(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両用ドアハンドル
(51)【国際特許分類】
E05B 79/08 20140101AFI20240806BHJP
E05B 77/06 20140101ALI20240806BHJP
E05B 85/16 20140101ALI20240806BHJP
【FI】
E05B79/08
E05B77/06 A
E05B85/16 D
E05B85/16 C
(21)【出願番号】P 2020557329
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2019059417
(87)【国際公開番号】W WO2019201770
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-10
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516180070
【氏名又は名称】ミネベア アクセスソリューションズ イタリア ソチエタ ペル アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MINEBEA ACCESSSOLUTIONS ITALIA S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(72)【発明者】
【氏名】マルコ サヴァント
(72)【発明者】
【氏名】アントニー ゲラン
(72)【発明者】
【氏名】アントーニオ カンナヴォ
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0121008(US,A1)
【文献】特開2015-090028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0290018(US,A1)
【文献】特表2008-506049(JP,A)
【文献】特開2008-248631(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0131764(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105649437(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアハンドル(1)は、
・車両用ドアパネル(100)に取り付けるハンドルフレーム(5)と、
・軸方向に突出する軸方向突出フィンガー(35)を有し、少なくとも1つの休止位置(F、R)と、長手方向端部がハンドルレバー軸(A)の周りを回転する開位置(O)との間で、前記ハンドルフレーム(5)に対して移動可能な全長Lのハンドルレバー(3)とを備えており、
さらに、
・前記ハンドルレバー(3)の中央セクションに配置され、前記ハンドルレバー軸(A)から径方向に、0.9L≧d≧0.1Lの関係を有する距離dだけ離れてい
る運動学的レバー軸(B)の周りで、前記ハンドルフレーム(5)に対して休止位置と作動位置との間で回転移動可能な運動学的レバー(37)を備えており、当該運動学的レバー(37)は、
前記運動学的レバー(37)が作動位置に達すると、ドアのラッチを解除するラッチ機構と相互作用する第1ラジアルアーム(39)と、
ハンドルレバー(3)が開位置に達すると、前記運動学的レバー(37)が作動位置に達するように、前記ハンドルレバー(3)の前記軸方向突出フィンガー(35)の経路と交差し、前記ハンドルレバー(3)の回転中に当該軸方向突出フィンガー(35)によって押される第2ラジアルアーム(41)とを備えている車両用ドアハンドル(1)であって、
前記運動学的レバー(37)は、前記ハンドルレバー(3)に対して軸方向にオフセットされた位置に設置されており、前記ハンドルレバー(3)は、慣性質量(64)を支えるロッカーアーム(58)を備える、前記ハンドルフレーム(5)に取り付けられている少なくとも1つの可逆的慣性システム(29)をさらに備えており、前記ロッカーアーム(58)は、休止位置と衝突の場合に到達する阻止位置との間に枢動可能に取り付けられ、前記ロッカーアーム(58)は、前記運動学的レバー(37)の回転を防止することを特徴とする車両用ドアハンドル(1)。
【請求項2】
一端が前記第1ラジアルアーム(39)に連結され、他端が前記ラッチ機構と相互作用するようになっている内部ケーブルを有するボーデンケーブル(47)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアハンドル(1)。
【請求項3】
前記ハンドルレバー(3)はさらに、前記ハンドルレバー(3)がドアパネル(100)の外面と同一面にあるフラッシュ位置(F)と、前記ハンドルレバー(3)が突出してユーザが把持することができる待機位置(R)との間で前記ハンドルレバー(3)を動かすモータ(7)を有するアクチュエータ(10)を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドアハンドル(1)。
【請求項4】
前記ハンドルレバー(3)はさらに、プッシュ-プッシュレバー(22)に当接しているプッシュ-プッシュフィンガー(21)が解放されると、前記プッシュ-プッシュレバー(22)を押し出し、前記プッシュ-プッシュレバー(22)の回転により、前記ハンドルレバー(3)が待機位置に到達する、少なくとも1つの拘束されたプッシュ-プッシュスプリング(15)を含むプッシュ-プッシュユニット(13)を備えており、前記ハンドルレバー(3)は、前記プッシュ-プッシュスプリング(15)が解放される内側のクリック位置にさらに移動可能であることを特徴とする請求項3に記載の車両用ドアハンドル(1)。
【請求項5】
