(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】水性低固形分ベースコート組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240805BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20240805BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240805BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240805BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20240805BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240805BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20240805BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20240805BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C09D201/00
B05D1/02 Z
B05D7/24 302P
B05D7/24 302S
B05D7/24 302T
B05D7/24 302V
B05D7/24 302Y
B05D7/24 303A
B05D7/24 303E
C09D5/00 D
C09D7/40
C09D7/63
C09D133/00
C09D167/00
C09D175/04
(21)【出願番号】P 2023518771
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2021076114
(87)【国際公開番号】W WO2022063854
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-05-24
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ブラウックマン,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】リヒェルト,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ポッペ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ドゥシェク,ヴォルフガング
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-195791(JP,A)
【文献】特表2020-527189(JP,A)
【文献】特開2016-087569(JP,A)
【文献】国際公開第2006/009219(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/232011(WO,A1)
【文献】特開2016-222754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
B05D 1/02
B05D 7/24
C09D 5/00
C09D 7/40
C09D 7/63
C09D 133/00
C09D 167/00
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)自己架橋性ポリマー及び外部架橋性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーと;
(B)少なくとも1つのポリマー(A)が外部架橋性ポリマーである場合、前記少なくとも1つのポリマー(A)を架橋するための少なくとも1つの架橋剤と;
(C)少なくとも1つの高分子界面活性剤と;
(D)(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマーレオロジー制御剤(D1)及びポリウレタンレオロジー制御剤(D2)からなる群から選択される少なくとも1つの有機レオロジー制御剤と、
を含む水性一液型コーティング組成物であって、
i. コーティング組成物の総固形分は7.5質量%~11.5質量%であり、
ii. 23℃における粘度は、0.1秒
-1のせん断速度で2000mPa
・s~12000mPa
・sであり、
iii. (C)の量は、コーティング組成物の総固形分に基づいて、0.5~25質量%であり;
iv. (D)の量は、コーティング組成物の総固形分に基づいて、5~12質量%であり;
v. コーティング組成物は、2μm以上のメジアン粒子径D
50を有する板状粒子物質を含有しない、
ことを特徴とする、水性一液型コーティング組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポリマー(A)は、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート及び/又は前記ポリマーのコポリマーからなる群から選択される、外部架橋可能なヒドロキシ官能性ポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の水性一液型コーティング組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリマー(A)を架橋するための前記少なくとも1つの架橋剤(B)は、ブロック化ポリイソシアネート及びアミノプラスト樹脂からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水性一液型コーティング組成物。
【請求項4】
前記高分子界面活性剤(C)は、(メタ)アクリルコポリマー及びポリシロキサンからなる群から選択されるレベリング剤であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性一液型コーティング組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの有機レオロジー制御剤(D)は、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマーレオロジー制御剤であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性一液型コーティング組成物。
【請求項6】
有機溶媒、顔料、フィラー
、染料
及びさらなるコーティング添加剤からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる成分(E)をさらに含有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性一液型コーティング組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの
さらなるコーティング添加剤は、消泡剤
であることを特徴とする、請求項6に記載の水性一液型コーティング組成物。
【請求項8】
前記消泡剤は、リン含有消泡剤であることを特徴とする、請求項7に記載の水性一液型コーティング組成物。
【請求項9】
有機溶媒を含有し、揮発性有機物含有量は、1Lのコーティング組成物に基づいて、100~200g/Lの範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の水性一液型コーティング組成物。
【請求項10】
コーティングを生成する方法であって、前記方法は少なくとも以下のステップ:
a.請求項1~6のいずれか一項に記載の水性一液型コーティング組成物ジェットを塗布装置から放出するステップであって、前記塗布装置から出た後、前記コーティング組成物ジェットは、前記ジェットが崩壊距離に達するまで、ジェット方向に連続領域を有し、前記崩壊距離の後は、次に前記コーティング組成物ジェットは、ジェット方向に互いに分離した液滴に崩壊する、ステップ;及び
b.前記塗布装置をコーティングされる基材から所定の塗布距離に配置するステップであって、前記基材は、前記コーティング組成物ジェットが前記基材に衝突して前記基材をコーティングしコーティング層を得るようにしてコーティングされる、ステップ;を含み、ここで
c.前記塗布距離は、前記コーティング組成物ジェットの前記崩壊距離よりも小さく、前記コーティング組成物ジェットはその連続領域で前記基材に衝突する;又は代替的に、前記塗布距離は、前記コーティング組成物ジェットの前記崩壊距離よりも大きく、形成された分離した液滴が前記基材に衝突する、
方法。
【請求項11】
多層コーティングを生成する方法であって、前記方法は以下のステップ
の少なくともステップ4)、及び、ステップ1)、2)、3)及び5)の少なくとも1つ、及び、すべての層が先行のステップのいずれかにおいても硬化していない場合には、ステップ6:
1
)任意に化成コーティングされた金属基材に電着コーティング組成物を塗布し、電着コーティングを硬化させて、電着コーティング層を得るステップ;次いで
2
)少なくとも1つのフィラーコーティング組成物及び/又はプライマーコーティング組成物を
、ステップ1)が実施された場合は先行のコーティング層上
に、又は基材上に塗布して、1つ以上のフィラーコーティング層(単数又は複数)及び/又はプライマーコーティング層を得、好ましくはフィラーコーティング層(単数又は複数)及び/又はプライマーコーティング層を少なくとも部分的に硬化させるステップ;次いで
3
)少なくとも1つのベースコート組成物及び/又は少なくとも1つのクリアコート組成物を
、ステップ1)及び2)の少なくとも1つが実施された場合には先行のコーティング層上
に、又は基材上に塗布して、少なくとも1つのベースコート層及び/又は少なくとも1つのクリアコート層を得、好ましくはベースコート層(単数又は複数)及び/又はクリアコート層(単数又は複数)を少なくとも部分的に硬化させるステップ;次いで
4)
ステップ1)、2)及び3)の少なくとも1つが実施された場合には先行の層
の少なくとも一部上
に、又は基材上に、請求項10に記載の方法によって、請求項1~9のいずれか一項に記載の少なくとも1つの水性一液型コーティング組成物を塗布して、コーティング層を得、好ましくは、こうして得られたコーティング層(単数又は複数)を乾燥させ及び/又は少なくとも部分的に硬化させるステップ;次いで、
5
)少なくとも1つのクリアコート組成物を、先行のステップで得られたコーティング層(単数又は複数)の上に塗布するステップ;及び
6)先行のいずれのステップでも硬化されなかったすべての層を一緒に硬化させるステップ;
を含
む、方法。
【請求項12】
ステップ1)~6)のすべてが実行されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
多層コーティングを生成する方法であって、前記方法は、以下のステップ:
1)少なくとも1つのフィラーコーティング組成物及び/又はプライマーコーティング組成物をプラスチック基材に塗布して、1つ以上のフィラーコーティング層(単数又は複数)及び/又はプライマーコーティング層を得、好ましくはフィラーコーティング層(単数又は複数)及び/又はプライマーコーティング層(単数又は複数)を少なくとも部分的に硬化させるステップ;次いで
2)a.少なくとも1つのクリアコート組成物をプラスチック基材上に塗布して、少なくとも1つのクリアコート層を得るか;又は
b.ステップ1)が実施された場合には、少なくとも1つのクリアコート組成物を先行のコーティング層(単数又は複数)上に塗布して、少なくとも1つのクリアコート層を得るか;又は
