(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両用ドア開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/643 20150101AFI20240806BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20240806BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20240806BHJP
E05F 11/48 20060101ALI20240806BHJP
E05F 11/54 20060101ALI20240806BHJP
E05F 15/655 20150101ALI20240806BHJP
【FI】
E05F15/643
B60J5/04 C
B60J5/06 A
E05F11/48 A
E05F11/54 A
E05F15/655
(21)【出願番号】P 2021003811
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 直也
(72)【発明者】
【氏名】時松 英樹
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-204384(JP,A)
【文献】特開2013-256290(JP,A)
【文献】特開2012-131456(JP,A)
【文献】特開2013-226873(JP,A)
【文献】特開2019-100081(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0221511(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/04
E05F 11/48
E05F 11/54
E05F 15/00-15/79
B60J 5/04- 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体を構成するボディパネルの車外面に設けられたガイドレールをガイドとして車両本体の前後方向に移動可能に支持されたスライドドアを駆動するための車両用ドア開閉装置であって、
ボディパネルの車外面において前記ガイドレールの上方となる部分に、車両本体の前後方向に沿って長手となるように取り付けられる駆動ガイドと、
前記駆動ガイドにおいてボディパネルとの取付面から突出するように設けられたユニットケースの内部に収容され、ボディパネルに設けられた挿入開口部を介して車内側に挿入される入力部ユニットと、
前記入力部ユニットを経由して前記駆動ガイドの長手に沿って移動可能に配設され、駆動ブラケットを介してスライドドアに連結される移動体と、
前記入力部ユニットに接続され、駆動した場合に前記入力部ユニットを介して前記移動体を移動させるモータモジュールと
を備え、前記駆動ガイド及び前記ユニットケースの少なくとも一方には、前記ガイドレールの上縁部とボディパネルとの間の隙間に配置される係合部が設けられ、
前記ユニットケースには、車両本体の前方側に位置する端部及び後方側に位置する端部にそれぞれ側方ガイド面が設けられ、
前記側方ガイド面は、前記ユニットケースの突出端部から前記駆動ガイドに近接するに従って相互間隔が大きくなり、前記駆動ガイドがボディパネルの車外面に配置された場合にボディパネルの前記挿入開口部に対して内縁面に当接するように構成されていることを特徴とする車両用ドア開閉装置。
【請求項2】
前記ユニットケースの下面には、前記ユニットケースの突出方向に沿って延在し、突出端部から前記駆動ガイドに近接するに従って下方に突出するようにガイドリブが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア開閉装置。
【請求項3】
車両本体を構成するボディパネルの車外面に設けられたガイドレールをガイドとして車両本体の前後方向に移動可能に支持されたスライドドアを駆動するための車両用ドア開閉装置であって、
ボディパネルの車外面において前記ガイドレールの上方となる部分に、車両本体の前後方向に沿って長手となるように取り付けられる駆動ガイドと、
前記駆動ガイドにおいてボディパネルとの取付面から突出するように設けられたユニットケースの内部に収容され、ボディパネルに設けられた挿入開口部を介して車内側に挿入される入力部ユニットと、
前記入力部ユニットを経由して前記駆動ガイドの長手に沿って移動可能に配設され、駆動ブラケットを介してスライドドアに連結される移動体と、
