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特許7532684テープ先端処理方法およびテープ先端処理治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】テープ先端処理方法およびテープ先端処理治具
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
H05K13/02 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023553900
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2021038370
(87)【国際公開番号】W WO2023067644
(87)【国際公開日】2023-04-27
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】粟野 之也
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/008517(WO,A1)
【文献】特開2014-157933(JP,A)
【文献】特開2003-34357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を収納した収納部が形成されたキャリアテープに対して前記収納部の上方の開口を覆うようにカバーテープが前記キャリアテープの上面に設けられた、部品供給テープの先端部を処理するテープ先端処理方法であって、
前記先端部において前記部品供給テープの長手方向に沿って前記キャリアテープのみに切込を入れることで、前記部品供給テープの幅方向において前記先端部の前記キャリアテープを第1キャリア領域と第2キャリア領域に分離する切込導入工程と、
前記第1キャリア領域を選択的に下方から持ち上げることで前記カバーテープのうち前記第1キャリア領域上に位置する第1カバー領域を持ち上げるとともに、前記第1カバー領域の持上に追従して前記第2キャリア領域上に位置する第2カバー領域が前記第2キャリア領域から上方に離間することによって、前記第2キャリア領域と前記第2カバー領域との間に空間を形成する持上工程と、
を備えることを特徴とするテープ先端処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載のテープ先端処理方法であって、
前記切込導入工程は、前記キャリアテープの下方から切込部の刃先を押し当てて前記切込を入れる工程を含むテープ先端処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載のテープ先端処理方法であって、
前記切込導入工程は、下面に凹部が設けられたテープ押え部材を前記凹部が前記刃先に対向するように配置させた状態で、前記テープ押え部材と前記刃先とで前記部品供給テープを挟み込むことで前記キャリアテープに前記刃先を押し当てる工程を含むテープ先端処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のテープ先端処理方法であって、
前記切込導入工程の前に、前記先端部に前記収納部が含まれないように、前記部品供給テープの長手方向において前記収納部が形成されていない領域を切断する切断工程をさらに備えるテープ先端処理方法。
【請求項5】
請求項1に記載のテープ先端処理方法で用いるテープ先端処理治具であって、
刃先を前記キャリアテープに向けた姿勢で前記部品供給テープの前記先端部の下方に配置される切込部と、
前記切込部の上方に配置されるテープ押え部材と、を備え、
前記切込部と前記テープ押え部材とで前記先端部を挟み込んで前記刃先により前記部品供給テープの長手方向に沿って前記キャリアテープのみに切込を入れることを特徴とするテープ先端処理治具。
【請求項6】
請求項5に記載のテープ先端処理治具であって、
前記テープ押え部材は、前記切込部と対向する下面と、前記下面のうち前記刃先と対向する対向領域に前記下面から上方に後退した凹部とを有するテープ先端処理治具。
【請求項7】
請求項5または6に記載のテープ先端処理治具であって、
前記テープ押え部材と前記切込部とで前記先端部を挟み込む前後において、上下方向に相互に離間している前記刃先と前記テープ押え部材との間に前記部品供給テープの前記先端部を案内するガイド部を、さらに備えるテープ先端処理治具。
【請求項8】
請求項7に記載のテープ先端処理治具であって、
前記ガイド部は、案内している前記先端部を前記刃先から離れるように付勢する付勢部材により構成されているテープ先端処理治具。
【請求項9】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のテープ先端処理方法で用いるテープ先端処理治具であって、
前記キャリアテープの前記第1キャリア領域に向けて突出した突出部位を有する下側プレス部材と、
前記下側プレス部材の上方に配置され、前記突出部位に嵌合自在な後退部位を有する上側プレス部材と、を備え、
前記下側プレス部材と前記上側プレス部材とで前記先端部を挟み込んで前記突出部位により前記第1キャリア領域を上方に持ち上げて前記空間を形成することを特徴とするテープ先端処理治具。
【請求項10】
請求項1に記載のテープ先端処理方法で用いるテープ先端処理治具であって、
前記切込導入工程を実行するための切込導入空間と、前記持上工程を実行するための持上空間とを有する基台と、
前記切込導入空間に配置される切込導入機構と、
前記持上空間に配置される持上機構と、を備え、
前記切込導入機構は、刃先を前記キャリアテープに向けた姿勢で前記部品供給テープの前記先端部の下方に配置される切込部と、前記切込部の上方に配置されるテープ押え部材と、を備え、前記切込部と前記テープ押え部材とで前記先端部を挟み込んで前記刃先により前記部品供給テープの長手方向に沿って前記キャリアテープのみに切込を入れ、
前記持上機構は、前記キャリアテープの前記第1キャリア領域に向けて突出した突出部位を有する下側プレス部材と、前記下側プレス部材の上方に配置され、前記突出部位に嵌合自在な後退部位を有する上側プレス部材と、を備え、前記下側プレス部材と前記上側プレス部材とで前記先端部を挟み込んで前記突出部位により前記第1キャリア領域を上方に持ち上げて前記空間を形成する
