(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】負荷時タップ切換器のタップ選択器
(51)【国際特許分類】
H01F 29/02 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
H01F29/02 B
(21)【出願番号】P 2023529192
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2021023316
(87)【国際公開番号】W WO2022269658
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】江口 直紀
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-329870(JP,A)
【文献】特開昭59-195405(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1534189(CN,A)
【文献】特開昭62-263620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動接点を保持する保持部材と、
前記保持部材に取り付けられたケースと、
前記ケースに取り付けられたシャフトと、
前記シャフトの周りに回転可能なローラと、
前記ローラをガイドするガイド部を有する底板と、を備え
、
前記ローラは、前記シャフトと直交する方向から見てテーパ形状を有するテーパ部を備え、
前記テーパ部は、前記ガイド部と一点で接触する
負荷時タップ切換器のタップ選択器。
【請求項2】
前記ローラは、前記シャフトの軸方向に対向して一対設けられ、
前記一対のローラの間に設けられ、前記一対のローラを前記ガイド部に付勢する付勢部材を更に備える
請求項
1に記載の負荷時タップ切換器のタップ選択器。
【請求項3】
前記ケースは、板金で形成される
請求項1
又は2に記載の負荷時タップ切換器のタップ選択器。
【請求項4】
前記ケースは、ボルトが螺合可能な雌ねじ部を有し、
前記保持部材は、ボルトを挿通可能なボルト孔を有する
請求項1から
3の何れか一項に記載の負荷時タップ切換器のタップ選択器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、負荷時タップ切換器のタップ選択器に関する。
【背景技術】
【0002】
負荷時タップ切換器は、変圧器運転中(負荷時)にタップを切り換える装置である。一般に、負荷時タップ切換器は、タップ選択器と、切換開閉器と、を備える。タップ選択器は、変圧器タップ巻線において運転するタップを選択する。切換開閉器は、選択されたタップに回路を切り換える。タップ選択器は、固定接点に向けて移動可能な可動接点を備える。運転するタップの選択時には、固定接点に可動接点を接続する。タップ選択器は、タップ選択器の底部を支持する底板を備える。底板は、可動接点の移動機構をガイドするガイド部を有する。移動機構は、ガイド部に接触する球体を備える。ガイド部に対する球体の接触寸法が合わないと、押しネジ等で球体の接触寸法を調整する。このため、タップ選択器の調整工程の削減が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、タップ選択器の調整工程を削減できる負荷時タップ切換器のタップ選択器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の負荷時タップ切換器のタップ選択器は、保持部材と、ケースと、シャフトと、ローラと、底板と、を持つ。保持部材は、可動接点を保持する。ケースは、前記保持部材に取り付けられる。シャフトは、前記ケースに取り付けられる。ローラは、前記シャフトの周りに回転可能である。底板は、前記ローラをガイドするガイド部を有する。前記ローラは、前記シャフトと直交する方向から見てテーパ形状を有するテーパ部を備える。前記テーパ部は、前記ガイド部と一点で接触する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図5】実施形態のタップ選択器の一部を示す斜視図。
【
図7】実施形態の可動接点の移動機構の断面斜視図。
【
図11】実施形態のローラのテーパ部の接触状態の説明図。
【
図12】実施形態のローラのテーパ部の接触状態の他の説明図。
【
図13】比較例の可動接点の移動機構の断面斜視図。
【
図14】比較例の可動接点の移動機構の接続線の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の負荷時タップ切換器のタップ選択器を、図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、実施形態の負荷時タップ切換器1の斜視図である。
