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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用外装材及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/129 20210101AFI20240805BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20240805BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20240805BHJP
【FI】
H01M50/129
H01M50/121
H01G11/78
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023018206
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2019074757の分割
【原出願日】2019-04-10
(65)【公開番号】P2023054053
(43)【公開日】2023-04-13
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】熊木 輝利
(72)【発明者】
【氏名】田中 克美
(72)【発明者】
【氏名】南堀 勇二
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-209126(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180405(WO,A1)
【文献】特開2012-124067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/129
H01M 50/121
H01M 50/105
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔層と、内側層としての熱融着性樹脂層と、を含む蓄電デバイス用外装材であって、
前記熱融着性樹脂層はヒートシール性を備え、
前記外装材における蓄電デバイス本体部と接触可能な領域の少なくとも一部の領域に熱接着性樹脂層が積層され
前記熱接着性樹脂層を構成する熱接着性樹脂は、主剤と、硬化剤としてのブロックイソシアネートと、を含有する2液硬化型熱接着性樹脂であることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
請求項1に記載の外装材の成形体からなる蓄電デバイス用外装ケース。
【請求項3】
蓄電デバイス本体部と、
請求項1に記載の外装材及び/又は請求項2に記載の外装ケースからなる外装部材と、
を備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装部材で外装されていることを特徴とする蓄電デバ
イス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォン、タブレット、デジタルカメラ等の携帯機器に使用される電池やコンデンサ、ハイブリッド自動車、電気自動車、風力発電、太陽光発電、夜間電気の蓄電用に使用される電池やコンデンサ等の蓄電デバイス用の外装材および該外装材で外装された蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン2次電池は、例えばノートパソコン、ビデオカメラ、携帯電話等の電源として広く用いられている。このリチウムイオン2次電池としては、電池本体部(正極、負極及び電解質を含む本体部)の周囲を外装材で包囲した構成のものが用いられている。このような外装材としては、例えば、延伸ポリアミド系樹脂からなる外側層、アルミニウム箔等からなる金属箔層、熱融着性樹脂からなる内側層がこの順に積層された構成のものが公知である(特許文献1参照)。
【0003】
そして、電池は、電池本体部が一対の外装材で挟み込まれて前記一対の外装材の相互の内側層の周縁部同士が熱融着接合(ヒートシール)されることによって封止されて構成さ
れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-93482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電池を内包する機器(スマートフォン、タブレット等)を落下させたり、ぶつけたり等して衝撃を与えると、ベアセルを取り囲んでいる外装材の中で該ベアセルが動くことによって外装材にぶつかり、これにより外装材にしわが発生して、外観が損なわれるし、外装材にピンホール等が発生する恐れもあった。
【0006】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、外装材で外装されたデバイス本体部を外装材に対して固定することを可能ならしめる蓄電デバイス用外装材及び蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]金属箔層と、内側層としての熱融着性樹脂層と、を含む蓄電デバイス用外装材であって、
前記外装材における蓄電デバイス本体部と接触可能な領域の少なくとも一部の領域の熱融着性樹脂層の内面に熱接着性樹脂層が積層されていることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0009】