c.ステップ1)が実施された場合には、少なくとも1つのベースコート組成物及びその後に少なくとも1つのクリアコート組成物を、先行のコーティング層(単数又は複数)上に、又は、プラスチック基材上に塗布して、少なくとも1つのベースコート層及び少なくとも1つのクリアコート層を得、
好ましくは、ベースコート層(単数又は複数)及び/又はクリアコート層(単数又は複数)を乾燥し、及び/又は少なくとも部分的に硬化させるステップ:次いで
3)先行の層の少なくとも一部上に又は基材の少なくとも一部上に、請求項10に記載の方法によって、請求項1~9のいずれか一項に記載の少なくとも1つの水性一液型コーティング組成物を塗布して、コーティング層を得、好ましくは、こうして得られたコーティング層(単数又は複数)を乾燥させ及び/又は少なくとも部分的に硬化させるステップ;次いで、
4)少なくとも1つのクリアコート組成物を、先行のステップで得られたコーティング層(単数又は複数)の上に塗布するステップ;及び
5)先行のいずれのステップでも硬化されなかったすべての層を一緒に硬化させるステップ;
の少なくとも2)~5)のステップを含む、方法。
【請求項14】
前記プラスチック基材は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アクリルニトリルブタジエンスチロール(ABS)及びエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか一項に記載の方法によって得られる、コーティングされた基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物のジェットを生成するコーティング装置によって塗布可能な水性の低固体のベースコート組成物に関する。本発明はさらに、ベースコート組成物を使用して基材をコーティングするそのような方法、及びそのようなコーティング方法を使用することによってコーティングされた基材に関する。本コーティング組成物及びコーティング方法は、自動車ボディ及び自動車ボディ部品などの自動車分野の基材をコーティングするのに特に適している。
【背景技術】
【0002】
コーティングの技術分野では、スプレー塗布は基材を塗装する広く普及している方法である。自動車コーティングでは、コーティングされる車両ボディ及び車両ボディコンポーネントは、通常、描画平面に対して直角にコンベアで運ばれ、塗装キャビンを通り、その中では、自動車両ボディ又はそのコンポーネントは塗装ロボットによって従来の方法で塗装され、塗装ロボットは、それぞれが多軸ロボットハンド軸を介して、いくつかの回転ロボットアームを有し、各回転ロボットアームは、例えば、回転噴霧器、空気噴霧器又はいわゆるエアレス装置などのコーティング装置を運ぶ。
【0003】
これらの公知のコーティング装置又は塗布方法の欠点は、塗布効率が最適でないことであり、それによって、オーバースプレーとして知られる噴霧された塗料の一部が、塗装されるべき自動車両ボディコンポーネントに付着せず、キャビン空気と共に塗装キャビンから除去されなければならないことである。
【0004】
従来の回転噴霧器では、ベルカップのエッジにかかるせん断力によって塗料が霧化され、空気噴霧器の場合は、空気の運動エネルギーによって霧化される。エアレスの原理は、材料の圧力による塗料の霧化に基づいている。これは、塗料を加圧し、ノズルで霧化させる。このようにして、車両ボディ部品をコーティングするための従来の噴霧器は、通常、さまざまな大きさの液滴の広範囲な分布を発生させる。これらは通常、数μmから150μmの範囲である。平均値(d50)は通常、10~40μmの間にある。液滴が小さいほど、キャビンの空気によって分離システムに運ばれやすくなる。液滴が大きくほど、外観を損ない、表面の欠陥につながることがある。
【0005】
US2013/0284833A1は、コーティングされる表面に当たる前に液滴に分解されるコーティング組成物のジェットを生成するコーティング装置を提供する。このコーティング装置は、オーバースプレーの低減を可能にし、実質的に同じサイズ(例えば、実質的に同じ直径)及び/又は実質的に分離した又は実質的に均一な液滴分布を有する液滴を生成する。US2013/0284833A1に開示された塗布装置は、特に、コーティング組成物の液滴を生成するために、又はコーティング組成物ジェットを液滴に分解できるようにするために、コーティング組成物ジェットに振動及び/又は不安定性を適用するように構成及び配置され得る。
【0006】
上述のコーティング方法では、コーティング組成物の液滴のジェットが作成され、それによって、最初の連続したコーティング組成物ジェットの液滴の崩壊は、振動のカップリングインによって特に強制されるため、崩壊距離すなわち塗布装置とコーティングされる表面との間の距離が、US2015/0375258A1によれば、完全に満足できるものではない。したがって、US2015/0375258A1は、さらに改良された装置及び塗布方法を提供する。
【0007】
US2013/0284833A1に開示されているコーティング組成物ジェットの液滴への崩壊、具体的には振動のカップリングインによるコーティング組成物ジェットの液滴への崩壊の教示に反して、US2015/0375258A1は、コーティングのためのコーティング組成物ジェットの連続領域の使用を教示している。したがって、塗布距離(すなわち、第1に、塗布装置の吐出口(discharge opening)と、第2に、コーティングされる表面との間の距離)は、したがって、コーティング組成物ジェットの崩壊距離、すなわち、塗布装置の吐出口と、液滴への崩壊への移行における連続領域の端部との間のコーティング媒体ジェットの連続領域の長さよりも、小さくなるように選択される。これにより、コーティング組成物ジェットはその連続領域でコーティングされる表面に衝突するという結果が得られ、より良好なコーティング結果が得られる。
【0008】
US2013/0284833A1によれば、US2015/0375258A1による塗布方法では、まず、コーティング組成物ジェットが塗布装置から放出され、塗布装置から出た後、コーティング組成物ジェットは、最初は、当該ジェットが崩壊距離に達するまで、ジェット方向に連続領域を有し、塗布装置から放出後の当該崩壊距離の後に、次いでコーティング媒体ジェットは自然に(周知のようにレイリーによる自然崩壊によって)、ジェット方向に互いに離れる液滴に崩壊する。しかし、US2015/0375258A1では、自然崩壊が起こる前にコーティング組成物ジェットがコーティングされる表面に当たる。
【0009】
回転霧化器による従来の霧化方法とは異なり、上記両方の塗布方法では、高品質な印象を与えるために重要なシャープなエッジパターンを実現することが可能である。第1に、シャープなエッジパターンという概念は、パターンのエッジが、事前に定義されたエッジ形状に対して非常に小さな偏差(通常は0.1mm未満)を有することを意味する。第2に、「シャープなエッジパターン」という表現は、コーティングされたパターンの外側には、コーティング組成物の飛沫が隣接する表面に衝突しないことを意味する。他の方法では、隣接する部分(すなわち表面のコーティングされない部分)をマスクする必要があるが、上記の2つの方法では、これは必要ない。これを達成するために、コーティング組成物ジェットを形成するために使用されるノズルは、典型的には100μm未満の小さな寸法を有する。
【0010】
しかしながら、本発明の発明者らは、US2015/0375258A1に記載された改良されたコーティング方法の構成は、多くの場合、典型的な水性ベースコート層の筋状の外観が生じるという欠点があることに気付いた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】US2013/0284833A1
【文献】US2015/0375258A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の主な目的は、特に筋状の外観及び/又は塗布方向のトレースを示さずに、シャープなエッジパターン及び改善された外観を提供する、コーティング装置によって塗布可能な水性一液型コーティング組成物と、例えばUS2013/0284833又はUS2015/0375258A1に記載されているような、コーティング組成物のジェットを生成し、任意にジェットが、例えばUS2013/0284833に記載されているようにコーティングされる表面に当たる前に液滴に崩壊する方法と、を提供することである。さらに、泡立ち及びピンホールの形成などの他の表面欠陥も回避する必要がある。さらにオーバースプレーの形成も避けられるべきである。特に好ましくは、水性一液型組成物は、ベースコート組成物、特に自動車コーティングにおけるベースコート組成物として好適であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の問題は、水性一液型コーティング組成物を提供することによって解決され、該水性一液型コーティング組成物は、
(A)自己架橋性ポリマー及び外部架橋性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーと;
(B)少なくとも1つのポリマー(A)が外部架橋性ポリマーである場合に、少なくとも1つのポリマー(A)を架橋するための少なくとも1つの架橋剤と;
(C)少なくとも1つの高分子界面活性剤と;
(D)(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマーレオロジー制御剤(D1)及びポリウレタンレオロジー制御剤(D2)からなる群から選択される少なくとも1つの有機レオロジー制御剤と、
を含み、
i. コーティング組成物の総固形分は7.5質量%~11.5質量%であり、
ii. 23℃における粘度は、0.1秒-1のせん断速度で2000mPas~12000mPasであり、
iii. (C)の量は、コーティング組成物の総固形分に基づいて、0.5~25質量%であり;
iv. (D)の量は、コーティング組成物の総固形分に基づいて、5~12質量%であり;
v. コーティング組成物は、2μm以上のメジアン粒子径D50(レーザー回折により決定)を有する板状粒子物質を含有しない、
ことを特徴とする。
【0014】
以下では、このような水性一液型コーティング組成物は、「本発明による水性一液型コーティング組成物」又は単に「本発明によるコーティング組成物」とも呼ばれる。
【0015】
本明細書で使用される「一液型コーティング組成物」という用語は、コーティング組成物を指し、これは(二液コーティング組成物以外の)自己架橋性ポリマー又は外部架橋性ポリマー又はその両方を含み、それによって後者の場合、少なくとも1つの架橋剤は、外部架橋性ポリマーを硬化しやすいコーティング組成物に含まれ、ここで自己架橋性又は外部架橋性ポリマーの硬化反応(すなわち、架橋)は、高温でのみ、好ましくは80℃を超える温度で、より好ましくは100℃を超える温度で、最も好ましくは120~200℃の温度、例えば130℃~180℃の温度で、行われる。一液型コーティング組成物は、典型的には、約20~60℃又は25~40℃の範囲の温度など、ほぼ周囲温度から約80℃の温度で保存安定性があり、これは、顕著な早期硬化反応がないこと、すなわち、それぞれの範囲で選択された温度での架橋による著しい粘度変化がないことを意味する。
【0016】
「ポリマー」という用語は当業者に既知であり、本発明の目的では、重付加物、重縮合物及びエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの連鎖反応によって得られるポリマーを包含する。「ポリマー」という用語は、ホモポリマーとコポリマーとの両方を含む。
【0017】
「自己架橋性ポリマー」という用語は当業者に既知であり、架橋温度で互いに架橋しやすい少なくとも2種類の反応性基を含むポリマーを指す。分子内反応と分子間反応の両方が起こるため、架橋ポリマーネットワークが形成される。
【0018】