負荷時タップ切換器1は、運転状態において変圧器の巻数比(変圧比)を変えることで電圧を調整する装置である。負荷時タップ切換器1は、タップ選択器2と、駆動機構3と、減速機構4と、切換開閉器5と、油槽6と、を備える。
【0009】
タップ選択器2は、変圧器タップ巻線において運転するタップを選択する。
駆動機構3は、電動操作装置(不図示)から駆動軸7を介して伝達される駆動力により、タップ選択器2を駆動する。
減速機構4は、電動操作装置(不図示)から駆動軸7に伝達される回転動作の回転数を減速する。
【0010】
切換開閉器5は、選択されたタップに回路を切り換える。切換開閉器5は、油槽6の内部に配置される。切換開閉器5は、油槽6の内部の絶縁油に浸漬される。切換開閉器5は、複数のタップ端子(不図示)を備える。複数のタップ端子は、タップ選択器2に対して配線8により接続される。
【0011】
実施形態のタップ選択器2について詳しく説明する。
図2は、実施形態のタップ選択器2の斜視図である。
図2に示すように、タップ選択器2は、上板10と、底板11と、支柱12と、を備える。
上板10及び底板11は、それぞれ水平方向に延びている。上板10は、タップ選択器2の上部を支持している。底板11は、タップ選択器2の下部(底部)を支持している。
支柱12は、上下方向(鉛直方向)に延びている。支柱12は、上板10と底板11とを連結している。支柱12は、複数設けられる。
【0012】
タップ選択器2は、接点を切り換えるための複数の切換器20,30(切換機構)を備える。複数の切換器20,30は、主切換器20と、ゼネバドライバ16を介して主切換器20に連結された副切換器30と、を含む。複数の支柱12には、主切換器20を支持する主支柱13と、副切換器30を支持する副支柱14とが含まれる。
【0013】
ゼネバドライバ16は、上板10と副切換器30との間に設けられる。ゼネバドライバ16は、駆動機構3の回転動作により回転する。上板10と主切換器20との間には、ゼネバドライバ16の回転に連動して回転するゼネバギア17が設けられる。ゼネバギア17は、主切換器20の中心軸C(柱体19の中心軸C)と同心に配置される。
【0014】
図3は、実施形態のタップ選択器の他の斜視図である。
図3においては、上板10及びゼネバギア17等の図示を省略している。
図3に示すように、タップ選択器2は、集電リング18と、集電リング18を支持する柱体19と、を備える。
集電リング18は、上方から見て円環状に形成される。集電リング18は、上下方向に間隔をあけて複数(例えば本実施形態では6つ)設けられる。
柱体19は、上下方向に延びている。柱体19は、円筒状に形成される。柱体19の外周面には、6つの集電リング18が上下方向に実質的に同じ間隔をあけて連結される。
【0015】
主切換器20は、主固定ユニット21(固定部)と、主固定ユニット21に対して移動可能な主可動ユニット22(可動部)と、を備える。
主固定ユニット21は、集電リング18と同じ数(例えば本実施形態では6つ)設けられる。主固定ユニット21は、U相、V相及びW相の三相に対応した数(例えば本実施形態では各相につき2つずつ計6つ)設けられる。複数の主固定ユニット21は、上下方向に実質的に同じ間隔をあけて主支柱13に固定される。
【0016】
主固定ユニット21は、固定板40と、固定接点41と、を備える。
固定板40は、上方から見て環状に形成される。例えば、固定板40は、絶縁性を有する樹脂等の絶縁体で形成される。例えば、固定板40は、金型による樹脂部品で作製する。
【0017】
固定板40には、固定板40の外周から径方向外方に張り出す突起47が設けられる。突起47は、固定板40の外周に沿って間隔をあけて複数(例えば本実施形態では4つ)設けられる。4つの突起47は、固定板40の周方向に実質的に同じ間隔をあけて配置される。
【0018】
主支柱13には、固定板40の突起47を差し込むための差込孔13aが設けられる。差込孔13aは、突起47を差込可能に開口している。差込孔13aは、上下方向に実質的に同じ間隔をあけて複数(例えば本実施形態では6つ)配置される。主固定ユニット21は、固定板40の突起47を主支柱13の差込孔13aに差し込むことにより、主支柱13に取り付けられる。
【0019】
固定接点41は、固定板40の周方向に間隔をあけて複数(例えば本実施形態では6つ)設けられる。固定板40の周方向に隣り合う複数の固定接点41同士は、それぞれ同じ高さ(上下方向の高さ)を有する。
【0020】
主可動ユニット22は、主固定ユニット21と同じ数(例えば本実施形態では6つ)設けられる。主可動ユニット22は、集電リング18の表面と主固定ユニット21の表面とを摺動することにより、接点の開極(非接続)又は閉極(接続)を行う。
【0021】
主可動ユニット22は、主固定ユニット21の周方向(
