロピルアルコール、N‐メチルピロリドン(NMP)、アセトン、または水などが挙げられ、これらのうちの1種単独でまたは2種以上の混合物が使用され得る。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造収率を考慮して前記正極活物質、導電材及びバインダーを溶解または分散させ、以降の正極製造のための塗布時に優れた厚さ均一度を示す粘度を与える程度であれば十分である。
【0104】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることで製造されてもよい。
【0105】
本発明のさらに他の一態様によれば、前記正極を含む電気化学素子が提供される。前記電気化学素子は、具体的には電池またはキャパシタなどであり得、より具体的にはリチウム二次電池であり得る。
【0106】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極、前記正極と対向して位置する負極、前記正極と負極との間に介在されるセパレータ及び電解質を含み、前記正極は上述した通りである。また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、及び前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含み得る。
【0107】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体、及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0108】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず高い導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。また、前記負極集電体は、通常3~500μmの厚さを有し得、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の接着力を高めてもよい。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用され得る。
【0109】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに、選択的にバインダー及び導電材を含む。前記負極活物質層は、一例として負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材を含む負極形成用組成物を塗布して乾燥するか、又は、前記負極形成用組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることで製造され得る。
【0110】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的な挿入(intercalation)及び脱離(deintercalation)が可能な化合物が使用され得る。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などのリチウムと合金化可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドーピング及び脱ドーピング可能な金属酸化物;若しくはSi‐C複合体またはSn‐C複合体科のように前記金属質化合物と炭素質材料とを含む複合物などが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使われてもよい。また、炭素材料としては、低結晶性炭素及び高結晶性炭素などがすべて使用され得る。低結晶性炭素としては、軟質炭素及び硬質炭素が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球形または繊維形の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛、熱分解炭素、メソフェーズピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソカーボンマイクロビーズ(meso-carbon microbeads)、メソフェースピッチ(mesophase pitches)、及び石油または石炭系コークスなどの高温焼成炭素が代表的である。
【0111】
また、前記バインダー及び導電材は、正極に対して上述したものと同様である。
【0112】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは負極と正極とを分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常リチウム二次電池のセパレータとして使われるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して抵抗が低く且つ電解液含浸能力に優れたものが望ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造した多孔性高分子フィルム、または、これらの2層以上の積層構造体が使用され得る。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のため、セラミックス成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用され得、選択的に単層または多層構造で使用され得る。
【0113】
また、本発明で使われる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0114】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含み得る。
【0115】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を果たせるものであれば、特に制限なく使用され得る。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、γ‐ブチロラクトン、ε‐カプロラクトンなどのエステル系溶媒;ジブチルエーテルまたはテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ベンゼン、フルオロベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R‐CN(RはC2~C20の直鎖状、分枝状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含み得る)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3‐ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン類などが使用され得る。中でも、カーボネート系溶媒が望ましく、電池の充放電性能を向上可能な高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより望ましい。この場合、環状カーボネートと線状カーボネートとは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが電解液性能の面で望ましい。
