(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】流量センサ
(51)【国際特許分類】
G01F 1/684 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G01F1/684 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020034588
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2022-12-07
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513204665
【氏名又は名称】シリコン マイクロストラクチャーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SILICON MICROSTRUCTURES, INC.
【住所又は居所原語表記】1701 McCarthy Boulevard, Milpitas, California 95035 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】アービド,オマール
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン スプラックラー,ガートジャン
(72)【発明者】
【氏名】ゲイナー,ジャスティン
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-050419(JP,A)
【文献】特開2019-007966(JP,A)
【文献】特開平06-066612(JP,A)
【文献】特開2003-106883(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0295082(US,A1)
【文献】特開2010-133897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/68-1/699
G01P 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および底面、ならびに前記上面から前記底面に延びる通路(120)、
前記上面の開口部の周りに周方向に位置する検知抵抗器(130)であって、前記上面の前記開口部は前記通路(120)によって形成されている、検知抵抗器(130)、ならびに
前記上面の前記開口部の周りに周方向に位置する耐熱抵抗器(140)
を備える、第1のシリコンブロック(110)と、
前記第1のシリコンブロック(110)の前記上面にわたって気体の流れを導くためのチャネル(420)
を備える、第2のシリコンブロック(410)と、
を備える、流量センサ(100)。
【請求項2】
前記耐熱抵抗器(140)は前記検知抵抗器(130)の周りに周方向に位置する複数の耐熱抵抗器(140)のうちの1つであり、前記検知抵抗器(130)は複数の検知抵抗器(130)のうちの1つである、
請求項1に記載の流量センサ(100)。
【請求項3】
前記耐熱抵抗器(140)および前記検知抵抗器(130)は円形である、
請求項2に記載の流量センサ(100)。
【請求項4】
前記耐熱抵抗器(140)および前記検知抵抗器(130)は多角形の形状を有する、
請求項2に記載の流量センサ(100)。
【請求項5】
前記耐熱抵抗器(140)および前記検知抵抗器(130)は螺旋形状を有する、
請求項2に記載の流量センサ(100)。
【請求項6】
前記第1のシリコンブロック(110)は前記第2のシリコンブロック(410)に接合されている、
請求項2に記載の流量センサ(100)。
【請求項7】
前記チャネル(420)は深掘り反応性イオンエッチングを使用して形成されている、
請求項2に記載の流量センサ(100)。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
小型で信頼性の高い流量センサが広く望まれている。熱伝達の概念に基づくMEMSデバイスは、商業的に成功している技術である。市場では成功しているものの、これら現在利用可能なデバイスは設計が類似しており、したがって同じ性能および製造上の欠点をいくつか共有している。
【0002】
熱線流速計と呼ばれる場合のある流量センサは、少なくとも2つの抵抗器から構成することができる。1つの抵抗器は、電流が流れると制御可能な温度まで加熱される、耐熱材料で製作することができる。第2の抵抗器は検知抵抗器とすることができ、加熱されないようにすることができる。この検知抵抗器を通して電流を駆動することができ、結果的に得られる電圧を測定してその抵抗を計算することができる。