[2]前記熱接着性樹脂層を構成する熱接着性樹脂は、主剤と、硬化剤としてのブロックイソシネートと、を含有する2液硬化型熱接着性樹脂である前項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0010】
[3]前記ブロックイソシネートのブロック剤が60℃~100℃で解離するものである前項2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0011】
[4]前記2液硬化型熱接着性樹脂は、解離触媒を含有する前項2または3に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0012】
[5]前記主剤は、酸変性ポリオレフィン樹脂である前項2~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0013】
[6]前記金属箔層の外側の面に基材層が積層されている前項1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0014】
[7]前項1~6のいずれか1項に記載の外装材の成形体からなる蓄電デバイス用外装ケース。
【0015】
[8]蓄電デバイス本体部と、
前項1~6のいずれか1項に記載の外装材及び/又は前項7に記載の外装ケースからなる外装部材と、を備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装部材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0016】
[1]の発明では、外装材における蓄電デバイス本体部と接触可能な領域の少なくとも一部の領域の熱融着性樹脂層の内面に熱接着性樹脂層が積層された構成であるから、熱接着性樹脂層により蓄電デバイス本体部を外装材に接着し、蓄電デバイス本体部を外装材に固定することができるため、蓄電デバイスに外圧(振動や衝撃等)が加わっても蓄電デバイス本体部が外装材内で動くことがなくなり、外装材におけるしわ発生が生じ難くなるし、液漏れも防止できる。また、両面テープでの固定と比較してより安定状態に蓄電デバイス本体部を外装材に固定できる。
【0017】
[2]の発明では、熱接着性樹脂層の接着力を向上できると共に、耐電解液性も向上させることができる。
【0018】
[3]の発明では、ブロックイソシネートのブロック基が60℃~100℃で該ブロックイソシネート化合物から解離するものであり、60℃より低い温度では熱接着性樹脂層が接着性を発現することがないので、外装材の製造過程において熱接着性樹脂層が接着性を発現することがなくて好都合である。また、100℃以下の温度で熱接着性樹脂層の熱接着の処理を行うことができるので、この熱接着処理の際に熱融着性樹脂層が溶解して電解液等が液漏れするようなことがない。また、100℃以下の温度で熱接着可能であるので、電解液注入前の工程である真空ベーク工程(例えば80℃×6~24時間)や、電解液注入後の脱ガス工程(例えば60℃×6~48時間)の最中に同時に熱接着性樹脂層の熱接着の処理を行うことができる。
【0019】
[4]の発明では、熱接着性樹脂層の熱接着の際の反応性を向上させることができて、接着力を向上できる。
【0020】
[5]の発明では、熱接着性樹脂層の耐電解質性を向上させることができて、熱接着性樹脂層が電解質によって劣化し難く、十分な接着力を維持できる。また、電極である金属箔との接着性もより向上できる。
【0021】
[6]の発明では、金属箔層の外側の面に基材層が積層されているので、耐候性を向上できると共に、外圧等の衝撃を緩和させることができる。
【0022】
[7]の発明では、熱接着性樹脂層により蓄電デバイス本体部を外装材に接着し、蓄電デバイス本体部を外装材に固定することができるため、蓄電デバイスに外圧(振動や衝撃等)が加わっても蓄電デバイス本体部が外装材内で動くことがなくなり、外装材におけるしわ発生が生じ難くなるし、液漏れも防止できる。
【0023】
[8]の発明では、熱接着性樹脂層により蓄電デバイス本体部を外装材に接着し、蓄電デバイス本体部を外装材に固定することができるため、蓄電デバイスに外圧(振動や衝撃等)が加わっても蓄電デバイス本体部が外装材内で動くことがなくなり、外装材におけるしわ発生が生じ難くなるし、液漏れも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る蓄電デバイス用外装材の一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係る蓄電デバイスの一実施形態を示す断面図である。
図3図2の蓄電デバイスを構成する外装材(平面状のもの)、蓄電デバイス本体部及び外装ケース(立体形状に成形された成形体)をヒートシールする前の分離した状態で示す斜視図である。
図4】模擬電池の作成方法の説明図(外装用成形品を示す斜視図)である。
図5】落下衝撃試験方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材1は、金属箔層4の一方の面に第1接着剤層(内側接着剤層)6を介して熱融着性樹脂層3が積層されてなり、さらに前記外装材1における蓄電デバイス本体部31と接触可能な領域の少なくとも一部の領域の熱融着性樹脂層3の内面に熱接着性樹脂層8が積層されている(図1、2参照)。この構成によれば、熱接着性樹脂層8により蓄電デバイス本体部31を外装材1に接着し、蓄電デバイス本体部31を外装材1に固定することができるため、蓄電デバイス30に外圧(振動や衝撃等)が加わっても蓄電デバイス本体部31が外装材1内で動くことがなくなり、外装材におけるしわ発生を防止できるし、液漏れも防止できる。
