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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/844 20230101AFI20240805BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240805BHJP
   H10K 50/842 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 59/124 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 59/131 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 59/35 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 59/40 20230101ALI20240805BHJP
【FI】
H10K50/844
G09F9/30 320
G09F9/30 349Z
G09F9/30 365
H10K50/842 428
H10K59/122
H10K59/124
H10K59/131
H10K59/35 351
H10K59/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023522096
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2021019053
(87)【国際公開番号】W WO2022244160
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 達
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 庄治
(72)【発明者】
【氏名】齋田 信介
(72)【発明者】
【氏名】市川 伸治
(72)【発明者】
【氏名】谷山 博己
(72)【発明者】
【氏名】藤本 英二
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0150847(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0097198(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0080753(KR,A)
【文献】中国実用新案第210535669(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/844
G09F 9/30
H10K 50/842
H10K 59/122
H10K 59/124
H10K 59/131
H10K 59/35
H10K 59/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板層と、
前記基板層に支持された、複数の発光素子を含む発光素子層と、
前記発光素子層上に設けられた、前記複数の発光素子を覆う封止膜と、を備え、
前記発光素子の発光によって画像を表示する表示領域と、該表示領域の外側に設けられた額縁領域とを有し、
前記封止膜は、前記表示領域に設けられる有機封止層を有し、
前記額縁領域には、前記表示領域の外周を延びる壁体と、該壁体を前記表示領域側から前記額縁領域の外側へ跨がるように延びる配線とが設けられた表示装置であって、
前記壁体として、前記有機封止層をなす有機材料の前記額縁領域の外側への広がりを堰き止める堰き止め壁と、該堰き止め壁のうち少なくとも前記配線が交差する部分に沿って当該堰き止め壁の外周を延びるスペーサ壁とが設けられ、
前記スペーサ壁の上部には、当該スペーサ壁の高さ方向へ突出した複数の凸状部が前記堰き止め壁に沿う方向に互いに間隔をあけて設けられ、
前記配線は、前記凸状部から外れた部分で前記スペーサ壁に跨がるように延びる、表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載された表示装置において、
前記スペーサ壁のうち前記凸状部から外れた部分の高さは、前記堰き止め壁の高さよりも低い、表示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された表示装置において、
前記堰き止め壁および前記スペーサ壁はそれぞれ、下側壁層と、該下側壁層上に設けられた上側壁層とを有し、
前記凸状部は、前記スペーサ壁の上側壁層によって構成される、表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載された表示装置において、
前記基板層と前記発光素子層との間に設けられた、複数の薄膜トランジスタを含む薄膜トランジスタ層をさらに備え、
前記薄膜トランジスタ層は、複数の薄膜トランジスタを覆うように設けられた平坦化膜を有し、
前記発光素子層は、複数の画素電極と、該画素電極を区画するように設けられたエッジカバーとを有し、
前記下側壁層は、前記平坦化膜と同一層に同一材料によって形成され、
前記上側壁層は、前記エッジカバーと同一層に同一材料によって形成される、表示装置。
【請求項5】
請求項3に記載された表示装置において、
前記基板層と前記発光素子層との間に設けられた、複数の薄膜トランジスタを含む薄膜トランジスタ層をさらに備え、
前記薄膜トランジスタは、複数の薄膜トランジスタを覆うように設けられた第1平坦化膜と、該第1平坦化膜上に設けられた導電層と、該導電層上に設けられた第2平坦化膜とを有し、
前記発光素子層は、複数の画素電極と、該画素電極を区画するように設けられたエッジカバーとを有し、
前記下側壁層は、前記第2平坦化膜と同一層に同一材料によって形成され、
前記上側壁層は、前記エッジカバーと同一層に同一材料によって形成される、表示装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載された表示装置において、
前記スペーサ壁は、前記堰き止め壁の外周全体に亘って延びる、表示装置。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載された表示装置において、
前記スペーサ壁は、前記額縁領域のうち前記堰き止め壁と前記配線とが交差する辺を構成する部分のみに設けられる、表示装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載された表示装置において、
前記封止膜上に設けられたタッチパネルをさらに備え、
前記タッチパネルは、前記表示領域に重ねて設定されるタッチ領域に設けられた複数の検出電極を有し、
前記配線は、前記タッチパネルに含まれ、前記検出電極から前記額縁領域に引き出された引き出し配線である、表示装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載された表示装置において、
前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子である、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence;以下、ELと称する)素子を用いた有機EL表示装置が実用化されている。
【0003】
有機EL表示装置において、複数の有機EL素子はそれぞれ、互いに対向する一対の電極と、一対の電極の間に設けられた有機EL層とを有する。有機EL層は、有機材料からなる正孔輸送層や発光層などの複数の機能層が積層されてなる。これら機能層や電極は、例えば、表示パネル単位でパターニング可能な開口が設けられたCMM(Common Metal Mask)と呼ばれる成膜用マスクや、サブ画素単位でパターニング可能な開口が設けられたFMM(Fine Metal Mask)と呼ばれる成膜用マスクを用いて、蒸着法により形成される。
【0004】
また、有機EL表示装置には、水分や酸素などの浸入による有機EL素子の劣化を抑制すべく、有機EL素子を覆うように封止膜が設けれる。封止膜としては、無機封止層と有機封止層とを積層する構造が好適に採用される。無機封止層は、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより形成される。有機封止層は、例えばインクジェット法などの塗布法により形成される。有機EL表示装置には、その製造過程で有機封止層を形成する有機材料(インク)が額縁領域の外側へ広がるのを堰き止めるための壁体として堰き止め壁が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-253036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機EL表示装置をオンセル型のタッチパネル付き表示装置にする場合には、封止膜上にタッチパネルが作り込まれる。この場合、タッチパネルにおいてタッチ位置を検出するための検出電極から額縁領域に配線を引き出す必要がある。この引き出し配線は、堰き止め壁が比較的高いため、当該配線をパターニングする際においてマスクに用いるレジストを堰き止め壁の頂部に十分な厚さで設けられず、堰き止め壁の頂部で途切れて断線するおそれがある。
【0007】
また、有機EL表示装置の製造において、有機EL層をなす機能層や電極を蒸着法により形成する際に用いる成膜用マスクは、堰き止め壁の頂部に接触する。このため、堰き止め壁の頂部に凹凸が形成されたり、堰き止め壁およびその周辺に異物が生じたりし易い。それら凹凸や異物は、封止膜により好適に覆い難く、カバレッジ不良を生じる原因となる。有機封止層84をなす有機樹脂材料の塗布領域またはその付近でカバレッジ不良が生じると、水分が表示領域に浸入し、有機EL素子の劣化を招くおそれがある。
【0008】
