(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/65 20180101AFI20240806BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20240806BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F110:10
(21)【出願番号】P 2019202471
(22)【出願日】2019-11-07
【審査請求日】2022-11-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹林 真央
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-106913(JP,A)
【文献】特開2009-063218(JP,A)
【文献】特開2020-159684(JP,A)
【文献】国際公開第2018/199167(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機と、
第1熱交換部と第2熱交換部とを有する室内熱交換器と、前記第1熱交換部と前記第2熱交換部との間に接続された減圧装置とを有する室内機と、
室内空気の温度を検知する第1温度センサと、室内躯体の温度を検知する第2温度センサとを有する温度検知手段と、
前記温度検知手段が検知した温度に応じて、前記第1熱交換部及び前記第2熱交換部が蒸発器として機能する冷房運転と、前記第1熱交換部が凝縮器として機能し前記第2熱交換部が蒸発器として機能する再熱除湿運転との切り替えを行う制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、前記第1温度センサが検知した前記室内空気の温度が所定の温度よりも高いと判断した場合には前記冷房運転を行う制御をし、前記第2温度センサが検知した前記室内躯体の温度から設定温度を指し引いた温度差が目的値に達したと判断した場合に、前記冷房運転から前記再熱除湿運転へ切り替える空気調和機。
【請求項2】
請求項
1に記載された空気調和機であって、
前記制御装置は、前記冷房運転から前記再熱除湿運転へ切り替える前に、さらに前記室内空気の温度と前記室内躯体の温度との差分が目的時間の間に目的値内と判断した場合に、前記冷房運転から前記再熱除湿運転へ切り替える
空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の除湿運転に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の除湿運転の中には、まず設定温度に近づくまで室内空気の温度を下げつつ除湿を行う冷房運転を行い、次に室内空気の温度が設定温度近傍の再熱除湿運転の起点となる温度となったら、設定温度を維持しながら除湿を行う再熱除湿運転に切り替えるものがある。
【0003】
冷房運転から再熱除湿運転に切り替える際には、冷凍サイクル内の減圧装置に過剰な負荷がかからないようにする必要があるため、数分間圧縮機を停止させる必要がある。そして、冷房運転と再熱除湿運転の切り替えが繰り返されこの圧縮機の停止が頻繁に起こると、室内の除湿が行われないため除湿運転における快適性が損なわれることとなる。
【0004】
特に真夏など、冷房運転によって室内壁、床等の余熱が充分に排除されてないと、室内壁、床等からの熱輻射が室内空気の温度に影響を及ぼす場合がある。このような場合、空気調和機では、冷房運転から再熱除湿運転に切り替えられたとしても、圧縮機が停止している間に再び室内空気の温度が輻射熱によって上昇し、冷房運転に切り替えられてしまう。そして、再度、冷房運転から再熱除湿運転へ切り替えられたとしても、また再度、室内空気の温度が輻射熱によって上昇し、再び、冷房運転に切り替えられるというルーチンに陥る場合がある。
【0005】
