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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】予測装置および予測方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0202 20230101AFI20240806BHJP
【FI】
G06Q30/0202
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019192833
(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公開番号】P2021068173
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】324001734
【氏名又は名称】ロジスティード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】古家 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 紀子
(72)【発明者】
【氏名】堀田 哲裕
(72)【発明者】
【氏名】山元 龍
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/207878(WO,A1)
【文献】特開2001-027634(JP,A)
【文献】唐澤 豊 ,SCMハンドブック ,第1版,日本,共立出版株式会社,2018年03月10日,p.912-914
【文献】林 雄亮,SPSSによる実践統計分析,第1版,株式会社オーム社,2017年05月25日,p.198
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予測対象の実績値と複数の説明変数の各々の時系列データとに基づいて予測対象の予測値を予測する予測装置であって、
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、
前記プロセッサは、
前記実績値と前記予測値とに基づいて予測精度を算出し、
前記複数の説明変数のうち第1説明変数の時系列データを用いて予測した第1予測値と、前記複数の説明変数のうち前記第1説明変数とは異なる第2説明変数の時系列データを用いて予測した第2予測値と、前記予測精度と、に基づいて、前記第1説明変数が前記予測値に与えた影響の度合いである第1貢献度と、前記第2説明変数が前記予測値に与えた影響の度合いである第2貢献度と、を算出し、
前記第1貢献度と前記第2貢献度とに基づいて、前記複数の説明変数から除外される除外対象の説明変数を決定し、
前記除外対象を出力し、
前記第1予測値が前記実績値を下回る事象が発生した時点において、前記予測精度が最大となるように前記第1説明変数の時系列データを用いて前記第1予測値を再予測し、
前記第2予測値が前記実績値を下回る事象が発生した時点において、前記予測精度が最大となるように前記第2説明変数の時系列データを用いて前記第2予測値を再予測し、
前記予測精度と、前記再予測された前記第1予測値と、前記再予測された前記第2予測値と、に基づいて、前記第1貢献度と、前記第2貢献度と、を算出する、
ことを特徴とする予測装置。
【請求項2】
予測対象の実績値と複数の説明変数の各々の時系列データとに基づいて予測対象の予測値を予測する予測装置であって、
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、
前記プロセッサは、
前記実績値と前記予測値とに基づいて予測精度を算出し、
前記複数の説明変数のうち第1説明変数の時系列データを用いて予測した第1予測値と、前記複数の説明変数のうち前記第1説明変数とは異なる第2説明変数の時系列データを用いて予測した第2予測値と、前記予測精度と、に基づいて、前記第1説明変数が前記予測値に与えた影響の度合いである第1貢献度と、前記第2説明変数が前記予測値に与えた影響の度合いである第2貢献度と、を算出し、
前記第1貢献度と前記第2貢献度とに基づいて、前記複数の説明変数から除外される除外対象の説明変数を決定し、
前記複数の説明変数のうち前記除外対象を除いた残余の説明変数の時系列データを用いて、前記予測対象の予測値を予測し、
前記第1予測値が前記実績値を下回る事象が発生した時点において、前記予測精度が最大となるように前記第1説明変数の時系列データを用いて前記第1予測値を再予測し、
前記第2予測値が前記実績値を下回る事象が発生した時点において、前記予測精度が最大となるように前記第2説明変数の時系列データを用いて前記第2予測値を再予測し、
前記予測精度と、前記再予測された前記第1予測値と、前記再予測された前記第2予測値と、に基づいて、前記第1貢献度と、前記第2貢献度と、を算出する、
することを特徴とする予測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の予測装置であって、
前記プロセッサは、
第1予測方法により、前記第1予測値および前記第2予測値を算出し、
前記第1予測方法よりも処理時間が長いが前記第1予測方法よりも予測精度が高い第2予測方法により、前記残余の説明変数の時系列データを用いて、前記予測対象の予測値を予測する、
ことを特徴とする予測装置。
【請求項4】
請求項1に記載の予測装置であって、
前記プロセッサは、
前記第1説明変数の時系列データをずらし対象に指定し、
前記実績値と、前記第1説明変数の時系列データと、の相関に基づいて、前記第1説明変数の時系列データのずらし方向およびずらし量を決定し、
前記第1説明変数の時系列データを前記ずらし方向に前記ずらし量分ずらしたずらし後の第1説明変数の時系列データを用いて予測したずらし後の第1予測値と、前記第2説明変数の時系列データを用いて予測した第2予測値と、に基づいて、前記ずらし後の第1貢献度と、前記第2貢献度と、を算出し、
前記ずらし後の第1貢献度と前記第2貢献度とに基づいて、前記除外対象の説明変数を決定する、
ことを特徴とする予測装置。
