(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】物質のA2-73結晶多形組成物およびそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
C07D 307/14 20060101AFI20240806BHJP
A61K 31/341 20060101ALI20240806BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C07D307/14 CSP
A61K31/341
A61P25/00
A61P25/28
(21)【出願番号】P 2020555811
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(86)【国際出願番号】 US2019027369
(87)【国際公開番号】W WO2019200345
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-04-07
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519448577
【氏名又は名称】アナベックス ライフ サイエンス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ミスリング、クリストファー ユー.
(72)【発明者】
【氏名】セルヴェイ、アラーニ
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/013498(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラヒドロ-N,N-ジメチル-2,2-ジフェニル-3-フランメタンアミン(A2-73)の結晶であって、
前記結晶はA2-73フマル酸水素塩
形態IIIまたはA2-73遊離塩基
形態Iであ
り、
前記A2-73フマル酸水素塩形態IIIは、10.69、11.93、12.05、12.14、14.51、14.85、15.78、15.92、18.97、20.55、20.98、21.42、21.49、22.56、23.05、23.25、23.69、23.83、23.98、及び24.82にXRPDピークを有し、
前記A2-73遊離塩基形態Iは、10.38、10.82、11.59、12.89、13.91、15.50、16.24、16.95、17.46、17.70、17.98、19.06、20.21、20.93、21.27、21.73、22.09、23.53、24.18、及び25.71におけるXRPDピークを特徴とする、結晶。
【請求項2】
治療有効量のテトラヒドロ-N,N-ジメチル-2,2-ジフェニル-3-フランメタンアミン(A2-73)を、A2-73遊離塩基
形態IまたはA2-73フマル酸水素塩
形態IIIから選択される
形態の結晶として含む、剤形
であって、
前記A2-73フマル酸水素塩形態IIIは、10.69、11.93、12.05、12.14、14.51、14.85、15.78、15.92、18.97、20.55、20.98、21.42、21.49、22.56、23.05、23.25、23.69、23.83、23.98、及び24.82におけるXRPDピークを特徴とし、
前記A2-73遊離塩基形態Iは、10.38、10.82、11.59、12.89、13.91、15.50、16.24、16.95、17.46、17.70、17.98、19.06、20.21、20.93、21.27、21.73、22.09、23.53、24.18、及び25.71におけるXRPDピークを特徴とする、剤形。
【請求項3】
前記剤形が
、延長放出のために製剤化されている、請求項
2に記載の剤形。
【請求項4】
前記剤形が、経皮パッチである、請求項
3に記載の剤形。
【請求項5】
前記剤形が、腸溶性コーティング経口製剤である、請求項3に記載の剤形。
【請求項6】
前記腸溶性コーティング経口製剤が
、50mgのA2-73遊離塩基
形態Iを含む、請求項
5に記載の剤形。
【請求項7】
前記腸溶性コーティング経口製剤が、30mgのA2-73フマル酸水素塩
形態IIIを含
む、請求項
5に記載の剤形。
【請求項8】
テトラヒドロ-N,N-ジメチル-2,2-ジフェニル-3-フランメタンアミン(A2-73)の送達のための医薬製剤であって、治療有効量の、A2-73遊離塩基
形態IまたはA2-73フマル酸水素塩
形態IIIから選択される
形態のA2-73の結晶を含
み、
前記A2-73フマル酸水素塩形態IIIは、10.69、11.93、12.05、12.14、14.51、14.85、15.78、15.92、18.97、20.55、20.98、21.42、21.49、22.56、23.05、23.25、23.69、23.83、23.98、及び24.82におけるXRPDピークを特徴とし、
前記A2-73遊離塩基形態Iは、10.38、10.82、11.59、12.89、13.91、15.50、16.24、16.95、17.46、17.70、17.98、19.06、20.21、20.93、21.27、21.73、22.09、23.53、24.18、及び25.71におけるXRPDピークを特徴とする、医薬製剤。
【請求項9】
前記医薬製剤が、化学増強剤、湿潤剤、感圧接着剤、抗酸化剤、可溶化剤、増粘剤、可塑剤、アジュバント、担体、賦形剤、ビヒクル、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種類または複数種類の薬学的に許容される非薬効成分(excipient)をさらに含む、請求項
8に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記1種類または複数種類の非薬効成分が、経口投与、経皮投与、非経口投与、腹腔内投与、血管内投与、皮下投与、吸入スプレーによる投与、直腸投与、または肺内投与用に選択される、請求項
9に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記医薬製剤が、延長送達用である、請求項
8に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記医薬製剤が、経皮パッチである、請求項
8に記載の医薬製剤。
【請求項13】
経皮パッチが毎週交換される、請求項
12に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記経皮パッチが、対象の血液中のA2-73のレベルを、
10ng/ml~
12ng/mlの範囲に維持する、請求項
12に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記医薬製剤が、経口製剤である、請求項
8に記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記経口製剤が
、50mgのA2-73遊離塩基
形態Iを含む
腸溶性コーティング経口錠剤である、請求項
15に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記経口製剤が
、30mgのA2-73フマル酸水素塩
形態IIIを含む
腸溶性コーティング経口錠剤である、請求項
15に記載の医薬製剤。
【請求項18】
前記医薬製剤が、0.1~5gのA2-73遊離塩基
形態IまたはA2-73フマル酸水素塩
形態IIIを含む皮下剤形である、請求項
8に記載の医薬製剤。
【請求項19】
アルツハイマー病の治療のために用いられる、請求項
8に記載の医薬製剤。
【請求項20】
進行性認知症の治療のために用いられる、請求項
8に記載の医薬製剤。
【請求項21】
神経変性疾患の治療のために用いられる、請求項
8に記載の医薬製剤。
【請求項22】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、ハンチントン病、運動ニューロン病(MND)、脊髄小脳失調症(SCA)、および脊髄筋萎縮症(SMA)からなる群から選択される、請求項
21に記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月12日に出願された米国仮特許出願第62/656,435号の利益を主張するものであり、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般的に、テトラヒドロ-N,N-ジメチル-2,2-ジフェニル-3-フランメタンアミン(A2-73)の結晶形態、それらを含有する剤形、およびそれらを治療で使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
テトラヒドロ-N,N-ジメチル-2,2-ジフェニル-3-フランメタンアミン(ANAVEX2-73またはAV2-73)は、低マイクロモル範囲の親和性を有する混合ムスカリン受容体リガンドおよびSig-1Rアゴニストである。A2-73は、神経発達障害および神経保護特徴を治療することができる。例えば、より良好なバイオアベイラビリティ、より良好な安定性、または薬学的に活性な化合物の強化された送達を示す改善された薬物製剤が、一貫して求められ、より完全に特徴付けられる新規の薬物分子が継続的に必要とされている。神経変性疾患を治療する方法に対する継続的な必要性も存在する。
【発明の概要】
【0004】
一態様において、本開示は、テトラヒドロ-N,N-ジメチル-2,2-ジフェニル-3-フランメタンアミン(A2-73)の結晶形態を包含し、結晶形態は、塩または遊離塩基である。塩は、塩酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、リン酸二水素塩、安息香酸塩、メシル酸塩、エジシル酸塩(edysilate)、およびシュウ酸塩などの任意の薬学的に許容される塩であり得る。本明細書に開示される医薬製剤、剤形、および方法のうちのいずれかにおいて、結晶性A2-73は、本明細書に開示される遊離塩基、または塩酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、リン酸二水素塩、安息香酸塩、メシル酸塩、エジシル酸塩(edysilate)、およびシュウ酸塩のうちのいずれか1種類または複数種類を含む本明細書に開示される塩であり得ることが理解されるものとする。
【0005】
A2-73が塩酸塩である場合、塩酸塩は、
図4、
図6、
図8、
図9、
図10、
図11、
図12、および
図14に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる。
図4に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる塩酸塩は、
図2および
図3に図示される粒子形状およびサイズによってさらに特徴付けられ得る。
図6に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる塩酸塩は、
図5に図示される粒子形状およびサイズによってさらに特徴付けられ得る。
図8に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる塩酸塩は、
図7に図示される粒子形状およびサイズによってさらに特徴付けられ得る。
図14に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる塩酸塩は、
図13に図示される粒子形状およびサイズによってさらに特徴付けられる。
【0006】
A2-73の結晶形態は、硫酸塩であり得る。硫酸塩は、
図18および
図19に示されるXRPDパターンによって特徴付けられ得る。
図18に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる硫酸塩は、
図17に図示される粒子形状によってさらに特徴付けられ得る。
【0007】
A2-73の結晶形態は、メシル酸塩であり得る。メシル酸塩は、
図20に示されるXRPDパターンによって特徴付けられ得る。
【0008】
A2-73の結晶形態は、シュウ酸塩であり得る。シュウ酸塩は、
図21、
図22、および
図23に示されるXRPDパターンによって特徴付けられ得る。
【0009】
A2-73の結晶形態は、リン酸二水素塩であり得る。リン酸二水素塩は、
図25に示されるXRPDパターンによって特徴付けられ得る。
図25に示されるXRPDパターンによって特徴付けられるリン酸二水素塩は、
図24に図示される粒子形状によってさらに特徴付けられる。
【0010】
A2-73の結晶形態は、エジシル酸塩(edysilate)であり得る。エジシル酸塩(edysilate)は、
図26に示されるXRPDパターンによって特徴付けられ得る。
【0011】
A2-73の結晶形態は、安息香酸塩であり得る。安息香酸塩は、
図27に示されるXRPDパターンによって特徴付けられ得る。
【0012】
A2-73の結晶形態は、フマル酸塩であり得る。フマル酸塩は、
図29、
図30、
図32、
図33、および
図34に示されるXRPDパターンによって特徴付けられ得る。
図29に示されるXRPDパターンによって特徴付けられるフマル酸塩は、
図28に図示される粒子形状によってさらに特徴付けられ得、
図32に示されるXRPDパターンによって特徴付けられるフマル酸塩は、
図31に図示される粒子形状によってさらに特徴付けられ得る。
【0013】
A2-73の結晶形態は、遊離塩基であり得る。遊離塩基は、
図16に示されるXRPDパターンによって特徴付けられ得る。
図16に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる結晶形態は、
図15に図示される粒子形状によってさらに特徴付けられる。
【0014】
別の態様において、本開示は、治療有効量のA2-73を、A2-73遊離塩基およびA2-73塩からなる群から選択される結晶形態で含む剤形を包含する。剤形は、約1mg~約50g、約1mg~約500mg、または約1mg~約100mgのA2-73遊離塩基またはA2-73塩を含み得る。
【0015】
剤形は、結晶性A2-73の延長放出のために製剤化され得る。任意の剤形において、結晶性A2-73は、遊離塩基であり得、剤形は、約1mg~約500mgのA2-73遊離塩基を含み得る。剤形は、経皮パッチであり得る。経皮パッチは、約40mg~約60mg、約80mg~約120mg、または約180mg~約220mgのA2-73遊離塩基を含有し得る。剤形は、腸溶性コーティング経口製剤であり得、製剤は、約1mg~約50mgのA2-73遊離塩基を含み得る。
【0016】
任意の剤形において、結晶性A2-73は、薬学的に許容される塩であり得る。薬学的に許容される塩は、フマル酸塩、硫酸塩、メシル酸塩、リン酸二水素塩、エジシル酸塩、安息香酸塩、塩酸塩、およびシュウ酸塩からなる群から選択され得る。いくつかの態様において、A2-73塩は、フマル酸塩であり、剤形は、経皮パッチであり得る。経皮パッチは、約1mg~約55mgのA2-73フマル酸塩を含有し得る。
【0017】
いくつかの態様において、剤形は、腸溶性コーティング経口製剤であり得る。腸溶性コーティング経口製剤は、約10mg~約50mg、約20mg~約30mg、または約15mg~約25mgのA2-73フマル酸塩を含み得る。
【0018】
別の態様において、本開示は、A2-73の送達のための医薬製剤を包含する。製剤は、治療有効量の、A2-73遊離塩基およびA2-73塩から選択されるA2-73の結晶形態を含む。
【0019】
医薬製剤は、化学増強剤、湿潤剤、感圧接着剤、抗酸化剤、可溶化剤、増粘剤、可塑剤、アジュバント、担体、賦形剤、ビヒクル、およびそれらの任意の組み合わせから選択される1種類または複数種類の薬学的に許容される非薬効成分(excipient)をさらに含み得る。1種類または複数種類の非薬効成分は、経口投与、経皮投与、非経口投与、腹腔内投与、血管内投与、皮下、吸入スプレーによる投与、直腸投与、または肺内投与ための製剤を調製するために選択され得る。
【0020】
任意の医薬製剤において、結晶性A2-73は、遊離塩基、および任意の薬学的に許容される塩から選択され得る。医薬製剤の一態様において、結晶性A2-73は、フマル酸塩、または塩酸塩である。医薬製剤は、例えば、結晶性A2-73を約1重量%~約100重量%含む経口製剤であり得る。
【0021】
医薬製剤は、結晶性A2-73の延長送達のために調製され得、約1mg~約50gの結晶性A2-73を含み得る。延長送達製剤は、例えば、約0.5g~約3gの結晶性A2-73を含む皮下注射可能な投与製剤であり得る。
【0022】
医薬製剤は、経皮パッチであり得る。パッチは、約40mg~約60mg、約80mg~約120mg、または約180mg~約220mgのA2-73遊離塩基を含み得る。パッチはまた、約1mg~約55mgのA2-73フマル酸塩を含み得る。
【0023】
製剤は、経口製剤でもあり得る。経口製剤は、約1mg~約50mgのA2-73遊離塩基、約10mg~約50mg、約20mg~約30mg、または約15mg~約25mgのA2-73フマル酸塩を含み得る。経口製剤は、A2-73塩酸塩を含み得る。
【0024】
延長送達製剤は、約0.1~約5gの結晶性A2-73を含む皮下剤形であり得る。
【0025】
さらに別の態様において、本開示は、A2-73の延長送達のための経皮パッチを包含する。パッチは、治療有効量の、A2-73遊離塩基およびA2-73塩から選択されるA2-73の結晶形態を含み得る。経皮パッチは、例えば、マトリックスパッチであり得る。パッチは、化学増強剤、湿潤剤、感圧性接着剤、抗酸化剤、可溶化剤、増粘剤、可塑剤、およびこれらの任意の組み合わせから選択される1種類または複数種類の成分をさらに含み得る。パッチは、全方向にパッチを越えて延在する末梢感圧接着剤によって覆われ得る。
【0026】
A2-73遊離塩基を含む経皮パッチは、約40mg~約60mg、約80mg~約120mg、または約180mg~約220mgのA2-73遊離塩基を含有し得る。
【0027】
経皮パッチは、A2-73フマル酸塩を含み得る。A2-73フマル酸塩を含むパッチは、約1mg~約55mgのA2-73フマル酸塩を含有し得る。
【0028】
対象の皮膚と接触する経皮パッチの表面積は、約1cm2~約20cm2、約3cm2~約5cm2、または約8cm2~約10cm2の範囲であり得る。パッチは、例えば、約1日~約7日の範囲の期間にわたってA2-73の延長放出を提供するように構成され得る。さらに、パッチは、約250~350μg/cm2/hの範囲のマトリックスからのA2-73の経皮最大流量を有し得る。
【0029】
他の態様において、本開示は、A2-73の延長送達のための経口製剤を包含する。経口製剤は、治療有効量の、A2-73遊離塩基およびA2-73塩から選択されるA2-73の結晶形態と、コアを取り囲む腸溶性コーティングと、を含むコアを含む。
【0030】
経口製剤は、約1mg~約50mgのA2-73遊離塩基の範囲であり得るA2-73遊離塩基を含み得る。経口製剤はまた、コアに、約10mg~約50mg、約20mg~約30mg、もしくは約15mg~約25mgのA2-73フマル酸塩、または約35重量%~約40重量%のA2-73遊離塩基もしくはA2-73フマル酸塩の範囲であり得るA2-73フマル酸塩を含み得る。経口製剤はまた、コアに、約55重量%~約70重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸コハク酸塩、約0.3重量%~約0.9重量%のステアリン酸マグネシウム、および約0.05重量%~約0.5重量%のコロイド状二酸化ケイ素を含み得る。ヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸コハク酸塩は、pHが約5.5以上の水溶液中に可溶性であり得、第2のグレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸コハク酸塩は、pHが約6.8以上の水溶液中に可溶性であり、およびそれらの組み合わせである。製剤は、約1日~約3日の範囲の期間にわたってA2-73の延長放出を提供し得、約15~約30mg/日のA2-73を対象に送達し得る。
【0031】
一態様において、本開示は、A2-73の投与を、それを必要とする対象において行う方法を包含する。本方法は、A2-73を、A2-73遊離塩基およびA2-73の薬学的に許容される塩から選択されるA2-73の結晶形態で対象に投与することを含む。本方法の様々な態様において、結晶性A2-73は、本明細書に開示されるような結晶性A2-73遊離塩基、もしくはA2-73の薬学的に許容される塩を含む剤形または医薬製剤で投与され得る。剤形は、本明細書に開示されるような即時放出剤形または延長放出剤形であり得る。特定の態様において、塩は、フマル酸塩、または塩酸塩であり得る。他の態様において、結晶性A2-73は、約30日、約60日、約120日、または約180日の期間にわたって対象に投与され得る。
【0032】
一態様において、投与は、経皮パッチを使用して皮膚投与され得る延長放出剤形を使用して投与することを含み得る。経皮パッチは、例えば、毎日、隔日、毎週、10日~2週間毎、もしくは毎月、またはそれ以上など、定期的に交換され得る。一態様において、経皮パッチは、対象の血液中のA2-73のレベルを、期間にわたって約5ng/ml~約15ng/mlの範囲、特に、約10ng/mlに維持し得る。
【0033】
別の態様において、投与は、結晶性A2-73を含む腸溶性コーティング経口剤形を使用して投与することを含み得る。腸溶性コーティング経口剤形は、毎日、または隔日投与され得、約15~約30mg/日のA2-73を送達し得る。結晶性A2-73を含む腸溶性コーティング経口剤形は、例えば、約1日、約2日(約48時間)、3日(約72時間)、約4日、約5日、約6日、約7日、またはそれ以上であり得る長期期間にわたってA2-73の投与を提供し得る。
【0034】
別の態様において、本開示は、アルツハイマー病の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、治療有効量の、A2-73遊離塩基およびA2-73塩から選択されるA2-73の結晶形態を含む剤形を対象に投与することを含む、方法を包含する。
【0035】
別の態様において、本開示は、進行性認知症の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、治療有効量の、A2-73遊離塩基およびA2-73塩から選択されるA2-73の結晶形態を含む剤形を対象に投与することを含む、方法を包含する。
【0036】
本方法のうちのいずれにおいても、投与される剤形は、本明細書に記載されるような延長剤形であり得る。