【0003】
流量センサが動作しているとき、耐熱抵抗器内の電流は耐熱抵抗器の温度を上げる。気体または他の流体が耐熱抵抗器の上を通って検知抵抗器へと流れる際に、耐熱抵抗器から検知抵抗器へと熱が伝達され得る。このことにより検知抵抗器の温度が上がり、この結果検知抵抗器の抵抗が変化し得る。抵抗のこの変化を測定することができ、この変化から流量を判定することができる。
【0004】
流量センサにおける気体または他の流体の流量は、流量センサを収容している筐体の形状および輪郭に部分的に依存し得る。しかし、これらの筐体のサイズおよび形状は、筐体の温度が変化するにつれて変化し得る。これらの温度に依存する変動は、特にそれらが予測不可能である場合に、問題となり得る。また、これらの筐体のサイズおよび形状は、製造公差の影響を受ける可能性がある。これらのばらつきは、測定されるべき流量の変化と測定の非一貫性とをもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題は、流体の流量がより均一となり流量測定がより一貫性を有するように、熱による変動が予測可能であり機械的公差がより小さい筐体を有する、信頼性の高い流量センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題は、流体の流量がより均一となり流量測定がより一貫性を有するように、熱による変動が予測可能であり機械的公差がより小さい筐体を有する、信頼性の高い流量センサを提供することによって解決される。
【0007】
例示的な実施形態では、改善された筐体を有する流量センサが提供され得る。これらの筐体は、気体または他の流体用のチャネルを含み得る。チャネルは、その機械的公差が小さくなるように、リソグラフィならびに高精度半導体製造用の装置および技法を使用して形成することができる。このことにより、チャネルのサイズ、形状、および容積を制限または低減することができ、このことにより一貫性の改善された流量測定がもたらされる。
【0008】
本発明のこれらのおよび他の実施形態では、シリコンの単体ブロックで形成されている流量センサ筐体に、チャネルを設けることができる。シリコンブロックを使用することによって、容易に説明できる、非常に予測可能性および再現可能性の高い熱機械的特性をチャネルに付与することができ、このことにより、より一貫性の高い測定が実現される。
【0009】
本発明のこれらのおよび他の実施形態では、第1のシリコンブロックを第2のシリコンブロックに取り付け、このことによりチャネルを形成することができる。この第1のシリコンブロックは、1つまたは複数の耐熱抵抗器と1つまたは複数の検知抵抗器とを含み得る。これらの抵抗器は、円形の、多角形の、または他の形状を有し得る。これらは各々、螺旋、例えばアルキメデス螺旋、インボリュート、フェルマーの螺旋、または他のタイプの螺旋として形成することができる。これらは各々、1本の線、または複数の線のアレイとして形成することができる。これらは互いに同じもしくは同様の形状を有し得るか、または、これらは異なる形状を有し得る。内側の検知抵抗器の周りに、耐熱抵抗器を形成することができる。これらのおよび他の実施形態では、内側の耐熱抵抗器の周りに検知抵抗器を形成することができる。
流体の流れのための出口通路を、第2のシリコンブロックを通る孔として形成することができ、この場合、出口通路の周りに検知抵抗器および耐熱抵抗器が形成される。第2のシリコンブロックにおけるチャネルおよび第1のシリコンブロックにおける出口通路は、流量センサを通る気体または他の流体用の流路を形成することができ、この場合流体は、チャネルを通り出口通路から流出する。本発明のこれらのおよび他の実施形態では、出口通路を入口とすることができ、流体はこの入口に入りチャネルから流出することができる。本発明のこれらのおよび他の実施形態では、第1のシリコンブロックに出口通路または入口が存在しない場合もある。この構成では、流体の流れは、第2のシリコンブロックにおけるチャネルを通ることができる。
【0010】
本発明のこれらのおよび他の実施形態は、双方向流量センサを提供し得る。ある場合には、流体は、耐熱抵抗器から検知抵抗器を越えて流れることができる。この結果、検知抵抗器の温度の、したがって抵抗の上昇が生じ得る。この抵抗の上昇を測定可能である。別法として、流体は、検知抵抗器から耐熱抵抗器を越えて流れることができる。この場合、耐熱抵抗器によって加熱された気体または流体が検知抵抗器から耐熱抵抗器に向かって運び去られるにつれて、検知抵抗器の温度が低下し得る。
