(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】複数の感知トランジスタに結合されたパワートランジスタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/8234 20060101AFI20240806BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20240806BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20240806BHJP
H01L 25/16 20230101ALI20240806BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20240806BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20240806BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20240806BHJP
H03K 17/00 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
H01L27/088 B
H02M1/00 H
H01L25/16 A
H01L27/06 102A
H03K17/687 A
G01R31/28 Z
H03K17/00 B
(21)【出願番号】P 2021505704
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(86)【国際出願番号】 US2019044024
(87)【国際公開番号】W WO2020028291
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-27
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】クンタル ジョアルダール
(72)【発明者】
【氏名】ミン チュウ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィジャイ クリシュナムルティ
(72)【発明者】
【氏名】ティクノ ハルジョノ
(72)【発明者】
【氏名】アンクル チャウハン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィナヤク ヘッジ
(72)【発明者】
【氏名】マニシュ スリヴァスタヴァ
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-174098(JP,A)
【文献】特開2015-167233(JP,A)
【文献】特開2015-215899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0313378(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105242190(CN,A)
【文献】韓国公開特許第2007-0050603(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/8234
H01L 27/06
H01L 27/088
H02M 1/00
H01L 25/16
H03K 17/687
G01R 31/28
H03K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスであって、
第1の半導体ダイ
と、
前記第1の半導体ダイに集積され
るパワートランジスタであって、第1のゲートと、第1の端子と、第2の端子とを含む、前記パワートランジスタ
と、
前記第1の半導体ダイに集積され
る第1の感知トランジスタであって、前記第1の
ゲートに結合される第2のゲートと
、第3の端子と、前記第2の
端子に結合され
る第4の端子
とを含む、前記第1の感知トランジスタ
と、
前記第1の半導体ダイに集積され
る第1の抵抗器であって、第1の温度係数を有し、前記第
3の
端子に結合される第5の端子と
、第6の端子
とを含
む、前記第1の抵抗器
と、
前記第1の半導体ダイに集積され
る第2の感知トランジスタであって、前記第
1の
ゲートに結合される第3のゲートと
、第7の端子と、前記第
2の
端子に結合され
る第8の端子
とを含む、前記第2の感知トランジスタ
と、
前記第1の半導体ダイに集積され
る第2の抵抗器であって、第2の温度係数を有し、前記第
7の
端子に結合される第9の端子と
、第10の端子とを含
む、前記第2の抵抗器
と、
前記第1の抵抗器の第6の端子に結合される第1のノードと、前記第2の抵抗器の第10の端子に結合される第2のノードとを含むコントローラと、
を含む、電子デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の電子デバイスであって、