前記ロッカーアーム(58)が前記作動位置に達すると、前記運動学的レバー(37)の動きを阻止するために、前記慣性質量(64)は、当該運動学的レバー(37)の前記第1ラジアルアーム(39)または前記第2ラジアルアーム(41)の軌道上に配置されている軸方向フィンガーとして形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル(1)。
【請求項6】
前記ハンドルレバー(3)はさらに、慣性回転要素を有する前記ハンドルフレーム(5)に取り付けられた不可逆的慣性システム(31)を備えており、この不可逆的慣性システム(31)は、事前に拘束された金属ブレード(49)によって拘束されている休止位置と前記金属ブレード(49)を変形させることによって到達する作動位置との間で移動可能であり、前記金属ブレード(49)は、開口部を備えており、前記慣性回転要素は、当該慣性回転要素が作動位置に到達したときに、前記開口部に係合するラグを備えており、前記慣性回転要素は、作動位置にあるとき、前記運動学的レバー(37)の動きを防止する阻止手段を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル(1)。
【請求項7】
前記不可逆的慣性システム(31)は、前記可逆的慣性システム(29)よりも大きい加速度値で作動位置に到達し、そこで前記不可逆的慣性システム(31)は、前記可逆的慣性システム(29)が休止位置に戻るのを防止するという点で、前記運動学的レバー(37)の動きを防止することを特徴とする請求項6に記載の車両用ドアハンドル(1)。
【請求項8】
前記ハンドルレバー(3)は、少なくとも1つの径方向カウンターウェイトアーム(57)によって支えられる、前記ハンドルレバー(3)の把持可能な本体(3a)に対して前記ハンドルレバー軸(A)の反対側に延びるカウンターウェイト(55)を備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル(1)。
【請求項9】
前記ハンドルレバー(3)はさらに、アンテナモジュール(200)を備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル(1)。
【請求項10】
前記ハンドルレバー(3)はさらに、前記ハンドルレバー(3)またはその一部の輪郭を照らす照明モジュール(300)を備えていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル(1)。
【請求項11】
前記ハンドルレバー軸(A)、前記運動学的レバー軸(B)、および可逆的または不可逆的慣性システム(29、31)の回転軸(C)は、平行であることを特徴とする請求項6から10のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル(1)。
【請求項12】
前記ハンドルレバー(3)は、前記ハンドルレバー軸(A)を取り囲む連結端(53)を備えており、この連結端(53)は、ハンドルスプリング(33)が収容される中空スペースを備えており、前記ハンドルスプリング(33)は、前記ハンドルレバー(3)をフラッシュ位置(F)に戻すトルクを生成することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル(1)。
【請求項13】
前記軸方向突出フィンガー(35)、前記第1ラジアルアーム(39)および/または前記第2ラジアルアーム(41)は、所定のブレーク点を備えていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル(1)。
【請求項14】
前記ハンドルレバー(3)が開位置(O)または待機位置(R)にあるときに、把持可能な本体(3a)が完全に突出するように、前記ハンドルレバー(3)は、ユーザが把持する前記把持可能な本体(3a)と、前記ハンドルフレーム(5)に隠され、前記ハンドルレバー軸(A)の径方向近くに配置された隠れ本体(3b)とを備えることができることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアアセンブリに関し、特にフラッシュドアハンドルレバーを備える車両用ドアアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアハンドルアセンブリは、作動すると、ハンドルレバーをフラッシュ位置と待機位置との間で動かすモータを備えている。フラッシュ位置では、ハンドルレバーはドア本体の外面と同一面にある。待機位置では、ハンドルレバーは、ユーザが把持できるように、ドア本体の外面から突出している。
【0003】
ユーザが待機位置でハンドルレバーを把持し、さらに突出したロック解除位置までハンドルレバーを引くことにより、ドアのラッチを解除することができる。この位置で、ハンドルレバーは、ラッチ機構と(ボーデンケーブル、回転ピンまたは歯車機構を介して)相互作用することにより、ドアのラッチを解除する。
【0004】
ハンドルレバースプリングは、ユーザがハンドルレバーを放すと、ハンドルレバーを待機位置に戻す。モータは、ドアを開閉した後、ハンドルレバーを待機位置からフラッシュ位置に動かすこともできる。
【0005】
このようなドアハンドルアセンブリはまた、例えば、モータまたはバッテリーが故障した場合、すなわちモータを起動できない場合に、ドアを開けることができるバックアップ機構を備えている。この機構は、例えば、プッシュ-プッシュ機構を備えており、ユーザは、ハンドルレバーを、フラッシユ位置から、予負荷をかけられたスプリングが解放されるクリック位置に到達するまで、内側に押し込む。この予負荷をかけられたスプリングが解放されると、ハンドルレバーを内側のクリック位置から突出した待機位置に押し出す。
【0006】