【0026】
また、図1に示すように、さらに前記金属層4の他方の面に第2接着剤層(外側接着剤層)5を介して基材層2が積層された構成を採用することもできる。この構成では、金属層4の他方の面に基材層2が積層されているから、外装材1の絶縁性を十分に確保できると共に、物理的強度および耐衝撃性も確保できる。
【0027】
本発明において、前記基材層(外側層)2は、耐熱性樹脂層で形成されている。前記耐熱性樹脂層2を構成する耐熱性樹脂としては、外装材1をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂を用いる。前記耐熱性樹脂としては、熱融着性樹脂層3を構成する熱融着性樹脂の融点より10℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが好ましく、熱融着性樹脂の融点より20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが特に好ましい。
【0028】
前記耐熱性樹脂層(外側層)2は、外装材1として良好な成形性を確保する役割を主に担う部材である、即ち成形時のアルミニウム箔のネッキングによる破断を防止する役割を主に担うものである。
【0029】
前記耐熱性樹脂層(外側層)2としては、特に限定されるものではないが、例えば、延伸ナイロンフィルム等の延伸ポリアミドフィルム、延伸ポリエステルフィルム等が挙げられる。中でも、前記耐熱性樹脂層2としては、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムであって、いずれも熱水収縮率が1.5%~12%であるものを用いるのが特に好ましい。また、前記耐熱性樹脂層2としては、同時2軸延伸法により延伸された耐熱性樹脂2軸延伸フィルムを用いるのが好ましい。前記ナイロンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロン、6,6ナイロン、MXDナイロン等が挙げられる。なお、前記耐熱性樹脂フィルム層2は、単層(単一の延伸フィルム)で形成されていても良いし、或いは、例えば延伸ポリエステルフィルム/延伸ポリアミドフィルムからなる複層(延伸PETフィルム/延伸ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。
【0030】
前記耐熱性樹脂層2の厚さは、5μm~50μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで外装材として十分な強度を確保できると共に、上記好適上限値以下に設定することで張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0031】
前記耐熱性樹脂層2は、樹脂フィルムにより形成されたものであってもよいし、樹脂が塗布されることで形成された樹脂コート層であってもよい。前記樹脂コート層を形成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、
エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0032】
前記第2接着剤層としては、特に限定されるものではないが、例えば、2液硬化型接着剤(ウレタン系接着剤等)、光硬化型接着剤等が挙げられる。前記第2接着剤層(外側接着剤層)5の厚さは、1μm~3μmであるのが好ましい。
【0033】
本発明において、前記金属箔層4は、外装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層4としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、銅箔、SUS箔、ニッケル箔、チタン箔等が挙げられ、アルミニウム箔が一般的に用いられる。その他、クラッド箔、金属メッキ箔を用いてもよい。前記金属箔層4の厚さは、20μm~100μmであるのが好ましい。20μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、100μm以下であることで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0034】
前記金属箔層4は、少なくとも内側の面(内側接着剤層6側の面)に、化成処理が施されているのが好ましい。このような化成処理が施されていることで内容物(電池の電解液等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば次のような処理をすることによって金属箔に化成処理を施す。即ち、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0035】
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m2~50mg/m2が好ましく、特に2mg/m2~20mg/m2が好ましい。
【0036】
前記熱融着性樹脂層(内側層)3は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液等に対しても優れた耐薬品性を具備させるとともに、外装材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0037】