このため、空気調和機の除湿運転の中には、あらかじめ室内壁、床等の余熱を充分に排除するため、数時間にわたって強制的に冷房運転を行うものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、数時間という長時間にわたる冷房運転をすると、断熱性の高い住宅では室内空気の温度が設定温度を下回る場合がある。このような場合、圧縮機は、室内空気の温度が設定温度を上回るまで停止される。室内空気が設定温度になるまでは空気調和機が停止した状態になる。すなわち、空気調和機は、設定温度に戻るまで除湿運転をせず、室内の除湿が行われないことになる。これは、除湿運転における快適性の向上の障害になる。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、除湿運転における快適性を向上させた空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る空気調和機は、室外機と、室内機と、温度検知手段と、制御装置とを具備する。
上記室内機は、第1熱交換部と第2熱交換部とを有する室内熱交換器と、上記第1熱交換部と上記第2熱交換部との間に接続された減圧装置とを有する。
上記温度検知手段は、室内空気の温度を検知する第1温度センサを有する。
上記制御装置は、上記温度検知手段が検知した温度に応じて、上記第1熱交換部及び上記第2熱交換部が蒸発器として機能する冷房運転と、上記第1熱交換部が凝縮器として機能し上記第2熱交換部が蒸発器として機能する再熱除湿運転との切り替えを行う。
上記制御装置は、上記温度検知手段が検知した上記室内空気の温度が所定の温度よりも高いと判断した場合には上記冷房運転を行う制御をし、上記温度検知手段が検知した上記室内空気の温度が目的時間の間に目的値内に収まっていると判断した場合に、上記冷房運転から上記再熱除湿運転へ切り替える。
【0010】
このような空気調和機によれば、室内の除湿が行われない時間を少なくすることができ、除湿運転における快適性が向上する。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る空気調和機は、室外機と、室内機と、
温度検知手段と、制御装置とを具備する。
上記室内機は、第1熱交換部と第2熱交換部とを有する室内熱交換器と、上記第1熱交換部と上記第2熱交換部との間に接続された減圧装置とを有する。
上記温度検知手段は、室内空気の温度を検知する第1温度センサと、室内躯体の温度を検知する第2温度センサとを有する。
上記制御装置は、上記温度検知手段が検知した温度に応じて、上記第1熱交換部及び上記第2熱交換部が蒸発器として機能する冷房運転と、上記第1熱交換部が凝縮器として機能し上記第2熱交換部が蒸発器として機能する再熱除湿運転との切り替えを行う。
上記制御装置は、上記第1温度センサが検知した上記室内空気の温度が所定の温度よりも高いと判断した場合には上記冷房運転を行う制御をし、上記第2温度センサが検知した上記室内躯体の温度が目的値に達したと判断した場合に、上記冷房運転から上記再熱除湿運転へ切り替える。
【0012】
このような空気調和機によれば、室内の除湿が行われない時間を少なくすることができ、除湿運転における快適性が向上する。
【0013】
上記の空気調和機においては、上記制御装置は、上記冷房運転から上記再熱除湿運転へ切り替える前に、さらに上記室内空気の温度と上記室内躯体の温度との差分が目的時間の間に目的値内と判断した場合に、上記冷房運転から上記再熱除湿運転へ切り替えてもよい。
【0014】
このような空気調和機によれば、冷房運転から再熱除湿運転へ切り替えをさらに正確に行うことができ、除湿運転の快適性がさらに向上する。
【0015】
上記の空気調和機においては、上記第2温度センサは、上記室内躯体の第1部分の温度を検知する第1センサ部と、上記室内躯体の上記第1部分とは場所が異なる第2部分の温度を検知する第2センサ部とを有し、上記制御装置は、上記第1センサ部が検知した温度と上記第2センサ部が検知した温度との双方の温度に基づいて上記冷房運転から上記再熱除湿運転へ切り替えの判断をしてもよい。
【0016】
このような空気調和機によれば、冷房運転から再熱除湿運転へ切り替えをさらに正確に行うことができ、除湿運転の快適性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、本発明によれば、除湿運転における快適性を向上させた空気調和機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態の空気調和機の概要を示すブロック構成図である。
【
図2】冷房運転と再熱除湿運転との切り替えの一例を示すフロー図である。
【
図3】本実施形態における冷房運転と再熱除湿運転との切り替えを示すフロー図である。