前記第1の端子が前記パワートランジスタのソースであり、前記第2の端子が前記パワートランジスタのドレインであり、前記第3の端子が前記第1の感知トランジスタのソースであり、前記第4の端子が前記第1の感知トランジスタのドレインであり、前記第7の端子が前記第2の感知トランジスタのソースであり、前記第8の端子が前記
第2の感知トランジスタのドレインである、電子デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の電子デバイスであって、
前記パワートランジスタ
と前記第1の感知トランジスタ
と前記第2の感知トランジスタ
とが、各々、n金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(nMOSFET)である、電子デバイス。
【請求項4】
請求項
1に記載の電子デバイスであって、
前記パワートランジスタ
と前記第1の感知トランジスタ
と前記第2の感知トランジスタ
とが、各々、p金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(pMOSFET)である、電子デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載の電子デバイスであって、
前記コントローラが、前記パワートランジスタの第1の端子に結合される第3のノードを
更に含む、電子デバイス。
【請求項6】
請求項
1に記載の電子デバイスであって、
第2の半導体ダイ
であって、前記コントローラが集積される、
前記第2の半導体ダイを更に含む、電子デバイス。
【請求項7】
請求項5に記載の電子デバイスであって、
前記コントローラが、前記第6の端子から前記第1の端子への仮想接続と、前記第10の端子から前記第1の端子への仮想接続とを提供するように構成される、電子デバイス。
【請求項8】
請求項5に記載の電子デバイスであって、
前記コントローラが、前記第1のノードにおける第1の電圧を前記第2のノードにおける第2の電圧と前記第3のノードにおける第3の電圧とに等しく維持するように構成される、電子デバイス。
【請求項9】
請求項1に記載の電子デバイスであって、
前記コントローラが、
第1の感知電流と第2の感知電流とを生成し、
前記第1の
感知電流と前記第2の感知電流とを用いて所望の感知電流の値を演算する、
ように構成され、
前記所望の感知電流が、前記第1の端子と前記第2の端子との間を流れる電流をスケールダウンしたものである、電子デバイス。
【請求項10】
請求項1に記載の電子デバイスであって、
前記第1及び第2の温度係数が、異なる大きさである、電子デバイス。
【請求項11】
電子ヒューズ(eFuse)、であって、
コントローラ
と、
第1のトランジスタであって、前記第1のトランジスタの第1の端子と第2の端子との間で負荷電流を導通するように構成され、前記第1の端子が第1のノードにおいて前記コントローラに結合する、前記第1のトランジスタ
と、
前記第2の端子において前記第1のトランジスタに結合される第2のトランジスタであって、前記第2のトランジスタの第3の端子が第2のノードにおいて第1の抵抗器を介して前記コントローラに結合し、前記第1の抵抗器が第1の温度係数を有する、前記第2のトランジスタ
と、
前記第2の端子において前記第1のトランジスタに結合される第3のトランジスタであって、前記第3のトランジスタの第4の端子が第3のノードにおいて第2の抵抗器を介して前記コントローラに結合し、前記第2の抵抗器が第2の温度係数を有する、前記第3のトランジスタ
と、
を含み、
前記コントローラが、前記第1の温度係数の関数である第1の感知電流と、前記第2の温度係数の関数である第2の感知電流とを生成するように構成される、eFuse。
【請求項12】
請求項11に記載のeFuseであって、
前記コントローラが、前記第1の感知電流
と前記第2の感知電流
とを用いて所望の電流値を演算するように
更に構成される、eFuse。
【請求項13】
請求項12に記載のeFuseであって、
前記コントローラが、前記所望の電流値が事前定義された値より大きいと前記コントローラが判定した場合
に電気システムをオフにするように
更に構成される、eFuse。
【請求項14】
請求項11に記載のeFuseであって、
前記第1、第2及び第3のトランジスタが、各々、n金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(nMOSFET)である、eFuse。
【請求項15】
請求項11に記載のeFuseであって、
前記第1、第2及び第3のトランジスタが、各々、p金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(pMOSFET)である、eFuse。
【請求項16】
請求項11に記載のeFuseであって、
前記コントローラが、前記第1の端子から前記第3の端子への仮想接続と、前記第1の端子から前記第4の端子への仮想接続とを提供するように
更に構成される、eFuse。
【請求項17】