前記熱融着性樹脂層3を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレンアクリル酸エチル(EEA)、エチレンアクリル酸メチル(EAA)、エチレンメタクリル酸メチル樹脂(EMMA)、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン等が挙げられる。
【0038】
前記熱融着性樹脂層3の厚さは、15μm~100μmに設定されるのが好ましい。15μm以上とすることで十分なヒートシール強度を確保できるとともに、100μm以下に設定することで薄膜化、軽量化に資する。中でも、前記熱融着性樹脂層3の厚さは、10μm~80μmに設定されるのがより好ましい。前記熱融着性樹脂層3は、熱融着性樹脂未延伸フィルム層で形成されているのが好ましく、前記熱融着性樹脂層3は、単層であっても良いし、複層であっても良い。
【0039】
前記第1接着剤層6としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱硬化型アクリル接着剤、熱硬化型酸変性ポリプロピレン接着剤、熱硬化型ポリウレタン接着剤等が挙げられる。前記第1接着剤層(内側接着剤層)6の厚さは、1μm~5μmであるのが好ましい。
【0040】
本発明において、前記熱接着性樹脂層8は、加熱することにより接着性を発現する樹脂であり、接着性が発現する加熱温度は、前記熱融着性樹脂層3の融点よりも低いのが望ましい。
【0041】
前記熱接着性樹脂層8を構成する熱接着性樹脂としては、特に限定されるものではないが、主剤と、硬化剤としてのブロックイソシネートと、を含有する2液硬化型熱接着性樹脂を用いるのが好ましい。例えば、主剤と、ブロックイソシネートと、解離触媒と、溶媒と、を含む液をグラビアロール法等の方法により前記熱融着性樹脂層3の表面に塗布し乾燥することにより、熱接着性樹脂層8を形成する。前記熱接着性樹脂層8の形成量(固形分)は、1g/m~10g/m2に設定するのが好ましい。
【0042】
前記主剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、カルボン酸変性オレフィン樹脂、無水カルボン酸変性オレフィン樹脂、ポリオール(トリメチロールプロパン、メチルペンタジオール等)などが挙げられる。
【0043】
前記ブロックイソシネートは、反応性の高いイソシアネート基をブロック剤でマスキングすることにより、イソシアネート基を安定化させている化合物であり、加熱処理によってブロック剤が解離してイソシアネート基が再生することにより、活性水素等を有する化合物に対して高い反応性を示すものである。
【0044】
前記ブロックイソシネートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、イソシアネート化合物の末端のイソシアネート基にブロック剤をマスキングさせた化合物等が挙げられる。前記イソシアネート化合物としては、有機ジイソシアネート、ポリメリックタイプのポリイソシアネート、有機ジイソシアネートと活性水素基含有化合物を反応させたイソシアネート基末端ポリマー、イソシアヌレート変性体等が挙げられる。
【0045】
前記ブロック剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、N,N’-ジフェニルホルムアミジン(DPFE)を含有し、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、2-ヒドロキシピリジン、マロン酸ジメチル、尿素、ホルムアルドオキシム、カルバゾール等のブロック剤を解離温度を調整するために加えた混合物などが挙げられる。これらを用いて解離温度を調整することにより、ブロック剤の解離温度を60℃~100℃に設定することが可能である。
【0046】
前記解離触媒を添加するのが好ましく、これにより熱接着性樹脂層の反応性を向上させることができる。前記解離触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジラウレート等が挙げられる。
【0047】
前記溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、メチルシクロ
ヘキサン等が挙げられる。
【0048】
前記熱接着性樹脂には、ブロッキング防止剤、ワックス、スリップ剤(滑剤)等の添加剤を添加してもよい。
【0049】
前記熱接着性樹脂層8は、外装材における蓄電デバイス本体部31と接触可能な領域の全体に形成するのが好ましいが、特にこのような形態に限定されるものではなく、例えば、蓄電デバイス本体部31と接触可能な領域の一部分であってもよい。また、熱接着性樹脂層8は、ヒートシールによる封止接合が行われる周縁の封止予定部(封止用周縁部)には形成しないのがよい。
【0050】
本発明の蓄電デバイス用外装材1を成形(深絞り成形、張り出し成形等)することにより、外装ケース(電池ケース等)14を得ることができる(図2、3参照)。なお、本発明の外装材1は、成形に供されずにそのまま使用することもできる(図2、3参照)。
【0051】