【0037】
別の態様において、本開示は、抗神経変性有効量のA2-73を含む、神経変性疾患の治療のための医薬組成物を包含する。治療有効量は、約0.5mg~約20mg、約1mg~約60mg、約30mg~約50mg、または約3mg~約5mgの範囲であり得る。
【0038】
別の態様において、本開示は、神経変性疾患の治療のために有効な抗神経変性有効量のA2-73を含む剤形を包含する。抗神経変性有効量のA2-73の量は、約0.01~約10mg/kgまたは約0.01~約10mg/kgであり得る。
【0039】
一態様において、本開示は、神経変性疾患の治療を、それを必要とする対象において行う方法を包含する。本方法は、抗神経変性有効量のA2-73を対象に投与することを含む。変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン病(MND)、脊髄小脳失調症(SCA)、または脊髄筋萎縮症(SMA)であり得る。
【0040】
A2-73の抗神経変性有効量は、約0.5mg/日~約100mg/日、約1~約60mg/日、約20~約50mg/日、約20~約30mg/日、または約15~約25mg/日であり得る。さらに、抗神経変性有効量のA2-73を対象に投与することは、約10ng/ml、または約12ng/mlのA2-73の血液レベルを提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】Anavex2-73(塩酸塩)固体形態のためのXRPDパターンのオーバーレイである。
【
図3】昇華によって得られた形態Iの結晶の顕微鏡写真である。
【
図4】銅Kα放射線についての単結晶結果に由来するAnavex2-73形態IのXRPDパターン、対、形態Iの単離されたバルク試料について得られた実験的に測定されたXRPDパターンを示す。
【
図6】銅Kα放射線を使用して得られた形態IIのXRPDパターン、対、単結晶由来のXRPDパターンを示す。
【
図8】銅Kα放射線を使用して得られた形態IIIのXRPDパターン、対、単結晶由来のXRPDパターンを示す。
【
図9】銅Kα放射線を使用して得られた形態IVのXRPDパターンを示す。
【
図10】銅Kα放射線を使用して得られた形態VのXRPDパターンを示す。
【
図11】銅Kα放射線を使用して得られた形態VIのXRPDパターンを示す。
【
図12】銅Kα放射線を使用して得られた形態VIIのXRPDパターンを示す。
【
図14】銅Kα放射線を使用して得られた形態VIIIのXRPDパターン、対、単結晶由来のXRPDパターンを示す。
【
図15】遊離塩基形態Iの非偏光顕微鏡法(PLM)。
【
図16】銅Kα放射線を使用して得られたAnavex2-73遊離塩基形態IのXRPDパターン。
【
図17】Anavex2-73硫酸塩形態Iの偏光顕微鏡法(PLM)。
【
図18】銅Kα放射線を使用して得られたAnavex2-73硫酸塩形態IのXRPDパターン。
【
図19】Anavex2-73硫酸塩形態IIのXRPDパターン。
【
図20】Anavex2-73メシル酸塩形態IのXRPDパターン。
【
図21】Anavex2-73シュウ酸塩形態IのXRPDパターン。
【
図22】Anavex2-73シュウ酸塩形態IIのXRPDパターン。
【
図23】Anavex2-73シュウ酸塩形態IIIのXRPDパターン。
【
図24】Anavex2-73リン酸二水素形態Iの偏光顕微鏡法(PLM)。
【
図25】銅Kα放射線を使用して得られたAnavex2-73リン酸二水素形態IのXRPDパターン。
【
図26】銅Kα放射線を使用して得られたA2-73エジシル酸形態IのXRPDパターン。
【
図27】銅Kα放射線を使用して得られたA2-73安息香酸塩形態IのXRPDパターン。
【
図28】Anavex2-73フマル酸水素形態Iの偏光顕微鏡法(PLM)。
【
図29】銅Kα放射線を使用して得られたA2-73フマル酸水素形態IのXRPDパターン。
【
図30】銅Kα放射線を使用して得られたA2-73フマル酸水素形態IIのXRPDパターン。
【
図31】Anavex2-73フマル酸水素形態IIIの偏光顕微鏡法(PLM)。
【
図32】銅Kα放射線を使用して得られたAnavex2-73フマル酸水素形態IIIのXRPDパターン。
【
図33】銅Kα放射線を使用して得られたAnavex2-73フマル酸水素形態IVのXRPDパターン。
【
図34】銅Kα放射線を使用して得られたAnavex2-73フマル酸水素形態VのXRPDパターン。
【
図35A】Sig-1R活性化は、自食作用活性を増強する。
図35Aは、ANAVEX2-73の添加時の自食作用流量のウェスタンブロットの結果を定量化するウェスタンブロットおよびプロットを示す。
【
図35B】
図35Bは、PRE-084の添加時の自食作用流量のウェスタンブロットの結果を定量化するウェスタンブロットおよびプロットである。統計は、平均+/-SDとして図示される。***p<0.001、**p<0.01、t検定、n=4。
【
図35C】
図35Cは、GFP-LC3Bレポーター構築物で安定的にトランスフェクトされたHEK293細胞中の点を定量化する代表的な共焦点蛍光顕微鏡画像およびプロットを図示する(スケールバー=それぞれ、20μmまたは10μm。3つの独立した実験において、1回の処理につき30個の細胞。***p<0.001、t検定。
【
図36A】Sig-1R活性化は、ULK1活性化を刺激し、異なる自食作用ネットワーク因子の発現レベルに影響を与える。
図36Aは、ANAVEX2-73によるHeLa細胞の処理時のセリン555(pS555)におけるULK1リン酸化のウェスタンブロット、およびウェスタンブロットの結果を定量化するプロットを示す。統計は、平均±SDとして図示される。**p<0.01、t検定、n=4。
【
図36B】
図36Bは、PRE-084によるHeLa細胞の処理時のセリン555(pS555)におけるULK1リン酸化のウェスタンブロットを示す。統計は、平均±SDとして図示される。*p<0.05、t検定、n=4。
【
図36C】
図36Cは、自食作用qPCRアレイを用いて分析された自食作用ネットワーク因子の相対的な発現レベルを図示するプロットである。各遺伝子の発現は、対照細胞に関連して図示され(1に設定)、上方制御または下方制御についての閾値は、それぞれ、1.5および0.67として定義される。
【
図37A】ANAVEX2-73によるSig-1R活性化は、C.elegans中の自食作用を増強する。
図37Aは、ワームをANAVEX2-73で処理した後のGFP-LGG1のウェスタンブロットの結果を定量化するウェスタンブロットおよびプロットを示す。統計は、平均±SDとして図示される。*p<0.05、t検定、n=3。
【
図37B】
図37Bは、ANAVEX2-73およびBafiA
1またはDMSOで処理されたC.elegansの代表的な共焦点蛍光顕微鏡画像、および顕微鏡画像中の点の数を定量化するプロットである。スケールバー=50および25gm。矢印は、自食胞構造物を示す。GFP陽性点+BafiA
1を、対照***p<0.001、t検定における点と比較して、示されるとおりに自食作用流量を計算した。
【
図38A】ANAVEX2-73によるSig-1R活性化は、C.elegansにおけるプロテオスタシス能力を増加させ、Aβ42誘発性麻痺を改善する。
図38Aは、線虫の頭部領域におけるチオフラビンS陽性Aβ42凝集塊の代表的な共焦点蛍光顕微鏡画像を示す。スケールバー=50μm。
【
図38B】
図38Bは、Aβ42誘発性麻痺の分析のプロットである。ログランク検定を使用して統計を行った。1回の治療あたり合計約70匹のワームを用いた3回の独立した実験。黒=対照、ライトグレー=50μMのANAVEX2-73、ダークグレー=100!AMのANAVEX2-73。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本開示は、遊離塩基または薬学的に許容される塩形態でのテトラヒドロ-N,N-ジメチル-2,2-ジフェニル-3-フランメタンアミン(「A2-73」または「Anavex2-73」)の結晶多形が、経口、経皮、皮下、または他の投与形態に好適であり、投与時に、A2-74の即時放出または延長放出を提供するように製剤化され得るという驚くべき発見に部分的に基づいている。A2-73の結晶多形、剤形、およびA2-73の結晶多形を含む製剤を以下に記載する。治療のためにA2-73の結晶多形を使用する方法もまた開示され、神経保護のためのA2-73の使用を包含し、神経保護は、神経変性疾患の治療を含む。
【0043】
I.結晶多形
一態様において、本開示は、A2-73の結晶多形を提示する。各結晶多形は、遊離塩基形態であり得るか、または塩形態であり得る。結晶多形は、XRPDおよび本明細書に提供される他のデータによって特徴付けられる。各結晶多形の特性を以下に記載する。
【0044】
a.形態I、塩酸塩
形態Iは、無水の結晶性(複屈折板およびプレート断片)であり、単結晶X線分析を介して示され、ラセミ結晶を形成し、各個々の結晶が両方の鏡像異性体を含有することを意味する。形態Iは、塩酸塩の熱力学的に好ましいラセミ結晶形態であり、現在のAnavex2-73活性医薬成分(API)である。
図2は、形態Iの偏光顕微鏡法(PLM)を示す。
図3は、昇華によって得られた形態Iの結晶を示す。
【0045】
単結晶X線分析概要:
・結晶型:ラセミ
・空間群:単斜晶P21/c
・単位セルパラメータ:
a=14.1623(4)Å α=90.00°
b=9.0974(3)Å β=102.103(3)°
c=13.4052(4)Å γ=90.00°
体積=1688.73(9)Å3
Z=4,Z’=1
密度(ρ計算値)=1.250g/cm3
【0046】
銅Kα放射線についての単結晶結果に由来するAnavex2-73形態IのXRPDパターン、対、形態Iの単離されたバルク試料について得られた実験的に測定されたXRPDパターンを
図4に示す。
【0047】
銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73形態Iについての20個の最も強いXRPDピークを表1に示す。
【表1】
【0048】
b.形態II、塩酸塩
形態IIは、柱状(棒状)結晶からなる結晶性水和物(約一水和物)である。単結晶X線分析は、形態IIが、ホモキラル結晶(個々の鏡像異性体の光学的に純粋な結晶の物理的混合物を意味する)からなる集合体であることを示す。形態IIは、わずかに吸湿的であり、単結晶の結果は、Anavex2-73の1モルあたり0.8モルの水に基づいてモデル化されているが、結晶格子は、Anavex2-73の1モルあたり最大1.75モルの水を潜在的に保持することができ、形態IIをおそらく可変水和物とし、医薬品開発の観点から望ましくないことを示唆している。
図5は、形態IIの偏光顕微鏡法(PLM)を示す。
【0049】
単結晶X線分析概要:
結晶型:ホモキラル
空間群:Orthorhombic P212121
単位セルパラメータ:
a=7.10738(5)Å α=90.00°
b=14.22620(10)Å β=90.00°
c=17.18510(10)Å γ=90.00°
体積=1737.608(16)Å3
Z=4,Z’=1
密度(ρ計算値)=1.173g/cm3
【0050】
銅Kα放射線についての単結晶結果に由来するAnavex2-73形態IIのXRPDパターン、対、形態IIの単離されたバルク試料について得られた実験的に測定されたXRPDパターンを
図6に示す。
【0051】
銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73形態IIについての20個の最も強いXRPDピークを表2に示す。
【表2】
【0052】
c.形態III、塩酸塩
形態IIIは、柱状(棒状)形態を示す、わずかに吸湿性の無水結晶性材料である。いくつかの態様において、単結晶X線分析は、形態IIIが光学的に純粋な形態であることを示す。他の態様において、単結晶X線分析は、形態IIIが、ホモキラル結晶(個々の鏡像異性体の光学的に純粋な結晶の物理的混合物を意味する)からなる集合体であることを示す。形態IIIは、Anavex2-73の熱力学的に好ましい光学的に純粋な形態であるように見える。
図7は、形態IIIの偏光顕微鏡法(PLM)を示す。
【0053】
単結晶X線分析概要:
・結晶型:ホモキラル
・空間群:Orthorhombic P212121
・単位セルパラメータ:
a=7.10738(5)Å α=90.00°
b=14.22620(10)Å β=90.00°
c=17.18510(10)Å γ=90.00°
体積=1737.608(16)Å3
Z=4,Z’=1
密度(ρ計算値)=1.215g/cm3
【0054】
銅Kα放射線の単結晶結果に由来するAnavex2-73形態IIIのXRPDパターン、対、形態IIIの単離されたバルク試料について得られた実験的に測定されたXRPDパターン(
図8)。
【0055】
銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73形態IIIについての20個の最も強いXRPDピークを表3に示す。
【表3】
【0056】
d.形態IV、塩酸塩
形態IVは、結晶性であり、水からのAnavex2-73の凍結乾燥中に非晶質材料との物理的混合物として単離され得る。銅Kα放射線を使用して得られたAnavex2-73形態IVのXRPDパターンを
図9に示す。
【0057】
銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73形態IVについての11個の最も強いXRPDピークを表4に示す。
【表4】
【0058】
e.形態V、塩酸塩
形態Vは、結晶性であり、ジクロロメタンからのAnavex2-73の回転蒸発時に単離され得る。銅Kα放射線を使用して得られたAnavex2-73形態VのXRPDパターンを
図10に見ることができる。銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73形態Vの20個の最も強いXRPDピークは、表5に示すとおりである。
【表5】
【0059】
f.形態VI、塩酸塩
形態VIは、結晶性であり、Anavex2-73の水溶液を5℃に急速冷却すると単離した。銅Kα放射線を使用して得られたAnavex2-73形態VIのXRPDパターンが、
図11に見られる。
【0060】
銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73形態VIの20個の最も強いXRPDピークは、表6に示すとおりである。
【表6】
【0061】
g.形態VII、塩酸塩
形態VIIは、結晶性および無水の両方であり、メタノールからのAnavex2-73の空気蒸発を介して単離された。銅Kα放射線を使用して得られたAnavex2-73形態VIIのXRPDパターンを
図12に示す。銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73形態VIIについての20個の最も強いXRPDピークを表7に示す。
【表7】
【0062】
h.形態VIII、塩酸塩
形態VIIIは、Anavex2-73の三水和結晶形態である。単結晶X線分析は、形態VIIIがラセミ結晶からなることを示し、これは、各個々の結晶が両方の鏡像異性体を含有することを意味する。いかなる特定の理論にも拘束されないが、形態VIIIは、層またはチャネル水和物であると考えられ、水和水は弱く関連付けられ、粉砕、乾燥などによって容易に除去される。得られた材料、脱水格子は不安定であり、形態Iに迅速に崩壊する。
図13は、形態VIIIの偏光顕微鏡法(PLM)である。
【0063】
単結晶X線分析概要:
・結晶型:ラセミ
・空間群:単斜晶P21/c
・単位セルパラメータ:
a=17.7753(11)Å α=90.00°
b=9.0306(4)Å β=101.535(5)°
c=13.2638(5)Å γ=90.00°
体積=2086.12(12)Å3
Z=4,Z’=1
密度(ρ計算値)==1.184g/cm3
【0064】
銅Kα放射線の単結晶結果に由来するAnavex2-73形態VIIIのXRPDパターン、対、形態VIIIの単離されたバルク試料について得られた実験的に測定されたXRPDパターンを
図14に示す。銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73形態VIIIについての20個の最も強いXRPDピークを表8に示す。
【表8】
【0065】
i.形態I、遊離塩基
A2-73遊離塩基形態Iは、XRPDおよびPLMによる結晶性であり、柱状(棒状)結晶の高複屈折性凝集塊を示す。熱重量分析(TGA)は、溶融後まで有意な重量減少を示さず、形態Iが無水であることを示した。これは、重量法による蒸気吸着(GVS)分析によって確認され、最大90%のRHまで最小限の水更新(0.3w/w%)を示している。GVS後のXRPD分析は、形態に変化を示さなかった。示差走査熱量測定(DSC)は、約89℃(約91℃でのピーク温度)の開始時に鋭い溶融吸熱を示している。さらに加熱すると、形態Iは、約120℃を上回って昇華が始まり、約99%の重量減少が212.6℃で観察されるように見える。
1H NMRスペクトルおよびHPLC-MSの結果は、A2-73遊離塩基の構造と一致した。A2-73遊離塩基は、99.9%のHPLC純度を有することが示され、CAD分析は、試料内に塩化物が存在しないことを確認した。
図15は、遊離塩基形態Iの非偏光顕微鏡法(PLM)である。銅Kα放射線を使用して得られたAnavex2-73遊離塩基形態IのXRPDパターンを
図16に示す。
【0066】
銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73遊離塩基形態Iについての20個の最も強いXRPDピークを表9に示す。
【表9】
【0067】
溶解度:
A2-73遊離塩基は、驚くべきことに、以下の表10に示されるように、水を除いて、検定されたすべての溶媒中で高い溶解度を示した。
【表10】
【0068】
j.硫酸塩形態I
A2-73硫酸塩形態Iは、結晶性であり、約184℃のDSC開始温度で融解する。形態Iは、高複屈折性結晶で構成されていた。そのPLMおよびXRPDパターンを以下に提供する。
【0069】
図17は、Anavex2-73硫酸塩形態Iの偏光顕微鏡法(PLM)である。銅Kα放射線を使用して得られたAnavex2-73硫酸塩形態IのXRPDパターンを
図18に示す。銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73硫酸塩形態Iについての20個の最も強いXRPDピークを表11に示す。
【表11】
【0070】
k.硫酸塩形態II
A2-73硫酸塩形態IIは、結晶性であり、約190℃のDSC開始温度で融解する。形態IIは、40℃/75%のRHでの保存後にA2-73硫酸塩形態Iに転換する、準安定であるように見える。銅Kα放射線を使用して得られたそのXRPDパターンを
図19に示す。銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73硫酸塩形態IIについての20個の最も強いXRPDピークを表12に示す。
【表12】
【0071】
l.メシル酸塩形態I
A2-73メシル酸塩形態Iは、結晶性であり、約159℃のDSC開始温度で融解する。銅Kα放射線を使用して得られたXRPDパターンを
図20に示す。
【0072】
銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73メシル酸塩形態Iについての20個の最も強いXRPDピークを表13に示す。
【表13】
【0073】
m.シュウ酸塩形態I
A2-73シュウ酸塩形態Iは、結晶性である。銅Kα放射線を使用して得られたそのXRPDパターンを
図21に提供する。銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73シュウ酸塩形態Iについての20個の最も強いXRPDピークを表14に示す。
【表14】
【0074】
n.シュウ酸塩形態II
A2-73シュウ酸塩形態IIは、結晶性である。銅Kα放射線を使用して得られたそのXRPDパターンを
図22に提供する。表15の銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73シュウ酸塩形態IIについての20個の最も強いXRPDピーク。
【表15】
【0075】
o.シュウ酸塩形態III
A2-73シュウ酸塩形態IIIは、無水で結晶性であり、約154℃のDSC開始温度で溶融する。銅Kα放射線を使用して得られたそのXRPDパターンを
図23に提供する。
【0076】
銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73シュウ酸塩形態IIIについての20個の最も強いXRPDピーク。
【表16】
【0077】
p.リン酸二水素形態I
A2-73リン酸二水素(モノ-A2-73リン酸塩)形態Iは、結晶性で、吸湿性であり、約187~193℃のDSC開始温度で溶融する。形態Iの単離された試料は、高複屈折性結晶の小さな凝集塊からなり、pH1.2および4.5で、それぞれ、約47.2および33.1mg/mLの溶解度を示している。形態Iの飽和水溶液のpHは、2.66である。そのPLMおよびXRPDパターンを、それぞれ、
図24および25に提供する。
【0078】
図24は、Anavex2-73リン酸二水素形態Iの偏光顕微鏡法(PLM)である。
【0079】
銅Kα放射線を使用して得られたAnavex2-73リン酸二水素形態IのXRPDパターンを
図25に示す。
【0080】
銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73リン酸二水素形態Iの20個の最も強いXRPDピーク。
【表17】
【0081】
q.エジシル酸塩形態I
A2-73エジシル酸形態Iは、結晶性である。銅Kα放射線を使用して得られたそのXRPDパターンを
図26に提供する。
【0082】
銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73エジシル酸形態Iの20個の最も強いXRPDピーク。
【表18】
【0083】
r.安息香酸塩形態I
A2-73安息香酸塩形態Iは結晶性であり、DSC開始温度約116℃で融解する。銅Kα放射線を使用して得られたそのXRPDパターンを
図27に提供する。
【0084】
銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73安息香酸塩形態Iの20個の最も強いXRPDピーク。
【表19】
【0085】