前記入力部ユニットに接続され、駆動した場合に前記入力部ユニットを介して前記移動体を移動させるモータモジュールと
を備え、前記駆動ガイド及び前記ユニットケースの少なくとも一方には、前記ガイドレールの上縁部とボディパネルとの間の隙間に配置される係合部が設けられ、
前記ユニットケースの下面には、前記ユニットケースの突出方向に沿って延在し、突出端部から前記駆動ガイドに近接するに従って下方に突出するようにガイドリブが設けられていることを特徴とする車両用ドア開閉装置。
【請求項4】
前記駆動ガイドの端部には、ボディパネルに当接可能となる取付位置と、ボディパネルから離隔した退避位置とに移動可能となる状態で端部ブラケットが設けられており、
前記駆動ガイドと前記端部ブラケットとの間には、前記駆動ガイドに対して前記端部ブラケットを前記退避位置に保持する保持機構が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の車両用ドア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両本体の前後方向に沿って移動可能に支持されたスライドドアを駆動するための車両用ドア開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用ドア開閉装置としては、スライドドアを支持するガイドレールと、駆動ベルト等の移動体が設けられる駆動ガイドと別体に構成することにより、車両本体への取付作業を容易化するものを既に提供している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両本体への乗降性を考慮した場合、乗降口を大きく確保することが好ましいのはいうまでもない。しかしながら、乗降口を大きく構成した場合には、これを開閉するスライドドアも大型化するため、駆動ガイドの全長も長大化する必要がある。これにより、駆動ガイドの取り扱い性が煩雑となり、車両本体への取付作業に影響を与える懸念がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、車両本体への取付作業をより容易化することのできる車両用ドア開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用ドア開閉装置は、車両本体を構成するボディパネルの車外面に設けられたガイドレールをガイドとして車両本体の前後方向に移動可能に支持されたスライドドアを駆動するための車両用ドア開閉装置であって、ボディパネルの車外面において前記ガイドレールの上方となる部分に、車両本体の前後方向に沿って長手となるように取り付けられる駆動ガイドと、前記駆動ガイドにおいてボディパネルとの取付面から突出するように設けられたユニットケースの内部に収容され、ボディパネルに設けられた挿入開口部を介して車内側に挿入される入力部ユニットと、前記入力部ユニットを経由して前記駆動ガイドの長手に沿って移動可能に配設され、駆動ブラケットを介してスライドドアに連結される移動体と、前記入力部ユニットに接続され、駆動した場合に前記入力部ユニットを介して前記移動体を移動させるモータモジュールとを備え、前記駆動ガイド及び前記ユニットケースの少なくとも一方には、前記ガイドレールの上縁部とボディパネルとの間の隙間に配置される係合部が設けられ、前記ユニットケースには、車両本体の前方側に位置する端部及び後方側に位置する端部にそれぞれ側方ガイド面が設けられ、前記側方ガイド面は、前記ユニットケースの突出端部から前記駆動ガイドに近接するに従って相互間隔が大きくなり、前記駆動ガイドがボディパネルの車外面に配置された場合にボディパネルの前記挿入開口部に対して内縁面に当接するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上述した車両用ドア開閉装置において、前記ユニットケースの下面には、前記ユニットケースの突出方向に沿って延在し、突出端部から前記駆動ガイドに近接するに従って下方に突出するようにガイドリブが設けられていることを特徴とする。
【0008】