本開示の技術の目的は、表示装置において、壁体上での配線の断線と、表示領域への水分の浸入とを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の技術は、基板層と、前記基板層に支持された、複数の発光素子を含む発光素子層と、前記発光素子層上に設けられた、前記複数の発光素子を覆う封止膜とを備える表示装置を対象とする。本開示の技術に係る表示装置は、前記発光素子の発光によって画像を表示する表示領域と、該表示領域の外側に設けられた額縁領域とを有する。前記封止膜は、前記表示領域に設けられる有機封止層を有する。前記額縁領域には、前記表示領域の外周を延びる壁体と、該壁体を前記表示領域側から前記額縁領域の外側へ跨がるように延びる配線とが設けられる。前記壁体としては、前記有機封止層をなす有機材料の前記額縁領域の外側への広がりを堰き止める堰き止め壁と、該堰き止め壁のうち少なくとも前記配線が交差する部分に沿って当該堰き止め壁の外周を延びるスペーサ壁とが設けられる。前記スペーサ壁の上部には、当該スペーサ壁の高さ方向へ突出した複数の凸状部が前記堰き止め壁に沿う方向に互いに間隔をあけて設けられる。前記配線は、前記凸状部から外れた部分で前記スペーサ壁に跨がるように延びる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の技術によれば、表示装置において、壁体上での配線の断線と、表示領域への水分の浸入とを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1の有機EL表示装置の概略構成を例示する平面図である。
図2図2は、図1のII-II線における有機EL表示装置(折り曲げ部で折り曲げた状態を二点鎖線で示す)の断面図である。
図3図3は、実施形態1の有機EL表示装置の表示パネルの概略構成を例示する平面図である。
図4図4は、実施形態1の有機EL表示装置のタッチパネルの概略構成を第1堰き止め壁、第2堰き止め壁およびスペーサ壁と共に例示する平面図である。
図5図5は、有機EL表示装置の表示領域を構成する画素と各種の表示用配線とを例示する平面図である。
図6図6は、図5のVI-VI線における有機EL表示装置の断面図である。
図7図7は、有機EL表示装置の有機EL層の積層構造を例示する断面図である。
図8図8は、有機EL表示装置の画素回路を例示する等価回路図である。
図9図9は、実施形態1の有機EL表示装置の要部を模式的に例示する平面図である。
図10図10は、図9のXで囲んだ箇所を拡大して例示する平面図である。
図11図11は、図10のXI-XI線における有機EL表示装置の断面図である。
図12図12は、図10のXII-XII線における有機EL表示装置の断面図である。
図13図13は、図10のXIII-XIII線における有機EL表示装置の断面図である。
図14図14は、実施形態1の有機EL表示装置の製造において有機EL層をなす機能層や共通電極を蒸着法により形成するときの要部の様子を例示する断面図である。
図15図15は、実施形態1の有機EL表示装置の製造においてタッチパネルの配線をパターニングするに当たりレジストを塗布した状態を例示する、図12に対応する箇所の断面図である。
図16図16は、実施形態1の有機EL表示装置の製造においてタッチパネルの配線をパターニングするに当たりレジストを塗布した状態を例示する、図13に対応する箇所の断面図である。
図17図17は、実施形態1の有機EL表示装置の製造においてタッチパネルの配線をパターニングするときにレジストを現像した状態を例示する、図13に対応する箇所の断面図である。
図18図18は、実施形態1の有機EL表示装置の製造においてタッチパネルの配線をパターニングした状態を例示する、図13に対応する箇所の断面図である。
図19図19は、実施形態1の変形例1の有機EL表示装置の要部を模式的に例示する平面図である。
図20図20は、実施形態1の変形例2の有機EL表示装置の要部を模式的に例示する平面図である。
図21図21は、実施形態1の変形例2の有機EL表示装置の図11に相当する断面図である。
図22図22は、実施形態2の有機EL表示装置の図6に相当する断面図である。
図23図23は、実施形態2の有機EL表示装置の表示領域を構成する画素と第8導電層を構成する表示用配線とを例示する平面図である。
図24図24は、実施形態2の有機EL表示装置の図11に相当する断面図である。
図25図25は、実施形態2の変形例の有機EL表示装置の図11に相当する断面図である。
図26図26は、実施形態3の有機EL表示装置の図9に相当する平面図である。
図27図27は、図26のXXVIIA-XXVIIA線における有機EL表示装置の断面図(左図)と、図26のXXVIIB-XXVIIB線における有機EL表示装置の断面図(右図)とである。
図28図28は、比較例の有機EL表示装置の製造過程においてタッチパネルの配線をパターニングするに当たりレジストを塗布した状態を示す、図14に相当する断面図である。
図29図29は、比較例の有機EL表示装置の製造過程においてタッチパネルの配線をパターニングした状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態では、本開示の技術に係る表示装置として、有機EL素子を備える有機EL表示装置を例に挙げて説明する。
【0013】
なお、以下の実施形態において、或る膜や層、素子などの構成要素の上に他の膜や層、素子などの構成要素が設けられる、または形成されるとする記載は、或る構成要素の直上に他の構成要素が存在する場合のみを意味するのではなく、それら両方の構成要素の間に、それら以外の膜や層、素子などの構成要素が介在される場合も含む。
【0014】
また、以下の実施形態において、或る膜や層、素子などの構成要素が他の膜や層、素子などの構成要素に接続されるとする記載は、特に断らない限り電気的に接続されることを意味する。当該記載は、本開示の技術の趣旨を逸脱しない範囲において、直接的な接続を意味する場合のみならず、それら以外の膜や層、素子などの構成要素を介した間接的な接続を意味する場合も含む。当該記載はさらに、或る構成要素に他の構成要素が一体化される、つまり或る構成要素の一部が他の構成要素を構成する場合も含む。
【0015】
また、以下の実施形態において、或る膜や層、素子などの構成要素が他の膜や層、素子などの構成要素と同一層であるとする記載は、或る構成要素が他の構成要素と同一プロセスによって形成されることを意味する。或る構成要素が他の構成要素の下層であるとする記載は、或る構成要素が他の構成要素よりも先のプロセスによって形成されることを意味する。或る構成要素が他の構成要素の上層であるとする記載は、或る構成要素が他の構成要素よりも後のプロセスによって形成されることを意味する。
【0016】
また、以下の実施形態において、或る膜や層、素子などの構成要素が他の膜や層、素子などの構成要素と同一である、または同等であるとする記載は、或る構成要素と他の構成要素とが完全に同一である状態、または完全に同等である状態のみを意味するのではなく、或る構成要素と他の構成要素とが製造ばらつきや公差の範囲内で変動するといった実質的に同一である状態、または実質的に同等である状態を含む。
【0017】
また、以下の実施形態において、第1、第2、第3…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられ、その語句の数や何らかの順序までも限定するものではない。
【0018】
《実施形態1》
この実施形態の有機EL表示装置1は、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器のディスプレイ、パーソナルコンピュータ(PC)のモニタ、テレビジョン装置などの各種機器に使用される。図1および図2に示す有機EL表示装置1は、画面に触れることで入力操作が行えるオンセル型のタッチパネルTP付き表示装置である。
【0019】
-有機EL表示装置の構成-
有機EL表示装置1は、画像を表示しつつ、画像が表示される画面上のタッチ位置を検出する機能を有する。有機EL表示装置1は、画像の表示機能を担う表示パネルDPと、タッチ位置の検出機能を担うタッチパネルTPとを備える。
【0020】
有機EL表示装置1は、表示領域DAと、タッチ領域TAと、額縁領域FAとを有する。表示領域DAは、画像を表示する領域である。タッチ領域TAは、ユーザの指やスタイラスなどの接触体により接触された位置を検出する領域である。額縁領域FAは、画像の表示もタッチ位置の検出も行わない領域である。
【0021】
表示領域DAは、画面を構成する矩形状に設けられる。本実施形態では、矩形状の表示領域DAを例示するが、表示領域DAは、少なくとも1つの辺が円弧状になった形状、少なくとも1つの角部が円弧状になった形状、少なくとも1つの辺の一部に切欠きがある形状などの略矩形状であってもよい。図5に示すように、表示領域DAは、複数の画素Pxによって構成される。
【0022】
複数の画素Pxは、マトリクス状に配列される。各画素Pxは、3つのサブ画素Spによって構成される。3つのサブ画素Spは、赤色に発光する発光領域Eを有するサブ画素Sprと、緑色に発光する発光領域Eを有するサブ画素Spgと、青色に発光する発光領域Eを有するサブ画素Spbとである。これら3つのサブ画素Spr,Spg,Spbは、例えばストライプ状に配列される。
【0023】
図1および図2に示すように、タッチ領域TAは、画面上に設けられる。タッチ領域TAは、表示領域DAと同一位置に同一サイズで重ねて設定される。タッチ領域TAの形状は、表示領域DAの形状と対応する形状(本例では矩形状)である。すなわち、タッチ領域TAは、上述するような略矩形状であってもよい。
【0024】
額縁領域FAは、画面以外の非表示部分を構成する。額縁領域FAは、矩形枠状に設けられる。図1図4に示すように、額縁領域FAの一辺を構成する部分には、外部回路(表示制御回路、タッチ検出回路)と接続するための端子部Tが設けられる。端子部Tとしては、第1端子部T1および第2端子部T2が設けられる。
【0025】