s.フマル酸水素形態I
A2-73フマル酸水素(フマル酸モノ-A2-73)形態Iは、無水で、結晶性であり、約193℃のDSC開始温度で融解する。形態Iは、小さな凝集塊の高複屈折性結晶で構成されていた。そのPLMおよびXRPDパターンを、それぞれ、
図28および29に提供する。
【0086】
図28は、Anavex2-73フマル酸水素形態Iの偏光顕微鏡法(PLM)を示す。
【0087】
図29に示される銅Kα放射線Iを使用して得られたAnavex2-73フマル酸水素形態IのXRPDパターン。
【0088】
銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73フマル酸水素形態Iについての20個の最も強いXRPDピーク。
【表20】
【0089】
t.フマル酸水素形態II
A2-73フマル酸塩形態IIは、結晶性であり、約196℃のDSC開始温度で溶融する。銅Kα放射線を使用して得られたそのXRPDパターンを
図30に提供する。
【0090】
銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73フマル酸塩形態IIについての17個の最も強いXRPDピーク。
【表21】
【0091】
u.フマル酸水素形態III
A2-73フマル酸水素(モノ-A2-73フマル酸塩)形態IIIは、無水で、結晶性であり、約197℃のDSC開始温度で融解し、わずかに吸湿性であり、90%のRHで約0.9w/w%を拾う。形態IIIは、高複屈折性の柱状(旋盤状)結晶からなる。形態IIIは、胃内pHで中程度の溶解度(一般に、約1.5~3.5)およびGI pHでのより低い溶解度を示した。GI pHとは、十二指腸で約pH6を意味し、末端回腸で約pH7.4に徐々に増加した後、盲腸で約pH5.7に低下し、直腸で約pH6.7に徐々に増加する。形態IIIについて、pH1.2、4.5、および6.8で、それぞれ、約43.0、4.1、および12.6mg/mLの測定溶解度を観察した。形態IIIの飽和溶液のpHは、3.61である。そのPLMおよびXRPDパターンを、
図31および32に提供する。
【0092】
図31は、Anavex2-73フマル酸水素形態IIIの偏光顕微鏡法(PLM)を示す。
【0093】
銅Kα放射線を使用して得られたAnavex2-73フマル酸水素形態IIIのXRPDパターンを
図32に示す。
【0094】
銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73フマル酸塩形態IIIについての20個の最も強いXRPDピーク。
【表22】
【0095】
v.フマル酸塩形態IV
A2-73フマル酸塩形態IVは、無水で、結晶性であり、約170℃のDSC開始温度で融解し、続いて昇華する。銅Kα放射線を使用して得られたそのXRPDパターンを
図33に提供する。
【0096】
銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73形態のフマル酸塩IVについての20個の最も強いXRPDピーク。
【表23】
【0097】
w.フマル酸塩形態V
A2-73フマル酸塩(ジ-A2-73フマル酸塩)形態Vは、結晶性である。銅Kα放射線を使用して得られたそのXRPDパターンを
図34に提供する。
【0098】
銅Kα放射線を使用して測定されたAnavex2-73形態Vについての20個の最も強いXRPDピーク。
【表24】
【0099】
II.医薬製剤
本開示の一態様は、A2-73の送達のための医薬製剤を包含する。医薬製剤は、治療有効量の、本明細書に開示されるようなA2-73遊離塩基および任意の薬学的に許容されるA2-73塩から選択されるA2-73の結晶形態を含む。
【0100】
医薬製剤は、当該技術分野で知られているように、延長もしくは持続放出、または実質的に即時の放出のために調製され得、約1mg~約50gの結晶性A2-73を含み得る。例えば、即時送達のための製剤は、塩酸塩などの結晶性A2-73塩を含み得る。他の態様において、製剤は、結晶性A2-73の延長放出のために調製され得る。非限定的な例において、結晶性A2-73の延長放出のための製剤は、結晶性A2-73遊離塩基を含み得る。
【0101】
医薬製剤は、1種類または複数種類の薬学的に許容される非薬効成分をさらに含む。非薬効成分の非限定的な例としては、化学増強剤、湿潤剤、感圧接着剤、抗酸化剤、可溶化剤、増粘剤、可塑剤、アジュバント、担体、賦形剤、ビヒクル、コーティング、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。1種類または複数種類の非薬効成分は、経口投与、経皮投与、非経口投与、腹腔内投与、血管内投与、皮下投与、吸入スプレーによる投与、直腸投与、または肺内投与用に選択され得る。
【0102】
結晶性A2-73は、一般に、患者のコンプライアンスを改善し、対象が薬物送達デバイスを除去するのを防止するために製剤化され得る。例えば、製剤は、延長送達のための製剤を提供することによって、患者コンプライアンスの改善および薬物送達デバイスの除去の防止のために製剤化され得る。延長送達は、1日超~数か月の範囲の期間であり得る。これは、認知および/または運動制御能力が損なわれた患者に特に関連し得る。期間についての延長送達は、約1日~約1年、約1日~約1週間、約3日~約1か月、約2週間~約6か月、または約2か月~約4か月の範囲であり得る。
【0103】
延長放出製剤は、事前選択された速度で薬物の実質的に連続的な送達のために使用され得る。例えば、結晶性A2-73について、薬物は、約1mg~約100mg/日、約40~約60gm/日、または約10~約30gm/日の速度で送達され得る。適切な量の結晶性A2-73は、例えば、他の要因の中でも特に、延長放出製剤による薬物の意図される投与期間、送達機構、特定の製剤、および薬物の相対的効力に基づいて、当業者によって容易に決定され得る。
【0104】
i.結合剤
様々な態様の製剤に好適な結合剤の非限定的な例としては、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルオキソアゾリドン、ポリビニルアルコール、C12-C18脂肪酸アルコール、ポリエチレングリコール、ポリオール、糖類、オリゴ糖、ポリペプチド、オリゴペプチド、およびそれらの組み合わせが挙げられる。ポリペプチドは、約100~約300,000ダルトンの範囲のアミノ酸の任意の配列であり得る。
【0105】
結合剤は、限定されないが、結晶、粒子、粉末、または当該技術分野で知られている任意の他の微細に分割された固体形態を含む固体形態で造粒される混合物中に導入され得る。代替的に、結合剤は、溶媒中に溶解または懸濁させ、造粒中に結合剤流体として造粒デバイス中の混合物上にスプレーされ得る。
【0106】
ii.希釈剤
希釈剤(「充填剤」または「薄め液」とも称される)の非限定的な例としては、炭水化物、無機化合物、およびポリビニルピロリドン(PVP)などの生体適合性ポリマーが挙げられる。希釈剤の他の非限定的な例としては、硫酸二塩基カルシウム、硫酸三塩基カルシウム、デンプン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、微結晶セルロース、リン酸二塩基カルシウム、リン酸三塩基カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、タルク、改変デンプン、スクロース、デキストロース、ラクトース、微結晶セルロース、フルクトース、キシリトール、およびソルビトールなどの糖類、多価アルコール、デンプン、事前に製造された直接圧縮希釈剤、ならびに前述のうちのいずれかの混合物が挙げられる。
【0107】
iii.崩壊剤
崩壊剤は、発泡性であり得るか、または非発泡性であり得る。非発泡性崩壊剤の非限定的な例としては、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、それらのアルファ化および改変デンプンなどのデンプン、甘味料、ベントナイトなどの粘土、微結晶セルロース、アルギン酸塩、デンプングリコール酸ナトリウム、寒天、グアー、イナゴマメ、カラヤ、ペシチン、およびトラガカントなどのガムが挙げられる。好適な発泡性崩壊剤としては、限定されないが、クエン酸と組み合わせた重炭酸ナトリウム、および酒石酸と組み合わせた重炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0108】
iv.防腐剤
防腐剤の非限定的な例としては、限定されないが、アスコルビン酸およびその塩、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、アノキソマー、N-アセチルシステイン、イソチオシアネートベンジル、m-アミノベンゾン酸、o-アミノベンゾン酸、p-アミノベンゾン酸(PABA)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、カフェイン酸、カンタキサンチン、アルファ-カロテン、ベータ-カロテン、ベータ-カロテン、ベータ-アポカロテン酸、カルノゾール、カルバクロール、カテキン、没食子酸セチル、クロロゲン酸、クエン酸およびその塩、クローブ抽出物、コーヒーマメ抽出物、p-クマル酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、ジラウリルチオジプロピオン酸塩、ジステアリルチオジプロピオン酸塩、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、没食子酸ドデシル、エデト酸、エラギン酸、エリソルビン酸、エリソルベートナトリウム、エスクレチン、エスクリン、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン、没食子酸エチル、エチルマルトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ユーカリ抽出物、ユーゲノール、フェルリン酸、フラボノイド(例えば、カテキン、エピカテキン、没食子酸エピカテキン、エピガロカテキン(EGC)、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)、ポリフェノールエピガロカテキン-3-没食子酸塩)、フラボン(例えば、アピゲニン、クリシン、ルテオリン)、フラボノール(例えば、ダチセチン、ミリセチン、デンフェロ)、フラバノン、フラキセチン、フマル酸、ガル酸、リンドウ抽出物、グルコン酸、グリシン、ガムユソウボク(gum guaiacum)、ヘスペレチン、アルファ-ヒドロキシベンジルホスフィン酸、ヒドロキシケイ皮酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキノン、N-ヒドロキシコハク酸、ヒドロキシトリロゾール、ヒドロキシ尿素、米糠抽出物、乳酸およびその塩、レシチン、クエン酸レシチン、R-α-リポ酸、ルテイン、リコペン、リンゴ酸、マルトール、5-メトキシトリプタミン、没食子酸メチル、クエン酸モノグリセリド、クエン酸モノイソプロピル、モリン、ベータ-ナフトフラボン、ノルジヒドログアレチン酸(NDGA)、没食子酸オクチル、シュウ酸、クエン酸パルミチル、フェノチアジン、ホスファチジルコリン、リン酸、リン酸塩、フィチン酸、フィチルビクロメル、ピメント抽出物、没食子酸プロピル、ポリリン酸塩、ケルセチン、トランスレスベラトロール、ローズマリー抽出物、ロスマリン酸、セージ抽出物、セサモール、シリマリン、シナピン酸、コハク酸、クエン酸ステアリル、シリンジ酸、酒石酸、チモール、トコフェロール(すなわち、アルファ-、ベータ-、ガンマ-、およびデルタ-トコフェロール)、トコトリエノール(すなわち、アルファ-、ベータ-、ガンマ-、およびデルタ-トコトリエノール)、チロゾール、バニリン酸、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシメチルフェノール(すなわち、Ionox100)、2,4-(トリス-3’,5’-ビ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-メシチレン(すなわち、Ionox330)、2,4,5-トリヒドロキシブチロフェノン、ユビキノン、三級ブチルヒドロキノン(TBHQ)、チオジプロピオン酸、トリヒドロキシブチロフェノン、トリプタミン、チラミン、尿酸、ビタミンKおよび誘導体、ビタミンQ10、小麦胚芽油、ゼアキサンチン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0109】
v.香味改変剤
好適な香味改変剤としては、香料、矯味剤、甘味料等が挙げられる。香料には、限定されないが、合成香味油、香味芳香族、および/または天然油、植物、葉、花、果物からの抽出物、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。香味の他の非限定的な例としては、シナモン油、ウィンターグリーンの油、ペパーミント油、クローバー油、干し草油、アニス油、ユーカリ、バニラ、レモン油、オレンジ油、グレープおよびグレープフルーツ油などのシトラス油、リンゴ、モモ、ナシ、イチゴ、ラズベリー、チェリー、プラム、パイナップル、およびアプリコットを含む果実精油が挙げられる。
【0110】
矯味剤としては、限定されないが、Klucel(登録商標)、Nisswo HPC、およびPrimaFlo HP22などのセルロースヒドロキシプロピルエーテル(HPC)、低置換ヒドロキシプロピルエーテル(L-HPC)、Seppifilm-LC、Pharmacoat(登録商標)、Metolose SR、Opadry YS、PrimaFlo、MP3295A、Benecel MP824、およびBenecel MP843などのセルロースヒドロキシプロピルメチルエーテル(HPMC)、Methocel(登録商標)およびMetolose(登録商標)などのメチルセルロースポリマー、E461、Ethocel(登録商標)、Aqualon(登録商標)-EC、Sureleaseなどのエチルセルロース(EC)およびそれらの混合物、Opadry AMBなどのポリビニルアルコール(PVA)、Natrosol(登録商標)などのヒドロキシエチルセルロース、Aualon(登録商標)-CMCなどのカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースの塩(CMC)、Kollicoat IR(登録商標)などのポリビニルアルコールおよびポリエチルグリコールコポリマー、モノグリセリド(Myverol)、トリグリセリド(KLX)、ポリエチレングリコール、改変食品用デンプン、Eudragit(登録商標)EPO、Eudragit(登録商標)RD100、およびEudragit(登録商標)E100などのアクリルポリマーおよびアクリルポリマーのセルロースエーテルとの混合物、酢酸フタル酸セルロース、HPMCおよびステアリン酸の混合物などのセピフィルム、シクロデキストリン、ならびにこれらの材料の混合物が挙げられる。他の態様において、企図される追加の矯味剤は、米国特許第4,851,226号、同第5,075,114号、および同第5,876,759号に記載されるものであり、それらの各々は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
甘味料の非限定的な例としては、グルコース(コーンシロップ)、デキストロース、転化糖、フルクトース、およびそれらの混合物(担体として使用されない場合)、サッカリンおよびナトリウムエンなどのその種々の塩、アスパルテームなどのジペプチド甘味料、ジヒドロカルコン化合物、グリチルリジン、Stevia rebaudiana(ステビオシド)、スクラロースなどのスクロースのクロロ誘導体、ソルビトール、マンニトール、シリトールなどの糖アルコール、水素化デンプン加水分解物、および合成甘味料3,6-ジヒドロ-6-メチル-1,2,3-オキサチアジン-4-オン-2,2-二酸化物、特に、カリウム塩(アセスルファム-K)、ならびにそれらのナトリウム塩およびカルシウム塩が挙げられる。
【0112】
vi.潤滑剤および流動促進剤
潤滑剤組成物は、医薬組成物を形成する成分を潤滑するために利用され得る。流動促進剤として、潤滑剤は、製造プロセス中の固体剤形の除去を促進する。潤滑剤および流動促進剤の非限定的な例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、水素化植物油、ステロテックス、ポリオキシエチレンモノステアリン酸塩、タルク、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、および軽鉱油が挙げられる。医薬組成物は、一般的に、約0.01重量%~約10重量%の潤滑剤を含むであろう。いくつかの態様において、医薬組成物は、約0.1重量%~約5重量%の潤滑剤を含むであろう。さらなる態様において、医薬組成物は、約0.5重量%~約2重量%の潤滑剤を含むであろう。
【0113】
vii.分散剤
分散剤は、限定されないが、デンプン、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、グアーガム、カオリン、ベントナイト、精製木質セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、同形ケイ酸塩、および高親水性親油性バランス(HLB)乳化剤界面活性剤としての微結晶セルロースを含み得る。
【0114】
viii.着色剤
本開示の態様に応じて、着色剤を含めることが望ましい場合がある。好適な色添加剤としては、限定されないが、食品、薬物、および化粧品の色(FD&C)、薬物および化粧品の色(D&C)、または外部薬物および化粧品の色(Ext.D&C)が挙げられる。これらの色または染料は、それらの対応するレーキ、ならびに特定の天然および由来の着色剤とともに、本開示の様々な態様での使用に好適であり得る。
【0115】
ix.pH改変剤
pH改変剤の非限定的な例としては、クエン酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、乳酸、リン酸、ソルビン酸、安息香酸、炭酸ナトリウム、および重炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0116】
(x)キレート剤
キレート剤は、これらの酸化基によるモルフィナンの酸化分解を阻害するために、限定されないが、金属イオンを含む酸化基を固定化するための非薬効成分として含まれ得る。キレート剤の非限定的な例としては、リジン、メチオニン、グリシン、グルコン酸塩、多糖類、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、およびエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(Na2EDTA)が挙げられる。
【0117】
(xi)抗菌剤
抗菌剤は、限定されないが、細菌および真菌を含む微生物剤による本開示による化合物の分解を最小限に抑えるための非薬効成分として含まれ得る。抗菌剤の非限定的な例としては、パラベン、クロロブタノール、フェノール、プロピオン酸カルシウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、Na2EDTA、および限定されないが、二酸化硫黄、亜硫酸水素ナトリウム、および亜硫酸水素カリウムを含む亜硫酸塩が挙げられる。
【0118】
(xii)放出制御ポリマー
放出制御ポリマーは、本開示による化合物を組み込む様々な態様の固体投与医薬組成物に含まれ得る。一態様において、放出制御ポリマーは、錠剤コーティングとして使用され得る。限定されないが、二層錠剤を含む他の態様において、放出制御ポリマーは、限定されないが、錠剤鋳型での圧縮を含む既知のプロセスによって錠剤を形成する前に、顆粒および他の非薬効成分と混合され得る。好適な放出制御ポリマーとしては、限定されないが、親水性ポリマーおよび疎水性ポリマーが挙げられる。
【0119】
好適な親水性放出制御ポリマーとしては、限定されないが、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、セルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、ニトロセルロース、架橋デンプン、寒天、カゼイン、キチン、コラーゲン、ゼラチン、マルトース、マンニトール、マルトデキストリン、ペクチン、プルラン、ソルビトール、キシリトール、多糖類、アルギン酸アンモニア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カラゲナン、フコイダン、ファーセレラン、アラビアガム、カラギーンガム、ガティガム、グアーガム、カラヤガム、イナゴマメガム、オクラガム、トラガカントガム、スクレログルカンガム、キサンタンガム、hypnea、ラミナラン、アクリルポリマー、アクリレートポリマー、カルボキシビニルポリマー、無水マレイン酸およびスチレンのコポリマー、無水マレイン酸およびエチレンのコポリマー、無水マレイン酸プロピレンのコポリマーもしくは無水マレイン酸イソブチレンのコポリマー)、架橋ポリビニルアルコールおよびポリN-ビニル-2-ピロリドン、ポリグルカンのジエステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、アニオン性およびカチオン性ヒドロゲル、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0120】
(xiii)コーティング
本開示による化合物を含む固体投与量は、コーティングを含み得、そのようなコーティングは、化合物の放出を制御し得るか、水分バリアもしくは緩衝液として機能し得るか、またはpHを改変し得る。本明細書で使用される場合、「制御放出コーティング(control releasing coat)」または「制御放出コーティング(controlled release coat)」は、例えば、少なくとも1つのpH非依存性ポリマー、pH依存性ポリマー(例えば、腸溶性または逆腸溶性型ポリマー)、可溶性ポリマー、不溶性ポリマー、脂質、脂質材料、またはそれらの組み合わせを含み得る機能性コーティングを意味するように定義される。コーティングは、剤形上に適用される場合、(例えば、正常放出マトリックス剤形に適用される場合)遅く、(例えば、制御放出マトリックス剤形に適用される場合)さらに遅く、またはコーティングされていない剤形に適用される場合、本開示による化合物の放出速度を改変し得る。例えば、制御放出コーティングは、制御放出コーティングが剤形に適用される場合、制御放出コーティングと併せた剤形が、「改変放出」、「制御放出」、「持続放出」、「延長放出」、「遅延放出」、「長期放出」、またはそれらの組み合わせなどの本開示による化合物の放出を示し得るように設計され得る。「制御放出コーティング」は、任意選択的に、制御放出コーティングの機能を変化させ得る追加の材料を含み得る。