【請求項5】
請求項4に記載の予測装置であって、
前記プロセッサは、
前記相関が最大となる前記ずらし方向および前記ずらし量を決定する、
ことを特徴とする予測装置。
【請求項6】
請求項1に記載の予測装置であって、
前記プロセッサは、
前記予測対象ごとに、前記第1説明変数の貢献度と、前記第2説明変数の貢献度と、を算出し、
前記予測対象ごとに、前記除外対象の説明変数を決定し、
前記予測対象ごとに、前記除外対象を出力する、
ことを特徴とする予測装置。
【請求項7】
請求項1に記載の予測装置であって、
前記プロセッサは、
前記実績値と前記予測値との差が第1許容範囲外となった期間を出力する、
ことを特徴とする予測装置。
【請求項8】
請求項1に記載の予測装置であって、
前記プロセッサは、
前記予測精度が第2許容範囲外となった期間を出力する、
ことを特徴とする予測装置。
【請求項9】
予測対象の実績値と複数の説明変数の各々の時系列データとに基づいて予測対象の予測値を予測する予測装置が実行する予測方法であって、
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、
前記予測方法は、
前記プロセッサが、
前記実績値と前記予測値とに基づいて予測精度を算出し、
前記複数の説明変数のうち第1説明変数の時系列データを用いて予測した第1予測値と、前記複数の説明変数のうち前記第1説明変数とは異なる第2説明変数の時系列データを用いて予測した第2予測値と、前記予測精度と、に基づいて、前記第1説明変数が前記予測値に与えた影響の度合いである第1貢献度と、前記第2説明変数が前記予測値に与えた影響の度合いである第2貢献度と、を算出し、
前記第1貢献度と前記第2貢献度とに基づいて、前記複数の説明変数から除外される除外対象の説明変数を決定し、
前記除外対象を出力し、
前記第1予測値が前記実績値を下回る事象が発生した時点において、前記予測精度が最大となるように前記第1説明変数の時系列データを用いて前記第1予測値を再予測し、
前記第2予測値が前記実績値を下回る事象が発生した時点において、前記予測精度が最大となるように前記第2説明変数の時系列データを用いて前記第2予測値を再予測し、
前記予測精度と、前記再予測された前記第1予測値と、前記再予測された前記第2予測値と、に基づいて、前記第1貢献度と、前記第2貢献度と、を算出する、
ことを特徴とする予測方法。
【請求項10】
予測対象の実績値と複数の説明変数の各々の時系列データとに基づいて予測対象の予測値を予測する予測装置が実行する予測方法であって、
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、
前記プロセッサは、
前記実績値と前記予測値とに基づいて予測精度を算出し、
前記複数の説明変数のうち第1説明変数の時系列データを用いて予測した第1予測値と、前記複数の説明変数のうち前記第1説明変数とは異なる第2説明変数の時系列データを用いて予測した第2予測値と、前記予測精度と、に基づいて、前記第1説明変数が前記予測値に与えた影響の度合いである第1貢献度と、前記第2説明変数が前記予測値に与えた影響の度合いである第2貢献度と、を算出し、
前記第1貢献度と前記第2貢献度とに基づいて、前記複数の説明変数から除外される除外対象の説明変数を決定し、
前記複数の説明変数のうち前記除外対象を除いた残余の説明変数の時系列データを用いて、前記予測対象の予測値を予測し、
前記第1予測値が前記実績値を下回る事象が発生した時点において、前記予測精度が最大となるように前記第1説明変数の時系列データを用いて前記第1予測値を再予測し、
前記第2予測値が前記実績値を下回る事象が発生した時点において、前記予測精度が最大となるように前記第2説明変数の時系列データを用いて前記第2予測値を再予測し、
前記予測精度と、前記再予測された前記第1予測値と、前記再予測された前記第2予測値と、に基づいて、前記第1貢献度と、前記第2貢献度と、を算出する、
ことを特徴とする予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを予測する予測装置および予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去の数値データから将来の数値の予測を行う予測技術が様々な分野で開発され、適用中である。たとえば、物流分野では、予測技術は、各倉庫における入出荷の物量を予測したり、倉庫内の必要人員や、必要な保管スペースを見積もりしたりすることに活用されている。これらの物量の予測は、主に長年の経験を持つベテランの作業者(たとえば、現場リーダ)が人手で行っており、自動化および精度向上が求められている。
【0003】
予測精度を上げるためには、予測結果に影響を与える変動要因(説明変数)をなるべく網羅的に加味して予測を行うことが望ましい。一方で、物流倉庫などの物流現場で予測を行う場合、予測に必要なデータ(説明変数)を入手、管理、および利用する手間が大きいと予測システムの利用者の負担となる。したがって、説明変数を厳選して、必要最低限の説明変数で高精度な予測ができることが求められる。
【0004】
これは、たとえば、荷主から物流業務を請け負う3PL(Third Party Logistics)の業者が倉庫の出荷量などの予測を行う場合、契約上や地理的な問題(倉庫と商品を販売する店舗が地理的に遠いなど)で、荷主のデータを容易に入手できない場合があるためである。また、仮にデータを入手できても、データの種別が多く、各データの容量が大きいと、そのデータの管理コスト(手間)や予測システムにデータを入力する手間が増大し、予測システムの利用者がシステムの利用を躊躇う要因となるためである。
【0005】