【
図4】本実施形態における冷房運転と再熱除湿運転との切り替えの変形例を示すフロー図である。
【
図5】本実施形態における冷房運転と再熱除湿運転との切り替えの別の変形例を示すフロー図である。
【
図6】本実施形態における空気調和機の温度検知手段の変形例を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。また、以下に示す温度等の数値は一例であり、この例に限らない。
【0020】
(空気調和機の構成)
【0021】
図1は、本実施形態の空気調和機の概要を示すブロック構成図である。
図1に示す構成は、本実施形態の空気調和機の一例であり、この例には限定されない。なお、以下での"接続"とは、パイプ(図の実線)により冷媒が流通できるようになっている接続を意味する。
【0022】
空気調和機1は、室内機10と、温度検知手段20と、室外機30と、制御装置40とを具備する。空気調和機1は、冷房運転及び再熱除湿運転のほか、暖房運転を可能とした空気調和機である。
【0023】
室内機10は、室内熱交換器100と、減圧装置130と、室内ファン150とを有する。室内熱交換器100は、第1熱交換部110と第2熱交換部120とを有する。第1熱交換部110及び第2熱交換部120のそれぞれは、例えば、複数枚の金属フィンを有している。
【0024】
減圧装置130は、例えば、室内膨脹弁である。減圧装置130は、第1熱交換部110と第2熱交換部120との間に接続される。第1熱交換部110と、減圧装置130と、第2熱交換部120とは直列状に接続されている。
【0025】
このほか、第1熱交換部110は、減圧装置130とは反対側において、室外機30の減圧装置330に接続されている。第2熱交換部120は、減圧装置130とは反対側において、室外機30の四方弁320に接続されている。室内ファン150は、室内熱交換器100付近に配置される。
【0026】
温度検知手段20は、第1温度センサ21と、第2温度センサ22とを有する。第1温度センサ21は、室内空気の温度を検知する。第2温度センサ22は、室内躯体の温度を検知する。第1温度センサ21としては、例えば、熱電対、サーミスタ等があげられる。第2温度センサ22としては、例えば、サーモパイル、パイロメータ等の間接的な温度計測装置、または、熱電対、サーミスタ等の直接的な温度計測装置があげられる。室内躯体とは、例えば、室内壁、床、天井等の内装構造体である。また、室内躯体の温度とは、例えば、室内空間に臨む室内躯体の表面温度である。
【0027】
第1温度センサ21及び第2温度センサ22の間接的な温度計測装置は、例えば、室内機10に直接、設置されたり、室内機10付近に設置されたりする。第2温度センサ22の直接的な温度計測装置は、室内躯体に直接、取り付けられたり、空気調和機1の遠隔操作機器に取り付けられたりする。
【0028】
例えば、第2温度センサ22が遠隔操作機器に取り付けられた場合、利用者により遠隔操作機器が室内壁に設置されれば室内壁の温度に近似した温度を検知することができ、遠隔操作機器が床に設置されれば床の温度に近似した温度を検知することができる。
【0029】
室外機30は、室外熱交換器300と、圧縮機310と、四方弁320と、減圧装置330と、室外ファン350とを有する。室外熱交換器300は、例えば、複数枚の金属フィンを有している。減圧装置330は、例えば、室外膨脹弁である。
【0030】
圧縮機310は、四方弁320に接続される。室外熱交換器300は、四方弁320と減圧装置330との間に接続されている。減圧装置330は、室外熱交換器300と第1熱交換部110との間に接続されている。四方弁320と、室外熱交換器300と、減圧装置330とは直列状に接続されている。室外ファン350は、室外熱交換器300付近に配置される。
【0031】
制御装置40は、室内機10と、室外機30とを制御する。また、制御装置40には、温度検知手段20が検知した温度が入力される。制御装置40は、温度検知手段20が検知した温度に応じて、冷房運転と、再熱除湿運転との切り替えを行う。
【0032】
例えば、冷房運転では、第1熱交換部110及び第2熱交換部120が蒸発器として機能する。再熱除湿運転では、第1熱交換部110が凝縮器として機能し、第2熱交換部120が蒸発器として機能する。
【0033】
(冷房運転)
【0034】