【0121】
本明細書で使用される場合、「水分バリア」という用語は、水分の吸収を阻害または遅延させるものである。本開示による化合物は、吸湿性であり得、このため、高湿度条件下で経時的に分解されやすい場合がある。水分バリアの構成要素の割合、および任意選択的に制御放出コーティング上に、またはコア上に適用される水分バリアの量は、典型的には、水分バリアがUSP定義および腸溶性コーティングの要件内に該当しないようになる。好適には、水分バリアは、腸溶性および/またはアクリルポリマー、好適には、アクリルポリマー、任意選択的に、可塑剤、ならびに透過促進剤を含み得る。浸透促進剤は、親水性物質であり、コーティングを物理的に破壊することなく水が入ることを可能にする。水分バリアは、追加的に、他の従来の不活性非薬効成分をさらに含み得、これは、延長放出性製剤の処理を改善し得る。
【0122】
本発明に従って使用され得るコーティングおよびマトリックス材料は、ポリビニル型の合成ポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルおよびそのコポリマー、ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドン、ポリエチレン型の合成ポリマー、例えば、ポリエチレンおよびポリスチレン、アクリル酸ポリマー、バイオポリマーまたは改変バイオポリマー、例えば、セルロースポリマー、シェラック、およびゼラチン、脂肪、油、より高い脂肪酸およびより高いアルコール(すなわち、少なくとも10個の炭素原子のアルキル鎖を含有する酸およびアルコール)、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、セチルアルコール、水素化牛脂、水素化ヒマシ油、12-ヒドロキシステアリルアルコール、モノ-またはジパルミチン酸グリセリル、モノ-、ジ-、またはトリステアリン酸グリセリル、ミリスチルアルコール、ステアリン酸、ステアリルアルコール、およびポリエチレングリコール、ワックス、糖、ならびに糖アルコールなどの制御放出製剤で使用するための当該技術分野で知られているものである。
【0123】
コーティングのpH緩衝特性は、制酸製剤で通常使用される化合物の群、例えば、酸化マグネシウム、水酸化物、もしくは炭酸塩、水酸化アルミニウムもしくは水酸化カルシウム、炭酸塩もしくはケイ酸塩、複合アルミニウム/マグネシウム化合物、例えば、Al2O3・6MgO・CO2・12H2O、(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)、MgO・Al2O3・2SiO2.nH2O、重炭酸アルミニウム共沈物もしくは類似化合物、または他の薬学的に許容されるpH緩衝化合物、例えば、リン、炭素、クエン酸、もしくは他の好適な弱酸、無機酸、もしくは有機酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウム塩、または塩基アミノ酸を含む好適な有機塩基、ならびに塩もしくはそれらの組み合わせから選択されるコーティング物質中に導入することによって強化され得る。
【0124】
pH依存性コーティングは、胃腸(GI)管の所望の領域、例えば、胃または小腸において薬物を放出する機能を果たす。pH非依存性コーティングが所望される場合、コーティングは、環境流体、例えば、GI管中のpH変化に関係なく、最適な放出を達成するように設計される。コーティングが腸(特に、上部小腸)中に本開示による化合物を放出するように製剤化される場合、コーティングは、しばしば、「腸溶性コーティング」と呼ばれる。pH依存性コーティングは、限定されないが、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、アンモニオメチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、および/またはエチルメタクリレート(例えば、Eudragit(商標))から形成されるポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、トリメリト酸酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルフタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルコハク酸セルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロースポリマー、シェラック(精製ラック)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリ酢酸ビニルフタレート(PVAP)、酢酸ビニルクロリン酸コポリマー、およびエチレン-酢酸ビニルコポリマーなどのビニルポリマーおよびコポリマー、ゼイン、ならびに塩およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0125】
A.経皮投与
本開示の一態様は、経皮投与のためのA2-73の製剤を包含する。経皮製剤の非限定的な例としては、限定されないが、ゲル、軟膏、乳濁液、マイクロ乳濁液、水性ゲル、発泡体、スプレー、ローション、またはクリームなどの経皮パッチで使用されるものが挙げられる。
【0126】
一態様において、A2-73の結晶形態の経皮製剤は、経皮パッチである。経皮パッチは、治療有効量のA2-73の結晶形態を含む。A2-73の結晶形態は、A2-73遊離塩基またはA2-73塩であり得る。
【0127】
パッチ中のA2-73の結晶形態は、A2-73遊離塩基であり得る。A2-73の結晶形態がA2-73遊離塩基である場合、パッチは、約40mg~約60mg、約80mg~約120mg、または約180mg~約220mgのA2-73遊離塩基を含有し得る。代替的に、パッチ中のA2-73の結晶形態は、A2-73フマル酸塩であり得る。A2-73の結晶形態がA2-73フマル酸塩である場合、パッチは、約1mg~約55mgのA2-73フマル酸塩を含み得る。
【0128】
経皮パッチは、延長または持続放出のために製剤化されるもの、および実質的に即時の放出のために製剤化されるものを含む。例えば、延長放出性経皮パッチは、本明細書に開示されるように、遊離塩基またはA2-73フマル酸塩としてのA2-73の結晶形態を含み得る。例えば、即時放出パッチ形態は、例えば、HCl塩などのA2-73塩を含み得る。
【0129】
経皮パッチは、約1日~約7日の範囲の期間にわたってA2-73の延長放出を提供し得る。追加的に、経皮パッチは、約250~350μg/cm2/hの範囲の経皮最大流量A2-73を有し得る。
【0130】
経皮パッチは、マトリックスパッチまたはリザーバパッチであり得る。一態様において、パッチは、マトリックスパッチである。化合物の延長送達のための、マトリックスまたはリザーバ中で送達するための量の化合物を含有する経皮パッチは、当該技術分野で知られており、例えば、米国特許第9,656,441号および米国特許公開第2019/0099383号に記載されるようにすることができ、これらの開示は、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0131】
マトリックスパッチは、全方向にパッチを越えて延在する末梢感圧接着剤によって覆われ得る。パッチは、本明細書の第III節に記載のものなどの1種類または複数種類の他の非薬効成分をさらに含有し得、化学増強剤、湿潤剤、感圧性接着剤、抗酸化剤、可溶化剤、増粘剤、可塑剤、およびそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0132】
経皮パッチのマトリックス層は、延長放出のために製剤化され得る。例えば、治療有効量の活性成分を含むことに加えて、マトリックス製剤は、1種類または複数種類の薬学的に許容される担体または非薬効成分をさらに含み得る。薬学的に許容される担体または非薬効成分の非限定的な例としては、化学浸透促進剤(CPE)、化学増強剤、湿潤剤、感圧性接着剤、抗酸化剤、可溶化剤、増粘剤、可塑剤、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0133】
いくつかの態様において、マトリックス層は、1種類または複数種類のCPEを含む。CPEの非限定的な例としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、脂肪酸、脂肪酸エステル、アゾンおよびアゾン様化合物、エタノール、グリセロルモノラウレート、DMF、ポリエチレングリコールモノラウレート、DMSO、エチルアルコール、オレイン酸、オレイルアルコール、グリセロールモノオレエート、レブリン酸、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ラウリン酸乳酸塩、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0134】
いくつかの態様において、本開示の経皮パッチは、上側および下側を有するマトリックス層を含み、マトリックスは、治療有効量の、A2-73遊離塩基およびA2-73塩から選択されるA2-73の結晶形態を含む。パッチはまた、上側および下側を有する接着層を含み、接着層の下側は、マトリックス層の上側に接触し、接着層は、マトリックス層の上側を覆う第1の部分と、マトリックス層の側面に延在する第2の部分と、を有する。マトリックスの底面は、ユーザの皮膚に接触する。
【0135】
経皮パッチは、マトリックスの下側および接着層の第2の部分の下側を覆う保護層をさらに有し得る。さらに、経皮パッチは、マトリックスの上側にカバー層を含み得る。好ましくは、カバー層は、少なくとも部分的に二弾性である。例えば、二弾性カバー層は、ヒドロキシル官能基を有するアクリルコポリマーを有し得る。いくつかの場合において、経皮パッチは、マトリックス層の上側と接着層の下側との間に位置する分離層を含有し得る。
【0136】
対象の皮膚と接触するマトリックスの表面積は、約1cm2~約20cm2、約3cm2~約5cm2、または約8cm2~約10cm2の範囲であり得る。
【0137】
一態様において、パッチは、A2-73遊離塩基もしくはA2-73フマル酸塩のいずれかを含むマトリックス、またはA2-73遊離塩基もしくはA2-73フマル酸塩を含有するリザーバを含む。パッチマトリックスまたはリザーバに含まれ得る他の非薬効成分/化学薬品/試薬は、オレイン酸エチル(EO)、およびTween60、Tween40、Tween80、トリエタノールアミンおよびエタノール、プロピレングリコール(PG)およびポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール400(PEG400)、およびメタノール、または任意のそれらの組み合わせである。パッチ構成要素は、バッキング膜(3M-9720)、速度制御膜(3M-CoTran9728(2ミル)および9716(4ミル))、ならびに剥離ライナー(SCOTCHPAK9755)、アクリレート接着剤Duro-Tak387/2510を含み得る。
【0138】
B.経口製剤
本開示のいくつかの態様は、A2-73遊離塩基および塩の結晶形態の送達のための経口製剤を包含する。経口製剤は、当該技術分野において既知であり、限定されないが、懸濁錠、チュアブル錠、発泡錠、もしくはカプレットを含む、錠剤;丸剤;滅菌パッケージ粉末、分注可能な粉末、および発泡性粉末などの粉末;HPMCカプセルなどの軟質または硬質ゼラチンカプセルの両方を含むカプセル;ロゼンジ;サシェ;スプリンクル;再構成可能な粉末もしくはシェイク;トローチ;ペレット;顆粒;液体;懸濁液;乳剤;または半固体およびゲルを含む。代替的に、医薬組成物は、液体と混合するために食品もしくは粉末に組み込まれ得るか、または非食品液体とのみ混合した後に経口投与され得る。
【0139】
経口剤形は、延長または持続放出のために製剤化されるもの、および実質的に即時の放出のために製剤化されるものを含む。例えば、延長放出経口剤形は、本明細書に開示されるように、遊離塩基またはA2-73フマル酸塩としてのA2-73の結晶形態を含み得る。例えば、即時放出経口剤形は、例えば、HCl塩などのA2-73塩を含み得る。放出特徴および放出時間は、当該技術分野で既知の方法に従って測定され得る。
【0140】
一態様において、結晶性A2-73を含む経口剤形は、約1日~約3日、4~24時間、例えば、6~24時間、好ましくは、12~24時間の範囲の期間にわたってA2-73の延長放出を提供し、約15~約30mg/日のA2-73の対象への送達を提供し得る。
【0141】
別の態様において、結晶性A2-73を含む経口剤形は、当該技術分野で理解されるようにA2-73の実質的に即時の放出を提供し、例えば、即時放出経口剤形のA2-73塩酸塩を含み得る。
【0142】
一態様において、経口製剤は、治療有効量のA2-73の結晶形態を含む、コアマトリックス(「コア」)を含む腸溶性コーティング経口剤形である。結晶性A2-73は、A2-73遊離塩基またはA2-73塩であり得る。コアは、コーティングによって囲まれている。好ましくは、コーティングは、腸溶性コーティングである。
【0143】
本開示の固体コア、例えば、カプセルまたは錠剤製剤は、結晶性A2-73を非薬効成分と共に含有する。非薬効成分の非限定的な例は、上記のセクションIIIに記載される通りであり得、結合剤、希釈剤(充填剤)、崩壊剤、発泡性崩壊剤、防腐剤(抗酸化剤)、香料改質剤、潤滑剤および流動促進剤、分散剤、着色剤、pH改質剤、キレート剤、抗菌剤、放出制御ポリマー、ならびにこれらの薬剤のいずれかの組み合わせを含み得る。
【0144】
経口製剤に好適な結合剤の非限定的な例としては、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルオキソアゾリドン、ポリビニルアルコール、C12-C18脂肪酸アルコール、ポリエチレングリコール、ポリオール、糖類、オリゴ糖、ポリペプチド、オリゴペプチド、およびそれらの組み合わせが挙げられる。ポリペプチドは、約100~約300,000ダルトンの範囲のアミノ酸の任意の配列であり得る。
【0145】
希釈剤(「充填剤」または「薄め液」とも称される)の非限定的な例としては、炭水化物、無機化合物、およびポリビニルピロリドン(PVP)などの生体適合性ポリマーが挙げられる。希釈剤の他の非限定的な例としては、硫酸二塩基カルシウム、硫酸三塩基カルシウム、デンプン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、微結晶セルロース、リン酸二塩基カルシウム、リン酸三塩基カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、タルク、改変デンプン、スクロース、デキストロース、ラクトース、微結晶セルロース、フルクトース、キシリトール、およびソルビトールなどの糖類、多価アルコール、デンプン、事前に製造された直接圧縮希釈剤、ならびに前述のうちのいずれかの混合物が挙げられる。
【0146】
崩壊剤は、発泡性であり得るか、または非発泡性であり得る。非発泡性崩壊剤の非限定的な例としては、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、それらのアルファ化および改変デンプンなどのデンプン、甘味料、ベントナイトなどの粘土、微結晶セルロース、アルギン酸塩、デンプングリコール酸ナトリウム、寒天、グアー、イナゴマメ、カラヤ、ペシチン、およびトラガカントなどのガムが挙げられる。好適な発泡性崩壊剤としては、限定されないが、クエン酸と組み合わせた重炭酸ナトリウム、および酒石酸と組み合わせた重炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0147】
分散剤は、限定されないが、デンプン、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、グアーガム、カオリン、ベントナイト、精製木質セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、同形ケイ酸塩、および高親水性親油性バランス(HLB)乳化剤界面活性剤としての微結晶セルロースを含み得る。
【0148】
pH改変剤の非限定的な例としては、クエン酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、乳酸、リン酸、ソルビン酸、安息香酸、炭酸ナトリウム、および重炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0149】
放出制御ポリマーは、本開示による化合物を組み込む経口製剤に含まれ得る。一態様において、放出制御ポリマーは、錠剤コーティングとして使用され得る。限定されないが、二層錠剤を含む他の態様において、放出制御ポリマーは、限定されないが、錠剤鋳型での圧縮を含む既知のプロセスによって錠剤を形成する前に、顆粒および他の非薬効成分と混合され得る。好適な放出制御ポリマーとしては、限定されないが、親水性ポリマーおよび疎水性ポリマーが挙げられる。
【0150】
コーティングは、化合物の放出を制御し得るか、水分バリアもしくは緩衝液として機能し得るか、またはpHを改変し得る。本明細書で使用される場合、「制御放出コーティング(control releasing coat)」または「制御放出コーティング(controlled release coat)」は、例えば、少なくとも1つのpH非依存性ポリマー、pH依存性ポリマー(例えば、腸溶性または逆腸溶性型ポリマー)、可溶性ポリマー、不溶性ポリマー、脂質、脂質材料、またはそれらの組み合わせを含み得る機能性コーティングを意味するように定義される。コーティングは、固体剤形上に適用される場合、(例えば、正常放出マトリックス剤形に適用される場合)遅いか、(例えば、制御放出マトリックス剤形に適用される場合)さらに遅いか、またはコーティングされていない剤形に適用される場合、本開示による化合物の放出速度を改変し得る。例えば、制御放出コーティングは、制御放出コーティングが剤形に適用される場合、制御放出コーティングと併せた剤形が、「即時放出」、「改変放出」、「制御放出」、「持続放出」、「延長放出」、「遅延放出」、「長期放出」、またはそれらの組み合わせなどの本開示による化合物の放出を示し得るように設計され得る。コーティングは、任意に、制御放出コーティングの機能を変更し得る追加の材料を含み得る。
【0151】
コーティングのpH緩衝特性は、制酸製剤で通常使用される化合物の群、例えば、酸化マグネシウム、水酸化物、もしくは炭酸塩、水酸化アルミニウムもしくは水酸化カルシウム、炭酸塩もしくはケイ酸塩、複合アルミニウム/マグネシウム化合物、例えば、Al2O3・6MgO・CO2・12H2O、(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)、MgO・Al2O3・2SiO2.nH2O、重炭酸アルミニウム共沈物もしくは類似化合物、または他の薬学的に許容されるpH緩衝化合物、例えば、リン、炭素、クエン酸、もしくは他の好適な弱酸、無機酸、もしくは有機酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウム塩、または塩基アミノ酸を含む好適な有機塩基、ならびに塩もしくはそれらの組み合わせから選択されるコーティング物質中に導入することによって強化され得る。
【0152】
pH依存性コーティングは、胃腸(GI)管の所望の領域、例えば、胃または小腸において薬物を放出する機能を果たす。pH非依存性コーティングが所望される場合、コーティングは、環境流体、例えば、GI管中のpH変化に関係なく、最適な放出を達成するように設計される。コーティングが腸(特に、上部小腸)中に本開示による化合物を放出するように製剤化される場合、コーティングは、しばしば、「腸溶性コーティング」と呼ばれる。pH依存性コーティングは、限定されないが、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、アンモニオメチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、および/またはエチルメタクリレート(例えば、Eudragit(商標))から形成されるポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、トリメリト酸酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルフタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルコハク酸セルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロースポリマー、シェラック(精製ラック)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリ酢酸ビニルフタレート(PVAP)、酢酸ビニルクロリン酸コポリマー、およびエチレン-酢酸ビニルコポリマーなどのビニルポリマーおよびコポリマー、ゼイン、ならびに塩およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0153】
本発明に従って使用され得るコーティングおよびコア材料は、ポリビニル型の合成ポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、およびそのコポリマー、ポリビニルアルコール、ならびにポリビニルピロリドン;ポリエチレン型の合成ポリマー、例えば、ポリエチレンおよびポリスチレン;アクリル酸ポリマー;バイオポリマーまたは改変バイオポリマー、例えば、セルロースポリマー、シェラック、およびゼラチン;脂肪、油、高級脂肪酸、および高級アルコール(すなわち、少なくとも10個の炭素原子のアルキル鎖を含有する酸およびアルコール)、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、セチルアルコール、水素化牛脂、水素化ヒマシ油、12-ヒドロキシステアリルアルコール、モノ-またはジパルミチン酸グリセリル;モノ-、ジ-、またはトリステアリン酸グリセリル;ミリスチルアルコール、ステアリン酸、ステアリルアルコール、およびポリエチレングリコール;ワックス;糖および糖アルコールなどの制御放出製剤で使用するための当該技術分野で知られているものである。
【0154】
