(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/08 20060101AFI20240805BHJP
A61B 6/46 20240101ALI20240805BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20240805BHJP
A61B 6/04 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61B6/08 530
A61B6/46 536Q
A61B6/03 531
A61B6/03 523A
A61B6/04 530
(21)【出願番号】P 2023134211
(22)【出願日】2023-08-21
(62)【分割の表示】P 2019189614の分割
【原出願日】2019-10-16
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 信英
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-187422(JP,A)
【文献】特開平09-313475(JP,A)
【文献】特開2018-130378(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0074004(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が載置された天板を長手方向に移動させた後に、前記被検体のCT画像を得るためのスキャンを架台で実行するX線CT装置であって、
前記天板の前記長手方向への移動前において、前記天板上に前記被検体が載置された状態で、前記スキャンにおける撮像範囲に対応する天板上の位置を設定する設定部と、
前記天板の前記長手方向への移動前において、前記天板上に載置された前記被検体を、上方向から撮像する第一の光学撮像装置と、
前記天板の前記長手方向への移動前において、前記天板上に載置された前記被検体を、横方向から撮像する第二の光学撮像装置と、
設定された前記天板上の位置と、前記第一の光学撮像装置
によって撮像される第一の画像と前記第二の光学撮像装置
によって撮像される第二の画像とに基づいて、前記長手方向及び上下方向の前記天板の移動量を得る演算部と、
前記第一の画像と前記第二の画像とに基づいて、撮像平面に対応する第一の仮想平面と、前記撮像範囲の一方の境界に対応する第二の仮想平面と、前記撮像範囲の他方の境界に対応する第三の仮想平面と、を少なくとも含む合成画像を生成する画像生成部と、
前記合成画像を表示する表示部と、を備え、
前記演算部は、前記合成画像上において、前記第二の仮想平面及び前記第三の仮想平面の少なくとの一方の前記天板に対する位置が変更された場合には、変更後の前記位置に基づいて前記長手方向及び前記上下方向の前記天板の移動量を得る、
X線CT装置。
【請求項2】
設定された前記天板上の位置は、
前記撮像平面に対応する、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記撮像範囲に対応する前記天板上の位置は、撮像領域に対応する、
請求項1又は2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記画像生成部は、前記第一の画像と前記第二の画像とに基づいて、前記被検体の正中線をさらに含む前記合成画像を生成する、
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記画像生成部は、長方形、正方形、楕円形、又は円形の図形を用いて前記第一の仮想平面を生成する、
請求項
1乃至4のうちいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記図形の形状又は大きさは、前記架台に設けられた開口部の形状又は大きさ、若しくは、前記架台によって撮像が行われる視野の形状又は大きさに対応する、
請求項
5に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記表示部と、前記第二の仮想平面及び前記第三の仮想平面の少なくとの一方の前記天板に対する位置を変更する変更部とを含む可搬型端末を備えた、
請求項
1乃至6のうちいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記合成画像は、前記架台又は前記架台の基準位置を含む、
請求項
1乃至7のうちいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記表示部は、前記第一の仮想平面、前記第二の仮想平面、前記第三の仮想平面を異なる色で表示する、
請求項
1乃至8のうちいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記画像生成部は、前記架台のチルトに連動して前記第一の仮想平面をチルトさせる、
請求項
1乃至9のうちいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項11】
前記X線CT装置は、立位撮像用、2Roomシステム用及びアンギオCTのいずれかである、
請求項