額縁領域FAにおける表示領域DAと第1端子部T1との間には、図1中で横方向である第1方向を折り曲げの軸として折り曲げ可能な折り曲げ部Bが設けられる。折り曲げ部Bにおいて、後述するTFT層20(厳密には、ベースコート膜22、ゲート絶縁膜26、第1層間絶縁膜30および第2層間絶縁膜34からなる積層体)には、スリットSlが形成される。
【0026】
スリットSlは、TFT層20を貫通して、基板層10を露出させるように折り曲げ部Bの延びる方向に沿って突き抜ける溝状に設けられる。スリットSl内には、充填層Flが設けられる。スリットSlは、充填層Flによって埋められる。充填層Flは、ポリイミド樹脂やアクリル樹脂、ポリシロキサン樹脂などの樹脂材料によって形成される。
【0027】
第1端子部T1および第2端子部T2は、額縁領域FAが折り曲げ部Bで例えば180°に(U字状に)折り曲げられることにより、有機EL表示装置1の背面側に配置される(図2に二点鎖線で示す)。第1端子部T1および第2端子部T2にはそれぞれ、FPC(Flexible Printed Circuit)などの配線基板Cbが接続される。
【0028】
額縁領域FAには、表示パネルPDにおいて、表示領域DAから第1端子部T1に引き出された複数の第1引き出し配線L1が設けられる。複数の第1引き出し配線L1はそれぞれ、第1堰き止め壁Wa、第2堰き止め壁Wbおよびスペーサ壁Wsを表示領域DA側から額縁領域FAの外側へくぐるように延びる。これら各第1引き出し配線L1は、下層引き出し配線28hlおよび上層引き出し配線36hlによって構成される。
【0029】
各第1引き出し配線L1は、第1端子部T1にまで延びる。各第1引き出し配線L1は、第1端子部T1で配線基板Cbを介して表示制御回路(不図示)に接続される。表示制御回路は、表示パネルDPに含まれる表示用配線(ソース配線36sl)と駆動回路Dcとに信号を供給することで、画像表示を制御する回路である。
【0030】
額縁領域FAにおいて、表示パネルDP(TFT層20)に含まれる第1平坦化膜38pfには、トレンチGが表示領域DAを囲むように枠状に形成される。トレンチGは、平面視で第1端子部T1側を開口する略C状に形成されてもよい。トレンチGは、第1平坦化膜38pfを貫通し、第1平坦化膜38pfを額縁領域FAの内側と外側とに区切るように分断する。トレンチGは、額縁領域FAの外側からの表示領域DAへの水分などの浸入を防止する。
【0031】
図3に示すように、額縁領域FAにおいて、第1端子部T1および第2端子部T2が設けられた辺と隣り合う辺(図3で左右の各辺)を構成する部分には、駆動回路Dcがモノリシックに設けられる。駆動回路Dcは、ゲートドライバおよびエミッションドライバを含む。駆動回路Dcは、トレンチGよりも表示領域DA側に配置される。駆動回路Dcまたはその一部(ゲートドライバまたはエミッションドライバ)は、トレンチGよりも額縁領域FAの外周側に配置されてもよい。
【0032】
額縁領域FAには、第1額縁配線36fa(便宜上、図3で左上りの斜線ハッチングを付す)と、第2額縁配線36fb(便宜上、図3で右上りの斜線ハッチングを付す)とが設けられる。額縁領域FAにはさらに、第1堰き止め壁Waと、第2堰き止め壁Wbと、スペーサ壁Wsとが、第2額縁配線36fbと重なるように設けられる。第1堰き止め壁W1、第2堰き止め壁Wbおよびスペーサ壁Wsはそれぞれ、壁体WLの一例である。
【0033】
第1額縁配線36faは、トレンチGおよび駆動回路Dcよりも表示領域DA側に枠状に設けられる。第1額縁配線36faは、トレンチGをくぐるように第1平坦化膜38pfよりも下層を第1端子部T1へと延びる。第1額縁配線36faには、第1端子部T1で配線基板Cbを介してハイレベル電源電圧(ELVDD)が供給される。
【0034】
第2額縁配線36fbは、トレンチGおよび駆動回路Dcよりも額縁領域FAの外周側に略C状に設けられる。第2額縁配線36fbの両端部は、第1額縁配線36faに沿って第1端子部T1へと延びる。第2額縁配線36fbには、第1端子部T1で配線基板Cbを介してローレベル電源電圧(ELVSS)が供給される。
【0035】
第1堰き止め壁Wa、第2堰き止め壁Wbおよびスペーサ壁Wsは、例えば互いに相似形とされ、額縁領域FAの幅方向において互いに間隔をあけて配置される。第1堰き止め壁Waは、トレンチGの外周全体に亘って枠状に延びる。第2堰き止め壁Wbは、第1堰き止め壁Waの外周全体に亘って枠状に形成される。スペーサ壁Wsは、第2堰き止め壁Wbの外周全体に亘って枠状に延びる。スペーサ壁Wsは、それら3つの壁Wa,Wb,Wsのうち最外周に配置される。
【0036】
第1堰き止め壁Waおよび第2堰き止め壁Wbはいずれも、有機EL表示装置1の製造過程において、封止膜80に含まれる有機封止層84をなす有機樹脂材料の塗布時に、当該有機樹脂材料が額縁領域FAの外側へ広がるのを堰き止める土手として機能する。スペーサ壁Wsは、有機EL表示装置1の製造過程において、有機EL層66や共通電極68ceの形成時に用いられる成膜用マスクMKと成膜対象である基板との間隔を確保するスペーサとして機能する。
【0037】
また、額縁領域FAには、タッチパネルTPにおいて、タッチ領域TAから第2端子部T2に引き出された複数の第2引き出し配線L2が設けられる。複数の第2引き出し配線L2はそれぞれ、第1堰き止め壁Wa、第2堰き止め壁Wbおよびスペーサ壁Wsをタッチ領域TA側から額縁領域FAの外側へ跨がるように延びる。
【0038】
各第2引き出し配線L2は、第2端子部T2で配線基板Cbを介してタッチ検出回路(不図示)に接続される。タッチ検出回路は、タッチ領域TAが接触体にタッチされたときに、タッチパネルTPに含まれる電極(タッチ位置にある第1検出電極90deおよび第2検出電極110de)と接触体との間に生じる静電容量の変化を検出する回路である。
【0039】
〈表示パネル〉
表示パネルDPは、個々のサブ画素Spでの発光をTFT50により制御し、TFT50の動作により画像表示を行うアクティブマトリクス駆動方式を採用する。図2に示すように、表示パネルDPは、基板層10と、基板層10の上層として設けられたTFT層20と、TFT層20の上層として設けられた発光素子層60と、発光素子層60の上層として設けられた封止膜80とを備える。
【0040】
〈基板層〉
基板層10は、表示パネルPDのベースをなす層である。基板層10は、可撓性を有する。基板層10は、ポリイミド樹脂やポリアミド樹脂、エポキシ樹脂などの有機樹脂材料によって形成される。基板層10は、酸化シリコンや窒化シリコン、酸窒化シリコンなどの無機絶縁材料からなる無機絶縁層と、上述したような有機樹脂材料からなる樹脂層とが積層された積層膜によって構成されてもよい。基板層10の裏面には、裏面保護フィルム(不図示)が貼り付けられる。
【0041】
〈TFT層〉
図6に示すように、TFT層20は、複数のTFT50を含む。TFT層20は、基板層10上に順に設けられた、ベースコート膜22と、半導体層24と、ゲート絶縁膜26と、第1導電層28と、第1層間絶縁膜30と、第2導電層32と、第2層間絶縁膜34と、第3導電層36と、第1樹脂層38とを備える。
【0042】
ベースコート膜22は、基板層10の表面の略全体に亘って設けられる。半導体層24は、ベースコート膜22上に島状に複数設けられる。半導体層24は、一続きに設けられてもよい。ゲート絶縁膜26は、複数の半導体層24を覆うようにベースコート膜22上に一続きに設けられる。ゲート絶縁膜26は、各半導体層24上に島状に設けられてもよい。
【0043】
第1導電層28は、ゲート絶縁膜26上に設けられる。第1導電層28は、複数のゲート配線28glと、複数のエミッション制御配線28elと、複数の下層引き出し配線28hlと、複数のゲート電極28geと、複数の第1容量電極28ceとを含む。これら各種の配線および電極は、同一層に同一材料によって形成される。
【0044】
第1層間絶縁膜30は、第1導電層28と第2導電層32との間に介在する絶縁物である。第1層間絶縁膜30は、複数のゲート配線28gl、複数のエミッション制御配線28el、複数の下層引出配線28hl、複数のゲート電極28geおよび複数の第1容量電極28ceを覆うようにゲート絶縁膜26上に設けられる。
【0045】
第2導電層32は、第1層間絶縁膜30上に設けられる。第2導電層32は、複数の第1電源配線32plと、複数の第2容量電極32ceとを含む。これら第1電源配線32plおよび第2容量電極32ceは、同一層に同一材料によって形成される。
【0046】
第2層間絶縁膜34は、第2導電層32と第3導電層36との間に介在する絶縁物である。第2層間絶縁膜34は、複数の第1電源配線32plおよび複数の第2容量電極32ceを覆うように第1層間絶縁膜30上に設けられる。第1層間絶縁膜30および第2層間絶縁膜34は、層間絶縁膜35を構成する。層間絶縁膜35は、第1導電層28と第3導電層36との間に介在する絶縁物である。
【0047】
第3導電層36は、第2層間絶縁膜34上に設けられる。第3導電層36は、複数のソース配線36slと、複数のソース電極36seと、複数のドレイン電極36deと、複数の第2電源配線36plと、複数の上層引き出し配線36hlと、第1額縁配線36faと、第2額縁配線36fbとを含む。これら各種の配線および電極は、同一層に同一材料によって形成される。
【0048】
第1樹脂層38は、第2層間絶縁膜34上に設けられる。第1樹脂層38は、第1平坦化膜38pfと、第1壁層38wlとを含む。これら第1平坦化膜38pfおよび第1壁層38wlは、同一層に同一材料によって形成される。第1平坦化膜38pfは、表示領域DAにおいて、第3導電層36に含まれる各種の配線および電極を覆い、TFT層20の表面を平坦化する。第1壁層38wlは、下側壁層の一例である。
【0049】
第1壁層38wlは、額縁領域FAにおいて、第1平坦化膜38pfの外周側に3つ設けられる。3つの第1壁層38wlは、それぞれ表示領域DAを取り囲む枠状に形成され、額縁領域FAの幅方向において互いに間隔をあけて三重壁をなすように配置される。3つの第1壁層38wlは、第1堰き止め壁Wa、第2堰き止め壁Wbおよびスペーサ壁Wsの下層部分を構成する。本例において、第1堰き止め壁Waを構成する第1壁層38wlの厚さと、第2堰き止め壁Wbを構成する第1壁層38wlの厚さと、スペーサ壁Wsを構成する第1壁層38wlの厚さとは、互いに同等である。