請求項11に記載のeFuseであって、
前記コントローラが、前記第1のノードにおける第1の電圧を前記第2のノードにおける第2の電圧と前記第3のノードにおける第3の電圧とに等しく維持するように更に構成される、eFuse。
【請求項18】
方法であって、
第1の抵抗器を介して第1の感知トランジスタに結合される第1のノードと第2の抵抗器を介して第2の感知トランジスタに結合される第2のノードとを含むコントローラによって、
パワートランジスタに結合される前記第1の感知トランジスタを介して受け取られ
る第
1の感知電流
と前記パワートランジスタに結合される前記第2の感知トランジスタを介して受け取られ
る第2の感知電流
とを測定すること
と、
前記コントローラによって、前記第1
の感知電流と前記第2の感知電流
とを用いて所望の感知電流値を演算すること
と、
前記コントローラによって、前記所望の感知電流値を用いて前記パワートランジスタを介して流れる負荷電流を演算すること
と、
を含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
前記コントローラによって
、前記負荷電流を閾値と比較すること
と、
前記負荷電流が閾値に等しいかそれ以上であるとの判定に基づく電気システムのターンオフを容易にすること
と、
を更に含む、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、
前記第1の抵抗器が第1の温度係数を有し、前記第2の抵抗器が第2の温度係数を有し、前記第1の温度
係数と前記第2の温度係数とが異なる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子デバイスには、大規模(high magnitude)信号(例えば、10A)から導出される小規模信号(例えば、10mA)を用いて大規模信号を演算する測定システムを含むものがある。
【発明の概要】
【0002】
少なくとも一つの例において、電子デバイスが、第1の半導体ダイ、第1の半導体ダイに集積されるパワートランジスタ、第1の半導体ダイに集積される第1の感知トランジスタ、第1の半導体ダイに集積される第1の抵抗器、第1の半導体ダイに集積される第2の感知トランジスタ、及び、第1の半導体ダイに集積される第2の抵抗器を含む。パワートランジスタは、第1のゲートと第1の端子と第2の端子とを含む。第1の感知トランジスタは、第2のゲートと第3の端子と第4の端子とを含む。第2のゲートは第1のゲートに結合され、第4の端子は第2の端子に結合される。第1の抵抗器は、第1の温度係数を有し、第5の端子と第6の端子とを含む。第3の端子は第5の端子に結合される。第2の感知トランジスタは、第3のゲート、第7及び第8の端子を含み、第3のゲートは第1のゲートに結合され、第8の端子は第2のゲートに結合される。第2の抵抗器は、第2の温度係数を有し、第9の端子と第10の端子を含む。第7の端子は第9の端子に結合される。
【0003】
少なくとも別の例において、電子ヒューズ(eFuse)が、コントローラと、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、第3のトランジスタとを含む。第1のトランジスタの第1の端子と第2の端子との間の負荷電流を導通するように構成され、第1のトランジスタの第1の端子が第1のノードにおいてコントローラに結合される。第2のトランジスタは、第2の端子で第1のトランジスタに結合され、第2のトランジスタの第3の端子が、第2の端子で第1の抵抗器を介してコントローラに結合され、第1の抵抗器が第1の温度係数を有する。第3のトランジスタは、第2の端子で第1のトランジスタに結合され、第3のトランジスタの第4の温度係数が、第3のノードにおいて第2の抵抗器を介してコントローラに結合され、第2の抵抗器が第2の温度係数を有し、コントローラは、第1の温度係数の関数である第1の感知電流と第2の温度係数の関数である第2の感知電流とを生成するように構成される。
【0004】
少なくとも別の例において、或る方法が、コントローラによって、第1の感知電流及び第2の感知電流を測定することと、コントローラによって、第1及び第2の感知電流を用いて所望の感知電流値を演算することと、コントローラによって、所望の感知電流値を用いてパワートランジスタを介して流れる負荷電流を演算することとを含む。第1の感知電流は第1の感知トランジスタを介して受け取られ、第2の感知電流は第2の感知トランジスタを介して受け取られる。第1及び第2のトランジスタはパワートランジスタに結合する。第1のトランジスタは第1の抵抗器を介してコントローラに結合し、第2の感知トランジスタは第2の抵抗器を介してコントローラに結合する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】種々の例における例示的な電子デバイスを示す。
【0006】
【
図2A】種々の例における電子デバイスの例示的なコントローラユニットを示す。
【0007】
【
図2B】種々の例における電子デバイスの別の例示的なコントローラユニットを示す。