また本発明に係る車両用ドア開閉装置は、車両本体を構成するボディパネルの車外面に設けられたガイドレールをガイドとして車両本体の前後方向に移動可能に支持されたスライドドアを駆動するための車両用ドア開閉装置であって、ボディパネルの車外面において前記ガイドレールの上方となる部分に、車両本体の前後方向に沿って長手となるように取り付けられる駆動ガイドと、前記駆動ガイドにおいてボディパネルとの取付面から突出するように設けられたユニットケースの内部に収容され、ボディパネルに設けられた挿入開口部を介して車内側に挿入される入力部ユニットと、前記入力部ユニットを経由して前記駆動ガイドの長手に沿って移動可能に配設され、駆動ブラケットを介してスライドドアに連結される移動体と、前記入力部ユニットに接続され、駆動した場合に前記入力部ユニットを介して前記移動体を移動させるモータモジュールとを備え、前記駆動ガイド及び前記ユニットケースの少なくとも一方には、前記ガイドレールの上縁部とボディパネルとの間の隙間に配置される係合部が設けられ、前記ユニットケースの下面には、前記ユニットケースの突出方向に沿って延在し、突出端部から前記駆動ガイドに近接するに従って下方に突出するようにガイドリブが設けられていることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上述した車両用ドア開閉装置において、前記駆動ガイドの端部には、ボディパネルに当接可能となる取付位置と、ボディパネルから離隔した退避位置とに移動可能となる状態で端部ブラケットが設けられており、前記駆動ガイドと前記端部ブラケットとの間には、前記駆動ガイドに対して前記端部ブラケットを前記退避位置に保持する保持機構が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、入力部ユニットを収容するユニットケースに側方ガイド面が設けてあるため、ボディパネルに設けられた挿入開口部にユニットケースを挿入する際の作業を容易化することが可能となる。このため、ガイドレールの上縁部とボディパネルとの間の隙間に係合部を配置して仮止めする作業を迅速に行うことができ、駆動ガイドの全長が大きくなった場合にも車両本体への取り付けが単独作業で実施可能となる等、取付作業をより容易化することができるようになる。
【0011】
本発明によれば、入力部ユニットを収容するユニットケースの下面にガイドリブが設けてあるため、ボディパネルに設けられた挿入開口部にユニットケースを挿入する際の作業を容易化することが可能となる。このため、ガイドレールの上縁部とボディパネルとの間の隙間に係合部を配置して仮止めする作業を迅速に行うことができ、駆動ガイドの全長が大きくなった場合にも車両本体への取り付けが単独作業で実施可能となる等、取付作業をより容易化することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態であるドア開閉装置を適用した車両の左側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した車両の要部を一部破断して示す拡大斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した車両の要部を示すもので、(a)はドア開閉装置を車両本体に取り付けた状態を示す断面図、(b)はドア開閉装置を取り付ける以前の状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示した車両の要部を示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1に示した車両に適用するドア開閉装置及びセンターガイドユニットの斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1に示した車両に適用するドア開閉装置及びセンターガイドユニットの分解斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1に示した車両に適用するドア開閉装置の動力伝達系を示す分解斜視図である。
【
図9】
図9は、
図1に示した車両に適用するドア開閉装置の伝達モジュールの斜視図である。
【
図11】
図11は、
図1に示した車両において伝達モジュールの後端部分を示す拡大斜視図である。
【
図12】
図12は、
図1に示した車両において伝達モジュールの前端部分を示す拡大斜視図である。
【
図13】
図13は、
図9に示した伝達モジュールの前端部分に適用する保持機構を示すもので、(a)は端部ブラケット及びストッパピンを省略した底面図、(b)はストッパピンを含めた底面図である。
【
図14】
図14は、
図9に示した伝達モジュールに適用するユニットケースを示すもので、(a)は上方から見た斜視図、(b)は下方から見た斜視図である。
【
図15】
図15は、
図1に示した車両を車内側から見たもので、(a)は伝達モジュールを取り付ける以前の斜視図、(b)は伝達モジュールを取り付けた状態の斜視図である。