「外部架橋性ポリマー」という用語も当業者に既知であり、架橋温度で別種すなわちいわゆる架橋剤に含まれる相補的な基と反応する架橋性基を含むポリマーを指す。一例として、ヒドロキシル官能性ポリマーは、ブロック化ポリイソシアネートの脱ブロック温度よりも高い温度でブロック化ポリイソシアネートのブロック化イソシアネート基と反応し;又はヒドロキシル官能性ポリマーは、架橋温度でアミノプラスト樹脂のエーテル化メチロール基と反応し;どちらの場合もポリマーネットワークが形成される。
【0019】
「高分子界面活性剤」という用語は、「表面活性剤」、すなわち、本発明による水性コーティング組成物のような水性媒体中に溶解又は分散した場合に、空気/コーティング組成物の界面に蓄積する種を指す。「ポリマーの(polymeric)」という用語は、この文脈では、表面活性剤を、例えばドデシル硫酸ナトリウムのようなモノマー形態のものと区別するためのものであり、「ポリマー(polymer)」という用語の上記定義に従って使用される。
【0020】
「レオロジー制御剤」という用語は、当業者によって一般的に使用され、Roempp Lexikon「Lacke und Druckfarben」(Thieme、1998年,Stuttgart,497頁)に定義される「レオロジー添加剤」と同じ意味を有する。このコーティング及び塗料に関する百科事典によれば、コーティング組成物のちょう度(consistency)などのレオロジー特性は、主としてバインダー、溶媒及び顔料とフィラーの比率の選択により調整される。しかし、製造、塗布、膜形成時のちょう度、粘度、流動挙動を二次的に調整するために、いわゆるレオロジー添加剤が使用される。「有機レオロジー制御剤」は、一部の層状ケイ酸塩などの無機レオロジー制御剤とは対照的に、有機的な性質である。
【0021】
コーティング材料の総固形分は、次の段落に記載のように決定され、コーティング材料の密度はその原料の密度から計算され、硬化したコーティング組成物の密度はDIN EN ISO 3233「乾燥フィルム密度」によって決定される。
【0022】
水性一液型コーティング組成物の総固形分(「固形分」とも呼ばれる)は、不揮発性分と同じである。本発明で理解される総固形分は、DIN ISO 3251に従って、コーティング組成物1gを130℃の温度に60分間さらし、残りを秤量することによって決定される。残りのg数を1gで割って100を掛けると、コーティング組成物の総固形分の質量%が得られる。この方法は、コーティング組成物に使用された任意の事前溶解又は事前分散成分についても適用されることができる。
【0023】
総固形分と100質量%との差が揮発性成分の量である。本発明のコーティング組成物中に存在する水の量は配合から分かるため、コーティング組成物の揮発性成分に含まれる水の量(質量%)は、コーティング組成物1g中に存在する水の量(単位g)を、コーティング組成物1g中に含まれる揮発性成分の量で割って、その結果に100を乗じることによって容易に計算されることができる。本発明の一液型コーティング組成物は「水性」であるため、揮発性成分の主部として水を含んでいる。本発明のコーティング組成物は、コーティング組成物中の揮発性成分の量に基づいて、好ましくは少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、最も好ましくは少なくとも80質量%の水を含有する。水の質量パーセントの含有量と総揮発性含有量の質量パーセントとの差が、揮発性有機含有量の質量パーセントである。
【0024】
本発明によるコーティング組成物の粘度は、せん断速度0.1秒-1で回転式粘度計(Anton Paar Rheolab QC)を使用して23℃で決定される。
【0025】
「板状粒子物質」という用語は、DIN 66160:1992-09、段落2.2.19にしたがって、ある特定の方向で、他の方向よりも厚さが非常に少ない粒子を指す。この定義は、Roempp Lexikon「Lacke und Druckfarben」(Thieme、1998年,Stuttgart,434頁,キーワード「Partikelform」/「粒子形状」)にもある。
【0026】
D50として記載される粒子物質のメジアン粒径(すなわち、粒子の50体積パーセントが記載された平均粒径より小さいサイズを有する)は、ISO 13320-1:1999に従ってレーザー回折によって測定される。測定の詳細は、実験セクションに記載されている。
【0027】
本発明の他の目的は、その成分を混合することにより、本発明による水性一液型コーティング組成物を製造する方法である。
【0028】
本発明のさらなる目的は、コーティングを製造するための方法であって、該方法は、少なくとも以下の:
a.本発明による水性一液型コーティング組成物ジェットを塗布装置から放出するステップであって、前記塗布装置から出た後、前記コーティング組成物ジェットは、前記ジェットが崩壊距離に達するまで、ジェット方向に連続領域を有し、前記崩壊距離の後、次に前記コーティング組成物ジェットはジェット方向に互いに分離した液滴に崩壊するステップ;及び
b.前記塗布装置をコーティングされる基材から所定の塗布距離で配置し、前記基材は、前記コーティング組成物ジェットが前記基材に衝突して前記基材をコーティングしコーティング層を得るようにしてコーティングされる、ステップ;を含み、ここで
c.前記塗布距離は、前記コーティング組成物ジェットの前記崩壊距離よりも小さく、前記コーティング組成物ジェットはその連続領域で前記基材に衝突し;又は代替的に、あまり好ましくないが、前記塗布距離は、前記コーティング組成物ジェットの前記崩壊距離よりも大きく、形成された分離した液滴が前記基材に衝突する。
【0029】
以下では、この方法を「本発明によるコーティングの製造方法」と表記する。この方法は、単層コーティングを製造する方法として構成されることができる。あるいは、本方法は多層コーティングを製造する方法の一部とすることができ、両方が「本発明によるコーティングの製造方法」という用語に包含される。
【0030】
本発明のさらに別の目的は、本発明による方法によって得ることができるコーティングされた基材である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な説明
水性一液型コーティング組成物
成分(A)
本発明の水性一液型コーティング組成物は成分(A)として、(A)少なくとも1つのポリマーを含有する。
【0032】
このポリマーは、バインダーとして使用される。本発明の目的のために、「バインダー」という用語は、DIN EN ISO 4618(ドイツ版、日付:2007年3月)に従って、フィルム形成に関与するコーティング組成物の非揮発性画分であると理解される。そこに含まれる顔料及び/又はフィラーは、したがって、バインダーの用語に包含されない。
【0033】
好ましくは、(A)の少なくとも1つのポリマー(A)は、コーティング組成物の主バインダーである。本発明における主バインダーとしては、好ましくは、それぞれのコーティング組成物の総固形分に基づいて、少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも60質量%、最も好ましくは少なくとも70質量%の量で含有されるバインダー成分が言及される。
【0034】
成分(A)として使用できる適切なポリマーは、例えば、EP0228003A1,DE4438504A1,EP0593454B1,DE19948004A1,EP0787159B1,DE4009858A1,DE4437535A1,WO92/15405A1及びWO2005/021168A1に開示されている。
【0035】
好ましくは、成分(A)として使用される(A)少なくとも1つのポリマーは、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリ(メタ)アクリレート及び/又は前記ポリマーのコポリマー、例えばポリウレタンポリ(メタ)アクリレート及び/又はポリウレタンポリウレアからなる群から選択される。
【0036】
成分(A)として使用される少なくとも1つのポリマーは、最も好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート及び/又は前記ポリマーのコポリマーからなる群から選択され、これらはすべて、好ましくは少なくともヒドロキシ官能性である。本発明の文脈における「(メタ)アクリル」又は「(メタ)アクリレート」という用語は、それぞれの場合において、「メタクリル」及び/又は「アクリル」、あるいは「メタクリレート」及び/又は「アクリレート」の意味を含む。
【0037】
好ましいポリウレタンは、例えば、ドイツ特許出願DE19948004A1、4頁19行目~11頁29行目(ポリウレタンプレポリマーB1)、欧州特許出願EP0228003A1、3頁24行目~5頁40行目、欧州特許出願EP0634431A1、3頁38行目~8頁9行目;及び国際特許出願WO92/15405、2頁35行目~10頁32行目に記載され、又はVD1と記載され、及びWO2018/011311(例PD1)に記載される。
【0038】
好ましいポリエステルは、例えば、DE4009858A1の第6段53行目~第7段61行目及び第10段24行目~第13段3行目、又はWO2014/033135A2の2頁24行目~第7頁10行目及び第28頁13行目~第29頁13行目に記載されている。
【0039】
他の適切なポリエステルは、例えば、WO2008/148555A1に記載されているような、樹枝状構造を有するポリエステルである。
【0040】
好ましいポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー((メタ)アクリル化ポリウレタン)及びその調製は、例えば、WO91/15528A1、3頁21行目~20頁33行目及びDE4437535A1、2頁27行目~6頁22行目に記載されている。
【0041】
好ましいポリ(メタ)アクリレートは、水及び/又は有機溶媒中でエチレン性不飽和モノマーを多段階フリーラジカル乳化重合することにより調製されることができるものである。さらに、いわゆるシード-コア-シェルポリマー(SCSポリマー)を使用することができる。このようなポリマー又はこのようなポリマーを含有する水性分散体は、例えば、WO2016/116299A1から公知である。
【0042】
好ましいポリウレタン-ポリウレアコポリマーは、ポリウレタン-ポリウレア粒子であり、好ましくは40nm~2000nm未満の平均粒径を有するものである。
【0043】
成分(A)として使用されるポリマーは、好ましくは外部架橋性であり、架橋反応を可能にする反応性官能基を有する。当業者に知られている任意の一般的な架橋可能な反応性官能基が考えられる。
【0044】
好ましくは、成分(A)として使用されるポリマーは、一級アミノ基、二級アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基及びカルバメート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能反応性基を有する。好ましくは、成分(A)として使用されるポリマーは、少なくとも官能性ヒドロキシル基を含有する。
【0045】
好ましくは、成分(A)として使用されるポリマーはヒドロキシ官能性であり、より好ましくは5~250mgKOH/g、より好ましくは20~120mgKOH/gの範囲のOH価を有する。
【0046】
成分(A)として使用されるポリマーは、ヒドロキシ官能性ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー、ヒドロキシ官能性ポリエステル及び/又はヒドロキシ官能性ポリウレタンコポリマーの少なくとも1つが特に好ましい。
【0047】
成分(B)
さらに、本発明の水性一液型コーティング組成物は、当業者に公知の少なくとも1つの架橋剤を含有することができる。架橋剤は、コーティング組成物のフィルム形成性不揮発性成分の中に含まれるものであり、したがって、バインダーの一般的な定義に含まれる。