ことを特徴とするテープ先端処理治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部品を収納した収納部が形成されたキャリアテープに対して前記収納部の上方の開口を覆うようにカバーテープがキャリアテープの上面に設けられた部品供給テープの先端部を処理するテープ先端処理方法、および当該方法に対して好適なテープ先端処理治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部品供給テープのキャリアテープに収納された部品を部品供給位置に供給するフィーダを備え、部品供給位置に供給された部品を基板に実装することで部品実装基板を生産する部品実装機が知られている(特許文献1、2等)。この部品実装機では、部品を部品供給位置に移動させる前に、当該部品を露出させる必要がある。例えば自動で部品供給テープをローディング可能なオートローディングフィーダを用いる部品実装機においては、当該部品の収納部を覆っているカバーテープをキャリアテープから剥離させて当該部品を露出させるために、片剥離方式と両開き方式との2種類が提案されている(非特許文献1)。いずれの方式も、ブレードやスクレーパなどの露出処理機構部の先端部、つまり刃先をキャリアテープとカバーテープとの間に挿入することで部品を露出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5884083号
【文献】特許第6320001号
【非特許文献】
【0004】
【文献】一般社団法人 電子情報技術産業協会、“オートローディングフィーダ対応のエンボステーピング仕様に関する技術報告書”、[online]、2018.11、一般社団法人 電子情報技術産業協会 標準化センター、[令和3年9月21日検索]、インターネット<URL : https://www.jeita.or.jp/japanese/standard/book/ETR-7030_J/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1および特許文献2では、刃先のインサート性を高めるために、露出処理の前処理としてキャリアテープの先端部を凹ませることでインサート用の空間(以下「インサート空間」という)をカバーテープとキャリアテープとの間に形成している。より詳しくは、カバーテープとキャリアテープとの境界に凹部形成用の治具を挿入することで、凹部を上記インサート空間として形成している。しかしながら、上記境界に治具を挿入することは必ずしも容易であるとはいえず、インサート空間を確実に形成することは困難であった。また、上記凹部を形成するために、キャリアテープを下方に押し下げるが、カバーテープは柔らかく、容易に変形するため、下方に形成された空間に撓んでしまうことがある。これによって、露出不良が生じることがあった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、部品供給テープの先端部においてキャリアテープとカバーテープとの間に広い空間を容易に、しかも確実に形成することができるテープ先端処理方法および当該方法に対して好適な治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、部品を収納した収納部が形成されたキャリアテープに対して収納部の上方の開口を覆うようにカバーテープがキャリアテープの上面に設けられた、部品供給テープの先端部を処理するテープ先端処理方法であって、先端部において部品供給テープの長手方向に沿ってキャリアテープのみに切込を入れることで、部品供給テープの幅方向において先端部のキャリアテープを第1キャリア領域と第2キャリア領域に分離する切込導入工程と、第1キャリア領域を選択的に下方から持ち上げることでカバーテープのうち第1キャリア領域上に位置する第1カバー領域を持ち上げるとともに、第1カバー領域の持上に追従して第2キャリア領域上に位置する第2カバー領域が第2キャリア領域から上方に離間することによって、第2キャリア領域と第2カバー領域との間に空間を形成する持上工程と、を備えることを特徴としている。
【0008】
このように構成されたテープ先端処理方法では、部品供給テープの先端部を構成するキャリアテープおよびカバーテープのうちキャリアテープのみに切込が入り、第1キャリア領域と第2キャリア領域に分離される。それに続いて、第1キャリア領域が選択的に下方から持ち上げられる。このときカバーテープには切込が入っておらず、幅方向に連続している。このため、カバーテープのうち第1キャリア領域上に位置する第1カバー領域が持ち上げられるが、それに追従して第2キャリア領域上に位置する第2カバー領域が第2キャリア領域から上方に離間する。これによって、第2キャリア領域と第2カバー領域との間に空間が形成される。
【0009】
ここで、切込導入工程が、キャリアテープの下方から切込部の刃先を押し当てて切込を入れる工程を含むように構成してもよい。このように刃先を用いることで先端部での切込導入を高精度に行うことができる。
【0010】
また、刃先により切込を入れる際に、テープ押え部材と刃先とで部品供給テープを挟み込むのが好適である。このようにテープ押え部材を設けることで刃先による切込導入時にキャリアテープへの刃先の押付位置がずれるのを効果的に防止することができる。しかも、テープ押え部材の下面には、刃先に対向するように凹部が設けられている。このため、カバーテープのうち刃先の上方に位置する部位が凹部に逃げる。その結果、キャリアテープに切込を入れた刃先がさらにカバーテープに到達するのを効果的に防止することができる。
【0011】
また、切込導入工程の前に、先端部に収納部が含まれないように、部品供給テープの長手方向において収納部が形成されていない領域を切断する切断工程をさらに備えるように構成してもよい。これにより、先端部に対して収納部は常に含まれず、上記切込導入工程および上記持上工程により先端部に空間を確実に形成することができる。
【0012】
また、上記切込導入工程を専用のテープ先端処理治具により実行してもよい。このテープ先端処理治具として、例えば刃先をキャリアテープに向けた姿勢で部品供給テープの先端部の下方に配置される切込部と、切込部の上方に配置されるテープ押え部材と、を備え、切込部とテープ押え部材とで先端部を挟み込んで刃先により部品供給テープの長手方向に沿ってキャリアテープのみに切込を入れるものを用いることができる。このように構成されたテープ先端処理治具によれば、刃先による切込導入時にキャリアテープへの刃先の押付位置がずれるのを効果的に防止することができ、切込導入工程を良好に行うことができる。
【0013】
ここで、テープ押え部材が、切込部と対向する下面と、下面のうち刃先と対向する対向領域に下面から上方に後退した凹部とを有するように構成してもよい。これにより、刃先によりキャリアテープに切込を入れる際に、カバーテープのうち刃先の上方に位置する部位が凹部に逃げる。その結果、キャリアテープに切込を入れた刃先がさらにカバーテープに到達するのを効果的に防止することができる。