【0050】
ベースコート膜22、ゲート絶縁膜26、第1層間絶縁膜30および第2層間絶縁膜34は、例えば、酸化シリコンや窒化シリコン、酸窒化シリコンなどの無機絶縁材料からなる。これらベースコート膜22、ゲート絶縁膜26、第1層間絶縁膜30および第2層間絶縁膜34は、そうした無機絶縁材料からなる単層膜または積層膜によって構成される。
【0051】
半導体層24は、例えば、低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Polycrystalline Silicon)によって形成される。半導体層24は、インジウムガリウム亜鉛酸化物(In-Ga-Zn-O)などの酸化物半導体や、その他の半導体材料からなってもよい。第1平坦化膜38pfおよび第1壁層38wlは、例えば、ポリイミド樹脂やアクリル樹脂などの有機樹脂材料、またはポリシロキサン系のSOG(Spin On Glass)材料などからなる。
【0052】
第1導電層28、第2導電層32および第3導電層36に含まれる各種の配線および電極は、例えば、アルミニウム(Al)やタングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)などの金属材料からなる。これら各種の配線および電極は、そうした金属材料からなる単層膜または積層膜によって構成される。
【0053】
〈表示用の配線〉
図5に示すように、複数のゲート配線28glは、表示領域DAにおいて、第1方向Xと直交する方向である第2方向Yに互いに間隔をあけて設けられ、第1方向Xに互いに平行に延びる。これら各ゲート配線28glは、ゲート信号を伝達する配線であって、サブ画素Spの行ごとに設けられる。各ゲート配線28glは、駆動回路Dcのゲートドライバに接続される。
【0054】
複数のエミッション制御配線28elは、表示領域DAにおいて、第2方向Yに互いに間隔をあけて設けられ、第1方向Xに互いに平行に延びる。これら各エミッション制御配線28elは、エミッション制御信号を伝達する配線であって、サブ画素Spの行ごとに設けられる。各エミッション制御配線28elは、駆動回路Dcのエミッションドライバに接続される。
【0055】
複数のソース配線36slは、表示領域DAにおいて、第1方向Xに互いに間隔をあけて設けられ、第2方向Yに互いに平行に延びる。これら各ソース配線36slは、ソース信号を伝達する配線であって、サブ画素Spの列ごとに設けられる。各ソース配線36slは、第1引き出し配線L1に接続され、第1端子部T1を介して表示制御回路に接続される。
【0056】
複数の第1電源配線32plは、表示領域DAにおいて、第2方向Yに互いに間隔をあけて第1方向Xに互いに平行に延びる。複数の第2電源配線36plは、表示領域DAにおいて、第1方向Xに互いに間隔をあけて第2方向Yに互いに平行に延びる。各第1電源配線32plは、第2層間絶縁膜34に形成されたコンタクトホール(不図示)を介して各第1電源配線32plに接続される。これら第1電源配線32plおよび第2電源配線36plは、電源配線Plを構成する。電源配線Plは、所定のハイレベル電源電圧(ELVDD)を印加する配線である。
【0057】
図3に示すように、複数の下層引き出し配線28hlはそれぞれ、額縁領域FAにおいて、表示領域DAと折り曲げ部Bとの間の部分と、折り曲げ部Bと第1端子部T1との間の部分とに、第1方向Xに互いに間隔をあけて設けられ、それら両部分を第2方向Yに互いに平行に延びる。折り曲げ部Bよりも表示領域DA側に位置する各下層引き出し配線28hlは、層間絶縁膜35に形成されたコンタクトホール(不図示)を介して対応するソース配線36slと接続される。
【0058】
複数の上層引き出し配線36hlはそれぞれ、額縁領域FAにおいて、第1方向Xに互いに間隔をあけて設けられ、折り曲げ部Bを跨ぐように充填層Fl上を第2方向Yに互いに平行に延びる。これら各上層引き出し配線36hlは、層間絶縁膜35に形成されたコンタクトホール(不図示)を介して、折り曲げ部Bよりも表示領域DA側に位置する下層引き出し配線28hlと、折り曲げ部Bよりも第1端子部T1側に位置する下層引き出し配線28hlとにそれぞれ接続される。
【0059】
〈表示用の電極、TFT、キャパシタ〉
ゲート電極28ge、ソース電極36seおよびドレイン電極36deはそれぞれ、サブ画素Spごとに複数設けられる。これらゲート電極28ge、ソース電極36seおよびドレイン電極36deは、図6に示すようにTFT50を構成する。TFT50は、個々のサブ画素Spに複数設けられる。複数のTFT50はいずれも、トップゲート型に構成される。
【0060】
各TFT50は、半導体層24と、ゲート絶縁膜26と、ゲート電極28geと、層間絶縁膜35と、ソース電極36seと、ドレイン電極36deとによって構成される。ソース電極36seおよびドレイン電極36deは、互いに離間し、層間絶縁膜35に形成されたコンタクトホール35hを介して、半導体層24におけるゲート電極28geと重なる領域(真性領域)を挟んだ位置で互いに異なる部分(導通領域)にそれぞれ接続される。
【0061】
第1容量電極28ceおよび第2容量電極32ceはそれぞれ、サブ画素Spごとに少なくとも1つ設けられる。第1容量電極28ceおよび第2容量電極32ceは、キャパシタ55を構成する。キャパシタ55は、個々のサブ画素Spに少なくとも1つ設けられる。キャパシタ55は、データ保持用の素子である。キャパシタ55は、第1容量電極28ceと、第1層間絶縁膜30と、第2容量電極32ceとによって構成される。第1容量電極28ceと第2容量電極32ceとは、第1層間絶縁膜30を介して互いに重なり合う。
【0062】
〈発光素子層〉
発光素子層60は、TFT層20上に設けられる。すなわち、発光素子層60は、TFT層20を介して基板層10に支持される。発光素子層60は、複数の有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)70を含む。有機EL素子70は、発光素子の一例である。発光素子層60は、第1樹脂層38上に順に設けられた、第4導電層62と、第2樹脂層64と、有機EL層66と、第5導電層68とを備える。
【0063】
第4導電層62は、複数の画素電極62peと、接続導電膜62cfとを含む。これら画素電極62peおよび接続導電膜62cfは、同一層に同一材料によって形成される。画素電極62peは、表示領域DAにおいてサブ画素Spごとに設けられる。画素電極62peは、有機EL層66に正孔(ホール)を注入する陽極として機能する。画素電極62peは、光を反射する性質(光反射性)を有する。
【0064】
画素電極62peの材料としては、例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、金(Au)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、マンガン(Mn)、インジウム(In)、イッテルビウム(Yb)、フッ化リチウム(LiF)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、イリジウム(Ir)、スズ(Sn)などの金属材料が挙げられる。
【0065】
また、画素電極62peの材料は、例えば、アスタチン(At)と酸化アスタチン(AtO2)などの合金であっても構わない。さらに、画素電極62peの材料は、例えば、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような導電性酸化物であってもよい。画素電極62peの材料は、有機EL層66への正孔の注入効率を向上させるために、仕事関数の大きな材料であることが好ましい。また、画素電極62peは、上述したような導電材料からなる層を複数積層して形成されてもよい。
【0066】
接続導電膜62cfは、共通電極68ceと第2額縁配線36fbとを接続する導電膜である。接続導電膜62cfは、額縁領域FAにおいて端子部T側を開放したC字状に設けられる。接続導電膜62cfは、第1堰き止め壁Wa、第2堰き止め壁Wbおよびスペーサ壁Wsにおいて、第1壁層38wlと第2壁層64wlとの間に介在する。接続導電膜62cfの内周側の部分は共通電極68ceと重なって接続され、接続導電膜62cfの外周側の部分は隣り合う第1壁層38wlの間で第2額縁配線36fbに重なって接続される。
【0067】
第2樹脂層64は、エッジカバー64ecと、フォトスペーサ64psと、第2壁層64wlとを含む。これらエッジカバー64ec、フォトスペーサ64psおよび第2壁層64wlは、同一層に同一材料によって形成される。エッジカバー64ec、フォトスペーサ64psおよび第2壁層64wlの材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂などの有機樹脂材料、またはポリシロキサン系のSOG材料などが用いられる。第2壁層64wlは、上側壁層の一例である。
【0068】
エッジカバー64ecは、隣り合う画素電極62peを区画する。エッジカバー64ecは、全体として格子状に形成され、各画素電極62peの周縁部分を覆う。エッジカバー64ecには、各画素電極62peを露出させる開口64eoが形成される。エッジカバー64ecの表面の一部は、複数のフォトスペーサ64psを構成する。フォトスペーサ64psは、有機EL層66や共通電極68ceの形成時に用いられる成膜用マスクMKと成膜対象である基板との間隔を確保するスペーサである。
【0069】
第2壁層64wlは、額縁領域FAにおいて、各第1壁層38wl上および接続導電膜62cfのうち各第1壁層38wlに対応する部分上に設けられる。すなわち、第2壁層64wlは、第1平坦化膜38pfの外周側に3つ設けられる。3つの第2壁層64wlは、それぞれ表示領域DAを取り囲む枠状に形成され、額縁領域FAの幅方向において互いに間隔をあけて三重壁をなすように配置される。