図1の蓄電デバイス用外装材1を用いて構成された蓄電デバイス30の一実施形態を図2に示す。この蓄電デバイス30は、リチウムイオン2次電池である。本実施形態では、図2、3に示すように、外装材1を成形して得られた外装ケース14と、平面状の外装材1とにより外装部材15が構成されている。しかして、本発明の外装材1を成形して得られた外装ケース14の収容凹部内の底面の熱接着性樹脂層8の上に、略直方体形状の蓄電デバイス本体部(電気化学素子等)31が配置され、該蓄電デバイス本体部31の上に、本発明の外装材1が成形されることなくその熱接着性樹脂層8側を内方(下側)にして配置され、該平面状外装材1の熱融着性樹脂層3の周縁部と、前記外装ケース14のフランジ部(封止用周縁部)29の熱融着性樹脂層3とがヒートシールによりシール接合されて封止されることによって、本発明の蓄電デバイス30が構成されている(図2、3参照)。なお、前記外装ケース14の収容凹部の底壁の内側の表面は、熱接着性樹脂層8になっており、収容凹部の外面が基材層(外側層)2になっている(図3参照)。蓄電デバイス30を形成した後、加熱を行うことによって熱接着性樹脂層8のブロックイソシネートのブロック剤を解離せしめ、イソシアネート基が再生することにより反応が生じて熱接着性樹脂層8が蓄電デバイス本体部31に接着する。この蓄電デバイス30では、熱接着性樹脂層8により蓄電デバイス本体部31を外装部材15に接着し、蓄電デバイス本体部31を外装部材15に固定することができるため、蓄電デバイス30に外圧(振動や衝撃等)が加わっても蓄電デバイス本体部31が外装部材15内で動くことがなくなり、蓄電デバイス本体部31が擦れることによって発生する外装部材15におけるしわの発生を防止できる。
【0052】
図2において、39は、前記外装材1の周縁部と、前記外装ケース14のフランジ部(封止用周縁部)29とが接合(溶着)されたヒートシール部である。また、図3において、8Aは、平面状の外装材1の下面側に設けられている熱接着性樹脂層の塗布領域を示すものである。なお、前記蓄電デバイス30において、蓄電デバイス本体部31に接続されたタブリードの先端部が、外装部材15の外部に導出されているが、図示は省略している。
【0053】
前記蓄電デバイス本体部31としては、特に限定されるものではないが、例えば、電池本体部、キャパシタ本体部、コンデンサ本体部等が挙げられる。
【0054】
なお、上記実施形態では、外装部材15が、外装材1を成形して得られた外装ケース14と、平面状の外装材1と、からなる構成であったが(図2、3参照)、特にこのような組み合わせに限定されるものではなく、例えば、外装部材15が、一対の平面状の外装材1からなる構成であってもよいし、或いは、一対の外装ケース14からなる構成であって
もよい。
【実施例
【0055】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0056】
<実施例1>
厚さ35μmのアルミニウム箔4の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/m2であった。
【0057】
次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、2液硬化型のウレタン系接着剤(厚さ2μm)5を介して厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(外側層)2をドライラミネートした(貼り合わせた)。
【0058】
次に、前記ドライラミネート後のアルミニウム箔4の他方の面に、2液硬化型オレフィン系接着剤(厚さ2μm)6を介して厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(内側層)3を貼り合わせた後、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着した。
【0059】
前記無延伸ポリプロピレンフィルム(内側層)3の表面の中央領域(ヒートシールによる封止が予定される周縁部を除く領域)に、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂20質量部、ブロックイソシアネート5質量部、エルカ酸アミド(滑剤)0.1質量部、ポリエチレンワックス(ワックス)0.4質量部、シリカ(ブロッキング防止剤)0.5質量部、トルエン40質量部、メチルシクロヘキサン34質量部を配合してなる熱接着性樹脂を3g/m2塗布した後、乾燥させた。
【0060】
前記熱接着性樹脂塗布面に粘着性がないことを確認した後、40℃環境下で10日間ヒートエージング処理を行うことによって、図1に示す蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0061】
上記ブロックイソシネートの内容物は、
・ヘキサメチレンジイソシアネートと1,3-ブタンジオールとのアダクト体
・ブロック剤:ジフェニルホルムアミジン(DPFA)
・解離触媒:ジブチルチンジラウレート
・溶媒:酢酸ブチル
である。
【0062】
<実施例2>
ブロックイソシネートとして、下記のブロックイソシネートを用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0063】
即ち、実施例2で使用したブロックイソシネートの内容物は、
・ヘキサメチレンジイソシアネートと1,3-ブタンジオールとのアダクト体
・ブロック剤:ジフェニルホルムアミジン(DPFA)
・溶媒:酢酸ブチル
である。
【0064】
<実施例3>
無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂20質量部に代えて、トリメチロールプロパン