1乃至10のうちいずれか一項に記載のX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、X線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置において、撮像断面位置や撮像範囲(以下、「撮像断面位置等」とも言う)を確認するために、レーザ光を天板上に投影する灯光器(エリア灯光器)が用いられる場合がある。このエリア灯光器により、例えば本撮像の撮像断面位置等に対応する位置や領域を天板上に投影することができる。ユーザは、エリア灯光器から天板上への投影光により示された位置や範囲を視認することで、被検体が被曝することを避けながら、X線の本撮像の撮像断面位置等を確認することできる。
【0003】
しかしながら、エリア灯光器を使用して撮像断面位置等の確認を行う場合、ユーザは、撮像前に、操作室から検査室に移動し、患者横で位置合わせをしなければならない。また、エリア投光器による撮像断面位置等の表示は、レーザが投影される表面だけとなる。このため、架台チルト時に被ばくの発生する奥行きのラインを目視できず、確実に保護したいところを避けられているかどうかを正確に把握することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態に係る目的は、撮像断面位置や撮像範囲の設定を従来に比して効率化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る医用画像診断装置は、撮像系を有する架台装置と、画像生成部と、を具備する。架台装置は、放射線又は磁気を利用して被検体の撮像を行う撮像系を有する。画像生成部は、前記被検体を前記撮像系とは異なる光学撮像装置によって撮像し得られた第1の画像と、前記撮像系を用いた撮像における撮像位置に関連する平面とを合成した第2の画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、X線CT装置1が設置される環境を示した図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、光学撮像装置C1により得られた画像に仮想平面が合成された合成画像の一例を示した図である。
【
図4】
図4は、光学撮像装置C2により得られた画像に仮想平面が合成された合成画像の一例を示した図である。
【
図5】
図5は、架台を傾斜させた場合において、光学撮像装置C1からの画像に基づいて得られる合成画像の一例を示した図である。
【
図6】
図6は、同じく架台を傾斜させた場合において、光学撮像装置C2からの画像に基づいて得られる合成画像の一例を示した図である。
【
図7】
図7は、X線CT装置の撮像断面位置の設定から撮像開始までの処理の流れを示したフローチャートである。
【
図8】
図8は、架台装置10を2つのモダリティ間で共有するアンギオ-CTシステムSの構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、X線CT装置の実施形態を詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係るX線CT装置1が設置される環境について説明する。
図1は、X線CT装置1が設置される環境を示した図である。
【0010】
図1に示されているように、X線CT装置1は、架台装置10、寝台装置30、コンソール装置(
図1には図示せず)を備えている。架台装置10及び寝台装置30は検査室R1に設置される。コンソール装置は、検査室R1の隣に設けられた操作室R2に設置される。ユーザは、操作室R2の窓Wから検査室R1の状況を見ることができ、図示していないドアによって検査室R1と操作室R2との間を行き来することができる。架台装置10及び寝台装置30は、コンソール装置を介したユーザからの操作、或いは架台装置10、又は寝台装置30に設けられた操作部を介したユーザからの操作に基づいて動作する。
【0011】
検査室R1の天井には、デジタルカメラ、赤外線カメラ等に代表される光学撮像装置C1が設けられる。また、検査室R1の壁には、同じくデジタルカメラ、赤外線カメラ等の光学撮像装置C2が設けられる。
【0012】
光学撮像装置C1は、架台装置10及び寝台装置30を、その上面から撮像する。光学撮像装置C2は、架台装置10及び寝台装置30を、その側面から撮像する。なお、光学撮像装置C2は、架台装置10及び寝台装置30の右側面又は左側面のいずれを撮像するものであってもよい。
【0013】
光学撮像装置C1、C2による撮像は、例えば、被検体を寝台装置30の天板33に載置した後撮像断面位置の決定までの間連続的に実行される。光学撮像装置C1、C2によって撮像された画像は、リアルタイムでX線CT装置1へ逐次送り出される。
【0014】
次に、X線CT装置1の構成について概略を説明する。
図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、実施形態に係るX線CT装置1は、架台装置10と寝台装置30とコンソール装置40とを有する。
【0015】
なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して水平である軸方向をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とそれぞれ定義するものとする。
【0016】