【0014】
また、テープ押え部材と切込部とで先端部を挟み込む前後において、上下方向に相互に離間している刃先とテープ押え部材との間に部品供給テープの先端部を案内するガイド部を、さらに備えるように構成してもよい。これにより、刃先およびテープ押え部材による先端部の挟込が円滑に行われ、切込導入工程が適切に行われる。
【0015】
また、ガイド部は、案内している先端部を刃先から離れるように付勢する付勢部材により構成してもよく、これによって、切込導入工程の実行前に先端部が刃先に引っ掛かるのを確実に防止することができる。切込導入工程の実行後に、先端部が刃先から外れて部品供給テープの引き抜きを確実に行うことができる。
【0016】
また、上記持上工程を専用のテープ先端処理治具により実行してもよい。このテープ先端処理治具として、例えばキャリアテープの第1キャリア領域に向けて突出した突出部位を有する下側プレス部材と、下側プレス部材の上方に配置され、突出部位に嵌合自在な後退部位を有する上側プレス部材と、を備え、下側プレス部材と上側プレス部材とで先端部を挟み込んで突出部位により第1キャリア領域を上方に持ち上げて空間を形成するものを用いることができる。このように構成されたテープ先端処理治具によれば、下側プレス部材と上側プレス部材とによる先端部の挟込によって、第1キャリア領域および第1カバー領域の持上、ならびに第2キャリア領域からの第2カバー領域の上方離間が一体的に実行され、空間を良好に形成することができる。
【0017】
さらに、上記切込導入工程および上記持上工程を1台のテープ先端処理治具により実行するように構成してもよい。このテープ先端処理治具として、例えば切込導入工程を実行するための切込導入空間と、持上工程を実行するための持上空間とを有する基台と、切込導入空間に配置される切込導入機構と、持上空間に配置される持上機構と、を備え、切込導入機構は、刃先をキャリアテープに向けた姿勢で部品供給テープの先端部の下方に配置される切込部と、切込部の上方に配置されるテープ押え部材と、を備え、切込部とテープ押え部材とで先端部を挟み込んで刃先により部品供給テープの長手方向に沿ってキャリアテープのみに切込を入れ、持上機構は、キャリアテープの第1キャリア領域に向けて突出した突出部位を有する下側プレス部材と、下側プレス部材の上方に配置され、突出部位に嵌合自在な後退部位を有する上側プレス部材と、を備え、下側プレス部材と上側プレス部材とで先端部を挟み込んで突出部位により第1キャリア領域を上方に持ち上げて空間を形成するものを用いることができる。このように1台のテープ先端処理治具により、切込導入工程および持上工程を連続的に実行することが可能となり、オペレータの操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
上記のように構成された発明では、キャリアテープへの切込による第1キャリア領域と第2キャリア領域とに分離した後で、第1キャリア領域を選択的に下方から持ち上げているため、部品供給テープの先端部においてキャリアテープとカバーテープとの間に広い空間を容易に、しかも確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るテープ先端処理方法の一実施形態によりテープ先端処理された部品供給テープにより供給される部品を基板に実装する部品実装機の一例を示す平面図である。
図2図1に示す部品実装機が備えるフィーダの構成を示す図である。
図3図2に示すフィーダが部品供給に使用する部品供給テープの構成を示す斜視図である。
図4】本発明に係るテープ先端処理方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図5】本発明に係るテープ先端処理治具の一実施形態を示す斜視図である。
図6図5に示すテープ先端処理治具により実行される切込導入工程を模式的に示す図である。
図7】本発明に係るテープ先端処理方法が適用された部品供給テープの先端部に対する露出処理機構部による露出処理を模式的に示す図である。
図8A図5に示すテープ先端処理治具の切込導入機構の断面図である。
図8B図5に示すテープ先端処理治具の切込導入機構の断面図である。
図9】テープ押え部材を下方側から見た斜視図である。
図10図5に示すテープ先端処理治具の持上機構の断面図であり、持上工程を実行している持上実行状態を示している。
図11】持上工程の実行時における部品供給テープおよび持上機構との関係を示す側面図である。
図12】持上工程の実行時における部品供給テープおよび持上機構との関係を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明に係るテープ先端処理方法の一実施形態によりテープ先端処理された部品供給テープにより供給される部品を基板に実装する部品実装機の一例を示す平面図である。部品実装機1は、フィーダ型供給機構40に装着されたフィーダ50により供給される電子部品Eを基板Bに実装する装置であり、上記フィーダ型供給機構40以外に、基台10と、基板Bを搬送するための搬送コンベア20と、基板B上に電子部品(図3中の符号E)を実装するための部品実装装置30とを備えている。
【0021】
基台10は平面視で長方形状を有している。そして、この基台10に対し、その長手方向と平行に搬送コンベア20が設けられている。また、搬送コンベア20の下方には、基板B上に電子部品を実装する際にその基板Bをバックアップするためのバックアッププレート(図示省略)が設けられている。なお、以下の説明では、基台10の長辺方向(図1の左右方向)および搬送コンベア20による基板Bの搬送方向をX方向とし、基台10の短辺方向(図1の上下方向)をY方向とし、上下方向(後で説明する図2の上下方向)をZ方向とする。
【0022】
搬送コンベア20は、Y方向における基台10の略中央位置に配置され、基板Bを搬送方向(X方向)に沿って搬送する。搬送コンベア20は、搬送方向Xに循環駆動する一対のコンベアベルト22を備えている。基板Bは、両コンベアベルト22に架設する形で載置され、その状態でX方向に搬送される。基板Bは、搬送方向Xの一方側(図1で示す右側)からコンベアベルト22に沿って基台10上の作業位置(図1の二点鎖線で囲まれる位置)に搬入され、作業位置で停止して電子部品の実装作業がされた後、コンベアベルト22に沿って他方側(図1で示す左側)に搬出されるようになっている。
【0023】