【
図16】
図16は、
図1に示した車両を車内側から見たもので、(a)は下方から見た斜視図、(b)は上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る車両用ドア開閉装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態であるドア開閉装置を適用した車両を示したものである。ここで例示する車両は、車両本体Bの左側面に設けられた後部座席への乗降口EをスライドドアRDによって開閉するように構成したものである。すなわち、
図1に示す車両では、車両本体Bの左側面に、前方からフロントフェンダーFF、フロンドドアFD、スライドドアRD、クォータパネル(ボディパネル)QPが設けられており、スライドドアRDを車両本体Bの車外後方側へ移動させることにより、後部座席への乗降口Eが開放されるように構成してある。
【0014】
スライドドアRDは、乗降口Eの上縁部に設けたアッパーガイドユニットUG、乗降口Eの下縁部に設けたロアガイドユニットLG、クォータパネルQPに設けたセンターガイドユニットCGを介して車両本体Bに支持してある。これらのガイドユニットUG,LG,CGは、図には明示していないが、車両本体Bの前後方向に沿って長手となるように設けたガイドレール10U,10L,10Cと、ガイドレール10U,10L,10Cの延在方向に沿って走行可能に配設したアーム部材11U,11L,11Cとを備えて構成したもので、アーム部材11U,11L,11Cを介してスライドドアRDに連結することにより、車両本体Bに対してスライドドアRDを移動可能に支持している。アッパーガイドユニットUG及びロアガイドユニットLGは、乗降口Eを閉じた場合にスライドドアRDによって覆われる位置にガイドレール10U,10Lが設けてある。これに対してセンターガイドユニットCGは、
図1~
図3に示すように、スライドドアRDによって乗降口Eを閉じた場合に露出されるクォータパネルQPの車外面Paにガイドレール10Cが取り付けてあり、別体に取り付けたカバープレートCPによってガイドレール10Cが覆ってある。センターガイドユニットCGのアーム部材11Cは、ガイドレール10Cから下方に向けて延在し、カバープレートCPの下縁を通過して外部に露出した部分においてスライドドアRDに連結してある。
図1からも明らかなように、センターガイドユニットCGを設ける位置は、クォータパネルQPにおいてタイヤハウスTHと燃料給油口FCとの間となる部分である。
【0015】
本実施の形態で例示する車両用ドア開閉装置は、上述したセンターガイドユニットCGに付設されるものである。以下、センターガイドユニットCGの詳細構成を含めて、車両用ドア開閉装置の構成について説明する。なお、以下においては便宜上、車両本体Bに搭載した状態の姿勢でそれぞれの構成要素の方向を特定することとする。
【0016】
センターガイドユニットCGのガイドレール10Cは、車両本体Bの前後方向に沿ってほぼ直線状に延在する直線レール部10Caと、直線レール部10Caの前端部から前方に向けて漸次車内側となるように湾曲して延在した湾曲レール部10Cbとを有したもので、全長にわたってほぼ同一の断面形状を有するように構成してある。本実施の形態では、
図3、
図4に示すように、主板部10aと、主板部10aの上下両縁部からそれぞれ同一方向に向けて延在した底板部10b及び上板部10cとを一体に成形し、主板部10aの外表面を介してクォータパネルQPの車外面Paに固定されるガイドレール10Cを例示している。このガイドレール10Cには、上板部10cの車外側に位置する縁部に前板部10dが設けてあるとともに、主板部10aの上方部に屈曲部10eが設けてある。前板部10dは、上板部10cから主板部10aとほぼ平行となるように下方に向けて延在したものである。前板部10dと底板部10bとの間には、アーム部材11Cの通過を許容するスリットが確保してある。屈曲部10eは、主板部10aにおいて前板部10dの下縁に対応する部分が車外側に向けてほぼ直角に屈曲した後、上方に向けてほぼ直角に屈曲したものである。屈曲部10eを有した主板部10aは、主板部10aを介してクォータパネルQPの車外面Paに取り付けた場合に、屈曲部10eよりも上方に位置する部分がクォータパネルQPから離隔した位置において上方に延在することになり、クォータパネルQPの車外面Paとの間に係合溝(隙間)12を構成している。
【0017】
車両用ドア開閉装置は、ガイドレール10Cの上方部に配設されるもので、
図2~