コアにおける結晶性A2-73は、結晶性A2-73遊離塩基であり得、コアは、約1g~約50gの結晶性A2-73を含み得る。コアは、約1mg~約50mgのA2-73遊離塩基を含み得る。コアは、約1g~約50g、約10mg~約50mg、約20mg~約30mg、または約15mg~約25mgのA2-73フマル酸塩も含み得る。コアは、約35重量%~約40重量%のA2-73遊離塩基またはA2-73フマル酸塩を含み得る。一態様において、コアは、約35重量%~約40重量%のA2-73遊離塩基またはA2-73フマル酸塩、約55重量%~約70重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸コハク酸塩、約0.3重量%~約0.9重量%のステアリン酸マグネシウム、および約0.05重量%~約0.5重量%のコロイド状二酸化ケイ素を含む。ヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸コハク酸塩は、pHが約5.5以上の水溶液中に可溶性であり、第2のグレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸コハク酸塩は、pHが約6.8以上の水溶液中に可溶性であり、およびそれらの組み合わせである。
【0155】
C.皮下
製剤は、皮下注射可能な投与製剤であり得る。いくつかの態様において、製剤は、延長送達皮下注射可能投与製剤または実質的に即時の送達用であり得る。延長放出皮下投与製剤は、約0.1~約5gの結晶性A2-73~約0.5g~約3gの結晶性A2-73を含み得る。
【0156】
薬物の延長放出のための注射可能な投与製剤は、当該技術分野で既知であり、移植可能な薬物送達デバイスなどの薬物の延長送達のために製剤化される注射可能な製剤を含み得る。本明細書で使用される「薬物送達デバイス」という用語は、本開示による製剤を送達するのに適した任意の移植可能なデバイスを指す。デバイスの非限定的な例としては、拡散性、浸食性、または対流システム、例えば、浸透圧ポンプ、生分解性インプラント、電気拡散システム、電気浸透システム、蒸気圧ポンプ、電解ポンプ、発泡ポンプ、圧電ポンプ、浸食ベースシステム、または電気機械システムを含む任意の作用機構を有する任意の移植可能なデバイスが挙げられる。
【0157】
III.剤形
本開示の一態様は、A2-73の剤形を包含する。剤形は、治療有効量のA2-73を結晶形態で含有する。例えば、剤形は、神経保護量の結晶性A2-73を含有し得る。いくつかの態様において、神経保護量は、本明細書に開示されるような結晶形態のA2-73の抗神経変性量である。結晶性A2-73は、A2-73遊離塩基または結晶性A2-73塩であり得る。剤形は、上記のセクションIIに記載されるように製剤化され得る。
【0158】
剤形は、約1mg~約50g、約1mg~約500mg、または約1mg~約100mgのA2-73遊離塩基またはA2-73塩を含み得る。さらに、
【0159】
剤形は、約1mg~約500mg、約50~約400mg、約75~約150mg、または約150~約200mgのA2-73遊離塩基またはA2-73塩を含み得る。例えば、剤形は、1、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、または300mg以上のA2-73遊離塩基またはA2-73塩を含み得る。いくつかの態様において、剤形は、約1mg~約500mg、または約1mg~約100mgのA2-73遊離塩基またはA2-73塩を含み得る。
【0160】
いくつかの態様において、剤形中のA2-73の結晶形態は、遊離塩基である。A2-73が遊離塩基である場合、剤形は、約1mg~約500mg、約40mg~約60mg、約80mg~約120mg、または約180mg~約220mgのA2-73遊離塩基を含み得る。
【0161】
他の態様において、剤形中のA2-73の結晶形態は、A2-73の塩である。A2-73が塩である場合、剤形は、約1mg~約500mg、約1mg~約55mg、約40mg~約60mg、約80mg~約120mg、または約180mg~約220mgのA2-73塩を含み得る。
【0162】
剤形は、延長または持続放出のために製剤化されるもの、および即時放出のために製剤化されるものを含む。例えば、即時放出剤形は、本明細書に開示されるように、遊離塩基またはA2-73塩としてのA2-73の結晶形態を含み得る。例えば、高速分解経口剤形は、例えば、HCl塩などのA2-73塩を含み得る。代替的に、剤形は、乾燥粉末またはエアロゾルスプレーのいずれかとしての、吸入薬物送達のために製剤化された遊離塩基またはA2-73塩としてのA2-73の結晶形態を含み得る。
【0163】
剤形はまた、局所投与用に製剤化されるものを含む。例えば、剤形は、ゲル、軟膏、エマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、ペースト、ゲル、フォーム、スプレー、ローション、またはクリームのうちの1または複数として製剤化され得る。一態様において、局所投与剤形は、経皮パッチである。経皮パッチは、例えば、以下のセクションIIIに記載される通りであり得る。剤形が経皮パッチとして製剤化される場合、経皮パッチは、約40mg~約60mg、約80mg~約120mg、または約180mg~約220mgのA2-73遊離塩基を結晶形態で含有し得る。
【0164】
剤形は、代替的には、経口投与用に製剤化され得る。経口投与用に製剤化された剤形は、水中または舌下で飲み込む、噛む、または溶解する錠剤、カプセルおよびチュアブルカプセル、粉末、顆粒、茶、滴薬、または液体薬剤もしくはシロップであり得る。好ましくは、剤形は、腸溶性コーティング経口製剤である。腸溶性コーティング経口製剤は、以下のセクションIVに記載される通りであり得る。
【0165】
剤形が腸溶性コーティング経口製剤である場合、製剤は、約0.1mg~約60mgのA2-73遊離塩基、好ましくは、約1mg~約50mgのA2-73遊離塩基を含み得る。
【0166】
腸溶性コーティング経口製剤はまた、結晶形態のA2-73塩を含有し得る。A2-73塩は、フマル酸塩、硫酸塩、メシル酸塩、リン酸二水素塩、エジシル酸塩、安息香酸塩、塩酸塩、およびシュウ酸塩であり得る。一態様において、A2-73塩は、フマル酸塩である。A2-73塩がフマル酸塩である場合、腸溶性コーティング経口製剤は、約0.1~約100mgのA2-73フマル酸塩、好ましくは、約1mg~約55mgのA2-73フマル酸塩を含み得る。
【0167】
剤形はまた、皮下および/または筋肉内注射のために製剤化されるものを包含する。例えば、筋肉内剤形は、筋肉内注射のための油マトリックスに溶解されるか、または代替的に、筋肉内注射のための遊離塩基の懸濁液として調製される、遊離塩基形態のA2-73を含み得る。皮下または筋肉内注射のために製剤化される剤形は、当該技術分野で既知の方法を使用してマイクロスフェアとして調製される、本明細書に開示される塩または遊離塩基形態のA2-73を含み得る。代替的に、遊離塩基または塩形態のA2-73は、例えば、原子層堆積(ALD)技法を使用して、酸化亜鉛のコーティングなどの薄層コーティングでコーティングされ得、皮下または筋肉内注射のための製剤中で使用され得る。代替的に、A2-73遊離塩基は、生分解性ポリマーマトリックスに溶解され、次いで皮下移植され得る(または、以下でさらに詳述される経皮パッチで使用され得る)。
【0168】
IV.A2-73の投与方法および治療方法
本開示の一態様は、A2-73を対象に投与する方法を包含する。方法は、A2-73を対象に、A2-73遊離塩基およびA2-73塩から選択されるA2-73の結晶形態を含む剤形で投与することを含む。
【0169】
剤形は、上記のセクションIIIに記載される通りであり得る。剤形は、即時または延長放出のために製剤化することができ、経口、経皮、皮下、または他の投与形態のために製剤化することができる。製剤は、上記のセクションIIに記載される通りであり得る。
【0170】
結晶性A2-73を含む延長放出剤形は、約2週間、30日、約45日、約60日、約90日、または約120日~約180日の期間にわたってA2-73を投与することができる。
【0171】
いくつかの態様において、方法は、局所剤形を投与することを含む。局所剤形は、経皮パッチであり得る。経皮パッチは、毎日、毎週、またはそれ以上で交換され得る。いくつかの態様において、経皮パッチは、対象の血液中のA2-73のレベルを、約5ng/ml~約15ng/mlの範囲の期間にわたって維持することができ、特に約10ng/mlが維持され得る。
【0172】
A2-73の結晶形態はまた、経口投与用に製剤化された剤形を使用して経口投与することができる。好ましくは、剤形は、腸溶性コーティング経口製剤である。
【0173】
腸溶性コーティング経口剤形は、隔日投与され得る。剤形は、約15~約30mg/日のA2-73を送達し得る。さらに、A2-73の延長放出のために製剤化される場合、経口剤形は、約1日~約7日、約48時間、約72時間、またはそれ以上の範囲であり得る期間にわたってA2-73を送達することができる。
【0174】
本開示の一態様は、アルツハイマー病の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、治療有効量の、A2-73遊離塩基およびA2-73塩から選択されるA2-73の結晶形態を含む剤形を投与することを含む、方法を包含する。
【0175】
本開示の一態様は、進行性認知症の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、治療有効量の、A2-73遊離塩基およびA2-73塩から選択されるA2-73の結晶形態を含む剤形を投与することを含む、方法を包含する。
【0176】
V.神経変性疾患の治療
Sig-1R発現または活性は、神経変性と関連し、Sig-1Rの活性化は、異なる薬理プロファイルを有する異なるタイプの薬理学的Sig-1R活性化剤を用いる、異なるインビトロおよびインビボモデルにおける神経保護と関連付けられる。本発明者らは、驚くべきことに、混合ムスカリン受容体リガンドであるA2-73およびSig-1Rアゴニストが、神経変性疾患を治療するために使用され得ることを発見した。そのようなものとして、A2-73の結晶形態、ならびに開示される局所および経口剤形のいずれかを、神経変性疾患の治療を含む神経保護のために、それを必要とする対象に投与することができる。
【0177】
そのようなものとして、本開示の一態様は、神経変性疾患の治療のための医薬組成物を包含する。組成物は、抗神経変性有効量のA2-73を含む。A2-73は、A2-73の結晶多形であり得、遊離塩基または塩であり得る。好ましくは、A2-73は、A2-73の塩酸塩である。
【0178】
抗神経変性有効量は、約0.5mg~約20mg、約1mg~約60mg、約30mg~約50mg、または約3mg~約5mgの範囲であり得る。
【0179】
本開示の別の態様は、神経変性疾患の治療のために有効な量のA2-73を含む剤形を包含する。剤形中のA2-73の量は、約0.01~約10mg/kgであり得る。
【0180】
本開示の別の態様は、抗神経変性有効量のA2-73を対象に投与することを含む、抗神経変性疾患の治療を、それを必要とする対象において行う方法を包含する。神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン病(MND)、脊髄小脳失調症(SCA)、および脊髄筋萎縮症(SMA)から選択され得る。
【0181】
A2-73の抗神経変性有効量は、約0.5mg/日~約100mg/日、約1~約60mg/日、約20~約50mg/日、約20~約30mg/日、または約15~約25mg/日の範囲であり得る。抗神経変性有効量のA2-73を投与することは、約10ng/ml、約12ng/ml、約A2-73の血液レベルを提供することができる。
【0182】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献は、本発明で使用される用語の多くの一般的な定義を当業者に提供する:Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2nd ed.1994)、The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker ed.,1988)、The Glossary of Genetics,5th Ed.,R.Rieger et al.(eds.),Springer Verlag(1991)、およびHale&Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書で使用される場合、以下の用語は、別途指定されない限り、それらに帰属する意味を有する。
【0183】
本開示の要素またはその好ましい態様(複数可)を導入する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、要素のうちの1または複数が存在することを意味することが意図される。「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語は、包括的であることが意図され、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0184】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記の細胞および方法において様々な変更を行うことができるため、上記の説明および以下に与えられる実施例に含有される全ての事項は、限定的な意味ではなく例示的であると解釈されるべきであることが意図される。
【0185】
「含む(comprising)」という用語は、「含むが、必ずしもこれらに限定されない」を意味し、具体的には、そのように記載された組み合わせ、群、シリーズなどへのオープンエンドの包含またはメンバーシップを示す。本明細書で使用される「含む(comprising)」および「含む(including)」という用語は、包含的かつ/またはオープンエンドであり、追加の、列挙されていない要素または方法プロセスを除外しない。「から本質的になる」という用語は、「含む」よりも限定的であるが、「からなる」ほど制限的ではない。具体的には、「から本質的になる」という用語は、特定の材料またはステップ、および特許請求される発明の本質的な特徴に実質的に影響を与えない材料またはステップにメンバーシップを限定する。
【0186】
本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、モルモット、およびイヌを含むが、これらに限定されない哺乳動物対象を指す。
【0187】
本明細書で使用される場合、「延長」または「持続」放出または送達という用語は、互換的に使用され、即時放出組成物とは対照的に理解され得る。延長放出製剤では、活性成分は、徐々に、剤形の意図される使用に適した速度で、経時的に連続して遊離される。特に、用語は、製剤が投与直後に活性成分の全用量を放出しないこと、および製剤が投与頻度の低減を可能にすることを示す。長期作用、徐放、または改変放出と同義に使用される、持続または延長放出剤形は、即時放出剤形として(例えば、溶液または即時薬物放出の従来の固体剤形として)提示されるものと比較して、投薬頻度の低減または患者コンプライアンスもしくは治療性能の著しい増加を可能にする剤形である。
【実施例】
【0188】
上述の刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示についてのみ提供される。本明細書におけるいかなるものも、本発明が、先行発明のためにそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0189】
以下の例は、本開示を実証するために含まれる。以下の例に開示される技法が、本開示の実施において良好に機能することが本発明者らによって発見された技法を表すことは、当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本開示において多くの変更を行うことができ、依然として同様または類似の結果を得ることができ、したがって、記載される全ての事項は例示的であり、限定的な意味ではないと解釈されるものであることを理解すべきである。
【0190】
実施例1.形態I、塩酸塩の調製
形態Iは、無水溶媒、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)からのAnavex2-73の結晶化によって得ることができる。70℃で、形態Iは、例えば、最大少なくとも2.5%体積/体積の水を含有するIPAから得ることができる。形態Iはまた、昇華によって得ることができる。形態I調製のいくつかの例は、以下の通りである。
【0191】
(i)実施例1.
約100mgのAnavex2-73を試料バイアルに量り入れ、それに0.5mLまたは1mLの2-エトキシエタノール、1-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、エタノール、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、またはtert-ブタノールを添加した。これらのバイアルに、必要に応じて、追加のAnavex2-73を添加して、移動性スラリーが観察されることを確実にした。スラリーを、周囲温度(約20~25℃)と40℃との間で使用される温度サイクル(各温度で2時間)でインキュベーターシェーカーを使用して約72時間撹拌した。約72時間の温度サイクル後、飽和溶液を、0.45μmシリンジフィルターを使用してスラリーから分離した。各濾液の約4分の1に、tert-ブチルメチルエーテルを添加して形態Iを沈殿させ、それをXRPDによって特徴付けた。
【0192】
(ii)実施例2.
約100mgのAnavex2-73を試料バイアルに量り入れ、それに0.5mLまたは1mLの2-エトキシエタノール、1-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、エタノール、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、またはtert-ブタノールを添加した。これらのバイアルに、必要に応じて、追加のAnavex2-73を添加して、移動性スラリーが観察されることを確実にした。スラリーを、周囲温度と40℃との間で使用される温度サイクル(各温度で2時間)でインキュベーターシェーカーを使用して約72時間撹拌した。約72時間の温度サイクル後、スラリーを、0.45μmフィルターを通して濾過して、形態I沈殿物を単離し、それをXRPDによって特徴付けた。
【0193】
(iii)実施例3.
Anavex2-73を、約2.5%体積/体積の水(またはそれ未満)を含有するIPA中でスラリー化し、70℃で20時間撹拌した。その後、形態I沈殿物を濾過によって単離し、それをXRPDによって特徴付けた。
【0194】
(iv)実施例4.
約100mgのAnavex2-73を、大気圧下、氷を入れた5mLビーカー中で約200℃に加熱した。残渣を収集し、XRPDによって特徴付けた。
【0195】
実施例2.形態II、塩酸塩の調製
形態IIは、有機溶媒:水混合物、例えば、イソプロピルアルコール(IPA):水(90:10)からのAnavex2-73の結晶化によって得ることができる。それはまた、1-ブタノール、クロロホルム、エタノール、またはtert-ブタノールから周囲温度での空気蒸発によって得ることができる。形態II調製の例は、以下の通りである。
【0196】
(i)実施例1.
約100mgのAnavex2-73を試料バイアルに量り入れ、そこに0.5mLまたは1mLの水、IPA:水(95:5体積/体積)またはIPA:水(97.5:2.5体積/体積)を添加した。このバイアルに、必要に応じて、追加のAnavex2-73を添加して、移動性スラリーが観察されることを確実にした。スラリーを、周囲温度と40℃との間で使用される温度サイクル(各温度で2時間)でインキュベーターシェーカーを使用して約72時間撹拌した。約72時間の温度サイクル後、飽和溶液を、0.45μmシリンジフィルターを使用してスラリーから分離した。各濾液の約4分の1に、tert-ブチルメチルエーテル、または水の場合、THFを添加して形態IIを沈殿させ、それをXRPDによって特徴付けた。
【0197】
(ii)実施例2.
約100mgのAnavex2-73を試料バイアルに量り入れ、そこに2.5~10%体積/体積の水を含有する0.5mLまたは1mLのIPAを添加した。これらのバイアルに、必要に応じて、追加のAnavex2-73を添加して、移動性スラリーが観察されることを確実にした。スラリーを、周囲温度と40℃との間で使用される温度サイクル(各温度で2時間)でインキュベーターシェーカーを使用して約72時間撹拌した。約72時間の温度サイクル後、スラリーを、0.45μmフィルターを通して濾過して、形態II沈殿物を単離し、それをXRPDによって特徴付けた。
【0198】
(iii)実施例3.
Anavex2-73を、約2.5~92.5%体積/体積の水を含有するIPA中でスラリー化し、20℃の温度で20時間撹拌した。その後、形態II沈殿物を濾過によって単離し、それをXRPDによって特徴付けた。
【0199】
(iv)実施例4.
Anavex2-73を、約7.5~45%体積/体積の水を含有するIPA中でスラリー化し、70℃の温度で20時間撹拌した。その後、形態II沈殿物を濾過によって単離し、それをXRPDによって特徴付けた。
【0200】
(v)実施例5.
形態IIは、IPA:水(95:5%体積/体積)およびIPA:水(97.5:2.5%体積/体積)の両方を使用して、250mgスケールで生成した。約250mgのAnavex2-73を、20mLシンチレーションバイアルに量り入れた。各バイアルに、2.5mLのIPA:水(95:5%体積/体積)またはIPA:水(97.5:2.5%体積/体積)のいずれかを添加した。スラリーを、周囲温度と40℃との間で使用される温度サイクル(各温度で2時間)でインキュベーターシェーカーを使用して約48時間撹拌した。約48時間の温度サイクル後、飽和溶液をスラリーから分離した。次いで、飽和溶液を周囲温度で蒸発させた。温度サイクル後の残留固体材料をXRPDによって分析した。残留固体を周囲温度で空気乾燥させ、再びXRPDによって分析した。
【0201】
実施例3.形態III、塩化物塩の調製
形態IIIは、20℃で水およびイソプロピルアルコール(IPA)からのAnavex2-73の結晶化によって得ることができる。
【0202】
いくつかの態様において、形態IIIの調製は以下の通りである。
【0203】
(i)実施例1.