再熱除湿運転に切り替えられる前の冷房運転の動作について説明する。冷房運転における冷媒の流れが図中の実線矢印で示されている。
【0035】
まず、圧縮機310が駆動すると、圧縮機310から流出した高圧の冷媒が四方弁320に流入し、四方弁320を経由して、室外熱交換器300に流入する。室外熱交換器300に流入した冷媒は、室外ファン350によって取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮する。室外熱交換器300から流出した冷媒は、冷房運転に応じた開度となった減圧装置330を通過する際に減圧する。
【0036】
減圧装置330から流出した冷媒は、第1熱交換部110に流入し、室内ファン150によって取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。第1熱交換部110から流出した冷媒は、開度が全開とされている減圧装置130を通過して第1熱交換部120に流入し、室内ファン150によって取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。
【0037】
この後、第2熱交換部120から流出した冷媒は、四方弁320を経由して、再び、圧縮機310に吸入されて圧縮される。
【0038】
このように、冷房運転では、室外熱交換器300が凝縮器として機能し、第1熱交換部110と第2熱交換部120とが蒸発器として機能する。冷房運転では、第1熱交換部110及び第2熱交換部120のそれぞれで冷媒と室内空気との熱交換が行われる。
【0039】
(再熱除湿運転)
【0040】
冷房運転から切り替えられた再熱除湿運転の動作について説明する。
【0041】
再熱除湿運転では、冷媒の流れ方向は、冷房運転と同じ向きになる。但し、再熱除湿運転では、減圧装置330が全開とされ、減圧装置130が再熱除湿運転に応じた開度になる。これにより、第1熱交換部110が凝縮器として機能し、第2熱交換部120が蒸発器として機能する。
【0042】
例えば、室外熱交換器300で外気と熱交換を行った冷媒は、全開とされている減圧装置330を通過し、第1熱交換部110に流入する。冷媒は、室内ファン150によって取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。この後、冷媒は、第1熱交換部110から所定の開度とされた減圧装置130を通過して減圧する。そして、冷媒は、第1熱交換部110に流入し、室内ファン150によって取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。
【0043】
このように、再熱除湿運転では、室外熱交換器300が凝縮器として機能し、第1熱交換部110が凝縮器として機能し、第2熱交換部120が蒸発器として機能する。つまり、第1熱交換部110では室内空気が加熱され、第2熱交換部120では室内空気の除湿と冷却が行われる。これにより、再熱除湿運転では、室内湿度が低下するとともに、室内空気の温度の低下が抑えられる。例えば、再熱除湿運転では、設定温度を維持して、除湿を図ることができる。
【0044】
また、冷房運転から再熱除湿運転に切り替える際、圧縮機310を駆動したまま、減圧装置330を所定の開状態から全開にし、減圧装置130を全開から所定の開状態にすると、減圧装置330及び減圧装置130に冷媒圧力による過剰な負荷がかかり、減圧装置330及び減圧装置130が損傷する場合がある。
【0045】
このため、冷房運転から再熱除湿運転に切り替わる際には、圧縮機310を一旦停止して、減圧装置330を所定の開状態から全開にし、減圧装置130を全開から所定の開状態にする。換言すれば、圧縮機310が停止された期間では、空気調和機1が停止した状態ととなり、空気調和機1での再熱除湿運転が行われないことになる。
【0046】
なお、暖房運転のときには、冷媒の流れる向きが冷房運転(または、再熱除湿運転)と逆になる。すなわち、冷媒は、実線矢印と逆の方向に流れ、室外熱交換器300が蒸発器として機能し、第1熱交換部110と第2熱交換部120とが凝縮器として機能する。暖房運転での四方弁320における冷媒の出入りは、図中に破線矢印で示されている。
【0047】
本実施形態の空気調和機1を用いた空気調和方法を説明する前に、冷房運転から再熱除湿運転に切り替えられる際に起きる空気調和機の作用の一例について説明する。