ユーザがバックアップモードで車両にアクセスすると、バッテリーは、通常、再充電され、および/または、モータの故障が解消され、通常の電動作動を再開することができる。
【0007】
交通事故、特に横方向の衝撃の場合に、ハンドルが開くのを回避するために、ハンドルはまた、一般に慣性質量を支えるロッカーアームを有する、少なくとも可逆的システムおよび/または不可逆的システムとしての慣性ロックシステムを備えている。
【0008】
可逆的システムは、ハンドルの可動要素と噛み合って、ハンドルがしきい値を超える加速度を受けたときにハンドルが開かないようにし、加速度が減少すると休止構成に戻る。
【0009】
不可逆的システムは、より大きい加速度値でハンドル機構と噛み合い、自然には休止位置に戻らないため、振動および車両の跳ね返りでドアが開いてしまうことを防止する。
【0010】
さらに、ドアハンドルは、リモートカードまたはRFIDカードと通信するアンテナモジュール、またはハンドルの部分を照らす照明モジュールなどの他のモジュールを備えることができ、これらは、スペースを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ハンドルは、ハンドル内部で大きいスペースを占める多くの重要な要素を備えており、同時に、ハンドルレバーからロック機構に作動を伝達する要素の連鎖は、複雑さを増している。
【0012】
したがって、ハンドルレバーからロック機構、すなわちラッチまでの短い運動連鎖を有する、ハンドルの単純でコンパクトな構成が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題に対処するために、本発明は、車両用ドアハンドルを提案する。当該車両用ドアハンドルは、
・車両用ドアパネルに取り付けるハンドルフレームと、
・軸方向に突出する軸方向フィンガーを有し、少なくとも1つの休止位置と、長手方向端部がハンドルレバー軸の周りを回転する開位置との間で、前記ハンドルフレームに対して移動可能な全長Lのハンドルレバーとを備えており、
さらに、
・前記ハンドルレバーの中央セクションに配置され、前記ハンドルレバー軸から径方向に、0.9L≧d≧0.1Lの関係を有する距離dだけ離れている運動学的レバー軸の周りで、前記ハンドルフレームに対して休止位置と作動位置との間で回転移動可能な運動学的レバーを備えており、当該運動学的レバーは、
前記運動学的レバーが作動位置に達すると、ドアのラッチを解除するラッチ機構と相互作用する第1ラジアルアームと、
ハンドルレバーが開位置に達すると、前記運動学的レバーが作動位置に達するように、前記ハンドルレバーの前記軸方向フィンガーの経路と交差し、前記ハンドルレバーの回転中に当該軸方向フィンガーによって押される第2ラジアルアームとを備えている車両用ドアハンドルであって、
前記運動学的レバーは、前記ハンドルレバーに対して軸方向にオフセットされた位置に設置されており、前記ハンドルレバーは、慣性質量を支えるロッカーアームを備える、前記ハンドルフレームに取り付けられている少なくとも1つの可逆的慣性システムをさらに備えており、前記ロッカーアームは、休止位置と衝突の場合に到達する阻止位置との間に枢動可能に取り付けられ、前記ロッカーアームは、前記運動学的レバーの回転を防止することを特徴とする。
【0014】
このようなハンドルはコンパクトで、伝達要素の数が少ないため、組み立てプロセスが簡素化されると同時に、故障の可能性が低くなる。
【0015】
本発明のドアハンドルは、個別にまたは組み合わせて、1つまたは複数の以下の特徴をさらに提示することができる。
【0016】
前記ドアハンドルはさらに、一端が前記第1ラジアルアームに連結され、他端が前記ラッチ機構と相互作用するようになっている内部ケーブルを有するボーデンケーブルを備えている。
【0017】
前記ハンドルレバーはさらに、前記ハンドルレバーがドアパネルの外面と同一面にあるフラッシュ位置と、前記ハンドルレバーが突出してユーザが把持することができる待機位置との間で前記ハンドルレバーを動かすモータを有するアクチュエータを備えている。
【0018】
前記ハンドルレバーはさらに、プッシュ-プッシュレバーに当接しているプッシュ-プッシュフィンガーが解放されると、前記プッシュ-プッシュレバーを押し出し、前記プッシュ-プッシュレバーの回転により、前記ハンドルレバーが待機位置に到達する、少なくとも1つの拘束されたプッシュ-プッシュスプリングを含むプッシュ-プッシュユニットを備えており、前記ハンドルレバーは、前記プッシュ-プッシュスプリングが解放される内側のクリック位置にさらに移動可能である。
【0019】
前記ロッカーアームが前記作動位置に達すると、前記運動学的レバーの動きを阻止するために、前記慣性質量は、当該運動学的レバーの前記第1ラジアルアームまたは前記第2ラジアルアームの軌道上に配置されている軸方向フィンガーとして形成されている。
【0020】
前記ハンドルレバーはさらに、慣性回転要素を有する前記ハンドルフレームに取り付けられた不可逆的慣性システムを備えており、この不可逆的慣性システムは、事前に拘束された金属ブレードによって拘束されている休止位置と前記金属ブレードを変形させることによって到達する作動位置との間で移動可能であり、前記金属ブレードは、開口部を備えており、前記慣性回転要素は、当該慣性回転要素が作動位置に到達したときに、前記開口部に係合するラグを備えており、前記慣性回転要素は、作動位置にあるとき、前記運動学的レバーの動きを防止する阻止手段を備えている。
【0021】
前記不可逆的慣性セキュリティシステムは、前記可逆的慣性セキュリティシステムよりも大きい加速度値で作動位置に到達すし、そこで前記不可逆的慣性セキュリティシステムは、前記可逆的慣性セキュリティシステムが休止位置に戻るのを防止するという点で、前記運動学的レバーの動きを防止する。