【0048】
少なくとも1つの架橋剤が必要である一方で、成分(A)の少なくとも1つのポリマーが外部的にのみ架橋可能である場合、いくつかの架橋剤、特に後述のようなアミノプラスト樹脂が、特にその硬化温度より低い温度でむしろ可塑剤として作用することも可能である。したがって、いずれの場合であっても、さらに、成分(A)の少なくとも1つのポリマーを架橋するために架橋剤が必要でない場合であっても、成分(B)、特に後述のアミノプラスト樹脂を使用して、コーティングを可塑化させることが可能である。
【0049】
架橋剤が存在する場合、それは、好ましくは、少なくとも1つのアミノプラスト樹脂及び/又は少なくとも1種のブロック化ポリイソシアネートであり、好ましくはアミノプラスト樹脂である。アミノプラスト樹脂の中でも、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂のようなメラミン樹脂が特に好ましい。本明細書で使用される「ポリイソシアネート」という用語は、平均で2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを包含する。本発明によるコーティング組成物は一液型コーティング組成物であるため、本明細書で使用される「ブロック化イソシアネート」は完全にブロックされており、すなわち遊離イソシアネート基を含有しないものである。
【0050】
ブロック化ポリイソシアネートを製造するのに適したポリイソシアネートには、原則として完全にブロックされた形態で水性コーティング材料に使用されるすべての既知の脂肪族、環状脂肪族、脂肪族-環状脂肪族、芳香族、脂肪族-芳香族及び/又は環状脂肪族-芳香族ポリイソシアネートとポリイソシアネート付加物とが含まれる。イソシアヌレート基、ビウレット基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基、ウレタン基、ウレアカルボジイミド基及び/又はウレジオン基を含有するポリイソシアネートを使用することも可能である。
【0051】
適したポリイソシアネートの例は、イソホロンジイソシアネート(=5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン)、5-イソシアナト-1-(2-イソシアナトエタ-1-イル)-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン、5-イソシアナト-1-(3-イソシアナトプロパ-1-イル)-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン、5-イソシアナト(4-イソシアナトブタ-1-イル)-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサン、1-イソシアナト-2-(3-イソシアナトプロパ-1-イル)シクロヘキサン、1-イソシアナト-2-(3-イソシアナトエタ-1-イル)シクロヘキサン、1-イソシアナト-2-(4-イソシアナトブタ-1-イル)シクロヘキサン、1,2-ジイソシアナトシクロブタン、1,3-ジイソシアナトシクロブタン、1,2-ジイソシアナトシクロペンタン、1,3-ジイソシアナトシクロペンタン、1,2-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン2,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、30質量%までのトランス/トランス含量の液体ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート;トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、あるいはWO97/49745及びWO97/49747に記載されている二量体脂肪酸から誘導されたジイソシアネート、特に、2-ヘプチル-3,4-ビス(9-イソシアナトノニル)-1-ペンチルシクロヘキサン、1,2-、1,4-もしくは1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2-、1,4-もしくは1,3-ビス(2-イソシアナトエタ-1-イル)シクロヘキサン、1,3-ビス(3-イソシアナトプロパ-1-イル)シクロヘキサン、1,2-、1,4-もしくは1,3-ビス(4-イソシアナトブタ-1-イル)シクロヘキサン、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(=1,3-ビス(2-イソシアナトプロパ-2-イル)ベンゼン)、又はトリレンジイソシアネートである。
【0052】
ポリイソシアネートをブロックするのに適したブロック剤の例としては、米国特許第4,444,954で知られているブロッキング剤があり、特にフェノール類、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、クロロフェノール、エチルフェノール、t-ブチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸、この酸のエステル、又は2,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエンなど;ラクタム類、例えばイプシロン-カプロラクタム、デルタ-バレロラクタム、ガンマ-ブチロラクタム又はベータ-プロピオラクタムなど;活性メチレン化合物、例えばマロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、アセト酢酸エチル又はアセト酢酸メチル、又はアセチルアセトンなど;アルコール類、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、n-アミルアルコール、t-アミルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール、グリコール酸、グリコール酸エステル、乳酸、乳酸エステル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、エチレンクロロヒドリン、エチレンブロモヒドリン、1,3-ジクロロー2プロパノール、1,4-シクロヘキシルジメタノール又はアセトシアノヒドリンなど;メルカプタン類、例えばブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール又はエチルチオフェノールなど;酸アミド類、例えばアセトアニリド、アセトアニシジンアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アセトアミド、ステアルアミド、又はベンズアミドなど;イミド類、例えば、スクシンイミド、フタルイミド又はマレイミドなど;アミン類、例えばジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン又はブチルフェニルアミンなど;イミダゾール類、例えば、イミダゾール又は2-エチルイミダゾールなど;尿素類、例えば尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素又は1,3-ジフェニル尿素など;カルバメート類、例えばフェニルN-フェニルカルバメート又は2-オキサゾリドンなど;イミン類、例えばエチレンイミンなど;オキシム類、例えばアセトンオキシム、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジイソブチルケトキシム、ジアセチルモノキシム、ベンゾフェノンオキシム又はクロロヘキサノンオキシムなど;亜硫酸塩、例えば亜硫酸水素ナトリウム又は亜硫酸水素カリウムなど;ヒドロキサムエステル、例えばベンジルメタクリロヒドロキサメート(BMH)又はアリルメタクリロヒドロキサメートなど;又は置換ピラゾール、イミダゾール又はトリアゾール;及びこれらのブロック剤の混合物がある。ブロック剤は、ブロックされたイソシアネート基が、正確に、本発明のコーティング組成物の熱架橋が起こる温度範囲、特に好ましくは120~160℃の温度範囲でのみ、脱ブロッキングを受け、架橋反応に入るように選択されることが好ましい。
【0053】
メラミン-ホルムアルデヒド樹脂の中で、最も好ましいのは高イミノメラミン樹脂である。
【0054】
高イミノメラミン樹脂は、部分的にメチル化され、高度にアルキル化されている点で、高イミノメチル化メラミン樹脂と類似している。それらは、メチル化メラミン樹脂とはアルキル化アルコールの種類が異なり、メトキシ部位とn-ブトキシ部位の組み合わせを含んでいる。ブトキシ部位は、流動性、レベリング性及びコート間接着性を向上させる。メチル化種と同様に、その組成は主にアルコキシ/イミノ又はアルコキシ/NH官能基を含んでいる。その利点は、特に水系配合物において強酸触媒の添加を必要としないで120~150℃での速い硬化反応、高いフィルム硬度、及び硬化時の硬化時のホルムアルデヒド放出が少ないことである。ヒドロキシル基、カルボキシル基及びアミド官能基を有するポリマーと反応することに加え、樹脂は容易に自己凝縮する。したがって、その実際の当量は通常200から250である。これらは、例えば、Allnex社からCymel(登録商標)の商標名で市販されている、例えばCymel(登録商標)203である。
【0055】
成分(C)
本発明による水性一液型コーティング組成物は、好ましくはレベリング剤の群から選択される少なくとも1つの高分子界面活性剤を含有する。最も好ましくは、成分(C)は、フッ素含有種を含有しない。成分(C)は、成分(A)、(B)、(D)及び(E)とは異なる。
【0056】
成分(C)は、好ましくは(メタ)アクリルコポリマー及びポリシロキサンからなる群から、最も好ましくはポリシロキサンの群から、さらにより好ましくはポリエステル修飾ポリシロキサン又はポリエーテル修飾ポリシロキサンから選択される。
【0057】
特に適切な(メタ)アクリルコポリマー(C)は、水性キャリア媒体との相溶性を高めるために、カルボキシ基及び/又はポリエチレングリコール鎖を含有する。
【0058】
特に適切なポリシロキサンは、ジアルキルポリシロキサン、(アルキル)(アリール)-ポリシロキサン、ポリエステル修飾アルキルポリシロキサン及びポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンからなる群から選択される。特に好ましいのはポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンであり、最も好ましいのはポリエーテル修飾メチルポリシロキサンである。
【0059】
前述のポリシロキサン中のアルキル残基は、好ましくは、メチル残基であり、アリール残基はフェニル残基である。ポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンに含有されるポリエーテル残基は、好ましくはポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド又はポリ(エチレン/プロピレン)オキシド部位から選ばれる部位を含む。
【0060】
成分(C)の(メタ)アクリルコポリマー及びポリシロキサンは、例えばByk(登録商標)という商品名で、Byk Chemie GmbHから入手可能である。
【0061】
成分(D)
本発明による水性一液型コーティング組成物は、有機レオロジー制御剤である少なくとも1つの成分(D)を含有する。成分(D)は、成分(A)、(B)、(C)及び(E)とは異なる。
【0062】
成分(D)は、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマーレオロジー制御剤(D1)及びポリウレタンレオロジー制御剤(D2)からなる群から選択される。
【0063】