【0008】
【
図3】種々の例において感知電流を演算するための例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
パワー回路には、場合によって負荷に電流(以下、負荷電流と呼ぶ)を供給するパワートランジスタを用いるものがある。この負荷電流は、大電流(例えば、10A)であり、電子ヒューズ(eFuse)などのいくつかのパワーシステム応用例において測定する必要がある。このような大きな規模の電流は、例えば電流計を用いる、負荷電流の直接測定とは対照的に、間接的に測定することが好ましい。間接的な測定は、パワートランジスタがオンにされたときに、感知トランジスタがパワートランジスタの負荷電流を示すドレイン・ソース電流(本明細書では感知電流とも呼ばれる)を有するような様式で、感知トランジスタをパワートランジスタに結合することによって成され得る。感知トランジスタは、パワートランジスタの大きさに対してサイズが小さい(例えば、チャネル幅が小さい)。従って、感知電流を測定すること(すなわち、換言すれば、感知すること)によって、感知電流よりも規模がはるかに大きな負荷電流を間接的に測定することができる。この間接的な測定は、パワートランジスタとは異なるサイズの感知トランジスタを用いることによって容易になる。サイズは、負荷電流が、乗算係数によって感知電流に関連するように選択され得る。場合によっては、この乗算係数は感知比(sense ratio)と呼ばれる。感知電流を感知することに続いて、感知比を感知電流と乗算して、負荷電流を演算することができる。感知電流を測定(又は感知)し、負荷電流を演算するために、パワートランジスタ及び感知トランジスタに結合される測定回路を用いることができる。
【0010】
感知比は、それぞれ、感知トランジスタ及びパワートランジスタの電流フロー経路に沿った抵抗の比として表され得る。感知トランジスタ及びパワートランジスタにおいて電流が遭遇する抵抗は、パワートランジスタ及び感知トランジスタを作製するために用いられる材料の導電特性のために導入される寄生抵抗を含む。また、これらの寄生抵抗は、二つの電流フロー経路に沿って異なっている。抵抗は温度の関数であるため、パワートランジスタ及び感知トランジスタ両方の寄生抵抗は、温度と共に変化するが、異なるレートでは、感知比に誤差を導入し、これは、更に負荷電流の測定/演算に誤差を導入する。別の言い方をすると、両方のトランジスタの寄生抵抗は温度と共に異なって変化するので、感知比が変化し、そのため、感知電流が温度と共に変化するにつれて測定負荷電流値に誤差が導入される。また、負荷電流に対する感知電流の関係は、パワートランジスタに提供されるゲート・ソース(VGS)バイアスの関数として変化し得る。
【0011】
感知トランジスタ及びパワートランジスタを含むパワー回路について、感知電流に対する寄生抵抗及び/又はゲートバイアスの影響を緩和するために、幾つかの例において、少なくとも二つの感知トランジスタがパワートランジスタに結合される。少なくとも二つの感知トランジスタの各々は、それぞれのソース端子において、異なる抵抗器(以降、補償抵抗器と称する)に結合する。これらの補償抵抗器は、少なくとも部分的に、温度及びゲート・ソースバイアス変化に起因して感知電流に導入される誤差を補償する。少なくとも幾つかの例において、補償抵抗器の温度係数は異なっている。幾つかの例において、以下に更に説明するように、パワートランジスタの負荷電流は、少なくとも部分的に、補償抵抗器の既知の温度係数値と、感知トランジスタから測定される感知電流とを用いて演算することができる。要素(例えば、金属)を用いることによって、又は異なる要素(例えば、ポリシリコン及び金属)を合成することによって、異なる温度係数を有する補償抵抗器を製造することができる。幾つかの例において、一方の補償抵抗器がポリシリコンを含み、他方の補償抵抗器が金属を含む。他の例において、一方の補償抵抗器が金属とポリシリコンの両方を含み得、他方の補償抵抗器が金属を含み得る。他の例において、一つ又はそれ以上の要素の種々の他の組み合わせを用いて、異なる温度係数を有する補償抵抗器を製造することができる。少なくとも幾つかの例において、温度係数値を定量化することができる。
【0012】
ここで
図1を参照すると、例示的な電子デバイス100が示されている。電子デバイス100は、半導体ダイ102上に集積されるパワートランジスタ104を含む。また、電子デバイス100は、半導体ダイ102上に集積される感知トランジスタ106、108を含む。一例において、パワートランジスタ104及び感知トランジスタ106、108は、n金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(nMOSFET又はnMOS)である。このような例において、パワートランジスタ104は、ドレイン端子l04d、ソース端子l04s、及びゲート端子l04gを含む。感知トランジスタ106は、ドレイン端子l06d、ソース端子l06s、及びゲート端子l06gを含む。感知トランジスタ108は、ドレイン端子l08d、ソース端子l08s、及びゲート端子l08gを含む。ドレイン端子l04d、l06d、及びl08dは、ノード111において互いに結合する。