図3の矢印V1方向)に移動可能である。主可動ユニット22は、可動板60と、内側接点61と、外側接点62(可動接点)と、を備える。例えば、可動板60、内側接点61及び外側接点62は、同一の部材(例えば銅等の金属)で一体に形成される。
【0022】
可動板60は、集電リング18と固定板40とに跨るように、集電リング18の径方向に延びている。可動板60の内側部は、上下方向から見て集電リング18と重なっている。可動板60の外側部は、上下方向から見て固定板40と重なっている。
【0023】
内側接点61は、可動板60の内側部に設けられる。例えば、内側接点61は、可動板60の内側部から集電リング18に向けて湾曲状に張り出している。内側接点61は、集電リング18の軸方向外面に接している。
【0024】
外側接点62は、可動板60の外側部に設けられる。例えば、外側接点62は、可動板60の外側部から固定板40に向けて湾曲状に張り出している。外側接点62は、固定接点41に接続可能とされる。
【0025】
副切換器30は、副固定ユニット31と、副固定ユニット31に対して移動可能な副可動ユニット32と、を備える。
副固定ユニット31は、U相、V相及びW相の三相に対応した数(例えば本実施形態では各相につき1つずつ計3つ)設けられる。複数の副固定ユニット31は、上下方向に実質的に同じ間隔をあけて副支柱14に固定される。
副可動ユニット32は、副固定ユニット31と同じ数(例えば本実施形態では3つ)設けられる。副切換器30は、主切換器20と同様の構成を有するため詳細説明は省略する。
【0026】
主切換器20は、主可動ユニット22を主固定ユニット21の軸方向(
図3の矢印V2方向)に移動可能に保持する保持部材90を備える。保持部材90は、上下方向に延びている。保持部材90の上端は、ゼネバギア17(
図2参照)の下面に固定される。これにより、保持部材90は、ゼネバギア17と一体回転する。主可動ユニット22は、保持部材90を介してゼネバギア17と一体回転する。
【0027】
保持部材90は、主可動ユニット22を挟んで一対設けられる。一対の保持部材90は、集電リング18の周方向において主可動ユニット22の両側に配置される。主可動ユニット22は、一対の保持部材90に保持されることにより上下方向に移動可能とされる。
【0028】
図4は、実施形態のタップ選択器2の側面図である。
図4に示すように、タップ選択器2は、保持部材90の下部に取り付けられた移動機構100を備える。移動機構100は、ボルト等の締結部材により一対の保持部材90に取り付けられる。移動機構100は、可動接点を有する主可動ユニット22と共に、保持部材90を介してゼネバギア17と一体回転する。保持部材90の下端と底板11の上面との間には、隙間が設けられる。
【0029】
図5は、実施形態のタップ選択器2の一部を示す斜視図である。
図5に示すように、底板11は、移動機構100をガイドするガイド溝110を有する。ガイド溝110は、上方から見て円環状に形成される。ガイド溝110は、主切換器20の中心軸C(柱体19の中心軸C)と同心の環状を有する。移動機構100は、保持部材90を介してガイド溝110に沿う方向(
図5の矢印V3方向)に移動可能である。なお、
図5の矢印V3方向は、
図3の矢印V1方向と同じ方向である。
【0030】
以下、主切換器20の中心軸Cに沿う方向を「主切換器20の軸方向」、主切換器20の軸方向と直交する方向を「主切換器20の径方向」、中心軸Cの周りの方向を「主切換器20の周方向」とする。本実施形態では、主切換器20の軸方向は、水平方向に対して直交する方向(鉛直方向)である。
【0031】
ガイド溝110は、底板11の上面に設けられる。底板11は、板金で形成される。底板11は、ガイド溝110を画定する内側板111及び外側板112を備える。
内側板111は、主切換器20の軸方向から見て、主切換器20の中心軸C(柱体19の中心軸C)と同心の円形状を有する。内側板111は、ガイド溝110に臨む外周面113を有する。内側板111の外周面113は、ローラ103をガイドするガイド部として機能する。
【0032】
外側板112は、主切換器20の径方向において内側板111の外側に設けられる。外側板112は、主切換器20の軸方向から見て、主切換器20の中心軸C(柱体19の中心軸C)と同心の円形状の貫通孔115を有する。貫通孔115の内径は、内側板111の外径よりも大きい。外側板112は、ガイド溝110に臨む内周面114を有する。外側板112の内周面114は、ローラ103をガイドするガイド部として機能する。
【0033】
内側板111及び外側板112は、連結板116により互いに連結される。連結板116は、ガイド溝110を介して内側板111と外側板112とに跨るように、主切換器20の径方向に延びている。例えば、連結板116は、内側板111の下面外周と外側板112の下面内周とに溶接により結合される。