(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマーレオロジー制御剤(D1)は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸に加えて、1つ以上のアクリル酸エステル(すなわち、アクリレート)及び/又は1つ以上のメタクリル酸エステル(すなわち、メタクリレート)をコポリマー形態で含むものである。
【0064】
(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマーレオロジー制御剤に共通するのは、アルカリ性媒体中で、言い換えれば7を超えるpHレベルで、より詳細には7.5を超えるpHレベルで、アクリル酸及び/又はメタクリル酸による塩形成、言い換えればカルボン酸基の形成を通じて、粘度の急激な上昇を示すことであり、これは例えば成分(A)のポリマー又は成分(C)の高分子界面活性剤には当てはまらない。
【0065】
(メタ)アクリル酸とC1~C6アルカノールから形成される(メタ)アクリル酸エステルを使用する場合、得られるレオロジー制御剤は、実質的に非会合性の(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマーレオロジー制御剤である。実質的に非会合性の(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマーレオロジー制御剤は、文献では、ASEレオロジー制御剤(アルカリ可溶性/膨潤性エマルジョン(又は分散液))とも呼ばれる。
【0066】
本発明では、これらは(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマーのレオロジー制御剤として好ましい。
【0067】
最も好ましい(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマーASEレオロジー制御剤は、例えばRheovis(登録商標)ASという商品名で、BASF SE,Ludwigshafen,Germanyから入手可能である。
【0068】
ただし、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマーのレオロジー制御剤としては、HASEレオロジー制御剤(Modified Anionic Soluble Emulsion(又はDispersions))として知られているものも使用可能である。これらは、使用されるアルカノールが、C1~C6アルカノールに代えて、又はC1~C6アルカノールに加えて、例えば7~30個の炭素原子、又は8~20個の炭素原子など、より多くの炭素原子を有するものを含む場合に、得られる。HASEのレオロジー制御剤は、実質的に会合性増粘効果を有する。これは、成分(A)のポリマー又は成分(C)の高分子界面活性剤には当てはまらない。
【0069】
ポリウレタンレオロジー制御剤(D2)は、好ましくは、HEUR(疎水的に修飾されたエチレンオキシドウレタン)として文献に言及される会合性レオロジー制御剤であると理解されるべきである。化学用語では、それらは、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖又は(ポリエチレンオキシド-プロピレンオキシド)鎖の非イオン性分枝又は非分枝のブロックコポリマーであり、それらはウレタン結合を介して互いに連結され、8~30個、好ましくは10~24個、より好ましくは12~20個の炭素原子を有する末端長鎖アルキル基又はアルケニル基、又は6~30個、好ましくは6~20個の炭素原子を有するアリール基又はアルキル化アリール基を担持する。典型的なアルキル基は例えばドデシル基又はステアリル基であり;典型的なアルケニル基の例はオレイル基であり;典型的なアリール基の例はフェニル基であり;典型的なアルキル化アリール基の例はノニルフェニル基である。それらの増粘性及び構造のために、本発明によって使用されるポリウレタンレオロジー制御剤は、成分(A)としては適さない。したがって、それらは、本発明のコーティング材料組成物に使用され得る他のすべての可能なポリウレタンとは明確に異なる。
【0070】
最も好ましいポリウレタンHEURレオロジー制御剤は、例えば、Rheovis(登録商標)PUという商品名で、BASF SE,Ludwigshafen,Germanyから入手可能である。
【0071】
有機レオロジー制御剤(D)としては、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマーレオロジー制御剤とポリウレタンレオロジー制御剤とを組み合わせて使用することも好ましい。本発明のコーティング組成物において、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマーASEレオロジー制御剤をポリウレタンHEURレオロジー制御剤と組み合わせて使用することが特に好ましい。
【0072】
さらなる成分(E)
従来のコーティング添加剤(E1)
本発明のコーティング組成物は、所望の用途に応じて、さらなる成分(E)として、1つ以上の通常使用されるコーティング添加剤、溶媒又は顔料/フィラーを含有することができる。顔料とフィラーと揮発性溶剤を除いて、硬化したコーティングに残存する添加剤は、コーティング組成物のバインダーに属する。
【0073】
したがって、コーティング組成物は、反応性希釈剤、光安定剤、酸化防止剤、脱気剤、乳化剤、スリップ添加剤、重合阻害剤、フリーラジカル重合開始剤、接着促進剤、膜形成助剤、垂れ制御剤(SCA)、難燃剤、腐食防止剤、乾燥剤、殺生物剤、及び平坦化剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含むことができる。適切なコーティング添加剤のさらなる例は、教科書「Lackadditive」(Johan Bieleman著「Additives for Coatings」、Wiley-VCH、Weinheim、1998年)に記載されている。添加剤は、既知の慣用量で使用されることができる。最も好ましくは、コーティング組成物は、好ましくはリン含有消泡剤の群から、さらに好ましくはリン酸トリイソブチル及びリン酸トリ(n-ブチル)などのリン酸トリアルキルの群からの、少なくとも1つの消泡剤を含有する。消泡剤が存在する場合、消泡剤、好ましくはリン含有消泡剤、さらに好ましくはリン酸トリイソブチル及び/又はリン酸トリ(n-ブチル)などのリン酸トリアルキル消泡剤の量は、コーティング組成物の総質量に基づいて0.2~5質量%、より好ましくは0.5~4質量%、最も好ましくは1.0~3質量%の範囲内である。
【0074】
好ましくは、本発明のコーティング組成物の総質量に基づくそれらの含有量は、0.5~3質量%、より好ましくは1.0~2.8質量%、特に好ましくは1.5~2.5質量%の範囲である。
【0075】
有機溶媒(E2)
本発明の水性一液型コーティング組成物の主な液体キャリア媒体としての水に加えて、組成物は、一般的な水性コーティング組成物に見られるような典型的な量の有機溶媒を含んでいてよい。
【0076】
有機溶媒の量は、1Lの本発明によるコーティング組成物に基づいて、好ましくは100~200g/Lの範囲、より好ましくは110~180g/Lの範囲、最も好ましくは110~150g/Lの範囲である。
【0077】
顔料、フィラー及び染料(E3)
好ましくは、本発明によるコーティング組成物は、顔料、最も好ましくは着色顔料を含む。
【0078】
「着色顔料」及び「色顔料」という用語は交換可能であり、有色顔料、黒色顔料及び白色顔料が含まれる。着色顔料としては、無機顔料及び/又は有機顔料を使用することができる。
【0079】
好ましくは、着色顔料は無機着色顔料であり、最も好ましくはカーボンブラックである。
【0080】
白色顔料の例は、二酸化チタン、亜鉛ホワイト、硫化亜鉛及びリトポンである。黒色顔料の例は、カーボンブラック、鉄マンガンブラック、スピネルブラックである。有色顔料の例としては、酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン、コバルトグリーン、ウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルー、マンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット、コバルト及びマンガンバレット、酸化鉄レッド、カドミウムスルホセレニド、モリブデートレッド及びウルトラマリンレッド、酸化鉄ブラウン、混合ブラウン、スピネルとコランダム相、及びクロムオレンジ、酸化鉄イエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、硫化カドミウム亜鉛、クロムイエロー及びビスマスバナデートである。
【0081】
好ましくは、本発明による水性コーティング組成物は、1つ以上の着色顔料のみを顔料として含有する。
【0082】
最も好ましくは、本発明によるコーティング組成物には、効果顔料、特に金属効果顔料又は真珠光沢効果顔料が含まれない。最も好ましくは、本発明によるコーティング組成物は、任意の小板状顔料、例えば前述の板状効果顔料、又は他の板状顔料、例えば板状グラファイト又は板状酸化鉄を含まない。
【0083】
存在する場合、コーティング組成物中の着色顔料の割合は、水性コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合、好ましくは、0.05~1.5質量%、好ましくは0.1~1.2質量%、特に好ましくは0.2~1.0質量%の範囲である。
【0084】
「フィラー」という用語は、例えばDIN 55943(日付:2001年10月)から当業者に知られている。本発明の目的のために、「フィラー」は、塗布媒体、例えば本発明によるコーティング組成物に実質的に不溶性であり、特に体積を増加させるために使用される物質を意味すると理解される。本発明の文脈において、「フィラー」は、屈折率が「顔料」とは異なることが好ましく、その屈折率は、フィラーが1.7以下であるが、顔料は1.7超である。適切なフィラーの例は、カオリン、ドロマイト、カルサイト、チョーク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、シリカ、特に焼成シリカ、水酸化物、例えば水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム;さらに、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,1998年250頁以降,「フィラー」を参照されたい。
【0085】
存在する場合、コーティング組成物中のフィラーの割合は、水性コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合、好ましくは0.05~1.5質量%、好ましくは0.1~1.2質量%、特に好ましくは0.2~1.0質量%の範囲である。
【0086】
好ましくは、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)のいずれも、フッ素含有種を含有しない。したがって、最も好ましくは、本発明の水性一液型コーティング組成物は、フッ素を含まない。
【0087】
総固形分
すべての不揮発性成分の総固形分は、本発明の組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合で7.5~11.5質量%、好ましくは7.8~11.0質量%、より好ましくは8.0~10.5質量%の範囲である。
【0088】
本発明による水性一液型コーティング組成物のpH値
好ましくは、本発明による水性一液型コーティング組成物の23℃におけるpH値は、7~10の範囲であり、より好ましくは7.5~9.5の範囲であり、最も好ましくは8.0~9.0の範囲である。
【0089】
好ましい本発明による水性一液型コーティング組成物