【0048】
(冷房運転から再熱除湿運転への切り替え制御の参考例)
【0049】
再熱除湿運転では、スイッチをオンにして空気調和機を起動するときなどに、室内空気の温度が利用者によって設定された設定温度(例えば、26℃)に対して高い場合には(例えば、30℃以上)、再熱除湿運転を行う前に、通常、冷房運転が行われる。そして、室内空気の温度が再熱除湿運転の起点となる所定の温度(例えば、設定温度+1.5℃となる27.5℃)にまで下ってから、冷房運転から再熱除湿運転に切り替えが行われる。再熱除湿運転に切り替えられた後は、室内空気の温度が設定温度(例えば、26℃)に保たれ、室内の除湿が行われる。
【0050】
但し、冷房運転から再熱除湿運転に切り替えられる際、圧縮機を停止しなければならないことから、圧縮機が停止している間には冷房運転が停止することになる。これにより、室内空気の温度が室内壁、床、天井の輻射熱によって上昇する場合がある。そして、冷房運転が停止している間に、室内空気の温度が再熱除湿運転の起点となる温度よりも上昇すると、再び再熱除湿運転から冷房運転に切り替えられる。そして、再度、室内空気の温度が再熱除湿運転の起点となる温度にまで下がると、冷房運転から再熱除湿運転に切り替えられる。そして、圧縮機が停止している間に、室内空気の温度が再熱除湿運転の起点となる温度よりも上昇すると、再度、再熱除湿運転から冷房運転に切り替えられることになる。
【0051】
このような圧縮機停止→温度上昇→冷房運転というルーチンが頻繁に繰り返されると、圧縮機の停止時間の合計時間が長くなり除湿運転が行われず、除湿運転時の快適性が低下することになる。
【0052】
このようなルーチンの頻繁な繰り返しを回避するために、空気調和機では、再熱除湿運転に切り替える前の冷房運転を強制的に長時間動作させる場合がある。この場合の制御を次のフロー図を用いて説明する。
【0053】
図2は、冷房運転と再熱除湿運転との切り替えの一例を示すフロー図である。
図2のフローによる制御は、制御装置によって自動的に行われる。
【0054】
まず、利用者が除湿運転を行うため、例えば、遠隔操作機器を通じて空気調和機のスイッチをオンすると、除湿運転が開始される(ステップS10)。
【0055】
次に、室内空気の温度が検知される(ステップS20)。このときの室内空気の温度は、例えば、30℃であるとする。
【0056】
次に、室内空気の温度と設定温度(例えば、26℃)との差Δが所定の値に収まっているか否かが判断される(ステップS30)。差Δは、室内空気の温度から設定温度を差し引いた、(室内空気の温度)-(設定温度)で定義される。そして、差Δの閾値を一例として1.5℃と決める。
【0057】
例えば、室内空気の温度は、30℃と検知されるので、差Δは4℃となり、差Δは1.5℃以上になっている。この場合、ステップS30で「NO」と判断され、ステップS80に進む。ステップS80に進むことにより、室内の冷房運転が開始される。
【0058】
ここで、空気調和機は、上述した繰り返しのルーチンに陥ることを防止するために、強制的に長時間にわたる冷房運転を実行する。例えば、長時間の目安を一例として3時間と決める。そして、ステップS95において、冷房運転が3時間、経過したか否かの判断がなされる。
【0059】
次に、冷房運転が3時間、経過したら(「YES」)、室内空気の温度が再度検知される(ステップS20)。
【0060】
次に、差Δが再び判断されて(ステップS30)、差Δが1.5℃よりも小さければ、「YES」と判断され、ステップS40に進む。差Δが1.5℃以上ならば、「NO」と判断され、再度、ステップS80に進み、再度、冷房運転が行われる。
【0061】
ステップS40の段階では、室内空気の温度が冷房運転により下げられて、室内空気の温度が設定温度に漸近し、既に差Δが1.5℃よりも小さくなっている。このとき、圧縮機が停止されて、冷房運転から再熱除湿運転に切り替えられる。
【0062】
再熱除湿運転に切り替えられた空気調和機は、再熱除湿運転を実行し続ける(ステップS50)。これにより、室内の空気が再熱除湿によって設定温度の下、除湿され続ける。
【0063】
なお、再熱除湿運転が継続している間にも、適宜、室内空気の温度を確認するため、室内空気の温度が検知される(ステップS60)。
【0064】