【0013】
幾つかの例において、パワートランジスタ104は、半導体ダイ102に集積される多数(例えば、1000のオーダー)のトランジスタセルを含み、オンにされたときにパワートランジスタ104が比較的大きなドレイン・ソース電流を有するように並列に共に結合される。上述のように、幾つかの例において、感知トランジスタ106、108は、同じ半導体ダイ102上に製造され、パワートランジスタ104と同じプロセスフローで製造される。感知トランジスタ104、106は、パワートランジスタ104よりもはるかに小さなサイズとされる。幾つかの実施例において、感知トランジスタ106、108は、半導体ダイ102に集積されて共に並列に結合されるトランジスタセルを含むが、感知トランジスタ106、108を構成する並列接続されたトランジスタセルは、パワートランジスタ104を構成する並列接続されたトランジスタセルよりもはるかに数が少ない。動作において、感知トランジスタ106、108及びパワートランジスタ104の両方がオンにされると、感知トランジスタ106、108のそれぞれのドレイン・ソース電流(すなわち、感知電流)は、パワートランジスタ104の電流よりもはるかに小さくなる。
【0014】
作製及び製造の観点から、幾つかの例において、パワートランジスタ104及び感知トランジスタ106、108は、それらのそれぞれのドレイン端子を共に効率的に結合する、半導体ダイ102におけるドレイン端子l04d、l06d、及びl08dなどのそれらのドレイン端子を形成するシリコンの領域を共有する。この結合されたドレイン端子は、ドレイン端子110と記される。シリコンのこの共有領域は、パワートランジスタ及び感知トランジスタがnMOSトランジスタである幾つかの例のために、半導体ダイ102におけるドレイン領域と呼ぶことができる。抵抗器105及び抵抗器107が、ドレイン端子110の寄生(及び/又は分散)抵抗を表す。R
SUB1及びR
SUB2が、それぞれ、ドレイン端子110の寄生抵抗に対する抵抗器107及び105の抵抗寄与を示すとする。これら二つの寄生抵抗R
SUB1+R
SUB2の合計は、ドレイン端子110の総寄生抵抗である。言い換えると、
図1の回路は、ノード111にそれぞれ接続される感知トランジスタ106、108のドレイン端子l06d、l08dを示し、抵抗器105が、パワートランジスタ104及び感知トランジスタ106、108の両方と共通の寄生抵抗R
SUB2を表すことを示す。抵抗器114が、パワートランジスタ104のソース端子l04sに関連する寄生抵抗を表す。
【0015】
抵抗器106Rが、感知トランジスタ106のソース端子l06dに結合される第1の端子135と、コントローラ132の一部であるサブコントローラ150の第1のノード120に結合される第2の端子136とを有する。コントローラ132は、幾つかの例において、トランジスタ104のゲート端子l04gを制御する他の付加された回路要素(
図1に明示的に示されていない)を含む。コントローラユニット132は、幾つかの例において、処理ユニット(
図1には明示的に示されていないが、
図2(a)に関して以下で説明する)及びストレージ(例えば、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(読み出し専用メモリ))を含み、これは、機械実行可能命令を格納する任意の適切なタイプの非一時的コンピュータ読み取り可能媒体を含み得る。機械実行可能命令は、処理ユニットによって実行されると、処理ユニットに、本明細書でコントローラユニット132に帰属する一つ又はそれ以上の行為を実施させる。コントローラユニット132は、トランジスタ106、108にそれぞれ結合され、第1の感知電流I
SNS1及び第2の感知電流
SNS2をそれぞれ感知/測定するように構成される第1のサブコントローラ150(「サブコントローラ150」)及び第2のサブコントローラ160(「サブコントローラ160」)を含む。以下に更に述べるように、第1の感知電流及び第2の感知電流の両方は、トランジスタ104の所望の感知電流の演算を容易にし、これにより、トランジスタ104のドレイン・ソース電流の演算が容易となる。
図2に示される特定の例において、コントローラ132は第2の半導体ダイ118上に集積される。幾つかの例において、コントローラ132は半導体ダイ102上に集積される。
【0016】