一態様において、形態IIIの調製の一例は以下である。約100mgのAnavex2-73を試料バイアルに量り入れ、そこに0.5mLの水を添加した。このバイアルに、追加のAnavex2-73を添加して、移動性スラリーが観察されることを確実にした。スラリーを、周囲温度と40℃との間で使用される温度サイクル(各温度で2時間)でインキュベーターシェーカーを使用して約72時間撹拌した。約72時間の温度サイクル後、0.45μmシリンジフィルターを使用してスラリーから飽和溶液を分離した。濾液の約4分の1を周囲温度(約20℃)で蒸発させた。固体残基についてXRPDデータを収集した。
【0204】
(ii)実施例2.
別の態様において、形態IIIの調製の一例は以下である。Anavex2-73を、IPA中でスラリー化し、20℃の温度で20時間撹拌した。その後、形態III沈殿物を濾過によって単離し、XRPDによって特徴付けた。
【0205】
(iii)実施例3.
一態様において、形態IIIの調製の一例は以下である。形態III材料は、水を使用して500mgスケールで生成した。約500mgのAnavex2-73を20mLシンチレーションバイアルに量り入れ、600μLの水を添加した。スラリーを次いで、周囲温度と40℃との間で使用される温度サイクル(各温度で2時間)でインキュベーターシェーカーを使用して約48時間撹拌した。約24時間後、薄いスラリーが観察され、さらに130mgのAnavex2-73がスラリーに添加された。全48時間の温度サイクル後、飽和溶液をスラリーから分離した。次いで、飽和溶液を周囲温度で蒸発させた。温度サイクル後の残留固体材料をXRPDによって分析した。残留固体を周囲温度で空気乾燥させ、XRPDによって再分析した。
【0206】
実施例4.形態IV、塩酸塩の調製
形態IVは、水からのAnavex2-73凍結乾燥によって得た。一態様において、形態IVの調製は以下の通りである。
【0207】
(i)実施例1.
約20mgのAnavex2-73を2mL試料バイアルに量り入れ、200μLの脱イオン水に溶解した。試料を次いで-20℃の冷凍庫に入れた。凍結したら、試料を凍結乾燥させ、XRPDによって特徴付け、材料の結晶性を評価した。
【0208】
実施例5.形態V、塩酸塩の調製
形態Vは、ジクロロメタンからのAnavex2-73回転蒸発によって得た。一態様において、形態Vの調製は以下の通りである。
【0209】
(i)実施例1.
約20mgのAnavex2-73を300μLのジクロロメタンに溶解し、回転蒸発器を利用して、ドラフトチャンバー中で急速に蒸発させた。得られた固体材料についてXRPDデータを収集した。
【0210】
実施例6.形態VI、塩酸塩の調製
形態VIは、Anavex2-73の水溶液を5℃に急速冷却後に得た。形態VI調製の具体例は、以下の通りである。
【0211】
(i)実施例1.
約100mgのAnavex2-73を試料バイアルに量り入れ、そこに0.5mLの水を添加した。このバイアルに、追加のAnavex2-73を添加して、移動性スラリーが観察されることを確実にした。スラリーを、周囲温度と40℃との間で使用される温度サイクル(各温度で2時間)でインキュベーターシェーカーを使用して約72時間撹拌した。約72時間の温度サイクル後、飽和溶液を、0.45μmシリンジフィルターを使用してスラリーから分離した。濾液の約4分の1を5℃の冷蔵庫に入れ、固体沈殿物が観察されるまで保存した。潜在的な脱溶媒和を防止する湿潤沈殿物についてXRPDデータを収集した。
【0212】
実施例7.形態VII、塩酸塩の調製
形態VIIは、メタノールからのAnavex2-73の空気蒸発によって得た。形態VII調製の具体例は、以下の通りである。
【0213】
(i)実施例1.
約100mgのAnavex2-73を試料バイアルに量り入れ、そこに0.5mLのメタノールを添加した。このバイアルに、追加のAnavex2-73を添加して、移動性スラリーが観察されることを確実にした。スラリーを、周囲温度と40℃との間で使用される温度サイクル(各温度で2時間)でインキュベーターシェーカーを使用して約72時間撹拌した。約72時間の温度サイクル後、0.45μmシリンジフィルターを使用してスラリーから飽和溶液を分離した。濾液の約4分の1を周囲温度(約20℃)で蒸発させた。固体残基についてXRPDデータを収集した。
【0214】
実施例8.形態VIII、塩酸塩の調製
形態VIIIは、Anavex2-73を20℃の水中でスラリー化することによって得られる。形態VIII調製の具体例は、以下の通りである。
【0215】
(i)実施例1.
Anavex2-73を、スラリーが得られるまで20℃で約1.5mLの水に添加し、20時間スラリー化した後にXRPDを用いて懸濁材料を分析した。
【0216】
(ii)実施例2.
Anavex2-73を水に完全に溶解し、沈殿が観察されるまで20℃で空気蒸発させる。得られた形態VIIIは、依然として水で湿っているうちに単離し、乾燥させると、形態Iに変換する。XRPDパターンを乾燥前/乾燥後に収集した。
【0217】
実施例9.形態I、遊離塩基の調製
250mL分離漏斗に、150mLのEtOAcおよび500mgのA2-73(塩酸塩)、続いて100mLの濃縮NaHCO3を添加した。得られた混合物を振盪し、水層を除去した。2つの追加の100mLアリコートの濃縮NaHCO3を添加し、その都度、混合物を振盪させ、水層を除去した。
【0218】
有機層を100mLの脱イオン水で洗浄し、次いで有機層を、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、次いで濾過した。濾液を収集し、EtOAcを、回転蒸発器を使用して除去した。蒸発後に透明な油を得て、それを窒素流下で乾燥させ、白色の固体を得た。得られた固体を秤量し、XRPDによって分析した。
【0219】
データは、A2-73遊離塩基が、(i)結晶性、(ii)非高水溶性(HCl塩とは異なる)、および(iii)非吸湿性であることを示す。280のその分子量(MW)は、約400の許容される一般的な経皮カットオフMWを下回り、その計算LogPは、3.5である。加えて、A2-73遊離塩基は、2つの水素結合ドナー/アクセプター部位のみを有するため、それは約5つの水素結合ドナー/アクセプター部位の一般的な経験則限界下にあり、それは潜在的に経皮送達を制限するであろう。
【0220】
したがって、A2-73遊離塩基は、経皮的延長放出性製剤中の有用な活性医薬成分である。20mgのA2-73の経口用量を参照する。経皮投与は、初回通過肝臓または肝臓初回通過効果を回避することが、本発明の有用な結果であると考えられることに基づいて、有意に低い投与用量で週2回行う。経皮パッチマトリックス層は、非限定的な例として、オレイルオレイン酸塩、ポビドンK90、レブリン酸、架橋ポリ[アクリル酸-コ-ブチルアクリレート-コ-(2-エチルヘキシル)アクリレート-コ-ビニルアセテート]を有用に含有し得る。また、システムが皮膚に適用されるときに活性化合物の高フラックスを生成するためのマトリックス製剤中の吸収促進剤(浸透促進剤)に留意する。典型的な既知の促進剤は、エタノール、グリセロルモノラウレート、DMF、ポリエチルエングリコールモノラウレートなどである。
【0221】
実施例10.硫酸塩形態Iの調製
A2-73硫酸塩形態Iは、硫酸(THF中)のエタノール、THF、アセトン、2-プロパノール、または2-エトキシエタノール中A2-73遊離塩基への添加によって得た。A2-73硫酸塩形態I調製の具体例は、以下の通りである。
【0222】
(i)実施例1.
約200mgのA2-73遊離塩基を20mLのシンチレーションバイアルに量り入れ、その後、4mLのエタノールをバイアルに添加した。得られた溶液の見かけのpHを、pH計を用いて決定した。硫酸ストック溶液(74.6μLのTHFあたり4.1μLの98%硫酸を含有する1119.4μLの溶液)をバイアルに添加し、続いて撹拌した。溶液の見かけのpHを再び測定した。試料を次いで周囲温度と40℃との間で約24時間温度サイクルさせた。約24時間の終了時に固体が観察されなかったので、試料をドラフトチャンバーにキャップなしで放置し、約72時間空気蒸発させ、続いて窒素流下で乾燥させた。固体が観察されなかったので、試料を真空オーブンに1時間置き、無色の粘着性固体を得た。試料を真空オーブンで約4時間さらに乾燥させ、白色の固体を得て、それをXRPDによって特徴付けた。
【0223】
(ii)実施例2.
硫酸のストック溶液をTHF中で調製した(4728.0μLのTHF中272.0μLの硫酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、各バイアルに、300μLの適切な溶媒(THF、エタノール、アセトン、2-プロパノール、または2-エトキシエタノール)を、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせた。単離された沈殿物についてXRPDデータを収集した。
【0224】
実施例11.硫酸塩形態IIの調製
A2-73硫酸塩形態IIは、硫酸(THF中)のアセトニトリル中A2-73遊離塩基への添加によって得た。A2-73硫酸塩形態II調製の具体例は、以下の通りである。
【0225】
(i)実施例1.
硫酸のストック溶液をTHF中で調製した(4728.0μLのTHF中272.0μLの硫酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、300μLのアセトニトリルを、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせ、得られた沈殿物をXRPDによって分析した。
【0226】
実施例12.メシル酸塩形態Iの調製
A2-73メシル酸塩形態Iは、メタンスルホン酸(THF中)のエタノール、アセトニトリル、アセトン、2-プロパノール、または2-エトキシエタノール中A2-73遊離塩基への添加によって得た。A2-73メシル酸塩形態I調製の具体例は、以下の通りである。
【0227】
(i)実施例1.
メタンスルホン酸のストック溶液をTHF中で調製した(4675.6μLのTHF中324.4μLのメタンスルホン酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、そこに300μLの適切な溶媒(エタノール、アセトニトリル、アセトン、2-プロパノール、または2-エトキシエタノール)を、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせた。試料を濾過し、各塩形成反応からの約100μLの母液を2mLガラスバイアルに添加した。バイアルをドラフトチャンバーにキャップをせずに放置して、蒸発を可能にした。観察された蒸発後固体をXRPDによって分析した。
【0228】
実施例13.シュウ酸塩形態Iの調製
A2-73シュウ酸塩形態Iは、シュウ酸(THF中)のTHF中A2-73遊離塩基への添加によって得た。A2-73シュウ酸塩形態I調製の具体例は、以下の通りである。
【0229】
(i)実施例1.
シュウ酸のストック溶液をTHF中で調製した(4549.8μLのTHF中450.2μLのシュウ酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、そこに300μLのTHFを、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせ、得られた沈殿物をXRPDによって分析した。
【0230】
実施例14.シュウ酸塩形態IIの調製
A2-73シュウ酸塩形態IIは、シュウ酸(THF中)のアセトン中A2-73遊離塩基への添加によって得た。A2-73シュウ酸塩形態II調製の具体例は、以下の通りである。
【0231】
(i)実施例1.
シュウ酸のストック溶液をTHF中で調製した(4549.8μLのTHF中450.2μLのシュウ酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、そこに300μLのアセトンを、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせ、得られた沈殿物をXRPDによって分析した。
【0232】
実施例15.シュウ酸塩形態IIIの調製
A2-73シュウ酸塩形態IIIは、シュウ酸(THF中)のエタノール中A2-73遊離塩基への添加によって得た。A2-73シュウ酸塩形態III調製の具体例は、以下の通りである。
【0233】
(i)実施例1.
約200mgのA2-73遊離塩基を20mLのシンチレーションバイアルに量り入れ、その後、4mLのエタノールをバイアルに添加した。得られた溶液の見かけのpHを、pH計を用いて決定した。シュウ酸ストック溶液(74.6μLのTHFあたり6.72mgのリン酸を含有する1119.4μLの溶液)をバイアルに添加し(1.05当量)、続いて撹拌した。溶液の見かけのpHを再び測定した。次いで、試料を周囲温度と40℃との間で約24時間温度サイクルさせ、沈殿した固体を約24時間の終了時に単離し、約72時間空気乾燥させ、続いてXRPDによって特徴付けた。
【0234】
(ii)実施例2.
シュウ酸のストック溶液をTHF中で調製した(4549.8μLのTHF中450.2μLのシュウ酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、そこに300μLのエタノールを、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせ、得られた沈殿物をXRPDによって分析した。
【0235】
(iii)実施例3.
シュウ酸のストック溶液をTHF中で調製した(4549.8μLのTHF中450.2μLのシュウ酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、そこに300μLのエタノールを、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせた。試料を濾過し、約100μLの濾液を2mLガラスバイアルに添加した。バイアルをドラフトチャンバーにキャップをせずに放置して、蒸発を可能にした。観察された蒸発後固体をXRPDによって分析した。
【0236】
(iv)実施例4.
シュウ酸のストック溶液をTHF中で調製した(4549.8μLのTHF中450.2μLのシュウ酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、そこに300μLのエタノールを、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせた。試料を濾過し、約100μLの濾液を1.5mLのHPLCバイアルに測り入れた。バイアルにキャップをし、約5℃で約24時間冷蔵庫に入れた。試料を定期的にチェックし、観察された固体をXRPDによって分析した。試料が溶液のままである場合、それを約-20℃で約24時間冷凍庫に入れた。試料を定期的にチェックし、観察された固体をXRPDによって分析した。
【0237】
(v)実施例5.
シュウ酸のストック溶液をTHF中で調製した(4549.8μLのTHF中450.2μLのシュウ酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、そこに300μLのエタノールを、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせた。試料を濾過し、約100μLの濾液を1.5mLのHPLCバイアルに移した。沈殿が観察されるまで100μLアリコートのtert-メチルエーテルを添加した。沈殿物についてXRPDデータを収集した。
【0238】
実施例16.リン酸二水素形態Iの調製
A2-73リン酸二水素形態Iは、リン酸(THF中)のTHF、エタノール、アセトニトリル、アセトン、2-プロパノール、または2-エトキシエタノール中A2-73遊離塩基の溶液への添加によって得た。
【0239】
A2-73リン酸二水素形態I調製の具体例は、以下の通りである。
【0240】
(i)実施例1.
約300mgのA2-73遊離塩基を20mLのシンチレーションバイアルに量り入れ、その後、4mLのアセトンをバイアルに添加した。得られた溶液の見かけのpHを、pH計を用いて決定した。リン酸ストック溶液(74.6μLのアセトンあたり7.31mgのリン酸を含有する1119.4μLの溶液)をバイアルに添加し(1.05当量)、続いて撹拌した。溶液の見かけのpHを再び測定した。次いで、試料を周囲温度と40℃との間で約24時間温度サイクルさせ、沈殿した固体を約24時間の終了時に単離し、約72時間空気乾燥させ、続いてXRPDによって特徴付けた。
【0241】
(ii)実施例2.
リン酸のストック溶液をTHF中で調製した(4510μLのTHF中490μLのリン酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、そこに300μLの適切な溶媒(THF、エタノール、アセトニトリル、アセトン、2-プロパノール、または2-エトキシエタノール)を、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせ、得られた沈殿物をXRPDによって分析した。
【0242】
実施例17.エジシル酸塩形態Iの調製
A2-73エジシル酸塩形態Iは、1,2-エタンジスルホン酸(THF中)のエタノール、アセトニトリル、アセトン、2-プロパノール、または2-エトキシエタノール中A2-73遊離塩基への添加によって得た。A2-73エジシル酸塩形態I調製の具体例は、以下の通りである。
【0243】
(i)実施例1.
1,2-エタンジスルホン酸のストック溶液をTHF中で調製した(3829.3μLのTHF中1170.7μLの1,2-エタンジスルホン酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、そこに300μLの適切な溶媒(エタノール、アセトニトリル、アセトン、2-プロパノール、または2-エトキシエタノール)を、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせた。試料を濾過し、約100μLの各濾液を2mLガラスバイアルに添加した。バイアルをドラフトチャンバーにキャップをせずに放置して、蒸発を可能にした。観察された蒸発後固体をXRPDによって分析した。
【0244】
(ii)実施例2.
1,2-エタンジスルホン酸のストック溶液をTHF中で調製した(3829.3μLのTHF中1170.7μLの1,2-エタンジスルホン酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、そこに300μLの適切な溶媒(エタノール、アセトン、または2-プロパノール)を、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせた。試料を濾過し、約100μLの各濾液を1.5mLのHPLCバイアルに測り入れた。バイアルにキャップをし、約5℃で約24時間冷蔵庫に入れた。試料を定期的にチェックし、観察された固体をXRPDによって分析した。溶液として見えた試料を、約-20℃で約24時間冷凍庫に入れた。試料を定期的にチェックし、観察された固体をXRPDによって分析した。
【0245】
実施例18.安息香酸塩形態Iの調製
A2-73安息香酸塩形態Iは、安息香酸(THF中)のTHF、アセトニトリル、またはアセトン中A2-73遊離塩基への添加によって得た。A2-73安息香酸塩形態I調製の具体例は、以下の通りである。
【0246】
(i)実施例1.
安息香酸のストック溶液をTHF中で調製した(4389.4μLのTHF中610.6μLの安息香酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、そこに300μLの適切な溶媒(THF、アセトニトリル、またはアセトン)を、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせた。試料を濾過し、約100μLの各濾液を2mLガラスバイアルに添加した。バイアルをドラフトチャンバーにキャップをせずに放置して、蒸発を可能にした。観察された蒸発後固体をXRPDによって分析した。
【0247】
実施例19.フマル酸水素形態Iの調製
A2-73フマル酸塩形態Iは、フマル酸(THF中)のエタノールまたはTHF中A2-73遊離塩基への添加によって得た。A2-73フマル酸塩形態I調製の具体例は、以下の通りである。
【0248】
(i)実施例1.
約200mgのA2-73遊離塩基を20mLのシンチレーションバイアルに量り入れ、その後、4mLのエタノールをバイアルに添加した。得られた溶液の見かけのpHを、pH計を用いて決定した。フマル酸ストック溶液(74.6μLのエタノールあたり8.66mgのフマル酸を含有する1119.4μLの溶液)をバイアルに添加し(1.05当量)、続いて撹拌した。溶液の見かけのpHを再び測定した。試料を次いで周囲温度と40℃との間で約24時間温度サイクルさせた。約24時間の終了時に固体が観察されなかったので、試料をドラフトチャンバーにキャップなしで放置し、約72時間空気蒸発させ、続いてXRPDによって特徴付けた。
【0249】
フマル酸のストック溶液をTHF中で調製した(4419.7μLのTHF中580.3μLのフマル酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、そこに300μLのTHFを、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせた。試料を濾過し、約100μLを2mLガラスバイアルに移した。バイアルをドラフトチャンバーにキャップをせずに放置して、蒸発を可能にした。観察された蒸発後固体をXRPDによって分析した。
【0250】
フマル酸のストック溶液をTHF中で調製した(4419.7μLのTHF中580.3μLのフマル酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、そこに300μLのTHFを、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせた。試料を濾過し、約100μLの濾液を1.5mLのHPLCバイアルに移した。沈殿が観察されるまで100μLアリコートのtert-ブチルメチルエーテルを添加し、得られた沈殿物をXRPDによって分析した。
【0251】
実施例20.フマル酸塩形態IIの調製
A2-73フマル酸塩形態IIは、フマル酸(THF中)のエタノール中A2-73遊離塩基への添加によって得た。A2-73フマル酸塩形態II調製の具体例は、以下の通りである。
【0252】
(i)実施例1.
