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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】表示装置、および表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/19 20230101AFI20240805BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20240805BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 50/115 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 50/18 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 50/816 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 50/818 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 50/826 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 50/828 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 59/121 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 59/32 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 59/35 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 85/00 20230101ALI20240805BHJP
   H10K 102/10 20230101ALN20240805BHJP
   H10K 102/20 20230101ALN20240805BHJP
【FI】
H10K50/19
H05B33/14 Z
H10K50/10
H10K50/10 321
H10K50/115
H10K50/15
H10K50/16
H10K50/17
H10K50/17 171
H10K50/18
H10K50/816
H10K50/818
H10K50/826
H10K50/828
H10K59/10
H10K59/121
H10K59/32
H10K59/35
H10K85/00
H10K102:10
H10K102:20
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023539401
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2021028658
(87)【国際公開番号】W WO2023012877
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 優人
(72)【発明者】
【氏名】川戸 伸一
(72)【発明者】
【氏名】梅田 時由
(72)【発明者】
【氏名】園田 通
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-073759(JP,A)
【文献】特開2013-073842(JP,A)
【文献】特開2009-245747(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141143(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1画素領域と第2画素領域と第3画素領域とを含む表示領域を有する表示装置であって、
第1電極と、
第1色に発光する第1発光層と、前記第1色と異なる第2色に発光する第2発光層と、前記第1色および前記第2色と異なる第3色に発光する第3発光層とを含む第1光電変換層と、
前記第1電極と逆極性の第1電荷注入層と、
前記第1電極と同極性の第2電荷注入層と、
前記第3色に発光する第4発光層を含む第2光電変換層と、
前記第1電極と逆極性の第2電極と、を含み、
前記第1発光層は前記第1画素領域に形成され、
前記第2発光層は前記第2画素領域に形成され、
前記第3発光層は前記第3画素領域に形成され、
前記第1電荷注入層は、前記表示領域の全体に形成され、
前記第2電荷注入層は、前記第3画素領域のみに形成され、
前記第4発光層は、少なくとも前記第3画素領域に形成される表示装置。
【請求項2】
前記第4発光層は、前記表示領域の全体に形成されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2光電変換層はさらに、前記第2電荷注入層と前記第4発光層との間に位置し、前記第2電荷注入層と同極性の電荷輸送層を備え、
前記電荷輸送層は、少なくとも前記第3画素領域に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記電荷輸送層は、前記表示領域の全体に形成されることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1電荷注入層と前記第2電荷注入層との間に位置する透明導電膜をさらに含み、
前記透明導電膜は、少なくとも前記第1画素領域と前記第2画素領域とに形成されることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記透明導電膜は、前記表示領域の全体に形成されることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1電極と前記第2電極との一方は、透明電極を含み、
前記第1電極と前記第2電極との他方は、反射電極を含むことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1電極と前記第2電極とは各々、透明電極を含むことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第1発光層の発光波長は、前記第4発光層の吸収波長と異なり、
前記第2発光層の発光波長は、前記第4発光層の吸収波長と異なることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1発光層および前記第2発光層の発光効率よりも、前記第3発光層の発光効率は、低いことを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項11】
前記第1電荷注入層は金属材料を含むことを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項12】
前記第2電荷注入層は有機材料のみを含むことを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項13】
前記第1発光層から前記第4発光層は各々、正孔と電子との再結合により励起されて発光する量子ドットを含むことを特徴とする請求項1~12の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項14】
前記第1発光層から前記第4発光層は各々、正孔と電子との再結合により励起されて発光する有機材料を含むことを特徴とする請求項1~12の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項15】
第1画素領域と第2画素領域と第3画素領域とを含む表示領域を有する表示装置の製造方法であって、
第1電極を形成する第1電極形成工程と、
第1色に発光する第1発光層と、前記第1色と異なる第2色に発光する第2発光層と、前記第1色および前記第2色と異なる第3色に発光する第3発光層とを含む第1光電変換層を形成する第1光電変換層形成工程と、
前記第1電極と逆極性の第1電荷注入層を形成する第1電荷注入層形成工程と、
前記第1電極と同極性の第2電荷注入層を形成する第2電荷注入層形成工程と、
第4発光層を含む第2光電変換層を形成する第2光電変換層形成工程と、
第1電極と逆極性の第2電極を形成する第2電極形成工程と、を含み、
前記第1光電変換層形成工程は、
前記第1発光層を前記第1画素領域に形成し、
前記第2発光層を前記第2画素領域に形成し、
前記第3発光層を前記第3画素領域に形成し、
前記第1電荷注入層形成工程は、前記第1電荷注入層を前記表示領域の全体に形成し、
前記第2電荷注入層形成工程は、前記第2電荷注入層を前記第3画素領域のみに形成し、
前記第2光電変換層形成工程は、前記第4発光層を少なくとも前記第3画素領域に形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置および表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、青色画素が画素電極と第1青色発光層と電荷発生層と第2青色発光層と対向電極とをこの順に含み、第2青色発光層が全画素に共通に形成され、電荷発生層が青色画素にのみ形成される構成の表示装置を開示している。
【0003】
特許文献2は、青色画素が画素電極と第1青色発光層と電荷発生層と第2青色発光層と対向電極とをこの順に含み、第2青色発光層が青色画素にのみ形成され、電荷発生層が全画素に共通に形成される構成の表示装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特許公開広報「特開2013-73759号」
【文献】日本国特許公開広報「特開2013-73842号」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2が開示する構成は、赤色画素および緑色画素の発光効率の低下によって、表示装置の消費電流効率が低い問題がある。
【0006】