部品実装装置30は、一対の支持フレーム31と、ヘッドユニット32と、ヘッドユニット32を駆動するヘッドユニット駆動機構とを有している。各支持フレーム31は、それぞれX方向における基台10の両側に位置しており、Y方向に延設されている。支持フレーム31には、ヘッドユニット駆動機構を構成するX軸サーボ機構およびY軸サーボ機構が設けられている。そして、装置全体を制御する制御部(図示省略)からの動作指令に応じてX軸サーボ機構およびY軸サーボ機構が作動することで、ヘッドユニット32が一定の可動領域内でX方向およびY方向に移動する。
【0024】
Y軸サーボ機構は、Y軸ガイドレール33Y、Y軸ボールねじ34YおよびY軸サーボモータ35Yを有している。このY軸サーボ機構では、各支持フレーム31に対し、Y軸ガイドレール33Yが延設されている。また、各Y軸ガイドレール33Yと平行にY軸ボールねじ34Yが延設されている。このY軸ボールねじ34Yの一方端には、Y軸サーボモータ35Yが取り付けられ、制御部からの駆動指令に応じて作動することでY軸ボールねじ34Yに螺合しているボールナット(図示省略)がY方向に移動する。これらのボールナットにヘッド支持体36が固定されている。ヘッド支持体36はX方向に延設されている。そして、2つのY軸ガイドレール33Yを橋渡しするようにヘッド支持体36はボールナット上に配置され、Y軸ガイドレール33Yに沿って移動自在となっている。このため、制御部によりY軸サーボモータ35Yが通電制御されると、上記したボールナットの進退動作によって、ボールナットに固定されたヘッド支持体36およびヘッドユニット32がY軸ガイドレール33Yに沿ってY方向に移動する。
【0025】
X軸サーボ機構は、X軸ガイドレール(図示省略)、X軸ボールねじ34XおよびX軸サーボモータ35Xを有している。このX軸サーボ機構では、ヘッド支持体36に対し、X軸ガイドレール33XがX方向に延設されている。また、X軸ガイドレール33Xと平行にX軸ボールねじ34Xが延設されている。このX軸ボールねじ34Xの一方端には、X軸サーボモータ35Xが取り付けられ、制御部からの駆動指令に応じて作動することでX軸ボールねじ34Xに螺合しているボールナット(図示省略)がX方向に移動する。このボールナットにはヘッドユニット32が固定されており、上記ボールナットの移動によってX軸ガイドレール33Xに沿ってX方向に移動する。
【0026】
ヘッドユニット32は、後述するフィーダ型供給機構40によって供給される電子部品を取り出して基板B上に実装する。ヘッドユニット32には、電子部品の実装動作を行う実装ヘッド37が列状をなして複数個搭載されている。各実装ヘッド37は、ヘッドユニット32の下面から下向きに突出しており、その先端には電子部品を負圧によって吸着する吸着ノズル(図示省略)がそれぞれ設けられている。
【0027】
各実装ヘッド37は、R軸サーボモータ(図示省略)によって上下方向Zに延びる軸周りの回転動作が可能とされている。また、各実装ヘッド37は、Z軸サーボモータの駆動によってヘッドユニット32に対して上下方向Zに昇降可能とされている。
【0028】
なお、ヘッドユニット32には、基板認識カメラ(図示省略)が設けられている。基板認識カメラは、撮像面を下に向けた状態でヘッドユニット32のフレーム32Aに固定されており、ヘッドユニット32とともに一体的に移動する。基板認識カメラは、ヘッドユニット32がX方向およびY方向に移動されることで、作業位置に停止した基板B上の任意の位置の画像を撮像する。
【0029】
また、基台10上におけるヘッドユニット32による作業位置の近傍には、部品認識カメラC2が固定されている。部品認識カメラC2は、実装ヘッド37によって部品供給位置S(図2)から取り出された電子部品の画像を撮像することで、各電子部品の吸着ノズル38による吸着姿勢等を認識する。
【0030】
図2は、図1に示す部品実装機が備えるフィーダの構成を示す図である。図3図2に示すフィーダが部品供給に使用する部品供給テープの構成を示す斜視図である。図1に示すように、フィーダ型供給機構40は搬送コンベア20の両側(図1の上下両側)においてX方向に並んで2箇所ずつ、計4箇所に配されている。各フィーダ型供給機構40は、複数のフィーダ50を列状に着脱自在に装着した一括交換台車により構成されている。各フィーダ型供給機構40には、複数のリール支持部(図示省略)が設けられており、リール支持部に対してリール状に巻回された部品供給テープ60をフィーダ50に送出可能となっている。
【0031】
部品供給テープ60は、例えば図3に示すように、一方向に長いシート形状を有するキャリアテープ62と、キャリアテープ62の上面に貼着されるカバーテープ64とから構成される。キャリアテープ62には、上方に開口したボックス状の収納部62Aがテープの長手方向に一定間隔で設けられている。そして、各収納部62Aに対し、カバーテープ64によって封止された状態で電子部品Eが収納され、保持されている。また、キャリアテープ62の一辺側には、その縁部に沿って上下に貫通する係合孔62Bが一定間隔で設けられている。
【0032】
このように構成された部品供給テープ60は、後で詳述するテープ先端処理治具により先端部に対して所定のテープ先端処理が施された状態で、リール支持部から送出されてフィーダ50にセットされた後、制御部からの動作指令に応じたフィーダ50の動作によって部品供給位置Sに向けて搬送される。なお、フィーダ50の構成説明を行うにあたって、説明の便宜から、電子部品Eを供給する側(搬送コンベア20に向けられる側、図4における右側)を前側とし、それとは反対側を後側とする。また、フィーダ50の前後方向(Y方向)および上下方向(Z方向)の両者と直交する方向をフィーダ50の幅方向(X方向)とする。
【0033】
フィーダ型供給機構40には、フィーダ取付部42が設けられており、当該フィーダ取付部42に対して複数のフィーダ50がX方向に一列に整列して取り付け可能となっている。各フィーダ50は、電子部品Eが保持された部品供給テープ60を部品供給位置Sに向けて送出するために、図2に示すように、前後方向(Y方向)に長い形状をなす本体部51に対して2つの送出部52、54を設けている。なお、本体部51には、カバー部材511が取り付けられているが、図2ではカバー部材511を切欠いて両送出部52、54の構成を図示している。
【0034】
