IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社富士通ゼネラルの特許一覧

<>
  • 特許-空気調和機 図1
  • 特許-空気調和機 図2
  • 特許-空気調和機 図3
  • 特許-空気調和機 図4
  • 特許-空気調和機 図5
  • 特許-空気調和機 図6
  • 特許-空気調和機 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/22 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
F24F1/0007 361Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019217541
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021085647
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-06-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002653
【氏名又は名称】弁理士法人アズテックIP
(72)【発明者】
【氏名】山田 太志
(72)【発明者】
【氏名】内藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 拓也
(72)【発明者】
【氏名】畠谷 尊明
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 樹
(72)【発明者】
【氏名】兼尾 能徳
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-066348(JP,U)
【文献】実開昭53-102550(JP,U)
【文献】米国特許第05669230(US,A)
【文献】特開2013-011393(JP,A)
【文献】特開2001-227769(JP,A)
【文献】特開平10-196993(JP,A)
【文献】特開2005-265332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気吸込口と空気吹出口が設けられ、前記空気吸込口と前記空気吹出口との間に空気流通路が形成された筐体と、該筐体内の前記空気流通路に配置された熱交換器と、前記筐体内の前記空気流通路に配置された送風ファンと、前記熱交換器の下方に配置されたドレンパンと、を有する空気調和機において、
前記ドレンパンの前記空気流通路に対応する上面を覆うよう配置されている耐火材料製のドレンパンカバーを有し、該ドレンパンカバーは前記ドレンパンの上面全体を覆い、該ドレンパンカバーの前端部には上方向に曲折した結露水溢れ防止用のフランジが設けられることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機において、
前記ドレンパンカバーは、前記送風ファンが配置された送風ファン室と前記熱交換器が配置された熱交換器室とを区画する仕切板と、前記熱交換器に取り付けられていることを特徴とする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の天井裏や壁面裏等に配置される空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機として、例えば図6に示すものがある。この空気調和機200は、筐体10に図示しないボルトとナットで取り付けられたアンカーA1,A2で高さ調節して建屋側の天井壁70から懸架され、天井壁70と室内側の天井板66との間に接地される(例えば、特許文献1)。
【0003】
この空気調和機200は、直方体形状の板金製の筐体10と、その筐体10内に配置された送風ファン20と、同様に筐体10内に配置された熱交換器30とを備える。この筐体10の横方向の一方の端部には空気吸込口12aが形成され、他方の端部には空気吹出口11aが形成され、送風ファン20と熱交換器30はその空気吸込口12aと空気吹出口11aを結ぶ空気流通路18内に配置されている。
【0004】
そして、空気吸込口12aは吸込ダクト80を介して天井板60に取り付けられた吸込グリル61に接続され、空気吹出口11aは吹出ダクト90を介して天井板60に取り付けられた吹出グリル62に接続されている。
【0005】
図7は空気調和機200の断面を示す図である。筐体10の空気流通路18は、空気吸込口12aの側が送風ファン室10Aとなり空気吹出口12の側が熱交換器室10Bとなるように、仕切板17によって区画されている。送風ファン20は送風ファン室10Aに配置され、熱交換器30は熱交換器室10Bに配置されている。熱交換器30は、上側熱交換器31と下側熱交換器32を側面視で「<字形状」となるように、上側熱交換器31の上に下側熱交換器32を組み合わせて形成される。そして、下側熱交換器32の折れ曲がり部である前端部分33が空気吹出口11aの側を向くように配置される。この熱交換器30の下方に、熱交換器30で生じた結露水を受けるドレンパン40が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-011393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで米国では、2014年にUL規格が改定され、「複数の部屋に空気を分配するダクトに対して、空気の流れに面した部品材料の防火(延焼と発煙)に関する要求」(UL規格1995第4版)が追加された。空気を分配するダクトの対象には、空気調和機が含まれ、2014年以降ではこの改定内容に対応していない空気調和機は販売許可の認証を取得することができない。