架台装置10は、診断に用いられる医用画像を撮像するための撮像系を有する。すなわち、架台装置10は、被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線の検出データから投影データを収集する撮像系を有する装置であり、X線管11と、ウェッジ16と、コリメータ17と、X線検出器12と、X線高電圧装置14と、DAS(Data Acquisition System)18と、回転フレーム13と、制御装置15と、寝台装置30とを有する。
【0017】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射する真空管である。
【0018】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線のX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。
【0019】
ウェッジ16は、例えばウェッジフィルタ(wedge filter)またはボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
【0020】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。
【0021】
X線検出器12は、X線管11から照射され、被検体Pを通過したX線を検出し、当該X線量に対応した電気信号をデータ収集装置(DAS18)へと出力する。X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、X線管の焦点を中心として一つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(体軸方向、列方向とも呼ばれる)に複数配列された構造を有する。
【0022】
また、X線検出器12は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有し、シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽版を有する。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管(PMT)等の光センサを有する。なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0023】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器などの電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、X線高電圧装置14は、回転フレーム13に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(図示しない)側に設けられても構わない。なお、固定フレームは、回転フレーム13を回転可能に支持するフレームである。
【0024】
DAS18は、X線検出器12の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS18が生成した検出データは、コンソール装置40へと転送される。
【0025】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。なお、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やDAS18を更に支持してもよい。なお、DAS18が生成した検出データは、一例として、回転フレーム13に設けられた発光ダイオードを有する送信機から光通信によって、固定フレームの等の架台装置10の非回転部分に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40へと転送される。なお、回転フレーム13から架台装置10の非回転部分への検出データの送信方法は、光通信に限らず、非接触型のその他の方式のデータ伝送方法を用いて行ってもよい。
【0026】
制御装置15は、CPU等を有する処理回路と、モータやアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置15は、コンソール装置40に取り付けられた入力インターフェース43若しくは架台装置10に取り付けられた入力インターフェースからの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う機能を有する。また、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10及び寝台装置30を動作させる制御を行う。
【0027】
例えば、制御装置15は、架台装置10に取り付けられた入力インターフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報、又は制御機能150aからの仮想平面に基づく傾斜角度情報に基づいて、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって、架台装置10をチルトさせる。なお、制御装置15または処理回路150の有する制御機能150aは、制御部の一例である。
【0028】
ここで、仮想平面とは、天板33上の所定の位置に設定され、撮像時における寝台装置30の基台31、天板33の移動制御及び架台装置10の傾斜制御の基準となる平面である。すなわち、撮像時において、制御装置15は、この仮想平面が撮像平面と一致するように寝台装置30の基台31、天板33及び架台装置10を制御する。なお、撮像平面とは、撮像で得られる断面画像に対応する平面であり、例えば、Z軸を法線としX線検出器12のZ軸方向の中心に位置する平面である。