【0022】
前記ハンドルレバーは、少なくとも1つの径方向カウンターウェイトアームによって支えられる、前記ハンドルレバーの把持可能な本体に対して前記ハンドルレバー軸の反対側に延びるカウンターウェイトを備えている。
【0023】
前記ハンドルレバーはさらに、アンテナモジュールを備えている。
【0024】
前記ハンドルレバーはさらに、前記ハンドルレバーまたはその一部の輪郭を照らす照明モジュールを備えている。
【0025】
好ましい実施形態では、前記ハンドルレバー軸、前記運動学的レバー軸、および可逆的または不可逆的慣性システムの前記回転軸は、平行である。
【0026】
前記ハンドルレバーは、前記回転軸を取り囲む連結端を備えることができ、この連結端は、ハンドルスプリングが収容される中空スペースを備えており、前記ハンドルスプリングは、前記ハンドルレバーをフラッシュ位置に戻すトルクを生成する。
【0027】
軸方向突出フィンガー、前記第1ラジアルアームおよび/または前記第2ラジアルアームは、所定のブレーク点を備えることができる。
【0028】
前記ハンドルレバーが開位置または待機位置にあるときに、把持可能な本体が完全に突出するように、前記ハンドルレバーは、ユーザが把持する前記把持可能な本体と、前記フレームに隠され、前記ハンドルレバー軸の径方向近くに配置された隠れ本体とを備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】異なる位置で表されたハンドルレバーを備える車両用ドアハンドルの模式的断面図である。
【
図2】車両用ドアハンドルを外側から見た模式図である。
【
図3】ハンドルレバーの動きの制御部である車両用ドアハンドルアクチュエータの模式図である。
【
図4】さまざまな機能モジュールを共通フレームに備えている車両用ドアハンドルを内側から見た模式図である。
【
図5】
図1および
図3の車両用ドアハンドルのハンドルレバーの動きを制御するアクチュエータ要素の模式図である。
【
図6】ハンドルレバーを引くときにドアのラッチが外れる運動連鎖の模式図である。
【0030】
すべての図で、同じ要素に同じ符号を使用している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の他の特徴および利点は、以下の図面の例示的かつ非限定的な様式で与えられる以下の説明を読むことで明らかになると思う。
【0032】
図面は、本発明の適確な実施形態に言及しているけれども、他の実施形態は、表示された実施形態を組み合わせることにより、またはわずかに変更することにより得ることができ、これらの新しい実施形態も本発明の範囲に含まれるものである。
【0033】
図1は、組み込まれたドアハンドル1を有する車両用ドアパネル100の一連の模式的断面図である。ドアパネル100は、車両の外面を形成し、ドアハンドル1は、実質的に、ハンドルレバー3(ユーザが把持して動かす部分)およびハンドルフレーム5(ハンドルレバー3の作動中にドアパネル100に対して動かない部分)によって表示されている。
【0034】
ドアハンドル1を、ハンドルレバー3を外側に引いてドアパネル100を開ける外側ハンドルであると仮定すると、「内向き」、「外向き」などの用語は、車両の内側および外側を表すために定められている。
【0035】
図1(左から右へ)の最初の断面図では、ハンドルレバー3は、フラッシユ位置にある。このフラッシユ位置では、ハンドルレバー3の外面は、ドアパネル100と同一面にある。このフラッシユ位置は、車両を運転しているとき、および長時間駐車しているときに採用される。フラッシユ位置では、ハンドルレバー3は、駐車中は、通行人によって偶然または故意に把持される可能性が低く、運転中は、空気抵抗を減少させる。フラッシユ位置では、ハンドルレバー3はまた、見た目が良く、かつ目立たない状態でドアパネル100に組み込まれているように見える。
【0036】
図1の2番目の断面図では、ハンドルレバー3は、待機位置にある。この待機位置では、ハンドルレバー3は、ユーザが把持することができるように、ハンドルレバー軸Aの周りに所定の角度(例えば20~45°)だけ外向きに回転している。この待機位置は、例えばキーまたはRFIDセキュリティトークンに組み込まれたリモートコントロールを使用して、ユーザが車両に近づくか、ドアのロックを解除するときに採用されている。この位置では、ユーザは、ハンドルレバー3を利用可能であり、把持することができるが、ハンドルはまだ、ラッチが掛ったままである。
【0037】
ハンドルレバー軸Aは、軸方向を定義し、ハンドルレバー軸Aに直交する平面と方向は径方向として定義される。待機位置にモータ駆動するときに、完全に突出した待機および開いたハンドルレバー3とするために、ハンドルレバー軸Aは、(前輪駆動またはフロントエンジン構成車両の自動車用モータについて)好ましくは突出領域の前部に配置されることに留意されたい。これは、ほこりおよび水の侵入を減らす。突出領域内に回転軸があると、回転軸に対してハンドルレバーの反対側にホールが現われてしまう。
【0038】
図1の3番目の断面図では、ハンドルレバー3は、開位置にある。待機位置と比較して、ハンドルレバー3は、ユーザによってさらに外向きに(40~60°以上)回転させられ、ハンドルレバーは、ラッチ機構と相互作用してドアパネル100のラッチを解除する。その結果、ラッチが解除され、ハンドルレバー3をさらに引くことによりドアを開ける準備が整う。
【0039】
ハンドルレバー3をフラッシユ位置から待機位置に駆動する機構が機械的または電気的不具合の場合、
図1の4番目の断面図のように、ユーザは、ハンドルレバー3に内向きの圧力Pを加えることにより、ドアパネル100に対してハンドルレバー3を内側に押し込むことができる。すると、ハンドルレバー3は、本明細書ではクリック位置と呼ばれる位置になり、機械的相互作用(「クリック」)は、モータが作動しなくてもハンドルレバー3を待機位置に駆動するプッシュ-プッシュユニットのスプリングを解除する。