【0008】
2014年以前に認証を取得した機種は上記規格の対象外であったため、「流れに面した部品材料」となるドレンパンは安価に製造できる樹脂で製造されていたが、2014年以降にこれをそのまま使用すれば防火要求を満たすことができず、材料に金属を用いるようにしていたため、コストが上昇していた。なお、空気流通路18に配置される筐体10、送風ファン20、熱交換器30などは金属製であり、防火要求を満たすことができる。
【0009】
本発明の目的は、樹脂製のドレンパンを使用しても防火要求を満たすことができる空気調和機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態は、空気吸込口と空気吹出口が設けられ、前記空気吸込口と前記空気吹出口との間に空気流通路が形成された筐体と、該筐体内の前記空気流通路に配置された熱交換器と、前記筐体内の前記空気流通路に配置された送風ファンと、前記熱交換器の下方に配置されたドレンパンと、を有する空気調和機において、前記ドレンパンの前記空気流通路に対応する上面を覆うよう配置されている耐火材料製のドレンパンカバーを有し、該ドレンパンカバーは前記ドレンパンの上面全体を覆い、該ドレンパンカバーの前端部には上方向に曲折した結露水溢れ防止用のフランジが設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ドレンパンが樹脂製であっても、そのドレンパンは耐火材料製のドレンパンカバーによって覆われ、ドレンパンカバーが「流れに面した部品材料」となるので防火要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は本発明の実施例の空気調和機の斜視図、(b)は(a)のA-A線断面図である。
図2図1の空気調和機の分解斜視図である。
図3】ドレンパンカバーの取付説明図である。
図4】ドレンパンカバーに覆われたドレンパンの斜視図である。
図5】空気調和機の空気吹出口近傍の部分拡大図である。
図6】従来の空気調和機の取付説明図である。
図7】従来の空気調和機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図2に本発明の実施例の空気調和機100を示す。筐体10はそれぞれ板金(鋼板)で形成された、前面板11、背面板12、天面板13、底面板14、左側面板15、右側面板16を有し、内部に空気流通路18が形成された左右方向に長い直方体形状である。底面板14は第1底面板14aと第2底面板14bに分かれている。そして背面板12に空気吸込口12aが形成され、前面板11に空気吹出口11aが形成され、これら空気吹出口11aと空気吸込口12aは、筐体10の内部の空気流通路18に連通している。
【0014】
筐体10の内部の空気流通路18は、空気吸込口12aの側で送風ファン20が配置された送風ファン室10Aと、空気吹出口11aの側で熱交換器30が配置された熱交換器室10Bとが、仕切板17によって区画されている。送風ファン室10Aの下に第1底面板14aが位置し、熱交換器室10Bの下に第2底面板14bが位置している。
【0015】
送風ファン20には、ファンケース21内に図示しないモータによって回転駆動される回転軸23に3個の羽根車22を取り付けた3台(図示せず)のシロッコファンが組み込まれ、空気吸込口12aから空気を吸い込んでファンケース21の吹出口21aから仕切板17で送風ファン室10Aと区画された熱交換器室10Bの方向に吹き出す。
【0016】
仕切板17には、図3に示すように、送風ファン室10Aと熱交換器室10Bを連通させるための開口17aが、3台のシロッコファンのファンケース21に対応して3個設けられている。そして、それぞれの開口17aの下縁には、熱交換器室10B側に折り曲げたフランジ17a1が形成されている。
【0017】
熱交換器30は、上側熱交換器31と下側熱交換器32を側面視で「<字形状」となるように組み合わせて形成され、「<字形状」の折れ曲がり部である前端部分33が空気吹出口11aの側を向くように、左側面板15と右側面板16の間に取り付けられる。この熱交換器30の左側面板15を向く側と右側面板16を向く側には、それぞれ取付片34が設けられている。熱交換器30が筐体10内に組み込まれたとき、上側熱交換器31は仕切板17の開口17aに対して下面31aが対面し、下側熱交換器32は仕切板17の開口17aに対して上面32aが対面するようになる。なお、上側熱交換器31と下側熱交換器32は複数枚のフィンや冷媒配管を備えるが、本発明には直接関連しないので、詳しい説明は省略する。
【0018】
熱交換器30の下方の第2底面板14bには、熱交換器30で生じた結露水が集められるドレンパン40が配置されている。このドレンパン40は、排水溝41,42が上面に形成され上面の周囲が上面から立設された壁44で囲まれた長方形形状の樹脂製であり、左側面板15と右側面板16の間に配置されている。このドレンパン40には、排水溝41,42のそれぞれとつながる溜部43に滞留した結露水を外部に排出するためのドレンパイプ45が設けられ、そのドレンパイプ45は右側面板16に取り付けられたドレンホース取付端46に結合される。