サブコントローラ150は、パワートランジスタ104の端子112に結合されるノード138を含む。端子112は、抵抗器114を介してソース端子l04sに結合される。サブコントローラ150は、抵抗器106Rに結合されて、抵抗器106Rからパワートランジスタ104の端子112への仮想接続を提供する。サブコントローラ150は演算増幅器124を含み、演算増幅器124は、パワートランジスタ104の端子112に結合される第1の入力ポート139と、抵抗器106Rの第2の端子136に結合される第2の入力ポート140と、出力ポート141とを含む。サブコントローラ150は、ゲート端子l28g、ソース端子l28s、及びドレイン端子l28dを有するパストランジスタ128を更に含む。ゲート端子l28gは演算増幅器124の出力ポート141に接続され、ソース端子l28sは抵抗器106Rの端子136に接続されている。サブコントローラ150は、サブコントローラ150が抵抗器106R及びパワートランジスタ104の端子112に結合されて、第1のノード120における第1の電圧を、ノード138における第2の電圧を実質的に等しく維持する負のフィードバック配置を含む。サブコントローラ150は、抵抗器106Rの第2の端子136からパワートランジスタ104の端子112に無視し得る量の電流しか流れないようにし、それによってノード138と120との間に仮想接続を提供する。
【0017】
抵抗器106Rと同様に、抵抗器108Rが、感知トランジスタ108のソース端子l08sに結合される第1の端子133と、上述のようにコントローラ132の一部であるサブコントローラ160の第1のノード122に結合される第2の端子134とを有する。サブコントローラ160は、パワートランジスタ104の端子112に結合されるノード144を含む。サブコントローラ160は、抵抗器108Rに結合されて、抵抗器108Rからパワートランジスタ104の端子112への仮想接続を提供する。サブコントローラ160は演算増幅器126を含み、演算増幅器126は、パワートランジスタ104の端子112に結合される第1の入力ポート146、抵抗器108Rの第2の端子124に結合される第2の入力ポート148、及び出力ポート151を含む。サブコントローラ160は、ゲート端子l30g、ソース端子l30s、及びドレイン端子l30dを有するパストランジスタ130を更に含む。ゲート端子l30gは演算増幅器126の出力ポート151に接続され、ソース端子l30sは抵抗器108Rの端子134に接続されている。サブコントローラ160は、サブコントローラ160が抵抗器108Rに及びパワートランジスタ104の端子112に結合されて、第1のノード122における第1の電圧をノード144における第2の電圧と実質的に等しく維持する、負のフィードバック配置を含む。サブコントローラ160は、抵抗器108Rの第2の端子134からパワートランジスタ104の端子112に無視し得る量の電流しか流れないようにし、それによってノード144と122との間に仮想接続を提供する。
【0018】
抵抗器106R、108Rは、半導体ダイ102上で集積されている。抵抗器106R、108Rは温度係数が異なる。例えば、抵抗器106Rは、或る要素(例えば、金属)を用いることによって、又は、異なる要素(例えば、ポリシリコン及び金属)を合成することによって製造され得る。抵抗器106Rの温度係数は、TC106によって表記することができる。一方、抵抗器108Rは、抵抗器108Rの結果として生じる温度係数が抵抗器106Rの温度係数とは異なるように、一つ又はそれ以上の要素の異なる組み合わせを用いて製作され得る。抵抗器108Rの温度係数はTC108で表記することができ、温度係数TC106とTC108は等しくない。少なくとも幾つかの例において、抵抗器106R、108Rは、寄生抵抗がトランジスタ104のドレイン・ソース電流の演算に及ぼす影響を補償する抵抗を有するように設計される。少なくとも幾つかの例において、これらの温度係数値は、定量化され、コントローラユニット132のメモリに格納される。幾つかのシナリオでは、温度係数は、時間の経過と共に又は何らかの他の理由のため変化する可能性があるので、温度係数の蓄積値を補正する必要がある。このようなシナリオでは、コントローラユニット132は、少なくとも部分的に、後述する式1を用いることによって、温度係数値を自動補正するように構成され得る。
【0019】
負荷電流は感知比と感知電流との積であり、感知比は、上述のように、感知電流によって見られる抵抗と負荷電流によって見られる抵抗との比である。従って、感知電流Isnsは、Isns=IL×(RL/RS)として表すことができ、ここで、ILは負荷電流であり、RLは負荷電流によって見られる抵抗であり、RSは感知電流によって見られる抵抗である。これらの抵抗は、温度の二次関数として表すことができ、感知電流に対して次の式を導く。Isns=Isns0(l+TClsnsΔT+TC2snsΔT2)。ここで、Isns0は所望の感知電流(すなわち、温度に依存しない感知電流)であり、ΔTは温度の変化であり、TClsns及びTC2snsは、それぞれ、所望の感知電流の線形及び二次温度係数である。幾つかのシナリオにおいて、真の感知比値がコントローラユニット132に格納され、感知電流は、温度変動のために調整(又は幾つかの例において、自動補正)される。
【0020】