【0034】
図6は、実施形態の可動接点の移動機構100の斜視図である。
図6に示すように、移動機構100は、ケース101と、シャフト102と、ローラ103と、を備える。
ケース101は、保持部材90の下部に取り付けられる。ケース101は、一対の保持部材90の間に設けられる。ケース101は、板金で形成される。例えば、ケース101は、薄板の板金をレーザーカットした後に曲げ加工することで作製される。
【0035】
ケース101は、上壁部120と、保持壁部121と、軸壁部122と、を備える。
上壁部120は、ローラ103の上方に配置される。上壁部120は、一対の保持部材90の間に設けられる。上壁部120は、水平方向に延びている。
【0036】
保持壁部121は、上壁部120の保持部材90側の端部から下方に延びている。保持壁部121の下端は、保持部材90の下端よりも上方に配置される。保持壁部121は、一対の保持部材90に対応して一対設けられる。保持壁部121は、一対の保持部材90が対向する方向から見て、保持部材90と重なっている。保持壁部121は、一対の保持部材90が対向する面に沿って延びている。
【0037】
図7は、実施形態の可動接点の移動機構100の断面斜視図である。
図7は、シャフト102の軸線Sを含む鉛直面で移動機構100を切断した断面を含む斜視図である。
図7に示すように、保持壁部121は、ボルト123が螺合可能な雌ねじ部124を有する。例えば、雌ねじ部124は、保持壁部121に設けられたネジ孔である。なお、雌ねじ部124は、ネジ孔に限定されない。例えば、雌ねじ部124は、保持壁部121に溶接等で取り付けられたナットでもよい。雌ねじ部124は、複数(例えば本実施形態では1つの保持壁部121に対して2つ)設けられる。
【0038】
図6に示すように、保持部材90は、ボルト123を挿通可能なボルト孔91を有する。ボルト孔91は、雌ねじ部124と同じ数(例えば本実施形態では1つの保持部材90に対して2つ)設けられる。例えば、ケース101が一対の保持部材90の間に配置された状態で、ボルト123を各保持部材90の各ボルト孔91に挿通し各保持壁部121の各雌ねじ部124に螺合する。これにより、ケース101を保持部材90に取り付けることができる。
【0039】
図7に示すように、軸壁部122は、シャフト102の軸方向における上壁部120の端部から下方に延びている。軸壁部122の下端は、底板11の上面よりも上方に配置される。軸壁部122は、シャフト102の軸方向の両端に対応して一対設けられる。軸壁部122は、シャフト102の軸方向から見て、ローラ103と重なっている。一対の軸壁部122の一方は、上方から見て内側板111と重なっている。一対の軸壁部122の他方は、上方から見て外側板112と重なっている。
【0040】
シャフト102は、ケース101に取り付けられる。シャフト102は、ケース101の上壁部120と底板11のガイド溝110との間に配置される。シャフト102は、主切換器20の径方向に沿って延びている。以下、シャフト102が延びる方向を「シャフト102の軸方向」とする。一対の軸壁部122は、シャフト102の軸方向に対向している。シャフト102は、一対の軸壁部122に跨って延びている。シャフト102は、一対の軸壁部122に取り付けられる。
【0041】
ローラ103は、シャフト102の周りに回転可能である。ローラ103は、金属で形成される。ローラ103は、一対の軸壁部122の間に配置される。ローラ103は、ベアリング(不図示)を介してシャフト102に取り付けられていてもよい。
【0042】
ローラ103は、シャフト102の軸方向に対向して一対設けられる。一対のローラ103は、シャフト102の軸方向に互いに離間している。一対のローラ103は、互いに同じ形状を有する。一対のローラ103の一方は、一対のローラ103の他方をシャフト102の軸方向に反転させた形状を有する。以下、一対のローラ103の一方について詳しく説明する。一対のローラ103の他方は、一対のローラ103の一方と同様の構成を有するため詳細説明は省略する。
【0043】
図8は、実施形態のローラ103の斜視図である。
図9は、実施形態のローラ103の側面図である。
図10は、実施形態のローラ103の断面図である。
図8から
図10は、一対のローラ103の一方(以下単に「ローラ103」ともいう。)を示す。
図9は、ローラ103をシャフト102と直交する方向から見た図である。
図10は、ローラ103の回転中心(シャフト102の軸線S)を含む面でローラ103を切断した断面図である。
【0044】
図8に示すように、ローラ103は、ハット状に形成される。ローラ103は、シャフト102の軸方向に開口する貫通孔130を有する。ローラ103は、筒部131と、鍔部132と、を備える。