【0011】
本発明のこれらのおよび他の実施形態では、チャネルを形成している第2のシリコンブロックを、第1のシリコンブロックに取り付けることができる。出口通路は、第1のシリコンブロックに存在しなくてもまたは第1のシリコンブロックから省略してもよい。この第1のシリコンブロックは、1つまたは複数の耐熱抵抗器と、1つまたは複数の検知抵抗器と、を含み得る。これらの抵抗器は、円形の、多角形の、または他の形状を有し得る。これらは各々、螺旋、例えばアルキメデス螺旋、インボリュート、フェルマーの螺旋、または他のタイプの螺旋として形成することができる。これらは各々、1本の線、または複数の線のアレイとして形成することができる。これらは互いに同じもしくは同様の形状を有し得るか、または、これらは異なる形状を有し得る。耐熱抵抗器は、検知抵抗器の第1の面に形成することができる。
これらのおよび他の実施形態では、耐熱抵抗器の第1の面に検知抵抗器を形成することができる。チャネルは、第1の端部に入口を、および第2の端部に出口または出口通路を有することができ、この場合、流体は入口から出口または出口通路へと流れる。
【0012】
本発明のこれらのおよび他の実施形態では、チャネルを形成する第1のシリコンブロックを、第2のシリコンブロック、基板、ハウジング、または他の基材に取り付けることができる。第1のシリコンブロックは、1つまたは複数の耐熱抵抗器と1つまたは複数の検知抵抗器とを含み得る。これらの抵抗器は、第1のシリコンブロックのチャネル内に形成することができる。これらの抵抗器は、円形の、多角形の、または他の形状を有し得る。これらは各々、螺旋、例えばアルキメデス螺旋、インボリュート、フェルマーの螺旋、または他のタイプの螺旋として形成することができる。これらは各々、1本の線、または複数の線のアレイとして形成することができる。これらは互いに同じもしくは同様の形状を有し得るか、または、これらは異なる形状を有し得る。
耐熱抵抗器は、検知抵抗器の第1の面に形成することができる。これらのおよび他の実施形態では、耐熱抵抗器の第1の面に検知抵抗器を形成することができる。チャネルは、第1の端部に入口を、および第2の端部に出口または出口通路を有することができ、この場合、流体は入口から出口または出口通路へと流れる。
【0013】
基本設計のいくつかの変更形態を、とりわけ、サーマルマスを低減するための同心リングの抵抗器または薄膜に装着した抵抗器などを実装することができる。
【0014】
ここで本発明について、以下の添付の図面を参照して、例示により記載する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る流量センサの一部を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る流量センサの一部の上面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る流量センサにおける気体の流れを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る流量センサの分解図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る流量センサの接合後の図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る別の流量センサを示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る別の流量センサの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
従来の流量センサは、検知抵抗器および耐熱抵抗器の上を通る気体の移動に依存する流量測定を提供できる。この気体の移動は、センサが保持されている筐体の幾何形状に依存し得る。必要とされる寸法尺度では、筐体の壁の熱膨張係数、ならびにその寸法の公差は、何らかの外的なねじりまたは他の機械的効果と同様に、測定される流量値に有意に影響し得る。これに応じて、本発明の実施形態は、筐体に影響を与える熱的および機械的要因と関連付けられる測定の不確実さを低減するためのデバイス構造を提供することができる。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る流量センサの一部を示す。この図は、他の含まれる図と同様に、説明のために示されており、本発明の可能な実施形態または特許請求の範囲のいずれを限定するものではない。
【0018】
第1のシリコンブロック110は、流量センサ100(