特許文献1が開示する構成では、赤色発光層および緑色発光層の上に第2青色発光層が直接形成される。このため、赤色画素および緑色画素において、電子と正孔との再結合の一部は、第2青色発光層で起きる。この結果、赤色発光層および緑色発光層で再結合する電子と正孔とが減少し、赤色画素および緑色画素の発光効率が低下する。
【0007】
特許文献2が開示する構成では、赤色画素および緑色画素に設けられた電荷発生層で電子と正孔とが発生し、その一部は電荷発生層内で再結合する。この結果、赤色画素および緑色画素で電流損失が生じ、赤色画素および緑色画素の発光効率が低下する。
【0008】
本開示の一態様は、消費電流効率が高く、かつ、生産性が高い表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示に係る表示装置は、第1画素領域と第2画素領域と第3画素領域とを含む表示領域を有する表示装置であって、第1電極と、第1色に発光する第1発光層と、前記第1色と異なる第2色に発光する第2発光層と、前記第1色および前記第2色と異なる第3色に発光する第3発光層とを含む第1光電変換層と、前記第1電極と逆極性の第1電荷注入層と、前記第1電極と同極性の第2電荷注入層と、前記第3色に発光する第4発光層を含む第2光電変換層と、前記第1電極と逆極性の第2電極と、を含み、前記第1発光層は前記第1画素領域に形成され、前記第2発光層は前記第2画素領域に形成され、前記第3発光層は前記第3画素領域に形成され、前記第1電荷注入層は、前記表示領域の全体に形成され、前記第2電荷注入層は、前記第3画素領域のみに形成され、前記第4発光層は、少なくとも前記第3画素領域に形成される構成である。
【0010】
本開示に係る表示装置は、前記第4発光層は、前記表示領域の全体に形成される構成であってよい。
【0011】
本開示に係る表示装置は、前記第2光電変換層はさらに、前記第2電荷注入層と前記第4発光層との間に位置し、前記第2電荷注入層と同極性の電荷輸送層を備え、前記電荷輸送層は、少なくとも前記第3画素領域に形成される構成であってよい。
【0012】
本開示に係る表示装置は、前記電荷輸送層は、前記表示領域の全体に形成されることを特徴とする構成であってよい。
【0013】
本開示に係る表示装置は、前記第1電荷注入層と前記第2電荷注入層との間に位置する透明導電膜をさらに含み、前記透明導電膜は、少なくとも前記第1画素領域と前記第2画素領域とに形成される構成であってよい。
【0014】
本開示に係る表示装置は、前記透明導電膜は、前記表示領域の全体に形成される構成であってよい。
【0015】
本開示に係る表示装置は、前記第1電極と前記第2電極との一方は、透明電極を含み、前記第1電極と前記第2電極との他方は、反射電極を含む構成であってよい。
【0016】
本開示に係る表示装置は、前記第1電極と前記第2電極とは各々、透明電極を含む構成であってよい。
【0017】
本開示に係る表示装置は、前記第1発光層の発光波長は、前記第4発光層の吸収波長と異なり、前記第2発光層の発光波長は、前記第4発光層の吸収波長と異なる構成であってよい。
【0018】
本開示に係る表示装置は、前記第1発光層および前記第2発光層の発光効率よりも、前記第3発光層の発光効率は、低い構成であってよい。
【0019】
本開示に係る表示装置は、前記第1電荷注入層は金属材料を含む構成であってよい。
【0020】
本開示に係る表示装置は、前記第2電荷注入層は有機材料のみを含む構成であってよい。
【0021】
本開示に係る表示装置は、前記第1発光層から前記第4発光層は各々、正孔と電子との再結合により励起されて発光する量子ドットを含む構成であってよい。
【0022】
本開示に係る表示装置は、前記第1発光層から前記第4発光層は各々、正孔と電子との再結合により励起されて発光する有機材料を含む構成であってよい。
【0023】
上記課題を解決するために、本開示に係る表示装置の製造方法は、第1画素領域と第2画素領域と第3画素領域とを含む表示領域を有する表示装置の製造方法であって、第1電極を形成する第1電極形成工程と、第1色に発光する第1発光層と、前記第1色と異なる第2色に発光する第2発光層と、前記第1色および前記第2色と異なる第3色に発光する第3発光層とを含む第1光電変換層を形成する第1光電変換層形成工程と、前記第1電極と逆極性の第1電荷注入層を形成する第1電荷注入層形成工程と、前記第1電極と同極性の第2電荷注入層を形成する第2電荷注入層形成工程と、第4発光層を含む第2光電変換層を形成する第2光電変換層形成工程と、第1電極と逆極性の第2電極を形成する第2電極形成工程と、を含み、前記第1光電変換層形成工程は、前記第1発光層を前記第1画素領域に形成し、前記第2発光層を前記第2画素領域に形成し、前記第3発光層を前記第3画素領域に形成し、前記第1電荷注入層形成工程は、前記第1電荷注入層を前記表示領域の全体に形成し、前記第2電荷注入層形成工程は、前記第2電荷注入層を前記第3画素領域のみに形成し、前記第2光電変換層形成工程は、前記第4発光層を少なくとも前記第3画素領域に形成する方法である。
【発明の効果】
【0024】
本開示の一態様によれば、消費電流効率が高く、生産性が高い表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本開示の実施形態に係る表示装置の構成の非限定的な一例を示す概略部分平面図である。
図2】本開示の実施形態に係る表示装置の製造方法の非限定的な一例を示すフローチャートである。
図3】本開示の実施形態に係る表示装置の表示領域の構成の非限定的な一例を示す概略断面図である。
図4】本開示の実施形態に係る発光素子層の表示領域における構成の非限定的な一例を示す概略断面図である。
図5図4に示した発光素子層の青色サブ画素における電子のエネルギー準位の非限定的な一例を示す概略図である。
図6図4に示した発光素子層の赤色サブ画素および緑色サブ画素における電子のエネルギー準位の非限定的な一例を示す概略図である。
図7図4に示した発光素子層の製造方法の非限定的な一例を示す概略フロー図である。
図8】本開示の実施形態に係る発光素子層の表示領域における構成の非限定的な一例を示す概略断面図である。
図9図8に示した発光素子層の製造方法の非限定的な一例を示す概略フロー図である。
図10】本開示の実施形態に係る発光素子層の表示領域における構成の非限定的な一例を示す概略断面図である。
図11図10に示した発光素子層の製造方法の非限定的な一例を示す概略フロー図である。
図12】本開示の実施形態に係る発光素子層の表示領域における構成の非限定的な一例を示す概略断面図である。
図13図10に示した発光素子層の製造方法の非限定的な一例を示す概略フロー図である。
図14】本開示の実施形態に係る発光素子層の表示領域における構成の非限定的な一例を示す概略断面図である。
図15図14に示した発光素子層の製造方法の非限定的な一例を示す概略フロー図である。
図16】本開示の実施形態に係る発光素子層の表示領域における構成の非限定的な一例を示す概略断面図である。
図17図16に示した発光素子層の製造方法の非限定的な一例を示す概略フロー図である。
図18】本開示の実施形態に係る発光素子層の表示領域における構成の非限定的な一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔実施形態1〕
(表示装置の製造方法及び構成)
図1は、本開示の実施形態1に係る表示装置の構成の非限定的な一例を示す概略部分平面図である。
【0027】
図1に示すように、表示装置2は表示領域DAと表示領域DAを囲む額縁領域NAとを有する。表示領域DAは、赤色の光を発光する赤色サブ画素Pr(第1画素領域)と、緑色の光を発光する緑色サブ画素Pg(第2画素領域)と、青色の光を発光する青色サブ画素Pb(第3画素領域)とを含む。以降、赤色サブ画素Prと緑色サブ画素Pgと青色サブ画素Pbとを、「サブ画素」と総称する。
【0028】
以下においては、「同層」とは同一のプロセス(成膜工程)にて形成されていることを意味し、「下層」とは、比較対象の層よりも先のプロセスで形成されていることを意味し、「上層」とは比較対象の層よりも後のプロセスで形成されていることを意味する。
【0029】
図2は表示装置2の製造方法の非限定的な一例を示すフローチャートである。図3は、表示装置2の表示領域DAの構成の非限定的な一例を示す概略断面図である。
【0030】
フレキシブルな表示装置2を製造する場合、図2および図3に示すように、まず、透光性の支持基板(例えば、マザーガラス)上に樹脂層12を形成する(ステップS1)。次いで、バリア層3を形成する(ステップS2)。次いで、薄膜トランジスタ層4(TFT層)を形成する(ステップS3)。次いで、発光素子層5を形成する(ステップS4)。次いで、封止層6を形成する(ステップS5)。次いで、封止層6上に接着層を介して上面フィルムを貼り付ける(ステップS6)。
【0031】
次いで、レーザ光の照射等によって支持基板を樹脂層12から剥離する(ステップS7)。次いで、樹脂層12の下面に接着層11を介して下面フィルム10を貼り付ける(ステップS8)。次いで、下面フィルム10、接着層11、樹脂層12、バリア層3、薄膜トランジスタ層4、発光素子層5、封止層6を含む積層体を上面フィルムと共に分断し、複数の個片を得る(ステップS9)。次いで、得られた個片から上面フィルムを剥離して(ステップS10)、個片の封止層6上に接着層38を介して機能フィルム39を貼り付ける(ステップS11)。次いで、複数のサブ画素が形成された表示領域を囲む額縁領域(非表示領域)の一部(端子部)に電子回路基板(例えば、ICチップおよびFPC)をマウントする(ステップS12)。なお、ステップS1~S12は、表示装置製造装置(ステップS1~S5の各工程を行う成膜装置を含む)が行う。
【0032】
発光素子層5は、薄膜トランジスタ層4よりも上層の画素電極22と、画素電極22のエッジを覆う絶縁性のエッジカバー23と、エッジカバー23よりも上層のエレクトロルミネッセンス層24と、エレクトロルミネッセンス層24よりも上層の共通電極25とを含む。
【0033】