【0040】
本発明は、特にこのようなフラッシュハンドルについて記載しているが、ユーザがモータの助けなしに動かす、休止位置と開位置のみを有する古典的なドアハンドルの場合にも使用することができる。
【0041】
図2は、車両用ドアから取り出したドアハンドル1を外側から見たものである。ハンドルフレーム5は、目に見える機構およびモジュールを覆っているが、ハンドルレバー3の目に見える部分に相当する把持可能な本体3aは、明らかである。
【0042】
ハンドルレバー3は、フラッシュ位置F、待機位置R、および開位置Oの3つの位置で表される。矢印は、フラッシュ位置Fから開位置Oへのドアを開ける動きを示している。
【0043】
フラッシュ位置Fから待機位置Rへの移動は、モータ7を備えるドアハンドルアクチュエータ10によって行われる(
図3を参照)。ユーザは、ハンドルレバー3を待機位置Rで把持した後、ハンドルレバー3を引いて開位置Oに到達し、それによってラッチ機構を作動させ、車両用ドアパネル100を解除する。ハンドルレバー3をさらに引くことにより、ユーザは、車両用ドアパネル100全体をスイングしてドアを開ける。
【0044】
フラッシュ位置Fおよび待機位置Rは、ハンドルレバー3が当該位置にあるとき、ドアラッチ機構は作動せず、ドアパネル100はラッチされたままであるため、休止位置と見なすことができる。
【0045】
図3は、内側から見たドアハンドルアクチュエータ10の模式図である。ドアハンドルアクチュエータ10は、スプリング作用を使用して、および車両用バッテリーまたはドア内の独立したバッテリーから取り出した電力を使用して、ハンドルレバー3を動かす。
図3では、ハンドルレバー3は、ドアハンドル1のハンドルフレーム5に取り付けられているアクチュエータフレーム51に対して回転可能であり(
図4を参照)、当該ハンドルフレーム5は、ドアパネル100に取り付けられている。
【0046】
ドアハンドルアクチュエータ10は、個別のモジュールを形成し、個別に出荷、取り扱い、および取り付けることができる。その結果、ドアハンドル1の組み立ておよび保守がより容易になり、安価になることが期待できる。
【0047】
アクチュエータフレーム51のハウジング内には、減速機構9を有するモータ7がある。モータ7は、特に車両用バッテリーまたはドア内の独立したバッテリーからの電流によって作動する。減速機構9は、回転速度を下げ、トルク値を増加させることにより、モータ7の回転出力運動を適応させる。減速機構9は、アクチュエータレバー11を使用して、特にフラッシュ位置Fから待機位置Rまでハンドルレバー3を動かす。
【0048】
減速機構9は、例えば、減速歯車および/またはウォームおよび歯車システムを有する1つ以上の減速段を備えている。
【0049】
減速機構9は、アクチュエータレバー11を動かし、アクチュエータレバー11は、ハンドルレバー3に当接し(
図4から6を参照)、その作動中に少なくとも開扉動作の一部として、特にフラッシュ位置Fから待機位置Rまでハンドルレバー3を押し込む。
【0050】
フラッシュ位置Fから待機位置Rへの作動中に、ハンドルレバーをアクチュエータレバー11に押し付けているハンドルスプリング33が休止構成に戻ることにより(
図4を参照)、アクチュエータレバー11が逆作動で回転すると、ハンドルレバー3はフラッシュ位置Fに戻る。待機位置Rから開位置Oまで、ユーザはハンドルスプリング33のトルクに逆らって力を加え、その後、ユーザがハンドルレバー3を放すと、ハンドルレバー3は、確実に待機位置Rに戻ることになる。
【0051】
ドアハンドルアクチュエータ10はまた、ガイドロッド17の周りに配置された少なくとも1つのプッシュ-プッシュスプリング15を含むプッシュ-プッシュユニット13を備えている。プッシュ-プッシュスプリング15は、解除されると、プッシュ-プッシュレバー22に当接するプッシュ-プッシュフィンガー21を支えるスライダー19を押し出し、プッシュ-プッシュレバー22の回転により、アクチュエータレバー11が回転する。プッシュ-プッシュフィンガー21は、特にゴム、軟質プラスチック、または任意の衝撃吸収材料でできている。
【0052】
記述された実施形態は、2つのプッシュ-プッシュスプリング15および2つのガイドロッド17を備えている。ガイドロッド17の1つが見えるようにするために、1つのプッシュ-プッシュスプリング15のみが示されている。
【0053】
プッシュ-プッシュスプリング15およびガイドロッド17は、解除機構23の両側に配置されており、解除機構23が圧縮されると(クリック位置)、解除機構23は、スライダー19を解除し、次にスライダー19は、プッシュ-プッシュスプリング15によってガイドロッド17に沿って押し出され、ハンドルレバー3を待機位置Rに押し出す。
【0054】
アクチュエータレバー11の回転位置は、アクチュエータレバー11を支えるシャフト12の下部に設けた位置決め手段25によって検出される。この位置決め手段25は、例えば、磁気インデックスおよび磁気センサー(例えば、ホール効果センサー)を備えている。磁気インデックスは、アクチュエータレバー11と共に回転し、磁気センサは、アクチュエータレバー11、したがってハンドルレバー3の位置を示す磁気インデックスの回転位置を決定する。このような位置決め手段をアクチュエータレバー11に直接取り付けると、位置検出精度が改善する。
【0055】
図4は、組み立てられたドアハンドル1を内側から見た図であり、その中の異なるモジュールを示している。
図5は、ドアハンドル1の動きおよびその安全ロックに関与するドアハンドル1の要素を内側から見た図である。
【0056】