図5に示す)の一部とすることができる。第1のシリコンブロック110は出口通路120を含むことができ、この周りに、1つまたは複数の耐熱抵抗器140および1つまたは複数の検知抵抗器130を配列することができる。ボンドパッド150を使用して、耐熱抵抗器140および検知抵抗器130および第1のシリコンブロック110上の他の構成要素を、流量センサ100の外部の他の電子回路に電気接続することができる。
【0019】
出口通路120を、リソグラフィおよび高精度半導体製造用の装置によって画定し、これらを使用して、例えば深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)または他の技法を使用して、製造することができる。この結果、出口通路120のサイズ、形状、および容積を、厳密に制御することができる。この高度な精度および制御は、流量センサが異なっても流量測定読み取り値を一貫したものとすることができることを意味し得るが、その理由は、それらの流量センサが非常に似た寸法を有するからである。
【0020】
また、出口通路120を単体の第1のシリコンブロック110に切削することができるので、出口通路120の熱機械的特性は単純となり得るとともに、十分に理解でき、したがって予測可能となり得る。この予測可能性により、これらの効果の補償が可能になり得る。例えば、温度に対するシリコンの膨張は十分に理解されているので、この膨張の効果を容易に予測することができる。このことにより、流量測定値を温度の関数として補正することが可能になる。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る流量センサの一部の上面図を示す。気体または他の流体300(
図3に示す)を、圧力勾配によって、デバイスの上面から第1のシリコンブロック110の出口通路120を通して、第1のシリコンブロック110の底部(図示せず)の外に駆動することができる。外側の抵抗器のリングはこの場合耐熱抵抗器140とすることができ、内側の抵抗器リングは検知抵抗器130とすることができる。本発明のこれらのおよび他の実施形態では、検知抵抗器を抵抗器140として配置することができ、耐熱抵抗器を抵抗器130として配置することができる。第1のシリコンブロック110の中心にまたは中心近くに、出口通路120を配置することができる。
【0022】
第1のシリコンブロック110は、1つまたは複数の耐熱抵抗器140と1つまたは複数の検知抵抗器130とを含み得る。例えば、本発明のこれらのおよび他の実施形態では、耐熱抵抗器140の各面に検知抵抗器130を配置することができる。この例では、2つの抵抗器130および140は同心のリングとして示されているが、本発明のこれらのおよび他の実施形態では、これらの抵抗器のいずれかまたは両方は、異なる形状を有し得る。これらの抵抗器130および140のいずれかまたは両方は、円形の、多角形の、または他の形状を有し得る。抵抗器130および140のいずれかまたは両方は、螺旋、例えばアルキメデス螺旋、インボリュート、フェルマーの螺旋、または他のタイプの螺旋として形成することができる。これらは各々、1本の線、または複数の線のアレイとして形成することができる。
これらは互いに同じもしくは同様の形状を有し得るか、または、これらは異なる形状を有し得る。本発明のこれらのおよび他の実施形態では、これらの抵抗器のいずれかまたは両方を、2本以上の弧、または2本以上の線、または2つ以上の任意の形状の連なりへと、分割することができる。本発明のこれらのおよび他の実施形態では、単一の耐熱抵抗器140および複数の検知抵抗器130が存在し得るか、複数の耐熱抵抗器140および単一の検知抵抗器130が存在し得るか、1つの耐熱抵抗器140および1つの検知抵抗器130が存在し得るか、または各々が複数存在し得る。この例に示すように、内側の検知抵抗器130の周りに耐熱抵抗器140を形成することができるか、またはやはり、内側の耐熱抵抗器の周りに検知抵抗器を形成することができる。
【0023】
いずれかもしくは両方の抵抗器130および140を、埋め込まれたもしくは分散させたシリコンで製作することができ、この場合これらは第1のシリコンブロック110の表面と面一であり、または、いずれかもしくは両方を、プラチナもしくはタングステンなどの耐熱金属で製作することができる。これらはドープトポリシリコンで製作することもできる。
【0024】
デバイスは温度に対する感度に依存するので、感温性を改善するための様々な性能向上策を利用可能である。1つの方法は、検知抵抗器130を薄膜に装着して、周囲のサーマルマスを低減し、この結果より迅速な温度変化を生じさせることである。第2の方法は、抵抗器130および140の周りにトレンチをエッチングし、このことにより周囲の領域のサーマルマスを低減することである。