サブ画素ごとに、島状の画素電極22、エレクトロルミネッセンス層24、および共通電極25を含み有機発光ダイオード(Organic light-emitting diode:QLED)または量子ドット発光ダイオード(Quantum dot light-emitting diode:QLED)である発光素子ES(電界発光素子)が発光素子層5に形成され、発光素子ESを制御するサブ画素回路が薄膜トランジスタ層4に形成される。
【0034】
封止層6は透光性であり、共通電極25を覆う無機封止膜26と、無機封止膜26よりも上層の有機バッファ膜27と、有機バッファ膜27よりも上層の無機封止膜28とを含む。発光素子層5を覆う封止層6は、水、酸素等の異物の発光素子層5への浸透を防いでいる。
【0035】
機能フィルム39は、偏光フィルム、可撓性タッチパネル、および保護フィルムなどを含んで良い。
【0036】
以上にフレキシブルな表示装置について説明したが、非フレキシブルな表示装置を製造する場合は、一般的に樹脂層の形成、基材の付け替え等が不要であるため、例えば、ガラス基板上にステップS2~S5の積層工程を行い、その後、ステップS9に移行する。また、非フレキシブルな表示装置を製造する場合は、封止層6を形成する代わりに或いは加えて、透光性の封止部材を、封止接着剤によって、窒素雰囲気下で接着してもよい。透光性の封止部材は、ガラスおよびブラスチックなどから形成可能である。
【0037】
(発光素子層の構成)
図4は、本実施形態に係る発光素子層5の表示領域DAにおける構成の非限定的な一例を示す概略断面図である。本実施形態において、画素電極22がアノードであり、共通電極25がカソードである。
【0038】
図4に示すように、発光素子層5は、画素電極22(第1電極)と、画素電極22と同極性の第1正孔注入層50と、第1光電変換層40と、画素電極22と逆極性の電子注入層42(第1電荷注入層)と、画素電極22と同極性の第2正孔注入層44(第2電荷注入層)と、第2光電変換層46と、画素電極22と逆極性の共通電極25(第2電極)とをこの順に含む。ここで、第1光電変換層40は、赤色(第1色)に発光する赤色発光層40r(第1発光層)と、緑色(第2色)に発光する緑色発光層40g(第2発光層)と、青色(第3色)に発光する第1青色発光層40b(第3発光層)とを含み、第2光電変換層46は、青色に発光する第2青色発光層46b(第4発光層)を含む。
【0039】
図示を省略するが、発光素子層5はさらに、追加の層を含んでもよい。追加の層は、例えば、第1正孔注入層50と第1光電変換層40との間に設けられた正孔輸送層、第1光電変換層40と電子注入層42との間に設けられた電子輸送層、ならびに、第2光電変換層46と共通電極25との間に設けられた電子輸送層および/または電子注入層を含んでもよい。
【0040】
本開示において、「画素電極22と逆極性」は、画素電極22が第1光電変換層40に向って注入する電荷と逆極性の電荷を注入または輸送することを意味する。一方、「画素電極22と同極性」は、画素電極22が第1光電変換層40に向って注入する電荷と同極性の電荷を注入または輸送することを意味する。画素電極22がアノードであるので、「画素電極22と逆極性」はカソード、電子輸送層、または電子注入層を意味する。一方、「画素電極22と同極性」は、アノード、正孔輸送層、または正孔注入層を意味する。
【0041】
(電極)
画素電極22と共通電極25との一方は透明電極を含み、他方は反射電極を含んで良い。表示装置2がトップエミッション型の片面表示装置である場合、下側電極、すなわち画素電極22が反射電極を含み、上側電極、すなわち共通電極25が透明電極を含む。表示装置2がボトムエミッション型の片面表示装置である場合、画素電極22が透明電極を含み、共通電極25が反射電極を含む。あるいは、画素電極22と共通電極25との各々が透明電極を含んでもよい。表示装置2が両面表示装置である場合、画素電極22と共通電極25との各々が透明電極を含む。
【0042】
本開示において、「透明電極」は、光透過性を有する導電層であり、半透明電極を包含する。「反射電極」は、光反射性を有する導電層である。
【0043】
透明電極は、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zin Oxide)、Indium Gallium Zin Oxideなどの透明金属から形成されてよい。あるいは、光が透過するほど十分に薄いアルミニウムなどの非透明金属の膜から形成されてもよい。アノードが透明電極である場合、例えば、アノードがITOの50nm程度の膜から構成されてもよい。カソードが透明電極である場合、例えば、カソードがMgとAgとを含む合金による20nm程度の膜から構成されてよい。
【0044】
反射電極は、光を反射するほど十分に厚いアルミニウムなどの非透明金属の膜から形成されてもよい。反射電極は、透明金属と非透明金属との積層から形成されてもよい。アノードが反射電極である場合、例えば、アノードが透明金属の10nm程度の膜とAgを含む合金の100nm程度の膜と透明金属の10nm程度の膜とがこの順に積層することによって構成されてよい。カソードが反射電極である場合、例えば、カソードがMgとAgとを含む合金またはAlの100nm程度の膜から構成されてよい。
【0045】
(発光層)
赤色発光層40rは、正孔と電子との再結合によって励起し、赤色に発光する発光材料を含む。赤色発光層40rは、CBP化合物などの電荷輸送性材料を含んでもよい。赤色発光層40rは、赤色サブ画素Prに形成され、緑色サブ画素Pgおよび青色サブ画素Pbには形成されない。
【0046】
緑色発光層40gは、正孔と電子との再結合によって励起し、緑色に発光する発光材料を含む。緑色発光層40gは、CBP化合物などの電荷輸送性材料を含んでもよい。緑色発光層40gは、緑色サブ画素Pgに形成され、赤色サブ画素Prおよび青色サブ画素Pbには形成されない。
【0047】
第1青色発光層40bおよび第2青色発光層46bは各々、正孔と電子との再結合によって励起し、青色に発光する発光材料を含む。第1青色発光層40bおよび第2青色発光層46bは各々、CBP化合物などの電荷輸送性材料を含んでもよい。第1青色発光層40bは、青色サブ画素Pbに形成され、緑色サブ画素Pgおよび赤色サブ画素Prには形成されない。一方、第2青色発光層46bは、少なくとも青色サブ画素Pbに形成され、緑色サブ画素Pgおよび赤色サブ画素Prには形成されても形成されなくてもよい。パターニング処理を減らして生産性を向上する観点から、第2青色発光層46bは、表示領域DAの全体に形成されることが好ましい。
【0048】
第1青色発光層40bおよび第2青色発光層46bは、互いに同一構成であっても、異なる構成であってもよい。異なる構成である場合、青色サブ画素Pbの発光効率低下を防止するために、第1青色発光層40bの発光波長が第2青色発光層46bの吸収波長と異なっており、かつ、第2青色発光層46bの発光波長が第1青色発光層40bの吸収波長と異なっていることが好ましい。
【0049】
第2青色発光層46bが赤色サブ画素Prにも形成されている場合、赤色サブ画素Prの発光効率低下および混色を防止する目的で、赤色発光層40rの発光波長が第2青色発光層46bの吸収波長と異なっていることが好ましい。第2青色発光層46bが緑色サブ画素Pgにも形成されている場合、同様の目的で、緑色発光層40gの発光波長が第2青色発光層46bの吸収波長と異なっていることが好ましい。
【0050】
各発光材料は例えば、表示装置2がQLED型である場合、量子ドットを含む。各発光材料は例えば表示装置2がOLED型である場合、有機材料を含む。
【0051】
一例として、表示装置2がOLED型である場合、赤色発光層40rの発光材料は、ビス(2‐ベンゾ[b]チオフェン‐2‐イル‐ピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(通称「Ir(btp)2(acac)」)を含み、緑色発光層40gの発光材料は、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(通称「Ir(ppy)3」)を含み、第1青色発光層40bおよび第2青色発光層46bの発光材料は、ビス(3,5‐ジフルオロ‐2‐(2‐ピリジル)フェニル‐(2‐カルボキシピリジル)イリジウム(III)(通称「FIrPic」)を含んでもよい。
【0052】
(電荷発生層)
電子注入層42は、電子注入性材料を含み、第1光電変換層40に電子を注入する。電子注入層42は、正孔の移動を妨げる。電子注入層42は、表示領域DAの全体に形成される。電子注入性の無機材料は、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属などの金属元素を含んでよい。電子注入性の無機材料は、例えば、Liを含む。電子注入性の有機材料は、例えば、4,7‐ジフェニル‐1,10‐フェナントロリン(通称「Bphen」)を含む。
【0053】
第1正孔注入層50は、正孔注入性材料を含み、第1光電変換層40に正孔を注入する。第2正孔注入層44は、正孔注入性材料を含み、第2光電変換層46に正孔を注入する。第1正孔注入層50および第2正孔注入層44は、電子の移動を妨げる。第1正孔注入層50は、表示領域DAの全体に形成されるか、または、赤色サブ画素Prと緑色サブ画素Pgと青色サブ画素Pbとの各々に形成される。一方、第2正孔注入層44は、青色サブ画素Pbのみに形成される。正孔注入性の有機材料は、例えば、下記構造式で示されるジピラジノキノキサリンヘキサカルポニトリル(通称「HAT-CN」)、α‐ナフチル置換ジアミン誘導体(通称「α‐NPD」)、およびテトラフルオロテトラシアノキノジメタン(通称「F4-TCNQ」)、銅フタロシアニン(通称「CuPc」)などを含む。これらの有機材料は、蒸着温度が低い(摂氏400度以下)のため、高精細メタルマスク(FMM)を用いる蒸着に適している。正孔注入性の無機材料は、例えば、酸化バナジウム、酸化モリブデンなどを含む。
【0054】
【化1】
エレクトロルミネッセンス層24の材料は(i)青色サブ画素Pbに電荷発生層が形成されるが、一方で、(ii)赤色サブ画素Prと緑色サブ画素Pgとに電荷発生層が形成されないように、選択される。