【0070】
3つの第2壁層64wlは、第1堰き止め壁Wa、第2堰き止め壁Wbおよびスペーサ壁Wsの上層部分を構成する。第1堰き止め壁Waを構成する第2壁層64wlの厚さと、第2堰き止め壁Wbを構成する第2壁層64wlの厚さとは、互いに同等である。スペーサ壁Wsを構成する第2壁層64wlの厚さは、凸状部64cpが設けられる部分で第1堰き止め壁Waおよび第2堰き止め壁Wbを構成する各第2壁層64wlの厚さよりも厚い。
【0071】
有機EL層66は、発光機能層の一例である。有機EL層66は、エッジカバー64ecの各開口64eo内で個々の画素電極62pe上に設けられる。図7に示すように、有機EL層66は、複数の機能層を有する。複数の機能層は、画素電極62pe上に順に設けられた、正孔注入層66hiと、正孔輸送層66htと、発光層66leと、電子輸送層66etと、電子注入層66eiとである。これら複数の機能層のうちいくつかの層は、複数のサブ画素Spにおいて一続きとして共通に設けられてもよい。
【0072】
正孔注入層66hiは、陽極バッファ層とも呼ばれる。正孔注入層66hiは、画素電極62peと有機EL層66とのエネルギーレベルを近づけて、画素電極62peから有機EL層66への正孔の注入効率を改善する。正孔注入層66hiの材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体などが挙げられる。
【0073】
正孔輸送層66htは、発光層66leへの正孔の輸送効率を向上させる。正孔輸送層66htの材料としては、例えば、ポルフィリン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリ-p-フェニレンビニレン、ポリシラン、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミン置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、水素化アモルファスシリコン、水素化アモルファス炭化シリコン、硫化亜鉛、セレン化亜鉛などが挙げられる。
【0074】
発光層66leは、画素電極62peおよび共通電極68ceによって電流が印加されたときに、画素電極62peから注入された正孔と共通電極68ceから注入された電子とを再結合させて発光する。発光層66leは、例えば、個々のサブ画素Spにおける有機EL素子70の発光色(赤色、緑色または青色)に合わせて異なる材料により形成される。
【0075】
発光層66leの材料としては、例えば、金属オキシノイド化合物[8-ヒドロキシキノリン金属錯体]、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ジフェニルエチレン誘導体、ビニルアセトン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、ブタジエン誘導体、クマリン誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリル誘導体、スチリルアミン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、トリススチリルベンゼン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、アミノピレン誘導体、ピリジン誘導体、ローダミン誘導体、アクイジン誘導体、フェノキサゾン、キナクリドン誘導体、ルブレン、ポリ-p-フェニレンビニレン、ポリシランなどが挙げられる。
【0076】
電子輸送層66etは、発光層66leへの電子の輸送効率を向上させる。電子輸送層66etの材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン誘導体、ジフェノキノン誘導体、フルオレノン誘導体、シロール誘導体、金属オキシノイド化合物などが挙げられる。
【0077】
電子注入層66eiは、陽極バッファとも呼ばれる。電子注入層66eiは、共通電極68ceと有機EL層66とのエネルギーレベルを近づけて、共通電極68ceから有機EL層66への電子の注入効率を改善する。電子注入層66eiの材料としては、例えば、例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化ストロンチウム(SrF)、フッ化バリウム(BaF)のような無機アルカリ化合物、酸化アルミニウム(Al)、酸化ストロンチウム(SrO)などが挙げられる。
【0078】
第5導電層68は、共通電極68ceを含む。共通電極68ceは、複数のサブ画素Spに共通して一続きに設けられる。共通電極68ceは、エッジカバー64ecを覆って有機EL層66上に設けられ、有機EL層66を介して各画素電極62peと重なる。共通電極68ceは、有機EL層66に電子を注入する陰極として機能する。共通電極68ceは、光を透過する性質(光透過性)を有する。
【0079】
共通電極68ceの材料としては、例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、イットリウム(Y)、ナトリウム(Na)、マンガン(Mn)、インジウム(In)、マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)、イッテルビウム(Yb)、フッ化リチウム(LiF)などが挙げられる。
【0080】
また、共通電極68ceは、例えば、マグネシウム(Mg)と銅(Cu)、マグネシウム(Mg)と銀(Ag)、ナトリウム(Na)とカリウム(K)、アスタチン(At)と酸化アスタチン(AtO2)、リチウム(Li)とアルミニウム(Al)、リチウム(Li)とカルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)、フッ化リチウム(LiF)とカルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)などの合金により形成されてもよい。
【0081】
また、共通電極68ceは、例えば、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)などの導電性酸化物により形成されてもよい。共通電極68ceの材料は、有機EL層66への電子の注入効率を向上させるために、仕事関数の小さな材料であることが好ましい。また、共通電極68ceは、上述したような導電材料からなる層を複数積層して形成されてもよい。
【0082】
〈有機EL素子〉
有機EL素子70は、サブ画素Spごとに設けられる。複数の有機EL素子70はいずれも、トップエミッション型に構成される。各有機EL素子70は、画素電極62peと、有機EL層66と、共通電極68ceとを有する。有機EL素子70では、画素電極62peと共通電極68ceとの間に電流が印加されると、有機EL層66が発光する。有機EL素子70は、エッジカバー64ecの各開口64eoに対応する領域で発光する。
【0083】
画素電極62peは、第1平坦化膜38pfに形成されたコンタクトホール38hを介して、対応するサブ画素Spにおける所定のTFT50(第3TFT50C)のドレイン電極36deに接続される。有機EL層66は、画素電極62peと共通電極68ceとの間に介在する。共通電極68ceは、額縁領域FAにまで延び、額縁領域FAで接続導電膜62cfに接続される。そのことで、共通電極68ceは、接続導電膜62cfを介して、第1平坦化膜38pfと第1堰き止め壁Waとの間、第1堰き止め壁Waと第2堰き止め壁Wbとの間、および第2堰き止め壁Wbとスペーサ壁Wsとの間で第2額縁配線36fbに接続される。
【0084】
〈画素回路〉
サブ画素Spごとに設けられた複数のTFT50、キャパシタ55および有機EL素子70は、図8に示すような画素回路Pcを構成する。画素回路Pcは、ゲート配線28glに供給されるゲート信号と、エミッション制御配線28elに供給されるエミッション信号と、ソース配線36slに供給されるソース信号と、電源配線Plに供給されるハイレベル電源電圧と、共通電極68ceに供給されるローレベル電源電圧とに基づいて、対応するサブ画素Spに設けられた有機EL素子70の発光を制御する。
【0085】
画素回路Pcを構成する複数のTFT50は、第1TFT50Aと、第2TFT50Bと、第3TFT50Cとである。第1TFT50Aは、各サブ画素Spにおいて、対応するゲート配線28gl、ソース配線36slおよび第2TFT50Bに接続される。第2TFT50Bは、各サブ画素Spにおいて、対応する第1TFT50A、電源配線Plおよび第3TFT50Cに接続される。第3TFT50Cは、サブ画素Spにおいて、対応する第2TFT50B、エミッション制御配線28elおよび有機EL素子70に接続される。キャパシタ55は、各サブ画素Spにおいて、対応する第1TFT50A、第2TFT50Bおよび電源配線Plに接続される。
【0086】
〈封止膜〉
図2および図6に示すように、封止膜80は、複数の有機EL素子70を覆うように発光素子層60上に設けられる。封止膜80は、各有機EL素子70(特に有機EL層66)を水分などから保護する。封止膜80は、発光素子層60上に順に設けられた、第1無機封止層82と、有機封止層84と、第2無機封止層86とを有する。
【0087】
第1無機封止層82は、表示領域DAで共通電極68ceを、額縁領域FAで第1堰き止め壁Wa、第2堰き止め壁Wbおよびスペーサ壁Wsをそれぞれ覆い、スペーサ壁Wsの外周側に延びる。有機封止層84は、第1無機封止層82上において、第2堰き止め壁Wbの内側に設けられる。有機封止層84は、第2堰き止め壁Wbとスペーサ壁Wsとの間に存在してもよい。
【0088】
第2無機封止層86は、有機封止層84を覆い、スペーサ壁Wsの外周側に延びる。第2無機封止層86の周縁部分は、第2堰き止め壁Wbの外周側において、第1無機封止層82の周縁部分に重なる。そうして、有機封止層84は、第1無機封止層82および第2無機封止層86によって包み込まれ、それら両層82,86の間に封入される。