【0029】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備える。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33をその長軸方向(
図1のZ軸方向)に移動させるモータあるいはアクチュエータである。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0030】
寝台駆動装置32は、制御装置15からの制御信号に従って、基台31を上下方向に移動させる。寝台駆動装置32は、制御装置15からの制御信号に従って、天板33を長軸方向に移動させる。すなわち、寝台駆動装置32は、仮想平面が実際の撮像断面と一致するように、基台31及び天板33の少なくとも一方を制御する。
【0031】
コンソール装置40は、ユーザによるX線CT装置1の操作を受け付けるとともに、架台装置10によって収集されたX線検出データからX線CT画像データを再構成する装置である。コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路150とを備える。
【0032】
メモリ41は、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスクなどにより実現される。メモリ41は、例えば投影データや再構成画像データを記憶する。メモリ41は、記憶部の一例である。
【0033】
ディスプレイ42は、ユーザが参照するモニタであり、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路150によって生成された医用画像(CT画像)や、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ42は、表示部の一例である。
【0034】
入力インターフェース43は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路150に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等をユーザから受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等により実現される。入力インターフェース43は、入力部の一例である。
【0035】
処理回路150は、X線CT装置1全体の動作を制御する。処理回路150は、例えば、制御機能150a、前処理機能150b、再構成処理機能150c、画像生成機能150d、合成画像生成機能150e、演算機能150fを有する。実施形態では、構成要素である制御機能150a、前処理機能150b、再構成処理機能150c、画像生成機能150d、合成画像生成機能150e、演算機能150fにて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41へ記憶されている。処理回路150はプログラムをメモリ41から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読みだした状態の処理回路150は、
図1の処理回路150内に示された各機能を有することになる。
【0036】
なお、
図1においては単一の処理回路150にて、制御機能150a、前処理機能150b、再構成処理機能150c、画像生成機能150d、合成画像生成機能150e、演算機能150fにて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0037】
換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。
【0038】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical processing unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD),及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ41に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリ41にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0039】
処理回路150は、制御機能150aにより、入力インターフェース43を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、処理回路150の各種機能を制御する。処理回路150は、前処理機能150bにより、DAS18から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正などの前処理を施したデータを生成する。なお、前処理前のデータ(検出データ)および前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。処理回路150は、再構成処理機能150cにより、前処理機能150bにより生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。処理回路150は、画像生成機能150dにより、入力インターフェース43を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、再構成処理機能150cによって生成されたCT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。