ハンドルフレーム5は、アンテナモジュール200、照明モジュール300、ハンドルレバー3、および当該ハンドルレバー3に接続された開扉機構400を備える様々なモジュールを収容している。
【0057】
アンテナモジュール200は、アンテナ201、コネクタ203、およびアンテナ201とコネクタ203を接続する接続ケーブル205とを備えている。
【0058】
アンテナ201は、例えば、RFID(Radio Frequency IDentifier)アンテナである。アンテナ201は、ユーザが所持するキーまたは認証トークンのトランスポンダが、ドアの近くの検出スペースに入ると、当該トランスポンダと通信する。
【0059】
アンテナ201はまた、ハンドルレバー3のすぐ近くにあるユーザの身体部分(一般に手)の存在を検出する容量性アンテナを備えることができる。認証プロセスは、ユーザの接近を検出した場合にのみ開始することができる。
【0060】
コネクタ203は、アンテナ201への電力供給を確保すると共に、当該アンテナ201を車両の電気および/またはデジタルシステムの電子制御ユニット(ECU)に接続する。
【0061】
照明モジュール300は、発光ユニット301、照明コネクタ303、および発光ユニット301と照明コネクタ303とを接続する接続ケーブル305を備えている。
【0062】
発光ユニット301は、例えば、一組の発光ダイオードと、発光ダイオードによって生成された光を特定の領域、例えば、ハンドルレバー3の輪郭、またはハンドルレバー3自体の一部に導くいくつかの光ガイドとを備えている。次に、導かれた光は、ハンドルレバー3を強調するため、および/または装飾目的のために使用される。
【0063】
発光は、例えば、セキュリティトークンの接近が登録されたことをユーザに知らせる信号として機能し、当該ユーザは、暗い場所でも安全かつ迅速にハンドルレバー3を握ることができる。
【0064】
照明コネクタ303は、特に、車両のバッテリーまたはドア内の独立したバッテリーから取り出される電流を介して、発光ユニット301への電力供給を確保すると共に、当該発光ユニット301を車両の電気および/またはデジタルシステムの電子制御ユニット(ECU)に接続する。
【0065】
ドアハンドル1は、異なる状況においてハンドルレバー3の動きを引き起こしおよび/または防止する異なる要素を包含する作動機構400を備えている。
【0066】
結果として、ドアハンドル1の内部にどのくらいの数の異なるモジュールが統合されるかを理解することができる。
【0067】
作動機構400およびハンドルレバー3は、
図5に別々に示されている。この特定の実施形態では、作動機構400は、
図3に関連して説明したドアハンドルアクチュエータ10、ハンドルレバー3の一部、可逆的慣性システム29、および不可逆的慣性システム31を備えている。
【0068】
また、
図5には、ハンドルフレーム5の一部、特にハンドルレバー3の可視本体3aを直接取り囲む部分が示されている。
【0069】
図5に見られるように、アクチュエータレバー11は、(フラッシュ位置F、待機位置R、および当該2つの間の中間位置において)ハンドルレバー3の内面Sに当接している。これにより、アクチュエータレバー11が外向きに回転すると、ハンドルレバー3がフラッシュ位置Fから待機位置Rに移動する。
【0070】
作動機構400は、アクチュエータレバー11が内側に回転すると、ハンドルレバー3をフラッシュ位置Fに戻し、かつユーザがハンドルレバー3を開位置Oから放すと、待機位置Rに戻すハンドルスプリング33(
図4を参照)をさらに備えている。ハンドルスプリング33は、より一般的に、ハンドルレバー3を内側に戻すトルクに関与している。
【0071】
ハンドルレバー3はまた、ユーザが車両用ドアパネル100を開けた後に、当該ハンドルレバー3を離したとき、ハンドルスプリング33によって開位置Oから待機位置Rに戻される。
【0072】
ハンドルレバー3は、その本体のほぼ中央部分に、
図5において上方向に突出している軸方向突出フィンガー35を有している。
【0073】
作動機構400はまた、休止位置(
図5に示される)と作動位置との間の運動学的レバー軸Bの周りでハンドルフレーム5に対して回転運動する運動学的レバー37を備えている。
【0074】
運動学的レバー37は、ラッチ機構と相互作用する第1ラジアルアーム39と、軸方向突出フィンガー35と相互作用する第2ラジアルアーム41との2つのラジアルアームを備えている。
【0075】
運動学的レバー37は、ハンドルレバー3に対して軸方向にオフセットされた位置で、(垂直なハンドルレバー軸Aを有する)当該ハンドルレバー3の上に配置されており、このため、第2ラジアルアーム41は、ハンドルレバー3の作動中に、ハンドルレバー3の軸方向突出フィンガー35の経路と交差する。
【0076】
他の実施形態としては、運動学的レバー37が軸方向で、ハンドルレバー3の下に配置されている場合である。
【0077】
運動学的レバー37の回転軸Bとハンドルレバー3の回転軸Aは平行である。運動学的レバー37は、ハンドルレバー3に対して比較的中央の位置にあり、Lは、ハンドルレバー3の自由端から回転軸Aまでのハンドルレバー3の全長である(特に
図6を参照)。回転軸Bは、回転軸Aから径方向、長手方向に約L/2である距離dに配置され、より一般的には、0.9L≧d≧0.1Lまたは0.8L≧d≧0.2L、特に3L/4≧d≧L/4の関係を有する距離dに配置されている。
【0078】
第1ラジアルアーム39は、ラッチ機構(図示せず)に接続しているボーデンケーブル47の内側ケーブルの一端に取り付けられている。作動位置では、第1ラジアルアーム39は、ボーデンケーブル47の内側ケーブルを引っ張り、ボーデンケーブル47の他端は、ラッチ機構に接続されている。これにより、運動学的レバー37が作動位置に達すると、ロック機構がドアを開放する。
【0079】