フマル酸のストック溶液をTHF中で調製した(4419.7μLのTHF中580.3μLのフマル酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、そこに300μLのエタノールを、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせ、得られた沈殿物をXRPDによって分析した。
【0253】
実施例21.フマル酸水素形態IIIの調製
A2-73フマル酸水素形態IIIは、フマル酸(THF中)のIPA中A2-73遊離塩基への添加によって得た。A2-73フマル酸水素形態III調製の具体例は、以下の通りである。
【0254】
(i)実施例1.
約300mgのA2-73遊離塩基を20mLのシンチレーションバイアルに量り入れ、その後、4mLのIPAをバイアルに添加した。得られた溶液の見かけのpHを、pH計を用いて決定した。フマル酸ストック溶液(1119.4μLのIPA中1Mフマル酸ストック溶液)をバイアルに添加し(1.05当量)、続いて撹拌した。溶液の見かけのpHを再び測定した。次いで、試料を周囲温度と40℃との間で約24時間温度サイクルさせ、沈殿した固体を約24時間の終了時に遠心分離によって単離した。単離された固体を約72時間空気乾燥させ、続いてXRPDによって特徴付けた。
【0255】
フマル酸のストック溶液をTHF中で調製した(4419.7μLのTHF中580.3μLのフマル酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、そこに300μLのIPAを、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせ、得られた沈殿物をXRPDによって分析した。
【0256】
実施例22.フマル酸塩形態IVの調製
A2-73フマル酸塩形態IVは、フマル酸(THF中)の2-エトキシエタノール中A2-73遊離塩基への添加によって得た。A2-73フマル酸塩形態IV調製の具体例は、以下の通りである。
【0257】
(i)実施例1.
フマル酸のストック溶液をTHF中で調製した(4419.7μLのTHF中580.3μLのフマル酸)。別途、20mgのA2-73遊離塩基を1.5mLのHPLCバイアルに量り入れ、そこに300μLの2-エトキシエタノールを、74.6μLの酸ストック溶液(1.05当量の酸)と共に添加した。試料を、4時間サイクルで72時間、周囲温度と40℃との間で温度サイクルさせた。試料を濾過し、約100μLを2mLガラスバイアルに移した。バイアルをドラフトチャンバーにキャップをせずに放置して、蒸発を可能にした。観察された蒸発後固体をXRPDによって分析した。
【0258】
実施例23.Anavex2-73フマル酸塩形態V
A2-73フマル酸塩形態Vは、フマル酸(THF中)のIPA中A2-73遊離塩基への添加によって得た。A2-73フマル酸塩形態V調製の具体例は、以下の通りである。
【0259】
(i)実施例1.
約300mgのA2-73遊離塩基を20mLのシンチレーションバイアルに量り入れ、その後、4mLのIPAをバイアルに添加した。得られた溶液の見かけのpHを、pH計を用いて決定した。フマル酸ストック溶液(1119.4μLのIPA中1Mフマル酸ストック溶液)をバイアルに添加し(1.05当量)、続いて撹拌した。溶液の見かけのpHを再び測定した。次いで、試料を周囲温度と40℃との間で約24時間温度サイクルさせ、沈殿した固体を約24時間の終了時に遠心分離によって単離した。単離された固体を約72時間空気乾燥させ、続いてXRPDによって特徴付けた。
【0260】
実施例24.経皮パッチ
63歳男性がアルツハイマー病の初期兆候を呈する。100mgのANAVEX2-73遊離塩基を含有する経皮パッチを介して医薬組成物を投与し、4cm2パッチを120日間約3日毎に交換する。約10ng/mlの血液レベルが維持されている。その期間中、認知機能は安定し、追加の喪失は検出されない。
【0261】
実施例25.経皮パッチ
57歳女性がアルツハイマー病の初期兆候を呈する。200mgのANAVEX2-73遊離塩基を含有する医薬組成物を含有する9cm2経皮パッチを介して投与し、パッチを180日間毎週交換する。約12ng/mlの血液レベルが維持されている。その期間中、認知機能は安定し、追加の喪失は検出されない。
【0262】
実施例26.延長放出経口剤形
特定不能の進行性認知症を有する84歳男性に、30mgのANAVEX2-73フマル酸塩を腸溶性コーティング錠剤中で180日間隔日投与する。血液レベルは、1日あたり約25mgが投与されていることを明らかにする。その期間中、認知機能は安定し、追加の喪失は検出されない。
【0263】
実施例27.延長放出経口剤形
特定不能の進行性認知症を有する77歳女性に、50mgのANAVEX2-73遊離塩基を腸溶性コーティング錠剤中で180日間隔日投与する。血液レベルは、1日あたり約20mgが投与されていることを明らかにする。その期間中、認知機能は安定し、追加の喪失は検出されない。
【0264】
実施例28.Sig1-RアゴニストANAVEX2-73は、自食作用活性を増強する。
自食作用に対するANAVEX2-73の効果を研究するために、ヒトHeLa細胞を化合物で処理し、LC3-IIのフラックスを調査することによって自食作用活性を分析した。LC3-IIは、LC3の脂質化形態であり、それはオートファゴソームに(部分的に)結合したままであり、よって、リソソームによって分解される。したがって、リソソーム分解の阻害のためにバフィロマイシンA
1(BafiA
1、2μM)を使用したLC3-IIフラックスの定量化は、細胞自食作用活性に直接対応する。
図35に示されるように、ANAVE2-73は、対照条件と比較した場合、自食作用フラックスを著しく誘導した。ANAVEX2-73の適用後の自食作用フラックスの濃度依存的かつ有意な増加:10μMで2倍超および1μMのANAVEX2-73で1,5倍超の増加がある(
図35A)。自食作用の誘導を誘発する標準的な陽性対照として、HeLa細胞をEBSSとインキュベートし、それは自食作用刺激としての栄養枯渇に類似している。
【0265】
ANAVEX2-73および他の既知の実験用Sig-1Rアゴニストを実験に使用した。そのような化合物としては、(+)-ペンタゾシン、(+)-SKF10,047、SA4503(14243,4-ジメトキシフェニルデチル]-4-(3-フェニルプロピル)ピペラジン)、およびPRE-084(2-モルホリン-4-イルエチル1-フェニルシクロヘキサン-1-カルボキシレート)が挙げられる。ANAVEX2-73とは対照的に、PRE-084および他の実験化合物は、様々な理由で臨床研究には適用されない。しかしながら、Sig-1RリガンドPRE-084は、向知性および抗うつ活性などの動物モデルにおいて中枢神経系における活性を示すため、この化合物は、対照としてフラックスアッセイのいくつかに含まれた。PRE-084はまた、HeLa細胞における自食作用フラックスを促進することが見出され(
図35B)、PRE-084は、1μMで1,5倍を超える自食作用フラックスを誘導し、それは同じ濃度でANAVEX2-73と同等であった(
図35B)。
【0266】
次に、ウェスタンブロット実験を、HEK293細胞におけるオートファゴソーム出現の程度の直接的な可視化によって補完した。そのために、GFP-LC3Bレポーター構築物を安定して発現するHEK293細胞にANAVEX2-73(1μM)を適用した。この細胞モデルは、共焦点蛍光顕微鏡法によるBafiA
1補充時のLC3-II陽性オートファゴソーム構造の蓄積を直接監視することを可能にする。実際、ANAVEX2-73処理は、全体的に増加したLC3-II陽性点の数および自食作用フラックスをもたらした(
図35C)。
【0267】
まとめると、両方の独立した細胞アッセイおよび2つの異なるヒト細胞株において、Sig-1R活性化は、有意に増加した自食作用フラックスを誘導した。Sig-1RリガンドとしてのANAVEX2-73の効果の一部は、ムスカリンACh受容体でのその効果に潜在的に起因し得る。しかし、mACh受容体が自食作用に与える影響についてはあまり知られていない。実際、これまでのところ文献中に、ACh誘導性自食作用が、ムスカリンACh受容体活性化AMPK-mTOR経路を通して細胞保護効果を有することを示す報告は、1つしか存在しない。一方、独自の選択的Sig-1RアゴニストとしてのPRE-084も自食作用フラックスを誘導していたという我々の所見は、Sig-1R活性化によって媒介されるように、ANAVEX2-73の自食作用への効果を強力に裏付ける。さらに、以下の実施例30に示されるように、明らかにANAVEX2-73が有するように、ムスカリンACh受容体の活性化がタンパク質凝集およびプロテオスタシスに対する有益な効果を有するという実験データは存在しない。
【0268】
実施例29.Sig-1R活性化は、ULK1リン酸化を誘導し、異なる自食作用ネットワーク因子の発現レベルに影響を及ぼす。
セリン555でのリン酸化を介したセリン/トレオニンタンパク質キナーゼULK1(unc-51様キナーゼ1)の活性化は、カノニカル自食作用経路の刺激を示す。ANAVEX2-73は、ULK1セリン555リン酸化を有意に誘導した(1μMで最大2倍、
図36A)。PRE-084もSig-1Rアゴニストとして分析し、それが同様にULK1セリン555リン酸化を促進することが見出された(1μMで最大1.5倍
図36B)。この活性化ULK1リン酸化は、mTORによって阻害することができるだけでなく、AMPKキナーゼを介して刺激することができることに言及する必要がある。どちらも栄養状態の基礎生理学的センサーであり、カノニカル自食作用刺激の重要なシグナル伝達物質である。ULK1は、実際には、自食作用プロセス中の食細胞の形成の誘導を媒介するシグナルであり、したがって、自食作用の中心的促進因子である。ULK1自体は、少なくとも3つのタンパク質パートナー:FIP200(200kDaの焦点接着キナーゼファミリー相互作用タンパク質)、ATG(自食作用関連タンパク質)13(ATG13)、およびATG101との複合体において機能する。上流経路(mTORおよびAMPKを含む)の複合体パターンがULK1上に収束するという事実は、この複合体がノードとして機能し、複数のシグナルをオートファゴソーム形成に変換することを示す。
【0269】
Sig-1R活性化がULK1リン酸化および自食作用フラックスを著しく誘導するという発明者らによって見出された結果に鑑みて、次に、自食作用プロセスにおける異なる設定点を表す主要な自食作用ネットワーク因子の相対発現レベルを、PCR自食作用アレイを用いたANAVEX2-73でのHeLa細胞の処理後に調査した(
図36C)。最も顕著には、GABA A型受容体関連タンパク質様1(GABARAPL1、約2.7の発現レベル、誘導のためのカットオフを1.5の発現レベルに設定した)のmRNA発現のANAVEX2-73媒介性誘導が見出され、それはGABARAPと同様に、自食作用小胞と関連付けられ、自食作用プロセスに関与する。
【0270】
GABARAPL1は、6つのATG8オーソログ、MAP1LC3A、MAP1LC3B、MAP1LC3Cおよび3つのMAP1LC3パラログ、GABA受容体関連タンパク質GABARAP1、自食作用において部分的に冗長な役割を有するGABARAPL1およびGABARAPL2からなるヒトMAP1LC3ファミリーに属する。加えて、選択的マクロオートファジー経路に関与するユビキチンおよび自食作用受容体SQSTM1/p62の発現は、ANAVEX2-73によって増強された(約2.9の発現レベル)。さらに、ATG5にコンジュゲートされ、オートファゴソーム生合成において最終的にATG16L1と一緒に作用するオートファゴソームタンパク質複合体を構築しているATG12の誘導への明らかな傾向もあった。一貫して、ATG16L1の発現は、ANAVEX2-73での細胞の処理後に増強されたようにも見えた(
図36C)。さらに、このPCRアレイに含まれる自食作用ネットワーク因子のいずれも、ANAVEX2-27での治療時にその発現において下方制御されず、Sig-1R活性化が自食作用に対するプラスの調節効果を有するという重要な所見を裏付けることが明らかである。
【0271】
実施例30.ANAVEX2-73は、自食作用を正に調節し、プロテオスタシス能力を増加させ、C.elegansにおけるタンパク質凝集媒介性麻痺を改善する。
インビトロでのANAVEX2-73による自食作用調節およびいくつかの主要な自食作用ネットワーク因子に対する影響は、本発明者らに、C.elegansモデルを用いて、インビボでも自食作用およびプロテオスタシスに対するANAVEX2-73によるSig-1R活性化の影響をさらに分析することを促した。ヒトSig-1Rの線虫オーソログは、W08F4.3であり、筋肉系を含むいくつかの組織において発現される。インビボでの自食作用フラックスを監視するために、本発明者らは、GFP-LGG-1レポーターワーム株を用いた。LGG-1は、哺乳動物GABARAPの線虫オーソログであり、GFPタグ付きタンパク質を使用して、ウェスタンブロット法および共焦点蛍光顕微鏡法による自食作用活性を評価することができる。ウェスタンブロット法を用いて、
図37に示されるように、HeLa細胞におけるフラックス測定と同様に、GFP-LGG-1-IIプラスBafiA
1およびBafiA
1なしのレベルを分析した。実際、ANAVEX2-73(80μM)は、C.elegansにおいて自食作用フラックスをほぼ2倍に有意に増強した(BafiA
1またはDMSOで6時間処理した線虫。
図37A)。
【0272】
この所見をさらに実証するために、我々は、GFP-LGG-1陽性点によって示されるように、共焦点蛍光顕微鏡を使用して、自食作用構造を直接可視化した。ANAVEX2-73補充(プラス/マイナスBafiA1)は、GFP-LGG1点の数を有意に増加させ、これは自食作用活性の増加を示し、ANAVEX2-73でのワームの処理は、対照ワームと比較した場合、BafiA1処理後の点の数の相対的な増加をもたらす。実際、有意な増加が見出され、インビボで観察されるような自食作用フラックスは、ANAVEX2-73によって約2,5倍誘導され(
図37B、(矢印によって示される)GFP陽性オートファゴソーム構造の数は、3つの独立した実験において、およびワームの少なくとも8~11匹のそれぞれの頭部領域における各実験においてカウントされた)、それはウェスタンブロット分析と一致する(
図37A)。
【0273】
まとめると、インビトロおよびインビボデータは、Sig-1RアゴニストANAVEX2-73が、自食作用フラックス測定によって示されるように、自食作用を誘導することを明らかに示す。これは、本発明者らが、インビボでのプロテオスタシスに対する分解経路の影響に焦点を当てて、自食作用誘導の機能的結果をさらに調査することを奨励した。したがって、体壁筋細胞におけるAβ42オリゴマーおよび高分子量凝集塊の蓄積に起因して、時間依存性麻痺を特徴とするヒトAβ42発現ワームを用い、ここでは、Aβ42発現ワームは、ADのモデルとしてではなく、筋細胞リードにおけるタンパク質凝集が明確な表現型(ここでは、麻痺)を行う一般的なプロテオスタシス応力およびタンパク質毒性の実験モデルとして考慮されることが強調される。Aβ42タンパク質凝集塊をチオフラビンでインサイチュ染色した。対照ワームと比較して、ANAVEX2-73でのAβ42-ワームの治療は、チオフラビン陽性Aβ42凝集塊の数を低減し(
図38A、ワームを80μMのANAVEX2-73またはM9培地(対照)で連続する9日間処理した)、おそらくAβ42凝集塊のクリアランスの向上によって、自食作用の誘導がプロテオスタシスに影響を及ぼし、凝集塊の組織沈着の低減を示した。筋肉細胞中のAβ42凝集塊の蓄積は、経時的にワームの増強された麻痺をもたらすことが知られている。時間依存性運動挙動に対するANAVEX2-73誘導性自食作用の影響を分析するために、この麻痺の程度を調査した。C.elegansを、化合物(または対照としてM9緩衝液)で最大12日間処理し、麻痺を毎日定量化した。2つの濃度のANAVEX2-73(50および100μM)を用いて、我々は、2つのANAVEX2-73処理群において麻痺の明確な低減を見出し、これらの群は、麻痺の程度に関して対照と明らかに区別する(
図38B、ワームをANAVEX2-73またはM9緩衝液の存在下で維持し、麻痺表現型を毎日調査した。)麻痺画分は、ANAVEX2-73処理および対照ワームを比較して有意に異なる。したがって、ANAVEX2-73は、Aβ42発現ワームにおける麻痺速度を明らかに減速させ、時間依存性運動障害を打ち消す。
【0274】
Sig-1Rアゴニストを介した自食作用誘導が、ワームにおけるタンパク質凝集およびタンパク質毒性誘導性行動障害を低減することによってプロテオスタシスに直接影響を及ぼしているという、本明細書に記載される所見は、不均衡なタンパク質恒常性に関連する神経変性の予防および治療におけるSig-1R活性化の役割を示す。本明細書で観察されるプロテオスタシス能力のANAVEX2-73誘導性増加と一致して、Sig-1R欠損または機能障害の関与は、高度に乱されたタンパク質恒常性および特徴的な細胞内タンパク質凝集を有する障害であるALSにおいて記載されている。例えば、(1)Sig-1Rミスセンス変異は、ALSを引き起こし得ること、(2)Sig-1Rのノックアウトは、SOD1変異体マウスにおける疾患を加速させること、および(3)ALS関連変異体Sig-1Rは、自食作用材料の蓄積および自食作用の低減を引き起こすことが示されている。さらに、Sig-1R活性の保護的役割を支持して、(1)実験薬物PRE-084での処理は、SOD1マウス病理を改善し、(2)変異体Sig-1R発現は、細胞における細胞質ALS結合TDP43およびFUS蓄積を誘導し、(3)PRE-084は、ALSマウスにおける運動機能および運動ニューロン生存を改善することが前述された。本明細書における所見と完全に一致して、Sig-1A受容体の過剰発現は、ヒト疾患組織における自食作用活性化を示すp62/SQSTM1およびLC3B点の数を増加させる。
【0275】
自食作用プロセスのいくつかのステップは、治療的調節に適しており、異なる自食作用活性化化合物は、癌および神経変性を含むヒト疾患の様々な実験レベル(インビトロおよびインビボ)およびモデルで既に研究されている。神経変性障害の効果的な介入に関しては、もちろん、中枢神経系の文脈でヒトにおいて研究される予定の任意の化合物について、毒性および安全性の問題に加えて、血液脳関門の透過性も確保する必要がある。自食作用を標的とする化合物の一例は、リチウムであり、それは双極性障害の治療に使用されており、自食作用誘導における上流ステップに干渉することによって、自食作用の活性化剤でもある。メトホルミンおよびシンバスタチンはまた、両方おそらくAMPKの活性化を介して、自食作用を促進することが、実験的に示されており、それぞれ、糖尿病および肥満の治療に使用される。Sig-1Rアゴニストは、ADおよびALSを含む異なる神経変性疾患の治療についての熱心な調査下にある。理論によって制約されることなく、それは、ANAVEX2-73をAD療法のための興味深い化合物にし得る受容体活性の組み合わせである。
【0276】
まとめると、本明細書の実施例28~30に提示される結果は、Sig-1R活性化が(a)ヒト細胞およびC.elegansにおける自食作用フラックスを増強し、(b)プロテオスタシスに対するプラスの効果を有することを示す。ニューロン中の二重選択的Sig-1R/ムスカリン活性を有する化合物ANAVEX2-73の新規活性が記載される。この薬物の活性は、インビトロおよびインビボでの自食作用の強力な誘導を含み、プロテオスタシス能力の増加をもたらし、さらにはAβ42発現C.elegansにおける時間依存性麻痺表現型に対する有益な効果をもたらす。自食作用プロセスの特異的な誘導およびその後のニューロンにおけるプロテオスタシスの安定化は、ニューロンの生存および機能の安定化への1つの重要なステップを表し、加齢に伴う神経変性を防止するのに役立ち得る。
【0277】
実施例28-30の導入