20質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0065】
<実施例4>
ブロックイソシネートとして、下記のブロックイソシネートを用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0066】
即ち、実施例4で使用したブロックイソシネートの内容物は、
・ヘキサメチレンジイソシアネートと1,3-ブタンジオールとのアダクト体
・ブロック剤:ジメチルピラゾール
・解離触媒:ジブチルチンジラウレート
・溶媒:酢酸ブチル
である。
【0067】
<実施例5>
ブロックイソシネートとして、下記のブロックイソシネートを用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0068】
即ち、実施例5で使用したブロックイソシネートの内容物は、
・ヘキサメチレンジイソシアネートと1,3-ブタンジオールとのアダクト体
・ブロック剤:メチルエチルケトオキシム(MEKO)
・解離触媒:ジブチルチンジラウレート
・溶媒:酢酸ブチル
である。
【0069】
<比較例1>
熱接着性樹脂の塗布を全く行わないものとした以外は、実施例1と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
【0070】
上記のようにして得られた各蓄電デバイス用外装材について下記評価法等により評価を行った。
【0071】
<模擬電池の作成>
各蓄電デバイス用外装材から成形用基片(80mm×160mm)を切り出し、この成形用基片を深絞り成形金型、トリミング金型を用いて成形等を行って、幅40mm×長さ120mmの外装用成形品(成形凹部:短辺30mm×長辺55mm×深さ4mm)を得た(図4参照)。この外装用成形品の平面状の部分(図4で右半分)の上面に熱接着性樹脂層8が形成され、前記成形凹部の底壁の上面にも熱接着性樹脂層8が形成されている(図4参照)。次に、ポリエチレン製の樹脂ブロックの表面を厚さ20μmのアルミニウム箔で被覆してなる模擬ベアセル(幅29mm×長さ50mm×厚さ4mm)を前記成形凹部内に収容した後、外装用成形品を長さ方向の中心位置で谷折りすることによって平面状の部分を成形凹部の上面に重ね合わせた後、重ね合わされた三方の周縁フランジ部(幅5mm)を加熱してヒートシールした(熱融着性樹脂層3同士を融着させて封止した)。次に、60℃~100℃の環境下で8時間ヒートエージング処理を行うことによってブロックイソシネートのブロック剤を解離せしめて外装材の熱接着性樹脂層を模擬ベアセルに接着させて、模擬電池30Aを得た。
【0072】
<熱接着性樹脂の硬化温度の測定方法>
実施例1で用いた熱接着性樹脂をガラス基板上に塗布した後、所定の温度で30分間加熱硬化させた塗膜をアセトン/メタノール(10体積部/10体積部)混合溶媒中に23
℃で24時間浸漬した後、下記ゲル分率を算出し、
ゲル分率(%)={(混合溶媒に溶解しなかった部分の質量)/(混合溶媒に浸漬す る前の塗膜の質量)}×100
ゲル分率が80%以上になった温度を硬化温度(℃)とした。実施例2~5の熱接着性樹脂についても同様の測定を行って硬化温度(℃)を求めた。
【0073】
<落下衝撃試験方法>
JIS C60068-2-31:2013 環境試験方法-電気・電子-第2-31部:落下試験及び転倒試験方法(試験記号:Ec)に準拠して落下衝撃試験を行った。60mm×120mmの大きさのPC板(ポリカーボネート板)60の片面に前記模擬電池30Aを両面粘着テープで固定して試験片(図5参照)を得、この試験片を附属書B「自然落下試験の厳しさの選定指針」に従って、落下高さを1mに設定して試験片のコーナー部がコンクリート床面に衝突するように自然落下させた(図5参照)。4箇所あるコーナー部の全てに対して各1回ずつ落下試験を実施した後、模擬電池の外装材の外観を観察し、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「◎」…外装材にしわ発生が無い(合格)
「○」…外装材のコーナー部に僅かにしわが発生したが、問題ないレベルである(合格)
「×」…外装材のコーナー部に顕著にしわが発生した。
【0074】
【表1】
【0075】
表1から明らかなように、本発明に係る実施例1~5の蓄電デバイス用外装材を用いて構成された蓄電デバイスは、模擬ベアセルが外装材に対して接着固定されているので、落下等の衝撃を受けても、外装材におけるしわ発生を抑制できた。
【0076】
これに対して、外装材に熱接着性樹脂層を設けていない比較例1では、模擬ベアセルが外装材に対して固定されていないので、外装材に顕著にしわが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材は、具体例として、例えば、
・リチウム2次電池(リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池等)などの蓄電デバイ

・リチウムイオンキャパシタ
・電気2重層コンデンサ
等の各種蓄電デバイスの外装材として用いられる。また、本発明に係る蓄電デバイスは、上記例示した蓄電デバイスの他、全固体電池も含む。
【符号の説明】
【0078】
1…蓄電デバイス用外装材
2…基材層(外側層)
3…熱融着性樹脂層(内側層)
4…金属箔層
8…熱接着性樹脂層
15…外装部材
30…蓄電デバイス
31…蓄電デバイス本体部

図1
図2
図3
図4
図5