【0040】
また、処理回路150は、合成画像生成機能150eにより、架台装置10と寝台装置3とを光学撮像装置C1、C2によって撮像し得られた第1の画像と、架台装置10の撮像系を用いた撮像における撮像位置に関連する平面とを合成した第2の画像としての合成画像を生成する。すなわち、処理回路150は、合成画像生成機能150eにより、光学撮像装置C1、C2から受け取った画像に基づいて、例えばAR技術を用いて、寝台装置30の天板33上に仮想平面(例えば、長方形の板状の平面)が設定された合成画像を生成する。
【0041】
また、処理回路150は、合成画像生成機能150eにより、光学撮像装置C1、C2から受け取った画像に基づいて、寝台装置30の天板33上に正中線が設定された合成画像を生成する。
【0042】
ここで、正中線とは、天板33の長手方向に平行な直線であり、典型的には、天板33の短手方向(X軸方向)に関する中心線である。なお、正中線についても撮像位置と同様に、天板33上に仮想平面が設定された合成画像が生成されても良い。
【0043】
図3は、光学撮像装置C1により得られた画像に仮想平面PL1が合成された合成画像の一例を示した図である。また、
図4は、光学撮像装置C2により得られた画像に仮想平面PL1が合成された合成画像の一例を示した図である。
図3、
図4における平面PL0は、撮像平面を模擬的に示したものである。
【0044】
図3、
図4に示されている様に、合成画像生成機能150eによって生成された合成画像においては、天板33上において仮想平面PL1と正中線L1とが表示されている。
【0045】
また、
図5は、架台装置10を傾斜させた場合において、光学撮像装置C1からの画像に基づいて得られる合成画像の一例を示した図である。
図6は、同じく架台装置10を傾斜させた場合において、光学撮像装置C2からの画像に基づいて得られる合成画像の一例を示した図である。
【0046】
図5、
図6に示されている様に、架台装置10が傾斜した場合には、仮想平面PL1も架台装置10に連動して傾斜して表示される。ユーザは、例えばディスプレイ42上に表示された、
図3乃至
図6に例示したような合成画像を操作室R2において観察することができる。ユーザは、仮想平面PL1が被検体Pの撮像すべき断面である撮像平面PL0と一致するように、ディスプレイ42上において、被検体Pに対する仮想平面PL1の位置を調整する。この位置調整は、例えばマウス等を用いてもよいし、合成画像が表示されるディスプレイ42がタッチパネルの場合には、指先の操作で行うことができる。
【0047】
なお、
図3乃至
図6においては、説明をわかりやすくするために架台装置10を含む合成画像を例示した。しかしながら、ユーザは、合成画像上において、被検体Pに対する仮想平面PL1の位置を調整することで、撮像断面の位置合わせを実行する。従って、合成画像上においては、架台装置10を必ずしも表示する必要はない。
【0048】
図2に戻り、処理回路150は、演算機能150fにより、仮想平面の表示位置を計算する。すなわち、処理回路150は、演算機能150fにより、光学撮像装置C1、C2から受け取った画像に基づいて、現在の架台装置10と天板33との相対的な位置関係(例えば、架台装置10の基準位置と天板33の基準位置との相対的な位置関係)を計算する。処理回路150は、演算機能150fにより、計算された架台装置10と天板33との相対的な位置関係に基づいて、現在の天板33上に仮想平面PL1を表示する位置を計算する。
【0049】
なお、架台装置10と天板33との相対的な位置関係が変更された場合には、光学撮像装置C1、C2によって変更後の架台装置10及び天板33を撮像した画像に基づいて、同様の処理が実行される。
【0050】
また、処理回路150は、演算機能150fにより、現在の仮想平面の位置及び角度にもとづいて、架台装置10の傾斜角度に関する情報、天板33の上下方向の移動量、天板33の長手方向の移動量を計算する。すなわち、処理回路150は、演算機能150fにより、現在の仮想平面を撮像平面に一致させるための架台装置10の傾斜角度に関する情報、天板33の上下方向の移動量、天板33の長手方向の移動量を計算する。
【0051】
次に、本実施形態に係るX線CT装置における、仮想平面を用いた撮像断面位置の設定から撮像開始までの処理の流れについて説明する。
【0052】
図7は、X線CT装置の撮像断面位置の設定から撮像開始までの処理の流れを示したフローチャートである。
【0053】
まず、ステップS1において被検体Pのセッティングを行う前に、患者情報の検査予約リストへの登録や詳細上の入力が行われる。そして、
図7に示されているように、光学撮像装置C1、C2による撮像が開始される(ステップS1)。
【0054】
なお、ステップS1の撮像開始は、被検体Pが天板33上に載置された状態であるのが典型的である。しかしながら、ステップS1の撮像開始は、被検体Pの天板33上への載置前から実行されてもよい。
【0055】
光学撮像装置C1、C2による撮像は、例えば、被検体を寝台装置30の天板33に載置した後撮像断面位置の決定までの間連続的に実行される。光学撮像装置C1、C2によって撮像された画像は、リアルタイムでX線CT装置1へ逐次送り出される。