これらのうち送出部52は、本体部51の前側部分に設けられた前側送出部であり、前側モータ52Aと、複数枚のギヤからなる前側ギヤ群52Bと、本体部51の前端上部に配された前側スプロケット52Cと、中間スプロケット52Dとを有している。前側モータ52Aは制御部と電気的に接続されており、制御部からの動作指令に応じて動作する。これによって、前側モータ52Aが制御部に予め記憶された実装プログラムに従って作動する。そして、前側モータ52Aの動力は前側ギヤ群52Bを介して前側スプロケット52Cおよび中間スプロケット52Dに伝達され、前側スプロケット52Cおよび中間スプロケット52Dを回転させる。この前側スプロケット52Cの外周には、部品供給テープ60の係合孔62Bに係合される歯52Eが等ピッチで形成されている。また、中間スプロケット52Dの外周にも、前側スプロケット52Cと同様に、部品供給テープ60の係合孔62Bに係合される歯52Fが等ピッチで形成されている。そして、前側送出部52は、前側スプロケット52Cの歯52Eが部品供給テープ60の係合孔62Bに係合した状態で前側スプロケット52Cおよび中間スプロケット52Dを回転させることで、後側送出部54側から送出されてくる部品供給テープ60をフィーダ50の前端部の部品供給位置Sに送出する。
【0035】
また、図2に示すように、中間スプロケット52Dと前側スプロケット52Cとの間には、露出処理位置が設けられ、当該露出処理位置に露出処理機構部57が配置されている。すなわち、露出処理機構部57は部品供給位置Sに対して(-Y)方向側に配置されている。このため、露出処理機構部57に搬送されてきた部品供給テープ60のカバーテープ64が露出処理機構部57により片剥離方式でキャリアテープ62から剥離され、電子部品Eが露出される。そして、電子部品Eを露出させた状態で部品供給テープ60が部品供給位置Sに供給される。なお、テープ先端処理治具およびテープ先端処理については、後で詳述する。
【0036】
後側送出部54は、後側モータ54Aと、複数枚のギヤからなる後側ギヤ群54Bと、本体部51の後端上部に配された後側スプロケット54Cとを有している。後側送出部54も、基本的には、前側送出部52と同様に構成されている。すなわち、後側モータ54Aは図3に示すように制御部と電気的に接続されており、制御部からの動作指令に応じて動作する。これによって、後側モータ54Aが上記実装プログラムに従って作動する。そして、後側モータ54Aの動力が後側ギヤ群54Bを介して後側スプロケット54Cに伝達され、後側スプロケット54Cの歯54Dが部品供給テープ60の係合孔62Bに係合した状態で後側スプロケット54Cが回転する。これによって、部品供給テープ60がテープ通路56を介して前側送出部52に送出される。
【0037】
つまり、部品供給テープ60を後側送出部54にセットすることで後側送出部54により前側送出部52に送出し、さらに前側送出部52により部品供給テープ60を前方に送出することで部品供給テープ60に収納された電子部品Eを部品供給位置Sに搬送することが可能となっている。また、上記したように前側スプロケット52Cの歯52Eが部品供給テープ60の係合孔62Bに係合した状態では、後側スプロケット54Cの歯54Dが部品供給テープ60の係合孔62Bに係合していない状態、つまりフリー状態のまま、前側送出部52のみにより電子部品Eを部品供給位置Sに搬送することが可能となっている。さらに、フィーダ50に対して先にセットされた部品供給テープ60(以下、これを「先行テープ60」と称する)を前側送出部52のみにより送出するとともに、先行テープ60の末端部がフィーダ50に近づくのに対応してフィーダ50に対してセットされた部品供給テープ60(以下、これを「後続テープ60」と称する)を後側送出部54により前側送出部52に向けて送出することが可能となっている。すなわち、フィーダ50は、前側送出部52および後側送出部54を有し、以下の3つの態様、
・第1テープ送出態様:1つの部品供給テープ60を後側送出部54で前側送出部52に送り、さらに同部品供給テープ60を前側送出部52により部品供給位置Sに送出する、
・第2テープ送出態様:1つの部品供給テープ60を前側送出部52のみで部品供給位置Sに送出する、
・第3テープ送出態様:前側送出部52のみによる先行テープ60の部品供給位置Sへの送出から独立して後続テープ60を後側送出部54で前側送出部52に送る、
で部品供給テープ60を搬送することが可能となっている。
【0038】
また、本体部51には、上記3つの送出態様を実行可能とするために、図2に示すように、後側送出部54から前側送出部52に向けてテープ通路56が設けられるとともに、部品供給テープ60をテープ通路56に導入するための導入領域53が設けられている。この導入領域53はテープ通路56と接続する位置から本体部51の後端部に向けて上下方向Zにおいてラッパ状に広がっている。
【0039】
この導入領域53に対しては、テープセット部55の先端が挿脱自在に設けられている。そして、導入領域53へのテープセット部55の挿入により部品供給テープ60を後側送出部54による送出を可能とする。また、導入領域53からのテープセット部55の引抜(離脱)およびテープ支持の解除によって部品供給テープ60を導入領域53の下方側に移動させて後側送出部54に対してフリー状態にする。なお、テープセット部55と、テープセット部55をY方向に移動させるセット移動機構70とは、特開2017-199831号公報に記載のこれらと同様の構成を具備している。したがって、ここでは、テープセット部55およびセット移動機構70に関する説明は省略する。
【0040】
ここまで説明してきたように、部品実装機1に装備されているフィーダ50は、いわゆるオートローディングフィーダであり、先行テープ60による部品供給中に後続テープ60を自動的に送出して後続テープ60の先端部を先行テープ60の末端部に近づけて部品供給の切れ目を抑制する機能を有している。この機能を効果的に発揮させるためには、上記したテープ先端処理を施すことが有効であり、それを確実に実現するためには、専用のテープ先端処理治具を用いるのが好適である。以下、本発明に係るテープ先端処理およびテープ先端処理治具の一実施形態について、以下に詳述する。
【0041】
図4は、本発明に係るテープ先端処理方法の一実施形態を示すフローチャートである。また、図5は、本発明に係るテープ先端処理治具の一実施形態を示す斜視図である。さらに、図6は、図5に示すテープ先端処理治具により実行される切込導入工程を模式的に示す図である。このテープ先端処理方法は、後続テープ60、つまり新たな部品供給テープ60をテープセット部55にセットし、当該テープセット部55を導入領域53に挿入する前に行われるものである。テープ先端処理方法は、大きく分けて3つの工程(切断工程、切込導入工程および持上工程)を有している。切断工程は、リール支持部から繰り出した部品供給テープ60を切断する工程であり、例えば特開2017-162844号公報に記載されたテープ切断治具などを用いて行われる。より具体的には、例えば図3に示すように、オペレータは、互いに隣接する収納部62Aの間、つまり収納部62Aが形成されていない領域62Cに対してテープ切断治具を適用して部品供給テープ60を切断する(ステップS1)。このため、部品供給テープ60の先端部66(図5図8A参照)には、収納部62Aが含まれず、それ以降の切込導入工程(ステップS2)および持上工程(ステップS3)を確実に行うことができる。