【0055】
図5は、図4に示した発光素子層5の青色サブ画素Pbにおける電子のエネルギー準位の非限定的な一例を示す概略図である。図6は、図4に示した発光素子層5の赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgにおける電子のエネルギー準位の非限定的な一例を示す概略図である。
【0056】
図5は、画素電極22のフェルミ準位と、第1正孔注入層50の正孔被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)と、第1青色発光層40bのHOMOおよびLUMOと、電子注入層42のフェルミ準位と、第2正孔注入層44のHOMOおよびLUMOと、第2青色発光層46bのHOMOおよびLUMOと、共通電極25のフェルミ準位と、を実線で示す。
【0057】
図6は、画素電極22のフェルミ準位と、第1正孔注入層50のHOMOおよびLUMOと、赤色発光層40rまたは緑色発光層40gのHOMOおよびLUMOと、電子注入層42のフェルミ準位と、第2青色発光層46bのHOMOおよびLUMOと、共通電極25のフェルミ準位と、を実線で示す。
【0058】
ここで、電子注入層42のフェルミ準位は、電子注入層42に含まれている金属元素のフェルミ準位を意味する。例えば、電子注入層42がLiを含む場合、電子注入層42のフェルミ準位は、リチウム元素のフェルミ準位を意味する。
【0059】
図5および図6は、フェルミ準位またはLUMOよりも下の軌道、すなわち価電子帯をハッチングで示す。図5および図6は、層の境界およびその近傍で生ずる空乏層および軌道準位の湾曲を、省略する。図5および図6において、真空のエネルギー準位は、0eVである。
【0060】
図5に示すように第1に、青色サブ画素Pbにおいて、第2正孔注入層44の伝導帯から電子注入層42の伝導帯への電子の引き抜き(矢印A)、および/または、第2青色発光層46bの価電子帯から第2正孔注入層44の伝導帯への電子の引き抜き(矢印B)が容易なように、電子注入層42と第2正孔注入層44と第2青色発光層46bとの材料が選択される。
【0061】
例えば、第2正孔注入層44から電子注入層42への引き抜き(矢印A)が容易なように、第2正孔注入層44に含まれる正孔輸送性材料が、CuPcなどの電子が引き抜かれ易いタイプであることが好ましい。さらに、このような引き抜き(矢印A)が容易なように、電子注入層42のフェルミ準位と第2正孔注入層44のLUMOとの間のエネルギー差が十分に小さいことが好ましい。表示装置2の動作温度帯では、熱エネルギーによって、一部の電子が価電子帯から伝導帯に励起し、価電子帯に正孔が生じる。このような熱励起電子が第2正孔注入層44から電子注入層42へ引き抜かれる(矢印A)と、それに応じて正孔が、第2正孔注入層44の価電子帯に生じ、第2青色発光層46bの価電子帯へ注入される。この場合、第2青色発光層46bへの正孔注入が容易なように、第2正孔注入層44のHOMOと真空のエネルギー準位との間に、第2青色発光層46bのHOMOが位置することが好ましい。
【0062】
例えば、第2青色発光層46bから第2正孔注入層44への電子の引き抜き(矢印B)が容易なように、第2正孔注入層44に含まれる正孔注入性材料が、HAT-CNなどの電子を引き抜き易いタイプの正孔注入性材料であることが好ましい。さらに、このような引き抜き(矢印B)が容易なように、第2正孔注入層44のLUMOと第2青色発光層46bのHOMOとの間のエネルギー差が十分に小さいことが好ましい。このように引き抜かれた電子は、さらに、電子注入層42の伝導帯へ輸送される。この場合、電子注入層42への電子輸送が容易なように、第2正孔注入層44のLUMOと電子注入層42のフェルミ準位との間のエネルギー差が十分に小さいことが好ましい。
【0063】
そして、電子注入層42は、第2正孔注入層44から電子を得て、第1青色発光層40bの伝導帯へ電子を供給する。このため、電子注入層42から第1青色発光層40bへの電子注入が容易なように、電子注入層42のフェルミ準位と第1青色発光層40bのLUMOとの間のエネルギー差が十分に小さいことが好ましい。
【0064】
以上のように、第2正孔注入層44から第2青色発光層46bへ、正孔が注入される。そして、電子注入層42から第1青色発光層40bへ、電子が注入される。したがって、青色サブ画素Pbにおいて、電子注入層42と第2正孔注入層44とが組み合わさって電荷発生層として機能し、第2青色発光層46bが発光する。
【0065】
図6に示すように第2に、赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgにおいて、第2青色発光層46bの価電子帯から電子注入層42の伝導帯へ電子を引き抜くこと(矢印C)が困難なように、電子注入層42と第2青色発光層46bとの材料が選択される。具体的には、(i)電子注入層42のフェルミ準位が真空のエネルギー準位と第2青色発光層46bのHOMOとの間に位置し、かつ、(ii)電子注入層42のフェルミ準位と第2青色発光層46bのHOMOとの間のエネルギー差が十分に大きいように選択される。この場合、エネルギー障壁が大きいので、第2青色発光層46bの価電子帯に正孔が生じるような電子の引き抜き(矢印C)が困難である。
【0066】
このため、電子注入層42は、第2青色発光層46bへ正孔注入せず、共通電極25から第2青色発光層46bへ注入された電子は、第2青色発光層46bおよび電子注入層42を通って、赤色発光層40rまたは緑色発光層40gに注入される。したがって、赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgにおいて、電荷発生層が無く、第2青色発光層46bが発光しない。
【0067】
この結果、赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgにおいて、電荷発生層に起因する電流損失が生じない。このため、当該電流損失が生じる従来構成(例えば、特許文献2に開示の構成)と比較して、表示装置2の赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgにおける消費電流効率が高い。
【0068】
また、電荷発生層が無いので、第2光電変換層46の赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgに対応する部分が第2青色発光層46b以外の発光層を含む場合であっても、赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgにおいて第2光電変換層46は発光しない。したがって、第2光電変換層46の赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgに対応する部分は、第2青色発光層46b以外の発光層を含むことも可能である。
【0069】
また、赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgにおいて、画素電極22から注入された正孔と共通電極25から注入された電子とが第1光電変換層40で再結合する。さらに、画素電極22から注入された正孔は、電子注入層42によって遮蔽され、第2青色発光層46bに到達困難である。このため、赤色サブ画素Prにおいて、赤色発光層40rが発光し、第2青色発光層46bが実質的に発光しない。緑色サブ画素Pgにおいて、緑色発光層40gが発光し、第2青色発光層46bが実質的に発光しない。したがって、赤色サブ画素および緑色サブ画素に形成された青色発光層が発光し得る従来構成(例えば、特許文献1に開示の構成)と比較して、表示装置2の赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgが混色しにくい。
【0070】
一方、青色サブ画素Pbにおいて、画素電極22から注入された正孔と電子注入層42から注入された電子とが第1光電変換層40で再結合し、第2正孔注入層44から注入された正孔と共通電極25から注入された電子とが第2光電変換層46で再結合する。このため、青色サブ画素Pbにおいて、第1青色発光層40bおよび第2青色発光層46bの双方が発光する。換言すると、青色サブ画素Pbにおける発光素子ESはタンデム型発光素子である。したがって、タンデム型発光素子を含まない従来構成と比較して、表示装置2の青色サブ画素Pbにおける消費電流効率が高い。
【0071】
また、前述のように赤色発光層40rおよび緑色発光層40gの発光効率よりも、第1青色発光層40bの発光効率が低い。第2青色発光層46bが発光することによって、青色サブ画素Pbにおける発光効率の和が増大する。これによって、表示装置2の消費電流効率が効率的に向上する。さらに、赤色サブ画素Prと緑色サブ画素Pgと青色サブ画素Pbとの輝度を揃えるために青色サブ画素Pbに流す必要がある電流量が、青色サブ画素Pbにおける発光素子ESが非タンデム型である従来構成における電流量と比較して、減少する。これにより、青色サブ画素Pbの寿命が向上し、表示装置2の寿命が向上する。
【0072】
本開示において、「消費電流効率」は、表示装置が消費する電力に対する表示装置の発光輝度の割合である。少ない消費電流で高輝度に発光するほど、消費電流効率が高い。
【0073】
(発光素子層の製造方法)
図7は、図4に示した発光素子層5の製造方法の非限定的な一例を示す概略フロー図である。
【0074】
図7に示すように、発光素子層5の形成(ステップS4)においては、まず、赤色サブ画素Prと緑色サブ画素Pgと青色サブ画素Pbとの各々に画素電極22をアノードとして形成する(ステップS20、第1電極形成工程)。ステップS20は、例えば、導電材料層を薄膜トランジスタ層4の上に全面的に成膜し、導電材料層の上にレジスト層を全面的に成膜し、レジスト層をフォトリソグラフィ法によってパターニングし、レジスト層をマスクとして用いて導電材料層をエッチングしてもよい。エッチング後に、レジスト層を除去する。また、配線を画素電極22と同時に形成してもよい。