図7に示すように、モータモジュール20及び伝達モジュール30を備えている。
【0018】
モータモジュール20は、車両用ドア開閉装置の駆動源となるもので、図には明示していないが、例えばモジュールケース21の内部に電動モータ、減速歯車機構及び出力軸22を配設することによって構成してある。電動モータとしては、双方向に回転することができるものを適用している。出力軸22は、
図8に示すように、オススプラインを有したもので、上下方向に沿って延在し、下端部がモジュールケース21の外部に突出するように設けてある。図には明示していないが、このモータモジュール20は、出力軸22を後述する伝達モジュール30の入力部ユニット330に接続した状態で、モジュールケース21を介してクォータパネルQPの車内面に取り付けられることになる。
【0019】
伝達モジュール30は、モータモジュール20の出力軸22とアーム部材11Cとの間に介在するもので、
図2~
図10に示すように、駆動ベルト(移動体)130、ベルトガイド(駆動ガイド)230及び入力部ユニット330を備えて構成してある。
【0020】
駆動ベルト130は、無端の環状を成し、内周側となる表面に複数の噛合溝131が等間隔に設けられたタイミングベルトと称されるものである。本実施の形態では、ガイドレール10Cの前後に沿った寸法に対して2倍よりも大きな長さを有する駆動ベルト130を適用している。
【0021】
ベルトガイド230は、ガイドレール10Cと同様、車両本体Bの前後方向に沿ってほぼ直線状に延在する直線ガイド部230aと、直線ガイド部230aの前端部から前方に向けて漸次車内側となるように湾曲して延在した湾曲ガイド部230bとを有したもので、ガイドレール10Cとほぼ同じ寸法となるように構成してある。このベルトガイド230には、前端部及び後端部にそれぞれ反転プーリ231,232が設けてあるとともに、直線ガイド部230a及び湾曲ガイド部230bの適宜箇所にガイドプーリ233が設けてある。これら反転プーリ231,232及びガイドプーリ233は、それぞれが上下方向に沿ったプーリ軸231a,232a,233aを中心として回転可能となるように配設したものである。上述の駆動ベルト130は、反転プーリ231,232の間に巻き掛けられるとともに、ガイドプーリ233によってガイドされることにより、後述する入力部ユニット330の駆動プーリ331を経由して、ベルトガイド230の形状に沿って双方向に循環移動することが可能である。
図6、
図7に示すように、ベルトガイド230に巻き掛けた駆動ベルト130は、車外側を移動する経路においては外部に露出された状態となっており、その一部にベルトブラケット(駆動ブラケット)234を備えている。ベルトブラケット234は、アーム部材11Cと駆動ベルト130との間を連結するためのもので、駆動ベルト130から下方に向けて延在している。本実施の形態では、第1ブラケット板234aと第2ブラケット板234bとを備え、互いの間に駆動ベルト130を挟持するように構成したベルトブラケット234を例示している。
図10に示すように、駆動ベルト130の内周側に配置される第1ブラケット板234aには、駆動ベルト130の噛合溝131に噛み合うように複数の凹凸部234cが設けてある。
【0022】
ベルトガイド230の両端部には、それぞれ端部ブラケット235,236が設けてある。本実施の形態の端部ブラケット235,236は、
図11及び
図12に示すように、クォータパネルQPに設けたウエルドボルトWBを介してベルトガイド230をクォータパネルQPに取り付けるためのもので、当接板部235b,236b及び2つの支持板部235c,236cを有して構成してある。当接板部235b,236bは、ベルトガイド230をクォータパネルQPに取り付ける場合にクォータパネルQPの車外面Paに当接される部分である。この当接板部235b,236bには、ボルト挿通孔235d,236dが設けてある。ボルト挿通孔235d,236dは、ウエルドボルトWBを挿通するための開口であり、車両本体Bの前後方向に沿って長孔状となるように形成してある。支持板部235c,236cは、端部ブラケット235,236をベルトガイド230に支持させるためのもので、当接板部235b,236bの上下両縁部からそれぞれ同一方向に向けて延在している。この端部ブラケット235,236は、支持板部235c,236cの相互間に反転プーリ231,232を配置した状態で反転プーリ231,232とともにプーリ軸231a,232aを介してベルトガイド230に支持してあり、ベルトガイド230に対して取付位置と退避位置との間を移動することが可能である。取付位置とは、ベルトガイド230をガイドレール10Cの上方部に配置した場合に、ボルト挿通孔235d,236dにウエルドボルトWBが挿通した状態で支持板部235c,236cがクォータパネルQPの車外面Paに当接した状態位置である。退避位置とは、ベルトガイド230に対して端部ブラケット235,236が車外側に向けて回転し、ベルトガイド230をガイドレール10Cの上方部に配置した場合にも、支持板部235c,236cがクォータパネルQPの車外面Paから離隔した状態位置である。