好ましくは、本発明による水性一液型コーティング組成物は、
(A)外部架橋性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーと;
(B)少なくとも1つのポリマー(A)を架橋するための少なくとも1つの架橋剤と;
(C)ポリシロキサンの群から選択される少なくとも1つの高分子界面活性剤と;
(D)(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマーレオロジー制御剤(D1)の群から選択される少なくとも1つの有機レオロジー制御剤と、任意に
(E)少なくとも1つの非板状顔料と、
を含む。
【0090】
より好ましくは、本発明による水性一液型コーティング組成物は、
(A)ポリウレタン、ポリエステル及びポリ(メタ)アクリル樹脂からなる群から選択される外部架橋性ヒドロキシ官能性ポリマー及び前記ポリマーのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーと;
(B)ブロック化ポリイソシアネート及びアミノプラスト樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのポリマー(A)を架橋するための少なくとも1つの架橋剤と;
(C)ポリエステル官能性ポリシロキサン及びポリエーテル官能性ポリシロキサンの群から選択される少なくとも1つの高分子界面活性剤と;
(D)(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマーレオロジー制御剤(D1)の群から選択される少なくとも1つの有機レオロジー制御剤と、任意に
(E)少なくとも1つの非板状顔料と、
を含む。
【0091】
最も好ましくは、本発明による水性一液型コーティング組成物は、
(A)ポリウレタン、ポリエステル及びポリ(メタ)アクリル樹脂及び前記ポリマーのコポリマーからなる群から選択される外部架橋性ヒドロキシ官能性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーと;
(B)アミノプラスト樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのポリマー(A)を架橋するための少なくとも1つの架橋剤と;
(C)ポリエーテル官能性ポリシロキサンの群から選択される少なくとも1つの高分子界面活性剤と;
(D)(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマーレオロジー制御剤(D1)の群から選択される少なくとも1つの有機レオロジー制御剤と、
(E)少なくとも1つの非板状顔料、最も好ましくはカーボンブラック顔料などの黒色顔料と、
を含む。
【0092】
一般に、成分(A)~(E)は、成分(A)すなわち少なくとも1つの外部架橋性ポリマーと、それぞれの成分(B)すなわち少なくとも1つの架橋剤を除いて互いに独立して選択されることができ、すなわち、少なくとも1つの架橋剤は相補的な反応基を有するように選択される必要があり、そうでなければ外部架橋は発生しないからである。
【0093】
このように、本発明による前記の好ましい、より好ましい、最も好ましい水性一液型コーティング組成物の任意の成分(A)~(E)は、その成分をより詳細に説明するそれぞれのセクションで示されるように、それぞれの成分のよりさらに好ましい実施形態でさらに限定されることができる。
【0094】
本発明による水性コーティング組成物は、2μm以上、好ましくは1.8μm以上、より好ましくは1.5μm以上、最も好ましくは1μm以上のメジアン粒径D50(レーザー回折によって決定)を有する板状粒子物質を含有しない。さらに好ましくは、本発明による水性コーティング組成物は、2μm以上、好ましくは1.8μm以上、より好ましくは1.5μm以上、最も好ましくは1μm以上のメジアン粒子径D50(レーザー回折により決定)を有する板状粒子物質を含有しない。
【0095】
成分(A)~(E)が1つ又は複数の成分を含有し、それぞれがそれぞれの成分の定義に包含可能であるという事実に関係なく、それぞれの成分の総量は、好ましくは
成分(A)は、本発明によるコーティング組成物の総固形分に基づいて、30~70質量%、より好ましくは40~60質量%、最も好ましくは55~65質量%;
成分(B)は、本発明によるコーティング組成物の総固形分に基づいて、成分(A)が完全に自己架橋可能である場合、0質量%から、より好ましくは、成分(A)が外部架橋可能である場合、0,5~30質量%から、最も好ましくは6~15質量%;
成分(C)は、本発明によるコーティング組成物の総固形分に基づいて、4~22質量%、より好ましくは6~20質量%、最も好ましくは8~19質量%;
成分(D)は、本発明によるコーティング組成物の総固形分に基づいて、6~11質量%、より好ましくは6.5~10質量%、最も好ましくは7.0~9質量%;
成分(E)は、本発明によるコーティング組成物の総固形分に基づいて、0,1~20質量%、より好ましくは2~15質量%、最も好ましくは6~10質量%、
の範囲である。
【0096】
総固形分量が請求範囲内にある限り、ある成分について開示された上記の範囲のいずれかと、別の成分について開示された任意の範囲とを組み合わせることが可能である。
【0097】
水性一液型コーティング組成物の物性
23℃、せん断速度0.1秒-1における本発明による水性一液型コーティング組成物の粘度は2000mPas~12000mPas、好ましくは3000mPas~10000mPas、より好ましくは4000mPas~9000mPasである。
【0098】
好ましくは、液体コーティング組成物の表面張力(単位mJ/m2)は、22~32mJ/m2、より好ましくは24~28mJ/m2、最も好ましくは25~27mJ/m2の範囲である。
【0099】
本発明の水性一液型コーティング組成物の調製方法
本発明の組成物は、上述の成分(A)、(B)、(C)及び(D)、ならびに任意に(E)を、水性媒体、より詳細には主成分として水を含有する液体キャリア媒体中に分散させ、次いで得られた混合物を均質化することにより製造される。方法ステップの観点から見ると、本発明の方法は独特ではないが、代わりに慣用的かつ公知の混合技術及び混合アセンブリ、例えば攪拌タンク、ディゾルバー、攪拌ミル、混練装置、静的ミキサー又は押出機を使用して実施され得る。
【0100】
基材へのコーティング方法
本発明による水性コーティング組成物は、単層コーティングを製造するための方法に使用されることができるが、好ましくは多層コーティングを製造するために使用されることもできる。
【0101】
単層コーティングの製造
本発明による水性一液型コーティング組成物は、
a.本発明による水性一液型コーティング組成物ジェットを塗布装置から放出するステップであって、前記塗布装置から出た後、前記コーティング組成物ジェットは、前記ジェットが崩壊距離に達するまで、ジェット方向に連続領域を有し、前記崩壊距離の後、次に前記コーティング組成物ジェットは、ジェット方向に互いに分離した液滴に崩壊する、ステップ;及び
b.前記塗布装置をコーティングされる基材から所定の塗布距離に配置するステップであって、前記基材は、前記コーティング組成物ジェットが前記基材に衝突して前記基材をコーティングしコーティング層を得るようにしてコーティングされる、ステップ;を含み;ここで
c.前記塗布距離は、前記コーティング組成物ジェットの前記崩壊距離よりも小さく、前記コーティング組成物ジェットはその連続領域で前記基材に衝突する;又は代替的に、あまり好ましくないが、前記塗布距離は、前記コーティング組成物ジェットの前記崩壊距離よりも大きく、形成された分離した液滴が前記基材に衝突する、
方法によって基材に塗布される。
【0102】
上記方法を実施するのに適した塗布装置は、US2013/0284833A1に詳細に記載されており、特に好ましくはUS2015/0375258A1に記載されている。そのような塗布装置(「ストライプ塗布機」)は、例えば、DEMCON systec industrial systems GmbH,Muenster-Roxel,Germanyから市販されている。
【0103】
上記ステップc.において、第1の代替案、すなわち、コーティング組成物ジェットの崩壊距離よりも小さい塗布距離を使用し、それによってコーティング組成物ジェットがその連続領域で基材に衝突することが、好ましい。それは、特にコーティング組成物が基材の一部のみを覆うように塗布される場合に、エッジのシャープネスを著しく改善する。
【0104】
したがって、上記の方法は、コーティング組成物ジェットが基材上にパターン、例えばストライプ(例えば、デザインストライプ、装飾ストライプ)を形成するために塗布される場合に、特に適している。しかしながら、本発明の文脈で使用されるパターンの概念は、広く理解されるべきであり、ストライプに限定されない。例えば、パターンは、例えば、自動車のボンネットに跳馬のシルエット、又は自動車のボディの屋根にチェッカーフラッグのようなグラフィックデザインであってよい。
【0105】
したがって、回転噴霧器による従来の噴霧方法とは対照的に、本発明による塗布方法により、高品質の印象を得るために重要なシャープなエッジパターンを達成することができる。第1に、本開示の文脈内で使用されるシャープなエッジパターンの概念は、パターンのエッジが、事前に規定されたエッジ形状に対して非常に小さな偏差を有することを意味し、偏差は、好ましくは0.5mmより小さく、0.2mmより小さく、又は0.1mmよりさらに小さい。第2に、本開示の文脈で使用される「シャープなエッジパターン」という表現は、コーティングされたパターンの外側では、コーティングされる表面へのコーティング媒体の飛沫の衝突がないことも意味する。
【0106】
本発明による上記方法は、アリアルコンポーネントコーティング(areal component coating)にも適している。この目的のために、コーティング組成物ジェットを基材上で複数回移動させることができ、各場合でコーティング組成物ストリップが塗布される。このようにして、コーティング組成物ジェットの蛇行誘導によって、多数の平行なコーティング組成物ストリップを塗布することができる。
【0107】
個々のコーティング組成物ストリップは、互いに合体し、その後、均一なストリップ又は均一なコーティング組成物層を形成できることが理解されよう。
【0108】
あるいは、個々のコーティング組成物ストリップが互いに合体せず、むしろ、完成状態で、2つ以上の別々のストリップを形成することも可能である。
【0109】
前述のように、本発明の文脈で使用される「パターン」という表現は、基材の表面に塗布されたストライプを指すことができる。本発明による塗布方法を用いて、1cm未満、5mm未満、2mm未満、1mm未満、500μm未満、あるいは200μm未満、例えば100μmの幅を有する極めて狭いストリップを有利に塗布することができる。
【0110】
塗布装置は、単一のコーティング組成物ジェットを放出するだけでなく、互いに実質的に平行に向けられた複数のコーティング組成物ジェットを放出することもできることを理解されたい。直接隣接するコーティング組成物ジェットの間の距離は、直接隣接するコーティング組成物ジェットが塗布装置と基材との間で合流せず、別々のコーティング媒体ジェットとして基材表面上に衝突するが、それでも基材上の1つのエリアに融合するのに十分な大きさであり得る。
【0111】
塗布装置は、特定のノズル内径を有し、個々のコーティング組成物ジェットの放出を提供する特定のノズル間隔で配置される複数の塗布ノズルを有することができる。塗布ノズルと基材表面との間で隣接するコーティング組成物ジェットの合流を防止するために、直接隣接する塗布ノズル間のノズル間隔は、少なくともノズル内径の3倍、4倍又は6倍に等しくてよい。
【0112】