また、特許文献1は、実用的な商品の出荷予測量を予測するシステムを開示する。このシステムは、過去の出荷量実績・天候条件を入力する情報入力手段と、情報入力手段の情報から従属変数のデータ系列と説明変数のデータ系列をセットするデータ系列作成手段と、従属変数データ系列と説明変数データ系列に適合する重回帰モデルを生成し、前記重回帰モデルを用いて出荷量実績理論値と出荷量予測値を出力する重回帰分析手段と、前記出荷量実績値の棄却値を修正出荷量実績値とし、前記修正出荷量実績値と前記出荷量実績理論値の比率を補正値として算出し、前記補正値によって前記出荷量予測値を補正してする補正手段と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-78277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、過去の出荷量だけでなく、天候や営業日数などの様々な変動要因のデータ群を使用して出荷量の予測を行っている一方、システムの利用者が予測に用いたデータ群が予測結果にどれだけの影響を与えたかの寄与度や貢献度を判断することができない。
【0008】
本発明は、予測精度の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明の一側面となる予測装置は、予測対象の実績値と複数の説明変数の各々の時系列データとに基づいて予測対象の予測値を予測する予測装置であって、プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、前記プロセッサは、前記実績値と前記予測値とに基づいて予測精度を算出し、前記複数の説明変数のうち第1説明変数の時系列データを用いて予測した第1予測値と、前記複数の説明変数のうち前記第1説明変数とは異なる第2説明変数の時系列データを用いて予測した第2予測値と、前記予測精度と、に基づいて、前記第1説明変数が前記予測値に与えた影響の度合いである第1貢献度と、前記第2説明変数が前記予測値に与えた影響の度合いである第2貢献度と、を算出し、前記第1貢献度と前記第2貢献度とに基づいて、前記複数の説明変数から除外される除外対象の説明変数を決定し、前記除外対象を出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の代表的な実施の形態によれば、予測精度の向上を図ることができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、予測装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図2図2は、予測装置の機能的構成例1を示すブロック図である。
図3図3は、予測装置による予測処理手順例1を示すフローチャートである。
図4図4は、予測装置への入力データの一例を示す説明図である。
図5図5は、予測装置から出力される第1出力データの一例を示す説明図である。
図6図6は、ステップS303の予測部による予測処理の詳細な処理手順例を示すフローチャートである。
図7図7は、情報出力部によって出力される第2出力データの一例を示す説明図である。
図8図8は、予測装置の機能的構成例2を示すブロック図である。
図9図9は、予測装置による予測処理手順例2を示すフローチャートである。
図10図10は、相関算出部によるずらし日数の決定方法の一例示す説明図である。
図11図11は、利用者によるずらし対象候補の選択効果を示すグラフである。
図12図12は、除外対象(またはずらし対象)の説明変数の提示例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
実施例1は、物流倉庫での商品の出荷量の予測に適用した場合の例を示す。実施例1では、予測に用いた説明変数の重要度として貢献度を出力するとともに、いずれかの説明変数の貢献度が実績期間および予測期間を通して所定値よりも低い場合には、その説明変数を除外対象として出力する例を説明する。ここで予測装置のユーザは、定期的に任意の頻度(たとえば1日1回や週に1回など)予測装置を用いて出荷量の予測を行う場合を想定する。以下、予測装置の構成および処理の流れを説明する。
【0013】
<予測装置のハードウェア構成例>
図1は、予測装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。予測装置100は、プロセッサ101と、記憶デバイス102と、入力デバイス103と、出力デバイス104と、通信インターフェース(通信IF)105と、を有する。プロセッサ101、記憶デバイス102、入力デバイス103、出力デバイス104、および通信IF105は、バス106により接続される。プロセッサ101は、予測装置100を制御する。記憶デバイス102は、プロセッサ101の作業エリアとなる。また、記憶デバイス102は、各種プログラムやデータを記憶する非一時的なまたは一時的な記録媒体である。記憶デバイス102としては、たとえば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリがある。入力デバイス103は、データを入力するデバイスである。入力デバイス103としては、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル、テンキー、スキャナがある。出力デバイス104は、データを出力するデバイスである。出力デバイス104としては、たとえば、ディスプレイ、プリンタがある。通信IF105は、ネットワーク110と接続し、データを送受信する。
【0014】
ネットワーク110の先には、たとえば、倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)120が接続しており、WMS120から予測対象商品の出荷実績等を入手可能である。ただし、必ずしも予測装置100はネットワーク110に接続される必要はなく、必要なデータが入力可能であればよい。また、予測装置100は、たとえば、WMS上の1アプリケーションという形で実装されてもよい。
【0015】
<予測装置100の機能的構成例1>
図2は、予測装置100の機能的構成例1を示すブロック図である。実績値221および説明変数222は、記憶デバイス102に記憶されている。また、予測値231、予測精度232、貢献度233、除外対象234は、出力デバイス104の一例であるディスプレイに表示可能である。なお、予測対象は1種類のデータとする。この場合、たとえば、倉庫内で扱う全商品をまとめて1つの予測対象としてもよいし、特定の商品のみを予測対象としてよい。