筒部131は、シャフト102の軸線Sに沿う筒状に形成される。筒部131において鍔部132寄りの部分は、シャフト102の軸方向において鍔部132に向かうに従って径方向外側に位置するように傾斜している。
【0045】
図9に示すように、ローラ103は、シャフト102と直交する方向から見てテーパ形状を有するテーパ部133を備える。テーパ部133は、鍔部132において筒部131寄りの部分に設けられる。テーパ部133は、シャフト102の軸方向において筒部131に向かうに従って径方向内側に位置するように傾斜している。
【0046】
図10に示すように、ローラ103は、シャフト102の軸方向に窪む凹部134を有する。凹部134は、鍔部132の径方向中央部に設けられる。凹部134の径方向中央部は、貫通孔130に連通している。凹部134は、付勢部材104(
図7参照)の端部が当接する当接面135を有する。当接面135は、シャフト102の軸方向から見て、付勢部材104と重なっている。当接面135、シャフト102の軸方向から見て円環状に形成される。
【0047】
図7に示すように、移動機構100は、一対のローラ103をシャフト102の軸方向に付勢する付勢部材104を更に備える。例えば、付勢部材104は、圧縮コイルばねである。付勢部材104は、シャフト102と同軸の円筒状に形成される。付勢部材104のコイル内径は、シャフト102の直径よりも大きい。付勢部材104は、一対のローラ103の間に1つ設けられる。付勢部材104は、一対のローラ103のそれぞれをシャフト102の軸方向外側に向けて常時付勢している。
【0048】
図11は、実施形態のローラ103のテーパ部133の接触状態の説明図である。
図11は、シャフト102の軸線Sを含む鉛直面で移動機構100を切断した断面図である。
図11に示すように、ローラ103のテーパ部133は、底板11のガイド部113,114と一点(
図11に示す接触点P)で接触する。
一対のローラ103の一方は、付勢部材104の付勢力によって内側板111の外周面113に押し付けられる。一対のローラ103の一方のテーパ部133は、内側板111の外周面113と一点で接触する。
一対のローラ103の他方は、付勢部材104の付勢力によって外側板112の内周面114に押し付けられる。一対のローラ103の他方のテーパ部133は、外側板112の内周面114と一点で接触する。
【0049】
図12は、実施形態のローラ103のテーパ部133の接触状態の他の説明図である。
図12は、底板11のガイド部113,114に対する一対のローラ103のテーパ部133の接触状態を上方から見た図である。
図12においては、シャフト102及び付勢部材104等の図示を省略する。
図12に示すように、一対のローラ103の一方のテーパ部133は、内側板111の外周面113に向かって弧状に湾曲している。上方から見て、一対のローラ103の一方のテーパ部133の曲率は、内側板111の外周面113の曲率よりも大きい。一対のローラ103の一方のテーパ部133は、内側板111の外周面113と一点(
図12に示す接触点P)で接触する。例えば、一対のローラ103の一方のテーパ部133は、シャフト102の軸線S上で内側板111の外周面113と接触する。
【0050】
一対のローラ103の他方のテーパ部133は、外側板112の内周面114に向かって弧状に湾曲している。上方から見て、一対のローラ103の他方のテーパ部133の曲率は、外側板112の内周面114の曲率よりも大きい。一対のローラ103の他方のテーパ部133は、外側板112の内周面114と一点(
図12に示す接触点P)で接触する。例えば、一対のローラ103の他方のテーパ部133は、シャフト102の軸線S上で外側板112の内周面114と接触する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の負荷時タップ切換器1のタップ選択器2は、保持部材90と、ケース101と、シャフト102と、ローラ103と、底板11と、を持つ。保持部材90は、可動接点62を保持する。ケース101は、保持部材90に取り付けられる。シャフト102は、ケース101に取り付けられる。ローラ103は、シャフト102の周りに回転可能である。底板11は、ローラ103をガイドするガイド部113,114を有する。
この構成によれば、ローラ103がシャフト102の周りに回転可能であることで、ガイド部113,114に対するローラ103の接触状態は一定に維持される。このため、ローラ103の接触状態を調整する必要がない。したがって、タップ選択器2の調整工程を削減することができる。
【0052】
ローラ103は、シャフト102と直交する方向から見てテーパ形状を有するテーパ部133を備える。テーパ部133は、ガイド部113,114と一点Pで接触する。