【0056】
次に、処理回路150は、演算機能150fにより、光学撮像装置C1、C2から受け取った画像に基づいて、現在の架台装置10と天板33との相対的な位置関係を計算し(ステップS2)、計算された架台装置10と天板33との相対的な位置関係に基づいて、現在の天板33上に仮想平面PL1を表示する位置を計算する(ステップS3)。
【0057】
次に、処理回路150は、合成画像生成機能150eにより、光学撮像装置C1、C2から受け取った画像に仮想断面を示す板状の図形、および、正中線を示す直線が合成された合成画像を生成し、ディスプレイ42に表示させる(ステップS4)。
【0058】
次に、合成画像上において、仮想平面の位置決めが実行される(ステップS5)。例えば、入力インターフェース43からのユーザ入力に従って、ディスプレイ42に表示された仮想平面の位置、角度の調整指示が入力される。処理回路150は、合成画像生成機能150eにより、合成画像上の仮想平面の位置、角度を変更させる。
【0059】
このとき、ディスプレイ42上で合成画像の拡大縮小によって、仮想平面の位置、角度の微調整が可能である。例えば頭部断面を撮像する場合、
図3乃至
図6に例示した合成画像を見て、仮想平面PL1が被検体Pの頭部の所望する位置に配置されるように、表示部の画面上の仮想平面PL1の位置を調整する。例えば、ユーザは、被検体Pの眼球(水晶体)などの放射線感受性の高い組織を避けるようにモニタ上で被ばくするラインを視認しながら仮想平面の位置及び傾斜角度を調整する。
【0060】
次に、処理回路150は、演算機能150fにより、仮想平面を撮像平面に一致させるための架台装置10の傾斜角度に関する情報、天板33の上下方向の移動量、天板33の長手方向の移動量を計算する(ステップS6)。
【0061】
次に、制御装置15は、仮想平面が撮像平面に一致するように、架台装置10、寝台装置30を制御し、撮像処理を実行する(ステップS7)。
【0062】
以上述べた本実施形態に係るX線CT装置1によれば、撮像系を有する架台装置10と、天板33を有する寝台装置30と、架台装置10と寝台装置30とを光学撮像装置C1、C2によって撮像し得られた第1の画像と、架台装置10の撮像系を用いた撮像における撮像位置に関連する平面としての仮想平面とを合成した第2の画像を生成する画像生成部としての合成画像生成機能150eと、を具備する。
【0063】
実際の撮像においては、例えば仮想平面が撮像断面と一致するように、架台装置10、寝台装置30が制御される。従って、ユーザは、モニタに表示された仮想平面の位置及び角度を調整することで、簡単且つ正確に被検体に対する撮像断面を設定することができる。その結果、撮像断面位置合わせにおける操作時間の短縮を実現することができる。
【0064】
仮想平面は、X方向、Y方向、Z方向の位置のみならず、架台装置10の傾斜角度も反映して表示部に表示される。従って、ユーザは、眼球(水晶体)などの放射線感受性の高い組織を避けるようにディスプレイ42上で被ばくするラインを視認しながら、仮想平面の位置及び傾斜角度を調整することができる。その結果、チルトラインを含めた撮像断面をARで確認することによる、保護したい部位の確実な被ばく防止を実現することができる。
【0065】
また、カメラで撮像された患者画像に、断面位置を示す板状の図形、および、正中線を示す直線を合成してモニタに表示させる。モニタを見ながら、コンソールより従来のリモート操作を実施して寝台や架台チルトを動かし、撮像位置を決められるようにする。従って、仮想平面の設定及び調整は、操作室内で実施することができる。その結果、ユーザは、検査室-操作室間を移動せずに、操作室の中だけで一連の撮像が可能になる。
【0066】
(変形例1)
第1の実施形態に係るX線CT装置1は、撮像平面に対応する仮想平面と正中線を含む合成画像を生成し表示するものとした。これに対し、撮像範囲に対応する情報をさらに含む合成画像を生成し表示するようにしてもよい。
【0067】
処理回路150は、演算機能150fにより、設定された撮像範囲と、架台装置10と天板33との相対的な位置関係とに基づいて、撮像範囲の架台装置10に近い体軸方向の境界平面PL2の位置と、撮像範囲の架台装置10に遠い体軸方向の境界平面PL3の位置とを計算する。処理回路150は、合成画像生成機能150eにより、光学撮像装置C1、C2から受け取った画像に、仮想平面PL1、撮像範囲の境界を示す境界平面PL2及び境界平面PL3、正中線L1が合成された合成画像を生成する。
【0068】
このとき、仮想平面PL1、撮像範囲の境界を示す境界平面PL2及び境界平面PL3のそれぞれの区別がつくように、平面毎に色分けをすることも可能である。
【0069】
変形例1に係るX線CT装置1によれば、撮像断面に加えて、撮像範囲についても、簡単且つ正確に設定することができる。その結果、撮像断面及び撮像範囲の位置合わせにおける操作時間の短縮を実現することができる。
【0070】
(変形例2)
第1の実施形態に係るX線CT装置1は、撮像平面に対応する仮想平面、正中線を含む合成画像を、操作室R2内のディスプレイ42に表示する場合を例とした。これに対し、撮像平面に対応する仮想平面、正中線を含む合成画像を、タブレットPCに表示する構成であってもよい。係る構成によれば、操作室・検査室を問わず、どこでも位置合わせできることができる。
【0071】
(変形例3)