さらに、個々の塗布ノズル又は複数のノズルを有する領域が、個々の塗布ノズルから出てくるコーティング組成物ジェットが異なる動作変数を有するように、互いに独立して制御され得る可能性が本発明の範囲に存在する。例えば、塗布ノズルからのコーティング媒体の放出速度、異なる着色コーティング組成物を含むコーティング組成物の種類、又は放出されるコーティング組成物の体積流量は、個々の塗布ノズル又は領域に対して個別に設定され得る。
【0113】
また、塗布装置が、コーティング組成物の塗布中に、基材に対して移動され、その結果、コーティング組成物ジェットが、基材表面上へのその衝突点を有したまま対応するストリップに沿って移動することも可能である。あるいは、基材が移動されている間、塗布装置を固定位置に配置することが可能である。さらに、塗布装置とコーティングされる基材との間の相対的な移動は、塗布装置とコーティングされる基材の両方を移動させることで実現できる。
【0114】
本開示による上記塗布方法の利点は、オーバースプレーを回避すること、及び/又は塗布効率を増加させること、すなわち、基材表面上に実際に堆積される塗布されるコーティング組成物の割合を増加させることである。したがって、コーティング組成物ジェットは、好ましくは、コーティング組成物ジェットが実際に基材表面に衝突する場合にのみスイッチが入れられる。横方向の端部を有する基材のコーティング中、塗布装置は、したがって、コーティング組成物ジェットのスイッチを切った状態で横方向の端部に向かって移動させることができる。次いで、コーティング組成物ジェットは、塗布装置がエッジ上に位置する場合のみスイッチオンにされ、スイッチオンされたコーティング組成物ジェットが、次いで実際に基材に衝突する。続いて、塗布装置は、コーティングされる基材表面に沿ってコーティングされる基材上で移動され、コーティング組成物の対応するストリップを塗布する。その後、コーティング組成物ジェットは、塗布装置がコーティングされる基材の横方向端部を横切って移動されると、コーティング組成物ジェットはもはや基材表面に衝突しないため、再びスイッチオフにされる。
【0115】
上記の方法、特にステップc.の第1の代替案を実行する方法に関する可能性;また、そのために使用されることができる塗布装置に関するさらなる詳細は、US2015/0375258A1において見出される。
【0116】
上記方法のステップcの第1代替案では、コーティング組成物ジェットは、液滴に自然に崩壊する前に基材に当たるため(レイリーによる自然崩壊は既知である)、液滴を生成するために、振動などのコーティング組成物ジェットを崩壊させる手段を適用する必要はない。
【0117】
上記方法のステップc.の第2代替案では、塗布距離はコーティング組成物ジェットの崩壊距離よりも大きく、形成された別々の液滴が基材に衝突する。本発明による水性一液型コーティング組成物、このような方法でも有利に使用されることができる。上記の方法、特にステップc.の第2代替案を実施する方法に関する可能性;また、そのために使用することができる塗布装置のさらなる詳細については、US2013/0284833において見出される。
【0118】
上記の単層コーティングの製造方法で得られたコーティングされた基材は、10~30μmの範囲の乾燥層厚で、より好ましくは12~25μmの範囲の乾燥層厚で、最も好ましくは15~20μmの範囲の乾燥層厚で塗布される。好ましくは、コーティング組成物が1つ以上の顔料を含有する場合、層厚は、好ましくは、基材を不透明に覆うために十分な厚さである。
【0119】
上記方法のステップc.に続いて、得られたコーティング層は、任意であるが好ましい後続のステップd.において、好ましくは20~80℃の範囲、より好ましくは25~70℃の範囲の温度で、少なくとも部分的に乾燥される。乾燥時間は、好ましくは1~30分、より好ましくは2~15分、最も好ましくは3~10分の範囲で変動してよい。典型的には、乾燥温度が高いほど、必要な乾燥時間は短くなる。
【0120】
ステップc.又は乾燥ステップd.に続いて、得られた好ましくは少なくとも部分的に乾燥したコーティング層は、好ましくは40~90℃の範囲、より好ましくは50~80℃の範囲、最も好ましくは60~70℃の範囲の温度で硬化される。硬化時間は、好ましくは3~120分、より好ましくは5~60分、最も好ましくは7~15分の範囲で変動してよい。通常、硬化温度が高いほど、必要な硬化時間は短くなる。
【0121】
コーティングされる基材は、好ましくはプラスチック、すなわちポリマー基材又は金属基材である。しかし、セラミック基材、又はガラスなど、他の種類の基材をコーティングすることも可能である。ポリマー基材は、乾燥及び硬化条件に耐える必要がある。最も好ましいのは、冷間圧延鋼などの鋼のような金属基材、亜鉛メッキ鋼、亜鉛及びアルミニウム、アルミニウム/マグネシウム合金などのこれらの合金のような金属基材、及び、プラスチック基材、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アクリルニトリルブタジエンスチロール(ABS)及びエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)である。好ましい基材は、自動車ボディ及び自動車ボディ部品などの自動車の部品である。
【0122】
多層層コーティングの製造
好ましくは、単層コーティングを製造するための前述の方法は、多層コーティングを製造するための多工程方法の少なくとも1工程として統合される。このような多層コーティングにおいて、単層コーティング法における基材は、化成コーティング層、電着コーティング層、特に好ましくはカチオン電着コーティング層、フィラーコーティング層及び/又はプライマーコーティング層及びベースコート層のうちの1つ以上で既にコーティングされている基材であってよい。「フィラーコーティング」は、いわゆるフィラーコーティング組成物から得られるため、「フィラーコーティング」という用語は、「フィラー」という用語と混同されない。基材は、単層コーティングについて記載されたものと同じである。ただし、化成コーティング及び電着コーティングの場合は、金属基材が必要とされる。
【0123】
非常に特に好ましくは、多層コーティングは、以下の方法によって製造され、該方法は、
1)任意に、任意に化成コーティングされた金属基材に任意で電着コーティング組成物を塗布し、電着コーティングを硬化させて、電着コーティング層を得ること;次いで
2)任意に、少なくとも1つのフィラーコーティング組成物及び/又はプライマーコーティング組成物を先行のコーティング層上又は基材上に塗布して、1つ以上のフィラーコーティング層(単数又は複数)及び/又はプライマーコーティング層を得、好ましくはフィラーコーティング層(単数又は複数)及び/又はプライマーコーティング層を少なくとも部分的に硬化させること;次いで
3)任意に、少なくとも1つのベースコート組成物及び/又は少なくとも1つのクリアコート組成物を先行のコーティング層上又は基材上に塗布して、少なくとも1つのベースコート層及び/又は少なくとも1つのクリアコート層を得、好ましくはベースコート層(単数又は複数)及び/又はクリアコート層(単数又は複数)を少なくとも部分的に硬化させること;次いで
4)前述の層上又は基材の少なくとも一部の上に、単層コーティングを製造するための上記の方法によって、本発明による少なくとも1つの水性一液型コーティング組成物を塗布して、コーティング層を得、好ましくは、こうして得られたコーティング層(単数又は複数)を乾燥及び/又は少なくとも部分的に硬化させること;次いで、
5)好ましくは、少なくとも1つのクリアコート組成物を、前述のステップで得られたコーティング層の上に塗布すること;及び
6)前のいずれのステップでも硬化されなかったすべての層を一緒に硬化させること;
を含み、ここで、ステップ4)に加えて、ステップ1)、2)、3)及び5)の少なくとも1つが実施される。
【0124】
好ましくは、本発明による多層コーティングを製造するために基材をコーティングする方法において、ステップ1)、2)、4)、5)及び6)が実施され;よりさらに好ましいステップ1)~6)が実施される。
【0125】
特に好ましい実施形態は、少なくともステップ3)、4)、5)及び6)を実施し、ステップ3)において、少なくとも1つのクリアコート組成物を塗布し、ステップ3)において、1つのクリアコート組成物のみを塗布することが好ましい。このような実施形態では、基材がプラスチック基材であることがさらに好ましい。この方法においてさらに好ましくは、ステップ3)、4)、5)及び6)が実施され、ステップ3)において、任意にステップ2)に従ってプレコートされ(precoated)、及び/又はステップ3)に従ってベースコートでプレコートされたプラスチック基材上にクリアコート組成物が塗布される。
【0126】
多層コーティングを製造するための本発明の方法において、個々のコーティング層は、特に好ましくはステップ4)及び5)で塗布される層は、好ましくはウェットオンウェット法と呼ばれる方法によって塗布される。ウェットオンウェット法では、先行の層を(完全に)硬化させることなく、次の層を先行の層に塗布する。このようなウェットオンウェット法の例は、ドイツ特許出願DE19948004A1、17頁37行目~19頁22行目から公知である。
【0127】
好ましくは、本発明による水性一液型コーティング組成物は、ステップ4)において、自動車両、より詳細には自動車の多層コーティングの一部として、ベースコート層、特に有色の、好ましくは黒色のベースコート層を製造するための水性ベースコート組成物として使用される。ステップ4)は、単層コーティングを製造する方法(すなわち、そこにステップa.、b.及びc.、好ましくはステップcの第1の代替案が記載されている)に記載されているように実施される。
【0128】
任意のステップ1)で形成される電着コーティング層は、好ましくは、電着浸漬コーティング法におけるカソード電着コーティング組成物から製造される。このような組成物は、カソード電着可能なポリ(メタ)アクリレート樹脂又はエポキシ-アミン樹脂、及び、上記で開示されたようなブロック化ポリイソシアネートからなる群から選択される架橋剤に基づく。電着コーティング層の好ましい乾燥層厚は、15μm~25μmの範囲である。
【0129】
電着コーティング層は、その上に他の層を塗布する前に硬化させることが好ましい。硬化温度は好ましくは100~250℃の範囲、より好ましくは140~220℃の範囲であり、硬化時間は好ましくは5~50分の範囲、より好ましくは10~40分の範囲である。
【0130】
任意のステップ2)で使用されるフィラーコーティング組成物及び/又はプライマーコーティング組成物として、当業者に公知の任意のフィラーコーティング組成物及びプライマーコーティング組成物を使用することができる。これらは、好ましくは、静電スプレーコーティングによって塗布される。好ましくは、フィラーコーティング層及び/又はプライマーコーティング層を製造するために使用されるそのようなコーティング組成物は、溶媒系又は水性の、一液型又は二液型組成物である。ステップ2)で得られたコーティング層の好ましい乾燥層厚は、15μm~45μmの範囲、より好ましくは20μm~40μmの範囲、最も好ましくは25μm~35μmの範囲である。乾燥温度は好ましくは20~70℃の範囲、より好ましくは25~50℃の範囲であり、乾燥時間は好ましくは2~30分の範囲、より好ましくは5~15分の範囲である。硬化温度は好ましくは140~180℃の範囲、より好ましくは150~170℃の範囲であり、硬化時間は好ましくは10~40分の範囲、より好ましくは15~30分の範囲である。
【0131】