例えば、ステップS60の次のステップS70では、室内空気の温度と設定温度との差Δが所定の値に収まっているか否かが判断される。
【0065】
例えば、差Δが1.5℃よりも小さければ、「YES」と判断され、再熱除湿運転が継続されながら、適宜、室内空気の温度が確認される。但し、差Δが1.5℃以上となると、「NO」と判断され、一旦、圧縮機が停止されて、再熱除湿運転から冷房運転に切り替えられる(ステップS100)。この後、ステップS80からの冷房運転が再開され、室内空気の温度を再び低下させるモードに移行する。
【0066】
このように、
図2に示すフローでは、空気調和機が上述した繰り返しのルーチン制御に陥ることを防止するために、再熱除湿運転に切り替わる前に強制的に長時間(例えば、3時間)の冷房運転を実行する。
【0067】
しかし、このような長時間にわたる冷房運転を再熱除湿運転の前に強制的に実行すると、例えば、断熱性の高い住宅等、室内環境によっては、室内空気の温度が設定温度を下回る場合がある。このような場合、通常、空気調和機は、室内空気の温度が設定温度を上回るまで圧縮機を停止する、待機モードに移行する。これは、空気調和機の消費電力低減の観点から、空気調和機が再熱手段としてのヒータ機構を備えていないことに基づく。
【0068】
従って、室内空気の温度が自発的に設定温度付近に上昇するまでの期間は、空気調和機による除湿運転が行われないことになる。これは、除湿運転の快適性向上を図る上での障害になっている。
【0069】
(本実施形態における冷房運転から再熱除湿運転への切り替え制御)
【0070】
これに対して、本実施形態の空気調和機の作用並びに空気調和方法を説明する。
図3は、本実施形態における冷房運転と再熱除湿運転との切り替えを示すフロー図である。以下の図で示されるフローによる制御は、制御装置40によって自動的に行われる。
【0071】
まず、遠隔操作機器を通じて空気調和機のスイッチがオンになると、除湿運転が開始される(ステップS10)。
【0072】
次に、室内空気の温度が検知される(ステップS20)。室内空気の温度は、例えば、30℃であるとする。
【0073】
次に、室内空気の温度と利用者によって設定された設定温度(例えば、26℃)との差Δが所定の値に収まっているか否かが判断される(ステップS30)。本実施形態では、差Δの閾値を一例として1.5℃と決める。
【0074】
室内空気の温度が30℃のとき、差Δは4℃で1.5℃以上になる。従って、ステップS30で「NO」と判断され、ステップS80に進む。ステップS80に進むことにより、室内の冷房運転が開始される。
【0075】
次に、本実施形態では、第1温度センサ21が検知した室内空気の温度が目的時間(例えば、0.5時間)の間に目的値内(例えば、設定温度+1.5℃以内)に収まったか否かを判断し(ステップS90A)、収まった場合には、「YES」と判断され、冷房運転から再熱除湿運転へ切り替えるフローに移行する。
【0076】
これは、室内空気の温度が目的時間の間に目的値内に収束した場合には、室内環境にかかわらず、室内空気の温度が室内壁、床、天井等の室内躯体からの熱輻射によって影響を与えられない状態にあると考えられるためである。
【0077】
特に、室内空気の温度が目的時間の間に目的値内に収束している場合には、圧縮機310は、通常、低能力運転モードになっている。圧縮機310の低能力運転で、室内空気の温度が目的時間の間に目的値内に収束した場合には、室内躯体の表面が室内空気の温度に影響を与えないほど冷えていると見なしてよい。
【0078】
一方、第1温度センサ21が検知した室内空気の温度が目的時間か経過しても目的値内に収束していないと判断された場合は(「NO」)、引き続き第1温度センサ21によって、室内空気の温度が検知される。
【0079】
次に、室内空気の温度が目的時間の間に目的値内に収まっていると判断された場合(ステップS90A「YES」)、室内空気の温度が再度検知される(ステップS20)。
【0080】
次に、差Δが再び判断されて(ステップS30)、差Δが1.5℃よりも小さければ、「YES」と判断され、ステップS40に進む。差Δが1.5℃以上ならば、「NO」と判断され、再度、ステップS80に進み、再度、冷房運転が行われる。
【0081】
続いて、ステップS40では、圧縮機が停止されて、冷房運転から再熱除湿運転に切り替えられる。
【0082】