この構成によれば、ローラ103がガイド部と面で接触する場合と比較して、ローラ103がガイドされる際の負荷を低減することができる。したがって、保持部材90をスムーズに移動させることができる。
【0053】
ローラ103は、シャフト102の軸方向に対向して一対設けられる。タップ選択器2は、一対のローラ103の間に設けられる付勢部材104を備える。付勢部材104は、一対のローラ103をガイド部113,114に付勢する。
この構成によれば、付勢部材104の付勢力により、ガイド部113,114に対して一対のローラ103が常に接触した状態となるため、保持部材90をより安定して移動させることができる。
【0054】
ケース101は、板金で形成される。
この構成によれば、特殊な機械加工は不要となるため、加工コストを低減できる。例えば、ケース101は、板金をカットした後に曲げ加工することで容易に作製することができる。
【0055】
ケース101は、ボルト123が螺合可能な雌ねじ部124を有する。保持部材90は、ボルト123を挿通可能なボルト孔91を有する。
この構成によれば、ボルト123を保持部材90のボルト孔91に挿通しケース101の雌ねじ部124に螺合することにより、ケース101を保持部材90に取り付けることができる。このため、特殊な固定部材又は専用の治具を必要としない。したがって、組立工数を低減することができる。
【0056】
一対のローラ103は、シャフト102の軸方向に対向して設けられる。一対のローラ103は、互いに同じ形状を有する。
この構成によれば、一対のローラ103が互いに異なる形状を有する場合と比較して、部品の種類を削減することができる。
【0057】
付勢部材104は、圧縮コイルばねである。付勢部材104は、シャフト102と同軸の円筒状に形成される。
この構成によれば、シャフト102の周囲の空間を利用して付勢部材104を配置することができるため、省スペース化を図ることができる。
【0058】
ここで、比較例の可動接点の移動機構200を説明する。
図13は、比較例の可動接点の移動機構200の断面斜視図である。
図13に示すように、比較例の可動接点の移動機構200は、ケース201に内蔵された球体202を備える。比較例のケース201には、寸法調整用の押しネジ205が設けられる。比較例の底板209は、球体202をガイドするガイド溝210を有する。ガイド溝210は、上方から見て円環状に形成される。移動機構200は、保持部材90を介してガイド溝210に沿う方向に移動可能である。比較例の底板209は、ガイド溝210に臨む凹面211を有する。凹面211は、断面視で球体202に沿う弧状に形成される。凹面211は、球体202をガイドするガイド部として機能する。比較例の場合、球体202は、ガイド部211と面で接触する。比較例の場合、ガイド部211に対する球体202の接触寸法が合わないと、押しネジ205等で球体202の接触寸法を調整する。例えば比較例では、押しネジ205を上下方向に移動させることにより、ガイド部211に対する球体202の接触寸法を調整する。
【0059】
比較例の場合、ガイド溝210への球体202の収まりが悪いと、球体202がガイド溝210から外れる可能性があり、品質が安定しない要因となる。一方、球体202がガイド溝210から外れることを抑制するために、凹面211に対して球体202を強く押しすぎると、移動機構200の動きが鈍くなる要因となる。このため、タップ選択器の調整工程の削減が求められる。特に、タップ選択器の底板と固定接点保持板との上下方向の間隔が非常に狭い場合(例えば数センチメートル程度の間隔しかない場合)、押しネジ205等で球体202の接触寸法を調整する作業が困難となる。例えばこのような場合、作業者は、何度も横から押しネジ205で球体202及びガイド溝210の寸法確認や寸法調整を行う必要がある。また、作業者は、可動接点の移動機構200の動作確認を行いながら球体202の接触寸法の調整を行う必要がある。このため、押しネジ205等で球体202の接触寸法を調整する作業は、かなりの時間を要することになる。
【0060】
図14は、比較例の可動接点の移動機構200の接続線206の側面図である。
図14に示すように、比較例の可動接点の移動機構200は、電位をとるための接続線206を有する。接続線206の一端は、ケース201の上部に接続されている。接続線206の他端は、底板209の上面近傍に配置される。比較例の場合、接続線206の設置には材料コストがかかる。このため、材料コストの低減が求められる。
【0061】
これに対し本実施形態によれば、ローラ103がシャフト102の周りに回転可能であることで、ガイド部113,114に対するローラ103の接触状態は一定に維持される。このため、ローラ103の接触状態を調整する必要がない。加えて、ローラ103がガイド溝110から外れることはないため、品質が安定する。加えて、ローラ103をガイド部113,114に強く押す必要もないため、移動機構100の動きが鈍くなることもない。したがって、タップ選択器2の調整工程を削減し、組立工数の低減及び品質の向上を図ることができる。