運動学的レバー37の休止位置への復帰は、運動学的スプリング43、ここでは運動学的レバー37のシャフト45の周りに巻かれたコイルスプリングによって確保されている。運動学的スプリング43の一端はハンドルフレーム5(
図5では部分的にしか見えない)に当接しており、他端はラジアルアーム39、41の1つ、ここでは特に第1ラジアルアーム39に結合している。
【0080】
ハンドルレバー3がフラッシュ位置Fおよび待機位置R(および中間位置)にあるとき、特に、運動学的レバー37は、休止位置にある。待機位置Rでは、軸方向突出フィンガー35と第2ラジアルアーム41とが接触する。
【0081】
ハンドルレバー3の待機位置Rから開位置Oへの開扉動作は、
図6でより明確に見ることができる。
図6では、ハンドルレバー3は、待機位置Rにあり、運動学的レバー37は、休止位置にある。したがって、当該運動学的レバー37の第2ラジアルアーム41は、ハンドルレバー3の軸方向突出フィンガー35に当接している。
【0082】
ユーザは、ハンドルレバー3を外側に引き(左端の円形矢印)、ハンドルレバー3全体を回転軸A(当該回転軸Aの周りの円形矢印)の周りで回転させることで、当該ハンドルレバー3を待機位置Rから開位置Oに持ってくる。
【0083】
ハンドルレバー3の回転により、軸方向突出フィンガー35は、円弧経路(当該軸方向突出フィンガー35における円弧矢印)をたどる。軸方向突出フィンガー35は、相互接触により、運動学的レバー37の第2ラジアルアーム41を軸方向突出フィンガー35の外向き(当該第2ラジアルアーム41の円弧矢印)の動きで移動させる。これにより、運動学的レバー37全体が回転軸Bの周りを回転する(当該回転軸Bの周りの円形矢印)。
【0084】
運動学的レバー37は、ハンドルレバー3が開位置Oに到達するまで当該ハンドルレバー3の動きに伴って回転し、ハンドルレバー3が開位置Oに到達する時点で運動学的レバー37は、作動位置に到達する。
【0085】
運動学的レバー37の回転中に、第1ラジアルアーム39は、ボーデンケーブル47の内側ケーブルを引っ張る(当該第2ラジアルアーム41の径方向端部にある直線矢印)。作動位置に到達するまで、内側ケーブルは、ボーデンケーブル47の他端部に接続されたロック機構によってドアが開くまで十分に引っ張られる。
【0086】
可逆的慣性システム29および不可逆的慣性システム31は、交通事故、特に横方向の衝撃によって引き起こされる加速度によるハンドルレバー3の動きを阻止するために使用される。それらの存在は、本質的にドアハンドル1の機能に必須ではない。しかし、それらの存在は、追加のセキュリティ機能を表している。
【0087】
慣性セキュリティシステム29、31がない場合、衝撃による加速度により、ハンドルレバー3は、外側、すなわち開扉方向に引かれてしまう。この外向きの動きにより、ドアパネル100が開いてしまう恐れがある。
【0088】
ドアパネルが開いてしまうと、乗客が車内から投げ出され、乗客の手足が車外に突き出され、外部の物体が車内に入り込むことで、衝突の結果を悪化させる恐れがある。また、開いたドアパネルは、たとえば横転した場合に剥ぎ取られる可能性が高く、その結果、その場に居合わせた人を傷つけ、または対向車の道路上の障害物となる恐れがある。
【0089】
可逆的慣性システム29は、ハンドルフレーム5に取り付けられている。可逆的慣性システム29は、慣性システム軸Cに対して回転自在であるロッカーアーム58を備えており、当該ロッカーアーム58の遠端にある慣性質量を支えている。この特定の実施形態では、慣性システム軸Cは、ハンドルレバー3の回転軸Aおよび運動学的レバー37の回転軸Bに平行である。
【0090】
ロッカーアーム58は、休止位置と阻止位置との間に枢動可能に取り付けられている。休止位置では、可逆的慣性システム29は、ハンドルレバー3の動きを妨害しない。作動位置では、可逆的慣性システム29は、運動学的レバー37の回転を防止する。
【0091】
ロッカーアーム58は特に、その径方向端部に慣性質量を形成する軸方向フィンガー64を備えており、軸方向フィンガー64は、阻止位置にあるときに、運動学的レバー37の第1ラジアルアーム39の経路と交差する。
【0092】
可逆的慣性システム29は、安全スプリング(図示せず)、特に中央シャフト30の周りにコイルスプリングを備えており、この安全スプリングは、加速度を受けていないときは、ロッカーアーム58を休止位置に戻すようにしている。安全スプリングのトルク値、慣性質量64、およびロッカーアーム58の長さを調整することにより、ロッカーアーム58が阻止位置に到達する加速度値およびそれ以上の加速度値を選択することができる。
【0093】
可逆的慣性システム29は、特に、3~5gより大きい加速度を受けるときにドアハンドル1の作動を阻止するようになっている。ここで、gは、標準重力値(約9.81ms-2)である。
【0094】
不可逆的慣性システム31は、国際公開第2006/003197号に記載の特定のタイプの実施形態として、参考として追加されている。
【0095】
このような不可逆的慣性システム31は、例えば、肩部を有するシリンダーの形状で、慣性システム軸Cの周りに慣性回転要素を備えている。加速度を受けていないときは、シリンダーは、事前に拘束された金属製ブレード49によって拘束されている第1休止位置にある。加速度を受けているときは、十分な力に達したときに、金属製ブレード49を変形させることによって、シリンダーは、作動位置に到達する。金属製ブレード49は、開口部を備えており、シリンダーが作動位置に到達したときに、シリンダーは、その開口部に係合するラグを備えている。
【0096】
シリンダーが作動位置に到達すると、コンポーネントに手動で介入しない限り、シリンダーは、休止位置に戻ることはない。
【0097】