【0016】
ここで、予測値231、予測精度232、貢献度233および除外対象234については、必ずしも出力デバイス104に表示される必要はない。たとえば、ネットワーク110を介して、WMS120にデータとして予測値231、予測精度232、貢献度233および除外対象234を伝送すれば、WMS120は、これらのデータを活用して、倉庫内の作業計画や人員配置の立案を行うことができる。これにより、倉庫内業務の効率化を図ることができる。
【0017】
予測装置100は、実績値入力部211、説明変数入力部212、予測部213、予測値出力部214、および情報出力部215を有する。これらは、具体的には、たとえば、図1に示した記憶デバイス102に記憶されたプログラムを、プロセッサ101に実行させることにより実現される機能である。
【0018】
<予測処理手順例>
図3は、予測装置100による予測処理手順例1を示すフローチャートである。予測装置100は、予測処理を開始すると、実績値入力部211により実績値221を取り込む(ステップS301)。つぎに、予測装置100は、説明変数入力部212により、予測に用いる説明変数222を取り込む(ステップS302)。実績値221および説明変数222の詳細については図4を用いて後述する。
【0019】
つぎに、予測装置100は、予測部213により、実績値221と説明変数222を用いて予測対象の出荷量の予測を実行し、予測値231を算出する(ステップS303)。ここでは予測部213は、出荷量を予測することとしたが、必ずしも出荷量に限定されない。また、予測装置100は、予測部213により、予測精度232と各説明変数222の貢献度233とを算出する。
【0020】
つぎに、予測装置100は、予測値出力部214により、予測部213によって算出された予測値231と予測精度232とを出力デバイス104の一例であるディスプレイに表示する(ステップS304)。
【0021】
つぎに、予測装置100は、情報出力部215により、予測部213によって算出された各説明変数222の貢献度233を出力する。また、予測装置100は、情報出力部215により、全説明変数222の貢献度233を参照して、各説明変数222の貢献度233が予測期間のどの日付においても0または極めて0に近い値であれば、その説明変数222を除外対象234とみなして、その説明変数222が除外対象であることを出力する(ステップS305)。
【0022】
<入力データの一例>
図4は、予測装置100への入力データの一例を示す説明図である。入力データ400は、時系列データとして、実績値(目的変数)221と説明変数222とを有する。実績値221の変数名401を一例として、倉庫内のある商品の1日単位の出荷量とし、説明変数222の変数名401を、出荷先店舗の営業日と天気とする。また、日付402は、1/1~2/4とする。1/1~1/30までを実績期間、1/31~2/4を予測期間とする。現在は1/31とする。
【0023】
ここでは、例として、予測装置100は、実績期間(1/1から1/30まで)の実績値221を用いて、予測期間(1/31から2/4まで)の予測を、1/31に実施する。なお、説明変数222は営業日と天気に限られない。また、用いる説明変数222の数も任意である。ここで説明変数222は、実績期間および予測期間の双方に対して設定される。なお、図4では、期間の一例として1日単位の日付402としたが、日付402に限らず、1日の中の所定時間でもよく、複数の連続する日付でもよい。
【0024】
<第1出力データの一例>
図5は、予測装置100から出力される第1出力データの一例を示す説明図である。第1出力データ500とは、予測値出力部214から出力される予測値231および予測精度232である。図5および後述の図7では、説明のため1/1~1/28の実績値221、予測値231、および予測精度232の図示を省略する。予測装置100は、実績期間および予測期間の双方(1/1から2/4まで)について予測値231を出力する。予測装置100は、実績期間における各日付の実績値221と予測値231の偏差に基づいて、予測部213により予測精度232を出力する。予測精度232の評価方法は既知の手法を用いればよく、任意である。
【0025】
図5の例では、予測部213は、予測精度および予測誤差を下記式(1)、(2)により算出する。
予測精度=1-予測誤差・・・・・・・・・(1)
予測誤差=|予測値-実績値|/実績値・・・(2)
ここで、予測部213が実行する処理(ステップS303)について図6を用いて説明する。
【0026】
<予測処理(ステップS303)>
図6は、ステップS303の予測部213による予測処理の詳細な処理手順例を示すフローチャートである。予測装置100は、予測部213により、実績期間の各日付に対して、日々の予測精度232が最大となるように各説明変数222の貢献度233を設定して予測値231を算出する(ステップS601)。貢献度233とは、実績期間の予測値231に与えた影響の度合いである。
【0027】
つぎに、予測装置100は、予測部213により、予測期間の各日付に対して設定されている説明変数222に基づいて、ステップS601により決定された貢献度233を設定し、予測値231を算出する。つぎに、予測装置100は、予測部213により、実績期間と予測期間の予測値231、貢献度233、および実績期間の予測精度232を出力する。
【0028】
ステップS601およびS602で予測部213が実行する処理については、説明変数入力部212によって入力された説明変数222を用いた予測方法であれば任意でよい。たとえば、予測装置100は、実績値221と説明変数222との組み合わせを学習データセットとして、自己回帰分析や重回帰分析、ディープラーニングに適用して予測モデルを生成する。そして、予測装置100は、予測モデルに予測期間の説明変数222を与えることにより、予測期間における出荷量の予測値231を算出してもよい。
【0029】