【0042】
切込導入工程は、図5に示すテープ先端処理治具100をオペレータが操作することで実行される。この切込導入工程では、図5中の矢印AR2に示すように、オペレータは部品供給テープ60の先端部66をテープ先端処理治具100の切込導入機構110に挿入する。それに続いて、ステープラと同様の操作でオペレータがテープ先端処理治具100を操作する。これにより、カッターなどの切込部112の刃先112aが先端部66においてキャリアテープ62のみを食い込み、部品供給テープ60の長手方向Yに沿ってキャリアテープ62のみに切込が入る。その結果、図6に示すように、部品供給テープ60の幅方向Xにおいて先端部66のキャリアテープ62が第1キャリア領域621と第2キャリア領域622に分離される。一方、カバーテープ64には、切込部112の刃先112aは達しておらず、切込は導入されない。この切込導入機構110を含め、テープ先端処理治具100の構成および動作については、後で詳述する。
【0043】
オペレータがテープ先端処理治具100の操作を停止し、部品供給テープ60をテープ先端処理治具100から引き出すことで、切込導入工程は終了する。これに続いて、図5中の矢印AR3に示すように、オペレータは、2つのキャリア領域621、622に分離された部品供給テープ60の先端部66をテープ先端処理治具100の持上機構150に挿入する。そして、再びステープラと同様の操作でオペレータがテープ先端処理治具100を操作する。これにより、第1キャリア領域621のみが選択的に下方から持ち上げられる(持上工程)。これにより、カバーテープ64のうち第1キャリア領域621上に位置する第1カバー領域641が持ち上げられるとともに、第1カバー領域641の持上に追従して第2キャリア領域622上に位置する第2カバー領域642が第2キャリア領域622から上方に離間する。その結果、第2キャリア領域622と第2カバー領域642との間に空間(図7図12中の符号SP)が形成される。
【0044】
こうしてテープ先端処理が完了すると、オペレータは部品供給テープ60をテープ先端処理治具100から引き出した後、当該部品供給テープ60をテープセット部55に装着し、当該テープセット部55を導入領域53に挿入する。そして、当該部品供給テープ60を用いて部品供給を行うためにテープ搬送が行われると、図7の(a)欄に示すように先端部66が露出処理位置に到達する。同欄の(a-2)および(b)欄において、露出処理機構部57と部品供給テープ60との位置関係を明確にするために、露出処理機構部57にドットを付している。このように先端部66の露出処理位置への到達により、露出処理機構部57の刃先571が上記空間SPに入り込む。特に、本実施形態では、上記したテープ先端処理方法により第2キャリア領域622を変形させることなく、第2キャリア領域622の上方に従来技術よりも広い空間SPが形成される。そして、当該空間SPがインサート空間として機能する。したがって、部品供給テープ60の先端部66においてキャリアテープ62とカバーテープ64との間に広い空間SPを容易に、しかも確実に形成することができる。その結果、露出処理位置での電子部品Eの露出を確実に、かつ安定して行うことができる。
【0045】
次に、テープ先端処理治具100の構成および動作について説明する。テープ先端処理治具100は、図5に示すように、基台101と、仕切部材102と、操作部材103とを有している。基台101は、切込導入機構110および持上機構150を保持するベースとしての機能を有している。基台101の上面中央部には、上方に立設された仕切部材102がY方向に延設されている。この仕切部材102により、基台101の上方空間が幅方向Xにおいて2つの仕切空間に仕切られている。そして、(-X)方向側の仕切空間に切込導入機構110が配置される一方、(+X)方向側の仕切空間に持上機構150が配置されている。このように本実施形態では、(-X)方向側の仕切空間および(+X)方向側の仕切空間がそれぞれ本発明の「切込導入空間」および「持上空間」として機能する。
【0046】
また、基台101、仕切部材102、切込導入機構110および持上機構150を上方から覆うように、操作部材103が配置されている。操作部材103の(+Y)方向側の端部が基台101の(+Y)方向側の端部に対し、軸支ピン104を介して揺動自在に連結されている。このため、操作部材103の(-Y)方向側の端部が切込導入機構110および持上機構150の上方側で離接可能となっている。なお、オペレータがテープ先端処理治具100を操作しない間、次に説明する切込導入機構110および持上機構150に設けられたバネ部材群の付勢力が操作部材103に与えられる。その結果、図5に示すように、操作部材103の(-Y)方向側の端部は切込導入機構110および持上機構150から上方に離れた位置で静止している。
【0047】
図8Aおよび図8Bは、図5に示すテープ先端処理治具の切込導入機構の断面図である。図8Aは切込導入工程を実行する前の静止状態を示し、図8Bは切込導入工程を実行している切込実行状態を示している。切込導入機構110は、図5中の(-X)方向側の仕切空間において基台101に固定された切込ベース111を有している。この切込ベース111の上面中央部から上方に刃先112aを突出させた状態で、切込部112が切込ベース111に固定されている。この刃先112aに対して(+Y)方向側にストッパー113が切込ベース111に固定されている。一方、刃先112aに対して(-Y)方向側に線バネ114が本発明の「ガイド部」の一例として取り付けられている。このため、図8A中の矢印AR2で示すように、オペレータが部品供給テープ60の先端部66を切込導入機構110に挿入すると、当該先端部66は線バネ114に沿って刃先112aの上方に向けて案内され、先端部66がストッパー113の(-Y)方向側の端部(以下「-Y端部」という)に係止された時点で先端部66が刃先112aの直上位置に位置決めされる。また、線バネ114は、上記ガイド機能のみならず、先端部66を上方に付勢する付勢機能も兼ね備えている。このため、切込導入工程(ステップS2)の実行前に先端部66が刃先112aに引っ掛かるのを確実に防止することができる。また、切込導入工程の実行後に、キャリアテープ62が刃先112aから上方に逃げるのを助ける。これによって、切込導入工程の実行後に、キャリアテープ62が刃先112aに食い込んだ状態を確実に回避することができ、部品供給テープ60をテープ先端処理治具100から円滑に引き抜くことが可能となっている。なお、以下において、各種部材の両端部のうち(-Y)方向側に位置する端部を「-Y端部」と称し、(+Y)方向側に位置する端部を「+Y端部」と称する。