【0025】
図3は、本発明の実施形態に係る流量センサ内を、気体または流体がどのように流れることができるかを示す。気体または他の流体300が流量センサ100(
図5に示す)を通って流れる際に、これに第1のシリコンブロック110の中心または中心近くにある出口通路120を通らせることができる。このことにより、第1のシリコンブロック110の外縁部から中心へと向かう、横方向の流れ310を生み出すことができる。この流れの方向によって、加熱された耐熱抵抗器140を気体または他の流体300が横切り、次いで内側の検知抵抗器130の上を通り、出口通路120を通って流れる際に、検知抵抗器または抵抗器130の温度の上昇がもたらされ得る。本発明のこれらのおよび他の実施形態では、気体または他の流体300の流れは、第1のシリコンブロック110の背面から始まり、第1のシリコンブロック110の頂部の外に出ることができる。
【0026】
より具体的には、耐熱抵抗器140を通して電流を駆動することができ、このことにより耐熱抵抗器140を加熱することができる。耐熱抵抗器140は、気体または他の流体300を加熱することができる。加熱した気体または他の流体300を、次いで検知抵抗器130の上に通し、このことにより検知抵抗器130を加熱することができる。検知抵抗器130を通して電流を駆動することができ、結果的に得られる電圧を測定することができる。結果的に得られる電圧を電流で除算したものが、検知抵抗器130の値である。自己加熱を低減するために、検知抵抗器130における電流は小さくすることができる。検知抵抗器130の値を使用して、気体または流体300に関する流量を判定することができる。気体または他の流体300は、出口通路120を通って第1のシリコンブロック110の底部から流出することができる。
【0027】
図4は、本発明の実施形態に係る流量センサの分解図である。この図には流量センサ100が示されており、この場合、第2のシリコンブロック410によって、表面に沿ったより平面的な流れが実現されている。流量センサ100において、エッチングされたチャネル420を有する第2のシリコンブロック410を、第1のシリコンブロック110の上面に接合することができる。結果的に得られる構成により流量センサ100を実現することができ、この場合、動作中に気体または他の流体300(
図3に示す)を第1のシリコンブロック110の上面にわたって横方向に強制的に移動させて、より低圧の出口通路120に到達させることができる。
【0028】
チャネル420を、リソグラフィおよび高精度半導体製造用の装置によって画定し、これらを使用して、例えば深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)または他の技法を使用して、製造することができる。この結果、チャネル420のサイズ、形状、および容積を、厳密に制御することができる。この高度な精度および制御は、流量センサが異なっても流量測定読み取り値を一貫したものとすることができることを意味し得るが、その理由は、それらの流量センサが非常に似た寸法を有するからである。
【0029】
また、チャネル420を単体の第2のシリコンブロック410に切削することができるので、チャネル420の熱機械的特性は単純となり得るとともに、十分に理解できしたがって予測可能となり得る。この予測可能性により、これらの効果の補償が可能になり得る。例えば、温度に対するシリコンの膨張は十分に理解されているので、この膨張の効果を容易に予測することができる。このことにより、流量測定値を温度の関数として補正することが可能になる。
【0030】
図5は、本発明の実施形態に係る流量センサの斜視図である。第2のシリコンブロック410を接合部412において第1のシリコンブロック110に接合して、流量センサ100を形成することができる。エッチングされたチャネル420は、気体の流れをデバイス内に入れ、第1のシリコンブロック110の表面にわたって出口通路120内へと案内することができ、このことにより、流量センサに関する平面上の流れまたは層流が改善される。
【0031】
第1のシリコンブロック110もしくは第2のシリコンブロック410(これらはいずれもダイと呼ぶことができる)のいずれかもしくは両方、または第1のシリコンブロック110もしくは第2のシリコンブロック410と関連付けられた他の構造に、追加の回路構成を配置することができる。この回路構成は、耐熱抵抗器140用の加熱電流を提供および制御するための電流生成器を含み得る。この回路構成はまた、検知抵抗器130用の検知電流を提供するための電流生成器も含み得る。検知抵抗器130にわたる電圧をデジタル値へと変換するための、アナログ-デジタル変換器および他の回路を含めることができる。信号調整回路または信号処理回路を含めることもできる。