任意のステップ3)で使用される非発明のベースコート組成物及び/又はクリアコート組成物は、当業者に公知の任意のベースコート組成物又はクリアコート組成物であり得る。これらは、好ましくは、静電スプレーコーティングによって塗布される。好ましくは、ステップ3)においてベースコート層を製造するために使用されるベースコート組成物は、溶媒系又は水性の、一液型又は二液型組成物である。好ましくは、ステップ3)においてクリアコート層を製造するために使用されるクリアコート組成物は、溶媒系又は水性の、一液型又は二液型組成物である。ステップ2)で得られたコーティング層の好ましい乾燥層厚は、5μm~30μmの範囲、より好ましくは10μm~25μmの範囲、最も好ましくは15μm~20μmの範囲である。乾燥温度は好ましくは20~70℃の範囲、より好ましくは25~50℃の範囲であり、乾燥時間は好ましくは2~30分の範囲、より好ましくは5~15分の範囲である。硬化温度は好ましくは140~180℃の範囲、より好ましくは150~170℃の範囲であり、硬化時間は好ましくは10~40分の範囲、より好ましくは15~30分の範囲である。
【0132】
任意のステップ5)で使用されるクリアコート組成物としては、当業者に既知の任意のクリアコート組成物を使用することができる。これらは、好ましくは、静電スプレーコーティングによって塗布される。好ましくは、クリアコート層を生成するために使用されるクリアコート組成物は、溶媒系又は水性の、一液型又は二液型組成物、好ましくは溶媒系二液型組成物である。ステップ2)で得られるコーティング層の好ましい乾燥層厚は、30μmから60μmの範囲、より好ましくは35μmから55μmの範囲、最も好ましくは40μmから50μmの範囲である。乾燥温度は好ましくは20~70℃の範囲、より好ましくは25~50℃の範囲であり、乾燥時間は好ましくは2~30分、より好ましくは5~15分である。硬化温度は好ましくは130から170℃、より好ましくは140から160℃の範囲であり、硬化時間は好ましくは15から45分の範囲、より好ましくは20から35分の範囲である。
コーティングされた基材
本発明のさらなる目的は、本発明による単層コーティング又は多層コーティングを製造するための方法によって得ることができる、コーティングされた基材である。
【0133】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0134】
特に断りのない限り、以下では、部は質量部であり、パーセンテージは質量%である。
物性の決定
【0135】
固形分
コーティング組成物の固形分は、DIN ISO 3251に従って、コーティング組成物の1.0gのサンプルを130℃で60分間乾燥することにより計算された。単位gの残留量に100を乗じると、コーティング組成物の固形分が質量パーセントで与えられる。
【0136】
粘度
コーティング組成物の粘度は、せん断速度0.1秒-1、1秒-1及び1000秒-1で回転式粘度計(Anton Paar Rheolab QC)を使用して23℃でそれぞれ決定された。すべての測定は、特定のAnton Paar装置専用のコーンプレート測定システムを使用することにより実施された。
【0137】
表面張力-液体塗料のサンプル測定
液体塗料サンプルの表面張力は、張力計(Kruess K12)で決定された。報告された値は、DIN EN 14370による補正値である。
【0138】
μ-Surfによる突き合わせエッジの評価(「Stosskantenbeurteilung」)
突き合わせエッジの評価は、EN ISO 25178に従ったSa値(平均表面粗さ)の決定によって決定される(NanoFocusから市販されているμ-Surf装置を使用)。平均表面粗さは、ブラシと2つのブラシの重なり合う領域で決定される。その結果の差は、視覚的な外観を決定するために使用された。差が0.04μm未満の場合、視覚的外観は「1」(非常に良好)、0.04から0.08μmは「3」(制限付きで良好)、差が0.08μmより大きい場合は「5」(OKではない)と評価された。
【0139】
ブラシのレベリング/視覚的外観
外観パネルの視覚的評価は、特別な角度調整可能な照明と暗く反射しない壁を備えた特別室で行われる。評価は29°の定義された角度で行われ、すべてのパネルはそれぞれ調整可能なレベルを備えたサンプラーに固定されて評価される。パネル上のすべてのパターンが最適な方法で照射されていることを確認するため、光量を変えながら、非常に近い距離から3mまでのさまざまな距離で、すべてのパネルは視覚的に評価される。
【0140】
それぞれの順位は以下の通りである:
ok=ブラシ内が完全に濡れている、異常なし、不均一性なし
nok=ブラシ内に濡れがない、又は不完全な濡れ、不均一な外観
【0141】
平均粒径D50
中央粒径は、ISO 13320-1:1999に従ってレーザー回折法によって測定される。この目的に特に適しているのは、例えば、ホッパー付き汎用トレイ(ホッパーギャップ2mm)を使用するAero Sユニットを備えたMalvern Mastersizer 3000であり、以下の設定:
・バックグラウンド測定時間:10秒
・サンプル測定時間:10秒
・測定回数:結果が安定するまで最低9回(再現可能な直近3回の実験の平均値)
・遮蔽範囲:1~10%
・送り速度:40%
・空気圧:1.5バール
・解析モデル:汎用
・評価モデル:Fraunhofer
・結果の単位:体積
目に見える凝集物のない、均一な粉末のみを使用した。
【0142】
黒色水性ベースコート組成物の調製
黒色顔料ペースト(カーボンブラックペースト-実施例A)の調製
カーボンブラックペーストは、57質量部のポリウレタン分散液(WO92/15405によるバインダー分散液A)、5質量部の(DE-A-4009858による)ヒドロキシ官能性ポリエステル、10質量部のカーボンブラック(Monarch(登録商標)1400)、6.5質量部のジメチルエタノールアミン(水中10質量%)、2.5質量%の市販のポリエーテル(Pluriol(登録商標)P900)、7.5質量%のブチルジグリコール及び12質量部の脱イオン水によって調製された。
【0143】
ベースコート組成物BC-C1、BC-C2、BC-I1及びBC-I2の調製
表1Aに示される順に成分を混合し、黒色水性ベースコート組成物を形成した。10分間撹拌した後、脱イオン水及びN,N-ジエチルエタノールアミンを添加して、表1Bに示されるpH値及び表1Bのそれぞれの粘度を得た。
【0144】
黒色水性コーティング組成物の塗布
標準的なカチオン電着コーティング材料(BASF Coatings GmbH製のCathoGuard(登録商標)800)でコーティングされたスチールパネル(57×20cm,DIN EN ISO 28199-1、項目8.1,実施形態Aによる)に、市販の充填剤コーティング組成物(BASF Coatings GmbHから市販されているSecuBloc,FU657100)を層厚30±5μmで塗布した。コーティングを室温で10分間予備乾燥させ、コンベクションオーブンで160℃で20分間硬化させた。
【0145】
続いて、市販の第1ベースコート組成物(BASF Coatings GmbH製のFW70-7Z7G)を15±5μmの層厚で静電的に塗布した。ベースコートを、室温で5分間予備乾燥させ、さらにコンベクションオーブンで70℃で7分間予備乾燥させた。
【0146】
続いて、ベースコート組成物BC-C1、BC-C2、BC-I1及びBC-I2に、Systecからの塗布装置を使用して(DE102013002412A1に記載の方法に従って)15±2μmの層厚でそれぞれ塗布した。第2のベースコート層を再び室温で5分間予備乾燥させ、さらにコンベクションオーブン中で70℃で7分間予備乾燥させた。
【0147】
続いて、市販の二液型クリアコート(BASF Coatings GmbH製のProGloss,FF99-0363)を膜厚45±5μmで静電塗布した。クリアコート層を室温で5分間予備乾燥させ、コンベクションオーブンで140℃で25分間硬化させた。
【0148】
硬化した多層膜の物性評価は、上記のように決定した。
【0149】
さらなる本発明と比較例のベースコート組成物
すべてのさらなるベースコート組成物及びコーティングを、上述と同様の方法で調製し、評価した。それぞれの配合物及びデータは、表2A、2B、3A、3B及び4に見られる。
【0150】
【0151】
【0152】
ok: オーケー
nok: オーケーではない
【0153】
突き合わせエッジμ-surf 1=非常に良い,2=良い,3=可,4=悪い,5=非常に悪い
【0154】
表1Bに示されるように、本発明のベースコートでコーティングされた基材のみが、突き合わせエッジにおいて満足のいく外観を示し、ブラシにおける優れたレベリングを示した。クレームされた範囲を上回る(BC-C1)及び下回る(BC-C2)の体積固形分を有する比較ベースコート組成物でコーティングされた基材は、満足のいく結果をもたらさない。すべての本発明の実施例は、シャープなエッジパターンを示し、オーバースプレーは生成されなかった。さらに、本発明による組成物は、低せん断速度において比較的高い粘度(基材上に塗布した直後のコーティングの状態を表す)を有するため、たるみが防止され、一方、高せん断速度において粘度は低い(塗布粘度)ことが観察される。
【0155】
【0156】
【0157】
ok: オーケー
(ok): 制限付きでオーケー
nok: オーケーではない
na: 該当なし(ノズルが詰まった状態)
* 突き合わせエッジでの最初の気泡
** 突き合わせエッジでの激しい気泡
突き合わせエッジμ-surf1=非常に良い,2=良い,3=可,4=悪い,5=非常に悪い
【0158】
表2Bに示されるように、本発明のベースコートを塗布した基材のみが、優れた外観とブラシでのレベリングを示した。クレームされた範囲を上回る(BC-C3)及び下回る(BC-C4及びBC-C5)のレオロジー制御剤含有量を有する比較ベースコート組成物でコーティングされた基材は、満足のいく結果を提供しない。レオロジー制御剤を含有しないベースコート組成物BC-C6は、塗布すらできなかった。すべての本発明の実施例は、シャープなエッジパターンを示し、オーバースプレーは生成されなかった。
【0159】
【0160】
【0161】
ok: オーケー
nok: オーケーではない
突き合わせエッジμ-surf1=非常に良い,2=良い,3=可,4=悪い,5=非常に悪い
【0162】
表3Bに示されるように、本発明のベースコート(BC-I5及びBC-I6)でコーティングされた基材のみが、ブラシにおいて優れたレベリングを示し、突き合わせエッジにおいて評価1を示した。クレームされた範囲を下回る高分子界面活性剤の含有量を有する比較ベースコート組成物でコーティングされた基材は、ブラシ及び突き合わせエッジにおけるレベリングについて満足のいく結果を提供しない。すべての本発明の実施例は、シャープなエッジパターンを示し、オーバースプレーは生成されなかった。
効果顔料含有水性ベースコート組成物の調製(比較例)
【0163】
アルミニウム効果顔料スラリーの調製(実施例B)
3.8質量部のブチルグリコール、8質量部のJetFluid WB21001(アルミニウム効果顔料調製物、グリコール中25質量%、メジアン粒子径D50(レーザー回折により決定)=2μm)1質量部のヒドロキシ官能性ポリエステル(DE-A-4009858、実施例D、第16段、37~59頁)と0.5質量部のジメチルエタノールアミン(水中10質量%)を混合してスラリーを形成した。
【0164】
比較ベースコート組成物BC-C8の調製
比較ベースコート組成物BC-C8を調製するために、表4に示される原料を混合して、水性ベースコート組成物を含むアルミニウム効果顔料を形成した。10分間撹拌した後、脱イオン水及びN,N-ジエチルエタノールアミンを添加して、8,5のpH値及び1000秒-1のせん断速度で91mPasの23℃での粘度を得た(上記のように決定)。
【0165】
【0166】
表1A、2A及び3Aに示される配合に従って調製されたベースコートと同様に、本発明による方法を使用することによってベースコートを製造することを試みた。しかしながら、塗布を開始して既に数分で、ノズルが詰まり、2μm以上のメジアン粒径D50を有する板状粒子を含むベースコートBC-C8でコーティング工程を実施することは不可能であった。