なお、ステップS90Aにおいて、目的値をステップS30での閾値と同じくした場合かつ「YES」と判断された場合には、ステップS20、S30を通過して、ステップS40に移行してもよい。
【0083】
次に、再熱除湿運転に切り替えられた空気調和機は、再熱除湿運転を実行し続ける(ステップS50)。これにより、室内の空気が再熱除湿によって設定温度の下、除湿され続ける。
【0084】
次に、室内空気の温度を確認するため、室内空気の温度が検知される(ステップS60)。
【0085】
例えば、ステップS70では、室内空気の温度と設定温度との差Δが所定の値に収まったか否かが判断される。
【0086】
ここで、差Δが1.5℃よりも小さければ、「YES」と判断され、再熱除湿運転が継続されながら、適宜、室内空気の温度が確認される。但し、差Δが1.5℃以上ならば、「NO」と判断され、一旦、圧縮機が停止されて、再熱除湿運転から冷房運転に切り替えられる(ステップS100)。この後、ステップS80で冷房運転が再開され、室内空気の温度を再び低下させるモードに移行する。
【0087】
このように、本実施形態によれば、再熱除湿運転に切り替える前に、一律で長時間の冷房運転をせず、第1温度センサ21が検知した室内空気の温度が目的時間の間に目的値内に収束している場合に、冷房運転から再熱除湿運転へ切り替える。
【0088】
このような制御によれば、例えば、室内躯体の断熱性の程度による冷房運転での過度冷房が回避される。これにより、過度に冷却された室内空気の温度が自発的に設定温度付近にまで上昇するまで圧縮機を停止しなければならない停止時間がなくなる。
【0089】
これにより、冷房運転から再熱除湿運転に迅速に切り替えることができ、除湿運転の快適性が向上する。例えば、断熱性に優れた住宅では、冷房運転から再熱除湿運転に切り替え時間が早くなり、空気調和機の運転開始から迅速に除湿運転に移行できる。また、本実施形態によれば、制御が上述した繰り返しのルーチンに陥ることも防止される。
【0090】
(変形例1)
【0091】
図4は、本実施形態における冷房運転と再熱除湿運転との切り替えの変形例を示すフロー図である。
図4には、
図3のステップS90Aに代用されるステップS90Bとが示されている。
【0092】
変形例1では、制御装置40は、冷房運転から再熱除湿運転に切り替える場合に、第2温度センサ22が検知した室内躯体の温度が目的値に達したと判断した場合に、冷房運転から再熱除湿運転へ切り替えられる。
【0093】
例えば、ステップS80で室内の冷房運転が開始された後、第2温度センサ22が検知した室内躯体の温度が目的値内に収まっていると判断した場合には、「YES」と判断され、冷房運転から再熱除湿運転へ切り替えるフローに移行する。ここでの目的値とは、第2温度センサ22が検知した室内躯体の温度から利用者によって設定された設定温度を指し引いたΔ温度差とする。例えば、Δ温度差=(第2温度センサ22が検知した室内躯体)-(設定温度)はΔ3℃以下とする。このΔ温度差が目的値内に収まっている場合には、室内環境にかかわらず、室内躯体の表面が室内空気の温度に影響を与えないほど冷えていると見なしてよい。
【0094】
特に、室内躯体の温度を直接検知することにより、室内空気が室内躯体のからの熱輻射によって暖められることがなくなり、冷房運転から再熱除湿運転に切り替える際に圧縮機を停止しても、室内空気の温度が再熱除湿運転の起点となる所定の温度に上昇することがなくなる。
【0095】
また、第2温度センサ22は、室内躯体の温度を直接検知する場合には、1つとは限らず、室内躯体の複数の箇所に設置してもよい。この場合、制御装置40は、複数の第2温度センサ22が検知する温度の平均値、または、複数の第2温度センサ22のいずれかによって検知された温度の最高値に基づいて、ステップS90Bにおける判断を実行してもよい。
【0096】
一方、第2温度センサ22が検知した室内躯体の温度が目的値内に収まっていないと判断された場合は(ステップS90B「NO」)、引き続き第2温度センサ22によって、室内躯体の温度が検知される。
【0097】
なお、ステップS90Bにおいて、「YES」と判断された場合には、室内躯体の表面温度が室内空気の温度に影響を与えないとみなし、再熱除湿運転のみで温湿度を調整することとし、ステップS20、S30を通過して、ステップS40に移行してもよい。
【0098】
(変形例2)
【0099】