【0023】
ベルトガイド230と端部ブラケット235,236との間には、それぞれ保持機構が設けてある。保持機構は、ベルトガイド230に対して端部ブラケット235,236を退避位置に保持するためのものである。
【0024】
ベルトガイド230の後端部に設けた保持機構は、ベルトガイド230と端部ブラケット235との間に介在するようにプーリ軸232aの周囲にねじりコイルバネ237を設けることによって構成してある。すなわち、後端部の端部ブラケット235は、外力が加えられていない場合、ねじりコイルバネ237のバネ力によって退避位置に保持された状態にある。端部ブラケット235に外力を加えれば、ねじりコイルバネ237のバネ力に抗して端部ブラケット235を取付位置に配置することが可能である。
【0025】
ベルトガイド230の前端部に設けた保持機構は、
図13に示すように、駆動ベルト130の張力を利用して端部ブラケット236を退避位置に保持するように構成してある。すなわち、端部ブラケット236の支持板部236cに上下方向に沿ったストッパピン238を設けるとともに、ベルトガイド230に係合ガイド溝239を形成し、ストッパピン238の上端部を係合ガイド溝239に配置することによって保持機構が構成してある。ストッパピン238は、支持板部236cに設けたスライド溝236eに配設してあり、駆動ベルト130の外周側となる表面においてプーリ軸231aの径方向に移動することが可能である。係合ガイド溝239は、プーリ軸231aを中心とした円弧に沿って延在するもので、ストッパピン238の上端部が配置された状態でベルトガイド230に対して端部ブラケット236を取付位置と退避位置との間に移動させることが可能である。係合ガイド溝239の幅は、ストッパピン238の外径よりもわずかに大きく構成してあり、ストッパピン238を径方向に沿って移動させることが可能である。
図13(b)に示すように、端部ブラケット236が退避位置に配置された場合には、ストッパピン238が駆動ベルト130を外周側から押圧するように係合ガイド溝239が形成してある。この係合ガイド溝239の外周側に位置する周面には、端部ブラケット236が退避位置に配置された場合にストッパピン238に当接可能となる部分に係合突起239aが設けてある。係合突起239aは、係合ガイド溝239の内周面からわずかに突出したものであり、ストッパピン238が外周側に押圧されている状態においては取付位置側への移動を制限する一方、ストッパピン238が内周側に移動した場合には取付位置側への移動を許容するものである。この保持機構では、端部ブラケット236が退避位置に配置された場合、ストッパピン238が駆動ベルト130からの張力(反発力)によって係合突起239aに押圧され、取付位置側への移動が制限されることになる。この状態から端部ブラケット236に外力を加えれば、ストッパピン238が係合突起239aを乗り越えることで端部ブラケット236を取付位置に配置することが可能である。
【0026】
入力部ユニット330は、ユニットケース332の内部に2つの導入プーリ333、駆動プーリ331、2つのガイドピン334を配設することによって構成したものである。ユニットケース332は、ベルトガイド230の直線ガイド部230aにおいてクォータパネルQPとの取付面となる部分から車内側に向けて突出するように形成してあり、ベルトガイド230をクォータパネルQPの車外面Paに当接させた場合に、クォータパネルQPに形成された四角形状を成す挿入開口部Qaを通じて車内に挿入されるものである。
【0027】
導入プーリ333は、上下に沿ったプーリ軸333aを中心として回転可能に配設したもので、ユニットケース332においてベルトガイド230に近接する部分に、互いに間隔を確保して前後に並設してある。2つの導入プーリ333の間には、車内側に配置された駆動ベルト130がユニットケース332の内部に迂回して導入されるように巻き掛けてある。
【0028】