上述したように、サブコントローラ150は、抵抗器106Rの第2の端子136からパワートランジスタ104の端子112に無視し得る量の電流しか流れないようにし、それによってノード138と120との間に仮想接続を提供する。同様に、サブコントローラ160は、無視し得る量の電流のみを抵抗器108Rの第2の端子134からパワートランジスタ104の端子112に流し、それによってノード138(又はノード144)と122との間に仮想接続を提供する。別の言い方をすると、ノード120における電圧電位とノード138における電圧電位とは実質的に類似しており、ノード122における電圧電位とノード144における電圧電位とは実質的に類似している。ここで、電子デバイス100の動作を参照すると、トランジスタ104が(コントローラユニット132を介して送られるゲート信号によって)オンにされると、(ドレイン・ソース電圧に応じて)トランジスタ104から負荷電流が流れる。トランジスタ106、108は、負荷電流をミラーリングする電流がトランジスタ106、108から流れるようにトランジスタ104に結合される。演算増幅器124及び126は非常に高い入力インピーダンスを有するので、トランジスタ106、108を流れる感知電流は、ISNS1及びSNS2として、それぞれ、パストランジスタ128、130を介して減衰されずに流れ続ける。パストランジスタ128、130は、トランジスタ128、130が飽和領域において動作しているようにバイアスされ、そのため、それらを介して流れる電流はそれぞれのゲート電圧のみに依存する。サブコントローラ150、160において用いられる負のフィードバック配置のため、ノード120、122での電位を、それぞれノード138、144における電位と異なるようにさせる擾乱が、それぞれ、演算増幅器124、126によって補償される。別の言い方をすると、パワートランジスタ104と感知トランジスタ106、108との間の電流のミラーリングが歪んでいる場合、それは、それぞれ、パストランジスタ128、130のゲートに結合されている演算増幅器124、126の出力における等価の調節によって補償される。この結果、ノード120、122における電圧及び感知電流ISNS1、SNS2がそれぞれ自動的に補正される。
【0021】
上述の例の幾つかにおいて、トランジスタ104、106、108は、それぞれ、n金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(nMOSFET)である。他の例において、トランジスタ104、106、108は、それぞれp金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(pMOSFET)である。幾つかの例において、トランジスタ106、108は、垂直nMOSFETである。しかしながら、例は、垂直トランジスタに限定されず、横方向のトランジスタを含み得る。
図1に例示されている例において、パストランジスタ128、130はp金属酸化物半導体電界効果トランジスタである。他の例において、トランジスタ128、130は、n金属酸化物半導体電界効果トランジスタである。
【0022】
次に、
図2(a)を参照すると、例示のコントローラユニット132が示されている。コントローラユニット132は、所望の感知電流を演算することを容易にし、これは、パワートランジスタのドレイン・ソース電流の演算を容易にする。一例において、コントローラユニット132は、処理ユニット(以下、「プロセッサ」)205、プロセッサ205に結合されるメモリユニット(以下、「メモリ」)210を含む。電流測定ユニット206はプロセッサ205に結合する。幾つかの例において、メモリ210は、RAM(ランダムアクセスメモリ、及びROM(読み取り専用メモリ))を含む。幾つかの例において、メモリ210は、機械実行可能命令を格納する任意の適切なタイプの非一時的コンピュータ読み取り可能媒体を含む。機械実行可能命令は、プロセッサ205によって実行されると、プロセッサ205に、本明細書でコントローラユニット132に帰属する一つ又はそれ以上の行為を実施させる。サブコントローラ150、160は、それぞれ、導体202、201を介して電流測定ユニット206に結合する。幾つかの例において、電流測定ユニット206は、感知電流I
SNS1、
SNS2を電圧V
SNS1及びV
SNS2に変換するように構成される既知の値の一つ又はそれ以上の抵抗器を含む。これらの電圧は、コントローラユニット132においてその出力が処理され得るアナログデジタルコンバータを用いて更にデジタル化され得る。
【0023】
プロセッサ205は、所望の感知電流I
sns0を演算し、トランジスタ104のドレイン・ソース電流を演算するように構成される。ここで
図3を参照すると、所望の感知電流を演算するための例示の方法300が示されている。方法300は、第1の感知電流I
SNS1及び第2の感知電流
SNS2を測定することを含む工程305で始まる。これは、コントローラユニット132内にある電流測定ユニット206によって行われる。電流測定に続いて、測定された値は、プロセッサ205に通信され得、又は幾つかの例においてメモリ210に格納され得る。次に、方法300は、所望の感知電流I