【0019】
50は表裏両面に防錆塗装が施された例えば板金等の耐火材料製のドレンパンカバーであり、ドレンパン40の空気流通路18に対面する部分を覆うように組み込まれている。組み込み状態では、このドレンパンカバー50は、筐体10の前面板11側を向く前端部51と、筐体10の仕切板17側を向く後端部52と、底部となる排水路53を備える。そして、前端部51から排水路53にかけては、前端部51より排水路53側が低くなるよう前側スロープ54が形成され、後端部52から排水路53にかけては、後端部52より排水路53側が低くなるよう後側スロープ55形成されている。後側スロープ55には段差を形成する曲折部55aが形成されている。その後側スロープ55と排水路53の境界に、下側熱交換器32の下角32bが位置することになる。排水路53には、左側面板15を向く側から右側面板16を向く側にかけて複数の排水口53aが所定のピッチで形成されている。前側スロープ54の両端には取付片56がそれぞれ形成され、前端部51には上方向に曲折した結露水溢れ防止用のフランジ51aが形成され、後端部52には上端が平面の取付用のフランジ52aが形成されている。
【0020】
さて、この筐体10の組み立て作業は、上下反転した状態で行う。まず、天面板13を作業台の上に載せる。そして、天面板側断熱材(図示せず)、仕切板17、送風ファン20、熱交換器30を順次組み込む。熱交換器30は取付片34により天面板13と仕切板17に取り付ける。送風ファン20はファンケース21の図示しない取付片により仕切板17に取り付ける。この後、ドレンパンカバー50を取り付ける。この取付では、ドレンパンカバー50の後端部52のフランジ52aを仕切板17の3箇所の開口17aのフランジ17a1にそれぞれネジB1で取り付け、ドレンパン50の前側スロープ54の両端の取付片56をそれぞれネジB2で熱交換器20の取付片34に取り付ける。このとき、ドレパンカバー50の曲折部55aは下側熱交換器32はその下端32bに位置する。
【0021】
この後、第1底面板14aにより送風ファン室10Aの底面を閉じる。また、第2底面板14bの上面にドレンパン40を取り付けてから、第2底面板14bにより熱交換器室10Bの底面と閉じる。
【0022】
組み立てられた筐体10は、上下を反転させ、前述したアンカーA1,A2で高さを調節して建屋側の天井壁70から懸架され、天井壁70と室内側の天井板60との間に設置され、図示しない屋外の室外機と連結される。
【0023】
空気調和機100の運転によって上側熱交換器31と下側熱交換器32に生じた結露水は、ドレンパンカバー50の上面に滴下し、前側スロープ54と後側スロープ55によって排水路53に集められ、排水口53aからドレンパン40に落下する。このとき、前側スロープ54上の結露水が送風ファン20で生じた風によって押されて空気吹出口11aから外部に吹き出される恐れがあるが、その結露水はドレンパンカバー50のフランジ51aによって押し止められ、排水路53に流れ落ちる。
【0024】
本実施例の空気調和機によれば、ドレンパン40の上面の内の空気流通路18に面する部分が耐火材料で形成されたドレンパンカバー50によって覆われるので、そのドレンパン40が空気流通路18に露出することが防止され、ドレンパン40が「流れに面した部品材料」ではなくなる。よって、ドレンパン40を安価に製造できる樹脂で製造しながらも、前述のUL1995第4版に定められた「複数の部屋に空気を分配するダクトに対して、空気の流れに面した部品材料の防火(延焼と発煙)に関する要求」を満たすことができる。
【0025】
また、ドレンパンカバー50は熱交換器30と仕切板17に対して取り付けられる。つまり、ドレンパンカバー50はドレンパン40には取り付けられないので、ドレンパン40をドレンパンカバー50から独立して取り外すことができる。このため、ドレンパン40の取り付け作業やそのメンテナンスが容易となる。
【0026】
また、ドレンパンカバー50は、表面に防錆塗装が施されており、その長寿命化を図ることもできる。
【0027】
また、ドレンパンカバー50は従来の空気調和機に着脱可能であり、ドレンパンカバー50を必要としない地域向けの空気調和機と設計を共通化することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
10:筐体、11:前面板、11a:空気吹出口、12:背面板、12a:空気吸込口、13:天面板、14:底面板、14a:第1底面板、14b:第2底面板、15:左側面板、16:右側面板、17:仕切板、18:空気流通路、10A:送風ファン室、10B:熱交換器室
20:送風ファン、21:ファンケース、21a:吹出口、22:羽根車、23:回転軸
30:熱交換器、31:上側熱交換器、31a:下面部、32:下側熱交換器、32a:上面部、32b:下角、33:前端部、34:取付片
40:ドレンパン、41,42:排水溝、43:溜部、44:壁
50:ドレンパンカバー、51:前端部、51a:フランジ、52:後端部、52a:フランジ、53:排水路、53a:排水口、54:前側スロープ、55:後側スロープ、56:取付片
60:天井板、61:吸込グリル、62:吹出グリル
70:建屋天井壁
80:吸込ダクト
90:吹出ダクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7