【0032】
本発明のこれらのおよび他の実施形態では、出口通路120は、第1のシリコンブロックに存在しなくてもまたは第1のシリコンブロックから省略してもよい。これらの構造では、流路は、第2のシリコンブロックにおける1つまたは複数のチャネルを通ることができる。以下の図には例が示されている。
【0033】
図6は、本発明の実施形態に係る別の流量センサを示す。第1のシリコンブロック610は、流量センサ600の一部とすることができる。第1のシリコンブロック610は、1つまたは複数の耐熱抵抗器614と1つまたは複数の検知抵抗器612とを含み得る。例えば、本発明のこれらのおよび他の実施形態では、耐熱抵抗器614の各面に検知抵抗器612を配置することができる。ボンドパッド618を使用して、耐熱抵抗器614および検知抵抗器612および第1のシリコンブロック610上の他の構成要素を、流量センサ600の外部の他の電子回路に電気接続することができる。
【0034】
第2のシリコンブロック620にチャネル622を形成することができる。気体または他の流体300(
図3に示す)は、チャネル622に入り、耐熱抵抗器614の上を通ることができる。耐熱抵抗器614を通して電流を駆動することができ、このことにより耐熱抵抗器614が加熱される。耐熱抵抗器614は、気体または他の流体300を加熱することができる。加熱した気体または他の流体300を、次いで検知抵抗器612の上に通し、このことにより検知抵抗器612を加熱する。検知抵抗器612を通して電流を駆動することができ、結果的に得られる電圧を測定することができる。自己加熱を低減するために、検知抵抗器612における電流は小さくすることができる。結果的に得られる電圧を電流で除算したものが、検知抵抗器612の値である。検知抵抗器612の値を使用して、気体または流体300に関する流量を判定することができる。
気体または他の流体300は、チャネル622から(示されているようにボンドパッド618の近くの箇所で)流量センサ600の背面の外に出ることができる。いずれかまたは両方の検知抵抗器612および耐熱抵抗器614を、チャネル622がもたらす流体の流れの方向に対して平行に、直角に、または別の角度で、配置することができる。
【0035】
チャネル622を、リソグラフィおよび高精度半導体製造用の装置によって画定し、これらを使用して、例えば深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)または他の技法を使用して、製造することができる。この結果、チャネル622のサイズ、形状、および容積を、厳密に制御することができる。この高度な精度および制御は、流量センサが異なっても流量測定読み取り値を一貫したものとすることができることを意味し得るが、その理由は、それらの流量センサが非常に似た寸法を有するからである。
【0036】
また、チャネル622を単体の第2のシリコンブロック620に切削することができるので、チャネル622の熱機械的特性は単純となり得るとともに、十分に理解でき、したがって予測可能となり得る。この予測可能性により、これらの効果の補償が可能になり得る。例えば、温度に対するシリコンの膨張は十分に理解されているので、この膨張の効果を容易に予測することができる。このことにより、流量測定値を温度の関数として補正することが可能になる。
【0037】
この例では、耐熱抵抗器614および検知抵抗器612は複数の線として形成されている平行な抵抗器として示されているが、本発明のこれらのおよび他の実施形態では、これらの抵抗器のいずれかまたは両方は、異なる形状を有し得る。これらの抵抗器612および614のいずれかまたは両方は、円形の、多角形の、または他の形状を有し得る。抵抗器612および614のいずれかまたは両方は、螺旋、例えばアルキメデス螺旋、インボリュート、フェルマーの螺旋、または他のタイプの螺旋として形成することができる。これらは各々、線として形成することができる。これらは互いに同じもしくは同様の形状を有し得るか、または、これらは異なる形状を有し得る。本発明のこれらのおよび他の実施形態では、これらの抵抗器のいずれかまたは両方を、2本以上の弧、または2本以上の線、または2つ以上の任意の形状の連なりへと、分割することができる。