事前に拘束された金属製ブレード49によって加えられる力、シリンダーの形状および質量を調整することによって、およびシリンダーに所定のトルクを加える第2安全スプリング32を追加することによって、シリンダーが作動位置に到達する加速度領域を調整することができる。特に、可逆的慣性システム29が作動位置に到達する加速度を超える加速度を受けたときに、不可逆的慣性システム31は、作動位置に到達するようになっている。
【0098】
例えば、可逆的慣性システム29が5gで係合する場合、不可逆的慣性システム31は、8~10gより大きい加速度を受けたときに作動位置に到達するであろう。
【0099】
シリンダーに取り付けられているのは、阻止手段であり、作動位置にあるとき、この阻止手段は、運動学的レバー37の動きを阻止する。本実施形態では、不可逆的慣性システム31は、作動位置にあるときに、例えばロッカーアーム58を押すシリンダー上の突出した肩部を使用して、可逆的慣性システム29が休止位置に戻ることを防止する。
【0100】
両方の場合(可逆的および不可逆的)で、慣性システム29、31は、特権的相互作用点を形成する運動学的レバー37と相互作用を行う。
【0101】
特に、軸方向突出フィンガー35、第1ラジアルアーム39および/または第2ラジアルアーム41は、非常に高い衝撃加速度値の場合にさらなるフェイルセーフとして機能するように、所定のブレーク点を容易に取り付けることができる。
【0102】
所定の値でブレークするのに必要な力を調整することにより、ボーデンケーブル47に接続された第1ラジアルアーム39が、所定の値よりも小さい加速度値において、ハンドルレバー3の動きに対して(ブレークによって)解除される構成に到達することができる。ここで、運動学的レバー37は、慣性システム29、31から切り離されるようになる。
【0103】
このような場合、慣性によるハンドルレバー3の動きは、ボーデンケーブル47に接続された第1ラジアルアーム39の一端部の動き、すなわちロック機構の作動を引き起こさないであろう。
【0104】
慣性システム29、31が運動学的レバー37と相互作用するという事実により、これらは、同じ軸方向の高さで、ハンドルレバー3と平行に配置することができ、内側に向けられた軸方向のオフセットがあるだけなので、ハンドル1の全体的な構造がコンパクトになる。
【0105】
特に
図6に示すように、ハンドルレバー3は、一方に自由端を有する細長い把持可能な本体3aを有し、これは、待機位置Rから開位置Oにおいて外側に突出している。ハンドルレバー3はまた、ドアハンドル1が組み立てられるときにハンドルフレーム5によって覆われて、隠れている回転軸Aを取り囲む連結端53とともに、当該回転軸Aに径方向に接近している隠れ本体3bを備えている。
【0106】
連結端53は、ハンドルスプリング33を収容する中空スペースを備えており、これは、立方体または平行六面体のくり抜かれた形状である。
【0107】
把持可能な本体3aおよび隠れ本体3bは、互いに径方向の延長上にあり、どちらも、ハンドルレバー3の回転軸Aの同じ側に位置している。隠れ本体3bは、ハンドルレバー軸Aの径方向近くに配置されているので、ハンドルレバー3が開位置Oまたは待機位置Rにあるとき、把持可能な本体3aは、完全に突出している。
【0108】
ハンドルレバー3は、把持可能な本体3aおよび隠れ本体3bの反対側に、2つのカウンターウエイトアーム57によって支えられているカウンターウエイト55を備える、径方向延長部をさらに備えている。
【0109】
カウンターウエイトアーム57は、回転軸Aに対して、ハンドルレバー本体3a、3bの反対側で、これらの延長上にある。カウンターウェイト55は、カウンターウェイトアーム57の遠軸端部に取り付けられており、カウンターウェイトアーム57の一方は、カウンターウェイト55の軸上方向にあり、他方は、カウンターウェイト55の軸下方向にある。
【0110】
したがって、衝突の際、ハンドルレバー本体3a、3bに加えられる加速度によって生じるトルクは、カウンターウェイト55に加えられる加速度によって生じるトルクによって少なくとも部分的に相殺される。
【0111】
ハンドルレバー3に関して、比較的中央の位置(3L/4≧d≧L/4)にある運動学的レバー37の存在および配置により、特にハンドルスプリング33およびカウンターウェイト55のために、回転軸Aの周りの当該ハンドルレバー3のスペースを解放している。
【符号の説明】
【0112】
1 ドアハンドル
3 ハンドルレバー
3a 把持可能な本体(可視本体)
3b 隠れ本体
5 ハンドルフレーム
7 モータ
9 減速機構
10 ドアハンドルアクチュエータ
11 アクチュエータレバー
12 シャフト
13 プッシュ-プッシュユニット
15 プッシュ-プッシュスプリング
17 ガイドロッド
19 スライダー
21 プッシュ-プッシュフィンガー
22 プッシュ-プッシュレバー
23 解除機構
25 位置決め手段
29 可逆的慣性システム
30 中央シャフト
31 不可逆的慣性システム
32 第2安全スプリング
33 ハンドルスプリング
35 軸方向突出フィンガー
37 運動学的レバー
39 第1ラジアルアーム
41 第2ラジアルアーム
43 運動学的スプリング
45 シャフト
47 ボーデンケーブル
49 金属製ブレード
51 アクチュエータフレーム
53 関節端
55 カウンターウエイト
57 カウンターウエイトアーム
58 ロッカーアーム
64 慣性質量(軸方向フィンガー)
100 ドアパネル
200 アンテナモジュール
201 アンテナ
203 コネクタ
205 接続ケーブル
300 照明モジュール
301 発光ユニット
303 照明コネクタ
305 接続ケーブル
400 作動機構(開扉機構)
A 回転軸(ハンドルレバー軸)
B 回転軸(運動学的レバー軸)
C 慣性システム軸
F フラッシュ位置
R 待機位置
O 開位置
S 内面