【0075】
次いで、画素電極22のエッジを覆うようにエッジカバー23を形成する(ステップS22)。ステップS22は、例えば、ポリイミド(PI)を含むレジスト層を成膜し、レジスト層をフォトリソグラフィ法によってパターニングし、レジスト層を焼成してもよい。
【0076】
次いで、第1正孔注入層50を形成する(ステップS24)。ステップS24は例えば、第1正孔注入層50を形成する場合、共通メタルマスク(CMM)を用いる真空蒸着法によって、第1正孔注入層50を形成する。共通メタルマスクは、表示領域DAの全体に対応する開口が設けられている。ステップS24は例えば、赤色サブ画素Prと緑色サブ画素Pgと青色サブ画素Pbとの各々に第1正孔注入層50を形成する場合、高精細メタルマスク(FMM)を用いる真空蒸着法によって、第1正孔注入層50を形成してもよい。ステップS24におけるFMMは、赤色サブ画素Prと緑色サブ画素Pgと青色サブ画素Pbとの各々に対応する開口が設けられている。
【0077】
次いで、画素電極22を覆うように第1光電変換層40を形成する(ステップS26、第1光電変換層形成工程)。ステップS26において、赤色発光層40rを赤色サブ画素Prに形成し(ステップS26r)、緑色発光層40gを緑色サブ画素Pgに形成し(ステップS26g)、第1青色発光層40bを青色サブ画素Pbに形成する(ステップS26b)。ステップS26において各発光層を形成する順序および方法は、任意である。
【0078】
例えば、ステップS26rは、高精細メタルマスク(FMM)を用いる真空蒸着法によって、赤色発光層40rを形成してもよい。ステップS26rにおけるFMMは、赤色サブ画素Prに対応する開口が設けられている。ステップS26gおよびステップS26bも同様である。
【0079】
続いて、電子注入層42を表示領域DAの全体に形成する(ステップS28、第1電荷注入層形成工程)。ステップS28は例えば、共通メタルマスク(CMM)を用いる真空蒸着法によって、電子注入層42を形成する。
【0080】
続いて、第2正孔注入層44を青色サブ画素Pbのみに形成する(ステップS30、第2電荷注入層形成工程)。ステップS30は例えば、高精細メタルマスク(FMM)を用いる真空蒸着法によって、第2正孔注入層44を形成する。ステップS30におけるFMMは、青色サブ画素Pbに対応する開口が設けられている。
【0081】
続いて、第2光電変換層46を少なくとも青色サブ画素Pbに形成する(ステップS32、第2光電変換層形成工程)。ここで、第2光電変換層46は第2青色発光層46bを含む。ステップS32は例えば、第2青色発光層46bを青色サブ画素Pbのみに形成する場合、ステップS26bと同一処理を行ってよい。ステップS32は例えば、第2青色発光層46bを表示領域DAの全体に形成する場合、共通メタルマスク(CMM)を用いる真空蒸着法によって、第2青色発光層46bを形成する。
【0082】
次いで、共通電極25をカソードとして表示領域DAの全体に形成する(ステップS34、第2電極形成工程)。ステップS34は例えば、共通メタルマスク(CMM)を用いる真空蒸着法によって、共通電極25を形成する。共通メタルマスクは、表示領域DAの全体に対応する開口が設けられている。
【0083】
(パターニング)
上述によれば、第1光電変換層40に含まれる赤色発光層40rと緑色発光層40gと第1青色発光層40bを形成する工程(ステップS26r、S24g、S24b)に加えて、第2正孔注入層44を形成する工程(ステップS30)および任意選択で第2青色発光層46bを形成する工程(ステップS32)において、FMMを用いる高精細なパターニングを行う。
【0084】
例えば、特許文献1に開示の構成では、電荷発生層を構成する全ての層を高精細にパターニングする必要があり、電荷発生層は2層以上から成る。また例えば、特許文献2に開示の構成では、2つの青色発光層の双方を高精細にパターニングする必要がある。
【0085】
したがって、本実施形態に係る構成は、高精細なパターニングの必要回数が従来技術と同等以上に少ない。このため、本実施形態に係る構成によれば、表示装置2の生産性が高い。
【0086】
(熱伸びと蒸着材料)
上述によれば、電子注入層42を形成する工程(ステップS28)において、CMMを用いる。FMMを用いる蒸着と比較してCMMを用いる蒸着は、熱伸びによる歪みに強い傾向があり、塗り分け精度が低くてよい傾向がある。また、電荷輸送層および電荷注入層に関して、金属材料を含む構成が、金属材料を含まない構成よりも、電荷移動度に優れる傾向がある。したがって、電荷発生効率を向上するために、電子注入層42は金属材料を含むことが好ましい。
【0087】
特許文献1に開示の構成では、電荷発生層の各層を塗分ける。このため、電荷発生層に含まれる層に金属材料を用いることが困難である。金属材料は有機材料と比較して、蒸着温度が高い。このため、FMMの近くに配置した蒸着源を用いて金属材料を蒸着する場合、FMMが熱伸びし、塗り分け精度が低下する。また、FMMの遠くに配置した蒸着源を用いて金属材料を蒸着する場合、金属材料の利用効率が顕著に低下する。
【0088】
上述によれば、第2正孔注入層44を形成する工程(ステップS30)において、FMMを用いる。このため、特許文献1に関して説明した理由によって、ステップS30における塗分け精度および蒸着材料の利用効率を維持または向上するために、第2正孔注入層44は有機材料のみを含むことが好ましい。
【0089】
(変形例)
以上においては、第2光電変換層46が第2青色発光層46bを含む例を説明したが、本開示の範囲はこれに限らない。例えば、第2光電変換層46が第2青色発光層46bの代わりに、第2赤色発光層を含んでもよい。第2赤色発光層は、少なくとも赤色サブ画素Prに形成される。この場合、赤色サブ画素Prにおける発光素子ESがタンデム型であり、緑色サブ画素Pgおよび青色サブ画素Pbにおける発光素子ESが非タンデム型である。また例えば、第2光電変換層46が第2青色発光層46bの代わりに、第2緑色発光層を含んでもよい。第2緑色発光層は、少なくとも緑色サブ画素Pgに形成される。この場合、赤色サブ画素Prにおける発光素子ESがタンデム型であり、緑色サブ画素Pgおよび青色サブ画素Pbにおける発光素子ESが非タンデム型である。
【0090】
何れにおける発光素子ESをタンデム型にするかは、発光効率に基づいて決定されることが好ましい。具体的には、第1光電変換層40に含まれる発光層(すなわち、赤色発光層40r、緑色発光層40g、および第1青色発光層40b)のうちで、最も発光効率が低い発光層が設けられているサブ画素が選択されることが好ましい。したがって、赤色発光層40rおよび緑色発光層40gの発光効率よりも、第1青色発光層40bの発光効率が低い場合に、図4に示す構成が好適である。
【0091】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0092】
図8は、本実施形態に係る発光素子層105の表示領域DAにおける構成の非限定的な一例を示す概略断面図である。本実施形態において、画素電極122がカソードであり、共通電極125がアノードである。
【0093】
図8に示すように、発光素子層105は、画素電極122(第1電極)と、第1光電変換層40と、画素電極122と逆極性の第1正孔注入層144(第1電荷注入層)と、画素電極122と同極性の電子注入層142(第2電荷注入層)と、第2光電変換層46と、画素電極122と逆極性の第2正孔注入層150と、画素電極122と逆極性の共通電極125(第2電極)とをこの順に含む。図示を省略するが、発光素子層105はさらに、追加の層を含んでもよい。
【0094】
本開示において、「画素電極122と逆極性」は、画素電極122が第1光電変換層40に向って注入する電荷と逆極性の電荷を注入または輸送することを意味する。一方、「画素電極122と同極性」は、画素電極122が第1光電変換層40に向って注入する電荷と同極性の電荷を注入または輸送することを意味する。本実施形態において画素電極122がカソードであるので、「画素電極122と逆極性」はアノード、正孔輸送層、または正孔注入層を意味する。一方、「画素電極122と同極性」は、カソード、電子輸送層、または電子注入層を意味する。
【0095】
画素電極122と共通電極125との少なくとも一方は透明電極である。
【0096】
第1正孔注入層144は、正孔注入性材料を含み、第1光電変換層40に正孔を注入する。第2正孔注入層150は、正孔注入性材料を含み、第2光電変換層46に正孔を注入する。第1正孔注入層144および第2正孔注入層150は、電子の移動を妨げる。第1正孔注入層144および第2正孔注入層150は、表示領域DAの全体に形成される。
【0097】
電子注入層142は、電子注入性材料を含み、第2光電変換層46に電子を注入する。電子注入層142は、正孔の移動を妨げる。電子注入層42は、青色サブ画素Pbのみに形成される。
【0098】
エレクトロルミネッセンス層24の材料は(i)青色サブ画素Pbに電荷発生層が形成されるが、一方で、(ii)赤色サブ画素Prと緑色サブ画素Pgとに電荷発生層が形成されないように、選択される。
【0099】
第1に、青色サブ画素Pbにおいて、第1正孔注入層144の伝導帯から電子注入層142の伝導帯への電子の引き抜き、および/または、第1青色発光層40bの価電子帯から第1正孔注入層144の伝導帯への電子の引き抜きが容易なように、電子注入層142と第1正孔注入層144と第1青色発光層40bとの材料が選択される。
【0100】
第1正孔注入層144の伝導帯から電子注入層142の伝導帯への電子の引き抜きは、前述の実施形態1における第2正孔注入層44の伝導帯から電子注入層42の伝導帯への電子の引き抜き(図5の矢印A)と同様なので、詳細な説明を省略する。第1青色発光層40bの価電子帯から第1正孔注入層144の伝導帯への電子の引き抜きは、前述の実施形態1における。第2青色発光層46bの価電子帯から第2正孔注入層44の伝導帯への電子の引き抜き(図5の矢印B)と同様なので、詳細な説明を省略する。