本発明のこれらのおよび他の実施形態では、単一の耐熱抵抗器614および複数の検知抵抗器612が存在し得るか、複数の耐熱抵抗器614および単一の検知抵抗器612が存在し得るか、1つの耐熱抵抗器614および1つの検知抵抗器612が存在し得るか、または各々が複数存在し得る。
【0038】
いずれかもしくは両方の抵抗器614および612を、埋め込まれたもしくは分散させたシリコンで製作することができ、この場合これらは第1のシリコンブロック610の表面と面一であり、または、いずれかもしくは両方を、プラチナもしくはタングステンなどの耐熱金属で製作することができる。これらはドープトポリシリコンで製作することもできる。
【0039】
デバイスは温度に対する感度に依存するので、感温性を改善するための様々な性能向上策を利用可能である。1つの方法は、検知抵抗器612を薄膜に装着して、周囲のサーマルマスを低減し、この結果より迅速な温度変化を生じさせることである。第2の方法は、抵抗器612および614の周りにトレンチをエッチングし、このことにより周囲の領域のサーマルマスを低減することである。
【0040】
第2のシリコンブロック620もしくは第1のシリコンブロック610(これらはいずれもダイと呼ぶことができる)のいずれかもしくは両方、または第2のシリコンブロック620もしくは第1のシリコンブロック610と関連付けられた他の構造に、追加の回路構成を配置することができる。この回路構成は、耐熱抵抗器614用の加熱電流を提供および制御するための電流生成器を含み得る。この回路構成はまた、検知抵抗器612用の検知電流を提供するための電流生成器も含み得る。検知抵抗器612にわたる電圧をデジタル値へと変換するための、アナログ-デジタル変換器および他の回路構成を含めることができる。信号調整回路または信号処理回路を含めることもできる。
【0041】
図7は、本発明の実施形態に係る別の流量センサの一部を示す。第1のシリコンブロック710は、流量センサ700の一部とすることができる。第1のシリコンブロック710は、1つまたは複数の耐熱抵抗器740と1つまたは複数の検知抵抗器730とを含み得る。例えば、本発明のこれらのおよび他の実施形態では、耐熱抵抗器740の各面に検知抵抗器730を配置することができる。ボンドパッド(図示せず)を使用して、耐熱抵抗器740および検知抵抗器730および第1のシリコンブロック710上の他の構成要素を、流量センサ700の外部の他の電子回路に電気接続することができる。
【0042】
第1のシリコンブロック710にチャネル720を形成することができる。チャネル720に、1つまたは複数の耐熱抵抗器740、および1つまたは複数の検知抵抗器730を形成することができる。第1のシリコンブロック710の表面712に、ボンディング、接着剤、または他の方法もしくは物質によって、第2のシリコンブロック、基板、または他の基材で形成されているカバー750を取り付けて、チャネル720を含む流路を形成することができる。
【0043】
動作中、気体または他の流体300(
図3に示す)は入口722においてチャネル720に入り、耐熱抵抗器740の上を通ることができる。耐熱抵抗器740を通して電流を駆動することができ、このことにより耐熱抵抗器740が加熱される。耐熱抵抗器740は、気体または他の流体300を加熱することができる。加熱した気体または他の流体300を、次いで検知抵抗器730の上に通し、このことにより検知抵抗器730を加熱する。検知抵抗器730を通して電流を駆動することができ、結果的に得られる電圧を測定することができる。自己加熱を低減するために、検知抵抗器730における電流は小さくすることができる。結果的に得られる電圧を電流で除算したものが、検知抵抗器730の値である。検知抵抗器730の値を使用して、気体または流体300に関する流量を判定することができる。
気体または他の流体300は、出口724においてチャネル720から出ることができる。いずれかまたは両方の検知抵抗器730および耐熱抵抗器740を、チャネル720がもたらす流体の流れの方向に対して平行に、直角に、または別の角度で、配置することができる。
【0044】
チャネル720を、リソグラフィおよび高精度半導体製造用の装置によって画定し、これらを使用して、例えば深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)または他の技法を使用して、製造することができる。この結果、チャネル720のサイズ、形状、および容積を、厳密に制御することができる。この高度な精度および制御は、流量センサが異なっても流量測定読み取り値を一貫したものとすることができることを意味し得るが、その理由は、それらの流量センサが非常に似た寸法を有するからである。
【0045】