【0048】
刃先112aの上方には、テープ押え部材115が配置されている。テープ押え部材115は、切込部112と対向する下面を有している。この下面には、当該下面から後退した溝状の凹部(図9中の符号115a)が設けられ、当該凹部を刃先112aに対向させた姿勢でテープ押え部材115は設けられている。ここでは、テープ押え部材115の構成を明確するために、テープ押え部材115を下方側から見た様子が図9に図示されている。同図に示すように、テープ押え部材115の下面のうち刃先112aに対向する対向領域に凹部115aが長手方向Yに延設されている。そして、凹部115aを刃先112aと対向させながら、テープ押え部材115の+Y端部が基台101に軸支ピン116を介して揺動自在に連結されている。このテープ押え部材115の+Y端部から(+Y)方向に突起部117が突設され、その先端部がバネ部材118を介して切込ベース111と接続されている。このため、バネ部材118の付勢力によってテープ押え部材115は軸支ピン116を回動中心とし、図8Aの紙面において時計回りに回動され、テープ押え部材115の-Y端部が操作部材103の-Y端部に近接する。しかも、テープ押え部材115の-Y端部には、上端部がテープ押え部材115の上面に対して進退自在に、バネ部材119が設けられている。このため、テープ押え部材115の-Y端部はバネ部材119を介して操作部材103の-Y端部と当接する。
【0049】
ここで、オペレータがテープ先端処理治具100を操作しない間、図8Aに示すように、バネ部材118の付勢力によってテープ押え部材115は刃先112aから上方に離れ、部品供給テープ60の先端部66を切込導入機構110に挿入し、ストッパー113により係止しながらテープ押え部材115と刃先112aとの間に位置決め可能となっている。一方、オペレータが操作部材103を操作し、バネ部材群の付勢力に抗いながら図8Bの紙面において反時計回りに操作部材103を揺動させると、テープ押え部材115が刃先112aに向かって移動し、刃先112aとで先端部66を挟み込む。このとき、図6に示すように、刃先112aが先端部66において部品供給テープ60の長手方向Yに沿ってキャリアテープ62に切り込む。ここで、カバーテープ64はキャリアテープ62に比べて軟らかく、しかも切込時において刃先112aの直上位置に凹部115aが位置しているため、カバーテープ64のうち切込位置に存在する部位が凹部115aに逃げ込む。その結果、キャリアテープ62のみに切込を確実に入れることができ、部品供給テープ60の幅方向Xにおいて先端部66のキャリアテープ62が第1キャリア領域621と第2キャリア領域622に分離される。一方、刃先112aによるカバーテープ64への切込導入については、これを確実に防止することができる。
【0050】
このように、上記のように構成されたテープ先端処理治具100の切込導入機構110が本発明の「テープ先端処理方法に用いるテープ先端処理治具」の一例に相当しており、「切込導入工程」を確実に実行することができる。つまり、テープ先端処理治具100を用いることで、先端部66において、カバーテープ64を幅方向Xに連続させたまま、キャリアテープ62のみに切込を入れて2つのキャリア領域621、622に分離することができる。
【0051】
また、切込導入機構110では、バネ部材119を介してテープ押え部材115により先端部66を刃先112aに押し付けてキャリアテープ62に切込を入れている。したがって、操作部材103に与えられる外力がオペレータ毎に相違したとしても、バネ部材119の付勢力に相当する力で上記押付動作が実行される。つまり、キャリアテープ62のみに切込を入れるというデリケートな押圧加減を精度良く再現することができる。その結果、オペレータの個人差などの影響を受けることなく、「切込導入工程」を安定して実行することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、切込導入機構110によって長手方向Yと平行に切込を入れているが、切込形態はこれに限定されるものではなく、長手方向Yに沿って切込を入れることで、幅方向Xにおいて2つのキャリア領域621、622に分離することができる限りにおいて、切込態様は任意である。
【0053】
また、幅方向Xにおける切込の導入位置については、幅方向Xにおけるキャリアテープ62の中間位置である限り任意である。例えば本実施形態では、図7の(a-2)欄に示すように、幅方向Xにおける収納部62Aの中心を通過して長手方向Yに延びる仮想線VLと先端部66とが交差する位置Pに切込を入れている。
【0054】
図10は、図5に示すテープ先端処理治具の持上機構の断面図であり、持上工程を実行している持上実行状態を示している。図11は、持上工程の実行時における部品供給テープおよび持上機構との関係を示す側面図である。図12は、持上工程の実行時における部品供給テープおよび持上機構との関係を示す正面図である。なお、持上工程を実行する前の静止状態については、基本的に切込導入工程を実行する前の静止状態(図8A)と近似しているため、図示を省略している。
【0055】
持上機構150は、図5中の(+X)方向側の仕切空間において基台101に固定された持上ベース151を有している。この持上ベース151の上面中央部から上方に下側プレス部材152の上部を突出させた状態で、下側プレス部材152が持上ベース151に固定されている。この下側プレス部材152に対して(+Y)方向側にストッパー153が持上ベース151に固定されている。また、下側プレス部材152の上方には、プレス保持部155が配置されている。このプレス保持部155は、上側プレス部材154の下部を下側プレス部材152に向けて突出させた状態で保持している。そして、プレス保持部155は、上側プレス部材154を下側プレス部材152と対向させながら、プレス保持部155の+Y端部が基台101に軸支ピン156を介して揺動自在に連結されている。このプレス保持部155の+Y端部から(+Y)方向に突起部157が突設され、その先端部がバネ部材158を介して持上ベース151と接続されている。このため、バネ部材158の付勢力によってプレス保持部155は軸支ピン156を回動中心とし、図10の紙面において時計回りに回動され、プレス保持部155の-Y端部が操作部材103の-Y端部に近接する。しかも、プレス保持部155の-Y端部には、上端部がプレス保持部155の上面に対して進退自在に、バネ部材159が設けられている。このため、プレス保持部155の-Y端部はバネ部材159を介して操作部材103の-Y端部と当接する。