【0101】
そして、電子注入層142は、第1正孔注入層144から電子を得て、第2青色発光層46bの伝導帯へ電子を注入する。このため、電子注入層142から第2青色発光層46bへの電子注入が容易なように、電子注入層142のフェルミ準位と第2青色発光層46bのLUMOとの間のエネルギー差が十分に小さいことが好ましい。
【0102】
以上のように、第1正孔注入層144から第1青色発光層40bへ、正孔が注入される。そして、電子注入層142から第2青色発光層46bへ、電子が注入される。したがって、青色サブ画素Pbにおいて、電子注入層142と第1正孔注入層144とが組み合わさって電荷発生層として機能し、第2青色発光層46bが発光する。
【0103】
第2に、赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgにおいて、第1正孔注入層144の伝導帯から第2青色発光層46bの伝導帯への電子の引き抜きが困難なように、第1正孔注入層144と第2青色発光層46bとの材料が選択される。具体的には、(i)第2青色発光層46bのLUMOが真空のエネルギー準位と第1正孔注入層144のLUMOとの間に位置し、かつ、(ii)第2青色発光層46bのLUMOと第1正孔注入層144のLUMOとの間のエネルギー差が十分に大きいように選択される。この場合、エネルギー障壁が大きいので、第1正孔注入層144の伝導帯から第2青色発光層46bの伝導帯へ熱励起電子を引き抜くことが困難である。
【0104】
このため、第1正孔注入層144は、第2青色発光層46bへ電子注入せず、共通電極125から第2青色発光層46bへ注入された正孔は、第2青色発光層46bおよび電子注入層42を通って、赤色発光層40rまたは緑色発光層40gに注入される。したがって、赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgにおいて、電荷発生層が無く、第2青色発光層46bが発光しない。第2光電変換層46の赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgに対応する部分が第2青色発光層46b以外の発光層を含む場合であっても、電荷発生層が無いので、赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgにおいて第2光電変換層46は発光しない。
【0105】
したがって、本実施形態に係る構成によれば、前述の実施形態1に係る構成と同様の効果を奏する。また、本実施形態に係る構成は、前述の実施形態1に係る構成と同様に、変形可能である。
【0106】
(発光素子層の製造方法)
図9は、図8に示した発光素子層105の製造方法の非限定的な一例を示す概略フロー図である。
【0107】
図9に示すように、発光素子層105の形成(ステップS4)においては、まず、赤色サブ画素Prと緑色サブ画素Pgと青色サブ画素Pbとの各々に画素電極122をカソードとして形成する(ステップS120、第1電極形成工程)。次いで、ステップS22、ステップS26を順に行う。
【0108】
続いて、第1正孔注入層144を表示領域DAの全体に形成する(ステップS130、第1電荷注入層形成工程)。ステップS130は例えば、共通メタルマスク(CMM)を用いる真空蒸着法によって、第1正孔注入層144を形成する。
【0109】
続いて、電子注入層142を青色サブ画素Pbのみに形成する(ステップS128、第2電荷注入層形成工程)。ステップS128は例えば、高精細メタルマスク(FMM)を用いる真空蒸着法によって、電子注入層142を形成する。
【0110】
続いて、ステップS32を行い、次いで、第1正孔注入層144を表示領域DAの全体に形成する(ステップS124)。ステップS124は例えば、共通メタルマスク(CMM)を用いる真空蒸着法によって、第1正孔注入層144を形成する。
【0111】
次いで、共通電極125をアノードとして表示領域DAの全体に形成する(ステップS134、第2電極形成工程)。ステップS134は例えば、共通メタルマスク(CMM)を用いる真空蒸着法によって、共通電極125を形成する。
【0112】
(パターニング)
上述によれば、第1光電変換層40に含まれる赤色発光層40rと緑色発光層40gと第1青色発光層40bを形成する工程(ステップS26r、S24g、S24b)に加えて、電子注入層142を形成する工程(ステップS128)および任意選択で第2青色発光層46bを形成する工程(ステップS32)において、FMMを用いる高精細なパターニングを行う。
【0113】
したがって、本実施形態に係る方法によれば、前述の実施形態1に係る方法と同様に、表示装置2の生産性が高い。
【0114】
(熱伸びと蒸着材料)
上述によれば、第1正孔注入層144を形成する工程(ステップS130)において、CMMを用いる。したがって、電荷発生効率を向上するために、第1正孔注入層144は金属材料を含むことが好ましい。
【0115】
また、電子注入層142を形成する工程(ステップS128)において、FMMを用いる。したがって、電子注入層142は有機材料のみを含むことが好ましい。
【0116】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0117】
図10は、本実施形態に係る発光素子層205の表示領域DAにおける構成の非限定的な一例を示す概略断面図である。本実施形態において、画素電極222がアノードであり、共通電極225がカソードである。
【0118】
図10に示すように、発光素子層205は、共通電極225(第1電極)と、第1光電変換層40と、共通電極225と逆極性の第1正孔注入層144(第1電荷注入層)と、共通電極225と同極性の電子注入層142(第2電荷注入層)と、第2光電変換層46と、共通電極225と逆極性の第2正孔注入層150と、共通電極225と逆極性の画素電極222(第2電極)とをこの順に含む。図示を省略するが、発光素子層205はさらに、追加の層を含んでもよい。
【0119】
本実施形態に係る共通電極225および画素電極222は各々、前述の実施形態1に係る共通電極25および画素電極22と同一構成であってよい。
【0120】
本開示において、「共通電極225と逆極性」は、共通電極225が第1光電変換層40に向って注入する電荷と逆極性の電荷を注入または輸送することを意味する。一方、「共通電極225と同極性」は、共通電極225が第1光電変換層40に向って注入する電荷と同極性の電荷を注入または輸送することを意味する。本実施形態において共通電極225がカソードであるので、「共通電極225と逆極性」はアノード、正孔輸送層、または正孔注入層を意味する。一方、「共通電極225と同極性」は、カソード、電子輸送層、または電子注入層を意味する。
【0121】
このため、本実施形態に係る構成によれば、前述の実施形態1に係る構成と同様の効果を奏する。また、本実施形態に係る構成は、前述の実施形態1に係る構成と同様に、変形可能である。
【0122】
(発光素子層の製造方法)
図11は、図10に示した発光素子層205の製造方法の非限定的な一例を示す概略フロー図である。
【0123】
図11に示すように、発光素子層205の形成(ステップS4)においては、まず、赤色サブ画素Prと緑色サブ画素Pgと青色サブ画素Pbとの各々に画素電極222をアノードとして形成する(ステップS220、第2電極形成工程)。次いで、ステップS22、ステップS124を順に行い、次いで、第2光電変換層46を少なくとも青色サブ画素Pbにおける画素電極222を覆うように形成する(ステップS32、第2光電変換層形成工程)。ここで、第2光電変換層46は第2青色発光層46bを含む。
【0124】
次いで、ステップS128、ステップS130、ステップS26を順に行う。次いで、共通電極225をカソードとして表示領域DAの全体に形成する(ステップS234、第1電極形成工程)。ステップS234は例えば、共通メタルマスク(CMM)を用いる真空蒸着法によって、共通電極225を形成する。共通メタルマスクは、表示領域DAの全体に対応する開口が設けられている。
【0125】
したがって、本実施形態に係る方法によれば、前述の実施形態1に係る方法と同様に、表示装置2の生産性が高い。
【0126】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0127】
図12は、本実施形態に係る発光素子層305の表示領域DAにおける構成の非限定的な一例を示す概略断面図である。本実施形態において、画素電極322がカソードであり、共通電極325がアノードである。
【0128】
図12に示すように、発光素子層305は、共通電極325(第1電極)と、共通電極325と同極性の第1正孔注入層50と、第1光電変換層40と、共通電極325と逆極性の電子注入層42(第1電荷注入層)と、共通電極325と同極性の第2正孔注入層44(第2電荷注入層)と、第2光電変換層46と、共通電極325と逆極性の画素電極322(第2電極)とをこの順に含む。図示を省略するが、発光素子層305はさらに、追加の層を含んでもよい。
【0129】
本開示において、「共通電極325と逆極性」は、共通電極325が第1光電変換層40に向って注入する電荷と逆極性の電荷を注入または輸送することを意味する。一方、「共通電極325と同極性」は、共通電極325が第1光電変換層40に向って注入する電荷と同極性の電荷を注入または輸送することを意味する。本実施形態において共通電極325がアノードであるので、「共通電極325と逆極性」はカソード、電子輸送層、または電子注入層を意味する。一方、「共通電極325と同極性」は、アノード、正孔輸送層、または正孔注入層を意味する。
【0130】
このため、本実施形態に係る構成によれば、前述の実施形態1に係る構成と同様の効果を奏する。また、本実施形態に係る構成は、前述の実施形態1に係る構成と同様に、変形可能である。
【0131】
(発光素子層の製造方法)
図13は、図12に示した発光素子層305の製造方法の非限定的な一例を示す概略フロー図である。
【0132】