また、チャネル720を単体の第1のシリコンブロック710に切削することができるので、チャネル720の熱機械的特性は単純となり得るとともに、十分に理解でき、したがって予測可能となり得る。この予測可能性により、これらの効果の補償が可能になり得る。例えば、温度に対するシリコンの膨張は十分に理解されているので、この膨張の効果を容易に予測することができる。このことにより、流量測定値を温度の関数として補正することが可能になる。
【0046】
この例では、耐熱抵抗器740および検知抵抗器730は複数の線として形成されている平行な抵抗器として示されているが、本発明のこれらのおよび他の実施形態では、これらの抵抗器のいずれかまたは両方は、異なる形状を有し得る。これらの抵抗器730および740のいずれかまたは両方は、円形の、多角形の、または他の形状を有し得る。抵抗器730および740のいずれかまたは両方は、螺旋、例えばアルキメデス螺旋、インボリュート、フェルマーの螺旋、または他のタイプの螺旋として形成することができる。これらは各々、線として形成することができる。これらは互いに同じもしくは同様の形状を有し得るか、または、これらは異なる形状を有し得る。本発明のこれらのおよび他の実施形態では、これらの抵抗器のいずれかまたは両方を、2本以上の弧、または2本以上の線、または2つ以上の任意の形状の連なりへと、分割することができる。
本発明のこれらのおよび他の実施形態では、単一の耐熱抵抗器740および複数の検知抵抗器730が存在し得るか、複数の耐熱抵抗器740および単一の検知抵抗器730が存在し得るか、1つの耐熱抵抗器740および1つの検知抵抗器730が存在し得るか、または各々が複数存在し得る。
【0047】
いずれかもしくは両方の抵抗器740および730を、埋め込まれたもしくは分散させたシリコンで製作することができ、この場合これらは第1のシリコンブロック710の表面と面一であり、または、いずれかもしくは両方を、プラチナもしくはタングステンなどの耐熱金属で製作することができる。これらはドープポリシリコンで製作することもできる。
【0048】
デバイスは温度に対する感度に依存するので、感温性を改善するための様々な性能向上策が利用可能である。1つの方法は、検知抵抗器730を薄膜に装着して、周囲のサーマルマスを低減し、この結果より迅速な温度変化を生じさせることである。第2の方法は、抵抗器730および740の周りにトレンチをエッチングし、このことにより周囲の領域のサーマルマスを低減することである。
【0049】
第1のシリコンブロック710もしくはカバー750のいずれかもしくは両方、または、第1のシリコンブロック710もしくはカバー750と関連付けられた他の構造に、追加の回路構成を配置することができる。この回路構成は、耐熱抵抗器740用の加熱電流を提供および制御するための電流生成器を含み得る。この回路構成はまた、検知抵抗器730用の検知電流を提供するための電流生成器も含み得る。検知抵抗器730にわたる電圧をデジタル値へと変換するための、アナログ-デジタル変換器および他の回路構成を含めることができる。信号調整回路または信号処理回路を含めることもできる。
【0050】
上記した様々な流量センサ、ならびに本発明の実施形態が提供する他の流量センサは、アナログの電圧または電流によって駆動され得る。これらの流量センサは、アナログの電圧または電流出力信号を提供し得る。流量センサから入来する信号の解釈を簡単にするために、特定的に開発可能または市場で入手可能な、様々な信号処理回路(図示せず)を使用することができる。流量センサの一実施形態では、耐熱センサを通る電流の流れが一定に維持され、流量の変化に伴って変動し得る検知抵抗器の抵抗の読み取りが変化する。別の方法は、耐熱材料における電流を、検知抵抗器の温度が一定のままとなるように強制的に変動させることである。別の方法は、耐熱抵抗器に電流パルスを与えて加熱パルスを生成し、検知抵抗器において加熱パルスが検知される時間を測定することである。
【0051】
検知抵抗器の抵抗からいくつかの方法で流量を導出することができる。例えば、気体または他の流体の流量を知られている方法で変えることができ、結果的に得られる抵抗を測定することができる。気体および流体の流量と結果的に得られる抵抗との間の関係を見出し、この関係を、流量センサの動作中に検知抵抗器の抵抗から気体または流体の流量を判定するために使用することができる。様々な温度において、気体および流体の流量と結果的に得られる抵抗との間の関係を見出すことができる。動作中、流量センサの温度を使用して、測定された検知抵抗器の抵抗を、したがって気体または流体の流量を、温度に関して較正することができる。