アルツハイマー病およびパーキンソン病(AD、PD)、ならびに筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む、神経変性障害の病因は、乱されたタンパク質恒常性に関連している。したがって、プロテオーム完全性およびプロテオスタシスの制御および維持が最も重要である。細胞プロテオスタシスは、タンパク質折り畳み、タンパク質アセンブリ、損傷したタンパク質の再折り畳み、およびタンパク質分解を含み、熱ショックタンパク質70(HSP70)および別個のコシャペロンなどのシャペロンを含む因子の微調整されたネットワークの制御下にある。細胞の無傷機能および長期生存のために、特殊化プロセスによって誤って折り畳まれたタンパク質を除去することが重要であり、2つの主要な細胞分解経路は、ユビキチンプロテアソームシステム(UPS)および自食作用である。UPSは、生理学的タンパク質ターンオーバーにとって特に重要であるが、分解基質において限定され、自食作用-リソソーム経路は、特に病原性および加齢条件下で、凝集されたタンパク質および疾患関連タンパク質のクリアランスを担う。
【0278】
自食作用は、大きなタンパク質複合体(タンパク質凝集塊)、およびさらには全細胞小器官を隔離し、それらを分解のためにリソソームに送達する、オートファゴソームと呼ばれる二重膜小胞を伴う、高度に動的な小胞媒介性細胞分解経路である。低栄養およびエネルギー条件下では、自食作用は、リサイクルを介してアミノ酸ビルディングブロックを生成することによってエネルギー供給を保証する。加えて、自食作用は、細胞生存および機能を維持するためのストレスおよび適応応答ならびにレスキュー機構として重要な役割を果たす。カノニカル自食作用は、酵母において元々特定された自食作用関連(atg)遺伝子のホモログに主に属する様々な因子を介して、環境合図に応答する。ラパマイシン(mTOR)複合体1(mTORC1)の哺乳動物標的は、ULK1の阻害性リン酸化を介して自食作用活性を負に調節し、カノニカル自食作用の主要な初期調節因子である。より下流の膜膨張は、2つのユビキチン様コンジュゲート系(ATG12-ATG5およびATG8/LC3)およびWD反復ドメインホスホイノシチド相互作用1-3(WIPI1-3)のATG18タンパク質ファミリーメンバーによって調節される。
【0279】
自食作用の機能障害および機能不全を神経変性疾患に結びつけ、タンパク質凝集塊の蓄積への、プロテオスタシスにおけるその役割と一致する大量のデータが存在する。よって、自食作用の調節は、神経変性における1つの主要な薬理学的標的となっている。実際、AD、PD、およびALSには、自食作用および病因経路の複数の重複がある。最近では、AD予防および治療に向けた異なる代替的見解および新しい薬理学的標的は進化しており、自食作用プロセスに対する強い焦点を含む。
【0280】
Sigma受容体には、sigma-1およびsigma-2という2つのサブタイプがあり、両方とも中枢神経系において高度に発現されている。Sigma-1受容体(Sig-1R)は、1996年にクローニングされ、ERシャペロンとしての役割を示唆する小胞体(ER)(およびER-ミトコンドリア界面)に局在する223アミノ酸タンパク質の内在性膜タンパク質を表す。Sig-1Rは、(1)ERからミトコンドリアへのCa2+シグナル伝達を確実にすること、(2)核へのERのシグナル伝達を増強すること、および(3)レドックス応答性転写因子であるNrf2の活性の調節によってフリーラジカル損傷を減衰させることによって、細胞生存を促進することが示された。構造的に、Sig-1Rリガンド結合が特徴付けられ、ヒト受容体の結晶構造が解明される。
【0281】
一般に、Sig-1R発現または活性の不足は、神経変性と関連し、Sig-1Rの活性化は、異なる薬理プロファイルを有する異なるタイプの薬理学的Sig-1R活性化剤を用いる、異なるインビトロおよびインビボモデルにおける神経保護と関連付けられる。Sig-1Rの薬理学的活性化は、多能性調節下流効果をもたらし、Sig-1Rの誤った機能は、神経変性の病因にも関与することが強く示唆されている。これは、以下を含む、神経変性疾患の療法のための新規かつ高度に特異的な薬理学的Sig-1R活性化剤を設計する取り組みの基礎である。
【0282】
この文脈において、新規Sig-1Rアゴニスト、テトラヒドロ-N,N-ジメチル1-2,2-ジフェニル1-3-フランメタンアミン塩酸塩(ANAVEX2-73)が開発された。薬理学的には、ANAVEX2-73は、Sig-1Rおよびムスカリン受容体上での混合活性を示し、低マイクロモル範囲で記載された親和性で作用する。以前、動物モデルにおける前臨床研究は、ANAVEX2-73の堅牢な疾患改変活性を実証した。ADに関して、ANAVEX2-73は、探索的エンドポイントに対する好ましい安全性プロファイルおよび濃度依存的改善を示す患者の第2a相試験で検定を受けた。ADのマウスモデルにおけるミトコンドリア保護、ERK活性化の調節、および星状細胞の生存の促進、ならびに酸化ストレスに対する保護を含む、様々な神経調節および神経保護効果はまた、ANAVEX2-73に関して既知である。
【0283】
Sig-1R、自食作用、および神経変性の関連する可能性の最初の証拠は、ALSの文脈において最近示されている。ALS結合型変異体Sig1-Rは、自食作用材料の蓄積を引き起こし、実際に自食作用を低減したことが発見された。加えて、小分子Sig-1R調節因子は、癌細胞におけるプログラム死リガンド1(PD-L1)の自食作用分解を誘導することが見出された。これらの所見は、本発明者らによって十分に確立されている自食作用活性を分析するための標準的な尺度を用いて、ヒトHeLa細胞およびHEK293細胞(インビトロ)ならびにC.elegans(インビボ)において自食作用をもたらすANAVEX2-73の可能性を研究することを我々に促した。さらに、タンパク質凝集に対するANAVEX2-73の効果、およびその後のC.elegansにおける運動挙動に対するタンパク質凝集塊の影響を研究した。面白いことに、ANAVEX2-73は、インビトロおよびインビボでの自食作用フラックスの強力な誘導因子であり、C.elegansにおけるタンパク質凝集塊形成および麻痺を改善する。
【0284】
実施例28~30の材料および方法
細胞培養および顕微鏡検査。HeLaおよびHEK293A細胞を、活性FBS(Life Technologies GmbH、Carlsbad、CA、USA、10270106)、1×ABAM(Invitrogen、15240-062)、および1mMピルビン酸ナトリウム(Invitrogen、1136-088)を補充したDMEM(Invitrogen、Carlsbad、USA、41965062)中で培養した。培地交換後、細胞をそれぞれ10、1、および0.1μMのANAVEX2-73およびPRE-084(Tocris、Bristol、UK、0589)で2時間処理し、ANAVEX2-73をANAVEX Life Sciences Corp、New York、NY、USAによって提供した。その後、バフィロマイシンA1(Bafi.A1、2μM)(Toronto Research Chemicals、North York、ON、Canada、B110000)またはDMSOをさらに2時間添加し、細胞を最終的に回収した。ウェスタンブロット分析は、前述の通り行った[40、41]。簡潔に、細胞を、プレキャストNuPAGE4%~12%Bis-Trisゲル(Invitrogen、NP0322)を使用してSDS-PAGEに供した。タンパク質を、Amersham Imager 600(GE)を用いて化学発光によって検出した。
【0285】
GFP-LC3Bを安定に発現するHEK293A細胞の共焦点蛍光顕微鏡分析を、レーザー走査顕微鏡LSM 710(Zeiss、Oberkochen)で行った。
【0286】
C.elegans株、維持、方法。C.elegansは、HB101E.coliを播種した線虫成長培地(NGM)プレート上で標準手順に従って維持した。本研究では、以下の株を用いた:GFP::LGG-1(ex[Plggl::Iggl::GFP]/pRF4、20℃で維持され、および株CL2006(dvls2[pCL12(unc-54/ヒトAβペプチド1-42)+pRF4])、15℃で維持された。
【0287】
麻痺速度の分析のために、M9(対照)または100μMおよび50μMのANAVEX2-73に再懸濁したHB101E.coliを播種したプレート上で、同期CL2006線虫を15℃で培養した。成虫の初日に開始して、ワームを毎日新鮮なプレートに移し、白金線で鼻をタップすることによって麻痺について試験した。鼻を動かしたが体を動かすことができなかったワームは、麻痺していると評価された。死んだワームまたは他の表現型を示すワームは、統計に含まれなかった。チオフラビンS(Sigma T1892)を使用したアミロイドβ42凝集塊の染色を、前述のように行った。ワームをガラススライド上の2%寒天パッドに取り付け、共焦点蛍光顕微鏡分析をLSM 710(Zeiss、Oberkochen)レーザー走査顕微鏡で行った。
【0288】
自食作用活性の分析のために、GFP::LGG-1を発現する同期線虫を20℃で培養した。成虫の初日に、ワームを80μMのANAVEX2-73または対照M9液体培養培地に2時間移し、その後、バフィロマイシンA1またはDMSO(対照)で4~6時間処理した。その後、ワームをウェスタンブロット用に溶解したか、または共焦点蛍光顕微鏡法によって分析した。
【0289】
ウェスタンブロット分析は、前述の通り行った。一般に、12匹のワームを、プレキャストNuPAGE4~12%Bis-Trisゲル(Invitrogen、NP0322)を使用してSDS-PAGEに供した。タンパク質を、Fuji LAS-3000ダークボックス(Fujifilm、Dusseldorf)を用いて化学発光によって検出した。
本発明の態様は以下を含む。
[付記1]
テトラヒドロ-N,N-ジメチル-2,2-ジフェニル-3-フランメタンアミン(A2-73)の結晶形態であって、塩または遊離塩基である、結晶形態。
[付記2]
前記結晶形態が、薬学的に許容される塩である、付記1に記載の結晶形態。
[付記3]
前記塩が、塩酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、リン酸二水素塩、安息香酸塩、メシル酸塩、エジシル酸塩(edysilate)、およびシュウ酸塩から選択される、付記2に記載の結晶形態。
[付記4]
前記塩が、塩酸塩である、付記3に記載の結晶形態。
[付記5]
前記塩酸塩が、図4、図6、図8、図9、図10、図11、図12、および図14に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる、付記4に記載の結晶形態。
[付記6]
図4に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる前記塩酸塩が、図2および図3に図示される粒子形状およびサイズによってさらに特徴付けられ、図6に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる前記結晶形態が、図5に図示される粒子形状およびサイズによってさらに特徴付けられ、図8に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる前記結晶形態が、図7に図示される粒子形状およびサイズによってさらに特徴付けられ、図14に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる前記結晶形態が、図13に図示される粒子形状およびサイズによってさらに特徴付けられる、付記5に記載の結晶形態。
[付記7]
前記塩が、フマル酸塩である、付記1に記載の結晶形態。
[付記8]
前記フマル酸塩が、図29、図30、図32、図33、および図34に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる、付記7に記載の結晶形態。
[付記9]
図29に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる前記フマル酸塩が、図28に図示される粒子形状によってさらに特徴付けられ、図32に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる前記フマル酸塩が、図31に図示される粒子形状によってさらに特徴付けられる、付記8に記載の結晶形態。
[付記10]
前記結晶形態が、遊離塩基である、付記1に記載の結晶形態。
[付記11]
前記遊離塩基が、図16に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる、付記10に記載の結晶形態。
[付記12]
図16に示されるXRPDパターンによって特徴付けられる前記結晶形態が、図15に図示される粒子形状によってさらに特徴付けられる、付記11に記載の結晶形態。
[付記13]
治療有効量のA2-73を、A2-73遊離塩基およびA2-73塩からなる群から選択される結晶形態で含む、剤形。
[付記14]
前記剤形が、約1mg~約50g、約1mg~約500mg、または約1mg~約100mgのA2-73遊離塩基またはA2-73塩を含む、付記13に記載の剤形。
[付記15]
前記剤形が、結晶性A2-73の延長放出のために製剤化される、付記13に記載の剤形。
[付記16]
前記A2-73が、遊離塩基である、付記15に記載の剤形。
[付記17]
前記剤形が、約1mg~約500mgのA2-73遊離塩基を含む、付記16に記載の剤形。
[付記18]
前記剤形が、経皮パッチである、付記16に記載の剤形。
[付記19]
前記経皮パッチが、約40mg~約60mg、約80mg~約120mg、または約180mg~約220mgのA2-73遊離塩基を含む、付記18に記載の剤形。
[付記20]
前記剤形が、腸溶性コーティング経口製剤である、付記16に記載の剤形。
[付記21]
前記腸溶性コーティング経口製剤が、約1mg~約50mgのA2-73遊離塩基を含む、付記20に記載の剤形。
[付記22]
前記A2-73が、塩である、付記15に記載の剤形。
[付記23]
前記A2-73塩が、フマル酸塩、硫酸塩、メシル酸塩、リン酸二水素塩、エジシル酸塩、安息香酸塩、塩酸塩、およびシュウ酸塩からなる群から選択される、付記22に記載の剤形。
[付記24]
前記A2-73塩が、フマル酸塩である、付記23に記載の剤形。
[付記25]
前記剤形が、経皮パッチである、付記24に記載の剤形。
[付記26]
前記経皮パッチが、約1mg~約55mgのA2-73フマル酸塩を含む、付記25に記載の剤形。
[付記27]
前記剤形が、腸溶性コーティング経口製剤である、付記24に記載の剤形。
[付記28]
前記腸溶性コーティング経口製剤が、約10mg~約50mg、約20mg~約30mg、または約15mg~約25mgのA2-73フマル酸塩を含む、付記27に記載の剤形。
[付記29]
A2-73の送達のための医薬製剤であって、治療有効量の、A2-73遊離塩基およびA2-73塩から選択されるA2-73の結晶形態を含む、医薬製剤。
[付記30]
前記製剤が、化学増強剤、湿潤剤、感圧接着剤、抗酸化剤、可溶化剤、増粘剤、可塑剤、アジュバント、担体、賦形剤、ビヒクル、およびそれらの任意の組み合わせから選択される1種類または複数種類の薬学的に許容される非薬効成分をさらに含む、付記29に記載の製剤。
[付記31]
前記1種類または複数種類の非薬効成分が、経口投与、経皮投与、非経口投与、腹腔内投与、血管内投与、皮下投与、吸入スプレーによる投与、直腸投与、または肺内投与用に選択される、付記30に記載の製剤。
[付記32]
前記結晶性A2-73が、遊離塩基、フマル酸塩、および塩酸塩から選択される、付記29に記載の製剤。
[付記33]
前記製剤が、約1重量%~約100重量%の結晶性A2-73を含む経口製剤である、付記29に記載の製剤。
[付記34]
前記製剤が、結晶性A2-73の延長送達用である、付記29に記載の製剤。
[付記35]
前記製剤が、約1mg~約50gの結晶性A2-73を含む、付記34に記載の製剤。
[付記36]
前記製剤が、約0.5g~約3gの結晶性A2-73を含む皮下注射可能な投与製剤である、付記34に記載の製剤。
[付記37]
前記製剤が、経皮パッチである、付記29に記載の製剤。
[付記38]
前記パッチが、約40mg~約60mg、約80mg~約120mg、または約180mg~約220mgのA2-73遊離塩基を含む、付記37に記載の製剤。
[付記39]
前記パッチが、約1mg~約55mgのA2-73フマル酸塩を含む、付記37に記載の製剤。
[付記40]
前記製剤が、経口製剤である、付記29に記載の製剤。
[付記41]
前記経口製剤が、約1mg~約50mgのA2-73遊離塩基を含む、付記40に記載の製剤。
[付記42]
前記経口製剤が、約10mg~約50mg、約20mg~約30mg、または約15mg~約25mgのA2-73フマル酸塩を含む、付記40に記載の製剤。
[付記43]
前記経口製剤が、A2-73塩酸塩を含む、付記40に記載の製剤。
[付記44]
前記製剤が、約0.1~約5gの結晶性A2-73を含む皮下剤形である、付記29に記載の製剤。
[付記45]
A2-73の投与を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記A2-73を、A2-73遊離塩基およびA2-73塩から選択されるA2-73の結晶形態を含む剤形で前記対象に投与することを含む、方法。
[付記46]
前記結晶性A2-73が、遊離塩基である、付記45に記載の方法。
[付記47]
前記結晶性A2-73が、フマル酸塩である、付記45に記載の方法。
[付記48]
前記結晶性A2-73が、フマル酸塩である、付記45に記載の方法。
[付記49]
前記剤形が、延長放出性経皮パッチであり、前記結晶性A2-73が、経皮パッチを使用して局所投与される、付記45に記載の方法。
[付記50]
経皮パッチが、毎週交換される、付記49に記載の方法。
[付記51]
前記経皮パッチが、前記対象の血液中のA2-73のレベルを、約5ng/ml~約15ng/mlの範囲に維持し、特に、約10ng/mlが維持される、付記49に記載の方法。
[付記52]
前記剤形が、腸溶性コーティング経口剤形であり、前記結晶性A2-73が、前記腸溶性コーティング経口剤形を使用して経口投与される、付記45に記載の方法。
[付記53]
アルツハイマー病の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、治療有効量の、A2-73遊離塩基およびA2-73塩から選択されるA2-73の結晶形態を含む剤形を投与することを含む、方法。
[付記54]
進行性認知症の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、治療有効量の、A2-73遊離塩基およびA2-73塩から選択されるA2-73の結晶形態を含む剤形を投与することを含む、方法。
[付記55]
神経変性疾患の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、A2-73遊離塩基およびA2-73塩から選択される抗神経変性有効量の結晶性A2-73を前記対象に投与することを含む、方法。
[付記56]
前記変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン病(MND)、脊髄小脳失調症(SCA)、および脊髄筋萎縮症(SMA)から選択される、付記52に記載の方法。
[付記57]
前記抗神経変性有効量のA2-73が、約0.5mg/日~約100mg/日である、付記52に記載の方法。
[付記58]
前記抗神経変性有効量のA2-73が、約1~約60mg/日である、付記52に記載の方法。
[付記59]
前記抗神経変性有効量のA2-73が、約20~約50mg/日である、付記52に記載の方法。
[付記60]
前記抗神経変性有効量のA2-73が、約20~約30mg/日である、付記52に記載の方法。
[付記61]
前記抗神経変性有効量のA2-73が、約15~約25mg/日である、付記52に記載の方法。
[付記62]
前記抗神経変性有効量のA2-73が、約10ng/ml、約12ng/ml、約A2-73の血液レベルを提供する、付記52に記載の方法。