【0056】
ここで、オペレータがテープ先端処理治具100を操作しない間、切込導入機構110と同様に、バネ部材群の付勢力によってプレス保持部155は持上ベース151から上方に離れる。これによって、上側プレス部材154が下側プレス部材152から上方に離れ、既に切込導入工程を受けた部品供給テープ60の先端部66を持上機構150に挿入し、ストッパー153により係止しながら下側プレス部材152と上側プレス部材154との間に位置決め可能となっている。
【0057】
下側プレス部材152の上部には、図11の部分拡大領域R1に示すように、(+X)方向側において上方に突出した突出部位152aが設けられている。一方、上側プレス部材154の下部には、図11の部分拡大領域R2に示すように、(+X)方向側において上方に後退した後退部位154aが設けられている。これらの突出部位152aおよび後退部位154aは互いに嵌合可能な形状を有している。そして、部品供給テープ60の先端部66を下側プレス部材152の上方位置に位置決めした状態でオペレータが操作部材103を操作し、バネ部材159の付勢力に抗いながら図10の紙面において反時計回りに操作部材103を揺動させると、上側プレス部材154がプレス保持部155と一体的に下側プレス部材152に向かって移動し、下側プレス部材152とで先端部66を挟み込む。すると、2つのキャリア領域621、622のうち(+Y)方向側に位置する第1キャリア領域621が選択的に下方から突出部位152aにより持ち上げられる。このとき、カバーテープ64のうち第1キャリア領域621上に位置する第1カバー領域641も一緒に持ち上げられる。また、この第1カバー領域641の持上に追従して第2キャリア領域622上に位置する第2カバー領域642が第2キャリア領域622から上方に剥離され、離間する。これによって、図12に示すように、第2キャリア領域622と第2カバー領域642との間に空間SPが形成される。
【0058】
このように、上記のように構成されたテープ先端処理治具100の持上機構150が本発明の「テープ先端処理方法に用いるテープ先端処理治具」の一例に相当しており、「持上工程」を確実に実行することができる。
【0059】
ここで、空間SPを(-Y)方向側に設けた理由は、露出処理機構部57が片剥離方式に対応した形状を有していることに起因している。つまり、本実施形態では、図7に示すように、露出処理機構部57を上方から見た形状は、数字の「4」に類似した形状を有しており、露出処理機構部57は(-Y)方向へ翼状に広がった翼部位を有している。この翼部位の(-X)方向側稜線部、つまり刃先571がキャリアテープ62とカバーテープ64との界面に入り込む。そして、刃先571とキャリアテープ/カバーテープ界面と接触する位置、つまり剥離位置が、部品供給テープ60の長手方向Yへの搬送に伴って(-X)方向に移動してカバーテープ64の片剥離が実行される。したがって、上記片剥離を確実に行うためには、刃先571が設けられた側に空間SPを設け、当該空間SPに露出処理機構部57の刃先571を挿入する必要がある。そこで、本実施形態では、カバーテープ64を(-X)方向側に片剥離するのに対応し、第1キャリア領域621を下方から持ち上げることで(+X)方向側にインサート用の空間SPを設けるように構成されている。
【0060】
以上のように、本実施形態によれば、切込導入機構110および持上機構150を並設したテープ先端処理治具100を用いることで、部品供給テープ60の先端部66においてキャリアテープ62とカバーテープ64との間に広い空間SPを容易に、しかも確実に形成することができる。そして、この空間SPに露出処理機構部57の刃先571を挿入してカバーテープ64を剥離するため、電子部品Eを確実に露出することができ、部品供給動作を円滑に行うことができる。
【0061】
また、1台のテープ先端処理治具100により、切込導入工程(ステップS2)および持上工程(ステップS3)を連続的に実行することが可能となり、オペレータの操作性を向上させることができる。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、テープ先端処理治具100に対して切込導入機構110および持上機構150を並設させているが、切込導入機構110を装備するテープ先端処理治具と、持上機構150を装備するテープ先端処理治具とを個別に準備し、各テープ先端処理治具で順番にテープ先端処理を実行してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、本発明の「ガイド部」を付勢部材の一例である線バネ114で構成しているが、その他の付勢部材、例えば板バネで構成してもよい。また、線バネ114に相当する構成を持上機構150に適用してもよく、これにより、切込導入工程を受けた先端部66を下側プレス部材152の上方位置に確実に案内することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、本発明を片剥離方式に適用しているが、本発明については両開き方式にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
この発明は、部品を収納した収納部が形成されたキャリアテープに対して前記収納部の上方の開口を覆うようにカバーテープがキャリアテープの上面に設けられた部品供給テープの先端部を処理するテープ先端処理技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
60…部品供給テープ
62…キャリアテープ
62C…(収納部が形成されていない)領域
64…カバーテープ
66…(部品供給テープの)先端部
100…テープ先端処理治具
101…基台
110…切込導入機構
112…切込部
112a…(切込部の)刃先
114…線バネ(ガイド部)
115…テープ押え部材
115a…凹部
150…持上機構
152…下側プレス部材
152a…突出部位
154…上側プレス部材
154a…後退部位
621…第1キャリア領域
622…第2キャリア領域
641…第1カバー領域
642…第2カバー領域
E…電子部品
SP…空間
X…(部品供給テープの)幅方向
Y…長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12