【0089】
第1無機封止層82および第2無機封止層86はそれぞれ、例えば、酸化シリコンや窒化シリコン、酸窒化シリコンなどの無機絶縁材料からなる。有機封止層84は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリ尿素樹脂、パリレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂などの有機樹脂材料からなる。
【0090】
〈タッチパネル〉
図6に示すように、タッチパネルTPは、投影型静電容量方式(プロジェクテッドキャパシティブ方式)を採用する。タッチパネルTPは、表示パネルDPの上層として設けられた第6導電層90と、第6導電層90の上層として設けられた層間絶縁膜100と、層間絶縁膜100の上層として設けられた第7導電層110と、第7導電層110の上層として設けられたオーバーコート膜120とを備える。
【0091】
第6導電層90は、封止膜80上に設けられる。第6導電層90は、複数の第1検出電極90deと、複数の第1連結配線90clと、複数の下層引き出し配線90hlとを含む。これら第1検出電極90de、第1連結配線90clおよび下層引き出し配線90hlは、同一層に同一材料によって形成される。
【0092】
層間絶縁膜100は、第6導電層90上に設けられる。層間絶縁膜100は、第6導電層90と第7導電層110との間に介在する絶縁物である。層間絶縁膜100は、タッチ領域TAにおいて複数の第1検出電極90deおよび複数の第1連結配線90clを覆い、額縁領域FAにおいて第2端子部T2を除く箇所で複数の下層引き出し配線90hlを覆うように設けられる。層間絶縁膜100は、各第1連結配線90clおよびその周辺のみを覆うように設けられてもよい。
【0093】
第7導電層110は、層間絶縁膜100上に設けられる。第7導電層110は、複数の第2検出電極110deと、複数の第2連結配線110clと、複数の上層引き出し配線110hlとを含む。これら第2検出電極110de、第2連結配線110clおよび上層引き出し配線110hlは、同一層に同一材料によって形成される。
【0094】
オーバーコート膜120は、第7導電層110上に設けられる。オーバーコート膜120は、タッチ領域TAにおいて複数の第2検出電極110deおよび複数の第2連結配線110clを覆い、額縁領域FAにおいて第2端子部T2を除く箇所で複数の上層引き出し配線110hlを覆うように設けられる。
【0095】
第6導電層90および第7導電層110に含まれる各種の配線および電極は、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような光透過性を有する導電性酸化物からなる。これら各種の配線および電極は、そうした導電性酸化物からなる単層膜または積層膜によって構成される。
【0096】
層間絶縁膜100は、例えば、酸化シリコンや窒化シリコン、酸窒化シリコンなどの無機絶縁材料からなる。層間絶縁膜100は、そうした無機絶縁材料からなる単層膜または積層膜によって構成される。オーバーコート膜120は、例えば、アクリル樹脂などの光透過性を有する有機樹脂材料からなる。
【0097】
〈タッチ位置検出用の電極〉
第1検出電極90deおよび第2検出電極110deはいずれも、タッチ位置検出用の電極である。図4に示すように、複数の第1検出電極90deは、タッチ領域TAにおいてマトリクス状に配置される。複数の第2検出電極110deもまた、タッチ領域TAにおいてマトリクス状に配置される。第1検出電極90deと第2検出電極110deとは、第1方向Xおよび第2方向Yに対して斜め方向に交互に並ぶように配列される。
【0098】
第1検出電極90deは、例えば菱形状に形成される。第1方向Xおよび第2方向Yに隣り合う第1検出電極90deの角部は、互いに対峙する。そして、第2方向Yに隣り合う第1検出電極90deの角部は、第1連結配線90clを介して互いに連結される。第2方向Yに整列する複数の第1検出電極90deは、互いに接続されて第1電極列92を構成する。第1電極列92は、第1方向Xにおいて複数並べられる。
【0099】
第2検出電極110deも、例えば菱形状に形成される。第1方向Xおよび第2方向Yに隣り合う第2検出電極110deの角部は、互いに対峙する。そして、第1方向Xに隣り合う第2検出電極110deの角部は、第2連結配線110clを介して互いに連結される。第1方向Xに整列する複数の第2検出電極110deは、互いに接続されて第2電極列112を構成する。第2電極列112は、第2方向Yにおいて複数並べられる。
【0100】
下層引き出し配線90hlは、第1電極列92ごとに設けられ、対応する第1電極列92を構成する第1検出電極90deに接続される。各下層引き出し配線90hlは、額縁領域FAのうち第2端子部TA側の辺を構成する部分を第2端子部T2にまで引き出される。
【0101】
上層引き出し配線110hlは、第2電極列112ごとに設けられ、対応する第2電極列112を構成する第2検出電極110deに接続される。各上層引き出し配線110hlは、額縁領域FAの第1方向Xにおける一方側または他方側(図4で示す例で左側または右側)の辺を構成する部分を経由して、タッチ領域TAから第2端子部T2に引き回される。隣り合う第2電極列112に接続された上層引き出し配線110hlは、額縁領域FAの互いに異なる側に引き出される。
【0102】
上層引き出し配線90hlおよび下層引き出し配線110hlはそれぞれ、第2引き出し配線L2を構成する。各第2引き出し配線L2は、第1堰き止め壁Wa、第2堰き止め壁Wbおよびスペーサ壁Wsと交差し、スペーサ壁Wsに跨がるように封止膜(第2無機封止層86)上を延びる。
【0103】
〈第1堰き止め壁、第2堰き止め壁、スペーサ壁〉
図11に示すように、第1堰き止め壁Wa、第2堰き止め壁Wbおよびスペーサ壁Wsはそれぞれ、第1壁層38wlと、第2壁層64wlとを有する。第1壁層38wlは、TFT層20の下層部分を介して基板層10に支持される。第2壁層64wlは、第1壁層38wl上を延びる。第2壁層64wlの幅は、第1壁層38wlの幅よりも小さい。第1堰き止め壁Waの高さh1および第2堰き止め壁Wbの高さh2は、有機封止層84をなす有機樹脂材料が第2堰き止め壁Wbまでで殆ど堰き止められるように設計される。
【0104】
図9および図10にも示すように、スペーサ壁Wsの上部には、複数の凸状部64cpが設けられる。凸状部64cpは、スペーサ壁Wsの高さ方向へ突出したスポット的な突起物であって、第2壁層64wlによって構成される。複数の凸状部64cpは、スペーサ壁Wsに沿う方向に互いに間隔をあけて、当該スペーサ壁Wsの全周に亘り形成される。スペーサ壁Wsは、有機EL表示装置1の製造過程において、有機封止層84をなす有機樹脂材料の塗布時に、当該有機樹脂材料が額縁領域FAの外側へ広がるのを堰き止める土手としても機能する。
【0105】
図11および図12に示すように、本例において、第1堰き止め壁Waの高さh1と第2堰き止め壁Wbの高さh2とは、互いに同等である。第2堰き止め壁Wbの高さh2は、第1堰き止め壁Waの高さh1よりも高くてもよい。スペーサ壁Wsにおいて、凸状部64cpが設けられた部分の高さh31は、第1堰き止め壁Waおよび第2堰き止め壁Wbの高さh1,h2よりも高く、凸状部64cpから外れた部分の高さh32は、第1堰き止め壁Waおよび第2堰き止め壁Wbの高さh1,h2と同等である。第1堰き止め壁Wa、第2堰き止め壁Wbおよびスペーサ壁Wsの高さh1,h2,h3は、有機封止層84をなす有機樹脂材料を堰き止める土手として機能する堰き止め壁が2つである場合のそれら堰き止め壁の高さに比べて低くて済む。
【0106】
スペーサ壁Wsは、それら複数の凸状部64cpで、有機EL層66や共通電極68ceの形成時に用いられる成膜用マスクMKと接触する。図9図13に示すように、各第2引き出し配線L2は、凸状部64cpから外れた部分、具体的には隣り合う凸状部64cpの間でスペーサ壁Wsに跨がるように第2無機封止層86上または層間絶縁膜100上を延びる。このように、各第2引き出し配線L2は、スペーサ壁Wsのうち相対的に低い部分を経由して表示領域DAから第2端子部T2に引き出される。隣り合う凸状部64cpの間には、1つの第2引き出し配線L2のみが設けられてもよく、2つ以上の第2引き出し配線L2が存在してもよい。
【0107】
-有機EL表示装置の動作-
有機EL表示装置1では、各サブ画素Spにおいて、まず、対応するエミッション制御配線28elが選択されて非活性状態になり、有機EL素子70が非発光状態になる。そして、非発光状態の有機EL素子70に対応するゲート配線28glが選択されて活性状態になると、そのゲート配線28glを介してゲート信号が第1TFT50Aに入力され、第1TFT50Aがオン状態になる。
【0108】
第1TFT50Aがオン状態になると、ソース配線36slを介して伝達されるソース信号に対応する所定の電圧が、第2TFT50Bに印加されると共にキャパシタ55に書き込まれる。そして、エミッション制御配線28elが非選択状態とされて非活性状態になると、そのエミッション制御配線28elを介して第3TFT50Cにエミッション信号が入力され、第3TFT50Cがオン状態になる。
【0109】
第3TFT50Cがオン状態になると、第2TFT50Bのゲート電圧に応じた電流が電源配線Plから有機EL素子70に供給される。これにより、各有機EL層66(発光層66le)が発光して、画像が表示される。なお、有機EL層66の発光は、第1TFT50Aがオフ状態になっても、第2TFT50Bのゲート電圧がキャパシタ55によって保持されるので、次のフレームのゲート信号が入力されるまでサブ画素Spごとに維持される。
【0110】
-有機EL表示装置の製造方法-