【0116】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で使われるリチウムイオンを提供可能な化合物であれば、特に制限なく使用され得る。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、またはLiB(C2O4)2などが使用され得る。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0M範囲内であり得る。リチウム塩の濃度が上記の範囲に含まれれば、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するため、優れた電解質性能を示し、リチウムイオンが効果的に移動可能である。
【0117】
前記電解質には、上述した電解質構成成分の外にも、電池寿命特性の向上、電池容量減少の抑制、電池の放電容量向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノール、または三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれ得る。このとき、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1~5重量%で含まれ得る。
【0118】
上記のように本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯機器、及びハイブリッド電気自動車(HEV)などの電気自動車分野などに有用である。
【0119】
これにより、本発明のさらに他の一態様によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール、及びそれを含む電池パックが提供される。
【0120】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール;電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)を含む電気車両;または電力貯蔵用システムのうちのいずれか一つ以上の中大型デバイスの電源として用いられ得る。
【0121】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者が本発明を容易に実施できるように実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明は多様な他の形態で具現可能であって、後述する実施例に限定されることはない。
【0122】
実施例1
[正極活物質用2次粒子前駆体の製造]
CSTR(Continuous Stirring Tank Reactor:連続撹拌槽反応器)を用いてNiSO4、CoSO4、MnSO4の組成比を83:11:6(モル比)にして金属酸(metals acid)状態にし、キレート剤であるアンモニアを使用して共沈反応させ、共沈剤として酸化イオン(OH)を提供するNaOHを使用して共沈物を得た。共沈物を洗浄した後、120℃の乾燥器で約12時間乾燥してNi0.83Co0.11Mn0.6(OH)2前駆体粉末を製造した。この過程で、反応器内部の反応液状態でのアンモニア濃度を10,000ppm以上に高め、撹拌速度600rpmで撹拌して多孔性コア部分を形成した。その後、アンモニア濃度を3000ppm水準に下げて撹拌速度1200rpmで撹拌することで、シェル部分は密な正極活物質用2次粒子前駆体を製造した。このとき、反応器の内部条件は、反応液の温度60℃、pH10.5~12.0を維持した。
【0123】
[正極活物質の製造]
製造された正極活物質前駆体は、多孔性のコアと密なシェルを有する粒子状であった。合成されたNi0.83Co0.11Mn0.6(OH)2前駆体を基準にして、リチウム原料物質LiOHを最終Li/Meモル比が1.03になるように混合した後、800℃で10時間熱処理して最終的にLi(Ni0.83Co0.11Mn0.6)O2正極活物質合成した。
【0124】
実施例2
正極活物質用2次粒子前駆体を製造するとき、多孔性コア部分形成時の撹拌速度を1000rpmに変更し、シェル部分形成時の撹拌速度を2000rpmに変更したことを除き、実施例1と同じ方法で正極活物質を合成した。
【0125】
比較例
[正極活物質前駆体の製造]
比較例では、共沈過程で反応器内部の反応液状態でのアンモニア濃度を3000ppm水準に維持し、1500rpmの撹拌速度で撹拌して、コアとシェルとの区分なく全体的に密な前駆体を製造した。上述した部分を除いては実施例と同じ方法で前駆体を製造した。
【0126】
[正極活物質の製造]
焼成温度850℃で10時間熱処理したことを除き、他の条件は実施例と同じく適用して、最終的にLi(Ni0.83Co0.11Mn0.6)O2正極活物質を合成した。
【0127】
【0128】
実施例及び比較例から分かるように、本発明の一態様による実施例は、反応液内のアンモニアの濃度と撹拌速度を制御し、コア部分は多孔性であって、シェル部分は密な前駆体を製造できた。このように製造された2次粒子用前駆体を用いて正極活物質を製造する場合、表1のように、圧延密度が高くて電気化学的に改善された正極活物質が得られた。特に、正極活物質の組成などが異なるため、絶対的な比較はできないが、正極活物質の効率がそれぞれ88.9%、88.6%と類似である一方、充放電の絶対的な値は実施例で遥かに高いことが確認できた。
【0129】
[実験例1:正極活物質の観察]
比較例及び実施例で製造された正極活物質を走査電子顕微鏡(SEM)で拡大観察した写真をそれぞれ
図1及び
図2に示した。
【0130】
[実験例2:圧延密度]
圧延密度はHPRM‐1000を用いて測定した。具体的には、実施例、比較例の正極活物質5gをそれぞれ円柱型のモールドに投入した後、63.694MPaで正極活物質が充填されたモールドを加圧した。その後、加圧されたモールドの高さをノギス(vernier caliper)で測定して圧延密度を求めた。その結果を表1に示した。
【0131】
[実験例3:平均粒径]
D50は、粒子サイズ分布の50%基準での粒子サイズと定義され、レーザー回折法を用いて測定した。
【0132】
[実験例4:1次粒子の平均結晶サイズ]
LynxEye XE‐T位置検出素子が取り付けられたブルカー社製のEndeavor(CuKα、λ=1.54Å)を用いてFDS 0.5゜、2θ15゜~90゜領域に対し、ステップサイズ0.02゜で全体スキャン時間が20分になるように試料を測定した。
【0133】
測定されたデータに対し、各位置(site)から電位(charge)(遷移金属サイトでの金属は+3、LiサイトのNiは+2)とカチオンミキシングを考慮してリートベルト解析を行った。結晶サイズ分析の際、計器的拡張(instrumental broadening)はブルカー社製のTOPASプログラムに実装されているファンダメンタルパラメータアプローチ(Fundemental Parameter Approach:FPA)を用いて考慮され、フィッティング時、測定範囲の全体ピークが使われた。ピーク形態はTOPASで使用可能なピークタイプのうちのFP(First Principle)でローレンツコントリビューション(Lorenzian contribution)のみを用いてフィッティングし、このときストレインは考慮しなかった。結果を表1に示した。
【0134】
[実験例5:タップ密度]
前駆体のタップ密度は、ASTM B527‐06に基づいてTAP‐2S(LOGAN社製)を用いて測定した。