図13に示すように、発光素子層305の形成(ステップS4)においては、まず、赤色サブ画素Prと緑色サブ画素Pgと青色サブ画素Pbとの各々に画素電極322をカソードとして形成する(ステップS320、第2電極形成工程)。次いで、ステップS22、ステップS32、ステップS30、ステップS28、ステップS26、ステップS24、を順に行う。
【0133】
次いで、共通電極325をアノードとして表示領域DAの全体に形成する(ステップS334、第1電極形成工程)。ステップS334は例えば、共通メタルマスク(CMM)を用いる真空蒸着法によって、共通電極325を形成する。共通メタルマスクは、表示領域DAの全体に対応する開口が設けられている。
【0134】
したがって、本実施形態に係る方法によれば、前述の実施形態1に係る方法と同様に、表示装置2の生産性が高い。
【0135】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0136】
図14は、本実施形態に係る発光素子層405の表示領域DAにおける構成の非限定的な一例を示す概略断面図である。本実施形態において、画素電極22がアノードであり、共通電極25がカソードである。
【0137】
図14に示すように、本実施形態に係る発光素子層405は、透明導電膜48を追加的に含むことを除いて、前述の実施形態1に係る発光素子層5(図4参照)と同一構成である。
【0138】
透明導電膜48は、電子注入層42と第2正孔注入層44との間と位置し、少なくとも赤色サブ画素Prと緑色サブ画素Pgとに形成される。パターニング処理を減らして生産性を向上する観点から、透明導電膜48は、表示領域DAの全体に形成されることが好ましい。
【0139】
透明導電膜48は、ITO、IZO、Indium Gallium Zin Oxideなどの透明金属によって形成される。透明導電膜48は、例えば、透明金属の5nm程度の膜から構成される。あるいは、透明導電膜48は、アルミニウムなどの非透明金属の光が十分に透過するほど薄い薄膜から形成されてもよい。透明導電膜48は、例えば、アルミニウムの1nmから2nm程度の膜から構成されてもよい。
【0140】
エレクトロルミネッセンス層24の材料は(i)青色サブ画素Pbに電荷発生層が形成されるが、一方で、(ii)赤色サブ画素Prと緑色サブ画素Pgとに電荷発生層が形成されないように、選択される。
【0141】
第1に、青色サブ画素Pbにおいて、第2正孔注入層44の伝導帯から透明導電膜48の伝導帯への電子の引き抜き、および/または、第2青色発光層46bの価電子帯から第2正孔注入層44の伝導帯への電子の引き抜きが容易なように、第2正孔注入層44と電子注入層42と第2青色発光層46bとの材料が選択される。さらに、透明導電膜48の伝導帯から電子注入層42の伝導帯への電子の供給も容易なように、透明導電膜48および電子注入層42の材料が選択される。
【0142】
第2正孔注入層44の伝導帯から透明導電膜48の伝導帯への電子の引き抜きは、実施形態1における第2正孔注入層44の伝導帯から電子注入層42の伝導帯への電子の引き抜き(図5の矢印A)と同様なので、詳細な説明を省略する。第2青色発光層46bの価電子帯から第2正孔注入層44の伝導帯への電子の引き抜きは、実施形態1において図5の矢印Bを参照して説明したので、再度の説明を省略する。
【0143】
そして、透明導電膜48は、第2正孔注入層44から電子を得て、電子注入層42の伝導帯へ電子を供給する。そして、電子注入層42は、透明導電膜48から電子を得て、第1青色発光層40bの伝導帯へ電子を注入する。このため、透明導電膜48から電子注入層42への電子注入、および電子注入層42から第1青色発光層40bへの電子注入が容易なように、透明導電膜48のフェルミ準位と電子注入層42のフェルミ準位との間のエネルギー差が十分に小さく、かつ電子注入層42のフェルミ準位と第1青色発光層40bのLUMOとの間のエネルギー差が十分に小さいことが好ましい。
【0144】
以上のように、第2正孔注入層44から第2青色発光層46bへ、正孔が注入される。そして、電子注入層42から第1青色発光層40bへ、電子が注入される。したがって、青色サブ画素Pbにおいて、電子注入層42と透明導電膜48と第2正孔注入層44とが組み合わさって電荷発生層として機能し、第2青色発光層46bが発光する。
【0145】
第2に、赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgにおいて、第2青色発光層46bの価電子帯から透明導電膜48の伝導帯へ電子を引き抜くことが困難なように、透明導電膜48と第2青色発光層46bとの材料が選択される。具体的には、(i)透明導電膜48のフェルミ準位が真空のエネルギー準位と第2青色発光層46bのHOMOとの間に位置し、かつ、(ii)透明導電膜48のフェルミ準位と第2青色発光層46bのHOMOとの間のエネルギー差が十分に大きいように選択される。この場合、エネルギー障壁が大きいので、第2青色発光層46bの価電子帯に正孔が生じるような電子の引き抜きが困難である。
【0146】
このため、透明導電膜48は、第2青色発光層46bへ正孔注入せず、共通電極25から第2青色発光層46bへ注入された電子は、第2青色発光層46bおよび透明導電膜48、電子注入層42を通って、赤色発光層40rまたは緑色発光層40gに注入される。したがって、赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgにおいて、電荷発生層が無く、第2青色発光層46bが発光しない。
【0147】
したがって、本実施形態に係る構成によれば、前述の実施形態1に係る構成と同様の効果を奏する。また、本実施形態に係る構成は、前述の実施形態1に係る構成と同様に、変形可能である。
【0148】
(発光素子層の製造方法)
図15は、図14に示した発光素子層405の製造方法の非限定的な一例を示す概略フロー図である。
【0149】
図15に示すように、本実施形態に係る発光素子層405の製造方法は、前述の実施形態1に係る発光素子層5の製造方法(図7参照)におけるステップS28とステップS30との間に、透明導電膜48を形成する工程(ステップS36)を追加することによって実現される。ステップS36は例えば、スパッタリング法またはイオンプレーティング法によって、透明導電膜48を形成する。このため、透明導電膜48は金属材料を含むことが好ましい。
【0150】
(変形例)
以上においては、前述の実施形態1に係る構成に透明導電膜48を追加した例を説明したが、本開示の範囲はこれに限らない。例えば、前述の実施形態2~4の何れかに係る構成に透明導電膜48を追加してもよい。
【0151】
〔実施形態6〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0152】
図16は、本実施形態に係る発光素子層505の表示領域DAにおける構成の非限定的な一例を示す概略断面図である。本実施形態において、画素電極22がアノードであり、共通電極25がカソードである。
【0153】
図16に示すように、本実施形態に係る発光素子層505は、正孔輸送層52を追加的に含むことを除いて、前述の実施形態1に係る発光素子層5(図4参照)と同一構成である。
【0154】
正孔輸送層52は、第2正孔注入層44との間と第2青色発光層46bとの間に位置し、画素電極22と同極性であり、少なくとも青色サブ画素Pbに形成される。パターニング処理を減らして生産性を向上する観点から、正孔輸送層52は、表示領域DAの全体に形成されることが好ましい。
【0155】
なお、特許文献1に開示の構成では、第2青色発光層と電荷発生層との間に位置する電荷輸送層を表示領域の全体に形成することができない。なぜならば、仮にそうした場合、赤色発光層および緑色発光層での再結合が減少し、赤色画素および緑色画素に形成された第2青色発光層での再結合が増大するからである。
【0156】
正孔輸送層52は、正孔輸送性材料を含む。正孔輸送層52は共通電極25から赤色発光層40rおよび緑色発光層40gへ電子を注入し易いように、十分に薄いことが好ましい。
【0157】
エレクトロルミネッセンス層24の材料は(i)青色サブ画素Pbに電荷発生層が形成されるが、一方で、(ii)赤色サブ画素Prと緑色サブ画素Pgとに電荷発生層が形成されないように、選択される。
【0158】
第1に、青色サブ画素Pbにおいて、第2正孔注入層44の伝導帯から電子注入層42の伝導帯への電子の引き抜き、および/または、正孔輸送層52の価電子帯から第2正孔注入層44の伝導帯への電子の引き抜きが容易なように、電子注入層42の材料と第2正孔注入層44と正孔輸送層52との材料が選択される。さらに、正孔輸送層52の価電子帯から第2青色発光層46bの価電子帯への正孔の供給も容易なように、正孔輸送層52と第2青色発光層46bとの材料が選択される。
【0159】
第2正孔注入層44の伝導帯から電子注入層42の伝導帯への電子の引き抜きは、実施形態1において図5の矢印Aを参照して説明したので、再度の説明を省略する。正孔輸送層52の価電子帯から第2正孔注入層44の伝導帯への電子の引き抜きは、実施形態1における第2青色発光層46bの価電子帯から第2正孔注入層44の伝導帯への電子の引き抜き(図5の矢印B)と同様なので、詳細な説明を省略する。
【0160】
そして、正孔輸送層52は、第2正孔注入層44から正孔を得て、第2青色発光層46bの価電子帯へ正孔を供給する。このため、正孔輸送層52から第2青色発光層46bへの正孔輸送が容易なように、正孔輸送層52のフェルミ準位と第2青色発光層46bのHOMOとの間のエネルギー差が十分に小さいことが好ましい。
【0161】
また、電子注入層42は、第2正孔注入層44から電子を得て、第1青色発光層40bの伝導帯へ電子を注入する。このため、電子注入層42から第1青色発光層40bへの電子注入が容易なように、電子注入層42のフェルミ準位と第1青色発光層40bのLUMOとの間のエネルギー差が十分に小さいことが好ましい。
【0162】