有機EL表示装置1を製造するには、まず、ガラス基板の表面に、有機樹脂材料を塗布してベーク処理などを行うことにより、基板層10を形成する。次いで、基板層10上に、フォトリソグラフィや真空蒸着法、インクジェット法などの周知の技術を用いてTFT層20、発光素子層60、封止膜80およびタッチパネルTPを順に形成する。そして、基板層10の裏面にガラス基板側からレーザ光を照射するなどして、基板層10からガラス基板を剥離する。
【0111】
続いて、基板層10の裏面に裏面保護フィルムを貼り付ける。また、タッチパネルTPが設けられた基板の表面に表面保護フィルムを貼り付ける。次に、当該基板の第1端子部T1および第2端子部T2にそれぞれ、配線基板Cbを接続することにより、配線基板Cbと共に表示制御回路およびタッチ検出回路を実装する。以上のようにして、有機EL表示装置1が製造される。
【0112】
TFT層20を形成する工程では、第1樹脂層38を形成するときに、第3導電層36が形成された基板上に、例えば、スピンコート法などの公知の塗布法により、感光性樹脂を塗布する。次いで、その感光性樹脂材料の塗布膜に対し、プリベーク、露光、現像およびポストベークを行って、当該塗布膜をパターニングすることにより、第1平坦化膜38pfおよび第1壁層38wlを形成する。
【0113】
その後、発光素子層60を形成する工程では、第2樹脂層64を形成するときに、第4導電層62が形成された基板上に、例えば、スピンコート法などの公知の塗布法により、感光性樹脂を塗布する。次いで、その感光性樹脂材料の塗布膜に対し、プリベーク、露光、現像およびポストベークを行って、当該塗布膜をパターニングすることにより、エッジカバー64ecおよび第2壁層64wlを形成する。
【0114】
このとき、感光性樹脂材料の塗布膜に対する露光に、グレートーンマスクやハーフトーンマスクを用いることで、スペーサ壁Wsを構成する第2壁層64wlの表面高さに高低差をつけて、当該第2壁層64wlに凸状部64cpを形成すると共に、エッジカバー64ecの表面高さに高低差をつけて、当該エッジカバー64ecにフォトスペーサ64psを形成すればよい。そのようにして、第1堰き止め壁Waおよび第2堰き止め壁Wbを構成するのと併せて、スペーサ壁Wsを構成する。
【0115】
TFT層20を形成する工程では、有機EL層66をなす機能層(正孔注入層66hi、正孔輸送層66ht、発光層66le、電子輸送層66etおよび電子注入層66eiのいずれか)や共通電極68ceを形成するのに、成膜材料を蒸発源にて加熱することで昇華または蒸発させて基板上に薄膜を成膜する真空蒸着法が利用される。この真空蒸着法では、例えばFMMと呼ばれる成膜用マスクMKが用いられる。
【0116】
成膜用マスクMKは、真空蒸着法による成膜処理を実施する蒸着装置内に配置され、磁力により成膜対象の基板側に引き寄せた状態で使用される。そのため、図14に示すように、有機EL層66をなす機能層や共通電極68ceを形成するときには、成膜用マスクMKがスペーサ壁Wsの凸状部64cpと比較的強く接触する。このとき、第1堰き止め壁Waおよび第2堰き止め壁Wbの頂部は、成膜用マスクMKと接触しない。そうした成膜用マスクMKのセット状態で成膜対象とする基板に真空蒸着法による成膜処理が実施される。
【0117】
上述した成膜用マスクMKへの基板の接触状態によると、凸状部64cpの頂部が摩耗し、当該頂部に凹凸が形成されたり、スペーサ壁Wsおよびその周辺に異物が生じたりするおそれがある。しかし、第1堰き止め壁Waおよび第2堰き止め壁Wbの頂部に凹凸が形成されたり、それら両壁Wa,Wbおよびそれらの周辺に異物が生じたりする事態は回避される。そして、凸状部64cpに凹凸が形成されたりスペーサ壁Wsおよびその周辺に異物が生じたりしても、スペーサ壁Wsおよびその周辺は、有機封止層84をなす有機樹脂材料の塗布領域外に距離が空くので、封止膜80によりそれら凹凸や異物を覆えずカバレッジ不良が生じても、水分が表示領域DAに浸入するリスクを低減できる。
【0118】
また、スペーサ壁Wsが設けられると、タッチパネルTPを形成する工程において、第6導電層90および第7導電層110を形成するときに、第2引き出し配線L2(上層引き出し配線90hl、下層引き出し配線110hl)の壁体WL上での断線が抑制される。このことについて、以下に、第6導電層90を形成する工程を例に挙げて説明する。
【0119】
第6導電層90を形成する工程では、まず、封止膜80が形成された基板上に、例えばスパッタリング法により、インジウムスズ酸化物(ITO)などからなる透明導電膜200を成膜する。次に、図15および図16に示すように、透明導電膜200が成膜された基板上に、例えばスピンコート法やスリットコート法などの周知の塗布法によりレジスト202を塗布する。続いて、そのレジスト202の塗布膜に対して、プリベーク、露光、現像およびポストベークを行うことにより、図17に示すようにレジスト202をパターニングする。その後、図18に示すように、レジスト202をマスクとして透明導電膜200をエッチングすることによりパターニングし、第1検出電極90deおよび第1連結配線90clと共に下層引き出し配線90hl(第2引き出し配線L2)を形成する。
【0120】
このとき、図28に示すように、スペーサ壁Wsが設けられていないと、有機封止層84をなす有機樹脂材料が額縁領域FAの外側への広がるのを堰き止めるべく、第2堰き止め壁Wbを比較的高く形成する必要がある。第2堰き止め壁Wbが高いほど、レジスト202が第2堰き止め壁Wbの頂部から両側に流れて、第2堰き止め壁Wbの頂部を好適に覆えない状態となり易い。そうなると、第2引き出し配線L2のパターニング時に、透明導電膜200が第2堰き止め壁Wb上の第2引き出し配線L2を形成する部分でもエッチングされてしまう。その結果、図29に示すように、第2引き出し配線L2が欠損し、第2引き出し配線L2に断線を生じる。
【0121】
これに対して、本例の有機EL表示装置1では、第1堰き止め壁Waおよび第2堰き止め壁Wbに加えてスペーサ壁Wsが設けられるので、有機封止層84をなす有機樹脂材料が額縁領域FAの外側へ広がるのを堰き止めるための壁体WLが増える。これによれば、有機封止層84をなす有機樹脂材料が第2堰き止め壁Wbまでで殆ど堰き止められるように、第1堰き止め壁Waおよび第2堰き止め壁Wbを設計することで、スペーサ壁Wsの高さを凸状部64cpが設けられない部分で比較的低くできる。
【0122】
そして、本例の有機EL表示装置1では、第2引き出し配線L2を凸状部64cpが設けられない比較的低い部分でスペーサ壁Wsに跨がるように形成するので、レジスト202が第2引き出し配線L2を形成する部分でスペーサ壁Wsの頂部から両側に流れるのを低減できる。これにより、スペーサ壁Ws上の第2引き出し配線L2を形成する部分においても、レジスト202がスペーサ壁Wsを好適に覆った状態に設けられ、透明導電膜200がエッチングされるのを抑制できる。したがって、スペーサ壁Ws上での第2引き出し配線L2の断線を抑制できる。
【0123】
-実施形態1の変形例1-
図19に示すように、スペーサ壁Wsのうち凸状部64cpから外れた部分の層間絶縁膜35の表面からの高さh32は、第2堰き止め壁Wbの層間絶縁膜35の表面からの高さh2よりも低くてもよい。本例では、スペーサ壁Wsを構成する第1壁層38wlの厚さと、第2堰き止め壁Wbを構成する第1壁層38wlの厚さとは、互いに同等である。そして、スペーサ壁Wsを構成する第2壁層64wlのうち凸状部64cpから外れた部分の厚さは、第2堰き止め壁Wbを構成する第2壁層64wlの厚さよりも薄く、例えば2μm未満である。
【0124】
上述したスペーサ壁Wsのうち凸状部64cpから外れた部分と第2堰き止め壁Wbとの高さ関係は、第1壁層38wlの厚さで調整されてもよい。例えば、スペーサ壁Wsを構成する第2壁層64wlのうち凸状部64cpから外れた部分の厚さと、第2堰き止め壁Wbを構成する第2壁層64wlの厚さとは、互いに同等であってもよい。そして、スペーサ壁Wsを構成する第1壁層38wlのうち少なくとも凸状部64cpから外れた部分の厚さは、第2堰き止め壁Wbを構成する第1壁層38wlの厚さよりも薄くてもよい。
【0125】
本例の有機EL表示装置1によれば、凸状部64cpに凹凸が形成されたりスペーサ壁Wsおよびその周辺に異物が生じたりすることに起因して水分が表示領域DAに浸入するリスクを低減しつつ、スペーサ壁Ws上での第2引き出し配線L2の断線をよりいっそう好適に抑制できる。
【0126】
-実施形態1の変形例2-
図20および図21に示すように、有機EL表示装置1には、壁体WLとして、堰き止め壁Wdおよびスペーサ壁Wsのみが設けられてもよい。すなわち、本例の有機EL表示装置1は、上記実施形態1の有機EL表示装置1において、第1堰き止め壁Waまたは第2堰き止め壁Wbが設けられない構成に相当する。堰き止め壁Wdの高さh4は、有機封止層84をなす有機樹脂材料が当該堰き止め壁Wdで殆ど堰き止められるように設計される。
【0127】
スペーサ壁Wsのうち凸状部64cpが設けられた部分の高さh31は、堰き止め壁Wdの高さh4よりも高い。スペーサ壁Wsのうち凸状部64cpから外れた部分の高さh32は、堰き止め壁Wdの高さh4と同等である。上記実施形態1の変形例1と同様に、スペーサ壁Wsのうち凸状部64cpから外れた部分の高さh32は、堰き止め壁Wdの層間絶縁膜35の表面からの高さh4よりも低くてもよい。
【0128】
《実施形態2》
この実施形態2の有機EL表示装置1では、TFT層20をなす層構成および第1堰き止め壁Wa、第2堰き止め壁Wbおよびスペーサ壁Wsの構成が上記実施形態1と異なる。なお、以降の各実施形態では、上記実施形態1と構成の異なる部分を重点的に説明し、同一の構成箇所については、その詳細な説明を省略する。
【0129】
〈TFT層の層構成〉
この実施形態2の有機EL表示装置1において、図22に示すように、TFT層20は、ベースコート膜22、半導体層24、ゲート絶縁膜26、第1導電層28、第1層間絶縁膜30、第2導電層32、第2層間絶縁膜34、第3導電層36および第1樹脂層38に加えて、第1樹脂層38と発光素子層60(第4導電層62)との間に設けられた第8導電層40および第3樹脂層42を備える。
【0130】