駆動プーリ331は、円板状を成すプーリ部331aと、プーリ部331aの回転中心となる支持軸部331bとを一体に成形したもので、支持軸部331bが上下に沿った状態でユニットケース332の内部において導入プーリ333よりも車内側となる部分に回転可能に配設してある。駆動プーリ331には、プーリ部331aの外周面に噛合歯331cが設けてあるとともに、支持軸部331bの上端中心部にメススプライン331dが設けてある。駆動プーリ331の噛合歯331cは、駆動ベルト130の噛合溝131に噛み合うように構成したものである。メススプライン331dは、モータモジュール20の出力軸22に嵌合するように構成したものである。
図7、
図8からも明らかなように、この入力部ユニット330では、支持軸部331bの上端面がユニットケース332の上面に設けた開口332aを介して外部に露出しており、ユニットケース332の外部からメススプライン331dに対して出力軸22を嵌合することが可能である。上記の構成を有する駆動プーリ331には、噛合歯331cに噛合溝131が噛み合った状態で、その外周面に駆動ベルト130が巻き掛けてある。なお、駆動ベルト130は、張力を付与することにより、弛みが生じないように調整してある。
【0029】
2つのガイドピン334は、駆動プーリ331の周囲において支持軸部331bと導入プーリ333との間となる部分に上下に延在する円柱状部材である。このガイドピン334の周面には、駆動プーリ331の周面に巻き掛けた駆動ベルト130の外周側となる表面に当接している。
【0030】
上述したユニットケース332には、
図14~
図16に示すように、取付板部335、2つの側方ガイド面336、2つのガイドリブ337が設けてある。取付板部335は、クォータパネルQPの挿入開口部Qaよりも大きな略四角形状を成すもので、ユニットケース332の上面、両側側面及び下面からそれぞれ突出し、ユニットケース332を挿入開口部Qaに挿入した場合に、その全面がクォータパネルQPの車外面Paに沿って延在するように構成してある。また、取付板部335においてユニットケース332の下面から突出する部分(以下、係合部335aという)は、ユニットケース332を挿入開口部Qaに挿入した状態で、クォータパネルQPとガイドレール10Cの主板部10aとの間に構成した係合溝12に挿入可能となる寸法に形成してある。
【0031】
側方ガイド面336は、ユニットケース332において車両本体Bの前方側に位置する端部及び後方側に位置する端部にそれぞれ設けたもので、ユニットケース332の車内側に位置する端部からベルトガイド230に近接するに従って相互間隔が大きくなるようにそれぞれが傾斜している。側方ガイド面336において最も車外側に位置する部分は、それぞれが挿入開口部Qaの前後両内縁面に同時に当接することができるように相互間隔が設定してある。
【0032】
ガイドリブ337は、ユニットケース332の下面の両側部分から下方に向けて突出したもので、車両本体Bの車内外方向に沿って互いにほぼ平行となるように延在している。ガイドリブ337の下面は、それぞれユニットケース332の車内側に位置する端部からベルトガイド230に近接するに従って下方に突出するように傾斜している。
【0033】
上記のように構成した車両用ドア開閉装置は、車両本体Bに取り付ける場合、モータモジュール20及び伝達モジュール30を互いに独立した状態で取り扱うことができるように、相互間の連結状態が解除された状態、つまり駆動プーリ331のメススプライン331dから出力軸22を抜き去った状態となっている。また、取付板部335において車内側に位置する表面には、ほぼ全面となる部分にシール部材338を予め装着しておく。さらに、ベルトガイド230の前端部に設けた端部ブラケット236は、退避位置に配置された状態でストッパピン238が係合突起239aに係合した状態に維持してある。後端部の端部ブラケット235については、ねじりコイルバネ237のバネ力によって退避位置に維持されているのはいうまでもない。なお、クォータパネルQPには、既にガイドレール10Cが取り付けた状態となっているものとする。
【0034】
上述の状態から、まずは挿入開口部Qaにユニットケース332を挿入しながらベルトガイド230をクォータパネルQPの車外面Paに当接させる作業を行う。このとき、本実施の形態の伝達モジュール30によれば、ユニットケース332に側方ガイド面336及びガイドリブ337が設けてあるため、
図15、