上記実施形態において説明した仮想平面を用いた撮像断面の位置決め機能は、当然ながら立位CT装置についても適用することができる。係る場合、例えば、光学撮像装置C1、C2のうちの一方は被検体正面の壁に、光学撮像装置C1、C2のうちの他方は被検体側面の壁に、それぞれ配置されることになる。
【0072】
(変形例4)
上記実施形態において説明した仮想平面を用いた撮像断面の位置決め機能の適用範囲は、X線CT装置に限定されない。撮像系を有する架台と寝台を有する医用画像診断装置、例えば磁気共鳴イメージング装置、PET、SPECTにも適用することができる。
【0073】
(変形例5)
第1の実施形態においては、仮想平面を長方形として表示した。当然ながら、長方形は仮想平面の一例に過ぎず、撮像平面に対応する仮想平面を象徴的に表す図形であれば、正方形平面、真円形平面、楕円形平面など、どのようなものであってもよい。図形の形状又は大きさは、架台装置に設けられた開口部の形状又は大きさ、若しくは架台装置によって撮像が行われる視野(Field Of View:FOV)の形状又は大きさに対応していても良い。
【0074】
(変形例6)
X線CT装置には、架台のチルト機構を有しないものもある。係る場合には、必要に応じて、光学撮像装置C1からの画像のみを用いて仮想平面を含む合成画像を生成し表示する構成であってもよい。
【0075】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るX線CT装置について説明する。第2の実施形態に係るX線CT装置は、架台を複数の検査室間で移動させることで、複数のシステムで架台を共有するマルチルームソリューションシステムに適用されるものである。
【0076】
なお、以下の説明においては、架台を二つの検査室間で移動させる2Roomシステムとしてのアンギオ-CTシステムに適用する場合を例とするが、検査室の数には限定されない。
【0077】
図8は、架台装置10を2つのモダリティ間で共有するアンギオ-CTシステムSの構成を示した図である。
【0078】
図8に示す様に、アンギオ-CTシステムSは、X線CT装置1、血管造影(アンギオ:Angio)装置としてのX線撮像システム50を具備する。検査室R3には、X線CT装置1が設けられる。また、検査室R3に隣接する検査室R4には、X線撮像システム50が設けられる。検査室R3と検査室R4とは、開閉扉Dによって仕切ることができる。
【0079】
X線撮像システム50は、撮像系としてのX線撮像装置51、寝台52、コンソール装置53を有する。X線撮像システム50とX線CT装置1とは、例えばCAN(Controller Area Network) 通信等により、互いに通信可能となっている。
【0080】
X線CT装置1の架台装置10は、例えば搬送用レールLを用いて複数の検査室R3、R4間を移動可能に設けられる。アンギオ-CTシステムSは、被検体に対してX線コンピュータ断層撮像を実行するための架台装置10を検査室R3、R4それぞれに設けられたモダリティ間で共有するものである。言い換えると、アンギオ-CTシステムは、架台装置10を、検査室R3、R4間(すなわち寝台4、7間)で共有するものでもある。
【0081】
なお、図示してないが、光学撮像装置C1は、検査室R3の天井において、X線CT撮像を行う場合の架台装置10の設置位置(架台装置10の基準位置)と、X線CT装置1の寝台装置30との双方を同時に撮像可能な位置に設置される。また、光学撮像装置C2は、検査室R3の架台装置10の側面側の壁において、X線CT撮像を行う場合の架台装置10の設置位置と、X線CT装置1の寝台装置30との双方を同時に撮像可能な位置に設置される。
【0082】
この様なアンギオ-CTシステムSにおいて、X線CT装置1の処理回路150は、演算機能150fにより、光学撮像装置C1、C2から受け取った画像に基づいて、X線CT撮像を行う場合の架台装置10の設置位置と現在の天板33との相対的な位置関係を計算する。処理回路150は、演算機能150fにより、計算された相対的な位置関係に基づいて、現在の天板33上に仮想平面PL1を表示する位置を計算する。得られた結果を用いて、第1の実施形態と同様に仮想平面PL1を用いた撮像断面等の位置合わせを実現することができる。
【0083】
X線CT装置1によれば、架台装置10が検査室R4にあり検査室R3に無い場合であっても、X線コンピュータ断層撮像に先立って、寝台装置30の天板33上に被検体を載置し、撮像順序を待っている間に仮想平面を用いて撮像断面位置の調整をすることができる。従って、マルチルームソリューションシステムにおける稼働率を、従来に比して向上させることができる。
【0084】
また、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1 X線CT装置
10 架台装置
11 X線管
12 X線検出器
13 回転フレーム
14 X線高電圧装置
15 制御装置
16 ウェッジ
17 コリメータ
18 DAS(Data Acquisition System)
30 寝台装置
31 基台
32 寝台駆動装置
33 天板
34 支持フレーム
40 コンソール装置
41 メモリ
42 ディスプレイ
43 入力インターフェース
150 処理回路
150a 制御機能
150b 前処理機能
150c 再構成処理機能
150d 画像生成機能
150e 合成画像生成機能
150f 演算機能
C1、C2 光学撮像装置
R1、R3、R4 検査室
R2 操作室