第8導電層40は、第1樹脂層38上に設けられる。第8導電層40は、第3電源配線40plと、複数の中継配線40rlとを含む。これら第3電源配線40plおよび中継配線40rlは、同一層に同一材料によって形成される。第8導電層40に含まれる各種の配線は、例えば、第1導電層28、第2導電層32および第3導電層36と同様な上述した金属材料からなり、そうした金属材料からなる単層膜または積層膜によって構成される。
【0131】
図23に示すように、第3電源配線40plは、第1方向Xおよび第2方向Yに格子状をなすように延びる。第3電源配線40plは、第1平坦化膜38pfに形成されたコンタクトホール(不図示)を介して第2電源配線36plに接続されるか、または第1平坦化膜38pfの外側で第1額縁配線36faに接続される。第3電源配線40plは、第1電源配線32plおよび第2電源配線36plと共に電源配線Plを構成する。
【0132】
複数の中継配線40rlは、表示領域DAにおいて、第1平坦化膜38pf上に設けられる。中継配線40rlは、サブ画素Spごとに島状に形成される。各中継配線40rlは、所定のTFT50のドレイン電極36deと、有機EL素子70の電極との接続を中継する。具体的には、各中継配線40rlは、第1平坦化膜38pfに形成されたコンタクトホール38hを介して第3TFT50Cのドレイン電極36deに接続される。そして、各中継配線40rlには、第2平坦化膜42pfに形成されたコンタクトホール42hを介して画素電極62peが接続される。
【0133】
第3樹脂層42は、第8導電層40上に設けられる。図23および図24に示すように、第3樹脂層42は、第2平坦化膜42pfと、第3壁層42wlとを含む。これら第2平坦化膜42pfおよび第3壁層42wlは、同一層に同一材料によって形成される。第2平坦化膜42pfは、表示領域DAにおいて、第8導電層40に含まれる各種の配線を覆う。第2平坦化膜42pfは、第1平坦化膜38pfと共にTFT層20の表面を平坦化する。第3壁層42wlは、下側壁層の一例である。
【0134】
第3壁層42wlは、上記実施形態1の有機EL表示装置1における第1壁層38wlに代えて、第2平坦化膜42pfの外周側に3つ設けられる。すなわち、本例の有機EL表示装置1では、第1壁層38wlが設けられない。3つの第3壁層42wlは、それぞれ上記実施形態1の第1壁層38wlと同様な形状に形成され、互いに同等な厚さで第1堰き止め壁Wa、第2堰き止め壁Wbおよびスペーサ壁Wsの下層部分を構成する。
【0135】
〈第1堰き止め壁、第2堰き止め壁、スペーサ壁〉
図24に示すように、第1堰き止め壁Wa、第2堰き止め壁Wbおよびスペーサ壁Wsはいずれも、第3壁層42wlと、第2壁層64wlとを有する。3つの第2壁層64wlは、それぞれ第3壁層42wl上に設けられ、第1堰き止め壁Wa、第2堰き止め壁Wbおよびスペーサ壁Wsの上層部分を構成する。
【0136】
そして、上記実施形態1と同様に、複数の凸状部64cpが第2壁層64wlの上部に形成される。また、各第2引き出し配線L2が凸状部64cpを外れた部分でスペーサ壁Wsを跨ぐように設けられる。なお、第1堰き止め壁Waおよび第2堰き止め壁Wbはそれぞれ、第3壁層42wlのみまたは第2壁層64wlのみによって構成されてもよい。
【0137】
-実施形態2の変形例-
図25に示すように、上記実施形態2の有機EL表示装置1では、第3壁層42wlが、下側壁層38wlに加えて設けられてもよい。本例の有機EL表示装置1において、第3壁層42wlは、各第1壁層38wl上に設けられ、第1壁層38wlと第2壁層64wlとの間に介在する。この場合、第1壁層38wlが下側壁層に相当し、第2壁層64wlが上側壁層に相当する。
【0138】
第1堰き止め壁Wa、第2堰き止め壁Wbおよびスペーサ壁Wsはいずれも、第3導電層36上に順に設けられた、第1壁層38wl、第3壁層42wlおよび第2壁層64wlを有する。なお、第1堰き止め壁Waおよび第2堰き止め壁Wbはそれぞれ、第1壁層38wl、第3壁層42wlおよび第2壁層64wlのいずれか1層または2層の組合せによって構成されてもよい。
【0139】
また、スペーサ壁Wsは、第1壁層38wlおよび第3壁層42wlを有し、第2壁層64wlを含まなくてもよい。この場合、第1壁層38wlが下側壁層に相当し、第3壁層42wlが上側壁層に相当する。凸状部64cpは、第3壁層42wlの上部に形成される。
【0140】
《実施形態3》
この実施形態3の有機EL表示装置1では、スペーサ壁Wsの構成が上記実施形態1と異なる。図26に示すように、この実施形態3の有機EL表示装置1において、スペーサ壁Wsは、額縁領域FAのうち端子部T側の辺を構成する部分のみに設けられる。図27に示すように、第2堰き止め壁Wbは、相対的に低い低壁部分Lwと、相対的に高い高壁部分Hwとを有する。
【0141】
低壁部分Lwは、額縁領域FAのうち端子部T側の辺を構成する部分に設けられる。高壁部分Hwは、端子部T側の辺以外の3辺を構成する部分に設けられる。低壁部分Lwの高さh21は、第1堰き止め壁Waの高さh1と同等である。高壁部分Hwの高さh22は、スペーサ壁Wsの高さh3(厳密にはスペーサ壁Wsの凸状部64cpでの高さh31)と同等である。第2堰き止め壁Wbは高壁部分Hwで、有機EL層66をなす機能層や共通電極68ceの形成時に用いられる成膜用マスクMKに、スペーサ壁Wsと共に接触する。
【0142】
《その他の実施形態》
上記実施形態1~3では、凸状部64cpがスポット的な突起物であるとしたが、これに限らない。凸状部64cpは、第2引き出し配線L2が凸状部64cpを外れた部分で跨がるように設けられるのであれば、当該スペーサ壁Wsに沿って延びる線状の突起物であってもよい。スペーサ壁Wsは、第1堰き止め壁Waおよび第2堰き止め壁Wb、または堰き止め壁Wdのうち少なくとも第2引き出し配線L2が交差する部分に沿って当該堰き止め壁の外周を延びていればよい。
【0143】
上記実施形態1~3では、有機EL層66が、各サブ画素Spに個別に設けられるとしたが、これに限らない。有機EL層66は、複数のサブ画素Spにおいて一続きとして共通に設けられてもよい。この場合、有機EL表示装置1は、カラーフィルタを備えるなどして、各サブ画素Spの色調表現を行ってもよい。
【0144】
上記実施形態1~3では、各画素Pxが3色のサブ画素Spr,Spg,Spbによって構成されるとしたが、これに限らない。各画素Pxを構成するサブ画素Spは3色に限らず、4色以上であってもよい。また、各画素Pxを構成する3色のサブ画素Spr,Spg,Spbは、ストライプ配列で設けられるとしたが、これに限らない。複数のサブ画素Spの配列は、ペンタイル配列など、他の配列であってもよい。
【0145】
上記実施形態1~3では、第1TFT50A、第2TFT50Bおよび第3TFT50Cはいずれも、トップゲート型に構成されるとしたが、これに限らない。これら第1TFT50A、第2TFT50Bおよび第3TFT50Cは、ボトムゲート型に構成されてもよい。また、サブ画素Spに設けられるTFT50の数は、2つであってもよく、4つ以上であってもよい。
【0146】
上記実施形態1~3では、画素電極62peが陽極であり、共通電極68ceが陰極であるとしたが、これに限らない。画素電極62peが陰極であり、共通電極68ceが陽極であってもよい。この場合、有機EL層66は、反転した積層構造とされる。
【0147】
上記実施形態1~3では、有機EL層66は、正孔注入層66hi、正孔輸送層66ht、発光層66le、電子輸送層66etおよび電子注入層66eiからなる5層構造であるとしたが、これに限らない。有機EL層66は、正孔注入層兼正孔輸送層、発光層および電子輸送層兼電子注入層からなる3層構造であってもよく、任意の積層構造を採用することが可能である。
【0148】
上記実施形態1~3では、表示装置として有機EL表示装置1を例示したが、これに限らない。本開示の技術は、例えば、電流によって駆動される複数の発光素子を備える表示装置に適用することが可能である。当該表示装置としては、量子ドット含有層を用いた発光素子であるQLED(Quantum-dot Light Emitting Diode)を備える表示装置が挙げられる。
【0149】
以上のように、本開示の技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、本開示の技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。上記実施形態について、本開示の技術の趣旨を逸脱しない範囲においてさらに色々な変形が可能なこと、またそうした変形も本開示の技術の範囲に属することは、当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0150】
DA 表示領域
FA 額縁領域
h1 第1堰き止め壁の高さ
h2 第2堰き止め壁の高さ
h3 スペーサ壁の高さ
h31 スペーサ壁のうち凸状部が設けられた部分の高さ
h32 スペーサ壁のうち凸状部から外れた部分の高さ
h4 堰き止め壁の高さ
L2 第2引き出し配線(引き出し配線、配線)
TP タッチパネル
TA タッチ領域
Wa 第1堰き止め壁(堰き止め壁、壁体)
Wb 第2堰き止め壁(堰き止め壁、壁体)
Wd 堰き止め壁(壁体)
Ws スペーサ壁(壁体)
1 有機EL表示装置(表示装置)
10 基板層
20 TFT層(薄膜トランジスタ層)
38pf 第1平坦化膜(平坦化膜)
38wl 第1壁層(下側壁層)
40 第8導電層(導電層)
42pf 第2平坦化膜
42wl 第3壁層(下側壁層、上側壁層)
50 TFT(薄膜トランジスタ)
60 発光素子層
62pe 画素電極
64cp 凸状部
64ec エッジカバー
64wl 第2壁層(上側壁層)
70 有機EL素子(発光素子)
80 封止膜
84 有機封止層
90de 第1検出電極(検出電極)
110de 第2検出電極(検出電極)
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