また、予測値Pは、任意の予測方法1(例:自己回帰)から算出した予測結果P1に、予測方法1とは異なる予測方法2(例:下記式(4)のような線形回帰)を用いて算出した予測結果P2を下記式(3)にて、組み合わせることで、求められる。ここで、α、βは重み係数(ただし、α+β=1)である。
【0030】
P=α×P1+β×P2・・・(3)
【0031】
たとえば、ステップS601では、予測部213は、αとβの組み合わせ(下記式(4)を適用する場合はβ1、β2も含まれる)を総当たりで適用して、上記式(1)、(2)により日々の予測精度232が最大となるように貢献度233を算出する。ここで、予測結果P1の貢献度233は、予測精度232が最大となるαであり、予測結果P2の貢献度233は、予測精度232が最大となるβである。
【0032】
また、予測結果P1,P2の片方または両方が説明変数222を用いた予測結果であればよい。たとえば、予測結果P2のみが説明変数222を用いた予測結果であるとし、具体的には、たとえば、P21を図4に示した営業日を用いた予測値、P22を図4に示した天気を用いた予測値とすると、予測結果P2は下記式(4)で算出できる。
【0033】
P2=β1×P21+β2×P22・・・(4)
【0034】
ここでβ1、β2は重み係数でβ1+β2=1である。この場合、予測部213は、日々の営業日の貢献度233と天気の貢献度233を、それぞれ、β×β1、β×β2として算出することができる。
【0035】
<第2出力データの一例>
図7は、情報出力部215によって出力される第2出力データの一例を示す説明図である。第2出力データ700は、情報出力部215によって出力される貢献度233と除外対象234とを示すデータである。図7では、例として、表701およびグラフ702を用いて日々の貢献度233が%表示され、通知欄703を用いて除外対象234である説明変数222の「天気」が表示される。表701およびグラフ702の予測方法1は、上記式(3)のP1である。
【0036】
表701を見ると、天気の貢献度233は予測期間と実績期間のいずれの日付に対しても0%であり、この場合、天気は出荷量の予測値231に無関係である(予測結果に影響を与えていない)ことが判る。これは、たとえば、天気に影響されずに定常的に出荷される日用品などが該当する。そこで、情報出力部215は、天気を除外対象234とみなし、たとえば、通知欄703に、「天気は除外候補です」という文言を表示することで、利用者に通知する。
【0037】
ここで、除外対象234の通知方法は任意でよい。たとえば、図7の表701において、情報出力部215は、天気の行の色を他の行の色と異なる色で表示してもよい。
【0038】
また、情報出力部215が除外対象234を特定する判定基準は、必ずしも予測期間と実績期間の全日付に対して貢献度233が0%であることに限定されない。たとえば、予め閾値(0より大きい値)を設けておき、いずれの日付に対しても閾値よりも貢献度233が小さい場合を除外対象とみなすなどの方法が考えられる。また、情報出力部215は、たとえば、実績期間の前半の数日(期間は任意)の日付に対してのみ貢献度233が0より大となっていて、かつ、それ以降の実績期間および予測期間では貢献度233が0となっている説明変数222を、除外対象234とみなしてもよい。
【0039】
実施例1によって、予測装置100が定期的に出荷量の予測を行う場合に、利用者は、除外対象234に指定された説明変数222を見ることで、その説明変数222が予測結果に寄与していないことを判断することができる。予測装置100が次回以降、除外対象となった説明変数222を用いずに予測を行うことで、利用者は、次回以降の予測時にその説明変数222のデータを入手したり管理したりする手間(工数)、および予測装置100を利用する際のデータ(説明変数222)の入力の手間(工数)を削減することができる。また、予測装置100は、少ない説明変数222で予測を行うことができるため、予測部213が予測に掛かる時間の削減を図ることができる。
【0040】
ここで、予測装置100の利用形態として、たとえば、予測装置100は初回の予測を実行する際は、さほど予測精度は高くないが処理時間の短い予測方法を用いて予測を実行して除外対象234を求めておき、次に除外対象234を除外したあらたな説明変数222を用いて、初回の予測よりも精度が高いが処理時間が長い予測方法を用いて予測を実行してもよい。これにより、初回の予測時に掛かる予測時間を削減することができる。
【0041】
または、たとえば、ある倉庫で予測装置100を用いて特定した商品ごとの除外対象234は、物流業者の別の倉庫から利用可能なデータベースに蓄積されてもよい。そして、別の倉庫で予測装置100を用いて予測を行う際には、予測装置100は、そのデータベースに蓄積された同一商品または類似商品(例:メーカ違いの同じ商品)ごとの除外対象234を参照してもよい。
【0042】
さらに、図3に示したステップS302で説明変数入力部212が説明変数222を取り込む処理を行う際に、予測装置100は、出力デバイス104により、除外対象234(または、除外対象234ではない予測に影響を与える説明変数222)を利用者に知らせてもよい。これにより、別の倉庫において、どの説明変数222が予測結果に影響を与えるかが判らない場合においても、適切な説明変数222を用いて予測を行うことが可能となる。
【0043】
また、説明変数入力部212は、除外対象234に指定された説明変数222を記憶しておき、予測装置100が次回予測を行う際に利用者が予測装置100にこの除外対象234を入力した場合には、その説明変数222が前回の予測時には除外対象234であったことを出力デバイス104に通知してもよい。これにより、利用者が前回予測時に除外対象であった説明変数222を入力してしまうことを防ぐことができる。
【実施例2】
【0044】
つぎに実施例2について説明する。以下に説明する相違点を除き、実施例2の予測装置100の各部は、図1図7に示された実施例1の同一の符号を付された各部と同一の機能を有するため、それらの説明は省略する。また、実施例2では、実施例1に加えて、説明変数222のいずれかが予測結果に対する変動要因となっている場合に、変動要因の影響が変動要因発生後の±何日後に出荷量に現れるかを適切に評価する処理を有する実施例について説明する。また、実施例2では、予測対象は1種類のデータとする。この場合、たとえば倉庫内で扱う全商品をまとめて1つの予測対象としてもよいし、特定の商品のみを予測対象としてよい。