図16に示すように、これら側方ガイド面336及びガイドリブ337がガイドとなって挿入開口部Qaへの挿入作業を容易に実施可能である。しかも、ユニットケース332の取付板部335をクォータパネルQPの車外面Paに当接させた状態においては、側方ガイド面336がそれぞれ挿入開口部Qaの前後両内縁面に当接するため、クォータパネルQPに対するベルトガイド230の前後方向に沿った位置を正確に規定することが可能となる。加えて、ユニットケース332の取付板部335をクォータパネルQPの車外面Paに当接させた状態においては、ガイドリブ337も挿入開口部Qaの下方内縁面に当接することになり、クォータパネルQPに対するベルトガイド230の上下方向に沿った位置についても正確に規定することが可能となる。さらに、ベルトガイド230をクォータパネルQPに位置決めする際には、端部ブラケット235,236が退避位置に配置されているため、ウエルドボルトWBと接触することがなく、位置決め作業を容易に実施することが可能となる。
【0035】
挿入開口部Qaに対してユニットケース332を挿入した後においては、端部ブラケット235,236をそれぞれ取付位置に配置し、ウエルドボルトWBをボルト挿通孔235d,236dに挿通させた状態でナット(図示せず)を螺合させることにより、ベルトガイド230をクォータパネルQPに支持させることが可能となる。このとき、上述の伝達モジュール30によれば、
図4に示すように、取付板部335をクォータパネルQPの車外面Paに当接させた際に、ユニットケース332の下面から突出する係合部335aが係合溝12に挿入した状態となり、ベルトガイド230をクォータパネルQPに仮保持させることが可能となる。従って、乗降口Eの大型化に伴ってベルトガイド230が長大化したとしても、その取付作業においては、取付板部335の係合部335aを係合溝12に挿入することで容易化することができ、例えばクォータパネルQPへの取り付けが単独作業で実施可能となる等、取付作業をより容易化することができるようになる。
【0036】
端部ブラケット235,236を介してクォータパネルQPの車外面Paにベルトガイド230を取り付けた後においては、車内側からモータモジュール20の出力軸22を駆動プーリ331のメススプライン331dに嵌合させた状態でモジュールケース21をクォータパネルQPに取り付ければ、車両用ドア開閉装置の取り付けが完了する。
【0037】
上述の状態から、ベルトブラケット234をアーム部材11Cに重ね合わせた状態で連結ネジCBを螺合すれば、アーム部材11Cを介して伝達モジュール30がスライドドアRDに連結されることになる。
【0038】
上記のようにして取り付けられた車両用ドア開閉装置では、モータモジュール20を駆動すると、出力軸22を介して入力部ユニット330の駆動プーリ331が回転し、これに噛み合った駆動ベルト130がベルトガイド230に対して車両本体Bの前後方向に沿って移動することになる。この結果、ベルトブラケット234及びアーム部材11Cを介してスライドドアRDが車両本体Bに対して前後方向に移動し、乗降口Eを開閉することができるようになる。
【0039】
なお、上述した実施の形態では、車両本体Bの左側面に設けられた後部座席への乗降口Eを開閉するスライドドアRDを対象とした車両用ドア開閉装置を例示しているが、必ずしもこれに限定されず、例えば、車両本体の右側面に設けられたスライドドアを対象として構成することも可能である。
【0040】
また、上述した実施の形態では、ユニットケースの取付板部にのみ係合部を設けるようにしているが、係合部はレールガイドにのみ設けても良いし、取付板部及びレールガイドの双方に設けるようにしても良い。
【0041】
さらに、上述した実施の形態では、ユニットケースに側方ガイド面及びガイドリブを設けるようにしているが、側方ガイド面及びガイドリブのいずれか一方が形成されていれば十分である。
【0042】
またさらに、上述した実施の形態では、移動体として駆動ベルト130を例示しているが、必ずしもこれに限定されず、ケーブルやチェーン等の索状体を用いたり、ロッドを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
10C ガイドレール
12 係合溝
20 モータモジュール
130 駆動ベルト
230 ベルトガイド
234 ベルトブラケット
235,236 端部ブラケット
237 ねじりコイルバネ
238 ストッパピン
239 係合ガイド溝
239a 係合突起
330 入力部ユニット
332 ユニットケース
335 取付板部
335a 係合部
336 側方ガイド面
337 ガイドリブ
B 車両本体
Pa 車外面
QP クォータパネル
Qa 挿入開口部
RD スライドドア