SNS0を演算することを含む工程310に進む。幾つかの例において、この演算は、下記のように、第1及び第2の電流を定義する電流・温度関係を用いることによって実施される。
ここで、I
SNS1、
SNS2は、サブコントローラ150、160から受け取られる感知電流値であり、I
SNS0は所望の感知電流値であり、TCl
SNS1、TCl
sns2は、それぞれ、106及び108に関連する感知電流の線形温度係数値であり、TC2
SNS1、TC2
sns2は、それぞれ、106及び108に関連する感知電流の二次温度係数値であり、ΔTは温度変化値である。ΔT及びI
SNS0値は未知である。上で定義した二次関係はいずれも、3つの既知の変数(式1では、TCl
SNS1、TC2
snsl、I
SNS1、式2では、TCl
sns2、TC2
sns2、I
SNS2)と二つの未知の変数を有する。既知の変数TCl
SNS1、TC2
snsl、TC1
sns2、TC2
sns2は、メモリ210に格納され得る。ΔTは、以下に示す式3を用いて、プロセッサ205によって演算され得る。
一方、I
SNS0値は、以下に示す式4を用いて演算され得る。
【0024】
所望の電流感知ISNS0を演算することに続いて、方法300は、トランジスタ104のドレイン・ソース電流を演算することを含む工程315に進む。これは、予め定義された感知比値及び所望の電流感知ISNS0値を用いることによって行われる。例えば、感知比が「SR」によって定義されると仮定すると、トランジスタ104のドレイン・ソース電流は、SR×ISNS0である。方法300は、幾つかの例において、その後、ドレイン・ソース電流値を閾値と比較することを含む工程320に進む。ドレイン・ソース電流値が閾値より大きい場合、コントローラユニット132はその比較に基づく行為を実施する。例えば、eFuse応用例において、コントローラユニット132は、電気システム内の電流の流れが定格(例えば、閾値)値以上である状況において、電流フローをオフにするように構成され得る。
【0025】
コントローラユニット132の幾つかの例には、所望の感知電流I
SNS0値を生成するためのアナログ回路要素が含まれ得、所望の感知電流I
SNS0値は、トランジスタ104のドレイン・ソース電流を演算するために用いられ得る。次に、
図2(b)を参照すると、所望の感知電流I
SNS0を演算するための重み付け平均手法を含む例示のコントローラユニット132が示されている。幾つかの例において、このような手法は更に、それぞれ、抵抗R1、R2を有する抵抗器215、220を含む。そのような手法は、それぞれ、ノード217、218で抵抗器215、220に結合される追加の抵抗器221、221を含み得る。抵抗器221、222の抵抗は、抵抗R1、R2が加重平均手法における重みとして作用するように、抵抗R1、R2より高くし得る。抵抗器221、222はノード219で結合し、ノード219は更に、導体230を介して演算増幅器232に結合する。演算増幅器232はフィードバック抵抗器244を含む。
図2(b)に示された例において、演算増幅器232の負の端子は、端子225及び/又は抵抗器233を介して接地ソース(又は仮想接地ソース)に結合される。演算増幅器232の出力V
outが、次の加重平均式によって演算され得る。V
out=R
1I
SNS1+R
2I
SNS2。この出力V
outは、アナログデジタルコンバータを用いて更にデジタル化され得、デジタル化されたデータは、プロセッサ205と同様にプロセッサ(明示せず)において処理され得る。
【0026】
前述の議論及び特許請求の範囲において、用語「含む(comprising及びincluding)」は、「含むが、これらに限定されない」ことを意味するように解釈されるべきである。また、用語「結合する」は、間接的又は直接的な接続のいずれかを意味することが意図される。タスク又は機能を実施するように「構成される」要素又は特徴は、製造時にその機能を実施するように構成され(例えば、プログラムされるか又は構造的に設計され)得、及び/又は、製造後にユーザによって構成可能(又は再構成可能)であって、機能及び/又は他の追加又は代替機能を実施するようにしてもよい。こういった構成は、デバイスのファームウェア及び/又はソフトウェアプログラミング、デバイスのハードウェア構成要素及び相互接続の構成及び/又はレイアウト、又はそれらの組み合わせによるものであり得る。また、前述の議論における語句「接地」又は同様のものの使用は、シャーシ接地、アース接地、浮動接地、仮想接地、デジタル接地、共通接地、及び/又は、明細書の教示に適用可能な、又はそれに適した任意の他の形態の接地接続を含むことが意図される。特に明記しない限り、値に先行する「約」、「ほぼ」、又は「実質的に」は、記載された値の+/10%を意味する。
【0027】
上記の議論は、本原理及び種々の実施例を例示することを意味している。上述の説明が完全に理解されれば当業者には多数の変形及び改変が明らかとなるであろう。後述の特許請求の範囲はこのような変形及び改変を包含するように解釈されることを意図している。