【0045】
<予測装置100の機能的構成例2>
図8は、予測装置100の機能的構成例2を示すブロック図である。実施例2では、実施例1に加えて、入力データにずらし対象801、第2出力データ700にずらし日数802がそれぞれ追加される。また、プログラムモジュールとしては、相関算出部800が追加される。
【0046】
<予測処理手順例>
図9は、予測装置100による予測処理手順例2を示すフローチャートである。実施例1(図3)と差分があるステップのみを説明する。予測装置100は、説明変数入力部212により、ステップS301の後、説明変数222とずらし対象801を取り込む(ステップS901)。つぎに、予測装置100は、相関算出部800により、実績値221とずらし対象801の各説明変数222との相関係数を算出し、ずらし対象に指定された説明変数222のずらし日数802を決定する(ステップS902)。
【0047】
つぎに、予測装置100は、予測部213により、実績値221と説明変数222とを用いて予測を行い、予測値231、予測精度232、貢献度233を算出する(ステップS903)。ここで説明変数222については、ずらし対象801に指定された説明変数222は、相関算出部800で算出したずらし日数802だけ日数をずらして予測に用いられる。
【0048】
つぎに、予測装置100は、情報出力部215により、ステップS304の後に、各説明変数222の貢献度233、ずらし日数802、除外対象234を出力する。ここで、図4を用いて、ずらし対象801の説明変数222の指定方法について説明する。たとえば、情報出力部215は、説明変数222の変数名401の指定欄に、予測装置100が処理可能な形でずらし対象801の説明変数222を指定する。たとえば、情報出力部215は、ずらし対象801の説明変数222の変数名401の末尾に記号(@など)を付与するなどが考えられる(図示省略)。
【0049】
つぎに、図7を用いて、情報出力部215のずらし日数802の出力方法について説明する。出力方法は任意であるが、たとえば、図7の表701の右端にずらし日数802という列を追加して、各説明変数222のずらし日数802を表示すればよい(図示省略)。
【0050】
<ずらし日数802の決定方法>
図10は、相関算出部800によるずらし日数802の決定方法の一例示す説明図である。図10の内容は、ディスプレイに表示可能である。例として、ある商品の出荷量の変動要因として、CM(コマーシャル)放映がテレビ等でなされた場合を説明する。図10の各グラフ(a)~(c)において横軸は日付402を示し、左方向は過去、右方向は未来を示す。また、グラフ(a)において縦軸は出荷実績を示し、グラフ(b)(c)において縦軸は、CM放送の回数を示す。
【0051】
図10において、(a)は出荷実績、(b)はCM放映日の時系列(日系列)データを示す。これらを見ると、CM放映日の+1日目に出荷実績が急激(パルス的)に上昇していることがわかる。
【0052】
図10において、(c)は相関算出部800におけるCM放映1001の説明変数222のずらし方を説明する図である。相関算出部800は、CM放映の時系列データをずらし日数0から一日ずつずらしていき、出荷実績との相関を取り、たとえば、最も相関係数が高いずれの日数を求める。
【0053】
図10(c)の例では、相関算出部800は、CM放映の説明変数222を+1日ずらすと、出荷実績の時系列データと最も相関係数が高くなったとする。換言すると、CM放映という説明変数222は出荷実績に対してCM放映(説明変数)日の1日後(+1日)に相関が最大となると判断し、相関算出部800は、CM放映の説明変数222のずらし日数802を+1日と決定する。このように相関算出部800は、ずらし対象801に指定された説明変数222を1つずつ出荷実績と突き合わせて相関を評価し、相関が最大となる出荷実績の日付と説明変数のイベントの日付とのずれの日数を算出して、各説明変数222のずらし日数802を決定する。
【0054】
ここで、説明のため図10はずらし日数802が人間でも判りやすい簡単な例を示した。しかし、実際の物流倉庫では、出荷実績量は様々(複数)の変動要因(説明変数222)によって日々絶えず変動しているため、図10で示したような各説明変数222と出荷実績との相関(ずらし日数802)が一目で判断がつく例は限定的である。
【0055】
実施例2のずらし日数評価方法を行うことにより、ずらし日数802が一目で判断がつかない場合でも、適切に各説明変数222(変動要因)の影響が出荷実績および出荷予測±何日目に現れるかを加味することができる。ここで、ずらし評価期間1002は任意の日数としてよい。図10では日付をずらす方向を日付402の時間方向の正方向(未来)のみの例を示しているが、負方向(過去)にずらしてもよい。なお、最も相関係数が高いずれの日数を求める場合、説明変数222のイベント日付から例えば約1カ月先(+約30日)に最大値が生じるということは考えにくく、高い相関が得られる期間はある程度限定的と考えるのが妥当である。また、説明変数が、CMの視聴率や視聴回数のような場合は、実績に基づき、相関について閾値を設定しておくことも可能である。従って、相関について閾値を越えたら最大の相関であると判定し、最もイベントに近い日付を採用してずらし量を算出したり、説明変数ごとに最大ずらし量を設定しておき、その範囲で相関が最大となる日付を採用してずらし量を算出したり、するようにしてもよい。
【0056】
負方向にずらすべき変動要因として、天気予報のデータがある。たとえば、除雪用品や長靴などは、雪の予報日の数日前に出荷量が増えるため、雪の天気の実績データを出荷実績と負方向で相関を取って、ずらし日数802を求めることができる。ここで再び図7を用いて、実施例2における除外対象234の出力方法を説明する。
【0057】