以上のように、第2正孔注入層44から正孔輸送層52へ正孔が注入され、正孔輸送層52から第2青色発光層46bへ正孔が輸送される。そして、電子注入層42から第1青色発光層40bへ、電子が注入される。したがって、青色サブ画素Pbにおいて、電子注入層42と第2正孔注入層44とが組み合わさって電荷発生層として機能し、第2青色発光層46bが発光する。
【0163】
第2に、赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgにおいて、正孔輸送層52の価電子帯から電子注入層42の伝導帯へ電子を引き抜くことが困難なように、正孔輸送層52と電子注入層42との材料が選択される。具体的には、(i)電子注入層42のフェルミ準位が真空のエネルギー準位と正孔輸送層52のフェルミ準位との間に位置し、かつ、(ii)電子注入層42のフェルミ準位と正孔輸送層52のフェルミ準位との間のエネルギー差が十分に大きいように選択される。この場合、エネルギー障壁が大きいので、正孔輸送層52の価電子帯に正孔が生じるような電子の引き抜きが困難である。
【0164】
このため、電子注入層42は、正孔輸送層52へ正孔注入せず、共通電極25から第2青色発光層46bへ注入された電子は、第2青色発光層46bおよび正孔輸送層52、電子注入層42を通って、赤色発光層40rまたは緑色発光層40gに注入される。したがって、赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgにおいて、電荷発生層が無く、第2青色発光層46bが発光しない。
【0165】
したがって、本実施形態に係る構成によれば、前述の実施形態1に係る構成と同様の効果を奏する。また、本実施形態に係る構成は、前述の実施形態1に係る構成と同様に、変形可能である。
【0166】
さらに、本実施形態に係る構成によれば前述の実施形態1に係る構成よりも、青色サブ画素Pbにおいて、正孔は第2正孔注入層44から第2青色発光層46bへ、移動し易い。なぜならば、第2正孔注入層44のHOMOと正孔輸送層52のフェルミ準位とのエネルギー差および正孔輸送層52のフェルミ準位と第2青色発光層46bのHOMOとのエネルギー差は各々、第2正孔注入層44のHOMOと第2青色発光層46bのHOMOとのエネルギー差よりも、小さいからである。このため、青色サブ画素Pbにおける第2青色発光層46bへの正孔注入効率が向上する。したがって、表示装置2の消費電流効率をより向上できる。
【0167】
(発光素子層の製造方法)
図17は、図16に示した発光素子層505の製造方法の非限定的な一例を示す概略フロー図である。
【0168】
図17に示すように、本実施形態に係る発光素子層505の製造方法は、前述の実施形態1に係る発光素子層5の製造方法(図7参照)におけるステップS30とステップS32との間に、正孔輸送層52を形成する工程(ステップS38)を追加することによって実現される。ステップS38は例えば、共通メタルマスク(CMM)を用いる真空蒸着法によって、正孔輸送層52を形成する。このため、正孔輸送層52は金属材料を含むことが好ましい。
【0169】
(変形例)
以上においては、前述の実施形態1に係る構成に正孔輸送層52を追加した例を説明したが、本開示の範囲はこれに限らない。例えば、前述の実施形態2に係る構成において、電子注入層142との間と第2青色発光層46bとの間に位置し、画素電極122と同極性であり、少なくとも青色サブ画素Pbに形成される電子輸送層を追加してもよい。例えば、前述の実施形態3に係る構成において、電子注入層142と第2青色発光層46bとの間に位置し、共通電極225と同極性であり、少なくとも青色サブ画素Pbに形成される電子輸送層を追加してもよい。例えば、前述の実施形態4に係る構成において、第2正孔注入層44と第2青色発光層46bとの間に位置し、共通電極325と同極性であり、少なくとも青色サブ画素Pbに形成される正孔輸送層を追加してもよい。
【0170】
〔実施形態7〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0171】
図18は、本実施形態に係る発光素子層605の表示領域DAにおける構成の非限定的な一例を示す概略断面図である。本実施形態において、画素電極22がアノードであり、共通電極25がカソードである。
【0172】
図18に示すように、本実施形態に係る発光素子層605は、透明導電膜48および正孔輸送層52の双方を追加的に含むことを除いて、前述の実施形態1に係る発光素子層5(図4参照)と同一構成である。
【0173】
エレクトロルミネッセンス層24の材料は(i)青色サブ画素Pbに電荷発生層が形成されるが、一方で、(ii)赤色サブ画素Prと緑色サブ画素Pgとに電荷発生層が形成されないように、選択される。
【0174】
第1に、青色サブ画素Pbにおいて、第2正孔注入層44の伝導帯から透明導電膜48の伝導帯への電子の引き抜き、および/または、正孔輸送層52の価電子帯から第2正孔注入層44の伝導帯への電子の引き抜きが容易なように、透明導電膜48と第2正孔注入層44と正孔輸送層52との材料が選択される。さらに、透明導電膜48の伝導帯から電子注入層42の伝導帯への電子の供給も容易なように、透明導電膜48および電子注入層42の材料が選択される。また、正孔輸送層52の価電子帯から第2青色発光層46bの価電子帯への正孔の供給も容易なように、正孔輸送層52および第2青色発光層46bの材料が選択される。
【0175】
第2正孔注入層44の伝導帯から透明導電膜48の伝導帯への電子の引き抜きは、前述の実施形態1における第2正孔注入層44の伝導帯から電子注入層42の伝導帯への電子の引き抜き(図5の矢印A)と同様なので、詳細な説明を省略する。正孔輸送層52の価電子帯から第2正孔注入層44の伝導帯への電子の引き抜きは、前述の実施形態1における第2青色発光層46bの価電子帯から第2正孔注入層44の伝導帯への電子の引き抜き(図5の矢印B)と同様なので、詳細な説明を省略する。
【0176】
そして、正孔輸送層52は、第2正孔注入層44から正孔を得て、第2青色発光層46bの価電子帯へ正孔を供給する。このため、正孔輸送層52から第2青色発光層46bへの正孔輸送が容易なように、正孔輸送層52のフェルミ準位と第2青色発光層46bのHOMOとの間のエネルギー差が十分に小さいことが好ましい。
【0177】
また、透明導電膜48は、第2正孔注入層44から電子を得て、電子注入層42の伝導帯へ電子を供給する。そして、電子注入層42は、透明導電膜48から電子を得て、第1青色発光層40bの伝導帯へ電子を注入する。このため、透明導電膜48から電子注入層42への電子注入、および電子注入層42から第1青色発光層40bへの電子注入が容易なように、透明導電膜48のフェルミ準位と電子注入層42のフェルミ準位との間のエネルギー差が十分に小さく、かつ電子注入層42のフェルミ準位と第1青色発光層40bのLUMOとの間のエネルギー差が十分に小さいことが好ましい。
【0178】
以上のように、第2正孔注入層44から正孔輸送層52へ正孔が注入され、正孔輸送層52から第2青色発光層46bへ正孔が輸送される。そして、電子注入層42から第1青色発光層40bへ、電子が注入される。したがって、青色サブ画素Pbにおいて、電子注入層42と透明導電膜48と第2正孔注入層44とが組み合わさって電荷発生層として機能し、第2青色発光層46bが発光する。
【0179】
第2に、赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgにおいて、正孔輸送層52の価電子帯から透明導電膜48の伝導帯へ電子を引き抜くことが困難なように、正孔輸送層52と透明導電膜48との材料が選択される。具体的には、(i)透明導電膜48のフェルミ準位が真空のエネルギー準位と正孔輸送層52のフェルミ準位との間に位置し、かつ(ii)透明導電膜48のフェルミ準位と正孔輸送層52のフェルミ準位との間のエネルギー差が十分に大きいように選択される。この場合、エネルギー障壁が大きいので、正孔輸送層52の価電子帯に正孔が生じるような電子の引き抜きが困難である。例えば、透明導電膜48は、仕事関数が約-4.8eVのITOを含み、正孔輸送層52は、最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位が約-5.4eVのα‐NPDを含んでよい。
【0180】
このため、透明導電膜48は、正孔輸送層52へ正孔注入せず、共通電極25から第2青色発光層46bへ注入された電子は、第2青色発光層46bおよび正孔輸送層52、透明導電膜48、電子注入層42を通って、赤色発光層40rまたは緑色発光層40gに注入される。したがって、赤色サブ画素Prおよび緑色サブ画素Pgにおいて、電荷発生層が無く、第2青色発光層46bが発光しない。
【0181】
したがって、本実施形態に係る構成によれば、前述の実施形態1に係る構成と同様の効果を奏する。また、本実施形態に係る構成は、前述の実施形態1に係る構成と同様に、変形可能である。
【0182】
さらに、本実施形態に係る構成によれば前述の実施形態5に係る構成と同様に、表示装置2の消費電流効率をより向上でき、混色をより防止できる。また、本実施形態に係る構成によれば前述の実施形態6に係る構成と同様に、表示装置2の消費電流効率をより向上できる。
【符号の説明】
【0183】
22、122 画素電極(第1電極)
25、125 共通電極(第2電極)
40 第1光電変換層
40r 赤色発光層(第1発光層)
40g 緑色発光層(第2発光層)
40b 第1青色発光層(第3発光層)
42 電子注入層(第1電荷注入層)
44 第2正孔注入層(第2電荷注入層)
46 第2光電変換層
46b 第2青色発光層(第4発光層)
48 透明導電膜
52 正孔輸送層(電荷輸送層)
142 電子注入層(第2電荷注入層)
144 第1正孔注入層(第1電荷注入層)
222、322 画素電極(第2電極)
225、325 共通電極(第1電極)
DA 表示領域
Pr 赤色サブ画素(第1画素領域)
Pg 緑色サブ画素(第2画素領域)
Pb 青色サブ画素(第3画素領域)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図18