更に、本実施形態によれば、ケース101、ローラ103及び底板11が金属で形成される。加えて、付勢部材104の付勢力により、底板11のガイド部113,114に対してローラ103が常に接触した状態となる。これにより、タップ選択器2の底板11と移動機構100とが同電位となるため、電位をとるための接続線206が不要となる。したがって、材料コストを低減することができる。
【0062】
次に、実施形態の変形例について説明する。
本実施形態では、ローラは、シャフトと直交する方向から見てテーパ形状を有するテーパ部を備える。テーパ部は、ガイド部と一点で接触する。しかしながら、ローラの構成はこれに限定されない。例えば、ローラは、テーパ部を有しなくてもよい。例えば、テーパ部は、ガイド部と一点で接触しなくてもよい。例えば、ローラは、ガイド部と面で接触してもよい。例えば、ローラの態様及びガイド部との接触態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0063】
本実施形態では、ローラは、シャフトの軸方向に対向して一対設けられる。タップ選択器は、一対のローラの間に設けられる付勢部材を備える。付勢部材は、一対のローラをガイド部に付勢する。しかしながら、ローラの構成はこれに限定されない。例えば、ローラは、一対設けられなくてもよい。例えば、タップ選択器は、付勢部材を有しなくてもよい。例えば、ローラは、1つのみ設けられてもよい。例えば、ローラは、重力の作用によりガイド部に接触してもよい。例えば、ローラの設置数及びガイド部との接触態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0064】
本実施形態では、ケースは、板金で形成される。しかしながら、ケースは、板金で形成されることに限らない。例えば、ケースは、樹脂により形成されてもよい。例えば、ケースは、特殊な機械加工により作製されてもよい。例えば、ケースの形成材料及び作製方法は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0065】
本実施形態では、ケースは、ボルトが螺合可能な雌ねじ部を有する。保持部材は、ボルトを挿通可能なボルト孔を有する。しかしながら、ケース及び保持部材の構成はこれに限定されない。例えば、ケースは、雌ねじ部を有しなくてもよい。例えば、保持部材は、ボルト孔を有しなくてもよい。例えば、ケース及び保持部材は、ボルト以外の固定部材により互いに連結されてもよい。例えば、ケース及び保持部材は、接着剤により互いに結合されてもよい。例えば、ケースを保持部材に取り付ける態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0066】
本実施形態では、一対のローラは、シャフトの軸方向に対向して設けられる。一対のローラは、互いに同じ形状を有する。しかしながら、一対のローラの構成はこれに限定されない。例えば、一対のローラは、互いに異なる形状を有してもよい。例えば、ローラの設置数及びローラの形状は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0067】
本実施形態では、付勢部材は、圧縮コイルばねである。付勢部材は、シャフトと同軸の円筒状に形成される。しかしながら、付勢部材の構成はこれに限定されない。例えば、付勢部材は、板バネ等の圧縮コイルばね以外のばねであってもよい。例えば、付勢部材は、ゴム等の弾性部材であってもよい。例えば、付勢部材は、シャフトと異なる軸上、又はシャフトと異なる場所に設けられてもよい。例えば、付勢部材の態様及び設置場所は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0068】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、ローラがシャフトの周りに回転可能であることで、ガイド部に対するローラの接触状態は一定に維持される。このため、ローラの接触状態を調整する必要がない。したがって、タップ選択器の調整工程を削減することができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
1…負荷時タップ切換器、2…タップ選択器、11…底板、62…外側接点(可動接点)、90…保持部材、91…ボルト孔、101…ケース、102…シャフト、103…ローラ、104…付勢部材、113…内側板の外周面(ガイド部)、114…外側板の内周面(ガイド部)、123…ボルト、124…雌ねじ部、133…テーパ部、P…接触点(一点)、S…シャフトの軸線