実施例2では、予測装置100は、実施例1と同様の基準(貢献度233が0または閾値以下など)で、除外対象234を特定する。しかし、利用者が除外対象234をずらし対象801に指定していたか否かによって、図7に示した通知欄701への通知内容は異なる。
【0058】
まず、ずらし対象801に指定していなかった場合は、その説明変数222をずらし対象801に指定すれば、予測結果に影響を及ぼす可能性がある。そのため、情報出力部215は、通知欄703に、たとえば「説明変数zはずらし対象候補または除外候補です」と表示して、ずらし対象801とするか或いは次回以降の予測で除外するよう利用者に促す(zは説明変数222)。つぎに、ずらし対象801に指定していた場合は、予測結果に影響を及ぼす可能性はない。このため、情報出力部215は、通知欄703に「説明変数zは除外候補です」と表示して、次回以降は説明変数222から除外するよう利用者に促す。
【0059】
以上の方法によって、予測装置100は、変動要因の影響が予測値に±何日後に現れるかが不明な状況でも、高精度な予測を行うことができる。また、情報出力部215は、貢献度233が所定値よりも低い説明変数222を出力デバイス104に表示する。このため、利用者は、次回以降に予測を行う場合に、その説明変数222を除外するか、ずらし対象の設定を変更することで、少ない説明変数222で高精度な予測を行うことができる。また、実施例1と同様に除外対象となった説明変数222のデータを次回以降に予測する際に、入手および管理する手間(工数)、および予測装置100を利用する際のデータ(説明変数222)の入力の手間(工数)を削減することができる。
【0060】
<ずらし対象候補の選択効果>
図11は、利用者によるずらし対象候補の選択効果を示すグラフである。図11のグラフ1100は、ディスプレイに表示可能である。グラフ1100は、たとえば、出荷実績が毎年の初回出荷から漸減する季節品の出荷予測を行う場合を想定した例とする。この場合、たとえば、予測に用いる説明変数222として、出荷の1週目W1、2週目W2、3週目W3の3つとする。なお、利用者は、ずらし対象候補を選択する選択画面(不図示)からずらし対象候補を選択可能である。
【0061】
本例において、相関算出部800が図9のステップS902を用いてそれぞれの説明変数222(W1~W3)のずらし日数802を算出する場合、相関の取り方によっては、W1~W3の全説明変数222が1週目(2/4~2/10)の出荷実績と最も相関が高いとみなされてしまい、適切な予測が実施できない。そこで、利用者は、W1~W3の各説明変数222をずらし対象801に指定しなければ、予測装置100は、W1~W3の影響を適切に加味した予測を行うことができる。
【実施例3】
【0062】
つぎに、実施例3について説明する。実施例1および実施例2では、予測対象が一つの場合を説明した。しかし、物流倉庫では多種多様な商品を扱うため、商品種別ごとに分けて予測を行いたい場合が存在する。たとえば、化粧品の場合、出荷先が高級店舗(専門店やデパートメントストアなど)向けと量販店向けの化粧品では出荷傾向が異なる。実施例3では、複数種類のデータを予測対象とする場合の例について説明する。なお、以下に説明する相違点を除き、実施例1および実施例2と同一構成には同一符号を付しその説明を省略する。
【0063】
図9を用いて実施例3の予測処理を説明する。なお、以下の説明では、実施例2で述べた説明変数222の日付をずらす処理を行う例で説明するが、実施例1のように説明変数222をずらさない場合においても、実施例3を実施可能である。
【0064】
予測装置100は処理を開始すると、実績値入力部211により複数の予測対象の実績値221を取り込む(ステップS301)。つぎに、予測装置100は、説明変数入力部212により、説明変数222とずらし対象801を取り込む(ステップS901)。ここで、説明変数入力部212は、ずらし対象801を、ステップS301で取り込んだ実績値221ごとに指定してもよい。
【0065】
つぎに、予測装置100は、相関算出部800により、各実績値221とずらし対象801の説明変数222との相関を取り、各実績値221に対するずらし日数802を決定する(ステップS902)。つぎに、予測装置100は、予測部213により、各予測対象に対してステップS902で決定した各実績値221に対するずらし日数802だけずらした各説明変数222を用いて予測を行い、各予測対象の予測値231、予測精度232、各予測対象に対する各説明変数222の貢献度233を算出する(ステップS903)。
【0066】
つぎに、予測装置100は、予測値出力部214により、各予測対象の予測値231と予測精度232を出力する(ステップS304)。最後に、予測装置100は、情報出力部215により、各予測対象に対する各説明変数222の貢献度233とずらし日数802と除外対象234を出力する(ステップS904)。
【0067】
ここで、予測値出力部214は、各予測対象の予測値231と予測精度232を、たとえば図5に示した方法で予測対象ごとに表を分けて出力してもよい。また、情報出力部215は、各説明変数222の貢献度233とずらし日数802と除外対象234を、予測対象ごとにたとえば、図7に示したような第2出力データ700を表示してもよい。
【0068】
実施例3によって、予測装置100は商品カテゴリごとに予測を行うことができ、利用者は、商品カテゴリごとにどの説明変数222が予測結果に寄与しているかを把握することができる。これにより、たとえば、予測結果を物流倉庫の人員計画等に活用する場合、利用者は、商品カテゴリごとに配置する人員を適切に設定することができる。また、次回以降に予測を行う場合、予測装置100が不要な説明変数222を除いて予測することで、利用者の説明変数222の入手、管理、予測装置100への入力の手間を削減することができる。
【実施例4】
【0069】
実施例1~実施例3では、説明変数222の重要度として貢献度233を出力することで、利用者に除外対象234(またはずらし対象801)の説明変数222を提示する例を説明した。実施例4では、予測装置100がその他の情報を追加して出力することで、予測精度向上を図る例を説明する。