図5は、本実施形態における冷房運転と再熱除湿運転との切り替えの別の変形例を示すフロー図である。
図5には、冷房運転(ステップS80)と、ステップS90AまたはステップS90Bと、ステップS90AまたはステップS90Bのいずれかの次に実行するステップS91が示されている。
【0100】
変形例2では、制御装置40は、冷房運転から再熱除湿運転へ切り替える前に、さらに室内空気の温度と室内躯体の温度との差分が目的時間の間に目的値内に収まっていたと判断した場合に、冷房運転から再熱除湿運転へ切り替えられる。
【0101】
例えば、ステップS80で室内の冷房運転が開始され、ステップS90AまたはステップS90Bで、「YES」と判断された後、第1温度センサ21が検知した室内空気の温度と第2温度センサ22が検知した室内躯体の温度とのΔ温度差が目的時間の間に目的値内に収まっているか否かが判断される。
【0102】
例えば、ステップS90AまたはステップS90Bに移行後、0.5時間の間に、Δ温度差がΔ3℃以下に収まっていると判断した場合には、「YES」と判断され、冷房運転から再熱除湿運転へ切り替える。また、Δ温度差が目的値内に収まっていないと判断した場合には、「NO」と判断され、再度、そのΔ温度差が目的値内に収まっているか否かが判断される。
【0103】
このような判断をステップS90A、または、ステップS90Bの後に実行することにより、室内躯体が持つ余熱による室内空気への影響を抑えることができ、除湿運転時の温度制御をより適切に行うことができる。これにより、圧縮機を停止する回数を減らすことができ、除湿運転の快適性がさらに向上する。
【0104】
なお、ステップS91において、「YES」と判断された場合には、室内躯体の表面温度が室内空気の温度に影響を与えないとみなし、再熱除湿運転のみで温湿度を調整することとし、ステップS20、S30を通過して、ステップS40に移行してもよい。
【0105】
(変形例3)
【0106】
図6は、本実施形態における空気調和機の温度検知手段の変形例を示すブロック構成図である。
【0107】
第2温度センサ22は、室内躯体の第1部分の温度を検知する第1センサ部22aと、室内躯体の第1部分とは場所が異なる第2部分の温度を検知する第2センサ部22bとを有してもよい。制御装置40は、第1センサ部が検知した温度と第2センサ部が検知した温度との双方の温度に基づいて、冷房運転から再熱除湿運転へ切り替えの判断をする。第1部分とは、室内壁、床、天井のいずれかであり、第2部分とは、第1部分とは場所が異なる室内躯体である。例えば、第1部分が室内壁ならば、第2部分は、床である。
【0108】
室内躯体の温度は、室内壁、床、天井等によって熱容量が異なり、それぞれの余熱の量が異なる場合がある。変形例3では、ステップS90B(
図4)において、例えば、第1センサ部22aが室内壁の温度を検知し、第2センサ部22bが床の温度を検知する。
【0109】
ステップS90Bでは、第1センサ部22aが検知した室内壁の温度が目的値に達しているか否かが判断され、且つ第2センサ部22bが検知した床の温度が目的値に達しているか否かが判断される。そして、第1センサ部22aが検知した室内壁の温度及び第2センサ部22bが検知した床の温度がいずれも目的値に達している場合、冷房運転から再熱除湿運転へ切り替えられる。
【0110】
このような構成により、室内躯体の種類または場所による余熱量の違いを考慮することができ、室内空気の温度上昇が回避できる。除湿運転時に圧縮機を停止する回数を減らすことができ、除湿運転の快適性がさらに向上する。
【0111】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。なお除湿運転時の設定温度として利用者によって設定されるものを例にあげたが、これに限るものではなく、あらかじめ決められた温度を除湿運転時の設定温度として空気調和機に設定しても良い。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0112】
1…空気調和機
10…室内機
20…温度検知手段
21…第1温度センサ
22…第2温度センサ
30…室外機
40…制御装置
100…室内熱交換器
110…第1熱交換部
120…第2熱交換部
130、330…減圧装置
150…室内ファン
300…室外熱交換器
310…圧縮機
320…四方弁
350…室外ファン