【0070】
物流倉庫では、前述のとおり確保できる人員が限られることから、予測値が実績値を下回る(これを「下振れ」と称す)事象を避けたいという事情がある。人員配置で下振れが発生すると、予測値から実績値を引いた分の人数が不足する。また、日々の予測誤差321をなるべく小さく(予測精度232をなるべく高く)することが求められる。このためには、適切な予測方法を用いるとともに、必要な説明変数222を不足なく加味することが求められる。
【0071】
そこで、実施例1~実施例3で説明した各説明変数222の貢献度233に加えて、予測装置100は、実績期間の予測結果における下振れの有無をディスプレイに表示するとともに、実績期間の日々の予測誤差321が特に大きい日(たとえば、閾値以上の日)を表示する。これにより、予測に用いた予測方法の妥当性や、説明変数222の不足の可能性を利用者に提示することができる。
【0072】
図12は、除外対象234(またはずらし対象801)の説明変数222の提示例を示す説明図である。図12において、(a)は、実績期間(1/1~1/7)における出荷量の予測値231と実績値221を示す。(b)は、予測に用いた説明変数222(ここではCM放映1201(回/日))をそれぞれ表している。ここで予測装置100は、任意の予測方法1と、CM放映1201を説明変数222とする予測方法2と、を用いて、予測を実行する。
【0073】
(c)の表は、上の行から日付402、予測誤差1202、予測方法1の貢献度233、予測方法2の説明変数222であるCM放映1201の貢献度233をあらわしている。ここで、予測結果が下振れを起こした日には予測誤差1202の行に「下振れ」と表示される。また、日々の予測誤差1202が閾値(予測誤差閾値1203。図12の例では式(2)で評価して0.5とする。ただし、予測誤差閾値1203の値は任意。)を超えた場合には、予測装置100は、(c)の表の色を変えて表示する。
【0074】
(c)を見ると、CM放映1201の貢献度233は予測期間を通じて低く、予測結果に殆ど影響を与えていないことがわかる。その一方で、下振れ発生日(1/2~1/4)または予測誤差1202が予測誤差閾値1203以上となる日が実績期間の半数以上を占めていることがわかる。そのような場合に、(c)で示したように、予測方法1の貢献度233が高く、予測方法2の説明変数222であるCM放映1201の貢献度233がいずれも所定値よりも低い場合は、予測に用いている予測方法1およびCM放映1201の両方または片方が適切ではない可能性がある。
【0075】
ここで、たとえば、情報出力部215は、通知欄703に実績期間における、下振れ発生日または予測誤差1202が予測誤差閾値1203以上となる日の合計を表示する。そして、その合計が実績期間の日数のうち所定日数(たとえば、半数)以上を占める場合には、予測方法の変更や、予測に用いる説明変数222の追加・変更、または各説明変数222のずらし対象801の指定の変更を促す通知を表示する(図示省略)。これにより、利用者は予測方法の変更の必要性に気づくとともに、予測に用いる説明変数222の変更、ずらし対象801の変更の必要性に気づくことができる。
【0076】
また、予測装置100は、下振れした日について再度出荷量を予測し、予測誤差が最小となる(予測精度が最大となる)ように貢献度233を設定してもよい。予測装置100は、再予測の前後で貢献度233が所定値以上下がっていれば、悪影響を与えているため、その予測方法1または説明変数222を強調表示するなどして通知してもよい。
【0077】
なお、実施例4では下振れについて説明したが、予測値が実績値を上回る(これを「上振れ」と称す)事象についても同様である。すなわち、実施例1~実施例3で説明した各説明変数222の貢献度233に加えて、予測装置100は、実績期間の予測結果における上振れの有無をディスプレイに表示するとともに、実績期間の日々の予測誤差321が特に大きい日(特定の誤差以上)を表示する。これにより、予測に用いた予測方法の妥当性や、説明変数222の不足の可能性を利用者に提示することができる。
【0078】
また、物流現場に限らず、他の現場においても実施例~実施例4を適用することができる。たとえば、生産現場でも、消費者のデータを入手困難などの理由でなるべく少ない説明変数222で需要を予測することが求められる。実施例~実施例4を生産現場に適用すれば、予測装置100が2回目以降に予測を行う際に不要な説明変数222を除外して高精度な予測を行うことができ、利用者が説明変数222を管理したり入手したりする手間を削減することが可能である。
【0079】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。たとえば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、または置換をしてもよい。
【0080】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、たとえば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサ101がそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0081】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)の記録媒体に格納することができる。
【0082】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0083】
100 予測装置
101 プロセッサ
102 記憶デバイス
211 実績値入力部
212 説明変数入力部
213 予測部
214 予測値出力部
215 情報出力部
221 実績値
222 説明変数
231 予測値
232 予測精度
233 貢献度
234 除外対象
321 予測誤差
800 相関算出部
1202 予測誤差
1203予測誤差閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12